(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。本実施の形態にて説明する電池パックは、例えばバッテリ式産業車両に搭載されている電池パックである。また説明の都合上、
図1を基に、X軸、Y軸、Z軸の各方向を定めるが、電池パックの配置方向を特定するものではない。また、図中のX軸、Y軸、Z軸は、互いに直交しており、X軸方向とY軸方向は水平方向を示しており、Z軸方向は鉛直上方を示している。以下の説明では、Z軸方向を「上」、Z軸方向とは反対方向を「下」、Y軸方向を「前」、Y軸方向とは反対方向を「後」、X軸方向を「右」、X軸方向とは反対方向を「左」、として説明する。また本実施の形態の説明では、リーチリフト1(バッテリ式産業車両)に搭載された電池パック50を例として説明する。
【0021】
●[電池パック50を搭載したリーチリフト1の全体構成(
図1)と、電池パック50の外観(
図2)]
リーチリフト1の左側面図を示している
図1を用いて、リーチリフト1の全体構成について説明する。リーチリフト1は、車体20、荷役装置30を有しており、運転者が、車体20に設けられた運転席に立った状態で走行や荷役作業を行う、比較的小型のフォークリフトである。リーチリフト1は、搭載されている電池パック50からの電力を用いて、走行や荷役作業を行う。
【0022】
車体20は、台座部21、本体部22、ガード23等を有している。台座部21には本体部22が載置されており、本体部22にはガード23が取り付けられている。また台座部21の下方には駆動輪28dと、キャスタ輪28s(回転自在であり、XY平面内で旋回自在な従動輪)が設けられている。本体部22は、運転者が立つ運転席の前、右、左を囲むように構成されており、本体部22の内部には、電池パック50、走行用モータ41、荷役用モータ42等が収容されている。走行用モータ41は、電池パック50から供給される電力を用いて駆動輪28dを回転駆動する。荷役用モータ42は、電池パック50からの電力を用いて油圧ポンプ(図示省略)を駆動し、油圧ポンプから吐出される作動油にて荷役装置30のフォーク34等を動作させる。
【0023】
また本体部22には、運転者が立った状態で乗車する運転席が設けられており、運転席には、ステアリング43、アクセルレバー44、複数の荷役操作レバー(図示省略)等が設けられている。運転者は、ステアリング43を操作して駆動輪28dの方向を変えてリーチリフト1の左右の進行方向を変えることができる。また運転者は、アクセルレバー44を操作して、駆動輪28dの回転速度(リーチリフト1の速度)や回転方向(リーチリフトの前進、後退)を指示することができる。ガード23は、運転者の上方を覆い、落下物等から運転者を保護する。
【0024】
荷役装置30は、リーチレグ31、マスト32、リフトブラケット33、フォーク34等を有している。リーチレグ31は、後端が台座部21に固定されており、前方に向かって延びる左右一対のアームである。それぞれのリーチレグ31の前端の下方には、向きが前後方向に固定されて回転自在とされた固定従動輪である前輪38が設けられている。マスト32は、左右一対の支柱であり、リーチレグ31に沿って前後方向にスライド動作可能とされているとともに、前後方向に傾斜(チルト動作)可能とされている。リフトブラケット33にはフォーク34が取り付けられており、リフトブラケット33及びフォーク34は、マスト32に沿って上下方向に移動(昇降動作)可能である。運転者は、荷役操作レバー(図示省略)を操作して、上記のスライド動作、チルト動作、昇降動作、を指示することができる。
【0025】
図2に示すように、電池パック50は、筐体53と蓋部55とを有する箱状であり、内部に複数の電池モジュール60を収容している。筐体53と蓋部55の材質は、鉄等の金属である。また電池モジュール60は、後述するように、複数の電池セルにて構成されている。また本実施の形態にて説明する電池パック50は、角部に充電用端子53zを有している。なお、走行用モータ41、荷役用モータ42等への配線の引き出し口等については記載を省略している。また、電池パック50の内部には、電池モジュール60の他にも、各電池モジュール60からの配線や充電用端子53z等の配線が集約されて各電池モジュール60の入出力を制御する電池パック制御装置が収容された制御BOX69等も収容されている。
【0026】
●[電池パック50に収容されている電池モジュール60の外観と構造(
図3〜
図5)]
図2は、電池パック50の内部に7つの電池モジュール60が収容されている例を示している。本実施の形態の説明では、
図6に示すように、蓋部55に4つの電池モジュール60が固定され、筐体53に3つの電池モジュール60が固定された電池パック50を例として説明する。以下、
図3〜
図5を用いて、蓋部55に固定された電池モジュール60を例として、電池モジュール60の構成について説明する。
【0027】
図3及び
図4に示すように、1つの電池モジュール60は、複数の電池セル61(この例では7個の電池セル61)にて構成されている。各電池セル61は、
図5に示すように、コの字状の電池ホルダ62にて、底面61bと側面61cと側面61dが覆われ、L字状の伝熱プレート63にて背面61eが覆われて電池セルユニット61uを構成している。そして
図3及び
図4に示すように、複数の電池セルユニット61uが並べられて電池セルモジュールが構成され、電池セルモジュールは一対のエンドプレート67と一対のブラケット66に挟まれて蓋部55に固定されている。一対のブラケット66は、例えばボルトB2とナットN2にて構成された締結部材にて固定されている。一対のエンドプレート67は、例えばボルトB1とナットN1にて構成された締結部材にて固定されている。また
図3及び
図4に示すように、それぞれのエンドプレート67の外側となるように、一対のブラケット66が設けられている。つまり、複数の電池セルユニット61uが並べられた電池セルモジュールが一対のエンドプレート67に挟まれており、一対のエンドプレート67が一対のブラケット66に挟まれている。また一対のブラケット66は、ボルトB3にて蓋部55に固定されている。なお、伝熱プレート63を介することなくエンドプレート67と電池セル61とが対向する個所には、弾性部材64が挟まれている(
図4参照)。例えば、弾性部材64は、電池セル61の膨張を吸収する平板状のゴムである。また各伝熱プレート63と蓋部55との間には、熱伝導部材68が設けられている。熱伝導部材68は、TIM(Thermal Interface Material)と称される。熱伝導部材68は、粘着性を有する材料で形成されており、粘着性を有する材料としては、シリコン、アクリルまたはウレタン等が挙げられる。
【0028】
図3及び
図4に示すように、弾性部材64と接している電池セル61を除いた各電池セル61は、電池ホルダ62と伝熱プレート63とで囲まれて上面が開口された収容空間内に収容されている。なお、
図4における左端の電池セル61(弾性部材64と接している電池セル61)は、電池ホルダ62と伝熱プレート63と弾性部材64にて上面以外の面が囲まれている。
【0029】
また、電池モジュール60において、隣り合う電池セル61は、正極端子と負極端子が対向するように配置されている。そして隣り合う電池セル61の正極端子と負極端子は、導電体であるバスバー65にて接続されている。つまり、電池モジュール60では、各電池セル61が直列に接続されている。バスバー65は、
図3に示すように、板状の導電体が折り曲げられて上方に突出した突出部65aを有しており、接続する正極端子と負極端子の間の距離が異常発生時あるいは使用に伴う電池セル61の膨張により変化した場合であっても、突出部65aの折り曲げ形状が変形して端子間の距離の変化に追従可能とされている。また各電池セル61にて発生した熱は、
図4に示すように、伝熱プレート63と熱伝導部材68を介して蓋部55へと放熱される。なお、伝熱プレート63を省略して電池ホルダ62を熱伝導部材68に接触させてもよい。またバスバー65の形状は、突出部65aを有する形状に限定されるものではない。
【0030】
●[電池パック50を構成している筐体53と蓋部55の外観と構造(
図6〜
図10)]
電池パック50は、
図6に示すように、筐体53と、外周シール部材53sと、蓋部55と、電池モジュール60と、制御BOX69等を有しており、筐体53は
図8に示すように、筐体本体51とフランジ本体52にて構成されている。
【0031】
筐体本体51は、
図8に示すように、開口部51kを有する箱状であり、鉄等の金属にて形成され、開口部51kは、板厚51tを有する開口端面51aに周囲を囲まれている。また
図7に示すように、筐体本体51には、制御BOX69(
図6参照)を固定するための制御BOX取付孔51x、電池モジュール60(
図6参照)を固定するための電池取付孔51dが形成されている。なお、制御BOX取付孔51x、電池取付孔51dは、雌ネジとされており、貫通孔でもよいし、非貫通孔でもよい。
【0032】
フランジ本体52は、
図8に示すように、板厚52tを有する板状であり、鉄等の金属にて形成され、開口端面51aを覆う形状を有する環状形状とされている。なお、
図7に示すように、フランジ本体52の全幅52w1は、筐体本体51の全幅51w1よりも少し小さく、フランジ本体52の突出部幅52w2は、筐体本体51の突出部幅51w2よりも少し小さい。またフランジ本体52の本体高さ52v1は、筐体本体51の本体高さ51v1よりも少し小さく、フランジ本体52の突出部高さ52v2は、筐体本体51の突出部高さ51v2よりも少し小さい。従って、
図9に示すように、筐体本体51の開口端面51aを覆うようにフランジ本体52を重ねた場合、フランジ本体52の外周を囲むように開口端面51aの縁部が露出する。そして
図10に示すように、筐体53は、露出している開口端面51aと、フランジ本体52の外周面52gとが全周にわたって溶接部53yにて溶接されており、開口端面51aにフランジ本体52が固定されているとともに、開口端面51aとフランジ本体52との間の隙間が埋められている。
【0033】
フランジ本体52の少なくとも一部には、
図7〜
図9に示すように、開口端面51aに重ねられた際に開口部51kの内方に向かって延びるフランジ部52f1〜52f6が設けられている。フランジ部52f1〜52f6のそれぞれには、開口端面51aとは反対の側の面(蓋部55に対向する筐体開口端面52m)、かつ開口部51kの開口方向(
図7〜
図10中のY軸方向)において開口端面51aと重ならない位置に、フランジ部に対して数[mm]程度、蓋部55に向かって突出した面であるスペーサ52s(
図7〜
図10参照)が設けられている。フランジ本体52の各スペーサ52sには、板状のフランジ本体52の厚さ方向(Y軸方向)に貫通する貫通孔である単数または複数のボルト取付孔52bが形成されており、ボルト取付孔52bは雌ネジとされている。また、フランジ本体52の四隅となるフランジ部52f1、52f3、52f6上の位置であって、開口端面51aに重ねられた際に、開口部51kの開口方向において開口端面51aと重ならない位置に、フランジ本体52の厚さ方向(Y軸方向)に貫通する貫通孔であるピン挿通孔52pが形成されている。ピン挿通孔52pは、雌ネジとされておらず、対応する位置決めピン59a(
図6参照)の径よりも少し大きな径とされている。また、
図6及び
図9に示すように、開口部51kの周囲を囲んで蓋部55と対向する面である筐体開口端面52m(この場合、フランジ本体52における蓋部55に対向する面)と蓋部55との間におけるピン挿通孔52pの外周側(すなわち、位置決めピンの外周側)には、開口部51kを囲むように、筐体開口端面52mと蓋部55との間を密封するシール部材である外周シール部材53sが設けられている(貼り付けられている)。
【0034】
蓋部55には、
図7に示すように、フランジ本体52のボルト取付孔52bに対応する位置に、板状の蓋部55の厚さ方向(Y軸方向)に貫通するボルト挿通孔55bが形成されている。ボルト挿通孔55bは、雌ネジとされておらず、対応するボルトのネジ部の径よりも少し大きな径、かつ対応するボルトの頭部の径よりも少し小さな径、とされている。また蓋部55には、フランジ本体52のピン挿通孔52pに対応する位置に、蓋部55の厚さ方向(Y軸方向)に貫通する貫通孔であるピン取付孔55pが形成されており、ピン取付孔55pは雌ネジとされている。そして
図6に示すように、蓋部55における筐体53の側のピン取付孔55p(
図7参照)には、位置決めピン59aの被固定部59a2(雄ネジであり、
図11参照)がネジ止めされている。また蓋部55には、
図7に示すように、電池モジュール60(
図6参照)を固定するための電池取付孔55dが形成されている。電池取付孔55dは、雌ネジとされており、貫通孔でもよいし、非貫通孔でもよい。なお、蓋部55に形成されたピン取付孔55pは「蓋側貫通孔」に相当し、フランジ本体52のフランジ部に形成されたピン挿通孔52pは「フランジ側貫通孔」に相当している。
【0035】
●[電池パック50の組み立て手順(
図6〜
図10)]
次に、
図6〜
図10を用いて、電池パック50の組み立て手順の例について説明する。電池パック50は、以下の(手順1)〜(手順7)の順に組み立てられる。
(手順1)筐体本体51の開口端面51aにフランジ本体52を溶接して筐体53を形成
(手順2)筐体53に電池モジュール60と制御BOX69を固定して配線を接続
(手順3)筐体53のフランジ本体52(筐体開口端面52m)に外周シール部材53sを取り付け
(手順4)蓋部55に電池モジュール60を固定して配線
(手順5)蓋部55に位置決めピン59aを固定
(手順6)筐体53の開口部51kを蓋部55にて覆って位置決めピン59aをピン挿通孔52pに挿通
(手順7)ボルトB4を用いて筐体53に蓋部55を固定
【0036】
上記の(手順1)では、
図7及び
図8に示す筐体本体51の開口端面51aに、
図7及び
図8に示すフランジ本体52が重ねられる。重ねられた状態では、
図9に示すように、フランジ本体52の外周を囲むように開口端面51aの縁部が露出している。そして
図10に示すように、開口端面51aの縁部(露出している開口端面51a)と、フランジ本体52の外周面52gとが全周にわたって溶接部53yにて溶接され、筐体53が形成される。これにより、開口端面51aにフランジ本体52が固定され、開口端面51aとフランジ本体52との間の隙間が埋められる。
【0037】
上記の(手順2)では、
図7及び
図9に示す筐体本体51の電池取付孔51dに電池モジュール60が固定され(
図6参照)、
図7及び
図9に示す筐体本体51の制御BOX取付孔51xに制御BOX69が固定される(
図6参照)。そして制御BOX69と各電池モジュール60との間の配線や、制御BOX69と充電用端子53zとの間の配線等が接続される。
【0038】
上記の(手順3)では、
図6及び
図9に示すように、開口部51kの周囲を囲んで蓋部55と対向する面である筐体開口端面52m(この場合、フランジ本体52における蓋部55に対向する面)と蓋部55との間におけるピン挿通孔52pの外周側(すなわち、位置決めピンの外周側)には、開口部51kを囲むように、筐体開口端面52mと蓋部55との間を密封するシール部材である外周シール部材53sが取り付けられる(貼り付けられる)。
【0039】
上記の(手順4)では、
図7に示す蓋部55における筐体53と対向する側の面の電池取付孔55dに電池モジュール60が固定される(
図6参照)。そして制御BOX69と各電池モジュール60との間の配線が接続される。
【0040】
上記の(手順5)では、
図7に示す蓋部55における筐体53と対向する側の面のピン取付孔55pに位置決めピン59aがネジ止めされる。
図11の例に示すように、位置決めピン59aは、被固定部59a2と挿通部59a1を有しており、挿通部59a1の先端には、位置決めピン59aの被固定部59a2をピン取付孔55pにネジ止めする際に使用する六角孔59a3が形成されている。作業者は、六角レンチと六角孔59a3を使用して、ピン取付孔55pに位置決めピン59aをネジ止めする。
【0041】
上記の(手順6)では、
図6に示すように、筐体53の開口部51kを蓋部55にて覆うように、筐体53に蓋部55が重ねられ、蓋部55の位置決めピン59aが筐体53のピン挿通孔52pに挿通され、筐体53に対して蓋部55が位置決めされる。
【0042】
上記の(手順7)では、
図6に示すように、ボルトB4が、蓋部55のボルト挿通孔55bに挿通された後、挿通されたボルトB4が、筐体53のボルト取付孔52bにネジ止めされて蓋部55が筐体53に固定され、電池パック50の組み立てが完了される。
【0043】
そして、以下の第1の実施の形態〜第4の実施の形態にて、位置決めピンの周囲の構造、位置決めピンの形状、筐体53のピン挿通孔52pの形状等の詳細について説明する。第1の実施の形態〜第4の実施の形態では、以下の[共通点1]〜[共通点3]にて説明する構造が共通であり、位置決めピンの挿通部の形状や、位置決めピンが挿通される筐体53のフランジ部のピン挿通孔の形状や、位置決めピンのシール状態等が、それぞれ異なっている。なお、第1の実施の形態〜第4の実施の形態では、
図6に示すフランジ部52f3に形成されたピン挿通孔52pの周囲を例として説明する。
[共通点1]蓋部55には、位置決めピンの被固定部(雄ネジ)をネジ止めするための雌ネジとされた貫通孔であるピン取付孔55pが形成されており、当該蓋部55のピン取付孔55pに位置決めピンがネジ止めされている(
図6参照)。
[共通点2]蓋部55のピン取付孔55pに対応する筐体53のフランジ部には、位置決めピンの先端を挿通するための貫通孔(非雌ネジ)であるピン挿通孔52pが形成されている(
図6参照)。
[共通点3]筐体53の開口部を囲むように、筐体開口端面52mにおけるピン挿通孔52pの外周側(つまり、位置決めピンの外周側)に外周シール部材53sが取り付けられている(
図6参照)。
【0044】
●[第1の実施の形態における、位置決めピン59aの周囲の構造(
図11〜
図13)]
次に
図11〜
図13を用いて、第1の実施の形態における、位置決めピン59aの周囲の構造について説明する。
図11は、蓋部55にネジ止めされた位置決めピン59aの先端を、筐体53のフランジ部52f3に形成されたピン挿通孔52pに挿通する前の状態を示している。また
図12は、
図11の状態から位置決めピン59aの先端をピン挿通孔52pに挿通し、フランジ部52f3のスペーサ52sが蓋部55に接触するまで、図示省略したボルトB4(
図6参照)を締め付けた状態を示しており、外周シール部材53sが、スペーサ52sの厚さ52s1と同じ厚さになるまで圧縮され、蓋部55が筐体53に固定された状態を示している。また
図13は、
図6におけるXIII−XIII矢視断面図に、蓋部55の断面図と位置決めピン59aとボルトB4を追加した断面図であり、筐体53のフランジ部52f3に対して蓋部55が位置決めピン59aにて位置決めされ、蓋部55と筐体53のフランジ部52f3とが、ボルトB4にて固定されている状態を説明する断面図である。
【0045】
図11及び
図12に示すように、第1の実施の形態では、位置決めピン59aは、被固定部59a2と、挿通部59a1と、を有しており、被固定部59a2は、雄ネジとされている。また、突出長さ59a6を有する挿通部59a1は、突出長さ59a4を有する円柱部と、突出長さ59a5を有するテーパ部と、を有している。テーパ部は、位置決めピンの挿通方向に向かって先細りとなる形状とされている。またフランジ部52f3のピン挿通孔52pは、一定の径とされた貫通孔(円柱状の空洞部であり、非雌ネジ)として形成されている。
【0046】
図12に示す状態(蓋部55が筐体53に固定された状態)に示すように、位置決めピン59aの突出長さ59a4は、スペーサ52sの厚さ52s1と、フランジ部52f3の厚さ52tと、を加算した長さ以上の長さに設定されている(突出長さ59a4≧[スペーサの厚さ52s1+フランジ部の厚さ52t])。これにより、位置決めピン59aにおける突出長さ59a4を有する円柱部が、円柱状の空洞部であるピン挿通孔52p内に、しっかりと保持される。
【0047】
図11及び
図12に示すように、外周シール部材53sは、圧縮可能な弾性体である。そして位置決めピン59aにおける突出長さ59a6は、フランジ部52f3と蓋部55に挟まれて圧縮される前の外周シール部材53sの厚さ53s1(
図11参照)よりも長く設定されている。これにより、外周シール部材53sが圧縮されていない状態であっても、位置決めピン59aの先端をピン挿通孔52pに挿通することができるので、ピン挿通孔52pに対する位置決めピン59aの位置決めを、より容易に行うことができる。また、位置決めピン59aの先端がテーパ部とされているので、ピン挿通孔52pに対する位置決めピン59aの挿通を、容易に行うことができる。
【0048】
また
図13に示すように、ピン取付孔55p(雌ネジ)は、位置決めピン59aの被固定部59a2(雄ネジ)がネジ止めされることで、ほぼ密封されている。またピン取付孔55pと位置決めピン59aの被固定部59a2との間は、挿通部59a1の端面が蓋部55の面に圧接されることで、ほぼ密封されている。従って、ピン取付孔55pから電池パック内への水の浸入は防止されている。また、ボルト挿通孔55bとボルトB4の頭部との間は、ボルトB4の頭部の端面が蓋部55の面に圧接されることで、ほぼ密封されている。従って、ボルト挿通孔55bから電池パック内への水の浸入は防止されている。
【0049】
第1の実施の形態では、貫通孔であるピン挿通孔52pが蓋部55ではなくフランジ部52f3に形成されている。なお、
図17の[比較例1]に示すように貫通孔であるピン挿通孔255pを蓋部255に形成した場合、ピン挿通孔255pから電池パック内に水が浸入するので、位置決めピン259よりも内周側の筐体開口端面252mにシール部材253sを取り付ける必要がある。この場合、シール部材253sを取り付けるために、フランジ部252fの突出長さ252wを、
図11及び
図12に示す突出長さ52wよりも長くする必要があるので、フランジ部の内方への張り出しをより長くしなければならない。すると、筐体の開口部が狭くなるので、筐体内に電池モジュールを固定する作業効率が低下する可能性がある点と、蓋部に固定した電池モジュールがフランジ部に干渉する可能性がある点で、あまり好ましくない。第1の実施の形態では、貫通孔であるピン挿通孔52pが蓋部55ではなくフランジ部52f3に形成されていることで、蓋部55に形成したピン取付孔55pを位置決めピン59aで密封することができるので、
図11及び
図12に示すように、位置決めピン59aの外周側に外周シール部材53sを配置することが可能である。従って、
図17に示す[比較例1]の構造と比較して、フランジ部の内方への突出長さ52w(
図11、
図12参照)をより短くすることができるので、より好ましい。
【0050】
また、第1の実施の形態では、
図13に示すように、ピン取付孔55pと、ピン挿通孔52pと、ボルト挿通孔55bと、ボルト取付孔52bが、いずれも貫通孔であるので、
図18の[比較例2]に示す非貫通孔(355p)を形成する場合と比較して、孔を形成する工程がシンプルで、孔を形成する時間も短い。また、孔を形成した際の切り屑が孔内に残ることも無い。金属の切り屑が孔内に残った場合、収容している電池モジュールの端子等がショートする可能性があるので、好ましくない。
【0051】
また、
図20に示す従来の構造では、位置合わせ用ピン159が取り外されるので、蓋部153に形成された貫通孔であるピン用貫通孔153cから水が浸入する。そのため、ピン挿通孔151cの内周側にシール部材151sを取り付けなければならない。従って、
図20に示す従来の構造では、筐体151の開口端面151aには、外周側から内周側に向かって、ピン挿通孔151c、シール部材151s、ボルト取付孔151b、が順に配置されており、筐体151の板厚T10が非常に厚くなっており、あまり好ましくない。これに対して第1の実施の形態では、
図20に示す従来の構造と比較して、蓋部55に形成した位置決めピン用の貫通孔であるピン取付孔55p(雌ネジ)に位置決めピン59aの被固定部(雄ネジ)をネジ止めしてほぼ密封しているので、蓋部55に形成した位置決めピン用の貫通孔からの水の浸入を防止できる。つまり、第1の実施の形態では、ピン挿通孔52pの外周側(すなわち、位置決めピン59aの外周側)に外周シール部材53sを取り付けることができる。さらに第1の実施の形態では、フランジ部を有している。これらにより
図20に示す従来の構造と比較して、第1の実施の形態では、筐体53の板厚51t(
図8参照)を必要以上に厚くしなくて済み、フランジ部の内方への突出長さ52w(
図12参照)も、必要以上に長くしなくて済む。
【0052】
●[第2の実施の形態における、位置決めピン59aの周囲の構造(
図14)]
次に
図14を用いて、第2の実施の形態における、位置決めピン59aの周囲の構造について説明する。第1の実施の形態に対して第2の実施の形態では、位置決めピン59aと蓋部55との間の密封性をより向上させるために、ピンシール部材59sを追加している点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
【0053】
図14に示すように、位置決めピン59aの挿通部59a1と蓋部55との間、かつ、位置決めピン59aの被固定部59a2の周囲には、ピン取付孔55pと位置決めピン59aとの隙間を密封するシール部材であるピンシール部材59sが設けられている。蓋部55と挿通部59a1にて挟まれたピンシール部材59sの厚さ59s1は、スペーサ52sの厚さ52s1よりも薄い。
【0054】
ピンシール部材59sが設けられていない第1の実施の形態であっても、ピン取付孔55pと位置決めピン59aとの間は、ほぼ密封されているが、第2の実施の形態では、密封性をより向上させている。なお、
図17に示す[比較例1]と比較した効果、
図18に示す[比較例2]と比較した効果、
図19及び
図20に示す従来の構造と比較した効果は、第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
【0055】
●[第3の実施の形態における、位置決めピン59bの周囲の構造(
図15)]
次に
図15を用いて、第3の実施の形態における、位置決めピン59bの周囲の構造について説明する。第1の実施の形態に対して第3の実施の形態では、位置決めピン59bの形状が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
【0056】
図15に示すように、位置決めピン59bは、被固定部59b2と、挿通部59b1を有しており、被固定部59b2は第1の実施の形態の被固定部59a2(
図12参照)と同じであるが、挿通部59b1の形状が第1の実施の形態の挿通部59a1(
図12参照)の形状とは異なる。挿通部59b1は、径が一定の円柱部を有しておらず、位置決めピン59bの挿通方向に向かって先細りとなるテーパ形状を有しており、
図15の例では円錐台形状を有している。なお
図15に示すように、蓋部55の側のフランジ部52f3の面に相当する位置における挿通部59b1の径59b7は、ピン挿通孔52pの径に、ほぼ等しい。
【0057】
図15に示すように、筐体53のピン挿通孔52pは円柱状の空洞部であるので、円錐台状の挿通部59b1を有する位置決めピン59bを挿通する際、位置決めピン59bの中心がピン挿通孔52pの中心へと、適切に案内される。また、ピン挿通孔52pと位置決めピン59bとの接触面積が少なく摩擦が少ないので、作業者は、ピン挿通孔52pに位置決めピン59bを容易に挿通することができる。なお、
図17に示す[比較例1]と比較した効果、
図18に示す[比較例2]と比較した効果、
図19及び
図20に示す従来の構造と比較した効果は、第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
【0058】
●[第4の実施の形態における、位置決めピン59cの周囲の構造(
図16)]
次に
図16を用いて、第4の実施の形態における、位置決めピン59cの周囲の構造について説明する。第1の実施の形態に対して第4の実施の形態では、位置決めピン59cの形状と、ピン挿通孔52pの形状が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
【0059】
図16に示すように、位置決めピン59cは、被固定部59c2と、挿通部59c1を有しており、被固定部59c2は第1の実施の形態の被固定部59a2(
図12参照)と同じであるが、挿通部59c1の形状が第1の実施の形態の挿通部59a1(
図12参照)の形状とは異なる。挿通部59c1は、径が一定の円柱部とされており、位置決めピン59cの挿通方向に向かって先細りとなるテーパ部を有していない。また
図16に示すように、ピン挿通孔52pの形状は、位置決めピン59cの挿通方向に向かって先細りとなるテーパ形状とされている。そしてテーパ形状のピン挿通孔52pにおける最も小さな径は、位置決めピン59cの挿通部59c1の径に、ほぼ等しい。
【0060】
図16に示すように、ピン挿通孔52pがテーパ形状とされて円錐台状の空洞部を有しているので、円柱状の位置決めピン59cの挿通部59c1を挿通する際、位置決めピン59bの中心がピン挿通孔52pの中心へと、適切に案内される。また、ピン挿通孔52pと位置決めピン59cとの接触面積が少なく摩擦が少ないので、作業者は、ピン挿通孔52pに位置決めピン59cを容易に挿通することができる。なお、
図17に示す[比較例1]と比較した効果、
図18に示す[比較例2]と比較した効果、
図19及び
図20に示す従来の構造と比較した効果は、第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
【0061】
以上、第1〜第4の実施の形態では、筐体の開口部の少なくとも一部にフランジ部を設け、蓋部に位置決めピンを固定して筐体に蓋部を固定後も位置決めピンを残し、フランジ側貫通孔の外周側(位置決めピンの外周側)に外周シール部材を配置している。これにより、筐体の板厚が必要以上に厚くならず、筐体と蓋部との間の密封状態を適切に確保可能であり、よりシンプルな構造を有する電池パックを実現することができる。
【0062】
本発明の電池パック50は、本実施の形態で説明した構成、構造、形状、外観、組み立て手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0063】
また、第1の実施の形態では位置決めピンの挿通部の先端をテーパ形状にした例(
図12参照)を説明し、第3の実施の形態では位置決めピンの挿通部の全体をテーパ形状にした例(
図15参照)を説明し、第4の実施の形態ではピン挿通孔の全体をテーパ形状にした例(
図16参照)を説明した。しかし、これに限定されず、位置決めピンにおけるピン挿通孔の側の少なくとも端部(先端部)と、ピン挿通孔における位置決めピンの側の少なくとも入口部(位置決めピンを挿通する際の入口部)と、の少なくとも一方を、位置決めピンの挿通方向に向かって先細りとなるテーパ形状とすればよい。
【0064】
また第1〜第4の実施の形態では、位置決めピンを蓋部に固定するためのピン取付孔55pを貫通孔の雌ネジに形成し、位置決めピンの被固定部を雄ネジに形成した例を説明したが、ピン取付孔55pを非貫通孔の雌ネジに形成してもよい。また、ピン取付孔を雌ネジにすることなく貫通孔または非貫通孔として形成し、位置決めピンの被固定部を雄ネジにすることなく円柱状に形成し、溶接や圧入等にて、蓋部のピン取付孔に位置決めピンの被固定部を固定するようにしてもよい。
【0065】
また第1〜第4の実施の形態では、筐体本体51とフランジ本体52(フランジ部)とを別体とした例を説明したが、筐体本体にフランジ部を一体成形して筐体を構成するようにしてもよい。
【0066】
また第2の実施の形態(
図14参照)では、蓋部55の表面におけるピン取付孔55pの周囲と、位置決めピン59aの挿通部59a1と、の間をピンシール部材59sにて密封する例を説明したが、ピン取付孔55pと、位置決めピン59aの被固定部59a2と、の間をピンシール部材で密封するようにしてもよい。
【0067】
本実施の形態にて説明した電池パック50は、
図1に示すリーチリフト1等のバッテリ式産業車両への適用に限定されず、一般車両や産業車両を含む種々の車両や、車両に限定されずバッテリを使用する種々の機器、に搭載する電池パックに適用することができる。また、本実施の形態の説明では、電池パック50に複数の電池モジュール60を収容した例を説明したが、電池パック50に収容されている電池モジュール60は、単数でもよいし、複数でもよい。また本実施の形態では、筐体53と蓋部55に電池モジュール60が取り付けられた例を説明したが、筐体53と蓋部55の少なくとも一方に電池モジュール60が取り付けられていてもよい。また筐体53と蓋部55に電池モジュール60が取り付けられていなくても、開口部を有する箱状の筐体53と開口部を覆う蓋部55にて形成された空間内に電池モジュール60が収容されていればよい。また、本実施の形態の説明では、蓋部55の四隅に位置決めピン(4個の位置決めピン)を有する例を説明したが、位置決めピンを少なくとも2個有していればよい。2個以上の位置決めピンを有していれば、例えば
図2において、筐体53に対して蓋部55をXZ平面内で位置決め可能であるとともに、筐体53に対する蓋部55の回転方向の位置ずれ(XZ平面内での蓋部55の回転による位置ずれ)も抑制できる。