特許第6787091号(P6787091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6787091液晶装置、電子機器、液晶装置の製造方法、液晶装置用のマザー基板、および液晶装置用のマザー基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787091
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】液晶装置、電子機器、液晶装置の製造方法、液晶装置用のマザー基板、および液晶装置用のマザー基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20201109BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20201109BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20201109BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   G02F1/1333
   G02F1/1339 505
   G02F1/1337 505
   G02F1/1337 515
   G02F1/1337 530
   G02F1/13 505
   G02F1/13 101
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-235639(P2016-235639)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-92014(P2018-92014A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】谷口 由雄
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−222261(JP,A)
【文献】 特開2016−017984(JP,A)
【文献】 特開2016−009046(JP,A)
【文献】 特開2011−013264(JP,A)
【文献】 特開昭60−207117(JP,A)
【文献】 特開2007−279201(JP,A)
【文献】 特開2013−235128(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0151994(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0104899(KR,A)
【文献】 国際公開第2005/101456(WO,A1)
【文献】 米国特許第7378157(US,B2)
【文献】 米国特許第4759614(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0126712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13−1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された第2基板と、
表示領域を囲むように設けられ、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる枠状のシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、
を有し、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面である第1面には、無機膜からなる第1配向膜、および第1有機シラン重合体層が順に積層され、
前記第1基板の前記第1面とは反対側の面である第2面には、前記第1有機シラン重合体層と同一の第2有機シラン重合体層、第1接着剤層、および第1透光板が順に積層され、
前記第2有機シラン重合体層のうち、前記表示領域の外側で前記第1接着剤層と接する部分の少なくとも一部が、前記第2有機シラン重合体層より親水性の高い第1改質層になっていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置において、
前記第1改質層は、前記第2有機シラン重合体層の疎水性有機官能基の少なくとも一部が切断された構造を有していることを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶装置において、
前記第2有機シラン重合体層は、前記表示領域の外側の全体が前記第1改質層になっていることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の液晶装置において、
前記第2有機シラン重合体層は、前記表示領域の外側で前記第1接着剤層と接する部分のうち、前記表示領域を間に介して離間する少なくとも2個所が前記第1改質層になっていることを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の液晶装置において、
前記第2基板の前記第1基板と対向する面である第3面には、無機膜からなる第2配向膜、および第3有機シラン重合体層が順に積層され、
前記第2基板の前記第3面とは反対側の面である第4面には、前記第3有機シラン重合体層と同一の第4有機シラン重合体層、第2接着剤層、および第2透光板が順に積層され、
前記第4有機シラン重合体層のうち、前記表示領域の外側で前記第2接着剤層と接する部分の少なくとも一部が、前記第4有機シラン重合体層より親水性の高い第2改質層になっていることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の液晶装置において、
前記第1有機シラン重合体層は、前記シール材と接する部分の少なくとも一部が前記第1有機シラン重合体層より親水性の高い第3改質層になっていることを特徴とする液晶装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の液晶装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器において、
前記液晶装置に供給される光を出射する光源部と、
前記液晶装置によって変調された光を投射する投射光学系と、
を有し、
前記液晶装置は、前記光源部から出射された光が、前記第1基板側から供給されることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置された第2基板と、
表示領域を囲むように設けられ、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる枠状のシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、
を有する液晶装置の製造方法であって、
前記第1基板の一方面からなる第1面に無機膜からなる第1配向膜を形成した後、前記第1基板をシランカップリング剤によって処理して前記第1面に第1有機シラン重合体層を形成する第1シランカップリング処理工程と、
前記第1シランカップリング処理工程によって前記第1基板の他方面である第2面に前記第1有機シラン重合体層と同時に形成された第2有機シラン重合体層のうち、前記表示領域の外側に形成された部分の少なくとも一部を前記第2有機シラン重合体層より親水性が高い第1改質層とする第1改質工程と、
前記第2面の前記第1改質層を含む領域に接する第1接着剤層によって第1透光板を接着する第1接着工程と、
を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶装置の製造方法において、
前記第1改質工程では、前記第2有機シラン重合体層の疎水性有機官能基の少なくとも一部を切断して前記第1改質層とすることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の液晶装置の製造方法において、
前記第1改質工程では、前記第1基板に対する紫外光の照射によって前記第1改質層を形成することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶装置の製造方法において、
前記第1改質工程では、前記表示領域と重なる部分が遮光領域とされたマスクを介して前記紫外光を前記第1基板に照射して前記第1改質層を形成することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の液晶装置の製造方法において、
前記第1改質工程では、前記第1面側から前記第1基板に前記紫外光を照射することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項14】
請求項9から13までの何れか一項に記載の液晶装置の製造方法において、
前記第1シランカップリング処理工程の後、前記第1改質工程の前に、前記第1基板をアルコールによる洗浄するアルコール洗浄工程と、前記アルコールを前記第1基板から除去する乾燥工程と、を行うことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項15】
請求項9から14までの何れか一項に記載の液晶装置の製造方法において、
前記第1基板を多数取りできる大型のマザー基板の状態で前記第1シランカップリング処理工程および前記第1改質工程を行うことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項16】
請求項9から15までの何れか一項に記載の液晶装置の製造方法において、
前記第2基板の一方面からなる第3面に無機膜からなる第2配向膜を形成した後、前記第2基板をシランカップリング剤によって処理して前記第3面に第3有機シラン重合体層を形成する第2シランカップリング処理工程と、
前記第2シランカップリング処理工程によって前記第2基板の他方面である第4面に前記第3有機シラン重合体層と同時に形成された第4有機シラン重合体層のうち、前記表示領域の外側に形成された部分の少なくとも一部を前記第4有機シラン重合体層より親水性が高い第2改質層とする第2改質工程と、
前記第4面の前記第2改質層を含む領域に接する第2接着剤層によって第2透光板を接着する第2接着工程と、
を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項17】
一方面側に無機膜からなる配向膜、および第1有機シラン重合体層が順に積層され、
他方面には、前記第1有機シラン重合体層と同一の第2有機シラン重合体層が形成され、
前記第2有機シラン重合体層の一部は、前記第2有機シラン重合体層より親水性の高い改質層になっていることを特徴とする液晶装置用のマザー基板。
【請求項18】
マザー基板の一方面に無機膜からなる配向膜を形成した後、前記マザー基板をシランカップリング剤によって処理して前記マザー基板の前記一方面に第1有機シラン重合体層を形成するシランカップリング処理工程と、
前記シランカップリング処理工程によって前記マザー基板の他方面に前記第1有機シラン重合体層と同時に形成された第2有機シラン重合体層の少なくとも一部を前記第2有機シラン重合体層より親水性が高い改質層とする改質工程と、
を有することを特徴とする液晶装置用のマザー基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向膜をシランカップリング剤によって安定化させた液晶装置、電子機器、液晶装置の製造方法、液晶装置用のマザー基板、および液晶装置用のマザー基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、第1基板と、第1基板に対向配置された第2基板と、表示領域を囲むように第1基板の側面に沿って設けられた枠状のシール材と、第1基板と第2基板との間に設けられた液晶層とを有している。かかる液晶装置において、例えば、第1基板の一方面にシリコン酸化膜等の無機膜からなる配向膜を形成した場合、配向膜の表面には、Si原子の未結合手(ダングリングボンド)や、Si原子同士が結合したダイマー構造(Si−Si結合)が存在し、かかるSi原子の未結合手は、液晶中や雰囲気中の水分等との反応によって、シラノール基(−Si−OH)により終端されやすい。しかしながら、シラノール基は、反応性が高く、例えば液晶装置を投射型表示装置等のライトバルブとして使用した場合、液晶装置には強い光が照射されるため、シラノール基と液晶との間で光化学反応が発生しやすい。このような光化学反応が繰り返されると、無機配向膜による液晶分子の配向規制力が低下し、液晶装置の表示性能が除々に低下する。
【0003】
一方、配向膜の表面をシランカップリング剤により処理し、水酸基(−OH)部分に有機シラン重合体層を反応させておく技術が提案されている(特許文献1参照)。かかる技術によれば、シラノール基と液晶との光化学反応を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−11226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第1基板の一方面に形成した配向膜をシランカップリング剤により処理する際、シランカップリング剤が第1基板の配向膜が形成されている一方面とは反対側の他方面に接触することを回避することができず、第1基板の両面に有機シラン重合体層が形成されてしまう。ここで、有機シラン重合体層は、ドデシル基等の撥水性有機官能基を有しているため、水との接触角が例えば90°程度の撥水性を有している。従って、接着剤層によって第1基板の他方面側に透光板(防塵ガラス)を接着した際、有機シラン重合体層と接着剤層との界面で剥離が発生する等の問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、基板の一方面側に形成した配向膜をシランカップリング剤によって安定化させた場合でも、基板の他方面側に接着した透光板の剥離を抑制することができる液晶装置、電子機器、液晶装置の製造方法、液晶装置用のマザー基板、および液晶装置用のマザー基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液晶装置の一態様は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された第2基板と、表示領域を囲むように設けられ、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる枠状のシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、を有し、前記第1基板の前記第2基板と対向する面である第1面には、無機膜からなる第1配向膜、および第1有機シラン重合体層が順に積層され、前記第1基板の前記第1面とは反対側の面である第2面には、前記第1有機シラン重合体層と同一の第2有機シラン重合体層、第1接着剤層、および第1透光板が順に積層され、前記第2有機シラン重合体層のうち、前記表示領域の外側で前記第1接着剤層と接する部分の少なくとも一部が、前記第2有機シラン重合体層より親水性の高い第1改質層になっていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、第1基板の第1面に形成した第1配向膜がシリコン酸化膜等の無機膜であるため、配向膜の表面では、かかるSi原子等の金属原子と液晶中や雰囲気中の水分等との反応に起因するシラノール基(−Si−OH)等の反応基が存在するが、シラノール基等の反応基は、シランカップリング剤の縮合生成物からなる第1有機シラン重合体層と結合している。このため、シラノール基等の反応基と液晶との光化学反応を抑制することができる。この場合、第1基板の第1面とは反対側の第2面にも有機シラン重合体層(第2有機シラン重合体層)が形成されてしまうが、第2有機シラン重合体層のうち、表示領域の外側で前記第1接着剤層と接する部分の少なくとも一部が、第2有機シラン重合体層より親水性の高い第1改質層になっている。従って、第2有機シラン重合体層と第1接着剤層との界面での剥離が発生しにくいので、第1透光板の剥離を抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記第1改質層は、前記第2有機シラン重合体層の疎水性有機官能基の少なくとも一部が切断された構造を有している態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記第2有機シラン重合体層は、前記表示領域の外側の全体が前記第1改質層になっている態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記第2有機シラン重合体層は、前記表示領域の外側で前記第1接着剤層と接する部分のうち、前記表示領域を間に介して離間する少なくとも2個所が前記第1改質層になっている態様を採用してもよい。
【0012】
本発明において、前記第2基板の前記第1基板と対向する面である第3面には、無機膜からなる第2配向膜、および第3有機シラン重合体層が順に積層され、前記第2基板の前記第3面とは反対側の面である第4面には、前記第3有機シラン重合体層と同一の第4有機シラン重合体層、第2接着剤層、および第2透光板が順に積層され、前記第4有機シラン重合体層のうち、前記表示領域の外側で前記第2接着剤層と接する部分の少なくとも一部が、前記第4有機シラン重合体層より親水性の高い第2改質層になっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第4有機シラン重合体層と第2接着剤層との界面での剥離が発生しにくいので、第2透光板の剥離を抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記第1有機シラン重合体層は、前記シール材と接する部分の少なくとも一部が前記第1有機シラン重合体層より親水性の高い第3改質層になっている態様を採用してもよい。かかる態様によれば、シール材と第1基板との密着性を高めることができるので、水分等の侵入を抑制することができる。
【0014】
本発明を適用した液晶装置は、各種電子機器に用いることができる。電子機器が投射型表示装置である場合、前記液晶装置に供給される光を出射する光源部と、前記液晶装置によって変調された光を投射する投射光学系と、を有し、前記液晶装置は、前記光源部から出射された光が、前記第1基板側から供給される態様を採用することができる。
【0015】
本発明の別態様は、第1基板と、前記第1基板に対向配置された第2基板と、表示領域を囲むように設けられ、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる枠状のシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、を有する液晶装置の製造方法であって、前記第1基板の一方面からなる第1面に無機膜からなる第1配向膜を形成した後、前記第1基板をシランカップリング剤によって処理して前記第1面に第1有機シラン重合体層を形成する第1シランカップリング処理工程と、前記第1シランカップリング処理工程によって前記第1基板の他方面である第2面に前記第1有機シラン重合体層と同時に形成された第2有機シラン重合体層のうち、前記表示領域の外側に形成された部分の少なくとも一部を前記第2有機シラン重合体層より親水性が高い第1改質層とする第1改質工程と、前記第2面の前記第1改質層を含む領域に接する第1接着剤層によって第1透光板を接着する第1接着工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、第1基板の第1面に形成した第1配向膜がシリコン酸化膜等の無機膜であるため、配向膜の表面では、かかるSi原子等の金属原子と液晶中や雰囲気中の水分等との反応に起因するシラノール基(−Si−OH)等の反応基が存在するが、シラノール基等の反応基は、シランカップリング剤の縮合生成物からなる第1有機シラン重合体層と結合している。このため、シラノール基等の反応基と液晶との光化学反応を抑制することができる。この場合、第1基板の第1面とは反対側の第2面にも有機シラン重合体層(第2有機シラン重合体層)が形成されてしまうが、第2有機シラン重合体層のうち、表示領域の外側で前記第1接着剤層と接する部分の少なくとも一部が、第2有機シラン重合体層より親水性の高い第1改質層になっている。従って、第2有機シラン重合体層と第1接着剤層との界面での剥離が発生しにくいので、第1透光板の剥離を抑制することができる。
【0017】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、前記第1改質工程では、前記第2有機シラン重合体層の疎水性有機官能基の少なくとも一部を切断して前記第1改質層とする態様を採用することができる。
【0018】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、前記第1改質工程では、前記第1基板に対する紫外光の照射によって前記第1改質層を形成する態様を採用することができる。かかる態様によれば、ドライプロセスによって第1改質層を形成することができる。
【0019】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、前記第1改質工程では、前記表示領域と重なる部分が遮光領域とされたマスクを介して前記紫外光を前記第1基板に照射して前記第1改質層を形成する態様を採用することができる。かかる態様によれば、紫外光の照射範囲を制限することができるので、表示領域に形成した第1有機シラン重合体層の損傷を防止することができる。
【0020】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、前記第1改質工程では、前記第1面側から前記第1基板に前記紫外光を照射する態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1基板をステージ上に配置した際、第1基板の第1面がステージと接することがないので、第1基板の第1面側に形成した第1有機シラン重合体層や第1配向膜に傷がつくことを抑制することができる。
【0021】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、前記第1シランカップリング処理工程の後、前記第1改質工程の前に、前記第1基板をアルコールによる洗浄するアルコール洗浄工程と、前記アルコールを前記第1基板から除去する乾燥工程と、を行う態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1改質工程で親水性を高める前にアルコール洗浄を行うので、アルコールを乾燥させやすい。
【0022】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、前記第1基板を多数取りできる大型のマザー基板の状態で前記第1シランカップリング処理工程および前記第1改質工程を行う態様を採用することができる。
【0023】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、前記第2基板の一方面からなる第3面に無機膜からなる第2配向膜を形成した後、前記第2基板をシランカップリング剤によって処理して前記第3面に第3有機シラン重合体層を形成する第2シランカップリング処理工程と、前記第2シランカップリング処理工程によって前記第2基板の他方面である第4面に前記第3有機シラン重合体層と同時に形成された第4有機シラン重合体層のうち、前記表示領域の外側に形成された部分の少なくとも一部を前記第4有機シラン重合体層より親水性が高い第2改質層とする第2改質工程と、前記第4面の前記第2改質層を含む領域に接する第2接着剤層によって第2透光板を接着する第2接着工程と、を有する態様を採用することができる。かかる態様によれば、第4有機シラン重合体層と第2接着剤層との界面での剥離が発生しにくいので、第2透光板の剥離を抑制することができる。
【0024】
本発明に係る液晶装置用のマザー基板は、一方面側に無機膜からなる配向膜、および第1有機シラン重合体層が順に積層され、他方面には、前記第1有機シラン重合体層と同一の第2有機シラン重合体層が形成され、前記第2有機シラン重合体層の一部は、前記第2有機シラン重合体層より親水性の高い改質層になっていることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る液晶装置用のマザー基板の製造方法は、マザー基板の一方面に無機膜からなる配向膜を形成した後、前記マザー基板をシランカップリング剤によって処理して前記マザー基板の前記一方面に第1有機シラン重合体層を形成するシランカップリング処理工程と、前記シランカップリング処理工程によって前記マザー基板の他方面に前記第1有機シラン重合体層と同時に形成された第2有機シラン重合体層の少なくとも一部を前記第2有機シラン重合体層より親水性が高い改質層とする改質工程と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態1に係る液晶装置を対向基板の側から見た平面図である。
図2図1に示す液晶装置のH−H′断面図である。
図3図1に示す液晶装置の一部を拡大して示す説明図である。
図4図3に示す有機シラン重合体層の説明図である。
図5図2等に示す素子基板および対向基板に形成された改質層の説明図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る液晶装置の製造に用いたマザー基板の説明図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る液晶装置の製造工程を示す説明図である。
図8図7に示す改質工程の説明図である。
図9図8に示すマスクの説明図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る液晶装置の改質層の説明図である。
図11】本発明の実施の形態3に係る液晶装置の改質層の説明図である。
図12】本発明の実施の形態4に係る液晶装置の改質層の説明図である。
図13】本発明の実施の形態1に係る液晶装置の別の製造工程を示す説明図である。
図14】本発明の実施の形態6に係る液晶装置の構成を示す説明図である。
図15】本発明を適用した液晶装置を用いた投射型表示装置(電子機器)の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0028】
本発明では、素子基板10および対向基板20の一方が本発明における「第1基板」に相当し、素子基板10および対向基板20の他方が本発明における「第2基板」に相当する。素子基板10の構成を説明する際の「上層側」や「表面側」とは液晶層50の側を意味し、下層側とは液晶層50とは反対側を意味する。これに対して、対向基板20の構成を説明する際の「上層側」や「表面側」とは液晶層50の側を意味し、下層側とは液晶層50とは反対側を意味する。
【0029】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置を対向基板の側から見た平面図である。図2は、図1に示す液晶装置のH−H′断面図である。本形態では、素子基板10が本発明における「第1基板」に相当し、対向基板20が本発明における「第2基板」に相当する。従って、本形態の各構成要素は、本発明の各構成要素と以下の関係になっている。
素子基板10=本発明における「第1基板」
素子基板10の一方面10s=本発明における「第1面」
素子基板10の他方面10t=本発明における「第2面」
配向膜16=本発明における「第1配向膜」
有機シラン重合体層17a=本発明における「第1有機シラン重合体層」
有機シラン重合体層17b=本発明における「第2有機シラン重合体層」
改質層17c=本発明における「第3改質層」
改質層17d=本発明における「第1改質層」
透光板30=本発明における「第1透光板」
接着剤層31=本発明における「第1接着剤層」
対向基板20=本発明における「第2基板」
対向基板20の一方面20s=本発明における「第3面」
対向基板20の他方面20t=本発明における「第4面」
配向膜26=本発明における「第2配向膜」
有機シラン重合体層27a=本発明における「第3有機シラン重合体層」
有機シラン重合体層27b=本発明における「第4有機シラン重合体層」
改質層27c=本発明における「第4改質層」
改質層27d=本発明における「第2改質層」
透光板40=本発明における「第2透光板」
接着剤層41=本発明における「第2接着剤層」
【0030】
また、シランカップリング処理工程ST12、ST13が各々、本発明における「第1シランカップリング処理工程」および「第2シランカップリング処理工程」に相当し、改質工程ST13、ST14が各々、本発明における「第1改質工程」および「第2改質工程」に相当する。また、接着工程ST36において、素子基板10に対して接着剤層31によって透光板30を接着する工程が本発明における「第1接着工程)」に相当し、対向基板20に対して接着剤層41によって透光板40を接着する工程が本発明における「第2接着工程」に相当する。
【0031】
図1および図2に示すように、液晶装置100は液晶パネル100pを有している。液晶パネル100pでは、素子基板10(第1基板)と対向基板20(第2基板)とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は対向基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバーあるいはガラスビーズ等のギャップ材107aが配合されている。液晶パネル100pにおいて、素子基板10と対向基板20との間のうち、シール材107によって囲まれた領域内には液晶層50が設けられている。本形態では、液晶層50を設けるにあたって、液晶滴下注入法(ODF(One Drop Fill)法)が用いられている。かかる方法では、例えば、素子基板10の側にシール材107を枠状に設けた後、シール材107の内側に液状の電気光学材料を滴下し、その後、素子基板10と対向基板20と貼り合わせる。このため、シール材107は全周で繋がっている。なお、シール材107の一部が途切れた状態で素子基板10と対向基板20とを貼り合わせ、その後、シール材107の途切れ部分から液状の電気光学材料を真空注入してもよい。この場合、シール材107の途切れ部分を封止材によって塞ぐことになる。
【0032】
液晶パネル100pにおいて、素子基板10および対向基板20はいずれも四角形であり、素子基板10は、Y方向で対向する2つの辺10e、10fと、X方向で対向する2つの辺10g、10hとを備えている。液晶パネル100pの略中央には、表示領域10aが四角形の領域として設けられており、かかる形状に対応して、シール材107は、表示領域10aの周りを囲むように略四角形の枠状に設けられている。表示領域10aの外側は、四角枠状の外周領域10cになっている。
【0033】
素子基板10は、対向基板20より大きい。このため、素子基板10は、辺10eが位置する側が対向基板20から張り出した張出部105になっている。素子基板10においては、辺10eに沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、辺10eに隣接する他の辺10g、10hの各々に沿って走査線駆動回路104が形成されている。端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が異方性導電膜等によって接続されており、素子基板10には、フレキシブル配線基板を介して外部制御回路から各種電位や各種信号が入力される。
【0034】
素子基板10の一方面10s(本発明における「第1面」)、および一方面10sとは反対側の他方面10t(本発明における「第2面」)のうち、対向基板20と対向する一方面10sの側において、表示領域10aには、画素電極9aや画素トランジスター(図示せず)がマトリクス状に配列されている。従って、表示領域10aは、画素電極9aがマトリクス状に配列された画素電極配列領域として構成されている。素子基板10において、画素電極9aの表面には配向膜16(第1配向膜)が形成されている。素子基板10の一方面10sの側において、表示領域10aより外側の外周領域10cのうち、表示領域10aとシール材107とに挟まれた四角枠状の周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが形成されている。
【0035】
対向基板20の一方面20s(本発明における「第3面」)、および一方面20sとは反対側の他方面20t(本発明における「第4面」)のうち、素子基板10と対向する一方面20sの側には共通電極21が形成されている。共通電極21は、対向基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素に跨って形成されている。本形態において、共通電極21は、対向基板20の略全面に形成されている。
【0036】
対向基板20の一方面20sの側には、共通電極21の下層側に遮光層29aが形成され、共通電極21の表面には配向膜26(第2配向膜)が形成されている。遮光層29aは、表示領域10aの外周縁に沿って延在する額縁部分として形成されており、遮光層29aの内周縁によって表示領域10aが規定されている。なお、遮光層29aは、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域に重なるブラックマトリクス部としても形成されることもある。遮光層29aの外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にある。従って、遮光層29aとシール材107とは重なっていない。
【0037】
液晶パネル100pにおいて、シール材107より外側には、対向基板20の一方面20sの側の4つの角部分に基板間導通用電極25が形成されており、素子基板10の一方面10sの側には、対向基板20の4つの角部分(基板間導通用電極25)と対向する位置に基板間導通用電極19が形成されている。本形態において、基板間導通用電極25は、共通電極21の一部からなる。基板間導通用電極19には、共通電位Vcomが印加されている。基板間導通用電極19と基板間導通用電極25との間には、導電粒子を含んだ基板間導通材19aが配置されており、対向基板20の共通電極21は、基板間導通用電極19、基板間導通材19aおよび基板間導通用電極25を介して、素子基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、素子基板10の側から共通電位Vcomが印加されている。シール材107は、略同一の幅寸法をもって対向基板20の外周縁に沿って設けられているが、対向基板20の角部分と重なる領域では基板間導通用電極19、25を避けて内側を通るように設けられている。
【0038】
本形態において、液晶装置100は透過型の液晶装置であり、画素電極9aおよび共通電極21は、ITO(Indium Tin Oxide)膜やIZO(Indium Zinc Oxide)膜等の透光性導電膜により形成されている。かかる透過型の液晶装置(液晶装置100)では、例えば、図2に矢印L1で示すように、対向基板20の側から入射した光が素子基板10の側から出射される間に変調されて画像を表示する。
【0039】
液晶装置100は、例えば、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各液晶装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルターは形成されない。
【0040】
(素子基板10および対向基板20の詳細構成)
図3は、図1に示す液晶装置100の一部を拡大して示す説明図である。図4は、図3に示す有機シラン重合体層の説明図である。
【0041】
図2および図3に示すように、素子基板10の一方面10sには、配向膜16、および有機シラン重合体層17a(第1有機シラン重合体層)が順に積層されている。また、素子基板10の他方面10tには、有機シラン重合体層17aを形成する際に同時形成された有機シラン重合体層17b(第2有機シラン重合体層)、接着剤層31(第1接着剤層)、および透光板30(第1透光板)が順に積層されている。透光板30は、ガラスや石英等からなり、素子基板10の他方面10tに塵等が付着することを防止する。すなわち、液晶装置100に塵が付着する場合でも、塵は、透光板30の外面(素子基板10とは反対側)に付着するので、塵は液晶層50から離間していることになる。従って、後述する投射型表示装置において、光源光を液晶層50に合焦させても塵が画像に投射されにくい。
【0042】
また、対向基板20の一方面20sには、配向膜26、および有機シラン重合体層27a(第3有機シラン重合体層)が順に積層されている。対向基板20の他方面20tには、有機シラン重合体層27aを形成する際に同時形成された有機シラン重合体層27b(第4有機シラン重合体層)、接着剤層41(第2接着剤層)、および透光板40(第2透光板)が順に積層されている。透光板40は、ガラスや石英等からなり、対向基板20の他方面20tに塵等が付着することを防止する。すなわち、液晶装置100に塵が付着する場合でも、塵は、透光板40の外面(素子基板10とは反対側)に付着するので、塵は液晶層50から離間していることになる。従って、後述する投射型表示装置において、光源光を液晶層50に合焦させても塵が画像に投射されにくい。
【0043】
配向膜16、26は、例えば、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の無機膜の斜方蒸着膜(柱状構造体)からなり、カラム(柱状物)が斜めに傾いた構造になっている。従って、配向膜16、26は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を傾斜垂直配向させ、液晶パネル100pは、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。本形態において、配向膜16、26は、シリコン酸化膜(SiOX)からなる。
【0044】
このように構成した配向膜16、26の表面では、図4の上段に示すように、Si原子の未結合手(ダングリングボンド)や、Si原子同士が結合したダイマー構造(Si−Si結合)が存在し、かかるSi原子の未結合手は、液晶中や雰囲気中の水分等との反応によって、シラノール基(−Si−OH)により終端されやすい。ここで、シラノール基は、反応性が高く、例えば液晶装置を投射型表示装置等のライトバルブとして使用した場合、液晶装置100には強い光が照射されるため、シラノール基と液晶との間で光化学反応が発生し易い。そこで、本形態では、図4の中段に示すように、配向膜16の表面を有機シロキサン(デシルトリメトキシシラン)等のシランカップリング剤により水酸基(−OH)部分に有機シラン重合体層17aを結合させてある。また、配向膜26の表面も、配向膜16と同様、有機シロキサン(デシルトリメトキシシラン)等のシランカップリング剤により水酸基(−OH)部分に有機シラン重合体層27aを結合させてある。
【0045】
シランカップリング剤は、加水分解によってシラノール(Si−OH)を生成した後、シラノール同士が徐々に縮合してシロキサン結合(Si−O−Si)を生成し、有機シラン重合体層17a、27aを形成する。また、シランカップリング剤は、無機酸化物表面とも類似のメカニズムで反応し、無機酸化物表面と強固な共有結合を生成する。かかるシランカップリング剤としては、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等を例示することができる。本形態では、シランカップリング剤として、n−デシルトリメトキシシランが用いられており、n−デシルトリメトキシシランは疎水性官能基としてn−デシル基を有している。
【0046】
(改質層の構成)
図5は、図2等に示す素子基板10および対向基板20に形成された改質層の説明図である。図5では、液晶パネル100pを素子基板10の側からみた様子を上段に示し、対向基板20の側からみた様子を下段に示してある。
【0047】
図5に示すように、素子基板10の他方面10tにおいて、有機シラン重合体層17bは、右上がりの斜線を付した領域で示すように、他方面10tの全面に形成されている。透光板30および接着剤層31は、素子基板10の側面から離間した範囲に形成されているが、表示領域10aを含む広い範囲にわたって設けられている。本形態では、有機シラン重合体層17bのうち、表示領域10aの外側で接着剤層31と接する部分の少なくとも一部が、有機シラン重合体層17bより親水性の高い改質層17dになっている。本形態では、図5に右上がりの斜線に加えて、右下がりの斜線を付した領域で示すように、有機シラン重合体層17bのうち、表示領域10aの外側の全体が改質層17dになっている。
【0048】
かかる改質層17dは、図4の下段に示すように、有機シラン重合体層17bの疎水性有機官能基Rの少なくとも一部が切断されて官能基R0になった構造を有しており、有機シラン重合体層17bより親水性が高い。本形態では、有機シラン重合体層17bに対して紫外光hν等のエネルギー光を照射して、有機シラン重合体層17bにおけるシリコン原子と疎水性有機官能基Rとの結合や、疎水性有機官能基Rに含まれる炭素−炭素結合を切断して改質層17dを形成する。従って、改質層17dは、有機シラン重合体層17bより親水性が高いので、透光板30は、接着剤層31によって素子基板10の他方面10t側に強固に接着される。
【0049】
本形態においては、図2に示すように、素子基板10の一方面10sにおいて、有機シラン重合体層17aは、一方面10s全体に形成されているが、有機シラン重合体層17aは、表示領域10aの外側全体が、有機シラン重合体層17aより親水性の高い改質層17cになっている。従って、有機シラン重合体層17aは、端子102やその近傍と重なる部分や、シール材107と重なる部分やその近傍も改質層17cになっている。それ故、端子102にフレキシブル配線基板を異方性導電樹脂や異方性導電膜で接続した場合、フレキシブル配線基板を素子基板10に強固に固定することができる。また、シール材107と素子基板10との密着性が高いので、シール材107と素子基板10との間からの水分等の侵入を抑制することができる。
【0050】
図5に示すように、対向基板20の他方面20tにおいて、有機シラン重合体層27bは、右上がりの斜線を付した領域で示すように、他方面20tの全面に形成されている。透光板40および接着剤層41は、対向基板20の側面から離間した範囲に形成されているが、表示領域10aを含む広い範囲にわたって形成されている。本形態では、有機シラン重合体層27bのうち、表示領域10aの外側で接着剤層41と接する部分の少なくとも一部が、有機シラン重合体層27bより親水性の高い改質層27dになっている。本形態では、図5に右上がりの斜線に加えて、右下がりの斜線を付した領域で示すように、有機シラン重合体層27bのうち、表示領域10aの外側の全体が改質層27dになっている。かかる改質層27dも、改質層17dと同様、有機シラン重合体層27bの疎水性有機官能基Rの少なくとも一部が切断されて官能基R0になった構造を有しており、有機シラン重合体層17bより親水性が高い。透光板40は、接着剤層41によって対向基板20の他方面20t側に強固に接着される。
【0051】
図2に示すように、有機シラン重合体層27aは、対向基板20の一方面20s全体に形成されているが、有機シラン重合体層27aは、表示領域10aの外側全体が、有機シラン重合体層27aより親水性の高い改質層27cになっている。従って、図1に示すシール材107と重なる部分やその近傍も改質層27dになっている。それ故、シール材107と対向基板20との密着性が高いので、シール材107と対向基板20との間からの水分等の侵入を抑制することができる。
【0052】
(液晶装置100の製造方法)
図6は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100の製造に用いたマザー基板の説明図である。図7は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100の製造工程を示す説明図である。図8は、図7に示す改質工程ST13、ST23等の説明図である。なお、図6では、2枚のマザー基板の端部をずらして表してある。
【0053】
本形態の液晶装置100を製造するにあたって、例えば、図6に示すように、素子基板10および対向基板20を各々、大型のマザー基板M10、M20の状態で貼り合わせ、その後、対向基板用のマザー基板M20については分割予定線LX1、LX2、LY4に沿って切断し、素子基板用のマザー基板M10については分割予定線LX3、LY5に沿って切断する。また、素子基板10のみを大型のマザー基板M10の状態で構成する一方、対向基板20についてはマザー基板M20を単品サイズに切断した後、素子基板用のマザー基板M10と貼り合わせてもよい。この場合、素子基板用のマザー基板M10を分割予定線に沿って切断して、単品サイズの液晶パネル100pを得る。本発明は上記製造方法のいずれを適用してもよいが、以下の説明では、図6に示す方法を採用した場合を説明する。
【0054】
具体的には、まず、図7に示すように、素子基板用のマザー基板M10に対して、画素電極9a等の形成工程ST10において画素電極9a等を形成する。次に、配向膜形成工程ST11において、マザー基板M10の一方面M10s(素子基板10の一方面10s)に対して斜方蒸着を行い、シリコン酸化膜(無機膜)からなる配向膜16を形成する(図8参照)。
【0055】
次に、シランカップリング処理工程ST12では、マザー基板M10をシランカップリング剤を含む溶液や、シランカップリング剤のガスと接触させた後、シランカップリング剤に加水分解反応および縮合反応を行わせて、マザー基板M10の一方面M10sに有機シラン重合体層17aを形成する(図8参照)。その際、マザー基板M10の他方面M10t(素子基板10の他方面10t)もシランカップリング剤と接触するので、マザー基板M10の他方面M10tにも有機シラン重合体層17bが形成される。
【0056】
次に、改質工程ST13では、マザー基板M10の他方面に形成された有機シラン重合体層17bを部分的に改質し、改質層17dを形成する(図8参照)。次に、アルコール洗浄工程ST14では、マザー基板M10をイソプロピルアルコール等で洗浄し、素子基板10に定着してないシランカップリング剤を除去する。その後、乾燥工程ST15を行う。
【0057】
また、対向基板用のマザー基板M20に対して、共通電極21等の形成工程ST20において共通電極21等を形成する。次に、配向膜形成工程ST21において、マザー基板M20の一方面M20s(対向基板20の一方面20s)に対して斜方蒸着を行い、シリコン酸化膜(無機膜)からなる配向膜26を形成する。
【0058】
次に、シランカップリング処理工程ST22では、マザー基板M20をシランカップリング剤を含む溶液や、シランカップリング剤のガスと接触させた後、シランカップリング剤に加水分解反応および縮合反応を行わせて、マザー基板M20の一方面20sに有機シラン重合体層27aを形成する(図8参照)。その際、マザー基板M20の他方面M20t(対向基板20の他方面20t)もシランカップリング剤と接触するので、マザー基板M20の他方面M20tにも有機シラン重合体層27bが形成される。
【0059】
次に、改質工程ST23では、マザー基板M10の他方面M20tに形成された有機シラン重合体層27bを部分的に改質し、改質層27dを形成する。次に、アルコール洗浄工程ST24では、マザー基板M20をイソプロピルアルコール等で洗浄し、マザー基板M20に定着してないシランカップリング剤を除去する。その後、乾燥工程ST25を行う。
【0060】
次に、シール印刷工程ST31においてマザー基板M10の一方面M10sに対して未硬化のシール材107を枠状に形成した後、液晶滴下工程ST32においてシール材107の内側に液晶を滴下する。次に、重ね合せ工程ST33においてマザー基板M10に対してマザー基板M20を重ねた後、シール硬化工程ST34においてシール材107を硬化させ、マザー基板M10とマザー基板M20とをシール材107で貼り合せる。次に、切断工程ST35において、マザー基板M10およびマザー基板M20を、図6に示す分割予定線LX1、LX2、LX3、LY4、LY5に沿って切断し、液晶パネル100pを得る。
【0061】
次に、接着工程ST36において、素子基板10の他方面10tに対して接着剤層31によって透光板30を接着し(第1接着工程)、対向基板20の他方面20tに対して接着剤層41によって透光板40を接着する(第2接着工程)。その結果、液晶装置100を得ることができる。
【0062】
(改質工程ST13、ST23の詳細説明)
図9は、図8に示すマスク400の説明図である。本形態の液晶装置100の製造方法においては、図8に示すように、素子基板用のマザー基板M10の一方面M10sに配向膜16および有機シラン重合体層27aを形成した後、改質工程ST13では、マザー基板M10をステージ500上にセットする。ここで、ステージ500は、マザー基板M10の外周端部を支持する。
【0063】
次に、マザー基板M10に対して紫外光hνを照射する。その際、マザー基板M10に対して紫外光hνが照射される側にマスク400を配置する。従って、紫外光hνは、マスク400の透光領域410を介してマザー基板M10に照射され、紫外光hνの照射領域に形成されている有機シラン重合体層27bを改質層27dとする。本形態において、紫外光hνは、エキシマUV光(波長=1722nm)である。
【0064】
本形態においては、図9に示すように、マスク400には、マザー基板M10において表示領域10aに相当する複数の領域と重なる遮光領域410が設けられ、それ以外の領域は透光領域420になっている。従って、マザー基板M10には、表示領域10aの外側の全域に紫外光hνが照射される。
【0065】
また、本形態においては、図8に示すように、一方面M10sを上向きにしてマザー基板M10をステージ500上にセットする。従って、マザー基板M10の一方面M10sがステージ500と接触しないので、マザー基板M10の一方面M10sに形成した有機シラン重合体層17aや配向膜16に傷がつくことを抑制することができる。
【0066】
また、マザー基板M10に対して一方面M10sの側にマスク400を配置し、一方面M10sの側から紫外光hνを照射する。この場合でも、マザー基板M10(素子基板10)は透光性であるため、紫外光hνは、マザー基板M10(素子基板10)の他方面M10tに到達する。また、マザー基板M10の一方面M10sには配線等が形成されているが、紫外光hνは、散乱によってマザー基板M10(素子基板10)の他方面M10tに到達する。従って、マザー基板M10の他方面M10tに形成されている有機シラン重合体層27bに対して、表示領域10aの外側全体を改質層27dとすることができる。
【0067】
また、マザー基板M10の一方面M10sに形成されている有機シラン重合体層27aについても、表示領域10aの外側全体を改質層27cとすることができる。従って、マザー基板M10の一方面M10sにおいて、図1に示すシール材107や端子102と重なる領域、およびシール材107や端子102の周囲に形成されていた有機シラン重合体層27aを改質層27cとすることができる。
【0068】
なお、図8にかっこ内に符号を記載したように、対向基板用のマザー基板M20に対する改質工程ST23も同様に実施されるため、その説明を省略する。
【0069】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、素子基板10の一方面10s(第1面)および対向基板20の一方面20s(第3面)に配向膜16(第1配向膜)および配向膜(第2配向膜)が各々、シリコン酸化膜であるが、かかる配向膜16、26のシラノール基は、シランカップリング剤の縮合生成物からなる有機シラン重合体層17a(第1有機シラン重合体層)および有機シラン重合体層27a(第3有機シラン重合体層)と結合している。このため、シラノール基等の反応基と液晶との光化学反応を抑制することができる。
【0070】
また、素子基板10の他方面10t(第2面)および対向基板20の他方面20t(第4面)にも有機シラン重合体層17b(第2有機シラン重合体層)および有機シラン重合体層27b(第4有機シラン重合体層)が形成されてしまうが、有機シラン重合体層17b、27bのうち、表示領域10aの外側で接着剤層31(第1接着剤層)および接着剤層41(第2接着剤層)と接する部分の少なくとも一部が、有機シラン重合体層17b、27bより親水性の高い改質層17d(第1改質層)および改質層27d(第2改質層)になっている。従って、有機シラン重合体層17b、27bと接着剤層31、41との界面での剥離が発生しにくいので、透光板30(第1透光板)および透光板40(第2透光板)の剥離を抑制することができる。
【0071】
[実施の形態2]
図10は、本発明の実施の形態2に係る液晶装置100の改質層の説明図である。図10では、液晶パネル100pを素子基板10の側からみた様子を上段に示し、対向基板20の側からみた様子を下段に示してある。なお、本形態および後述する実施の形態3、4は、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0072】
実施の形態1において、有機シラン重合体層17bは、表示領域10aの外側で接着剤層31と接する枠状部分の全体が改質層17dになっており、有機シラン重合体層27bは、表示領域10aの外側で接着剤層41と接する枠状部分の全体が改質層27dになっている。これに対して、本形態では、図10に示すように、有機シラン重合体層17bは、表示領域10aの外側で接着剤層31と接する枠状部分の一部が改質層17dになっており、有機シラン重合体層27bは、表示領域10aの外側で接着剤層41と接する枠状部分の一部が改質層27dになっている。
【0073】
本形態において、有機シラン重合体層17bは、表示領域10aの外側で接着剤層31と接する枠状部分において表示領域10aを間に介して離間する少なくとも2個所が改質層17dになっており、有機シラン重合体層27bは、表示領域10aの外側で接着剤層41と接する枠状部分において表示領域10aを間に介して離間する少なくとも2個所が改質層27dになっている。
【0074】
より具体的には、有機シラン重合体層17bは、表示領域10aの外側で接着剤層31と接する枠状部分のうち、表示領域10aの対向する2つの辺10a1、10a2に沿って延在する部分が改質層17dになっている。また、有機シラン重合体層27bは、表示領域10aの外側で接着剤層41と接する枠状部分のうち、表示領域10aの対向する2つの辺10a1、10a2に沿って延在する部分が改質層27dになっている。
【0075】
かかる形態でも、実施の形態1と同様、透光板30、40が素子基板10および対向基板20から剥離することを抑制することができる。
【0076】
[実施の形態3]
図11は、本発明の実施の形態3に係る液晶装置100の改質層の説明図である。図11では、液晶パネル100pを素子基板10の側からみた様子を上段に示し、対向基板20の側からみた様子を下段に示してある。図11に示すように、本形態において、有機シラン重合体層17bは、表示領域10aの外側で接着剤層31と接する枠状部分のうち、表示領域10aの対向する2つの辺10a1、10a2の延在方向の途中部分(略中間部分)が改質層17dになっている。また、有機シラン重合体層27bは、表示領域10aの外側で接着剤層41と接する枠状部分のうち、表示領域10aの対向する2つの辺10a1、10a2に沿って延在する部分が改質層27dになっている。かかる形態でも、実施の形態1と同様、透光板30、40が素子基板10および対向基板20から剥離することを抑制することができる。
【0077】
[実施の形態4]
図12は、本発明の実施の形態4に係る液晶装置100の改質層の説明図である。図12では、液晶パネル100pを素子基板10の側からみた様子を上段に示し、対向基板20の側からみた様子を下段に示してある。図12に示すように、本形態において、有機シラン重合体層17bは、表示領域10aの外側で接着剤層31と接する枠状部分のうち、表示領域10aの対角に位置する2つの角10a6、10a7が改質層17dになっている。また、有機シラン重合体層27bは、表示領域10aの外側で接着剤層41と接する枠状部分のうち、表示領域10aの対角に位置する2つの角10a6、10a7が改質層27dになっている。かかる形態でも、実施の形態1と同様、透光板30、40が素子基板10および対向基板20から剥離することを抑制することができる。
【0078】
[実施の形態5]
図13は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100の別の製造工程を示す説明図である。なお、本形態は、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0079】
図7に示す製造方法では、改質工程ST13、ST23の後にアルコール洗浄工程ST14、ST24および乾燥工程ST15、ST25を行った。これに対して、本形態では、図13に示すように、シランカップリング処理工程ST12、ST22の後、改質工程ST13、ST23の前に、アルコール洗浄工程ST14、ST24および乾燥工程ST15、ST25を行う。このような形態によれば、改質工程ST13、ST23で親水性を高める前にアルコール洗浄を行うので、アルコールを乾燥させやすい。
【0080】
[実施の形態6]
図14は、本発明の実施の形態6に係る液晶装置100の構成を示す説明図である。なお、本形態は、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0081】
実施の形態1では、素子基板10および対向基板20の双方に無機膜からなる配向膜および有機シラン重合体層を設けたが、素子基板10および対向基板20の一方のみに、無機膜からなる配向膜および有機シラン重合体層を設けてもよい。
【0082】
例えば、図14に示す液晶装置100は反射型であり、画素電極9aは、アルミニウム膜等の反射性導電膜により形成されている。この場合、矢印L2で示すように、対向基板20の側から入射した光が素子基板10で反射して出射される間に変調されて画像を表示する。従って、対向基板20の他方面20tには接着剤層41によって透光板40が接着されているが、素子基板10の他方面10tには透光板が接着されない。
【0083】
この場合、対向基板20が本発明における「第1基板」に相当し、素子基板10が本発明における「第2基板」に相当する。従って、本形態の各構成要素は、本発明の各構成要素と以下の関係になっている。
対向基板20の一方面20s=本発明における「第1面」
対向基板20の他方面20t=本発明における「第2面」
配向膜26=本発明における「第1配向膜」
有機シラン重合体層27a=本発明における「第1有機シラン重合体層」
有機シラン重合体層27b=本発明における「第2有機シラン重合体層」
改質層27c=本発明における「第3改質層」
改質層27d=本発明における「第1改質層」
透光板40=本発明における「第1透光板」
接着剤層41=本発明における「第1接着剤層」
素子基板10の一方面10s=本発明における「第3面」
素子基板10の他方面10t=本発明における「第4面」
配向膜16=本発明における「第2配向膜」
【0084】
また、シランカップリング処理工程ST12、ST13が各々、本発明における「第2シランカップリング処理工程」および「第1シランカップリング処理工程」に相当し、改質工程ST13、ST14が各々、本発明における「第2改質工程」および「第1改質工程」に相当する。また、接着工程ST36において、対向基板20に対して接着剤層41によって透光板40を接着する工程が本発明における「第1接着工程」に相当し、素子基板10に対して接着剤層31によって透光板30を接着する工程が本発明における「第2接着工程」に相当する。
【0085】
このような構成でも、有機シラン重合体層27bのうち、表示領域10aの外側で接着剤層41と接する部分の少なくとも一部が、有機シラン重合体層27bより親水性の高い改質層27dになっている。従って、透光板40が対向基板20から剥離することを抑制することができる。
【0086】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、紫外光の照射によって改質層を形成したが、レーザー光の照射やプラズマの照射によって改質層を形成してもよい。
【0087】
[電子機器への搭載例]
図15は、本発明を適用した液晶装置100を用いた投射型表示装置(電子機器)の概略構成図である。なお、以下の説明では、互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶装置100が用いられているが、いずれの液晶装置100にも、本発明を適用した液晶装置100が用いられている。
【0088】
図15に示す投射型表示装置110は、透過型の液晶装置100を用いた液晶プロジェクターであり、スクリーン等からなる被投射部材111に光を照射し、画像を表示する。投射型表示装置110は、装置光軸L0に沿って、照明装置160と、照明装置160から出射された光が供給される複数の液晶装置100(液晶ライトバルブ115〜117)と、複数の液晶装置100から出射された光を合成して出射するクロスダイクロイックプリズム119(光合成光学系)と、クロスダイクロイックプリズム119により合成された光を投射する投射光学系118とを有している。また、投射型表示装置110は、ダイクロイックミラー113、114、およびリレー系120を備えている。投射型表示装置110において、液晶装置100およびクロスダイクロイックプリズム119は、光学ユニット150を構成している。
【0089】
照明装置160では、装置光軸L0に沿って、光源部161、フライアイレンズ等のレンズアレイからなる第1インテグレーターレンズ162、フライアイレンズ等のレンズアレイからなる第2インテグレーターレンズ163、偏光変換素子164、およびコンデンサーレンズ165が順に配置されている。光源部161は、赤色光R、緑色光LG色光LGおよび青色光LBを含む白色光を出射する光源168と、リフレクター169とを備えている。光源168は超高圧水銀ランプ等により構成されており、リフレクター169は、放物線状の断面を有している。第1インテグレーターレンズ162および第2インテグレーターレンズ163は、光源部161から出射された光の照度分布を均一化する。偏光変換素子164は、光源部161から出射された光を、例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする。
【0090】
ダイクロイックミラー113は、照明装置160から出射された光に含まれる赤色光LRを透過させるとともに、緑色光LG色光LGおよび青色光LBを反射する。ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光LG色光LGおよび青色光LBのうち、青色光LBを透過させるとともに緑色光LG色光LGを反射する。このように、ダイクロイックミラー113、114は、照明装置160から出射された光を赤色光LR、緑色光LG色光LGおよび青色光LBに分離する色分離光学系を構成している。
【0091】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光LRを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶装置100(赤色用液晶装置100R)、および第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光LRは、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0092】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。液晶装置100(赤色用液晶装置100R)は、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。従って、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光LRを変調し、変調した赤色光LRをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する。λ/2位相差板115aおよび第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115aおよび第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0093】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光LG色光LGを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶装置100(緑色用液晶装置100G)、および第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光LG色光LGは、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。液晶装置100(緑色用液晶装置100G)は、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。従って、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光LG色光LGを変調し、変調した緑色光LGをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する。
【0094】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光LBを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶装置100(青色用液晶装置100B)、および第2偏光板117cを備えている。液晶ライトバルブ117に入射する青色光LBは、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0095】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。液晶装置100(青色用液晶装置100B)は、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。第2偏光板117cは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。従って、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光LBを変調し、変調した青色光LBをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する。なお、λ/2位相差板117a、および第1偏光板117bは、ガラス板117dに接した状態で配置されている。
【0096】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光LBの光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光LBをリレーレンズ124bに向けて反射する。反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光LBを液晶ライトバルブ117に向けて反射する。
【0097】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光LBを反射して緑色光LGを透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光LRを反射して緑色光LGを透過する膜である。従って、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとを合成し、投射光学系118に向けて出射する。
【0098】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることにより、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光LR、および青色光LBをs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光LGをp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン等の被投射部材111に投射する。
【0099】
[他の投射型表示装置]
上記投射型表示装置において、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【0100】
本発明を適用した液晶装置100については、上記の電子機器の他にも、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、携帯電話機、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、テレビ電話等に用いてもよい。
【符号の説明】
【0101】
M10、M20…マザー基板、R…疎水性有機官能基、R0…官能基、hν…紫外光、ST11、ST21…配向膜形成工程、ST12、ST22…シランカップリング処理工程、ST13、ST23…改質工程、ST14、ST24…アルコール洗浄工程、ST15、ST25…乾燥工程、9a…画素電極、10…素子基板、10a…表示領域、16、26…配向膜、17a、17b、27a、27b…有機シラン重合体層、17c、17d、27c、27d…改質層、20…対向基板、21…共通電極、30、40…透光板、31、41…接着剤層、50…液晶層、100…液晶装置、100p…液晶パネル、102…端子、107…シール材、110…投射型表示装置、111…被投射部材、115、116、117…液晶ライトバルブ、118…投射光学系、161…光源部、400…マスク、420…透光領域、410…遮光領域、500…ステージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15