(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る車両用電池パックの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記の実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
まず、実施形態1に係る車両用電池パックについて説明する。
図1は、実施形態1に係る車両用電池パックの平面図である。
図2は、実施形態1に係る車両用電池パックの熱等価回路を示す図である。
図3は、実施形態1に係る車両用電池パックの熱抵抗と熱容量との関係を示す図である。なお、
図1(
図4、
図7、
図11〜
図15も同様)は、筐体の図示しない蓋を取り外して、内部空間を外部に露出させた状態を示す図である。ここで、
図1(
図4、
図7、
図8、
図11〜
図16も同様)のX方向は、本実施形態における車両用電池パックの幅方向である。Y方向は、本実施形態における車両用電池パックの前奥行き方向であり、幅方向と直交する方向である。Z方向は、本実施形態における車両用電池パックの上下方向であり、幅方向および奥行き方向と直交する方向である。
【0017】
本実施形態に係る車両用電池パック1Aは、図示しない車両、特に、電気車両(EV)、ハイブリッド車両(HEV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)などの、駆動源としてモータを用いる車両に搭載され、駆動源に電力を供給する電源となるものである。車両用電池パック1Aは、
図1に示すように、筐体2と、複数個の電池3と、蓄熱部材4と、熱伝導部材5とを備える。
【0018】
筐体2は、複数個の電池、蓄熱部材4および熱伝導部材5を収容するものである。筐体2は、筐体2の外表面が車両外から取り込まれた外気などの外部の熱媒体Tと接触可能な場所に設けられている。本実施形態における筐体2は、内部空間2aを有する箱状に形成される。筐体2は、熱伝導性を有するものであり、鉄、銅、アルミニウムなどにより構成される。なお、筐体2は、図示しない蓋により、内部空間2aを閉塞する。なお、車両用電池パック1に防水性が要求される場合は、筐体2と蓋との間に防水構造を形成し、内部空間2aを密閉する。
【0019】
複数個の電池3は、充放電可能な電池であり、すなわち二次電池であり、筐体2内に配列される。本実施形態における複数個の電池3は、それぞれ円筒型のリチウムイオン電池であり、第1配列方向としての幅方向に一列に配列された第1配列方向電池群BGを、第1配列方向と直交する方向である第2配列方向としての奥行き方向に複数配列される。
【0020】
蓄熱部材4は、少なくとも筐体2と熱的に接続されるものである。ここで、蓄熱部材4が筐体2と熱的に接続されるとは、直接筐体2と接触することで蓄熱部材4と筐体2との間で直接的に熱の授受が可能な場合、あるいは蓄熱部材4を収容する蓄熱容器または絶縁部材などの蓄熱部材4と筐体2との間に要求される条件に基づいた機能を有し、かつ熱伝導性を有する介在部材を介して蓄熱部材4と筐体2との間で間接的に熱の授受が可能な場合をいう。蓄熱部材4は、筐体2よりも蓄熱量が大きく形成される。本実施形態における蓄熱部材4は、内部空間2aのうち、内壁面2bに沿って、上下方向から見た場合に矩形状に形成される。蓄熱部材4は、筐体2および熱伝導部材5よりも熱伝導性が低いものであり、顕熱または潜熱を行うことができる蓄熱材料で構成される。蓄熱材料としては、主に顕熱を行うことができる材料として、油、鉄、アルミニウムなどの金属、セラミック、セメント、レンガ、主に潜熱を行うことができるパラフィン、脂肪酸、糖アルコール、無機塩水和物、二酸化バナジウム、顕熱および潜熱を行うことができる材料として、水などである。蓄熱材料は、蓄熱部材4の主成分として含まれている材料であることが好ましい。ここで、蓄熱部材4は、比熱が少なくとも電池3よりも大きく、熱容量が筐体2、電池3、熱伝導部材5よりも大きく設定される。
【0021】
熱伝導部材5は、少なくとも各電池3および蓄熱部材4と熱的に接続されるものである。ここで、熱伝導部材5が各電池3および蓄熱部材4と熱的に接続されるとは、直接各電池3および蓄熱部材4と接触することで熱伝導部材5と各電池3および蓄熱部材4との間で直接的に熱の授受が可能な場合、あるいは絶縁部材などの蓄熱部材4と筐体2との間に要求される条件に基づいた機能を有し、かつ熱伝導性を有する介在部材を介して熱伝導部材5と各電池3および蓄熱部材4との間で間接的に熱の授受が可能な場合をいう。本実施形態における熱伝導部材5は、奥行き方向において各第1配列方向電池群BGを挟んで、各第1配列方向電池群BGと熱的に接続される複数の熱伝導板51により構成される。熱伝導板51は、電池3に対して上下方向に延在して形成されており、上下方向から見た場合に、幅方向に配列される各電池3の外周面3aの形状、すなわち曲面に沿って波状に形成され、奥行き方向に電池3が隣り合う場合には、隣り合う電池3に挟まれて形成されており、幅方向における両端部51a,51bが蓄熱部材4の内部に位置して形成される。つまり、熱伝導板51は、幅方向における中央部において、各電池3と熱的に接続され、両端部51a,51bにおいて、蓄熱部材4と熱的に接続される。熱伝導部材5は、蓄熱部材4よりも熱伝導性が高いものであり、グラファイト、熱伝導性フィラーを含有する樹脂、熱伝導性が高い金属材料である銅、アルミニウムなどである。なお、本実施形態における熱伝導部材5は、2つの熱伝導板51が奥行き方向において各第1配列方向電池群BGを挟んで、各電池3を筐体2に対して保持する保持部材でもある。
【0022】
次に、本実施形態に係る車両用電池パック1Aの熱の移動について説明する。車両の走行当初は各電池3と蓄熱部材4との温度は、同一であるため、熱の移動は発生しないが、走行中は、各電池3で熱が発生し、温度が上昇する。各電池3で発生した熱は、各電池3の外周面3aを介して、熱伝導部材5に伝熱される。熱伝導部材5に伝熱された熱は、蓄熱部材4に伝熱され、蓄熱部材4に一旦蓄熱される。蓄熱部材4に蓄熱された熱は、筐体2に伝熱され、熱媒体Tとの間で熱交換され、筐体2の外部に放熱されるので、蓄熱部材4および熱伝導部材5を介して各電池3が冷却される。
【0023】
次に、車両用電池パック1Aの熱特性について説明する。各部材間の熱の伝わり方は、熱抵抗と熱容量とで表現した熱等価回路を用いて説明することができる。車両用電池パック1Aの熱等価回路は、
図2に示すように、熱源を電池3として、電池3の熱回路(熱抵抗R1、熱容量C1)と、熱伝導部材5の熱回路(熱抵抗R2、熱容量C2)と、蓄熱部材4の熱回路(熱抵抗R3、熱容量C3)と、筐体2の熱回路(熱抵抗R4、熱容量C4)と、熱媒体Tとが直列に接続される。車両用電池パック1Aの熱等価回路から、車両用電池パック1Aの熱抵抗R[K/W]と熱容量C[J/g・K]との関係は、
図3に示すように、電池3の熱回路に基づいた傾きと、熱伝導部材5の熱回路に基づいた傾きと、蓄熱部材4の熱回路に基づいた傾きと、筐体2の熱回路に基づいた傾きとを順に合わせたものとなる。
【0024】
以上のように、本実施形態に係る車両用電池パック1Aは、各電池3を冷却するための空間や、冷却装置を設置するスペースを設けないので、車両用電池パック1Aの容積に対するエネルギー密度の低下を抑制することができる。また、スペースを省略できるので、小型化を容易にすることができる。
【0025】
また、本実施形態に係る車両用電池パック1Aは、各電池3に対して蓄熱部材4の比熱が大きく、温度が上昇しにくいため、各電池3は蓄熱部材4に熱を奪われ続ける。従って、各電池3の温度上昇は、蓄熱部材4が熱を奪わない場合と比較して、緩やかになる。これにより、各電池3の温度が使用可能温度を超えるまでの時間、すなわち適正な温度範囲に維持することができる時間が長くなる。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV)においては、車両用電池パック1Aを電源とする電気走行、すなわちEVモードでの航続時間を長くすることができる。また、車両加速時など、各電池3に短時間で高い負荷がかかる場合でも、蓄熱部材4に多くの熱を蓄熱することができるので、各電池3を空冷により冷却する場合と比較して、各電池3が発生する熱を素早く奪うことができる。従って、各電池3の温度上昇が緩やかになるので、充放電制限を概ねなくすることができる。これにより、電気車両(EV)、ハイブリッド車両(HEV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)などは、走行中の所定期間における車両用電池パック1Aの出力密度を向上することができる。
【0026】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る車両用電池パックについて説明する。
図4は、実施形態2に係る車両用電池パックの平面図である。
図5は、実施形態2に係る車両用電池パックの熱等価回路を示す図である。
図6は、実施形態2に係る車両用電池パックの熱抵抗と熱容量との関係を示す図である。実施形態2に係る車両用電池パック1Bは、熱伝導部材5に蓄熱部材4を貫通する貫通部52a,52bが形成される点で、実施形態1に係る車両用電池パック1Aと異なる。なお、実施形態2に係る車両用電池パック1Bは、実施形態1に係る車両用電池パック1Aと比較して、基本的構成および基本的動作が共通しているので、同一符号部分に関しては、省略あるいは簡略化して説明する(以下、実施形態3,4も同様)。
【0027】
車両用電池パック1Bの熱伝導部材5は、
図4に示すように、複数の熱伝導板51により構成される。熱伝導板51は、幅方向における両端部51a,51bが蓄熱部材4の内部を貫通して、貫通部52a,52bとして形成される。本実施形態における貫通部52aは、各熱伝導板51の端部51aを一体化し、貫通部52bは各熱伝導板51の端部51bを一体化して形成される。貫通部52a,52bは、内壁面2bに接触することで、筐体2と接触し、筐体2と熱的に接続される。つまり、貫通部52a,52bは、蓄熱部材4および筐体2と熱的に接続される。なお、蓄熱部材4が流動性を有する蓄熱材料である場合は、蓄熱部材4を収容する蓄熱容器を熱伝導板51が貫通することで、蓄熱部材4が内部空間2aに漏れないよう蓄熱容器に防水構造が形成される。
【0028】
次に、本実施形態に係る車両用電池パック1Bの熱の移動について説明する。各電池3で熱が発生すると、各電池3で発生した熱は、各電池3の外周面3aを介して、熱伝導部材5に伝熱される。熱伝導部材5に伝熱された熱は、一部が蓄熱部材4に伝熱され、一部が筐体2に伝熱される。蓄熱部材4に伝熱された熱は、蓄熱部材4に一旦蓄熱され、筐体2に伝熱される。熱伝導部材5から直接伝熱された熱および蓄熱部材4を介して伝熱された熱は、熱媒体Tとの間で熱交換され、筐体2の外部に放熱されるので、蓄熱部材4および熱伝導部材5を介して各電池3が冷却される。
【0029】
次に、車両用電池パック1Bの熱特性について説明する。車両用電池パック1Bの熱等価回路は、
図5に示すように、熱源を電池3として、電池3の熱回路(熱抵抗R1、熱容量C1)と、熱伝導部材5の熱回路(熱抵抗R2、熱容量C2)と、蓄熱部材4の熱回路(熱抵抗R3、熱容量C3)と、筐体2の熱回路(熱抵抗R4、熱容量C4)と、熱媒体Tとが直列に接続される。さらに、熱源を電池3として、電池3の熱回路(熱抵抗R1、熱容量C1)と、熱伝導部材5の熱回路(熱抵抗R2、熱容量C2)と、蓄熱部材4の熱回路(熱抵抗R3、熱容量C3)を介さずに、熱伝導部材5の貫通部52a,52bにおける熱回路(熱抵抗R2´、熱容量C2´)と、筐体2の熱回路(熱抵抗R4、熱容量C4)と、熱媒体Tとが直列に接続される。つまり、車両用電池パック1Bの熱等価回路は、蓄熱部材4の熱回路と、熱伝導部材5の貫通部52a,52bにおける熱回路とが並列に接続される。車両用電池パック1Bの熱等価回路から、車両用電池パック1Bの熱抵抗R[K/W]と熱容量C[J/g・K]との関係は、
図6に示すように、電池3の熱回路に基づいた傾きと、熱伝導部材5の熱回路に基づいた傾きと、蓄熱部材4の熱回路および熱伝導部材5の貫通部52a,52bの熱回路を合わせた熱回路に基づいた傾きと、筐体2の熱回路に基づいた傾きとを順に合わせたものとなる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る車両用電池パック1Bは、車両用電池パック1Aと同様の効果を奏するとともに、車両用電池パック1Aの熱抵抗Rと熱容量Cとの関係と比較して、熱抵抗Rを小さくすることができる。従って、熱伝導部材5は、蓄熱部材4の熱抵抗Rの大きさにより、蓄熱部材4を介して電池3で発生した熱を筐体2に伝熱し難くても、蓄熱部材4を介さずに、熱伝導部材5により筐体2に電池3で発生した熱を直接伝熱することもできる。これにより、電池3から筐体2までの熱の伝熱経路を複数有するので、放熱しやすくなり、冷却性能を向上することができる。また、貫通部52a,52bが蓄熱部材4を貫通しているので、蓄熱部材4の積極的な冷却を行うこともできる。
【0031】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3に係る車両用電池パックについて説明する。
図7は、実施形態3に係る車両用電池パックの平面図である。
図8は、実施形態3に係る車両用電池パックの要部断面図である。
図9は、実施形態3に係る車両用電池パックの熱等価回路を示す図である。
図10は、実施形態3に係る車両用電池パックの熱抵抗と熱容量との関係を示す図である。なお、
図7は、車両用電池パック1Cの内部空間2aを奥行き方向から見た図であり、電池3に対向する熱伝導板51の一方を省略した図である。実施形態3に係る車両用電池パック1Cは、各電池3を保持する保持部材6をさらに備える点で、実施形態1に係る車両用電池パック1Aと異なる。
【0032】
車両用電池パック1Cは、
図7,8に示すように、保持部材6を備える。保持部材6は、筐体2に収容されており、複数個の電池3を筐体2に対して保持するものである。本実施形態における保持部材6は、第1配列方向電池群BGごとに複数個の電池3を保持するものであり、基台61と、保持片62とを有する。基台61は、内部空間2aを構成する底面に固定されるものであり、幅方向に延在される。ここで、筐体2への基台61の固定は、図示しないネジなどの公知の固定具により行われる。保持片62は、基台61から上下方向のうち上方向に向かって形成される。保持片62は、基台61に対して複数形成されており、幅方向において各電池3を挟んで対向して形成される。保持片62は、電池3の外周面3aと対向する保持面62aが外周面3aの形状に沿って、すなわち曲面に形成されており、電池3に幅方向において対向して電池3を狭持することで、電池3を保持する。保持部材6は、熱伝導性を有するものであり、鉄、銅、アルミニウムなどにより構成され、各電池3および筐体2と熱的に接続される。ここで、保持部材6が各電池3および筐体2と熱的に接続されるとは、直接各電池3および筐体2と接触することで保持部材6と各電池3および筐体2との間で直接的に熱の授受が可能な場合、あるいは固定具や絶縁部材などの保持部材6と電池3との間、あるいは保持部材6と筐体2との間に要求される条件に基づいた機能を有し、かつ熱伝導性を有する介在部材を介して保持部材6と各電池3および筐体2とで間接的に熱の授受が可能な場合をいう。なお、保持部材6は、熱伝導部材5と比較して、熱伝導性が同じあるいは低いことが好ましいが、保持部材6が熱伝導部材5よりも熱伝導性が高くとも問題ない。
【0033】
次に、本実施形態に係る車両用電池パック1Cの熱の移動について説明する。各電池3で熱が発生すると、各電池3で発生した熱は、各電池3の外周面3aを介して、熱伝導部材5に伝熱される。熱伝導部材5に伝熱された熱は、一部が蓄熱部材4に伝熱され、一部が保持部材6に伝熱される。蓄熱部材4に伝熱された熱は、蓄熱部材4に一旦蓄熱され、筐体2に伝熱される。保持部材6に伝熱された熱は、筐体2に伝熱される。保持部材6を介して筐体2に伝熱された熱および蓄熱部材4を介して筐体2に伝熱された熱は、熱媒体Tとの間で熱交換され、筐体2の外部に放熱されるので、蓄熱部材4、熱伝導部材5および保持部材6を介して各電池3が冷却される。
【0034】
次に、車両用電池パック1Cの熱特性について説明する。車両用電池パック1Cの熱等価回路は、
図9に示すように、熱源を電池3として、電池3の熱回路(熱抵抗R1、熱容量C1)と、熱伝導部材5の熱回路(熱抵抗R2、熱容量C2)と、蓄熱部材4の熱回路(熱抵抗R3、熱容量C3)と、筐体2の熱回路(熱抵抗R4、熱容量C4)と、熱媒体Tとが直列に接続される。さらに、熱源を電池3として、電池3の熱回路(熱抵抗R1、熱容量C1)と、蓄熱部材4および熱伝導部材5の熱回路を介さずに、保持部材6の熱回路(熱抵抗R5、熱容量C5)と、筐体2の熱回路(熱抵抗R4、熱容量C4)と、熱媒体Tとが直列に接続される。つまり、車両用電池パック1Cの熱等価回路は、熱伝導部材5の熱回路および蓄熱部材4の熱回路と、保持部材6の熱回路とが並列に接続される。車両用電池パック1Cの熱等価回路から、車両用電池パック1Cの熱抵抗R[K/W]と熱容量C[J/g・K]との関係は、
図10に示すように、電池3の熱回路に基づいた傾きと、熱伝導部材5の熱回路に基づいた傾きと、熱伝導部材5から蓄熱部材4の熱の伝熱経路における熱回路および保持部材6の熱回路を合わせた熱回路に基づいた傾きと、筐体2の熱回路に基づいた傾きとを順に合わせたものとなる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る車両用電池パック1Cは、車両用電池パック1Aと同様の効果を奏するとともに、車両用電池パック1Aの熱抵抗Rと熱容量Cとの関係と比較して、熱抵抗Rを小さくすることができる。従って、熱伝導部材5は、蓄熱部材4の熱抵抗Rの大きさにより、蓄熱部材4を介して電池3で発生した熱を筐体2に伝熱し難くても、蓄熱部材4を介さずに、保持部材6により筐体2に電池3で発生した熱を直接伝熱することもできる。これにより、電池3から筐体2までの熱の伝熱経路を複数有するので、放熱しやすくなり、冷却性能を向上することができる。
【0036】
〔実施形態4〕
次に、実施形態4に係る車両用電池パックについて説明する。
図11は、実施形態4に係る車両用電池パックの平面図である。実施形態4に係る車両用電池パック1Dは、蓄熱部材4が蓄熱容器7に封入される点で、実施形態1に係る車両用電池パック1Aと異なる。なお、
図11(
図12も同様)は、蓄熱容器7のみ断面として図示した図である。
【0037】
車両用電池パック1Dは、
図11に示すように、蓄熱容器7を備える。蓄熱容器7は、筐体2に収容されており、収容空間7aに蓄熱部材4が封入される。蓄熱容器7は、熱伝導性を有するものであり、鉄、銅、アルミニウムなどにより構成され、筐体2と接触することで、筐体2と熱的に接続される。本実施形態における蓄熱容器7は、内部空間2aのうち、幅方向における両端部に筐体2と接触した状態で配置されており、収容空間7aに蓄熱部材4とともに内部熱伝導板71が形成される。内部熱伝導板71は、内部熱伝導部材であり、収容空間7aに複数形成されており、表面積を拡大するために幅方向に向かって波状に形成される。内部熱伝導板71は、熱伝導性を有するものであり、鉄、銅、アルミニウムなどにより構成され、蓄熱部材4と接触することで、蓄熱部材4と熱的に接続される。また、内部熱伝導板71は、幅方向における両端部が蓄熱容器7と接触して形成されており、蓄熱容器7とも熱的に接続される。さらに、内部熱伝導板71は、幅方向における両端部のうち、一方、すなわち電池3側の端部71aが蓄熱容器7から内部空間2aに露出して形成されており、幅方向において対向する熱伝導板51の各両端部51a,51bとそれぞれ、例えば圧着や溶接などにより接触することで、熱的に接続される。ここで、内部熱伝導板71は、熱伝導部材5と比較して、熱伝導性が同じあるいは低いことが好ましいが内部熱伝導板7が熱伝導部材5よりも熱伝導性が高くとも問題ない。
【0038】
次に、本実施形態に係る車両用電池パック1Dの熱の移動について説明する。各電池3で熱が発生すると、各電池3で発生した熱は、各電池3の外周面3aを介して、熱伝導部材5に伝熱される。熱伝導部材5に伝熱された熱は、内部熱伝導板71に伝熱され、一部が収容空間7a内の蓄熱部材4に伝熱され、一部が蓄熱容器7を介して筐体2に伝熱される。蓄熱部材4に蓄熱された熱は、蓄熱部材4に一旦蓄熱され、蓄熱容器7を介して筐体2に伝熱される。蓄熱容器7を介して筐体2に伝熱された熱は、熱媒体Tとの間で熱交換され、筐体2の外部に放熱されるので、蓄熱部材4、熱伝導部材5および蓄熱容器7を介して各電池3が冷却される。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る車両用電池パック1Dは、車両用電池パック1Aと同様の効果を奏するとともに、例えば、蓄熱部材4が流動性を有するものであっても、蓄熱容器7に封入することで内部空間2aに収容することができる。また、熱伝導板51と蓄熱容器7内の内部熱伝導板71とが接触・伝熱し、蓄熱部材4へ伝熱するため、熱伝導部材5から蓄熱容器7を介して熱を蓄熱部材4に伝熱するよりも、素早く蓄熱部材4へ電池3から発生した熱を移動することができる。また、収容空間7a内に内部熱伝導板71が配置されるので、蓄熱部材4全体に熱が拡散しやすくなる。従って、蓄熱部材4の単位時間当たりの蓄熱量を向上することができるので、車両の加速時など電池3が急激な温度上昇をしても、効率的に熱を吸収することができるので、冷却性能を向上することができる。また、車両用電池パック1Dを幅方向が車両の幅方向となるように車両に対して設置することで、蓄熱容器7が車両側突時における緩衝部として機能するので、電池3の保護を図ることができ、車両用電池パック1Dとしての機能低下を抑制することができる。
【0040】
なお、上記実施形態4では、蓄熱容器7を幅方向において電池3を挟んで対向して設けたがこれに限定されるものではなく、全ての電池3を囲うように形成されていてもよい。
【0041】
また、上記実施形態4では、内部熱伝導板71の一方の端部71aを蓄熱容器7から内部空間2aに露出させたがこれに限定されるものではない。
図12は、変形例1に係る車両用電池パックの平面図である。
図12に示すように、車両用電池パック1Eは、内部熱伝導板71の幅方向における両端部を蓄熱容器7の収容空間7a内において、蓄熱容器7に接触させてもよい。この場合、熱伝導板51の両端部51a,51bは、幅方向において各電池3を挟んで対向する各蓄熱容器7にそれぞれ接触させる。本変形例においては、熱伝導板51と蓄熱容器7との接触面積を拡大するために、両端部51a,51bが奥行き方向に延在して形成される。
【0042】
また、上記実施形態4および変形例1では、内部空間2aに蓄熱容器7を設けたがこれに限定されるものではない。
図13は、変形例2に係る車両用電池パックの平面図である。
図13に示すように、車両用電池パック1Fは、蓄熱部材4が蓄熱容器として機能する筐体2に封入される。筐体2には、電池3と熱伝導部材5とにより構成される電池モジュールBMが複数個収容されている。筐体2は、幅方向の両端部に、壁部21により、収容空間2cがそれぞれ形成される。筐体2は、収容空間2cに蓄熱部材4とともに内部熱伝導板22が形成される。収容空間2cは、筐体2の奥行き方向における両端部まで形成される。つまり、収容空間2cは、奥行き方向に配列された複数の電池モジュールBMと幅方向において対向して形成される。内部熱伝導板22は、表面積を拡大するために奥行き方向に向かって波状に形成され、奥行き方向における両端部が収容空間2c内において筐体2と接触する。熱伝導板51の両端部51a,51bは、幅方向において収容空間2cと対向する筐体2の内壁面2bとそれぞれ接触する。本変形例においては、熱伝導板51と筐体2との接触面積を拡大するために、両端部51a,51bが奥行き方向に延在して形成される。
【0043】
また、上記実施形態1〜4および変形例1〜2では、熱伝導板51の幅方向における両端部51a,51bが蓄熱部材4と熱的に接続されているが、これに限定されるものではない。
図14は、変形例3に係る車両用電池パックの平面図である。
図14に示すように、車両用電池パック1Gの熱伝導部材5は、奥行き方向において、第1配列方向電池群BGを挟み、第1配列方向電池群BGと熱的に接続される第1熱伝導板53と第2熱伝導板54を有している場合に、各熱伝導板53,54の幅方向における一方の端部53a,54bが自由端であり、他方の端部53b,54aが蓄熱部材4と熱的に接続されていてもよい。本変形例においては、第1熱伝導板53および第2熱伝導板54が蓄熱部材4と接触することで熱的に接触するが、蓄熱部材4と接触する端部の方向が第1熱伝導板53と第2熱伝導板54とで異なる。つまり、各電池3は、熱伝導板53,54の一方で幅方向における一方にて蓄熱部材4と接触し、熱伝導板53,54の他方で幅方向における他方にて蓄熱部材4と接触する。従って、電池3を挟む各熱伝導板53,54は、蓄熱部材4に熱が移動する方向が反対方向となる。ここで、熱伝導板53,54が幅方向における一方の端部のみで蓄熱部材4と接触する場合は、蓄熱部材4から熱的に離れている電池3で発生する熱が蓄熱部材4に伝熱されにくくなる。しかしながら、本変形例においては、電池3で発生する熱を、熱伝導板53,54のうち電池3から見て熱的に蓄熱部材4に近い熱伝導板により蓄熱部材4に伝熱させることができる。これにより、一列に配列された複数の電池3の温度を均一化することができ、一部の電池3が高温状態を維持することで生じる、各電池3間の内部抵抗の変化や劣化量の変化を抑制することができる。
【0044】
また、上記実施形態1〜4および変形例1〜3では、電池3を円筒型としたがこれに限定されるものではない。
図15は、変形例4に係る車両用電池パックの平面図である。
図16は、変形例4に係る車両用電池パックの要部断面図である。なお、
図16は、車両用電池パック1Hの内部空間2aを奥行き方向から見た図である。
【0045】
車両用電池パック1Hの電池8は、
図15および
図16に示すように、上下方向から見た場合に、矩形状であり、本変形例では平板状に形成されている。筐体2には、複数個の電池8が収容されている。本実施形態における筐体2には、内部空間2aに奥行き方向に積層された複数個の電池8と、上下方向に積層された複数個の電池8が収容される。奥行き方向に積層された複数個の電池8は、奥行き方向において熱伝導板55に挟まれて、各熱伝導板55に熱的に接続されている。熱伝導板55は、幅方向における一方の端部55aが蓄熱部材4の内部に位置して形成され、蓄熱部材4と熱的に接続される。上下方向に積層された複数個の電池8は、上下方向において隣り合う電池8と熱伝導板56を挟み、各熱伝導板56に熱的に接続されている。熱伝導板56は、奥行き方向における一方の端部56aが蓄熱部材4の内部に位置して形成され、蓄熱部材4と熱的に接続される。なお、熱伝導板56は、蓄熱材と熱的接続されるのであれば、筐体2に対して保持するための板保持部材を兼ねた板に限らず、シート、箔などにより構成されても良い。