(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787093
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ディスクブレーキ装置とディスクブレーキ監視方法
(51)【国際特許分類】
F16D 66/00 20060101AFI20201109BHJP
F16D 55/22 20060101ALI20201109BHJP
B65H 23/10 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
F16D55/22 Z
B65H23/10
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-236827(P2016-236827)
(22)【出願日】2016年12月6日
(65)【公開番号】特開2018-91451(P2018-91451A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100172269
【弁理士】
【氏名又は名称】▲徳▼永 英男
(72)【発明者】
【氏名】平井 敦
(72)【発明者】
【氏名】森岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
【審査官】
羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−135437(JP,U)
【文献】
実開昭57−126646(JP,U)
【文献】
特開昭59−191500(JP,A)
【文献】
特開平06−249630(JP,A)
【文献】
特表2005−527746(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0236234(US,A1)
【文献】
特開2015−006945(JP,A)
【文献】
米国特許第06003640(US,A)
【文献】
米国特許第05325949(US,A)
【文献】
国際公開第2015/014450(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0076609(US,A1)
【文献】
特開平11−023236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/00−23/16
B65H 23/24−23/34
B65H 27/00
F16D 49/00−71/04
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機のディスクブレーキの制動状況を監視する方法であって、レーザ投光器とレーザ受光器を、ブレーキパッドを挟んで配置し、レーザ投光器で投光したレーザ光をレーザ受光器で受光し、受光したレーザ光の光幅に基づいて、ディスクとブレーキパッドの間隔を検知し、ディスクブレーキの制動状況を監視し、
前記ディスクとブレーキパッドの間隔の合計が、ディスクとブレーキパッドの間隔に基づいて定めた閾値を超えたとき、プレーキパッドの交換を促す警告音を発することを特徴とするディスクブレーキ監視方法。
【請求項2】
前記電動機が、鋼板を搬送するロールを駆動する電動機であることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置とディスクブレーキ監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、鋼板を搬送ロールで搬送する際、鋼板処理の変更、鋼板処理、又は、設備故障のため、鋼板の搬送を停止する場合がある。このとき、鋼板に、鋼板長手方向に何らかの力が作用し、停止状態にある搬送ロールが回転し、鋼板が移動することがある。
【0003】
例えば、連続焼鈍炉に鋼板を連続して搬送するため、先行する鋼板(先行鋼板)と、後続の鋼板(後続鋼板)を溶接機で溶接する場合、溶接機の位置にて、先行鋼板と後続鋼板を停止し、先行鋼板の尾端と、後続鋼板の先端を突き合せて溶接するが、先行鋼板及び/又は後続鋼板の長手方向に何らかの力が作用し、先行鋼板の尾端及び/又は後続鋼板の先端が、溶接位置から移動することがある。
【0004】
この場合、搬送ロールを、適宜駆動して、先行鋼板の尾端と後続鋼板の先端の位置合せを、再度行なう必要があり、当然に、操業効率は低下する。
【0005】
通常、鋼板の搬送を停止する場合、搬送ロールを駆動する電動機のディスクブレーキを作動状態に維持し、停止状態にある鋼板に何らかの力が鋼板長手方向に作用しても、搬送ロールが回転しないようにする。
【0006】
図1及び
図2に、鋼板搬送ロール装置の一態様を示す。
図1に、鋼板搬送ロール装置の側面態様を示し、
図2に、鋼板搬送ロール装置の上面態様を示す。
【0007】
鋼板搬送ロール装置においては、基盤1上の基台1aに立設した鋼製のスタンド3の両側に取り付けた軸受3aと軸受3bが、鋼板SをS字状に巻き付けて搬送する搬送ロール2aと搬送ロール2bを、それぞれ軸支している。
【0008】
搬送ロール2aの側には、一組の押えロール4a、4bを下面に備えるロール保持体6を軸支するアーム7が、伸縮手段8により上下動可能に配置されている。また、搬送ロール2bの側には、一組の押えロール5a、5bを上面に備えるロール保持体9を軸支するアーム10が、伸縮手段11により上下動可能に配置されている。
【0009】
鋼板Sを、搬送ロール2aと搬送ロール2bにS字状に巻き付けて搬送する際、搬送を円滑化かつ安定化するため、伸縮手段8と伸縮手段11を稼働して、一組の押えロール4a、4b、及び、一組の押えロール5a、5bを鋼板Sに押し付ける。
【0010】
図2には、
図1に示す鋼板搬送ロール装置において、一組の押えロール4a、4bを下面に備えるロール保持体6を軸支するアーム7と、一組の押えロール5a、5bを上面に備えるロール保持体9を軸支するアーム10を取り除いた上面態様を示す。
【0011】
搬送ロール2aは、ジョイント12aを介して、減速機13aに連結され、減速機13aはジョイント14aを介して電動機15a連結されている。同じく、搬送ロール2bは、ジョイント12bを介して、減速機13bに連結され、減速機13bはジョイント14bを介して電動機15b連結されている。
【0012】
搬送ロール2aと搬送ロール2bは、同期して回転する電動機15aと電動機15bの回転で回転し、従動して回転する押えロール4a、4b、及び、押えロール5a、5bと協働して、鋼板をS字状に巻き付けて搬送する。
【0013】
電動機15aの他方の側には、ブレーキ装置18aが設置されていて、電動機15aの他方の軸16aが、ブレーキ装置18a内に格納され、軸受17aで軸支されているディスク19aに連結されている。同じく、電動機15bの他方の側には、ブレーキ装置18bが設置されていて、電動機15bの他方の軸16bが、ブレーキ装置18b内に格納され、軸受17bで軸支されているディスク19bに連結されている。
【0014】
そして、鋼板の搬送路には、鋼板の搬送を円滑かつ安定に行うため、
図1及び
図2に例示する鋼板搬送ロール装置が適宜の位置に配置されている。
【0015】
鋼板の搬送路において鋼板の搬送を停止するとき、2機の電動機(
図2中、15aと15b、参照)の回転を止め、停止後も、搬送ロール(
図2中、2aと2b、参照)が回転しないよう、ディスクブレーキ(
図2中、18aと18b、参照)を作動状態にしておくが、ブレーキパッドの摩耗で、ディスクブレーキの制動力が低下していると、停止状態の鋼板に、鋼板長手方向(搬送方向又は反搬送方向)の力が作用したとき、搬送ロールが、突発的に回転することがある。
【0016】
また、ディスクブレーキが正常に作動している場合でも、鋼板長手方向(搬送方向又は反搬送方向)の力が作用して、搬送ロールが回転することがある。
【0017】
ブレーキパッドの摩耗によるディスクブレーキの制動力の低下は、定期的に、ブレーキパッドの摩耗量を測定し、適宜、ブレーキパッドを交換することにより回避することができるが、ブレーキパッドの摩耗量の測定は、ブレーキ装置(
図2中、18aと18b、参照)を解体して行う必要があり、所要の作業時間を要することになる。それ故、全てのブレーキ装置において、ブレーキパッドの摩耗量を高頻度で測定することは困難である。
【0018】
また、電動機を停止した後の駆動ロールの回転の原因が、パッドの摩耗によるディスクブレーキの制動力の低下でなく、突発的な機械的要因である場合、パッドの摩耗量の測定で、電動機停止後の駆動ロールの回転に対処することは困難である。
【0019】
このことを踏まえ、ディスクブレーキの制動状況を監視する方法が、幾つか提案されている。特許文献1には、電子式ブレーキ監視システム及び方法が提案されている。また、特許文献2には、ディスクブレーキ又はドラムブレーキのライニング隙間をモニタ―する方法が提案されている。
【0020】
しかし、これらの方法は、ブレーキ機構の移動距離と制動圧の関係に基づいて、ブレーキのライニング隙間をモニタ―(監視)する方法であり、ライニング隙間を、直接、モニター(監視)する方法ではないので、ブレーキの制動状況を正確に評価し得る方法ではない。
【0021】
非特許文献1には、GapGunポータブルすき間・段差測定器が開示されているが、この測定器は、作業者が、必要に応じ携帯して操作するものであり、常時、ディスクブレーキを監視するものではないので、突発的なブレーキ機構の異常に対処し得るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第4937554号明細書
【特許文献2】特表2011−527266号公報
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】GapGunポータブルすき間・段差測定器(http://www.ftr.co.jp/n/products/gapgun/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、従来技術の現状に鑑み、電動機のディスクブレーキ装置において、ディスクブレーキの制動状況を、オンラインで常時監視することを課題とし、該課題を解決するディスクブレーキ装置とディスクブレーキ監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、電動機のディスクブレーキを格納するブレーキ装置内に、ブレーキパッドとディスクの間隔、又は、ディスクを挟むブレーキパッドの間隔を測定し得る機器を配置し、上記間隔を常時測定すれば、ディスクブレーキの制動状況を常時監視することができるとの発想のもとで、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。
【0026】
その結果、電動機のディスクブレーキ装置において、レーザ投光器とレーザ受光器を、ブレーキパッドを挟んで配置すれば、ブレーキパッドとディスクの間隔、又は、ディスクを挟むブレーキパッドの間隔を、オンラインで、直接かつ正確に測定しブレーキパッドの制動状況を常時監視できることを見いだした。
【0027】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0030】
(
1)電動機のディスクブレーキの制動状況を監視する方法であって、レーザ投光器とレーザ受光器を、ブレーキパッドを挟んで配置し、レーザ投光器が投光するレーザ光をレーザ受光器で受光し、受光したレーザ光の光幅に基づいて、ディスクとブレーキパッドの間隔を検知し、ディスクブレーキの制動状況を監視
し、前記ディスクとブレーキパッドの間隔の合計が、ディスクとブレーキパッドの間隔に基づいて定めた閾値を超えたとき、プレーキパッドの交換を促す警告音を発することを特徴とするディスクブレーキ監視方法。
【0032】
(
2)前記電動機が、鋼板を搬送するロールを駆動する電動機であることを特徴とする前記
(1)に記載のディスクブレーキ監視方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ディスクブレーキ装置において、ディスクブレーキの制動状況をオンラインで常時監視し、必要に応じ、ブレーキパッドを交換して、ディスクブレーキの制動機能を、常に、適正に確保することができるので、停止状態のディスクに何らかの回転力が作用しても、ディスクの停止状態を、常に確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】鋼板搬送ロール装置の側面態様を示す図である。
【
図2】鋼板搬送ロール装置の上面態様を示す図である。
【
図3】ディスクブレーキを監視する基本原理を示す図である。
【
図4】ディスクブレーキの作動状態を模式的に示す図である。
【
図5】ディスクブレーキの作動解除状態を模式的に示す図である。
【
図6】ディスクブレーキの別の作動解除状態を模式的に示す図である。
【
図7】ディスクブレーキの別の作動状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のディスクブレーキ装置(以下「本発明装置」ということがある。)は、電動機のディスクブレーキ装置において、レーザ投光器とレーザ受光器が、ブレーキパッドを挟んで配置されていることを特徴とする。
【0036】
本発明のディスクブレーキ監視方法(以下「本発明方法」ということがある。)は、電動機のディスクブレーキの制動状況を監視する方法であって、レーザ投光器とレーザ受光器を、ブレーキパッドを挟んで配置し、レーザ投光器が投光するレーザ光をレーザ受光器で受光し、受光したレーザ光の光幅に基づいて、ディスクとブレーキパッドの間隔を検知し、ディスクブレーキの制動状況を監視することを特徴とする。
【0037】
以下、本発明装置と本発明方法について、図面に基づいて説明する。
【0038】
まず、
図3に、ディスクブレーキを監視する基本原理を示す。
【0039】
ディスク20の両側に、支持部材22に保持されたブレーキパッド21aとブレーキパッド21bが配置されていて、ブレーキパッド21aとブレーキパッド21bを挟んで、レーザ投光器23とレーザ受光器24が配置されている。レーザ投光器23とレーザ受光器24の配置は、ブレーキパッド21aとブレーキパッド21bを挟み、レーザ光の投光と受光が可能な配置であればよい。
【0040】
図3において、ブレーキパッド21aとブレーキパッド21bは開状態(ディスク20を押圧していない状態)にあるので、レーザ投光器23から、ディスク20とブレーキパッド21aの間隙、及び、ディスク20とブレーキパッド21bの間隙に向けて投光した光幅d0のレーザ光25の一部は、上記間隙を通過してレーザ受光器24に受光される。
【0041】
レーザ受光器24で受光したレーザ光25の光幅がd1であれば、ディスク20とブレーキパッド21aの間隔はd1であり、レーザ受光器24で受光したレーザ光25の光幅がd2であれば、ディスク20とブレーキパッド21bの間隔はd2である。
【0042】
ブレーキパッド21aとブレーキパッド21bが、d1=d2となるように配置されていても、ブレーキパッド21aとブレーキパッド21bの摩耗量は同じでなく、また、ブレーキパッド21aとブレーキパッド21bの開状態への戻り量も同じでないので、レーザ受光器24で受光するレーザ光25の光幅は、通常、d1≠d2であるが、(d1+d2)が閾値を超えなければ、次のブレーキ操作において、ディスクブレーキの制動力を確保することができる。
【0043】
鋼板の搬送中、搬送ロールを停止し、搬送ロールを駆動する電動機のディスクブレーキを作動状態にし、鋼板を、次の工程に備える所定の位置に停止させておいても、停止中の鋼板に、鋼板長手方向(搬送方向又は反搬送方向)に何らかの力が突発的に作用した時、ディスクブレーキの制動力が十分でないと、搬送ロールが回転して電動機が回転し、鋼板の位置が所定の位置から外れて、次の工程への迅速な移行が妨げられることになる。
【0044】
この突発的な力による搬送ロールの回転は、鋼板を、2本の搬送ロールにS字状に巻き付ける鋼板搬送ロール装置(
図1、参照)においても起きる。
【0045】
それ故、通常、d1≠d2であることを前提に、ディスクとブレーキパッドとの間隔を測定して、ディスクブレーキの制動状況を常に監視し、停止状態にある電動機に不意の回転力が作用しても、電動機が少しでも回転しないように、ディスクブレーキの制動力を十分に確保する必要がある。
【0046】
例えば、鋼板搬送ロールを駆動する電動機のディスクブレーキの場合、通常、d1=d2=1mmとなるように、ブレーキパッドを配置し、レーザ投光器で光幅30mm(d0)のレーザ光をブレーキパッドに向けて投光する。
【0047】
測定精度0.01mmのレーザ受光器で受光するレーザ光の光幅がd1≠d2でも、d1+d2≦2mmであれば、次の、ブレーキ操作で、電動機の不意の回転を阻止し得る制動力を十分に確保することができる。
【0048】
本発明方法及び本発明装置の態様について、ブレーキパッドとディスクの間隔(d1、d2)が1mmのディスクブレーキ装置(d1+d2=2mm)を例に取り、図面に基づいて説明する。
【0049】
図4に、ディスクブレーキの作動状態を模式的に示す。
図4に示すように、ブレーキパッド21を挟んで、上下に、レーザ投光器23とレーザ受光器24が配置されている。ブレーキパッド21がディスク20を両側から押圧しているので、レーザ投光器23から投光する、例えば、光幅30mmのレーザ光25は、ブレーキパッド21に遮断される。
【0050】
この場合、レーザ受光器24は、レーザ光25を受光しないので、演算装置26は、d1=d2=0の信号を表示装置27へ送信する。このようにして、ディスクブレーキが正常に作動していることを確認することができる。
【0051】
図5に、ディスクブレーキの作動解除状態を模式的に示す。ブレーキパッド21の作動を解除すると、レーザ受光器24は、レーザ投光器23が投光するレーザ光25で、ブレーキパッド21とディスク20の間隙を通過するレーザ光25を受光し、演算装置26が、受光したレーザ光の光幅(d1、d2、d1+d2)を演算し、表示装置27に送信する。
【0052】
この場合、(d1+d2)が1.70mm(≦2mm[当初の設定値])であるので、ディスクブレーキが、次の作動時においても、電動機の不意の回転を阻止し得る制動力を発揮する。
【0053】
図6に、ディスクブレーキの別の作動解除状態を模式的に示す。この作動解除状態において、表示装置27は、(d1+d2)が2.11mmであることを表示している。目標精度を5%とし、閾値を2.10mm[=2mm×1.05])とすれば、ディスクブレーキの作動解除状態の(d1+d2)は閾値を超えている。
【0054】
この作動解除状態から、次の作動状態に移行すると、ブレーキパッド21は、ディスク20を両側から十分な圧力で押圧できず、停止中の電動機に不意の回転力が作用すると、電動機は回転することになる。
【0055】
図7に、ディスクブレーキの別の作動状態を模式的に示す。この作動状態において、表示装置27は、(d1+d2)が0.12mm(>0mm)であることを表示する。表示とともに、プレーキパッドの交換を促す警告音を発してもよい。
【0056】
この場合、ディスクブレーキの作動状態においてd1=0.12mmであるので、図中、左側のブレーキパッド21はディスク20を押圧していない。この作動状態において、ディスクブレーキは所要の制動力を発揮しないので、停止中の電動機に不意の回転力が作用すると、電動機は、容易に回転することになる。
【0057】
図6に示す作動解除状態、及び、
図7に示す作動状態は、ディスクブレーキの異常状態である。本発明装置及び本発明方法によれば、ディスクブレーキの作動状態及び作動解除状態を、オンラインで常時監視し、ディスクブレーキの異常状態が見つかれば、直ちに、ブレーキパッドを交換して、ディスクブレーキの作動状態及び作動解除状態を正常状態に戻すことができる。
【0058】
図5及び
図6に示すディスクブレーキの作動解除状態の監視、及び、
図7に示すディスクブレーキの作動状態の監視においては、ディスクブレーキの異常状態を判定する閾値を2mm(=d1+d2)としたが、閾値は、ディスクブレーキ装置の仕様に応じて適宜設定すればよい。
【実施例】
【0059】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0060】
(実施例1)
図1に示す形式の搬送ロール装置の電動機のブレーキ装置において、ディスクとブレーキパッドの間隔(d1、d2)が1mmとなるようにブレーキパッドを配置するとともに、光幅30mmのレーザ光を投光するレーザ投光器と、受光するレーザ光の光幅を測定精度0.01mmで測定できるレーザ受光器を配置した。
【0061】
ブレーキ操作毎に、受光したレーザ光の光幅(d1、d2)に基づいて、ブレーキパッドの間隔(d1+d2)を演算し、表示装置で確認してディスクブレーキの制動状況を常時監視し、(d1+d2)が2.10mm(=2×1.05[精度])を超えたとき、ブレーキパッドを交換した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
前述したように、本発明によれば、 本発明によれば、ディスクブレーキ装置において、ディスクブレーキの制動状況をオンラインで常時監視し、必要に応じ、ブレーキパッドを交換して、ディスクブレーキの制動力を、常に、適正に確保することができるので、停止状態のディスクに何らかの回転力が作用しても、ディスクの停止状態を、常に確実に維持することができる。
【0063】
よって、本発明は、鋼板の搬送ロールを駆動する大容量の電動機に限らず、各種用途の電動機のディスクブレーキ装置として好適であり、鉄鋼産業及び機械産業において利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0064】
1 基盤
1a 基台
2a、2b 搬送ロール
3 スタンド
4a、4b 押えロール
5a、5b 押えロール
6、9 ロール保持体
7、10 アーム
8、11 伸縮手段
12a、12b ジョイント
13a、13b 減速機
14a、14b ジョイント
15a、15b 電動機
16a、16b 軸
17a、17b 軸受
18a、18b ブレーキ装置
19a、19b ディスク
20 ディスク
21 ブレーキパッド
21a、21b ブレーキパッド
22 支持部材
23 レーザ投光器
24 レーザ受光器
25 レーザ光
26 演算装置
27 表示装置
d0、d1、d2 光幅
S 鋼板