(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構成要素[D]が、分子内に1〜4個のフェニル基を有し、そのうち少なくとも1個のフェニル基がオルト位またはメタ位にアミノ基を有する芳香族ポリアミンである請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料について詳細に説明する。
【0018】
本発明におけるエポキシ樹脂[A](構成要素[A]のことをエポキシ樹脂[A]ということがある)は、一般式[1]または[4]で示される繰り返しユニット内に、1つ以上の縮合多環芳香族炭化水素骨格と、主として2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂である。「主として」とは、繰り返しユニット内に2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂が40質量%以上であることを示す。エポキシ樹脂[A]は1分子中に芳香環や、ナフタレンやアントラセンなどの縮合多環芳香族炭化水素を含む。芳香族骨格を有する分子構造を導入することで、剛性が高まり、高い樹脂弾性率や耐熱性が得られる。一般式[1]または[4]に示される式中のXは、芳香族化合物および末端基を連結する。Tは縮合多環芳香族炭化水素または水素原子のいずれかを表す。式中Xは炭素数が1〜2のアルキレン基または一般式[2]で示される置換基のいずれかを表す。炭素数が小さいアルキレン基ほど、自由体積が小さく高い弾性率を得やすい。一般式[1]または[4]には、耐熱性と分子の剛性を高めるため、繰り返しユニットに少なくともひとつの縮合多環芳香族炭化水素が必要である。式中Yは一つの芳香環、あるいは縮合多環芳香族炭化水素であり、Zは縮合多環芳香族炭化水素である。式中YとZは同じ骨格でもよい。式中YとZには、両者にそれぞれ1つのグリシジルエーテル基、あるいはYまたはZのどちらか一方に一般式[3]で示される置換基を有し、繰り返しユニット中に2つのエポキシ基を有する構造が好ましい。得られる複合材料の機械強度のバランスから、1ユニット中のグリシジルエーテル基が2つであるものが主成分として40質量%以上含まれることが好ましい。一般式[1]または[4]を得る際、繰り返しユニット中のグリシジルエーテル基が3つまたは4つの化合物が含まれることがある。上記、機械強度のバランスの観点から、一般式[1]または[4]の化合物のエポキシ官能基数が2つである化合物がエポキシ樹脂[A]中の40〜80質量%であることが好ましい。なお、YとZの芳香環および縮合多環芳香族の主鎖との結合はオルト位でもメタ位でもよい。分子の屈曲構造により、分子鎖間の隙間である自由体積を埋めることで、硬化物の弾性率向上をはかる観点からは、分子の屈曲性のより大きなオルト位での結合が好ましい。また、一般式[1]または[4]で示される繰り返し数nは1以上の数を示す。式中nが小さいほど架橋密度が高まりエポキシ樹脂硬化物の弾性率が向上することから、nは1であることが好ましい。n=1のときの末端基Tは水素である。
【0019】
エポキシ樹脂[A]の配合量は、エポキシ樹脂総量100質量部に対し5〜40質量部とすることで、タック性やドレープ性など取り扱い性に優れたプリプレグを作製することができる。
【0020】
エポキシ樹脂[A]の市販品としては“エピクロン(登録商標)”HP−4770(DIC(株)製)、NC−7300L(ナフトール型エポキシ、日本化薬(株)製、エポキシ当量:220)が挙げられる。
【0021】
本発明に用いるエポキシ樹脂[B](構成要素[B]のことをエポキシ樹脂[B]ということがある)は、分子内に3個以上のグリシジル基を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂である。分子内のグリシジル基は3個または4個であると複合材料の機械的特性や耐熱性のバランスが取れるため好ましい。[B]としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、キシレンジアミン、アミノフェノールや、それらの構造異性体、ハロゲンや炭素数3以下のアルキル置換基を有する誘導体を前駆体とし、グリシジル化したものが好ましく用いられる。より具体的には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミンのグリシジル化合物、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0022】
エポキシ樹脂[B]の市販品としては次のものが例示される。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製)や、“アラルダイト(登録商標)”MY720、“アラルダイト(登録商標)”MY721、“アラルダイト(登録商標)”MY9512、“アラルダイト(登録商標)”MY9612、“アラルダイト(登録商標)”MY9634、“アラルダイト(登録商標)”MY9663(以上ハンツマンアドバンストマテリアル社製)などが挙げられる。キシレンジアミンのグリシジル化合物の市販品としてはTETRAD−X(三菱瓦斯化学(株)製)が挙げられる。トリグリシジルアミノフェノールの市販品としては、p−アミノフェノールを前駆体としてもつ“アラルダイト(登録商標)”MY0500、“アラルダイト(登録商標)”MY0510(以上ハンツマンアドバンストマテリアル社製)や“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)、m−アミノフェノールを前駆体としてもつ“アラルダイト(登録商標)”MY0600、“アラルダイト(登録商標)”MY0610(以上ハンツマンアドバンストマテリアル社製)などが挙げられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホンの市販品としてはTGDDS(小西化学(株)製)が挙げられる。
【0023】
エポキシ樹脂[B]は、これらの中から選ばれる2種類以上の異なるエポキシ樹脂を配合しても良い。
【0024】
エポキシ樹脂[B]の配合量は、機械特性を高いレベルでバランスさせるため、エポキシ樹脂総量に対し20〜95質量部、好ましくは40〜90質量部である。
【0025】
本発明に用いる熱可塑性樹脂[C](構成要素[C]のことを熱可塑性樹脂[C]ということがある)は、エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂であり、高い耐熱性を付与するという観点から、ガラス転移温度(以下Tgと略すことがある)は180℃以上のものが好ましく、分子内に芳香環を有することが好ましい。具体的にはポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホンが好ましく用いられる。
【0026】
スルホン系またはイミド系の熱可塑性樹脂[C]の市販品として、ポリエーテルスルホンとしては末端に水酸基を有する“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(住友化学(株)製)や、“Virantage(登録商標)”VW10700(Solvay Advanced Polymers社製)、末端が塩素化された“スミカエクセル(登録商標)”PES7600P(住友化学(株)製)、ポリエーテルイミドとしては末端に酸無水物やアミノ基を有する“Ultem(登録商標)”1010(Sabicイノベーティブプラスチックス(株)製)、ポリスルホンとしては“Virantage(登録商標)”VW30500(Solvay Advanced Polymers(株)製)などが挙げられる。
【0027】
ここで言う「エポキシ樹脂に可溶」とは、スルホン系またはイミド系の熱可塑性樹脂[C]をエポキシ樹脂に混合し加熱攪拌することで均一相をなす温度領域があることを指す。「均一相をなす」とは、目視で分離のない状態が得られることを指す。ある温度領域で均一相が形成可能であれば、それ以外の温度領域、たとえば23℃で分離が起こっても構わない。また、以下の方法で確認し溶解したと判断しても良い。すなわち、スルホン系またはイミド系の熱可塑性樹脂[C]の粉体をエポキシ樹脂に混合し、スルホン系またはイミド系の熱可塑性樹脂[C]のTgより低い温度で数時間、例えば2時間等温保持したときの粘度変化を評価したときに、初期粘度に対して10%以上粘度の増加が見られる場合、スルホン系またはイミド系の熱可塑性樹脂[C]がエポキシ樹脂に溶解可能であると判断してよい。
【0028】
スルホン系またはイミド系の熱可塑性樹脂[C]の配合量は、エポキシ樹脂の総量を100質量部としたとき1〜25質量部であることが好ましい。この範囲であると、タック、ドレープ性での取り扱い性に優れるとともに、エポキシ樹脂組成物の粘度調整を適切な範囲とすることができる。
【0029】
本発明に用いるエポキシ樹脂硬化剤[D](構成要素[D]のことをエポキシ樹脂硬化剤[D]ということがある)は、エポキシ樹脂と反応しうる活性基を有する化合物であれば良い。エポキシ樹脂と反応しうる活性基としては例えばアミノ基、酸無水基を有するものを用いることができる。エポキシ樹脂硬化剤は保存安定性が高いほど好ましいが、液状硬化剤は反応性が高いため、23℃で固形であることが好ましい。
【0030】
エポキシ樹脂硬化剤[D]は芳香族アミンであることが好ましく、耐熱性、および機械特性の観点から、分子内に1〜4個のフェニル基を有することが好ましい。さらに、分子骨格の屈曲性を付与することで樹脂弾性率が向上し機械特性向上に寄与できることから、エポキシ樹脂硬化剤の骨格に含まれる少なくとも1個のフェニル基が、オルト位またはメタ位にアミノ基を有するフェニル基である芳香族ポリアミン化合物であることがさらに好ましい。芳香族ポリアミン類の具体例をあげると、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、(p−フェニレンメチレン)ジアニリンやこれらのアルキル置換体などの各種誘導体やアミノ基の位置の異なる異性体などが挙げられる。これらの硬化剤は単独もしくは2種類以上を併用することができる。中でも、組成物により耐熱性を与える面からジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンが望ましい。
【0031】
芳香族ポリアミン硬化剤の市販品としては、セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”(三菱化学(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学ファイン(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DEA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DIPA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−MIPA(Lonza(株)製)および“Lonzacure(登録商標)”DETDA 80(Lonza(株)製)などが挙げられる。
【0032】
エポキシ樹脂硬化剤[D]の添加量は、エポキシ樹脂との組み合わせにより異なる。エポキシ樹脂のエポキシ基に対するエポキシ樹脂硬化剤[D]の活性水素量の比が0.6〜1.4とすることで、硬化を十分に進めるとともに、過剰な硬化剤による機械特性への悪影響を低減することができるため好ましく、より好ましくは0.65〜1.4である。
【0033】
また、本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤[D]には、有機酸ヒドラジド化合物を併用して用いることができる。有機酸ヒドラジド化合物を用いることで、ハニカム構造材成形温度領域における樹脂粘度が高まり、樹脂フローを抑制することが可能である。有機酸ヒドラジド化合物の配合量は、少なすぎると粘度の所望の増粘効果が得られず、多すぎると機械特性が低下するとともに、樹脂組成物の保管安定性が損なわれることから、エポキシ樹脂組成物総量に対し、0.01〜10質量%配合するとよい。この範囲にあるとき、樹脂組成物の硬化反応性を向上する効果と樹脂組成物の熱安定性や硬化物の耐熱性の低下を抑制が可能となる。
【0036】
有機酸ヒドラジド化合物としては、構造式が上記の一般式[5]または一般式[6]で表される有化合物が特に好ましく用いられる。一般式[5]および一般式[6]において、Aは、単環芳香族構造、多環芳香族構造、縮合多環芳香族構造、芳香族複素環構造から選ばれる構造であり、置換基として炭素数4以下のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基のいずれかを有してもよい。
【0037】
一般式[5]または一般式[6]で表される有機酸ヒドラジド化合物は分子内に芳香環構造を有しているため、脂肪族ヒドラジドと比較して剛直な分子骨格であり、エポキシ樹脂硬化物とした際の耐熱性に優れるため好ましい。また、一般式[5]または一般式[6]で表される有機酸ヒドラジド化合物は脂肪族ヒドラジドと比較してエポキシ樹脂との反応性に優れ、エポキシ樹脂組成物とした際に高い樹脂フロー抑制効果が得られるため好ましい。
【0038】
ここで、一般式[5]または一般式[6]においてAで表される単環芳香族としては、ベンゼン環、多環芳香族としては、ビフェニル環、トリフェニル環、縮合多環芳香族としてはナフタレン環、アントラセン環、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものなどが挙げられる。
【0039】
一般式[5]または一般式[6]においてAで表される芳香族複素環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環およびフェナンスロイミダゾール環、等が挙げられる。
【0040】
このような有機酸ヒドラジド化合物としては、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、および、イソフタル酸ジヒドラジド等を好ましく挙げることができる。これらの有機酸ヒドラジド化合物は、必要に応じて2種類以上を混合して配合して使用してもよい。
【0041】
本発明において、エポキシ樹脂硬化剤[D]と有機酸ヒドラジド化合物の配合量は、エポキシ樹脂[A]およびエポキシ樹脂[B]のエポキシ基1個に対し、エポキシ樹脂硬化剤[D]と有機酸ヒドラジド化合物の活性水素の合計が0.7〜1.3個の範囲になる量であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2個になるように配合する。ここで、活性水素とは有機化合物において窒素、酸素、硫黄と結合していて、反応性の高い水素原子をいい、例えば、アミノ基の活性水素は2個である。ヒドラジドは末端の窒素原子に結合した水素原子のみがエポキシ基との反応に寄与するため、ヒドラジド基一つに対して活性水素は2個として計算する。エポキシ基と活性水素の比率が所定の前記の範囲内である場合、耐熱性や弾性率に優れた樹脂硬化物が得られるため好ましい。
【0042】
本発明において、一般式[5]または一般式[6]に記載されている有機酸ヒドラジド化合物以外のヒドラジド化合物を必要に応じて配合することができる。例えば、カルボジヒドラジド、マロン酸ヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド等が挙げられる。これらは有機酸ヒドラジド化合物と同様に樹脂組成物の硬化反応性を向上させる効果がある。しかしながら、これら一般式[5]または一般式[6]に記載されている以外のヒドラジド化合物の配合量が多いと樹脂硬化物の耐熱性が低下したり、熱安定性が低下したりすることがあるため、エポキシ樹脂組成物総量に対して、10質量%以下が好ましい。
【0043】
本発明には、構成要素[A]〜[D]に加え、さらに構成要素[E]として2官能のエポキシ樹脂を用いても良い。構成要素[E]を加えることで、機械特性と耐熱性のバランスをとったり、樹脂の粘度を適宜調整したりすることが可能となる。構成要素[E]としては、2官能のエポキシ樹脂であれば問わないが、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ビナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を好ましく例示できる。
【0044】
エポキシ樹脂[E](構成要素[E]のことをエポキシ樹脂[E]ということがある)のビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”825、“jER(登録商標)”826、“jER(登録商標)”827、“jER(登録商標)”828、“jER(登録商標)”834、“jER(登録商標)”1001、“jER(登録商標)”1002、“jER(登録商標)”1003、“jER(登録商標)”1004、“jER(登録商標)”1004AF、“jER(登録商標)”1007、“jER(登録商標)”1009(以上三菱化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”850(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD−128(新日鐵住金化学(株)製)、DER−331、DER−332(ダウケミカル社製)、などが挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては“jER(登録商標)”806、“jER(登録商標)”807、“jER(登録商標)”1750、“jER(登録商標)”4002,“jER(登録商標)”4004P、“jER(登録商標)”4007P、“jER(登録商標)”4009P(以上三菱化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”830(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD−170、“エポトート(登録商標)”YD−175、“エポトート(登録商標)”YDF2001、“エポトート(登録商標)”YDF2004(新日鐵住金化学(株)製)などが挙げられる。
【0045】
エポキシ樹脂[E]の配合量は、エポキシ樹脂総量100質量部に対し5質量部以上40質量部とすることで高い機械特性の複合材料が得られるため好ましい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を主成分として50質量%以上含む粒子を配合してもよい。熱可塑性樹脂を主成分とする粒子は、本発明の繊維強化複合材料の耐衝撃性を付与するために配合される。一般的に繊維強化複合材料は積層構造をとっており、これに衝撃が加わると層間に高い応力が発生し、剥離損傷が生じる。よって、外部からの衝撃に対する耐衝撃性を向上させる場合は、繊維強化複合材料の強化繊維からなる層と層との間に形成される樹脂層(以降、「層間樹脂層」と表すこともある)の靭性を向上すればよい。本発明において、構成要素[C]を配合しているが、さらに、本発明の繊維強化複合材料の層間樹脂層を選択的に高靭性化するためである。なお、当該粒子の主成分である熱可塑性樹脂は、構成要素[C]に用いられる熱可塑性樹脂と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0047】
かかる粒子の成分である熱可塑性樹脂としてはポリアミドやポリイミドを好ましく用いることができ、中でも、優れた靭性のため耐衝撃性を大きく向上できる、ポリアミドは最も好ましい。ポリアミドとしてはポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66やポリアミド6/12共重合体、特開平01−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたポリアミド(セミIPNポリアミド)などを好適に用いることができる。この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。
【0048】
ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500、SP−10、TR−1、TR−2、842P−48、842P−80(以上、東レ(株)製)、 “オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)、“グリルアミド(登録商標)”TR90、TR55(以上、エムスケミ社製)、“TROGAMID(登録商標)”CX7323、CX9701、CX9704、(以上、デグサ(株)社製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0049】
本発明の繊維強化複合材料の層間樹脂層を選択的に高靭性化するためには、熱可塑性樹脂を主成分とする粒子を層間樹脂層に留めておくのが望ましい。層間樹脂層に粒子を留めておく手法として、繊維表面上またはエポキシ樹脂組成物中に粒子を配置させたプリプレグを積層する手法が好適に用いられる。そのため、熱可塑性樹脂を主成分とする粒子の数平均粒径は5〜50μmの範囲であるとよく、好ましくは7〜40μmの範囲、より好ましくは10〜30μmの範囲である。数平均粒径を5μm以上とすることで、粒子が強化繊維の束の中に侵入せず得られる繊維強化複合材料の炭素繊維表面上またはエポキシ層間樹脂組成物層中に留まることができ、数平均粒径を50μm以下とすることでプリプレグ表面のマトリックス樹脂層の厚みを適正化し、さらには得られる繊維強化複合材料において、繊維質量含有率を適正化することができる。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物をプリプレグのマトリックス樹脂として用いる場合、樹脂の流動性の指標である樹脂粘度は以下のように測定する。すなわち、動的粘弾性装置を用い、上下治具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部のプレート間距離が1mmとなるようにエポキシ樹脂組成物をセット後、角周波数3.14rad/sで測定したときの80℃の粘度が、0.5Pa・s以上であると、繊維強化複合材料の成形時に過剰な樹脂フローが生じにくくなり、強化繊維含有量のばらつきを抑制できる。一方、粘度が200Pa・s以下であると、プリプレグを製造する際に強化繊維にエポキシ樹脂組成物を充分に含浸でき、得られた繊維強化複合材料中にボイドが生じにくくなるため、繊維強化複合材料の強度低下を抑制できる。そのため、エポキシ樹脂組成物の粘度は、0.5〜200Pa・sであることが好ましく、取り扱い性が良好な5〜100Pa・sの範囲にあることがより好ましい。
【0051】
さらにハニカム構造体成形時の樹脂フローが適切であることから、動的粘弾性装置を用い、上下治具に直径25mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部のプレート間距離が1mmとなるようにエポキシ樹脂組成物をセット後、角周波数3.14rad/sで40℃から120℃まで、1.5℃/分で昇温し、120℃で1時間温度一定とした後のエポキシ樹脂組成物の粘度(以下120℃1時間ホールド後の粘度またはη120hと略す)が10〜50Pa・sの範囲にあることが好ましい。この範囲であるとき、樹脂の流動性が適切であり、ハニカムコア材への接着性や、最終成形物の機械特性が優れるため好ましい。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、炭素繊維と組み合わせて炭素繊維強化複合材料として用いることができる。炭素繊維としては、既知の炭素繊維であれば、いずれのものでも用いることができるが、ストランド引張試験におけるストランド強度が3000MPa以上7500MPa以下であり、かつ弾性率が200GPa以上450GPa以下であるものが好ましく用いられる。なお、ストランド引張試験とは、束状の炭素繊維に下記組成のマトリックス樹脂を含浸させ、130℃の温度で35分間硬化させた後、JIS R7601(1986)に基づいて行う試験をいう。
【0053】
・3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P、株式会社ダイセル社製):100質量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(例えば、ステラケミファ株式会社製):3質量部
・アセトン(例えば、和光純薬工業株式会社製):4質量部。
【0054】
炭素繊維のフィラメント数は1000〜100000本が好ましく、より好ましくは、3000〜50000本である。炭素繊維フィラメント数が1000未満であると、プリプレグ化する際の作業が繁雑となり、100000本より多いとフィラメント間に樹脂を含浸させることが困難になり含浸不良が起きることがある。
【0055】
炭素繊維の形態は、連続繊維を一方向に配列させて用いることや、平織り、朱子織、綾織などの織物の形態で用いることが好ましく、かかる炭素繊維により層を形成されるものであることが好ましい。ここで連続繊維とは平均10mm以上の長さを有する繊維を示す。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物を繊維強化複合材料として用いる場合、事前に繊維基材に樹脂を含浸させたプリプレグとし、それを後述の方法で成形して使用しても良い。
【0057】
本発明のプリプレグとは、連続した炭素繊維を一方向に並べシート状にしたものや炭素繊維織物などの炭素繊維から成る基材にエポキシ樹脂組成物を含浸させたもの、もしくは炭素繊維基材の少なくとも片方の表面にエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層を配置したもの、またはエポキシ樹脂組成物の一部を含浸させ、残りの部分を少なくとも片方の表面に配置したものである。含浸もしくは配置した時点でのエポキシ樹脂組成物が流動性を有することは、所定の形に成形する際に作業性が向上するため好ましい。
【0058】
プリプレグは以下に説明するウェット法、ホットメルト法などにより製造することができる。ウェット法とは、強化繊維基材をエポキシ樹脂組成物と溶媒からなる溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法であり、ホットメルト法とは、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙やフィルム等の上にコーティングし薄膜化したものを作製しておき、次いで強化繊維からなる層の両側または片側から前記エポキシ樹脂組成物の薄膜を重ね、加熱加圧することにより強化繊維に転写しエポキシ樹脂組成物を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため好ましい。
【0059】
プリプレグの単位面積あたりの炭素繊維質量が70〜1000g/m
2であることが好ましい。かかる炭素繊維質量が70g/m
2未満では、炭素繊維強化複合材料成形の際に、所定の厚みを得るために積層枚数を多くする必要があり、作業が繁雑になることがある。一方で、炭素繊維質量が1000g/m
2を超えると、プリプレグのドレープ性が悪くなる傾向にある。また、プリプレグ中の炭素繊維含有率は、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜85質量%であり、さらに好ましくは40〜80質量%である。炭素繊維含有率が30質量%以上であれば、炭素繊維強化複合材料の特徴である高い比強度や比弾性率が有効に活用でき、90質量%以下であれば、均一な成形物が得やすくなるため好ましい。
【0060】
繊維基材として炭素繊維織物を使用する場合、炭素繊維織物の経糸、緯糸の交絡部に生じる目隙部はプリプレグを製造した時点で5%以下であることが好ましい。織物プリプレグの裏面側から、光を当てながら織物プリプレグの表面を実態顕微鏡で写真撮影する。織糸部分は黒く、目隙部分は白く、織物の透過光パターンが撮影される。画像処理により全体の面積S1と、白い部分(目隙部分)の面積S2としたときに、S2/S1により目隙部の割合を計測することができる。
【0061】
上述のプリプレグを積層した後、その積層体に圧力を付与しながら樹脂を加熱硬化させる方法等により、本発明の炭素繊維強化複合材料が作製される。ここで、熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が挙げられる。ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、炭素繊維強化複合材料製の管状体を成形する方法であり、ゴルフシャフト、釣り竿等の棒状体を作製する際に好適な方法である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定および圧力付与のため、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからなるラッピングテープを捲回し、オーブン中で樹脂を加熱硬化させた後、芯金を抜き取って管状体を得る方法である。また、内圧成形法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、成形する方法である。本方法は、ゴルフシャフト、バット、テニスやバドミントン等のラケットのような複雑形状の物を成形する際に好ましく用いられる。
【0062】
本発明の炭素繊維強化複合材料をオートクレーブやオーブン内で成形する場合の硬化温度、時間としては、選択した硬化剤や硬化触媒の種類と量により最適な温度、時間が異なるが、130℃以上の耐熱性が必要な用途では、120〜220℃の温度で、0.5〜8時間かけて硬化させることが好ましい。昇温速度は、0.1〜10℃/分昇温が好ましく用いられる。昇温速度が0.1℃/分未満では、目標とする硬化温度までの到達時間が非常に長くなり作業性が低下することがある。また、昇温速度が10℃/分を超えると、気流や内部発熱の影響で強化繊維各所での温度差が生じてしまうため、均一な硬化物が得られなくなることがある。
【0063】
本発明の炭素繊維強化複合材料を成形する際は、加減圧は必須ではないが、必要に応じて加減圧してもよい。加減圧することで、表面の品位向上や、内部ボイドの抑制、硬化時に接着させる金属やプラスチック、繊維強化複合材料製の部品との密着性向上などの効果が得られる場合がある。
【0064】
本発明の炭素繊維強化複合材料は、航空機構造部材、風車羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピューター用途さらにはゴルフシャフトやテニスラケットなどスポーツ用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。各種物性の測定は次の方法により行った。特に断りのない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境で測定した。
ここで、実施例5、6、8、12、16は参考実施例である。
【0066】
構成要素[A]
一般式
[4]におけるXがメチレン基、Yがナフタレン骨格、Zがナフタレン骨格であるエポキシ樹脂。
・“エピクロン(登録商標)”HP−4770(ビスナフタレン型エポキシ、DIC(株)製、エポキシ当量:205)。なお“エピクロン”HP−4770は特開2011−213784公報記載によると、ビスナフタレン型エポキシ樹脂の3官能、4官能体も含まれている。
一般式[1]
におけるXがメチレン基、Yがトルエン骨格、Zがナフタレン骨格であるエポキシ樹脂。
・NC−7300L(ナフトール型エポキシ、ナガセケムテックス(株)製、エポキシ当量:220)。
【化4】
【化5】
(一般式[1]中、Xは、炭素数が1のアルキレン基を表す。Yは、一つの芳香環あるいは縮合多環芳香族炭化水素を表す。Zは、縮合多環芳香族炭化水素を表す。YとZはそれぞれひとつのグリシジルエーテル基を有するか、YまたはZどちらか一方に一般式[3]で示される置換基を有し、繰り返しユニット中に主として2つのエポキシ基を有する構造を持つ。なお、YとZの芳香環および縮合多環芳香族の主鎖との結合はオルト位でもメタ位でもよい。Tは縮合多環芳香族炭化水素または水素原子のいずれかを表す。)
【0067】
構成要素[B]
・“ARALDITE(登録商標)”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマンアドバンスドマテリアル社製、エポキシ当量:112)
・TGDDS(テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、小西化学(株)製、エポキシ当量:112)
・“ARALDITE(登録商標)”(登録商標)MY0510(トリグリシジル−p−アミノフェノール、ハンツマンアドバンスドマテリアル社製、エポキシ当量:100)
・“ARALDITE(登録商標)”登録商標)MY0600(トリグリシジル−m−アミノフェノール、ハンツマンアドバンスドマテリアル社製、エポキシ当量:105)。
【0068】
構成要素[C]
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(水酸基末端ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製、Tg=225℃)
・“Virantage(登録商標)”VW−10700RP(水酸基末端ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製、Tg=220℃)
・“スミカエクセル(登録商標)”PES7600P(塩素末端ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製、Tg=225℃)
・“Virantage(登録商標)”VW−30500RP(ポリスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製、Tg=205℃)
・“ULTEM(登録商標)”1010(ポリエーテルイミド、Sabic Innovative Plastics(株)製、Tg=215℃)。
【0069】
構成要素[D]
・3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製、活性水素当量:62、23℃で固形)
・セイカキュアS(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化工業(株)製、活性水素当量:62、23℃で固形)
・“Lonzacure(登録商標)”MIPA(4,4’−メチレンビス(2−メチル−6−イソプロピル)ベンゼンアミン、Lonza(株)製、活性水素当量:78、23℃で固体)。
【0070】
有機酸ヒドラジド化合物
・イソフタル酸ジヒドラジド、大塚化学(株)製。
【0071】
構成要素[E]
・“jER(登録商標)”807(ビスフェノールF型エポキシ、三菱化学(株)製、エポキシ当量:170)
・“jER(登録商標)”825(ビスフェノールA型エポキシ、三菱化学(株)製、エポキシ当量:175)。
【0072】
熱可塑性樹脂粒子
“グリルアミド(登録商標)”TR55(エムスケミ社製)を衝撃式粉砕機により粉砕分級することにより数平均粒径20μmの粒径の微粒子とした。
【0073】
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
ニーダー中に、構成要素[A]のエポキシ樹脂、構成要素[B]のエポキシ樹脂、構成要素[C]の熱可塑樹脂、構成要素[E]のエポキシ樹脂を加熱しつつ混練し、構成要素[C]を溶解させ透明な粘稠液を得た。この液に、構成要素[D]の硬化剤を添加混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。各実施例、比較例の成分配合比は表1〜5に示すとおりであった。
【0074】
(2)エポキシ樹脂組成物の80℃粘度(η80)測定、120℃1時間ホールド後の粘度(η120h)測定
エポキシ樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性装置ARES−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて測定した。上下部測定冶具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の冶具間距離が1mmとなるように該エポキシ樹脂組成物をセット後、角周波数:3.14rad/sで測定した。40℃から120℃まで速度1.5℃/分で昇温し、80℃の粘度η80を読み取った。
直径25mmの平板のパラレルプレートを用いた以外は同様にして、40℃から120℃まで速度1.5℃/分で昇温し、120℃で1時間ホールドした後の120℃1時間ホールド後の粘度(η120h)を求めた。
【0075】
(3)樹脂硬化物の曲げ試験
未硬化の樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製のスペーサーを用い、厚み2mmになるよう設定したモールド中で、180℃の温度で2時間硬化させた。得られた厚み2mmの樹脂硬化物を幅10±0.1mm、長さ60±1mmでカットし、試験片を得た。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いJIS−K7171(1994)に従い、スパン間32mmの3点曲げを実施し、弾性率を測定した。測定数はN=6とし、その平均値を求めた。
【0076】
(4)吸湿させた樹脂硬化物の高温環境下での曲げ試験
(3)に示す寸法に作成した試験片を98℃の恒温槽に20時間浸漬後、(3)に示すインストロン万能試験機(インストロン社製)に設置した恒温槽を121℃に設定し、3分間槽内の環境に保持した後、(3)と同様の測定条件で弾性率を測定した。
【0077】
(5)樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)
上記(3)で得られた樹脂硬化物のガラス転移温度について、示差走査熱量計(DSC)を用いて、JIS−K7121(1987)に基づいてもとめ、中間点温度をTgとした。
【0078】
(6)織物プリプレグの作製
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を離型紙上にコーティングし、所定の樹脂目付の樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムをプリプレグ作製機にセットし、強化繊維織物の両面から重ね、加熱加圧して熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、繊維目付193g/m
2、樹脂含有率が38質量%の織物プリプレグを作製した。なお、強化繊維織物は“トレカ(登録商標)”T400H−3K(繊維数3000本、引張強度4410MPa、引張弾性率250MPa、引張伸度1.8%)からなる平織織物を用いた。
【0079】
(7)繊維強化複合材料の引張試験
織物プリプレグの経糸方向を揃え9枚積層してオートクレーブ中で温度180℃、圧力6.10kgf/cm
2Paで2時間加熱加圧して硬化し、複合材料を作製した。得た複合材料から、幅25±0.5mm、長さ250±1.0mm、タブ間スパン130±1.0mmの試験片を作製し、EN2597Bに従い、経糸引張強度を測定した。
【0080】
(8)繊維強化複合材料の圧縮試験
織物プリプレグの経糸方向を揃え9枚積層して、上記(7)の成形条件で成形した複合材料から、幅12.5±0.2mm、長さ75〜80mm、タブ間スパン5.25±0.25mmの試験片を作製し、EN2850Bに従い、経糸圧縮強度を測定した。
【0081】
(9)繊維強化複合材料の耐衝撃性試験
織物プリプレグ24枚を経糸方向を0°として[45°/0°/−45°/90°]
3s(記号sは、鏡面対称を示す)で疑似等方的に積層し、上記(7)の成形条件で成形した複合材料から、幅100±0.2mm、長さ150±0.2mmの試験片を作製した。この中央に落下高さ468mmで5.4kgの落錘衝撃を与えた後SACMA SRM 2R−94が示す圧縮治具用治具を用い、クロスヘッドスピード0.5mm/minで圧縮し、圧縮強度を求めた。測定数はN=6とし、その平均値を求めた。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
本発明においては、樹脂硬化物の弾性率が4.0GPa以上、吸湿高温下での樹脂硬化物の弾性率が2.4GPa以上、樹脂硬化物のTgが180℃以上、経糸引張強度が700MPa以上、経糸圧縮強度が850MPa以上を合格とした。
【0088】
また、すべての実施例においてη80が0.5〜200MPa・s以内にあり、プリプレグ作製時のエポキシ樹脂組成物の含浸性が良好であることを確認し、得られたプリプレグは、プリプレグどうしの貼り付き性・金属板への貼り付き性(タック性)が良好であること確認した。
【0089】
<実施例1〜12、18>
表1〜2に示すとおり、実施例1〜12では構成要素[A]、[B]、[C]、[D]を配合し、得られた樹脂硬化物および繊維強化複合材料の試験を行い、各物性とも優れた弾性率、Tg、経糸引張強度および経糸圧縮強度が得られた。
【0090】
<実施例13〜14>
表2に示すとおり、構成要素[B]を2成分とした以外は実施例1〜12と同様にして得られた樹脂硬化物および繊維強化複合材料の試験を行い、優れた物性が得られた。
【0091】
<実施例15〜17、19>
表2に示すとおり、構成要素[A]、[B]、[C]、[D]に、さらに構成要素[E]を加えた以外は実施例1〜12と同様にして得られた樹脂硬化物および繊維強化複合材料の試験を行い、優れた物性が得られた。
【0092】
<比較例1〜7>
表3に示すとおり、比較例1のように構成要素[A]を含まない場合、樹脂硬化物の弾性率および経糸圧縮強度が低下した。比較例2のように構成要素[B]を含まない場合、樹脂硬化物の弾性率および経糸圧縮強度が低下した。比較例3のように構成要素[B]を含む量が少ないとき、樹脂硬化物の弾性率および経糸圧縮強度が低下した。比較例4のように構成要素[C]を含まない場合、樹脂硬化物の弾性率、吸湿高温下での樹脂硬化物の弾性率、経糸引張強度、経糸圧縮強度ともに低下した。比較例5のように構成要素[A]と構成要素[C]を両方とも含まない場合、樹脂硬化物の弾性率が低く経糸圧縮強度も低下した。比較例6のように構成要素[A]が過多である場合、樹脂硬化物の弾性率、吸湿高温下での樹脂硬化物の弾性率、経糸圧縮強度ともに低下した。比較例7のように、構成要素[E]が過多であるとき、樹脂降下物の弾性率、吸湿高温下での樹脂硬化物の弾性率、経糸圧縮強度が低下した。
【0093】
<実施例20>
表4に示すとおり、エポキシ樹脂組成物の調製時に熱可塑性樹脂粒子を入れた以外は、実施例1と同様に織物プリプレグを作製し、繊維強化複合材料の層間樹脂層を形成し、繊維強化複合材料の耐衝撃性を実施例1の場合と比較した。熱可塑性樹脂粒子を付与した実施例20では、実施例1に比べ耐衝撃性が向上していることが確認できた。
【0094】
<実施例21>
表5に示すとおり、エポキシ樹脂組成物の調製時に有機酸ヒドラジド化合物として実施例21ではイソフタル酸ジヒドラジドを入れた以外は、実施例18と同様に構成要素[A][B][C][D]を配合し、エポキシ樹脂組成物の粘度測定、得られた樹脂硬化物および繊維強化複合材料の試験を行った。120℃1時間ホールド後の粘度(η120h)は実施例18に対し、有機酸ヒドラジド化合物を入れた実施例21では25Pa・s、まで上昇し、ハニカム成形性が良好な粘度範囲となった。有機酸ヒドラジド化合物を入れることで、吸湿高温下での樹脂硬化物弾性率はわずかに低下したが、合格範囲内であった。