(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記駆動対象スイッチのうち、所定電流(Iα)よりも小さい小電流領域においてオン抵抗が最小となる特性を有する駆動対象スイッチを第1スイッチ(SW1)とし、前記所定電流以上の大電流領域においてオン抵抗が最小となる特性を有する駆動対象スイッチを第2スイッチ(SW2)とする場合、前記第2スイッチを最初にオン状態に切り替えてから、前記第1スイッチをオン状態に切り替える駆動制御部(56)を備え、
複数の前記駆動対象スイッチのうち、前記閾値電圧が最も低い駆動対象スイッチが前記第2スイッチであり、他の駆動対象スイッチが前記第1スイッチである請求項1に記載の駆動対象スイッチの駆動回路。
複数の前記駆動対象スイッチのうち、所定電流(Iα)よりも小さい小電流領域においてオン抵抗が最小となる特性を有する駆動対象スイッチを第1スイッチ(SW1)とし、前記所定電流以上の大電流領域においてオン抵抗が最小となる特性を有する駆動対象スイッチを第2スイッチ(SW2)とする場合、前記第1スイッチを最初にオフ状態に切り替えてから、前記第2スイッチをオフ状態に切り替える駆動制御部(56)を備え、
複数の前記駆動対象スイッチのうち、前記閾値電圧が最も低い駆動対象スイッチが前記第2スイッチであり、他の駆動対象スイッチが前記第1スイッチである請求項1に記載の駆動対象スイッチの駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る駆動回路を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る駆動回路は、回転電機の制御システムを構成する。
【0011】
図1に示すように、制御システムは、直流電源10、電力変換器としてのインバータ20、回転電機30及び制御装置40を備えている。回転電機30は、例えば車載主機である。回転電機30は、インバータ20を介して直流電源10に電気的に接続されている。本実施形態において、回転電機30は、3相のものが用いられている。回転電機30としては、例えば、永久磁石同期機を用いることができる。また、直流電源10は、例えば百V以上となる端子電圧を有する蓄電池である。具体的には例えば、直流電源10はリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池等の2次電池である。なお、直流電源10には、コンデンサ11が並列接続されている。
【0012】
インバータ20は、各相に対応する上,下アームスイッチ部20H,20Lを備えている。各相において、上アームスイッチ部20Hと下アームスイッチ部20Lとは直列接続されている。各相において、上アームスイッチ部20Hと下アームスイッチ部20Lとの接続点には、回転電機30の各相の巻線31の第1端が接続されている。各相の巻線31の第2端は、中性点で接続されている。
【0013】
各スイッチ部20H,20Lは、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の並列接続体を備えている。第1,第2スイッチSW1,SW2が駆動対象スイッチに相当する。各相において、上アームスイッチ部20Hの第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2それぞれの第1主端子には、直流電源10の正極側が接続されている。各相において、下アームスイッチ部20Lの第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2それぞれの第2主端子には、直流電源10の負極側が接続されている。各相において、上アームスイッチ部20Hの第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2それぞれの第2主端子には、下アームスイッチ部20Lの第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2それぞれの第1主端子が接続されている。
【0014】
本実施形態において、第1スイッチSW1は、SiCデバイスとしてのNチャネルMOSFETである。このため、第1スイッチSW1において、第2主端子はソースであり、第1主端子はドレインであり、主制御端子はゲートである。また、第2スイッチSW2は、SiデバイスとしてのIGBTである。このため、第2スイッチSW2において、第2主端子はエミッタであり、第1主端子はコレクタであり、主制御端子はゲートである。なお、各第2スイッチSW2には、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。また、各第1スイッチSW1には、ボディダイオードが内蔵されている。ちなみに、各第1スイッチSW1にフリーホイールダイオードが逆並列に接続されていてもよい。
【0015】
本実施形態において、各スイッチ部をIGBT及びMOSFETの並列接続体にて構成した理由は、小電流領域においてオン抵抗が低いMOSFETに電流を流通させることにより、小電流領域における損失を低減するためである。以下、
図2を用いて説明する。なお、
図2において、一点鎖線は、MOSFETのドレイン及びソース間電圧Vdsとドレイン電流Idsとの電圧電流特性を示し、破線は、IGBTのコレクタ及びエミッタ間電圧Vceとコレクタ電流Iceとの電圧電流特性を示す。また、実線は、IGBT及びMOSFETを並列で使用した場合の電圧電流特性を示す。
【0016】
図2に示すように、電流が所定電流Ithよりも小さい小電流領域においては、ドレイン電流Idsに対するドレイン及びソース間電圧Vdsが、コレクタ電流Iceに対するコレクタ及びエミッタ間電圧Vceよりも低い。すなわち、小電流領域においては、MOSFETのオン抵抗がIGBTのオン抵抗よりも小さい。このため、小電流領域においては、互いに並列接続されたMOSFET及びIGBTのうち、MOSFETの方に電流が多く流れることとなる。一方、電流が所定電流Ithよりも大きい大電流領域においては、コレクタ電流Iceに対するコレクタ及びエミッタ間電圧Vceがドレイン電流Idsに対するドレイン及びソース間電圧Vdsよりも低い。すなわち、大電流領域においては、IGBTのオン抵抗がMOSFETのオン抵抗よりも小さい。このため、大電流領域においては、互いに並列接続されたMOSFET及びIGBTのうち、IGBTの方に電流が多く流れることとなる。
【0017】
また、第2スイッチSW2の閾値電圧Vth2は、第1スイッチSW1の閾値電圧Vth1よりも高く設定されている。なお、本実施形態において、第2スイッチSW2に流通可能なコレクタ電流Iceの最大値は、第1スイッチSW1に流通可能なドレイン電流Idsの最大値よりも大きく設定されている。
【0018】
先の
図1の説明に戻り、制御装置40は、回転電機30の制御量をその指令値に制御すべく、インバータ20を駆動する。制御量は、例えばトルクである。制御装置40は、インバータ20の各スイッチSW1,SW2を駆動すべく、各スイッチSW1,SW2に対応する駆動信号を、各スイッチ部20H,20Lに対して個別に設けられた駆動回路Drに対して出力する。制御装置40は、例えば、電気角で互いに位相が120°ずれた3相指令電圧と三角波等のキャリア信号との大小比較に基づくPWM処理により、各駆動回路Drに対応する駆動信号を生成する。駆動信号は、スイッチのオン状態を指示するオン指令と、オフ状態を指示するオフ指令とのいずれかをとる。本実施形態では、オン指令が論理Hの信号で表され、オフ指令が論理Lの信号で表されることとする。各相において、上アーム側の駆動信号と、対応する下アーム側の駆動信号とは、交互にオン指令とされる。このため、各相において、上アームスイッチ部20Hの各スイッチSW1,SW2と、下アームスイッチ部20Lの各スイッチSW1,SW2とは、交互にオン状態とされる。
【0019】
図3〜
図6を用いて、インバータ20についてさらに説明する。なお、
図3は、インバータ20に複数組備えられる第1,第2スイッチSW1,SW2のうち、1組の第1,第2スイッチSW1,SW2及びその周辺構成の概略を示す図である。
【0020】
インバータ20は、制御基板41、第1スイッチSW1を内蔵する第1モジュール101、及び第2スイッチSW2を内蔵する第2モジュール102を備えている。本実施形態において、制御基板41は、例えばプリント基板であり、外層及び内層を備える多層基板である。外層は、制御基板41の第1面、及び第1面の裏面である第2面である。内層は、一対の外層に挟まれた層である。
【0021】
第1モジュール101は、その端子が半田付け等により制御基板41に機械的及び電気的に接続されている。第1モジュール101は、第1スイッチSW1、フリーホイールダイオード及び第1感温ダイオードを内蔵した本体部と、本体部から突出した複数の端子と、本体部から突出した複数のパワー端子とを備えている。複数の端子は、第1スイッチSW1のゲート端子G1、ソース端子KE1、第1感温ダイオードのアノード端子A1、第1感温ダイオードのカソード端子K1、及びセンス端子SE1を含む。センス端子SE1は、第1スイッチSW1のドレイン電流と相関を有する微小電流が流れる端子である。パワー端子は、第1スイッチSW1のドレインに短絡される第1パワー端子と、第1スイッチSW1のソースに短絡される第2パワー端子とを含む。
【0022】
第2モジュール102は、
図4及び
図5に示すように、第2スイッチSW2、フリーホイールダイオード及び第2感温ダイオードDT2を内蔵した本体部102aと、本体部102aから突出した複数の端子と、本体部102aから突出した複数のパワー端子とを備えている。複数の端子は、第2スイッチSW2のゲート端子G2、エミッタ端子KE2、第2感温ダイオードDT2のアノード端子A2、第2感温ダイオードDT2のカソード端子K2、及びセンス端子SE2を含む。センス端子SE2は、第2スイッチSW2のコレクタ電流と相関を有する微小電流が流れる端子である。パワー端子は、第2スイッチSW2のコレクタに短絡される第1パワー端子TP1と、第2スイッチSW2のエミッタに短絡される第2パワー端子TP2とを含む。第2モジュール102は、その端子が半田付け等により制御基板41に機械的及び電気的に接続されている。
【0023】
各モジュール101,102の本体部は、扁平な直方体形状をなしている。第2モジュール102を例に説明すると、本体部102aの対向する一対の表面のうち一方の面には、この表面から垂直に突出するように各端子K2,A2,G2,SE2,KE2が設けられている。また、他方の面には、この表面から垂直に突出するように各パワー端子TP1,TP2が設けられている。
【0024】
図6を用いて、各スイッチSW1,SW2の駆動回路Drについて説明する。
【0025】
駆動回路Drは、正電圧源50、第1充電スイッチ51A、第1充電抵抗体52A、第1放電抵抗体53A、第1放電スイッチ54A及び第1オフ保持スイッチ55Aを備えている。本実施形態では、第1充電スイッチ51AとしてPチャネルMOSFETが用いられ、第1放電スイッチ54A及び第1オフ保持スイッチ55AとしてNチャネルMOSFETが用いられている。本実施形態では、第1スイッチSW1のソース電位を0とし、正電圧源50の出力電圧をVP(>0)で表す。
【0026】
第1充電スイッチ51Aのソースには、正電圧源50が接続され、第1充電スイッチ51Aのドレインには、第1充電抵抗体52Aの第1端が接続されている。第1充電抵抗体52Aの第2端には、第1スイッチSW1のゲートが接続されている。第1スイッチSW1のゲートには、第1放電抵抗体53Aの第1端と、第1オフ保持スイッチ55Aのドレインとが接続されている。第1放電抵抗体53Aの第2端には、第1放電スイッチ54Aのドレインが接続されている。第1放電スイッチ54Aのソースと、第1オフ保持スイッチ55Aのソースとには、第1スイッチSW1のソースが接続されている。
【0027】
本実施形態において、第1スイッチSW1のゲートから第1オフ保持スイッチ55Aのドレインまでの電気経路と、第1オフ保持スイッチ55Aのドレイン及びソース間と、第1オフ保持スイッチ55Aのソースから第1スイッチSW1のソースまでの電気経路とが、第1スイッチSW1に対応する第1オフ保持経路Loff1である。
【0028】
また、本実施形態において、第1スイッチSW1のゲートから第1放電抵抗体53Aを介して第1放電スイッチ54Aのドレインまでの電気経路と、第1放電スイッチ54Aのドレイン及びソース間と、第1放電スイッチ54Aのソースから第1スイッチSW1のソースまでの電気経路とが、第1スイッチSW1に対応する第1放電経路Ldis1である。第1放電経路Ldis1のうち、第1放電スイッチ54A及び第1放電抵抗体53A以外の部分は、配線パターンを含む。
【0029】
また、本実施形態において、正電圧源50から第1充電スイッチ51A及び第1充電抵抗体52Aを介して第1スイッチSW1のゲートまでの電気経路が、図示しないが、第1スイッチSW1に対応する第1充電経路Lch1に相当する。第1充電経路Lch1のうち、第1充電スイッチ51A及び第1充電抵抗体52A以外の部分は、配線パターンを含む。
【0030】
駆動回路Drは、第2充電スイッチ51B、第2充電抵抗体52B、第2放電抵抗体53B、第2放電スイッチ54B及び第2オフ保持スイッチ55Bを備えている。本実施形態では、第2充電スイッチ51BとしてPチャネルMOSFETが用いられ、第2放電スイッチ54B及び第2オフ保持スイッチ55BとしてNチャネルMOSFETが用いられている。本実施形態では、第2スイッチSW2のエミッタ電位を0とする。
【0031】
第2充電スイッチ51Bのソースには、正電圧源50が接続され、第2充電スイッチ51Bのドレインには、第2充電抵抗体52Bを介して第2スイッチSW2のゲートが接続されている。第2スイッチSW2のゲートには、第2放電抵抗体53Bの第1端と、第2オフ保持スイッチ55Bのドレインとが接続されている。第2放電抵抗体53Bの第2端には、第2放電スイッチ54Bのドレインが接続されている。第2放電スイッチ54Bのソースと、第2オフ保持スイッチ55Bのソースとには、第2スイッチSW2のゲートが接続されている。
【0032】
本実施形態において、第2スイッチSW2のゲートから第2オフ保持スイッチ55Bのドレインまでの電気経路と、第2オフ保持スイッチ55Bのドレイン及びソース間と、第2オフ保持スイッチ55Bのソースから第2スイッチSW2のソースまでの電気経路とが、第2スイッチSW2に対応する第2オフ保持経路Loff2である。
【0033】
また、本実施形態において、第2スイッチSW2のゲートから第2放電抵抗体53Bを介して第2放電スイッチ54Bのドレインまでの電気経路と、第2放電スイッチ54Bのドレイン及びソース間と、第2放電スイッチ54Bのソースから第2スイッチSW2のソースまでの電気経路とが、第2スイッチSW2に対応する第2放電経路Ldis2である。第2放電経路Ldis2のうち、第2放電スイッチ54B及び第2放電抵抗体53B以外の部分は、配線パターンを含む。
【0034】
また、本実施形態において、正電圧源50から第2充電スイッチ51B及び第2充電抵抗体52Bを介して第2スイッチSW2のゲートまでの電気経路が、図示しないが、第2スイッチSW2に対応する第2充電経路Lch2に相当する。第2充電経路Lch2のうち、第2充電スイッチ51B及び第2充電抵抗体52B以外の部分は、配線パターンを含む。
【0035】
駆動回路Drは、駆動制御部56を備えている。駆動制御部56は、制御装置40から取得した第1スイッチSW1の駆動信号がオン指令であると判定した場合、第1充電スイッチ51Aをオン状態にし、第1放電スイッチ54A及び第1オフ保持スイッチ55Aをオフ状態にする。この場合、第1スイッチSW1のゲートには、正電圧源50の出力電圧VPが供給され、正電圧源50から第1スイッチSW1のゲートに充電電流が供給される。その結果、第1スイッチSW1のゲート電圧Vgsが第1スイッチSW1の閾値電圧Vth1以上となり、第1スイッチSW1がオン状態に切り替えられ、第1スイッチSW1のドレイン及びソース間の電流の流通が許容される。
【0036】
駆動制御部56は、取得した第1スイッチSW1の駆動信号がオフ指令であると判定した場合、第1充電スイッチ51Aをオフ状態にし、第1放電スイッチ54Aをオン状態にする。この場合、第1スイッチSW1のゲートから第1放電抵抗体53A及び第1放電スイッチ54Aを介して第1スイッチSW1のソース側へと放電電流が流れる。その結果、第1スイッチSW1のゲート電圧Vgsが閾値電圧Vth1未満となり、第1スイッチSW1がオフ状態とされ、第1スイッチSW1のドレインからソースへの電流の流通が阻止される。
【0037】
駆動制御部56は、制御装置40から取得した第2スイッチSW2の駆動信号がオン指令であると判定した場合、第2充電スイッチ51Bをオン状態にし、第2放電スイッチ54B及び第2オフ保持スイッチ55Bをオフ状態にする。この場合、第2スイッチSW2のゲートには、正電圧源50の出力電圧VPが供給され、第2スイッチSW2のゲート電圧Vgeが第2スイッチSW2の閾値電圧Vth2以上となり、第2スイッチSW2がオン状態に切り替えられ、第2スイッチSW2のコレクタからエミッタへの電流の流通が許容される。
【0038】
駆動制御部56は、取得した第2スイッチSW2の駆動信号がオフ指令であると判定した場合、第2充電スイッチ51Bをオフ状態にし、第2放電スイッチ54Bをオン状態にする。この場合、第2スイッチSW2のゲートから第2放電抵抗体53B及び第2放電スイッチ54Bを介して第2スイッチSW2のエミッタ側へと放電電流が流れる。その結果、第2スイッチSW2のゲート電圧Vgeが閾値電圧Vth2未満となり、第2スイッチSW2がオフ状態とされ、第2スイッチSW2のコレクタからエミッタへの電流の流通が遮断される。
【0039】
本実施形態において、制御装置40から駆動制御部56に入力される第1,第2スイッチSW1,SW2それぞれの駆動信号の論理が同期されている。このため、駆動制御部56により、第1,第2スイッチSW1,SW2は同期してオンオフされる。
【0040】
駆動制御部56は、第1スイッチSW1のゲート電圧Vgsを監視する機能を有している。駆動制御部56は、駆動信号がオフ指令であって、かつ、第1スイッチSW1のゲート電圧Vgsが第1規定電圧以下になっていると判定した場合、第1オフ保持スイッチ55Aをオン状態にし、それ以外の場合に第1オフ保持スイッチ55Aをオフ状態に維持するオフ保持処理を行う。第1規定電圧は、第1スイッチSW1の閾値電圧Vth1以下の電圧に設定されており、本実施形態では閾値電圧Vth1に設定されている。
【0041】
駆動制御部56は、第2スイッチSW2のゲート電圧Vgeを監視する機能を有している。駆動制御部56は、駆動信号がオフ指令であって、かつ、第2スイッチSW2のゲート電圧Vgeが第2規定電圧以下になっていると判定した場合、第2オフ保持スイッチ55Bをオン状態にし、それ以外の場合に第2オフ保持スイッチ55Bをオフ状態に維持するオフ保持処理を行う。第2規定電圧は、第2スイッチSW2の閾値電圧Vth2以下の電圧に設定されており、本実施形態では閾値電圧Vth2に設定されている。
【0042】
オフ保持処理は、例えば
図7に示すように、下アーム側のスイッチがオン状態に切り替えられる場合に生じるスイッチングノイズが上アーム側のスイッチのゲートに伝達され、上アーム側のスイッチがセルフターンオンしてしまうことを抑制するための処理である。
図7には、上,下アーム側のスイッチとして第2スイッチSW2を例に示し、それらスイッチのゲート電圧の推移も示す。
図7では、時刻t1に駆動信号がオフ指令に切り替えられ、時刻t2において、上アーム側の第2スイッチSW2のオフ保持処理が開始される。
【0043】
なお、駆動制御部56が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0044】
続いて
図8及び
図9を用いて、第1スイッチSW1が第2スイッチSW2よりもセルフターンオンが発生しやすいことについて説明する。
【0045】
まず、
図8を用いて、第2スイッチSW2について説明する。
図8(a)は第2スイッチSW2のゲート電圧Vgeの推移を示し、
図8(b)は第2スイッチSW2のコレクタ電流Iceの推移を示し、
図3(c)は第2スイッチSW2のコレクタ及びエミッタ間電圧Vceの推移を示す。なお、ゲート電圧Vgeは、エミッタ電位よりもゲート電位が高い場合を正とする。
【0046】
時刻t1において、第2スイッチSW2の駆動信号がオン指令に切り替えられ、ゲート電圧Vgeが上昇し始める。その後時刻t2において、ゲート電圧Vgeが正電圧源50の出力電圧VPに到達する。その後時刻t3において、駆動信号がオフ指令に切り替えられ、ゲート電圧Vgeが低下し始め、時刻t4において、ゲート電圧Vgeが0となる。その後、例えば対向アーム側のスイッチがオン状態に切り替えられ、それに伴って、オフ指令であるにもかかわらずゲート電圧Vgeが上昇してしまう。ただし、第2スイッチSW2の閾値電圧Vth2は比較的高いため、ゲート電圧Vgeが上昇したとしても、ゲート電圧Vgeは閾値電圧Vth2以上とならない。
【0047】
続いて、
図9を用いて、第1スイッチSW1について説明する。
図9(a)は第1スイッチSW1のゲート電圧Vgsの推移を示し、
図9(b)は第1スイッチSW1のドレインIdsの推移を示し、
図9(c)は第1スイッチSW1のドレイン及びソース間電圧Vdsの推移を示す。なお、ゲート電圧Vgsは、ソース電位よりもゲート電位が高い場合を正とする。
【0048】
時刻t1において、第1スイッチSW1の駆動信号がオン指令に切り替えられ、ゲート電圧Vgsが上昇し始める。その後時刻t2において、ゲート電圧Vgsが正電圧源50の出力電圧VPに到達する。その後時刻t3において、駆動信号がオフ指令に切り替えられ、ゲート電圧Vgsが低下し始め、時刻t4において、ゲート電圧Vgsが0となる。その後、例えば対向アーム側のスイッチがオン状態に切り替えられ、それに伴って、オフ指令であるにもかかわらずゲート電圧Vgsが上昇してしまう。第1スイッチSW1の閾値電圧Vth1は第2スイッチSW2の閾値電圧Vth2よりも低い。このため、ゲート電圧Vgsの上昇により、ゲート電圧Vgsは閾値電圧Vth1以上になってしまう。その結果、第1スイッチSW1のセルフターンオンが発生してしまう。
【0049】
こうした問題に対処するための構成について、
図10を用いて説明する。
図10は、制御基板41を第1面から見た場合の図である。なお、
図10では、第1充電スイッチ51A等の図示を省略している。
【0050】
制御基板41の第1面には、駆動制御部56が設けられている。制御基板41において、駆動制御部56から離間した位置には、第1モジュール101の各端子K1,A1,G1,SE1,KE1が一列に並んで接続されている。制御基板41において、駆動制御部56から離間した位置には、第2モジュール102の各端子K2,A2,G2,SE2,KE2が一列に並んで接続されている。第1モジュール101の各端子K1,A1,G1,SE1,KE1と、第2モジュール102の各端子K2,A2,G2,SE2,KE2とは、並列している。
【0051】
制御基板41の第1面において、第1モジュール101の各端子K1,A1,G1,SE1,KE1と、第2モジュール102の各端子K2,A2,G2,SE2,KE2との間には、第1,第2オフ保持スイッチ55A,55Bが設けられている。第1オフ保持スイッチ55Aは、第1モジュール101のゲート端子G1と第2モジュール102のゲート端子G2との対向方向である第1方向において、第1モジュール101のゲート端子G1側に設けられている。第2オフ保持スイッチ55Bは、第1方向において、第2モジュール102のゲート端子G2側に設けられている。各ゲート端子G1,G2と駆動制御部56との対向方向である第2方向において、第2オフ保持スイッチ55Bは、第1オフ保持スイッチ55A及びゲート端子G1,G2よりも駆動制御部56側に設けられている。なお、本実施形態において、各オフ保持スイッチ55A,55Bは、外付けのディスクリート部品である。
【0052】
制御基板41の第1面には、第1オフ保持経路Loff1を構成する第1A経路61A及び第1B経路61Bが設けられている。本実施形態において、第1A経路61A及び第1B経路61Bは、配線パターンである。第1A経路61Aは、第1スイッチSW1のゲート端子G1と、第1オフ保持スイッチ55Aのドレインとを接続している。第1B経路61Bは、第1オフ保持スイッチ55Aのソースと、第1スイッチSW1のソースに短絡されたソース端子KE1とを接続している。
【0053】
制御基板41の第1面には、第1オフ保持スイッチ55Aのゲートと駆動制御部56とを接続する第1信号経路62が設けられている。駆動制御部56は、第1信号経路62を介して第1オフ保持スイッチ55Aをオンオフする。
【0054】
制御基板41の第1面には、第2オフ保持経路Loff2を構成する第2A経路63A及び第2B経路63Bが設けられている。本実施形態において、第2A経路63A及び第2B経路63Bは、配線パターンである。第2A経路63Aは、第2スイッチSW2のゲート端子G2と、第2オフ保持スイッチ55Bのドレインとを接続している。第2B経路63Bは、第2オフ保持スイッチ55Bのソースと、第2スイッチSW2のエミッタに短絡されたエミッタ端子KE2とを接続している。
【0055】
制御基板41の第1面には、第2オフ保持スイッチ55Bのゲートと駆動制御部56とを接続する第2信号経路64が設けられている。駆動制御部56は、第2信号経路64を介して第2オフ保持スイッチ55Bをオンオフする。なお、制御基板41の第1面の正面視において、第2信号経路64のうち第2A経路63Aと交差する部分は、制御基板41の内層及びビアを介して第2A経路63Aを跨いでいる。
【0056】
本実施形態では、以下(A1)〜(A3)の構成により、第1オフ保持スイッチ55Aがオン状態とされている場合における第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが、第2オフ保持スイッチ55Bがオン状態とされている場合における第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも低くされている。
【0057】
(A1)第1スイッチSW1のゲート端子G1と第1オフ保持スイッチ55Aとの距離が、第2スイッチSW2のゲート端子G2と第2オフ保持スイッチ55Bとの距離よりも短い構成。
【0058】
(A2)第1オフ保持経路Loff1を構成する第1A経路61A及び第1B経路61Bの幅が、第2オフ保持経路Loff2を構成する第2A経路63A及び第2B経路63Bの幅よりも大きい構成。
【0059】
(A3)第1オフ保持経路Loff1を構成する第1A経路61A及び第1B経路61Bそれぞれの長さが、第2オフ保持経路Loff2を構成する第2A経路63A及び第2B経路63Bそれぞれの長さよりも短い構成。
【0060】
このように、本実施形態では、閾値電圧が相対的に低い第1スイッチSW1の第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが、閾値電圧が相対的に高い第2スイッチSW2の第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも低くされている。オフ保持経路のインピーダンスが小さいほど、オフ保持処理中にスイッチのゲートに電荷が流れ込んだとしても、ゲート電圧の上昇度合いが抑制される。このため、本実施形態によれば、第1,第2スイッチSW1,SW2それぞれについて、例えばスイッチの寄生容量を介してゲートに電荷が流れ込んだとしても、その電荷により上昇したゲート電圧のピーク値をオフ保持処理中において閾値電圧未満にできる。これにより、第1,第2スイッチSW1,SW2のセルフターンオンの発生を抑制することができる。
【0061】
<第1実施形態の変形例1>
図6の構成に代えて、
図11に示すように、駆動回路Drが負電圧源57を備えていてもよい。
図11において、先の
図6に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0062】
負電圧源57は、第1スイッチSW1のソース電位及び第2スイッチSW2のエミッタ電位よりも低い負電圧Vn(<0)を出力する。第1放電スイッチ54A及び第1オフ保持スイッチ55Aそれぞれのソースは、第1スイッチSW1のソースに接続されず、負電圧源57に接続されている。第2放電スイッチ54B及び第2オフ保持スイッチ55Bそれぞれのソースは、第2スイッチSW2のエミッタに接続されず、負電圧源57に接続されている。
【0063】
なお、本実施形態のオフ保持経路について、第1スイッチSW1を例にして説明する。第1オフ保持経路Loff1は、第1スイッチSW1のゲートから第1オフ保持スイッチ55Aのドレインまでの電気経路と、第1オフ保持スイッチ55Aのドレイン及びソース間と、第1オフ保持スイッチ55Aのソースから負電圧源57までの電気経路とである。
【0064】
<第1実施形態の変形例2>
オフ保持経路の配線パターンとしては、
図12に示すように、制御基板41の外層の第1面42aに設けられた配線パターンPTに限らない。例えば、オフ保持経路の配線パターンが、外層に設けられた配線パターンと、制御基板41の少なくとも1つの内層に設けられた配線パターンとの並列接続体として構成されていてもよい。
図13には、外層の第1面42a及び第2面42bそれぞれに設けられた配線パターンPTaと、内層に設けられた配線パターンPTbとがビア43を介して並列接続されている例を示す。
図13に示す構成によれば、
図12に示す構成よりもインピーダンスを1/4にできる。なお、
図12及び
図13には、ゲート端子G1及び第1オフ保持スイッチ55Aを合わせて図示した。また、
図12の配線パターンPTは、
図10の第1A経路61Aに相当する。
【0065】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図14に示すように、第2オフ保持スイッチ55Bが駆動制御部56に内蔵されている。なお、
図14において、先の
図10に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0066】
制御基板41において、第1オフ保持スイッチ55Aは、第1実施形態と同様に、駆動制御部56の外部に設けられている。
【0067】
制御基板41の第1面には、第2オフ保持経路Loff2を構成する第2A経路65A及び第2B経路65Bが設けられている。第2A経路65Aは、第2スイッチSW2のゲート端子G2と、第2オフ保持スイッチ55Bのドレインとを接続している。第2B経路65Bは、第2オフ保持スイッチ55Bのソースと、第2スイッチSW2のエミッタに短絡されたエミッタ端子KE2とを接続している。第1A経路61A及び第1B経路61Bそれぞれの長さは、第2A経路65A及び第2B経路65Bそれぞれの長さよりも短い。また、第1A経路61A及び第1B経路61Bの幅が、第2A経路65A及び第2B経路65Bの幅よりも大きい。
【0068】
本実施形態によれば、第1オフ保持スイッチ55Aをゲート端子G1の近くに配置できる。このため、第1オフ保持経路Loff1を第2オフ保持経路Loff2よりも短くでき、第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスを第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも小さくできる。
【0069】
また、本実施形態によれば、第2オフ保持スイッチ55Bが駆動制御部56に内蔵されている。このため、制御基板41の第1面に第2オフ保持スイッチ55Bを設ける必要がないため、駆動回路Drの構成を簡易化できる。
【0070】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図15に示すように、第1オフ保持スイッチ55Aも駆動制御部56に内蔵されている。なお、
図15において、先の
図14に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0071】
制御基板41の第1面には、第1オフ保持経路Loff1を構成する第1A経路66A及び第1B経路66Bが設けられている。第1A経路66Aは、第1スイッチSW1のゲート端子G1と、第1オフ保持スイッチ55Aのドレインとを接続している。第1B経路66Bは、第1オフ保持スイッチ55Aのソースと、第1スイッチSW1のソースに短絡されたソース端子KE1とを接続している。
【0072】
制御基板41の第1面には、第2オフ保持経路Loff2を構成する第2A経路67A及び第2B経路67Bが設けられている。第2A経路67Aは、第2スイッチSW2のゲート端子G2と、第2オフ保持スイッチ55Bのドレインとを接続している。第2B経路67Bは、第2オフ保持スイッチ55Bのソースと、第2スイッチSW2のエミッタに短絡されたエミッタ端子KE2とを接続している。第1A経路66A及び第1B経路66Bそれぞれの長さは、第2A経路67A及び第2B経路67Bそれぞれの長さよりも短い。また、第1A経路66A及び第1B経路66Bの幅が、第2A経路67A及び第2B経路67Bの幅よりも大きい。
【0073】
制御基板41において、駆動制御部56は、各ゲート端子G1,G2のうちゲート端子G1に近い位置に設けられている。このため、第1スイッチSW1のゲート端子G1と駆動制御部56との距離が、第2スイッチSW2のゲート端子G2と駆動制御部56との距離よりも短い。
【0074】
以上説明した本実施形態によれば、各オフ保持スイッチ55A,55Bが駆動制御部56に内蔵されるため、駆動回路Drをより簡易化できる。
【0075】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図16に示すように、第1モジュール101の各端子K1,A1,G1,SE1,KE1と、第2モジュール102の各端子K2,A2,G2,SE2,KE2との配置間隔が狭くなっている。このため、制御基板41の第1面において、第1モジュール101の各端子K1,A1,G1,SE1,KE1と、第2モジュール102の各端子K2,A2,G2,SE2,KE2との間の領域にオフ保持スイッチを設けることができない。そこで、本実施形態では、制御基板41におけるオフ保持スイッチ等の配置方法が変更されている。なお、
図16において、先の
図10に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0076】
制御基板41の第1面のうち、第2方向において第1モジュール101のゲート端子G1を挟んで第2モジュール102のゲート端子G2とは反対側には、駆動制御部56が設けられている。駆動制御部56は、第1方向において各カソード端子K1,K2から離間した位置に設けられている。駆動制御部56には、第1オフ保持スイッチ55Aが内蔵されている。
【0077】
制御基板41の第1面のうち、第1方向において各カソード端子K1,K2から離間した位置には、第2オフ保持スイッチ55Bが設けられている。制御基板41の第1面には、第2オフ保持スイッチ55Bのゲートと駆動制御部56とを接続する信号経路72が設けられている。
【0078】
制御基板41の第1面には、第1オフ保持経路Loff1を構成する第1A経路68A及び第1B経路68Bが設けられている。第1A経路68Aは、第1スイッチSW1のゲート端子G1と、第1オフ保持スイッチ55Aのドレインとを接続している。第1B経路68Bは、第1オフ保持スイッチ55Aのソースと、第1スイッチSW1のソースに短絡されたソース端子KE1とを接続している。第1A経路68Aは、制御基板41のうち、第2方向において第1スイッチSW1のゲート端子G1よりも駆動制御部56側に設けられている。第1B経路68Bは、制御基板41のうち、第2方向において第1A経路68Aを挟んでゲート端子G1とは反対側に設けられている。
【0079】
制御基板41の第1面には、第2オフ保持経路Loff2を構成する第2A経路69A及び第2B経路69Bが設けられている。第2A経路69Aは、第2スイッチSW2のゲート端子G2と、第2オフ保持スイッチ55Bのドレインとを接続している。第2B経路69Bは、第2オフ保持スイッチ55Bのソースと、第2スイッチSW2のエミッタ端子KE2とを接続している。第2A経路69Aは、制御基板41のうち、第2方向において第2スイッチSW2のゲート端子G2を挟んで第1スイッチSW1のゲート端子G1とは反対側に設けられている。第2B経路69Bは、制御基板41のうち、第2方向において第1モジュール101の各端子K1,A1,G1,SE1,KE1と第2モジュール102の各端子K2,A2,G2,SE2,KE2との間の領域に設けられている。
【0080】
制御基板41の第1面には、第1充電経路Lch1、第2充電経路Lch2、第1放電経路Ldis1及び第2放電経路Ldis2が設けられている。なお、
図16では、各経路Lch1,Lch2,Ldis1,Ldis2上のスイッチ等の図示を省略している。
【0081】
第1放電経路Ldis1は、制御基板41のうち、第1B経路68Bを挟んで第1A経路68Aとは反対側に設けられている。第1充電経路Lch1は、制御基板41のうち、第1放電経路Ldis1を挟んで第1B経路68Bとは反対側に設けられている。
【0082】
第2充電経路Lch2及び第2放電経路Ldis2は、制御基板41のうち、第1方向において第2オフ保持スイッチ55Bを挟んで各ゲート端子G1,G2とは反対側の領域と、第1方向において第2オフ保持スイッチ55Bを挟んで駆動制御部56とは反対側の領域とに設けられている。
【0083】
なお、制御基板41の第1面の正面視において、信号経路72のうち、第2充電経路Lch2、第2放電経路Ldis2及び第2A経路69Aと交差する部分は、制御基板41の内層及びビアを介して各経路Lch2,Ldis2,69Aを跨いでいる。また、制御基板41の第1面の正面視において、第1充電経路Lch1及び第1放電経路Ldis1のうち第1B経路68Bと交差する部分は、制御基板41の内層及びビアを介して第1B経路68Bを跨いでいる。
【0084】
第1A経路68A及び第1B経路68Bの幅が、第2A経路69A及び第2B経路69Bの幅よりも大きい。これにより、第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも低くされている。
【0085】
第1充電経路Lch1の長さは、第2充電経路Lch2の長さよりも短い。また、第1充電経路Lch1を構成する配線パターンの幅は、第2充電経路Lch2を構成する配線パターンの幅よりも大きい。これにより、第1充電スイッチ51Aがオン状態とされている場合における第1充電経路Lch1のインピーダンスが、第2充電スイッチ51Bがオン状態とされている場合における第2充電経路Lch2のインピーダンスよりも低くされている。これにより、第1スイッチSW1のゲートの充電速度を第2スイッチSW2のゲートの充電速度よりも高めることができ、第1スイッチSW1をオン状態に切り替える場合のスイッチング速度を高めることができる。その結果、スイッチング損失を低減することができる。
【0086】
第1放電経路Ldis1の長さは、第2放電経路Ldis2の長さよりも短い。また、第1放電経路Ldis1を構成する配線パターンの幅は、第2放電経路Ldis2を構成する配線パターンの幅よりも大きい。これにより、第1放電スイッチ54Aがオン状態とされている場合における第1放電経路Ldis1のインピーダンスが、第2放電スイッチ54Bがオン状態とされている場合における第2放電経路Ldis2のインピーダンスよりも低くされている。これにより、第1スイッチSW1のゲートの放電速度を第2スイッチSW2のゲートの放電速度よりも高めることができ、第1スイッチSW1をオフ状態に切り替える場合のスイッチング速度を高めることができる。その結果、スイッチング損失を低減することができる。
【0087】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図17に示すように、第1オフ保持スイッチ55Aのオン抵抗RonAが、第2オフ保持スイッチ55Bのオン抵抗RonBよりも小さい。これにより、第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスに対して第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスをより低くできる。なお、
図17において、先の
図10に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、
図17に示す例では、第1オフ保持スイッチ55Aが第2オフ保持スイッチ55Bよりも大きい。これは、一般的に、チップサイズが大きい素子ほどオン抵抗が小さいためである。
【0088】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図18に示すように、オン状態にするための第1オフ保持スイッチ55Aのゲート電圧VGAが、オン状態にするための第2オフ保持スイッチ55Bのゲート電圧VGBよりも高い。第1オフ保持スイッチ55Aのゲート電圧VGAはその閾値電圧以上であり、第2オフ保持スイッチ55Bのゲート電圧VGBはその閾値電圧以上である。なお、第1オフ保持スイッチ55Aが低側スイッチに相当し、第2オフ保持スイッチ55Bが高側スイッチに相当する。また、
図18において、先の
図6に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0089】
本実施形態によれば、第1オフ保持スイッチ55Aのオン抵抗が第2オフ保持スイッチ55Bのオン抵抗よりも低くなる。このため、第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスを、第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも低くできる。
【0090】
なお、第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスを第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも低くできるなら、第1オフ保持経路Loff1の配線パターンの長さを第2オフ保持経路Loff2の配線パターンの長さよりも短くしたり、第1オフ保持経路Loff1の配線パターンの幅を第2オフ保持経路Loff2の配線パターンの幅よりも大きくしたりすることは必須ではない。
【0091】
<第7実施形態>
以下、第7実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、駆動制御部56は、第2スイッチSW2を最初にオン状態に切り替えてから、第1スイッチSW1をオン状態に切り替える。その後、駆動制御部56は、第1スイッチSW1を最初にオフ状態に切り替えてから、第2スイッチSW2をオフ状態に切り替える。これは、インバータ20の上下アームスイッチが同時にオン状態となる状態アーム短絡が生じた場合において、第1スイッチSW1の信頼性の低下を極力抑制するためである。つまり、第2スイッチSW2に流通可能なコレクタ電流Iceの最大値は、第1スイッチSW1に流通可能なドレイン電流Idsの最大値よりも大きい。第2スイッチSW2がオン状態に切り替えられた後、第1スイッチSW1がオン状態に切り替えられる前に短絡を検知できれば、第2スイッチSW2のオン状態への切り替えを禁止できる。この際、第2スイッチSW2に流通可能なコレクタ電流Iceの最大値が相対的に大きいため、短絡検知のための時間を確保できる。
【0092】
図19を用いて、本実施形態の効果について説明する。
図19(a)は第1スイッチSW1の駆動状態の推移を示し、
図19(b)は第2スイッチSW2の駆動状態の推移を示し、
図19(c)は第1オフ保持スイッチ55Aの駆動状態の推移を示し、
図19(d)は第2オフ保持スイッチ55Bの駆動状態の推移を示す。
【0093】
時刻t1において、第2充電スイッチ51Bがオン状態とされ、第2放電スイッチ54B及び第2オフ保持スイッチ55Bがオフ状態とされる。これにより、第2スイッチSW2がオン状態に切り替えられる。第2スイッチSW2のオン状態への切り替えに伴って、第1スイッチSW1のゲートに電荷が流れ込み、相対的に閾値電圧が低い第1スイッチSW1のセルフターンオンしてしまうおそれがある。ここで本実施形態では、第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも低くされている。このため、第2スイッチSW2のオン状態への切り替えに伴うゲート電圧Vgsの上昇を抑制し、セルフターンオンの発生を抑制できる。
【0094】
その後時刻t2において、第1充電スイッチ51Aがオン状態とされ、第1放電スイッチ54A及び第1オフ保持スイッチ55Aがオフ状態とされる。これにより、第1スイッチSW1がオン状態に切り替えられる。
【0095】
その後時刻t3において、第1充電スイッチ51Aがオフ状態とされ、第1放電スイッチ54Aがオン状態とされる。これにより、第1スイッチSW1のゲート電圧Vgsが閾値電圧Vth1未満となり、第1スイッチSW1がオフ状態に切り替えられる。また、第1スイッチSW1のゲート電圧Vgsが第1規定電圧以下になり、第1オフ保持スイッチ55Aがオン状態とされる。
【0096】
その後時刻t4において、第2充電スイッチ51Bがオフ状態とされ、第2放電スイッチ54Bがオン状態とされる。これにより、第2スイッチSW2のゲート電圧Vgeが閾値電圧Vth2未満となり、第2スイッチSW2がオフ状態に切り替えられる。また、第2スイッチSW2のゲート電圧Vgeが第2規定電圧以下になり、第2オフ保持スイッチ55Bがオン状態とされる。第2スイッチSW2のオフ状態への切り替えに伴って、第1スイッチSW1のゲートに電荷が流れ込み、相対的に閾値電圧が低い第1スイッチSW1のセルフターンオンしてしまうおそれがある。ここで本実施形態では、第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも低くされている。このため、第2スイッチSW2のオフ状態への切り替えに伴うゲート電圧Vgsの上昇を抑制し、セルフターンオンの発生を抑制できる。
【0097】
<第8実施形態>
以下、第8実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図20に示すように、インバータ20の上,下アームスイッチ部20H,20Lは、第1〜第3スイッチSW1〜SW3の並列接続体を備えている。なお、
図20において、先の
図6に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0098】
第3スイッチSW3は、第2スイッチSW2と同じIGBTである。第3スイッチSW3の閾値電圧Vth3は、第2スイッチSW2の閾値電圧Vth2と同じである。駆動回路Drは、第3充電スイッチ51C、第1充電抵抗体52C、第3放電抵抗体53C、第3放電スイッチ54C及び第3オフ保持スイッチ55Cを備えている。
【0099】
本実施形態において、第3スイッチSW3のゲートから第3オフ保持スイッチ55Cのドレインまでの電気経路と、第3オフ保持スイッチ55Cのドレイン及びソース間と、第3オフ保持スイッチ55Cのソースから第3スイッチSW3のソースまでの電気経路とが、第3スイッチSW3に対応する第3オフ保持経路Loff3である。
【0100】
本実施形態では、第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスと、第3オフ保持経路Loff3のインピーダンスとが同じである。また、第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが、第2,第3オフ保持経路Loff2,Loff3のインピーダンスよりも低くされている。
【0101】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
<第8実施形態の変形例1>
第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが、第2,第3オフ保持経路Loff2,Loff3のインピーダンスよりも低くされることを条件として、第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスと第3オフ保持経路Loff3のインピーダンスとが異なっていてもよい。
【0103】
<第8実施形態の変形例2>
第1〜第3スイッチSW1〜SW3の閾値電圧Vth1〜Vth3が互いに異なっていてもよい。以下、第1スイッチSW1の閾値電圧Vth1が第2スイッチSW2の閾値電圧Vth2よりも低く、第2スイッチSW2の閾値電圧Vth2が第3スイッチSW3の閾値電圧Vth3よりも低い場合を例にして説明する。
【0104】
第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスよりも低く、第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスが第3オフ保持経路Loff3のインピーダンスよりも低くされていてもよい。
【0105】
また、第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスが、第2,第3オフ保持経路Loff2,Loff3のインピーダンスよりも低くされることを条件として、第2オフ保持経路Loff2のインピーダンスが、第3オフ保持経路Loff3のインピーダンスと同じであってもよいし、第3オフ保持経路Loff3のインピーダンスと異なっていてもよい。
【0106】
<第9実施形態>
以下、第9実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図21に示すように、閾値電圧が相対的に高い第2スイッチSW2に対応する第2オフ保持経路Loff2が駆動回路Drに設けられていない。なお、
図21において、先の
図6に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0107】
本実施形態によれば、閾値電圧が相対的に低い第1スイッチSW1に対応する第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスを、閾値電圧が相対的に高い第2スイッチSW2に対応する第2放電経路Ldis2のインピーダンスよりも低くできる。具体的には、第1スイッチSW1の駆動指令がオフ指令とされてかつ第1オフ保持スイッチ55Aがオン状態とされている場合における第1オフ保持経路Loff1のインピーダンスを、第2スイッチSW2の駆動指令がオフ指令とされてかつ第2放電スイッチ54Bがオン状態とされている場合における第2放電経路Ldis2のインピーダンスよりも低くできる。
【0108】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0109】
・
図22に示すように、第1モジュール101の各端子K1,A1,G1,SE1,KE1と、第2モジュール102の各端子K2,A2,G2,SE2,KE2とが第1方向において並んでいてもよい。
【0110】
・第1モジュール101の各端子K1,A1,G1,SE1,KE1の並び順と、第2モジュール102の各端子K2,A2,G2,SE2,KE2の並び順とは、
図10及び
図22等に示した順序に限らない。
【0111】
・第1,第2スイッチSW1,SW2それぞれに対して駆動制御部が個別に設けられていてもよい。
【0112】
・オフ保持スイッチ及び駆動制御部が、制御基板41に設けられることなく、第1,第2モジュール101,102の少なくとも一方に内蔵されていてもよい。この場合、オフ保持スイッチ及び駆動制御部が第1スイッチSW1や第2スイッチSW2に近づくため、オフ保持経路のインピーダンスをより低くすることができる。
【0113】
また、
図23に示すように、オフ保持スイッチ及び駆動制御部のうち、オフ保持スイッチのみがモジュールに内蔵されていてもよい。少なくともオフ保持スイッチがモジュールに内蔵されている場合、第1,第2モジュール101,102から、第1,第2オフ保持スイッチ55A,55Bのゲートに短絡されている第1,第2オフ保持端子OFF1,OFF2が本体部から突出している。各オフ保持端子OFF1,OFF2は、制御基板41に電気的及び機械的に接続されている。この場合、第1,第2オフ保持スイッチ55A,55Bが第1,第2スイッチSW1,SW2に近づくため、オフ保持経路のインピーダンスをより低くすることができる。
【0114】
なお、第1,第2スイッチSW1,SW2のうちいずれか一方のみに対応するオフ保持スイッチが、モジュールに内蔵されていてもよい。
【0115】
・モジュールとしては、1つのスイッチが内蔵されているものに限らず、互いに並列接続された複数のスイッチが内蔵されているものであってもよい。
図24には、第1,第2スイッチSW1,SW2が1つのモジュール200に内蔵されている例を示す。なお、モジュール200の本体部200aからは、第1,第2パワー端子T1,T2が突出している。
【0116】
・モジュールに内蔵されるスイッチの組としては、互いに並列接続された第1,第2スイッチSW1,SW2に限らない。例えば、同相の上,下アームスイッチ部20H,20Lそれぞれの第1スイッチSW1の組が1つのモジュールに内蔵されたり、同相の上,下アームスイッチ部20H,20Lそれぞれの第2スイッチSW2の組が1つのモジュールに内蔵されたりしてもよい。
【0117】
・
図11に示した負電圧源57を備える構成は、第1実施形態以外の実施形態においても適用できる。
【0118】
・スイッチの並列接続数としては、4つ以上であってもよい。
【0119】
・並列接続されたスイッチの組み合わせとしては、NチャネルMOSFET及びIGBTの組み合わせに限らない。また、スイッチを備える電力変換器としては、3相のものに限らない。