(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から
図14を参照して接着成形食品の製造方法、接着成形食品用の接着成分分散液、および、接着成形食品を説明する。
[接着成形食品用の接着成分分散液]
接着成形食品用の接着成分分散液は、接着成分、および、接着成分を分散させる水溶性液状物を含む。
接着成分は、トランスグルタミナーゼ、および、その基質となるグルタミンとリジンとを含むタンパク質を含む。
【0015】
トランスグルタミナーゼは、その基質となるタンパク質においてグルタミン残基とリジン残基との間にペプチド結合を生じさせて架橋構造を生成するための酵素である。なお、トランスグルタミナーゼは、カルシウム依存性のものとカルシウム非依存性のものとに分類することができる。前者の例としては、動物の肝臓由来のものや魚由来のものを挙げることができる。一方、後者の例としては、微生物由来のものを挙げることができる。本開示の技術にあっては、これらのうち何れのトランスグルタミナーゼを採用することは可能であるが、広範囲な食品への利用の見地からは、カルシウム非依存性のものが好ましい。特に、放線菌(Streptomyces,Streptoverticillium mobaraense)もしくは細菌(Bacillus)に由来するトランスグルタミナーゼはカルシウム非依存性であり、容易かつ安価に入手できるので好ましい。なお、本実施の形態における接着成形食品用の接着成分分散液においては、特に記載がない限り、放線菌ストレプトベルチシリウム(Streptoverticillium mobaraense)由来のものであって、その比活性が10000(ユニット/g)のトランスグルタミナーゼを用いている。
なお、トランスグルタミナーゼの比活性が5000(ユニット/g)であれば、比活性が10000(ユニット/g)のトランスグルタミナーゼの重量に対して、それの約2倍の重量のトランスグルタミナーゼを用いればよい。また、比活性が1000(ユニット/g)であれば、比活性が10000(ユニット/g)のトランスグルタミナーゼの重量に対して、それの約10倍の重量のトランスグルタミナーゼを用いればよい。そして、比活性は、本実施の形態におけるトランスグルタミナーゼが有する比活性の1/10である1000(ユニット/g)以上、10000(ユニット/g)以下であることが好ましい。
【0016】
トランスグルタミナーゼの基質となるタンパク質は、上述のようにグルタミン残基とリジン残基とをアミノ酸組成として有するタンパク質であれば採用することは可能である。ただし、トランスグルタミナーゼによる優れた接着効果を有する点で、カゼイン類を採用することが好ましい。ここで、カゼイン類は、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム等のカゼインの塩類、および、カゼイン類を含有する粉乳の形態であってもよい。また、カゼイン類は、これらを酵素、酸、または、アルカリで加水分解した形態であってもよい。本開示の技術にあっては、これらのうち何れの形態も採用することは可能であるが、高い接着性、好適な水溶解性、優れた経済性等を有する観点から、カゼインナトリウムを採用することが好ましい。
【0017】
なお、接着成分は、上述したトランスグルタミナーゼ、および、その基質となるタンパク質に加え、食品用賦形剤を任意の成分として含めることも可能である。ここで、食品用賦形剤としては、例えば、乳糖、蔗糖、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、デキストリン、分岐デキストリン、サイクロデキストリン、グルコース、馬鈴薯澱粉等の澱粉類、多糖類、ガム類、乳化剤、ペクチン、油脂等、食品用賦形剤であれば特に限定されるものではない。ただし、トランスグルタミナーゼ、および、カゼイン類による食品原料の接着効果に影響を及ぼさないこと、および、臭いが無いことの理由から、馬鈴薯澱粉等の澱粉類、および、分岐デキストリンが好ましい。また、これら食品用賦形剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
また、接着成分は、上述した食品用賦形剤の他に、他の任意の成分として、分離大豆タンパク、濃縮大豆タンパク、抽出大豆タンパク、脱脂大豆タンパクなどの大豆タンパクを含んでもよい。また、接着成分は、小麦グルテンなどの小麦タンパク、および、小麦タンパクを含有する小麦粉、とうもろこしタンパク、卵白や卵白アルブミン等の卵タンパク等のカゼイン類以外の他のタンパク質を含有してもよい。
水溶性液状物は、アルコール、もしくは、アルコールと水との混合溶媒である。
【0019】
アルコールは、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン(グリセロール)、エリスリトール、D‐トレイトール、L‐トレイトール、D‐アラビニトール、L‐アラビニトール、キシリトール、リビトール(アドニトール)、D‐ソルビトール、D‐イジトール、ガラクチトール、D‐グルシトール、マンニトール、β‐セドヘプチトール、ボレミトール、ペルセイトール、D‐エリトロ‐D‐ガラクト‐オクチトールの中から選択される少なくとも1種類等、水との相溶性を有する2価以上のアルコールであれば特に限定されるものではない。ただし、トランスグルタミナーゼ、および、カゼイン類が溶解せずに接着反応が進行しないという理由から、3価のアルコールの一種であるグリセリン、2価のアルコールの一種であるプロピレングリコール、および、これらの組み合わせが好ましい。
【0020】
接着成分分散液と混合される対象となる食品材料は、例えば、牛肉、豚肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉、家兎肉、鶏肉等のいわゆる畜肉、スケトウダラ、サンマ、アジ、イワシ、カツオ、サケ、ハモ、タイ、シタビラメ、カレイ等の硬骨魚類である。また、接着成分分散液と混合される対象となる食品材料は、サメ、エイなどの軟骨魚類、エビ、カニ、ロブスターなどの甲殻類、イカ、タコなどの軟体動物、ホタテ、アワビなどの貝類等の魚介類である。また、接着成分分散液と混合される対象となる食品材料は、イクラ、スジコなどの魚卵類等の食品素材そのもの、並びに、ハム、ハンバーグ、ソーセージ、蒲鉾、竹輪、はんぺん、つみれなどのような、畜肉、スケトウタラ、イカ、鰯などの練り製品用原料を用いて加工製造される練り製品、チーズ、豆腐、麺類、海苔などの加工食品である。
【0021】
[接着成分分散液]
図1を参照して、2価以上のアルコールの一種としてグリセリンを配合した液状物に接着成分を分散させたときの接着成分分散液に関する実施例、および、比較例を説明する。
図1に示すように、実施例1から実施例5の接着成分分散液の各々、および、比較例1から比較例2の接着成分分散液の各々は、以下の配合で生成された。
【0022】
[実施例1]
実施例1の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを60:40の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが60重量部であり、水が40重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0023】
[実施例2]
実施例2の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを70:30の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが70重量部であり、水が30重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0024】
[実施例3]
実施例3の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0025】
[実施例4]
実施例4の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを90:10の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが90重量部であり、水が10重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0026】
[実施例5]
実施例5の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを100:0の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが100重量部であり、水が0重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0027】
[比較例1]
比較例1の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物がグリセリンと水とを0:100の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、グリセリンが0重量部であり、水が100重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0028】
[比較例2]
比較例2の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物がグリセリンと水とを50:50の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、グリセリンが50重量部であり、水が50重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0029】
[分散性の評価方法]
上述した接着成分分散液において、各液状物に接着成分を分散させてその分散性を評価した。この分散性の評価は、以下の評価基準に基づいて行われた。
○:接着成分と液状物との混合性が良く、容易に分散できる。
△:接着成分と液状物との混合性が悪く、ダマができる。
×:接着成分と液状物との混合性が悪く、分散できない。
[評価]
図1に示すように、実施例1から実施例5のように水溶性液状物がグリセリンを比較的多く含む接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が比較的高く、特に、水溶性液状物におけるグリセリンの配合比率が70%以上であるとき、すなわち、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが70重量部以上であるときには、接着成分の分散性が高くなることが認められた。これに対し、比較例1から比較例2のように比較例用液状物がグリセリンを比較的少なく含む接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が得られないことが認められた。
【0030】
[作業性の評価方法]
上述した接着成分分散液において、各液状物に接着成分を分散させた後、雰囲気温度15℃の冷蔵状態において各液状物の経時的な物性変化を観察してその作業性を評価した。この作業性の評価は、以下の評価基準に基づいて行われた。
○:接着成分を分散させた液状物が、30分以上ゲル化しない。
△:接着成分を分散させた液状物が、30分以内で、やや粘調な液状になる。
×:接着成分を分散させた液状物が、30分以内で、ゲル化もしくは粘調な液状になる。
−:接着成分が水溶性液状物に分散しない。
【0031】
[評価]
図1に示すように、実施例1から実施例5のように水溶性液状物がグリセリンを比較的多く含む接着成分分散液によれば、接着成分を分散した水溶性液状物の粘度の上昇が比較的低く抑えられ、特に、水溶性液状物におけるグリセリンの配合比率が70%以上であるとき、すなわち、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが70重量部以上であるときには、接着成分を分散した水溶性液状物の粘度の上昇が低く抑えられることが認められた。これに対し、比較例1から比較例2のように比較例用液状物がグリセリンを比較的少なく含む接着成分分散液によれば、そもそも接着成分が比較例用液状物に分散しないことが認められた。
【0032】
[接着成分分散液]
図2を参照してサラダ油、乳化性油脂、乳化油脂をアルコールとして配合した比較例用液状物に接着成分を分散させた接着成分分散液に関する比較例を説明する。
図2に示すように、比較例3から比較例13の接着成分分散液の各々が以下の配合で生成された。
【0033】
[比較例3]
比較例3の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物がサラダ油と水とを100:0の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、サラダ油が100重量部であり、水が0重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0034】
[比較例4]
比較例4の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化性油脂(エマテックN−100V、理研ビタミン製)と水とを100:0の割合で含む。なお、乳化性油脂は、菜種油と乳化剤とを90:10の割合を含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化性油脂が100重量部であり、水が0重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0035】
[比較例5]
比較例5の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化性油脂(比較例4と同じ)と水とを90:10の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化性油脂が90重量部であり、水が10重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0036】
[比較例6]
比較例6の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化性油脂(比較例4と同じ)と水とを80:20の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化性油脂が80重量部であり、水が20重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0037】
[比較例7]
比較例7の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化性油脂(比較例4と同じ)と水とを70:30の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化性油脂が70重量部であり、水が30重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0038】
[比較例8]
比較例8の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化性油脂(比較例4と同じ)と水とを60:40の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、グリセリンが60重量部であり、水が40重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0039】
[比較例9]
比較例9の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化油脂(スーパーフレンジーM、理研ビタミン製)と水とを100:0の割合で含む。なお、乳化油脂は、食用植物油脂と乳化剤とソルビトールを含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化油脂が100重量部であり、水が0重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0040】
[比較例10]
比較例10の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化油脂(比較例9と同じ)と水とを90:10の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化油脂が90重量部であり、水が10重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0041】
[比較例11]
比較例11の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化油脂(比較例9と同じ)と水とを80:20の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化油脂が80重量部であり、水が20重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0042】
[比較例12]
比較例12の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化油脂(比較例9と同じ)と水とを70:30の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化油脂が70重量部であり、水が30重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0043】
[比較例13]
比較例13の接着成分分散液においては、水溶性液状物に代わる比較例用液状物が乳化油脂(比較例9と同じ)と水とを60:40の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化油脂が60重量部であり、水が40重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0044】
[分散性の評価方法]
上述した接着成分分散液において、各比較例用液状物に接着成分を分散させてその分散性を評価した。この分散性の評価は、以下の評価基準に基づいて行われた。
○:接着成分と比較例用液状物との混合性が良く、容易に分散できる。
△:接着成分と比較例用液状物との混合性が悪く、ダマができる。
×:接着成分と比較例用液状物との混合性が悪く、分散できない。
【0045】
[評価]
図2に示すように、比較例3のように比較例用液状物がサラダ油からなる接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が高くなることが認められた。
また、比較例4から比較例8のように比較例用液状物が乳化性油脂を多く含む接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が比較的高く、特に、比較例用液状物における乳化性油脂の配合比率が80%以上であるときには、すなわち、比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化性油脂が80重量部以上であるときには、接着成分の分散性が高くなることが認められた。
また、比較例9のように比較例用液状物が乳化油脂からなる接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が高くなることが認められた。これに対し、比較例10から比較例13のように比較例用液状物が乳化油脂と水との混合物からなる接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が得られないことが認められた。
【0046】
[作業性の評価方法]
上述した接着成分分散液において、各比較例用液状物に接着成分を分散させた後、雰囲気温度15℃の冷蔵状態において各比較例用液状物の経時的な物性変化を観察してその作業性を評価した。この作業性の評価は、以下の評価基準に基づいて行われた。
○:接着成分を分散させた比較例用液状物が、30分以上ゲル化しない。
△:接着成分を分散させた比較例用液状物が、30分以内で、やや粘調な液状になる。
×:接着成分を分散させた比較例用液状物が、30分以内で、ゲル化もしくは粘調な液状になる。
−:接着成分が比較例用液状物に分散しない。
【0047】
[評価]
図2に示すように、比較例3のように比較例用液状物がサラダ油からなる接着成分分散液によれば、接着成分を分散した比較例用液状物の粘度の上昇が低く抑えられることが認められた。また、比較例4から比較例6のように、比較例用液状物が乳化性油脂を特に多く含む接着成分分散液によれば、接着成分を分散した比較例用液状物の粘度の上昇が低く抑えられることが認められた。これに対し、比較例7から比較例8のように、上述した比較例4から比較例6と比較して比較例用液状物における乳化性油脂の含有比率が低い接着成分分散液によれば、接着成分を分散した比較例用液状物の粘性が高くなることが認められた。また、比較例9のように、比較例用液状物が乳化油脂のみの接着成分分散液によれば、接着成分を分散した比較例用液状物の粘性が高くなることが認められた。さらに、比較例10から比較例13のように、比較例用液状物が乳化油脂を多く含む接着成分分散液によれば、そもそも接着成分が比較例用液状物に分散しないことが認められた。
【0048】
[接着成分分散液]
図3を参照して2価以上のアルコールの一種であるプロピレングリコールをアルコールとして配合した液状物に接着成分を分散させた接着成分分散液に関する実施例および比較例を説明する。
図3に示すように、実施例6から実施例10の接着成分分散液の各々、および、比較例14から比較例15の接着成分分散液の各々が以下の配合で生成された。
【0049】
[実施例6]
実施例6の接着成分分散液においては、水溶性液状物がプロピレングリコールと水とを60:40の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが60重量部であり、水が40重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0050】
[実施例7]
実施例7の接着成分分散液においては、水溶性液状物がプロピレングリコールと水とを70:30の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが70重量部であり、水が30重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0051】
[実施例8]
実施例8の接着成分分散液においては、水溶性液状物がプロピレングリコールと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0052】
[実施例9]
実施例9の接着成分分散液においては、水溶性液状物がプロピレングリコールと水とを90:10の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが90重量部であり、水が10重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0053】
[実施例10]
実施例10の接着成分分散液においては、水溶性液状物がプロピレングリコールと水とを100:0の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが100重量部であり、水が0重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0054】
[比較例14]
比較例14の接着成分分散液においては、比較例用液状物がプロピレングリコールと水とを0:100の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが0重量部であり、水が100重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0055】
[比較例15]
比較例15の接着成分分散液においては、比較例用液状物がプロピレングリコールと水とを50:50の割合で含む。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが50重量部であり、水が50重量部である。また、この比較例用液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する比較例用液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、比較例用液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0056】
[分散性の評価方法]
上述した接着成分分散液において、液状物に接着成分を分散させてその分散性を評価した。この分散性の評価は、以下の評価基準に基づいて行われた。
○:接着成分と液状物との混合性が良く、容易に分散できる。
△:接着成分と液状物との混合性が悪く、ダマができる。
×:接着成分と液状物との混合性が悪く、分散できない。
[評価]
図3に示すように、実施例6から実施例10のように水溶性液状物がプロピレングリコールを比較的多く含む接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が比較的高く、特に、水溶性液状物におけるプロピレングリコールの配合比率が70%以上であるとき、すなわち、水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが70重量部以上であるときには、接着成分の分散性が高くなることが認められた。これに対し、比較例14から比較例15のように比較例用液状物がプロピレングリコールを比較的少なく含む接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が得られないことが認められた。
【0057】
[作業性の評価方法]
上述した各液状物に接着成分を分散させた後、雰囲気温度15℃の冷蔵状態において各液状物の経時的な物性変化を観察して、その作業性を評価した。この作業性の評価は、以下の評価基準に基づいて行われた。
○:接着成分を分散させた液状物が、30分以上ゲル化しない。
△:接着成分を分散させた液状物が、30分以内で、やや粘調な液状になる。
×:接着成分を分散させた液状物が、30分以内で、ゲル化もしくは粘調な液状になる。
−:接着成分が液状物に分散しない。
【0058】
[評価]
図3に示すように、実施例6から実施例10のように水溶性液状物がプロピレングリコールを比較的多く含む接着成分分散液によれば、接着成分を分散した水溶性液状物の粘度の上昇が比較的低く抑えられ、特に、水溶性液状物におけるプロピレングリコールの配合比率が70%以上であるとき、すなわち、水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが70重量部以上であるときには、接着成分を分散した水溶性液状物の粘度の上昇が低く抑えられることが認められた。これに対し、比較例14から比較例15のように比較例用液状物がプロピレングリコールを比較的少なく含む接着成分分散液によれば、そもそも接着成分が比較例用液状物に分散しないことが認められた。
【0059】
[接着成分分散液]
図4を参照して各液状物にグリセリンを配合した接着成分分散液において接着成分の配合割合を変化させた実施例および比較例を説明する。
図4に示すように、実施例11から実施例16の接着成分分散液の各々、および、比較例16から比較例18の接着成分分散液の各々が以下の配合で生成された。
【0060】
[実施例11]
実施例11の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、1.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.40重量部であり、カゼインナトリウムが66.27重量部である。
【0061】
[実施例12]
実施例12の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.30重量部であり、カゼインナトリウムが49.70重量部である。
【0062】
[実施例13]
実施例12の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、2.5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であり、カゼインナトリウムが39.76重量部である。
【0063】
[実施例14]
実施例14の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、4:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.15重量部であり、カゼインナトリウムが24.85重量部である。
【0064】
[実施例15]
実施例15の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、5:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.12重量部であり、カゼインナトリウムが19.88重量部である。
【0065】
[実施例16]
実施例16の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、6:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.10重量部であり、カゼインナトリウムが16.57重量部である。
【0066】
[実施例17]
実施例17の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、7:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.086重量部であり、カゼインナトリウムが14.20重量部である。
【0067】
[比較例16]
比較例16の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、1:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.60重量部であり、カゼインナトリウムが99.40重量部である。
【0068】
[比較例17]
比較例17の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、8:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.075重量部であり、カゼインナトリウムが12.43重量部である。
【0069】
[比較例18]
比較例18の接着成分分散液においては、水溶性液状物がグリセリンと水とを80:20の割合で含む。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重量部であり、水が20重量部である。また、この水溶性液状物に分散される接着成分は、トランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.006:0.994の割合で含む。また、接着成分を分散する水溶性液状物と接着成分の割合は、10:1である。そして、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.060重量部であり、カゼインナトリウムが9.94重量部である。
【0070】
[分散性の評価方法]
上述した接着成分分散液において、水溶性液状物に接着成分を分散させてその分散性を評価した。この分散性の評価は、以下の評価基準に基づいて行われた。
○:接着成分と水溶性液状物との混合性が良く、容易に分散できる。
△:接着成分と水溶性液状物との混合性が悪く、ダマができる。
×:接着成分と水溶性液状物との混合性が悪く、分散できない。
[評価]
図4に示すように、実施例11から実施例17、および比較例17から比較例18のように水溶性液状物に対する接着成分の比率が比較的低い接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が高くなることが確認された。これに対し、比較例16のように水溶性液状物に対する接着成分の比率が比較的高い接着成分分散液によれば、接着成分の分散性が得られないことが認められた。
【0071】
[作業性の評価方法]
上述した接着成分分散液において、水溶性液状物に接着成分を分散させた後、雰囲気温度15℃の冷蔵状態において水溶性液状物の経時的な物性変化を観察して、その作業性を評価した。この作業性の評価は、以下の評価基準に基づいて行われた。
○:接着成分を分散させた水溶性液状物が、30分以上ゲル化しない。
△:接着成分を分散させた水溶性液状物が、30分以内で、やや粘調な液状になる。
×:接着成分を分散させた水溶性液状物が、30分以内で、ゲル化もしくは粘調な液状になる。
−:接着成分が水溶性液状物に分散しない。
【0072】
[評価]
図4に示すように、実施例11から実施例17、および、比較例17から比較例18のように水溶性液状物に対する接着成分の比率が比較的低い接着成分分散液によれば、接着成分を分散した水溶性液状物の粘度の上昇が低く抑えられることが認められた。これに対し、比較例16のように水溶性液状物に対する接着成分の比率が比較的高い接着成分分散液によれば、そもそも接着成分が水溶性液状物に分散しないことが認められた。
【0073】
[接着力の評価方法]
上述した接着成分分散液において、各液状物に接着成分を分散させてから30分間静置し、その後に食品原料の一種である原料肉と混合して接着工程を行った。この接着工程は、(ステップ1)〜(ステップ7)の手順を経て行った。
(ステップ1)接着する鶏ササミ肉を2cm角程度にカットし、接着力測定用の原料肉とした。
(ステップ2)カットした原料肉500gと、接着成分5gを各水準の割合に相当する液状物に分散させた接着成分分散液とを混合した。例えば、接着成分5gを液状物7.5gに分散させた接着成分分散液12.5gと原料肉500gとを混合して、実施例11における混合した原料肉を得た。また、例えば、接着成分5gを液状物10.0gに分散させた接着成分分散液15.0gと原料肉500gとを混合して、実施例12における混合した原料肉を得た。また、例えば、接着成分5gを液状物12.5gに分散させた接着成分分散液17.5gと原料肉500gとを混合して、実施例13における混合した原料肉を得た。また、例えば、接着成分5gを液状物50.0gに分散させた接着成分分散液55.0gと原料肉500gとを混合して、比較例18における混合した原料肉を得た。
(ステップ3)混合した原料肉を成形型(12.5×8.5×4.0cm)に入れ、接着面に隙間ができないように圧力をかけ、密封した。
(ステップ4)接着肉(接着した原料肉)を雰囲気温度4℃の冷蔵状態において1時間静置した後、冷凍した。
(ステップ5)冷凍した状態にある接着肉をバンドソーで短冊状(1.0×8.5×4.0cm)にカットした。
(ステップ6)カットした接着肉を室温雰囲気で1時間静置し、解凍した。
(ステップ7)解凍した接着肉の接着力を評価した。
そして、接着肉の接着力の評価は、以下の評価基準に基づいて行った。
○:接着している(合格)。
解凍した接着肉の端を手で持ち、振っても剥がれない。
△:一部接着はしているが、弱い。
解凍した接着肉の端を手で持ち上げても、接着面から剥がれない。
×:接着していない(不合格)
解凍した接着肉の端を手で持ち、持ち上げようとすると接着面から剥がれる。
【0074】
[評価]
図5に示すように、実施例1から実施例5のようにグリセリンを比較的多く含む水溶性液状物に接着成分を分散させたときには、接着肉の接着力が高くなることが認められた。
これに対し、比較例3のようにサラダ油からなる比較例用液状物に接着成分を分散させたときには、接着肉の接着力が得られないことが認められた。
【0075】
また、比較例4から比較例6のように乳化性油脂を比較的多く含む比較例用液状物に接着成分を分散させたときには、接着肉の接着力が得られないことが認められた。
【0076】
また、
図6に示すように、実施例6から実施例10のようにプロピレングリコールを比較的多く含む水溶性液状物に接着成分を分散させたときには、接着肉の接着力が高く、特に、水溶性液状物におけるプロピレングリコールの配合比率が70%以上であるとき、すなわち、水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが70重量部以上であるときには、接着肉の接着力が特に高くなることが認められた。
【0077】
また、
図7に示すように、実施例11から実施例17のように水溶性液状物に対する接着成分の比率が適度に低く、水溶性液状物に対するトランスグルタミナーゼの比率が一定程度以上となるとき、すなわち、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.086重量部以上であるときには、接着肉の接着力が高くなることが確認された。特に、実施例12から実施例15の接着成分分散液のように水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.12重量部以上0.30重量部以下であるときには、接着肉の接着力がより一層高くなることが確認された。これに対し、比較例17から比較例18のように水溶性液状物に対する接着成分の比率が極端に低く、水溶性液状物に対するトランスグルタミナーゼの比率が一定程度未満となるとき、すなわち、水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.075重量部未満であるときには、接着肉の接着力が得られないことが認められた。
【0078】
[評価の総括]
図8から
図14を参照して、上述した実施例および比較例についての分散性・作業性・接着力の評価の結果を総括して説明する。
図8に示すように、実施例1から実施例5のように水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが60重量部以上であるときには、水溶性液状物に接着成分を分散させたときの分散性が与えられるとともに、接着成分を分散した水溶性液状物の粘度の上昇が低く抑えられて作業性の条件も満たす。また、実施例1から実施例5のように水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であるときには、接着成分を分散した水溶性液状物を原料肉に添加したときの接着肉の接着力が与えられる。すなわち、実施例1から実施例5の何れにおいても、分散性・作業性・接着力の全ての条件が充足される。特に、実施例2から実施例5のように水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが70重量部以上であるときには、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であるならば、分散性・作業性・接着力の全ての条件がより一層高いレベルで充足される。
【0079】
また、
図9に示すように、実施例6から実施例10のように水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが60重量部以上であるときには、水溶性液状物に接着成分を分散させたときの分散性が与えられるとともに、接着成分を分散した水溶性液状物の粘度の上昇が低く抑えられて作業性の条件も満たす。また、実施例6から実施例10のように水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であるときには、接着成分を分散した水溶性液状物を原料肉に添加したときの接着肉の接着力が与えられる。すなわち、実施例6から実施例10の何れにおいても、分散性・作業性・接着力の全ての条件が充足される。特に、実施例8から実施例10のように水溶性液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが80重量部以上であるときには、トランスグルタミナーゼが0.24重量部であるならば、分散性・作業性・接着力の全ての条件がより一層高いレベルで充足される。
【0080】
また、
図10に示すように、実施例11から実施例17のように水溶性液状物を100重量部としたとき、グリセリンが80重要部であるときには、接着成分に対する水溶性液状物の重量比が1.5以上7.0以下であるならば、水溶性液状物に接着成分を分散させたときの分散性が与えられるとともに、接着成分を分散した水溶性液状物の粘度の上昇が低く抑えられて作業性の条件も満たす。また、実施例11から実施例17のように水溶性液状物を100重量部としたとき、接着成分に対する水溶性液状物の重量比が1.5以上7.0以下であるときには、接着成分を分散した水溶性液状物を原料肉に添加したときの接着肉の接着力が与えられる。すなわち、実施例11から実施例17の何れにおいても、分散性・作業性・接着力の全ての条件が充足される。特に、実施例12から実施例15のように水溶性液状物を100重量部としたとき、接着成分に対する水溶性液状物の重量比が2.0以上5.0以下であるときには、グリセリンが80重量部であるならば、分散性・作業性・接着力の全ての条件がより一層高いレベルで充足される。
なお、トランスグルタミナーゼの比活性が1000(ユニット/g)以上であれば、上述した重量比の範囲で、接着成分のなかのトランスグルタミナーゼの重量が過大となること、トランスグルタミナーゼの重量に対してその基質となるタンパク質の重量が過小となること、これらに起因した接着力の不足を抑えられる。また、10000(ユニット/g)以下であれば、これもまた、上述した重量比の範囲で、接着成分のなかのトランスグルタミナーゼの重量が過小となること、トランスグルタミナーゼの重量に対してその基質となるタンパク質の重量が過大となること、これらに起因した分散性の不足を抑えられる。
【0081】
これに対し、
図11に示すように、比較例1から比較例2のように比較例用液状物を100重量部としたとき、グリセリンが50重量部未満であるときには、比較例用液状物に接着成分を分散させたときの分散性の条件が充足されない。
【0082】
また、比較例3のように比較例用液状物を100重量部としたとき、サラダ油が100重量部であるときには、比較例用液状物に接着成分を分散させたときの分散性の条件や接着成分を分散した比較例用液状物の粘性に基づく作業性の条件は充足するものの、接着成分を分散した比較例用液状物を原料肉に添加したときの接着肉の接着力が与えられない。すなわち、接着成分の分散剤としてサラダ油を採用したときには、比較例用液状物に対して接着成分を分散させる機能は発揮するものの、接着成分を分散させた比較例用液状物を原料肉に添加したときの接着力は得られない。
【0083】
また同様に、
図11および
図12に示すように、比較例4から比較例8のように比較例用液状物に乳化性油脂を加えたときには、比較例用液状物に接着成分を分散させたときの分散性の条件は充足するものの、接着成分を分散した比較例用液状物を原料肉に添加したときの接着肉の接着力が与えられない。すなわち、接着成分の分散剤として乳化油脂を採用したときにも、比較例用液状物に対して接着成分を分散させる機能は発揮するものの、接着成分を分散させた比較例用液状物を原料肉に添加したときの接着力は得られない。
【0084】
また、
図12に示すように、比較例9のように比較例用液状物を100重量部としたとき、乳化油脂が100重量部であるときにも、比較例用液状物に接着成分を分散させたときの分散性の条件は充足するものの、接着成分を分散した比較例用液状物を原料肉に添加したときの接着肉の接着力が与えられない。すなわち、接着成分の分散剤として乳化油脂を採用したときにも、比較例用液状物に対して接着成分を分散させる機能は発揮するものの、接着成分を分散させた比較例用液状物を原料肉に添加したときの接着力は得られない。
【0085】
したがって、こうした評価の結果により、接着肉の接着力を得るためには、単に接着成分を分散させるための分散剤を液状物に加えるのみでは足らず、上述したグリセリンおよびプロピレングリコールも含め、水との相溶性を有した2価以上のアルコールを液状物に加える必要があることが確認された。
【0086】
また、
図12および
図13に示すように、比較例10から比較例13のように乳化油脂と水とを混合して比較例用液状物を構成したときには、乳化油脂が分散剤としての機能を発揮せず、比較例用液状物に接着成分を分散させたときの分散性の条件を充足しない。
【0087】
また、
図13に示すように、比較例14から比較例15のように比較例用液状物を100重量部としたとき、プロピレングリコールが50重量部未満であるときには、比較例用液状物に接着成分を分散させたときの分散性の条件が充足されない。
【0088】
また、
図14に示すように、比較例16のように水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼの重量比率が上述した適正な範囲よりも大きいときには、水溶性液状物に接着成分を分散させたときの分散性の条件が充足されない。そのため、接着成分を分散させた水溶性液状物を原料肉に添加したときの接着力も得られない。
【0089】
また、比較例17から比較例18のように水溶性液状物を100重量部としたとき、トランスグルタミナーゼの重量比率が上述した適正な範囲よりも小さいときには、水溶性液状物に接着成分を分散させたときの分散性の条件は充足されるものの、接着成分を分散させた水溶性液状物を原料肉に添加したときの接着力が得られない。
【0090】
[接着成形食品としての特性]
上述した実施例の接着成分分散液を食品原料と混合して得られる接着成形食品としての特性を評価した。なお、ここでは一例として、上述した接着成分分散液のうち実施例3の接着成分分散液を食品原料の一種である鶏ササミ肉に混合して得られる接着肉を評価対象とし、ガスクロマトグラフ法を用いて接着肉に含まれるグリセリンの比率を評価した。その結果、接着肉に含まれるグリセリンの比率の評価結果として1.8%という数値が得られた。この数値は、接着肉への接着成分分散液の混合量に基づく計算値である1.93%とほぼ一致する。このことから、上述した接着成分分散液を食品原料に混合して得られる接着成形食品には、接着成分の分散剤として用いられる2価以上のアルコールが保持されることが確認された。
なお、接着力の評価方法において鶏ササミ肉を豚もも肉や硬骨魚類などに変更して同様の評価を行った結果、実施例1から実施例17と同じく、各比較例よりも良好な接着性が認められた。
また、トランスグルタミナーゼの比活性が、10000(ユニット/g)であって、トランスグルタミナーゼの重量比率を比率A、カゼインナトリウムの重量比率を比率B(=1−A)とするとき、下記条件を満たす範囲において、各実施例と同様に、分散性・作業性・接着力の全ての条件が充足されることが確認された。
A×比活性/10000:B=0.006±0.003:0.994±0.003
また、トランスグルタミナーゼの比活性が、5000(ユニット/g)であって、トランスグルタミナーゼの重量比率を比率A、カゼインナトリウムの重量比率を比率B(=1−A)とするとき、下記条件を満たす範囲において、各実施例と同様に、分散性・作業性・接着力の全ての条件が充足されることが確認された。
A×比活性/10000:B=0.012±0.006:0.988±0.006
また、トランスグルタミナーゼの比活性が、1000(ユニット/g)であって、トランスグルタミナーゼの重量比率を比率A、カゼインナトリウムの重量比率を比率B(=1−A)とするとき、下記条件を満たす範囲において、各実施例と同様に、分散性・作業性・接着力の全ての条件が充足されることが確認された。
A×比活性/10000:B=0.060±0.030:0.994±0.030
例えば、実施例3のトランスグルタミナーゼの比活性を10000(ユニット/g)から1000(ユニット/g)に変更し、接着成分としてトランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.060:0.940の割合に変更した場合においても、分散性・作業性・接着力の全ての条件が充足されることが確認された。また、実施例3のトランスグルタミナーゼの比活性を10000(ユニット/g)から5000(ユニット/g)に変更し、接着成分としてトランスグルタミナーゼとカゼインナトリウムとを0.012:0.988の割合に変更した場合においても、分散性・作業性・接着力の全ての条件が充足されることが確認された。
そして、分散性・作業性・接着力の全ての条件が満たされるためには、トランスグルタミナーゼの比活性が高いほど、トランスグルタミナーゼの至適な重量比率が小さく、また、トランスグルタミナーゼにおける至適な重量比率の範囲も小さいことが認められた。以上のように、至適となる具体的な重量比率や、それの変更に際しての至適な傾向が認められるため、評価に用いられる食品原料が変わるとしても、また、トランスグルタミナーゼの比活性が変わるとしても、トランスグルタミナーゼの重量比率や、カゼインナトリウムの重量比率を、都度、適宜至適な範囲とすることは可能である。
【0091】
以上、上述した実施の形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)水溶性液状物は、2価以上のアルコール自体、もしくは、水に対して2価以上のアルコールが加えられることにより構成されている。これにより、水溶性液状物に対するトランスグルタミナーゼおよびその基質となるタンパク質の分散性や作業性が高められる。また、2価以上のアルコールの存在によって水溶性液状物のゲル化が抑えられるため、食品原料の接着時における作業性も併せて高められる。特に、水溶性液状物を100重量部としたとき、2価以上のアルコールが60重量部以上であり、接着成分に対する水溶性液状物の重量比が1.5以上7.0以下であるため、食品原料の接着時における分散性、作業性、接着力の全ての条件を充足することが可能となる。
【0092】
(2)水溶性液状物を100重量部としたとき、2価以上のアルコールが70重量部以上であり、トランスグルタミナーゼが0.12重量部以上0.30重量部以下であるときには、食品原料の接着時における分散性、作業性、接着力の全てをより一層高いレベルで充足することが可能となる。
【0093】
(3)水溶性液状物に含まれる2価以上のアルコールがグリセリン又はプロピレングリコールであることから、トランスグルタミナーゼおよびその基質となるタンパク質が水溶性液状物に溶解しにくい。そして、この水溶性液状物を原料肉に添加すると、水溶性液状物に溶解せずに分散した状態にあるトランスグルタミナーゼおよびその基質となるタンパク質が原料肉に含まれる水分に徐々に溶け出してグルタミンとリジンとの間の架橋反応が促進される。すなわち、水溶性液状物を原料肉に添加しない限り、水溶性液状物内でトランスグルタミナーゼが架橋反応を促進しないため、トランスグルタミナーゼおよびその基質となるタンパク質を水溶性液状物に混合してからの作業猶予時間を十分に確保することが可能となる。また、接着成分分散液としての保存管理も容易となる。
【0094】
(4)2価以上のアルコールを水溶性液状物に加えてトランスグルタミナーゼおよびその基質となるタンパク質の分散性を高めることにより、水溶性液状物に含まれるトランスグルタミナーゼおよびその基質となるタンパク質が食品原料に対して万遍なく均一に添加される。また、2価以上のアルコールを水溶性液状物に加えることにより、水溶性液状物のゲル化も併せて抑えられることから、この点でも水溶性液状物に含まれるトランスグルタミナーゼおよびその基質となるタンパク質が食品原料に対して万遍なく均一に添加される。そして、こうしてトランスグルタミナーゼおよびその基質となるタンパク質が均一に添加されることにより、食品材料はトランスグルタミナーゼによる架橋反応により万遍なく接着されることとなり、食品原料が強固に接着された接着成形食品を得ることが可能となる。