【実施例】
【0030】
製造例1:マイクロ波加熱前処理減菌及びマイルドレトルトを適用した野菜、肉、海産物及びソース(だし汁)ベースの加工食品の製造
本出願のマイクロ波加熱前処理減菌及びマイルドレトルトを融合した殺菌工法を適用した野菜、肉、海産物、及びソースまたはだし汁ベースの加工食品の代表的な製造工程は次の通りである。その工程図は
図1に示した。
【0031】
(1)原物原料の選別、洗浄及び切断の工程
野菜、肉、海産物の表面に付いてあるほこり、異物などの汚染物質を除去するため、先ずきれいな水で3回位洗浄した後、メニューの特性に好適な大きさに切断して原料として準備する。
【0032】
(2)天然抗菌剤溶液の浸漬前処理減菌の工程
選別、洗浄及び切断が終わった野菜、肉、海産物の原料は、それぞれ水の重量に対して0.01〜3.0(w/w、%)の天然抗菌剤溶液で30〜120分間浸漬した後、洗浄して用いる。この時に用いる天然抗菌剤は、有機酸、界面活性剤、バクテリオシン、カルシウム製剤などであり、原物の官能特性及び微生物の現況などを考慮し、選択的に単独でまたは混合して用いてよい。原料内に耐熱性菌などの土着菌が少ない場合、天然抗菌剤溶液への浸漬工程は省いて直ちにマイクロ波予熱減菌工程を適用してよい。
【0033】
(3)マイクロ波加熱前処理減菌の工程
天然抗菌剤溶液への浸漬を済ませた野菜、肉、海産物の原物原料は、連続式またはバッチ式マイクロ波加熱装置を通過させて高温で短時間加熱殺菌を実施する。マイクロ波加熱時間は、原物の官能特性と微生物特性を考慮し、常圧で2〜10分の間を選択的に適用してよく、殺菌の効果を向上させるために加圧状態で加熱殺菌を実施してよい。また、マイクロ波加熱前処理工程は、殺菌効果の他にも、水またはスチームのブランチング効果を出すことができるという利点もある。
【0034】
また、野菜、肉、海産物の原物以外にソースまたはだし汁もマイクロ加熱設備を利用して連続的に殺菌してよい。
【0035】
(4)ソースまたはだし汁の製造工程
ソースまたはだし汁の原料を計量、準備して混合した後、85〜95℃で10〜30分間加熱して製造する。香辛野菜などの原料を多く用いるソースまたはだし汁の場合、原料内に耐熱性菌が多く自生しているので、選択的にマイクロ波加熱殺菌設備を通過させて前処理減菌してよい。
【0036】
(5)原物とソースまたはだし汁の包装工程
マイクロ波加熱前処理減菌した野菜、肉、海産物の原物とソースまたはだし汁を、メニューの特性を考慮してパウチまたはトレーに定量投入し、シール、包装する。パウチの場合は自動ロータリーパッカー設備を、トレーの場合はトレー自動包装機を利用し、重量及び異物を確認した後で包装する。
【0037】
(6)マイルドレトルト本殺菌の工程
パウチまたはトレーに包装した完成品は、熱水式またはスプレー式レトルト設備を利用して110〜121℃で10〜40分間加熱殺菌する。この時の殺菌の条件は、天然抗菌剤の浸漬及びマイクロ波加熱を利用した前処理減菌を予め適用したので、既存のレトルト条件より50%内外に低減化された加熱殺菌条件を適用してよい。具体的に、110〜115℃では20〜40分加熱する低温レトルト殺菌、もしくは、121〜125℃で5〜15分、好ましくは7〜12分加熱する短期レトルト殺菌によって加熱殺菌できる。
【0038】
実験例1:原物内微生物に対するマイクロ波加熱前処理減菌及びマイルドレトルトの組合せ殺菌の効果の測定
野菜、肉、海産物のマイクロ波加熱前処理減菌処理は、対象の試料を2〜10分間それぞれ処理した後、総菌、バチルス系の耐熱性菌、酵母及びかびのような真菌類に対する殺菌の効果をそれぞれ考察した。
【0039】
(1)野菜にマイクロ波加熱を適用した時の殺菌効果の測定
常温流通製品において主な殺菌目標菌であるバチルス系耐熱性菌に対するマイクロ波加熱殺菌の効果を検討してみた結果、
図2に示す通り、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquenfaciens)を対象とした場合、3分以上加熱した時、10
2(CFU/g)内外の減菌効果を奏した。通常、加工食品内の胞子形成微生物の数は10
2〜10
3(CFU/g)なので、10
2(CFU/g)内外の減菌効果を奏するマイクロ波加熱を商業的な前処理殺菌方法として適用することができる。
【0040】
(2)野菜内の総菌、耐熱性菌及び真菌に対するマイクロ波加熱及びマイルドレトルトの組合せ殺菌の効果の測定
製造例1で処理した野菜原物に対してマイクロ波加熱を単独で、また、マイルドレトルトと組み合わせて行なった後の減菌及び殺菌の効果を観察し、従来の加熱レトルトの殺菌効果と比べてその結果を表1に示した。
【0041】
【表1】
* 有意差検証(P<0.05)、同一英文字の有意差なし
【0042】
表1に示す通り、野菜の代表試料であるじゃがいも、さつまいも、セイヨウカボチャのいずれも、マイクロ波加熱処理のみした時、総菌は10
4(CFU/g)内外、耐熱性菌は10
1(CFU/g)内外に減菌され、真菌類は全て死滅された。マイクロ波加熱前処理減菌の後、マイルドレトルトを組み合わせて適用した時、全ての菌が死滅された。また、本出願のマイクロ波前処理及びマイルドレトルト処理の際、従来のレトルト処理に比べて全般の味の点数が高かった。したがって、本出願の殺菌方法を利用すれば、既存のレトルト方式より、高温加熱による官能品質の損傷を低減させることができるので、常温製品の品質の向上を図ることができるということが確認でき、これは本出願の差別化要素であると言える。
【0043】
(3)肉及び海産物内の総菌、耐熱性菌及び真菌に対するマイクロ波加熱及びマイルドレトルトの組合せ殺菌の効果の測定
製造例1で処理した肉及び海産物の原物に対してマイクロ波加熱を単独で、また、マイルドレトルトと組み合わせて行なった後の減菌及び殺菌の効果を観察し、従来の加熱レトルトの殺菌効果と比べてその結果を表2に示した。
【0044】
【表2】
* 有意差検証(P<0.05)、同一英文字の有意差なし
【0045】
表2に示す通り、肉及び海産物の代表試料である鳥肉、牛肉、海老のいずれも、マイクロ波加熱処理のみした時、総菌は10
3(CFU/g)内外、耐熱性菌は10
1(CFU/g)内外に減菌され、真菌類は全て死滅された。本出願のマイクロ波加熱前処理減菌の後、マイルドレトルトを組み合わせて適用した時、全ての菌が死滅された。また、本出願のマイクロ波前処理及びマイルドレトルト処理の際、従来のレトルト処理に比べて全般の味の点数が高かった。したがって、本出願の殺菌方法を利用すれば、既存のレトルト方式より、高温加熱による官能品質の損傷を低減させることができるので、常温製品の品質の向上を図ることができるということが確認でき、これは本出願の差別化要素であると言える。
【0046】
以上の結果から、マイクロ波加熱とマイルドレトルトを適宜組み合わせた時、品質を向上させるとともに、野菜、肉、海産物などの食品原料内の多様な土着菌と汚染菌の滅菌に到達することができるという結論を導き出し、本出願のマイクロ波加熱殺菌法を前処理殺菌技術として有用に活用することができた。
【0047】
実験例2:天然抗菌剤浸漬前処理減菌を組み合わせた時の殺菌効果の測定
製造例1で天然抗菌剤に浸漬した後にマイクロ波加熱前処理減菌及びマイルドレトルトを行った野菜ベースソース(コチュジャンソース)と肉ベーススープ(クリームスープ)に対する減菌及び殺菌の効果を処理ステップ別に観察し、従来の加熱レトルトの殺菌効果と比べてその結果を表3に示した。
【0048】
【表3】
* 有意差検証(P<0.05)、同一英文字の有意差なし
【0049】
表3に示す通り、1重量%の有機酸ベース天然抗菌剤に60分間浸漬した時、総菌及び耐熱性菌の数が10
1〜10
2(CFU/g)内外に減菌され、マイクロ波加熱及びマイルドレトルト条件の低減化が可能なので、さらに一層の品質向上をもたらすことができるものと期待された。また、本出願の天然抗菌剤処理した原物をマイクロ波前処理及びマイルドレトルト処理した時、従来のレトルト処理と比べても全般の味の点数が高かった。したがって、天然抗菌剤に原物を浸漬するステップを追加しても、従来のレトルト処理より常温製品の品質の向上を図ることができるということが確認できる。
【0050】
以上の研究の結果から、天然抗菌剤浸漬及びマイクロ波加熱前処理減菌とマイルド熱殺菌工法を融合して適用した時、野菜、肉、海産物の原物ベースの加工食品内の栄養細胞及び耐熱性胞子類、真菌類などの微生物が滅菌の水準に到達され、既存の高温、高圧の殺菌方式のレトルト製品に比べて同一の殺菌効果を得るとともに、レトルト加熱殺菌の強度を50%内外に低減化できるので、本出願の加工食品の殺菌技術は、今後差別化された常温製品の開発に活用することができる有用な技術であることが分かる。