特許第6787135号(P6787135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787135
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】照射光学系およびプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/042 20060101AFI20201109BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20201109BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   G06F3/042 473
   G06F3/041 495
   G03B21/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-573196(P2016-573196)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2015084354
(87)【国際公開番号】WO2016125384
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2018年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-21020(P2015-21020)
(32)【優先日】2015年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 利文
【審査官】 菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0139467(US,A1)
【文献】 特開2001−282445(JP,A)
【文献】 特開平10−097002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/042
G03B 21/00
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光の面内分布を均一な面内分布に近づける均一化部と、
前記均一化部によって均一な面内分布に近付けられた光を所定の方向に発散させる照射レンズ部と
を備え、
前記照射レンズ部は、前記光源側から順に、前記所定の方向に負の屈折力を有する第1および第2のシリンドリカルレンズを含み、
前記第2のシリンドリカルレンズは、光の入射面と光の射出面とを含み、以下の条件を満足する
照射光学系。
|Rout|>|Rin| ……(1)
ただし、
Rin:前記所定の方向における前記光の入射面の曲率半径
Rout:前記所定の方向における前記光の射出面の曲率半径
とする。
【請求項2】
前記照射レンズ部は、
前記第1のシリンドリカルレンズに対する光の入射高をh、光の最大の入射高をhmaxとしたとき、
h=0.8hmax以上1.0hmax以下の高さにおいて、以下の条件を満足する第1および第2の光線の組み合わせが、少なくとも1組存在するように構成されている
請求項1に記載の照射光学系。
θin1<θin2 ……(2)
θout1>θout2 ……(3)
ただし、
θin1:前記第1のシリンドリカルレンズへの前記第1の光線の入射角
θin2:前記第1のシリンドリカルレンズへの前記第2の光線の入射角
θout1:前記第1のシリンドリカルレンズからの前記第1の光線の射出角
θout2:前記第1のシリンドリカルレンズからの前記第2の光線の射出角
とする。
【請求項3】
前記1および第2のシリンドリカルレンズのいずれか一方における光の入射面と射出面とのいずれか1つの面に、変曲点を有する
請求項1に記載の照射光学系。
【請求項4】
可視光投影面に映像を投影する可視光投影光学系と共に用いられ、
前記照射レンズ部は、前記可視光投影面に対して略平行となる光の膜を形成する
請求項1に記載の照射光学系。
【請求項5】
前記可視光投影面に対応する領域での前記光の膜の厚みは、10mm未満である
請求項に記載の照射光学系。
【請求項6】
前記光源はレーザ光源である
請求項1に記載の照射光学系。
【請求項7】
前記光源は波長700nm以上の赤外光を発する赤外光源である
請求項1に記載の照射光学系。
【請求項8】
前記均一化部は、2つのシリンドリカルレンズアレイを含む
請求項1に記載の照射光学系。
【請求項9】
前記均一化部は、シリンドリカルレンズアレイと偏光分離素子とを含む
請求項1に記載の照射光学系。
【請求項10】
前記均一化部は、さらにミラーを含み、
前記偏光分離素子に対して、前記光源が第1の方向に配置され、前記シリンドリカルレンズアレイと前記ミラーとが第2の方向に配置され、前記照射レンズ部が第3の方向に配置され、
前記偏光分離素子は、前記光源からの光のうち第1の偏光成分を前記シリンドリカルレンズアレイと前記ミラーとに向けて反射すると共に、前記ミラーで反射され、再度、前記シリンドリカルレンズに入射した光のうち第2の偏光成分を前記照射レンズ部に向けて出射する
請求項に記載の照射光学系。
【請求項11】
可視光投影面に映像を投影する可視光投影光学系と、
前記可視光投影面に対して略平行となる光の膜を形成する照射光学系と
を備え、
前記照射光学系は、
光源からの光の面内分布を均一な面内分布に近づける均一化部と、
前記均一化部によって均一な面内分布に近付けられた光を所定の方向に発散させる照射レンズ部と
を含み、
前記照射レンズ部は、前記光源側から順に、前記所定の方向に負の屈折力を有する第1および第2のシリンドリカルレンズを含み、
前記第2のシリンドリカルレンズは、光の入射面と光の射出面とを含み、以下の条件を満足する
プロジェクタ。
|Rout|>|Rin| ……(1)
ただし、
Rin:前記所定の方向における前記光の入射面の曲率半径
Rout:前記所定の方向における前記光の射出面の曲率半径
とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばインタラクティブ検知技術に用いられる照射光学系、および映像を投影するプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
LLP(Laser Light Plane)方式によるインタラクティブ検出が、プロジェクタや大型スクリーンでのインタラクティブ検知技術として知られている(特許文献1,2参照)。インタラクティブ検知技術としては、照射光学系によって光の薄い膜をプロジェクタの投影面等の検出可能面上に生成する方法が知られている。その光の薄い膜に対して指等の物体が通過すると、通過した部位に散乱光が生ずる。その散乱光を検出光としてカメラで検出する。これにより、物体の部位を判断してインタラクティブ操作等を行うことができる。インタラクティブ検知技術では通常、照射光を視覚的に分からないようにするために赤外光線が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−191961号公報
【特許文献2】特開2009−205442号公報
【特許文献3】特開2004−258620号公報
【特許文献4】米国特許第4826299号明細書
【特許文献5】特開2001−282446号公報
【発明の概要】
【0004】
プロジェクタの仕様として、超広角での映像投影が要求される場合がある。この場合、投影光学系としては例えば、特許文献3に記載されているような超短焦点レンズを用いることが考えられる。また、インタラクティブ検知技術における照射光学系としては、例えばロッドレンズや特許文献5に記載のような一方向にのみ屈折力を有するレンズを用いることが考えられる。また、特許文献4に記載のようなレーザラインジェネレータレンズ(パウエルレンズ)を用いることが考えられる。しかしながら、超広角のプロジェクタにインタラクティブ検知技術を適用する場合、照射光学系で広角な範囲を照射することが困難となり、製造が煩雑になり得る。また、面内の光量の調整自由度が少なくなり得る。
【0005】
従って、均一に近い光の膜を形成することができるようにした照射光学系およびプロジェクタを提供することが望ましい。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る照射光学系は、光源からの光の面内分布を均一な面内分布に近づける均一化部と、均一化部によって均一な面内分布に近付けられた光を所定の方向に発散させる照射レンズ部とを備え、照射レンズ部が、光源側から順に、所定の方向に負の屈折力を有する第1および第2のシリンドリカルレンズを含み、第2のシリンドリカルレンズが、光の入射面と光の射出面とを含み、以下の条件を満足するものである。
|Rout|>|Rin| ……(1)
ただし、
Rin:所定の方向における光の入射面の曲率半径
Rout:所定の方向における光の射出面の曲率半径
とする。
【0007】
本開示の一実施の形態に係るプロジェクタは、可視光投影面に映像を投影する可視光投影光学系と、可視光投影面に対して略平行となる光の膜を形成する照射光学系とを備え、照射光学系が、光源からの光の面内分布を均一な面内分布に近づける均一化部と、均一化部によって均一な面内分布に近付けられた光を所定の方向に発散させる照射レンズ部とを含み、照射レンズ部が、光源側から順に、所定の方向に負の屈折力を有する第1および第2のシリンドリカルレンズを含み、第2のシリンドリカルレンズが、光の入射面と光の射出面とを含み、以下の条件を満足するものである。
|Rout|>|Rin| ……(1)
ただし、
Rin:所定の方向における光の入射面の曲率半径
Rout:所定の方向における光の射出面の曲率半径
とする。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る照射光学系またはプロジェクタでは、光源からの光の面内分布が均一に近づけられ、その光が第1および第2のシリンドリカルレンズを含む照射レンズ部によって、所定の方向に発散する。
【0009】
本開示の一実施の形態に係る照射光学系またはプロジェクタによれば、面内分布が均一に近づけられ光を第1および第2のシリンドリカルレンズを含む照射レンズ部によって所定の方向に発散させるようにしたので、均一に近い光の膜を形成することができる。
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】LLP方式によるインタラクティブ検出の概念を模式的に示す説明図である。
図2】広角、かつプロジェクタの近傍に映像投影する場合における赤外照射の概念を模式的に示す説明図である。
図3】2本のロッドレンズを用いた赤外照射の概念を模式的に示す説明図である。
図4図3に示した赤外照射の状態を正面方向から見た一例を示す説明図である。
図5】投影レンズ兼受光レンズを用いたインタラクティブ検出の概念を模式的に示す説明図である。
図6図5に示した投影レンズ兼受光レンズを介して観察される赤外照射光の面内分布の一例を模式的に示す説明図である。
図7】本開示の第1の実施の形態に係るプロジェクタの一構成例を示す断面図である。
図8】比較例に係る照射光学系のY方向の一構成例を示す光学系断面図である。
図9】比較例に係る照射光学系のX方向の一構成例を示す光学系断面図である。
図10】比較例に係る照射光学系の具体的な数値設計例に対応する光学系断面図である。
図11】比較例に係る照射光学系を用いた場合の赤外照射光の角度分布の一例を模式的に示す説明図である。
図12】比較例に係る照射光学系を用いた場合の赤外照射光の面内分布の一例を模式的に示す説明図である。
図13】可視光投影光学系により取り込まれる光の面内分布の一例を模式的に示す説明図である。
図14図12図13の面内分布を合わせた最終的な光の面内分布(赤外撮像素子に取り込まれる光の面内分布)の一例を模式的に示す説明図である。
図15】照射光学系にパウエルレンズを用いた場合の赤外照射光の角度分布の一例を模式的に示す説明図である。
図16】本開示の第1の実施の形態に係る照射光学系の一構成例を示す光学系断面図である。
図17図16に示した照射光学系における照射レンズ部の非球面の作用を模式的に示す説明図である。
図18図16に示した照射光学系による赤外照射光の面内分布の一例を模式的に示す説明図である。
図19図16図13の面内分布を合わせた最終的な光の面内分布(赤外撮像素子に取り込まれる光の面内分布)の一例を模式的に示す説明図である。
図20】第1の実施の形態の第1の変形例に係る照射レンズ部の一構成例を示す光学系断面図である。
図21】第1の実施の形態の第2の変形例に係る照射レンズ部の一構成例を示す光学系断面図である。
図22】第2の実施の形態に係る照射光学系の一構成例を示す光学系断面図である。
図23】第3の実施の形態に係る照射光学系の一構成例を示す光学系断面図である。
図24】第3の実施の形態の変形例に係る照射光学系の一構成例を示す光学系断面図である。
図25】第4の実施の形態に係る照射光学系の一構成例を示す光学系断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
0.インタラクティブ検出の課題(図1図6
1.第1の実施の形態
1.1 プロジェクタの説明(図7
1.2 比較例に係る赤外照射光学系の構成および課題(図8図15
1.3 第1の実施の形態における赤外照射光学系の構成(図16
1.4 第1の実施の形態における赤外照射光学系の作用・効果(図17図19
1.5 変形例
1.5.1 第1の変形例(図20
1.5.2 第2の変形例(図21
1.5.3 その他の変形例
2.第2の実施の形態(図22
3.第3の実施の形態
3.1 構成(図23
3.2 変形例(図24
4.第4の実施の形態(図25
5.その他の実施の形態
【0012】
<0.インタラクティブ検出の課題>
図1は、LLP方式によるインタラクティブ検出の概念を模式的に示している。
インタラクティブ検知技術では、照射光学系として例えばロッドレンズ111やレーザラインジェネレータレンズ(パウエルレンズ)を用いて、図1のように薄い光の膜132をプロジェクタの投影面131等の検出可能面上に生成する。光の膜132は、例えばプロジェクタの投影面131に対して所定の高さに生成する。また、照射光は通常、視覚的に分からないようにするために赤外光110が用いられる。ロッドレンズ111は、所定の方向(図中X方向)にのみ屈折力を有し、入射した赤外光110を所定の方向に発散させることで光の膜132を生成する。
【0013】
図1に示したように、薄い光の膜132に対して指等の指示物(物体)121が通過すると、通過した部位に散乱光122が生ずる。その散乱光122を検出光としてカメラ112で検出する。これにより、物体121の部位を判断してインタラクティブなタッチ操作等を行うことができる。
【0014】
このようなインタラクティブ検知技術を、特に超広角のプロジェクタに適用する場合、以下で説明するように、照射光学系で広角な範囲を照射することが困難となり、製造が煩雑になり得る。また、面内の光量の調整自由度が少なくなり得る。
【0015】
(広角な範囲をカバーが困難。製造が煩雑)
図2は、広角、かつプロジェクタの近傍に映像投影する場合における赤外照射の概念を模式的に示している。例えば、図2に示すように非常に広角な範囲を、しかも近傍に映像投影するプロジェクタ113に対して、ロッドレンズ111やパウエルレンズ等を用いて投影面131上に光の膜132を生成する場合、X方向に高々全幅90°程度の角度範囲までしか照射光を生成することができない。
【0016】
このため、投影面131のすべてのエリアをカバーするためには、ロッドレンズ111やパウエルレンズの配置数を2本や4本といった複数本使う必要が出てくる。図3は、2本のロッドレンズ111A,111Bを用いた赤外照射の概念を模式的に示している。図4は、図3に示した赤外照射の状態を正面方向から見た一例を示している。
【0017】
しかしながら、複数のロッドレンズ111A,111Bを配置した場合、傾く等により、互いの配置角度にばらつきが生ずると、図4に示したように、生成される光の膜132A,132Bに角度的なばらつきが生ずる。この結果として、面内の位置により物体検出可能な高さが不適当に高くなり、タッチ操作に違和感が生じる。傾きが大きい場合には、製造段階で調整を行うことになり、調整工程が非常に煩雑になるおそれがある。
【0018】
(面内の光量の調整自由度が少ない)
図5は、投影レンズ兼受光レンズを用いたインタラクティブ検出の概念を模式的に示している。図6は、図5に示した投影レンズ兼受光レンズを介して観察される赤外照射光の面内分布の一例を模式的に示している。
【0019】
図5に示したように、映像の投影レンズと検出光の受光レンズとを1つにした投影レンズ兼受光レンズ114を用いて、映像の投影と物体121の検出光の取り込みとを行う方法が知られている。特に超短焦点のプロジェクタにおいて、1つの投影レンズ兼受光レンズ114を用いてインタラクティブ検出を行う場合、本来均一だった照射光の面内分布が、例えば図6に示したように偏って映る現象が想定される。これは、投影レンズ兼受光レンズ114の周辺光量比やビネッティング、像高による透過率変化、および影係数の変化等によって生ずる。この面内分布の偏りに対してデジタル的に補正をかけることも想定されるが、ダイナミックレンジ面での限界もあるため、照射光学系によって光量分布を変える方法がより有力である。この場合、ロッドレンズ111やパウエルレンズでは、面内分布をどこにどれだけ重点的に配分するかといった自由度が少ない。すなわち、置く位置や角度の自由度が少ない。結果的に、ロッドレンズ111やパウエルレンズを用いた場合、照射光の面内分布を狙った通りに近づけ、ひいてはインタラクティブシステム全体としての面内分布の均一化が難しい。照射光の面内分布が均一でないインタラクティブシステムの場合、操作によっては誤検出されるおそれがある。
【0020】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 プロジェクタの全体構成]
図7は、本開示の第1の実施の形態に係るプロジェクタの一構成例を示している。
本実施の形態に係るプロジェクタは、映像投影と共に、物体検出を行うインタラクティブ検出機能を備えている。
【0021】
このプロジェクタは、赤外照射部1と、可視光投影・赤外光受光部4とを備えている。
可視光投影・赤外光受光部4は、可視光照明部5と、偏光分離素子6と、ライトバルブ7と、可視光投影光学系8と、赤外光受光部9とを備えている。
【0022】
可視光照明部5は、赤色光源51Rと、緑色光源51Gと、青色光源51Bと、ダイクロイックミラー52,53と、可視光照明光学系54とを有している。
【0023】
赤色光源51Rは赤色光を発する例えば赤色レーザ光源である。緑色光源51Gは、緑色光を発する例えば緑色レーザ光源である。青色光源51Bは青色光を発する例えば青色レーザ光源である。ダイクロイックミラー52は、赤色光源51Rからの赤色光をダイクロイックミラー53に向けて透過する一方、緑色光源51Gからの緑色光をダイクロイックミラー53に向けて反射する。ダイクロイックミラー53は、ダイクロイックミラー52からの赤色光と緑色光とを可視光照明光学系54に向けて透過する一方、青色光源51Bからの青色光を可視光照明光学系54に向けて反射する。
【0024】
可視光照明光学系54は、赤色光、緑色光、および青色光からなる可視光による映像投影用の照明光を生成して、偏光分離素子6を介してライトバルブ7を照明する。偏光分離素子6は、可視光照明光学系54からの照明光のうち所定の偏光成分をライトバルブ7に向けて反射する。
【0025】
ライトバルブ7は、例えばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の反射型の液晶素子である。ライトバルブ7は、可視光照明光学系54からの照明光のうち所定の偏光成分を映像データに基づいて変調する。ライトバルブ7はまた、その変調光を偏光分離素子6を介して可視光投影光学系8に向けて出射する。ライトバルブ7からは、入射時とは偏光状態が回転された偏光成分が変調光として出射される。なお、ライトバルブ7では、入射した偏光成分をそのままの偏光状態でライトバルブ7に戻すことで黒表示を行うことが可能である。これにより、可視光の映像が生成される。
【0026】
可視光投影光学系8は、例えば広角の超短焦点レンズで構成される。ライトバルブ7で生成された可視光41の映像は、可視光投影光学系8によってスクリーン等の可視光投影面31上に表示される。
【0027】
赤外照射部1は、赤外光源2と、照射光学系3とを備えている。赤外光源2は例えば波長700nm以上の赤外光を発する赤外レーザ光源である。照射光学系3は、可視光投影面31に対して略平行となる光の膜32を形成する。光の膜32は、可視光投影面31に対して所定の高さを有し、少なくとも可視光投影面31に対応する領域31Aに形成する。光の膜32に指等の物体が入ると、指等の物体に当たった赤外光が散乱する。この散乱した赤外光が検出光42として、可視光投影光学系8を介して、赤外光受光部9で検出される。
【0028】
赤外光受光部9は、赤外撮像素子61と、赤外受光光学系62とを有している。赤外撮像素子61は、可視光投影面31と共役の関係にあり、実際に赤外光が散乱した位置が光るように映ることで、指等の物体の位置を検出することができる。
【0029】
本実施の形態において、赤外照射部1の照射光学系3は、具体的には図16に示すように構成されるが、図16に示す構成を説明する前に、まず、比較例に係る赤外照射光学系の構成および課題を説明する。
【0030】
[1.2 比較例に係る赤外照射光学系の構成および課題]
図8は、比較例に係る照射光学系のY方向の断面の構成例を示している。図9は、比較例に係る照射光学系のX方向の断面(上面方向から見た断面)の構成例を示している。
【0031】
図8および図9に示した比較例に係る照射光学系は、赤外光源2が発する光の入射側から順に、コリメータレンズL1と、ロッドレンズL2とで構成されている。この比較例に係る照射光学系では、コリメータレンズL1によって平行光を作り、基本となる平行光線を作ったのち、その平行光線をロッドレンズL2に入射させて光の膜32を可視光投影面31に対して所定の高さに生成する。
【0032】
ここで、この比較例に係る照射光学系の具体的な数値設計例を表1に示す。また、この具体的な数値設計例に対応するX方向の光学系断面図を図10に示す。なお、表1には、設計パラメータとして、照射光学系の面No.と、面の種類と、近軸曲率半径(R)と、光軸上の面間隔(d)と、d線(波長587.6nm)における屈折率の値(nd)と、d線におけるアッベ数の値(νd)とを示す。S0面は、赤外光源2に相当する。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示したように、コリメータレンズL1は両面が球面で構成されている。ロッドレンズL2は、両面がX方向に屈折力を有するシリンドリカル面で構成されている。
【0035】
図11は、比較例に係る照射光学系を用いた場合の赤外照射光の角度分布の一例を模式的に示している。図11において横軸は角度、縦軸は光量比を示す。図12は、比較例に係る照射光学系を用いた場合の赤外照射光の面内分布の一例を模式的に示している。図12には、40mm離れた位置に25インチ(16:9)の可視光投影面31が存在し、その可視光投影面31上に光の膜32を生成した場合の光の強度分布を示す。図11および図12に示したように、比較例に係る照射光学系では、中心帯の光量が非常に大きい一方で周辺の光量が大きく低下している。この比較例に係る照射光学系では、広角の超短焦点のプロジェクタに対しては直接的には使用が難しい。この比較例に係る照射光学系では、図6に示した面内分布と同様な分布域を持ってしまうために、より一層面内分布が不均一になる。代わりの手法として、例えば図3に示すように複数のロッドレンズ111A,111Bを配置を並べることで互いに面内分布を補完する方法も考えられるが、各ロッドレンズ111A,111Bが傾くと図4に示したように、生成される光の膜132A,132Bに角度的なばらつきが生ずるため、高度な調整作業が必要になるという欠点がある。
【0036】
図13は、可視光投影光学系8により取り込まれる光の面内分布の一例を模式的に示している。図14は、図13の面内分布と図12の比較例に係る照射光学系による面内分布とを合わせた最終的な光の面内分布(赤外撮像素子61に取り込まれる光の面内分布)の一例を模式的に示している。
【0037】
図13および図14の面内分布では、可視光投影光学系8および赤外光受光部9の光路中に遮光マスクを配置することで受光光線をバランスさせている。赤外撮像素子61に取り込まれる最終的な光の面内分布としては、おおむね目安として30%の面内光量比以上が必要であるが、図14に示した例では、それを大幅に下回る分布となってしまっている。このため、例えば反射ミラーを側面設置するなどして面内光量をバランスさせる必要があり、部品点数が増大してしまう。
【0038】
また、参考として、図15に、照射光学系にパウエルレンズを用いた場合の赤外照射光の角度分布の一例を模式的に示す。なおパウエルレンズを使用した場合には、そもそも発散角が狭くなるという問題がある。図15に示したように、パウエルレンズを用いた場合、非常に狭角な角度分布となり、広角、かつプロジェクタの近傍に映像投影する場合に均一な光の膜32を形成することは困難である。
【0039】
[1.3 第1の実施の形態における赤外照射光学系の構成]
図16は、本開示の第1の実施の形態に係る照射光学系3の一構成例を示している。
【0040】
この照射光学系は、図16に示したように、赤外光源2側から順に、赤外光源2からの光の面内分布を均一な面内分布に近づける均一化部10と、均一化部10によって均一な面内分布に近付けられた光を所定の方向(X方向)に発散させる照射レンズ部20とを備えている。均一化部10と照射レンズ部20との間には、メカアパーチャStが配置されている。
【0041】
均一化部10は、赤外光源2側から順に、コリメータレンズL11と、リレーレンズL12と、シリンドリカルレンズアレイL13と、リレーレンズL14と、リレーレンズL15と、シリンドリカルレンズアレイL16と、リレーレンズL17と、リレーレンズL18とを有している。
【0042】
照射レンズ部20は、赤外光源2側から順に、第1の照射レンズL21と、第2の照射レンズL22とを有している。第1の照射レンズL21は、所定の方向に負の屈折力を有する第1のシリンドリカルレンズで構成されている。第2の照射レンズL22は、所定の方向に負の屈折力を有する第2のシリンドリカルレンズで構成されている。
【0043】
図16に示した照射光学系3に対応する具体的な数値実施例を表2、表3に示す。なお、以降で説明する他の数値実施例についても同様の設計パラメータを示す。
【0044】
表2には、面No.と、面の種類と、近軸曲率半径(R)と、光軸上の面間隔(d)と、d線(波長587.6nm)における屈折率の値(nd)と、d線におけるアッベ数の値(νd)とを示す。S0面は、赤外光源2に相当する。
【0045】
表3には、非球面の係数と、シリンドリカルレンズアレイL13,L16のアレイ幅とを示す。非球面形状は、以下の式によって定義される。なお、表3において、「E−i」は10を底とする指数表現、すなわち、「10-i」を表しており、例えば、「0.12345E−05」は「0.12345×10-5」を表している。
また、非球面形状の式において、
z:非球面の深さ(サグ量)
c:近軸曲率=1/R
r:光軸からレンズ面までの距離(シリンドリカル面の場合、rはX方向の距離)
k:コーニック係数
βn:第n次の非球面係数
とする。
【0046】
【数1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
[1.4 第1の実施の形態における赤外照射光学系の作用・効果]
次に、本実施の形態に係る照射光学系3の作用および効果を説明する。併せて、本実施の形態に係る照射光学系3における好ましい構成を説明する。
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。以降の他の実施の形態についても同様である。
【0050】
図16に示した照射光学系3では、赤外光源2からの光に対して、コリメータレンズL11によって平行光を作る。コリメータレンズL11によって基本となる平行光線を作ったのち、リレーレンズL12と、シリンドリカルレンズアレイL13と、リレーレンズL14と、リレーレンズL15とによって、第1の均一面を生成する。その後、シリンドリカルレンズアレイL16と、リレーレンズL17と、リレーレンズL18とによって、第2の均一面を生成し、メカアパーチャStを通過させる。メカアパーチャStを通過した光線が、さらに第1の照射レンズL21と第2の照射レンズL22とを通過することで、光の膜32が可視光投影面31に対して所定の高さに生成される。
【0051】
図16に示した照射光学系3では、コリメータレンズL11以外はいずれもシリンドリカル面であり、図のX方向にだけ屈折力を有している。第1および第2の照射レンズL21,L22は、メカアパーチャSt近傍の光量分布を分布の変換をしながら可視光投影面31から所定の高さに転写するという機能を持ち、おおむね可視光投影面31とメカアパーチャSt近傍を共役に結び付ける。シリンドリカルレンズアレイL16と、リレーレンズL17と、リレーレンズL18は、そのメカアパーチャSt近傍の均一光線を作るもので、シリンドリカルレンズアレイL13と、リレーレンズL14と、リレーレンズL15は、瞳観察をした場合に生じる像を略均一に近づけ、レーザ安全規格上のクラス1相当に低減させるために入れている。
【0052】
第1および第2の照射レンズL21,L22は、2枚の負のシリンドリカルレンズを組み合わせており、小さな焦点距離を持つことで広角に光を照射することができるようになっている。ここで照射側に一番近い第2の照射レンズL22は、X方向において負のメニスカスレンズで、かつ以下の条件を満足することが好ましい。これにより、全反射を避けながら適正に広角な光線を生成することができる。
|Rout|>|Rin| ……(1)
ただし、
Rin:第2の照射レンズL22のX方向における光の入射面の曲率半径
Rout:第2の照射レンズL22のX方向における光の射出面の曲率半径
とする。
【0053】
さらに、第2の照射レンズL22のX方向における光の入射面に関して、
コーニック係数<−1
の条件を満足することで、投影距離がさらに近い場合にも対応が可能になる。
【0054】
図17は、図16に示した照射光学系における照射レンズ部20の非球面の作用を模式的に示している。
【0055】
照射レンズ部20は、第1の照射レンズL21に対する光の入射高をh、光の最大の入射高をhmaxとしたとき、h=0.8hmax以上1.0hmax以下の高さにおいて、以下の条件を満足する第1および第2の光線の組み合わせが、少なくとも1組存在するように構成されていることが好ましい。なお、図17の例では、光軸から下側の領域において、光軸に平行な光線角度を0°とし、光軸に平行な光線に対して下側をプラス、上側をマイナスとしている。光軸から下側の領域において、入射角および射出角は、光軸に平行な光線に対して下側に向かうほど角度が大きくなるものとする。
【0056】
θin1<θin2 ……(2)
θout1>θout2 ……(3)
ただし、
θin1:第1の照射レンズL21への第1の光線の入射角
θin2:第1の照射レンズL21への第2の光線の入射角
θout1:第1の照射レンズL21からの第1の光線の射出角
θout2:第1の照射レンズL21からの第2の光線の射出角
とする。
【0057】
第1の照射レンズL21は、X方向において両凹レンズとすることで第2の照射レンズL22の屈折力を補う役割を担う。第1および第2の照射レンズL21,L22のいずれか一方における光の入射面と射出面とのいずれか1つの面に、変曲点を有することが好ましい。変曲点の作用として、上記式(2),(3)の条件を満足し、高い軸外の入射光線は、入射角に対して射出角が反転する現象を生じるように作用させることが好ましい。
【0058】
図18は、図16に示した照射光学系3による赤外照射光の面内分布の一例を模式的に示している。図13は、可視光投影光学系8により取り込まれる光の面内分布の一例を模式的に示している。図19は、図13の面内分布と図18の照射光学系3による面内分布とを合わせた最終的な光の面内分布(赤外撮像素子61に取り込まれる光の面内分布)の一例を模式的に示している。
【0059】
上記式(2),(3)の条件を満足することで、光量のロスを少なくすることができる他、可視光投影面31上の端部に対応する領域に対してより多くの光量を照射することができ、面内分布を図18のような状態にすることができる。なお、上記式(2),(3)の条件は必ず必要なわけではないが、可視光投影面31の位置が近ければ近いほど必要となる。可視光投影光学系8側の面内分布が図13のようであれば、合計で図19のような面内分布とすることができる。この結果、照射光学系3をロッドレンズで構成するよりも、面内分布の均一化が可能である。
【0060】
図16に示した照射光学系3は、LLP方式によるインタラクティブ検知技術と相性がよいため、可視光投影光学系8と共に用いられることに適している。このとき、照射光学系3の照射レンズ部20は、可視光投影面31に対して略平行となる光の膜32を形成することが好ましい。また、図7に示したように、可視光投影面31に対応する領域31Aでの光の膜32の厚み(略平行となる光束幅Φ)は、10mm未満であることが好ましい。こうすることによって、LLP方式で検出されるスポット径を小さくすることができ、精度を上げることができる。
【0061】
また、図16に示した構成例では、コリメータレンズL11とシリンドリカルレンズアレイL13との間にリレーレンズL12を配置しているが、この役割は光学的にはほとんどなく、後述する第2の実施の形態に示す構成における光路折り曲げに対しての事前準備のために入れている。このため、リレーレンズL12を省いた構成として小型化、低コスト化した構成も考えられる。
【0062】
図16に示した照射光学系3を用いることで、LLP方式の照射平面(光の膜32)を自在に設計でき、特に超短焦点レンズを用いたプロジェクタの場合でも、比較的均一な受光プロファイルにすることができる。また、照射平面を作るのに何本ものロッドレンズを必要とせず、部品点数と調整工程を削減することができる。また図16に示した照射光学系3を用いることで、レーザ安全規格上のクラス1が保てるようにも設計できる。
【0063】
[1.5 変形例]
(1.5.1 第1の変形例)
図20は、本実施の形態の第1の変形例に係る照射光学系の一構成例を示している。また、図20に示した第1の変形例に係る照射光学系に対応する具体的な数値実施例を表4、表5に示す。
【0064】
図20に示した第1の変形例では、第1および第2の照射レンズL21,L22の2組のシリンドリカルレンズ(S18面〜S21面)の形状が図16に示した構成例とは異なっている。具体的には、第2の照射レンズL22の形状がX方向において両凹形状とされている。このような構成でも、図16に示した構成例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
(1.5.2 第2の変形例)
図21は、本実施の形態の第2の変形例に係る照射光学系の一構成例を示している。また、図21に示した第2の変形例に係る照射光学系に対応する具体的な数値実施例を表6、表7に示す。
【0068】
図21に示した第2の変形例では、第1および第2の照射レンズL21,L22の2組のシリンドリカルレンズ(S18面〜S21面)の形状が図16に示した構成例とは異なっている。具体的には、第1の照射レンズL21の形状がX方向において負のメニスカスレンズの形状とされている。このような構成でも、図16に示した構成例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0069】
図21に示した第2の変形例ではまた、光の膜32の生成位置の前提を変更している。具体的には、照射レンズ部20の先端から80mm離れた位置に21インチ相当の可視光投影面31が存在し、その可視光投影面31上に光の膜32を生成するという前提に変更している。可視光投影光学系8による可視光投影面31の位置に合わせて、光の膜32の位置を合わせるため、このような光の膜32の生成位置の違いは可視光投影光学系8の設計の違いによって容易に生じる。この場合、可視光投影光学系8に対して掛かる負担が小さいために、図21に示した照射レンズ部20のレンズ形状は図16および図20の構成例に比べて緩やかになっていることが分かる。図21に示した第2の変形例では、第2の照射レンズL22のレンズ面に変曲点があるが、画角が狭まっているために変曲点なくても使用上の問題は少ない。
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
(1.5.3 その他の変形例)
図16に示した照射光学系3の構成例では、メカアパーチャStに対する入射光量に若干マージンを持たせることで、レンズの左右方向の調整を不要とする構成になっている。持たせるマージンは10%〜30%程度が適切である。一方で、この部分のマージンをほぼ0に設計し、レンズ調整工程を入れれば光量を稼ぐことも可能である。この場合、レーザ出力が足りない場合や温度上昇が気になる場合には効果を発揮する。
【0073】
また、赤外光源2としてはレーザ光源を用いるのが望ましい。これはLEDを使用した場合には発光源からの放射角が大きく、光量ロスが大きくなり投入電力が桁違いに大きくなってしまい適さないためである。レーザ光源は視覚的に目立たなくする、という観点から、700nm以上の赤外光がより望ましい。さらに言えば、受光側の偏光分離素子6の波長特性を考慮して、820nm以下の赤外光がより望ましい。また、レーザ光源の偏光方向はシリンドリカル面に対してP偏光となる方が望ましい。これは特に広角域においてP偏光の方が透過ロスが少ないためである。
【0074】
また、以上では技術親和性より、可視光投影光学系8に超短焦点レンズを用いた例を説明したが、可視光投影光学系8に通常の投影距離のレンズを用いてもよい。また超短焦点レンズを使用した場合、可視光投影面31が非常に近くなるため、図7に示した構成例では、可視光投影光学系8を投影レンズと赤外光の検出レンズとを兼ねる同軸検出系にしたが、投影レンズと赤外光の検出レンズとを別々の構成にしてもよい。
【0075】
また、照射光学系3において、第2の照射レンズL22をプラスチックで作った場合、耐摩耗性がよくないが、第2の照射レンズL22の先端部に平行な平面板を入れることでその対策をすることができる。また先端部に入れる素子としては入射曲率と射出曲率とがほぼ同じ程度のシリンドリカルアーチ状の光学素子でも問題はない。楕円形や他の形状でも厚みが略一定の素子であれば問題ないが、偏光方向はP偏光をある程度保つ方がより有利である。あるいは耐摩耗性自体はハードコートを適用して軽減することも可能である。
【0076】
また、以上の説明では、照射レンズ部20が、負のシリンドリカルレンズからなる第1および第2の照射レンズL21,L22で構成されている例を挙げたが、照射レンズ部20がさらに他のレンズを含んでいてもよい。例えば、照射レンズ部20が所定の方向(X方向)において正の屈折力を有するシリンドリカルレンズを含んでいてもよい。この場合、例えば、照射レンズ部20が、赤外光源2側から順に、正のシリンドリカルレンズと、第1の負のシリンドリカルレンズと、第2の負のシリンドリカルレンズとが配置された正負負の3枚構成であってもよい。また例えば、照射レンズ部20が、赤外光源2側から順に、第1の負のシリンドリカルレンズと、正のシリンドリカルレンズと、第2の負のシリンドリカルレンズとが配置された負正負の3枚構成であってもよい。
【0077】
<2.第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施の形態について説明する。以下では、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用を有する部分については、適宜説明を省略する。
【0078】
図22は、第2の実施の形態に係る照射光学系3の一構成例を示している。本実施の形態に係る照射光学系3は、図16に示した照射光学系3の構成例に対して、均一化部10の構成が大きく異なっている。
【0079】
本実施の形態では、均一化部10を折り返し光学系とすることで、全長を短縮し、部品点数を削減している。具体的には、図16に示した照射光学系3の構成例に対して、偏光分離素子11と、λ/4板12と、ミラー13とを追加して折り返し光学系とし、リレーレンズL15と、シリンドリカルレンズアレイL16と、リレーレンズL17とを構成から省略している。偏光分離素子11としては、偏光ビームスプリッタやワイヤーグリッドを用いることができる。ミラー13は平面ミラーである。
【0080】
本実施の形態では、偏光分離素子11に対して、赤外光源2とコリメータレンズL11とが、第1の方向に配置されている。リレーレンズL12と、シリンドリカルレンズアレイL13と、リレーレンズL14と、λ/4板12と、ミラー13とが、第2の方向(偏光分離素子11によって折り曲げられた赤外光源2からの光の光路上)に配置されている。リレーレンズL18と照射レンズ部20は、第3の方向(偏光分離素子11に対して第2の方向とは反対側)に配置されている。
【0081】
偏光分離素子11は、赤外光源2からの光のうち第1の偏光成分(例えばS偏光成分)をシリンドリカルレンズアレイL13およびミラー13等が配置された方向に向けて反射する。偏光分離素子11はまた、ミラー13で反射され、再度、シリンドリカルレンズアレイL13等に入射した光のうち第2の偏光成分(例えばP偏光成分)を照射レンズ部20に向けて出射する。λ/4板12は、第1の偏光成分と第2の偏光成分との変換用に設けられている。
【0082】
本実施の形態では、図16に示した照射光学系3と光学的な光路は実質的に同等であり、具体的な数値実施例も上記表2、表3と同等となる。S2面とS3面との間に偏光分離素子11が配置され、S8面とS9面との中間地点にミラー13がおかれ、S3面〜S8面が、S14面〜S9面と同一面になる。
【0083】
なお、図22では、赤外光源2とコリメータレンズL11の入射角が最終的な照射方向の軸に対して90°になっているが、偏光分離素子11の入射角のり影響などから、この入射角は最終的な照射方向の軸に近くなるように浅めにする方が好ましい。あるいは、偏光分離素子11を板状ではなくキューブ状とすることで、この入射角の影響を低減することも可能であり、その場合には90°配置が好ましい。
【0084】
<3.第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態について説明する。以下では、上記第1の実施の形態または上記第2の実施の形態と同様の構成および作用を有する部分については、適宜説明を省略する。
【0085】
[3.1 構成]
図23は、第3の実施の形態に係る照射光学系3の一構成例を示している。また、図23に示した本実施の形態に係る照射光学系3に対応する具体的な数値実施例を表8、表9に示す。
【0086】
本実施の形態に係る照射光学系3は、図16に示した照射光学系3の構成例に対して、均一化部10の構成が大きく異なっている。図16に示した照射光学系3では、均一化部10に5つのリレーレンズL12,L14,L15,L17,L18が用いられているが、本実施の形態では、これらに代えて、2つのリレーレンズL14A,L17Aを備えている。これにより、材料費の低減を図ることが可能である。リレーレンズL14Aは、シリンドリカルレンズアレイL13とシリンドリカルレンズアレイL16との間に配置されている。リレーレンズL17Aは、シリンドリカルレンズアレイL16とメカアパーチャStとの間に配置されている。
【0087】
【表8】
【0088】
【表9】
【0089】
[3.2 変形例]
図24は、本実施の形態の変形例に係る照射光学系3の一構成例を示している。
光量が相対的に足りない場合、光線の入射方向を2方向として面内均一化を得ることも可能である。具体的には、図24に示したように、均一化部10として、2系統の均一化部10A,10Bを備えてもよい。均一化部10A,10Bの構成はそれぞれ、図23の構成と略同様であってもよい。
【0090】
<4.第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態について説明する。以下では、上記第1ないし第3の実施の形態と同様の構成および作用を有する部分については、適宜説明を省略する。
【0091】
図25は、第4の実施の形態に係る照射光学系3の一構成例を示している。また、図25に示した本実施の形態に係る照射光学系3に対応する具体的な数値実施例を表10、表11に示す。
【0092】
本実施の形態に係る照射光学系3は、図16に示した照射光学系3の構成例に対して、均一化部10の構成が大きく異なっている。図16に示した照射光学系3の構成例では、レーザ安全規格をクラス1に収める目的で2つのシリンドリカルレンズアレイL13,L16を用いたが、図25に示したように、1枚のシリンドリカルレンズアレイL16と拡散板あるいは回折素子14とを組み合わせた構成であってもよい。
【0093】
ただし拡散板を用いる場合には、高さ方向(Y方向)への光線の広がりを低減すべく、縦方向の拡散角を0.2deg、可能なら0.1deg以内に収めるのが望ましい。これは光線の太さをなるべく低減することで、検出誤りを低減させるためである。また、若干可視光投影面31上の光束が収束気味になるようにコリメータL11の位置を構成するのがより望ましい。こうすることで光線が太くなる影響を低減することが可能である。
【0094】
この構成の場合、図23に示した構成例において、シリンドリカルレンズアレイL13とリレーレンズL14Aを取り除き、メカアパーチャStの直前に拡散板あるいは回折素子14を配置することで、安全規格緩和の効果が期待できる。なお、表10、表11には、図23、表8、表9に示した構成例を元にした構成を示しているが、その他、図16、表2、表3等に示した構成例を元にした構成であってもよい。
【0095】
【表10】
【0096】
【表11】
【0097】
<5.その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記各実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
【0098】
本開示において、均一化部10による「均一化」とは、赤外光源2からの光の面内分布を完全に均一にするものである必要はない。例えば、均一化レベルが赤外光源2によるレーザ発光時のプロファイルよりも向上していればある程度、照射レンズ部20の設計で不均一性を吸収することが可能である。例えば、十分な長さがないライトパイプなどを均一化部10として使用する構成も考えられる。あるいは上記第1の実施の形態において、シリンドリカルレンズアレイL13,L16のレンズアレイピッチが不十分で均一面が十分に均一でない場合においても、ある程度均一レベルが向上していれば照射レンズ部20の設計で不均一性を吸収することが可能である。
【0099】
また例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
光源からの光の面内分布を均一な面内分布に近づける均一化部と、
前記均一化部によって均一な面内分布に近付けられた光を所定の方向に発散させる照射レンズ部と
を備え、
前記照射レンズ部は、前記光源側から順に、前記所定の方向に負の屈折力を有する第1および第2のシリンドリカルレンズを含む
照射光学系。
(2)
前記第2のシリンドリカルレンズは、光の入射面と光の射出面とを含み、以下の条件を満足する
上記(1)に記載の照射光学系。
|Rout|>|Rin| ……(1)
ただし、
Rin:前記所定の方向における前記光の入射面の曲率半径
Rout:前記所定の方向における前記光の射出面の曲率半径
とする。
(3)
前記照射レンズ部は、
前記第1のシリンドリカルレンズに対する光の入射高をh、光の最大の入射高をhmaxとしたとき、
h=0.8hmax以上1.0hmax以下の高さにおいて、以下の条件を満足する第1および第2の光線の組み合わせが、少なくとも1組存在するように構成されている
上記(1)または(2)に記載の照射光学系。
θin1<θin2 ……(2)
θout1>θout2 ……(3)
ただし、
θin1:前記第1のシリンドリカルレンズへの前記第1の光線の入射角
θin2:前記第1のシリンドリカルレンズへの前記第2の光線の入射角
θout1:前記第1のシリンドリカルレンズからの前記第1の光線の射出角
θout2:前記第1のシリンドリカルレンズからの前記第2の光線の射出角
とする。
(4)
前記1および第2のシリンドリカルレンズのいずれか一方における光の入射面と射出面とのいずれか1つの面に、変曲点を有する
上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の照射光学系。
(5)
可視光投影面に映像を投影する可視光投影光学系と共に用いられ、
前記照射レンズ部は、前記可視光投影面に対して略平行となる光の膜を形成する
上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の照射光学系。
(6)
前記可視光投影面に対応する領域での前記光の膜の厚みは、10mm未満である
上記(5)に記載の照射光学系。
(7)
前記光源はレーザ光源である
上記(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の照射光学系。
(8)
前記光源は波長700nm以上の赤外光を発する赤外光源である
上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の照射光学系。
(9)
前記均一化部は、2つのシリンドリカルレンズアレイを含む
上記(1)ないし(8)のいずれか1つに記載の照射光学系。
(10)
前記均一化部は、シリンドリカルレンズアレイと偏光分離素子とを含む
上記(1)ないし(8)のいずれか1つに記載の照射光学系。
(11)
前記均一化部は、さらにミラーを含み、
前記偏光分離素子に対して、前記光源が第1の方向に配置され、前記シリンドリカルレンズアレイと前記ミラーとが第2の方向に配置され、前記照射レンズ部が第3の方向に配置され、
前記偏光分離素子は、前記光源からの光のうち第1の偏光成分を前記シリンドリカルレンズアレイと前記ミラーとに向けて反射すると共に、前記ミラーで反射され、再度、前記シリンドリカルレンズに入射した光のうち第2の偏光成分を前記照射レンズ部に向けて出射する
上記(10)に記載の照射光学系。
(12)
可視光投影面に映像を投影する可視光投影光学系と、
前記可視光投影面に対して略平行となる光の膜を形成する照射光学系と
を備え、
前記照射光学系は、
光源からの光の面内分布を均一な面内分布に近づける均一化部と、
前記均一化部によって均一な面内分布に近付けられた光を所定の方向に発散させる照射レンズ部と
を含み、
前記照射レンズ部は、前記光源側から順に、前記所定の方向に負の屈折力を有する第1および第2のシリンドリカルレンズを含む
プロジェクタ。
【0100】
本出願は、日本国特許庁において2015年2月5日に出願された日本特許出願番号第2015−021020号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0101】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25