【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度から平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「海洋エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー発電システム実証研究/水中浮遊式海流発電」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中浮遊式発電装置は、浮力を受ける浮体としての側面と、重力を受ける物体としての側面とを有する。装置の姿勢を水中で安定させるためには、流れ方向において、装置全体の浮心と装置の重心とを合わせる又は近づける必要がある。主軸を介してタービン翼と発電機とが連結されたタイプの水中浮遊式発電装置では、バランス調整のための余分な機器を設ける必要があり、全体重量が増加するといった問題があった。全体重量の増加は、海域に装置を設置する際のコストの増大にもつながり得る。一方、油圧ポンプと油圧モータを組み合わせたタイプの水中浮遊式発電装置においても、どのようにして浮体としてのバランスをとるかといった検討はなされていない。
【0005】
本発明は、バランス調整のための余分な機器を設けることなく、水中においてバランスをとることができる水中浮遊式発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
第1回転軸方向における
第1ポッドの第1端側に
第1発電用タービンが設けられ
、第1回転軸方向に平行な第2回転軸方向における第2ポッドの第1端側に第2発電用タービンが設けられた水中浮遊式発電装置であって、
第1回転軸を含む
第1発電用タービンと、
第1回転軸方向に交差する方向において第1発電用タービンから離間して配置され、第2回転軸を含む第2発電用タービンと、第1回転軸方向における第1端と第1端とは反対側の第2端とを含み、第1端側において
第1発電用タービンを支持する
第1ポッドと、
第2回転軸方向における第1端と第1端とは反対側の第2端とを含み、第1端側において第2発電用タービンを支持する第2ポッドと、第1ポッドおよび第2ポッドを連結する連結部と、第1ポッドの第1端に設けられ、
第1回転軸に連結されて回転力を液体の圧力に変換する
第1液圧ポンプ
および第1液圧ポンプに接続された
第1配管と、
第2ポッドの第1端に設けられ、第2回転軸に連結されて回転力を液体の圧力に変換する第2液圧ポンプおよび第2液圧ポンプに接続された第2配管と、第1配管
および第2配管の両方に接続され、
第1液圧ポンプ
および第2配管によって発生する液体の圧力を回転力に変換する液圧モータと、液圧モータに連結され、液圧モータによって発生する回転力を用いて発電を行う発電機と、を備え、
液圧モータおよび発電機は、第1発電用タービンおよび第2発電用タービンに対して共通に設けられており、水中浮遊式発電装置の浮心は、第1回転軸および第2回転軸の両方に平行であって第1回転軸および第2回転軸から等距離にある仮想平面上に位置するとともに、第1回転軸方向における
第1ポッドの第1端と第2端との間の領域に位置しており、液圧モータおよび発電機は、浮心の位置に対して、
第1回転軸方向における
第1ポッドの第2端側に配置され
るとともに、その仮想平面上に配置されている。
【0007】
この水中浮遊式発電装置によれば、
第1ポッドの第1端には、
第1発電用タービンの
第1回転軸に連結された
第1液圧ポンプが設けられる。
第1発電用タービンが
第1ポッドの第1端側に設けられ、
第1液圧ポンプが
第1ポッドの第1端に設けられることにより、
第1回転軸の長さは短くなっている。一方、
第1液圧ポンプによって発生する液体の圧力は
第1配管を通じて液圧モータに伝達され、発電機において発電が行われる。
第1液圧ポンプ、
第1配管、および液圧モータにより、重量物である発電機の配置の自由度が高められている。この水中浮遊式発電装置では、液圧モータおよび発電機は、水中浮遊式発電装置の浮心の位置に対して第2端側に配置されており、タービンから離されている。言い換えれば、タービンと発電機との間に浮心が位置する。タービンおよび発電機は、いずれも、
第1ポッドに設けられる機器の中で比較的大きな重量を占める。発電機がタービンから離された上記の配置により、
第1回転軸方向において、装置の浮心と重心とを合わせる、又は近づけることができる。その結果として、装置の姿勢を水中で安定させることができる。よって、バランス調整のための余分な機器を設けることなく、水中においてバランスをとることができる。また、連結部によって連結された2つのポッドのそれぞれに
第1および第2発電用タービンが設けられた水中浮遊式発電装置において、液圧モータおよび発電機が共通に設けられる。この構成により、液圧モータ及び発電機の台数を減らすことができる。
【0012】
いくつかの態様において、液圧モータおよび発電機は、連結部に設けられている。この場合、回転軸方向に交差する方向(たとえば左右方向)において重心の位置を調整しやすい。たとえば、回転軸方向に交差する方向における中央(水中浮遊式発電装置の中央)に重心を配置することも容易である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のいくつかの態様によれば、バランス調整のための余分な機器を設けることなく、水中においてバランスをとることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
以下の説明において、「上流」または「下流」との語は、水の流れを基準として用いられる。また、「前」との語は、水の流れの上流側を意味し、「後」との語は、水の流れの下流側を意味する。たとえば、ダウンウィンド型のタービンが用いられる場合には、ポッドの後部側にブレード(翼)が配置される。「左」または「右」との語は、水の流れに対して垂直で且つ水平な方向を意味し、後方すなわち下流側から見た場合を基準として用いられる。「ポッド」との語は、「耐圧殻」または「ナセル」との語に置き換えられ得る。
【0017】
図1を参照して、本実施形態の水中浮遊式発電装置1が適用された海流発電システムSについて説明する。
図1に示されるように、水中浮遊式発電装置1は、たとえば海水中に設置されて浮遊し、海流を利用して発電を行う。水中浮遊式発電装置1は、左右に離間して配置された右ポッド2Aおよび左ポッド2Bと、右ポッド2Aおよび左ポッド2Bを連結するクロスビーム(連結部)3とを備える。右ポッド2Aの後端側には、発電用タービン4Aが設けられている。左ポッド2Bの後端側には、発電用タービン4Bが設けられている。以下の説明では、水中浮遊式発電装置1を海流発電装置1という。海流発電装置は、水流発電装置の一種である。また、発電用タービン4A,4Bを、それぞれ、右タービン4Aおよび左タービン4Bという。
【0018】
双発のタービンを備えた海流発電装置1において、右ポッド2Aおよび左ポッド2Bの一方は、特許請求の範囲に記載の「ポッド」に相当する。右ポッド2Aおよび左ポッド2Bの他方は、特許請求の範囲に記載の「第2ポッド」に相当する。右タービン4Aおよび左タービン4Bの一方は、特許請求の範囲に記載の「発電用タービン」に相当する。右タービン4Aおよび左タービン4Bの他方は、特許請求の範囲に記載の「第2発電用タービン」に相当する。右ポッド2Aおよび左ポッド2Bに設けられる後述の各機器に関しても、同様に、特許請求の範囲に記載の「液圧ポンプ」および「第2液圧ポンプ」、「配管」および「第2配管」、「液圧モータ」および「第2液圧モータ」、「発電機」および「第2発電機」にそれぞれ相当する。
【0019】
右ポッド2Aは、右タービン4Aを回転可能に支持しつつ、右タービン4Aに適正な浮力を付与する。左ポッド2Bは、左タービン4Bを回転可能に支持しつつ、左タービン4Bに適正な浮力を付与する。右ポッド2Aおよび左ポッド2Bは、たとえば円筒状をなす圧力容器であり、たとえば、同じ大きさおよび構造を有している。
【0020】
右ポッド2Aおよび左ポッド2Bの間には、これらを連結する構造体であるクロスビーム3が延在している(すなわち横断するように延びている)。クロスビーム3は、前後方向に所定の長さを有し、所定の厚みを有する。クロスビーム3は、右ポッド2Aおよび左ポッド2Bの各端部に設けられたロータブレード(後述のブレード6A,6B)に対する流れを極力阻害しないように、たとえば翼形状をなしている。クロスビーム3の左右の両端は、たとえば、右ポッド2Aおよび左ポッド2Bの胴部の略中央にそれぞれ固定されている。なお、クロスビーム3が固定される位置は、上記の位置に限られない。クロスビーム3は、ポッドの上部または下部に固定されてもよいし、ポッドの前部または後部に固定されてもよい。クロスビーム3は、その延在方向(すなわち横断方向)において等しい断面形状を有してもよい。クロスビーム3は、内部に空洞を有して浮力を発生する構造であってよい。クロスビーム3は、内部に空洞を有さず(たとえばトラス構造など)浮力を発生しない構造であってもよい。
【0021】
図3に示されるように、右タービン4Aの回転軸線(第1回転軸線)L1は、たとえば右ポッド2Aの軸線に一致している。回転軸線L1が延びる方向は、右タービン4Aの回転軸方向に一致している。左タービン4Bの回転軸線(第2回転軸線)L2は、たとえば左ポッド2Bの軸線に一致している。回転軸線L2が延びる方向は、左タービン4Bの回転軸方向に一致している。回転軸線L1と回転軸線L2とは、たとえば平行である。右タービン4Aおよび左タービン4Bは、これらの回転軸方向に直交する方向(交差する方向)すなわち左右方向において離間している。
【0022】
図1に示されるように、海流発電装置1は、海底に固定するためのシンカーまたはアンカー14(図示例はシンカー)に対して、係留索10を介して接続されている。係留索10は、シンカー14に連結された下部係留索11eと、の上端から2本に分岐し、右ポッド2Aおよび左ポッド2Bにそれぞれ連結された上部係留索11a,11bとを含む。上部係留索11a,11bは、Y字状に分岐している。なお、係留索10の形態はこれに限られず、1点でクロスビーム3に連結されていてもよいし、2本の上部係留索11a,11bがクロスビーム3に対して連結されていてもよい。
【0023】
なお、図示は省略されているが、タービン部4において発電された電力を送電するための送電ケーブルが、係留索10に沿うように設けられている。送電ケーブルの一端は、右ポッド2A内の右発電機17Aおよび左ポッド2B内の左発電機17B(
図3参照)に接続されており、送電ケーブルの他端は、たとえばシンカー14内に設けられた中継器(または変圧器等)に接続されている。さらに、海底に敷設されて地上まで延びる送電ケーブルが設けられている。これらの送電ケーブルを介して、右タービン4Aおよび左タービン4Bにおいて発電された電力が地上に送電される。
【0024】
図3に示されるように、海流発電装置1に適用される右タービン4Aおよび左タービン4Bは、たとえば、ダウンウィンド型のタービンである。右ポッド2Aおよび左ポッド2Bは、海流の向きに対向した姿勢で浮遊する。右タービン4Aは、その回転軸方向における右ポッド2Aの後端21A側(第1端側)に設けられている。左タービン4Bは、その回転軸方向における左ポッド2Bの後端21B側(第1端側)に設けられている。海流の向きが略水平である場合、右タービン4Aおよび左タービン4Bの回転軸線L1,L2は、略水平に維持される。
【0025】
なお、右タービン4Aおよび左タービン4Bは、アップウィンド型のタービンであってもよい。その場合、右ポッド2Aおよび左ポッド2Bの前端側に、右タービンおよび左タービンがそれぞれ設けられる。右ポッド2Aおよび左ポッド2Bの前端22A,22Bが、特許請求の範囲に記載の「第1端」に相当する。
【0026】
右タービン4Aは、たとえば2枚のブレード6Aを含んでいる。左タービン4Bは、たとえば2枚のブレード6Bを含んでいる。ブレード6Aは、右ポッド2Aの後端21A側に配置されている。ブレード6Bは、左ポッド2Bの後端21B側に配置されている。ダウンウィンド型のタービンを採用した海流発電装置1においては、海流の向きを基準として、右ポッド2Aの下流側にブレード6Aが配置され、左ポッド2Bの下流側にブレード6Bが配置される。右タービン4Aおよび左タービン4Bは、同じ大きさを有するが、ブレード6A,6Bの翼ピッチは逆になっている。右タービン4Aと左タービン4Bとは、海流を受けて互いに逆向きに回転する。これにより、右タービン4Aおよび左タービン4Bで発生する回転トルクが相殺される。なお、1つのタービンに対して、3枚以上のブレードが設けられてもよい。
【0027】
続いて、
図2および
図3を参照して、第1実施形態において右ポッド2Aおよび左ポッド2Bに設けられた機器の構成について説明する。
図2は、右ポッド2Aにおける機器の配置、重心Gおよび浮心Bの位置を側面視した図である。
図3は、海流発電装置1における機器の配置を平面視した図である。海流発電装置1では、重心Gおよび浮心Bの位置は、右ポッド2Aと左ポッド2Bの中間に位置する(
図3参照)。
図2では、重心Gおよび浮心Bの位置が、右タービン4Aの回転軸方向に直交する方向すなわち左右方向に投影されて示されている。
【0028】
図2および
図3に示されるように、右ポッド2Aの後端21Aの内部には、ブレード6Aと一緒に回転するハブ15Aに連結された回転軸16Aと、回転軸16Aの前端に連結された右液圧ポンプ26Aとが収容されている。右液圧ポンプ26Aは、回転軸16Aに連結された回転体および回転体を収容するケーシング等を含む。右液圧ポンプ26Aは、回転体の回転により、回転軸16Aの回転力を液体の圧力に変換する。たとえば、右液圧ポンプ26Aのケーシングには右配管30Aの一端が接続されており、これらのケーシングおよび右配管30Aの内部には、油等の作動液体が流通可能に充填されている。右液圧ポンプ26Aは、右配管30Aを通じて油等の作動液体を圧送する。右液圧ポンプ26Aとして、公知の液圧ポンプが採用され得る。作動液体は、水であってもよい。作動液体は、海水であってもよい。
【0029】
右配管30Aは、右ポッド2Aの内部において、後端21Aから前端22Aに至る領域に付設されている。右配管30Aは、所定の耐圧性能を有する配管である。右配管30Aは、金属製の配管であってもよいし、樹脂製の配管であってもよい。右配管30Aは、耐圧ホース等であってもよい。右配管30Aは、流れる液体の圧力損失をできるだけ小さくするように設計され得る。右配管30Aの配置は、右ポッド2A内に設けられる他の装置・機器類の配置を考慮して、適宜に変更可能である。
【0030】
右ポッド2Aの前端22Aの内部には、右配管30Aの他端に接続された右液圧モータ27Aと、右液圧モータ27Aの出力軸28Aに連結された右発電機17Aとが収容されている。右液圧モータ27Aは、出力軸28Aに連結された回転体および回転体を収容するケーシング等を含む。右液圧モータ27Aは、右配管30Aから流入する作動液体の圧力によって回転体を回転させることにより、出力軸28Aにおいて回転力を出力する。すなわち、右液圧モータ27Aは、右液圧ポンプ26Aによって発生する作動液体の圧力を回転力に変換する。右液圧モータ27Aとして、公知の液圧モータが採用され得る。
【0031】
右発電機17Aは、内部に、出力軸28Aに連結された回転軸と、回転軸に固定された磁石を含む回転子と、回転子の周囲に配置された巻線を含む固定子とを有する。右発電機17Aは、右液圧モータ27Aによって発生する回転力を用いて発電を行う。右発電機17Aとして、たとえば公知の発電機が採用され得る。
【0032】
上記した右液圧ポンプ26A、右配管30A、右液圧モータ27A、および右発電機17Aは、たとえば、右ポッド2Aの内壁面に対して、ブラケットまたは架台等を介して設置され、固定されている。右ポッド2Aの内部には、上記の他にも種々の機器および計器類が設けられ得る。右配管30Aには、安全弁等を含む圧力調節機構が設けられ得る。右配管30Aには、作動液体を循環させるラインや、作動液体を貯留するタンク等が設けられ得る。
【0033】
図3に示されるように、左ポッド2Bにも、上記した右ポッド2A内の機器と同様の機器が設けられる。左ポッド2Bの後端21Bの内部には、ブレード6Bと一緒に回転するハブ15Bに連結された回転軸16Bと、回転軸16Bの前端に連結された左液圧ポンプ26Bとが収容されている。左液圧ポンプ26Bは、回転体の回転により、回転軸16Bの回転力を液体の圧力に変換する。左液圧ポンプ26Bは、左配管30Bを通じて油等の作動液体を圧送する。
【0034】
左ポッド2Bの前端22Bの内部には、左配管30Bの他端に接続された左液圧モータ27Bと、左液圧モータ27Bの出力軸28Bに連結された左発電機17Bとが収容されている。左液圧モータ27Bは、左液圧ポンプ26Bによって発生する作動液体の圧力を回転力に変換する。左発電機17Bは、左液圧モータ27Bによって発生する回転力を用いて発電を行う。左液圧ポンプ26B、左配管30B、左液圧モータ27B、および左発電機17Bの各構成は、上記した右液圧ポンプ26A、右配管30A、右液圧モータ27A、および右発電機17Aの各構成と同様であってよい。
【0035】
続いて、海流発電装置1における重心Gおよび浮心Bと、機器配置との関係について説明する。海流発電装置1では、右タービン4Aと左タービン4B、右ポッド2Aと左ポッド2B、およびクロスビーム3のそれぞれの大きさ、形状、配置によって、浮心Bの位置が定められている。浮心Bとは、浮力がはたらく中心である。浮力は、海流発電装置1によって押しのけられる水の体積で決まる。よって、右ポッド2Aおよび左ポッド2Bの内部のように、筐体または容器の内部であって水が入らない空間に設置された(収容された)機器の配置は、浮心Bの位置に影響を及ぼさない。一方で、重心Gは、重力がはたらく中心であるから、海流発電装置1を構成するすべての機器および部材の位置および重量で決まる。
【0036】
海流発電装置1では、右タービン4Aと左タービン4B、および、右ポッド2Aと左ポッド2Bは、回転軸線L1および回転軸線L2の両方に平行であって回転軸線L1および回転軸線L2から等距離にある第1仮想平面P1に関して、面対称をなしている。したがって、海流発電装置1の浮心Bは、第1仮想平面P1上に位置する。
【0037】
浮心Bの軸方向の位置について説明すると、右タービン4Aの回転軸方向(回転軸線L1方向)において、浮心Bは、後端21Aと前端22Aとの間の領域に位置している。言い換えれば、左タービン4Bの回転軸方向(回転軸線L2方向)において、浮心Bは、後端21Bと前端22Bとの間の領域に位置している。
【0038】
海流発電装置1では、右ポッド2Aの後端21A側のみに右タービン4Aが設けられ、左ポッド2Bの後端21B側のみに左タービン4Bが設けられている。一方で、右液圧モータ27Aおよび右発電機17Aは、右ポッド2Aの前端22Aに設けられている。左液圧モータ27Bおよび左発電機17Bは、左ポッド2Bの前端22Bに設けられている。言い換えれば、右液圧モータ27Aおよび右発電機17Aは、浮心Bの位置に対して、後端21Aとは反対側の前端22A側に配置されている。左液圧モータ27Bおよび左発電機17Bは、浮心Bの位置に対して、後端21Bとは反対側の前端22B側に配置されている。このように、重量物である右発電機17Aおよび左発電機17Bが、同じく重量物である右タービン4Aおよび左タービン4Bからできるだけ離れた位置に配置されている。これにより、回転軸方向における重心Gの偏在(アンバランス)が緩和されている。
【0039】
ここで、ある機器が「浮心Bの位置に対して回転軸方向における前端側(第2端側)に配置されている」とは、その機器が、浮心Bを通り回転軸方向に直交する第2仮想平面P2よりも少なくとも前端側(第2端側)に配置されていることを意味する。
【0040】
右発電機17Aおよび左発電機17Bは、たとえば、上記の第1仮想平面P1に関して面対称の位置に配置されている。なお、右液圧モータ27Aと左液圧モータ27Bとは、第1仮想平面P1に関して面対称の位置に配置されてもよいが、面対称の位置に配置されなくてもよい。
【0041】
海流発電装置1では、上記のようにして、右ポッド2Aに収容された機器の配置と左ポッド2Bに収容された機器の配置が考慮されている。その結果、海流発電装置1の重心Gは、第1仮想平面P1上に位置する。そして、右タービン4Aの回転軸方向(すなわち左タービン4Bの回転軸方向)において、重心Gは、浮心Bに略一致している。重心Gの回転軸方向の位置は、浮心Bの回転軸方向の位置から多少ずれていてもよい。ダウンウィンド型のタービンを採用した海流発電装置1は、前方かつ下方の斜め方向から係留索10による張力を受け得る。これを考慮して、重心Gは、回転軸方向において、浮心Bよりも多少後方に位置し得る(
図2および
図3参照)。なお、海流発電装置1の浮体としての安定性を考慮して、重心Gは浮心Bより下方に位置してもよい(
図2参照)。
【0042】
第1実施形態の海流発電装置1によれば、ポッドの後端には、発電用タービンの回転軸に連結された液圧ポンプが設けられる。発電用タービンがポッドの後端側に設けられ、液圧ポンプがポッドの後端に設けられることにより、回転軸の長さは短くなっている。一方、液圧ポンプによって発生する作動液体の圧力は配管を通じて液圧モータに伝達され、発電機において発電が行われる。液圧ポンプ、配管、および液圧モータにより、重量物である発電機の配置の自由度が高められている。海流発電装置1では、液圧モータおよび発電機は、浮心Bの位置に対して前端側に配置されており、タービンから離されている。言い換えれば、タービンと発電機との間に浮心Bが位置する。タービンおよび発電機は、いずれも、ポッドに設けられる機器の中で比較的大きな重量を占める。発電機がタービンから離された上記の配置により、回転軸方向において、装置の浮心Bと重心Gとを合わせる、又は近づけることができる。その結果として、装置の姿勢を水中で安定させることができる。よって、バランス調整のための余分な機器を設けることなく、水中においてバランスをとることができる。
【0043】
図5および
図6に示されるように、タービン4A,4Bの回転軸に発電機107A,107Bが直接に連結された海流発電装置100A,100Bでは、回転軸を短くするため、タービン4A,4Bになるべく近い場所に発電機107A,107Bが設置されることが多い。そのため、重心Gはタービン4A,4Bに近い側に寄る傾向があった。一方で、浮心Bは装置の中央付近に位置することが多い。回転軸方向において浮心Bと重心Gとが離れていると、水中では重心Gの鉛直方向上方に自ずと浮心Bが位置するため、回転軸を略水平に維持することが難しくなる。そこで、装置の浮心Bと重心Gとを合わせる又は近づけるために、浮心Bをタービン4A,4B側に寄せる工夫や、重心Gをタービン4A,4Bから離す工夫が必要であった。たとえば、
図5に示される海流発電装置100Aのように、クロスビーム3に対して、クロスビーム3の後方に延びる浮力体40を設けたり、タービン4A,4Bに対して、タービン4A,4Bの後方に延びる浮力体41,41を設けたりする必要があった。これにより、図中に矢印で示すように、浮心Bが後方に移動し、重心Gに近づき得る。また、
図6に示される海流発電装置100Bのように、ポッド2Aの前端の内部に右カウンターウエイト50Aを搭載すると共に、左ポッド2Bの前端の内部に左カウンターウエイト50Bを搭載する必要があった。これにより、図中に矢印で示すように、重心Gが前方に移動し、浮心Bに近づき得る。しかしながら、タービン4A,4Bに近い側に浮力を持たせた場合、構造上強度が厳しくなる箇所が生じ、その補強のために、全体重量の増加を招いていた。また、タービン4A,4Bと離れた側にカウンターウエイト50A,50Bを設置する場合には、カウンターウエイト50A,50Bを置くことによる全体重量の増加を招いていた。全体重量の増加は、海域に装置を設置する際に過剰な設備(たとえば、より大きな吊り能力の設置船の準備等)が必要になり、コスト増大につながっていた。
【0044】
これに対し、海流発電装置1によれば、海流発電装置100A,100Bのように余分な機器を設ける必要がない。発電のために本来必要な機器を用いてこれらの配置を工夫することにより、水中においてバランスをとることができる。
【0045】
海流発電装置1において、液圧モータおよび発電機は、ポッドの内部では、タービンから最も離れた位置にある。この配置により、回転軸方向において、装置の浮心Bと重心Gとを容易に合わせる、又は近づけることができる。
【0046】
クロスビーム3によって連結された2つのポッドのそれぞれに発電用タービンが設けられた海流発電装置1において、配管、液圧モータ、および発電機が個別に(ポッドごとに)設けられている。右液圧モータ27A、左液圧モータ27B、右発電機17A、および左発電機17Bの配置により、回転軸方向において、装置の浮心Bと重心Gとを合わせる、又は近づけることができる。作動液体の圧力は各系統において独立しているので、いずれの発電用タービンにおいても独立した回転制御が可能である。
【0047】
比較的大きな重量を占める右発電機17Aと左発電機17Bとが左右対称に配置されるので、2つの発電用タービンが設けられた海流発電装置1において、重心Gを所望の位置に設定しやすくなっている。
【0048】
図4を参照して、第2実施形態に係る海流発電装置1Aについて説明する。
図4に示される海流発電装置1Aが第1実施形態の海流発電装置1と違う点は、液圧モータおよび発電機が個別に設けられず、共通に設けられている点である。すなわち、海流発電装置1Aは、右配管30Aおよび左配管30Bの両方に接続された共通の1台の液圧モータ27Cと、液圧モータ27Cの出力軸28Cに連結された共通の1台の発電機17Cとを備える。液圧モータ27Cおよび発電機17Cは、浮心Bの位置に対して、回転軸方向における前端22A,22B側に配置されている。すなわち、液圧モータ27Cおよび発電機17Cは、上記した第2仮想平面P2よりも前端側(第2端側)に配置されている。
【0049】
これらの液圧モータ27Cおよび発電機17Cは、たとえば、クロスビーム3の内部に設けられている。この場合、クロスビーム3は、内部に空洞を有する圧力容器として形成され得る。なお、液圧モータ27Cおよび発電機17Cをできるだけ前端側に配置するため、クロスビーム3を前端側に設けてもよい。海流発電装置1Aでは、液圧モータ27Cに接続された右配管30Aおよび左配管30Bにおける液体の圧力は、均等化され得る。
【0050】
海流発電装置1Aによれば、双発のタービンに対して、液圧モータ27Cおよび発電機17Cが共通に設けられる。この構成により、液圧モータ及び発電機の台数を1台ずつに減らすことができる。
【0051】
液圧モータ27Cおよび発電機17Cがクロスビーム3に設けられていると、回転軸方向に交差する方向(たとえば左右方向)において重心Gの位置を調整しやすい。たとえば、回転軸方向に交差する方向における中央(水中浮遊式発電装置の中央)に重心を配置することも容易である。海流発電装置1Aでは、液圧モータ27Cおよび右発電機17Aは、上記した第1仮想平面P1(
図3参照)上に配置されてもよい。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、右ポッド2Aと左ポッド2Bにおける液圧モータおよび発電機の配置が異なってもよい。液圧モータおよび発電機は、面対称の位置に配置されなくてもよい。右ポッド2Aと左ポッド2Bのいずれか一方のみにおいて、液圧モータおよび発電機が前端側(第2端側)に配置されていてもよい。
【0053】
第2実施形態において、共通の液圧モータおよび発電機は、連結部に設けられる場合に限られない。液圧モータおよび発電機は、発電用ポッドおよび連結部とは別の浮体の内部に搭載されてもよい。たとえば、連結部または2つの発電用ポッドのいずれかに固定された中央ポッドに、液圧モータおよび発電機が搭載されてもよい。この場合に、中央ポッドは、浮力を主に分担する圧力容器であって、海流発電装置1の全体に浮力を付与してもよい。
【0054】
第2実施形態において、共通の液圧モータおよび発電機が、一方のポッドに対してのみ搭載されてもよい。その場合は、重心を調整するよう、他方のポッドには別の重量物が搭載されてもよい。
【0055】
液圧モータおよび発電機は、浮心Bより後方側(第1端側)に設けられていればよい。すなわち、液圧モータおよび発電機は、浮心Bに対して、タービンとは反対側に設けられていればよい。液圧モータおよび発電機は、ポッドの端部に設けられる場合に限られず、浮心の位置と、ポッドの端部との中間の位置に設けられてもよい。
【0056】
本発明の一態様は、単発タービンからなる水中浮遊式発電装置であってもよい。その場合に、1つの発電用ポッドが設けられ、そのポッドの後端または前端に、二重反転ロータ機構が設けられてもよい。
【0057】
本発明の一態様は、3つ以上のポッドおよび3つ以上のタービンを備えた水中浮遊式発電装置であってもよい。その場合、第1端側のみに全タービンが設けられるが、重心を調整するために、液圧モータおよび発電機が第2端側に設けられ得る。