(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィールド機器の識別情報と、前記フィールド機器の現在の通信状態又は前記フィールド機器の過去の通信状態とを対応付けた機器リストを記憶する機器リスト記憶部をさらに備え、
前記保全作業推定部は、前記現在の通信状態及び前記過去の通信状態に基づく前記変化から前記推定ルールを参照する、請求項1から4のいずれか一項に記載の保全管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における保全管理装置、保全管理方法、保全管理プログラム及び記録媒体について詳細に説明する。
【0022】
先ず、
図1を用いて、保全管理装置1のソフトウェア構成を説明する。
図1は、実施形態の保全管理装置のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
図1において、保全管理装置1は、機器情報取得部11、保全作業推定部12、機器リスト記憶部13、パラメータ指定記憶部14、推定ルール記憶部15、設定履歴記憶部16、作業履歴記憶部17、保全レポート作成部18の各機能を有する。保全管理装置1の上記各機能は、保全管理装置1を制御する保全管理プログラムによって実現される機能モジュールである。保全管理プログラムは、プログラムを提供するサーバから提供され、又は記録媒体から提供されてもよい。
【0024】
機器情報取得部11は、フィールド機器2の機器情報を取得する。本実施形態におけるフィールド機器2は、プラントに設置されて、有線又は無線のネットワークを介して通信する通信機能を有するセンサやアクチュエータである。センサは、例えば、プラントのプロセスにおける圧力、温度、pH、生成物の流量等の物理量のデータを測定する。また、アクチュエータは、バルブやポンプ等である。
【0025】
フィールド機器2は、有線又は無線によって後述する運転制御装置と通信をする。フィールド機器2は、例えば、ISA(International Society of Automation:国際計測制御学会)の無線通信規格であるISA100、HART(Highway Addressable Remote Transducer)(登録商標)、BRAIN(登録商標)、FOUNDATION Fieldbus、PROFIBUS等の工業計器専用の通信(「フィールド通信」という場合がある。)規格に対応した通信機能を有している。
図1においてフィールド機器2は、これらの通信規格で通信する1又は複数のフィールド機器を省略して表している。したがって、フィールド機器2と言った場合、1台のフィールド機器を表す場合、又は複数台のフィールド機器を表す場合のいずれも含むものとする。
【0026】
保全機器3は、フィールド機器2の保全作業を実施する機器である。保全機器3は、例えば、フィールド機器2の定期点検、フィールド機器に設定されている設定情報(パラメータ)の変更、ゼロ点調整、ループテスト等の保全項目を実施するハンドヘルドターミナルである。保全機器3は、保全結果を自動的に記録する機器であってもよい。保全作業者が保全機器3を使用してフィールド機器2の保全作業を行うことにより、フィールド機器のパラメータが変更される場合がある。例えば、ゼロ点調整においては、フィールド機器のゼロ点が変更される場合がある。また、プロセスの運転状態を変更するためにフィールド機器2のパラメータを変更する場合がある。保全作業者は、実施した保全作業を報告書等に記載し、保全作業者を管理する保全管理者に報告する。
【0027】
機器情報取得部11が取得する、フィールド機器2の機器情報は、フィールド機器2の状態の変化を含む。フィールド機器2の状態とは、例えば、フィールド機器2がネットワークに接続されているか否かの状態(ネットワーク接続状態)である。また、フィールド機器2の状態とは、フィールドに設定されているパラメータの状態(パラメータ設定状態)である。
【0028】
<ネットワーク接続状態の変化>
ネットワーク接続状態の変化は、フィールド機器2の通信状態の変化である。フィールド機器2がネットワークに接続されている状態とは、フィールド機器2がネットワークを介して通信可能な状態である。また、フィールド機器2がネットワークに接続されていない状態とは、フィールド機器2がネットワークを介して通信不可能な状態である。したがって、ネットワーク接続状態の変化は、フィールド機器2が通信可能状態と通信不可能状態とを変化することである。例えば、フィールド機器2が有線ネットワークに物理的に配線されている場合であっても電源トラブル等によって通信できないときには、フィールド機器2はネットワークに接続されていない状態であるとする。なお、ネットワーク接続状態の変化は、機器リスト記憶部13を参照することによって取得することができる。
【0029】
<パラメータ設定状態の変化>
パラメータ設定状態の変化とは、例えば、フィールド機器に設定されているパラメータが更新されたり、新たに設定されたりすることである。保全管理装置1は、機器情報取得部11を介してフィールド機器2の状態の変化を取得する。なお、機器情報取得部11は、上述したフィールド通信を介してフィールド機器2から直接、フィールド機器2の状態の変化を取得するものであっても、他の装置を介してフィールド機器2の状態の変化を取得するものであってもよい。
【0030】
保全作業推定部12は、フィールド機器2の状態の変化に基づき、推定ルールを参照して、フィールド機器2に対して実施された保全作業を推定する。推定ルールとは、フィールド機器2の状態の変化と、フィールド機器に対して実施される保全作業とを対応付けた情報である。なお、対応付けられた状態の変化と保全作業とは、互いに関連性を有する。設定ルールは予め設定しておくことができ、また更新できるようにしてもよい。保全作業推定部12は、機器情報取得部11において取得されたフィールド機器2の状態の変化の情報に基づき、推定ルールを参照して、その状態の変化が設定されているか否かを判断し、設定されている場合は、その状態の変化に対応付けられた保全作業の情報を推定ルールから取得する。保全作業推定部12がフィールド機器2の状態の変化に基づきフィールド機器に対して実施される保全作業を推定することにより、保全作業者がフィールド機器に対して実施した保全作業の情報を自動的に収集することが可能となる。
【0031】
機器リスト記憶部13は、フィールド機器2の識別情報とフィールド機器2の通信状態とを対応付けて記憶する。保全作業推定部12は、機器リスト記憶部13に記憶された機器リストに基づいて取得されたフィールド機器の通信状態の変化から保全作業を推定することができる。ここで、
図2を用いて、機器リストを説明する。
図2は、実施形態の保全管理装置1における機器リストの一例を示す図である。
【0032】
図2において、機器リストは、「NO.」、「ネットワークアドレス」、「Device ID」、「タグ名」、「モデル」、「接続状況」、「接続開始日時」及び「接続終了日時」のデータ項目を有する。機器リストのこれらのデータ項目は、フィールド機器2が接続されたネットワークにおいて自動的に収集され、又は入力される。
【0033】
「NO.」のデータ項目は、機器リストのレコード(行方向)の番号である。NO.は新たなフィールド機器2の情報が取得される度に付与される。
【0034】
「ネットワークアドレス」のデータ項目は、フィールド機器2が接続されたネットワークにおけるアドレスである。ネットワークアドレスには、ネットワークの通信規格によって定められるアドレス形式が用いられる。ネットワークアドレスは、ネットワーク通信によってフィールド機器が取得することができる。
【0035】
「Device ID」のデータ項目は、フィールド機器を一意に識別するための識別情報(ID(Identification))である。デバイスIDは、プロトコル毎に定義されてフィールド機器の個体を識別する、例えば機器毎に付与されるシリアル番号である、したがって、交換前のフィールド機器と交換後のフィールド機器はデバイスIDが異なるものとなる。
【0036】
「タグ名」のデータ項目は、フィールド機器の用途を識別するための識別情報(ID)である。タグ名は、それぞれのフィールド機器2に対して個別に設定することができる。したがって、交換前のフィールド機器と交換後のフィールド機器に対して同一のタグ名を設定してもよい。
【0037】
「モデル」のデータ項目は、フィールド機器2のモデル名であり、それぞれの機器の型式に応じて付与されている。モデルの情報は、ネットワークを介してフィールド機器から取得することができる。
【0038】
「接続状況」データ項目は、機器リストに含まれるフィールド機器2が、ネットワークに接続されているか否かを示す。接続状況は、ネットワークを介して現在接続されているフィールド機器のネットワークアドレス、デバイスID又はタグ名において検出することができる。機器リストは、
図1の機器情報取得部11がネットワークに接続されているフィールド機器から機器情報を取得することにより作成される。機器情報が取得されたフィールド機器の接続状況は「○」で示される。しかし、故障等によってネットワークとオフラインとなったフィールド機器2は、機器情報が取得されないため、接続状況が「−」に変更される。すなわち、
図2に示す機器リストは、現在ネットワークに接続されているフィールド機器2のみならず、過去に接続されていたフィールド機器2をリスト化したものである。機器リストに記録されている過去に接続されていたフィールド機器であって、一度オフラインとなったフィールド機器2が再度オンラインとなった場合、機器リストに記録されているフィールド機器2のレコードの接続状態のデータ項目を「−」から「○」に変更する。一方、過去に接続された記録がなく、新たにネットワークに接続された(オンラインとなった)フィールド機器は、新たなフィールド機器2であると認識されて新たなレコードが追加される。
【0039】
「接続開始日時」のデータ項目は、機器リストにフィールド機器のレコードが新たに追加された日時である。時間の情報の記載は図示省略している。なお、接続開始日時のデータ項目は、同じタグ名等においてフィールド機器2が交換された場合、交換日時が入力されてもよい。
【0040】
「接続終了日時」のデータ項目は、フィールド機器2がオフラインになった日時であり、「接続状況」が「−」に変更された日時である。本実施形態において、保全作業推定部12は、フィールド機器2の状態の変化として、機器の新たな追加のみならず、オンラインからオフラインへの変化に対しても保全作業の実施を推定するため、フィールド機器の状態がオフラインに変化したことを示す記録をいずれかの場所にしておく必要がある。「接続終了日時」に日時の情報が記録されているレコードのフィールド機器は過去にネットワークに接続された機器であり、接続状態がオンラインからオフラインに変化したことを保全作業推定部12によって参照される。過去にネットワークに接続されていたオフラインのフィールド機器のレコードは、保全作業推定部12によって一度保全作業の推定に使用された後は任意のタイミングで削除してもよい。
【0041】
例えば、
図2において、「NO.」のデータ項目が「2」と「3」のレコード(行)は、「ネットワークアドレス」と「タグ名」のデータ項目が、それぞれ同じ、「1−1−2」と「TAG2」であるが、「Device ID」のデータ項目が「0002」と「0003」で異なる。デバイスID「0002」のフィールド機器は、「接続終了日時」のデータ項目が「2016/3/15」であり、デバイスID「0003」のフィールド機器は、「接続状況」のデータ項目が「○」であり、かつ「接続開始日時」のデータ項目が「2016/3/15」である。これらのデータ項目の推移によるネットワーク接続状態の変化によって、2016年3月15日に接続終了されたデバイスID「0002」のフィールド機器がデバイスID「0003」のフィールド機器にローテーション(交換)されたとして検出することができる。
【0042】
以上で、
図2を用いた機器リストの説明を終了し、再び
図1の説明に戻る。
【0043】
パラメータ指定記憶部14は、フィールド機器2において設定される各種のパラメータの中で、パラメータの設定状態の変化として検出するパラメータを指定するパラメータ指定リストを記憶する。保全作業推定部12は、パラメータ指定記憶部14に記憶されたパラメータ指定リストに基づいて取得されたフィールド機器のパラメータの変化から保全作業を推定することができる。ここで、
図3を用いて、パラメータ指定リストを説明する。
図3は、実施形態の保全管理装置におけるパラメータ指定リストの一例を示す図である。
【0044】
図3において、パラメータ指定リストは、「NO.」、「モデル」及び「指定パラメータ」のデータ項目を有する。パラメータ指定リストのこれらのデータ項目は、後述する推定ルールを用いた保全作業の推定に用いるパラメータを指定するものである。パラメータ指定リストは、推定ルールを作成する際に合せて作成される。
【0045】
「NO.」のデータ項目は、パラメータ指定リストのレコードの番号である。
【0046】
「モデル」のデータ項目は、フィールド機器2のモデル名であり、それぞれの機器の型式に応じて付与されている。
図3においては、フィールド機器のモデルに対して指定パラメータを指定するものとする。但し、指定パラメータは、例えばそれぞれのフィールド機器に対して個別に設定するようにしてもよい。
【0047】
「指定パラメータ」のデータ項目は、「モデル」のデータ項目で指定されたフィールド機器において、設定の変化を検出するパラメータを指定する。例えば、「モデル」が「Type001」のフィールド機器2に対しては、「指定パラメータ」として「ParaA」が指定されている。また、「モデル」が「Type002」のフィールド機器2に対しては、「指定パラメータ」として「ParaB、ParaC」の2つのパラメータが指定されている。指定するパラメータの種類や数は、フィールド機器2に合せて任意に設定することができる。パラメータ指定リストによって、パラメータを指定することにより、フィールド機器からの不必要な情報の取得を低減することが可能となる。
【0048】
なお、パラメータ指定リストにおいて、例えば、パラメータの取得頻度や外れ値の除外方法(例えば、プラント始業時のパラメータの変化を無視する)等を設定するようにしてもよい。
【0049】
以上で、
図3を用いたパラメータ指定リストの説明を終了し、再び
図1の説明に戻る。
【0050】
推定ルール記憶部15は、フィールド機器の状態の変化と、フィールド機器に対して実施される保全作業との対応付けた推定ルールを記憶する。保全作業推定部12は、推定ルールを参照(検索)することにより、フィールド機器の状態の変化からフィールド機器に対して実施された保全作業を推定することができる。ここで、
図4を用いて、推定ルールを説明する。
図4は、実施形態の保全管理装置1における推定ルールの一例を示す図である。
【0051】
図4において、推定ルールは、「DetectedChange」及び「Assumed Action、Assumed Asset State Transition」のデータ項目を有する。推定ルールのこれらのデータ項目は、例えば、過去の保全記録とその時のフィールド機器の状態の変化を対比して解析することにより作成することができる。
【0052】
「DetectedChange」のデータ項目は、フィールド機器2の状態の変化を示している。「DetectedChange」のデータ項目は、理解容易のため、日本語で記述されているが、保全作業推定部12において参照する推定ルールにおいては、日本語の記述に対応した算定式が記述されている。例えば、「新規デバイスIDの出現」とは、
図2で説明した機器リストにおいて、新たなタグ名のフィールド機器が追加された(新たなフィールド機器が通信可能になった)ことによって検出される。「DetectedChange」のデータ項目には、フィールド機器の状態の変化の内容や変化の日時等、保全作業で発生し得る事象を定義することができる。
【0053】
「Assumed Action、Assumed Asset State Transition」のデータ項目は、「DetectedChange」のデータ項目から推定される保全作業が対応付けられている。例えば、「新規デバイスIDの出現」に対しては、「倉庫からチェックアウトした資産のInstallation完了」の保全作業が対応付けられている。すなわち、「Assumed Action、Assumed Asset State Transition」のデータ項目は、実施された保全項目「Installation完了」と資産(フィールド機器2)の移動の情報を含んでいる。例えば、保全作業者は、プラントに新たなフィールド機器2を取付ける場合、実際の取付け作業に加えて、フィールド機器の出庫作業や在庫リストの管理等の付随的な作業をする場合があるので、
図4に示す推定ルールを参照することにより、フィールド機器2を取付けの保全作業を推定するのみならず、その保全作業に付随した作業を推定することが可能となる。
【0054】
なお、フィールド機器のパラメータ設定の推定ルールに基づく推定結果は
図5を用いて、保全作業の推定ルールに基づく推定結果は
図6を用いて説明する。
【0055】
以上で、
図4を用いたパラメータ指定リストの説明を終了し、再び
図1の説明に戻る。
【0056】
設定履歴記憶部16は、保全作業推定部12において推定したパラメータ設定の保全作業の履歴である設定履歴を記憶する。ここで、
図5を用いて、設定履歴を説明する。
図5は、実施形態の保全管理装置1における設定履歴の一例を示す図である。
【0057】
図5において、設定履歴は、「NO.」、「日時」、「Device ID」、「タグ名」、「モデル」、「設定パラメータ」及び「設定値」のデータ項目を有する。設定履歴のこれらのデータ項目は、保全作業推定部12の推定結果に基づき入力される。
【0058】
「NO.」のデータ項目は、設定履歴のレコードの番号である。NO.は、保全作業推定部12が保全作業の推定処理を実行する度に追加される。
【0059】
「日時」のデータ項目は、保全作業推定部12が推定した保全作業が実施された日時である。
【0060】
「Device ID」のデータ項目は、フィールド機器を一意に識別するための識別情報(ID)である。デバイスIDは、プロトコル毎に定義されてフィールド機器の個体を識別する、例えば機器毎に付与されるシリアル番号である。
【0061】
「タグ名」のデータ項目は、フィールド機器の用途を識別するための識別情報である。「モデル」のデータ項目は、フィールド機器2のモデル名である。「タグ名」及び「モデル」は、
図2で説明した機器リストから取得することができる。
【0062】
「設定パラメータ」のデータ項目は、フィールド機器2において保全作業が実施された設定パラメータである。保全作業において複数の設定パラメータが変更されたときには設定パラメータのデータ項目に複数の設定パラメータが入力される。「設定値」のデータ項目は、設定パラメータに対する設定値である。なお、「設定パラメータ」のデータ項目は、
図3で説明した指定パラメータに対応している。
【0063】
以上で、
図5を用いた設定履歴の説明を終了し、再び
図1の説明に戻る。
【0064】
作業履歴記憶部17は、保全作業推定部12においてパラメータ設定以外の保全作業の履歴である作業履歴を記憶する。ここで、
図6を用いて、作業履歴を説明する。
図6は、実施形態の保全管理装置1における作業履歴の一例を示す図である。
【0065】
図6において、作業履歴は、「NO.」、「日時」、「Device ID」、「タグ名」、「モデル」及び「作業内容」のデータ項目を有する。作業履歴のこれらのデータ項目は、保全作業推定部12の推定結果に基づき入力される。なお、「NO.」、「日時」、「Device ID」、「タグ名」及び「モデル」のデータ項目は、
図5と同様であるため説明を省略する。
【0066】
「作業内容」のデータ項目は、保全作業推定部12が推定したパラメータ設定以外の保全作業の内容である。
図5及び
図6においては、パラメータ設定とそれ以外の保全作業を異なるテーブルに記憶する場合を示したが、これらの推定結果は同じテーブルに記憶するようにしてもよい。以上で、
図6を用いた作業履歴の説明を終了し、再び
図1の説明に戻る。
【0067】
保全レポート作成部18は、設定履歴記憶部16に記録された設定履歴又は作業履歴記憶部17に記憶された作業履歴に基づいて、保全作業の履歴を記録するためのレポートを作成する。保全レポート作成部18において作成される保全レポートは、設定履歴又は作業履歴に記録されている項目のいずれか1以上の項目を任意に選択して作成される。レポートの記載形式(フォーマット)は任意に設定できるものとする。保全レポート作成部18は、ディスプレイ等に表示する表示フォーマットと、プリンタ等から印字出力する印字フォーマットをそれぞれ別個に設定できるようにしてもよい。
【0068】
なお、
図1における保全管理装置1の、機器情報取得部11、保全作業推定部12、機器リスト記憶部13、パラメータ指定記憶部14、推定ルール記憶部15、設定履歴記憶部16、作業履歴記憶部17、保全レポート作成部18の各機能は、ソフトウェアによって実現される場合を説明した。しかし、上記各機能の中の1つ以上の機能は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。また、上記各機能は、1つの機能を複数の機能に分割して実施してもよい。また、上記各機能は、2つ以上の機能を1つの機能に集約して実施してもよい。
【0069】
次に、
図7を用いて、保全管理装置1のハードウェア構成を説明する。
図7は、実施形態における保全管理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0070】
図7において、保全管理装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、表示装置105、入力装置106、通信I/F(Interface)107、通信I/F108及びこれらを接続するバス109を有する。
【0071】
保全管理装置1は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータ、FAコンピュータ、PLC等の装置、ノート型又はタブレット型のコンピュータ、PDA、又はスマートフォン等である。保全管理装置1のハードウェアは、単体装置として構成されてもよく、また、複数の装置の組合せで構成されるシステムであってもよい。また、保全管理装置1は、他の装置とハードウェアを共用するものであってもよい。
【0072】
CPU101は、RAM102、ROM103又はHDD104に記憶されたプログラムを実行することにより、保全管理装置1の制御を行なう。CPU101は、保全管理装置1の動作を実現するための保全管理プログラムを実行する。保全管理プログラムは、例えば、保全管理プログラムを記録した記録媒体、又はネットワークを介した保全管理プログラムを提供するサーバ等から取得されて、HDD104にインストールされ、CPU101から読出し可能にRAM102に記憶される。
【0073】
表示装置105は、表示機能を有する例えば液晶ディスプレイである。表示装置105は、ヘッドマウント型ディスプレイ、メガネ型ディスプレイ、腕時計型ディスプレイ等の種々の形態によって実現されてもよい。入力装置106は、入力機能を有する例えばキーボード又はマウスである。入力装置106は、音声情報を入力するマイク、画像情報を入力するカメラ又はスキャナ等であってもよい。なお、表示装置105と入力装置106は、タッチパネル等、表示機能と入力機能を有する装置によって実現されてもよい。
【0074】
通信I/F107は、有線通信又は無線通信を介して、後述する製造実行システム5、運転制御装置4、保全機器3等の他の装置との通信を制御する。通信I/F107は、接続された他の装置と、データ送受信、音声通話又はメール送受信等の通信制御を行なう。通信I/F107は、例えば、無線LAN通信、有線LAN通信、赤外線通信、近距離無線通信等の汎用通信規格に対応した通信制御を行なう。
【0075】
通信I/F108は、有線通信又は無線通信を介して、運転制御装置4、保全機器3、図示しないフィールド機器等の他の装置との通信を制御する。通信I/F108は、例えば、ISA100、HART(登録商標)、BRAIN(登録商標)、FOUNDATION Fieldbus、PROFIBUS等のフィールド通信規格に対応した通信制御を行なう。
【0076】
次に、
図8を用いて、保全管理装置1を含む保全管理システムを説明する。
図8は、実施形態の保全管理装置1を含む保全管理システム100の第1の例を示すブロック図である。
【0077】
図1において説明した保全管理装置1の機器情報取得部11、保全作業推定部12、機器リスト記憶部13、パラメータ指定記憶部14、推定ルール記憶部15、設定履歴記憶部16、作業履歴記憶部17、保全レポート作成部18の各機能の構成は、各機能の内容を説明するものであり、各機能が実行されるハードウェアとして装置を限定するものではない。例えば、保全管理装置1は、一の装置で実行されても複数の装置を含むシステムで実行されてもよい。また、保全管理装置1の各機能は複数の装置において機能を分散させて実行されてもよい。複数の装置の一部は、例えばクラウドコンピューティングで実現されるクラウドサービスで実行されてもよい。
図8及び
図9で説明する保全管理装置1を含む保全管理システム100は、
図1で説明した保全管理装置1の機能をプラントシステムにおいて分散させて配置した場合の実施形態である。すなわち、保全管理システム100は、保全管理装置1の一実施形態である。
【0078】
図8において、保全管理システム100は、保全管理装置1a、保全管理装置1b、フィールド機器2、保全機器3、運転制御装置4、製造実行システム5、基幹業務システム6を有する。
【0079】
保全管理装置1aは、機器情報取得部1a1、機器情報提供部1a2、機器リスト記憶部1a3、パラメータ指定記憶部1a4、保全レポート作成部1a5の各機能を有する。保全管理装置1bは、機器情報取得部1b1、保全作業推定部1b2、推定ルール記憶部1b3、設定履歴記憶部1b4、作業履歴記憶部1b5の各機能を有する。運転制御装置4は、機器通信部41、機器状態検出部42、機器情報アクセス部43の各機能を有する。
【0080】
運転制御装置4は、フィールド機器2から取得したプロセスデータに基づき、図示しないポンプ、バルブ、ヒータ等を制御して、プラントにおけるプロセスを制御する。運転制御装置4は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置である。
【0081】
機器通信部41は、フィールド通信規格に対応したネットワーク通信においてフィールド機器2との通信を制御して、フィールド機器2とデータの送受信を行なう。機器状態検出部42は、ネットワークに接続されたフィールド機器2を検出する。また、機器情報アクセス部43は、フィールド機器2に設定されたパラメータにアクセスし、設定パラメータの参照、設定等を行なう。機器通信部41はフィールド機器2と常時接続される。これにより、機器状態検出部42は、ネットワークに対するフィールド機器2の接続や切り離しをリアルタイムの検出することが可能となる。また、機器情報アクセス部43は、フィールド機器2の設定パラメータの変更をリアルタイムで検出することが可能となる。
【0082】
運転制御装置4は、ネットワークに対するフィールド機器2の接続状態やフィールド機器2の設定パラメータの変更等のフィールド機器2から取得した情報を製造実行システム5に対して提供する。
【0083】
製造実行システム5は、例えば、基幹業務システム6と運転制御装置4との間に位置するMES(Manufacturing Execution System)であり、運転制御装置4が取得したフィールド機器の情報を監視し又は管理する。製造実行システム5は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータである。製造実行システムには、PIMS(Plant Information Management System:プラント情報管理システム)51、又はCMMS(Computerised Maintenance Management System:プラント保全管理システム)52等の機能を有していてもよい。
【0084】
製造実行システム5は、運転制御装置4から取得した、フィールド通信のネットワークに対するフィールド機器2の接続状態やフィールド機器2の設定パラメータの変更を保全管理装置1aに対して提供する。
【0085】
製造実行システム5にけるPIMS51は、プラントの状態情報を収集して記録するプラント情報管理システムとして機能する。
図8においてPIMS51は、運転制御装置4を介して(又は運転制御装置4を介さず直接に)、フィールド機器2の情報を収集して記録する。PIMS51は、フィールド機器2の情報を時系列で収集してヒストリーデータ(履歴データ、ヒストリアン)として記録する。ヒストリーデータには、フィールド機器2の情報とその情報が測定された日時を含む。PIMS51は保全管理装置1aに対して、ヒストリーデータを提供するとともに、現在の(最新の)情報を提供する。例えば、PIMS51は、フィールド機器2の情報を取得したときに、取得した情報を保全管理装置1aに提供するとともに、ヒストリーデータとして記録する。PIMS51は記録したヒストリーデータを、例えば定期的に又は保全管理装置1aからの取得要求に応じて保全管理装置1aに提供する。ヒストリーデータは、例えば1時間、1日、1週間等、所定の期間記録された複数の測定データの履歴である。
【0086】
製造実行システム5にけるCMMS52は、プラントの保全履歴を記録し、保全計画を管理するプラント保全管理システムとして機能する。CMMS52は、例えば、保全機器3で実施されて記録されたフィールド機器に対する保全操作の操作履歴を、複数の保全機器3から取得して保全情報として記録する。また、CMMS52は、保全作業者によって実施された保全作業を手動で入力可能として保全情報として記録してもよい。なお、CMMS52は、保全機器3が保全管理装置1aに対して提供する保全情報を保全管理装置1aに対して提供してもよい。保全情報は、推定ルールを作成するときに保全作業の基本的なデータをして用いることができる。
【0087】
基幹業務システム6は、例えば、会計処理、生産管理、販売管理等の経営資源を管理するためのプロセス製造業向けERP(Enterprise Resource Planning:経営資源統合)システムである。基幹業務システム6は、プラントの運転状態の情報を経営資源の管理情報として利用してもよい。また、基幹業務システム6は、プラントの保全や修理の業務情報を管理する保全管理システム等を含んでいてもよい。基幹業務システム6は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータである。
【0088】
保全管理装置1a及び保全管理装置1bは、
図1の保全管理装置1の機能の一部を実現する装置である。保全管理装置1aは、例えばプラントと同じ建屋内、同じ工場内等、プラントサイトに設定される。一方、保全管理装置1bは、例えば、クラウドサービスによって提供される仮想コンピュータ装置によって実現される。
【0089】
保全管理装置1aにおいて、機器情報取得部1a1は、運転制御装置4又は製造実行システム5を介して、フィールド機器2の機器情報を取得する。機器リスト記憶部1a3、パラメータ指定記憶部1a4、保全レポート作成部1a5の各機能は、
図1において説明した、機器リスト記憶部13、パラメータ指定記憶部14、保全レポート作成部18と同様であるため、説明を省略する。保全管理装置1aは、保全作業を推定するための機器情報を収集する機器情報収集機能を有する装置である。保全管理装置1aにおいて機器情報を収集することにより、実行頻度の高い機器情報の収集処理を、保全作業を推定する保全管理装置1bから独立させることができ、保全管理装置1bの負荷を低減させることができる。機器情報提供部1a2は、機器情報取得部1a1において収集したフィールド機器2の機器情報を保全管理装置1bに対して提供する。
【0090】
保全管理装置1bにおいて、機器情報取得部1b1は、機器情報提供部1a2からフィールド機器2の機器情報を取得する。保全管理装置1bの保全作業推定部1b2、推定ルール記憶部1b3、設定履歴記憶部1b4、作業履歴記憶部1b5の各機能は、保全管理装置1の保全作業推定部12、推定ルール記憶部15、設定履歴記憶部16、作業履歴記憶部17の各機能と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
ところで、保全作業の推定処理内容や推定ルールの内容は、フィールド機器2の保全に関してノウハウ事項を含んでいる場合がある。保全管理装置1bの各機能はクラウドサービスで提供されるため、保全作業推定部1b2における保全作業の推定処理内容や推定ルールはプラントサイトから独立して実行されることになる。これにより、保全作業の推定処理内容や推定ルールの内容、さらには推定結果に関するノウハウ事項を機密にした状態において、保全作業の推定処理のサービスを提供することが可能となる。
【0092】
次に、
図9を用いて、保全管理装置1を含む他の保全管理システムを説明する。
図9は、実施形態の保全管理装置1を含む保全管理システム100の第2の例を示すブロック図である。
【0093】
図9に示す保全管理システム200の保全管理装置1dは、
図8で説明した保全管理システム100の保全管理装置1bの保全作業推定部1b2、推定ルール記憶部1b3のみを実行する場合を説明している。すなわち、設定履歴記憶部1b4及び作業履歴記憶部1b5の機能は、保全管理装置1cが有している。これにより、保全作業の推定結果を保全管理装置1cが記憶することになり、例えば、保全レポート作成部1c7において作成されるレポートに含まれる情報の自由度をより高めることが可能となる。なお、
図9における他の機能については、
図8と同様であるため説明を一部省略する。
図9は、
図1で説明した保全管理装置1の機能をプラントシステムにおいて分散させて配置した場合の他の実施形態である。すなわち、保全管理システム200は、保全管理装置1の一実施形態である。
【0094】
図9において、保全管理システム200は、保全管理装置1c、保全管理装置1d、フィールド機器2、保全機器3、運転制御装置4、製造実行システム5、基幹業務システム6を有する。
【0095】
保全管理装置1cは、機器情報取得部1c1、機器情報提供部1c2、機器リスト記憶部1c3、パラメータ指定記憶部1c4、設定履歴記憶部1c5、作業履歴記憶部1c6及び保全レポート作成部1c7の各機能を有する。保全管理装置1dは、保全作業推定部1d1、推定ルール記憶部1d2の各機能を有する。運転制御装置4は、機器通信部41、機器状態検出部42、機器情報アクセス部43の各機能を有する。
【0096】
保全管理装置1c及び保全管理装置1dは、
図1の保全管理装置1の機能の一部を実現する装置である。保全管理装置1cは、例えばプラントと同じ建屋内、同じ工場内等、プラントサイトに設定される。一方、保全管理装置1dは、例えば、クラウドサービスによって提供される仮想コンピュータ装置によって実現される。
【0097】
保全管理装置1dにおいて、保全作業推定部1d1及び推定ルール記憶部1d2の各機能は、保全管理装置1の、保全作業推定部12及び推定ルール記憶部15の各機能と同様であるため、説明を省略する。なお、保全管理装置1dにおいては、保全管理装置1bにおいて示した機器情報取得部1b1の機能を有していない。これは、機器情報提供部1c2からプッシュされる機器情報が保全作業推定部1d1に提供される場合を示しているためである。
【0098】
以上説明した様に、本実施形態の保全管理装置は、フィールド機器の状態の変化を含む機器情報を取得する機器情報取得部と、前記変化と前記フィールド機器に対して実施される保全作業とを対応付けた推定ルールを参照して、取得した前記機器情報に基づき、実施された前記保全作業を推定する保全作業推定部とを備えることにより、保全作業に伴う報告書作成コストの低減と報告書の質向上を図ることができる。
【0099】
なお、上述した保全管理装置1は、上述した機能を有する装置であればよく、例えば、複数の装置の組合せで構成されてそれぞれの装置を通信可能に接続したシステムで実現されるものであってもよい。また、保全管理装置1は、
図8で説明した、保全機器3、運転制御装置4、製造実行システム5等の機能の一部として実現されるものであってもよい。
【0100】
また、本実施形態の保全管理方法は、フィールド機器の状態の変化を含む機器情報を取得する機器情報取得ステップと、前記変化と前記フィールド機器に対して実施される保全作業とを対応付けた推定ルールを参照して、取得した前記機器情報に基づき、実施された前記保全作業を推定する保全作業推定ステップとを含むことにより、保全作業に伴う報告書作成コストの低減と報告書の質向上を図ることができる。
【0101】
なお、本実施形態の保全管理方法における各ステップの実行順序は上記ステップの記載順序に限定されるものではなく、任意の順序で実行されるものであってもよい。
【0102】
また、本実施形態で説明した装置を構成する機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0103】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0104】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。