(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヨークの前記平坦壁における内側面の周方向の幅と、前記マグネットの前記平板における前記ヨーク側の周方向の幅と、が同一長さに設定されていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載のモータ。
前記ヨークは、径方向に沿う断面が多角形状であり、周方向に並ぶ複数の平坦壁を角度が付くように連結してなり、前記平坦壁同士が連結された箇所に屈曲壁を有すると共に、前記平坦壁および前記屈曲壁が偶数個に設定されており、
1つの前記平坦壁の面方向と前記出力軸の軸方向とが直交していることを特徴とする請求項8に記載の減速機付モータ。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用のパワーウインドウ駆動用のモータとして、ブラシ付きのモータが用いられる。この種のモータは、筒状のヨークの内周面に、複数のセグメント型のマグネットを周方向に配置している。各マグネットは、ヨークの内周面に、例えば、接着剤等を用いて固定されている。
【0003】
また、ブラシ付きのモータは、ヨークの径方向中央に、アーマチュアが回転自在に支持されている。アーマチュアは、回転軸と、回転軸に外嵌固定されコイルが巻回されているアーマチュアコアと、回転軸にアーマチュアコアと隣接するように外嵌固定されたコンミテータと、を備えている。このコンミテータに、コイルが接続されていると共に、ブラシが摺接されている。
ブラシは、外部電源に電気的に接続されている。そして、ブラシ、コンミテータを介してコイルに電流が供給されると、アーマチュアコアに磁界が発生する。この磁界とヨークのマグネットとの間で磁気的な吸引力や反発力が作用し、アーマチュアが継続的に回転する。
【0004】
ところで、ヨークへのマグネットの固定工数や、部品点数を減少させるために、1つのセグメント型のマグネットの同一面上に2極着磁して、マグネットの個数自体を減少させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、マグネットを、製造コストが比較的抑えられる平板状とし、この平板状のマグネットを固定できるように、ヨークの径方向に沿う断面を多角形状とする技術が開示されている。これによれば、マグネットの製造コストを抑えられるだけでなく、マグネットを平板状に形成することにより、マグネットの周方向中央から周方向両端に向かうに従ってアーマチュアコアとの間の距離を徐々に長くできる。このため、マグネットとマグネットとの間における磁束の急激な変化がアーマチュアコアに及ぼす影響を低減でき、コギングトルクを低減できる(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1にあっては、ヨークの径方向に沿う断面が円形であって、自動車用のパワーウインドウ駆動用のモータのように設置スペースの問題から薄型化が要求されるような用途としては小型化の面で不利になることと、マグネットを円弧状に形成する必要があり、製造コストを効果的に低減できるとはいいにくい。また、マグネットの周方向の全てにおいて、アーマチュアコアとの距離が等しくなる。これに加え、1つのマグネットに着磁されている2つの磁極の間と、マグネット間の隙間と、の周方向の幅を同一寸法に設定しにくい。このため、周方向での磁束の変化のばらつきが大きくなり、コギングトルクを低減しにくい可能性があった。
【0008】
また、近年、モータの高出力化の要望に伴い、ヨークの磁極も多極化の傾向にある。ここで、上述の特許文献2にあっては、マグネットの個数が増大する分、ヨークへのマグネットの固定工数が増大してしまう。また、マグネットの個数が増大する分、ヨークに接着固定したマグネットの剥離の可能性も高くなってしまい、モータが動作不良を起こす可能性があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、製造コストを低減でき、且つコギングトルクを低減でき、さらに、マグネットの剥離による動作不良を防止することができ、さらに、レイアウト性も高めるモータ
および減速機付モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るモータ
は、磁性材からなる筒状のヨーク
、および前記ヨークの内周面に設けられる複数のマグネット
を有するモータケースと、
前記モータケース内に回転自在に軸支される回転軸と、前記回転軸に外嵌固定されたアーマチュアコアと、を備え、前記マグネットは、少なくとも2つの平板を前記ヨークの内周面に沿って角度が付くように連結してなり、前記平板同士が連結された箇所に屈曲部
と、周方向両端における前記ヨークの前記内周面側に設けられ、前記周方向両端に向かうに従って徐々に前記ヨークの前記内周面から離間するように形成された逃げ部と、を有し、且つ、各前記平板の一面が全て同一磁極となるように着磁されていると共に、周方向に隣り合う各前記平板の同一面の磁極が異なるように着磁されており、且つ、磁極の境界が前記屈曲部に位置し
、前記複数のマグネットのそれぞれと前記アーマチュアコアとの距離が、前記平板の中央から前記屈曲部および前記逃げ部に向かうに従って徐々に大きくなることを特徴とする。
【0011】
このように、マグネットを、複数の平板を連結して形成することにより、マグネットを湾曲形成する場合と比較して製造コストを減少させつつ、マグネットの総数も減少させることができる。このため、モータの製造コストを低減できる。
また、磁極数を増大させてもヨークへのマグネットの固定工数を抑えることができるので、マグネットの剥離の可能性も低くなり、モータの動作不良を抑制できる。
さらに、平板の一面が全て同一磁極となるように着磁されていると共に周方向に隣り合う磁極が異なるように着磁されている。これに加え、磁極の境界が屈曲部に位置している。このため、同一磁極において、磁極の周方向中央から周方向両端に向かうに従ってアーマチュアコアとの間の距離を徐々に長くできる。このため、モータのコギングトルクを低減できる。
【0012】
本発明に係るモータ
において、前記ヨークは、径方向に沿う断面が多角形状であり、周方向に並ぶ複数の平坦壁を角度が付くように連結してなり、前記平坦壁同士が連結された箇所に屈曲壁を有し、前記マグネットは、前記屈曲部と前記屈曲壁とが径方向で重なるように設けられていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、ヨークの屈曲壁とマグネットの屈曲部とを重ね合わせるだけで、ヨークに対するマグネットの周方向の位置決めを行うことができる。つまり、ヨークの角とマグネットの角を合わせるだけでヨークに対する周方向の位置決めを容易に行うことができるので、ヨークへのマグネットの固定作業を簡素化できる。
【0014】
本発明に係るモータ
は、前記平坦壁の内側面に、前記マグネットの前記平板が設けられていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、ヨークの内側面とマグネットとの接触面積をできる限り大きく設定することができる。このため、ヨークにマグネットを確実に固着させることができる。
【0016】
本発明に係るモータ
は、前記マグネットの前記屈曲部の外角をAとし、前記ヨークの前記屈曲壁の内角をBとしたとき、前記外角Aおよび前記内角Bは、A+B=360°を満たすように設定されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、ヨークの内側面とマグネットとを確実に密接させることができる。このため、ヨークにマグネットをより確実に固着させることができる。
【0018】
本発明に係るモータ
は、前記ヨークの前記平坦壁における内側面の周方向の幅と、前記マグネットの前記平板における前記ヨーク側の周方向の幅と、が同一長さに設定されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、ヨークの所定の1つの屈曲壁とマグネットの所定の1つの屈曲部との位置を合わせた際に、ヨークの他の屈曲壁とマグネットの他の屈曲部との位置がずれてしまうことを防止できる。このため、ヨークの内側面とマグネットとをより確実に密接させることができる。
【0020】
本発明に係るモータ
は、前記ヨークの内面に、前記平板の個数が3個に設定された前記マグネットを2つ設け、磁極数を6極に設定したことを特徴とする。
この場合、前記ヨークの内面に、前記平板の個数が2個に設定された前記マグネットを3つ設け、磁極数を6極に設定してもよい。
【0021】
このように構成することで、ヨークを多極化しつつマグネットの個数を減少でき、モータの製造コストを低減できる。
【0022】
本発明に係る減速機付モータは、上記に記載のモー
タと、
前記
回転軸の回転力を受けて駆動し、出力軸から動力を出力する減速機部と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、製造コストを低減でき、且つコギングトルクを低減可能な減速機付モータを提供できる。また、動作不良を防止することが可能な減速機付モータを提供できる。
【0024】
本発明に係る減速機付モータにおいて、前記ヨークは、径方向に沿う断面が多角形状であり、周方向に並ぶ複数の平坦壁を角度が付くように連結してなり、前記平坦壁同士が連結された箇所に屈曲壁を有すると共に、前記平坦壁および前記屈曲壁が偶数個に設定されており、1つの前記平坦壁の面方向と前記出力軸の軸方向とが直交していることを特徴とする。
【0025】
このように構成することで、出力軸方向でヨークの平坦壁が対向することになる。この平坦壁は、出力軸と直交する方向に面している。ここで、偶数の多角形状のヨークは、対向する2つの平坦壁間の距離が、対向する2つの屈曲壁間の距離も短くなる。このため、出力軸と直交する方向のヨークの占有幅をできる限り狭く設定できる。すなわち、出力軸と直交する方向において、ヨークを薄型化(扁平化)できるので、減速機付モータのレイアウト性を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、マグネットを、複数の平板を連結して形成することにより、マグネットを湾曲形成する場合と比較して製造コストを減少させつつ、マグネットの総数も減少させることができる。このため、モータの製造コストを低減できる。
また、磁極数を増大させてもヨークへのマグネットの固定工数を抑えることができるので、マグネットの剥離の可能性も低くなり、モータの動作不良を抑制できる。
さらに、平板の一面が全て同一磁極となるように着磁されていると共に周方向に隣り合う磁極が異なるように着磁されている。これに加え、磁極の境界が屈曲部に位置している。このため、同一磁極において、磁極の周方向中央から周方向両端に向かうに従ってアーマチュアコアとの間の距離を徐々に長くできる。このため、モータのコギングトルクを低減できる。
【0027】
また、出力軸方向でヨークの平坦壁が対向することになる。この平坦壁は、出力軸と直交する方向に面している。ここで、偶数の多角形状のヨークは、対向する2つの平坦壁間の距離が、対向する2つの屈曲壁間の距離も短くなる。このため、出力軸と直交する方向のヨークの占有幅をできる限り狭く設定できる。すなわち、出力軸と直交する方向において、ヨークを薄型化(扁平化)できるので、減速機付モータのレイアウト性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(減速機付モータ)
図1は、減速機付モータ1の外観を示す斜視図である。
同図に示すように、減速機付モータ1は、例えば、車両のパワーウインドウ装置等に用いられるものである。減速機付モータ1は、一面が開口された略箱状のケーシング10と、ケーシング10の開口を閉塞するように設けられたカバー8と、ケーシング10の一端側に設けられたモータ部30と、モータ部30に連結され、大部分がケーシング10内に収容された減速機部60と、を備えている。
【0031】
(ケーシング)
ケーシング10の外周部には、モータ部30の一部を収容するモータ収容部16が形成されている。このモータ収容部16の近傍に、ボルト挿通孔18hが形成されている。また、ケーシング10の外周部には、2つの凸部18が間隔をあけて形成されている。これら凸部18にも、ボルト挿通孔18hが形成されている。すなわち、ボルト挿通孔18hは、合計3つ形成されており、それぞれ周方向に略等間隔で配置されている。ボルト挿通孔18hには、車体にケーシング10を固定するためのボルト(不図示)が挿通される。
また、ケーシング10の外周部には、複数の係止突起10aが間隔をあけて形成されている。これら係止突起10aは、ケーシング10にカバー8をスナップフィット固定するためのものである。
【0032】
(カバー)
カバー8は、樹脂材料により略板状に形成されている。カバー8は、ケーシング10の開口の形状に対応するように形成されている。また、カバー8のモータ収容部16に対応する箇所には、モータ側カバー82が一体成形されている。
さらに、カバー8の外周部には、ケーシング10の各係止突起10aに対応する位置に、それぞれ係止舌片83が一体成形されている。係止舌片83は、ケーシング10の外周部に向かって延出しており、対応する係止突起10aと係止可能に構成されている。各係止突起10aに係止舌片83を係止させることにより、ケーシング10にカバー8がスナップフィット固定される。
【0033】
また、カバー8の略中央には、減速機部60の一部を構成する出力ギヤ66を挿入可能な開口部85が形成されている。この開口部85を介してカバー8の外部に突出している出力ギヤ66には、車両用窓を開閉するウィンドウレギュレータ等の外部機器が噛合される。
また、開口部85の周縁には、シール部91が設けられている。シール部91は、開口部85と出力ギヤ66との間をシールするためのものである。シール部91は、例えばゴム等により形成されている。
【0034】
(減速機部)
減速機部60は、モータ部30の回転力を受けて駆動し、出力ギヤ66からウィンドウレギュレータ等の外部機器に動力を伝達する。図示は省略するが、減速機部60は、モータ部30の回転力が伝達されるウォームギヤ、このウォームギヤに噛合されるウォームホイール等を有している。そして、ウォームホイールと一体となって出力ギヤ66が回転する。これにより、モータ部30の回転が、減速機部60によって減速され、出力ギヤ66から出力される。出力ギヤ66(不図示のウォームホイール)の回転軸方向は、後述するモータ部30の回転軸33の軸方向と直交している。
【0035】
(モータ部)
図2は、モータ部30をモータケース31の開口部31a側からみた平面図である。
図1、
図2に示すように、モータ部30は、不図示のブラシを用いて電力が供給される、いわゆるブラシ付き直流モータである。モータ部30は、ケーシング10のモータ収容部16の側面に配置された有底筒状のモータケース31と、モータケース31内に回転自在に収納されるアーマチュア32と、アーマチュア32に電力を供給するための一対のブラシ(不図示)と、ケーシング10とモータケース31との間に配置されたコネクタ部50と、を備えている。
【0036】
不図示のブラシは、ケーシング10のモータ収容部16に収容されている。そして、コネクタ部50に電気的に接続されている。
コネクタ部50は、ブラシを介してアーマチュア32に電力を供給するためのものである。コネクタ部50は、モータ収容部16の側面とモータケース31とに挟持されるフレーム部51と、このフレーム部51に一体的に設けられているコネクタ受け部52と、を備えている。
【0037】
フレーム部51は、略長方形で額縁状に形成されており、その開口部(不図示)が、モータ収容部16側とモータケース31側とを連通している。
コネクタ受け部52は、車体側に接続されるハーネスの先端に設けられた不図示のコネクタが挿入される略有底筒状のフード52aを有している。フード52a内には、コネクタに設けられたハーネス側端子に電気的に接続される端子部材(何れも不図示)の一端部が保持されている。この端子部材の他端は、不図示のブラシと電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力が不図示のブラシに供給される。
【0038】
アーマチュア32の詳細な図示と説明は省略するが、アーマチュア32は、モータケース31内に回転自在に支持されている回転軸33、回転軸33に外嵌固定され、コイルが巻回されている略円柱状のアーマチュアコア34、回転軸33にアーマチュアコア34と近接するように外嵌固定されたコンミテータと、を主構成としている。そして、コンミテータに、コイルが接続されている。このようなコンミテータは、フレーム部51の開口部を介してモータ収容部16に臨まされており、ブラシが摺接されている。これにより、ブラシ、コンミテータを介してコイルに電流が供給される。
【0039】
(モータケース)
モータケース31は、磁性材の板部材に、例えばプレス加工(深絞り加工)を施して形成されたものである。モータケース31は、筒状のヨーク部35と、ヨーク部35の一端側に一体成形された底部36と、ヨーク部35の底部36とは反対側の周縁に一体成形された外フランジ部37と、ヨーク部35の内側面に配置されたマグネット38と、を備えている。そして、底部36がモータケース31の底部を構成し、外フランジ部37側が開口される。
【0040】
このようなモータケース31は、外フランジ部37をモータ収容部16の側面に当接させる。そして、外フランジ部37を、不図示のボルトを用いてモータ収容部16に締結固定させている。外フランジ部37には、不図示のボルトを挿通可能な貫通孔37aが、モータケース31の径方向中心を挟んで両側に形成されている。
また、底部36の径方向中央には、回転軸33を回転自在に支持するための有底筒状の軸受部39が軸方向外側に向かって突出形成されている。軸受部39には、不図示の軸受が内嵌固定されている。
【0041】
ヨーク部35は、内側面にマグネット38が配置され、このマグネット38の磁路として機能する箇所である。ヨーク部35は、径方向に沿う断面(軸方向からみた平面形状)が正六角形状に形成されている。すなわち、ヨーク部35は、周方向に互いに角度が付くように並んで配置された6つの平坦壁41と、周方向で隣り合う平坦壁41同士を連結する6つの屈曲壁42と、により構成されている。平坦壁41は、平板状に形成されている。屈曲壁42は、径方向に沿う断面が略円弧状となるように形成されている。
【0042】
このように、ヨーク部35は、径方向に沿う断面が偶数の多角形状、つまり正六角形状に形成されているので、径方向中央を中心にして対向する2つの平坦壁41が平行になる。また、モータケース31は、任意の1つの平坦壁41の面方向と出力ギヤ66の軸方向とが直交するように、モータ収容部16の側面に締結固定されている。
【0043】
(第1実施形態)
(マグネット)
図3は、マグネット38を軸方向からみた平面図である。
図2、
図3に示すように、マグネット38は、ヨーク部35の内側面に2つ設けられている。2つのマグネット38は、回転軸33を中心に対向配置されている。また、2つのマグネット38は、ヨーク部35の平坦壁41および屈曲壁42に対応するように、屈曲形成されている。
以下、マグネット38の形状について、詳述する。なお、2つのマグネット38は同一形状であるので、以下では、2つのマグネット38のうちの一方のマグネット38についてのみ説明し、他方のマグネット38についての説明を省略する。
【0044】
マグネット38は、ヨーク部35の内側面に沿って周方向に互いに角度が付くように並んで配置された3つの平坦部43と、周方向で隣り合う平坦部43同士を連結する2つの屈曲部44と、により構成され、全体として略C字状になる。平坦部43は、平板状に形成されている。屈曲部44は、径方向に沿う断面が略円弧状となるように形成されている。
【0045】
平坦部43は、一面が全て同一磁極となるように着磁されていると共に、周方向に隣り合う平坦部43の同一面の磁極が異なるように着磁されている。すなわち、1つのマグネット38には磁極が3極形成され、ヨーク部35の総磁極数は6極となる。
また、マグネット38の一面(例えば、内側面)において、磁極の境界E1は、屈曲部44に位置するように着磁されている。
【0046】
このような構成のもと、ヨーク部35の平坦壁41に、マグネット38の平坦部43が配置されている。換言すれば、ヨーク部35の平坦壁41とマグネット38の平坦部43とが径方向で重なり合う。
また、ヨーク部35の屈曲壁42に、マグネット38の屈曲部44が配置されている。換言すれば、ヨーク部35の屈曲壁42とマグネット38の屈曲部44とが径方向で重なり合う。そして、ヨーク部35に、マグネット38が接着剤等により固定されている。
【0047】
ここで、ヨーク部35の平坦壁41および屈曲壁42の寸法と、マグネット38の平坦部43および屈曲部44の寸法と、の関係について説明する。
すなわち、マグネット38の屈曲部44の外角をAとし(
図3参照)、ヨーク部35の屈曲壁42の内角をBとし(
図2参照)たとき、外角Aおよび外角Bは、
A+B=360° ・・・(1)
を満たすように設定されている。
【0048】
また、マグネット38の平坦部43におけるヨーク部35と当接する外側面の周方向の幅をW1とし(
図3参照)、ヨーク部35の平坦壁41の内側面における周方向の幅をW2とし(
図2参照)たとき、幅W1,W2は、
W1=W2 ・・・(2)
を満たすように設定されている。
上記式(1)、式(2)を満たすことにより、1つのマグネット38に形成された2つの屈曲部44は、それぞれヨーク部35の屈曲壁42に密接される。また、ヨーク部35の平坦壁41に、マグネット38の平坦部43が密接される。
【0049】
ところで、マグネット38とアーマチュアコア34との間には、所定の空隙が形成されており、マグネット38とアーマチュアコア34とが干渉しないように各々設けられている。ここで、アーマチュアコア34は、略円柱状に形成されているのに対し、マグネット38は、平坦部43と屈曲部44との組み合わせで構成されている。このため、マグネット38とアーマチュアコア34との間隙K1(
図2参照)は、各平坦部43の周方向中央から周方向両端(屈曲部44)に向かうに従って徐々に大きくなる。つまり、マグネット38は、磁極の境界E1に設定されている屈曲部44の位置がアーマチュアコア34から最も離間している。
【0050】
このような構成のもと、外部電源より、ブラシ、コンミテータを介してコイルに電流が供給されると、アーマチュアコア34に磁界が発生する。この磁界とヨーク部35のマグネット38との間で磁気的な吸引力や反発力が作用し、アーマチュア32が継続的に回転する。アーマチュア32の回転力は、減速機部60の不図示のウォームギヤに伝達される。そして、不図示のウォームホイール等を介してアーマチュア32の回転が減速され、出力ギヤ66から出力される。
【0051】
ここで、マグネット38とアーマチュアコア34との間隙K1(
図2参照)は、各平坦部43の周方向中央から周方向両端(屈曲部44)に向かうに従って徐々に大きくなっている。さらに、マグネット38は、磁極の境界E1に設定されている屈曲部44の位置がアーマチュアコア34から最も離間している。
つまり、磁極の境界E1付近や、隣り合うマグネット38の間の間隙K2付近において、マグネット38の磁束の急激な変化によるアーマチュアコア34への影響を、極力低減できる。このため、モータ部30のコギングトルクを低減できる。
【0052】
図4は、従来の円弧状に形成されたマグネット(円弧マグ)と、本実施形態のマグネット38(平板マグ)と、のコギングトルク[mN]の差を比較したグラフである。
同図に示すように、円弧マグと比較して平板マグのコギングトルクが格段に低減されることが確認できる。
【0053】
このように、上述の第1実施形態では、マグネット38は、周方向に互いに角度が付くように並んで配置された3つの平坦部43と、周方向で隣り合う平坦部43同士を連結する2つの屈曲部44と、により構成されている。また、マグネット38の平坦部43は、一面が全て同一磁極となるように着磁されていると共に、周方向に隣り合う平坦部43の同一面の磁極が異なるように着磁されている。さらに、マグネット38の一面(例えば、内側面)において、磁極の境界E1は、屈曲部44に位置するように着磁されている。
【0054】
このように、マグネット38を、複数の平坦部43を連結して形成することにより、マグネットを湾曲形成する場合と比較して製造コストを減少させることができる。また、マグネット38の総数も減少できる。つまり、本第1実施形態では、ヨーク部35の総磁極数は6極に設定されているが、マグネット38は2つでよい。このため、マグネット38の部品点数を減少でき、モータ部30の製造コストを低減できる。
また、磁極数で3極分が1つのマグネット38になっているので、磁極数を増大させてもヨーク部35へのマグネット38の固定工数を抑えることができる。このため、ヨーク部35へのマグネット38の固定作業を簡素化できる。これに加え、ヨーク部35からマグネット38が剥離してしまう可能性も低くなり、モータ部30の動作不良を抑制できる。
【0055】
さらに、アーマチュアコア34は、略円柱状に形成されているのに対し、マグネット38は、平坦部43と屈曲部44との組み合わせで構成されている。このため、マグネット38とアーマチュアコア34との間隙K1を、各平坦部43の周方向中央から周方向両端(屈曲部44)に向かうに従って徐々に大きくすることができる。このため、モータ部30のコギングトルクを低減できる。
【0056】
また、ヨーク部35も、径方向に沿う断面が正六角形状に形成されている。すなわち、ヨーク部35は、周方向に互いに角度が付くように並んで配置された6つの平坦壁41と、周方向で隣り合う平坦壁41同士を連結する6つの屈曲壁42と、により構成されている。そして、ヨーク部35の屈曲壁42とマグネット38の屈曲部44とが径方向で重なり合う。このように、ヨーク部35の屈曲壁42とマグネット38の屈曲部44とを重ね合わせるだけで、ヨーク部35に対するマグネット38の周方向の位置決めを行うことができる。このため、ヨーク部35へのマグネット38の固定作業を簡素化できる。
【0057】
さらに、ヨーク部35の平坦壁41とマグネット38の平坦部43とが径方向で重なり合う。このため、ヨーク部35の内側面とマグネット38との接触面積をできる限り大きく設定することができる。よって、ヨーク部35にマグネット38を確実に固着させることができる。
【0058】
また、マグネット38の屈曲部44の外角をAとし(
図3参照)、ヨーク部35の屈曲壁42の内角をBとし(
図2参照)たとき、外角Aおよび外角Bは、上記式(1)を満たすように設定されている。このため、ヨーク部35の内側面とマグネット38とを確実に密接させることができる。よって、ヨーク部35にマグネット38をより確実に固着させることができる。
【0059】
さらに、マグネット38の平坦部43におけるヨーク部35と当接する外側面の周方向の幅をW1とし(
図3参照)、ヨーク部35の平坦壁41の内側面における周方向の幅をW2とし(
図2参照)たとき、幅W1,W2は、上記式(2)を満たすように設定されている。このため、ヨーク部35の所定の1つの屈曲壁42とマグネット38の所定の1つの屈曲部44との位置を合わせた際に、ヨーク部35の他の屈曲壁42とマグネット38の他の屈曲部44との位置がずれてしまうことを防止できる。よって、ヨーク部35の内側面とマグネット38とをより確実に密接させることができる。
【0060】
また、モータケース31は、ヨーク部35が径方向に沿う断面が偶数の多角形状、つまり正六角形状に形成されているので、径方向中央を中心にして対向する2つの平坦壁41が平行になる。このため、モータケース31の径方向の幅は、径方向中央を中心にして対向する2つの屈曲壁42の間よりも、2つの平坦壁41の間の方が小さくなる。
ここで、モータケース31は、任意の1つの平坦壁41の面方向と出力ギヤ66の軸方向とが直交するように、モータ収容部16の側面に締結固定されている。このため、出力ギヤ66と直交する方向のモータケース31(ヨーク部35)の占有幅をできる限り狭く設定できる。すなわち、出力ギヤ66と直交する方向において、ヨーク部35を薄型化(扁平化)できるので、自動車用パワーウインドウの駆動用モータのように設置スペースの問題から薄型化が要求されるような用途に有利となるため、減速機付モータ1のレイアウト性を高めることができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、
図5に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、モータ部230をモータケース231の開口部231a側からみた平面図であって、前述の
図2に対応している。
前述の第1実施形態と本第2実施形態との相違点は、第1実施形態のマグネット38の形状と第2実施形態のマグネット238の形状とが異なる点にある。以下、具体的に説明する。
【0062】
(マグネット)
図5に示すように、マグネット238は、ヨーク部35の内側面に3つ設けられている。マグネット238は、ヨーク部35の内側面に沿って周方向に互いに角度が付くように並んで配置された2つの平坦部243と、周方向で隣り合う平坦部243同士を連結する2つの屈曲部244と、により構成され、全体として略くの字状になる。平坦部243は、平板状に形成されている。屈曲部244は、径方向に沿う断面が略円弧状となるように形成されている。
【0063】
平坦部243は、一面が全て同一磁極となるように着磁されていると共に、周方向に隣り合う平坦部243の同一面の磁極が異なるように着磁されている。すなわち、1つのマグネット238には磁極が2極形成され、ヨーク部35の総磁極数は6極となる。
また、マグネット238の一面(例えば、内側面)において、磁極の境界E1は、屈曲部244に位置するように着磁されている。
【0064】
このような構成のもと、ヨーク部35の平坦壁41に、マグネット238の平坦部243が配置されている。換言すれば、ヨーク部35の平坦壁41とマグネット238の平坦部243とが径方向で重なり合う。
また、ヨーク部35の屈曲壁42に、マグネット238の屈曲部244が配置されている。換言すれば、ヨーク部35の屈曲壁42とマグネット238の屈曲部244とが径方向で重なり合う。そして、ヨーク部35に、マグネット238が接着剤等により固定されている。
【0065】
ここで、マグネット238の屈曲部244の外角Aは、上記式(1)を満たす。また、マグネット238の平坦部243におけるヨーク部35と当接する外側面の周方向の幅をW1は、上記式(2)を満たす。
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速機付モータ1は、例えば、車両のパワーウインドウ装置等に用いられるものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな装置に減速機付モータ1を採用することができる。
【0067】
また、上述の実施形態では、ヨーク部35の磁極数が6極に設定されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ヨーク部35をさまざまな極数に設定することができる。
さらに、上述の第1実施形態では、1つのマグネット38は、3つの平坦部43と2つの屈曲部44とを有する3極に設定されている場合について説明した。また、上述の第2実施形態では、1つのマグネット238は、2つの平坦部243と1つの屈曲部244とを有する2極に設定されている場合について説明した。しかしながら、これらに限られるものではなく、マグネットは、複数の平坦部43,243と、少なくとも1つの屈曲部44,244とにより、任意の複数極に設定することが可能である。
【0068】
また、上述の実施形態では、ヨーク部35は、径方向に沿う断面が正六角形状に形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ヨーク部35は、径方向に沿う断面が偶数の多角形状であればよい。このように構成することで、ヨーク部35の径方向中央を中心に対向する2つの平坦壁41が平行になる。このため、出力ギヤ66と直交する方向のモータケース31,231を、できる限り薄型化(扁平化)することが可能になる。