(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る色変換組成物、色変換シート、それを含む発光体、照明装置、バックライトユニットおよびディスプレイの好適な実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0034】
<色変換組成物>
本発明の実施形態に係る色変換組成物は、入射光を、この入射光よりも長波長の光に変換する色変換組成物であって、有機発光材料(A)および樹脂(B)を含有する。有機発光材料(A)は、発光スペクトルにおいて、最大放射強度を示すピークの半値幅が10nm以上50nm以下となる有機発光材料である。樹脂(B)は、脂環式構造を有する樹脂であって、当該樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が当該樹脂の総量のうち50重量%以上となる樹脂である。
【0035】
<有機発光材料>
本発明の実施形態に係る色変換組成物は、有機発光材料として、少なくとも、上述した有機発光材料(A)を含有する。有機発光材料は、有機物の発光材料である。ここで、本発明における発光材料とは、何らかの光が照射されたときに、その光とは異なる波長の光を発する材料のことをいう。一般に、発光材料としては、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料および量子ドットなどが挙げられるが、高い色再現性を得るという観点から、有機発光材料が好ましい。
【0036】
高い色再現性を得るためには、発光材料の発光スペクトルにおいて、最大放射強度を示すピークの半値幅は、より狭い方が好ましい。半値幅とは、あるピークにおいて、ピーク強度の半分となる波長2点間の幅であって、半値全幅(FWHM:Full width at half maximum)のことを指す。
【0037】
有機発光材料(A)の発光スペクトルにおいて、最大放射強度を示すピークの半値幅は、10nm以上50nm以下である。この半値幅は、15nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましい。また、45nm以下がより好ましく、40nm以下がさらに好ましい。最大放射強度を示すピークの半値幅が上記範囲内であれば、高い色純度を得ることができる。これにより、色再現性を高めることができる。一方、上記半値幅が10nm未満である場合や、50nmを上回る場合は、色純度は低下し、高い色再現性を得ることができない。
【0038】
有機発光材料(A)は、その発光スペクトルにおいて最大放射強度を示すピーク波長が500nm以上580nm以下の領域に観測される発光を呈することが好ましい。以後、ピーク波長が500nm以上580nm以下の領域に観測される発光は、「緑色の発光」と称される。この緑色の発光の励起光は、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光であることが好ましい。一般に、励起光のエネルギーが大きいほど、発光材料の分解を引き起こしやすい。しかし、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光は、比較的小さい励起エネルギーのものである。このため、緑色の発光の励起光が上記範囲のものであれば、色変換組成物中の発光材料の分解を引き起こすことなく、色純度の良好な緑色の発光が得られる。
【0039】
色域を拡大し、色再現性を向上させるためには、青、緑、赤の各色の発光スペクトルの重なりが小さいことが好ましい。例えば、適度な励起エネルギーを有する波長400nm以上500nm以下の範囲の青色光を励起光として用いる場合、ピーク波長が500nm以上の領域に観測される発光を緑色の発光として利用することが好ましい。何故ならば、この場合、青色光と緑色光との各発光スペクトルの重なりが小さくなり、色再現性が向上するからである。この効果をより大きくするという観点から、有機発光材料(A)のピーク波長の下限値は、より好ましくは510nm以上であり、さらに好ましくは515nm以上であり、特に好ましくは520nm以上である。
【0040】
また、緑色光と赤色光との各発光スペクトルの重なりを小さくするため、ピーク波長が580nm以下の領域に観測される発光を緑色の発光として利用することが好ましい。この効果をより大きくするという観点から、有機発光材料(A)のピーク波長の上限値は、より好ましくは550nm以下であり、さらに好ましくは540nm以下であり、特に好ましくは530nm以下である。
【0041】
本発明の実施形態に係る色変換組成物は、さらに、別の有機発光材料(E)を含有することもできる。有機発光材料(E)は、上述した有機発光材料(A)とは異なる有機発光材料であって、ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈するものである。以後、ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光は、「赤色の発光」と称される。この赤色の発光の励起光は、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光と有機発光材料(A)からの発光とのうち少なくとも一方であることが好ましい。
【0042】
波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光の一部は、本発明の実施形態に係る色変換組成物を含有する色変換シートを透過するため、発光ピークが鋭い青色LEDを使用した場合、青、緑、赤の各色において鋭い形状の発光スペクトルを示し、色純度の良い白色光を得ることができる。その結果、特にディスプレイにおいては、色彩が一層鮮やかな、より大きな色域を効率的に作ることができる。また、照明用途においては、現在主流となっている青色LEDと黄色蛍光体とを組み合わせた白色LEDに比べ、特に緑色領域および赤色領域の発光特性が改善されるため、演色性が向上した好ましい白色光源を得ることができる。
【0043】
ピーク波長が500nm以上580nm以下の領域に観測される発光を緑色の発光として利用する場合、ピーク波長が580nm以上の領域に観測される発光を赤色の発光として利用することが好ましい。何故ならば、この場合、緑色光と赤色光との各発光スペクトルの重なりが小さくなり、色再現性が向上するからである。この効果をより大きくするという観点から、有機発光材料(E)のピーク波長の下限値は、より好ましくは620nm以上であり、さらに好ましくは630nm以上であり、特に好ましくは635nm以上である。
【0044】
赤色光のピーク波長の上限は、可視域の上界付近である750nm以下であればよいが、700nm以下である場合、視感度が大きくなるため、より好ましい。この効果をより大きくするという観点から、有機発光材料(E)のピーク波長の上限値は、さらに好ましくは680nm以下であり、特に好ましくは660nm以下である。
【0045】
すなわち、波長400nm以上500nm以下の範囲の青色光を励起光として用いる場合、緑色光のピーク波長は500nm以上580nm以下の領域に観測されることが好ましく、510nm以上550nm以下であることがより好ましく、515nm以上540nm以下であることがさらに好ましく、520nm以上530nm以下であることが特に好ましい。また、赤色光のピーク波長は580nm以上750nm以下の領域に観測されることが好ましく、620nm以上700nm以下であることがより好ましく、630nm以上680nm以下であることがさらに好ましく、635nm以上660nm以下であることが特に好ましい。
【0046】
本発明の実施形態に係る色変換組成物に含有する有機発光材料(A)および有機発光材料(E)としては、具体的には、縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、ヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体、スチルベン誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、クマリン誘導体、アゾール誘導体およびその金属錯体、シアニン系化合物、キサンテン系化合物やチオキサンテン系化合物、ポリフェニレン系化合物、ナフタルイミド誘導体、フタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体、オキサジン系化合物、ヘリセン系化合物、芳香族アミン誘導体、および有機金属錯体化合物などが挙げられる。
【0047】
縮合アリール環を有する化合物やその誘導体としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどが挙げられる。ヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジンなどが挙げられる。スチルベン誘導体としては、例えば、1,4−ジスチリルベンゼン、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベンなどが挙げられる。クマリン誘導体としては、例えば、クマリン6、クマリン7、クマリン153などが挙げられる。アゾール誘導体およびその金属錯体としては、例えば、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどが挙げられる。シアニン系化合物としては、例えば、インドシアニングリーンなどが挙げられる。キサンテン系化合物やチオキサンテン系化合物としては、例えば、フルオレセイン、エオシン、ローダミンなどが挙げられる。オキサジン系化合物としては、例えば、ナイルレッドやナイルブルーなどが挙げられる。芳香族アミン誘導体としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどが挙げられる。有機金属錯体化合物としては、例えば、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、およびレニウム(Re)などが挙げられる。
【0048】
有機発光材料(A)および有機発光材料(E)は、上述した有機発光材料に限定されるものではない。さらに、本発明の実施形態に係る色変換組成物には、上述した有機発光材料の中から選択される少なくとも1種類が含まれていればよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0049】
有機発光材料(A)および有機発光材料(E)は、蛍光発光材料であってもよいし、リン光発光材料であってもよいが、高い色再現性を達成するという観点から、蛍光発光材料であることが好ましい。これらの中でも、熱的安定性および光安定性が高いことから、縮合アリール環を有する化合物やその誘導体が好ましい。特に、半値幅が狭く、高い発光量子収率が得られることから、有機発光材料(A)および有機発光材料(E)は、ピロメテン誘導体であることが好ましい。ピロメテン誘導体としては、一般式(1)で表される化合物が挙げられるが、これに限らない。
【0051】
一般式(1)において、Xは、C−R
7またはNである。R
1〜R
9は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および、隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。このことは、以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。
【0052】
また、以下の説明において、例えば、「炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基」とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて全ての炭素数が6〜40となるアリール基である。炭素数を規定している他の置換基も、これと同様である。
【0053】
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0054】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0055】
上記の全ての基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示す。この飽和脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができる。この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0056】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示す。この飽和脂環式炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0057】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示す。この複素環基は、置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0058】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示す。この不飽和脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0059】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示す。この不飽和脂環式炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。
【0060】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示す。この不飽和脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0061】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示す。この脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0062】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0063】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示す。この芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0064】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールチオエーテル基における芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールチオエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0065】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基などの芳香族炭化水素基を示す。これらの中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0066】
R
1〜R
9が置換もしくは無置換のアリール基である場合、このアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であり、フェニル基が特に好ましい。
【0067】
R
1〜R
9のそれぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、このアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。特に好ましくは、フェニル基である。
【0068】
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基などの、炭素以外の原子を1個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5−ナフチリジニル基、1,6−ナフチリジニル基、1,7−ナフチリジニル基、1,8−ナフチリジニル基、2,6−ナフチリジニル基、2,7−ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
【0069】
R
1〜R
9が置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、このヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0070】
R
1〜R
9のそれぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、このヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0071】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられる。これらの置換基は、さらに置換されてもよい。
【0072】
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基などが挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基が好ましい。これらの置換基は、さらに置換されてもよい。アミノ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0073】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基などのアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基などのアリールシリル基を示す。シリル基のケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
【0074】
シロキサニル基とは、例えば、トリメチルシロキサニル基などのエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。シロキサニル基のケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。
【0075】
ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基などが挙げられる。これらの中でも、アリール基、アリールエーテル基が好ましい。
【0076】
ホスフィンオキシド基とは、−P(=O)R
10R
11で表される基である。R
10R
11は、R
1〜R
9と同様の群から選ばれる。
【0077】
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(1)のR
1とR
2)が互いに結合して、共役または非共役の環状骨格を形成することをいう。縮合環の構成元素としては、炭素以外にも、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素の中から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、縮合環は、さらに別の環と縮合してもよい。このことは、隣接置換基との間に形成される脂肪族環についても同様である。
【0078】
一般式(1)で表される化合物は、発光スペクトルにおいて、最大放射強度を示すピークの半値幅が10nm以上50nm以下であって、かつ、高い発光量子収率が得られるため、高い色再現性と効率的な色変換とを達成することができる。
【0079】
さらに、一般式(1)で表される化合物は、適切な置換基を適切な位置に導入することで、発光効率、色純度、熱的安定性、光安定性、分散性などのさまざまな特性や物性を調整することができる。
【0080】
例えば、R
1、R
3、R
4およびR
6が全て水素である場合に比べ、R
1、R
3、R
4およびR
6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基や置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合の方が、より良い熱的安定性および光安定性を示す。
【0081】
R
1、R
3、R
4およびR
6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、このアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基といった炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。これらの中でも、熱的安定性に優れることから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましい。さらに、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させるという観点では、このアルキル基として、立体的にかさ高いtert−ブチル基がより好ましい。また、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、このアルキル基として、メチル基も好ましく用いられる。
【0082】
R
1、R
3、R
4およびR
6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基である場合、このアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基がより好ましい。特に好ましくは、フェニル基である。
【0083】
R
1、R
3、R
4およびR
6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、このヘテロアリール基としては、ピリジル基、キノリニル基、チオフェニル基が好ましく、ピリジル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0084】
R
1、R
3、R
4およびR
6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、バインダー樹脂や溶媒への溶解性が良好なため、好ましい。このアルキル基としては、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、メチル基が好ましい。
【0085】
R
1、R
3、R
4およびR
6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、より良い熱的安定性および光安定性を示すため、好ましい。特に、R
1、R
3、R
4およびR
6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。
【0086】
発光効率、色純度、熱的安定性、光安定性、分散性などの複数の性質を向上させる置換基もあるが、全てにおいて十分な性能を示す置換基は限られている。特に、高発光効率と高色純度との両立が難しい。そのため、一般式(1)で表される化合物に対して複数種類の置換基を導入することで、発光特性や色純度などにバランスの取れた化合物を得ることが可能である。
【0087】
特に、R
1、R
3、R
4およびR
6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基である場合、例えば、R
1≠R
4、R
3≠R
6、R
1≠R
3またはR
4≠R
6などのように、複数種類の置換基を導入することが好ましい。ここで、「≠」は、異なる構造の基であることを示す。例えば、R
1≠R
4は、R
1とR
4とが互いに異なる構造の基であることを示す。このような複数種類の置換基の導入により、色純度に影響を与えるアリール基と発光効率に影響を与えるアリール基とを、一般式(1)で表される化合物に対して同時に導入することができる。このため、色純度および発光効率の細やかな調節が可能となる。
【0088】
中でも、R
1≠R
3またはR
4≠R
6であることが、発光効率と色純度とをバランスよく向上させるという観点から、好ましい。この場合、一般式(1)で表される化合物に対して、色純度に影響を与えるアリール基を両側のピロール環にそれぞれ1つ以上導入し、それ以外の位置に効率に影響を与えるアリール基を導入することができる。故に、これら両方の性質を最大限に向上させることができる。さらに、R
1≠R
3またはR
4≠R
6である場合、耐熱性と色純度との双方を向上させるという観点から、R
1=R
4およびR
3=R
6であることがより好ましい。
【0089】
主に色純度に影響を与えるアリール基としては、電子供与性基で置換されたアリール基が好ましい。電子供与性基とは、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団に、電子を供与する原子団である。電子供与性基としては、例えば、アルキル基やアルコキシ基などが挙げられる。特に、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert−ブチル基、メトキシ基が特に好ましく、これらを上記の電子供与性基とした場合、一般式(1)で表される化合物において、分子同士の凝集による消光を防ぐことができる。置換基の置換位置は特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには結合のねじれを抑える必要があるため、ピロメテン骨格との結合位置に対してメタ位またはパラ位に置換基を結合させることが好ましい。
【0090】
一方、主に発光効率に影響を与えるアリール基としては、tert−ブチル基、アダマンチル基、メトキシ基などのかさ高い置換基を有するアリール基が好ましい。
【0091】
R
1、R
3、R
4およびR
6が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基である場合、R
1、R
3、R
4およびR
6は、それぞれ以下のAr−1〜Ar−6から選ばれることが好ましい。この場合、R
1、R
3、R
4およびR
6の好ましい組み合わせとしては、表1−1〜表1−11に示すような組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
R
2およびR
5は、水素、アルキル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アリール基のいずれかであることが好ましい。中でも、熱的安定性の観点から、水素またはアルキル基が好ましく、発光スペクトルにおいて狭い半値幅を得やすいという観点から、水素がより好ましい。
【0105】
R
8およびR
9は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素、含フッ素アルキル基、含フッ素ヘテロアリール基または含フッ素アリール基のいずれかであることが好ましい。中でも、励起光に対して安定であって、より高い発光量子収率が得られることから、R
8およびR
9は、フッ素または含フッ素アリール基であることがより好ましい。さらに、合成の容易さから、R
8およびR
9は、フッ素であることが特に好ましい。
【0106】
ここで、含フッ素アリール基とは、フッ素を含むアリール基であり、例えば、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基およびペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。含フッ素ヘテロアリール基とは、フッ素を含むヘテロアリール基であり、例えば、フルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基およびトリフルオロピリジル基などが挙げられる。含フッ素アルキル基とは、フッ素を含むアルキル基であり、例えば、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基などが挙げられる。
【0107】
また、一般式(1)において、Xは、C−R
7であることが、光安定性の観点から好ましい。XがC−R
7であるとき、一般式(1)で表される化合物の耐久性、すなわち、この化合物の発光強度の経時的な低下には、置換基R
7が大きく影響する。具体的には、R
7が水素である場合、この水素の反応性が高いため、この水素と空気中の水分や酸素とが容易に反応してしまう。このことは、一般式(1)で表される化合物の分解を引き起こす。また、R
7が例えばアルキル基のような分子鎖の運動の自由度が大きい置換基である場合は、確かに反応性は低下するが、組成物中で化合物同士が経時的に凝集し、結果的に濃度消光による発光強度の低下を招く。したがって、R
7は、剛直で、かつ運動の自由度が小さく凝集を引き起こしにくい基であることが好ましく、具体的には、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。
【0108】
より高い発光量子収率を与え、より熱分解しづらい点、また光安定性の観点から、XがC−R
7であり、R
7が置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。アリール基としては、発光波長を損なわないという観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましい。
【0109】
さらに、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには、R
7とピロメテン骨格との炭素−炭素結合のねじれを適度に抑える必要がある。何故ならば、過度にねじれが大きいと、励起光に対する反応性が高まるなど、光安定性が低下するからである。このような観点から、R
7としては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基であることがより好ましい。特に好ましくは、置換もしくは無置換のフェニル基である。
【0110】
また、R
7は、適度にかさ高い置換基であることが好ましい。R
7が、ある程度のかさ高さを有することにより、分子の凝集を防ぐことができる。この結果、一般式(1)で表される化合物の発光効率や耐久性がより向上する。
【0111】
このようなかさ高い置換基のさらに好ましい例としては、下記一般式(2)で表されるR
7の構造が挙げられる。すなわち、一般式(1)において、XがC−R
7であり、R
7が一般式(2)で表される基であることがより好ましい。
【0113】
一般式(2)において、rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは、1〜3の整数である。kが2以上である場合、rは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0114】
より高い発光量子収率を与えることができるという観点から、rは、置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。このアリール基の中でも、特に、フェニル基、ナフチル基が好ましい例として挙げられる。rがアリール基である場合、一般式(2)のkは、1もしくは2であることが好ましい。中でも、分子の凝集をより防ぐという観点から、このkは、2であることがより好ましい。さらに、kが2以上である場合、rの少なくとも1つは、アルキル基で置換されていることが好ましい。この場合のアルキル基としては、熱的安定性の観点から、メチル基、エチル基およびtert−ブチル基が特に好ましい例として挙げられる。
【0115】
また、蛍光波長や吸収波長を制御したり、溶媒との相溶性を高めたりするという観点から、rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはハロゲンであることが好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert−ブチル基、メトキシ基が特に好ましい。rがtert−ブチル基またはメトキシ基であることは、分子同士の凝集による消光を防ぐことについて、より有効である。
【0116】
また、一般式(1)で表される化合物の別の態様として、R
1〜R
7のうち少なくとも1つが電子求引基であることが好ましい。特に、(1)R
1〜R
6のうち少なくとも1つが電子求引基であること、(2)R
7が電子求引基であること、または(3)R
1〜R
6のうち少なくとも1つが電子求引基であり、かつ、R
7が電子求引基であること、が好ましい。このように上記化合物のピロメテン骨格に電子求引基を導入することで、ピロメテン骨格の電子密度を大幅に下げることができる。これにより、上記化合物の酸素に対する安定性がより向上し、この結果、上記化合物の耐久性をより向上させることができる。
【0117】
電子求引基とは、電子受容性基とも呼称し、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団から、電子を引き付ける原子団である。電子求引基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、正の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II−380頁)から引用することができる。なお、フェニル基も、上記のような正の値をとる例もあるが、本発明において、電子求引基にフェニル基は含まれない。
【0118】
電子求引基の例として、例えば、−F(σp:+0.06)、−Cl(σp:+0.23)、−Br(σp:+0.23)、−I(σp:+0.18)、−CO
2R
12(σp:R
12がエチル基の時+0.45)、−CONH
2(σp:+0.38)、−COR
12(σp:R
12がメチル基の時+0.49)、−CF
3(σp:+0.50)、−SO
2R
12(σp:R
12がメチル基の時+0.69)、−NO
2(σp:+0.81)などが挙げられる。R
12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のシクロアルキル基を表す。これら各基の具体例としては、上記と同様の例が挙げられる。
【0119】
好ましい電子求引基としては、フッ素、含フッ素アリール基、含フッ素ヘテロアリール基、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のスルホニル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、化学的に分解しにくいからである。
【0120】
より好ましい電子求引基としては、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させる効果につながるからである。特に好ましい電子求引基は、置換もしくは無置換のエステル基である。
【0121】
一般式(1)で表される化合物の特に好ましい例の一つとして、R
1、R
3、R
4およびR
6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、さらに、XがC−R
7であり、R
7が、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、R
7は、rが置換もしくは無置換のフェニル基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。これは、有機発光材料(E)として特に好ましい。
【0122】
また、一般式(1)で表される化合物の特に好ましい例の別の一つとして、R
1、R
3、R
4およびR
6が全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr−1〜Ar−6から選ばれ、さらに、XがC−R
7であり、R
7が、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、R
7は、rがtert−ブチル基、メトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることがより好ましく、rがメトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。これは、有機発光材料(A)として特に好ましい。
【0123】
一般式(1)で表される化合物は、以下に一例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0149】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、特表平8−509471号公報や特開2000−208262号公報に記載の方法で製造することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩とを塩基共存下で反応させることにより、目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
【0150】
また、ピロメテン−フッ化ホウ素錯体の合成については、J.Org.Chem.,vol.64,No.21,pp.7813−7819(1999)、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,vol.36,pp.1333−1335(1997)などに記載されている方法を参考にして、一般式(1)で表される化合物を合成することができる。例えば、下記一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とをオキシ塩化リン存在下、1,2−ジクロロエタン中で加熱した後、下記一般式(5)で表される化合物をトリエチルアミン存在下、1,2−ジクロロエタン中で反応させ、これにより、一般式(1)で表される化合物を得る方法が挙げられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ここで、R
1〜R
9は、上記説明と同様である。Jは、ハロゲンを表す。
【0152】
さらに、アリール基やヘテロアリール基の導入の際は、ハロゲン化誘導体とボロン酸あるいはボロン酸エステル化誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−炭素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。同様に、アミノ基やカルバゾリル基の導入の際にも、例えば、パラジウムなどの金属触媒下でのハロゲン化誘導体とアミンあるいはカルバゾール誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−窒素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0153】
本発明の実施形態に係る色変換組成物は、一般式(1)で表される化合物以外に、必要に応じてその他の化合物を含有することができる。例えば、励起光から一般式(1)で表される化合物へのエネルギー移動効率を更に高めるために、ルブレンなどのアシストドーパントを含有してもよい。また、一般式(1)で表される化合物の発光色以外の発光色を加味したい場合は、所望の有機発光材料、例えば、クマリン系色素、ローダミン系色素などの有機発光材料を添加することができる。その他、これらの有機発光材料以外でも、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドットなどの公知の発光材料を組み合わせて添加することも可能である。これらの中でも、半値幅の狭さおよび耐久性の観点から、無機蛍光体がより好ましい。
【0154】
無機蛍光体としては、緑色に発光する蛍光体、青色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体などがある。本発明の実施形態に係る色変換組成物に対して好ましく用いられる無機蛍光体のうち、緑色に発光する蛍光体としては、例えば、SrAl
2O
4:Eu、Y
2SiO
5:Ce,Tb、MgAl
11O
19:Ce,Tb、Sr
7Al
12O
25:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Ga
2S
4:Eu、β型サイアロン蛍光体などがある。
【0155】
β型サイアロン蛍光体とは、β型窒化ケイ素の固溶体であり、β型窒化ケイ素結晶のケイ素(Si)位置にアルミニウム(Al)が置換固溶し、窒素(N)位置に酸素(O)が置換固溶したものである。β型サイアロンの単位胞(単位格子)に2式量の原子があるので、β型サイアロンの一般式として、Si
6-zAl
zO
zN
8-zが用いられる。ここで、組成zは、0〜4.2であり、固溶範囲は非常に広く、また、(Si、Al)/(N、O)のモル比は、3/4を維持する必要がある。
【0156】
上記の無機蛍光体のうち、青色に発光する蛍光体としては、例えば、Sr
5(PO
4)
3Cl:Eu、(SrCaBa)
5(PO
4)
3Cl:Eu、(BaCa)
5(PO
4)
3Cl:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)
2B
5O
9Cl:Eu,Mn、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)(PO
4)
6Cl
2:Eu,Mnなどがある。
【0157】
上記の無機蛍光体のうち、緑色から黄色に発光する蛍光体としては、例えば、YAG系蛍光体が挙げられる。YAG系蛍光体としては、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦括されたイットリウム・ガドリニウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット酸化物蛍光体、および、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・ガリウム・アルミニウム酸化物蛍光体などがある。具体的には、YAG系蛍光体として、Ln
3M
5O
12:R、(Y
1-xGa
x)
3(Al
1-yGa
y)
5O
12:Rを使用することができる。Ln
3M
5O
12:Rにおいて、Lnは、Y、Gd、Laから選ばれる少なくとも1以上である。Mは、AlおよびCaのうち少なくとも一方を含むものである。Rは、ランタノイド系である。また、(Y
1-xGa
x)
3(Al
1-yGa
y)
5O
12:Rにおいて、Rは、Ce、Tb、Pr、Sm、Eu、Dy、Hoから選ばれる少なくとも1以上である。組成x、yは、0<x<0.5、0<y<0.5である。
【0158】
上記の無機蛍光体のうち、赤色に発光する蛍光体としては、例えば、Y
2O
2S:Eu、La
2O
2S:Eu、Y
2O
3:Eu、Gd
2O
2S:Eu、A
2MF
6:Mnなどがある。この蛍光体において、Aは、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群より選ばれ、かつ少なくともNaおよびKのうち少なくとも一方を含む1種類以上のアルカリ金属である。Mは、Si、Ti、Zr、Hf、GeおよびSnからなる群より選ばれる1種類以上の4価元素である。
【0159】
また、現在主流の青色LEDに対応して発光する無機蛍光体としては、Y
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce、Lu
3Al
5O
12:Ce、Y
3Al
5O
12:CeなどのYAG系蛍光体、Tb
3Al
5O
12:CeなどのTAG系蛍光体、(Ba,Sr)
2SiO
4:Eu系蛍光体やCa
3Sc
2Si
3O
12:Ce系蛍光体、(Sr,Ba,Mg)
2SiO
4:Euなどのシリケート系蛍光体、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu、(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu、CaSiAlN
3:Euなどのナイトライド系蛍光体、Ca
x(Si,Al)
12(O,N)
16:Euなどのオキシナイトライド系蛍光体、さらには、(Ba,Sr,Ca)Si
2O
2N
2:Eu系蛍光体、Ca
8MgSi
4O
16Cl
2:Eu系蛍光体、SrAl
2O
4:Eu、Sr
4Al
14O
25:Eu、K
2SiF
6:MnなどのMn賦活複フッ化物錯体蛍光体(KSF蛍光体)などが挙げられる。
【0160】
これらの中では、YAG系蛍光体、TAG系蛍光体、シリケート系蛍光体およびKSF蛍光体が、発光効率や輝度などの観点から好ましく用いられる。上記以外にも、用途や目的とする発光色に応じて、公知の蛍光体を用いることができる。
【0161】
有機発光材料の発光スペクトルの形状に関しては、特に制限されるものではないが、励起エネルギーの効率的な利用が可能であり、色純度も高くなることから、単一ピークであることが好ましい。ここで、単一ピークとは、ピークを形成する波長領域において、最も強度の強いピークの他に、このピークの強度に対して5%以上の強度を持つピークがない状態を示す。
【0162】
本発明の実施形態に係る色変換組成物における有機発光材料(A)の含有量は、化合物のモル吸光係数、発光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製する色変換シートの厚みや透過率にもよるが、通常は樹脂(B)の100重量部に対して、1.0×10
-4重量部〜30重量部である。この有機発光材料(A)の含有量は、樹脂(B)の100重量部に対して、1.0×10
-3重量部〜10重量部であることがさらに好ましく、1.0×10
-2重量部〜5重量部であることが特に好ましい。
【0163】
また、色変換組成物に、緑色の発光を呈する有機発光材料(A)と、赤色の発光を呈する有機発光材料(E)とを両方含有する場合、緑色の発光の一部が赤色の発光に変換される。このことから、色変換組成物における有機発光材料(A)の含有量w
aと有機発光材料(E)の含有量w
eとは、w
a≧w
eの関係であることが好ましい。また、これらの有機発光材料(A)および有機発光材料(E)の含有比率は、w
a:w
e=1000:1〜1:1であることが好ましく、500:1〜2:1であることがさらに好ましく、200:1〜3:1であることが特に好ましい。ただし、含有量w
aおよび含有量w
eは、樹脂(B)の重量に対する重量%である。
【0164】
<樹脂>
(脂環式構造を有する樹脂)
本発明の実施形態に係る色変換組成物は、少なくとも、上述した有機発光材料(A)と、樹脂(B)とを含有する。樹脂(B)は、脂環式構造を有する樹脂である。色変換組成物に含まれる樹脂(B)中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、この樹脂(B)の総量のうち50重量%以上である。上記の有機発光材料(A)は、樹脂官能基や吸湿水分に由来するラジカルにより、ラジカル酸化を受けやすく、分解、劣化することがある。このため、有機発光材料(A)を含有する色変換組成物の含有成分は、有機官能基が少ないものや吸湿性が小さいものが好ましい。この色変換組成物に含まれる樹脂(B)は、上記のように、脂環式構造を有し、樹脂(B)中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が樹脂(B)の総量のうち50重量%以上である樹脂とすることにより、樹脂構造が剛直であり、自由体積が小さいものとなる。そのため、この色変換組成物中の樹脂(B)の吸湿性が小さくなることから、有機発光材料(A)の耐久性を向上させることができる。脂環式構造を有する樹脂(B)中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、該樹脂(B)の総量のうち50重量%以上であって、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が50重量%以上の樹脂を樹脂(B)として用いることで、色変換組成物のより高い耐久性を得ることができる。
【0165】
脂環式構造を有する樹脂(B)とは、主鎖および側鎖の少なくとも一部に脂環式構造を有する重合体である。脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロオレフィン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられる。中でも、耐久性の観点から、シクロオレフィン構造が好ましい。
【0166】
これらのような脂環式構造を有する樹脂の中でも、主鎖および側鎖のうち少なくとも一部にシクロオレフィン構造を有する樹脂が好ましい。以下、このような樹脂は、シクロオレフィン樹脂と称する。
【0167】
脂環式構造は、樹脂(B)の主鎖にあってもよいし、側鎖にあってもよいが、吸湿性をより抑制するという観点から、主鎖に脂環式構造を有する樹脂(B)が好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に限定されないが、通常4〜30個であり、好ましくは5〜20個であり、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこれらの範囲内であることで、樹脂(B)と有機発光材料(A)との相溶性を確保しつつ、色変換組成物の高い耐久性を得ることができる。
【0168】
脂環式構造を有する樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、下限値として、例えば5,000以上であり、好ましくは15,000以上であり、より好ましくは20,000以上である。また、この重量平均分子量は、上限値として、例えば500,000以下であり、好ましくは100,000以下であり、より好ましくは50,000以下である。この重量平均分子量が上記範囲内にあれば、樹脂(B)と有機発光材料(A)との相溶性が良好であり、かつ、より高い耐久性をもつ色変換組成物が得られる。
【0169】
本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によって測定した値である。具体的には、サンプルを孔径0.45μmメンブレンフィルターで濾過後、GPC装置(東ソー社製 HLC−82A)を所定の条件(展開溶剤:シクロヘキサン、展開速度:1.0ml/分、カラム:東ソー社製 TSKgelG2000HXL)で用いてポリスチレン換算により求められる値が、本発明における重量平均分子量である。
【0170】
脂環式構造を有する樹脂(B)のガラス転移点(Tg)は、50℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上130℃以下であることがより好ましく、100℃以上125℃以下であることがさらに好ましい。樹脂(B)のガラス転移点が上記範囲内であれば、この樹脂(B)などを含有する色変換組成物から形成される色変換シートにおいて、より高い耐久性を得ることができる。ガラス転移点は、示差走査熱量計を用いて昇温速度0.5℃/minの条件で測定して求められる値である。具体的な測定器としては、例えば、セイコー電子工業社製示差走査熱量計(商品名 DSC6220)が挙げられる。
【0171】
脂環式構造を有する樹脂(B)の具体例としては、(1)ノルボルネン樹脂、(2)単環のシクロオレフィン樹脂、(3)環状共役ジエン樹脂、(4)ビニル脂環式炭化水素樹脂などが挙げられる。これらの中でも、耐久性の観点から、ノルボルネン樹脂および単環のシクロオレフィン樹脂が好ましい。特に、樹脂構造の主鎖および側鎖のうち少なくとも一部に、ノルボルネン樹脂および単環のシクロオレフィン樹脂のうち少なくとも一方を有するシクロオレフィン樹脂がより好ましい。なお、本発明において、これらの樹脂は、重合反応生成物だけでなく、その水素化物も意味するものである。
【0172】
(ノルボルネン樹脂)
ノルボルネン樹脂は、ノルボルネン系モノマーの重合体またはその水素化物である。ノルボルネン樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能モノマーとの開環重合体、これらの開環重合体の水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能モノマーとの付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐久性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物が好ましい。上記の開環共重合可能モノマーは、ノルボルネン系モノマーとは異なるモノマー(その他のモノマー)であって、ノルボルネン系モノマーと開環共重合が可能なものである。上記の付加共重合可能モノマーは、ノルボルネン系モノマーとは異なるモノマーであって、ノルボルネン系モノマーと付加共重合が可能なものである。
【0173】
ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう))およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体、などが挙げられる。置換基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが挙げられる。
【0174】
置換基を有するノルボルネン系モノマーとしては、例えば、8−メトキシカルボニル−テトラシロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
【0175】
これらのノルボルネン系モノマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマー(上記の開環共重合可能モノマー)としては、例えば、単環のシクロオレフィン系モノマーなどが挙げられる。単環のシクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどが挙げられる。
【0176】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマー(上記の付加共重合可能モノマー)としては、例えば、炭素数2〜20のα−オレフィンおよびその誘導体、シクロオレフィンおよびその誘導体、非共役ジエンなどが挙げられる。炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどが挙げられる。シクロオレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどが挙げられる。非共役ジエンとしては、例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、特に、エチレンがより好ましい。
【0177】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーと開環共重合可能モノマーとの開環重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、および還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒などが挙げられる。ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0178】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーと付加共重合可能モノマーとの付加重合体は、モノマー成分を、公知の付加重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
(単環のシクロオレフィン樹脂)
単環のシクロオレフィン樹脂としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環のシクロオレフィン系モノマーの付加重合体が挙げられる。これらの付加重合体の合成方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0180】
(環状共役ジエン樹脂)
環状共役ジエン樹脂としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系モノマーを1,2−付加重合または1,4−付加重合した重合体およびその水素化物などを用いることができる。これらの付加重合体の合成方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0181】
(ビニル脂環式炭化水素樹脂)
ビニル脂環式炭化水素樹脂としては、例えば、ビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物、ビニル芳香族系モノマーの重合体の芳香環部分の水素化物などが挙げられる。ビニル脂環式炭化水素系モノマーとしては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。ビニル芳香族系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。また、ビニル脂環式炭化水素樹脂としては、ビニル脂環式炭化水素モノマーやビニル芳香族モノマーと、これらのモノマーと共重合可能なその他のモノマーと、の共重合体であってもよい。このような共重合体としては、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0182】
これらの樹脂の合成方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。また、脂環式構造を有する樹脂(B)として、市販品を利用することもできる。市販品としては、例えば、三井化学社製のAPEL(登録商標)、JSR社製のARTON(登録商標)、ポリプラスチックス社製のTOPAS(登録商標)などが挙げられる。三井化学社製のAPEL(登録商標)としては、例えば、APL5014DP、APL6011T、APL6013T、APL6015T、APL5514ML、APL6013Tなどが挙げられる。JSR社製のARTON(登録商標)としては、例えば、D5450、D4540、D4531、D4531F、D4532、D4520、F5023、F4520、G7810、RH5200、FX4727などが挙げられる。ポリプラスチックス社製のTOPAS(登録商標)としては、例えば、TOPAS6017S、TOPAS6015S、TOPAS6013S、TOPAS6013F、TOPAS6013M、TOPAS5013S、TOPAS5013F、TOPAS8007F、TOPAS8007S、TOPAS8007X、TOPAS9506F、TOPAS9903Dなどが挙げられる。しかし、本発明は、これらに限定されない。
【0183】
(熱可塑性樹脂)
本発明の実施形態に係る色変換組成物は、上記樹脂(B)とは異なる熱可塑性樹脂(C)をさらに含むことが好ましい。熱可塑性樹脂(C)の具体例としては、アクリル系、メタクリル系、ポリケイ皮酸ビニル系、ポリイミド系、環ゴム系などの反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト材料、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンゲルなどのオルガノポリシロキサン硬化物(架橋物)を含む)、ウレア樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、脂肪族エステル樹脂、芳香族エステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂などの公知のものを用いることができる。また、熱可塑性樹脂(C)としては、これらの共重合樹脂を用いてもよく、これらのうちの2種類以上を混合したものであってもよい。これらの樹脂の中でも、透明性、耐熱性などの観点から、アクリル樹脂を好適に用いることもできる。
【0184】
熱可塑性樹脂(C)の含有量は、樹脂(B)の含有量を100重量部としたとき、1重量部以上2000重量部以下であることが好ましく、5重量部以上500重量部以下であることがより好ましく、10重量部以上50重量部以下であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂(C)の含有量が上記範囲内であれば、有機発光材料(A)のピーク波長および半値幅のうち少なくとも一方を制御することによって、色変換組成物の色再現性をより向上させることができる。
【0185】
<3級アミン、カテコール誘導体、ニッケル化合物>
本発明の実施形態に係る色変換組成物は、上述した有機発光材料(A)および樹脂(B)などに加え、さらに、特定の3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物のうち少なくとも1種類以上を含有することが好ましい。これらの化合物を含有することで、色変換組成物に含まれる有機発光材料(A)の劣化を防ぐことができ、この結果、有機発光材料(A)の耐久性(延いては色変換組成物の耐久性)をより向上させることができる。これらの化合物は、光安定化剤、特に、一重項酸素クエンチャーとしての役割を持つ。
【0186】
一重項酸素クエンチャーは、酸素分子が光のエネルギーにより活性化してできた一重項酸素をトラップして不活性化する材料である。色変換組成物中に有機発光材料(A)と一重項酸素クエンチャーとが共存することで、有機発光材料(A)が一重項酸素に起因して劣化することを防ぐことができる。
【0187】
一重項酸素は、ローズベンガルやメチレンブルーのような色素の三重項励起状態と、基底状態の酸素分子との間で電子とエネルギーの交換が起こることで生じることが知られている。本発明の実施形態に係る色変換組成物は、含有される有機発光材料(A)が励起光により励起され、励起光とは異なる波長の光を発光することで光の色変換を行う。この励起−発光のサイクルが繰り返されるため、生じた励起種と、色変換組成物中に含まれる酸素との相互作用により、一重項酸素が生成する確率は高まる。そのため、有機発光材料(A)と一重項酸素との衝突確率も高まるため、有機発光材料(A)の劣化が進みやすい。
【0188】
そこで、一重項酸素クエンチャーとしての役割を持つ特定の3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物のうち少なくとも1種類以上を色変換組成物が含有し、発生した一重項酸素を、この一重項酸素クエンチャーによって速やかに不活性化させることにより、有機発光材料(A)の耐久性を向上させることができる。
【0189】
光源からの光や有機発光材料(A)の発光を阻害しないため、これらの3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物は、可視域での吸光係数が小さいことが好ましい。具体的には、波長400nm以上800nm以下の波長域全域で、これらの3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物のモル吸光係数εは、1000[L/(mol・cm)]以下であることが好ましく、500[L/(mol・cm)]以下であることがより好ましい。さらには、モル吸光係数εは、200[L/(mol・cm)]以下であることがより一層好ましく、100[L/(mol・cm)]以下であることが特に好ましい。
【0190】
3級アミンとは、アンモニアのN−H結合がすべてN−C結合に置き換わった構造を持つ化合物を示す。窒素原子上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0191】
上記3級アミンの窒素原子上の置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基が、光安定性の観点から好ましく、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基がより好ましい。
【0192】
この場合のアリール基としては、光源からの光や有機発光材料(A)の発光を阻害しないため、フェニル基またはナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。また、窒素原子上のアリール基が増加すると、可視域の吸収が増加する懸念があるため、窒素原子上の3つの置換基のうち、アリール基は、2つ以下が好ましく、1つ以下であることがより好ましい。窒素原子上の3つの置換基のうち、少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、より効率的に一重項酸素をトラップすることができるため、好ましい。中でも、3つの置換基のうち2つ以上が置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0193】
好ましい3級アミンとしては、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0194】
カテコール誘導体とは、レゾルシノールやヒドロキノンなどの異性体を含む、ベンゼン環上に2つ以上の水酸基を有する化合物を示す。これらの化合物は、ベンゼン環上の水酸基が1つであるフェノール誘導体と比較して、より効率的に一重項酸素をトラップすることができる。
【0195】
カテコール誘導体のベンゼン環上の置換基としては、水酸基以外にも、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0196】
中でも、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、ハロゲンが、光安定性の観点から好ましく、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、ハロゲンがより好ましい。さらに、一重項酸素クエンチャーとの反応後の変色が小さいことから、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、ハロゲンがより好ましい。特に好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基である。
【0197】
カテコール誘導体におけるベンゼン環上の水酸基の位置としては、少なくとも2つの水酸基が隣接することが好ましい。これは、レゾルシノール(1,3−置換)やヒドロキノン(1,4−置換)に比べて光酸化されにくいためである。また、酸化された後も可視域の光の吸収が小さいため、色変換組成物の変色を防ぐことができる。
【0198】
好ましいカテコール誘導体としては、4−tert−ブチルベンゼン−1,2−ジオール、3,5−ジ−tert−ブチルベンゼン−1,2−ジオールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0199】
ニッケル化合物とは、ニッケルを含む化合物である。ニッケル化合物としては、例えば、塩化ニッケルなどの無機塩やビスアセチルアセトナトニッケルなどの錯体、カルバミン酸ニッケル塩などの有機酸塩などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。ここで、有機酸とは、カルボキシル基、スルホニル基、フェノール性水酸基、チオール基を有する有機化合物を示す。中でも、ニッケル化合物としては、色変換組成物中で均一に分散するという観点から、錯体および有機酸塩が好ましい。
【0200】
一重項酸素クエンチャーとして好適に用いることができるニッケル錯体および有機酸のニッケル塩としては、例えば、アセチルアセトナート系ニッケル錯体、ビスジチオ−α−ジケトン系ニッケル錯体、ジチオレート系ニッケル錯体、アミノチオレート系ニッケル錯体、チオカテコール系ニッケル錯体、サリチルアルデヒドオキシム系ニッケル錯体、チオビスフェノレート系ニッケル錯体、インドアニリン系ニッケル化合物、カルボン酸系ニッケル塩、スルホン酸系ニッケル塩、フェノール系ニッケル塩、カルバミン酸系ニッケル塩、ジチオカルバミン酸系ニッケル塩などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。特に、合成の容易さ、および安価であるという観点から、有機酸のニッケル塩が好ましい。
【0201】
また、可視域におけるモル吸光係数が小さく、光源や有機発光材料(A)の発光を吸収することがないという観点から、スルホン酸系ニッケル塩が好ましい。さらに、より良い一重項酸素クエンチ効果を示すという観点からは、アリールスルホン酸のニッケル塩がより好ましく、幅広い種類の溶媒への溶解性の観点からは、アルキルスルホン酸のニッケル塩が好ましい。アリールスルホン酸のアリール基としては、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、溶媒への溶解性および分散性の観点から、アルキル基で置換されたフェニル基がより好ましい。
【0202】
本発明の実施形態に係る色変換組成物に用いることができる3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物の添加量は、化合物のモル吸光係数、発光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製する色変換シートの厚みや透過率にもよるが、通常は樹脂(B)の100重量部に対して、1.0×10
-3重量部以上30重量部以下である。これらの3級アミン、カテコール誘導体およびニッケル化合物の添加量は、1.0×10
-2重量部以上15重量部以下であることがさらに好ましく、1.0×10
-1重量部以上10重量部以下であることが特に好ましい。
【0203】
また、色変換組成物にニッケル化合物を添加する場合、ニッケル化合物の添加量が過剰に大きくなると、添加したニッケル化合物は、色変換組成物から色変換シートなどへの加工成形時に強度や熱安定性などに悪影響を与える可能性がある。このため、その添加量は、樹脂(B)の100重量部に対して、1.0×10
-3重量部以上15重量部以下であることが好ましく、1.0×10
-2重量部以上10重量部以下であることがさらに好ましく、1.0×10
-1重量部以上10重量部以下であることが特に好ましい。
【0204】
<溶媒>
本発明の実施形態に係る色変換組成物は、溶媒を含んでいてもよい。この溶媒は、流動状態の樹脂(例えば樹脂(B)など)の粘度を調整でき、有機発光材料(例えば有機発光材料(A)など)の発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に限定されない。このような溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンジルアルコール、p−クレゾール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、アセトン、テルピネオール、テキサノール、メチルセルソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール、フルフラール、エチルメチルケトン、γ−ブチルラクトン、などが挙げられる。
【0205】
また、これらの溶媒は、2種類以上混合して色変換組成物に使用することもできる。これらの溶媒の中でも、特にトルエンは、有機発光材料(A)と樹脂(B)との両方を溶解し、有機発光材料(A)の劣化に影響を与えず、乾燥後の残存溶媒が少ない、という観点から、好適に用いられる。
【0206】
<その他の添加剤>
本発明の実施形態に係る色変換組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で添加剤を加えることができる。具体的には、添加剤として、耐候性改善剤、分散安定化剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、脱泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、架橋剤、硬化剤、密着性改善剤などを色変換組成物に添加することもできる。
【0207】
また、色変換組成物からなる色変換層(例えば有機発光材料(A)を含む色変換層)からの光取り出し効率を上げるという目的で、色変換組成物に無機粒子を添加することもできる。具体的には、この無機粒子として、ガラス、チタニア、シリカ、アルミナ、シリコーン、ジルコニア、セリア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウムなどで構成される微粒子が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上併用されてもよい。このような無機粒子としては、入手しやすいという観点から、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリコーン微粒子が好ましく、さらに屈折率や粒径を制御しやすいという観点から、アルミナ微粒子が特に好ましい。
【0208】
<イオン含有量>
本発明の実施形態に係る色変換組成物のイオン含有量は、適度な範囲に調整される。具体的には、色変換組成物に含まれるハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびアンモニウムイオンの合計量は、15ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることが特に好ましい。
【0209】
これらのイオン量の値は、イオンクロマトグラフィー分析法で測定した値である。具体的には、10gの色変換組成物に30mLのトルエンを加え、この溶液を、振盪機で1時間振盪した後、メンブレンフィルター(メルク社製、PVDF、孔径0.45μm)および固相抽出用カートリッジ(ジーエルサイエンス社製、InertSep Slim−J PLS−3)に通して処理した。得られたトルエン溶液に30mLの超純水を加え、この溶液を振盪機で1時間振盪した後、その水相を逆相カートリッジ(東ソー社製、TSKgel ODS−120H)に通して処理し、得られた水溶液を、以下の条件で分析する。この結果、色変換組成物に含有のイオン量の測定値が得られる。
【0210】
例えば、測定対象のイオンがアニオンである場合、上記イオン量の測定条件として、測定装置はDionex社製のICS−3000とし、試料注入量は100μLとし、溶離液はKOHグラジエントとし、分離カラムはIonPac AS23(2mmΦ×250mm)とし、検出器は電気伝導度計とした。測定対象のイオンがカチオンである場合、上記イオン量の測定条件として、測定装置はDionex社製のDX−500とし、試料注入量は100μLとし、溶離液は10mMのメタンスルホン酸とし、分離カラムはIonPac CS14(2mmΦ×250mm)とし、検出器は電気伝導度計とした。
【0211】
<含有水分率>
本発明の実施形態に係る色変換組成物の含有水分率は、適度な範囲に調整される。本実施形態において、色変換組成物の含有水分率は、0.001重量%以上0.05重量%以下であることが好ましく、0.001重量%以上0.03重量%以下であることがより好ましく、0.001重量%以上0.01重量%以下であることが特に好ましい。色変換組成物の含有水分率が上記範囲内であれば、色変換組成物に含まれる有機発光材料(例えば有機発光材料(A)など)の分解、劣化要因となるラジカルの発生を抑制することができ、この結果、色変換組成物のより高い耐久性を得ることができる。
【0212】
なお、上記含有水分率は、カールフィッシャー法によって測定した値である。具体的には、1gの色変換組成物を、Metrohm社製のカールフィッシャー水分計852Titrando(電量法KF水分計)に入れて測定することにより、上記含有水分率が得られる。
【0213】
<色変換組成物の製造方法>
以下に、本発明の実施形態に係る色変換組成物の製造方法の一例を説明する。この製造方法では、前述した有機発光材料(A)、樹脂(B)、溶媒などを所定量混合する。上記の成分を所定の組成になるよう混合した後、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、3本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミルなどの撹拌・混練機で均質に混合分散することで、色変換組成物が得られる。混合分散後、もしくは混合分散の過程で、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。また、ある特定の成分を事前に混合することや、エージングなどの処理をしても構わない。エバポレーターによって溶媒を除去して所望の固形分濃度にすることも可能である。なお、上記の製造方法は、色変換組成物の製造方法の一例であり、本発明は、これに限定されるものではない。
【0214】
<色変換シートの作製方法>
以下に、本発明の実施形態に係る色変換シートの作製方法の一例を説明する。上述した色変換組成物は、シート状に加工して用いることもできる。すなわち、この色変換シートの作製方法では、上述した方法で製造した色変換組成物を、基材上に塗布し、乾燥させることにより、目的とする色変換シートを得ることができる。このとき、色変換組成物は、色変換シートにおいて色変換層に該当する。色変換シートは、色変換層のみからなるものであってもよいし、他の層を含むものであってもよい。
【0215】
基材上への色変換組成物の塗布は、リバースロールコーター、ブレードコーター、リップダイコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、キスコーター、スクリーン印刷、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、リバースロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーターなどにより、行うことができる。これらの中でも、色変換層の膜厚の均一性を得るためには、スリットダイコーターで塗布することが好ましい。なお、上記の塗布方法は、色変換シートの製造方法における一例であり、これらに限定されない。
【0216】
色変換層の乾燥は、熱風乾燥機や赤外線乾燥機などの一般的な加熱装置を用いて行うことができる。この場合、乾燥のための加熱硬化条件は、通常、40℃〜200℃で1分〜3時間、好ましくは80℃〜150℃で2分〜1時間である。色変換シートは、色変換組成物を硬化して得られる色変換層を含んでいれば、その構成に限定はない。
【0217】
色変換層の厚みは、耐熱性を高めるという観点から、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。本発明における色変換シートの各層の膜厚の測定方法は、JIS K7130(1999)プラスチック−フィルム及びシート−厚さ測定方法における機械的走査による厚さの測定方法A法に基づいて測定される膜厚(平均膜厚)のことをいう。
【0218】
<基材>
本発明の実施形態に係る色変換シートに用いられる基材としては、特に制限はなく公知の金属、フィルム、ガラス、セラミック、紙などを使用することができる。具体的には、基材として、例えば、金属板や箔、プラスチックのフィルム、プラスチックがラミネートされた紙またはプラスチックによりコーティングされた紙、金属がラミネートまたは蒸着された紙、金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。上記の金属、金属板や箔として、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅、鉄などが挙げられる。上記のプラスチックとして、例えば、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アラミド、シリコーン、ポリオレフィン、熱可塑性フッ素樹脂、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)などが挙げられる。また、上記のプラスチックのフィルムとして、例えば、α−ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらとエチレンとの共重合樹脂からなるものが挙げられる。また、基材が金属板である場合、その表面にクロム系やニッケル系などのメッキ処理やセラミック処理が施されていてもよい。
【0219】
これらの中でも、色変換シートの作製や成形のし易さから、ガラスや樹脂フィルムが好ましく用いられる。また、フィルム状の基材を取り扱う際に破断などの恐れがないように、強度が高いフィルムが好ましい。それらの要求特性や経済性の面で樹脂フィルムが好ましく、この樹脂フィルムの中でも、経済性、取り扱い性の面でPET、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリプロピレンからなる群より選ばれるプラスチックフィルムが好ましい。また、色変換シートを押し出し機により200℃以上の高温で圧着成形することもできる。この場合は、耐熱性の面でポリイミドフィルムが好ましい。色変換シートの剥離のし易さから、基材は、あらかじめ表面が離型処理されていてもよい。
【0220】
基材の厚さは、特に制限はないが、下限としては25μm以上が好ましく、38μm以上がより好ましい。また、上限としては5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。
【0221】
<バリア層>
本発明の実施形態に係る色変換シートは、当該色変換シートに対してガスバリア性を付与し、含有する色変換層の耐久性を向上させるという目的で、バリア層を備えることが好ましい。バリア層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウムなど、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を添加した金属酸化物薄膜、あるいはポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などの各種樹脂から成る膜を挙げることができる。また、水分に対してバリア機能を有する膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンと塩化ビニルとの共重合物、塩化ビニリデンとアクリロニトリルとの共重合物、フッ素樹脂などの各種樹脂から成る膜を挙げることができる。なお、本発明におけるバリア層は、上記したものに限定されない。
【0222】
また、色変換シートの要求される機能に応じて、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、ハードコート機能(耐摩擦機能)、帯電防止機能、防汚機能、電磁波シールド機能、赤外線カット機能、紫外線カット機能、偏光機能、調色機能を有した補助層を、その他の層として色変換シートに更に設けることもできる。
【0223】
<色変換層>
本発明の実施形態に係る色変換シートは、少なくとも、上述した色変換組成物を含有する色変換層(X)を備える。本実施形態において、色変換シートは、色変換層(X)に加えて、この色変換層(X)とは異なる色変換層(Y)をさらに備えることが好ましい。色変換層(X)は、上述した有機発光材料(A)および樹脂(B)を含有し、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光を用いることにより、最大放射強度をもつピーク波長が500nm以上580nm以下の領域に観測される色変換層である。色変換層(Y)は、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光と有機発光材料(A)からの発光との少なくとも一方によって励起されることにより、ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する有機発光材料(E)と、樹脂(B)とは異なる熱可塑性樹脂(C)とを含有する色変換層である。以下、必要に応じて、色変換層(X)は単に「(X)層」と略記し、色変換層(Y)は単に「(Y)層」と略記する。
【0224】
色変換シートにおいて、有機発光材料(A)および有機発光材料(E)が互いに異なる色変換層にそれぞれ含有されることで、これらの材料間の相互作用が抑制される。このため、有機発光材料(A)および有機発光材料(E)を同一の色変換層中に分散させた場合に比べ、より狭い半値幅が得られ、高い色純度の発光を示すことができる。また、これらの材料間の相互作用が抑制されることで、有機発光材料(A)および有機発光材料(E)が各色変換層中でそれぞれ独立に発光するため、緑色および赤色の発光ピーク波長や発光強度の調整が容易である。それ故、このような色変換シートでは、高い色純度の発光を示す有機発光材料の半値幅を広げることなく、青、緑、赤各色の光の最適な発光ピーク波長や発光強度を設計することが可能であり、色再現性の高い白色光を得ることが可能となる。
【0225】
<色変換シートの構造例>
本発明の実施形態に係る色変換シートは、少なくとも、上述した色変換組成物を硬化して得られる色変換層(X)を備えていれば、その構成に限定はない。このような色変換シートの代表的な構造例として、例えば、以下の3つが挙げられる。
【0226】
図1は、本発明の実施形態に係る色変換シートの一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、本実施形態の一例である色変換シート1aは、基材層10と、2種類の色変換層((X)層16および(Y)層18)とを備え、これらの層の積層体をなしている。この色変換シート1aの構造例では、基材層10の上に(X)層16が積層され、この(X)層16の上に(Y)層18が積層されている。
【0227】
図2は、本発明の実施形態に係る色変換シートの別例を示す模式断面図である。
図2に示すように、本実施形態の別例である色変換シート1bは、複数(本実施形態では3つ)の基材層10と、(X)層16および(Y)層18とを備え、(X)層16および(Y)層18が複数の基材層10によって挟まれた積層体をなしている。この色変換シート1bの構造例では、第1の基材層10の上に(X)層16が積層され、この(X)層16の上に第2の基材層10が積層され、この基材層10の上に(Y)層18が積層され、この(Y)層18の上に第3の基材層10が積層されている。
【0228】
図3は、本発明の実施形態に係る色変換シートの更なる別例を示す模式断面図である。
図3に示すように、本実施形態の更なる別例である色変換シート1cは、複数(本実施形態では2つ)の基材層10と、(X)層16と、複数(本実施形態では2つ)のバリアフィルム11とを備える。この色変換シート1cの構造例では、これら複数の基材層10およびバリアフィルム11によって(X)層16を挟んだ積層体が形成されている。具体的には、(X)層16が、複数のバリアフィルム11によって挟まれ、さらに、これら(X)層16と複数のバリアフィルム11との積層体が、複数の基材層10によって挟まれている。すなわち、この色変換シート1cには、(X)層16の酸素、水分や熱による劣化を防ぐために、
図3に例示するように、バリアフィルム11が設けられている。
【0229】
上記の
図1〜3では、色変換層として(X)層16および(Y)層18を1つずつ備える色変換シート1a、1b、または、色変換層として(X)層16を1つ備える色変換シート1cが例示されているが、本発明に係る色変換シートの具体的な構成は、これらに限定されない。例えば、色変換シート内には、(X)層16および(Y)層18が、それぞれ複数層設けられていてもよい。この場合、複数の(X)層16の各々は、組成や形態が互いに同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。同様に、複数の(Y)層18の各々は、組成や形態が互いに同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、色変換シート内の(X)層16および(Y)層18の積層構造は、例えば、(Y)層/(X)層/(X)層、(Y)層/(Y)層/(X)層、(Y)層/(Y)層/(X)層/(X)層のように、(X)層16や(Y)層18が積層方向に連続するものであってもよい。
【0230】
<樹脂の溶解パラメータ>
本発明の実施形態に係る色変換シートの色変換層(X)、(Y)における各樹脂の溶解パラメータ(以下、SP値と称する)について説明する。この色変換シートにおいて、色変換層(X)に含まれる樹脂(B)のSP値をSP
B(cal/cm
3)
0.5とし、色変換層(Y)に含まれる熱可塑性樹脂(C)のSP値をSP
C(cal/cm
3)
0.5とするとき、SP
B≦SP
Cであることが好ましい。
【0231】
色変換層中の樹脂のSP値と有機発光材料の発光ピーク波長とには、相関が認められる。SP値が高い樹脂中では、この樹脂と有機発光材料との間の相互作用により、有機発光材料の励起状態が安定化される。このため、SP値が低い樹脂中と比較して、この有機発光材料の発光ピーク波長は、長波長側にシフトする。したがって、有機発光材料を、最適なSP値を示す樹脂中に含有させることで、有機発光材料の発光ピーク波長の最適化が可能である。
【0232】
SP
B(cal/cm
3)
0.5およびSP
C(cal/cm
3)
0.5が上記の関係にある場合、色変換層(X)、(Y)における緑色光と赤色光との発光ピーク波長の差が、単一の樹脂中に有機発光材料を含有させた場合と比較して大きくなり、この結果、色域が拡大する。中でも、SP
C≧10.0であることが好ましい。この場合、色変換層(Y)における赤色光の発光ピーク波長がより大きく長波長化し、この結果、深い赤色の光を発光することができる。その効果をより大きくするという観点から、より好ましくはSP
C≧10.2であり、さらに好ましくはSP
C≧10.4であり、特に好ましくはSP
C≧10.6である。
【0233】
SP
Cの上限値は特に限定されないが、SP
C≦15.0である樹脂(具体的には熱可塑性樹脂(C))は、有機発光材料の分散性がよいため、好適に用いることができる。その効果をより大きくするという観点から、より好ましくはSP
C≦14.0であり、さらに好ましくはSP
C≦13.0であり、特に好ましくはSP
C≦12.0である。
【0234】
また、SP
B≦10.0である場合、色変換層(X)における緑色光の発光ピーク波長の長波長化が抑制され、この結果、色変換層(X)、(Y)における緑色光と赤色光の発光ピーク波長の差が大きくなるため、好ましい。その効果をより大きくするという観点から、より好ましくはSP
B≦9.8であり、さらに好ましくはSP
B≦9.7であり、特に好ましくはSP
B≦9.6である。
【0235】
SP
Bの下限値は特に限定されないが、SP
B≧7.0である樹脂(具体的には樹脂(B))は、有機発光材料の分散性がよいため、好適に用いることができる。その効果をより大きくするという観点から、より好ましくはSP
B≧7.4であり、さらに好ましくはSP
B≧7.8であり、特に好ましくはSP
B≧8.0である。
【0236】
ここで言うSP値は、一般的に用いられている、Poly.Eng.Sci.,vol.14,No.2,pp.147−154(1974)などに記載のFedorsの推算法を用い、樹脂を構成するモノマーの種類と比率から算出される値である。複数種類の樹脂の混合物に関しても、同様の方法により算出できる。例えば、ポリメタクリル酸メチルのSP値は9.5(cal/cm
3)
0.5と算出でき、ポリエチレンテレフタレート(PET)のSP値は10.7(cal/cm
3)
0.5と算出でき、ビスフェノールA系エポキシ樹脂のSP値は10.9(cal/cm
3)
0.5と算出できる。
【0237】
色変換層(X)、(Y)における樹脂は特に限定されるものではないが、色変換層(X)に好適に用いられる樹脂(B)および色変換層(Y)に好適に用いられる熱可塑性樹脂(C)の種類と、それぞれの樹脂の代表的なSP値とは、表2に示す。色変換層(X)、(Y)における樹脂は、例えば表2に示すような樹脂の中から任意に組み合わせて用いることが好ましい。
【0239】
<発光体>
本発明の実施形態に係る発光体は、光を発する機構(光源)と、光の色変換を行う機構とを備えたものであり、これらの機構を備えていれば特に制限はない。本実施形態において、発光体は、光源としての青色LED(青色LED光源とも称する)と、上述した色変換組成物または色変換シートとを備えるものであることが好ましい。この青色LEDの発光ピーク波長は、400nm以上500nm以下であることが好ましい。また、発光体は、色変換シートを備える場合、発光特性および信頼性を向上させるために、青色LEDと色変換シートとの間に樹脂層をさらに備えることが好ましい。
【0240】
本発明の実施形態に係る色変換組成物を用いた発光体の好ましい例として、色変換組成物の他に青色LEDと基板とリフレクターとを備え、リフレクターによって基板上に形成された凹部に上記の青色LEDおよび色変換組成物を有する発光体が挙げられる。このような発光体は、例えば、基板上のリフレクターによって囲まれる凹部に、発光ピーク波長が400nm〜500nmの範囲にある青色LEDを配置し、さらに上記の色変換組成物をディスペンスして色変換層を形成することにより、製造することができる。本実施形態に係る発光体の製造方法の詳細については、後述する。
【0241】
図4A〜
図4Eは、本発明の実施形態に係る発光体であって、色変換層をディスペンス法によって形成した場合の発光体の好適な例を示す側面図である。
図4Aは、本発明の実施形態に係る色変換組成物を用いた発光体の例1を示す側面図である。
図4Aに示すように、この例1の発光体20aは、基板2と、リフレクター3と、LED素子4と、色変換層6とを備える。基板2は回路基板である。LED素子4は、青色光を放射する光源(青色LED)であり、基板2上に実装される。これらの基板2とLED素子4とは、金属製のワイヤー5によって電気的に接続される。リフレクター3は、基板2上であってLED素子4の周囲に設けられる。すなわち、基板2上にはリフレクター3によって凹部が形成され、この凹部内にはLED素子4が配置されている。さらに、この凹部内には、上述した色変換組成物がディスペンス法によって充填され、この充填された色変換組成物の加熱硬化などにより、色変換層6が形成される。この発光体20aにおいて、色変換層6は、LED素子4からの青色光を緑色光や赤色光に色変換する色変換機能と、基板2上のリフレクター3による凹部(具体的にはLED素子4など)を封止する封止機能とを兼ね備える。すなわち、この色変換組成物は、封止剤としての役割を兼ねている。
【0242】
図4Bは、本発明の実施形態に係る色変換組成物を用いた発光体の例2を示す側面図である。
図4Bに示すように、この例2の発光体20bは、
図4Aに示した発光体20aの上部、具体的には、リフレクター3および色変換層6の上端部に、レンズ7をさらに備える。その他の構成は、上述した発光体20aと同じであり、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0243】
図4Cは、本発明の実施形態に係る色変換組成物を用いた発光体の例3を示す側面図である。
図4Cに示すように、この例3の発光体20cは、色変換層6の上部に封止樹脂層8をさらに備える。その他の構成は、
図4Aに示した発光体20aと同じであり、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0244】
詳細には、発光体20cにおいて、上述した色変換組成物は、リフレクター3によって凹部内に囲まれたLED素子4をワイヤー5とともに覆う程度に、ディスペンス法によって、この凹部内に注入される。色変換層6は、この注入された色変換組成物からなり、この凹部の底面から中途部分までの領域に形成される。この凹部内であって色変換層6の上部には、さらに、可視光に対して透明な樹脂(以下、透明樹脂と称する)が充填される。封止樹脂層8は、この充填された透明樹脂からなり、この凹部(具体的にはLED素子4など)を封止する。これらの色変換組成物および透明樹脂は、それぞれ加熱硬化されてもよいし、一括して加熱硬化されてもよい。
【0245】
図4Dは、本発明の実施形態に係る色変換組成物を用いた発光体の例4を示す側面図である。
図4Dに示すように、この例4の発光体20dは、色変換層6の上下両側に封止樹脂層8をさらに備える。その他の構成は、
図4Aに示した発光体20aと同じであり、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0246】
詳細には、発光体20dにおいて、上述した透明樹脂は、リフレクター3によって凹部内に囲まれたLED素子4をワイヤー5とともに覆う程度に、この凹部内に注入される。この透明樹脂からなる封止樹脂層8の上には、上述した色変換組成物が注入され、この色変換組成物からなる色変換層6が形成される。さらに、この色変換層6の上には透明樹脂が充填され、この透明樹脂からなる封止樹脂層8が、この凹部内のLED素子4および色変換層6などを封止するように形成される。これらの色変換組成物および透明樹脂は、それぞれ加熱硬化されてもよいし、一括して加熱硬化されてもよい。このようにして、上記凹部内に、色変換層6を膜厚方向の両側(上下両側)から封止樹脂層8によって挟む積層構造の積層体が形成される。
【0247】
図4Eは、本発明の実施形態に係る色変換組成物を用いた発光体の例5を示す側面図である。
図4Eに示すように、この例5の発光体20eは、単一の色変換層6に代えて複数の色変換層6a、6bを備える。その他の構成は、
図4Aに示した発光体20aと同じであり、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0248】
詳細には、発光体20eにおいて、上述した色変換組成物は、リフレクター3によって凹部内に囲まれたLED素子4をワイヤー5とともに覆う程度に、ディスペンス法によって、この凹部内に注入される。色変換層6aは、この注入された色変換組成物からなり、この凹部の底面から中途部分までの領域に形成される。この凹部内であって色変換層6aの上部には、さらに、色変換層6aとは異なる色変換組成物が充填される。色変換層6bは、この充填された色変換組成物からなり、この凹部(具体的にはLED素子4および色変換層6aなど)を封止するとともに、LED素子4からの青色光および色変換層6aからの緑色光などの光を赤色光などに色変換する色変換機能を有する。これらの色変換組成物は、それぞれ加熱硬化されてもよいし、一括して加熱硬化されてもよい。例えば、上記の色変換層6a、6bのうち、一方の色変換層6aは、上述した色変換層(X)と同様であり、他方の色変換層6bは、上述した色変換層(Y)と同様である。
【0249】
上述した
図4A〜4Eでは、LED素子4としてワイヤーボンディング型のLED素子を搭載した発光体が例示されていたが、LED素子4としてフリップチップ型のLED素子を用いても、本発明の効果は損なわれない。LED素子4としてフリップチップ型のLED素子を搭載した発光体の好ましい例として、青色LED(LED素子4)の発光面上に本発明の実施形態に係る色変換シートを有する発光体が挙げられる。このような発光体は、色変換組成物を含有する色変換シートを予め作製し、この色変換シートを青色LED上に貼り付けるなどにより、製造することができる。このタイプの発光体の詳細な製造方法については、後述する。
【0250】
図5A、5Bは、本発明の実施形態に係る発光体であって、色変換層を、上述した色変換組成物を含有する色変換層を備えた色変換シートによって形成した場合の発光体の好適な例を示す側面図である。
【0251】
図5Aは、本発明の実施形態に係る色変換シートを用いた発光体の一例を示す側面図である。
図5Aに示すように、この発光体21aは、基板2と、リフレクター3と、LED素子4と、封止樹脂層8と、色変換シート9とを備える。発光体21aにおいて、LED素子4は、フリップチップ型の青色LEDであり、基板2上に実装(フリップチップ実装)される。これらの基板2とLED素子4とは、金属製のボール(図示せず)などを介して電気的に接続される。また、この実装されたLED素子4の発光面上には、色変換シート9が貼り付けられる。色変換シート9は、上述した色変換組成物を含有する色変換層を備えるものである。色変換シート9は、この色変換層として、例えば
図1〜3に例示されるように、1種類の色変換層(X)を備えるものであってもよいし、2種類の色変換層(X)および色変換層(Y)を備えるものであってもよい。リフレクター3は、上述した発光体20a(
図4A参照)の場合と同様に、基板2上であってLED素子4の周囲に設けられる。このリフレクター3による凹部内には、基板2上のLED素子4および色変換シート9を覆うように透明樹脂が充填される。封止樹脂層8は、この充填された透明樹脂を加熱硬化するなどして形成され、この凹部内のLED素子4および色変換シート9などを封止する。
【0252】
特に
図5Aには図示しないが、発光体21aは、LED素子4と色変換シート9との間に、さらに樹脂層を備えていてもよい。この樹脂層は、LED素子4と色変換シート9とを接着する接着剤として使用してもよい。
【0253】
図5Bは、本発明の実施形態に係る色変換シートを用いた発光体の別例を示す側面図である。
図5Bに示すように、この発光体21bにおいて、色変換シート9は、少なくとも封止樹脂層8の上部(例えばリフレクター3および封止樹脂層8の上端部)に設けられる。すなわち、発光体21bは、LED素子4と色変換シート9との間に、LED素子4の封止を目的とする樹脂層(封止樹脂層8)を備える。また、色変換シート9と封止樹脂層8との間には、これらを接着する接着剤(図示せず)が使用されてもよい。その他の構成は、
図5Aに示した発光体21aと同じであり、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0254】
上述した
図5A、5Bでは、色変換層として色変換シート9を用い、LED素子4としてフリップチップ型のLED素子を搭載した発光体が例示されていたが、このタイプの発光体においても、ワイヤーボンディング型のLED素子が搭載されてもよい。但し、この場合、基板2とLED素子4とのワイヤーボンディングが行えるようにするため、色変換シート9に対し、LED素子4の電極パッドを露出させる穴あけ加工を予め施す必要がある。
【0255】
本発明の実施形態に係る色変換シート(例えば
図5A、5Bに示す色変換シート9)の厚みは、耐熱性を高めるという観点から、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。この色変換シートにおいて、色変換層などの各層の間には、必要に応じて接着層を設けてもよい。接着層としては、色変換シートの発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に制限無く公知の材料を用いることができる。これら各層の強固な接着が必要である場合、接着層として、光硬化材料や熱硬化材料、嫌気性硬化材料、熱可塑性材料を好ましく用いることができる。これらの中でも、熱硬化材料がより好ましく、特に、0℃〜150℃という加熱条件での硬化が可能である熱硬化材料が好ましい。
【0256】
接着層の厚みは、特に制限はないが、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上25μm以下である。さらに好ましくは、0.05μm以上5μm以下であり、特に好ましくは、0.05μm以上1μm以下である。
【0257】
<発光体の製造方法>
本発明の実施形態に係る発光体の製造方法について説明する。以下では、まず、本発明の実施形態に係る色変換組成物を有する発光体の製造方法を説明し、その後、本発明の実施形態に係る色変換シートを有する発光体の製造方法を説明する。なお、以下に説明する各製造方法は一例であり、本発明の実施形態に係る発光体の製造方法は、これらに限られない。
【0258】
(色変換組成物を有する発光体の製造方法)
本発明の実施形態に係る色変換組成物を有する発光体の製造方法について説明する。この発光体の製造方法は、上述した色変換組成物を用い、ディスペンス法によって色変換層を形成して発光体を製造するものである。具体的には、まず、公知の方法によって基板2上にリフレクター3を設け、このリフレクター3によって基板2上に形成された凹部に、LED素子4(LEDチップ)を実装し、基板2とLED素子4とを配線する。
【0259】
LED素子4が発光面側に電極パッドを有する場合には、LED素子4を、発光面を上にしてダイボンド材などで基板2に固定し、その後、LED素子4の上面の電極パッドと基板2の回路配線とをワイヤーボンディングで接続する。一方、LED素子4が発光面の反対面に電極パッドを有する場合、すなわち、LED素子4がフリップチップ型のLED素子である場合には、LED素子4の電極面を基板2の回路配線と対向させ、LED素子4の電極パッドと基板2の回路配線とを一括接合で接続する。
【0260】
ついで、前述の方法によって作製した色変換組成物を、ディスペンサーなどを用いて基板2上のリフレクター3による凹部に注入する。つぎに、この注入した色変換組成物を加熱することにより、この凹部内に色変換層(例えば1種類の色変換層6または2種類の色変換層6a、6bなど)を形成する。このとき、
図4Cに例示したように色変換層6を形成し、その後、この色変換層6の上に公知の封止材(透明樹脂)をディスペンスして熱硬化させ、これにより、封止樹脂層8を形成してもよい。あるいは、
図4A、4Eに例示したように1種類の色変換層6または2種類の色変換層6a、6bを形成し、これらの色変換層6または色変換層6a、6bが封止樹脂層としての機能を兼ねてもよい。このようにして、上述した色変換組成物を有する発光体(例えば
図4A、4C、4Eに示す発光体20a、20c、20eなど)が得られる。
【0261】
また、色変換組成物を加熱乾燥させる工程の前に、この色変換組成物が凹部に注入された状態の基板2を真空雰囲気下で静置して、この色変換組成物中に溶け込んだ水分、酸素を除去する工程を経ることも好適に行われる。これらの色変換組成物および封止用の透明樹脂の熱硬化工程は、大気中で行ってもよいし、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0262】
(色変換シートを有する発光体の製造方法)
本発明の実施形態に係る色変換シートを有する発光体の製造方法について説明する。この発光体の製造方法は、上述した色変換組成物を含有する色変換シートを色変換層として用い、発光体を製造するものである。具体的には、この発光体の製造方法は、大きく分けて3つの工程を含む。第1の工程は、色変換シートを個片化する個片化工程である。第2の工程は、個片化された色変換シートをピックアップするピックアップ工程である。第3の工程は、ピックアップした色変換シート(個片化工程によって個片化されたもの)を青色LED光源に貼り付ける貼付工程である。また、この発光体の製造方法は、必要に応じて、その他の工程を含んでいてもよい。
【0263】
図6は、本発明の実施形態に係る色変換シートを有する発光体の製造方法の一例を示す工程図である。まず、個片化工程において、色変換シートの個片化は、金型によるパンチング、レーザーによる加工、刃物による切断などの方法により、行うことができる。これらの方法のうち、レーザーによる加工は、色変換シートの色変換層に高エネルギーが付与されるので、この色変換層中の樹脂(例えば樹脂(B))の焼け焦げや有機発光材料(例えば有機発光材料(A))の劣化を回避することが非常に難しい。したがって、色変換シートの個片化の方法としては、刃物による切断が望ましい。
【0264】
例えば、
図6に示すように、色変換シート1は、基材層10の上に色変換層6が形成されたシートである。個片化工程において、色変換シート1は、刃物12によって所望のサイズに切断される(状態S1)。これにより、色変換シート1の色変換層6および基材層10は、複数に個片化されて、所望のサイズの個片シート13に加工される(状態S2)。個片シート13は、個片化された基材層10と個片化された色変換層6との積層体である。
【0265】
刃物12による切断方法としては、単純な刃物を押し込んで対象物を切断する方法と、回転刃によって対象物を切断する方法とがあり、いずれも好適に使用できる。色変換シート1を回転刃によって切断する装置としては、ダイサーと呼ばれる、半導体基板を個別のチップに切断(ダイシング)するのに用いる装置が、好適に利用できる。ダイサーを用いれば、回転刃の厚みや条件設定により、色変換シート1の分割ラインの幅を精密に制御できるため、単純な刃物の押し込みによる色変換シート1の切断よりも高い加工精度が得られる。いずれの切断方法の場合も、色変換シート1は、色変換層6を基材層10ごと個片化するように切断されてもよい。あるいは、色変換層6は個片化しつつ、基材層10は切断しなくてもよい。この際、基材層10に対しては、貫通しない切り込みラインが入る所謂ハーフカットを行うことが好ましい。
【0266】
色変換シート1には、個片化工程の前後において、または個片化工程と同時に、色変換層6の孔開け加工が施されてもよい。この孔開け加工としては、レーザー加工、金型によるパンチングなどの公知の方法が好適に使用できるが、レーザー加工は色変換層6中の樹脂の焼け焦げや有機発光材料の劣化を引き起こすので、金型によるパンチング加工がより望ましい。金型によるパンチング加工を実施する場合、個片シート13をLED素子に貼り付けた後では、この個片シート13の色変換層6などに対するパンチング加工は不可能であるので、LED素子への個片シート13の貼り付け前に色変換シート1または個片シート13に対してパンチング加工を施すことが必要である。金型によるパンチング加工は、個片シート13を貼り付けるLED素子の電極形状などに合わせてより、任意の形状や大きさの孔を色変換層6などに開けることができる。
【0267】
上記孔の大きさや形状は、金型を設計すれば任意のものが形成できる。具体的には、1mm角内外のLED素子上の電極接合部分は、発光面の面積を小さくしないために、200μm以下であることが望ましい。それ故、上記孔は、その大きさに合わせて200μm以下で形成される。また、ワイヤーボンディングなどが行われる電極パッドは、ある程度の大きさが必要であり、少なくとも50μm程度の大きさ(長さ、幅など)となる。このため、上記孔は、その大きさに合わせて50μm程度に形成されることが望ましい。何故ならば、上記孔が電極パッドに比べて大きすぎると、LED素子の発光面が露出して光漏れが発生し、LED素子を有する発光体の色特性が低下するからである。また、上記孔が電極パッドに比べて小さすぎると、ワイヤーボンディング時にワイヤーが色変換層6などに触れて、電極パッドとワイヤーとの接合不良を起こすことも理由の1つである。
【0268】
上述した個片化工程によって個片化された色変換シート1(すなわち個片シート13)は、個片化工程の次工程であるピックアップ工程によってピックアップされる。例えば、
図6に示すように、ピックアップ工程において、個片シート13は、コレット14などの吸引装置を備えたピックアップ装置(図示せず)により、ピックアップされる(状態S3)。
【0269】
上述したピックアップ工程によってピックアップされた個片シート13は、ピックアップ工程の次工程である貼付工程によって青色LED光源に貼り付けられる。例えば、
図6に示すように、個片シート13は、コレット14によってピックアップされた状態にある。コレット14は、基板2上(詳細にはリフレクター3による凹部内)に実装されたLED素子15(青色LED光源の一例)の位置へ個片シート13とともに搬送され、これにより、LED素子15の電極形成面とは反対側の面(光取り出し面)と個片シート13の接着面とを対向させる。ついで、コレット14は、LED素子15の光取り出し面に、個片シート13の接着面を押し付けて貼り付ける(状態S4)。
【0270】
貼付工程での個片シート13とLED素子15との貼り付けには、接着剤(図示せず)を使用することが好ましい。この接着剤としては、公知のダイボンド剤や接着剤を使用することができる。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリメタクリレート樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂の接着剤を使用することができる。個片シート13の色変換層または基材層(状態S4の例では基材層)が粘着性を有する場合は、この粘着性を利用して、個片シート13とLED素子15とを貼り付けてもよい。また、個片シート13が半硬化された状態の色変換シートである場合は、この個片シート13の加熱による硬化を利用して、個片シート13とLED素子15とを貼り付けてもよい。あるいは、個片シート13の色変換層が硬化後に熱軟化性を有するものである場合には、この色変換層の熱融着によって、個片シート13の色変換層とLED素子15とを接着することも可能である。
【0271】
また、貼付工程が、個片シート13を加熱してLED素子15に貼り付ける工程である場合、この貼付工程を大気中で行うと、LED素子15と個片シート13との間に泡を噛み込むことがある。泡を噛み込んだ場合、泡とLED素子15との界面と、泡と個片シート13との界面とにおいて、光が乱反射する。これにより、LED素子15からの光取り出し効率が低下し、結果として、色変換シート1を用いて製造された発光体(例えば
図6に示す発光体22)の輝度が低下してしまう。このような泡の噛み込みを防ぐという観点から、この貼付工程は、真空雰囲気下において行うことが好ましい。
【0272】
(その他の工程)
上述した発光体の製造方法には、その他の工程として、LED素子15と基板2とを電気的に接続する接続工程がさらに含まれてもよい。この接続工程において、LED素子15の電極と基板2の回路配線とが、公知の方法で電気的に接続される。これにより、
図6に示す発光体22を得ることができる。LED素子15が発光面側に電極パッドを有する場合には、LED素子15を、発光面を上にしてダイボンド材などで基板2に固定した後、LED素子15の上面の電極パッドと基板2の回路配線とが、ワイヤーボンディングによって接続される。また、LED素子15が発光面の反対面に電極パッドを有するフリップチップ型のものである場合には、LED素子15の電極面を基板2の回路配線と対向させ、これらが一括接合によって接続する。この場合、基板2とLED素子15との接続は、LED素子15への個片シート13の貼り付け前に行ってもよい。
【0273】
個片シート13の色変換層6が半硬化状態でLED素子15と貼り付けられていた場合は、上述した接続工程の前もしくは後の好適なタイミングに、色変換層6を硬化させることができる。例えば、フリップチップ型のLED素子15を基板2に一括接合すべく熱圧着の接合を行う場合には、その加熱によって同時に色変換層6を硬化させてもよい。また、LED素子15と基板2とを接続したパッケージを、より大きな回路基板上に表面実装する場合には、半田リフローでハンダ付けを行うと同時に個片シート13を硬化させてもよい。
【0274】
色変換層6が硬化された状態でLED素子15と貼り付けられる場合には、個片シート13とLED素子15とを貼り付けた後に、色変換層6の硬化過程を設ける必要はない。色変換層6が硬化された状態でLED素子15と貼り付けられる場合とは、例えば、硬化した色変換層6に別途接着層が形成される場合や、色変換層6が硬化後に熱融着性を有する色変換層の場合などである。
【0275】
また、上述した発光体の製造方法には、その他の工程として、貼付工程が行われた後のLED素子15および色変換層6などを封止する封止工程がさらに含まれてもよい。例えば、
図6に示すように、封止工程において、封止樹脂層8は、個片シート13が貼り付けられた後のLED素子15を覆うように基板2上(詳細にはリフレクター3による凹部内)に形成される。なお、封止樹脂層8は、この凹部内に充填された透明樹脂からなる。これらのLED素子15および個片シート13(色変換層6および基材層10)は、この封止樹脂層8によって封止される(状態S5)。このようにして、
図6に示すような発光体22が製造される。封止樹脂層8を構成する透明樹脂としては、透明性や耐熱性の観点から、シリコーン樹脂が好適に用いられる。また、LED素子15に個片シート13を貼り付けずに、封止樹脂層8によってLED素子15を封止し、その後、この封止樹脂層8の上に色変換シートを貼り付けて発光体(例えば
図5Bに示す発光体21b)を製造することも可能である。
【0276】
一方、LED素子15としてフェイスアップ型のLED素子に適用する場合は、上記と同様に色変換シート1を個片化した後、LED素子15の光取り出し面に個片シート13が貼り付けられる。ここで、フェイスアップ型のLED素子では、光取り出し面と同じ側の素子面に少なくとも1つの電極が形成されている。このLED素子15の電極パッドからは、後述のようにワイヤーボンディングなどによって導通が取られる。したがって、個片シート13は、このLED素子15における少なくとも電極パッドの一部が露出するように貼り付けられる。勿論、個片シート13は、このLED素子15の光取り出し面のみに貼り付けられてもよい。あるいは、色変換シート1は、このLED素子15における電極パッドの一部が露出するようにパターン化された形状に個片化されてもよい。その後、このLED素子15の光取り出し面とは反対側の面を基板2に固定し、ワイヤーボンディングなどの公知の方法でLED素子15の電極パッドと基板2の回路配線とを電気的に接続することにより、発光体を得ることができる。
【0277】
上述した発光体の製造方法に用いられる色変換シート1は、
図6に例示したように色変換層6と基材層10との積層体からなるものであってもよいし、色変換層6からなるものであってもよい、上述したバリアフィルムなどのその他の層をさらに備えるものであってもよい。また、色変換層6は、上述した2種類の色変換層(X)、(Y)を含むものであってもよい。
【0278】
また、色変換シート1は、半硬化状態のものであってもよいし、予め硬化されたものであってもよい。LED素子15は、個片シート13を貼り付けてから基板2に実装して配線されてもよいし、基板2に実装されてから個片シート13を貼り付けてもよい。また、色変換シート1を、表面にLEDが形成された半導体ウェハに貼り付けた後、この半導体ウェハを色変換シート1とともに個別のLED素子15に切断し、この色変換シート1付きのLED素子15を基板2に実装する、という発光体の製造方法もある。
【0279】
<リフレクター>
本発明の実施形態に係る発光体において、回路基板上の凹部を形成するリフレクター(例えば
図6等に例示するリフレクター3)は、効率よく光を反射するために、開口側(LED搭載面に遠い側)に向かって広がるように傾斜していることが好ましい。この場合、リフレクターの凹部側面の傾斜角度は、特に限定されることなく、例えば、青色LED光源などの発光素子の上面に対して45°〜90°程度である。リフレクターを構成するための好ましい材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂が挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリイミド樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0280】
特に、リフレクターを熱硬化性樹脂で形成することにより、優れた耐久性を有する発光体を得ることができる。この観点から、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂などの樹脂が好ましい。また、リフレクターを構成する樹脂は、反射率を向上させるため、二酸化チタンなどの無機粒子を含んでもよい。リフレクターの反射率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0281】
<凹部>
上記リフレクターにより形成された凹部の形状は、特に限定されるものではなく、円柱、円錐、多角柱、多角錐またはこれらに近似する形状など、いずれの形状でもよい。上記形状の中でも、サイドビュー型の発光体には、小型化の観点から、凹部が長手方向に延びた形状が好ましい。特に、凹部が長手方向に延長し且つ凹部の平面視が四角形、四角形に近似する多角形または多角形に近似する形状であることがより好ましい。凹部の長手方向の長さは、凹部の長さと称し、凹部の短手方向(長手方向に対して垂直な方向)の長さは、凹部の幅と称する。凹部の幅は、この長手方向に沿って異なっていてもよい。その場合、凹部の幅は、この凹部の底面から長手方向の中央に向かうにしたがって広幅となっていることが好ましい。
【0282】
上記凹部の長さおよび幅は、特に制限はないが、LED素子を配置し基板に実装するために十分な寸法であればよい。具体的には、上記凹部の長さは0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、上記凹部の幅は0.05mm以上5mm以下であることが好ましい。また、上記凹部の深さは、搭載するLED素子の厚み、ボンディング方法などによって適宜調整することができる。例えば、この深さとして、0.1mm以上3mm以下が好ましい。
【0283】
<励起光>
励起光の種類は、有機発光材料(A)が吸収可能な波長領域の励起光であればよく、この波長領域に発光を示すLED素子が好適な励起光の光源である。特に、ディスプレイや照明用途では、青色光の色純度を高められるという観点から、400nm以上500nm以下の範囲の励起光を持つ青色LEDが、さらに好適な励起光の光源である。
【0284】
<照明装置>
本発明の実施形態に係る照明装置は、少なくとも上述した発光体を備える。この発光体を用いた照明装置は、特に制限されず、各種の照明用途に適用可能である。この照明装置の適用例として、例えば、建築物の空間に用いられる照明装置、車などにおけるルールライトやヘッドライトなどの照明装置、カメラのフラッシュなどの照明装置、ディスプレイのバックライトやフロントライトなどの照明装置などが挙げられる。
【0285】
<バックライトユニット>
本発明の実施形態に係るバックライトユニットは、上述した色変換組成物を有するものである。すなわち、このバックライトユニットは、本発明の実施形態に係る発光体を用いた照明装置を備えるものである。具体的には、このバックライトユニットは、少なくとも、発光のピーク波長が400nm以上500nm以下の範囲にある青色LED光源と、有機発光材料(A)および樹脂(B)を含有する色変換組成物または色変換シートとを備える。また、このバックライトユニットは、輝度を向上させるという目的で、輝度上昇フィルム(BEF、BEFRP、DBEF)をさらに備えてもよいし、色純度を高めるという目的で、カラーフィルターをさらに備えてもよい。このような構成を有するバックライトユニットは、ディスプレイ、インテリア、標識、看板などの用途に使用できる。
【0286】
<ディスプレイ>
本発明の実施形態に係るディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ)は、上記のバックライトユニットを備える。すなわち、本発明の実施形態に係る色変換組成物を有するバックライトユニットは、ディスプレイに適用することができる。このバックライトユニットは、高色再現性と高耐久性とを両立させたものであるため、ディスプレイ用途に適している。
【実施例】
【0287】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。下記の実施例および比較例において、化合物G−1、G−2、G−3、G−4、R−1、Q−1、Q−2、Q−3は、以下に示す化合物である。また、樹脂(B)の一例として用いた樹脂(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、および、熱可塑性樹脂(C)の一例として用いた樹脂(C−1)、(C−2)は、以下に示す通りである。なお、下記の実施例および比較例では、上述した樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)を総称して「樹脂」と略記する場合がある。
【0288】
【化32】
【0289】
<樹脂>
樹脂(B−1)は、JSR社製のシクロオレフィン樹脂“ARTON D5450”(ガラス転移点128℃、SP値=7.8(cal/cm
3)
0.5)である。樹脂(B−2)は、ポリプラスチック社製のシクロオレフィン樹脂“TOPAS5013S”(ガラス転移点136℃、SP値=7.8(cal/cm
3)
0.5)である。樹脂(B−3)は、ポリプラスチック社製のシクロオレフィン樹脂“TOPAS8007F”(ガラス転移点78℃、SP値=8.8(cal/cm
3)
0.5)である。樹脂(B−4)は、三井化学社製のシクロオレフィン樹脂“APL5014DP”(ガラス転移点135℃、SP値=7.8(cal/cm
3)
0.5)である。
【0290】
樹脂(C−1)は、東洋紡社製のポリエステル樹脂“バイロン630”(ガラス転移点7℃、SP値=10.7(cal/cm
3)
0.5)である。樹脂(C−2)は、東レダウコーニング社製のシリコーン樹脂“OE−6630A/B”(ガラス転移点32℃、SP値=7.6(cal/cm
3)
0.5)である。
【0291】
また、実施例および比較例における各種の測定方法および評価方法は、以下に示す通りである。
【0292】
<
1H−NMRの測定>
化合物の
1H−NMRは、超伝導FTNMR EX−270(日本電子社製)を用い、重クロロホルム溶液にて測定を行った。
【0293】
<発光スペクトルの測定>
化合物の発光スペクトルは、F−2500形分光蛍光光度計(日立製作所社製)を用い、化合物をトルエンに1×10
-6mol/Lの濃度で溶解させ、波長460nmで励起させた際の発光スペクトルを測定した。
【0294】
<含有水分率の測定>
色変換組成物の含有水分率は、1gの色変換組成物を、Metrohm社製のカールフィッシャー水分計852Titrando(電量法KF水分計)に入れて測定した。
【0295】
<色変換特性の測定>
色変換特性の測定では、各色変換シートおよび青色LED素子(ProLight社製;型番PM2B−3LBE−SD、発光ピーク波長:460nm)を搭載した発光体に、10mAの電流を流して、この青色LED素子を点灯させ、分光放射輝度計(CS−1000、コニカミノルタ社製)を用いて、発光スペクトル、ピーク波長における発光強度および色度を測定した。なお、各色変換シートと青色LED素子との距離は、3cmとした。
【0296】
<色再現性の測定>
色再現性の測定では、上記色変換特性の測定において得られた発光体上に公知の方法によって作製した赤色カラーフィルター、緑色カラーフィルター、青色カラーフィルターをそれぞれ配置し、カラーフィルターによって色純度を向上させた場合の(u’、v’)色空間における色度を測定した。この色度の測定には、分光放射輝度計(CS−1000)を用いた。得られた色度値から、BT.2020規格の色域面積を100%とした場合の(u’、v’)色空間における色域面積の割合を算出した。色再現性は、この算出した色域面積の割合をもとに評価した。
【0297】
<耐久性のテスト>
耐久性のテストでは、各色変換シートおよび青色LED素子(ProLight社製;型番PM2B−3LBE−SD、発光ピーク波長:460nm)を搭載した発光体に、10mAの電流を流して、この青色LED素子を点灯させ、温度50℃、湿度60%RHに調整された部屋に静置した。つぎに、分光放射輝度計(CS−1000、コニカミノルタ社製)を用いて初期輝度を測定した。なお、各色変換シートと青色LED素子との距離は、3cmとした。その後、青色LED素子からの光を連続照射し、1000時間後に再度輝度を測定し、初期値からの輝度の変化率を算出し、得られた輝度の変化率をもとに、以下の基準で耐久性を評価した。この耐久性の評価結果として、「A」は、上記変化率が10%未満であることを示す。「B」は、上記変化率が10%以上20%未満であることを示す。「C」は、上記変化率が20%以上30%未満であることを示す。「D」は、上記変化率が30%以上であることを示す。
【0298】
(合成例1)
以下に、本発明における合成例1の化合物G−1の合成方法について説明する。化合物G−1の合成方法では、3,5−ジブロモベンズアルデヒド(3.0g)、4−t−ブチルフェニルボロン酸(5.3g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.4g)、炭酸カリウム(2.0g)をフラスコに入れ、窒素置換した。これに、脱気したトルエン(30mL)および脱気した水(10mL)を加え、4時間還流した。この反応溶液を室温まで冷却し、有機層を、分液した後に飽和食塩水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(3.5g)を白色固体として得た。
【0299】
つぎに、3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(1.5g)と2,4−ジメチルピロール(0.7g)とを反応溶液に入れ、脱水ジクロロメタン(200mL)およびトリフルオロ酢酸(1滴)を加えて、窒素雰囲気下、4時間撹拌した。続いて、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.85g)の脱水ジクロロメタン溶液を加え、さらに1時間撹拌した。反応終了後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.0mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.0mL)を加えて、4時間撹拌した後、さらに水(100mL)を加えて撹拌し、有機層を分液した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物(0.4g)を得た(収率18%)。この得られた化合物の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、これが化合物G−1であることが確認された。
1H−NMR(CDCl
3,ppm):7.95(s,1H)、7.63−7.48(m,10H)、6.00(s,2H)、2.58(s,6H)、1.50(s,6H)、1.37(s,18H)
【0300】
なお、この化合物G−1の発光スペクトルにおける最大放射強度を示すピーク波長は、528nmであった。また、そのピークの半値幅は、25nmであった。
【0301】
(合成例2)
以下に、本発明における合成例2の化合物R−1の合成方法について説明する。化合物R−1の合成方法では、4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール(300mg)、2−メトキシベンゾイルクロリド(201mg)およびトルエン(10mL)の混合溶液を窒素気流下、120℃で6時間加熱した。この加熱溶液を室温に冷却後、エバポレートした。ついで、エタノール(20mL)で洗浄し、真空乾燥した後、2−(2−メトキシベンゾイル)−3−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)ピロール(260mg)を得た。
【0302】
つぎに、2−(2−メトキシベンゾイル)−3−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)ピロール(260mg)、4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール(180mg)、メタンスルホン酸無水物(206mg)および脱気したトルエン(10mL)の混合溶液を窒素気流下、125℃で7時間加熱した。この加熱溶液を室温に冷却後、水(20mL)を注入し、ジクロロメタン(30mL)で有機層を抽出した。この有機層を水(20mL)で2回洗浄し、エバポレートし、真空乾燥して、ピロメテン体を得た。
【0303】
つぎに、得られたピロメテン体とトルエン(10mL)との混合溶液を、窒素気流下、ジイソプロピルエチルアミン(305mg)および三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(670mg)を加えて室温で3時間、攪拌した。その後、水(20mL)を注入し、ジクロロメタン(30mL)で有機層を抽出した。この有機層を水(20mL)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、赤紫色粉末(0.27g)を得た。得られた赤紫色粉末の
1H−NMR分析結果は次の通りであり、上記のようにして得られた赤紫色粉末が化合物R−1であることが確認された。
1H−NMR(CDCl
3,ppm):1.19(s,18H)、3.42(s,3H)、3.85(s,6H)、5.72(d,1H)、6.20(t,1H)、6.42−6.97(m,16H)、7.89(d,4H)
【0304】
なお、この化合物R−1の発光スペクトルにおける最大放射強度を示すピーク波長は、635nmであった。また、そのピークの半値幅は、48nmであった。
【0305】
(実施例1)
本発明の実施例1では、樹脂として樹脂(B−1)を用い、この樹脂(B−1)の100重量部に対して、有機発光材料(A)として化合物G−1を0.25重量部、有機発光材料(E)として化合物R−1を0.005重量部、溶媒としてトルエンを20重量部、加えた。これらの混合物を、50℃に加熱して攪拌した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ社製)を用いて1000rpmで5分間撹拌、脱泡し、これにより、色変換組成物を得た。この色変換組成物の含有水分率を測定した結果、0.005重量%であった。
【0306】
ついで、上記色変換組成物を、スリットダイコーターを用いて基材層としての“セラピール”BLK(東レフィルム加工社製)上に塗布し、130℃で1時間加熱、乾燥して、膜厚200μmの色変換シートを得た。
【0307】
この色変換シートを用いた発光体について、色変換特性、色再現性、および耐久性を測定したところ、緑色光のピーク波長は530nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は89%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は7.5%であり、この評価結果は「A」であった。実施例1の発光体の評価結果、色変換組成物の各成分などについては、後述の表3に示す。
【0308】
(実施例2、3および比較例1〜3)
本発明の実施例2、3および本発明に対する比較例1〜3では、色変換層の有機発光材料(A)、樹脂、有機発光材料(E)および溶媒として、表3に記載したもの(化合物G−1、G−2、G−3、G−4、樹脂(B−1)、樹脂(B−4)、樹脂(C−2)など)を適宜用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して色変換シートおよび発光体を得た。実施例2、3および比較例1〜3の各々において得られた評価結果は、表3に示す。
【0309】
なお、化合物G−2の発光スペクトルにおける最大放射強度を示すピーク波長は、530nmであった。また、そのピークの半値幅は、42nmであった。化合物G−3の発光スペクトルにおける最大放射強度を示すピーク波長は、530nmであった。また、そのピークの半値幅は、47nmであった。化合物G−4の発光スペクトルにおける最大放射強度を示すピーク波長は、493nmであった。また、そのピークの半値幅は、55nmであった。
【0310】
実施例2で得られた色変換シートにおいて、緑色光のピーク波長は532nmであり、そのピークの半値幅は42nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は80%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は8.0%であり、この評価結果は「A」であった。
【0311】
実施例3で得られた色変換シートにおいて、緑色光のピーク波長は532nmであり、そのピークの半値幅は47nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は75%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は8.7%であり、この評価結果は「A」であった。
【0312】
比較例1で得られた色変換シートにおいて、緑色光のピーク波長は495nmであり、そのピークの半値幅は55nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は50%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は40%であり、この評価結果は「D」であった。
【0313】
比較例2で得られた色変換シートにおいて、緑色光のピーク波長は530nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は92%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は58%であり、この評価結果は「D」であった。
【0314】
比較例3で得られた色変換シートにおいて、緑色光のピーク波長は530nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は92%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は35%であり、この評価結果は「D」であった。
【0315】
実施例1〜3は、有機発光材料(A)、(E)の発光スペクトルにおけるピークの半値幅が10〜50nmであり、かつ、樹脂が脂環式構造を有するため、発光体の色再現性と耐久性とが双方とも良好であった。
【0316】
【表3】
【0317】
(実施例4)
本発明の実施例4では、樹脂として樹脂(B−1)を用い、この樹脂(B−1)の100重量部に対して、有機発光材料(A)として化合物G−1を0.25重量部、溶媒としてトルエンを20重量部、加えた。これらの混合物を、50℃に加熱して攪拌した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ社製)を用い、1000rpmで5分間撹拌、脱泡し、これにより、(X)層作製用の色変換組成物を得た。この(X)層作製用の色変換組成物の含有水分率を測定した結果、0.005重量%であった。
【0318】
同様に、樹脂として樹脂(C−1)を用い、この樹脂(C−1)の100重量部に対して、有機発光材料(E)として化合物R−1を0.005重量部、溶媒としてトルエンを20重量部、混合した。その後、これらの混合物を、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ社製)を用いて300rpmで20分間撹拌、脱泡し、これにより、(Y)層作製用の色変換組成物を得た。この(Y)層作製用の色変換組成物の含有水分率を測定した結果、0.14重量%であった。
【0319】
ついで、上記(X)層作製用の色変換組成物を、スリットダイコーターを用いて第1基材層としての“ルミラー”U48(東レ社製、厚さ50μm)上に塗布し、100℃で20分加熱、乾燥して、平均膜厚16μmの(X)層を形成した。
【0320】
同様に、上記(Y)層作製用の色変換組成物を、スリットダイコーターを用いて第2基材層としての光拡散フィルム“ケミカルマット”125PW(きもと社製、厚さ138μm)のPET基材層側に塗布し、100℃で20分加熱、乾燥して、平均膜厚48μmの(Y)層を形成した。
【0321】
ついで、上記2つの層を、(X)層と(Y)層とが直接積層するように加温ラミネートすることで、「光拡散層/第2基材層/(Y)層/(X)層/第1基材層」という構成の色変換シートを作製した。
【0322】
この色変換シートを用いた発光体について、色再現性および耐久性を測定したところ、緑色光のピーク波長は528nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。色再現性は92%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は7.0%であり、この評価結果は「A」であった。実施例4の発光体の評価結果、色変換組成物の各成分などについては、後述の表4に示す。
【0323】
(実施例5〜11)
本発明の実施例5〜11では、(X)層の有機発光材料(A)、(Y)層の有機発光材料(E)、樹脂、添加剤および溶媒として、表4に記載したもの(化合物G−1、R−1、樹脂(B−1)、樹脂(B−2)、樹脂(B−3)、樹脂(B−4)、樹脂(C−1)、樹脂(C−2)など)を適宜用いたこと以外は、実施例4と同様に操作して色変換シートおよび発光体を得た。実施例5〜11の各々において得られた評価結果は、表4に示す。
【0324】
実施例5で得られた発光体において、緑色光のピーク波長は530nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は90%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は16.0%であり、この評価結果は「B」であった。
【0325】
実施例6で得られた発光体において、緑色光のピーク波長は530nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は90%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は5.5%であり、この評価結果は「A」であった。
【0326】
実施例7で得られた発光体において、緑色光のピーク波長は530nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は90%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は5.2%であり、この評価結果は「A」であった。
【0327】
実施例8で得られた発光体において、緑色光のピーク波長は530nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は90%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は5.4%であり、この評価結果は「A」であった。
【0328】
実施例9では、(X)層について樹脂(B−1)と樹脂(C−2)とを重量比2:1で混合した。このため、得られた色変換シートにおいて、緑色光のピーク波長は526nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は94%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は25.6%であり、この評価結果は「C」であった。
【0329】
実施例10では、(X)層について樹脂(B−3)を用いた。このため、得られた色変換シートにおいて、緑色光のピーク波長は535nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は637nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は78%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は16.0%であり、この評価結果は「B」であった。
【0330】
実施例11では、(X)層について樹脂(B−1)と樹脂(B−4)を重量比8.3:1で混合した。このため、得られた色変換シートにおいて、緑色光のピーク波長は526nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。また、色再現性は94%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は9.5%であり、この評価結果は「A」であった。
【0331】
【表4】
【0332】
(実施例12)
本発明の実施例12では、色変換組成物を用いてディスペンス法で作製した色変換層を有する発光体について評価した。具体的には、基板をトランスファーモールド用の金型で挟み、金型内に熱硬化性樹脂を流し込み硬化させることで、この基板上にリフレクターを成形した。このとき、リフレクターによる凹部の形状は、底面が1mm角の矩形であり且つ深さが0.5mmである直方体状とした。このリフレクターによる凹部にフリップチップ型の青色LEDを配置し、この青色LEDの電極と基板の回路配線とを電気的に接続した。
【0333】
つぎに、実施例1と同様の操作で作製した色変換組成物を、ディスペンサーを用いてリフレクターによる凹部に注入し、120℃で1時間加熱することにより、この凹部に色変換層を形成して発光体を得た。この発光体に、10mAの電流を流して青色LEDを点灯させ、分光放射輝度計(CS−1000、コニカミノルタ社製)を用いて、発光スペクトル、ピーク波長における発光強度および色度を測定した。
【0334】
この発光体の色変換特性、色再現性、および耐久性を測定したところ、緑色光のピーク波長は528nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。色再現性は89%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は8.5%であり、この評価結果は「A」であった。
【0335】
(実施例13)
本発明の実施例13では、色変換シートを用いたシート法で作製した発光体について評価した。具体的には、実施例4と同様の操作で作製した色変換シートを、カッティング装置(UHT社製GCUT)によりカットした。ついで、このカット後の色変換シート(個片シート)を、ダイボンディング装置(東レエンジニアリング社製)を用いてコレットで真空吸着し、フリップチップ型の青色LEDの上面に位置合わせして貼り付けた。このとき、フリップチップ型の青色LED上に予め接着剤を塗布し、接着剤を介して色変換シートを貼り付けた。この接着剤には、シリコーン樹脂(OE−6630、東レダウコーニング社製)を使用した。続いて、実施例12と同様の方法によって基板上にリフレクターを形成し、このリフレクターによる凹部に、上記色変換シートが貼り付けられた状態の青色LEDを配置し、この青色LEDの電極と基板の回路配線とを電気的に接続した。その後、ディスペンサーを用いてシリコーン樹脂(OE−6630)をこのリフレクターによる凹部に注入し、150℃で3時間加熱することにより、このシリコーン樹脂を熱硬化させた。この結果、発光体を得た。
【0336】
この発光体の色変換特性、色再現性、および耐久性を実施例12と同様の方法で測定したところ、緑色光のピーク波長は528nmであり、そのピークの半値幅は25nmであった。赤色光のピーク波長は640nmであり、そのピークの半値幅は48nmであった。色再現性は89%であった。耐久性の評価では、初期値からの輝度の変化率は8.0%であり、この評価結果は「A」であった。