(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787114
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】樹脂製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 59/00 20060101AFI20201109BHJP
A44B 18/00 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
B29C59/00 Z
B29C59/00 J
A44B18/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-250984(P2016-250984)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-103436(P2018-103436A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 里奈
【審査官】
菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−015322(JP,A)
【文献】
特開昭48−095026(JP,A)
【文献】
特開昭55−150325(JP,A)
【文献】
特表平06−508315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00−59/02
A44B 13/00−18/00
B29D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製品本体部の接触面が繊維製品に張り付きが可能なように、前記接触面に複数の糸状の突起が形成されている樹脂製品を製造する樹脂製品の製造方法であって、
先端が鋭角に形成された板状金属の先端を前記樹脂製品本体部の接触面に押し込む押し込み工程と、
前記押し込み工程の前、あるいは押し込み工程中に前記板状金属を前記樹脂製品本体部の樹脂素材の溶融温度より高い温度まで加熱する加熱工程と、
前記板状金属の先端の周囲にある前記樹脂製品本体部の樹脂素材が溶融して溶融樹脂となり、前記溶融樹脂の周囲の樹脂素材が固化している状態で、前記板状金属を前記樹脂製品本体部の接触面から引き抜く引き抜き工程と、を有しており、
前記引き抜き工程では、前記板状金属の先端に付着した前記溶融樹脂が前記樹脂製品本体部の溶融樹脂から引き離されることで、前記溶融樹脂が糸状に伸びて前記突起が形成される樹脂製品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製品の製造方法であって、
前記板状金属を往復移動させることで、前記板状金属の先端を前記樹脂製品本体部の接触面に対して押し込み、あるいは引き抜く構成であり、
前記樹脂製品本体部の接触面と、前記板状金属の往復移動方向との成す角は鋭角に設定されており、
前記板状金属の先端角度と前記成す角との和が90度よりも小さな値に設定されている樹脂製品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の樹脂製品の製造方法であって、
定位置に設置されている固定装置と、前記固定装置に対して往復移動が可能な可動装置とを準備し、
多数の前記板状金属を前記固定装置、あるいは可動装置のいずれか一方に固定し、
前記樹脂製品本体部の接触面を前記往復移動方向に対して所定角度だけ傾斜させた状態で、前記樹脂製品本体部を前記固定装置、あるいは可動装置のいずれか他方にセットする樹脂製品の製造方法。
【請求項4】
請求項2から請求項3のいずれかに記載の樹脂製品の製造方法であって、
前記樹脂製品本体部の接触面に対して前記板状金属を往復移動させて、前記糸状の突起を形成した後、
前記樹脂製品本体部を予め決められた角度だけ回動させ、前記樹脂製品本体部の接触面に対して前記板状金属を往復移動させて、別の方向を向いた前記糸状の突起を形成する樹脂製品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂製品の製造方法であって、
前記樹脂製品本体部の接触面に対して垂直に設けられた回転中心軸を中心にして前記樹脂製品本体部を予め決められた角度だけ回動させる樹脂製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製品本体部の接触面が繊維製品に張り付きが可能なように、前記接触面に複数の糸状の突起が形成されている樹脂製品を製造する樹脂製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の樹脂製品は、車窓用の防虫網である。前記防虫網は、縁部を折り返して結合できるように、縁部にマジックテープ(登録商標)のフック状突起と、そのフック状突起が掛けられる糸輪とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−77953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したマジックテープ(登録商標)では、フック状突起と糸輪とが一対で使用されるため、フック状突起のみ、あるいは糸輪のみでは、結合の機能を果たすことはできない。このため、例えば、フック状突起、あるいは糸輪等のいずれか一方で結合の機能を果たす部材と比較すると、コスト高になる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、樹脂製品を繊維製品に張り付け可能にするため、樹脂製品の接触面に複数の糸状の突起を低コストで形成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、樹脂製品本体部の接触面が繊維製品に張り付きが可能なように、前記接触面に複数の糸状の突起が形成されている樹脂製品を製造する樹脂製品の製造方法であって、先端が鋭角に形成された板状金属の先端を前記樹脂製品本体部の接触面に押し込む押し込み工程と、前記押し込み工程の前、あるいは押し込み工程中に前記板状金属を前記樹脂製品本体部の樹脂素材の溶融温度より高い温度まで加熱する加熱工程と、前記板状金属の先端の周囲にある前記樹脂製品本体部の樹脂素材が溶融し
て溶融樹脂となり、前記溶融樹脂の周囲の樹脂素材が固化している状態で、前記板状金属を前記樹脂製品本体部の接触面から引き抜く引き抜き工程と、を有しており、前記引き抜き工程では、前記板状金属の先端に付着した前記溶融樹脂が前記樹脂製品本体部の溶融樹脂から引き離されることで、前記溶融樹脂が糸状に伸びて前記突起が形成される。
【0007】
本発明によると、板状金属の先端を加熱して樹脂製品本体部に押し込み、さらに板状金属を引き抜くようにする。これにより、板状金属の先端に付着した溶融樹脂が樹脂製品本体部の溶融樹脂から引き離されることで、前記溶融樹脂が糸状に伸びて前記突起が形成される。即ち、樹脂製品本体部の接触面の一部を溶融させて引き出すことで、糸状の突起を形成できるため、低コストで糸状の突起が形成された樹脂製品を製造できるようになる。また、樹脂製品は、複数の糸状の突起により繊維製品等に張り付けられる構成のため、樹脂製品が張り付けられる繊維製品側には何ら引っ掛け構造は必要とされない。即ち、マジックテープ(登録商標)等のように、張り付け側(一方)にフック状の突起を形成し、被貼り付け側(他方)にフック状の突起が掛けられる糸輪を設ける構造と比べて、経済的である。
【0008】
請求項2の発明によると、板状金属を往復移動させることで、前記板状金属の先端を前記樹脂製品本体部の接触面に対して押し込み、あるいは引き抜く構成であり、前記樹脂製品本体部の接触面と、前記板状金属の往復移動方向との成す角は鋭角に設定されており、前記板状金属の先端角度と前記成す角との和が90度よりも小さな値に設定されている。これにより、微細な糸状の突起を効率良く製造できるようになる。
【0009】
請求項3の発明によると、定位置に設置されている固定装置と、前記固定装置に対して往復移動が可能な可動装置とを準備し、多数の前記板状金属を前記固定装置、あるいは可動装置のいずれか一方に固定し、前記樹脂製品本体部の接触面を前記往復移動方向に対して所定角度だけ傾斜させた状態で、前記樹脂製品本体部を前記固定装置、あるいは可動装置のいずれか他方にセットする。これにより、樹脂製品本体部の接触面に多数の突起を一度に成形できるようになる。
【0010】
請求項4の発明によると、樹脂製品本体部の接触面に対して板状金属を往復移動させて、前記糸状の突起を形成した後、前記樹脂製品本体部を予め決められた角度だけ回動させ、前記樹脂製品本体部の接触面に対して前記板状金属を往復移動させて、別の方向を向いた前記糸状の突起を形成する。このように、樹脂製品本体部の接触面に方向の異なる糸状の突起を形成することで、樹脂製品を繊維製品に良好に張り付けられるようになる。
【0011】
請求項5の発明によると、樹脂製品本体部の接触面に対して垂直に設けられた回転中心軸を中心にして前記樹脂製品本体部を予め決められた角度だけ回動させる。これにより、樹脂製品本体部の接触面に方向の異なる糸状の突起を効率的に形成できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、樹脂製品を繊維製品に張り付け可能にするため、樹脂製品の接触面に複数の糸状の突起を低コストで形成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る樹脂製品の模式縦断面図である。
【
図2】前記樹脂製品の製造に使用される板状金属の拡大斜視図である。
【
図3】樹脂製品本体部の接触面に糸状の突起を形成する方法を表す側面図である。
【
図4】樹脂製品本体部の接触面に糸状の突起を形成する装置を表す側面図である。
【
図5】樹脂製品本体部の接触面に糸状の突起を形成する際の実施例、及び比較例を表示する表である。
【
図6】樹脂製品本体部の接触面に糸状の突起を形成する方法を表す側面図である。
【
図7】樹脂製品本体部の接触面に糸状の突起を形成する方法を表す側面図である。
【
図8】樹脂製品本体部の接触面に糸状の突起を形成する方法を表す斜視図である。
【
図9】樹脂製品本体部の接触面に糸状の突起を形成する方法を表す側面図である。
【
図10】樹脂製品本体部の接触面に糸状の突起を形成する方法を表す側面図である。
【
図11】板状金属の傾斜角度を変えた状態を表す側面図である。
【
図12】変更例に係る糸状の突起を形成する方法を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
<樹脂製品10の構成について>
以下、
図1から
図13に基づいて本発明の実施形態1に係る樹脂製品10、及びその製造方法について説明する。本実施形態に係る樹脂製品10は、例えば、腕や脚部に巻き付けられる樹脂バンドであり、繊維製品に接触する面12f(接触面12f)に、
図1に示すように、糸状の突起13(太さ約400μm)が多数形成されている。そして、多数の微細な突起13が繊維製品に絡まることで、樹脂製品10が繊維製品に張り付けられる。即ち、樹脂製品10は、樹脂バンド本体部12と、その樹脂バンド本体部12の接触面12fに形成された多数の糸状の突起13とから構成されている。即ち、前記樹脂バンド本体部12が本発明の樹脂製品本体部に相当する。ここで、樹脂製品10の樹脂素材としては、例えば、融点が95℃〜130℃のポリエチレン樹脂(PE)が使用される。
【0015】
<樹脂製品10の突起製造装置20について>
樹脂製品10の突起製造装置20は、樹脂バンド本体部12の接触面12fに多数の糸状の突起13を形成する装置である。突起製造装置20は、
図3等に示すように、加熱した板状金属21の先端を樹脂バンド本体部12の接触面12fに押し込み、その板状金属21の周囲の樹脂素材が溶融した状態で板状金属21を引き抜くことで糸状の突起13を形成する。突起製造装置20は、
図4に示すように、樹脂バンド本体部12を所定位置に位置決めする固定装置22と、多数の板状金属21を水平に保持した状態で前後移動(水平移動)する可動装置26とから構成されている。なお、
図4等に記載された前後、及び上下は突起製造装置20の前後、及び上下に対応している。
【0016】
固定装置22は、樹脂バンド本体部12の接触面12fを水平線に対して角度φで傾斜させた状態に保持できるように構成されている。固定装置22は、
図4に示すように、樹脂バンド本体部12を支持する傾斜回転テーブル25と、傾斜回転テーブル25の回転中心軸25jを回転可能な状態で支持するテーブル支持架台24とを備えている。回転中心軸25jは傾斜回転テーブル25に対して垂直に設けられており、前記回転中心軸25jがテーブル支持架台24に設けられたモータ等の駆動機構(図示省略)に連結されている。これにより、固定装置22の駆動機構が動作することで、傾斜回転テーブル25が回転中心軸25jの軸心回りに回動するようになる。また、固定装置22では、テーブル支持架台24に対する回転中心軸25jの傾斜角度が調整可能なように構成されている。これにより、傾斜回転テーブル25の水平線に対する傾斜角度φを、
図5の表に示すように、15°(実施例1)、30°(実施例2)、45°(実施例3)、55°(実施例4)と変化させることが可能になる。
【0017】
可動装置26は、
図4に示すように、多数の板状金属21を互いに平行な状態で水平に支持する金具支持架台27を備えている。即ち、金具支持架台27の下側には、多数の板状金属21を支持する金具支持部27sが傾斜した状態で設けられている。そして、多数の板状金属21が傾斜回転テーブル25上の樹脂バンド本体部12(接触面12f)の突起形成部位に対応して等間隔で位置決めされている。また、金具支持架台27の金具支持部27sには、多数の板状金属21を加熱する加熱装置28が設けられている。加熱装置28は、多数の板状金属21を樹脂素材の融点以上に加熱できるように構成されている。
【0018】
上記構成により、可動装置26が所定距離だけ前進することで、加熱装置28に加熱された板状金属21の先端が、
図3に示すように、傾斜回転テーブル25上の樹脂バンド本体部12の接触面12fに対して角度φの方向から押し込まれるようになる。また、可動装置26が後進することで、各々の板状金属21の先端が傾斜回転テーブル25にセットされた樹脂バンド本体部12の接触面12fから角度φの方向に引き抜かれる。即ち、前記突起製造装置20の前後方向が本発明における板状金属の往復移動方向に相当する。
【0019】
<板状金属21について>
板状金属21は、
図2等に示すように、先端楔形部21kと帯板部21wとからなるカッター刃形状の鋼板であり、
図5の表に示すように、糸状の突起13のサイズに応じて板厚寸法tが0.1mm、あるいは0.3mmのものが使用される。また、板状金属21の先端角度θは、例えば、35°に設定されている。さらに、板状金属21は、
図3に示すように、樹脂バンド本体部12の接触面12fに対して垂直な面と平行になるように保持されている。そして、この状態で、板状金属21は、前記樹脂バンド本体部12の接触面12fに対して角度φの方向から押し込まれ、あるいは角度φの方向に引き抜かれる。ここで、板状金属21の先端角度θと、樹脂バンド本体部12の接触面12fに対する板状金属21の往復移動方向(前後方向(水平方向))の成す角(角度φ)との和は、
図3に示すように、90°よりも小さな値に設定されている。
【0020】
<樹脂製品10の突起形成方法について>
次に、突起製造装置20を使用して樹脂製品10の樹脂バンド本体部12に糸状の突起13を形成する方法について説明する。先ず、突起製造装置20のテーブル支持架台24に対する回転中心軸25jの傾斜角度を調整し、板状金属21の往復移動方向(水平方向)に対する傾斜回転テーブル25の傾斜角度φを調整する。ここで、傾斜角度φ(角度φ)は、
図5の表に示すように、15°、30°、45°、55°のいずれかに設定するのが好ましい。次に、
図4に示すように、接触面12fを表側にした状態で樹脂バンド本体部12を傾斜回転テーブル25上にセットする。また、糸状の突起13の太さ寸法に合わせて、板状金属21の厚み寸法を決定し、厚み寸法が0.1mmの板状金属21、あるいは厚み寸法が0.3mmの板状金属21のいずれかを突起製造装置20の金具支持架台27にセットする。
【0021】
次に、突起製造装置20の金具支持架台27に設けられた加熱装置28により、板状金属21を樹脂バンド本体部12の樹脂素材の融点(溶融温度)以上に加熱する。この状態で、突起製造装置20の金具支持架台27を所定寸法だけ前進させ、
図6に示すように、板状金属21の先端を樹脂バンド本体部12の接触面12fに押し込むようにする。そして、一定時間後、板状金属21の先端の周囲にある樹脂バンド本体部12の樹脂素材が溶融し、その溶融樹脂12mの周囲の樹脂素材が固化している状態で、突起製造装置20の金具支持架台27を後進させる。これにより、板状金属21の先端が樹脂バンド本体部12の接触面12fから引き抜かれる。この結果、
図7〜
図9に示すように、板状金属21の先端に付着した溶融樹脂12mが樹脂バンド本体部12の溶融樹脂12mから引き離され、前記溶融樹脂12mが糸状に伸ばされる。そして、板状金属21の先端に付着した溶融樹脂12mが外れ、あるいは糸状に伸ばされた溶融樹脂12mが途中で切れることで、
図10に示すように、糸状の突起13が形成される。
【0022】
ここで、板状金属21の先端(先端楔形部21kの先端)は、
図2に示すように、傾斜上面21u、及び両側壁面21sが平坦面であるため、溶融樹脂12mが付着し易い。このため、板状金属21の先端を樹脂バンド本体部12の接触面12fから引き抜く際、溶融樹脂12mが良好に伸ばされる。なお、
図5における表の比較例に示すように、板状金属21の代わりに先端が円錐形の針形状金属を使用した場合、溶融樹脂12mが前記針形状金属の先端に付着し難く、溶融樹脂12mを良好に伸ばすことができなかった。
【0023】
このようにして、樹脂バンド本体部12の接触面12fに多数の糸状の突起13を形成した後、さらに突出方向が異なる突起13を形成する場合には、突起製造装置20の傾斜回転テーブル25を回転中心軸25jの軸心回りに所定角度回転させる。そして、上記したように、突起製造装置20の金具支持架台27を所定寸法だけ前進させ、さらに、一定時間後、金具支持架台27を後進させることで、突出方向が異なる突起13を形成することができる。また、傾斜角度が異なる突起13を形成する場合には、傾斜回転テーブル25の傾斜角度φを調整した後、上記手順を繰り返すことで、傾斜角度が異なる突起13を形成することができる。
【0024】
<本実施形態に係る樹脂製品10の長所>
本実施形態に係る樹脂製品10の製造方法によると、板状金属21の先端を加熱して樹脂バンド本体部12の接触面12f(樹脂製品本体部)に押し込み、さらに板状金属21を引き抜くようにする。これにより、板状金属21の先端に付着した溶融樹脂12mが樹脂バンド本体部12の溶融樹脂12mから引き離され、前記溶融樹脂12mが糸状に伸びて突起13が形成される。即ち、樹脂バンド本体部12の接触面12fの一部を溶融させて引き出すことで、糸状の突起13を形成できるため、低コストで糸状の突起13が形成された樹脂製品10を製造できるようになる。また、樹脂製品10は、複数の糸状の突起13により繊維製品等に張り付けられる構成のため、樹脂製品10が張り付けられる繊維製品側には何ら引っ掛け構造は必要とされない。即ち、マジックテープ(登録商標)等のように、張り付け側(一方)にフック状の突起を形成し、被貼り付け側(他方)にフック状の突起が掛けられる糸輪を設ける構造と比べて、経済的である。
【0025】
また、突起製造装置20は、板状金属21を水平方向に往復移動させることで、板状金属21の先端を樹脂バンド本体部12の接触面12fに対して押し込み、あるいは引き抜く構成であり、樹脂バンド本体部12の接触面12fと、水平線(往復移動方向)との成す角は角度φに設定されている。そして、角度φと板状金属21の先端角度θとの和が90度よりも小さな値に設定されている(
図3参照)。これにより、微細な糸状の突起13を効率良く製造できるようになる。また、樹脂バンド本体部12の接触面12fに方向の異なる糸状の突起13を形成することで、樹脂製品10を繊維製品に良好に張り付けられるようになる。
【0026】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、
図3等に示すように、板状金属21の先端楔形部21kの傾斜上面21uを上側にする例を示した。しかし、
図11に示すように、板状金属21の先端楔形部21kの傾斜上面21uを下側にすることも可能である。また、本実施形態では、
図3等に示すように、板状金属21の往復移動方向(水平方向)に対して傾斜回転テーブル25の傾斜角度φが鋭角になるように調整する例を示した。しかし、
図12に示すように、板状金属21の往復移動方向(水平方向)と傾斜回転テーブル25のテーブル面とを直角に配置し、樹脂バンド本体部12の接触面12fに対して直角に突起13を形成することも可能である。この場合、
図13に示すように、突起13の先端が重力で垂れ下がるようにすることで、突起13の先端にフック状の部位を形成することができる。
【0027】
また、本実施形態では、突起製造装置20の固定装置22に樹脂バンド本体部12をセットし、可動装置26に板状金属21と加熱装置28とを設ける例を示した。しかし、突起製造装置20の可動装置26に樹脂バンド本体部12をセットし、固定装置22に板状金属21と加熱装置28とを設ける構成でも可能である。また、本実施形態では、板状金属21を樹脂バンド本体部12の接触面12fに押し込む前に、前記板状金属21を加熱装置28により加熱する例を示した。しかし、板状金属21を樹脂バンド本体部12の接触面12fに押し込む際に、前記板状金属21を加熱装置28により加熱することも可能である。また、本実施形態では、樹脂バンド本体部12の樹脂素材としてポリエチレン樹脂(PE)を使用する例を示した。しかし、ポリエチレン樹脂(PE)の代わりにポリプロピレン樹脂(PP)等を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0028】
10・・・・樹脂製品
12・・・・樹脂バンド本体部(樹脂製品本体部)
12f・・・接触面
12m・・・溶融樹脂
13・・・・突起
21・・・・板状金属
22・・・・固定装置
24・・・・テーブル支持架台
25j・・・回転中心軸
25・・・・傾斜回転テーブル
26・・・・可動装置
27・・・・金具支持架台
27s・・・金具支持部
28・・・・加熱装置