(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、物体検出装置、及び物体検出方法の実施形態を、図面を使用して説明する。なお、以下の実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示す、車両制御システム100は、車両に搭載されており、車両前方に位置する物体を検出する。そして、物体と車両とが衝突するおそれがある場合、自車両と物体との衝突の回避動作、又は衝突の緩和動作を実施する。本実施形態では、車両制御システム100は、各種センサ30と、物体検出装置として機能するECU(Electronic Control Unit)20と、運転支援装置40と、を備えている。
【0012】
各種センサ30は、ECU20に接続されており、物体に対する検出結果をこのECU20に出力する。
図1Aでは、各種センサ30は、電磁波センサ31と、画像センサ32と、自車周囲の明るさを検出する照度センサ33とを備えている。検出対象となる物体の内、電磁波センサ31により検出されるものと画像センサ32により検出されるものとを区別する場合、電磁波センサ31により検出される物体を電磁波物標と記載し、画像センサ32により検出される物体を画像物標と記載する。
【0013】
電磁波センサ31は、送信波の送信方向を自車前方に向けた状態で自車両の前側に配置されている。電磁波センサ31は、ミリ波やレーダ等の指向性のある送信波を送信し、この送信波に応じて電磁波物標から反射される反射波により物体の検出結果である第1検出位置や自車両を基準とする相対速度を検出する。そして、電磁波センサ31は、第1検出位置や相対速度を所定周期でECU20に送信する。
【0014】
第1検出位置P1は、
図2に示すように、自車両から物体までの距離を示す距離r1と、自車両を中心とする方位θ1とを含んでいる。距離r1は、自車両から物体までの直線距離として取得される。
【0015】
画像センサ32は、撮像方向を自車前方に向けた状態で自車両CSの前側に配置されている。画像センサ32は、自車正面を撮像した撮像画像を取得し、この撮像画像から物体を検出する。画像センサ32は、CCD(Charge coupled device)等の撮像素子を解像度に応じた数だけ縦横に配置して構成されている。この画像センサ32により取得される撮像画像は、画像センサ32の解像度に応じた画素により形成されている。本実施形態では、画像センサ32は、単眼カメラとして説明を行うが、ステレオカメラを用いるものであってもよい。
【0016】
第2検出位置P2は、距離r2と、方位情報と、を含んでいる。距離r2は、自車両から物体までの直線距離として取得される。方位情報は、画像センサ32を基準とする物体の各位置の角度を示している。この内、
図2では、物体の横方向での中心の位置を画像方位θ2として示している。また、方位情報には、物体の左右の横位置の方位差である幅角度が含まれる。本実施形態では、画像センサ32は、予め登録されている辞書を用いたテンプレートマッチング処理により撮像画像から物体を認識する。辞書には、物体の全体を対象とし、物体の種類ごとに用意されている。そして、撮像画像内で認識された物体の下端の位置から撮像画像の下端までの長さと、撮像画像内において予め算出されている消失点(Focus of Expansion; FOE)から撮像画像の下端までの長さの比に基づいて距離r2を算出する。また、認識された物体の各位置の方位により画像方位θ2や幅角度を算出する。
【0017】
ECU20は、入力バッファ11、マイクロコンピュータ12、EEPROM(EEPROMは登録商標)13、通信IF14を備えている。入力バッファ11は、電磁波センサ31から繰り返し送信される第1検出位置、及び画像センサ32から繰り返しで送信される第2検出位置を一時的に記録する。マイクロコンピュータ12は、不図示のCPU,ROM,RAM等を備えた周知のコンピュータとして構成されており、CPUがROMに格納されたプログラムを実行することで、自車前方の物体の位置の認識や、認識された物体との衝突を回避するための衝突回避制御の実施を行うための各機能を実現する。EEPROM13は、ECU20内で処理されるデータ等の、ECU20のメイン電源がオフされた際の記録領域として機能する。通信IF14は、マイクロコンピュータ12からの出力信号をECU20と接続された運転支援装置40に送信する。
【0018】
図1Bは、マイクロコンピュータ12が実施する各機能の内、衝突回避制御に関係する機能を中心に記載した機能ブロック図である。
【0019】
取得部21は、電磁波センサ31により繰り返し送信される物体の第1検出位置と、画像センサ32により繰り返し送信される物体の第2検出位置とを取得する。具体的には、取得部21は、入力バッファ11内において繰り返し更新される第1検出位置と第2検出位置とをラッチすることで、この第1位置と第2位置とを取得する。
【0020】
取得部21は、
図2に示すように、第1検出位置P1に基づいて、電磁波位置(X1,Y1)を算出する。電磁波位置は、自車両の横方向をX軸方向、画像センサ32の撮像軸の延びる方向をY軸方向とするXY平面上の位置である。ここで、
図2のXY平面は、自車両CSの先端位置の内、電磁波センサ31が設けられた位置を基準点Poとして設定されている。この内、X1は、基準点P0から物体までの横方向(X軸方向)での距離を示す。また、Y1は、基準点P0から物体までの進行方向(Y軸方向)での距離を示す。
【0021】
また、取得部21は、第2検出位置P2に基づいて、XY平面上の位置である画像位置(X2,Y2)を算出する。この内、X2は、基準点P0から物体までの横方向(X軸方向)での距離を示す。また、Y2は、基準点P0から物体までの進行方向(Y軸方向)での距離を示す。
【0022】
本実施形態では、第1検出位置P1と電磁波位置とが第1位置に対応し、第2検出位置P2と画像位置とが第2位置に対応している。そのため、本実施形態では、第1位置と記載するときは、第1検出位置P1と電磁波位置とを含み、第2位置と記載するときは、第2検出位置と画像位置とを含むものとする。
【0023】
物体判定部22は、取得部21が取得した第1位置と第2位置とに基づいて、物体の同一判定を行う。本実施形態では、物体判定部22は、第1検出位置P1に基づいて設定された電磁波探索領域Rrと、第2検出位置P2に基づいて設定された画像探索領域Riとの間に重なる領域OLが存在する場合に、電磁波物標と画像物標とを同一の物体として判定する。
【0024】
図2に示すように、電磁波探索領域Rrは、第1検出位置P1を基準として、距離方向及び方位方向のそれぞれについて、電磁波センサ31の特性に基づき予め設定されている想定誤差分の幅を持たせた領域である。例えば、物体判定部22は、第1検出位置P1(r1,θ1)から、距離方向の想定誤差、及び方位方向の角度の想定誤差分だけ広がる領域を、電磁波探索領域として設定する。
【0025】
画像探索領域Riは、第2検出位置P2を基準として、距離方向及び方位方向のそれぞれについて、画像センサ32の特性に基づき予め設定されている想定誤差分の幅を持たせた領域である。例えば、
図2では、物体判定部22は、第2検出位置P2(r2,θ2)から、距離方向の想定誤差、及び方位方向の角度の想定誤差分だけ広がる領域を、画像探索領域Riとして設定する。
【0026】
算出部24は、物体の同一判定が成された場合に、第1位置及び第2位置を用いて物体の位置情報を算出する。本実施形態では、位置情報として、物体のX軸方向(横方向)での中心位置を示す横位置と、物体のX軸方向での大きさを示す物体幅とを算出する。そのため、算出部24は、横位置を算出する第1算出部25と、物体幅を算出する第2算出部26と、を備えている。また、算出部24は、第1位置として取得した距離r1と、第2位置として取得した画像方位θ2とを融合して融合位置を算出するものであってもよい。
【0027】
第1算出部25は、
図3に示すように、第1位置として取得された電磁波距離Y1と、第2位置として取得された画像方位θ2とを用いて横位置を算出する。例えば、第1算出部25は、下記式(1)を用いて横位置を算出する。
SP=Y1×tan(θ2) … (1)
ここで、SPは横位置を示す。
【0028】
第2算出部26は、
図4に示すように、第2位置として取得された画像方位θ2及び幅角度θw、及び第1位置として取得された電磁波距離Y1を用いて物体幅Wを算出する。例えば、第2算出部26は、下記式(2)を用いて物体幅Wを算出する。
【0029】
W=Y1×{tan(θw+θ2/2)−tan(θw−θ2/2)} … (2)
ここで、Wは物体幅を示す。
【0030】
衝突判定部27は、物体と自車両との衝突可能性を判定する。衝突判定部27は、算出部24により算出された横位置に基づいて、物体が自車両に衝突するか否かを判定する。具体的には、衝突判定部27は、算出した横位置が自車両の前面に交わる場合、物体と自車両とが衝突する可能性があると判定する。
【0031】
制御部28は、運転支援装置40の駆動を制御することで、自車両と物体との衝突を回避するための衝突回避制御を実施する。具体的には、制御部28は、衝突判定部27により物体と自車両とが衝突すると判定された場合に、算出した物体幅に基づいて、衝突回避制御の作動タイミングを設定するための作動閾値を算出する。そして、制御部28は、作動閾値と衝突余裕時間(TTC: Time to Collision)を比較し、TTCが作動閾値よりも大きい場合、衝突回避制御を実施する。TTCとは、このままの自車速度で走行した場合に、何秒後に物体に衝突するかを示す評価値である。例えば、制御部28は、電磁波距離Y1を電磁波センサ31により検出された物体の相対速度で割ることによりTTCを算出する。
【0032】
制御部28は、自車両の前方に仮想的に設定された判定範囲と物体幅との横方向での重なり率を示すラップ率により作動閾値を設定する。
図5に示すように、ラップ率は、物体幅Wと判定範囲Wcdとが横方向において重なる長さの割合を示している。また、判定範囲Wcdは、自車両CSの前方に仮想的に設定され、横方向に所定長さだけ延びた領域である。本実施形態では、判定範囲Wcdとして自車両の前面における横幅を設定している。
【0033】
ECU20は、物体幅Wの内、判定範囲Wcdと重なる長さを下記式(3)に代入することで、ラップ率RRを算出する。
RR=Wor/Wcd … (3)
ここで、Worは、物体の横位置を基準として物体幅の位置を設定した場合に、X軸方向において判定範囲Wcdと重なる長さを示している。
【0034】
自車両CSの前方に先行車両PVが存在している状況で、自車両CSの車幅(判定範囲)と先行車両PVの物体幅とがオーバーラップしている場合には、そのラップ率RRに応じて衝突の危険性が変化する。すなわち、
図5では、自車両CSと先行車両PVとのラップ率RRが小さくなるほど(紙面左側となるほど)、衝突の危険性が低下する。一方、自車両CSと先行車両PVとのラップ率RRが大きくなるほど、衝突の危険性が増加する。
【0035】
そのため、制御部28は、ラップ率が小さく衝突の危険性が低くなるほど運転者の回避操作のタイミングに急を要しないため、ラップ率が小さい程、作動タイミングが遅くなるよう作動閾値を設定する。一方、ラップ率が大きく衝突の危険性が高くなるほど運転者の回避操作のタイミングに急を要するため、ラップ率が大きい程、作動タイミングが速くなるよう作動閾値を設定する。
【0036】
運転支援装置40は、ドライバに対して警報音を発する警報装置や、自車両の車速を減速させるブレーキ装置であり、物体が自車両に衝突する可能性がある場合に、物体との衝突を回避するための各種動作を行う。運転支援装置40がブレーキ装置であれば、TTCが作動閾値よりも短い場合に、自動ブレーキを作動させる。また、運転支援装置40が警報装置であれば、TTCが作動閾値よりも短い場合に、警報音を発する。
【0037】
ところで、電磁波センサ31が物体を検出するのに要する第1時間と、画像センサ32が物体を検出するのに要する第2時間とには、時間差が存在する。
図6に示すグラフでは、時間の推移とともに、自車前方において検出された物体の相対位置の変化を示している。
図6では、自車前方の物体が自車両に近づく場合の時間と距離との関係を示している。
【0038】
図6では、物体までの距離を取得する場合において、電磁波センサ31が物体を検出するのに要する第1時間と、画像センサが物体を検出するのに要する第2時間とに時間差ΔTが存在している。そのため、電磁波センサ31が距離D1を検出したタイミングでは、画像センサ32は、距離D1を検出しておらず、距離D1よりも過去の物体の位置であるD0を検出している。そのため、同じ時刻t1では、電磁波センサ31が検出する物体の位置と画像センサ32が検出する物体の位置との間に時間差ΔTで示される位置のずれが生じていることとなる。そのため、自車両が走行することで自車両と物体との相対位置が変化する状況下においては、ECU20は、電磁波センサ31による検出結果に基づく第1位置と、画像センサ32による検出結果に基づく第2位置とは異なる時刻での物体の位置を示すこととなり、この第1位置用いて物体の位置情報を算出することで、位置情報に誤差が生じるおそれがある。
【0039】
そこで、ECU20は、第1時間と第2時間との時間差を示す時間差情報に基づいて、第1位置と第2位置とが同じ時刻での物体の位置となるように第1位置及び第2位置のいずれかを補正する補正部23を備えている。第2位置の時刻に第1位置を合わせるよう補正する場合、補正部23は、第1位置の単位時間当たりの変化量と、時間差情報とを用いて第1位置を補正する。また、第1位置の時刻に第2位置を合わせる場合、補正部23は、第2位置の単位時間当たりの変化量と、時間差情報とを用いて第2位置を補正する。
【0040】
第1実施形態では、ECU20は、第1時間と第2時間との時間差を示す時間差情報を予め定められた値として保持しておく。ECU20に保持される時間差情報の算出方法の一例として、
図6に示すように、まず、横軸を時間とし、縦軸を電磁波センサ31による物体の検出結果(距離)とする近似式AF1を算出する。同様に、横軸を時間とし、縦軸を画像センサ32による物体の検出結果(距離)とする近似式AF2を算出する。なお、電磁波センサ31による物体の検出結果と、画像センサ32による物体の検出結果とは、同じ値である必要がある。そして、各近似式AF1,AF2における同じ検出結果の差の平均値により時間差情報を算出すればよい。
【0041】
電磁波センサ31と画像センサ32とのそれぞれの原理に基づいた設計値により時間差情報を算出するものであってもよい。この場合、例えば、電磁波センサ31から送信波を送信して反射波(受信波)を受信するまでに要する時間をA1秒、電磁波センサ31が反射波に基づいて物体の距離を算出するのにB1秒、算出した距離をECU20に送信するのにC1秒要する場合に、電磁波センサ31により物体を検出するのに要する第1時間をA1+B1+C1として算出する。また、画像センサ32での自車前方の撮像にA2秒、画像センサ32により物体を認識して距離を算出するのにB2秒、算出した距離の送信にC2秒要する場合に、画像センサ32により物体を検出するのに要する第2時間をA2+B2+C2として算出する。そして、算出した第1時間と第2時間との差により時間差を算出する。
【0042】
次に、ECU20より実施される衝突回避制御を、
図7を用いて説明する。
図7に示す処理は、ECU20により所定周期で実施される。また、この例では、自車前方に位置する先行車両を検出対象とする例を説明する。
【0043】
ステップS11では、第1位置及び第2位置を取得する。ECU20は、入力バッファ11に記録されている第1検出位置と第2検出位置とを同じタイミングでラッチすることで、両位置を同じタイミングで取得する。そして、ECU20は、検出した第1検出位置から電磁波位置(X1,Y1)を算出し、第2検出位置から画像位置(X2,Y2)を算出する。ステップS11が取得工程として機能する。
【0044】
ステップS12では、ステップS11で取得した第1位置及び第2位置に基づいて物体の同一判定を行う。具体的には、ECU20は、第1位置に基づいて設定された電磁波探索領域と、第2位置に基づいて設定された画像探索領域との間に重なる領域が存在する場合に、電磁波物標と画像物標とを同一の物体として判定する。ステップS12が物体判定工程として機能する。
【0045】
画像物標と電磁波物標とが同一であると判定された場合(ステップS12:YES)、ステップS13では、第1位置と第2位置の単位時間当たりでの変化量を算出する。本実施形態では、ECU20は、第1位置の変化量として、電磁波距離Y1の単位時間当たりの変化量を算出する。また、ECU20は、第2位置の変化量として、画像方位θ2の単位時間当たりの変化量を算出する。例えば、ECU20は、電磁波距離Y1の単位時間当たりの変化量を、自車両を基準とする先行車両の相対速度として算出する。自車両を基準とする先行車両の相対速度は、電磁波センサ31による検出結果を用いることができる。また、ECU20は、画像方位θ2の経時変化を履歴に保持しており、履歴に保持された各位置を用いて単位時間当たりの各位置の変化量を算出する。ステップS13が変化量算出部として機能する。
【0046】
ステップS14では、第2位置として取得された画像方位を、第1位置の時刻に補正した値である補正方位を算出する。
図8は、画像方位の補正方法を説明する図である。経時変化が大きい物体の横位置を位置情報として算出する場合、検出された時刻が新しい電磁波距離を基準として画像方位の位置を補正した方がよい。具体的には、ECU20は、下記式(4)を用いて、画像方位が現在の位置から時間差情報分だけ進んだと想定した場合での予測位置を補正方位として算出する。
【0047】
Cθ2=θ2+ΔT×ω … (4)
ここで、Cθ2は、補正方位を示し、ΔTは時間差情報を示す。ωは、ステップS13で算出した単位時間当たりの画像方位の変化量を示す。
【0048】
ステップS15では、ステップS14で算出した補正方位と、電磁波距離Y1とに基づいて物体の横位置を算出する。ECU20は、上記式(1)のθ2に代えて補正方位Cθ2を代入することで、横位置を算出する。
【0049】
ステップS16では、電磁波距離Yを補正した値である補正距離を算出する。
図9は、電磁波距離Yの補正方法を説明する図である。経時的な変化が小さい物体幅を位置情報として算出する場合、信頼性の高い画像方位の検出時刻に電磁波距離の位置を合わせた方がよい。具体的には、ECU20は、下記式(5)を用いて、電磁波距離Yが現在の位置から時間差情報分だけ戻ったと想定した場合での予測位置を補正距離として算出する。ステップS14及びS16が補正工程として機能する。
【0050】
CY1=Y1−ΔT×Vr1 … (5)
ここで、CY1は、補正距離を示し、Vr1は、ステップS13で算出した単位時間当たりの電磁波距離Y1の変化量を示す。
【0051】
ステップS17では、ステップS16で算出した補正距離と、幅角度とに基づいて物体幅を算出する。ECU20は、上記式(2)の電磁波距離Y1に代えて補正距離CY1を代入することで、物体幅を算出する。ステップS15及びS17が算出工程として機能する。
【0052】
ステップS18では、ステップS15で算出した横位置に基づいて、自車両と物体との衝突可能性を判定する。物体が自車両に衝突する可能性があると判定した場合(ステップS18:YES)、ステップS19に進む。一方、物体が自車両に衝突する可能性がないと判定した場合(ステップS18:NO)、
図7の処理を一旦終了する。
【0053】
ステップS19では、衝突回避制御の作動タイミングを設定する。まず、ECU20はステップS15で算出した横位置に、ステップS17で算出した横位幅の中心を設定することで、この物体幅のXY平面上での位置を設定する。そして、ECU20は、物体幅と判定範囲とのラップ率を算出し、このラップ率により作動閾値を設定する。
【0054】
ステップS20では、ステップS19で設定した作動閾値に基づいて、運転支援装置40を作動させる。そのため、ECU20は、TTCが作動閾値を超える場合に、運転支援装置40を駆動させることで、物体と自車両との衝突回避制御を実施する。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0056】
ECU20は、物体が同一と判定された場合に、電磁波センサ31により物体が検出されるのに要する第1時間と、画像センサ32により物体が検出されるのに要する第2時間との時間差に基づいて、第1位置と第2位置とが同じ時刻で検出された物体の位置となるよう第1位置及び第2位置のいずれかを補正する。そして、ECU20は、第1位置及び補正後の第2位置、又は第2位置及び補正後の第1位置を用いて物体の位置情報を算出する。この場合、電磁波センサ31と画像センサ32とが物体を検出するのに要する時間差を用いて第1位置と第2位置との位置のずれを補正することで、補正後の両位置を用いて算出される位置情報の誤差を低減することができる。
【0057】
ECU20は、第1位置又は第2位置の単位時間当たりの変化量を算出し、この単位時間当たりの変化量と時間差とを用いて第1位置と第2位置とが同じ時刻で検出された物体の位置となるよう第1位置及び第2位置のいずれかを補正する。この場合、自車両と物体との相対位置の変化度合いに即した補正量を得ることができ、自車両と物体との相対位置が時系列で大きく変化する場合でも、第1位置又は第2位置を適正に補正することができ、位置情報の誤差を低減することができる。
【0058】
また、第1位置と第2位置とを用いて、経時的な変化がない物体幅を位置情報として算出する場合、第1位置と第2位置との内、信頼性の高い第2位置の検出時刻に他方の位置を合わせた方がよい。ここで、経時的な変化がないとは、物体の幅が時間に応じて変化しないことをいい、自車両との距離が変化することで撮像画像内での物体幅が変化する場合を除く概念である。そのため、ECU20は、第1位置として取得された電磁波距離と第2位置として取得された幅角度とが同じ時刻で検出された物体の位置となるよう電磁波距離を補正する。そして、ECU20は、補正後の電磁波距離と幅角度とに基づいて、物体の横方向での大きさを示す物体幅を位置情報として算出する。この場合、信頼性の高い第2位置を基準として第1位置を補正することで、算出する物体幅の誤差を低減することができる。
【0059】
経時変化が大きい物体の中心位置を位置情報として算出する場合、第1位置又は第2位置の内、検出された時刻が新しい第1位置を基準として他方の位置を補正した方がよい。そのため、ECU20は、第1位置として取得した電磁波距離と第2位置として取得した画像方位とが同じ時刻で検出された物体の位置となるよう画像方位を補正する。そして、補正後の電磁波距離と画像方位とに基づいて、物体の横方向での中心位置である横位置を位置情報として算出する。この場合、経時的な変化が大きい物体の横位置を算出する場合に、この中心位置の誤差を低減することができる。
【0060】
(第2実施形態)
この第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
図10は、
図7のステップS16で実施される処理を説明するフローチャートである。
【0061】
ステップS31では、ステップS11で取得された第1位置に含まれる電磁波距離、及び第2位置に含まれる幅角度により第1仮位置情報を算出する。本実施形態では、第1仮位置情報として、物体幅を算出する。ステップS31が第1仮情報算出部として機能する。
【0062】
ステップS32では、ステップS17と同様、上記式(5)を用いて算出される補正距離、及び幅角度により第2仮位置情報を算出する。本実施形態では、第2仮位置情報として、物体幅を算出する。ステップS32が第2仮情報算出部として機能する。
【0063】
ステップS33では、ステップS31で算出した第1仮位置情報とステップS32で算出した第2仮位置情報との差分を算出する。
【0064】
ステップS34では、ステップS33で算出した差分を判定する。本実施形態では、ECU20は、ステップS33で算出した差分を閾値Th1と比較する。閾値Th1は、第1位置又は第2位置を補正しない場合の物体の位置情報からの変化量の許容値を示し、例えば、実験的に算出される値である。
【0065】
差分が閾値Th1を超える場合(ステップS34:YES)、ステップS35では、補正距離を、第1位置として取得された電磁波距離からガード値を超えない範囲の値とする。ECU20は、補正後の電磁波距離を用いて算出された物体幅が許容できる値を超えているため、補正距離を、時間差情報を用いて算出した値よりも小さい値とする。例えば、ECU20は、下記式(6)により補正距離を算出する。
【0066】
CY1=Y1±GV … (6)
ここで、GVは、ガード値を示す。
【0067】
一方、差分が閾値Th1以下の場合(ステップS34:NO)、ステップS36では、電磁波距離を、時間差を用いて補正することで、補正距離を算出する。この場合、ECU20は、上記式(5)を用いて補正距離を算出することとなる。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0069】
時間差情報に応じて第1位置又は第2位置を補正することで、各位置を用いて算出した位置情報の誤差が大きくなる場合がある。そのため、ECU20は、取得した第1位置及び第2位置により第1仮位置情報を算出し、第1位置及び補正後の第2位置、又は第2位置及び補正後の第1位置により第2仮位置情報を算出する。そして、ECU20は、第1仮位置情報と第2仮位置情報との差が所定閾値を超える場合、第1仮位置情報を所定閾値の範囲で変更したものを位置情報とし、第1仮位置情報と第2仮位置情報との差が所定閾値以下の場合、第2仮位置情報を位置情報とする。この場合、第1位置又は第2位置を補正したことで、位置情報の誤差が大きくなるのを防止し、位置情報の精度が低下するのを抑制することができる。
【0070】
(第3実施形態)
この第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。この第3実施形態では、時間差情報をECU20が第1検出位置及び第2検出位置を取得するタイミングに応じて算出することで、第2更新周期に遅延が生じた場合でも、時間差を適正に算出できるようにしている。
【0071】
図11では、第2更新周期UC2が、第1更新周期UC1の2倍の長さである場合を例示している。この場合、第2検出位置が1回更新される間に、第1検出位置は2回更新されることとなる。また
図11では、第1検出位置及び第2検出位置が時刻T11で更新された後、ECU20が時刻T12で第1検出位置及び第2検出位置をラッチしている。そのため、ECU20は、時刻T11での時間差情報を、電磁波センサ31が物体を検出するのに要する第1時間と、画像センサ32が物体を検出するのに要する第2時間との時間差に基づいて算出する。
【0072】
一方、時刻T13において第2更新周期に遅延が生じており、第2検出位置が時刻T13で更新されず時刻T15で更新されているものとする。この状況下において、時刻T13からT15の間であるT14でECU20が第1検出位置及び第2検出位置をラッチする場合、第1検出位置は更新されているが、第2検出位置は更新されていない状態となっており、第1更新周期分だけ時間差ΔTが大きくなる。
【0073】
そのため、この第3実施形態では、第2更新周期及び第1更新周期のカウント値に応じて、時間差情報の算出方法を変更する構成としている。なお、この第3実施形態において、時間差情報の算出方法としては、
図11に示すように、横軸を時間とし、縦軸を電磁波センサ31による物体の検出結果とする近似式AF11を算出する。また、横軸を時間とし、縦軸を画像センサ32による物体の検出結果とする近似式AF12を算出する。なお、
図11では、第1検出位置及び第2検出位置は、離散的に取得されているため、近似式AF11及びAF12を更新周期の立ち下がり位置を結ぶ線分として算出している。そして、各近似式AF11,AF12における同じ検出結果の差の平均値により時間差情報を算出すればよい。
【0074】
図12は、ECU20が時間差を算出するために実施する処理を説明するフローチャートである。例えば、ECU20は
図12の処理を所定周期で実施する。
【0075】
ステップS41では、第2検出位置が更新されてから新たに第2検出位置が更新されるまでの間での第1検出位置の更新回数をカウントする。更新回数は、第1検出位置及び第2検出位置の更新回数をカウントする値である。この実施形態では、ECU20は、第1検出位置の更新回数を記録する第1カウンターと、第2検出位置の更新回数を記録する第2カウンターと、を備えている。そのため、ECU20は、第1カウンターのカウント数の変化と、第2カウンターのカウント数の変化により、第2検出位置が更新されてから新たに第2検出位置が更新されるまでの間での第1検出位置の更新回数をカウントすることができる。ステップS41がカウント部として機能する。
【0076】
ステップS42では、ECU20により第1位置及び第2位置を取得した時点での更新回数が、第2更新周期内での第1検出位置が更新される回数を示す所定値Th11未満であるか否かを判定する。
図11の例では、第2更新周期は第1更新周期の2倍となるため、所定値Th11は、2に設定される。ステップS42が更新回数判定部として機能する。
【0077】
更新回数が閾値Th11以下であれば(ステップS42)、第2更新周期に遅延が生じていないとしてステップS43に進む。ステップS43では、電磁波センサ31が物体を検出するのに要する第1時間と、画像センサ32が物体を検出するのに要する第2時間との時間差に基づいて、時間差情報を取得する。本実施形態では、下記式(7)を用いて時間差情報を算出する。
【0078】
ΔT=ΔT0 … (7)
ここで、ΔT0は元となる時間差情報であり、例えば、ECU20が電磁波センサ31により物体を検出するのに要する時間と、画像センサ32により物体を検出するのに要する時間と、に基づいて算出された値である。
【0079】
更新回数が閾値Th11を超える場合、ステップS44では、閾値Th11を超える回数分の更新回数を用いて時間差情報を算出する。ECU20は、下記式(8)を用いて時間差情報を算出する。
ΔT=ΔT0+F×ΔUN … (8)
ここで、Fは更新回数を示し、ΔUNは、閾値Th11を超える第1検出位置の更新回数を示す。
【0080】
ステップS43及びS44が時間差取得部として機能する。そして、ECU20は、ステップS43又はS44の処理が終了すると、
図12の処理を一旦終了する。そのため、
図7のステップS14又はS16により、
図12の処理により算出された時間差を用いて、補正方位や補正距離が算出される。
【0081】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0082】
第2更新周期の遅延が生じた場合等により、第2検出位置の更新前に第1検出位置が更新されてしまう場合がある。そのため、ECU20は、第2検出位置の更新後であって、かつ新たに第2検出位置が更新されるまでの間において、第1検出位置が更新される更新回数をカウントする。そして、ECU20は、第1検出位置及び第2検出位置を取得した時点での更新回数が所定値以内であれば、第1時間と第2時間との差に基づいて時間差情報を取得する。一方、ECU20が第1検出位置及び第2検出位置を取得した時点での更新回数が所定値以上であれば、第1時間と第2時間との差に、所定値を超えた分の更新回数に応じた第1更新周期を加えた値を時間差情報として取得する。この場合、第2検出位置の更新周期に遅延が生じた場合でも、時間差を適正に算出することができる。
【0083】
(第4実施形態)
この第4実施形態では、第1実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。第4実施形態では、第1位置又は第2位置を補正する際に、補正の基準とする位置の信頼性に応じて、補正の有無を変更する。
【0084】
図13は、電磁波距離の信頼性の算定を説明する図である。
図13に示すグラフでは、横軸を電磁波距離Y1が示す基準点から物体までの距離とし、縦軸を信頼性としたグラフを示す。電磁波距離Y1は、所定範囲内において、基準点P0から物体までの距離が近い程、信頼性が高くなり、逆に、基準点P0から物体までの距離が遠い程、信頼性が低くなる。また、電磁波センサ31の受信強度が高い程、信頼性は高くなり、受信強度が低い程、信頼性は低くなる。なお、受信強度は、電磁波センサ31が第1検出位置をECU20に送信する際に、この第1検出位置に併せて電磁波センサ31からECU20に送信される。
【0085】
図14は、方位角度の信頼性の算定を説明するグラフである。
図14に示すグラフでは、横軸を画像方位θ2の角度とし、縦軸を信頼性としたグラフを示す。画像方位θ2は、Y軸を基準とする物体までの角度が小さい程、信頼性が高くなり、逆に、Y軸を基準とする物体までの角度が大きい程、信頼性が低くなる。また、自車両の周囲が明るい程、信頼性は高くなり、自車両の周囲が暗い程、信頼性は低くなる。なお、自車両の周囲の明るさは、照度センサ33による検出値を用いる他、ECU20が時間を計時することで、時間から明るさを判定する。
【0086】
ECU20は、
図7のステップS14の補正方位の算出において、電磁波距離の信頼性を算出し、算出した信頼性が閾値以上であれば、画像方位を補正する際の基準となる電磁波距離の信頼性が高いと判定し、補正方位を算出する。一方、電磁波距離の信頼性が閾値未満であれば、画像方位を補正する際の基準となる電磁波距離の信頼性が低いと判定し、ECU20は、画像方位の補正を実施しないこととする。例えば、ECU20は、
図13に示すグラフに対応するマップを記憶しており、このマップから電磁波距離の信頼性を算出する。
【0087】
また、ECU20は、
図7のステップS16の補正距離の算出において、画像方位の信頼性が閾値以上であれば、電磁波距離を補正する際の基準となる画像方位の信頼性が高いと判定し、補正距離を算出する。一方、画像方位の信頼性が閾値未満であれば、電磁波距離を補正する際の基準となる画像方位の信頼性が低いと判定し、ECU20は、電磁波距離の補正を実施しないこととなる。例えば、ECU20は、
図14に示すグラフに対応するマップを記憶しており、このマップから画像方位の信頼性を算出する。
【0088】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0089】
ECU20は、時間差情報に基づいて、第1位置と第2位置とが同じ時刻で検出された物体の位置となるよう第1位置を補正するに際し、第2位置の信頼性が閾値以上であることを条件に、第2位置を補正する。また、第1位置と第2位置とが同じ時刻で検出された物体の位置となるよう第2位置を補正するに際し、第1位置の信頼性が閾値以上であることを条件に、第2位置を補正する、こととした。この場合、基準となる各位置の信頼性に応じて第1位置又は第2位置の補正の有無を変更することで、補正後の位置を適正に算出することができる。
【0090】
(その他の実施形態)
・第1時間として第1検出位置の更新周期を用い、第2時間として第2検出位置の更新周期を用いることは一例に過ぎない。これ以外にも、ECU20は、電磁波距離と画像方位のそれぞれの位置に応じた時間差情報をマップとして記憶しておき、このマップを参照することで時間差情報を取得するものであってもよい。
【0091】
・第2実施形態において、
図7のステップS14における補正方位の算出において、ガード値を適用するものであってもよい。この場合において、ステップS31では、第1位置に含まれる電磁波距離、及び第2位置に含まれる方位角により横位置を第1仮位置情報として算出する。ステップS32では、電磁波距離、及び補正方位により横位置を第2仮位置情報として算出する。そしてステップS33で算出した差分が閾値を超える場合(ステップS34:YES)、ステップS35では、補正方位を、第2位置として取得された画像方位からガード値を超えない範囲の値とする。一方、差分が閾値以下の場合(ステップS34:NO)、ステップS36では、補正方位を、時間差情報を用いて算出する。
【0092】
・第2更新周期が第1更新周期よりも長いことは一例であり、第1更新周期が第2更新周期よりも長い場合であってもよい。この場合、第3実施形態では、ECU20は、
図12のステップS41において、第1検出位置が更新されてから新たに第1検出位置が更新されるまでの間での第2検出位置の更新回数をカウントする。そして、ステップS42での更新回数の判定結果に応じて、時間差情報の算出方法を変更する。
【0093】
・物体が同一であるか否かの判定方法として、以下のものを採用するものであってもよい。第1検出位置に基づいて、電磁波物標が自車両と衝突するまでの余裕時間としてTTCを算出し、かつ第2検出位置に基づいて、画像物標が自車両と衝突するまでの余裕時間を算出する。そして、
図7のステップS12において、算出された各TTCの差が閾値以下である場合に、電磁波物標と画像物標とを同一物体として判定する。また、ステップS11において、各TTCの差が閾値以下であることと、電磁波探索範囲と画像探索範囲との間に重なる範囲が存在することの両条件を、物体が同一であることの判定条件とするものであってもよい。
・ECU20がXY平面上の位置(X1,Y1)を検出することに代えて、電磁波センサ31がXY平面上の位置(X2,Y2)を検出するものであってもよい。また、ECU20がXY平面上の位置(X2,Y2)を検出することに代えて、画像センサ32がXY平面上の位置(X2,Y2)を検出するものであってもよい。