(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0017】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「1つの」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、当該部材が2以上設けられていてもよい。
(第1実施形態)
本実施形態は、サーバ室用の断熱構造に本発明に係る断熱区画部材及び断熱構造体を適用したものである。サーバ室には、複数の情報通信技術用機器(以下、ICT機器と記す。)が設置されている。
【0018】
1台又は複数のICT機器は、
図1に示すラック3に搭載された状態でサーバ室SRに設置されている。当該サーバ室SRには、
図2に示すように、複数のラック3が列状に並んで設置されている。以下、列状に並んだ一群のラック3をラック列Rともいう。
【0019】
ラック列Rを挟んで一方には、各ICT機器を冷却するための冷風が供給される冷却風通路(コールドアイル)3Aが設けられている。冷風は、冷却風通路3Aの床下に設けられたダクト空間(図示せず。)から各ラック列R側に供給された後、床に設けられた複数の冷風吹出口(図示せず。)から冷却風通路3Aに供給される。
【0020】
なお、各ラック列Rを挟んで冷却風通路3Aと反対側の通路3Bには、冷風吹出口が設けられていない。このため、当該通路3Bには、冷却風通路3Aから各ICT装置に供給された空気であって、ICT装置との熱交換を終えて温度が上昇した空気が流通する。つまり、通路3Bは、加熱された空気(温風)が流通する温風通路(ホットアイル)となる。
【0021】
冷却風通路3Aの上方側は、
図3に示すように、アイルキャップ5にて閉塞されている。本実施形態に係るアイルキャップ5は、複数の板状部材5Aに構成されている。各板状部材5Aは、冷却風通路3Aを挟んで隣り合う2つのラック列R間を渡すブリッジ材である。
【0022】
<断熱区画部材>
複数のラック3間の隙間には、
図1に示すように、断熱区画部材10が配設されている。断熱区画部材10は、
図4に示すように、可撓性を有する膜状体で構成され袋状のバルーン本体10Aにより構成されている。
【0023】
バルーン本体10Aには、空気等の気体を内部に充填するための注入口10B、及び当該注入口10Bを開閉するバルブ10Cが設けられている。なお、本実施形態に係るバルーン本体10Aは、ゴムやビニール等の樹脂製、又は当該樹脂をカーボン繊維又はガラス繊維等にて補強した膜状体にて構成されている。
【0024】
因みに、本実施形態に係るバルーン本体10Aは、
図4の二点鎖線に示すように、四角柱等の直方体(六面体)形状に形成されている。しかし、内圧が高くなると、
図4の実線で示すように、6つの各壁面がドーム状に膨らむ。このため、内部に気体が充填されていくと、バルーン本体10A、つまり断熱区画部材10は円柱状に近づいていく。
【0025】
本実施形態に係るバルーン本体10Aにはリリーフバルブ10Dが設けられている。リリーフバルブ10Dは、バルーン本体10Aの内圧が予め決められた圧力(以下、リリーフ圧という。)以上となったとき内部の気体を放出するものである。
【0026】
リリーフ圧は、バルーン本体10Aが接触するラック3等の部材が、バルーン本体10Aの押圧力により損傷しない程度の圧力であって、かつ、予め設定された気密性を確保可能な程度の接触面圧が発生する圧力をいう。
【0027】
<本実施形態の特徴>
本実施形態に係る断熱区画部材10では、バルーン本体10Aに充填された気体が断熱材として機能する。そして、バルーン本体10Aがラック3又は壁等と圧接しながら撓み変形するので、ラック3等と断熱区画部材10との隙間を容易に閉塞することが可能となる。このため、閉塞すべき開口の外形寸法が以前の開口と異なる場合であっても、従前の断熱区画部材10、つまりバルーン本体10Aを容易に再利用することができる。
【0028】
本実施形態では、バルーン本体10Aにリリーフバルブ10Dが設けられている。これにより、気体をバルーン本体10Aに充填する際に、内圧が過度に上昇してしまうことを抑制できるので、ラック3等の周囲の部材が損傷してしまうことを抑制でき得る。
【0029】
(第2実施形態)
<断熱区画部材>
本実施形態では、
図5に示すように、連結部11及び閉塞部材12がバルーン本体10Aに設けられている。連結部11は、バルーン本体10Aと他の部材とを連結するための部位である。他の部材とは、当該バルーン本体10A以外の他のバルーン本体10Aやラック3等をいう。
【0030】
本実施形態に係る連結部11は、マジックテープ(登録商標)等の面ファスナにて構成されている。なお、本実施形態では、隣り合うバルーン本体10Aをそれぞれの連結部11で直接的に連結することなく、連結用補助部材11Aを介して隣り合うバルーン本体10Aが連結されている。
【0031】
本実施形態に係る連結用補助部材11Aは、可撓性を有する帯状の部材である。連結用補助部材11Aの端部には、連結部11と連結可能な被連結部(本実施形態では、面ファスナ)が設けられている。
【0032】
閉塞部材12は、バルーン本体10Aと他の部材との隙間を閉塞するための部材である。本実施形態に係る閉塞部材12は、バルーン本体10Aの長手方向一端側に設けられ、アイルキャップ5とバルーン本体10Aとの隙間を閉塞する。
【0033】
閉塞部材12には、他の部材(本実施形態では、アイルキャップ5)と当該閉塞部材12とを連結するための連結部12Aが設けられている。当該連結部12Aは、連結部11と同様な面ファスナ等で構成されている。
【0034】
なお、本実施形態に係る閉塞部材12は、連結用補助部材11Aと同様な構造の部材であって、連結部11を介してバルーン本体10Aに取り付けられている。しかし、本実施形態はこれに限定されるものではなく、閉塞部材12とバルーン本体10Aと一体品としてもよい。
【0035】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
<本実施形態の特徴>
本実施形態では、閉塞すべき開口が従前の開口より大きい場合には、複数のバルーン本体10Aを連結することにより、大きな開口を閉塞できる。
【0036】
本実施形態では、連結部11をラック3等の他の部材に連結することができる。これにより、バルーン本体10Aと当該他の部材との隙間を気密に閉塞でき得る。
本実施形態では、バルーン本体10Aとアイルキャップ5等との隙間を閉塞部材12にて閉塞できる。これにより、バルーン本体10Aを当該他の部材との隙間を確実に気密に閉塞でき得る。
【0037】
本実施形態では、閉塞部材12とバルーン本体10Aとは、面ファスナ等の着脱自在な連結体にて連結されている。これにより、例えば、アイルキャップ5等とバルーン本体10Aとの隙間が大きい場合には、現状の閉塞部材12に代えて、大きな閉塞部材12を用いることができる。つまり、本実施形態では、隙間の大きさに応じた閉塞部材12を用いることができるので、様々な大きさの隙間を確実に閉塞できる。
【0038】
(第3実施形態)
第2実施形態では、閉塞部材12に設けられた連結部12Aをアイルキャップ5に連結することにより、アイルキャップ5とバルーン本体10Aとの隙間を閉塞する構造であった。これに対して、本実施形態は、
図6Aに示すように、「のれん」と同様な手法にてアイルキャップ5とバルーン本体10Aとの隙間を閉塞する。
【0039】
すなわち、
図6Bに示すように、バルーン本体10Aが配設される空間Aには、梁部材13が設けられている。梁部材13は、複数のラック3の上端側において当該複数のラック3間を渡すように延びる棒状の部材である。
【0040】
閉塞部材12の先端側には、梁部材13が貫通挿入可能な筒状部12Bが設けられている。つまり、閉塞部材12は「のれん」に相当する。そして、その「のれん」に相当する閉塞部材12の他端は、バルーン本体10Aに連結又は一体化されている。
【0041】
したがって、バルーン本体10Aの上端とアイルキャップ5とが上下方向にずれている場合であっても、アイルキャップ5とバルーン本体10Aとの隙間を容易に閉塞でき得る。
【0042】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
(第4実施形態)
<断熱区画部材>
本実施形態は、
図7に示すように、バルーン本体10Aを第1バルーン本体10E及び第2バルーン本体10Fにて構成したものである。第1バルーン本体10E及び第2バルーン本体10Fそれぞれは、可撓性を有する膜状体で構成された袋状であって、上記と同様な注入口及びバルブ等を有する。
【0043】
第2バルーン本体10Fは、バルーン本体10Aのうちラック3等の他の部材と接触する部位(以下、被接触部位という。)に設けられている。なお、
図7に示す例は、ラック3間の隙間を閉塞するため断熱区画部材10に適用した例である。このため、
図7に示す例では、第1バルーン本体10Eを挟んで水平方向両側それぞれに少なくとも1つの第2バルーン本体10Fが設けられている。
【0044】
本実施形態に係る第2バルーン本体10Fの体積は、第1バルーン本体10Eの体積に比べて小さい。このため、上記被接触部位には、複数の第2バルーン本体10Fが設けられている。
【0045】
なお、本実施形態では、各第2バルーン本体10Fは、角柱状又は円柱状であって隣り合う第2バルーン本体10Fは連結されて一体化されている。このため、複数の第2バルーン本体10Fは、第1バルーン本体10Eの一部を覆うビーチマット状の被接触部を構成する。
【0046】
第1バルーン本体10Eは、上記「被接触部」をラック3等に押し付ける押付部として機能する。つまり、各第2バルーン本体10Fとラック3等との接触面圧は、主に、第1バルーン本体10Eの内圧により調整される。
【0047】
すなわち、各第2バルーン本体10Fには、予め設定された所定圧の空気等が充填されている。そして、上記「接触面圧」を高める必要がある場合には、作業者は、主に第1バルーン本体10Eの内圧を高める。
【0048】
「接触面圧」を下げる必要がある場合には、作業者は、主に第1バルーン本体10Eの内圧を下げる。「接触面圧」を微調整する場合には、作業者は、該当する第2バルーン本体10Fの内圧を調整する。
【0049】
「接触面圧」の調整は、上述のように、主に第1バルーン本体10Eの内圧調整により行われる。このため、本実施形態では、少なくとも第1バルーン本体10Eに上記のリリーフバルブが設けられている。
【0050】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
<本実施形態の特徴>
本実施形態に係るバルーン本体10Aは、押圧部を構成する第1バルーン本体10E、及び被接触部を構成する第2バルーン本体10Fを有して構成されている。したがって、接触面圧を容易に調整することができる。
【0051】
つまり、バルーン本体10Aが1つの袋状体のみで構成されていると、バルーン本体10Aの内圧が変更されると、全ての被接触部位において接触面圧が変更してしまうので、接触面圧を容易に調整し難い。
【0052】
本実施形態に係る断熱区画部材10では、ラック3等の接触する部位、つまり被接触部を第1バルーン本体10E(バルーン本体10A)に比べて体積の小さい第2バルーン本体10Fにて構成している。
【0053】
したがって、被接触部位が単純な形状(例えば、平滑な平面形状)と異なる形状であっても、断熱区画部材10、つまり第2バルーン本体10Fを気密に接触部に接触させることができ得る。
【0054】
なお、本実施形態は、第2バルーン本体10Fにもリリーフバルブ10Dを設けてもよい。さらに、1つの袋状体にて第2バルーン本体10Fを構成してもよい。
(第5実施形態)
本実施形態は、
図8に示すように、バルーン本体10Aの少なくとも一部(以下、拘束部位という。)の位置を拘束、又は当該拘束部位の変位方向を規制する規制部15を設けたものである。
【0055】
すなわち、規制部15は、バルーン本体10Aに空気が充填されて当該バルーン本体10Aが膨張していく際に、拘束部位をラック3等に対して不動状態とする、又は拘束部位の移動方向を予め決められた方向以外に移動することを抑制する。
【0056】
「拘束部位」は、(a)バルーン本体10Aの少なくとも一部であって、断熱区画部材10にて隙間を閉塞する際に、ラック3等と接触させることが必要な部位、又は(b)バルーン本体10Aの少なくとも一部であって、断熱区画部材10にて隙間を閉塞するに当たり、バルーン本体10Aの膨張変形を適切な方向に導くために必要な部位等をいう。
【0057】
したがって、本実施形態では、ラック3等と断熱区画部材10との隙間を確実に閉塞できる。なお、
図8では、拘束部位の位置を拘束等するために、専用のフレーム15Aが設けられ、規制部15が当該フレーム15Aに連結されている。
【0058】
しかし、フレーム15Aを廃止し、例えば規制部15をラック3等に連結してもよい。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
【0059】
(第6実施形態)
本実施形態は、
図9に示すように、アイルキャップ5を断熱区画部材10にて構成したものである。
【0060】
すなわち、本実施形態に係る断熱区画部材10は、
図10Aに示すように、複数のバルーン本体10Aが連結部11にて連結されたビーチマット状となっている。各バルーン本体10Aには、
図10Bに示すように、閉塞部材12等が設けられている。これにより、冷却風通路3Aの上方側を容易に断熱閉塞でき得る。
【0061】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
(第7実施形態)
本実施形態は第6実施形態の変形例である。すなわち、
図11に示すように、枕材16を断熱区画部材10に設けたものである。枕材16は、ラック3間に配設されたバルーン本体10A又はラック3とアイルキャップ5との高さの違いを調整する部材である。
【0062】
枕材16は、面ファスナ等の連結部を介してアイルキャップ5(断熱区画部材10)に一体化されている。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
【0063】
本実施形態に係る枕材16はバルーン本体10Aと同様な構造である。つまり、枕材16は、可撓性を有する膜状体で構成された袋状体に気体が充填されたものである。当該袋状体には、少なくとも気体を充填するための注入口、及び当該注入口を開閉するバルブが設けられている。これにより、枕材16の内圧を調整することにより、ラック3等とアイルキャップ5との高さの違いを容易に吸収でき得る。
【0064】
(第8実施形態)
本実施形態は、
図12に示すように、スポットクーラ等の熱源機20にて生成された空調風を導くための空調ダクトに本発明に係る断熱区画部材10を適用したものである。
【0065】
すなわち、空調風が流通するダクト本体部21は、
図13に示すように、複数の気柱部を有するビーチマット状の断熱区画部材10が丸められて構成されたものである。つまり、当該断熱区画部材10は、気柱部をなす複数のバルーン本体10Aが連結されたものである。そして、断熱区画部材10は、連結部11により連結されて筒状にされている。
【0066】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明に係る断熱区画部材10を空調システム等に適用した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。