特許第6787212号(P6787212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787212
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20201109BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20201109BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20201109BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H01L21/28 301B
   H01L21/28 B
   H01L29/80 F
   H01L29/80 H
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-59010(P2017-59010)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-163923(P2018-163923A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】市川 弘之
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−273658(JP,A)
【文献】 特開2011−204804(JP,A)
【文献】 特開2015−037105(JP,A)
【文献】 特開2015−035557(JP,A)
【文献】 特開2005−286135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体層上にオーミック電極を形成する工程と、
前記オーミック電極の上面および側面を覆うように金属膜を形成する工程と、
前記窒化物半導体層上に前記金属膜の表面を被覆する第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜が形成された状態で前記オーミック電極を熱処理する工程と、
前記金属膜の表面が露出するように、前記第1絶縁膜をエッチング液を用いウェットエッチングする工程と、
前記第1絶縁膜をウェットエッチングする工程の後、前記窒化物半導体層上に前記金属膜の表面を覆うように第2絶縁膜を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理する工程は、500℃以上で熱処理する工程を含む請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記オーミック電極は、窒化物半導体層上に形成されたチタン膜またはタンタル膜と、前記チタン膜またはタンタル膜上に形成されたアルミニウム膜と、を含む請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1絶縁膜を除去する工程において、弗酸を含むエッチング液を用い前記第1絶縁膜を除去する請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜は金膜または金ゲルマニウム膜である請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、例えば窒化物半導体層を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体層にオーミック電極を形成する場合、窒化物半導体層にオーミック電極を形成した後に、窒化物半導体層とオーミック電極とをオーミック接触させるための熱処理を行うことが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−171133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒化物半導体層が露出した状態でオーミック接触のための熱処理を行うと、窒化物半導体層の表面が劣化してしまう。オーミック電極を絶縁膜で被覆させ熱処理を行うと、絶縁膜が劣化してしまう。オーミック電極を絶縁膜で被覆させ熱処理を行い、その後、絶縁膜を除去すると、絶縁膜の除去によりオーミック電極が劣化してしまう。
【0005】
本半導体装置の製造方法は、半導体装置の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、窒化物半導体層上にオーミック電極を形成する工程と、前記オーミック電極の上面および側面を覆うように金属膜を形成する工程と、前記窒化物半導体層上に前記金属膜の表面を被覆する第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜が形成された状態で前記オーミック電極を熱処理する工程と、前記金属膜の表面が露出するように、前記第1絶縁膜をエッチング液を用いウェットエッチングする工程と、前記第1絶縁膜をウェットエッチングする工程の後、前記窒化物半導体層上に前記金属膜の表面を覆うように第2絶縁膜を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本半導体装置の製造方法によれば、半導体装置の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)から図1(e)は、比較例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図2図2(a)から図2(c)は、比較例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図3図3(a)から図3(d)は、比較例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図4図4(a)から図4(e)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図5図5は、実施例1におけるオーミック電極および金属膜の断面を示す図である。
図6図6(a)から図6(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図7図7(a)から図7(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図8図8(a)から図8(d)は、実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図9図9(a)から図9(c)は、実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図10図10は、実施例2におけるオーミック電極および金属膜の断面を示す図である。
図11図11(a)から図11(c)は、実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図12図12(a)から図12(c)は、実施例4に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
[本願発明の実施形態の詳細]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本願発明の一実施形態は、窒化物半導体層上にオーミック電極を形成する工程と、前記オーミック電極の上面および側面を覆うように金属膜を形成する工程と、前記窒化物半導体層上に前記金属膜の表面を被覆する第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜が形成された状態で前記オーミック電極を熱処理する工程と、前記金属膜の表面が露出するように、前記第1絶縁膜をエッチング液を用いウェットエッチングする工程と、前記第1絶縁膜をウェットエッチングする工程の後、前記窒化物半導体層上に前記金属膜の表面を覆うように第2絶縁膜を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法である。
これにより、窒化物半導体層の表面からの窒素の抜け、絶縁膜の変質および/またはオーミック電極の腐食等の半導体装置の劣化を抑制できる。
(2)前記熱処理する工程は、500℃以上で熱処理する工程を含むことが好ましい。これにより、オーミック接触のため500℃以上で熱処理しても半導体装置の劣化を抑制できる。
(3)前記オーミック電極は、窒化物半導体層上に形成されたチタン膜またはタンタル膜と、前記チタン膜またはタンタル膜上に形成されたアルミニウム膜と、を含むことが好ましい。これにより、オーミック電極と窒化物半導体層とのオーミック接触のためアルミニウムを用いてもオーミック電極の腐食を抑制できる。
(4)前記第1絶縁膜を除去する工程において、弗酸を含むエッチング液を用い前記第1絶縁膜を除去することが好ましい。これにより、エッチング液として弗酸を用いてもオーミック電極の腐食を抑制できる。
(5)前記金属膜は金膜または金ゲルマニウム膜であることが好ましい。これにより、ウェットエッチングによりオーミック電極が腐食することを抑制できる。
【0011】
本発明の実施形態にかかる半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
[比較例1]
図1(a)から図1(e)は、比較例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図1(a)に示すように、基板10上に窒化物半導体層18として、電子走行層12、電子供給層14およびキャップ層16を積層する。図1(b)に示すように、窒化物半導体層18上にオーミック電極20を形成する。
【0013】
図1(c)に示すように、窒化物半導体層18の表面が露出した状態で、熱処理する。これにより、オーミック電極20と窒化物半導体層18とがオーミック接触する。図1(d)に示すように、窒化物半導体層18上にオーミック電極20を覆うように絶縁膜26を形成する。図1(e)に示すように、絶縁膜26に開口を設け開口内に窒化物半導体層18に接触するゲート電極30を形成する。
【0014】
比較例1では、図1(c)において、窒化物半導体層18が露出した状態で熱処理を行う。このため、窒化物半導体層18が劣化してしまう。例えば、熱処理温度は500℃から900℃である。このような高い温度の熱処理により、窒化物半導体層18の表面から窒素が抜ける。これにより、窒化物半導体層18の表面には、ガリウムのダングリングボンド等に起因した界面準位が形成される。このような界面準位により、半導体装置を動作させたときに、電気的特性が劣化してしまう。例えば、ドレイン電流のコラプス現象などが生じる。
【0015】
[比較例2]
図2(a)から図2(c)は、比較例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図2(a)に示すように、比較例1の図1(b)の後、窒化物半導体層18上にオーミック電極20を覆うように絶縁膜24を形成する。図2(b)に示すように、オーミック接触のための熱処理を行う。これにより、絶縁膜24は絶縁膜24aに変質する。図2(c)に示すように、比較例1と同様にゲート電極30を形成する。
【0016】
比較例2では、図2(b)に示すように、オーミック接触のための熱処理のときに、窒化物半導体層18が露出しておらず、窒化物半導体層の劣化が抑制される。しかし、絶縁膜24aは熱処理を経ることで劣化する。例えば、絶縁膜24が窒化シリコン膜の場合、熱処理により膜内の水素が抜け欠陥となる。さらに、シリコンのダングリングボンド等に起因したキャップ層16の窒素引き抜きが発生し、キャップ層16の表面に界面準位が形成される。このように変質した絶縁膜24aが残存していると半導体装置の特性が劣化する(例えばドレイン電流のコラスプ現象などが生じる)。また、例えば絶縁膜24が酸化アルミニウム(Al)膜の場合、熱処理により酸化アルミニウム膜が結晶化してしまう。結晶化した絶縁膜24aが残存していると、この後の製造工程において寸法精度の高い加工が困難となる。
【0017】
[比較例3]
図3(a)から図3(d)は、比較例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図3(a)に示すように、比較例2の図2(b)における熱処理後、オーミック電極20を覆うように絶縁膜24aが形成されている。図3(b)に示すように、絶縁膜24aを除去する。図3(c)に示すように、窒化物半導体層18上にオーミック電極20を覆うように絶縁膜26を形成する。図3(d)に示すように、比較例1と同様にゲート電極30を形成する。
【0018】
比較例3では、熱処理のときに、窒化物半導体層18が露出しておらず、窒化物半導体層の劣化が抑制される。また、熱処理により変質した絶縁膜24を除去し、新たに絶縁膜26を形成する。これにより、変質した絶縁膜24aが残存することを抑制できる。
【0019】
しかしながら、図3(b)において、絶縁膜24aを除去するときに、オーミック電極20が劣化する。例えば絶縁膜24aをドライエッチング法を用い除去すると、窒化物半導体層18の表面およびオーミック電極20にダメージが導入される。また、絶縁膜24aをウェットエッチング法を用い除去すると、オーミック電極20が腐食される。例えば、オーミック電極20が、チタン、ニッケルまたはタンタルと、アルミニウムと、を含み、絶縁膜24aが窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜のとき、絶縁膜24aを弗酸を含む溶液でエッチングすると、オーミック電極20が腐食され、抵抗が増大する。
【0020】
比較例1から3のように、オーミック接触のための熱処理を行うと、窒化物半導体層18、絶縁膜24およびオーミック電極20の少なくとも1つが劣化してしまう。以下、上記課題を解決する実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1は、図4(a)から図4(e)および図6(a)から図7(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図4(a)に示すように、基板10上に窒化物半導体層18を成膜する。基板10は、例えばSiC基板、サファイア基板またはSi基板である。SiC基板のように基板10が透明な場合、基板10の下面に金属膜を形成してもよい。窒化物半導体層18は、電子走行層12、電子供給層14およびキャップ層16を含む。電子走行層12、電子供給層14およびキャップ層16は、それぞれ例えばGaN層、AlGaN層およびGaN層である。電子走行層12の電子供給層14の界面付近に2次元電子ガスが形成される。2次元電子ガスと基板10との間の電子走行層12はバッファ層として機能する。電子供給層14は例えばInAlN層でもよい。窒化物半導体層18は、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用い成膜する。
【0022】
素子分離領域において電子走行層12まで達する溝(不図示)を形成することにより、トランジスタ間をアイソレーション(素子分離)する。このとき、この後のパターン形成のためのアライメントマークを同時に形成してもよい。
【0023】
図4(b)に示すように、窒化物半導体層18上に開口51を有するマスク層50を形成する。マスク層50は例えばフォトレジストである。図4(c)に示すように、開口51から露出した窒化物半導体層18の上面およびマスク層50上面にオーミック電極20および金属膜21を蒸着法を用い形成する。オーミック電極20は、ソース電極およびドレイン電極である。金属膜21はオーミック電極20と同じ金属膜であるが、マスク層50上の金属膜を金属膜21として図示する。オーミック電極20および金属膜21を形成するときに、原子は矢印60のように、窒化物半導体層18のほぼ法線方向から飛来するようにする。また、オーミック電極20は、キャップ層16および電子供給層14に形成されたリセス内(例えばリセスの底面が電子供給層14内にある)に形成されてもよい。
【0024】
図4(d)に示すように、オーミック電極20および金属膜21上に金属膜22および23を蒸着法を用い形成する。例えば金属膜22は金属膜21の表面に接している。金属膜23は金属膜22と同じ金属膜であるが、マスク層50上の金属膜を金属膜23として開口51内の金属膜22と区別して図示する。金属膜22および23の原子は、矢印62のように窒化物半導体層18の法線方向64から角度θ傾斜した方向から飛来するようにする。例えば、基板10を原子の飛来方向から傾け、かつ基板10を自転させることにより、矢印62のように、原子が斜め方向から飛来する。図4(e)に示すように、マスク層50を除去することにより、マスク層50上に形成された金属膜21および23がリフトオフされる。
【0025】
図5は、実施例1におけるオーミック電極20および金属膜22の断面を示す図である。図5に示すように、オーミック電極20は、積層された金属膜20aから20dを有している。金属膜20aから20dは、例えばそれぞれ膜厚が20nmのチタン膜、膜厚が100nmのアルミニウム膜、膜厚が20nmのチタン膜(またはニッケル膜)および膜厚が50nmの金膜である。金属膜20aおよび20cは、タンタル膜でもよい。金属膜22は、例えば膜厚が50nmの金膜である。
【0026】
図4(c)のように、オーミック電極20を形成すると、金属膜20dが金属膜20cの側面を覆う場合もあるが、金属膜20cの側面を完全には覆わない、または膜厚が不十分である。金属膜22は、図4(d)のように、図4(c)より斜め方向から原子が飛来するように蒸着するため、オーミック電極20の側面に厚い金属膜22が形成される。金属膜22がオーミック電極20の側面を保護するため、オーミック電極20の側面に形成された金属膜22の膜厚は例えば20nm以上である。
【0027】
図6(a)に示すように、窒化物半導体層18上に金属膜22を覆うように絶縁膜24を形成する。絶縁膜24は、例えば膜厚が40nmの窒化シリコン膜でありCVD法を用い形成する。絶縁膜24は、酸化アルミニウム膜でありALD(Atomic Layer deposition)法を用い形成してもよい。絶縁膜24は、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜でもよい。絶縁膜24の膜厚は例えば20nmから50nmである。絶縁膜24の膜厚は、熱処理の保護膜として機能しかつ熱応力により歪および/または成膜時のダメージを考慮して決定する。
【0028】
図6(b)に示すように、オーミック電極20を熱処理する。これにより、オーミック電極20と窒化物半導体層18のキャップ層16とがオーミック接触する。絶縁膜24は24aに変質する。熱処理は、例えばRTA(Rapid Thermal Anneal)法を用い850℃、30秒行う。熱処理温度および熱処理時間は、例えば500℃から900℃および30秒から60秒である。オーミック接触のため、金属膜20aがチタン膜のとき、熱処理温度は700℃から900℃が好ましい。金属膜20aがタンタル膜のとき、熱処理温度は500℃から700℃が好ましい。熱処理時間は例えば30秒から1分である。
【0029】
金属膜20aのチタン膜またはタンタル膜は、キャップ層16の表面の酸化層を還元させるゲッタリング効果と共に、キャップ層16中の窒素と反応して、低抵抗のTiNをキャップ層16側に形成する。 これにより、低抵抗なTiNが2次元電子ガス近傍にまで形成される。このため、2層目の金属膜20bのアルミニウム膜と2次元電子ガスとがトンネル効果によりコンタクトされやすくなる。金属膜20cのチタン膜、ニッケル膜またはタンタル膜は、金属膜20bと20dとのバリア層である。金属膜20dの金膜は金属膜20aから20cの酸化を抑制する。また、金属膜20dの金膜は上層との接触抵抗を低下させるための膜である。
【0030】
図6(c)に示すように、金属膜22が腐食されないエッチング液を用い絶縁膜24aをウェットエッチングする。絶縁膜24aが例えば窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜の場合、絶縁膜24aは例えば緩衝弗酸(バッファード弗酸)を用いたウェットエッチングにより除去する。金は、緩衝弗酸等の酸またはアルカリに腐食され難い。金膜である金属膜22がオーミック電極20を保護するため、オーミック電極20の腐食が抑制される。
【0031】
図6(d)に示すように、窒化物半導体層18上に金属膜22を覆うように絶縁膜26を形成する。絶縁膜26は、例えば膜厚が40nmの窒化シリコン膜でありCVD法を用い形成する。絶縁膜26は、酸化アルミニウム膜でありALD(Atomic Layer deposition)法を用い形成してもよい。絶縁膜26は、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜でもよい。
【0032】
図7(a)に示すように、絶縁膜26上に開口53を有するマスク層52を形成する。マスク層52は例えばフォトレジストである。マスク層52をマスクに絶縁膜26を除去する。図7(b)に示すように、マスク層52を除去した後、絶縁膜26の開口を覆うようにゲート電極30を形成する。ゲート電極30は、例えば窒化物半導体層18側から膜厚が80nmのニッケル膜および膜厚が300nmの金膜であり、蒸着法およびリフトオフ法を用い形成する。
【0033】
図7(c)に示すように、絶縁膜26およびゲート電極30上に層間膜32を形成する。層間膜32は、例えば窒化シリコン膜等の絶縁膜であり、CVD法を用い形成する。層間膜32は、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜でもよい。
【0034】
図7(d)に示すように、層間膜32に開口を設ける。開口を介し金属膜22と接触する配線層34を形成する。配線層34は、例えば金膜であり、メッキ法を用い形成する。
【0035】
実施例1によれば、図4(c)のように、窒化物半導体層18上にオーミック電極20を形成する。図4(d)および図5のように、オーミック電極20の上面および側面を覆うように金属膜22(金を含む膜)を形成する。図6(a)のように、窒化物半導体層18上に金属膜22の表面を被覆する絶縁膜24(第1絶縁膜)を形成する。図6(b)のように、絶縁膜24が形成された状態でオーミック電極20と窒化物半導体層18とをオーミック接触させるように熱処理する。図6(c)のように、金属膜22の表面が露出するように、金属膜22が腐食されないエッチング液を用い絶縁膜24aをウェットエッチングする。図6(d)のように、窒化物半導体層18上に金属膜22の表面を覆うように絶縁膜26(第2絶縁膜)を形成する。
【0036】
図6(b)のように、オーミック接触のための熱処理するときに、窒化物半導体層18の表面が絶縁膜24で覆われているため、比較例1のような窒化物半導体層18の表面の窒素抜け等に起因した劣化を抑制できる。図6(c)のように、熱処理により変質した絶縁膜24aを除去し、図6(d)のように、絶縁膜26を形成する。このため、比較例2のような変質した絶縁膜24aによる半導体装置の特性の劣化が抑制できる。図6(c)のように、絶縁膜24aをウェットエッチングするときに、オーミック電極20の表面が金属膜22に保護されている。これにより、比較例3のようなオーミック電極20の腐食等による劣化が抑制できる。以上のように、窒化物半導体層18の表面からの窒素抜け、絶縁膜24の変質および/またはオーミック電極20の腐食等の半導体装置の劣化を抑制できる。
【0037】
比較例1では、オーミック接触のための熱処理を500℃以上で行うと、窒化物半導体層18の表面からの窒素抜けのように窒化物半導体層が劣化する。また、比較例2では変質した絶縁膜24aが残存する。窒化物半導体層18および絶縁膜24は600℃以上でより劣化し、700℃以上でさらに劣化する。実施例1によれば、図6(b)において500℃以上、600℃以上または700℃以上で熱処理しても、窒化物半導体層18の表面からの窒素抜けおよび/または変質した絶縁膜24aが残存することを抑制できる。
【0038】
図5のように、オーミック電極20は、窒化物半導体層18上に形成されたチタン膜またはタンタル膜と、チタン膜またはタンタル膜上に形成されたアルミニウム膜と、を含む。これにより、窒化物半導体層18とオーミック電極20とのオーミック接触を得ることができる。また、オーミック電極20は、アルミニウム膜上に形成されたチタン膜、ニッケル膜またはタンタル膜を含む。これにより、窒化物半導体層18とオーミック電極20とのオーミック接触を得ることができる。
【0039】
これらの金属は、絶縁膜24のエッチング液により腐食されやすい。そこで、実施例1のように金属膜22を設けることで、オーミック電極20の腐食を抑制できる。
【0040】
これらの金属は、弗酸を含むエッチング液により特に腐食する。よって、図6(c)のように、弗酸を含むエッチング液を用い絶縁膜24aを除去する場合、金属膜22を設けることが好ましい。
【0041】
金からなる膜は、弗酸等の酸およびアルカリ溶液に対し腐食されない。よって、金属膜22は金膜または金ゲルマニウム膜であることが好ましい。
【0042】
絶縁膜24は、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜である。これらの絶縁膜は熱処理の保護膜に好適である。しかし、これらの絶縁膜は、熱処理により変質しやすい。また、これら絶縁膜を除去するためには、弗酸を含むエッチング液を用いる。よって、オーミック電極20の腐食抑制のため金属膜22を設けることが好ましい。
【0043】
絶縁膜26は、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜である。金属膜22が金膜の場合、絶縁膜26をALD法を用い形成することが好ましい。ALD法は表面反応を利用して成膜する方法であり、下地金属により製膜される膜厚および/または膜質が変わることがある。オーミック電極20の露出している部分は全てが金膜で覆われている。このため、金属膜22の膜厚および/または膜質を均一にできる。これにより、オーミック電極20剥がれ等を抑制できる。
【0044】
オーミック電極20を形成するときに、図4(b)のように、窒化物半導体層18上に開口51を有するマスク層50を形成する。図4(c)のように、マスク層50をマスクに窒化物半導体層18上に蒸着法を用いオーミック電極20を形成する。金属膜22を形成するときに、図4(d)のように、マスク層50をマスクに、金属膜22を形成する。このとき、窒化物半導体層18の上面の法線方向64に対する原子の入射角度θが図4(c)においてオーミック電極20を形成する工程の入射角度より大きくなるような蒸着法を用いる。これにより、図5のように、金属膜22は、オーミック電極20の側面を覆うように形成される。
【0045】
また、同じマスク層50を用いオーミック電極20と金属膜22を形成するため、製造工程の簡略化が可能となる。
【実施例2】
【0046】
実施例2は、オーミック電極20と金属膜22を別のマスク層を用い形成する例である。図8(a)から図9(c)は、実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図8(a)に示すように、実施例1の図4(b)と同様に、窒化物半導体層18上に開口幅W1の開口51を有するマスク層50を形成する。図8(b)に示すように、実施例1の図4(c)と同様に、マスク層50をマスクにオーミック電極20および金属膜21を形成する。
【0047】
図8(c)に示すように、マスク層50を除去することで金属膜21をリフトオフする。図8(d)に示すように、窒化物半導体層18上に開口幅W2の開口55を有するマスク層54を形成する。マスク層54は例えばフォトレジストである。開口55はオーミック電極20に重なるように設ける。
【0048】
図9(a)に示すように、オーミック電極20およびマスク層54上に金属膜22および金属膜23を形成する。図9(b)に示すように、マスク層54を除去することで金属膜23をリフトオフする。図9(c)に示すように、実施例1の図6(a)から図7(d)と同様の工程を行う。
【0049】
図10は、実施例2におけるオーミック電極20および金属膜22の断面を示す図である。図10に示すように、オーミック電極20および金属膜22の幅は、ほぼ開口幅W1およびW2となる。開口幅W2を開口幅W1より十分大きくすれば、オーミック電極20の側面は金属膜22に完全に覆われる。その他の製造工程は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0050】
実施例2によれば、図8(a)のようにオーミック電極20を形成するときに、窒化物半導体層18上に開口51(第1開口)を有するマスク層50(第1マスク)を形成する。図8(b)のように、マスク層50をマスクに窒化物半導体層18上に前記オーミック電極20を形成する。金属膜22を形成するとき、図8(c)のように、マスク層50を除去した後、図8(d)のように、窒化物半導体層18上にオーミック電極20を含み開口51より広い開口55(第2開口)を有するマスク層54(第2マスク層)を形成する。図9(a)のように、マスク層54をマスクに窒化物半導体層18上に金属膜22を形成する。これにより、図10のように、金属膜22は、オーミック電極20の側面を覆うように形成される。
【0051】
図8(b)におけるオーミック電極20を形成する原子の入射角度と図8(d)における金属膜22を形成する原子の入射角度は同じでもよいし異なっていてもよい。例えば、オーミック電極20を形成する装置と金属膜22を形成する装置は同じでもよい。これにより、実施例1と比べ成膜装置を削減できる。オーミック電極20および金属膜22は蒸着法により形成してもよいしスパッタリング法を用い形成してもよい。
【実施例3】
【0052】
実施例3は、絶縁膜26の形成前にゲート電極30を形成する例である。図11(a)から図11(c)は、実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図11(a)に示すように、実施例1の図6(c)または実施例2の図9(a)の後に、実施例1の図7(b)と同様に窒化物半導体層18上にゲート電極30を形成する。図11(b)に示すように、窒化物半導体層18上に、金属膜22およびゲート電極30を覆うように絶縁膜26を形成する。絶縁膜26はCVD法またはALD法を用い形成する。特に、絶縁膜26をALD法を用い形成することで、絶縁膜26をゲート電極30の庇の下まで均一に形成できる。
【0053】
図11(c)に示すように、実施例1の図7(b)から図7(d)と同様の工程を行う。その他の製造工程は実施例1および2と同じであり説明を省略する。
【0054】
実施例1および2のように、絶縁膜26の形成後にゲート電極30を形成してもよい。実施例3のように、ゲート電極30の形成後に絶縁膜26を形成してもよい。
【実施例4】
【0055】
実施例4は、キャップ層16を除去し電子供給層14上にオーミック電極20を形成する例である。図12(a)から図12(c)は、実施例4に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図12(a)に示すように、窒化物半導体層18上に開口51を有するマスク層50を形成する。マスク層50をマスクにキャップ層16を除去する。
【0056】
図12(b)に示すように、実施例1の図4(c)から図4(e)または実施例2の図8(b)から図9(b)と同様に、電子供給層14上に接触するオーミック電極20を形成する。オーミック電極20を覆う金属膜22を形成する。このとき、オーミック電極20および金属膜22の両方がキャップ層16に埋め込まれていてもよいし、オーミック電極20のみがキャップ層16に埋め込まれ金属膜22はキャップ層16に埋め込まれていなくてもよい。
【0057】
図12(c)に示すように、実施例1の図6(a)から図7(d)と同様の工程、または実施例3の図11(a)から図11(c)と同様の工程を行う。その他の製造工程は実施例1から3と同じであり説明を省略する。
【0058】
実施例1および3のように、オーミック電極20をキャップ層16に接触するように形成してもよい。実施例4のように、オーミック電極20を電子供給層14に接触するように形成してもよい。絶縁膜26の形成後にゲート電極30を形成してもよいし、実施例3のように、ゲート電極30の形成後に絶縁膜26を形成してもよい。
【0059】
実施例1から4では、半導体装置として、オーミック電極20間にゲート電極30が設けられ、電子走行層12および電子走行層12上に形成された電子供給層14を有するHEMT(High Electron Mobility Transistor)を例に説明した。HEMT以外の半導体装置のオーミック装置に実施例1から4の方法を適用してもよい。窒化物半導体とは、窒素(N)を含む半導体であり、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウム(InN)、および窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)などである。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0061】
(付記1)
窒化物半導体層上にオーミック電極を形成する工程と、
前記オーミック電極の上面および側面を覆うように金属膜を形成する工程と、
前記窒化物半導体層上に前記金属膜の表面を被覆する第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜が形成された状態で前記オーミック電極を熱処理する工程と、
前記金属膜の表面が露出するように、前記第1絶縁膜をエッチング液を用いウェットエッチングする工程と、
前記第1絶縁膜をウェットエッチングする工程の後、前記窒化物半導体層上に前記金属膜の表面を覆うように第2絶縁膜を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
(付記2)
前記熱処理する工程は、500℃以上で熱処理する工程を含む付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記3)
前記オーミック電極は、窒化物半導体層上に形成されたチタン膜またはタンタル膜と、前記チタン膜またはタンタル膜上に形成されたアルミニウム膜を含む付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記4)
前記第1絶縁膜を除去する工程において、弗酸を含むエッチング液を用い前記第1絶縁膜を除去する付記3に記載の半導体装置の製造方法。
(付記5)
前記金属膜は金膜または金ゲルマニウム膜である付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記6)
前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜は窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜である付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7)
前記窒化物半導体層上の前記オーミック電極間にゲート電極を形成する工程を含み、
前記窒化物半導体層は、電子走行層と、前記電子走行層上に形成された電子供給層と、を含む付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記オーミック電極を形成する工程は、
前記窒化物半導体層上に開口を有するマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクに前記窒化物半導体層上に蒸着法を用い前記オーミック電極を形成する工程と、を含み、
前記金属膜を形成する工程は、
前記マスク層をマスクに、前記窒化物半導体層の上面の法線方向に対する原子の入射角度が前記オーミック電極を形成する工程の原子の入射角度より大きくなるような蒸着法を用い前記金属膜を形成する工程と、を含む付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記オーミック電極を形成する工程は、
前記窒化物半導体層上に第1開口を有する第1マスク層を形成する工程と、
前記第1マスク層をマスクに前記窒化物半導体層上に前記オーミック電極を形成する工程と、を含み、
前記金属膜を形成する工程は、
前記第1マスク層を除去した後、前記窒化物半導体層上に前記オーミック電極を含み前記第1開口より広い第2開口を有する第2マスク層を形成する工程と、
前記第2マスク層をマスクに前記窒化物半導体層上に前記金属膜を形成する工程と、を含む付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記熱処理する工程は、700℃以上で熱処理する工程を含む付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)
前記オーミック電極は、前記アルミニウム膜上に形成されたチタン膜、ニッケル膜またはタンタル膜を含む付記3に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0062】
10 基板
12 電子走行層
14 電子供給層
16 キャップ層
18 窒化物半導体層
20 オーミック電極
20a−20d、21、22、23 金属膜
24、24a、26 絶縁膜
30 ゲート電極
32 層間膜
34 配線層
50、52、54 マスク層
51、53、55 開口
60、62 矢印
64 法線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12