(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸入管は、その先端が前記第1シリンダに対して前記第2シリンダとは反対側に配置された前記端板部材内に位置するように当該端板部材に挿入可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のロータリ圧縮機。
前記複数のシリンダにおいて、当該シリンダの前記軸方向についての高さと当該シリンダの前記圧縮室に配置された前記ピストンの前記軸方向についての高さとの差は、当該シリンダにおいて前記吸入通路に面した領域の表面積が小さいほど小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のロータリ圧縮機。
前記複数のシリンダのいずれについても、当該シリンダの前記軸方向についての高さをHc(mm)、当該シリンダに形成された前記圧縮室の内部に配置された前記ピストンの前記軸方向についての高さをHp(mm)、当該シリンダにおける前記吸入通路に面した領域の表面積をAs(mm2)、当該シリンダにおける前記吸入通路の前記軸方向と直交する方向についての長さをLs(mm)としたときに、
3.9×0.0001≦(Hc−Hp)/Hc−1.4×0.0001×As/(Hc・Ls)≦6.7×0.0001
が満たされることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のロータリ圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
まず、
図1−
図3を参照しつつ第1実施形態にかかるロータリ圧縮機1について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る圧縮機1は、2シリンダ型のロータリ圧縮機であって、密閉容器2と、密閉容器2内に収容された駆動機構3および圧縮機構4とを有している。密閉容器2は、上下両端が塞がれた円筒状の容器である。密閉容器2の側方には、アキュムレータ5が取り付けられている。アキュムレータ5は、冷媒を導入するための1本の吸入管6により、圧縮機構4に接続されている。密閉容器2の上部には、圧縮機構4で圧縮された冷媒を排出するための排出管7が設けられている。密閉容器2の底部には潤滑油が溜められている。
【0016】
圧縮機1は、例えば空気調和機などにおいて冷凍サイクルに組み込まれて使用され、吸入管6から供給される冷媒を圧縮して排出管7から排出する。圧縮機1では、冷媒として、例えばR32やR410Aが使用されている。圧縮機1は、
図1に示す向き、即ち、圧縮機1の軸方向(後述する駆動軸3bの軸方向と同じ)が上下方向となる向きに設置される。
【0017】
駆動機構3は、圧縮機構4を駆動するために設けられており、駆動源となるモータ3aと、モータ3aに取り付けられた駆動軸3bとで構成されている。モータ3aは、密閉容器2の内周面に固定された略円環状の固定子3aaと、固定子3aaの径方向内側にエアギャップを介して配置された略円環状の回転子3abとを含む。回転子3abは磁石(図示省略)を有し、固定子3aaはコイル(図示省略)を有している。
【0018】
駆動軸3bは、回転子3abの内周面に固定されており、回転子3abと一体的に自転して圧縮機構4を駆動する。駆動軸3bは、後述する圧縮室31内と圧縮室51内とに、偏心部3c、3dをそれぞれ有している(
図2A、
図2B及び
図3参照)。偏心部3c、3dは、いずれも円柱状に形成されており、その中心軸が駆動軸3bの回転中心に対して偏心している。偏心部3c、3dには、圧縮機構4のピストン32、52がそれぞれ装着されている。
【0019】
また、駆動軸3bの下側略半分の内部には、給油路(図示省略)が形成されている。給油路は、上下方向に延在するとともに数箇所で駆動軸3bの径方向に枝分かれしている。駆動軸3bの下端には、駆動軸3bの回転に伴って潤滑油を給油路内に吸い上げる螺旋羽根形状のポンプ部材(図示省略)が取り付けられている。ポンプ部材によって駆動軸3bの下端から吸い上げられた潤滑油は、駆動軸3bの側面から排出されて、例えば圧縮室31、51など圧縮機構4の各摺動部に供給される。
【0020】
圧縮機構4は、上マフラ10a、10bと、上ヘッド20(端板部材)と、上シリンダ30(シリンダ)と、ミドルプレート40(端板部材)と、下シリンダ50(シリンダ)と、下ヘッド60(端板部材)と、下マフラ70とを含んでいる。これらは、駆動軸3bの軸方向に沿って、上から下に向かって順に配列されている。
【0021】
図1及び
図2Aに示すように、上シリンダ30は、略円形板状の部材である。上シリンダ30の中央部には、駆動軸3bの軸方向に上シリンダ30を貫通した円形孔である圧縮室31が形成されている。圧縮室31内には、ピストン32が配置されている。ピストン32は、円環状のローラ32aと、ローラ32aの外周面から径方向外側に延在するブレード32bとから構成されている。ローラ32aは、偏心部3cの外周面に対して相対回転可能に装着されて、圧縮室31内に配置されている。
【0022】
図2A及び
図3に示すように、上シリンダ30には、圧縮室31に冷媒を導入するための吸入通路として、上シリンダ30の径方向に延在した横通路30aが形成されている。横通路30aの径方向内側端部は、圧縮室31に開口し、横通路30aの径方向外側端部は、上シリンダ30の外周面に開口している。横通路30aの径方向外側端部から横通路30a内に吸入管6が挿入されており、その先端が横通路30aの中央付近に位置している。また、上シリンダ30には、圧縮室51に冷媒を導入するための吸入通路として、横通路30aから鉛直下方に延在した縦通路30bが形成されている。縦通路30bは、横通路30aにおける径方向内側端部と吸入管6の先端位置との間から分岐し、鉛直下方に延在して上シリンダ30の下面に開口している。
【0023】
また、
図2Aに示すように、上シリンダ30には、圧縮室31の周壁面から径方向外側に凹んだ形状のブレード収容部33が形成されている。ブレード収容部33内には、上シリンダ30の周方向に対向する一対のブッシュ34が配置されている。一対のブッシュ34は、略円柱状の部材を半分割した形状である。一対のブッシュ34は、その間にブレード32bが配置された状態で、ブレード収容部33内において揺動可能である。また、ブレード32bは、一対のブッシュ34の間において、上シリンダ30の径方向に進退可能に配置されている。圧縮室31は、ブレード32bによって、低圧室と高圧室とに区画されている。
【0024】
図1に示すように、上ヘッド20は、上シリンダ30の上端面に接するように配置されており、圧縮室31の上端を閉塞することで圧縮室31を区画している。上ヘッド20は、略円環状の部材であって、その中央部に駆動軸3bが回転可能に挿通されている。上ヘッド20は、溶接などによって密閉容器2の内周面に固定されている。
【0025】
上ヘッド20の上方には、上マフラ10a、10bが配置されている。上ヘッド20と上マフラ10bとの間及び上マフラ10aと上マフラ10bとの間には、上マフラ空間が形成されている。上マフラ空間により、冷媒の吐出に伴う騒音の低減が図られている。
【0026】
図2Aに示すように、上ヘッド20には、圧縮室31と上マフラ空間とを連通させ、圧縮室31で圧縮された冷媒を上マフラ空間に吐出する吐出孔35が設けられている。吐出孔35は、板状の吐出弁(図示省略)によって塞がれている。吐出弁は、圧縮室31の圧力が所定の圧力以上となると弾性変形して吐出孔35を開口する。
【0027】
ミドルプレート40は、円形板状の部材であって、
図1に示すように、上シリンダ30の下端面及び下シリンダ50の上端面に接するように配置されている。
図3に示すように、ミドルプレート40は、上シリンダ30の圧縮室31の下端を閉塞することで圧縮室31を区画とともに、下シリンダ50の圧縮室51の上端を閉塞することで圧縮室51を区画している。ミドルプレート40には、圧縮室51に冷媒を導入するための吸入通路として、上シリンダ30の縦通路30bに接続された縦通路40aが形成されている。縦通路40aは、上シリンダ30の縦通路30bと、後述の下シリンダ50の横通路50aとを接続している。
【0028】
図1及び
図2Bに示すように、ミドルプレート40を介して上シリンダ30に隣接した下シリンダ50は、上シリンダ30と同様に、略円形板状の部材である。下シリンダ50の中央部には、駆動軸3bの軸方向に下シリンダ50を貫通した円形孔である圧縮室51が形成されている。圧縮室51内には、ピストン52が配置されている。ピストン52は、円環状のローラ52aと、ローラ52aの外周面から径方向外側に延在するブレード52bとから構成されている。ローラ52aは、偏心部3dの外周面に対して相対回転可能に装着されて、圧縮室51内に配置されている。
【0029】
図2B及び
図3に示すように、下シリンダ50には、圧縮室51に冷媒を導入するための吸入通路として、下シリンダ50の径方向に延在した横通路50aが形成されている。横通路50aは、下シリンダ50の上面が切り欠かれることにより形成されている。横通路50aの径方向内側端部は、圧縮室51に開口している。横通路50aの径方向外側端部は、径方向において下シリンダ50の壁面により塞がれ、上方に開口している。
図3に示すように、横通路50aの径方向外側端部は、当該上方の開口を介して、ミドルプレート40の縦通路40aに接続されている。横通路50aにおける前記開口を除く部分は、ミドルプレート40の下面により塞がれている。
【0030】
また、
図2Bに示すように、下シリンダ50には、圧縮室51の周壁面から径方向外側に凹んだ形状のブレード収容部53が形成されている。ブレード収容部53内には、下シリンダ50の周方向に対向する一対のブッシュ54が配置されている。一対のブッシュ54は、略円柱状の部材を半分割した形状である。一対のブッシュ54は、その間にブレード52bが配置された状態で、ブレード収容部53内において揺動可能である。また、ブレード52bは、一対のブッシュ54の間において、下シリンダ50の径方向に進退可能に配置されている。圧縮室51は、ブレード52bによって、低圧室と高圧室とに区画されている。
【0031】
図1に示すように、下ヘッド60は、下シリンダ50の下端面に接するように配置されており、圧縮室51の下端を閉塞することで圧縮室51を区画している。下ヘッド60は、略円環状の部材であって、その中央部に駆動軸3bが回転可能に挿通されている。
【0032】
下ヘッド60の下方には、下マフラ70が配置されている。下ヘッド60と下マフラ70との間には、下マフラ空間が形成されている。下マフラ空間により、冷媒の吐出に伴う騒音の低減が図られている。
【0033】
図2Bに示すように、下ヘッド60には、圧縮室51と下マフラ空間とを連通させ、圧縮室51で圧縮された冷媒を下マフラ空間に吐出する吐出孔55が設けられている。吐出孔55は、板状の吐出弁(図示省略)によって塞がれている。吐出弁は、圧縮室51の圧力が所定の圧力以上となると弾性変形して吐出孔55を開口する。
【0034】
下マフラ空間は、下ヘッド60、下シリンダ50、ミドルプレート40、上シリンダ30および上ヘッド20にそれぞれ形成された貫通孔を介して、上マフラ空間と連通している。
【0035】
本実施形態のロータリ圧縮機1には、上シリンダ30の圧縮室31に冷媒を供給する上吸入通路(第1通路)、及び、上吸入通路(第1通路)から分岐した通路であり且つ下シリンダ50の圧縮室51に冷媒を供給する下吸入通路(第2通路)を含む吸入通路が形成されている。本実施形態では、上吸入通路は、上シリンダ30に形成された横通路30aのうち、吸入管6の先端から圧縮室31に到るまでの水平な通路であり、上シリンダ30を通過し且つ下シリンダ50を通過しない。下吸入通路は、上シリンダ30に形成された縦通路30bと、ミドルプレート40に形成された縦通路40aと、下シリンダ50に形成された横通路50aとで構成される(
図3参照)。下吸入通路は、上シリンダ30と下シリンダ50の両方を通過する。
【0036】
言い換えると、横通路30aのうち吸入管6の先端から圧縮室31に到るまでの水平な通路(横通路30aのうち吸入管6の先端から横通路30aの径方向外側端部までを含まない)と、縦通路30bとが、上シリンダ30において吸入通路を形成している。そして、横通路50aが、下シリンダ50において吸入通路を形成している。本実施形態において、下シリンダ50において吸入通路に面した領域の表面積は、上シリンダ30において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さくなっている。
【0037】
「シリンダにおいて吸入通路に面した領域の表面積」とは、シリンダにおいて吸入通路を形成する壁の内周面の表面積であり、シリンダにおいてアキュムレータ5から吸入された冷媒が通過する壁面の表面積である。したがって、上シリンダ30において吸入通路に面した領域の表面積は、横通路30aのうち吸入管6の先端から圧縮室31に到るまでの水平な通路に面した領域の表面積と、縦通路30bに面した領域の表面積との合計であり、下シリンダ50において吸入通路に面した領域の表面積は、横通路50aに面した領域の表面積である。
【0038】
吸入通路に面した領域の表面積が上シリンダ30に比べて小さい下シリンダ50では、上シリンダ30と比べ、吸入通路に面した領域付近における冷媒による温度低下が小さくなる。そのため、下シリンダ50と、下シリンダ50の圧縮室51に配置されたピストン52との間において、温度差が小さくなり、熱膨張時における寸法変化量の差が小さくなる。
【0039】
そこで、本実施形態の圧縮機1では、
図3に示すように、下シリンダ50の高さA3と、下シリンダ50の圧縮室51に配置されたピストン52の高さA4との差が、上シリンダ30の高さA1と、上シリンダ30の圧縮室31に配置されたピストン32の高さA2との差よりも小さくなっている(A3−A4<A1−A2)。ここで、上シリンダ30の高さA1とピストン32の高さA2との差、及び、下シリンダ50の高さA3とピストン52の高さA4との差は、圧縮機1の停止時(常温時)におけるものである。
【0040】
本実施形態のロータリ圧縮機1には、吸入管6が接続された上シリンダ30の圧縮室31に冷媒を供給する上吸入通路と、上吸入通路から分岐した通路であり且つ下シリンダ50の圧縮室51に冷媒を供給する下吸入通路を含む吸入通路が形成されている。そして、下シリンダ50の吸入通路に面した領域の表面積が、上シリンダ30の吸入通路に面した領域の表面積より小さい。したがって、下シリンダ50では、上シリンダ30と比べ、シリンダにおける吸入通路に面した領域付近の冷媒による温度低下が小さくなる。そのため、下シリンダ50と、下シリンダ50の圧縮室51に配置されたピストン52との間において、温度差が小さくなり、熱膨張時における寸法変化量の差が小さくなる。このため、下シリンダ50では、上シリンダ30と比較して、ピストン52の軸方向の端面とこれに隣接する端板部材40,60の軸方向の端面との隙間を小さくしても支障が生じにくい。そして、これによって、ピストン内周部から圧縮室への油漏れを低減させることで、容積効率及び図示効率を向上させることができるので、圧縮機1を小型化するために2つのシリンダ30,50とアキュムレータ5とを1つの吸入管6により接続した場合でも、吸入抵抗の増加による圧縮機効率の低下を容積効率及び図示効率の向上で補い、圧縮機効率の低下を抑制できる。このようにして、本実施形態では、圧縮機1の小型化と、圧縮機効率の低下抑制とを両立できる。
【0041】
また、本実施形態においては、上吸入通路(第1通路)は、上シリンダ30を通過し且つ下シリンダ50を通過せず、下吸入通路(第2通路)は、上シリンダ30の内部において上吸入通路から分岐して、上シリンダ30及び下シリンダ50の両方を通過する。これにより、下シリンダ50において吸入通路に面した領域の表面積が、上シリンダ30において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さいという構成を容易に得ることができる。
【0042】
さらに、本実施形態においては、吸入管6は、その先端が上シリンダ30内に位置するように上シリンダ30に挿入可能に構成されている。これにより、吸入管6の先端から上シリンダ30の圧縮室31までの冷媒の通路を構成するのが直線状の横通路30aだけとなって、吸入抵抗の増加を抑制することができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、
図4−
図6を参照しつつ第2実施形態にかかる圧縮機について説明する。第1実施形態の圧縮機1では、アキュムレータ5の吸入管6が上シリンダ30に挿入可能に構成された場合を説明したが、本実施形態にかかる圧縮機101は、アキュムレータ5の吸入管6が上ヘッド120に挿入可能に構成された点で第1実施形態と異なる。なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付してその説明を適宜省略する。
【0044】
本実施形態にかかる圧縮機101は、駆動機構3と、圧縮機構104とを収容している。この圧縮機101において、
図5A及び
図6に示すように、上シリンダ130の圧縮室31に冷媒を導入するための吸入通路として、上シリンダ130に対して下シリンダ50とは反対側に配置された上ヘッド120には、上ヘッド120の径方向に延在した横通路120aと、横通路120aから鉛直下方に延在した縦通路120bとが形成されている。横通路120aの径方向内側端部は、径方向において上ヘッド120の壁面により塞がれ、下方に開口している。横通路120aの径方向内側端部は、当該下方の開口を介して、上シリンダ130の横通路130aに接続されている。横通路120aの径方向外側端部は、上ヘッド120の外周面に開口している。横通路120aから横通路120a内に吸入管6が挿入されており、その先端が横通路120aの中央付近に位置している。
【0045】
上シリンダ130には、上シリンダ130の圧縮室31に冷媒を導入するための吸入通路として、上シリンダ130の径方向に延在した横通路130aが形成されている。横通路130aは、上シリンダ130の上面が切り欠かれることにより形成されている。横通路130aの径方向内側端部は、圧縮室31に開口している。横通路130aの径方向外側端部は、径方向において上シリンダ130の壁面により塞がれ、上方に開口している。横通路130aの径方向外側端部は、当該上方の開口を介して、上ヘッド120の縦通路120bに接続されている。横通路130aにおける前記開口を除く部分は、上ヘッド120の下面により塞がれている。また、上シリンダ130には、下シリンダ150の圧縮室51に冷媒を導入するための吸入通路として、横通路130aから鉛直下方に延在した縦通路130bが形成されている。縦通路130bは、横通路130aから分岐し、鉛直下方に延在して上シリンダ130の下面に開口している。
【0046】
ミドルプレート40には、下シリンダ50の圧縮室51に冷媒を導入するための吸入通路として、上シリンダ130の縦通路130bに接続された縦通路40aが形成されている。縦通路40aは、上シリンダ130の縦通路130bと、後述の下シリンダ50の横通路50aとを接続している。
【0047】
図5B及び
図6に示すように、ミドルプレート40を介して上シリンダ130に隣接した下シリンダ50には、圧縮室51に冷媒を導入するための吸入通路として、下シリンダ50の径方向に延在した横通路50aが形成されている。横通路50aは、下シリンダ50の上面が切り欠かれることにより形成されている。横通路50aの径方向内側端部は、圧縮室51に開口している。横通路50aの径方向外側端部は、径方向において下シリンダ50の壁面により塞がれ、上方に開口している。
図6に示すように、横通路50aの径方向外側端部は、当該上方の開口を介して、ミドルプレート40の縦通路40aに接続されている。横通路50aにおける前記開口を除く部分は、ミドルプレート40の下面により塞がれている。
【0048】
本実施形態のロータリ圧縮機101には、上シリンダ130の圧縮室31に冷媒を供給する上吸入通路(第1通路)、及び、上吸入通路(第1通路)から分岐した通路であり且つ下シリンダ50の圧縮室51に冷媒を供給する下吸入通路(第2通路)を含む吸入通路が形成されている。本実施形態では、上吸入通路は、上ヘッド120に形成された横通路120aのうち吸入管6の先端から横通路50aの径方向内側端部に到るまでの水平な通路及び縦通路120bと、上シリンダ130に形成された横通路130aとで構成される。下吸入通路は、上シリンダ130に形成された縦通路130bと、ミドルプレート40に形成された縦通路40aと、下シリンダ50に形成された横通路50aとで構成される(
図6参照)。
【0049】
言い換えると、横通路130aと、縦通路130bとが、上シリンダ130において吸入通路を形成している。そして、横通路50aが、下シリンダ50において吸入通路を形成している。本実施形態において、下シリンダ50において吸入通路に面した領域の表面積は、上シリンダ130において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さくなっている。
【0050】
吸入通路に面した領域の表面積が上シリンダ130に比べて小さい下シリンダ50では、上シリンダ130に比べて、吸入通路に面した領域付近における冷媒による温度低下が小さくなる。そのため、下シリンダ50と、下シリンダ50の圧縮室51に配置されたピストン52との間において、温度差が小さくなり、熱膨張時における寸法変化量の差が小さくなる。
【0051】
そこで、本実施形態の圧縮機101では、
図6に示すように、下シリンダ50の高さA3と、下シリンダ50の圧縮室51に配置されたピストン52の高さA4との差が、上シリンダ130の高さA1と、上シリンダ130の圧縮室31に配置されたピストン32の高さA2との差よりも小さくなっている(A3−A4<A1−A2)。ここで、上シリンダ130の高さA1とピストン32の高さA2との差、及び、下シリンダ50の高さA3とピストン52の高さA4との差は、圧縮機101の停止時(常温時)におけるものである。
【0052】
本実施形態のロータリ圧縮機101には、上シリンダ130の圧縮室31に冷媒を供給する上吸入通路と、上吸入通路から分岐した通路であり且つ下シリンダ50の圧縮室51に冷媒を供給する下吸入通路を含む吸入通路が形成されている。そして、下シリンダ50の吸入通路に面した領域の表面積は、上シリンダ130の吸入通路に面した領域の表面積より小さい。したがって、下シリンダ50では、上シリンダ130と比べ、シリンダにおける吸入通路に面した領域付近の冷媒による温度低下が小さくなる。そのため、下シリンダ50と、下シリンダ50の圧縮室51に配置されたピストン52との間において、温度差が小さくなり、熱膨張時における寸法変化量の差が小さくなる。このため、下シリンダ50では、上シリンダ130と比較して、ピストン52の軸方向の端面とこれに隣接する端板部材40,60の軸方向の端面との隙間を小さくしても支障が生じにくい。そして、これによって、ピストン内周部から圧縮室への油漏れを低減させることで、容積効率及び図示効率を向上させることができるので、圧縮機101を小型化するために2つのシリンダ130,50とアキュムレータ5とを1つの吸入管6により接続した場合でも、吸入抵抗の増加による圧縮機効率の低下を容積効率及び図示効率の向上で補い、圧縮機効率の低下を抑制できる。このようにして、本実施形態では、圧縮機101の小型化と、圧縮機効率の低下抑制とを両立できる。
【0053】
また、本実施形態においては、上吸入通路(第1通路)は、上シリンダ130を通過し且つ下シリンダ50を通過せず、下吸入通路(第2通路)は、上シリンダ130の内部において上吸入通路から分岐して、上シリンダ130及び下シリンダ50の両方を通過する。これにより、下シリンダ50において吸入通路に面した領域の表面積が、上シリンダ130において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さいという構成を容易に得ることができる。
【0054】
さらに、本実施形態においては、吸入管6は、その先端が上シリンダ130に対して下シリンダ50とは反対側に配置された端板部材である上ヘッド120内に位置するように上ヘッド120に挿入可能に構成されている。これにより、上吸入通路は上シリンダ130内において冷媒の進行方向が鉛直から水平へと変化する箇所を1つ有することになり、下吸入通路は下シリンダ50内において冷媒の進行方向が鉛直から水平へと変化する箇所を1つ有することになる。すなわち、上吸入通路と下吸入通路とで吸入抵抗に大きな差が生じにくくなる。
【0055】
[第3実施形態]
次に、
図7及び
図8を参照しつつ第3実施形態にかかる圧縮機について説明する。第3実施形態の圧縮機1では、アキュムレータ5の吸入管6が下シリンダ250に挿入可能に構成された点で第1実施形態と異なる。なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付してその説明を適宜省略する。
【0056】
本実施形態にかかる圧縮機201は、駆動機構3と、圧縮機構204とを収容している。
図7及び
図8に示すように、下シリンダ250の圧縮室51に冷媒を導入するための吸入通路として、下シリンダ250には、下シリンダ250の径方向に延在した横通路250aが形成されている。横通路250aの径方向内側端部は、圧縮室51に開口し、横通路250aの径方向外側端部は、下シリンダ250の外周面に開口している。横通路250aの径方向外側端部から横通路250a内に吸入管6が挿入されており、その先端が横通路250aの中央付近に位置している。また、下シリンダ250には、上シリンダ230の圧縮室31に冷媒を導入するための吸入通路として、横通路250aから鉛直上方に延在した縦通路250bが形成されている。縦通路250bは、横通路250aにおける径方向内側端部と吸入管6の先端位置との間から分岐し、鉛直上方に延在して下シリンダ250の上面に開口している。さらに、下シリンダ250には、横通路250aから鉛直下方に延在した縦通路250cが形成されている。縦通路250cは、横通路250aにおける径方向内側端部と吸入管6の先端位置との間(縦通路250bと上下に重なる位置)から分岐し、鉛直下方に延在して下シリンダ250の下面に開口している。この開口は下ヘッド60によって閉塞されている。
【0057】
ミドルプレート240には、圧縮室31に冷媒を導入するための吸入通路として、下シリンダ250の縦通路250bに接続された縦通路240aが形成されている。縦通路240aは、下シリンダ250の縦通路250bと、後述の上シリンダ230の横通路230aとを接続している。
【0058】
ミドルプレート240を介して下シリンダ250に隣接した上シリンダ230には、圧縮室31に冷媒を導入するための吸入通路として、上シリンダ230の径方向に延在した横通路230aが形成されている。横通路230aは、上シリンダ230の下面が切り欠かれることにより形成されている。横通路230aの径方向内側端部は、圧縮室31に開口している。横通路230aの径方向外側端部は、径方向において上シリンダ230の壁面により塞がれ、下方に開口している。横通路230aの径方向外側端部は、当該下方の開口を介して、ミドルプレート240の縦通路240aに接続されている。横通路230aにおける前記開口を除く部分は、ミドルプレート240の上面により塞がれている。
【0059】
本実施形態の圧縮機201には、下シリンダ250の圧縮室51に冷媒を供給する下吸入通路(第1通路)、及び、下吸入通路(第1通路)から分岐した通路であり且つ上シリンダ230の圧縮室31に冷媒を供給する上吸入通路(第2通路)を含む吸入通路が形成されている。本実施形態では、下吸入通路は、下シリンダ250に形成された横通路250aのうち、吸入管6の先端から圧縮室51に到るまでの水平な通路であり、上吸入通路は、下シリンダ250に形成された縦通路250bと、ミドルプレート240に形成された縦通路240aと、上シリンダ230に形成された横通路230aとで構成される。
【0060】
言い換えると、横通路250aのうち吸入管6の先端から圧縮室51に到るまでの水平な通路(横通路250aのうち吸入管6の先端から横通路250aの径方向外側端部までを含まない)と、縦通路250bとが、下シリンダ250において吸入通路を形成している。そして、横通路230aが、上シリンダ230において吸入通路を形成している。本実施形態において、上シリンダ230において吸入通路に面した領域の表面積は、下シリンダ250において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さくなっている。
【0061】
吸入通路に面した領域の表面積が下シリンダ250に比べて小さい上シリンダ230では、下シリンダ250に比べて、吸入通路に面した領域付近における冷媒による温度低下が小さくなる。そのため、上シリンダ230と、上シリンダ230の圧縮室31に配置されたピストン32との間において、温度差が小さくなり、熱膨張時における寸法変化量の差が小さくなる。
【0062】
そこで、本実施形態の圧縮機201では、
図8に示すように、上シリンダ230の高さA1と、上シリンダ230の圧縮室31に配置されたピストン32の高さA2との差が、下シリンダ250の高さA3と、下シリンダ250の圧縮室51に配置されたピストン52の高さA4との差よりも小さくなっている(A1−A2<A3−A4)。ここで、下シリンダ250の高さA3とピストン52の高さA4との差、及び、上シリンダ230の高さA1とピストン32の高さA2との差は、圧縮機201の停止時(常温時)におけるものである。
【0063】
本実施形態のロータリ圧縮機201には、下シリンダ250の圧縮室51に冷媒を供給する下吸入通路と、下吸入通路から分岐した通路であり且つ上シリンダ230の圧縮室31に冷媒を供給する上吸入通路を含む吸入通路が形成されている。そして、上シリンダ230の吸入通路に面した領域の表面積は、下シリンダ250の吸入通路に面した領域の表面積より小さい。したがって、上シリンダ230では、下シリンダ250と比べ、シリンダにおける吸入通路に面した領域付近の冷媒による温度低下が小さくなる。そのため、上シリンダ230と、上シリンダ230の圧縮室31に配置されたピストン32との間において、温度差が小さくなり、熱膨張時における寸法変化量の差が小さくなる。このため、上シリンダ230では、下シリンダ250と比較して、ピストン32の軸方向の端面とこれに隣接する端板部材20,240の軸方向の端面との隙間を小さくしても支障が生じにくい。そして、これによって、ピストン内周部から圧縮室への油漏れを低減させることで、容積効率及び図示効率を向上させることができるので、圧縮機201を小型化するために2つのシリンダ230,250とアキュムレータ5とを1つの吸入管6により接続した場合でも、吸入抵抗の増加による圧縮機効率の低下を容積効率及び図示効率の向上で補い、圧縮機効率の低下を抑制できる。このようにして、本実施形態では、圧縮機201の小型化と、圧縮機効率の低下抑制とを両立できる。
【0064】
また、本実施形態においては、下吸入通路(第1通路)は、下シリンダ250を通過し且つ上シリンダ230を通過せず、上吸入通路(第2通路)は、下シリンダ250の内部において下吸入通路から分岐して、下シリンダ250及び上シリンダ230の両方を通過する。これにより、上シリンダ230において吸入通路に面した領域の表面積が、下シリンダ250において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さいという構成を容易に得ることができる。
【0065】
さらに、本実施形態においては、吸入管6は、その先端が下シリンダ250内に位置するように下シリンダ250に挿入可能に構成されている。これにより、吸入管6の先端から下シリンダ250の圧縮室51までの冷媒の通路を構成するのが直線状の横通路250aだけとなって、吸入抵抗の増加を抑制することができる。
【0066】
[実機による検証試験]
ここで、複数のロータリ圧縮機について行った試験結果について説明する。上述したように、本発明に係るロータリ圧縮機では、第2シリンダは、第1シリンダと比較して、シリンダの高さとピストンの高さとの差を小さくすることで、ピストン内周部から圧縮室への油漏れを低減させ、これによって圧縮機効率を向上させている。シリンダの高さとピストンの高さとの差が小さいほど、圧縮機効率を向上させることができる一方で、ピストンと端板部材との摺動摩擦による焼付きが生じやすくなって信頼性が低下する。逆に言うと、シリンダの高さとピストンの高さとの差が大きいほど、ピストンと端板部材との摺動摩擦による焼付きが生じにくくなって信頼性が向上する一方で、圧縮機効率が低下してしまう。
【0067】
そこで、本発明者らは、信頼性を確保しつつ許容可能な圧縮機効率が得られるかどうかを、複数のロータリ圧縮機(いくつかのタイプを含む)を用いて実証試験を行った。この試験では、シリンダの駆動軸軸方向についての高さHc(mm)、シリンダに形成された圧縮室の内部に配置されたピストンの軸方向についての高さHp(mm)、シリンダにおける吸入通路に面した領域の表面積As(mm
2)、シリンダにおける吸入通路の長さLs(mm)を変数とした。長さLsは、駆動軸軸方向と直交する平面内での吸入通路の長さであり、上述した実施形態ではシリンダの径方向への長さである。長さLsの例を、
図3、
図6及び
図8にL1、L2として示す。
【0068】
上記4つの変数Hc、Hp、As、Lsを変化させた各圧縮機について、ピストンと端板部材との摺動摩擦による焼付きが生じるかどうか、及び、許容可能な圧縮機効率が得られるかどうかを評価した。
図9は、その結果を描いたグラフである。
【0069】
図9において、縦軸のパラメータは(シリンダとピストンの高さの差(Hc−Hp)/シリンダ高さHc)であって、温度変化に伴うシリンダ高さの変化率を表している。シリンダにおける吸入通路に面した領域付近の温度が冷媒によって低下するとシリンダが熱収縮するため、ピストンとの高さの差(Hc−Hp)が小さくなる。そして、これがゼロになるとピストンが端板部材に挟み込まれて焼付きが生じ、圧縮機が損傷する虞がある。縦軸の数値が大きいほど焼付きが生じにくい。
【0070】
横軸のパラメータは(シリンダにおいて吸入通路に面した領域の表面積As/シリンダ高さHp×吸入通路の延在方向の長さLs)であって、シリンダの温度変化のしやすさを表している。すなわち、シリンダにおいて吸入通路に面した領域の表面積が大きいほど、シリンダは冷媒によって冷却されて温度が低下しやすい。一方、シリンダ高さ及び吸入通路の延在方向の長さが大きいほど、熱容量増加により、シリンダは温度が低下しにくい。このように、シリンダにおける吸入通路に面した領域付近の温度は、当該領域の表面積As、シリンダ高さHp、及び、吸入通路の延在方向の長さLsの三者のバランスに応じて変動する。
【0071】
図9において、直線として表される近似線Aは、圧縮機効率の面での性能下限を示す限界線である。すなわち、許容可能な圧縮機効率が得られるのは、近似線Aよりも下の領域である。また、近似線Aと同じ傾きを有する直線として表される近似線Bは、信頼性の面で許容可能な(焼付きが生じない)限界線である。すなわち、焼付きが生じないのは、近似線Bよりも上の領域である。ここで、
近似線Aは、
(Hc−Hp)/Hc=1.4×0.0001×As/(Hc・Ls)+6.7×0.0001
であり、
近似線Bは、
(Hc−Hp)/Hc=1.4×0.0001×As/(Hc・Ls)+3.9×0.0001
である。
【0072】
したがって、上記4つの変数Hc、Hp、As、Lsの値を、関係式
3.9×0.0001≦(Hc−Hp)/Hc−1.4×0.0001×As/(Hc・Ls)≦6.7×0.0001
を満たすような値とすることで、圧縮機効率及び信頼性の両方を満たす圧縮機を得ることができる。
【0073】
[変形例]
上述した第1実施形態において、第1シリンダが下シリンダ50で、第2シリンダが上シリンダ30であってもよい。すなわち、上シリンダ30において吸入通路に面した領域の表面積が、下シリンダ50において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さくてもよい。同様に、第2実施形態において、第1シリンダが下シリンダ50で、第2シリンダが上シリンダ130であってもよい。すなわち、上シリンダ130において吸入通路に面した領域の表面積が、下シリンダ50において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さくてもよい。また、第3実施形態において、第1シリンダが上シリンダ230で、第2シリンダが下シリンダ250であってもよい。すなわち、下シリンダ250において吸入通路に面した領域の表面積が、上シリンダ230において吸入通路に面した領域の表面積よりも小さくてもよい。
【0074】
吸入通路の構成(配置、断面形状など)は、前記第1−第3実施形態に示したものに限られず、適宜変更してよい。一例として、第1−第3実施形態では、横通路30a、50a;130a;230a、250aがシリンダの径方向に延在している例について説明したが、これらの横通路は、圧縮室に連通している限りにおいて、駆動軸の軸方向と直交する平面内において任意の方向に延在していてよい。
【0075】
第1−第3実施形態では、外部機器として、本発明に係るロータリ圧縮機に固定されたアキュムレータを例示したが、これに限定されない。外部機器は、例えば、本発明に係るロータリ圧縮機に固定されていないアキュムレータや、アキュムレータ以外の機器(蒸発器等)であってもよい。
【0076】
第1−第3実施形態では、ピストンのローラとブレードが一体に構成されているが、ローラとブレードが別体に構成されてよい。
【0077】
第1−第3実施形態では、上シリンダ及び下シリンダを有した2シリンダのロータリ圧縮機について説明したが、3以上のシリンダを有したロータリ圧縮機であってよい。この場合、3以上のシリンダにおいて、シリンダの駆動軸軸方向についての高さと当該シリンダの圧縮室に配置されたピストンの前記軸方向についての高さとの差は、当該シリンダにおいて吸入通路に面した領域の表面積が小さいほど小さいことが好ましい。
【0078】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。