(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記テープは、さらに、一対の棒状体間でクロスする複数の交叉部のうち、互いに対向する一対の交叉部間に張設されることを特徴とする請求項3に記載の天井吊設物の振れ止め構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の振れ止め構造は、天井スラブから吊り下げられた天井吊設物の高さ位置に応じてブレースを適切な長さに予め切断し、そのブレースの先端に1つのナットを装着した後、吊りボルトの上部及び下部に取り付けられたブレース連結金具のアングル部材の孔に対してブレースの先端を通して更に別のナットを装着すると共に、アングル部材を2つのナットで締め付けることが必要であり、簡単且つ効率的に施工することが難しい。特に施工作業は天井スラブ近傍での高所作業となるため、作業者は、金属製のブレース連結金具やブレースなどの重量物を高所作業場まで持ち運ばなければならず、作業負担が大きいという問題がある。更に、天井スラブ近傍には様々な天井吊設物が存在するため、作業空間が狭く、作業者が重量物を手に抱えた状態で作業を進めることは難しく、吊りボルトに1本のブレースを取り付けるだけでも多大な時間を要する。
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、従来よりも極めて施工性に優れた天井吊設物の振れ止め構造及びその施行方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、天井スラブから下方に延びる複数の棒状体のうちの少なくとも1つの棒状体の下端に取り付けられる天井吊設物の振れ止め構造であって、前記複数の棒状体のうち、互いに隣接し、且つ、少なくとも一方の棒状体の下端に前記天井吊設物が取り付けられた一対の棒状体の間にテープを張設し、前記テープの引張力によって前記一対の棒状体の振動を抑制することを特徴としている。
【0007】
可撓性のあるテープを一対の棒状体の間に張設し、テープの引張力で一対の棒状体の振動を抑制することにより、作業者の負担を軽減することが可能であり、しかも施工効率が向上する。
【0008】
第2に、本発明は、上記第1の特徴を有する天井吊設物の振れ止め構造において、前記テープは、前記一対の棒状体間を斜め方向にクロスするように配置されることを特徴としている。
【0009】
一対の棒状体間にテープをクロス配置することにより、従来の金属製ブレースと同様の振れ止め効果を得ることができるようになる。
【0010】
第3に、本発明は、上記第1又は第2の特徴を有する天井吊設物の振れ止め構造において、前記天井吊設物は平面視略矩形状であり、前記複数の棒状体は、前記天井吊設物の四隅を支持しており、前記テープは、前記天井吊設物の側面と平行な面内において互いに隣接する一対の棒状体間を斜め方向にクロスするように配置されることを特徴としている。
【0011】
第4に、本発明は、上記第3の特徴を有する天井吊設物の振れ止め構造において、前記テープは、さらに、一対の棒状体間でクロスする複数の交叉部のうち、互いに対向する一対の交叉部間に張設されることを特徴としている。
【0012】
第5に、本発明は、上記第1乃至第4のいずれかの特徴を有する天井吊設物の振れ止め構造において、前記複数の棒状体のそれぞれの上部及び下部に取り付けられる係止金具を備え、前記テープは、前記係止金具に係止されることを特徴としている。
【0013】
第6に、本発明は、上記第1乃至第5のいずれかの特徴を有する天井吊設物の振れ止め構造において、前記テープは、粘着テープであることを特徴としている。
【0014】
第7に、本発明は、上記第1乃至第6のいずれかの特徴を有する天井吊設物の振れ止め構造において、前記テープは、テープ基材にガラス繊維を含むことを特徴としている。
【0015】
第8に、本発明は、上記第1乃至第7のいずれかの特徴を有する天井吊設物の振れ止め構造において、前記テープは、引張強度が1000N以上であることを特徴としている。
【0016】
第9に、本発明は、上記第1乃至第8のいずれかの特徴を有する天井吊設物の振れ止め構造において、前記テープは、伸び率が10%以下であることを特徴としている。
【0017】
第10に、本発明は、天井スラブから下方に延びる複数の棒状体のうちの少なくとも1つの棒状体の下端に取り付けられる天井吊設物の振れ止め構造を施行する施行方法であって、前記複数の棒状体のうち、互いに隣接し、且つ、少なくとも一方の棒状体の下端に前記天井吊設物が取り付けられた一対の棒状体の間にテープを張設し、前記テープの引張力によって前記一対の棒状体の振動を抑制することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可撓性のあるテープを一対の棒状体間に張設することによって一対の棒状体の振動を抑制するため、金属製ブレースなどを用いる必要がなくなり、従来よりも施工効率の優れた振れ止め構造を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における天井吊設物9の振れ止め構造1の一例を示す図である。この振れ止め構造1は、例えば地震発生時などにおいて、天井スラブ2から下方に延びる複数の棒状体3a,3b,3c,3dの下端に取り付けられた天井吊設物9が振動することを抑制するためのものである。
図1では、天井吊設物9が平面視略矩形状の空気調和機である場合を例示しており、天井スラブ2から垂下する4本の棒状体3a,3b,3c,3dのそれぞれが空気調和機の四隅を支持する状態を示している。ただし、以下においては、複数の棒状体3a,3b,3c,3dを区別しないときには、それらを総称して棒状体3と称する。尚、本実施形態では、棒状体3として、外周面に雄螺子が形成された吊りボルトを用いる場合を例示する。
【0022】
本実施形態の振れ止め構造1は、複数の棒状体3のうちの互いに隣接する一対の棒状体間3,3に、可撓性を有するテープ5を張設し、テープ5の引張力によって一対の棒状体3,3の振動を抑制するようにした構造である。そのようなテープ5として、本実施形態では一面に粘着剤が塗布された粘着テープを用いる場合を例示する。そしてテープ5は、一対の棒状体3,3の間を斜め方向にクロスするように配置される。つまり、本実施形態の振れ止め構造1は、従来の金属製ブレースに代えて、柔軟性を有するテープ5を用いて複数の棒状体3の振動を抑制する点に特徴を有する構造である。
【0023】
従来の金属製ブレースは剛性を有するため、撓みや捻れが生じ難い。これに対し、テープ5は、柔軟性を有するため撓みが生じ易い。そのため、テープ5を一対の棒状体3,3間に設置するときには、一対の棒状体3,3間に強い引張力が作用するようにテープ5を張設する。したがって、一対の棒状体3,3は、テープ5の引張力によって緊縛された状態に固定される。
【0024】
またテープ5は、天井吊設物9の側面9a,9b,9c,9dと平行な面内において互いに隣接する一対の棒状体3の間を斜め方向にクロスするように配置される。すなわち、棒状体3a,3bの間には天井吊設物9の側面9aと平行な面内においてテープ5がクロスするように張設され、棒状体3b,3cの間には側面9bと平行な面内においてテープ5がクロスするように張設され、棒状体3c,3dの間には側面9cと平行な面内においてテープ5がクロスするように張設され、さらに棒状体3d,3aの間には側面9dと平行な面内においてテープ5がクロスするように張設される。したがって、テープ5は、天井吊設物9の四隅を支持する4本の棒状体3a,3b,3c,3dを引張力によって緊縛した状態に固定する。その結果、テープ5は、地震発生時などにおいて棒状体3a,3b,3c,3dの振動を抑制することにより、天井吊設物9の振れ止め効果を発揮する。
【0025】
複数の棒状体3のそれぞれの上部及び下部には、係止金具4が取り付けられる。そしてテープ5は、それらの係止金具4に係止させた状態に取り付けられる。例えば、テープ5は、端部を係止金具4で折り返して粘着面どうしを接着させることにより、係止金具4に係止した状態に取り付けられる。係止金具4は、複数の棒状体3の下端に対して天井吊設物9が取り付けられる前に、予め棒状体3に取り付けられるものであっても良い。また複数の棒状体3の下端に対して天井吊設物9が取り付けられた後に各棒状体3の上部及び下部に取り付け可能なものを用いても良い。
【0026】
図2は、棒状体3に対して予め取り付けられる係止金具4aの一例を示す図であり、
図2(a)は係止金具4aを、
図2(b)は係止金具4aにテープ5を係止させた状態を示している。
図2(a)に示すように係止金具4aは、概略多角柱状の外形を有する金具本体10に対して棒状体3の外周面に設けられる雄螺子と螺合する螺子孔11が形成されると共に、金具本体10のそれぞれ異なる側面に対してテープ5を係止するための係止部12,12が設けられた構成である。係止部12は、例えば棒状体3の軸方向と所定角度を成す金属製の棒状体によってフック状に形成される。
【0027】
このような係止金具4aは、棒状体3に対して天井吊設物9が取り付けられる前に、螺子孔11に棒状体3を挿通させることにより、棒状体3に取り付けられる。係止金具4aが棒状体3の上部に取り付けられる場合、
図2(b)に示すように係止部12,12の先端が上方を向くように取り付けられる。これに対し、係止金具4aが棒状体3の下部に取り付けられる場合、係止部12,12の先端が下方を向くように取り付けられる。そして
図2(b)に示すようにテープ5は、係止部12,12で折り返すように張設される。このときテープ5の粘着面6を内側にして端部5aを折り返せば、互いに対向する粘着面6同士を接着させることにより、テープ5の端部5aを係止部12,12に固定することができる。
【0028】
図3は、
図2とは異なる係止金具4bであって、棒状体3に対して後付け可能な係止金具4bの一例を示す図である。まず
図3(a)に示すように、係止金具4bは、第1部材20と、第2部材21と、結合部材22とを備えて構成される。第1部材20は、金属製プレート部材の中央部分を折り曲げて半円状に突出するように形成した装着部23を有し、一端側にボルトなどの結合部材22を装着可能とし、他端側にテープ5を係止するための係止部25を設けたものである。装着部23は、その内側に棒状体3を収容可能である。ただし、装着部23の突出量は棒状体3の直径も小さくなっており、棒状体3を装着部23の内側に収容すると、棒状体3の一部が装着部23の両端の平板部分よりも外側にはみ出すようになっている。また装着部23には、外面を内側に凹ませて設けられる複数の係合部24が設けられる。係合部24が設けられた内壁は内側に突出するため、棒状体3が装着部23の内側に収容されると、係合部24の内側が棒状体3の外周面と係合した状態になる。また係止部25は、例えば第1部材20及び第2部材21の端部に切欠を設けることによって鉤状(フック状)の形態となるように形成される。
【0029】
第2部材21は、金属製のプレート部材であり、一端側に結合部材22と係合する構造(例えば螺子孔など)を有し、他端側にテープ5を係止するための係止部25を設けたものである。この第2部材21は、装着部23に装着される棒状体3を、第1部材20と挟み込むことが可能なように、結合部材22によって第1部材20と接触した状態に取り付けられる。ただし、第2部材21は、第1部材20に対して固定されるのではなく、
図3(b)に示すように結合部材22の軸芯周りに回動可能に連結される。
【0030】
図3(b)に示すように第1部材20に対して第2部材21を相対回動させると、装着部23の内側の収容空間が開放され、棒状体3を装着部23の内側に収容することができる。そして棒状体3を装着部23の内側に収容した状態で第2部材21を回動させると、
図3(c)に示すように棒状体3が第1部材20と第2部材21との間に挟まれた状態となる。このとき、棒状体3は装着部23の内側から外側にはみ出しているため、第2部材21は、棒状体3の外径に沿うように外側に折れ曲がった状態となる。そのため、係止金具4bは、板バネの作用で棒状体3に仮止めされた状態となる。
【0031】
このような係止金具4bは、棒状体3に対して天井吊設物9が取り付けられた後であっても、棒状体3に装着することが可能である。係止金具4bが棒状体3の上部に取り付けられる場合、
図3(c)に示すように係止部25の開放部分が上方を向くように取り付けられる。これに対し、係止金具4bが棒状体3の下部に取り付けられる場合、係止部25の開放部分が下方を向くように取り付けられる。そして
図3(d)に示すようにテープ5は、係止部25で折り返すように張設される。このときもまた、テープ5の粘着面6を内側にして端部5aを折り返せば、互いに対向する粘着面6同士を接着させることが可能であり、テープ5の粘着性によってテープ5の端部5aを係止部25に係止させた状態に固定することができる。尚、係止金具4bの係止部25に対してテープ5を巻き付けるときには、
図3(b)に示すように第1部材20及び第2部材21の双方の係止部25を拘束するように巻き付ける。これにより、係止金具4bを棒状体3に固定することができる。
【0032】
図4は、
図2及び
図3とは更に異なる係止金具4cであって、棒状体3に対して後付け可能な係止金具4cの一例を示す図である。まず
図4(a)に示すように、係止金具4cは、第1部材30と第2部材31とを有し、それら第1部材30と第2部材31とを蝶番構造32で連結した金具である。第1部材30及び第2部材31のそれぞれは、蝶番構造32とは異なる反対側の端部にテープ5を係止するための係止部33を有している。係止部33は、例えば第1部材30及び第2部材31の端部に切欠を設けることによって鉤状(フック状)の形態となるように形成される。また第1部材30及び第2部材31は、蝶番構造32と係止部33の間の中央部分を若干外側に膨らませた形態とすることにより、その内側に棒状体3を挟着可能な装着部34を有している。
【0033】
また係止金具4cは、第1部材30と第2部材31とが蝶番構造32の軸部を中心に回動するときの抵抗力を大きくしている。そのため、作業者が第1部材30と第2部材31との拡開角度を調整すると、係止金具4cは、その拡開角度を保持することができる。そのため、
図4(a)に示すように第1部材30及び第2部材31の装着部34で棒状体3を挟み込んだ状態に係止金具4cが取り付けられると、係止金具4cは、棒状体3に仮止めされた状態となる。
【0034】
このような係止金具4cは、棒状体3に対して天井吊設物9が取り付けられた後であっても、棒状体3に装着することが可能である。係止金具4cが棒状体3の上部に取り付けられる場合、
図4(a)に示すように係止部33の開放部分が上方を向くように取り付けられる。これに対し、係止金具4cが棒状体3の下部に取り付けられる場合、係止部33の開放部分が下方を向くように取り付けられる。そして
図3(b)に示すようにテープ5は、係止部33で折り返すように張設される。このときもまた、テープ5の粘着面6を内側にして端部5aを折り返せば、互いに対向する粘着面6同士を接着させることが可能であり、テープ5の端部5aを係止部33に係止させた状態に固定することができる。尚、係止金具4cの係止部33に対してテープ5を巻き付けるときには、
図4(b)に示すように第1部材30及び第2部材31の双方の係止部33を拘束するように巻き付ける。これにより、係止金具4cを棒状体3に固定することができる。
【0035】
このように本実施形態では、棒状体3の上部及び下部に設けられる係止金具4(4a,4b,4c)にテープ5を巻き付けることにより、テープ5を棒状体3の上部及び下部に接続する。そのため、地震発生時であっても、棒状体3に対するテープ5の接続位置が上下方向に変動することはなく、常に一定の位置で棒状体3に引張力を作用させることができる。
【0036】
また上述した係止金具4(4a,4b,4c)は、従来の金属製ブレースを斜め方向に連結する金具と比較して小型である。そのため、棒状体3の上部に取り付ける場合には、
図1に示すように天井スラブ2の近傍位置に取り付け可能である。また棒状体3の下部に取り付ける場合には、
図1に示すように棒状体3が天井吊設物9を支持する位置の近傍に取り付けることが可能である。そしてテープ5は可撓性及び柔軟性を有するため、2つの係止金具4,4の間に存在する障害物によってテープ5を直線状に張設することができない場合であっても、その障害物を避けるように張設することができる。例えば
図1に示す例では、棒状体3の下部に設けられた係止金具4から延びるテープ5は、天井吊設物9の上端縁部9eで折れ曲がるように張設されている。このように障害物を迂回させた状態にテープ5を張設する場合であっても、テープ5は、一対の棒状体3,3の間に引張力を作用させることができるため、振れ止め効果を有効に発揮する。加えて、テープ5は、棒状体3の上端近傍位置及び下端近傍位置を固定することができるため、棒状体3の広い範囲を固定することが可能であり、地震発生時に棒状体3が振動してしまう部分を少なくすることができる。
【0037】
またテープ5は、従来の金属製ブレースと比較すると、極めて軽量であり、取り扱いが容易である。また施工作業は天井スラブ近傍での高所作業となるものの、作業者は、テープ5と、係止金具4と、カッターなどの刃物とを持ち込めば簡単に作業を行うことが可能であり、従来よりも格段に作業し易く、しかも短時間で施工することができるという利点がある。
【0038】
天井吊設物9の振れ止め効果を発揮するテープ5としては、十分な引張強度を有し、しかも伸び率の比較的小さいものであることが好ましい。例えばポリエステルフィルムなどのテープ基材をガラス繊維で補強したテープは、ポリエステル繊維で補強したテープと比較すると、引張強度が強く、しかも伸び率が小さいことが知られている。そのため、テープ5としては、テープ基材にガラス繊維を含むものを用いることが好ましい。またテープ5の引張強度は、1000N以上であることが好ましい。さらにテープ5の伸び率は10%以下であることが好ましい。したがって、テープ5は、テープ基材にガラス繊維を含み、引張強度が1000N以上であり、しかも伸び率が10%以下であることがより好ましい。
【0039】
上記のようなテープ5を用いて、
図1に示す如く、互いに隣接する一対の棒状体3,3間においてテープ5をクロスさせるように張設することにより、天井吊設物9の振れ止め効果を得ることができる。ただし、より強固な振れ止め効果を得るためには、
図5に示すような振れ止め構造1としても良い。
【0040】
図5に示す振れ止め構造1は、
図1に示したように互いに隣接する一対の棒状体3,3間においてテープ5をクロス状に張設した後、一対の棒状体3,3間においてテープ5がクロスする複数の交叉部7a,7b,7c,7dを更にテープ5で緊縛した構造である。すなわち、
図5の振れ止め構造1は、複数の交叉部7a,7b,7c,7dのうち、互いに対向する一対の交叉部間に対してテープ5をさらに張設した構造である。例えば、棒状体3a,3b間においてクロス状に張設されたテープ5の交叉部7aと、棒状体3c,3d間においてクロス状に張設されたテープ5の交叉部7cとの間に更にテープ5を張設する。このとき、テープ5は、互いに対向する交叉部7a,7cに対して引張力が作用するように張設される。また、棒状体3b,3c間においてクロス状に張設されたテープ5の交叉部7bと、棒状体3d,3a間においてクロス状に張設されたテープ5の交叉部7dとの間にも更にテープ5を張設する。このときもテープ5は、互いに対向する交叉部7b,7dに対して引張力が作用するように張設される。このように互いに対向する一対の交叉部間に対してテープ5をさらに張設することにより、各棒状体3の上部及び下部に作用する引張力が増大し、より強固な振れ止め効果を得ることができるようになる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の振れ止め構造1は、天井吊設物9を支持する複数の棒状体3,3のうちの互いに隣接する一対の棒状体3,3間にテープ5を張設し、テープ5の引張力によって一対の棒状体3,3の振動を抑制する構造である。このような振れ止め構造1を採用すれば、金属製ブレースなどの重量物を高所作業場まで持ち運ぶ必要がなくなるので、作業者の負担を軽減することができる。またテープ5は柔軟性を有するため、作業効率に優れており、効率的な施工が可能である。それ故、既設の天井構造に対し、あと施工で天井吊設物9の振れ止めを行うことも容易であり、効率的に振れ止め構造1を実現することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態における天井吊設物9の振れ止め構造1aの一例を示す図である。
図6に示す天井構造は、梁8を挟むようにして天井スラブ2が打設されており、梁8の下方に天井吊設物9を設置した構造である。
図6に示すように、天井吊設物9を支持する複数の棒状体3e,3fは、梁8の両側の天井スラブ2から垂下するように設置され、各棒状体3e,3fの下端に天井吊設物9が取り付けられている。このように天井吊設物9を支持する複数の棒状体3e,3fの間に梁8などの障害物が存在する場合であっても、第1実施形態で説明したように複数の棒状体3e,3fの間にテープ5をクロス状に張設することができる。
【0043】
しかしながら、天井吊設物9を支持する複数の棒状体3e,3fの間に存在する梁8などの障害物のサイズが比較的大きい場合や、梁8以外にも配管などの多数の障害物が存在する場合には、天井吊設物9を支持する複数の棒状体3e,3fの間にテープ5をクロス状に張設する際の作業性が低下すると共に、複数の棒状体3e,3fの間に十分な引張力を作用させることができなくなる可能性がある。
【0044】
そこで第2実施形態における振れ止め構造1aでは、
図6に示すように、天井吊設物9を支持する複数の棒状体3e,3fと、それら複数の棒状体3e,3fのそれぞれの近傍位置に設置した別の棒状体3g,3hとの間にテープ5を張設し、テープ5の引張力によって棒状体3e,3fの振動を抑制するようにしている。
【0045】
より具体的に説明すると、棒状体3eに対してテープ5を張設するための棒状体3gは、梁8とは異なる側の棒状体3eの近傍位置に予め設置される。同様に、棒状体3fに対してテープ5を張設するための棒状体3hも、梁8とは異なる側の棒状体3fの近傍位置に予め設置される。
図6では、棒状体3g,3hが棒状体3e,3fよりも短尺である場合を例示しているが、これに限られるものではなく、棒状体3e,3fと同程度の長さであっても構わない。ただし、棒状体3g,3hの下方に別の天井吊設物が吊設される場合には、棒状体3g,3hを
図6に示すように短尺のものにして設置しておくことにより、別の天井吊設物を吊設する際に妨げとなり難いという利点がある。
【0046】
そして
図6に示すように棒状体3g,3hの天井スラブ2の近傍位置に係止金具4を取り付けると共に、棒状体3e,3fの下端近傍位置に係止金具4を取り付け、それら係止金具4,4の間にテープ5を張設する。このときも、作業者は、棒状体3eと3gの間、及び、棒状体3fと3hの間に十分な引張力が作用するようにテープ5を張設する。これにより、テープ5の引張力によって天井吊設物9を支持する棒状体3e,3fの振動を抑制することができるため、天井吊設物9の振れ止め効果を得ることができる。
【0047】
尚、棒状体3g,3hが棒状体3e,3fと同程度の長さを有する場合には、棒状体3eと3gの間、及び、棒状体3fと3hの間に、第1実施形態と同様、テープ5をクロス状に張設することが好ましい。テープ5をクロス状に張設することにより、より強固な振れ止め効果を得ることができる。
【0048】
また
図6では、棒状体3g,3fの間に梁8が存在する場合を例示したが、棒状体3g,3fの間に梁8などの障害物が存在しない場合であっても、本実施形態の振れ止め構造1aを採用しても構わない。
【0049】
(変形例)
以上、本発明に関する幾つかの実施形態について説明したが、本発明は各実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明は、上述した実施形態以外にも、種々の変形例を含むものである。以下、いくつかの変形例を例に挙げて説明する。
【0050】
上述した説明では、一例として、天井吊設物9が空気調和機である場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、天井吊設物9は、空気調和機以外の吊設物であっても構わない。例えば、照明器具や各種配管などであっても、上述した振れ止め構造1,1aを適用することにより、簡単かつ効率的に振れ止め効果を得ることができるようになる。
【0051】
また上記実施形態では、テープ5が粘着テープである場合を例示した。しかし、テープ5は粘着テープに限られず、粘着性を有さないものであっても構わない。ただし、テープ5が粘着性を有さない場合には、係止金具4などにテープ5の端部を結び付けることが必要となるため、粘着性を有する場合と比較すれば、作業効率が若干低下することは否めない。それ故、テープ5は上述したような粘着テープを用いることが作業効率向上の観点からより好ましい。
【0052】
また上記実施形態では、棒状体3が外周面に雄螺子が形成された吊りボルトである場合を例示した。しかし、天井吊設物9を支持する棒状体3は、必ずしも吊りボルトには限られない。また上記実施形態では、棒状体3が天井スラブ2から垂下した状態に設けられる場合を例示したが、これに限られるものでもない。例えば、棒状体3は、天井スラブ2から斜め下方に延びるように設置されたものであっても構わない。
【0053】
また棒状体3は、必ずしも円柱状の金属棒に限られるものではない。例えば棒状体3は、山形鋼(L形鋼など)や、溝形鋼(C形鋼など)などであっても構わない。