【実施例】
【0016】
図1に示すように、基台11の上面には、2つの支持部材12が対向するように立設しており、これらの支持部材12には、軸受13がそれぞれ設けられている。そして、ボールねじ軸(ねじ軸)14の軸方向両端部は、軸受13を介して支持部材12に回転可能に支持されている。更に、ボールねじ軸14には、ボールねじナット(ナット部材)15が螺合されており、このボールねじナット15は、移動体16の下部に嵌合されている。
【0017】
なお、移動体16は、ボールねじ軸14と平行となる案内溝(図示省略)に、軸方向に沿って摺動可能に支持されている。従って、ボールねじ軸14を回転させることにより、ボールねじナット15を軸方向に向けて移動させることができる。これにより、移動体16を軸方向に沿って往復移動させることができる。即ち、移動体16に対して、軸方向への送りを与えることができる。
【0018】
また、基台11の上面には、振れ止め機構20が、ボールねじ軸14及びボールねじナット15の下方に亘って設けられている。この振れ止め機構20は、ボールねじ軸14に発生する振れ回りを抑制する振れ止め機能を有するだけでなく、ボールねじナット15が軸方向に向けて通過する際に、当該ボールねじナット15との衝突を回避するための衝突回避機能についても有している。
【0019】
次に、振れ止め機構20の構成及び動作について、
図1乃至
図7を用いて詳細に説明する。
【0020】
図2乃至
図7に示すように、振れ止め機構20の下部には、底板21が設けられており、この底板21は、基台11の上面に固定されている。そして、底板21の上面における板幅方向両側部(軸方向両側部)には、左右一対の可動部材22が設けられている。
【0021】
また、底板21の上面における軸方向中央部には、ガイドレール23が径方向に延設されている。一方、可動部材22の下面には、摺動部材24が設けられており、この摺動部材24は、ガイドレール23に径方向に沿って摺動可能に支持されている。つまり、可動部材22は、ボールねじ軸14の回転軸を中心として、その径方向両側にそれぞれ配置されると共に、その径方向において接近離間するように移動可能となっている。
【0022】
更に、底板21の上面における板幅方向両側部には、左右二対のガイドロッド25が径方向に延設されており、各組のガイドロッド25は、ガイドレール23の軸方向両側に配置されている。このとき、板幅方向一方側に位置する二対(組)のガイドロッド25と、板幅方向他方側に位置する二対(組)のガイドロッド25とは、軸方向においてそれぞれ同じ位置に配置されている。そして、径方向において対向する各組のガイドロッド25は、同軸状に配置されると共に、先端面同士がストッパ部材26を介して連結されている。
【0023】
これに対して、可動部材22の下面には、2つの縦板22aが軸方向に並んで下垂されている。これらの縦板22aは、二対のガイドロッド25に対応して設けられており、各縦板22aには、対応するガイドロッド25が径方向に貫通している。また、径方向一方側に位置する可動部材22の縦板22aと、径方向他方側に位置する可動部材22の縦板22aとは、ストッパ部材26を径方向両側から挟み込むように配置されており、当該ストッパ26に対して径方向外側から当接可能となっている。
【0024】
そして、ガイドロッド25の周囲には、ばね(付勢手段)27が径方向(ガイドロッド25の軸方向)に伸縮可能に設けられている。つまり、ばね27は、底板21と可動部材22の縦板22aとの間において、圧縮状態で介在されており、可動部材22を常に径方向内側に向けて付勢している。
【0025】
また、可動部材22の上面には、ローラ支持部材22bが立設されている。このローラ支持部材22bには、振れ止めローラ31が回転可能に支持されており、当該振れ止めローラ31の回転軸は、ボールねじ軸14の回転軸と平行で、且つ、ボールねじ軸14の回転軸よりも下方に位置している。つまり、振れ止めローラ31は、ボールねじ軸14の回転軸を中心として、その径方向両側にそれぞれ配置されており、可動部材22と共にその径方向において接近離間するように移動可能となっている。
【0026】
そこで、
図2乃至
図4に示すように、振れ止めローラ31同士が最も接近すると、各振れ止めローラ31の外周面は、ボールねじ軸14の下側半円部における左右片側外周面に対して、径方向外側からそれぞれ接触する。これにより、振れ止めローラ31は、ボールねじ軸14に対して、径方向両側から挟持するように転がり接触することになり、当該ボールねじ軸14に発生する振れ回りを抑制することができる。即ち、振れ止めローラ31同士が径方向において最も接近する径方向位置は、振れ止めローラ31がボールねじ軸14に転がり接触してその振れ回りを抑制することができる、接触位置P1となっている。
【0027】
また、
図3に示すように、各振れ止めローラ31が接触位置P1にそれぞれ位置決めされた場合には、各振れ止めローラ31がボールねじ軸14に対して連れ回りをする回転方向が、互いに逆方向となるため、2つの振れ止めローラ31の外周面同士は、接触していない。即ち、2つの振れ止めローラ31の外周面間には、径方向における所定量の微小隙間が形成されている。これにより、振れ止めローラ31は、ボールねじ軸14に対して、所定の接触角度θを有して接触することになる。なお、接触角度θとは、ボールねじ軸14の回転軸を通る垂線と、ボールねじ軸14の回転軸と振れ止めローラ31の回転軸とを結ぶ線分とがなす、交差角度のことである。
【0028】
更に、
図3に示すように、各振れ止めローラ31が接触位置P1にそれぞれ位置決めされると、ボールねじ軸14の自重による鉛直方向下向きの荷重は、2つに等分割され、等分割荷重Fとして、各振れ止めローラ31に作用する。つまり、等分割荷重Fは、ボールねじ軸14の回転軸から振れ止めローラ31の回転軸に向けて作用する力であって、鉛直方向下向きの分力f1と、水平方向外向きの分力f2との合力となっている。
【0029】
そして、二対のばね27における径方向内側への付勢力は、分力f2と同じ大きさで、且つ、分力f2の作用方向とは逆向きに作用するものとなっている。即ち、1つのばね27の付勢力は、分力f2の半分となっている。
【0030】
一方、
図5乃至
図7に示すように、振れ止めローラ31同士が最も離間すると、各振れ止めローラ31の外周面は、ボールねじ軸14の下側半円部における左右片側外周面に対して、径方向外側に向けてそれぞれ離間する。これにより、振れ止めローラ31は、ボールねじ軸14の回転に伴って移動するボールねじナット15が通過する場合であっても、当該ボールねじナット15との衝突を回避することができる。即ち、振れ止めローラ31同士が径方向において最も離間する径方向位置は、振れ止めローラ31が接触位置P1から径方向外側に退避してボールねじナット15との衝突を回避することができる、退避位置P2となっている。
【0031】
更に、
図2乃至
図7に示すように、可動部材22の上面には、開閉ローラ(開閉部材)32が回転可能に支持されている。開閉ローラ32は、振れ止めローラ31におけるローラ軸方向中間部の直下に配置されており、当該開閉ローラ32の回転軸は、ボールねじ軸14の回転軸及び振れ止めローラ31の回転軸と直交する鉛直軸となっている。つまり、開閉ローラ32は、ボールねじ軸14の回転軸を中心として、その径方向両側にそれぞれ配置されており、径方向において接近離間するように開閉可能となっている。なお、2つの開閉ローラ32の外周面同士は、接触していても、接触していなくても、どちらでも構わない。
【0032】
これに対して、
図1に示すように、ボールねじナット15の下方には、ドッグ部材(衝突回避部材)40が設けられている。このドッグ部材40は、平板多角形状をなしており、端面(後述する、側端面41a、頂部42a、及び、傾斜端面42b)が水平となるように移動体16の下面に設置されている。
【0033】
ここで、
図2及び
図5に示すように、ドッグ部材40は、平面視で見ると、軸方向中央部(長手方向中央部)に位置する矩形部41と、この矩形部41の軸方向両端部に位置する三角部42とから構成されている。
【0034】
図2乃至
図7に示すように、矩形部41の板幅方向両側部には、側端面(側面)41aが形成されている。これらの側端面41aは、軸方向に延在すると共に、開閉ローラ32の外周面と同じ高さに配置されており、板幅方向一端側の側端面41aと板幅方向他端側の側端面41aとの間における板幅方向距離、即ち、ドッグ部材40の幅は、ボールねじナット15の最大外径よりも幅広となっている。そして、側端面41aには、開閉ローラ32が軸方向に向けて転動可能となっており、このように、開閉ローラ32が側端面41a上を転動している期間においては、振れ止めローラ31が退避位置P2に位置決めされる。
【0035】
一方、
図1乃至
図7に示すように、三角部42には、頂部42aと、この頂部42aを中心としてその板幅方向両側部に位置する傾斜端面(傾斜側面)42bとが形成されている。これらの頂部42a及び傾斜端面42bは、開閉ローラ32の外周面と同じ高さに配置されている。
【0036】
頂部42aは、ドッグ部材40全体の軸方向先端部となる部位であって、ドッグ部材40の板幅方向中心部に位置すると共に、径方向において、開閉ローラ32間の径方向中心位置と同じ位置に配置されている。つまり、頂部42aは、開閉ローラ32間に進入可能となっている。そして、軸方向一方側の三角部42の頂部42aと軸方向他方側の三角部42の頂部42aとの間における軸方向距離、即ち、ドッグ部材40の軸方長さは、ボールねじナット15の軸方向長さよりも長くなっている。
【0037】
また、傾斜端面42bは、頂部42aと側端面41aとを繋ぐ面であって、頂部42aから側端面41aに向かうに従って、板幅方向外側に向けて漸次傾斜している。つまり、傾斜端面42bは、軸方向と斜めに交差する傾斜方向に延在している。そして、傾斜端面42bには、開閉ローラ32が上記傾斜方向に向けて転動可能となっている。
【0038】
このように、開閉ローラ32が傾斜端面42b上を頂部42a側から側端面41a側に向けて転動している期間においては、振れ止めローラ31が接触位置P1側から退避位置P2側に向けて移動する。逆に、開閉ローラ32が傾斜端面42b上を側端面41a側から頂部42a側に向けて転動している期間においては、振れ止めローラ31が退避位置P2側から接触位置P1側に向けて移動する。
【0039】
以上より、
図1に示すように、ボールねじ軸14を正転させたり、逆転させたりすることにより、ボールねじナット15を軸方向に向けて移動させることができる。これにより、移動体16に対して、軸方向への送りを与えることができる。
【0040】
このとき、移動体16を高速で移動させるために、ボールねじ軸14の回転速度が、当該ボールねじ軸14に振れ回りを発生させる危険速度に到達した場合であっても、ボールねじ軸14に対して、振れ止めローラ31が、接触角度θを有して径方向外側から下支えするように、転がり接触しているため、当該ボールねじ軸14に発生する振れ回りを抑制することができる。
【0041】
即ち、振れ止め機構20においては、可動部材22が、ばね27の付勢力によって径方向内側に向けて付勢されて、ストッパ部材26に押し付けられているため、振れ止めローラ31が接触位置P1に位置決めされる。これにより、振れ止めローラ31がボールねじ軸14を径方向両側から挟持することになり、当該ボールねじ軸14に発生する振れ回りが抑制される。
【0042】
ここで、ボールねじ軸14の回転に伴って、ボールねじナット15が移動して振れ止めローラ31に近づいていくと、最終的に、ボールねじナット15が振れ止めローラ31に衝突してしまう。しかしながら、振れ止め機構20においては、ボールねじナット15の下方にドッグ部材40を設けているため、それらの衝突を回避しつつ、ボールねじナット15を、減速させたり、停止させたりすることなく、その移動速度を維持した状態で移動させることができる。
【0043】
この点について詳細に説明すると、
図2乃至
図4に示すように、ボールねじナット15が振れ止めローラ31に近づいていくと、先ず、ドッグ部材40における先行する三角部42の頂部42aが、開閉ローラ32間に到達した後、それらの間に進入する。
【0044】
これと同時に、開閉ローラ32が傾斜端面42b上を転がり始めるため、当該開閉ローラ32は、互いに径方向外側に向けて徐々に開く。これにより、開閉ローラ32を支持する可動部材22は、ばね27の付勢力によってストッパ部材26に押し付けられた状態から、そのばね27の付勢力に抗して、径方向外側に向けて徐々に移動する。これに伴って、振れ止めローラ31は、接触位置P1から退避位置P2に向けて移動する。
【0045】
次いで、
図5乃至
図7に示すように、ボールねじナット15が移動して、ドッグ部材40が突き進むと、先行する三角部42が開閉ローラ32間を通過した後、矩形部41が開閉ローラ32間に進入する。
【0046】
これと同時に、開閉ローラ32が傾斜端面42b上から側端面41a上を転がり始めるため、当該開閉ローラ32は、互いに最も径方向外側に位置する全開状態となる。これにより、開閉ローラ32を支持する可動部材22は、ばね27の付勢力に抗して、最も径方向外側に向けて移動した状態となる。これに伴って、振れ止めローラ31は、退避位置P2に位置決めされる。
【0047】
そして、ボールねじナット15が振れ止めローラ31間を軸方向に向けて通過する。このとき、ボールねじナット15と共に移動するドッグ部材40の矩形部41が、開閉ローラ32間を通過して、振れ止めローラ31を退避位置P2に位置決めさせているため、ボールねじナット15は、振れ止めローラ31に衝突することなく、当該振れ止めローラ31間を通過する。
【0048】
続いて、ボールねじナット15が更に移動して、ドッグ部材40が更に突き進むと、矩形部41が開閉ローラ32間を通過した後、後続する三角部42が開閉ローラ32間に進入する。
【0049】
これと同時に、開閉ローラ32が側端面41a上から傾斜端面42b上を転がり始めるため、当該開閉ローラ32は、互いに径方向内側に向けて徐々に閉じる。これにより、開閉ローラ32を支持する可動部材22は、ばね27の付勢力によって、径方向内側に向けて徐々に移動する。これに伴って、振れ止めローラ31は、退避位置P2から接触位置P1に向けて移動する。
【0050】
最後に、ボールねじナット15がまた更に移動して、ドッグ部材40がまた更に突き進むと、後続する三角部42の頂部42aが開閉ローラ32間を通過する。
【0051】
これと同時に、開閉ローラ32は、互いに最も径方向内側に位置する全閉状態となる。これにより、開閉ローラ32を支持する可動部材22は、ばね27の付勢力によって、ストッパ部材26に当接するまで、径方向内側に向けて移動する。これに伴って、振れ止めローラ31は、接触位置P1に位置決めされる。よって、振れ止めローラ31がボールねじ軸14を径方向両側から挟持することになり、当該ボールねじ軸14に発生する振れ回りが抑制される。
【0052】
従って、本発明に係る送り装置によれば、ボールねじ軸14に対して、振れ止めローラ31を、ばね27の付勢力を利用して、径方向両側から挟持するように転がり接触させることにより、ボールねじ軸14に発生する振れ回りを、ボールねじ軸14の自重による荷重に対して十分に小さな付勢力で抑えることができる。これにより、振れ止めローラ31及びこの振れ止めローラを付勢するばね27を小さくすることができるので、装置の小型化を図ることができる。