特許第6787744号(P6787744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787744
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】チタン合金溶製用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/248 20060101AFI20201109BHJP
   C22B 34/12 20060101ALI20201109BHJP
   C22B 9/20 20060101ALI20201109BHJP
   C22B 9/22 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   C22B1/248
   C22B34/12
   C22B9/20
   C22B9/22
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-202529(P2016-202529)
(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公開番号】特開2018-62696(P2018-62696A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明治
(72)【発明者】
【氏名】菅原 智
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−263217(JP,A)
【文献】 特開昭48−071713(JP,A)
【文献】 特開昭61−009529(JP,A)
【文献】 特開昭54−083612(JP,A)
【文献】 特開昭62−267433(JP,A)
【文献】 特開平03−253521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンと、融点が668℃以下の金属(以下、低融点金属と称する)とを含むブリケットの製造方法であって、
前記ブリケットは、低融点金属材料の層を複数備え、
前記方法は、
低融点金属材料の周囲をチタン材料が覆うように配置する第一工程と、
前記第一工程後に圧縮を行い、成型体を得る第二工程と、
前記第二工程後に、前記成型体上に、低融点金属材料の周囲をチタン材料が覆うように更に配置する第三工程と、
前記第三工程の後に圧縮を行い、成型体を得る第四工程と
を含む、該方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記第三工程と第四工程を繰り返し行うことを含む、該方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法であって、低融点金属材料が粉粒体である、該方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、低融点金属材料が、アルミニウム、スズ、又はこれらの合金である、該方法。
【請求項5】
チタン合金溶製用電極の製造方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で得られた複数のブリケットを互いに接合する工程を含む、該方法。
【請求項6】
チタン合金のインゴットの製造方法であって、請求項5の方法で得られた電極を用いて真空アーク溶解または電子ビーム溶解を行う工程を含む、該方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン合金溶製用電極の製造方法に関する。より具体的には、チタンよりも融点が低い金属を含むチタン合金溶製用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空アーク溶解法(VAR)に用いられるチタン合金溶製用電極としては、例えば、粒状のスポンジチタン金属と粒状の合金成分の混合粉末を圧縮成型したブリケットを、溶接等により接合した消耗電極が用いられている。
【0003】
このような方法で製造された消耗電極は、スポンジチタン金属と合金成分の原料粒の形状や熱膨張率の違いにより、溶解中に電極表面に露出している合金原料粒が脱落するといった問題点があった。
【0004】
特に、合金成分の融点がチタンより低い場合は、合金成分の原料粒がスポンジチタン金属に比べ早く溶け落ちた結果、溶融プールから多量の合金成分の蒸気が生成することに起因する電圧ドロップにより、チタン合金の鋳肌に溶損が生じる問題点があった。
【0005】
また、合金成分がアルミニウムやスズといった柔らかい低融点金属の場合、ブリケットの圧縮成型時に成型型と成型治具とが固着するといった問題点があった。
【0006】
これらの問題点に対して、特許文献1には、高融点金属と低融点金属からなる合金インゴット溶製用消耗電極において、前記合金インゴット溶製用消耗電極を構成するブリケット内で、前記低融点金属が前記高融点金属中に層状に分散配置され、且つ前記低融点金属が前記ブリケットの表面に現れないように配設したことを特徴とする合金インゴット溶製用消耗電極が開示されている。この消耗電極を用いることにより、得られる合金インゴット中の合金組成の均一性が向上し、組成の均一な合金インゴットを製造することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−263217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低融点金属の配合量を多くした場合、プレス成型の際に成型型と低融点金属が競りあった結果、プレス成型作業の中断を余儀なくされることがある。また、強度が不均一となり易い為、消耗電極を作製する最中にブリケットが破損したり、溶解炉に消耗電極をセットする最中や溶解中に電極が落下したりする可能性が高くなる。そこで、本発明は、低融点金属の配合量を多くした場合であっても、強度を従来よりも向上させたブリケットや消耗電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明者が鋭意検討した結果、低融点金属材料を積層させるたびに圧縮を行うことで、ブリケット全体の強度の均一性を確保できることを見出した。これに基づいて本発明は以下のように特定される。
(発明1)
チタンと、チタンよりも融点が低い金属(以下、低融点金属と称する)とを含むブリケットの製造方法であって、
前記ブリケットは、低融点金属材料の層を複数備え、
前記方法は、
低融点金属材料の周囲をチタン材料が覆うように配置する第一工程と、
前記第一工程後に圧縮を行い、成型体を得る第二工程と、
前記第二工程後に、前記成型体上に、低融点金属材料の周囲をチタン材料が覆うように更に配置する第三工程と、
前記第三工程の後に圧縮を行い、成型体を得る第四工程と
を含む、該方法。
(発明2)
発明1の方法であって、前記第三工程と第四工程を繰り返し行うことを含む、該方法。
(発明3)
発明1又は2の方法であって、低融点金属材料が粉粒体である、該方法。
(発明4)
発明1〜3のいずれか1つに記載の方法であって、低融点金属材料が、アルミニウム、スズ、又はこれらの合金である、該方法。
(発明5)
チタン合金溶製用電極の製造方法であって、発明1〜4のいずれか1つに記載の方法で得られた複数のブリケットを互いに接合する工程を含む、該方法。
(発明6)
チタン合金のインゴットの製造方法であって、発明5の方法で得られた電極を用いて真空アーク溶解または電子ビーム溶解を行う工程を含む、該方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ブリケットの中心部に低融点金属を分散配置させる。その結果、成型型と低融点金属との競りが起こらず、安定したプレス成型作業を進めることができる。また、一側面において、低融点金属の層を形成するたびに圧縮を行う。これにより、強度が不均一とならず、材料全体として強度が向上し、電極の破損や折損事故等の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本願発明に係るブリケットの好ましい構成例を模式的に表した図である。
図2図2は、型内における低融点金属の原料層の配置を上方から模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、本発明の理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0013】
1.ブリケットの製造方法
本発明に係るブリケットは、低融点金属原料をチタンの粉粒体で包んだ状態で圧縮成型したものを指す。
【0014】
1−1.ブリケットの構造
図1は、一実施形態における本発明の成型後のブリケットの構造を表す。高融点金属材料の内部(例えば、図1のスポンジチタン)に、低融点金属材料(図1の合金材料)の層を少なくとも複数(例えば3層)設けることができる。層の数については特に制限されないが、作業効率の観点からは5層以下、より好ましくは3層以下が好ましい。
【0015】
低融点金属材料のプレス成型前の層の厚さは、特に限定されないが、3cm以下とすることが好ましい。この範囲とすることで、ブリケットの強度を高くすることができるとともに、得られるインゴットの組成均一性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の方法において、圧縮成型後のブリケットの嵩密度は、3〜4g/cm3とすることが好ましい。なお、嵩密度は、ブリケットの重量をブリケットの寸法よりもとめた体積で除算した値である。この範囲とすることで、ブリケットの製造歩留まりが向上し、また、ブリケット強度を高くすることができ、消耗電極の運搬中、溶解炉に消耗電極をセットする最中の消耗電極の折損や、溶解中の溶解電極の落下を抑制することができる。更には、型等の成型に使用する治具の破損を防ぐことができる。
【0017】
また、図2では、低融点金属材料の層の断面と、周辺のチタン材料の断面が、いずれも矩形となっているが、両者の断面形状は同一である必要はない。例えば、低融点金属材料の断面が円形で且つ周辺のチタン材料の断面が矩形でもよいし、或いはその逆であってもよい。
【0018】
1−2.高融点金属材料
前記高融点金属材料はチタンである。前記材料は、典型的には、粉粒状で提供される。より典型的には、スポンジチタンやアトマイズチタン等の顆粒状で提供される。スポンジチタンとは、クロール法により製造されたスポンジ形状のチタンを意味し、純度に応じてJIS1種〜4種まである。本発明で使用するスポンジチタンは、どの純度でも使用可能である。
【0019】
チタン粉粒体の粒度としては、特に限定されないが、0.85mm〜19.1mm(=3/4インチ)程度でよい。こうした範囲の粉粒体は、目開き19.1mmと目開きが0.85mmの篩で篩別した時の、目開き19.1mmの篩と目開き0.85mmの篩間の粒度のスポンジチタンから得ることができる。
【0020】
また、チタンの粉粒体中には、低融点金属を除く合金成分金属を含んでいても良い。例えば、低融点金属を除く合金成分金属としては、鉄、クロム、バナジウム、モリブデンあるいはニッケルなどがある。また、チタンの粉粒体中には、酸素源として酸化チタンや酸化鉄等の金属酸化物が含まれていても良い。
【0021】
チタン及び低融点金属を除く他の合金成分の配合量については、特に限定されないが、上記チタンの重量に対して(チタン合金の場合には、チタン自体の重量に対して)、0重量%〜20重量%(好ましくは0重量%〜10重量%)である。
【0022】
また、チタンと低融点金属とを除く他の合金成分の形状は、上記チタンと同様、粉粒状で提供することができる。こうした他の合金成分の粒度としては、特に限定されないが、0.1mm〜30mm程度でよい。
【0023】
1−3.低融点金属材料
低融点金属は、チタンより1000℃以上融点が低い金属を意味する(例、アルミニウム、スズ、又はこれらの合金など)。即ち、チタンの融点が1668℃なので、融点が668℃以下の金属を意味する。
【0024】
また、低融点金属の量は、金属チタン重量に対して(チタン合金の場合には、チタン自体の重量に対して)、3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。上限値については、特に制限されないが、典型的には8重量%以下である。
【0025】
また、低融点金属材料の形状については、特に限定されず、粉末、条材、低融点金属の粉粒体の積層物、これを圧縮した塊、低融点金属の薄板、低融点金属の細線の塊等が挙げられる。
【0026】
低融点金属材料の形状が粉末である場合には、粒度は、2〜13mmのものが好適である。
【0027】
また、低融点金属材料の形状が板状(例えば粉末をプレス成型等)である場合には、上述した低融点金属材料の厚さ及び周辺部の距離を確保できるようなサイズとすることが好ましい。
【0028】
1−4.製造方法
本発明のブリケットを製造する際には、高融点金属材料と低融点金属材料とを適切に配置することが必要である。より具体的には、低融点金属材料の層の周囲を高融点金属材料が取り囲むように配置することが必要である。典型的には、型などを用いて、このような配置を行うことができる。そして、配置した後は圧縮を行い(圧縮は、通常のプレス機械で行うことができる)、成型体を得ることができる。
プレス成型前の低融点金属厚みの上限値については特に限定されないが3cm以下が好ましく、また、下限値ついては1cm以上が好ましい。また、低融点金属材料のプレス成型前の層同士の間隔は、特に限定されないが、10〜20cmとすることが好ましい。
【0029】
また、図2は、プレス成型後のブリケット(図1)の平面図を表す。図1及び図2に示されるように、合金原料である低融点金属材料の層は、その周囲をチタン材料であるスポンジチタンが覆うように配置することが好ましい。これにより、低融点金属材料がブリケットの表面に現れることを低減又は防止することができる。
【0030】
低融点金属材料の層の端部から型の壁面までの距離は、例えば長方形の型を用いるときは幅の5%〜25%、例えば円形の型を用いるときは、円形の型の直径の5%〜25%とすることが好ましい。図2の場合、低融点金属の原料層の端部から型の壁面までの距離は、長辺側は短辺長(L)の5%〜25%、短辺側は長辺長(W)の5%〜25%が好ましい範囲である。これにより、低融点材料が型からはみ出して型と競るような事態を効果的に回避することができる。また、ブリケットの強度を高くすることができるとともに、得られるインゴットの組成均一性を向上させることができる。
【0031】
各層を構成する低融点金属材料の各層の重量のばらつきは、各層の重量の平均値に対して−10%〜+10%の範囲とすることが好ましく、特に等量とすることが好ましい。
【0032】
成型体を得た後は、更に、該成型体上に、低融点金属材料の周囲を高融点金属材料が取り囲むように、両者を配置し、圧縮を行うことができる。これにより、低融点金属材料の層を更に増やした成型体を得ることができる。
【0033】
また、こうした工程を繰り返すことで、任意の数の低融点金属材料の層を備えるブリケットを得ることができる。
【0034】
こうした配置を実現する方法として、以下の通り幾つかの方法が挙げられる。
(1)仕切板を事前にチタンの粉粒体層の上に載置し、仕切板の内部に低融点金属の原料層を投入、仕切板の外にチタンの粉粒体を低融点金属の原料層より十分に高くなるまで投入した後、仕切板は外し、低融点金属の原料層をチタンの粉粒体で覆う方法
(2)型内の中心のチタンの粉粒体を型内の端に移動した後、低融点金属の原料を中心に投入する方法
(3)低融点金属の原料を予め圧縮成型するなどして大きな塊状にする方法
【0035】
本発明の方法で製造したブリケットは、1つの低融点金属層を積層するごとに圧縮工程を実施する。これにより、単位ブリケットの強度の均一性が高くなる。その結果、当該ブリケットから製造された溶解電極の強度の均一性が高くなる。従って、ブリケットの接合中、消耗電極の運搬中、溶解炉に消耗電極をセットする最中の消耗電極の折損や、溶解中の溶解電極の落下を抑制することができる。
【0036】
2.電極の製造方法
本発明に係る電極とは、このブリケットを複数個接合した接合体を指す。この接合体は、真空または不活性ガス(Ar、Heなど)の雰囲気下でのアーク溶解法などの消耗電極に好適に使用できる。
【0037】
上記の方法で得られた複数のブリケットは、互いに接合させて電極を形成することができる。接合させる方向については、ブリケット内部の低融点金属材料層の面が、電極の長軸と垂直となるように配置することができる。また、接合させる手段については、溶接等従来の方法で行うことができる(例えば、特開2000−87152号公報の図5に示される方法など)。
【0038】
3.電極の使用
上記の方法で得られた電極を利用して、チタン合金のインゴッドを製造することができる。より具体的には、上記の方法で得られた電極は、真空アーク溶解法または電子ビーム溶解法で利用することができる。
【0039】
上記方法で得られるチタン合金のインゴットは、例えば、Ti−5Al−1Fe、Ti−5Al−2Fe−3Mo、Ti−15V−3Al−3Cr−3Snなどが挙げられる。
【0040】
本発明の電極を用いてアーク溶解法によりチタン合金インゴットを作製した場合、電極の破損等は発生しないか又は低減される。そして、溶解中に電圧ドロップは殆ど観察されず、安定した溶解を行うことができる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の例により何ら制限されるものではない。
【0042】
本実施例及び比較例においては、以下の条件で進めた。
1.チタンの粉粒体(以下「スポンジチタン」と略す)を調製した。
(1)品種 :スポンジチタン(JIS1種相当)
(2)粒度 :目開き19.1mmの篩と目開き0.85mmの篩により篩別した時、目開き0.85mmの篩上から得られたスポンジチタン(粒度0.85mm〜19.1mm)
2.続いて、以下の金属をチタンの粉粒体に添加した:
(1)品種 :鉄チップ
(2)サイズ :0.5mm×15mm×15mm
(3)配合比率:スポンジチタンの重量に対し1重量%
3.以下の低融点金属を調製した。
(1)元素 :金属アルミニウム粒
(2)粒度 :6〜13mm
【0043】
実施例1
スポンジチタンに金属鉄を配合した15kgの混合原料を長方形のプレス型内に投入した。その後、前記原料上に仕切りをセットし、低融点金属である金属アルミニウム粒2kgをプレス型に接触しないように投入した。
【0044】
仕切りを外した後、金属アルミニウム粒2kgの外縁がプレス型の壁から、プレス型の幅の95%以下、また金属アルミニウム粒層の厚さが30mm以下であることを確認した後、混合原料15kgを金属アルミニウム粒の原料層の形状をなるべく崩さないように外縁部から徐々に投入し、金属アルミニウム粒の原料層を混合原料で完全に覆った。
【0045】
その後、プレス治具を用いて、圧縮成型した。この圧縮成型体上に、同様に金属アルミニウム粒2kgの層を形成する操作、混合原料15kgの投入する操作、及び圧縮成型する操作を2回繰り返し、図1に模式的に示したブリケットを作製した。作製したブリケットを目視にて、金属アルミニウム粒が、ブリケットの表面に現れていないことを確認した。得られたブリケットの嵩密度は、3.5g/cm3であった。嵩密度は、ブリケットの重量をブリケットの寸法よりもとめた体積で除算した値である。
【0046】
このブリケットを複数個、作製し、相互に接合して消耗電極とし、これを真空アーク溶解炉にて溶解しチタン合金インゴットを得た。
【0047】
得られたブリケットから作製した消耗電極は、搬送する際、真空アーク溶解炉にセットする際や真空アーク溶解炉の溶解中(最大電流32KA、電圧30V程度)での消耗電極の折損事故は発生しなかった。
【0048】
比較例1
最後の圧縮工程を除き、実施例1のアルミニウムの原料層を覆うように混合原料を投入した後の圧縮成型工程を省略して、同様に図1に示すようなブリケットを製造した。実施例1と同様に、消耗電極を作製した。真空アーク溶解炉にて溶解しチタン合金インゴットを得た。ブリケットを接合し消耗電極を作製している際、ブリケットの一部が崩壊した。
【0049】
このように、低融点金属層を積層するたびに圧縮工程を行うことで、電極の強度が向上することが示された。
【0050】
本明細書において、「又は」や「若しくは」という記載は、選択肢のいずれか1つのみを満たす場合や、全ての選択肢を満たす場合を含む。例えば、「A又はB」「A若しくはB」という記載の場合、Aを満たしBを満たさない場合と、Bを満たしAを満たさない場合と、Aを満たし且つBを満たす場合のいずれも包含することを意図する。
【0051】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に提供することができる。また、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、低融点金属の合金成分原料を多く含む、真空アーク溶解法(VAR)に用いられるチタン合金溶製用電極の製造方法に関し、強度が高いチタン合金溶製用消耗電極を歩留まり良く製造する方法を提供することができる。
図1
図2