特許第6787660号(P6787660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787660
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】電池制御装置、動力システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20201109BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201109BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H01M10/44 P
   H02J7/00 B
   H02J7/00 302A
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
【請求項の数】13
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2015-241136(P2015-241136)
(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2017-107763(P2017-107763A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂部 啓
(72)【発明者】
【氏名】大川 圭一朗
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亮平
(72)【発明者】
【氏名】米元 雅浩
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/169063(WO,A1)
【文献】 特開2008−312391(JP,A)
【文献】 特開2007−165211(JP,A)
【文献】 特開2008−104289(JP,A)
【文献】 特開2010−203885(JP,A)
【文献】 特開2007−147487(JP,A)
【文献】 特開2015−070753(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/109956(JP,A1)
【文献】 特開2007−282375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置であって、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと、
演算手段と
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記演算手段が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記決定されたΔVlimitまたは前記決定されたIlimitに基づいて、前記二次電池の許容電流に対する制限率kを演算し、
前記決定された上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池に一定時間流し続けてもCCVが上限電圧や下限電圧に到達しない最も大きな電流である電池保護用許容電流を演算し、
前記演算された制限率k、前記演算された電池保護用許容電流に乗じることで、前記二次電池の許容電流を算出し、
制限率kは、前記二次電池にとって高負荷抵抗上昇の考慮が不要な状態をk=1としたときの0≦k<1の値であって、前記許容電流をどの程度制限するかの値である電池制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の電池制御装置において、
前記演算手段が、
前記二次電池のCCVと前記二次電池について求められたOCVの差の時間変化に関するΔV実効値、または、前記二次電池について計測された電流値の時間変化に関するI実効値を演算し、
前記決定されたΔVlimitと前記演算されたΔV実効値とに基づいて前記制限率kを演算する、または、前記決定されたIlimitと前記演算されたI実効値とに基づいて前記制限率kを演算する電池制御装置。
【請求項3】
二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置であって、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと、
演算手段と
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記演算手段が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記決定されたΔVlimitまたは前記決定されたIlimitに基づいて、前記二次電池に高負荷抵抗上昇を生じさせないための許容電流である性能維持用許容電流を演算し、
前記決定された上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池に一定時間流し続けてもCCVが上限電圧や下限電圧に到達しない最も大きな電流である電池保護用許容電流を演算し、
前記演算された性能維持用許容電流と、前記演算された電池保護用許容電流とのいずれか小さい方を前記二次電池の許容電流する電池制御装置。
【請求項4】
請求項に記載の電池制御装置において、
前記演算手段が、
前記二次電池のCCVと前記二次電池について求められたOCVの差の時間変化に関するΔV実効値、または、前記二次電池について計測された電流値の時間変化に関するI実効値を演算し、
前記決定されたΔVlimitと前演算されたΔV実効値とに基づいて前記性能維持用許容電流を演算する、または、前記決定されたIlimitと前記演算されたI実効値とに基づいて前記性能維持用許容電流を演算する電池制御装置。
【請求項5】
二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置であって、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと、
演算手段と
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記演算手段が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記二次電池のCCVまたは前記二次電池について求められたOCVと、前記決定されたΔVlimitとに基づいて、前記二次電池の限界電圧を演算し、
前記演算された限界電圧と、前記決定された上限/下限電圧とを比較し、その比較結果に基づいて、前記限界電圧または前記上限/下限電圧を選択し、
前記選択した限界電圧または上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池の許容電流を算出し、
当該限界電圧は、前記二次電池が高負荷抵抗上昇を起こさないための前記CCVの上限値である電池制御装置。
【請求項6】
請求項2または4に記載の電池制御装置において、
前記演算手段が、前記CCVと前記OCVの差または前記電流値を、遅れ要素を含むフィルタに通すことにより、前記ΔV実効値または前記I実効値を算出する電池制御装置。
【請求項7】
請求項に記載の電池制御装置において、
前記フィルタは、一次遅れフィルタである電池制御装置。
【請求項8】
インバータと、
二次電池から前記インバータを介して供給される電力を用いて駆動する電動機と、
前記二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置と、
動力分割機構を介して前記電動機およびタイヤを駆動する内燃機関と
を備え、
前記電池制御装置が、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記電池制御装置が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記決定されたΔVlimitまたは前記決定されたIlimitに基づいて、前記二次電池の許容電流に対する制限率kを演算し、
前記決定された上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池に一定時間流し続けてもCCVが上限電圧や下限電圧に到達しない最も大きな電流である電池保護用許容電流を演算し、
前記演算された制限率kを、前記演算された電池保護用許容電流に乗じることで、前記二次電池の許容電流を算出し、
前記算出された許容電流と、前記二次電池について求められたSOCと、前記電動機の容量とに基づいて、前記内燃機関と前記電動機との動力配分比を決定し、
前記決定した動力配分比に従って、前記内燃機関及び前記インバータに対する動作指令値を出力し、
制限率kは、前記二次電池にとって高負荷抵抗上昇の考慮が不要な状態をk=1としたときの0≦k<1の値であって、前記許容電流をどの程度制限するかの値である動力システム。
【請求項9】
インバータと、
二次電池から前記インバータを介して供給される電力を用いて駆動する電動機と、
前記二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置と、
動力分割機構を介して前記電動機およびタイヤを駆動する内燃機関と
を備え、
前記電池制御装置が、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記電池制御装置が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記決定されたΔVlimitまたは前記決定されたIlimitに基づいて、前記二次電池に高負荷抵抗上昇を生じさせないための許容電流である性能維持用許容電流を演算し、
前記決定された上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池に一定時間流し続けてもCCVが上限電圧や下限電圧に到達しない最も大きな電流である電池保護用許容電流を演算し、
前記演算された性能維持用許容電流と、前記演算された電池保護用許容電流とのいずれか小さい方を前記二次電池の許容電流とし、
当該許容電流と、前記二次電池について求められたSOCと、前記電動機の容量とに基づいて、前記内燃機関と前記電動機との動力配分比を決定し、
前記決定した動力配分比に従って、前記内燃機関及び前記インバータに対する動作指令値を出力する動力システム。
【請求項10】
インバータと、
二次電池から前記インバータを介して供給される電力を用いて駆動する電動機と、
前記二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置と、
動力分割機構を介して前記電動機およびタイヤを駆動する内燃機関と
を備え、
前記電池制御装置が、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記電池制御装置が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記二次電池のCCVまたは前記二次電池について求められたOCVと、前記決定されたΔVlimitとに基づいて、前記二次電池の限界電圧を演算し、
前記演算された限界電圧と、前記決定された上限/下限電圧とを比較し、その比較結果に基づいて、前記限界電圧または前記上限/下限電圧を選択し、
前記選択した限界電圧または上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池の許容電流を算出し、
前記算出された許容電流と、前記二次電池について求められたSOCと、前記電動機の容量とに基づいて、前記内燃機関と前記電動機との動力配分比を決定し、
前記決定した動力配分比に従って、前記内燃機関及び前記インバータに対する動作指令値を出力し、
当該限界電圧は、前記二次電池が高負荷抵抗上昇を起こさないための前記CCVの上限値である動力システム。
【請求項11】
インバータと、
被制動体を制動するためのブレーキと、
前記被制動体からの入力を用いて回生発電し、前記インバータを介して二次電池を充電するための電力を生成する発電機と、
前記二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置と
を備え、
前記電池制御装置が、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記電池制御装置が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記決定されたΔVlimitまたは前記決定されたIlimitに基づいて、前記二次電池の許容電流に対する制限率kを演算し、
前記決定された上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池に一定時間流し続けてもCCVが上限電圧や下限電圧に到達しない最も大きな電流である電池保護用許容電流を演算し、
前記演算された制限率kを、前記演算された電池保護用許容電流に乗じることで、前記二次電池の許容電流を算出し、
前記算出された許容電流と、前記二次電池について求められたSOCと、前記発電機の容量とに基づいて、前記ブレーキと前記発電機との負荷配分比を決定し、
前記決定された負荷配分比に従って、前記ブレーキに対するブレーキ量の指令値、および、前記インバータに対する回生エネルギー量の指令値を出力し、
制限率kは、前記二次電池にとって高負荷抵抗上昇の考慮が不要な状態をk=1としたときの0≦k<1の値であって、前記許容電流をどの程度制限するかの値である動力システム。
【請求項12】
インバータと、
被制動体を制動するためのブレーキと、
前記被制動体からの入力を用いて回生発電し、前記インバータを介して二次電池を充電するための電力を生成する発電機と、
前記二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置と
を備え、
前記電池制御装置が、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記電池制御装置が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記決定されたΔVlimitまたは前記決定されたIlimitに基づいて、前記二次電池に高負荷抵抗上昇を生じさせないための許容電流である性能維持用許容電流を演算し、
前記決定された上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池に一定時間流し続けてもCCVが上限電圧や下限電圧に到達しない最も大きな電流である電池保護用許容電流を演算し、
前記演算された性能維持用許容電流と、前記演算された電池保護用許容電流とのいずれか小さい方を前記二次電池の許容電流とし、
当該許容電流と、前記二次電池について求められたSOCと、前記発電機の容量とに基づいて、前記ブレーキと前記発電機との負荷配分比を決定し、
前記決定された負荷配分比に従って、前記ブレーキに対するブレーキ量の指令値、および、前記インバータに対する回生エネルギー量の指令値を出力する動力システム。
【請求項13】
インバータと、
被制動体を制動するためのブレーキと、
前記被制動体からの入力を用いて回生発電し、前記インバータを介して二次電池を充電するための電力を生成する発電機と、
前記二次電池の仕様で定められた上下限電圧や温度を逸脱せずに充放電可能な最大電流である許容電流を算出する電池制御装置と
を備え、
前記電池制御装置が、
二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとにCCVとOCVの差の絶対値に対する上限としての限界値であるΔVlimitが格納されたΔVlimitデータベース、または、前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに前記二次電池の電流値の絶対値の上限としての限界値であるIlimitが格納されたIlimitデータベースと、
前記二次電池のSOC、温度および電流値と、前記二次電池の仕様で定められた、前記二次電池の上限電圧と下限電圧との関係を表すデータベースと
を備え、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、ΔVlimitは、CCVとOCVとの差の絶対値が当該ΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記二次電池のSOCと温度の様々な組み合わせごとに、Ilimitは、前記二次電池の電流値の絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、前記二次電池において高負荷抵抗上昇が起きる可能性があると定義された値であり、
前記電池制御装置が、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記ΔVlimitデータベースからΔVlimitを決定し、または、前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度とに基づいて、前記IlimitデータベースからIlimitを決定し、
前記二次電池について求められたSOCと前記二次電池について計測された温度と前記二次電池について計測された電流とに対応した上限電圧および下限電圧の少なくとも一つである上限/下限電圧を前記データベースから決定し、
前記二次電池のCCVまたは前記二次電池について求められたOCVと、前記決定されたΔVlimitとに基づいて、前記二次電池の限界電圧を演算し、
前記演算された限界電圧と、前記決定された上限/下限電圧とを比較し、その比較結果に基づいて、前記限界電圧または前記上限/下限電圧を選択し、
前記選択した限界電圧または上限/下限電圧に基づいて、前記二次電池の許容電流を算出し、
前記算出された許容電流と、前記二次電池について求められたSOCと、前記発電機の容量とに基づいて、前記ブレーキと前記発電機との負荷配分比を決定し、
前記決定された負荷配分比に従って、前記ブレーキに対するブレーキ量の指令値、および、前記インバータに対する回生エネルギー量の指令値を出力し、
当該限界電圧は、前記二次電池が高負荷抵抗上昇を起こさないための前記CCVの上限値である動力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置および動力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体向け蓄電装置、系統連系安定化用蓄電装置、非常用蓄電装置といった、多数の二次電池を内蔵する電池システムが注目を浴びている。これらの電池システムの性能を十分に引き出すには、各電池の充電率(SOC)、劣化度(SOH)、充放電可能な最大電流(許容電流)といったパラメータを算出し、各電池の制御を適切に行う必要がある。これを実現するため、一般的に電池システムでは、各電池に電圧計測用の回路(セルコントローラ)が取り付けられており、セルコントローラから送られてくる情報に基づき、中央演算処理装置(CPU)を搭載したバッテリコントローラが各種の演算や動作を実行して上記の制御を実現する。
【0003】
上記の制御において用いられる電池パラメータの一つである許容電流は、電池を保護するために算出されるものである。具体的には、現在の電池電圧や温度から、電池の仕様で定められた上下限電圧や温度等を逸脱しないような最大電流を求めることにより、許容電流を算出することができる。したがって、この許容電流の演算の誤差が大きいと、必要以上に電流を制限したり、電池にとって危険な電流を流したりしてしまう可能性がある。
【0004】
許容電流の演算に関して、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、電池の温度や充電状態に応じた内部抵抗値を電池の充電または放電継続時間の値ごとに記述した内部抵抗テーブルを備え、この内部抵抗テーブルを用いて電池の許容電流を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/169063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来技術では、電池の充電または放電継続時間に応じた内部抵抗の変化に追従して許容電流を求めることができる。しかし、連続的に変化する電池の負荷に対しては適切な許容電流を求めることが難しい。そのため、電池を確実に保護しつつ、電池の充放電性能を十分に発揮させることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電池制御装置は、二次電池のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimit、または、前記二次電池の電流値に対する限界値であるIlimitを決定し、前記二次電池の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定し、前記ΔVlimitまたは前記Ilimitと、前記上限電圧および前記下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、前記二次電池の許容電流を算出する。
本発明の一態様による動力システムは、内燃機関と、二次電池から供給される電力を用いて駆動する電気モータと、を備え、前記二次電池のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimit、または、前記二次電池の電流値に対する限界値であるIlimitを決定し、前記二次電池の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定し、前記ΔVlimitまたは前記Ilimitと、前記上限電圧および前記下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、前記内燃機関と前記電気モータとの動力配分比を決定する。
本発明の他の一態様による動力システムは、被制動体を制動するためのブレーキと、前記被制動体からの入力を用いて回生発電し、二次電池を充電するための電力を生成する発電機と、を備え、前記二次電池のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimit、または、前記二次電池の電流値に対する限界値であるIlimitを決定し、前記二次電池の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定し、前記ΔVlimitまたは前記Ilimitと、前記上限電圧および前記下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、前記ブレーキと前記発電機との負荷配分比を決定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池を確実に保護しつつ、電池の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電池制御装置を適用した電池システムの構成を示す図である。
図2】電池状態推定演算の例を示す図である。
図3】電池等価回路モデルの構成例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図5】ΔV実効値と制限率kの関係の一例を示す図である。
図6】ΔV実効値と制限率kの関係の他の一例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る電池保護用許容電流演算部の機能ブロック図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図10】ΔV実効値と重みGの関係の例を示す図である。
図11】本発明の第4の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図12】本発明の第4の実施形態に係る性能維持・電池保護用許容電流演算部の機能ブロック図である。
図13】本発明の第5の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図14】本発明の第5の実施形態に係る性能維持・電池保護用許容電流演算部の機能ブロック図である。
図15】本発明の第6の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図16】本発明の第6の実施形態に係る性能維持用許容電流演算部の機能ブロック図である。
図17】本発明の第7の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図18】本発明の第8の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図19】本発明の第8の実施形態に係る性能維持・電池保護用許容電流演算部の機能ブロック図である。
図20】本発明の第9の実施形態に係るΔV実効値の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図21】稼働時刻情報の例を示す図である。
図22】本発明の第9の実施形態に係る稼働比率演算部の処理フローを示す図である。
図23】本発明の第9の実施形態に係るΔV実効値演算部の処理フローを示す図である。
図24】本発明の第10の実施形態に係るΔV実効値の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図25】温度Tと環境温度TAの差と、これに対応する稼働比率との関係の一例を示す図である。
図26】本発明の第11の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラの機能ブロック図である。
図27】I実効値と制限率kの関係の一例を示す図である。
図28】本発明の第12の実施形態に係る動力システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図1〜7を用いて、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池制御装置を適用した電池システムの構成を示す図である。図1に示す電池システム100は、インバータ110および上位コントローラ112と接続されている。インバータ110には負荷111が接続されている。
【0012】
インバータ110は、上位コントローラ112の制御により動作する双方向インバータである。インバータ110は、電池システム100から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷111に出力する。負荷111は、たとえば車両に搭載される三相交流電動機であり、インバータ110から供給される交流電力を用いて回転駆動することで車両の駆動力を発生する。また、車両の運動エネルギーを利用して負荷111を発電機として動作させることで回生発電を行うと、負荷111から交流電力が出力される。この場合、インバータ110は、負荷111から出力された交流電力を直流電力に変換し、得られた直流電力を電池システム100に出力して蓄える。こうして上位コントローラ112の制御に応じてインバータ110を動作させることにより、電池システム100の充放電が行われる。
【0013】
なお、電池システム100の充放電を適切に制御することができれば、本発明は図1の構成に限定されない。たとえば、インバータ110とは別の充電システムを電池システム100に接続し、この充電システムを用いて電池システム100の充電を必要に応じて行うようにしてもよい。
【0014】
電池システム100は、電池モジュール101、電流センサ102、電圧センサ103、温度センサ104、漏電センサ105、リレー106A、リレー106B、およびバッテリコントローラ107を備える。
【0015】
電池モジュール101は、複数個の単位電池を直列または直並列に接続して構成されている充放電可能な二次電池である。なお、電池モジュール101を2つ以上のグループに分け、各グループ間に人力で操作可能な遮断器を設けてもよい。このようにすれば、電池システム100の組み立て、解体、点検等の作業時には遮断器を開放することで、感電事故や短絡事故の発生を防ぐことができる。
【0016】
電流センサ102は、電池モジュール101に流れる充放電電流を検出する。電圧センサ103は、電池モジュール101の電圧を検出する。温度センサ104は、電池モジュール101の温度を検出する。漏電センサ105は、電池モジュール101の絶縁抵抗を検出する。電流センサ102、電圧センサ103、温度センサ104および漏電センサ105の各検出結果は、バッテリコントローラ107にそれぞれ出力される。
【0017】
リレー106A、106Bは、電池モジュール101とインバータ110の間の電気的接続状態を切り替えるためのものであり、バッテリコントローラ107または上位コントローラ112によって制御される。リレー106Aは、電池モジュール101の正極側とインバータ110の間に接続されており、リレー106Bは、電池モジュール101の負極側とインバータ110の間に接続されている。なお、リレー106A、106Bのいずれか一方を省略してもよい。また、突入電流を制限するために、リレー106Aまたは106Bと並列に、プリチャージリレーおよび抵抗を設けてもよい。この場合、電池モジュール101とインバータ110の接続時には、先にプリチャージリレーをオンし、電流が十分小さくなった後に、リレー106Aまたは106Bをオンしてプリチャージリレーをオフすればよい。
【0018】
バッテリコントローラ107は、本発明の一実施形態に係る電池制御装置に相当するものである。バッテリコントローラ107は、電流センサ102、電圧センサ103、温度センサ104および漏電センサ105の各検出結果を取得し、これらの検出結果に基づいて電池システム100の制御を行う。たとえば、バッテリコントローラ107は、電流センサ102による充放電電流の検出結果や、電圧センサ103による電圧の検出結果に基づいて、電池の状態推定演算を行うことにより、電池モジュール101の充電状態(SOC:State Of Charge)や劣化状態(SOH:State Of Health)を算出する。そして、これらの算出結果を基に、電池モジュール101の充放電制御や、電池モジュール101の各単位電池のSOCを均等化するためのバランシング制御などを行う。また、バッテリコントローラ107は、漏電センサ105による絶縁抵抗の検出結果に基づいて、電池モジュール101が漏電状態または漏電しそうな状態であるか否かを判断し、これらの状態にあると判断した場合には電池システム100の動作を停止する。これ以外にも、バッテリコントローラ107は様々な処理を実行することができる。
【0019】
上位コントローラ112は、バッテリコントローラ107から送信される電池モジュール101の様々な情報に基づいて、電池システム100やインバータ110の動作状態を制御する。
【0020】
次に、バッテリコントローラ107において行われる電池の状態推定演算について、図2および図3を用いて説明する。電池モジュール101の開回路電圧(OCV)、SOC、分極電圧Vp等の値は、電池モジュール101の内部状態に応じて定まる値であり、外部からは直接計測できない。そのため、これらの値は、電流センサ102、電圧センサ103、温度センサ104を用いてそれぞれ測定可能な、電池モジュール101に流れた電流の履歴や、閉回路電圧(CCV)の履歴、温度等から推定する必要がある。これを行うため、バッテリコントローラ107には、図2に示すように、電池モジュール101の等価回路をモデル化した電池等価回路モデル702が記憶されている。バッテリコントローラ107は、電池モジュール101の電流I、CCV、温度Tを、電流センサ102、電圧センサ103、温度センサ104を用いてそれぞれ計測し、これらの計測結果を電池等価回路モデル702に入力する。これらの入力値に応じて電池等価回路モデル702から出力されるOCV、SOC、分極電圧Vpの値を電池モジュール101の内部状態として用いることにより、電池モジュール101の内部状態の推定を実現している。
【0021】
図3は、電池等価回路モデル702の構成例を示す図である。電池等価回路モデル702は、SOCよりOCVを算出するための理想電池モデル751と、これに直列接続された内部抵抗値RDCを算出するための内部抵抗モデル752と、分極電圧Vpを算出するための分極モデル755から成る。分極モデル755は、分極抵抗753とキャパシタ754を並列接続することにより表現している。このように電池等価回路モデル702を構成することで、電池モジュール101において計測される電池電圧の様々な変化、たとえばSOCに応じた変化、流れている電流による変化、電流履歴による変化などを表現可能となっている。
【0022】
電池等価回路モデル702を用いたOCV、SOC、Vpの推定は、たとえば以下の手順にて行うことができる。電池システム100の起動時には、キャパシタ754の電荷量および電流Iが共に0であるため、内部抵抗モデル752が表す内部抵抗値RDCによって生じる電圧や分極電圧Vpも、それぞれ0となる。そのため、理想電池モデル751が表すOCVは、CCVと等しくなる。これにより、OCVの初期値が求められる。
【0023】
OCVの初期値が求められたら、次に、バッテリコントローラ107が有するOCVとSOCの対応表を用いて、OCVの初期値に対応するSOCを求め、これを初期SOCとする。
【0024】
電池システム100の起動後は、電流センサ102により計測した電流Iを用いてキャパシタ754の電荷量を増減させることで、分極電圧Vpを算出する。ここで、キャパシタ754には温度依存性があるため、温度センサ104を用いて計測した温度Tにより、キャパシタ754の特性を調節して分極電圧Vpを算出することが好ましい。たとえば、予め設定された温度−時定数変換表や温度−キャパシタ容量変換表等を用いて、キャパシタ754の特性が現在の温度Tに適した特性となるようにする。
【0025】
また、上記と同様に、電流センサ102により計測した電流Iを用いて電池に蓄えられた電荷量を増減させることで、SOCを算出する。なお、SOCの算出には、OCVの推定結果を用いても良い。すなわち、電圧センサ103により計測したCCVから、分極電圧Vpと内部抵抗値RDCによって生じる電圧とを差し引くことで、OCVを推定し、OCVとSOCの対応表を逆引きすることで、SOCを推定することもできる。
【0026】
このように、電池等価回路モデル702にCCV、電流I、温度Tを入力することで、電池等価回路モデル702を現在の電池モジュール101の内部状態と等しくすることができ、OCV、SOC、Vpが推定可能となる。
【0027】
なお、図3の例では、分極モデル755を一組の分極抵抗753とキャパシタ754により表現することで、分極電圧Vpの演算を単純化しているが、演算精度を向上させるために、分極モデル755を表現する分極抵抗とキャパシタの組数を増やしてもよい。また、電池システム100の起動時や、上位コントローラ112からの初期化指令値受信時には、必要に応じてキャパシタ754の電荷量を0にセットしてもよい。これは、たとえばシステムの停止時間が電池の時定数に対して十分長く、分極が解消しているとみなせるときに行うことが好ましい。
【0028】
次に、許容電流を演算するためのバッテリコントローラ107の機能構成を、図4を用いて説明する。一般に、電池モジュール101のような二次電池では、電池に大きな負荷を与え続けると電池の内部抵抗が一時的に上昇する、高負荷抵抗上昇と呼ばれる現象が生じることが知られている。本発明では、バッテリコントローラ107において電池モジュール101の使用状態に応じて適切な許容電流を演算することで、こうした高負荷抵抗上昇が起きないようにしている。
【0029】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図4に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、ΔV実効値演算部201、ΔVlimitデータベース202、電流制限率演算部203、電池保護用許容電流演算部204、および乗算器205の各機能ブロックを有する。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。なお、バッテリコントローラ107は、電池モジュール101の許容電流の演算以外にも、電池システム100の制御に関する様々な処理や制御を実行する。しかし、図4の機能ブロック図では、本発明の説明において必要なもの以外の図示を省略している。
【0030】
ΔV実効値演算部201は、電池モジュール101のCCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を演算する。ΔV実効値演算部201は、たとえば電池モジュール101のCCVとOCVの差を、遅れ要素を含むフィルタに通すことにより、ΔV実効値を演算する。具体的には、ΔV実効値演算部201において、電池モジュール101のCCVとOCVの差を二乗した値(ΔV)に対して一次遅れフィルタを適用し、その結果の平方根に対してSOHを反映させたものをΔV実効値として出力することで、ΔV実効値を演算することができる。
【0031】
ΔV実効値演算部201によるΔV実効値の演算式の例を、以下の式(1)〜(3)により示す。ただし、式(1)のCCV(n)は、現在の電池モジュール101のCCVの値を表し、OCV(n)は、現在の電池モジュール101のOCVの値を表している。CCV(n)、OCV(n)におけるnは、電圧センサ103より取得したCCVとOCVのデータの時系列順を表している。また、式(2)のtは、データのサンプリング間隔を表し、τは、フィルタの時定数を表している。また、式(3)のSOHRは、電池モジュール101の劣化状態を示す指標であり、内部抵抗が初期状態に対して何%になったかを表している。すなわち、電池モジュール101が新品のときにはSOHRが100%であり、劣化に伴いSOHRが増加する。
【0032】
【数1】
【0033】
式(1)は、電池モジュール101の負荷の大きさを示す指標値ΔV(n)を演算する式である。式(1)において、CCVとOCVの差であるCCV(n)−OCV(n)は、現在の電池モジュール101の負荷の大きさを表している。この値は、電池モジュール101が前述の高負荷抵抗上昇が起きるような状態であるか否かを判断するための指標として用いることができる。なお、式(1)では、CCV(n)−OCV(n)を二乗することで指標値ΔV(n)を演算している。こうすることで、充電・放電の両方に対応可能となる。
【0034】
式(2)は、式(1)で求めたΔV(n)に対して一次遅れフィルタを適用することで、電池モジュール101の負荷状態の時間変化を示す指標値Y(n)を演算する式である。式(2)の演算により、電池モジュール101において長時間にわたり高負荷状態、すなわちΔV(n)が大きな値である状態が生じていたかを表す指標値Y(n)を得ることができる。
【0035】
式(3)は、式(2)で求めた負荷状態の時間変化の指標値Y(n)にSOHRを反映させることで、ΔV実効値を演算する式である。式(3)の演算により、電池モジュール101の劣化に応じた内部抵抗の変化によって生じたΔV(n)の変化にも対応可能となる。
【0036】
ΔV実効値演算部201は、以上説明したような演算を実行することで、電池モジュール101のCCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を求めることができる。こうして得られたΔV実効値は、電池モジュール101にどのような大きさの負荷がどの程度の期間与えられていたかを反映した値である。そのため、高負荷抵抗上昇を考慮した許容電流演算が必要かどうかを判定するための指標とすることができる。なお、本実施形態では、計算量が少ない一次遅れフィルタを用いた演算例を説明したが、その他の演算方法を用いてΔV実効値を求めてもよい。たとえば、FIRフィルタや移動平均を用いることにより、高負荷抵抗上昇の発生に影響しない一定期間以上前のデータを計算の対象外として、演算の高精度化を実現してもよい。
【0037】
ΔVlimitデータベース202は、電池モジュール101のSOCおよび温度Tと、電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitとの関係が記録されたデータベースである。このΔVlimitデータベース202を用いることで、前述の電池等価回路モデル702から求められたSOCと、温度センサ104を用いて計測された温度Tとに基づいて、高負荷抵抗上昇を防ぐための限界値としてのΔVlimitを決定することができる。なお、ΔVlimitは一定時間内に許容されるOCVとCCVの差、すなわち負荷の限界値を示している。すなわち、OCVとCCVの差の絶対値がΔVlimitを超える状態が一定期間続くと、電池モジュール101において高負荷抵抗上昇が起きる可能性がある。ただし、負荷の大きさによって高負荷抵抗上昇が起きうるまでの期間は変化するため、複数の期間に関してそれぞれ異なるΔVlimitをΔVlimitデータベース202に持たせてもよい。このようにすれば、最終的な許容電流演算結果を高精度化することが可能である。
【0038】
ΔVlimitデータベース202は、たとえば、様々なSOCと温度Tの組み合わせごとに対応するΔVlimitの値を格納した配列により実現することができる。この場合、連続値であるSOCおよび温度Tの計測結果に対して、ΔVlimitデータベース202に格納されるΔVlimitの値は、離散値のSOCおよび温度Tに対応したものとなる。そのため、ΔVlimitデータベース202において入力されたSOCや温度Tに対応するΔVlimitの値が格納されていない場合には、線形補間等を利用して、出力すべきΔVlimitの値を決定することが好ましい。
【0039】
電流制限率演算部203は、ΔV実効値演算部201から出力されたΔV実効値と、ΔVlimitデータベース202から出力されたΔVlimitとに基づいて、許容電流を制限するための制限率kを演算する。この電流制限率演算部203により、ΔV実効値に応じて制限率kを変化させることで、高負荷抵抗上昇の考慮が不要な状態(k=1)と、考慮が必要な状態(0≦k<1)とを切り替えることが可能となる。
【0040】
電流制限率演算部203は、たとえば図5に示すようなΔV実効値と制限率kの関係に基づいて、制限率kの演算を行う。図5は、ΔV実効値に対応する制限率kの値を示しており、k=1である領域、すなわち許容電流の制限が不要な領域231(0≦ΔV実効値<ΔVlimit1)と、k<1である領域、すなわち許容電流の制限が必要な領域232(ΔV実効値≧ΔVlimit1)に分かれている。領域232は、ΔV実効値に応じて制限率kが変化する領域233(ΔVlimit1≦ΔV実効値<ΔVlimit2)と、制限率kが固定値kminとなる領域234(ΔV実効値≧ΔVlimit2)にさらに分かれている。
【0041】
ここで、電流制限率演算部203において、上記のΔVlimit2を、電池モジュール101において高負荷抵抗上昇が始まるΔV実効値の大きさ、すなわちΔVlimitデータベース202で決定された限界値ΔVlimitとし、さらにΔVlimit1を、このΔVlimitよりも小さな値とする。こうすることで、ΔV実効値がΔVlimitに近づいてΔVlimit1を超えると、制限率kが1よりも小さな値に設定される。これにより、電池モジュール101に対する許容電流を低下させ、高負荷抵抗上昇が起きるような条件が回避可能となる。なお、領域234においてkminを0とすると、理論上は許容電流が0となる場合が生じうる。しかし、上記のようにΔVlimit1とΔVlimit2を異なる値とすることで、一般的には制限率kが0となる前にΔV実効値が増加しなくなる。そのため、kminを0としても、実際には許容電流が0とはならず問題ない。
【0042】
あるいは、電流制限率演算部203は、図6に示すようなΔV実効値と制限率kの関係に基づいて、制限率kの演算を行ってもよい。この例では、ΔV実効値をΔVlimitで割ることで正規化し、図5のΔVlimit1およびΔVlimit2に相当する値をそれぞれ固定の値としている。具体的には、図6の例では、ΔV実効値/ΔVlimitが100%〜120%の部分を、上記のΔV実効値に応じて制限率kが変化する領域233とし、その前後の領域を、それぞれ上記の領域231、234としている。
【0043】
電池保護用許容電流演算部204は、電池等価回路モデル702や温度センサ104、電流センサ102から出力されるSOC、OCV、分極電圧Vp、温度T、電流Iの値に基づいて、電池モジュール101を保護するための電池保護用許容電流を演算する。この許容電流は、電池モジュール101のCCV制限範囲や温度使用範囲等を満たすものである。なお、電池保護用許容電流演算部204による電池保護用許容電流の具体的な演算方法については、後で図7を用いて説明する。
【0044】
乗算器205は、電流制限率演算部203で演算された制限率kと、電池保護用許容電流演算部204で演算された電池保護用許容電流とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。具体的には、乗算器205は、電池保護用許容電流の値に対して制限率kを乗じることで、制限率kに応じた許容電流、すなわちΔV実効値に応じた許容電流の制限を実現する。これにより、ΔV実効値が十分に小さい場合、すなわち電池モジュール101の負荷が十分に小さいか、または電池モジュール101に対して負荷のかかった時間が十分に短い場合には、電池保護用許容電流を制限せずにそのまま許容電流として用いることで、許容電流の最大化を実現する。一方、ΔV実効値が大きい場合、すなわち電池モジュール101に大きな負荷が長時間かかっている場合には、許容電流を制限することで、高負荷抵抗上昇の発生防止を実現する。
【0045】
ここで、電池保護用許容電流演算部204による電池保護用許容電流の演算方法について説明する。図7は、本発明の第1の実施形態に係る電池保護用許容電流演算部204の機能ブロック図である。図7に示すように、電池保護用許容電流演算部204は、電池パラメータのデータベース703と、分極が無かった場合の許容電流を演算する演算ブロック704と、一定時間後の分極を予測する予測ブロック705と、分極による影響を補正する値を算出する補正ブロック706と、補正を適用する減算器707から成る。
【0046】
データベース703は、電池等価回路モデル702が出力したSOC、温度センサ104が出力した温度T、および電流センサ102が出力した電流Iに基づいて、許容電流の演算に必要な上下限電圧、第1抵抗および第1ゲインを出力する。これにより、電池の保護に必要な許容電流演算が可能となる。データベース703は、SOC、温度Tおよび電流Iの値とこれらの出力データの値とが互いに対応付けてマップ化されたデータベースであってもよい。このようにすれば、計算量の削減や、理論式が不明な特性への対応が可能となる。あるいは、SOC、温度Tおよび電流Iの値とこれらの出力データの値との関係を近似式により表したものをデータベース703としてもよい。これにより、データ量の削減や出力値の精度向上が可能となる。
【0047】
演算ブロック704では、電池等価回路モデル702が出力したOCVと、データベース703が出力した上下限電圧および第1抵抗とに基づいて、無分極時の許容電流を演算する。演算ブロック704における許容充電電流の演算式の例を、以下の式(4)により示す。
Imax=(Vmax-OCV)/R1 ・・・(4)
【0048】
上記の式(4)において、Imaxは無分極時の許容充電電流を、Vmaxは上限電圧を、R1は第1抵抗をそれぞれ表す。なお、式(4)では無分極時の許容充電電流を求める式を例示したが、上限電圧Vmaxの代わりに下限電圧Vminを用いることで、無分極時の許容放電電流も同様の演算により求めることができる。上限電圧Vmaxや下限電圧Vminは、データベース703が出力した上下限電圧から求めることができる。あるいは、データベース703において上限電圧Vmaxまたは下限電圧Vminの一方のみを決定し、その値に基づいて、演算ブロック704において無分極時の許容充電電流または許容放電電流の一方のみを演算するようにしてもよい。
【0049】
また、上記の式(4)において、第1抵抗R1の値には、無分極状態から一定電流を電池モジュール101に流し続けた場合の一定時間後の抵抗値を用いることが好ましい。このようにすれば、式(4)で求められる無分極時の許容充電電流Imaxの値は、無分極状態から一定時間後に上限電圧に到達する電流値、すなわち一定時間内は上限電圧に到達しない電流値となる。演算ブロック704では、このようにOCV、上下限電圧、第1抵抗を用いることで、分極が無かった場合の許容電流が算出可能となる。
【0050】
予測ブロック705では、電池等価回路モデル702が出力する分極電圧Vpと、データベース703が出力する第1ゲインとに基づいて、一定時間後(n秒後とする)の分極電圧である第1分極電圧を予測して出力する。予測ブロック705は、たとえば指数関数を用いた以下の式(5)を用いることで、一定電流が流れている場合のn秒後の分極電圧を予測することができる。
Vpn=IRp-(IRp-Vp0)exp(-n/RpCp) ・・・(5)
【0051】
上記の式(5)において、Vpnはn秒後の分極電圧を、Rpは分極抵抗を、Iは電流を、Vp0は現在の分極電圧を、Cpは分極容量をそれぞれ表している。ここで、許容電流の演算時には、n、Rp、Cpがいずれも定数であることから、式(5)は以下の式(6)のように変形可能である。
【0052】
Vpn=IRp-(IRp-Vp0)Gt ・・・(6)
上記の式(6)において、Gtは第1ゲインである。このように、予測ブロック705において第1ゲインを用いて一定時間後の分極電圧を計算する構成とすることで、計算量の多い指数関数を不要とすることができる。そのため、バッテリコントローラ107として、計算能力に制約のある組み込み向けCPUを用いた場合でも、一定時間後の分極電圧が演算可能となる。
【0053】
補正ブロック706では、分極情報と、データベース703が出力する第1抵抗とに基づいて、分極電圧が許容電流に与える影響を考慮した許容電流補正値を算出する。ここでは、たとえば予測ブロック705が出力する第1分極電圧を分極情報として用いることができる。これにより、厳密に一定時間流し続けられる許容電流の演算が可能となる。あるいは、図7の構成とは異なるが、電池等価回路モデル702が出力する分極電圧Vpを直接用いてもよい。このようにした場合、分極電圧を大きめに見積もることになるため、演算される許容電流の値は小さくなるが、安全をより確実に担保可能となる。また、分極による影響の補正量は、分極情報をデータベース703が出力する第1抵抗で割ることにより算出することができる。なお、分極電圧に固定値を掛けて利用することとしてもよい。このようにすれば、分極電圧の影響度合いを調整することができるため、電池等価回路モデル702における分極電圧の推定誤差による過電圧を防ぐことが可能となる。
【0054】
減算器707は、演算ブロック704が出力した無分極時の許容電流から、補正ブロック706が出力した許容電流補正値を減算することにより、分極電圧の影響を考慮した許容電流の補正を行う。これにより、電池モジュール101に一定時間流し続けてもCCVが上限電圧や下限電圧に到達しない最も大きな電流、すなわち電池保護用許容電流を算出することができる。
【0055】
なお、上記のように第1抵抗の値をデータベース703から直接出力する代わりに、電池モジュール101の直流抵抗(DCR)、単位電流あたりのOCVの変化率である第2ゲイン、分極抵抗および第1ゲインに基づいて、第1抵抗の値を求めてもよい。たとえば以下の式(7)を用いて、第1抵抗の値を算出することができる。
R1=DCR+Gsoc+Rp(1-G1)・・・(7)
【0056】
式(7)において、R1は第1抵抗を、Gsocは第2ゲインを、Rpは分極抵抗を、G1は第1ゲインをそれぞれ表している。このように、第1抵抗を間接的に計算することで、電池の劣化等によるパラメータ変化に対応することが可能となる。
【0057】
電池保護用許容電流演算部204は、以上説明したような演算方法により、電池保護用許容電流の演算を行うことができる。
【0058】
本発明の第1の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、高負荷抵抗上昇を考慮する必要があるかを判断するための指標値であるΔV実効値を演算し、これに基づき許容電流を制限することが可能となる。その結果、高負荷抵抗上昇の考慮が必要な場合のみ許容電流を制限する制御が可能となり、高負荷抵抗上昇の防止と許容電流の増加が両立可能となる。
【0059】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0060】
(1)バッテリコントローラ107は、図4の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したΔVlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0061】
(2)バッテリコントローラ107は、電流制限率演算部203により、ΔVlimitに基づいて許容電流に対する制限率kを演算し、電池保護用許容電流演算部204により、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方に基づいて、電池モジュール101を保護するための電池保護用許容電流を演算する。そして、乗算器205により、制限率kと電池保護用許容電流とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させるような許容電流を、適切に算出することができる。
【0062】
(3)バッテリコントローラ107は、ΔV実効値演算部201により、CCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を演算する。電流制限率演算部203では、このΔV実効値とΔVlimitに基づいて、制限率kを演算する。このようにしたので、CCVとOCVの差の時間変化を考慮して、制限率kを正確に演算することができる。
【0063】
(4)ΔV実効値演算部201では、CCVとOCVの差を、遅れ要素を含むフィルタに通すことにより、ΔV実効値を算出することができる。このフィルタには、たとえば一次遅れフィルタを用いることができる。したがって、CCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を確実に演算することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、高負荷抵抗上昇を考慮しつつ電池モジュール101に一定時間流すことが可能な許容電流を演算するためのバッテリコントローラ107の機能構成として、第1の実施形態で説明したのとは別のものを説明する。
【0065】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図8では、既に第1の実施形態にて説明した図4の機能ブロック図と共通の部分については、図4と同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0066】
図8に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、図4の電流制限率演算部203および乗算器205に代えて、性能維持用許容電流演算部211および最小値選択器212を有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0067】
性能維持用許容電流演算部211は、ΔV実効値演算部201が出力したΔV実効値と、ΔVlimitデータベース202が出力したΔVlimitと、電池等価回路モデル702や温度センサ104から出力されるSOC、温度T、SOHRの値とに基づいて、電池モジュール101の性能を維持するための性能維持用許容電流を演算する。この許容電流は、電池モジュール101に高負荷抵抗上昇を起こさないためのものである。
【0068】
最小値選択器212は、性能維持用許容電流演算部211が出力した性能維持用許容電流と、電池保護用許容電流演算部204が出力した電池保護用許容電流とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。具体的には、最小値選択器212は、これらの許容電流を比較し、いずれか小さい方を許容電流として選択して出力する。
【0069】
ここで、性能維持用許容電流演算部211による性能維持用許容電流の演算方法について説明する。前述の式(2)において、ΔV(n)の値が一定であると仮定しΔV(n)=ΔVとすると、フィルタの時定数τおよびデータのサンプリング間隔tは、電池システム100の設計時に定まる定数である。そのため、式(2)を以下の式(8)のように簡略化することができる。ただし、式(2)のmは、許容電流演算において考慮すべき一定時間を表し、AおよびBは、τ、t、mより定まる定数を表している。
【0070】
【数2】
【0071】
ΔV実効値=ΔVlimitとすると、前述の式(3)と上記の式(8)により、以下の式(9)が導かれる。
【0072】
【数3】
【0073】
ここで、ΔVは以下の式(10)のように表すことができるため、式(10)と上記の式(9)から、電流値Iを以下の式(11)で求めることができる。なお、式(11)において、内部抵抗値RDCや分極抵抗Rpの値は、SOCおよび温度Tにより定めることができる。
【0074】
【数4】
【0075】
上記の式(11)で求められる電流値Iは、電池モジュール101に一定時間流し続けるとΔV実効値がΔVlimitと等しくなるような値を示している。したがって、この電流値Iで定まる電流の大きさが、電池モジュール101に高負荷抵抗上昇を生じさせないための許容電流、すなわち性能維持用許容電流となる。
【0076】
性能維持用許容電流演算部211は、以上説明したような演算方法により、性能維持用許容電流の演算を行うことができる。
【0077】
本発明の第2の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、現在のΔV実効値から推定される、電池モジュール101に高負荷抵抗上昇を起こさせないための性能維持用許容電流と、電池モジュール101の保護を実現するための電池保護用許容電流とを、それぞれ演算している。そして、これらの許容電流のうち小さいほうを選択している。これにより、電池保護のための許容電流を制限し、最終的な許容電流として出力することで、高負荷抵抗上昇の防止と電池の保護を同時に実現可能となる。
【0078】
また、性能維持用許容電流の演算では、電池モジュール101に一定時間流し続けるとΔV実効値がΔVlimitに等しくなる電流値を求めている。この電流値は、高負荷抵抗上昇が起きない条件下、すなわち図5の領域231に対応する条件下では、電池保護用許容電流よりも大きな値となる。そのため、第1の実施形態と同様に、高負荷抵抗上昇を考慮する必要が無い場合の許容電流を電池保護用許容電流と等しくして、許容電流を増加させることができる。一方、高負荷抵抗上昇が起きうる図5の領域232に対応する条件下では、高負荷抵抗上昇を考慮した性能維持用許容電流のほうが小さくなるため、これが許容電流として出力される。なお、前述の式(11)は平方根を含んだ計算であるため、図5図6に示すようなΔV実効値と制限率kの関係に基づいて許容電流の制限率kを演算する第1の実施形態と比べて、計算が複雑となる。しかし、この計算を行うことで、高負荷抵抗上昇に対してより適切な許容電流を演算することが可能となる。
【0079】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0080】
(1)バッテリコントローラ107は、図8の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したΔVlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0081】
(2)バッテリコントローラ107は、性能維持用許容電流演算部211により、ΔVlimitに基づいて、電池モジュール101の性能を維持するための性能維持用許容電流を演算する。また、電池保護用許容電流演算部204により、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方に基づいて、電池モジュール101を保護するための電池保護用許容電流を演算する。そして、最小値選択器212により、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させるような許容電流を、適切に算出することができる。
【0082】
(3)バッテリコントローラ107は、ΔV実効値演算部201により、CCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を演算する。性能維持用許容電流演算部211では、このΔV実効値とΔVlimitに基づいて、性能維持用許容電流を演算する。また、最小値選択器212では、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とを比較し、いずれか小さい方を許容電流とする。このようにしたので、CCVとOCVの差の時間変化を考慮して性能維持用許容電流を正確に演算し、これに基づいて適切な許容電流を算出することができる。
【0083】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、図5の領域234に相当する条件下における許容電流の精度を改善するため、第2の実施形態で説明した性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とを加重平均することで許容電流を求める例を説明する。
【0084】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図9では、既に第1、第2の実施形態にて説明した図4図8の機能ブロック図と共通の部分については、これらと同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0085】
図9に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、第1の実施形態で説明したΔV実効値演算部201、ΔVlimitデータベース202および電池保護用許容電流演算部204と、第2の実施形態で説明した性能維持用許容電流演算部211とに加えて、さらに重み演算部221および重み付け演算部222を有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0086】
本実施形態においては、性能維持用許容電流演算部211には、ΔV実効値演算部201からΔV実効値が入力されない。性能維持用許容電流演算部211は、ΔV実効値の代わりにΔVlimitを用いて、第2の実施形態で説明したような演算方法により性能維持用許容電流を演算する。これにより、ΔV実効値がΔVlimitに等しい場合の許容電流が性能維持用許容電流として性能維持用許容電流演算部211から出力される。こうして求められた性能維持用許容電流を用いることで、ΔV実効値がΔVlimitを上回らないようにして、高負荷抵抗上昇を考慮した制御が可能となる。
【0087】
重み演算部221は、ΔV実効値演算部201が出力したΔV実効値と、ΔVlimitデータベース202が出力したΔVlimitとに基づいて、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とに対する重みGを演算する。この重みGの値は、ΔV実効値およびΔVlimitの値に応じて、0〜1の間で変化する。
【0088】
重み演算部221は、たとえば図10に示すようなΔV実効値と重みGの関係に基づいて、重みGの演算を行う。図10は、図5、6と同様に、G=1である領域、すなわち許容電流の制限が不要な領域231(0≦ΔV実効値<ΔVlimit1)と、G<1である領域、すなわち許容電流の制限が必要な領域232(ΔV実効値≧ΔVlimit1)に分かれている。領域232は、ΔV実効値に応じて重みGが1から0の間で変化する領域233(ΔVlimit1≦ΔV実効値<ΔVlimit2)と、重みGが0となる領域234(ΔV実効値≧ΔVlimit2)にさらに分かれている。
【0089】
重み付け演算部222は、重み演算部221が出力した重みGに基づいて、性能維持用許容電流演算部211が出力した性能維持用許容電流と、電池保護用許容電流演算部204が出力した電池保護用許容電流とを加重平均し、許容電流を算出する。具体的には、重み付け演算部222は、G=1、0を電池保護用許容電流と性能維持用許容電流にそれぞれ対応付け、電池保護用許容電流にGをかけた値と、性能維持用許容電流に(1−G)をかけた値とを合計することで、許容電流を算出する。これにより、ΔV実効値の値に応じて、最終的な許容電流の値を、電池保護用許容電流と性能維持用許容電流の間の任意の値とすることができる。
【0090】
本発明の第3の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、ΔV実効値に応じて電池保護用許容電流と性能維持用許容電流の間の値を許容電流として出力することが可能となる。
【0091】
なお、本実施形態による演算方法と第1の実施形態で説明した演算方法とを比較すると、第1の実施形態では、電池保護用許容電流に制限率kを乗じることで許容電流を求めている。そのため、k=kminとなる場合の許容電流の演算結果は、電池保護用許容電流に応じて変化する。したがって、性能維持用許容電流に対して、実際の許容電流が小さくなる傾向にある。一方、本実施形態では、計算量は増大してしまうが、性能維持用許容電流で許容電流に制限をかける形となっている。こうすることで、通常は電池保護用許容電流が性能維持用許容電流よりも大きいため、許容電流を最低でも性能維持用許容電流と等しい値、すなわち電池性能を維持可能な最大電流と等しい値となる。その結果、許容電流の増加が期待できる。
【0092】
以上説明した本発明の第3の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0093】
(1)バッテリコントローラ107は、図9の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したΔVlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0094】
(2)バッテリコントローラ107は、性能維持用許容電流演算部211により、ΔVlimitに基づいて、電池モジュール101の性能を維持するための性能維持用許容電流を演算する。また、電池保護用許容電流演算部204により、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方に基づいて、電池モジュール101を保護するための電池保護用許容電流を演算する。そして、重み付け演算部222により、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させるような許容電流を、適切に算出することができる。
【0095】
(3)バッテリコントローラ107は、ΔV実効値演算部201により、CCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を演算し、重み演算部221により、このΔV実効値とΔVlimitに基づいて、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とに対する重みGを演算する。重み付け演算部222では、この重みGに基づいて、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とを加重平均し、許容電流を算出する。このようにしたので、CCVとOCVの差の時間変化を考慮して性能維持用許容電流を正確に演算し、これに基づいて適切な許容電流を算出することができる。
【0096】
(第4の実施形態)
次に本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態では、電池の保護と性能維持を実現する許容電流をまとめて演算する例を説明する。
【0097】
図11は、本発明の第4の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図11では、既に第1〜第3の実施形態にて説明した図4図8図9の機能ブロック図と共通の部分については、これらと同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0098】
図11に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、第1の実施形態で説明したΔVlimitデータベース202と、電池モデルベースの性能維持・電池保護用許容電流演算部226とを有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0099】
性能維持・電池保護用許容電流演算部226は、電池モジュール101の性能維持および保護のための許容電流を演算する。性能維持・電池保護用許容電流演算部226は、ΔVlimitデータベース202から出力されるΔVlimitと、電池等価回路モデル702や温度センサ104、電流センサ102から出力されるSOC、OCV、分極電圧Vp、温度T、電流Iの値とに基づいて、以下で説明するような演算方法により、この許容電流の演算を行う。
【0100】
性能維持・電池保護用許容電流演算部226による許容電流の演算方法について説明する。図12は、本発明の第4の実施形態に係る性能維持・電池保護用許容電流演算部226の機能ブロック図である。図12に示すように、性能維持・電池保護用許容電流演算部226は、第1の実施形態において図7で説明した電池保護用許容電流演算部204の各構成に加えて、さらに加算器711と最小値選択器712とを有する。
【0101】
加算器711は、ΔVlimitとOCVとに基づいて、電池モジュール101の限界電圧を演算する。具体的には、加算器711は、ΔVlimitとOCVとを加算した値を、電池モジュール101が高負荷抵抗上昇を起こさないためのCCVの上限値である限界電圧として出力する。この限界電圧により、高負荷抵抗上昇を起こさないCCVの上限が定まる。なお、上記の例ではΔVlimitにOCVを加算しているが、OCVの代わりにCCVを用いてもよい。この場合、ΔVlimitにCCVを加算した後、そこから分極電圧や直流抵抗による電圧低下分等を差し引いたものを、限界電圧として出力することが好ましい。
【0102】
最小値選択器712は、加算器711が出力した限界電圧と、データベース703が出力した上限電圧とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出するための電圧上限値を算出する。具体的には、最小値選択器712は、限界電圧と上限電圧とを比較し、いずれか小さい方を電圧上限値として選択して出力する。このようにして、上限電圧を加算器711が出力した限界電圧で制限することにより、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の上限電圧を逸脱しないようなCCVの値が求まる。
【0103】
この電圧上限値に基づいて、演算ブロック704は前述のような演算方法を用いて、無分極時の許容電流を求めることができる。すなわち、第1の実施形態における電池保護用許容電流演算部204では、図7に示したように、OCV、上下限電圧および第1抵抗の値が演算ブロック704に入力され、演算ブロック704は、これらの値に基づいて無分極時の許容電流を求めていた。これに対して、本実施形態では、上下限電圧の代わりに最小値選択器712の出力が演算ブロック704に入力されており、演算ブロック704はこれを用いて無分極時の許容電流を求めている。性能維持・電池保護用許容電流演算部226は、この無分極時の許容電流に基づいて、最終的な許容電流を算出する。これにより、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の上限電圧を逸脱しないような許容電流の値が求まる。
【0104】
なお、上記の説明では、加算器711により、OCVにΔVlimitを加えて限界電圧を求め、最小値選択器712により、この限界電圧と上限電圧とを比較することで電圧上限値を求めている。そのため、性能維持・電池保護用許容電流演算部226において求められる最終的な許容電流は、電池モジュール101の充電時の許容電流、すなわち許容充電電流である。しかし、性能維持・電池保護用許容電流演算部226において、加算器711を減算器に置き換えると共に、最小値選択器712を最大値選択器に置き換えてもよい。この場合、上記とは反対に、減算器により、OCVからΔVlimitを引いて限界電圧を求め、最大値選択器により、この限界電圧と下限電圧とを比較することで電圧下限値を求める。そのため、性能維持・電池保護用許容電流演算部226において求められる最終的な許容電流は、電池モジュール101の放電時の許容電流、すなわち許容放電電流である。このようにすれば、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の下限電圧を逸脱しないような許容電流の値が求まる。さらに、性能維持・電池保護用許容電流演算部226において、許容充電電流と許容放電電流の両方を求めるようにしてもよい。
【0105】
本発明の第4の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、電池の保護と性能維持を共に実現する許容電流をまとめて演算することが可能となり、演算量が削減できる。
【0106】
以上説明した本発明の第4の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0107】
(1)バッテリコントローラ107は、図11の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したΔVlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0108】
(2)バッテリコントローラ107は、性能維持・電池保護用許容電流演算部226により、CCVまたはOCVと、ΔVlimitとに基づいて、電池モジュール101の限界電圧を演算し、この限界電圧と、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を演算する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させるような許容電流を、適切に算出することができる。
【0109】
(3)性能維持・電池保護用許容電流演算部226は、最小値選択器712により、加算器711で演算された限界電圧と、データベース703から出力された上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とを比較し、その比較結果に基づいて、限界電圧、または上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を選択する。この最小値選択器712が選択した限界電圧、または上限電圧および下限電圧の少なくとも一方に基づいて、性能維持・電池保護用許容電流演算部226は、演算ブロック704および減算器707により、許容電流を算出する。このようにしたので、演算量を削減しつつ、適切な許容電流を算出することができる。
【0110】
(第5の実施形態)
次に本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態では、第4の実施形態で説明した許容電流の演算方法において、ΔV実効値を反映可能とした例を説明する。
【0111】
図13は、本発明の第5の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図13では、既に第1〜第4の実施形態にて説明した図4図8図9図11の機能ブロック図と共通の部分については、これらと同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0112】
図13に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、第1の実施形態で説明したΔV実効値演算部201、ΔVlimitデータベース202および電流制限率演算部203と、電池モデルベースの性能維持・電池保護用許容電流演算部227とを有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0113】
性能維持・電池保護用許容電流演算部227は、第4の実施形態で説明した図11の性能維持・電池保護用許容電流演算部226と同様に、電池モジュール101の性能維持および保護のための許容電流を演算する。性能維持・電池保護用許容電流演算部227は、電流制限率演算部203から出力される制限率kと、電池等価回路モデル702や温度センサ104、電流センサ102から出力されるSOC、OCV、分極電圧Vp、温度T、電流Iの値とに基づいて、以下で説明するような演算方法により、この許容電流の演算を行う。
【0114】
性能維持・電池保護用許容電流演算部227による許容電流の演算方法について説明する。図14は、本発明の第5の実施形態に係る性能維持・電池保護用許容電流演算部227の機能ブロック図である。図14に示すように、性能維持・電池保護用許容電流演算部227は、第4の実施形態で説明した図12の性能維持・電池保護用許容電流演算部226において、加算器711および最小値選択器712が乗算器713に置き換えられた構成を有する。
【0115】
乗算器713は、データベース703が出力する上限電圧に制限率kを乗じることで、上限電圧を制限率kに応じて制限し、高負荷抵抗上昇を起こさないCCVの上限値を出力する。これにより、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の上限電圧を逸脱しないような電圧上限値が求まる。また、ΔV実効値を用いることで、高負荷抵抗上昇防止のために上限電圧を制限する必要があるときにのみ、制限率kに応じて上限電圧を制限することが可能となる。
【0116】
この制限後の上限値に基づいて、演算ブロック704は前述のような演算方法を用いて、無分極時の許容電流を求めることができる。すなわち、第1の実施形態における電池保護用許容電流演算部204では、図7に示したように、OCV、上下限電圧および第1抵抗の値が演算ブロック704に入力され、演算ブロック704は、これらの値に基づいて無分極時の許容電流を求めていた。これに対して、本実施形態では、上下限電圧の代わりに乗算器713の出力が演算ブロック704に入力されており、演算ブロック704はこれを用いて無分極時の許容電流を求めている。性能維持・電池保護用許容電流演算部227は、この無分極時の許容電流に基づいて、最終的な許容電流を算出する。これにより、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の上限電圧を逸脱しないような許容電流の値が求まる。
【0117】
なお、上記の説明では、乗算器713により、上限電圧に制限率kを乗じることで電圧上限値を求めている。そのため、性能維持・電池保護用許容電流演算部227において求められる最終的な許容電流は、電池モジュール101の充電時の許容電流、すなわち許容充電電流である。しかし、性能維持・電池保護用許容電流演算部227において、上記とは反対に、乗算器713により、OCVからΔVlimitを引いて限界電圧を求め、最大値選択器により、下限電圧に制限率kを乗じることで電圧下限値を求めてもよい。この場合、性能維持・電池保護用許容電流演算部227において求められる最終的な許容電流は、電池モジュール101の放電時の許容電流、すなわち許容放電電流である。このようにすれば、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の下限電圧を逸脱しないような許容電流の値が求まる。さらに、性能維持・電池保護用許容電流演算部227において、許容充電電流と許容放電電流の両方を求めるようにしてもよい。
【0118】
本発明の第5の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、第4の実施形態と同様に、電池の保護と性能維持を共に実現する許容電流をまとめて演算することが可能となり、演算量が削減できる。
【0119】
以上説明した本発明の第5の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0120】
(1)バッテリコントローラ107は、図13の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したΔVlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0121】
(2)バッテリコントローラ107は、電流制限率演算部203により、ΔVlimitに基づいて上限電圧および下限電圧の少なくとも一方に対する制限率kを演算し、性能維持・電池保護用許容電流演算部227により、制限率kと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を演算する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させるような許容電流を、適切に算出することができる。
【0122】
(3)バッテリコントローラ107は、ΔV実効値演算部201により、CCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を演算する。電流制限率演算部203では、このΔV実効値とΔVlimitに基づいて、制限率kを演算する。このようにしたので、CCVとOCVの差の時間変化を考慮して、制限率kを正確に演算することができる。
【0123】
(第6の実施形態)
次に本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態では、第2の実施形態で説明した性能維持用許容電流の演算において、分極電圧Vpを考慮した例を説明する。
【0124】
図15は、本発明の第6の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図15では、既に第1〜第5の実施形態にて説明した図4図8図9図11図13の機能ブロック図と共通の部分については、これらと同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0125】
図15に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、第1の実施形態で説明したΔVlimitデータベース202および電池保護用許容電流演算部204と、第2の実施形態で説明した最小値選択器212と、電池モデルベースの性能維持用許容電流演算部228とを有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0126】
性能維持用許容電流演算部228は、第2の実施形態で説明した性能維持用許容電流演算部211と同様に、電池モジュール101の性能を維持するための性能維持用許容電流を演算する。性能維持用許容電流演算部228は、ΔVlimitデータベース202から出力されるΔVlimitと、電池等価回路モデル702や温度センサ104、電流センサ102から出力されるSOC、OCV、分極電圧Vp、温度T、電流Iの値とに基づいて、以下で説明するような演算方法により、性能維持用許容電流の演算を行う。そして、算出した性能維持用許容電流を最小値選択器212に出力する。
【0127】
最小値選択器212は、性能維持用許容電流演算部228が出力した性能維持用許容電流と、電池保護用許容電流演算部204が出力した電池保護用許容電流とに基づいて、第2の実施形態と同様に、電池モジュール101の許容電流を算出する。すなわち、最小値選択器212は、これらの許容電流を比較し、いずれか小さい方を許容電流として選択して出力する。
【0128】
性能維持用許容電流演算部228による性能維持用許容電流の演算方法について説明する。図16は、本発明の第6の実施形態に係る性能維持用許容電流演算部228の機能ブロック図である。図16に示すように、性能維持用許容電流演算部228は、第1の実施形態において図7で説明した電池保護用許容電流演算部204の各構成に加えて、さらに加算器711を有する。
【0129】
加算器711は、第4の実施形態において説明したのと同様に、ΔVlimitとOCVとに基づいて、電池モジュール101の限界電圧を演算する。すなわち、加算器711は、ΔVlimitとOCVとを加算した値を、電池モジュール101が高負荷抵抗上昇を起こさないためのCCVの上限値である限界電圧として出力する。この限界電圧により、高負荷抵抗上昇を起こさないCCVの上限が定まる。なお、上記の例ではΔVlimitにOCVを加算しているが、OCVの代わりにCCVを用いてもよい。この場合、ΔVlimitにCCVを加算した後、そこから分極電圧や直流抵抗による電圧低下分等を差し引いたものを、限界電圧として出力することが好ましい。
【0130】
この限界電圧に基づいて、演算ブロック704は前述のような演算方法を用いて、無分極時の許容電流を求めることができる。すなわち、第1の実施形態における電池保護用許容電流演算部204では、図7に示したように、OCV、上下限電圧および第1抵抗の値が演算ブロック704に入力され、演算ブロック704は、これらの値に基づいて無分極時の許容電流を求めていた。これに対して、本実施形態では、上下限電圧の代わりに加算器711から出力される限界電圧が演算ブロック704に入力されており、演算ブロック704はこれを用いて無分極時の許容電流を求めている。性能維持用許容電流演算部228は、この無分極時の許容電流に基づいて、性能維持用許容電流を算出する。これにより、現在の分極電圧Vpを考慮して、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の上限電圧を逸脱しないような許容電流の値が求まる。
【0131】
なお、上記の説明では、加算器711により、OCVにΔVlimitを加えて限界電圧を求めている。そのため、性能維持用許容電流演算部228において求められる性能維持用許容電流は、電池モジュール101の充電時の許容電流、すなわち許容充電電流である。しかし、性能維持用許容電流演算部228において、加算器711を減算器に置き換えてもよい。この場合、上記とは反対に、減算器により、OCVからΔVlimitを引いて限界電圧を求める。そのため、性能維持用許容電流演算部228において求められる性能維持用許容電流は、電池モジュール101の放電時の許容電流、すなわち許容放電電流である。このようにすれば、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の下限電圧を逸脱しないような許容電流の値が求まる。さらに、性能維持用許容電流演算部228において、許容充電電流と許容放電電流の両方を求めるようにしてもよい。
【0132】
本発明の第6の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、電池モジュール101の充放電に伴って必ず生じる分極電圧が許容電流に与える影響を考慮することができる。そのため、より正確に高負荷抵抗上昇を起こさない許容電流の演算が可能となる。
【0133】
以上説明した本発明の第6の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0134】
(1)バッテリコントローラ107は、図15の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したΔVlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0135】
(2)バッテリコントローラ107は、性能維持用許容電流演算部228により、ΔVlimitに基づいて、電池モジュール101の性能を維持するための性能維持用許容電流を演算する。また、電池保護用許容電流演算部204により、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方に基づいて、電池モジュール101を保護するための電池保護用許容電流を演算する。そして、最小値選択器212により、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させるような許容電流を、適切に算出することができる。
【0136】
(3)性能維持用許容電流演算部228は、加算器711により、CCVまたはOCVと、ΔVlimitとに基づいて、電池モジュール101の限界電圧を演算し、この限界電圧に基づいて、演算ブロック704および減算器707により、性能維持用許容電流を演算する。最小値選択器212では、この性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とを比較し、いずれか小さい方を許容電流とする。このようにしたので、CCVとOCVの差の時間変化を考慮して性能維持用許容電流を正確に演算し、これに基づいて適切な許容電流を算出することができる。
【0137】
(第7の実施形態)
次に本発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態では、第3の実施形態で説明した性能維持用許容電流の演算において、分極電圧Vpを考慮した例を説明する。
【0138】
図17は、本発明の第7の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図17では、既に第1〜第6の実施形態にて説明した図4図8図9図11図13図15の機能ブロック図と共通の部分については、これらと同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0139】
図17に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、第1の実施形態で説明したΔV実効値演算部201、ΔVlimitデータベース202および電池保護用許容電流演算部204と、第3の実施形態で説明した重み演算部221および重み付け演算部222と、第6の実施形態で説明した電池モデルベースの性能維持用許容電流演算部228とを有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0140】
本発明の第7の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、第3の実施形態と同様に、ΔV実効値に応じて電池保護用許容電流と性能維持用許容電流の間の値を許容電流として出力することが可能となる。また、第6の実施形態と同様に、電池モジュール101の充放電に伴って必ず生じる分極電圧が許容電流に与える影響を考慮することができる。そのため、高負荷抵抗上昇を起こさない許容電流の演算をより高精度に行うことが可能となる。
【0141】
以上説明した本発明の第7の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0142】
(1)バッテリコントローラ107は、図17の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したΔVlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0143】
(2)バッテリコントローラ107は、性能維持用許容電流演算部228により、ΔVlimitに基づいて、電池モジュール101の性能を維持するための性能維持用許容電流を演算する。また、電池保護用許容電流演算部204により、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方に基づいて、電池モジュール101を保護するための電池保護用許容電流を演算する。そして、重み付け演算部222により、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させるような許容電流を、適切に算出することができる。
【0144】
(3)バッテリコントローラ107は、ΔV実効値演算部201により、CCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を演算し、重み演算部221により、このΔV実効値とΔVlimitに基づいて、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とに対する重みGを演算する。重み付け演算部222では、この重みGに基づいて、性能維持用許容電流と電池保護用許容電流とを加重平均し、許容電流を算出する。このようにしたので、CCVとOCVの差の時間変化を考慮して性能維持用許容電流を正確に演算し、これに基づいて適切な許容電流を算出することができる。
【0145】
(第8の実施形態)
次に本発明の第8の実施形態について説明する。本実施形態では、第4、第5の実施形態で説明した許容電流の演算において、重み付け演算を追加することでΔV実効値を反映させるようにした例を説明する。
【0146】
図18は、本発明の第8の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図18では、既に第1〜第7の実施形態にて説明した図4図8図9図11図13図15図17の機能ブロック図と共通の部分については、これらと同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0147】
図18に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、第1の実施形態で説明したΔV実効値演算部201およびΔVlimitデータベース202と、第3の実施形態で説明した重み演算部221と、電池モデルベースの性能維持・電池保護用許容電流演算部229とを有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0148】
性能維持・電池保護用許容電流演算部229は、第4の実施形態で説明した図11の性能維持・電池保護用許容電流演算部226や、第5の実施形態で説明した図13の性能維持・電池保護用許容電流演算部227と同様に、電池モジュール101の性能維持および保護のための許容電流を演算する。性能維持・電池保護用許容電流演算部229は、ΔVlimitデータベース202から出力されるΔVlimitと、重み演算部221から出力される重みGと、電池等価回路モデル702や温度センサ104、電流センサ102から出力されるSOC、OCV、分極電圧Vp、温度T、電流Iの値とに基づいて、以下で説明するような演算方法により、この許容電流の演算を行う。
【0149】
性能維持・電池保護用許容電流演算部229による許容電流の演算方法について説明する。図19は、本発明の第8の実施形態に係る性能維持・電池保護用許容電流演算部229の機能ブロック図である。図19に示すように、性能維持・電池保護用許容電流演算部229は、第4の実施形態で説明した図12の性能維持・電池保護用許容電流演算部226において、最小値選択器712が重み付け演算器714に置き換えられた構成を有する。
【0150】
重み付け演算器714は、重み演算部221が出力した重みGに基づいて、加算器711が出力した限界電圧と、データベース703が出力した上限電圧とを加重平均し、CCVの目標とすべき目標CCVを算出する。具体的には、重み付け演算器714は、G=1、0を上限電圧と限界電圧にそれぞれ対応付け、上限電圧にGをかけた値と、限界電圧に(1−G)をかけた値とを合計することで、目標CCVを算出する。これにより、ΔV実効値に応じて、目標CCVの値を、上限電圧と限界電圧の間の任意の値とすることができる。
【0151】
この目標CCVに基づいて、演算ブロック704は前述のような演算方法を用いて、無分極時の許容電流を求めることができる。すなわち、第1の実施形態における電池保護用許容電流演算部204では、図7に示したように、OCV、上下限電圧および第1抵抗の値が演算ブロック704に入力され、演算ブロック704は、これらの値に基づいて無分極時の許容電流を求めていた。これに対して、本実施形態では、上下限電圧の代わりに重み付け演算器714の出力が演算ブロック704に入力されており、演算ブロック704はこれを用いて無分極時の許容電流を求めている。性能維持・電池保護用許容電流演算部229は、この無分極時の許容電流に基づいて、最終的な許容電流を算出する。これにより、ΔV実効値を反映して、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の上限電圧を逸脱しないような許容電流の値が求まる。
【0152】
なお、上記の説明では、加算器711により、OCVにΔVlimitを加えて限界電圧を求め、重み付け演算器714により、この限界電圧と上限電圧とを加重平均することで目標CCVを求めている。そのため、性能維持・電池保護用許容電流演算部229において求められる最終的な許容電流は、電池モジュール101の充電時の許容電流、すなわち許容充電電流である。しかし、性能維持・電池保護用許容電流演算部229において、加算器711を減算器に置き換えてもよい。この場合、上記とは反対に、減算器により、OCVからΔVlimitを引いて限界電圧を求め、重み付け演算器714により、この限界電圧と下限電圧とを加重平均することで目標CCVを求める。そのため、性能維持・電池保護用許容電流演算部229において求められる最終的な許容電流は、電池モジュール101の放電時の許容電流、すなわち許容放電電流である。このようにすれば、ΔV実効値を反映して、高負荷抵抗上昇を起こさず、かつ電池の下限電圧を逸脱しないような許容電流の値が求まる。さらに、性能維持・電池保護用許容電流演算部229において、許容充電電流と許容放電電流の両方を求めるようにしてもよい。
【0153】
本発明の第8の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、ΔV実効値を反映して、電池の保護と性能維持を共に実現する許容電流をまとめて演算することが可能となり、演算量が削減できる。
【0154】
以上説明した本発明の第8の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0155】
(1)バッテリコントローラ107は、図18の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したΔVlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0156】
(2)バッテリコントローラ107は、性能維持・電池保護用許容電流演算部229により、CCVまたはOCVと、ΔVlimitとに基づいて、電池モジュール101の限界電圧を演算し、この限界電圧と、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を演算する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させるような許容電流を、適切に算出することができる。
【0157】
(3)バッテリコントローラ107は、ΔV実効値演算部201により、CCVとOCVの差の時間変化に関するΔV実効値を演算し、重み演算部221により、このΔV実効値とΔVlimitに基づいて、限界電圧と上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに対する重みGを演算する。性能維持・電池保護用許容電流演算部229は、重み付け演算器714により、重み演算部221で演算された重みGに基づいて、限界電圧と、データベース703から出力された上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とを加重平均し、演算ブロック704および減算器707により、許容電流を算出する。このようにしたので、CCVとOCVの差の時間変化を考慮して、演算量を削減しつつ、適切な許容電流を算出することができる。
【0158】
(第9の実施形態)
次に本発明の第9の実施形態について説明する。本実施形態では、バッテリコントローラ107を車両に搭載した場合のΔV実効値の演算例を説明する。
【0159】
バッテリコントローラ107を含む電池システム100を自動車等の車両に搭載した場合、消費電力を削減するために、車両のキーがオフされるとバッテリコントローラ107はシャットダウンされる。バッテリコントローラ107がシャットダウンされている間は、ΔV実効値演算部201において、ΔV実効値の演算に必要な一次遅れフィルタが動作せず、前述の式(2)で表される演算によりΔV実効値を求めることができない。そのため、次回のシステム起動時におけるΔV実効値の演算には、シャットダウンによる充放電休止期間を反映する例外処理が必要となる。本実施形態では、この例外処理を実現するため、図20〜23を用いて以下で説明するような演算をバッテリコントローラ107において行うことにより、ΔV実効値を演算する。
【0160】
図20は、本発明の第9の実施形態に係るΔV実効値の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図20に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、日時情報生成部241、日時ベースの稼働比率演算部242、不揮発メモリ243、およびΔV実効値演算部244の各機能ブロックを有する。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。なお、本実施形態のバッテリコントローラ107は、図4図8図9図13図17図18におけるΔV実効値演算部201の代わりに、この図20に示す機能構成を用いて、ΔV実効値の演算を行う。そして、得られたΔV実効値の演算結果を基に、第1〜第3、第5、第7、第8の実施形態でそれぞれ説明したような演算処理を行うことにより、許容電流の演算を行う。この許容電流の演算処理については、以下において説明を省略する。
【0161】
日時情報生成部241は、現在の日付や時刻を示す情報を生成し、日時情報として出力する。日時情報生成部241は、たとえばバッテリコントローラ107に搭載されている不図示のリアルタイムクロックや、上位コントローラ112から送られてくる情報を元に、現在の日付や時刻を取得することができる。
【0162】
稼働比率演算部242は、日時情報生成部241が出力した日時情報と、上位コントローラ112等から送られる車両の起動信号と、不揮発メモリ243に格納されている稼働時刻情報とに基づいて、日時ベースでのバッテリコントローラ107の稼働比率を演算する。なお、稼働比率演算部242による稼働比率の演算方法については、後で詳しく説明する。
【0163】
不揮発メモリ243は、バッテリコントローラ107の過去の稼働履歴を表す稼働時刻情報や、最終Y(n)などを記憶する。最終Y(n)とは、前回のシステム稼働中に最後に求められた電池モジュール101の負荷状態の時間変化に関する指標値Y(n)のことであり、前述の式(2)で表されるものである。稼働時刻情報は、稼働比率演算部242によって不揮発メモリ243に記憶されると共に不揮発メモリ243から読み出され、最終Y(n)は、ΔV実効値演算部244によって不揮発メモリ243に記憶されると共に不揮発メモリ243から読み出される。
【0164】
図21は、不揮発メモリ243に格納される稼働時刻情報の例を示す図である。図21に示すように、不揮発メモリ243には、バッテリコントローラ107の過去の稼働履歴として、たとえば30分ごとのバッテリコントローラ107の稼働状況を表す稼働フラグが記録される。この例では、一日を30分毎の時間帯、すなわち48個の時間帯に分割し、各時間帯においてバッテリコントローラ107が稼働していた場合は「1」、非稼働だった場合は「0」のフラグ値が、稼働フラグとして格納されている。図21に示した範囲では、稼働中を表すフラグ値「1」が4カ所にあるため、バッテリコントローラ107は、24時間中に合計でおよそ2時間(4÷48×24=2)だけ稼働していたことが分かる。なお、図21には示していないが、最後に不揮発メモリ243にデータを格納した日時を表す最終データ格納時刻情報も、稼働時刻情報と共に不揮発メモリ243に保存されている。
【0165】
ΔV実効値演算部244は、稼働比率演算部242が出力した稼働比率と、電池モジュール101のCCVおよびOCVと、車両の状態を示す起動信号と、不揮発メモリ243から読み出した最終Y(n)とに基づいて、ΔV実効値を演算する。なお、ΔV実効値演算部244によるΔV実効値の演算方法については、後で詳しく説明する。
【0166】
次に、稼働比率演算部242における稼働比率の演算方法について説明する。図22は、本発明の第9の実施形態に係る稼働比率演算部242の処理フローを示す図である。
【0167】
バッテリコントローラ107が起動された後、ステップ1001において、稼働比率演算部242は、不揮発メモリ243に格納されている稼働時刻情報および最終データ格納時刻情報を不揮発メモリ243から読みだす。
【0168】
ステップ1002において、稼働比率演算部242は、ステップ1001で読み出した稼働時刻情報における稼働フラグ値「1」の割合から、過去の24時間における稼働時間の割合を求め、バッテリコントローラ107の稼働比率として算出する。そして、算出した稼働比率をΔV実効値演算部244へと出力する。なお、稼働時間の割合を算出する際には、ステップ1001で読み出した最終データ格納時刻に基づいて、稼働時刻情報の中でどのデータが現在より過去24時間以内のデータであるかを判定し、そのデータのみを算出対象とすることが好ましい。これにより、高負荷抵抗上昇に影響を与えない程度に古い情報が無視される。
【0169】
ステップ1003において、稼働比率演算部242は、不揮発メモリ243に格納されている稼働時刻情報において不要な古いデータを削除する。たとえば、現在より24時間以上古い全てのデータに対して、稼働フラグの値を「0」にセットすることにより、ステップ1003の削除処理を行う。
【0170】
ステップ1004において、稼働比率演算部242は、不揮発メモリ243に格納されている稼働時刻情報において現在の時間帯に対応するデータの稼働フラグに対して、稼働中であることを示すフラグ値「1」をセットする。
【0171】
ステップ1005において、稼働比率演算部242は、現在日時を最終データ格納時刻情報として不揮発メモリ243に保存する。以上説明したステップ1003、1004および1005の処理により、不揮発メモリ243に格納されている稼働時刻情報は、過去24時間以内のものに更新される。
【0172】
ステップ1006において、稼働比率演算部242は、現在日時がステップ1004で稼働フラグ値「1」をセットした時間帯から次の時間帯に変わるまで待機する。次の時間帯に変わった場合は、再び上記のステップ1004、1005の処理を行った後、ステップ1006で待機する。これにより、バッテリコントローラ107の稼働中には、不揮発メモリ243内のデータを常に最新に保つことができる。
【0173】
なお、上記の例では、過去24時間以内のバッテリコントローラ107の稼働状況が高負荷抵抗上昇に影響を与えうると仮定して、不揮発メモリ243に格納される稼働時刻情報の内容や更新手順を説明したが、本実施形態はこれに限定されない。たとえば、稼働時刻情報を記録する時間帯の数や長さを増減したり、図22の各ステップの処理において用いる数値を変更したりしてもよい。これにより、電池システム100に用いる電池の特性に応じた稼働比率の演算が可能となる。
【0174】
次に、ΔV実効値演算部244におけるΔV実効値の演算方法について説明する。図23は、本発明の第9の実施形態に係るΔV実効値演算部244の処理フローを示す図である。
【0175】
バッテリコントローラ107が起動された後、ステップ1011において、ΔV実効値演算部244は、不揮発メモリ243に格納されている最終Y(n)を不揮発メモリ243から読みだす。この最終Y(n)は、前述のように、前回のシステム稼働中に最後に求められた指標値Y(n)である。
【0176】
ステップ1012において、ΔV実効値演算部244は、ステップ1011で読み出した最終Y(n)に、図22のステップ1002で稼働比率演算部242から出力された稼働比率を乗じることにより、ΔV実効値の演算に用いる指標値Y(n)の初期値を設定する。これにより、電池システム100のシャットダウン時間に応じて、ΔV実効値の初期値を0以外の値に設定することができる。
【0177】
ステップ1013において、ΔV実効値演算部244は、ステップ1012で設定したY(n)の初期値を用いて、第1の実施形態で説明したような演算方法により、ΔV実効値の演算を実行する。これにより、電池システム100のシャットダウンに伴う電池モジュール101の充放電休止時間を反映して、ΔV実効値の演算を行うことができる。
【0178】
ステップ1014において、ΔV実効値演算部244は、車両動作終了を示す起動信号が入力されたか否かを判定する。車両動作終了を示す起動信号が入力されていなければ、処理をステップ1013に戻してΔV実効値の演算を継続し、車両動作終了を示す起動信号が入力されると、ステップ1015に処理を進める。
【0179】
ステップ1015において、ΔV実効値演算部244は、現在の指標値Y(n)の値を最終Y(n)として不揮発メモリ243に保存する。次回のシステム起動時には、この最終Y(n)の値をステップ1011で不揮発メモリ243から読み出すことにより、ΔV実効値の初期値を正しく設定することが可能となる。
【0180】
以上説明した本発明の第9の実施形態によれば、バッテリコントローラ107は、バッテリコントローラ107の起動時に、ΔV実効値の初期値を0以外の値に設定する。具体的には、バッテリコントローラ107は、不揮発メモリ243に格納されている、バッテリコントローラ107の過去の稼働履歴を表す稼働時刻情報に基づいて、稼働比率演算部242により、バッテリコントローラ107の稼働比率を演算する。この稼働比率に基づいて、ΔV実効値演算部244により、ΔV実効値の初期値を求める。このようにしたので、第1〜第3、第5、第7、第8の各実施形態において、さらに電池システム100のシャットダウンに伴う電池モジュール101の充放電休止時間を反映して、ΔV実効値の演算を正確に行うことができる。
【0181】
(第10の実施形態)
次に本発明の第10の実施形態について説明する。本実施形態では、バッテリコントローラ107を車両に搭載した場合のΔV実効値の演算について、第9の実施形態とは別の例を説明する。
【0182】
前述の第9の実施形態では、自動車等に搭載されるバッテリコントローラ107において、図20に示した機能構成により、リアルタイムクロック等から現在の日付や時刻を取得することができる場合の例を説明した。しかし、リアルタイムクロックが実装されていないなど、現在日時を知る手段が無い場合には、第9の実施形態で説明した演算方法を用いることができない。本実施形態では、このような場合でも、電池システム100のシャットダウンによる充放電休止期間を反映して、次回のシステム起動時におけるΔV実効値の演算を行うバッテリコントローラ107の機能構成について説明する。
【0183】
図24は、本発明の第10の実施形態に係るΔV実効値の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図24では、既に第9の実施形態にて説明した図20の機能ブロック図と共通の部分については、図20と同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0184】
図24に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、図20の日時情報生成部241および稼働比率演算部242に代えて、温度ベースの稼働比率演算部245を有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0185】
稼働比率演算部245は、温度センサ104から出力される電池モジュール101の温度Tおよび環境温度TAに基づいて、温度ベースでのバッテリコントローラ107の稼働比率を演算する。具体的には、稼働比率演算部245は、温度Tと環境温度TAの差と、予め設定されたこの差と稼働比率との関係に基づいて、バッテリコントローラ107の稼働比率を求める。なお、図示を省略するが、本実施形態では温度Tと環境温度TAを測定できるように、複数の温度センサ104がバッテリコントローラ107内に設けられているものとする。
【0186】
図25は、温度Tと環境温度TAの差(T−TA)と、これに対応するバッテリコントローラ107の稼働比率(duty)との関係の一例を示す図である。この例では、稼働比率演算部245は、TとTAの差が所定の閾値ΔT以上の場合には稼働比率を1とし、ΔT未満の場合には稼働比率を0とする。すなわち、環境温度TAと電池温度Tの差に着目して、この差が大きい場合は電池モジュール101に大きな負荷が印加された直後だと判断して稼働比率を高くし、反対に差が小さい場合は稼働比率を低くする。これにより、現在日時が判らない場合でも充放電休止期間を推定し、バッテリコントローラ107の稼働比率を求めることができる。なお、稼働比率演算部245は、これ以外の関係を用いて稼働比率を求めても構わない。
【0187】
以上説明した本発明の第10の実施形態によれば、バッテリコントローラ107は、電池モジュール101の温度Tと環境温度TAとの差に基づいて、稼働比率演算部245により、バッテリコントローラ107の稼働比率を演算する。この稼働比率に基づいて、ΔV実効値演算部244により、ΔV実効値の初期値を求める。このようにしたので、第9の実施形態と同様に、第1〜第3、第5、第7、第8の各実施形態において、さらに電池システム100のシャットダウンに伴う電池モジュール101の充放電休止時間を反映して、ΔV実効値の演算を正確に行うことができる。
【0188】
(第11の実施形態)
次に本発明の第11の実施形態について説明する。本実施形態では、電池モジュール101の負荷の大きさを示す指標として、前述のΔV実効値の代わりに、電池モジュール101に流れる電流Iの自乗値を用いる例を説明する。
【0189】
図26は、本発明の第11の実施形態に係る許容電流の演算処理に関するバッテリコントローラ107の機能ブロック図である。図26では、既に第1の実施形態にて説明した図4の機能ブロック図と共通の部分については、図4と同一の符号を付している。この共通部分については、特に必要のない限り、以下において説明を省略する。
【0190】
図26に示すように、本実施形態のバッテリコントローラ107は、図4のΔV実効値演算部201、ΔVlimitデータベース202および電流制限率演算部203に代えて、I実効値演算部251、Ilimitデータベース252および電流制限率演算部253を有している。バッテリコントローラ107は、たとえばCPUにより所定のプログラムを実行することで、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0191】
I実効値演算部251は、電池モジュール101の電流値Iの時間変化に関するI実効値を演算する。I実効値演算部251は、第1の実施形態で説明したΔV実効値演算部201と同様に、たとえば電流値Iを、遅れ要素を含むフィルタに通すことにより、I実効値を演算する。具体的には、I実効値演算部251において、電流値Iを二乗した値に対して一次遅れフィルタを適用し、その結果の平方根をI実効値として出力することで、I実効値を演算することができる。
【0192】
I実効値演算部251によるI実効値の演算式の例を、以下の式(12)、(13)により示す。ただし、式(12)のI(n)は、現在の電流値Iを表している。I(n)におけるnは、電流センサ102より取得した電流値Iのデータの時系列順を表している。また、式(12)のtは、データのサンプリング間隔を表し、τは、フィルタの時定数を表している。
【0193】
【数5】
【0194】
式(12)は、I(n)の二乗値に対して一次遅れフィルタを適用することで、電池モジュール101の負荷状態の時間変化を示す前述の指標値Y(n)を演算する式である。式(12)の演算により、電池モジュール101において長時間にわたり高負荷状態、すなわち電流Iが大きな値である状態が生じていたかを表す指標値Y(n)を得ることができる。なお、式(12)では、I(n)を二乗することで指標値Y(n)を演算している。こうすることで、充電・放電の両方に対応可能となる。
【0195】
式(13)は、式(12)で求めた負荷状態の時間変化の指標値Y(n)の平方根を取ることでI実効値を演算する式である。
【0196】
I実効値演算部251は、以上説明したような演算を実行することで、電池モジュール101の電流値の時間変化に関するI実効値を求めることができる。こうして得られたI実効値は、前述のΔV実効値と同様に、電池モジュール101にどのような大きさの負荷がどの程度の期間与えられていたかを反映した値である。そのため、高負荷抵抗上昇を考慮した許容電流演算が必要かどうかを判定するための指標とすることができる。
【0197】
Ilimitデータベース252は、電池モジュール101のSOCおよび温度Tと、電池モジュール101の電流値Iに対する限界値であるIlimitとの関係が記録されたデータベースである。このIlimitデータベース252を用いることで、電池等価回路モデル702から求められたSOCと、温度センサ104を用いて計測された温度Tとに基づいて、高負荷抵抗上昇を防ぐための限界値としてのIlimitを決定することができる。なお、Ilimitは一定時間内に許容される電流Iの限界値を示しており、Itに等しい。すなわち、電流Iの絶対値がIlimitを超える状態が一定期間続くと、電池モジュール101において高負荷抵抗上昇が起きる可能性がある。
【0198】
Ilimitデータベース252は、たとえば、様々なSOCと温度Tの組み合わせごとに対応するIlimitの値を格納した配列により実現することができる。この場合、連続値であるSOCおよび温度Tの計測結果に対して、Ilimitデータベース252に格納されるIlimitの値は、離散値のSOCおよび温度Tに対応したものとなる。そのため、Ilimitデータベース252において入力されたSOCや温度Tに対応するIlimitの値が格納されていない場合には、線形補間等を利用して、出力すべきIlimitの値を決定することが好ましい。
【0199】
電流制限率演算部253は、I実効値演算部251から出力されたI実効値と、Ilimitデータベース252から出力されたIlimitとに基づいて、許容電流を制限するための制限率kを演算する。この電流制限率演算部253により、I実効値に応じて制限率kを変化させることで、第1の実施形態と同様に、高負荷抵抗上昇の考慮が不要な状態(k=1)と、考慮が必要な状態(0≦k<1)とを切り替えることが可能となる。
【0200】
電流制限率演算部253は、たとえば図27に示すようなI実効値と制限率kの関係に基づいて、制限率kの演算を行う。図27は、I実効値に対応する制限率kの値を示しており、k=1である領域、すなわち許容電流の制限が不要な領域261(0≦I実効値<Ilimit1)と、k<1である領域、すなわち許容電流の制限が必要な領域262(I実効値≧Ilimit1)に分かれている。領域262は、I実効値に応じて制限率kが変化する領域263(Ilimit1≦I実効値<Ilimit2)と、制限率kが固定値kminとなる領域264(I実効値≧Ilimit2)にさらに分かれている。
【0201】
ここで、電流制限率演算部253において、上記のIlimit2を、電池モジュール101において高負荷抵抗上昇が始まるI実効値の大きさ、すなわちIlimitデータベース252で決定された限界値Ilimitとし、さらにIlimit1を、このIlimitよりも小さな値とする。こうすることで、I実効値がIlimitに近づいてIlimit1を超えると、制限率kが1よりも小さな値に設定される。これにより、電池モジュール101に対する許容電流を低下させ、高負荷抵抗上昇が起きるような条件が回避可能となる。なお、領域264においてkminを0とすると、理論上は許容電流が0となる場合が生じうる。しかし、上記のようにIlimit1とIlimit2を異なる値とすることで、一般的には制限率kが0となる前にI実効値が増加しなくなる。そのため、kminを0としても、実際には許容電流が0とはならず問題ない。
【0202】
本発明の第11の実施形態では、バッテリコントローラ107が以上のような構成で許容電流の演算処理を行うことにより、電流Iから高負荷抵抗上昇を考慮する必要があるかを判断するための指標値であるI実効値を求めると共に、このI実効値に対する限界値Ilimitを求めることができる。これらに基づいた許容電流制限を行うことで、高負荷抵抗上昇の予防が可能となる。また、SOHRの推定が不要となる。
【0203】
なお、上記のI実効値は、第1〜第3、第5、第7、第8の各実施形態におけるΔV実効値と同様に、電池モジュール101に対する負荷の大きさおよび期間の指標である。したがって、I実効値を適切に変換することで、ΔV実効値と同様に用いることができる。そのため、上記の各実施形態においてCCVやOCVを用いて算出されるΔV実効値を、電流Iより求めたI実効値に置き換えることが可能である。同様に、各実施形態において用いられるVlimitは、適切な変換を行うことでIlimitに置き換え可能である。これにより、前述したような効果を他の実施形態でも生じさせることができる。
【0204】
以上説明した本発明の第11の実施形態によれば、バッテリコントローラ107は、図26の機能ブロック図で表される演算処理を行うことにより、二次電池である電池モジュール101の電流値に対する限界値であるIlimitを決定すると共に、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。こうして決定したIlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、電池モジュール101の許容電流を算出する。このようにしたので、電池モジュール101を確実に保護しつつ、電池モジュール101の充放電性能を十分に発揮させることができる。
【0205】
(第12の実施形態)
次に本発明の第12の実施形態について説明する。本実施形態では、上記の各実施形態で説明したバッテリコントローラ107を有する電池システム100を搭載した動力システムについて説明する。
【0206】
図28は、本発明の第12の実施形態に係る動力システムの構成を示す図である。本実施形態の動力システムは、自動車等の車両における動力システムであり、図28に示すように、電池システム100、インバータ110、上位コントローラ112、エンジン150、動力分割機構151、発電機/電動機152、タイヤ153、ブレーキ154を備える。なお、電池システム100、インバータ110および上位コントローラ112は、図1に示したものとそれぞれ同一である。すなわち、図28には示していないが、電池システム100は、図1の電池モジュール101、電流センサ102、電圧センサ103、温度センサ104、漏電センサ105、リレー106A、リレー106B、およびバッテリコントローラ107を備える。また、発電機/電動機152は、図1の負荷111に対応するものである。
【0207】
内燃機関であるエンジン150は、動力分割機構151を介して、発電機/電動機152やタイヤ153を駆動する。エンジン150により発電機/電動機152が駆動されると、発電機/電動機152は発電機として動作し、電池システム100に搭載されている図1の電池モジュール101を充電するための電力を生成する。一方、エンジン150によりタイヤ153が駆動されると、タイヤ153が回転して車両が移動する。
【0208】
ブレーキ154および発電機/電動機152は、被制動体である車両を制動するために用いられる。車両の減速時には、ブレーキ154を用いて車両の運動エネルギーを熱エネルギーに変換するか、あるいは、タイヤ153の回転力を動力分割機構151を介して発電機/電動機152に伝えることで、発電機/電動機152を発電機として動作させ、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回生する。このとき発電機/電動機152は、車両からの入力を用いて回生発電し、電池システム100に搭載されている電池モジュール101を充電するための電力を生成する。こうして得られた電気エネルギーは、インバータ110を介して電池システム100に出力され、電池システム100内の電池モジュール101に貯蔵される。
【0209】
電池システム100に貯蔵された電気エネルギーは、必要に応じて電池システム100から放出され、インバータ110を介して発動機/電動機152に供給される。このとき発電機/電動機152は、電動機として動作し、電池システム100に搭載されている電池モジュール101から供給される電力を用いて駆動する。この発動機/電動機152による駆動力は、動力分割機構151を介してタイヤ153に伝達され、タイヤ153を回転させて車両を移動させる。
【0210】
電池システム100内のバッテリコントローラ107は、前述の第1〜第11の各実施形態で説明したような演算方法により、電池モジュール101に対する許容電流を算出する。この許容電流の算出結果は、バッテリコントローラ107から上位コントローラ112に通知される。なお、バッテリコントローラ107ではなく、上位コントローラ112において、電池システム100またはインバータ110から得た電流値Iや電池電圧CCV等を基に、許容電流の算出を行ってもよい。
【0211】
上位コントローラ112は、動力システムに要求された出力または入力に対して、バッテリコントローラ107または自身が算出した許容電流に基づいて、エンジン150と発電機/電動機152との動力配分比、またはブレーキ154と発電機/電動機152との負荷配分比を決定する。すなわち、動力システムに出力が要求された場合は、ΔVlimitまたはIlimitと、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて算出された許容電流の算出結果に基づき、エンジン150の状態、電池システム100のSOC、発電機/電動機152の容量等を勘案して、エンジン150と発電機/電動機152との動力配分比を決定する。そして、決定した動力配分比に従って、エンジン150やインバータ110に対する動作指令値を出力する。一方、動力システムに入力が要求された場合、すなわち車両を減速する場合は、ΔVlimitまたはIlimitと、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて算出された許容電流の算出結果に基づき、電池システム100のSOC、発電機/電動機152の容量等を勘案して、ブレーキ154と発電機/電動機152との負荷配分比を決定する。そして、決定した負荷配分比に従って、ブレーキ154に対するブレーキ量の指令値や、インバータ110に対する回生エネルギー量の指令値を出力する。
【0212】
なお、動力システムに入力が要求されていない状態でも、電池システム100のSOCが低い場合には、上位コントローラ112からエンジン150への出力指令を行うと共に、インバータ110に回生エネルギー量の指令値を出力してもよい。この時の各指令値は、動力システムに入力が要求されている場合と同様に、ΔV実効値またはI実効値に基づく許容電流や、エンジン150の状態、電池システム100のSOC、発電機/電動機152の容量等を勘案して決定することが好ましい。
【0213】
本発明の第12の実施形態では、このような動力システムの構成とすることで、電池システム100内の電池モジュール101において高負荷抵抗上昇を生じることなく、動力システムを動作させることが可能となる。これにより、高い出力や制動力、回生効率が維持される。
【0214】
以上説明した本発明の第12の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0215】
(1)動力システムは、内燃機関であるエンジン150と、二次電池である電池システム100内の電池モジュール101から供給される電力を用いて駆動する発電機/電動機152と、を備える。動力システムは、電池システム100内のバッテリコントローラ107または上位コントローラ112により、電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimit、または、電池モジュール101の電流値Iに対する限界値であるIlimitを決定し、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。そして、上位コントローラ112により、決定したΔVlimitまたはIlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、エンジン150と発電機/電動機152との動力配分比を決定する。このようにしたので、電池モジュール101において高負荷抵抗上昇を生じないように、エンジン150と発電機/電動機152との動力配分比を適切に決定することができる。
【0216】
(2)動力システムは、被制動体である車両を制動するためのブレーキ154と、車両からの入力を用いて回生発電し、二次電池である電池システム100内の電池モジュール101を充電するための電力を生成する発電機/電動機152と、を備える。動力システムは、電池システム100内のバッテリコントローラ107または上位コントローラ112により、電池モジュール101のCCVとOCVの差に対する限界値であるΔVlimit、または、電池モジュール101の電流値Iに対する限界値であるIlimitを決定し、電池モジュール101の上限電圧および下限電圧の少なくとも一方を決定する。そして、上位コントローラ112により、決定したΔVlimitまたはIlimitと、上限電圧および下限電圧の少なくとも一方とに基づいて、ブレーキ154と発電機/電動機152との負荷配分比を決定する。このようにしたので、電池モジュール101において高負荷抵抗上昇を生じないように、ブレーキ154と発電機/電動機152との負荷配分比を適切に決定することができる。
【0217】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0218】
100:電池システム
101:電池モジュール
102:電流センサ
103:電圧センサ
104:温度センサ
105:漏電センサ
106A,106B:リレー
107:バッテリコントローラ
110:インバータ
111:負荷
112:上位コントローラ
201,244:ΔV実効値演算部
202:ΔVlimitデータベース
203,253:電流制限率演算部
204:電池保護用許容電流演算部
205:乗算器
211,228:性能維持用許容電流演算部
212:最小値選択器
221:重み演算部
222:重み付け演算部
226,227,229:性能維持・電池保護用許容電流演算部
241:日時情報生成部
242,245:稼働比率演算部
243:不揮発メモリ
251:I実効値演算部
252:Ilimitデータベース
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