(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明による表示装置の駆動方法について詳細に説明する。なお、本発明による表示装置の駆動方法は以下の実施形態に限定されることはなく、種々の変形を行ない実施することが可能である。また、図面の寸法比率は、説明の都合上、実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による表示装置100の構成を示す模式図である。また、
図2は、
図1に示した画素PXの内部構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、表示装置100は、画素PXが行方向及び列方向に配列する表示領域R1と、走査線駆動回路YDR1,YDR2と、信号線駆動回路XDRとを含む表示パネルDPと、表示パネルDPの動作を制御するコントローラ12とを含んでいる。
【0016】
本実施形態において、画素PXには表示素子として有機エレクトロルミネセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)が設けられているものとする。
【0017】
表示パネルDPは、
図1に示すように、ガラス板等の光透過性を有する絶縁基板SUBと、絶縁基板SUBに設けられる表示領域R1上にマトリクス状に配列されたm×n個の画素PXと、複数本(m/2本)の第1走査線Sga_1〜Sga_m/2と、複数本(m本)の第2走査線Sgb_1〜Sgb_mと、複数本(m/2本)のリセット配線Sgr_1〜Sgr_m/2と、複数本(n本)の映像信号線VL_1〜VL_nとを備えて構成される。なお、以下の説明では、各線に付した通番を区別する必要がない場合に、通番を省略して記述する場合がある。また、表示パネルDPはさらに、
図2に示すように、複数本(m/2本)のリセット配線Sgrのそれぞれに対応する複数本(m/2本)の第3走査線Sgcを備えて構成される。
【0018】
画素PXは、列方向Yに沿ってm個、行方向Xに沿ってn個それぞれ並べられている。第1走査線Sga、第2走査線Sgb、及びリセット配線Sgrはそれぞれ、行方向Xに延びる配線として設けられている。リセット配線Sgrは、互いに電気的に接続された複数の電極で形成されている。映像信号線VLは、列方向Yに延びる配線として設けられている。
【0019】
図2に示すように、表示パネルDPは、高電位Pvddに固定される高電位電源線SLaと、低電位Pvssに固定される低電位電源電極SLbとを有している。高電位電源線SLaは図示しない高電位電源に接続され、低電位電源電極SLbは図示しない低電位電源(基準電位電源)に接続されている。
【0020】
表示パネルDPはまた、走査線駆動回路YDR1,YDR2と、信号線駆動回路XDRとを備えている。走査線駆動回路YDR1は、複数の第1走査線Sga及び複数の第3走査線Sgcを画素PXの行ごとに順に駆動する回路であり、走査線駆動回路YDR2は、複数の第2走査線Sgbを画素PXの行ごとに順に駆動する回路であり、信号線駆動回路XDRは、複数の映像信号線VLを駆動する回路である。走査線駆動回路YDR1,YDR2及び信号線駆動回路XDRは、絶縁基板SUBの表示領域R1の周囲に位置する非表示領域R2上に一体的に形成され、コントローラ12とともに駆動部10を構成している。
【0021】
各画素PXは、
図2に示すように、有機EL素子EMDと、有機EL素子に駆動電流を供給する画素回路とを含んで構成される。なお、画素PXには、有機EL素子の他にも、各種の発光素子を用いることが可能である。
【0022】
画素PXは、電圧信号からなる映像信号に応じて有機EL素子EMDの発光を制御する回路が設けられている。
図2に示すように、画素PXは、第1スイッチング素子SST、駆動トランジスタDRT、保持容量Cs、補助容量Cad、容量部Celを含んでいる。保持容量Cs及び補助容量Cadは、キャパシタである。補助容量Cadは発光電流量を調整するために設けられる素子であり、場合によっては不要となる場合もある。容量部Celは、有機EL素子EMD自体の容量(有機EL素子EMDの寄生容量)である。有機EL素子EMDは、キャパシタとしても機能する。
【0023】
また、各画素PXは、第2スイッチング素子BCTを備えている。
図1に示すように、この第2スイッチング素子BCTは、列方向Yに隣り合う複数の画素PXにより共用されていてもよい。本実施形態においては、行方向X及び列方向Yに隣り合う4つの画素PXにより、1つの第2スイッチング素子BCTが共用される例を示す。また、走査線駆動回路YDR2には、
図2に示すように、複数の第3スイッチング素子RSTが設けられている。第3スイッチング素子RSTとリセット配線Sgrとは、一対一で接続されている。
【0024】
第1スイッチング素子SST、駆動トランジスタDRT、第2スイッチング素子BCT、及び第3スイッチング素子RSTは、ここでは同一導電型、例えばNチャネル型のトランジスタにより構成されている。この場合におけるトランジスタは、アモルファスシリコン、ポリシリコン又は酸化物半導体にチャネルが形成される薄膜トランジスタであってもよい。例えば、本実施形態に係る表示装置100に含まれる各駆動トランジスタ及び各スイッチング素子はいずれも半導体層にポリシリコンを用いたトップゲート構造の薄膜トランジスタによって構成されており、互いに同一工程、同一層構造で形成される。
【0025】
第1スイッチング素子SST、駆動トランジスタDRT、第2スイッチング素子BCT、及び第3スイッチング素子RSTはそれぞれ、第1端子、第2端子、及び制御端子を有している。本実施形態では、駆動トランジスタDRTにおいて、第1端子をソース電極、第2端子をドレイン電極、制御端子をゲート電極としている。
【0026】
画素PXの画素回路において、駆動トランジスタDRT及び第2スイッチング素子BCTは、高電位電源線SLaと低電位電源電極SLbとの間で有機EL素子EMDと直列に接続されている。高電位電源線SLa(高電位Pvdd)は例えば10Vの電位に設定され、低電位電源電極SLb(低電位Pvss)は、例えば1.5Vの電位に設定されている。
【0027】
第2スイッチング素子BCTの第2端子は高電位電源線SLaに接続され、第1端子は駆動トランジスタDRTのドレイン電極に接続され、制御端子は第1走査線Sgaに接続されている。これにより、第2スイッチング素子BCTは、第1走査線Sgaからの制御信号BGによりオン(導通状態)又はオフ(非導通状態)のいずれかに制御される。第2スイッチング素子BCTは、このオンオフ制御により、有機EL素子EMDの発光時間/非発光時間を制御する役割を果たす。なお、制御信号BGは、走査線駆動回路YDR2により第1走査線Sgaごとに生成される信号である。
【0028】
駆動トランジスタDRTのドレイン電極は第2スイッチング素子BCTのソース電極及びリセット配線Sgrに接続され、ソース電極は有機EL素子EMDの一方の電極(ここでは陽極)に接続されている。有機EL素子EMDの他方の電極(ここでは陰極)は、低電位電源電極SLbに接続されている。駆動トランジスタDRTは、映像信号Vsigに応じた電流量の駆動電流を有機EL素子EMDに出力する役割を果たす。
【0029】
第1スイッチング素子SSTの第1端子は映像信号線VLに接続され、第2端子は駆動トランジスタDRTのゲート電極に接続され、制御端子は信号書き込み制御用ゲート配線として機能する第2走査線Sgbに接続されている。第1スイッチング素子SSTは、第2走査線Sgbから供給される制御信号SGによりオン(導通状態)又はオフ(非導通状態)のいずれかに制御される。第1スイッチング素子SSTは、このオンオフ制御により、制御信号SGに応答して画素回路と映像信号線VLの接続状態を制御し、対応する映像信号線VLから映像信号Vsigを画素回路内に取り込む役割を果たす。なお、制御信号SGは、走査線駆動回路YDR1により第1走査線Sgaごとに生成される信号である。
【0030】
第3スイッチング素子RSTは、2行ごとに、走査線駆動回路YDR2内に設けられている。第3スイッチング素子RSTは、駆動トランジスタDRTのドレイン電極とリセット電源(図示せず)との間に接続されている。第3スイッチング素子RSTの第1端子はリセット電源に接続されたリセット電源線SLcに接続され、第2端子はリセット配線Sgrに接続され、制御端子はリセット制御用ゲート配線として機能する第3走査線Sgcに接続されている。リセット電源線SLcの電位は、リセット電源を通じて定電位であるリセット電位Vrstに固定される。リセット電位Vrstの具体的な値は、例えば−2Vである。
【0031】
第3スイッチング素子RSTは、第3走査線Sgcを通して与えられる制御信号RGに応じて、リセット電源線SLc及びリセット配線Sgr間を導通状態(オン)又は非導通状態(オフ)に切替える。なお、制御信号RGは、走査線駆動回路YDR2により第3走査線Sgcごとに生成される信号である。第3スイッチング素子RSTがオン状態に切替えられることにより、駆動トランジスタDRTのソース電極の電位が初期化される。
【0032】
図1に示すコントローラ12は、表示パネルDPの外部に配置されたプリント回路基板(図示せず)上に形成されており、走査線駆動回路YDR1、YDR2及び信号線駆動回路XDRを制御する機能を有している。コントローラ12は、外部から供給されるデジタル映像信号および同期信号を受け取るよう構成される。コントローラ12は、受け取った同期信号に基づき、垂直走査タイミングを制御する垂直走査制御信号と、水平走査タイミングを制御する水平走査制御信号とを生成するよう構成される。そして、生成した垂直走査制御信号及び水平走査制御信号を走査線駆動回路YDR1,YDR2及び信号線駆動回路XDRに供給するとともに、水平及び垂直走査タイミングに同期して、デジタル映像信号及び初期化信号を信号線駆動回路XDRに供給するよう構成される。なお、走査線駆動回路YDR1に供給される垂直走査制御信号及び水平走査制御信号にはスタート信号STVS及びクロック信号CKVが含まれ、走査線駆動回路YDR2に供給される垂直走査制御信号及び水平走査制御信号には同期信号Vsync、スタート信号STVB、及びクロック信号CKVが含まれる。
【0033】
信号線駆動回路XDRは、水平走査制御信号の制御により各水平走査期間において順次得られる映像信号をアナログ形式に変換し、階調に応じた映像信号Vsigを複数の映像信号線VLに並列に供給するよう構成される。また、信号線駆動回路XDRは、初期化信号Viniを映像信号線VLに供給するよう構成される。映像信号Vsig及び初期化信号Viniは、クロック信号CKVに同期したタイミングで複数の映像信号線VLのそれぞれに供給される。初期化信号Viniの具体的な値は、例えば2Vである。
【0034】
走査線駆動回路YDR1はシフトレジスタ(図示せず)を有しており、コントローラ12から供給されるスタート信号STVSを順次次段に転送することによって、順次各行に対応する制御信号SGを生成するよう構成される。生成された制御信号SGは、図示しない出力バッファを介して、対応する各行内の各画素PXに供給される。
【0035】
走査線駆動回路YDR2もシフトレジスタ(図示せず)を有しており、コントローラ12から供給される同期信号Vsync及びスタート信号STVBを順次次段に転送することによって、順次各行に対応する制御信号BG,RGを生成するよう構成される。生成された制御信号BGは、図示しない出力バッファを介して、対応する各行内の各画素PXに供給される。一方、生成された制御信号RGは、対応する第3スイッチング素子RSTのゲート電極に供給される。これにより、制御信号RGが活性化したタイミングで第3スイッチング素子RSTがオン状態となり、リセット電位Vrstがリセット配線Sgrに供給される。
【0036】
次に、上記のように構成された表示装置100の駆動方法について説明する。以下では、初めに
図5及び
図6を参照して通常の駆動方法について説明した後、
図3及び
図4を参照して本実施形態による駆動方法について説明する。
【0037】
図5は、各画素PXに1フレームごとに映像信号を書き込む動作をするときの、各信号の時間変化を示すタイミングチャートである。なお、同図には、走査線駆動回路YDR1,YDR2が生成する各複数の制御信号RG,BG,SGのうち、1行目に対応する制御信号RG1,BG1,SG1のみを図示している。この点は、後述する
図3及び
図6でも同様である。
【0038】
映像信号線VLには、1水平走査期間(1H)の周期で、信号線駆動回路XDRから初期化信号Vini及び映像信号Vsigが順次供給される。なお、初期化信号Vini及び映像信号Vsigは常時供給されるが、
図5ではその一部のみを図示している。また、初期化信号Vini及び映像信号Vsigを図示している部分と図示していない部分とでは、タイムスケールが異なっている。この点も、後述する
図3及び
図6でも同様である。
【0039】
同期信号Vsyncは、
図5に示すように、一定の周期で活性化するパルス状の信号である。コントローラ12は、上述したクロック信号CKVに基づき、例えば1秒に60回の割合で同期信号Vsyncを活性化するよう構成される。同期信号Vsyncの活性化周期は、フレーム周期となる。コントローラ12は、この同期信号Vsyncに基づき、上述したスタート信号STVB,STVSを生成するよう構成される。
【0040】
具体的に説明すると、コントローラ12は、
図5に示すように、同期信号Vsyncの活性化とともにスタート信号STVBを非活性とし、そこから数えて3水平走査期間(1H)目の映像信号Vsigが活性化している時点で、スタート信号STVBを再活性化するよう構成される。また、コントローラ12は、
図5に示すように、同期信号Vsyncが活性化した水平走査期間(1H)の次の水平走査期間(1H)において、初期化信号Viniが活性化している間だけスタート信号STVSを一時的に非活性とし、さらに、その次の水平走査期間(1H)において、初期化信号Viniが活性化している間と、映像信号Vsigが活性化している間のそれぞれにおいて、スタート信号STVSを一時的に非活性とするよう構成される。
【0041】
走査線駆動回路YDR2は、スタート信号STVBの活性状態に基づき、複数の制御信号BGそれぞれの活性状態を順次制御するよう構成される。この制御により、1行目に対応する制御信号BG1の活性状態は、
図5に示すように、スタート信号STVBと同じタイミングで、かつ、スタート信号STVBと同方向に変化することになる。また、他の制御信号BGの活性状態は、制御信号BG1に遅れつつ制御信号BG1と同様に変化することになる(後述する
図4参照)。
【0042】
また、走査線駆動回路YDR2は、同期信号Vsyncの活性化に応じて制御信号RGを活性化し、この活性化から数えて3水平走査期間(1H)目に入った時点まで活性状態を維持するよう構成される。なお、水平走査期間(1H)のカウントは、コントローラ12から供給されるクロック信号CKVに基づいて行えばよい。
【0043】
走査線駆動回路YDR1は、スタート信号STVSの活性状態に基づき、複数の制御信号SGそれぞれの活性状態を順次制御するよう構成される。この制御により、1行目に対応する制御信号SG1の活性状態は、
図5に示すように、スタート信号STVSと同じタイミングで、かつ、スタート信号STVSと逆方向に変化することになる。また、他の制御信号SGの活性状態は、制御信号SG1に遅れつつ制御信号SG1と同様に変化することになる。
【0044】
ここまでで説明した制御信号RG1,BG1,SG1の変化により、
図5に示すように、ソース初期化動作が行われるソース初期化期間Pisと、ゲート初期化動作が行われるゲート初期化期間Pigと、オフセットキャンセル動作が行われるオフセットキャンセル期間Poと、映像信号書き込み動作が行われる映像信号書き込み期間Pwとが定義される。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0045】
まず、ソース初期化期間Pisは、同期信号Vsyncの活性化に応じて制御信号BG1が非活性化してから、対応する水平走査期間(1H)の終期に至るまでの期間である。この期間では、制御信号RG1が活性化している一方、制御信号BG1,SG1が非活性となっているので、第2スイッチング素子BCT及び第1スイッチング素子SSTはともにオフ(非導通状態)であり、第3スイッチング素子RSTはオン(導通状態)である。したがって、駆動トランジスタDRTのソース電極が、リセット電位Vrstと同電位にリセットされる。
【0046】
ゲート初期化期間Pigは、同期信号Vsyncの活性化後に初めて制御信号SG1が活性化している期間である。この期間では、制御信号RG1,SG1が活性化している一方、制御信号BG1が非活性となっているので、第2スイッチング素子BCTはオフ(非導通状態)であり、第1スイッチング素子SST及び第3スイッチング素子RSTはともにオン(導通状態)である。また、映像信号線VLには初期化信号Viniが供給されている。したがって、第1スイッチング素子SSTを通じて、初期化信号Viniが駆動トランジスタDRTのゲート電極に印加される。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート電極の電位が初期化信号Viniに対応する電位にリセットされ、駆動トランジスタDRTのゲート電極から前フレームの情報が初期化される。
【0047】
オフセットキャンセル期間Poは、ゲート初期化期間Pigの次に制御信号SG1が活性化している期間である。この期間では、制御信号SG1が活性化しているので、第1スイッチング素子SSTはオン(導通状態)である。また、制御信号RG1は、この期間内に活性状態から非活性状態に変化する。したがって、第3スイッチング素子RSTは、この期間内にオン(導通状態)からオフ(非導通状態)に変化する。一方、制御信号BG1は、この期間内に非活性状態から活性状態に変化する。したがって、第2スイッチング素子BCTは、この期間内にオフ(非導通状態)からオン(導通状態)に変化する。さらに、映像信号線VLには初期化信号Viniが供給されている。
【0048】
したがって、オフセットキャンセル期間Poにおいては、駆動トランジスタDRTのゲート電極の電位が初期化信号Viniの電位に固定される。また、第2スイッチング素子BCTがオンとなることから、高電位電源線SLaから駆動トランジスタDRTに電流が流れ込む。駆動トランジスタDRTのソース電極の電位は、ソース初期化期間Pisに書き込まれた電位(リセット電位Vrst)を初期値とし、ドレイン電極−ソース電極間を通って流れる電流によって徐々に減少しながら、駆動トランジスタDRTのTFT特性ばらつきを吸収・補償しつつ、高電位側にシフトしていく。
【0049】
オフセットキャンセル期間Poが終了した時点で、駆動トランジスタDRTのソース電極の電位はVini−Vthとなる。なお、Viniは初期化信号Viniの電圧値であり、Vthは駆動トランジスタDRTのしきい値電圧である。これにより、駆動トランジスタDRTのゲート電極−ソース電極間の電圧Vgsがキャンセル点(Vgs=Vth)に到達し、このキャンセル点に相当する電位差が保持容量Csに蓄えられる(保持される)。なお、オフセットキャンセル期間Poの時間長は、例えば1μsec程度に設定することが好適である。また、オフセットキャンセル期間Poは、必要に応じて複数回設けてもよい。
【0050】
映像信号書き込み期間Pwは、オフセットキャンセル期間Poの次に制御信号SG1が活性化している期間である。この期間では、制御信号SG1,BG1が活性化している一方、制御信号RG1が非活性となっているので、第3スイッチング素子RSTはオフ(非導通状態)であり、第1スイッチング素子SST及び第2スイッチング素子BCTはともにオン(導通状態)である。また、映像信号線VLには映像信号Vsigが供給されている。したがって、駆動トランジスタDRTのゲート電極に映像信号Vsigが書き込まれる。
【0051】
映像信号書き込み期間Pwにおいては、高電位電源線SLaから第2スイッチング素子BCT及び駆動トランジスタDRTを通り、さらに有機EL素子EMDの容量部(寄生容量)Celを経由して低電位電源電極SLbに電流が流れる。これにより、駆動トランジスタDRTの移動度のばらつきが補正される。
【0052】
第1スイッチング素子SSTがオンした直後には、駆動トランジスタDRTのゲート電極の電位はVsig、駆動トランジスタDRTのソース電極の電位はVini−Vth+Cs(Vsig−Vini)/(Cs+Cel+Cad)となる。なお、Vsigは映像信号Vsigの電圧値であり、Csは保持容量Csの容量であり、Celは容量部Celの容量であり、Cadは補助容量Cadの容量である。
【0053】
その後、有機EL素子EMDの容量部Celを経由して低電位電源電極SLbに電流が流れ、映像信号書き込み期間Pw終了時には、駆動トランジスタDRTのゲート電極の電位はVsig、駆動トランジスタDRTのソース電極の電位はVini−Vth+ΔV1+Cs(Vsig−Vini)/(Cs+Cel+Cad)となる。なお、駆動トランジスタDRTに流れる電流Idrtと容量Cs+Cel+Cadの関係は、次の式(1)で表される。また、ΔV1は、次の式(1)から決定される映像信号Vsigの電圧値、映像書き込み期間Pw、トランジスタの移動度に対応したソース電極の電位の変位である。
【0055】
ここで、Idrt=β×(Vgs−Vth)
2=[(Vsig−Vini)×(Cel+Cad)/(Cs+Cel+Cad)}
2である。また、βはβ=μ×Cox×W/2Lと定義される。Wは駆動トランジスタDRTのチャネル幅、Lは駆動トランジスタDRTのチャネル長、μはキャリア移動度、Coxは単位面積当たりのゲート静電容量である。
【0056】
映像信号書き込み期間Pw内において駆動トランジスタDRTのゲート電極に映像信号Vsigが書き込まれ、有機EL素子EMDに電流が流れ始めると、映像の表示が開始される。
図5で示すタイミングチャートによれば、各画素PXは、1フレーム毎に映像信号が書き込まれ、有機EL素子が発光する表示期間を有することにより、動画を表示するのに適している。
【0057】
しかしながら、駆動トランジスタDRTのゲート電圧を保持する保持容量Csに与えられた電荷は、リークにより時間の経過と共に減少する。すなわち、この表示による輝度は、
図5に示すように、映像信号書き込み期間Pwから時間が経過するにつれ、徐々に低下する。これは、保持容量Cs内に保持されている電荷がリーク等によって失われていくためである。保持容量Cs内に保持されている電荷は、
図5に示すように、表示開始直後に一旦大きく減少し、その後は直線的に減少していくことになる。
【0058】
映像信号書き込み期間Pwの次に到来する水平走査期間(1H)から、次のフレームに対応する同期信号Vsyncが活性化する水平走査期間(1H)までを表示期間Pdと定義すると、コントローラ12は、
図5に示すように、この表示期間Pdを複数(
図5では4つ)の期間Tに分割し、各期間Tの終端に至る所定の期間においてスタート信号STVBを非活性とするよう構成される。これにより、各期間Tの開始から所定の期間は発光期間(表示期間)となり、発光期間(表示期間)の終了後、各期間Tの終端に至る所定の期間は、
図5に示すように、制御信号BG1が非活性となって映像が表示されない非発光期間(非表示期間)Bとなる。
【0059】
図6は、以上のような駆動方法を採用する背景技術による表示装置においてフレームレートを落として表示処理を行う場合の、各信号の時間変化を示すタイミングチャートである。
【0060】
図6の例では、
図5と比較すると理解されるように、2フレーム目のスタート信号STVB,STVSの変化が抑制されている。この場合、2フレーム目では映像信号書き込み期間Pwが到来せず、映像信号Vsigが画素PX内に入力されないことになる。つまり、映像信号Vsigの入力が2回に1回の割合で間引かれている。
【0061】
映像信号Vsigの入力を間引いた結果、
図6に示すように、2フレーム目における輝度は、映像信号Vsigの入力を間引かない場合に比べてΔSだけ低下する。その結果、2フレーム目の終了時点での輝度は、1フレーム目の終了時点での輝度よりもさらに低下したものとなる。視聴者は発光時間×輝度の値を画面の明るさと感じることから、輝度が低下した2フレーム目を1フレーム目に比べて暗く感じることになる。
【0062】
これを防止するため、
図6の例では、1フレーム目において、非発光期間(非表示期間)Bの前に、非発光期間(非表示期間)Bと連続する非発光期間(非表示期間)Baを設けている。具体的な処理としては、コントローラ12が、表示期間Pdを複数に分割してなる各期間Tの末尾に設けるスタート信号STVBの非活性期間を前方向に延長する。これにより、1フレーム目における発光時間×輝度の値が2フレーム目における発光時間×輝度の値に近づくので、人の目に感じられる明るさの差を小さくすることが可能になる。
【0063】
しかしながら、上述したように、輝度は表示開始直後の段階で特に大きく減少することから、
図6のようにしても、1フレーム目と2フレーム目の間で発光時間×輝度の値の差が残存する。本発明の一実施形態は、この差をなくし、1フレーム目と2フレーム目の明るさの差(発光時間×輝度の値の差)をさらに低減しようとするものである。以下、
図3を参照しながら詳しく説明する。
【0064】
図3は、本発明の一実施形態による各信号の時間変化を示すタイミングチャートである。同図に示すように、本実施形態による表示装置100の駆動方法は、映像信号Vsigの書き込みによって1フレーム目(第1のフレーム)が開始した時点を含む一定期間にわたる1フレーム目内の期間を非発光期間(非表示期間)B(第1の非発光期間)とする点にある。また、表示期間Pdを複数に分割してなる各期間Tの終端ではなく、先端に非発光期間(非表示期間)Bを設ける点でも、
図5及び
図6に示した駆動方法と相違している。さらに、映像信号Vsigの入力を間引く場合の1フレーム目においては、各期間Tの先端に設ける非発光期間(非表示期間)Bの直後に、非発光期間(非表示期間)Bと連続する非発光期間(非表示期間)Baを設けている。
【0065】
具体的な処理としては、まずコントローラ12は、オフセットキャンセル期間Poの終了後、映像信号書き込み期間Pwの開始前に、スタート信号STVBを一旦非活性とする。そして、複数の期間Tのうちの最初の期間の先頭まで、スタート信号STVBを非活性状態のままで維持する。これにより、
図5に示すように、各フレームの先頭に非発光期間(非表示期間)Bが設けられることになる。
【0066】
続いてコントローラ12は、表示期間Pdを分割してなる各期間Tの先端から一定の期間において、スタート信号STVBを非活性とする。これにより、
図5に示すように、各期間Tの終端ではなく先端に、非発光期間(非表示期間)Bが配置される。
【0067】
さらに、映像信号Vsigの入力を間引く場合の1フレーム目においては、コントローラ12は、表示期間Pdを等分割してなる各期間Tの先頭に設けるスタート信号STVBの非活性期間を後ろ方向に延長する。これにより、各期間Tの先端に位置する非発光期間(非表示期間)Bの直後に、非発光期間(非表示期間)Bと連続する非発光期間(非表示期間)Baが配置される。なお、各非発光期間(非表示期間)Baの時間長は、1つのフレーム内で同一としてよい。また、非発光期間(非表示期間)Bの開始及び終了のタイミングは、表示画面におけるある1行と、他の1行とで異ならせるようにしてもよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態による表示装置100の駆動方法によれば、表示開始直後の電荷が大きく減少する期間を非発光期間(非表示期間)Bとしているので、各フレームにおける発光時間×輝度の値が直線状に減少する輝度によって算出されることになる。したがって、非発光期間(非表示期間)Bの直後に所定長の非発光期間(非表示期間)Baを配置する制御を行うことで、各フレームにおける発光時間×輝度の値を揃えると共に、フリッカを抑制し表示品位を向上させることが可能になる。
【0069】
ここで、
図3に示した制御信号BG1以外の制御信号BGの変化について、
図4を参照しながら説明する。
【0070】
図4は、本発明の実施形態による各信号の時間変化を示すタイミングチャートである。
図4には、
図3に示した制御信号BG1以外の制御信号BGの例として、それぞれ画素PXのマトリクスの3,5,7,9行目に対応する4つの制御信号BG2〜BG5を示している。なお、同図では、
図3に示した同期信号Vsyncの非活性化から映像信号書き込み期間Pwに至る3水平走査期間(3H)分の各信号の時間変化を、一部簡略化して模式的に示している。
【0071】
図4に示すように、制御信号BG1以外の制御信号BG2〜BG5は、上述した走査線駆動回路YDR2内のシフトレジスタの処理により、制御信号BG2に比べて一定時間ずつ順次遅れて変化するよう構成される。これにより、図示していないが、各画素PXの輝度も、1行目に対応する画素PXに比べて一定時間ずつ順次遅れて変化することになる。これにより、どの行に属する画素PXについても、1行目に属する画素PXと同様に、非発光期間(非表示期間)B,Baを設けることが可能になる。
【0072】
このように、
図3によれば、ある1フレームで各画素PXに書き込まれた映像信号により映像の表示を行い、次のフレームにおいても映像信号を各画素PXに書き込むことなく、前フレームと同じ映像を表示する駆動方法が提供される。このような駆動方法は、表示装置において静止画を表示する場合に適している。
図3で示す駆動方法によれば、表示装置はフレームレートを下げて駆動されるので、消費電量を低減することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0074】
例えば、上記実施の形態では、フレームレートを通常の1/2にする例を取り上げて説明したが、フレームレートをさらに低下させることも可能である。その場合、映像信号Vsigを書き込んだ直後のフレームから、次に映像信号Vsig書き込みの直前に位置するフレームまで、追加する非発光期間(非表示期間)Baの時間長を徐々に短くしていくように、コントローラ12にスタート信号STVBを制御させることが好ましい。こうすることで、フレームレートを通常の1/2未満にした場合においても、フレーム間で発光時間×輝度の値を揃えると共に、フリッカを抑制し表示品位を向上させることが可能になる。また、フレームレートを通常の1/2未満にする別の方法として、Vsyncの周期を長くする方法もある。この場合、
図3、
図4、
図6の図中央の3Hの期間がなくなり、1フレームと2フレームの間の黒挿入をなくすことができる。
【0075】
また、
図3において、2フレーム目の映像信号Vsigの間引きを行うにあたり、同期信号Vsyncはそのまま入力される一方で、スタート信号STVB,STVSを出力しないような制御とする例が示されているが、同期信号Vsync自体をコントローラ12側に入力させないようにすることで、コントローラ12側でスタート信号STVB,STVSを生成しないようにしても良い。
【0076】
さらに、本発明の一実施形態によれば、表示パネルDPの回路構成を変えることなしに、表示パネルDPに入力する各信号のタイミングを変化させることで、動画表示に適した駆動と、静止画表示に適した駆動を行うことができる。別言すれば、本発明の一実施形態によれば、フレーム毎に各画素に映像信号を書き込んで、その映像信号に対応する映像を表示する動画表示モードと、前フレームで各画素に書き込まれた
映像信号に基づく映像と同じ映像を表示する静止画モードとを有する表示装置が提供される。そして、静止画表示が行われる場合にも、フリッカの少ない高品質の画像を表示することができる。