(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の第1図に開示されているような突張式の縦手すりは、天井および床が乾燥していることを前提として使用されるものであり、天井や床が水等で濡れ易い場所では、天井面および床面に対する縦手すりの上下端部の摩擦力が小さくなる。このため、使用時に縦手すりに水平方向への力が掛かると、縦手すりがぐらついたり、水平方向に移動したり、最悪の場合、縦手すりが天井と床の間から外れてしまうことが考えられる。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑みて創案されたものであり、天井や床が水等で濡れる場所に設置され、使用時に縦手すりに水平方向の力が掛かっても、当該縦手すりが、ぐらつきにくく、水平方向に移動しにくい手すり装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手すり装置は、略鉛直方向に設置された縦手すりと、前記縦手すりの下方に設けられ、床面に押し当てられる床面押当部と、前記縦手すりから両側方へ延出して設けられた第1方向の横軸材と、上から視て前記第1方向の横軸材に対して交差する方向に、前記縦手すりから両側方へ延出して設けられた第2方向の横軸材と、前記各方向の横軸材の端部にそれぞれ設けられ
、壁面に押し当てられる壁面押当部と、前記横軸材および前記壁面押当部に、前記壁面に対する突張力を発生させる横突張力発生手段と、前記床面と前記床面押当部との間に水が浸入しないように、前記床面と前記床面押当部との境界をシールする水密材と、を備える。
【0007】
かかる構成を備える手すり装置によれば、水密材によって、床面と床面押当部との間への水の浸入が防止されることから、床面と床面押当部との間の摩擦力を、床面が乾燥しているときと同程度に確保でき、縦手すりの設置状態の安定化が図られる。
【0008】
前記構成を備える手すり装置において、前記縦手すりの上方に設けられ、天井面に押し当てられる天井面押当部と、前記縦手すり、前記天井面押当部および前記床面押当部に、天井面および床面に対する突張力を発生させる縦突張力発生手段と、をさらに備えるものとすることが望ましい。
【0009】
かかる構成を備える手すり装置によれば、縦手すりに突張力が発生するため、床面押当部と床面との摩擦力が向上し、縦手すりの設置状態の更なる安定化が図られる。
【0010】
前記構成を備える手すり装置において、前記水密材をコーキング剤とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る手すり装置によれば、本装置が天井面や床面が水等で濡れる場所に設置され、使用時に縦手すりに水平方向の力が掛かっても、当該縦手すりは、ぐらつきにくく、水平方向に移動しにくいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】手すり装置を浴室に設置した状態を示す斜視図である。手前側の壁面および天井面の図示は省略している。
【
図2】手すり装置の天井面押当部およびその周囲を示す斜視図である。
【
図2A】柱本体へ縦手すり上端部材を差し込む前の状態を示す図である。
【
図3】手すり装置の床面押当部およびその周囲を示す斜視図である。
【
図6】壁面押当部およびその周囲を示す斜視図である。
【
図7】
図4に対応する図であって、床面が傾斜している例を示す図である。
【
図8】他の実施形態に係る手すり装置を浴室に設置した状態を示す斜視図である。
【
図9】他の実施形態に係る手すり装置を浴室に設置した状態を示す斜視図である。
【
図10】他の実施形態に係る手すり装置を浴室に設置した状態を示す斜視図である。
【
図11】他の実施形態に係る手すり装置の天井面押当部およびその周囲を示す斜視図である。
【
図12】
図4に対応する図であって、コーキング剤を、床面と床面押当部の外縁部の境界のみに塗布したものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る手すり装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る手すり装置1は、縦手すり2、天井面押当部3、床面押当部4、縦突張力発生手段6、横軸材7A,7B、壁面押当部8、横突張力発生手段9、水密材11等で構成されている。本実施形態では、浴室12に設置された手すり装置1を例示する。
【0014】
縦手すり2は、浴室12の床面13と天井面14との間に立設されている。縦手すり2の上方には天井面押当部3が、縦手すり2の下方には、床面押当部4が設けられている。この縦手すり2は、円筒材からなる縦手すり本体16(
図2参照)と、縦手すり本体16の上端部に挿入された縦手すり上部材21(
図2参照)と、縦手すり上部材21に挿入されたボルト17(
図2参照)と、縦手すり本体16の下端部内に挿入された縦手すり下端部材18(
図3参照)とで主に構成されている。なお、
図2Aに示すように、上記縦手すり上部材21は、縦手すり本体16に嵌入される大径筒部21aと、大径筒部21aの上端に固設された矩形平板21bと、矩形平板21bに固設された小径筒部21cとで構成されており、小径筒部21cにボルト17が挿入されている。
【0015】
天井面押当部3は、
図2に示すように、天井面押圧板19、滑り止め部材20等で構成されている。天井面押圧板19は、後述する縦突張力発生手段6により滑り止め部材20を介して天井面14を押圧する。この天井面押圧板19としては、例えば矩形、円形等の平板を使用することができる。滑り止め部材20は、天井面押圧板19と天井面14との間に介設され、天井面押圧板19が天井面14に対して面方向に滑ることを防止するものであり、天井面14および天井面押圧板19の双方に対して滑りにくいものが採用される。この滑り止め部材20には、例えばシート状の発泡樹脂、合成樹脂等の樹脂材を採用することができる。なお、滑り止め部材20は天井面押圧板19に対して接着剤等にて接着してもよい。
【0016】
床面押当部4は、
図3に示すように、縦手すり2の下端に固定された断面逆V字状の板材からなる支持板22と、支持板22の下に敷設された滑り止め部材25とで主に構成されている。滑り止め部材25は、支持板22の下面が床面13に対して面方向に滑ることを防止するものであり、床面13および支持板22の双方に対して滑りにくいものが採用される。本実施形態では、この滑り止め部材25の材質として合成ゴムが採用されている。
【0017】
滑り止め部材25は、
図3および
図4に示すように、支持板22の下面の形状に対応した凸部25aと、支持板22の両側部に沿って起立した起立部25bとを有し、その底面は、床面13に沿うように平坦な形状となっている。また、滑り止め部材25の上面には、後述するビス23の頭を収容する凹部25dが形成されている。なお、この凹部25dには、ビス23の頭と当該凹部25dとの隙間を埋める少量のスポンジ材(不図示)が充填されている。
【0018】
床面押当部4は、
図4および
図5に示すように、縦手すり2の下端部に対してビス23(ねじ材)により締結されている。詳細には、床面押当部4の支持板22に形成されたねじ挿通穴22aに、下からビス23が挿入されており、このビス23が、縦手すり2の下端部に固設された板材24の雌ねじ部に螺着されている。符号31は、縦手すり本体16が載置される縦手すり支持管であり、縦手すり下端部材18にスライド可能に外嵌されている。この縦手すり支持管31は、下端部が支持板22の凸条に対応した形状となっている。
【0019】
なお、
図4では、床面13が水平である場合を示しているが、
図7に示すように、床面13が水平面に対して傾斜している場合は、傾斜方向Xに床面押当部4の稜線22b(
図3参照)を直交させて設置し、ビス23を少し緩めることで、縦手すり2を鉛直方向に設置しつつ、床面押当部4の底面を床面13に沿わせることができる。浴室等の床面は、通常、排水口に向かって水が流れるように勾配が設けられているため、このような床面に設置する場合に上記構造は有効となる。このようにする場合、柱支持管31、縦手すり下端部材18および板材24と支持板22の片側との間に隙間が生じるため、この隙間にコーキング剤10を充填し内部への水の浸入を防止し、内部の防錆を図ることが望ましい。
【0020】
縦突張力発生手段6は、縦手すり2、天井面押当部3および床面押当部4に、天井面14および床面13に対する突張力を発生させるものである。本実施形態では、縦突張力発生手段6は、
図2に示すように、天井面押圧板19の下面に上端部が連結されたボルト17と、ボルト17に螺着され、縦手すり上部材21の上端部に支持された座金付ナット26とで主に構成されている。座金付ナット26を廻すことでボルト17の縦手すり上部材21からの延出長さを調整することができ、上記突張力を発生させることができる。
【0021】
横軸材7A,7Bは、第1方向の横軸材7Aおよび第2方向の横軸材7Bで構成されている。
図1に示すように、第1方向の横軸材7Aは、浴室の対向する2つの壁面27,28間に垂直に配置され、第2方向の横軸材7Bは、浴室の対向する他の2つの壁面29,30間に垂直に配置されている。よって、本実施形態では、第1方向の横軸材7と第2方向の横軸材7とは上から視て垂直に交差している。なお、縦手すり2を少しでも安定的に設置するために、第1方向の横軸材7Aの設置高さと第2方向の横軸材7Bの設置高さには、一定以上の差が設けられる。
【0022】
横軸材7A,7Bは、本実施形態では、
図6に示すように、筒状部材32、ボルト33等で構成されている。筒状部材32は、
図2に示すように、縦手すり本体16を貫通して設置されており、縦手すり本体16に形成された雌ねじに螺着された止めボルト34の先端に押圧されて軸方向へ移動不能に縦手すり本体16に固定されている。本実施形態では、止めボルト34として、金属製のボルトを使用しているが、全体が樹脂製のボルトや、金属製のボルトの先端部に樹脂が固着されたものなどを採用することにより、横軸材7A,7Bにキズをつけないようにすることができる。一方、ボルト33は、
図6に示すように、先端部が壁面押当部8に連結され、基端側が筒状部材32内に挿入されている。また、ボルト33には、筒状部材32の端部に係合した座金付ナット26が螺着されている。
【0023】
壁面押当部4は、
図6に示すように、壁面押圧板36、滑り止め部材37等で構成されている。壁面押圧板36としては、既述した天井面押圧板19と同様のものを採用することができる。滑り止め部材37としては、天井面押圧板19と天井面14との間に介設される滑り止め部材20と同様のものを採用できる。
【0024】
横突張力発生手段9は、横軸材7および壁面押当部8に、各壁面27〜30に対する突張力を発生させるものである。本実施形態では、横突張力発生手段9は、筒状部材32に挿入されたボルト33と、このボルト33に螺着され筒状部材32に当接した座金付ナット26とで主に構成されている。すなわち、座金付ナット26を廻すことで、筒状部材32からのボルト33の延出長さを調整でき、横軸材7A,7Bに突張力を発生させることができる。
【0025】
水密材11は、床面13と床面押当部4(滑り止め部材25)との間に水が浸入しないように、床面13と床面押当部4(滑り止め部材25)との境界をシールするものである。本実施形態では、水密材11としてコーキング剤が使用されている。なお、床面押当部4の支持板22と滑り止め部材25との間にも水が浸入しないように、これらの間に水密材(コーキング剤)を設けてもよい。
【0026】
以下、上記手すり装置1を浴室12内に設置する際の手順の一例を説明する。
【0027】
先ず、手すり装置1の設置に先立って、浴室12の床面13、天井面14、壁面27〜30を十分に乾燥させる。
【0028】
上記乾燥が完了した後、床面13において、床面押当部4の設置予定場所に、マスキング処置を施し、コーキング剤を塗布する。なお、必要に応じて、床面押当部4の支持板22と滑り止め部材25との間にもコーキング剤を塗布しておいてもよい。
【0029】
次いで、床面13に塗布されたコーキング剤の上に、縦手すり2に取り付けられた床面押当部4を載置し、縦手すり本体16から延出するボルト17の長さを調節することにより当該縦手すり2に突張力を発生させる。これにより、床面押当部4が床面13を押し付け、これらの間にあるコーキング剤が床面押出部4の外側へはみ出す。その後、床面押出部4の外側へはみ出した余分なコーキング剤を拭き取る。
【0030】
つぎに、縦手すり本体16に横軸材7A,7Bを挿通し、各横軸材7A,7Bの端部から延出するボルト33の長さを調節することにより、壁面押当部8を各壁面27〜30に押し当てながら、各横軸材7A,7Bに突張力を発生させる。その後、止めボルト33を締め付けて各横軸材7A,7Bと縦手すり2とを相互に固定する。
【0031】
その後、コーキング剤が固まることにより、手すり装置1の設置作業が完了し、縦手すり2は、鉛直方向を向いた状態で浴室12内に固定される。
【0032】
このようにして設置された手すり装置1によれば、使用者が縦手すり2を掴んで、当該縦手すり2に水平方向の力(水平力)が掛かっても、その水平力は、横軸材7等を介して壁面27〜30に支持されるとともに、床面13と床面押当部4との間の摩擦力と、天井面14と天井面押当部3との間の摩擦力とによっても支持される。このため、縦手すり2は、ぐらついたり、水平方向に移動することもなく、床面13と天井面14との間に安定的に固定された状態を維持する。
【0033】
浴室12を使用する際には、床面13が水で濡れることとなるが、手すり装置1では、水密材11によって、床面13と床面押当部4との間への水の浸入が防止されていることから、床面13と床面押当部4との間の摩擦力を、床面13が乾燥しているときと同程度に確保できる。このため、浴室12の使用により、床面13が水で濡れても、床面13が乾燥しているときと同様に、縦手すり2は安定した状態を維持することができる。
【0034】
<他の実施形態>
既述の実施形態においては、手すり装置1は浴室12に設置されたものであったが、手すり装置1は、浴室12以外の室内(例えばトイレ、洗面所、台所等の水回り)に設置して使用することも可能である。
【0035】
既述の実施形態において、天井面押当部3およびボルト17を省略した
図8に示すような手すり装置1Aとしても、一定の効果が得られる。この場合、縦手すり2Aに突張力が発生しないため、床面押当部4と床面13との摩擦力は低下するが、縦手すり2等の自重により、床面押当部4が床面13に押し当てられるため、一定の摩擦力は得られる。
【0036】
既述の実施形態では、縦手すり2は1本のみであったが、例えば
図9に示すように、第1の方向に縦手すり2を複数本(
図9では2本)設けた手すり装置1Bや、例えば
図10に示すように、第2の方向に縦手すり2を複数本(
図10では2本)設けた手すり装置1Cとしてもよい。
【0037】
既述の実施形態では、縦手すり2から両側方へ延出した第1の方向の横軸材7Aは、縦手すり2内で連続した各1本の部材からなるものであったが、例えば
図11に示すように、縦手すり2から壁面27側へ延出する第1の方向の横軸材7Aと、縦手すり2から壁面28側へ延出する第1の方向の横軸材7Aとを別々の部材からなるものとしてもよい。また、同図に示すように、縦手すり2から壁面29側へ延出する第2の方向の横軸材7Bと、縦手すり2から壁面30側へ延出する第2の方向の横軸材7Bとを別々の部材からなるものとしてもよい。
【0038】
既述の実施形態では、床面押当部4の設置予定場所に先にコーキング剤を塗布し、当該コーキング剤の上に、床面押当部4を載せ、床面押出部4からはみ出した余分なコーキング剤を拭き取るようにしていたが、コーキング剤を塗布する前に、床面押当部4および縦手すり2を設置し、その後、床面13と床面押当部4との間に水が浸入しないように、床面13と床面押当部4の外縁部の境界のみに全周に亘ってコーキング剤(水密材11)を塗布するようにしてもよい(
図12参照)。また、既述の実施形態では、必要に応じて、床面押当部4の支持板22と滑り止め部材25との間にもコーキング剤を塗布しておいてもよいとしたが、当該コーキング剤を塗布する前に、床面押当部4(支持板22と滑り止め部材25との間にコーキング剤が塗布されていない床面押当部4)と縦手すり2を設置し、その後、支持板22と滑り止め部材25との間に水が浸入しないように、滑り止め部材25と支持板22の外縁部の境界のみに全周に亘ってコーキング剤(水密材)を塗布するようにしてもよい(不図示)。