(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1や2に開示されている製造方法で水晶振動素子を製造すると、外形形状が均一で、所定の位置に高精度で配置された励振電極を有するので、CIや温度特性等の仕様規格を十分満足する水晶振動素子を得ることができる。しかしながら、水晶振動素子が搭載される発振器の起動に影響を与える水晶振動素子のDLD(Drive Level Dependence)特性が非常に悪く、製造歩留りを著しく低下させるという課題があった。
そこで、フォトリソグラフィー技法とエッチング技法により大型の基板から複数個の振動素子を製造する方法において、DLD特性検査の歩留りを向上することを可能とする、小型の振動素子および振動素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る振動素子は、基板と、前記基板の表面と直交する方向から視た場合に、前記表面に設けられている下層の導電層、前記下層の導電層の表面に設けられ、且つ下層の導電層の外縁内に収まる形状である上層の導電層からなる電極と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、厚み滑り振動で励振する振動素子において、DLD特性の劣化要因となる電極の上層の導電層と下層の導電層との間に密着していない空隙部がないので、DLD特性の劣化を防止でき、DLD特性検査の歩留りを向上した、振動素子が得られるという効果がある。
【0009】
[適用例2]上記適用例に記載の振動素子において、前記基板の表面と直交する方向から視た場合に、前記上層の導電層の外形は、前記下層の導電層の外形よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、電極の上層の導電層と下層の導電層とが全て密着しているので、DLD特性の劣化を防止でき、DLD特性検査の歩留りを向上した、振動素子が得られるという効果がある。
【0011】
[適用例3]上記適用例に記載の振動素子において、前記電極は励振電極であることを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、上層の導電層と下層の導電層とが全て密着した電極を励振電極とし用いているので、DLD特性の劣化を防止でき、安定した共振特性を有する振動素子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例4]上記適用例に記載の振動素子において、前記基板は、厚み滑り振動で振動する基板であることを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、厚み滑り振動は小型化、高周波数化に適し、且つ優れた三次曲線を有する周波数温度特性が得られるので、小型、高周波で周波数温度特性に優れた振動素子が得られるという効果がある。
【0015】
[適用例5]上記適用例に記載の振動素子において、厚み滑り振動で振動する振動部と、前記振動部の外縁と一体化され、前記振動部の厚みよりも薄い外縁部と、を含むことを特徴とする。
【0016】
本適用例によれば、振動部がメサ構造であるため、輪郭系スプリアスとの結合を回避し、主振動のみの振動エネルギーを閉じ込めることができるため、CIが小さく、共振周波数近傍のスプリアスを抑制した振動素子が得られるという効果がある。
【0017】
[適用例6]上記適用例に記載の振動素子において、厚み滑り振動で振動する振動部と、前記振動部の外縁と一体化され、前記振動部の厚みよりも厚い外縁部と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、振動部が非常に薄い高周波の振動素子であっても、振動部と一体化された厚い外縁部でマウントができるので、耐衝撃性や耐振動性に優れた高信頼性を有する振動素子が得られるという効果がある。
【0019】
[適用例7]本適用例に係る振動子は、上記適用例に記載の振動素子と、該振動素子を収容するパッケージと、を備えていることを特徴とする。
【0020】
本適用例によれば、振動素子をパッケージに収容することで、温度変化や湿度変化等の外乱の影響や汚染による影響を防ぐことができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性および周波数エージング特性に優れ、DLD特性の良好な小型の振動子が得られるという効果がある。
【0021】
[適用例8]本適用例に係る電子デバイスは、上記適用例に記載の振動素子と、電子素子と、前記振動素子および前記電子素子を搭載するパッケージと、を備えていることを特徴とする。
【0022】
本適用例によれば、DLD特性の良好な振動素子を各種の電子素子を用いて構成した発振回路に搭載することにより、起動特性に優れた発振器等の電子デバイスが得られるという効果がある。
【0023】
[適用例9]上記適用例に記載の電子デバイスにおいて、前記電子素子が、サーミスター、コンデンサー、リアクタンス素子、および半導体素子の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0024】
本適用例によれば、周波数温度特性に優れ、DLD特性の良好な振動素子を各種の電子素子を用いて構成した温度補償回路や電圧制御回路を含む発振回路に搭載することにより、起動特性に優れた小型の温度補償型発振器や電圧制御型発振器等の電子デバイスが得られるという効果がある。
【0025】
[適用例10]本適用例に係る電子機器は、上記適用例に記載の振動素子を備えていることを特徴とする。
【0026】
本適用例によれば、DLD特性の良好な振動素子をCOB(Chip On Board)技術により、直接実装基板へ実装できるので、実装面積が小さくなり、発振の起動特性に優れ、良好な基準周波数源を備えた小型の電子機器が構成できるという効果がある。
【0027】
[適用例11]上記適用例に記載の電子機器において、上記適用例に記載の振動子を備えていることを特徴とする。
【0028】
本適用例によれば、CIや温度特性等の仕様規格を十分満足し、且つDLD特性の良好な振動素子を有する振動子を用い、発振の起動特性に優れ、良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
【0029】
[適用例12]上記適用例に記載の電子機器において、上記適用例に記載の電子デバイスを備えていることを特徴とする。
【0030】
本適用例によれば、CIや温度特性等の仕様規格を十分満足し、且つDLD特性の良好な振動素子を有する電子デバイスを電子機器に用いることにより、発振の起動特性に優れ、良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
【0031】
[適用例13]本適用例に係る移動体は、上記適用例に記載の振動素子を備えていることを特徴とする。
【0032】
本適用例によれば、周波数温度特性の良好な振動素子を用いることで、安定な基準周波数源が構成でき、安定で正確な電子制御ユニットを備えた移動体が構成できるという効果がある。
【0033】
[適用例14]本適用例に係る振動素子の製造方法は、材料の異なる二層以上の導電層が積層されている基板を準備する工程と、積層されている前記導電層の内の上層の導電層をエッチング加工する工程と、前記上層の導電層より前記基板側に設けられている下層の導電層をエッチング加工する工程と、前記エッチング加工されている前記上層の導電層を前記下層の導電層よりも前記上層の導電層に対してエッチン速度が大きいエッチング溶液でエッチング加工する工程と、を含むことを特徴とする。
【0034】
本適用例によれば、励振電極の下層の導電層をエッチングする際に生じた上層の導電層のアンダーエッチング部分を、再度上層の導電層の側面をエッチングする工程を行うことで除去することができるので、上層の導電層と下層の導電層との密着性を高め、DLD特性の良好な振動素子を製造できるという効果がある。
【0035】
[適用例15]上記適用例に記載の振動素子の製造方法において、前記上層の導電層をエッチング加工する工程にて使用されるエッチング液に対し、前記下層の導電層のエッチング速度は、前記上層の導電層のエッチング速度よりも遅く、前記下層の導電層をエッチング加工する工程にて使用されるエッチング液に対し、前記上層の導電層のエッチング速度は、前記下層の導電層のエッチング速度よりも遅いことを特徴とする。
【0036】
本適用例によれば、上層の導電層と下層の導電層とを選択的にエッチングできるため、夫々の導電層の外形寸法精度の高い励振電極が形成でき、諸特性のばらつきが小さく、DLD特性の良好な小型の振動素子を製造できるという効果がある。
【0037】
[適用例16]上記適用例に記載の振動素子の製造方法において、前記上層の導電層と前記下層の導電層は材料が異なることを特徴とする。
【0038】
本適用例によれば、上層の導電層と下層の導電層の材料が異なることで、夫々の導電層に対応したエッチング液を用いることができるので、夫々の導電層を選択的にエッチングし、外形寸法精度の高い励振電極が形成でき、諸特性のばらつきが小さく、DLD特性の良好な小型の振動素子を製造できるという効果がある。
【0039】
[適用例17]上記適用例に記載の振動素子の製造方法において、前記上層の導電層の材料が、Au、Ag、Ptのいずれかであり、前記下層の導電層の材料が、Cr、Ni、Ti、NiCr合金のいずれかであることを特徴とする。
【0040】
本適用例によれば、上層の導電層と下層の導電層との材料を使用目的に適した周波数温度特性やCIを有するように組み合わせることができるので、優れた周波数温度特性を有し、CIの小さい小型の振動素子を製造できるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る振動素子の構成を示す概略図であり、
図1(a)は振動素子の平面図、
図1(b)は
図1(a)のP−P断面図である。
【0043】
(振動素子の構成)
振動素子1は、振動部12を有する基板10と、基板10の両主面(±Y’方向の表裏面)に夫々対向するように積層された下位層の導電層としての下地電極層29と、最上位層の導電層としての電極層28と、を有している。なお、本実施形態では、二層の導電層が積層された構成で説明する。
振動素子1は、下地電極層29と電極層28とを含む励振電極20と、リード電極23と、パッド電極24と、接続電極26と、を備えている。
励振電極20は、振動部12を駆動する電極であり、振動部12の両主面(±Y’方向の表裏面)のほぼ中央部に夫々対向して形成されている。励振電極20は電極層28の一部である主電極21と下地電極層29の一部である主電極下地部22を含み、主電極21の外縁が主電極下地部22の外縁内に収まるように形成されている。
リード電極23は、励振電極20から延出されて基板10の端部に形成されたパッド電極24に導通接続されている。
パッド電極24は、基板10の両主面の端部に夫々対向して形成されている。両主面のパッド電極24は、基板10の側面部13に形成された接続電極26により導通接続されている。
【0044】
図1(a)に示した実施形態では、振動部12のほぼ中央部の主面に夫々対向して形成された励振電極20の形状が矩形の例を示したが、これに限定する必要はなく、励振電極の形状は円形や楕円形であってもよい。
また、励振電極20、リード電極23、パッド電極24および接続電極26は、蒸着装置、或いはスパッタ装置等を用いて、例えば、下位層にクロム(Cr)を成膜し、最上位層に金(Au)を重ねて成膜してある。なお、電極材料として、下位層にクロム(Cr)の代わりにニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ニッケルクロム合金(NiCr)、また、最上位層に金(Au)の代わりに銀(Ag)、白金(Pt)を用いても構わない。
更に、二層の導電層が積層された構成で説明したが、これに限らない。三層以上が積層された構成であってもよい。
【0045】
基板10が圧電材料である場合、振動素子1は、パッド電極24から入力された励振電流によって、励振電極20との間の振動部12に電界が生じ、圧電効果により振動部12が振動する。基板10を、三方晶系の圧電材料に属する水晶を用いて形成する場合、
図2に示すように、互いに直交する結晶軸X,Y,Zを有する。X軸は電気軸、Y軸は機械軸、Z軸は光学軸と、夫々呼称され、XZ面をX軸の回りに所定の角度θだけ回転させた平面に沿って切り出された、所謂回転Yカット水晶基板からなる平板が基板10として用いられる。
【0046】
例えば、回転Yカット水晶基板がATカット水晶基板の場合、角度θは35.25°(35°15′)である。ここで、Y軸とZ軸とをX軸の回りに角度θ回転させ、Y’軸およびZ’軸とすると、ATカット水晶基板は、直交する結晶軸X,Y’,Z’を有する。従ってATカット水晶基板は、厚み方向がY’軸であり、Y’軸に直交するX軸とZ’軸を含む面が主面であり、主面に厚み滑り振動が主振動として励振される。このように形成されるATカット水晶基板から基板10が形成される。なお、本実施形態に係る基板10は、
図2に示す角度θが35.25°のATカットに限定されず、例えば、厚み滑り振動を励振するBTカット等の基板10であってもよい。
【0047】
(振動素子の製造方法)
次に、本発明の一実施形態に係る振動素子の製造方法について、
図3のフローチャートを参照しながら説明する。振動素子1は量産性や製造コストを考慮し、大型基板から複数個の振動素子1をバッチ処理方式で製造されるのが一般的である。ここでは、一個の振動素子1の概略断面図で説明する。製造工程は、振動素子1の外形形状を形成する外形形成工程と、振動素子1の基板10の両主面に電極パターンを形成する電極形成工程と、で構成されている。
外形形成工程は、先ず、基板10を純水で洗浄し(ST11)、続いて、基板10の表裏面に、下地膜34が設けられる。これは耐食膜36となる金(Au)が基板10への付着性が弱いことを補うために設けられ、下地膜34としては、例えば、スパッタリングや蒸着等によりクロム(Cr)が成膜されている。その上には、耐食膜36として金(Au)をスパッタリング又は蒸着等により成膜する(ST12)。
次に、耐食膜36の表面全体にレジスト32を塗布し(ST13)、露光・現像することで、振動素子外形マスクを形成する(ST14)。
【0048】
続いて、マスク開口から露出した耐食膜36である金(Au)を、例えば、よう化カリウム溶液を用いて、エッチングし、次いで、硝酸2セリウムアンモニウム溶液により、下地膜34であるクロム(Cr)をエッチングする(ST15)。
ここで、耐食膜36である金(Au)のエッチング液であるよう化カリウム溶液は、金(Au)を選択的にエッチングし、下地膜34であるクロム(Cr)をエッチングしない、または、エッチングしたとしてもエッチング速度は金(Au)の1/10以下である。
また、下地膜34であるクロム(Cr)のエッチング液である硝酸2セリウムアンモニウム溶液についても、クロム(Cr)を選択的にエッチングし、耐食膜36である金(Au)をエッチングしない、または、エッチングしたとしてもエッチング速度はクロム(Cr)の1/10以下である。
従って、上層の耐食膜36と下層の下地膜34とを選択的にエッチングできるため、高い寸法精度の外形マスクが形成でき、高精度の外形寸法を有する振動素子1を得ることが可能となる。
次に、マスク開口から露出した基板10を、例えば水晶基板の場合には、フッ化アンモニウム溶液等を用いてエッチングする(ST16)。これにより、
図1(a)に示すように、振動素子1の外形が形成される。
続いて、レジスト32を剥離し、2種類の前記溶液を用いて耐食膜36および下地膜34を全て除去する(ST17)。
【0049】
次に、電極形成工程を説明する。電極形成についても外形形成と同様に、基板10の表裏面に、最上位層の導電層としての電極層28である金(Au)と基板10の付着性を高めるためのクロム(Cr)を下位層の導電層としての下地電極層29とを、クロム(Cr)、金(Au)の順番でスパッタリング又は蒸着等により成膜する(ST18)。
次に、電極層28の表面全体にレジスト32を塗布し(ST19)、露光・現像することで、励振電極マスクを形成する(ST20)。
続いて、励振電極20用の金(Au)、クロム(Cr)のエッチングも外形形成工程で用いた溶液でエッチングする。先ず、電極層28となる金(Au)をエッチングし(ST21)、その後、下地電極層29のクロム(Cr)をエッチングする(ST22)。この時に、電極層28と基板10との間に空隙部70が生じてしまうので、次に、この空隙部70を除去するために、再び電極層28となる金(Au)をエッチングする(ST23)。
ここで、電極層28と下地電極層29とを選択的にエッチングできるエッチング液を用いているため、高精度の外形寸法を有する振動素子が得られるのと同様に、高精度の外形寸法を有する励振電極20を得ることが可能である。
その後、レジスト32を剥離し(ST24)、振動素子1を完成させている。
【0050】
従来の製造方法では、下地電極層29のクロム(Cr)をエッチングした後、レジスト32を剥離し(ST24に相当する)、振動素子1を完成させていた。そのため、電極層28と基板10との間に空隙部70を有した振動素子1であった。
上述した実施形態の製造方法では、下地電極層29のクロム(Cr)のエッチング(ST22)後に、再び電極層28となる金(Au)をエッチングする(ST23)。
これにより、下地電極層29のクロム(Cr)をエッチングした後に、電極層28と基板10との間に生じる空隙部70をなくすことができる。この空隙部70がなくなることについて次に説明する。
【0051】
図4は本発明の一実施形態に係る振動素子の電極の構成を説明する拡大断面図であり、
図4(a)は本実施形態に係る製造方法により製造した振動素子の断面図、
図4(b)は従来の製造方法により製造した振動素子の断面図である。
図4(b)に示す従来の如き製造方法により製造された振動素子200では、主電極221と基板210との間に空隙部270があるのに対し、
図4(a)の本実施形態に係る製造方法における振動素子1では、
図3(ST22)に示す空隙部70が生じていない。従来の製造方法で主電極221と基板210との間に空隙部270が生じる要因は、成膜した金属材料が等方性であり、エッチングの際に基板面に垂直な方向だけでなく、基板に平行な方向にもエッチングが進行することにより主電極下地部222の側壁面もエッチングが進行してしまうという現象であるサイドエッチングやエッチング液がマスクの下に回り込んだ腐食現象であるアンダーカットが起こるためである。従って、下地電極層29の一部である主電極下地部222はクロム(Cr)エッチングにおいて、マスクとなる主電極221よりも外形形状(外縁)が小さくなり空隙部270を生じる。この空隙部270がDLD特性を非常に悪くし、製造歩留りを著しく低下させていることが本願発明者らの研究や実験と解析により判明した。
【0052】
そのため、本実施形態に係る製造方法では、主電極下地部22のクロム(Cr)エッチング(
図3に示すST22)後に、空隙部70により主電極下地部22の外形よりも外側へ突出した領域の主電極21である金(Au)を再度エッチングする(
図3に示すST23)工程を追加した。この再度エッチング(ST23)により、少なくとも前記突出した領域の金(Au)が除去されることによって、空隙部70がなくなる。これにより、主電極21の外縁が主電極下地部22の外縁よりも内側に収まるようになり、主電極21と主電極下地部22との界面の全域において、主電極21が主電極下地部22に密着した励振電極20を形成することを実現した。
なお、ここでは
図1に示す励振電極20を例に説明したが他の電極(リード電極23、パッド電極24、接続電極26)においても同様な電極構成とすることが好ましい。
【0053】
図5は本発明の一実施形態に係る製造方法により製造した振動素子のDLD特性であり、
図5(a)は周波数変化量、
図5(b)はCI変化量である。
また、
図6は従来の製造方法により製造した振動素子のDLD特性であり、
図6(a)は周波数変化量、
図6(b)はCI変化量である。
図5と
図6より、本実施形態に係る製造方法による振動素子1のDLD特性は、従来の製造方法のものに比べ、周波数とCI共にばらつきが小さく、安定している。
これまで、DLD特性の劣化は、振動素子1の加工時に起こる基板への残留応力や汚染等の発生が原因と言われていた。残留応力については、フォトリソ技術による外形加工を施しているためその影響は極力小さいものと考えられ、汚染についてもクリーンルーム内での作業や組み立て時にオーバードライブ(強励振駆動)により金属膜片や基板片を除去する工程を行っていることから影響は小さいものと考えられる。
しかし、従来の如き製造方法により製造された振動素子200のDLD特性が大きくばらつく要因は、主電極221と基板210との間に生じた空隙部270による影響が大きいことが本願発明者らの研究によって明らかとなってきた。つまり、主電極下地部222が除去されてしまった空隙部270周辺の主電極221の一部があたかも金属片、金属粉などの異物が付着した状態と同様な状態となり、励振時に振動エネルギーを漏洩し、周波数変化やCI変化を生じさせたものと考えられる。
従って、主電極下地部22のクロム(Cr)をエッチング(ST22)後に、再び主電極21となる金(Au)をエッチングする(ST23)工程を追加した本実施形態に係る製造方法は、DLD特性を劣化すると予想される主電極下地部22と密着しない主電極21を生じさせないので、振動素子1のDLD特性検査の歩留りを向上させ、DLD特性の非常に優れた振動素子を製造できるという非常に大きな効果を発揮する。
【0054】
図7は、本発明の一実施形態に係る振動素子の構成を示す概略図であり、
図7(a)は振動素子の平面図、
図7(b)は
図1(a)のP−P断面図である。
振動素子2は、振動部12を有する基板10と、基板10の両主面(±Y’方向の表裏面)に夫々対向するように積層された下位層の導電層としての下地電極層29と、最上位層の導電層としての電極層28と、を有している。
振動素子2は、基板10と、下地電極層29と電極層28とを含む励振電極20と、リード電極23と、パッド電極24と、接続電極26と、を備えている。
基板10は、振動部12と、振動部12より板厚の薄い薄肉部14と、を備えている。
励振電極20は、振動部12を駆動する電極であり、振動部12の両主面(±Y’方向の表裏面)のほぼ中央部に夫々対向して形成されている。励振電極20は電極層28の一部である主電極21と下地電極層29の一部である主電極下地部22を含み、主電極21の外縁が主電極下地部22の外縁内に収まるように形成されている。
リード電極23は、励振電極20から延出されて基板10の端部に形成されたパッド電極24に導通接続されている。
パッド電極24は、基板10の薄肉部14の両主面の端部に夫々対向して形成されている。両主面のパッド電極24は、基板10の側面部13に形成された接続電極26により導通接続されている。
【0055】
図7(a)に示した実施形態では、振動部12のほぼ中央部の主面に夫々対向して形成された励振電極20の形状が矩形の例を示したが、これに限定する必要はなく、励振電極20の形状は円形や楕円形であってもよい。
また、基板10の表裏両主面に段差が1段のメサ部16の例を示したが、これに限定する必要はなく、基板10の表裏両主面に多段のメサ形状や基板10の表または裏の主面のどちらか一方に1段から多段のメサ形状を有していてもよい。更に、メサ部16の形状が矩形の例を示したが、これに限定する必要はなく、メサ部16の形状も円形や楕円形であってもよい。
図7に示すように、振動部12にメサ部16を有するメサ構造の基板10とすると、輪郭系スプリアスとの結合を回避し、主振動のみの振動エネルギーを閉じ込めることができるため、CIが小さく、共振周波数近傍のスプリアスを抑制した小型の振動素子2が得られるという効果がある。
【0056】
図8は、本発明の一実施形態に係る振動素子の別の構造を示す概略図であり、
図8(a)は変形例1の平面図、
図8(b)は変形例2の平面図、
図8(c)は変形例3の平面図である。
図8(a)は
図7に示す本実施の形態の第1の変形例を示したものであり、基板10の表裏両主面に形成された励振電極20とメサ部16のX軸方向とZ’軸方向の長さがともにメサ部16に比べ励振電極20の方が長い場合である。
図8(b)は第2の変形例であり、励振電極20とメサ部16のZ’軸方向の長さがほぼ同等で、X軸方向の長さは励振電極20が長い場合である。
図8(c)は第3の変形例であり、励振電極20とメサ部16のX軸方向の長さがほぼ同等で、Z’軸方向の長さは励振電極20が長い場合である。
図8(a)〜
図8(c)は
図7に比べ、励振電極20の面積が大きくすることができるため、振動子の容量比を小さくすることができる。そのため、発振器に用いた場合、周波数調整量や周波数可変量を拡大することができるという効果がある。
【0057】
図9は、本発明の一実施形態に係る振動素子の変形例4の構造を示す概略図であり、
図9(a)は振動素子の平面図、
図9(b)は
図9(a)のP−P断面図である。
振動素子3は、振動部12を有する基板10と、基板10の両主面(±Y’方向の表裏面)に夫々対向するように積層された下位層の導電層としての下地電極層29と、最上位層の導電層としての電極層28と、を有している。
振動素子3は、基板10と、下地電極層29と電極層28とを含む励振電極20と、リード電極23と、パッド電極24と、接続電極26と、を備えている。
基板10は、振動部12と、振動部12より板厚の厚い厚肉部15と、を備えている。
励振電極20は、振動部12を駆動する電極であり、振動部12の両主面(±Y’方向の表裏面)のほぼ中央部に夫々対向して形成されている。励振電極20は電極層28の一部である主電極21と下地電極層29の一部である主電極下地部22を含み、主電極21の外縁が主電極下地部22の外縁内に収まるように形成されている。
リード電極23は、励振電極20から延出されて基板10の端部に形成されたパッド電極24に導通接続されている。
パッド電極24は、基板10の厚肉部15の両主面の端部に夫々対向して形成されている。両主面のパッド電極24は、基板10の側面部13に形成された接続電極26により導通接続されている。
【0058】
図9(a)に示した実施形態では、振動部12のほぼ中央部の主面に夫々対向して形成された励振電極20の形状と面積が同一の矩形の例を示したが、これに限定する必要はなく、励振電極20の形状と面積が上下で異なり、形状も円形や楕円形であってもよい。
また、基板10のほぼ中央に形成された凹陥部17は、基板10の片面からエッチングにより形成されているが、基板10の両面からエッチングを施し、夫々対向して凹陥部17を形成してもよい。
図9に示すように、凹陥部17を振動部12とする逆メサ構造の基板10とすることで、振動部12を非常に薄くできるため共振周波数の高周波化が可能となり、また、振動部12と一体化された厚肉部15でマウントすることができるので、耐衝撃性や耐振動性に優れた高信頼性で高周波の振動素子3が得られるという効果がある。
【0059】
図10は本発明の一実施形態に係る振動子の構成を示す概略図であり、
図10(a)は蓋部材を省略した平面図であり、
図10(b)は縦断面図である。振動子5は、振動素子1と、振動素子1を収容するために矩形の箱状に形成されているパッケージ本体40と、金属、セラミック、ガラス等から成る蓋部材49と、等で構成されている。
パッケージ本体40は、
図10に示すように、第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43と、シールリング44と、実装端子45と、を積層して形成されている。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。第3の基板43は中央部が除去された環状体であり、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等のシールリング44が形成されている。
第3の基板43と第2の基板42とにより、振動素子1を収容するキャビティー84が形成される。第2の基板42の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。素子搭載パッド47は、振動素子1を載置した際に基板10の端部に形成したパッド電極24に対応するように配置されている。
【0060】
振動素子1を支持固定する際には、先ず、振動素子1のパッド電極24を導電性接着剤30が塗布された素子搭載パッド47に載置して荷重をかける。
次に、導電性接着剤30を硬化させるために、所定の温度の高温炉に所定の時間入れる。導電性接着剤30を硬化させた後、アニール処理を施し、励振電極20に質量を付加するか、又は質量を減じて周波数調整を行う。その後、パッケージ本体40の第3の基板43の上面に形成したシールリング44上に、蓋部材49を載置し、真空中、又は窒素ガスの雰囲気中で蓋部材49をシーム溶接して密封し、振動子5が完成する。
又は、パッケージ本体40の上面に塗布した低融点ガラスに蓋部材49を載置し、溶融して密着する方法もある。この場合もパッケージのキャビティ内は真空にするか、又は窒素ガス等の不活性ガスで充填して、振動子5が完成する。
以上の振動子5の実施形態では、パッケージ本体40に積層板を用いた例を説明したが、パッケージ本体40に単層セラミック板を用い、蓋体に絞り加工を施したキャップを用いて振動子5を構成してもよい。
【0061】
図11は本発明の一実施形態に係る電子デバイスの構成を示す概略図であって、
図11(a)は蓋部材を省略した平面図であり、
図11(b)は縦断面図である。
電子デバイス7は、パッケージ本体50と、蓋部材49と、振動素子1と、振動素子1を励振する発振回路を搭載したIC部品51と、電圧により容量が変化する可変容量素子、温度により抵抗が変化するサーミスター、インダクター等の電子部品52の少なくとも1つと、を備えている。
パッケージ本体50は、
図11に示すように、第1の基板61と、第2の基板62と、第3の基板63と、を積層して形成されている。実装端子45は、第1の基板61の外部底面に複数形成されている。第2の基板62と第3の基板63とは中央部が除去された環状体で形成されている。
第1の基板61と、第2の基板62と、第3の基板63と、により、振動素子1、IC部品51、および電子部品52等を収容するキャビティー84が形成される。第2の基板62の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。素子搭載パッド47の位置は、振動素子1を載置した際に基板10の端部に形成したパッド電極24に対応するように配置されている。
【0062】
振動素子1のパッド電極24を、導電性接着剤30を塗布したパッケージ本体50の素子搭載パッド47に載置し、所定の温度で導電性接着剤30を硬化させることで、パッド電極24と素子搭載パッド47との導通を図る。IC部品51をパッケージ本体50の所定の位置に固定し、IC部品51の端子と、パッケージ本体50の電極端子55とをボンディングワイヤーBWにて接続する。また、電子部品52は、パッケージ本体50の所定の位置に載置し、金属バンプ等を用いて導体46に接続する。パッケージ本体50を真空、或いは窒素等の不活性気体で満たし、パッケージ本体50を蓋部材49で密封して電子デバイス7を完成する。
図11に示すように、DLD特性の良好な振動素子1を用いているので、起動特性に優れた小型の電子デバイス7が得られる。
また、電子デバイス7として、小型の発振器、温度補償型発振器、電圧制御型発振器等を構成することができる。
【0063】
次に、本実施形態に係る別の電子デバイスについて、図面を参照しながら説明する。
図12(a)は、
図11の変形例の電子デバイス8の断面図である。電子デバイス8は、本発明の振動素子1と、感温素子であるサーミスター53と、振動素子1およびサーミスター53を収容するパッケージ82と、を概略備えている。パッケージ82は、パッケージ本体80と、蓋部材49とを備えている。パッケージ本体80は、上面側に振動素子1を収容するキャビティー84が形成され、下面側にサーミスター53を収容する凹部86が形成されている。キャビティー84の内底面の端部に複数の素子搭載パッド47が設けられ、各素子搭載パッド47は導体46で複数の実装端子45と導通接続されている。素子搭載パッド47に導電性接着剤30を塗布し、この導電性接着剤30の上に振動素子1を載置して、パッド電極24と、各素子搭載パッド47とを導電性接着剤30を介して電気的に接続し、固定する。パッケージ本体80の上部には、シールリング44が焼成されており、このシールリング44に蓋部材49を載置し、抵抗溶接機を用いて溶接し、キャビティー84を気密封止する。キャビティー84内は真空にしてもよいし、不活性ガスを封入してもよい。
一方、パッケージ本体80の下面側略中央には凹部86が形成され、凹部86の上面には電子部品搭載パッド48が焼成されている。電子部品搭載パッド48にサーミスター53を搭載し、半田等を用いて導通接続して電子デバイス8を構成する。なお、電子部品搭載パッド48は、導体46で複数の実装端子45と導通接続されている。
【0064】
図12(b)は、
図12(a)の変形例の電子デバイス9であって、電子デバイス8と異なる点は、パッケージ本体80のキャビティー84の底面に凹部86が形成されており、この凹部86の底面に焼成された電子部品搭載パッド48に、金属バンプ等を介してサーミスター53が接続されている所である。電子部品搭載パッド48は実装端子45と導通されている。つまり、振動素子1と感温素子のサーミスター53とが、キャビティー84内に収容され、気密封止されている。
以上では、振動素子1とサーミスター53とをパッケージ82に収容した例を説明したが、パッケージ82に収容する電子部品としては、サーミスター、コンデンサー、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つを収容した電子デバイス9を構成することが望ましい。
上記のように振動素子を製作できるので電子デバイスの納期を大幅に短縮することが可能となる。また、上記の振動素子と、サーミスター、コンデンサー、リアクタンス素子、半導体素子等を組み合わせることにより、多様な仕様の要求に素早く対応できるという効果がある。
【0065】
次いで、本発明の一実施形態に係る振動素子を適用した電子機器(本発明の電子機器)について、
図13〜
図15に基づき、詳細に説明する。
図13は、本発明の一実施形態に係る振動素子を備える電子機器としてのモバイル型(又はノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部100を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、フィルター、共振器、基準クロック等の少なくとも一つとして機能する振動素子1が内蔵されている。
【0066】
図14は、本発明の一実施形態に係る振動素子を備える電子機器としての携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部100が配置されている。このような携帯電話機1200には、フィルター、共振器等として機能する振動素子1が内蔵されている。
【0067】
図15は、本発明の一実施形態に係る振動素子を備える電子機器としてのデジタルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、デジタルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
デジタルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部100が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部100は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCD等を含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部100に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。また、このデジタルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、夫々必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。このようなデジタルカメラ1300には、フィルター、共振器等として機能する振動素子1が内蔵されている。
【0068】
なお、本発明の一実施形態に係る振動素子を備える電子機器は、
図13のパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、
図14の携帯電話機、
図15のデジタルカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等に適用することができる。
【0069】
図16は移動体の一具体例としての自動車106を概略的に示す。自動車106には本発明に係る振動素子を有する振動子や電子デバイスが搭載されている。
例えば、キーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS:Antilock Brake System)、エアバック、タイヤプレッシャーモニタリングシステム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム、等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)108に広く適用できる。