(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図9を参照して、本発明を車両用のシート装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すようにシート装置10は、車両用のリクライニングシート20と、リクライニングシート20の後述する各機構部のアクチュエータを制御する制御装置40とを有する。ECU40は制御部に相当する。なお、
図1〜
図5及び
図9において、FRは車両前方向を示し、UPは車両上方向を示し、Wは車幅方向を示している。
【0016】
リクライニングシート20は、シートクッション21、シートバック22、シートバック22の上部に設けられたヘッドレスト23、オットマン24、及びアームレスト39を備えている。
【0017】
本実施形態では、リクライニングシート20は車両(図示省略)のセカンドシートとして採用されている。また、リクライニングシート20の前後左右上下の方向性は、このリクライニングシート20が搭載された車両(車体)の前後左右上下の方向性と一致する。
【0018】
<1.リクライニングシート>
図2に示すように、シートバック22は、上部体25と下部体26とにて構成されている。下部体26の骨格となる下部支持枠27はシートクッション21の骨格となる支持枠体28の後端上部に対して回動自在に軸支されている。
図2に示すように、具体的には、シートバック22の下部支持枠27は、起立位置L1と最大後傾位置L2との間でシートクッション21に対して傾動可能とされている。ここで、起立位置L1を基準にして、シートクッション21の後傾位置が変るときの角度をリクライニング角度という。
【0019】
シートバック22が起立位置L1を除く位置に位置して傾動した状態はリクライニング状態に相当する。シートバック22が起立位置L1に位置している状態は、非リクライニング状態に相当する。
【0020】
図2において、起立位置L1、最大後傾位置L2を示す各線は、下部支持枠27を支持枠体28に対して回動自在に軸支する軸の軸心O1を含む仮想平面の位置を示しており、該仮想平面は、下部支持枠27の下部から上部にかけて通過する平面である。
【0021】
シートバック22の下部体26には、
図1に示すように第1駆動部としてのリクライニングモータM1(アクチュエータ)が設けられている。このリクライニングモータM1が作動することにより、シートバック22の下部体26に設けられたリクライニング機構K1(
図6参照)を介してシートバック22が最大後傾位置L2と起立位置L1との間でシートクッション21(車体)に対し傾動(回動)されるようになっている。リクライニング機構K1は、例えば、リクライニングモータM1の出力軸に連結されたギヤ群からなる。このリクライニングモータM1は、制御部としての制御装置40(以下ではECUという)に電気的に接続されている(
図6参照)。
【0022】
リクライニングモータM1には、リクライニングモータM1の出力軸の回転数を検出するロータリーエンコーダR1が設けられている(
図6参照)。ECU40は、このロータリーエンコーダR1からの検出信号を入力し、この検出信号に基づいて、シートバック22のリクライニング角度を検出するようになっている。
【0023】
<2.中折れ>
図2に示すように、シートバック22における上部体25の骨格となる上部支持枠29は、下部支持枠27の上端に対して回動自在に軸支されている。
図2に示すように、具体的には、上部支持枠29は、非中折れ位置L3と、非中折れ位置L3よりも前方へ傾斜した最大中折れ位置L4との間でシートクッション21に対して傾動可能とされている。上部支持枠29が非中折れ位置L3に位置している状態のシートバック22は、非中折れ状態である。また、シートバック22が、非中折れ状態を除く中折れ位置に位置する場合は、中折れ状態に相当する。
【0024】
図2において、非中折れ位置L3、最大中折れ位置L4を示す各線は、上部支持枠29を下部支持枠27に対して回動自在に軸支する軸の軸心O2を含む仮想平面の位置を示しており、該仮想平面は、上部支持枠29の下部から上部にかけて通過する平面である。ここで、本実施形態では、起立位置L1と非中折れ位置L3で示すそれぞれの仮想平面は、平行または略平行としている。
【0025】
シートバック22の上部体25には、第3駆動部としての中折れモータM3(アクチュエータ)が設けられている(
図1参照)。この中折れモータM3が作動することにより、上部体25に設けられた中折れ機構K3(
図6参照)を介して上部体25が非中折れ位置L3と最大中折れ位置L4との間で下部体26に対し前方へ傾動(回動)されるようになっている。中折れ機構K3は、例えば、中折れモータM3の出力軸に連結されたギヤ群からなる。
【0026】
この中折れモータM3は、ECU40に電気的に接続されている(
図6参照)。中折れモータM3には、中折れモータM3の出力軸の回転数を検出するロータリーエンコーダR3が設けられている。ECU40は、このロータリーエンコーダR3からの検出信号を入力し、この検出信号に基づいて、上部体25の下部体26に対する傾動角度(中折れ角度)を検出するようになっている。
【0027】
<3.スイング>
図2に示すように、シートクッション21の骨格である支持枠体28は、後端部が車体に設けられたスライドレールアッパ50に対して上下方向に回動自在に連結されている。具体的には、
図2に示される降下位置L5と、最大のスイング上昇位置L6との間で車体に対して傾動可能とされている。すなわち、シートクッション21は、車体に対する座面21aのスイング角度が調整可能とされている。
【0028】
図2において、降下位置L5、及び最大のスイング上昇位置L6を示す各線は、支持枠体28をスライドレールアッパ50に対して回動自在に軸支する軸心O3を含む仮想平面の位置を示している。該仮想平面は、座面21aと平行関係にある。なお、スライドレールアッパ50は、車室のフロアに対して前後方向に延出されたスライドレール51に対して前後方向に移動調節自在となっている。
【0029】
シートクッション21には、第2駆動部としてのスイングモータM2(
図6参照)が設けられている。このスイングモータM2が作動することにより、スイング機構K2(
図6参照)を介してシートクッション21が最大のスイング上昇位置L6と降下位置L5との間で車体に対し後方へ傾動(回動)されるようになっている。このスイングモータM2は、ECU40に電気的に接続されている。
【0030】
シートクッション21が降下位置L5に位置している状態は、非スイング状態に相当し、シートクッション21が降下位置L5を除くスイング上昇位置に位置している状態は、スイング状態に相当する。
【0031】
また、スイングモータM2には、ロータリーエンコーダR2が設けられており、ECU40は、このロータリーエンコーダR2から出力された検出信号に基づいてシートクッション21の車体に対するスイング角度を検出するようになっている。
【0032】
図2〜
図4を参照して、スイング機構K2の一例を説明する。
図2〜
図4に示すように、スライドレールアッパ50の上面には、車幅方向Wにおいて、一対のスライドレール30が平行に固定配置されている。
図2では、車幅方向Wにおいて、車体の左方に配置されるスライドレール30が示され、
図3、
図4では車体の右方に配置されるスライドレール30が示されている。
【0033】
図3、
図4に示すように一対のスライドレール30には、それぞれスライダ31が車両前後方向に摺動自在に配置されている。両スライダ31は、車幅方向Wに延出された連結部材32に一体に連結されている。連結部材32の車幅方向Wの各端部には、リンク支持部材33を介してリンク34の一端が回動自在に軸支され、リンク34の他端は、支持枠体28に対して回動自在に連結されている。スライダ31が車両前方向FRに移動すると、リンク34を介して、支持枠体28(すなわち、シートクッション21)が上昇し、車両後方向に移動すると、リンク34を介して、支持枠体28(すなわち、シートクッション21)が下降するようにされている。
【0034】
図3、
図4に示すように、一対のスライドレール30の前端上部間は、機構支持部材35にて連結されている。
図4に示すように機構支持部材35の下面には、車幅方向Wに離間した一対のギヤボックス36A、36Bが支持されるとともに、一対のスイングモータM2がそれぞれ支持されている。各スイングモータM2の出力軸は、ギヤボックス36A、36B内の図示しないギヤ群を回動する。このギヤ群の中には、ギヤボックス36A、36Bを車両前後方向に貫通した一対のネジ棒37A、37Bに螺合した図示しないナットが含まれており、該ナットを正逆に回転させることにより、前記ネジ棒37A、37Bを車両前方向FRまたは車両後方向に移動させる。
図3、
図4に示すようにネジ棒37A、37Bの後端は、連結部材32に対して固定されている。前記ネジ棒37A、37Bが車両の前後方向に移動すると、連結部材32を介してスライダ31を同方向に移動させる。
【0035】
<4.オットマン>
図2に示すようにオットマン24を支持する支持体38は、その上端部がシートクッション21の支持枠体28の前端部に回動可能に連結されており、
図1に示される不使用位置と、
図2に示す最大展開位置との間でシートクッション21に対して傾動可能とされている。
【0036】
また、支持体38上にはオットマン24と一体に連結された図示しない可動体を有する。前記可動体は、車両前方向FRにおいて、シートクッション21との離間距離が短い非伸張位置と長い最大伸張位置間を移動自在に設けられている。非伸張位置から最大伸張位置は、使用位置に相当する。支持体38が最大展開位置(
図2参照)に位置した状態で、前記可動体が最大伸張位置である車両前方に位置することにより、オットマン24は、シートクッション21から車両前方向FRにおいて離間可能となっている。
【0037】
図1に示すように、オットマン24には、第4駆動部としてのオットマン展開モータM4a及びオットマン伸張モータM4bが設けられている。オットマン展開モータM4aが正逆転することにより、
図6に示すオットマン展開機構K4aを介して、支持体38を不使用位置と最大展開位置間を移動可能としている。また、オットマン伸張モータM4bが正逆転することにより、
図6に示すオットマン伸張機構K4bを介して図示しない可動体を、非伸張位置と最大伸張位置間を移動可能としている。オットマン展開モータM4a及びオットマン伸張モータM4bは、ECU40に電気的に接続されている。オットマン展開機構K4a及びオットマン伸張機構K4bは移動機構に相当する。
【0038】
また、オットマン展開モータM4aには、ロータリーエンコーダR4a(
図6参照)が設けられており、ECU40は、このロータリーエンコーダR4aから出力された検出信号に基づいて支持体38の支持枠体28に対する展開角度を検出するようになっている。また、オットマン伸張モータM4bには、ロータリーエンコーダR4b(
図6参照)が設けられており、ECU40は、このロータリーエンコーダR4bから出力された検出信号に基づいて図示しない可動体の支持体38に対する位置を検出するようになっている。
【0039】
<5.アームレスト>
図1に示すようにシートクッション21の左右両側には、車室のフロアに立設された側部体41が隣接して配置されている。側部体41は、支持枠体42(
図5参照)と、支持枠体42を覆う外装部43とを備えている。各側部体41の上方には、アームレスト39が配置されている。
【0040】
図5に示すように、各アームレスト39は、その後端が各側部体41の内部に設けられた支持枠体42に揺動自在に軸支されており、この軸支により、その前端が上方へ傾動自在となっている。
図5に示すように、具体的には、アームレスト39は、通常位置L7と、通常位置L7よりも前端が傾動角θ上方へ回動した傾動位置L8との間で傾動自在とされている。アームレスト39は、通常位置L7に位置しているときは、側部体41の上端面に接して、水平または略水平状態となるように位置している。
図5において、通常位置L7、傾動位置L8を示す各線は、アームレスト39を支持枠体42に対して回動自在に軸支する軸の軸心O4を含む仮想平面の位置を示しており、該仮想平面は、アームレスト39の後端及から後端にかけて通過する平面である。
【0041】
各側部体41の内部において、アームレスト39よりも下方には、第5駆動部としてのアームレスト傾動モータM5(アクチュエータ)が設けられている。アームレスト傾動モータM5が作動することにより、支持枠体42に設けられた傾動機構K5(
図5、
図6参照)を介してアームレスト39が通常位置L7と傾動位置L8との間で上方へ(回動)されるようになっている。
【0042】
傾動機構K5は、アームレスト傾動モータM5の出力軸の回転運動を直線運動に変換する変換機構44、変換機構44から上下方向に延設された直動棒45、直動棒45の上方向の直線運動を下方向、及び下方向の直線運動を上方向に変換するリンク機構46を備えている。変換機構44は、例えば、ラックアンドピニオン機構等にて構成されているが、ラックアンドピニオン機構に限定するものではなく、スコッチ・ヨーク機構等の他の機構であってもよい。
【0043】
リンク機構46は、支持枠体42に対して中央部が揺動自在に軸支されたリンク47、リンク47の前端と直動棒46間に連結された中間リンク48、及びリンク47の後端とアームレスト39の中央部から後端寄りの部位に連係された連結リンク49とを備えている。アームレスト傾動モータM5は、ECU40に電気的に接続されている(
図6参照)。アームレスト傾動モータM5には、出力軸の回転数を検出するロータリーエンコーダR5が設けられている。ECU40は、このロータリーエンコーダR5からの検出信号を入力し、この検出信号に基づいて、アームレスト39の傾動角θを検出するようになっている。
【0044】
<6.ECU>
図1、
図6に示すように、ヘッドレスト23には、第1検出部としての圧力センサS1が埋設されている。圧力センサS1は、着座者の頭部がヘッドレスト23を押圧した際に「ON」信号を、押圧していない場合には「OFF」信号をECU40に出力する。圧力センサS1は本実施形態では、シート状に形成されて単数としているが、シート状に限定するものではなく、非シート状の圧力センサS1を複数個分布して配置してもよい。
【0045】
また、
図1、
図6に示すように、シートバック22の下部体26には、第2検出部としての、圧力センサS2が設けられている。圧力センサS2は、リクライニングシート20に着座した着座者の腰部が押圧した際に「ON」信号を、押圧していない場合には「OFF」信号をECU40に出力する。圧力センサS2は本実施形態では、シート状に形成されて単数としているが、シート状に限定するものではなく、非シート状の圧力センサS2を複数個分布して配置してもよい。
【0046】
ECU40には、圧力センサS1、S2からの信号に基づいて実行される制御プログラムを記憶する図示しないROMを有している。
(実施形態の作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。なお、説明の便宜上、リクライニングシート20は、通常モードになっているものとする。
【0047】
すなわち、
図2に示すように通常モードは、シートクッション21が、降下位置L5に位置した非スイング状態であり、シートバック22が上部支持枠29が非中折れ位置L3に位置した非中折れ状態であり、オットマン24の支持体38が不使用位置に位置し、アームレスト39が通常位置L7に位置している。
【0048】
この通常モードにおいて、着座者がリクライニングシート20に着座した状態で、ECU40が起動されると、ECU40は、
図7に示すように、S10で初期化する。続く、S20では、ECU40は、フラグF1を「1」にセットし、フラグF2、F3を「0」にリセットし、オン継続時間のカウント値であるT(以下、オン継続時間という)を「0」にリセットする。
【0049】
この後、ECU40は、
図8に示す制御プログラムのフローチャートを所定の制御周期(例えば、数十msec)で実行する。
(S30)
S30では、ECU40は、圧力センサS1が「ON」であるか否かを判定する。ECU40は圧力センサS1が「ON」の場合は、S40に移行する。圧力センサS1が「OFF」の場合は、S50に移行する。
【0050】
(S40)
S40では、ECU40は、オン継続時間Tをインクリメントし、このフローチャートを一旦終了する。
【0051】
(S50)
ECU40は、S50では、何れのモードに設定されているかを、フラグF1〜F3に基づいて判定する。F1が「1」にセットされている場合は、現在は通常モードであると判定して、S60に移行する。F2が「1」にセットされている場合は、ECU40は、コミュニケーションモードであると判定してS90に移行し、F3が「1」にセットされている場合は、安楽睡眠モードであると判定して、ECU40はS120に移行する。
【0052】
(S60)
S60では、ECU40は、オン継続時間Tが、第1設定値Ts1以上か未満かを判定する。オン継続時間Tは、圧力センサS1の押圧の検出時間に相当し、第1設定値Ts1は第1所定時間に相当する。本実施形態では、第1設定値Ts1は、0.8秒としているが、0.8秒に限定するものではない。ECU40は、オン継続時間Tが第1設定値Ts1未満の場合は、S70に移行し、第1設定値Ts1以上の場合は、S80に移行する。
【0053】
(S70)
S70では、ECU40は、リクライニングモータM1を駆動して、リクライニング機構K1を介してシートバック22のリクライニング角度を所定角度分増分する。このように、S70では、ECU40は、シートバック22のリクライニング角度のみを変化させる。
【0054】
なお、シートバック22の下部支持枠27が最大後傾位置L2に位置してリクライニング角度が、最大リクライニング角度となっているときは、ECU40は、シートバック22のリクライニングモータM1の駆動は、行わないようにしている。また、ECU40は、S70ではオン継続時間Tを「0」にリセットした後、このフローチャートを一旦終了する。上記のように、S60で、ECU40が「NO」の判定をした場合、S70では、フラグF1は、「1」に保持されたままであるため、通常モードが継続される。
【0055】
(S80)
S80では、ECU40は、コミュニケーションモードへ移行するための処理を行う。まず、ECU40は、フラグF1を「0」にリセットし、フラグF2を「1」にセットし、オン継続時間Tを「0」にリセットする。
【0056】
次に、ECU40は、シートバック22が起立位置L1に位置している場合は、起立位置L1から、コミュニケーションモードにおける予め設定されているリクライニング角度(以下、設定リクライニング角度という)になるように、前記制御プログラムに従ってリクライニングモータM1を作動する。そして、ECU40はリクライニング機構K1を介して下部支持枠27を起立位置L1から所定の後傾位置に位置させる(
図9(b)参照)。ここでECU40は、この所定の後傾位置に達したか否かの決定を、ロータリーエンコーダR1の検出信号に基づいて行う。
【0057】
また、シートバック22が起立位置L1ではなく、既に、任意のリクライニング角度の後傾位置になっていて、その任意のリクライニング角度が設定リクライニング角度と一致している場合は、ECU40は、リクライニングモータM1を駆動しない。また、シートバック22が前述のように前記起立位置L1ではなく、任意のリクライニング角度の位置になっていて、そのリクライニング角度が、設定リクライニング角度と一致していないときは、ECU40は、設定リクライニング角度となるようにリクライニングモータM1を駆動する。
【0058】
なお、設定リクライニング角度となる所定の後傾位置は、最大後傾位置L2のリクライニング角度と同じまたはこれよりも小さい角度であり、予め設定された角度である。本実施形態では、この所定の後傾位置は、後述する図示しないモニタをリクライニングシート20に着座している乗員が見るための好適な角度としている。
【0059】
次に、ECU40は、スイングモータM2を作動して、スイング機構K2を介してシートクッション21を降下位置L5から上昇させて所定の上昇位置まで、上昇してスイングさせる(
図9(c)参照)。
【0060】
ここでECU40は、シートクッション21がこの所定の上昇位置に達したか否かの決定を、ロータリーエンコーダR2の検出信号に基づいて行う。この所定の上昇位置は、最大のスイング上昇位置L6と同じスイング角度、またはこの角度よりも小さいスイング角度(以下、所定のスイング角度という)であり、予め設定された角度である。本実施形態では、この所定の上昇位置は、後述する図示しないモニタをリクライニングシート20に着座している乗員が見るための好適な角度としている。
【0061】
次に、ECU40は、オットマン展開モータM4aを作動して、オットマン展開機構K4aを介してオットマン24(支持体38)を不使用位置から所定の展開位置まで位置させる(
図9(d)参照)。ここでECU40は、オットマン24(支持体38)が所定の展開位置に達したか否かの決定を、ロータリーエンコーダR4aの検出信号に基づいて行う。なお、所定の展開位置は、最大展開位置と同じ角度、またはこの角度よりも小さい角度であり、予め設定された角度である。
【0062】
次に、ECU40は、オットマン伸張モータM4bを作動して、オットマン伸張機構K4bを介してオットマン24(可動体)を非伸張位置から所定の伸張位置まで位置させる(
図9(e)参照)。ここでECU40は、オットマン24(可動体)が伸張位置に達したか否かの決定を、ロータリーエンコーダR4bの検出信号に基づいて行う。なお、所定の伸張位置は、最大伸張位置と同じ位置、またはこの位置よりもシートクッション21との離間距離が短い距離であり、予め設定された位置である。
【0063】
次に、ECU40は、中折れモータM3を作動して、中折れ機構K3を介して上部体25を非中折れ位置L3から所定の中折れ位置まで位置させる(
図9(f)参照)。ここでECU40は、上部体25が所定の中折れ位置に達したか否かの決定を、ロータリーエンコーダR3の検出信号に基づいて行う。なお、所定の中折れ位置は、最大中折れ位置L4よりも中折れ角度が同じ、または小さい角度であり、予め設定された角度である。なお、オットマン24(可動体)の展開と伸張を同時に行うようにしてもよく、或いはシートバック22の中折れ、前記オットマン24の展開及び伸張を同時に行ってもよい。
【0064】
また、ECU40は、アームレスト傾動モータM5を作動して、傾動機構K5(
図5、
図6参照)を介してアームレスト39を通常位置L7から傾動位置L8間での所定の位置まで傾動させる。
【0065】
なお、本実施形態では、通常位置L7から傾動位置L8間での所定の位置までのアームレスト39の傾動角θは10数度となるように設定されている。すなわち、このときの傾動角θは、コミュニケーションモード及び安楽睡眠モードのときにシートクッション21が前記所定の上昇位置に位置した状態、すなわち、シートクッション21がスイングした状態で、着座者の腕が好適に掛けられて楽になる角度となっている。ECU40は、リクライニングシート20を
図9(f)の状態にした後、このフローチャートを一旦終了する。
【0066】
従って、着座者がリクライニングシート20をこのように変形させたい場合、着座者がヘッドレスト23を頭で押圧して、圧力センサS1のオン時間を第1設定値Ts1以上にすればよくなる。すなわち、着座者がリクライニングシート20の変形をさせたいとする旨の意志を、手操作で行う必要がなく、従って、誤作動を生ずることがない。
【0067】
また、このようにリクライニングシート20が変形した場合、リクライニング状態を保ったまま、シートクッション21が所定のスイング角度となり、かつ、シートバック22が中折れ状態となる。このため、このリクライニングシート20に着座している乗員は、例えば、リクライニングシート20の前方上方において、車室のルーフに配置されているモニタ(図示しない)を見る場合、大変楽な姿勢で見ることができる。
【0068】
また、着座者は、アームレスト39により、両腕をコミュニケーションモードとなったときには、適切な傾動角θで傾動したアームレスト39に両腕をかけることができる。
(S90)
S90では、ECU40は、オン継続時間Tが、第2設定値Ts2以上か未満かを判定する。オン継続時間Tは、圧力センサS1の押圧の検出時間に相当し、第2設定値Ts2は第2所定時間に相当する。本実施形態では、第2設定値Ts2は、1.2秒としているが、1.2秒に限定するものではない。なお、第2設定値Ts2は、第1設定値Ts1よりも長くしているが、同じ値でもよく、或いは短い値でもよい。
【0069】
ECU40は、オン継続時間Tが第2設定値Ts2未満の場合は、ここでの判定を「NO」とし、S100に移行する。また、ECU40は、オン継続時間Tが、第2設定値Ts2以上のときは、S110に移行する。
【0070】
(S100)
S100では、ECU40は、オン継続時間Tを「0」リセットして、このフローチャートを一旦終了する。上記のように、S90で、ECU40が「NO」の判定をした場合、コミュニケーションモードが継続される。
【0071】
(S110)
S110では、ECU40は、コミュニケーションモードから安楽睡眠モードへ移行するための処理を行う。まず、ECU40はフラグF2を「0」にリセットし、フラグF3を「1」にセットし、オン継続時間Tを「0」にリセットする。
【0072】
また、
図9(f)に示す状態から、ECU40は、中折れモータM3を作動して、中折れ機構K3を介して上部体25を前記所定の中折れ位置から非中折れ位置L3まで位置させる(
図9(e)参照)。ここでECU40は、上部体25が所定の中折れ位置に達したか否かの決定を、ロータリーエンコーダR3の検出信号に基づいて行う。ECU40は、リクライニングシート20を
図9(e)の状態にした後、このフローチャートを一旦終了する。
【0073】
このようにリクライニングシート20の上部体25が非中折れ位置に位置して中折れが解消され、かつ、シートクッション21が所定のスイング角度を維持し、かつ、アームレスト39が所定の傾動角θを維持した状態となる。このため、このリクライニングシート20に着座している乗員は、安楽姿勢を楽に取ることができる。しかも、着座者がリクライニングシート20をこのように変形させたい場合、着座者がヘッドレスト23を頭で押圧して、圧力センサS1のオン時間を第2設定値Ts2以上にすればよくなる。すなわち、着座者がリクライニングシート20の変形をさせたいとする旨の意志は、手操作で表わす必要がなく、また、頭で、ヘッドレスト23を押圧するだけでよくなり、誤作動を生ずることがない。
【0074】
(S120)
S120では、ECU40は、オン継続時間Tが「0」であるか否かを判定する。このようになるのは、例えば、着座者の頭をヘッドレスト23から浮かしてヘッドレスト23の圧力センサS1の押圧を解除したときである。
【0075】
オン継続時間Tが「0」でない場合は、安楽睡眠モードにおいて、圧力センサS1がオンされている状態となっている。この場合は、ECU40は、判定を「NO」にしてS130に移行する。また、オン継続時間Tが「0」の場合は、ECU40は、S140に移行する。
【0076】
(S130)
S130では、ECU40は、オン継続時間Tを「0」リセットして、このフローチャートを一旦終了する。
【0077】
(S140)
S140では、ECU40は、圧力センサS2から入力した信号が「ON」信号か否かを判定する。「ON」信号が入力されていない場合には、ECU40はここでの判定を「NO」とし、このフローチャートを一旦終了する。圧力センサS2から「ON」信号が入力されている場合には、ECU40はS150に移行する。上記のように、S120またはS140で、ECU40が「NO」の判定をした場合、安楽睡眠モードが継続される。
【0078】
(S150)
S150では、ECU40は、安楽睡眠モードから通常モードへ移行するための処理を行う。まず、フラグF1を「1」にセットし、フラグF3を「0」にリセットする。次に、
図9(d)に示すように、ECU40は、オットマン伸張モータM4bを作動して、オットマン伸張機構K4bを介してオットマン24(可動体)を所定の伸張位置から非伸張位置まで位置させる。次に、
図9(d)、
図9(c)に示すように、ECU40は、オットマン展開モータM4aを作動して、オットマン展開機構K4aを介してオットマン24(支持体38)を所定の展開位置から不使用位置まで位置させる。
【0079】
次に、
図9(c)、
図9(b)に示すように、ECU40は、スイングモータM2を作動して、スイング機構K2を介してシートクッション21を所定の上昇位置から降下位置L5まで、降下させる。次に、
図9(b)、
図9(a)に示すように、ECU40は、リクライニングモータM1を作動して、リクライニング機構K1を介して下部支持枠27を所定の後傾位置から起立位置L1まで位置させる。
【0080】
なお、起立位置L1まで位置させる代わりに、S80が実行されるときに、既に前記起立位置L1とのときのリクライニング角度とは異なるリクライニング角度となっていた場合には、S80でその角度をECU40は記憶しておいてもよい。この場合は、ECU40は、その異なるリクライニング角度になるようにリクライニングモータM1を作動する。
【0081】
さらに、ECU40は、アームレスト傾動モータM5を作動して、傾動機構K5を介してアームレスト39を通常位置L7から傾動位置L8間での所定の位置から、通常位置L7に復帰させる。なお、通常モードに復帰する場合、ECU40による各モータM1〜M3、M4a、M4b、M5の制御は、前記説明した順序に限定するものではなく、前記説明した順序とは異なる順序となるように制御してもよく、或いは、2組以上のモータの制御を同時に行ってもよい。
【0082】
このように、着座者が、ヘッドレスト23に対する頭の押圧を解除し、腰で圧力センサS2をオン操作するという簡単な動作だけで、シートクッション21、シートバック22、アームレスト39を元の位置に、すなわち、コミュニケーションモードへ移行する前における通常モードのときの位置に、戻すことができる。
【0083】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のシート装置10は、シートクッション21と、リクライニング機構K1、及びヘッドレスト23を有するシートバック22と、リクライニング機構K1を作動してシートバック22のリクライニング角度を変更するリクライニングモータM1(第1駆動部)を有している。また、シート装置10は、ヘッドレスト23への押圧を検出する圧力センサS1(第1検出部)を有し、圧力センサS1の押圧の検出があった際に、リクライニングモータM1(第1駆動部)を制御してシートバック22のリクライニング角度を変更するECU40(制御部)を有する。この結果、本実施形態によれば、ヘッドレスト23に設けられた圧力センサS1を頭で押圧するだけでリクライニング機構の誤作動を生ずることがなく、シートバックのリクライニング角度の変更を行うことができる。このように、本実施形態では、着座者は、目をつぶっていても、リクライニング機構を操作でき、着座者の意志のままに操ることができる。
【0084】
(2)本実施形態のシート装置10は、シートクッション21を後方へ傾動するスイング機構K2と、スイング機構K2を作動してシートクッション21を後方へ傾動するスイングモータM2(第2駆動部)を備えている。ECU40(制御部)は、圧力センサS1(第1検出部)の押圧の検出時間が所定時間である第1設定値Ts1以上継続した際に、シートバック22のリクライニング角度の変更を行うリクライニングモータM1(第1駆動部)の制御、及び、シートクッション21を後方への傾動を行うスイングモータM2(第2駆動部)の制御を行う。この結果、本実施形態によれば、ヘッドレスト23に設けられた圧力センサS1を押圧するだけでリクライニング機構の誤作動を生ずることがなく、シートクッション21のスイング機構の誤作動を生ずることがなく、シートクッション21の後方への傾動を行うことができる。
【0085】
(3)本実施形態のシート装置10は、シートバック22の上部を下部に対して非中折れ状態から前方へ傾斜した中折れ状態にする中折れ機構K3と、中折れ機構K3を作動してシートバック22の上部の中折れ状態を形成する中折れモータM3(第3駆動部)を備えている。ECU40は、圧力センサS1のオン継続時間Tが所定時間である第1設定値Ts1以上継続した際にシートバック22のリクライニング角度の変更を行うリクライニングモータM1の制御、シートクッション21を後方への傾動を行うスイングモータM2の制御、及び、シートバック22の上部の中折れ状態を形成させる中折れモータM3の制御を行う。この結果、本実施形態によれば、圧力センサS1の検出時間が所定時間である第1設定値Ts1以上継続した際には、誤作動を生ずることがなく、さらにシートバック22を中折れ状態にすることができる。
【0086】
(4)また、本実施形態では、所定時間は、第1設定値Ts1と第1設定値Ts1よりも長い第2設定値Ts2を含む。そして、ECU40は、オン継続時間Tが第1設定値Ts1以上であって、第2設定値Ts2未満のときは、リクライニングモータM1、スイングモータM2及び,中折れモータM3の制御を行う。この結果、本実施形態によれば、オン継続時間(検出時間)が第1所定時間以上であって、第2所定時間未満のときは、誤作動を生ずることがなく、シートバックを、中折れ状態及びリクライニング状態にし、かつ、シートクッションをスイング状態にすることができる。
【0087】
(4)本実施形態のシート装置10は、シートクッション21に付設されたオットマン24と、オットマン24を不使用位置と使用位置間を移動させるオットマン展開機構K4a及びオットマン伸張機構K4b(移動機構)と、両機構をそれぞれ作動するオットマン展開モータM4a、オットマン伸張モータM4b(第4駆動部)を備えている。そして、ECU40は、スイングモータM2(第2駆動部)を制御する際は、さらに、オットマン展開モータM4a、オットマン伸張モータM4b(第4駆動部)を制御して、オットマン24を非使用位置から使用位置へ移動させる。この結果、本実施形態によれば、シートクッションを後方へ傾動するときは、誤作動を生ずることがなく、オットマンも非使用位置から使用位置へ移動させた状態にすることができる。
【0088】
(5)本実施形態のシート装置10は、シートクッション21に付設されたアームレスト39と、アームレスト39の前端を上方へ傾動させる傾動機構K5と、傾動機構K5を作動するアームレスト傾動モータM5(第5駆動部)を備えている。ECU40は、スイングモータM2(第2駆動部)を制御する際は、さらに、アームレスト傾動モータM5(第5駆動部)を制御して、アームレスト39を上方へ傾動させる。この結果、本実施形態によれば、シートクッションを後方へ傾動するときは、誤作動を生ずることがなく、アームレストもその前端を上方へ傾動させた状態にすることができる。
【0089】
(6)本実施形態のシート装置10は、シートバック22への押圧を検出する圧力センサS2(第2検出部)を備えている。また、ECU40は、圧力センサS1の押圧検出がなく、かつ、圧力センサS2(第2検出部)の押圧検出があった際には、ECU40の制御対象である、各モータM1、M2、M3、M4a、M4b、M5を復帰制御する。
【0090】
この結果、本実施形態によれば、ヘッドレストから、シートバックにもたれた使用者が頭を介してヘッドレストへの押圧をやめれば、誤作動がなくて各駆動部が復帰制御されるため、シートクッション等を元の位置に復帰させることができる。
【0091】
なお、実施形態は上記実施形態に限定するものではなく以下のように変更してもよい。
前記実施形態では、オットマン24を有するリクライニングシート20に具体化したが、オットマン24を省略してもよい。この場合、オットマン24に関係するオットマン展開モータM4a、オットマン伸張モータM4b、オットマン展開機構K4a、オットマン伸張機構K4b等の構成が省略される。また、
図9(d)、
図9(e)のオットマン伸張機構K4bに関するECU40による制御が省略される。
【0092】
前記実施形態において、中折れ機構及びそれを駆動するモータM3を省略してもよい。この場合、
図8のフローチャートでは、S90〜S110を省略し、かつ、フラグF2を省略するものとする。
【0093】
前記実施形態では、車両用のシート装置に具体化したが、車両用に限定するものではなく、他の用途のシート装置に具体化してもよい。
また、各モータの制御順序は、適宜変更してもよい。
【0094】
前記実施形態では、ECU40は、オン継続時間Tが第1設定値Ts1以上であって、第2設定値Ts2未満のときは、リクライニングモータM1、スイングモータM2及び中折れモータM3の制御を行うようにした。これに代えて、オン継続時間Tが第1設定値Ts1以上であって、第2設定値Ts2未満のときは、中折れモータM3の制御を行わないで、リクライニングモータM1及びスイングモータM2の制御の組合せで制御を行ってもよい。
【0095】
また、前記実施形態における各機構は、一例であって、これらの構成に限定するものではない。
前記実施形態では、第1検出部及び第2検出部を圧力センサで構成したが、圧力センサに限定するものではなく、ヘッドレスト、シートバックを押圧した際にオン作動、或いは、オフ作動するものでもよい。
【0096】
また、上記各実施形態を適宜組合せてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10…シート装置、20…リクライニングシート、21…シートクッション、
22…シートバック、23…ヘッドレスト、24…オットマン、
25…上部体、26…下部体、27…シートバックの下部支持枠、
28…シートクッション21の支持枠体、28a…支持板、
28b…支持片、29…シートバックの上部支持枠、
30…スライドレール、31…スライダ、32…連結部材、
33…リンク支持部材、34…リンク、35…機構支持部材、
36A、36B…ギヤボックス、37A、37B…ネジ棒、
38…支持体、39…アームレスト、40…制御装置(ECU:制御部)、
41…側部体、42…支持枠体、43…外装部、44…変換機構、
46…直動棒、47…リンク、48…中間リンク、49…連結リンク、
50…スライドレールアッパ、51…スライドレール、
52…支持部材、53…回動軸、54…セクタギヤ、55…ギヤ群、
56…駆動レバー、S1…圧力センサ(第1検出部)、
S2…圧力センサ(第2検出部)、
M1…リクライニングモータ(第1駆動部)、
M2…スイングモータ(第2駆動部)、M3…中折れモータ(第3駆動部)、
M4a…オットマン展開モータ(第4駆動部)、
M4b…オットマン伸張モータ(第4駆動部)、
M5…アームレスト駆動モータ(第5駆動部)、
K1…リクライニング機構、K2…スイング機構、K3…中折れ機構、
K4a…オットマン展開機構(移動機構)、
K4b…オットマン伸張機構(移動機構)、K5…傾動機構、
R1〜R3、R4a、R4b、R5…ロータリーエンコーダ、
L1…起立位置、L2…最大後傾位置、L3…非中折れ位置、
L4…最大中折れ位置、L5…降下位置、L6…スイング上昇位置、
O1〜O4…軸心、θ…傾動角、
FR…車両前方向、UP…車両上方向、W…車幅方向。