(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るウインドシールドに車間距離の測定ユニットを取付けた場合の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るウインドシールドの断面図、
図2は
図1の平面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るウインドシールドは、ガラス板1と、このガラス板1の車内側の面に形成されたマスク層2と、を備え、マスク層2に、車間距離の測定を行う測定ユニット4が取付けられている。また、マスク層2には、開口231が形成されており、この開口231を通じて、測定ユニット4から光の照射が行われたり、光を受光したりする。そして、ガラス板1の内面において、マスク層2の開口231と対応する領域には、電熱線8は配置されている。以下、各部材について説明する。
【0019】
<1.ガラス板>
<1−1.ガラス板の構成/合わせガラスを構成>
ガラス板1は、種々の構成が可能であり、例えば、複数のガラス板を有する合わせガラスで構成したり、あるいは一枚のガラス板により構成することもできる。合わせガラスを用いる場合には、例えば、
図3に示すように、構成することができる。
図3は合わせガラスの断面図である。
【0020】
同図に示すように、この合わせガラス1は、外側ガラス板11及び内側ガラス板12を備え、これらガラス板11、12の間に樹脂製の中間膜13が配置されている。まず、外側ガラス板11及び内側ガラス板12から説明する。外側ガラス板11及び内側ガラス板12は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板11、12は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板11により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板12により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの一例を示す。
【0021】
(クリアガラス)
SiO
2:70〜73質量%
Al
2O
3:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
R
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3):0.08〜0.14質量%
【0022】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO
2の比率を0〜2質量%とし、TiO
2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO
2やAl
2O
3)をT−Fe
2O
3、CeO
2およびTiO
2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0023】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO
2:65〜80質量%
Al
2O
3:0〜5質量%
CaO:5〜15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10〜18質量%
K
2O:0〜5質量%
MgO+CaO:5〜15質量%
Na
2O+K
2O:10〜20質量%
SO
3:0.05〜0.3質量%
B
2O
3:0〜5質量%
Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3):0.02〜0.03質量%
【0024】
本実施形態に係る合わせガラスの厚みは特には限定されないが、軽量化の観点からは、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みの合計を、2.4〜3.8mmとすることが好ましく、2.6〜3.4mmとすることがさらに好ましく、2.7〜3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板11と内側ガラス板12との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みを決定することができる。
【0025】
外側ガラス板11は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、例えば、この合わせガラスを自動車のウインドシールドとして用いる場合には、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板11の厚みは1.8〜2.3mmとすることが好ましく、1.9〜2.1mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0026】
内側ガラス板12の厚みは、外側ガラス板11と同等にすることができるが、例えば、合わせガラスの軽量化のため、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.6〜2.0mmであることが好ましく、0.8〜1.6mmであることが好ましく、1.0〜1.4mmであることが特に好ましい。更には、0.8〜1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板12についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る外側ガラス板11及び内側ガラス板12の形状は、平面形状及び湾曲形状のいずれであってもよい。
【0028】
ガラス板が湾曲形状である場合には、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ガラス板の曲げを示す量であり、例えば、
図4に示すように、ガラス板の上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ直線Lを設定したとき、この直線Lとガラス板との距離のうち最も大きいものをダブリ量Dと定義する。
【0029】
図5は、湾曲形状のガラス板と、平面形状のガラス板の、一般的な周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。
図5によれば、湾曲形状のガラス板は、ダブリ量が30〜38mmの範囲では、音響透過損失に大きな差はないが、平面形状のガラス板と比べると、4000Hz以下の周波数帯域で音響透過損失が低下していることが分かる。したがって、湾曲形状のガラス板を作製する場合、ダブリ量は小さい方がよいが、例えば、ダブリ量が30mmを超える場合には、後述するように、中間膜のコア層のヤング率を18MPa(周波数100Hz,温度20℃)以下とすることが好ましい。
【0030】
ここで、ガラス板(合わせガラス)1が湾曲している場合の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、
図6に示すように、ガラス板の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線S上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM−112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にガラス板の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでガラス板の端部を挟持して測定する。なお、ガラス板が平坦な場合でも、湾曲している場合と同様に測定することができる。
【0031】
<1−2.合わせガラスの中間膜>
中間膜13は、少なくとも一層で形成されており、一例として、
図3に示すように、軟質のコア層131を、これよりも硬質のアウター層132で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、コア層131と、外側ガラス板11側に配置される少なくとも1つのアウター層132とを有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層131と、外側ガラス板11側に配置される1つのアウター層132を含む2層の中間膜13、またはコア層131を中心に両側にそれぞれ2層以上の偶数のアウター層132を配置した中間膜13、あるいはコア層131を挟んで一方に奇数のアウター層132、他方の側に偶数のアウター層132を配置した中間膜13とすることもできる。なお、アウター層132を1つだけ設ける場合には、上記のように外側ガラス板11側に設けているが、これは、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能を向上するためである。また、アウター層132の数が多いと、遮音性能も高くなる。
【0032】
コア層131はアウター層132よりも軟質であるかぎり、その硬さは特には限定されない。各層131,132を構成する材料は、特には限定されないが、例えば、ヤング率を基準として材料を選択することができる。具体的には、周波数100Hz,温度20度において、1〜20MPaであることが好ましく、1〜18MPaであることがさらに好ましく、1〜14MPaであることが特に好ましい。このような範囲にすると、概ね3500Hz以下の低周波数域で、STLが低下するのを防止することができる。一方、アウター層132のヤング率は、後述するように、高周波域における遮音性能の向上のために、大きいことが好ましく、周波数100Hz,温度20度において560MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、880MPa以上、または1300MPa以上とすることができる。一方、アウター層132のヤング率の上限は特には限定されないが、例えば、加工性の観点から設定することができる。例えば、1750MPa以上となると、加工性、特に切断が困難になることが経験的に知られている。
【0033】
また、具体的な材料としては、アウター層132は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層131は、例えば、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
【0034】
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層132に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層131に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化によっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層132がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層131には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−へプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。
【0035】
また、中間膜13の総厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜2.0mmであることが特に好ましい。また、コア層131の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各アウター層132の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜13の総厚を一定とし、この中でコア層131の厚みを調整することもできる。
【0036】
コア層131及びアウター層132の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層131及びアウター層132の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層131、アウター層132の厚みとする。例えば、
図7に示すような合わせガラスの拡大写真を撮影し、このなかでコア層やアウター層132を特定して厚みを測定する。
【0037】
なお、中間膜13のコア層131、アウター層132の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間膜13のコア層131やアウター層132の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。中間膜13が楔形の場合、外側ガラス板及び内側ガラス板は、平行に配置されないが、このような配置も本発明におけるガラス板に含まれる物とする。すなわち、本発明においては、例えば、1m当たり3mm以下の変化率で厚みが大きくなるコア層131やアウター層132を用いた中間膜13を使用した時の外側ガラス板と内側ガラス板の配置を含む。
【0038】
中間膜13の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。また、中間膜13は、上記のような複数の層で形成する以外に、1層で形成することもできる。
【0039】
<1−3.ガラス板の赤外線透過率>
上記のように、本実施形態に係るウインドシールドは、レーザーレーダー、カメラなどの測定ユニットを用いた自動車の前方安全システム用に用いられる。このような安全システムでは、前方の車両に対して赤外線を照射して、前方の自動車の速度や車間距離を計測する。そのため、合わせガラス(または一枚のガラス板)には、所定範囲の赤外線の透過率を達成することが要求される。
【0040】
このような透過率としては、例えば、レーザーレーダーに一般的なセンサを使用する場合、波長が850〜950nmの光(赤外線)に対して20%以上80%以下、少なくとも20%以上60%以下であることが有用であるとされている。透過率の測定方法は、JIS R3106にしたがい、測定装置として、UV3100(島津製作所製)を用いることができる。具体的には、合わせガラスの表面に対して90度の角度で照射した、一方向の光の透過を測定する。
【0041】
また、上記のような安全システムでは、レーザーレーダーを用いず、赤外線カメラを用いて前方車両の速度や車間距離を測定するものもあるが、その場合には、例えば、レーザーレーダーに一般的なカメラを使用する場合、波長が700〜800nmの光(赤外線)に対して30%以上80%以下、好ましくは、40%以上60%以下であることが有用とされている。透過率の測定方法は、ISO9050に従う。
【0042】
<2.マスク層>
次に、マスク層2について説明する。本実施形態に係るガラス板1には、
図8に示すようなマスク層2が形成される。マスク層2は、ガラス板上に積層されるのであるが、その位置は特には限定されない。例えば、ガラス板が一枚のガラス板で形成されている場合には、車内側の面にマスク層2を積層することができる。一方、ガラス板が、
図3に示すような合わせガラスで形成されている場合には、外側ガラス板11の車内側の面、内側ガラス板12の車外側面、及び内側ガラス板12の車内側の面の少なくとも1つに積層することができる。このなかで、例えば、外側ガラス板11の車内側の面、及び内側ガラス板12の車内側の面の両方に概ね同一形状のマスク層2を形成すると、マスク層2が積層されている箇所において両ガラス板11,12の湾曲が一致するため、好ましい。なお、
図1では、ガラス板1の内側の面にマスク層2が形成されている例を示している。
【0043】
このマスク層2は、ガラス板1を車体に取付ける際の接着剤が塗布されたりするなど、外部から見えないようにするための濃色の領域であり、ガラス板1の外周縁に形成された周縁マスク層21と、この周縁マスク層21において、ガラス板1の上縁の中央から下方に延びるセンターマスク層22と、を備えている。そして、センターマスク層22には、上述した測定ユニット4が取付けられる。測定ユニット4は、後述するようにセンサ5から照射される光が開口の中心を通過し、先行車および障害物からの反射光を受光できる程度に配置されていればよい。これらマスク層2は、種々の材料で形成することができるが、車外からの視野を遮蔽できるものであれば特には限定されず、例えば、黒色などの濃色のセラミックをガラス板1に塗布することで形成することができる。
【0044】
次に、センターマスク層22について説明する。
図9に示すように、センターマスク層22は、上下方向に延びる矩形状に形成されており、その内部には台形状の開口231が形成されている。
【0045】
センターマスク層22は、3つの領域に分かれており、開口231よりも上側の上部領域221、この上部領域221より下方で開口231を含む下部領域222、及びこの下部領域222の側部に形成された矩形状の小さい側部領域223で構成されている。
【0046】
次に、各領域の層構成について説明する。
図10に示すように、上部領域221は、黒色セラミックからなる第1セラミック層241により1層で形成されている。下部領域222は、ガラス板1の内表面から積層される上記第1セラミック層241、銀層242、及び第2セラミック層243からなる3層で形成されている。銀層242は銀により形成され、第2セラミック層243は、第1セラミック層241と同じ材料で形成されている。また、側部領域223は、ガラス板1の内表面から積層される第1セラミック層241及び銀層242の2層で形成されており、銀層242が車内側に露出している。最下層の第1セラミック層241は、各領域で共通であり、2層目の銀層242は下部領域222と側部領域223で共通である。なお、遮光性を担保するため、各セラミック層241、243の厚みは、例えば、10〜20μmとすることができる。また、後述するように、内側ガラス板12の車内側の面に形成されたセンターマスク層22には、測定ユニット4のブラケットが接着剤で接着されるため、接着性を担保するためにもこのような厚みが好ましい。これは、例えば、ウレタン・シリコン系の接着剤が紫外線などによって劣化するおそれがことによる。
【0047】
周縁マスク層21及びセンターマスク層22は、例えば、次のように形成することができる。まず、ガラス板上に第1セラミック層241を塗布する。この第1セラミック層241は周縁マスク層21と共通である。次に、この第1セラミック層241上に、下部領域222及び側部領域223に該当する領域に銀層242を塗布する。最後に、下部領域222に該当する領域に第2セラミック層243を塗布する。なお、下部領域222において、銀層242が形成されている領域は、後述する測定ユニット4のセンサが配置されている位置に相当する。また、側部領域223において露出する銀層242には接地用の配線が施される。セラミック層241,243及び銀層242は、スクリーン印刷法により形成することができるが、これ以外に、焼成用転写フィルムをガラス板に転写し焼成することにより作製することも可能である。
【0048】
セラミック層241、243は、種々の材料で形成することができるが、例えば、以下の組成とすることができる。
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0049】
また、銀層242も、特には限定されないが、例えば、以下の組成とすることができる。
【表2】
【0050】
スクリーン印刷の条件として、例えば、ポリエステルスクリーン:355メッシュ,コート厚み:20μm,テンション:20Nm,スキージ硬度:80度,取り付け角度:75°,印刷速度:300mm/sとすることができ、乾燥炉にて150℃、10分の乾燥により、セラミック層及び銀層を形成することができる。なお、第1セラミック層241、銀層242、及び第2セラミック層243をこの順で積層する場合には、上述したスクリーン印刷及び乾燥を繰り返せばよい。
【0051】
なお、マスク層2の形状は特には限定されず、種々の形状にすることができる。例えば、
図11に示すように、開口231の下側の下端部を水平方向に真っ直ぐ延びるに形成することもできる。また、開口は閉じたものでなくてもよく、例えば、下端部が下方に開いた開口231であってもよい。以上のようにセンターマスク層22に形成される開口は、種々の態様があるが、いずれも次に説明する測定ユニット4からの光が照射されたり、あるいは光を受光するための通路、つまり情報取得領域となる。また、この情報取得領域は、開口231内部の全体であってもよいし、開口231内部の一部であってもよい。
【0052】
<3.測定ユニット>
次に、測定ユニットについて、
図12及び
図13を参照しつつ説明する。
図12は、ガラス板に取り付けられた測定ユニット4の概略構成を示す断面図、
図13はブラケットを車外側から見た図(a)、及び車内側から見た図(b)である。
図12に示すように、この測定ユニット4は、ガラス板1の内面に固定されるブラケット41、このブラケット41に支持されるセンサ(情報取得装置)5、及びブラケット41とセンサ5を車内側から覆うカバー42に、により構成されている。
【0053】
図13に示すように、ブラケット41は、矩形状に形成されており、上述したような内側ガラス板12の車内側の面に形成されたセンターマスク層22に、接着剤401により固定される。また、このブラケット41には上下に並び、仕切り部415によって仕切られた2つの開口、つまり第1開口411と第2開口412とが形成されており、上側に形成された大型の第1開口411にセンサ5が取り付けられる。また、このブラケットにおいて、車外側から見て第2開口412の下側には、台形状の凹部414が形成されている。この凹部414は、上端が最も深く、下端側にいくにしたがって浅くなるように傾斜しており、上端に第2開口412が形成されている。また、
図13(b)に示すように、ブラケット41の車内側の面における第1開口411の両側には、センサ5を支持する支持部413が取り付けられており、センサ5は、両支持部413の間に固定される。固定されたセンサ5の先端部(
図12の下端部)には、後述するように照射レンズ552が取り付けられており、この照射レンズ552が第2開口412及び凹部414を介して外部を臨むようになっている。すなわち、凹部414は、ガラス板との間に隙間を形成し、第2開口412から照射される光の通路となる。一方、受光レンズ542は、第1開口411を介して外部を臨むようになっている。
【0054】
また、
図13(a)に示すように、このブラケット41における車外側の面は、センターマスク層22に固定される面であり、ビード状の接着剤401が塗布される。接着剤401は、概ねブラケット41全周に塗布され、この接着剤401を介して、ブラケット41がセンターマスク層22に固定される。なお、接着剤は、種々のものを採用できるが、例えば、ウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤などを用いることができる。但し、エポキシ樹脂接着剤は粘性が高いため、流れにくく、有利である。また、マスク層2が内側ガラス板12の車内側の面に形成されていない場合には、ブラケット41は内側ガラス板12に直接接着される。なお、ブラケット41を固定する方法は、特には限定されず、接着剤のほか、両面テープを用いることもでき、あるいは接着剤と両面テープの両者を用いることもできる。
【0055】
ブラケット41には、図示を省略するハーネスなどが取り付けられた後、
図12に示すように、車内側からカバー42が取り付けられる。これにより、センサ5やブラケット41が車内側から見えないようになる。こうして、センサ5は、ブラケット41、カバー42、及びガラス板1に囲まれた空間内に収容される。なお、センターマスク層22が形成されているため、開口231を除いては、車外側からも測定ユニット4は見えないようになっている。また、開口231は、ブラケット41に囲まれて、車内側からは見えないようになっている。
【0056】
次に、センサ5の概要を
図12を参照しつつ説明する。同図に示すように、このセンサ5は、側面視三角形状の筐体51を備え、この筐体51の内部は、上部空間501と、下部空間502とに仕切られている。また、筐体51の背面側にはコネクタ53が取付けられており、外部機器への接続に用いられる。
【0057】
上部空間501には、第1支持部54が配置されており、この第1支持部54には、後方から前方へ向けて第1制御基板541、受光レンズ542が配置されている。また、第1制御基板541上には、受光素子543が実装されており、受光レンズ542を通過したレーザ光を受光し、電気信号に変換するようになっている。この電気信号は、第1制御基板541において増幅され、後述する第2制御基板56に送信される。そして、受光レンズ542は、上述したように、ブラケット41の第1開口411からセンターマスク層22の開口231を介して外部を臨むように配置されている。特に、受光素子543で受光される光Xの通過経路が、開口231を通るように、センサ5がブラケット41に支持されている。また、先行車や障害物から反射された多方向からの反射光が開口231の通り、その反射光を受光素子543は受光する。
【0058】
一方、下部空間502には、第2支持部55が配置されており、この第2支持部55に後方から前方へ向かってレーザ発光素子551、照射レンズ552がこの順で支持されている。レーザ発光素子551は、レーザダイオードなどの波長850nm〜950nm近赤外線波長域のレーザ光を発信するものであり、照射レンズ552は、レーザ発光素子551からのレーザ光を所定のビーム状に成形するレンズである。この照射レンズ552は、上述したように、筐体51からからブラケット41の第2開口412及びセンターマスク層22の開口231を介して外部を臨むように配置されている。特に、レーザ発光素子551から発信されるレーザ光Yの通過経路が、開口231を通るように開口231の位置、大きさ、センサ5の取付位置が調整されている。このように、センサ5で受光される光X、及びセンサ5から照射される光Yは、センターマスク層の開口231を通過するが、ガラス板1においてこれらの光が通過する領域が、上述した情報取得領域を構成する。
【0059】
また、第2支持部55の上面には、第2制御基板56が配置されており、レーザ発光素子551の駆動、第1制御基板541から送信された電気信号の処理などを行う。
【0060】
次に、測定ユニット4の動作について説明する。まず、第1制御基板541は、レーザ発光素子551からレーザ光のパルスを発信する。そして、このレーザ光が先行車や障害物などで反射された反射光を、受光素子543で受光するまでの時間に基づいて、先行車両や障害物と自車との距離を算出する。算出された距離は、コネクタ53を介して外部機器に送信され、ブレーキの制御などに用いられる。
【0061】
さらに、測定ユニット4にステレオカメラを用いることができる。ステレオカメラは、公知のものを用いることができるが、具体例として、以下、
図14及び
図15を参照しつつ説明する。
【0062】
図14及び
図15に示すように、ステレオカメラは、ガラス板の内側に配置され、視差の生じた2枚の画像を同時に取得可能なように、互いに離間した2つの撮影装置210A、210Bを有している。これに対応して、センターマスク層22には、車内に配置された各撮影装置210A、210Bが車外の状況を撮影可能なように、当該各撮影装置210A、210Bに対応する2つの開口113A、113Bが形成されている。これら2つの開口113A、113Bは、ルームミラーの支持部近傍に、ルームミラーを対象軸として左右対称に配置される。
【0063】
また、ステレオカメラ20は画像処理装置30に接続されており、ステレオカメラ20により取得した複数の画像によって被写体と自車との距離等を解析可能な車載システムを構成している。以下、各構成要素について説明する。
【0064】
ステレオカメラ20の各撮影装置210A、210Bは、公知のものを用いることができ、例えば、複数のレンズ及び開口絞りを有するレンズ系と、レンズ系を通過した光によって撮像するCCD等のイメージセンサと、を備えることができる。イメージセンサにより、レンズ系を通過した光を受光平面で結像することで、被写体の撮像を行う。ステレオカメラ20は、このような各撮影装置210A、210Bにより、視差の生じた複数の画像を同時に取得することができる。
【0065】
画像処理装置30は、ステレオカメラ20により取得された複数の画像を解析し、被写体と自車との距離、被写体の移動速度、被写体の種別等を解析する装置であり、公知のものを用いることができる。このような画像処理装置は、ハードウェア構成として、バスで接続される、記憶部、制御部、入出力部等の一般的なハードウェアを有している。以上のようなステレオカメラ20を用いると、上述したセンサ5と同様に、先行する障害物との距離を測定することができるほか、画像処理により歩行者等の障害物の認識を行うこともできる。
【0066】
また、測定ユニット4の構成は特には限定されず、歩行者認識用に1台のカメラのみを搭載することができる。この場合は、車体の他の部分(例えば、フロントグリルなど)にミリ波レーダを設けて障害物との距離を測定することができる。あるいは、上述したセンサ5と1台のカメラを搭載することもできる。
【0067】
<4.電熱線>
上述したように、本実施形態では、測定ユニット4がマスク層の開口231を通じて光を照射したり、光を受光することで情報を取得しているが、ガラス板1において開口231と対応する部分、つまり情報取得領域が曇ると、正確な情報を取得することができない。したがって、本実施形態では、情報取得領域に、導線で構成された電熱線8を設け、これに電流を印加することで加熱し、曇りを防止している。このような電熱線8は、測定ユニット4の構成及びマスク層2の形態に合わせて種々の配線方法があるため、以下では複数の態様について説明する。なお、以下の例のマスク層の形態は一例であり、種々のマスク層に対して電熱線を配置することができる。
【0068】
<4−1.電熱線の第1態様>
図16は、電熱線8の第1態様を示している。同図ではマスク層を省略し、開口231のみ記載している。この電熱線8は、ガラス板1の上縁付近に配置され、電源の正極及び負極が接続される一対の矩形状の端子部81,82を備えている。以下、正極に接続される端子部を第1端子部81、負極に接続される端子部を第2端子部82と称することとする。第1端子部81からは、下方に延び、さらにマスク層2の開口231の一方(同図の左側)の側縁に沿って延びる第1配線部83が形成されている。この第1配線部83は、開口231の下端付近まで延びている。一方、第2端子部82からは、下方に延び、さらに開口231の他方(同図の右側)の側縁の上端付近まで延びる第2配線部84が形成されている。
【0069】
そして、第1配線部83の下端と第2配線部84の下端との間には、第3配線部85が配置されている。第3配線部85は5つの直線状のパーツを連結したS字状に形成されている。ここでは、第1配線部83側から順に、第1,第2,第3,第4,及び第5パーツ85a〜85eと称することとする。このうち、第1、第3,及び第5パーツ85a,85c,85eが開口231を横切るように配置されている。そして、これら3つのパーツ85a,85c,85eは、水平方向に対して30度以下の角度αで傾いている。これは、例えば、カメラで車外の撮影を行って画像処理を行う場合、水平方向に電熱線8が延びていると、電熱線8によって、水平方向の走査線上のすべての画素が遮られるからである。また、第1〜第3配線部83〜85の線幅は、例えば、50〜3000μmとすることが好ましく、100〜300μmとすることがさらに好ましい。なお、このようなパーツと称する構成が、本発明の構成部に相当する。そして、この点については、以下の第2〜第5態様についても同じである。
【0070】
以上のように、電熱線8は、電源(電圧は一定)に対して直列に接続される第1端子部81、第1配線部83、第2配線部84、第3配線部85、及び第2端子部82により構成されている。そして、電流が印加されることで、熱が発生するため、開口231において曇りが発生するのを防止することができ、また発生した曇りを除去することができる。
【0071】
ところで、上記3つの配線部83〜85は、直線状の導線が連結されることで構成されているが、その連結部分において導線がなす角は鋭角または鈍角になっている。そして、本実施形態では、このうち鋭角の連結部分(同図の円で囲まれた4箇所)が円弧状に形成されており、その曲率半径は1〜10mmとなり、好ましくは2〜4mmとなっている。これは次の理由による。一般的に、防曇のためにガラス板1を加熱する場合には、ガラスクラックの発生を防止するため、加熱温度の上限値を、例えば70〜80℃となるように電流値を制御することが求められる。特に、加熱領域がガラス板の端部に近い場合には、加熱領域とガラス板の端部との温度差に起因する引張応力が作用することがある。これにより、ガラス板の端部から割れが生じやすくなるという問題がある。このような割れは、特に、合わせガラスにおいて、電熱線が配置される内側ガラス板の厚さが2mm以下の場合に顕著である。
【0072】
ところが、電熱線8において鋭角に形成されている部分は、導線が近接することなどから、局所的な発熱が生じやすい。そして、このような局所的な発熱があれば、その部分を加熱温度の上限値として電流値の制御を行う必要があり、その他の部分の加熱温度が低下するおそれがある。その結果、電熱線8が全体的に十分に発熱するように制御できないという問題がある。そこで、本実施形態では、鋭角の連結部分において局所的な発熱が生じないように、鋭角の連結部分は円弧状に形成している。これにより、局所的な発熱を防止できるため、電熱線8も全体的に十分に発熱できるよう制御することができる。
【0073】
そして、連結部分の曲率半径が1mmより小さいと、上記のような局所的な発熱が生じるおそれがある。一方、曲率半径が、10mmより大きいと、円弧状の連結部分が、開口231内に入り込んでしまい、開口231を横断する部分が直線のみで形成できないおそれがあり、見映えが悪化するおそれがある。なお、上記のように、鋭角の連結部分のみを円弧状に形成するほか、すべての連結部分を円弧状にすることで、局所的な発熱を確実に防止することもできる。
【0074】
次に、電熱線8の材料や製造方法について説明するが、以下の説明は電熱線の第2〜第5態様でも同じである。上記のような電熱線8は、導電性材料であれば、種々の材料で形成することができるが、例えば、銀を用いることができる。また、銀を単独で用いるほか、電熱線8に少なくとも一層の被覆材を被覆した積層構造を採用することもできる。例えば、マスク層2と同様の濃色のセラミックの層を被覆材としてガラス板1上に配置し、その上に銀で形成された電熱線8を形成することもできる。このようにすると、車外から銀の電熱線8が見えなくなるため、見栄えがよくなる。特に、このセラミック層とマスク層2とが同じ色であれば、車外から見たときに違和感がない。さらに、電熱線8を被覆材で挟むこともできる。すなわち、ガラス板1に被覆材を配置し、その上に電熱線8を配置し、さらに電熱線8を覆うように被覆材を配置した三層構造とすることもできる。これにより、車内側からも電熱線8が見えなくなる。特に、光が通過する開口231に銀の層が露出すると、光が反射するなど、光の通過を妨げる可能性があるため、好ましくない。したがって、銀の層の上に、被覆材として濃色のセラミックの層を形成すると、車内側から銀層が見えなくなる。また、電熱線8はガラス板1の車内側の面に配置されるため、電熱線8の上に接着剤を介してブラケットが取り付けられる可能性もある。この場合、接着剤の成分が銀を腐食させるおそれがある。したがって、この観点からも、銀をセラミックの層で被覆しておけば、銀が接着剤から影響を受けることを防止できる。
【0075】
このような電熱線8を含む層構造は、種々の態様が可能である。例えば、上述した端子部81,82を2層(ガラス板側からセラミック層、銀層をこの順で積層)、配線部83,84、85を3層(ガラス板側からセラミック層、銀層、セラミック層をこの順で積層)とし、マスク層2の開口231を通過する第3配線部85のみ銀層だけで形成することができる。なお、被覆材の線幅は、電熱線よりも大きいことが好ましい。また、銀層を被覆する被覆材は、セラミック以外でもよい。
【0076】
上記電熱線8を配置するに当たっては、上記のように、マスク層2を合わせガラスの異なる面に配置することができる。例えば、
図3に示すような外側ガラス板11の内面側にマスク層2を形成し、内側ガラス板12の内面に電熱線を形成することができる。あるいは、内側ガラス板12の内面にマスク層2を形成し、その上に電熱線8を形成することもできる。
【0077】
上記のような電熱線8は、種々の方法でガラス板上に配置することができる。例えば、ガラス板1が成形された後、ガラス板上にスクリーン印刷などで形成し、マスク層と同様に焼成することで、電熱線8を形成することができる。マスク層2をガラス板1の同じ面に形成する場合には、マスク層2とともに印刷を行い、同時に焼成することもできる。その他、転写により、ガラス板1上に形成することもできる。以下、一例を示す。
【0078】
まず、
図17に示すように、転写シートを準備する。転写シートは、剥離フィルム101と、その上にスクリーン印刷などで形成された電熱線8と、電熱線8を覆うように配置された接着層102とを有している。剥離フィルム101は公知のものであり、電熱線8は上述したものである。また、接着層102は、例えばアクリル、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエステルなどの樹脂が使用でき、単独もしくはこれらを混合した接着剤である。なお、転写までの間、接着層102を剥離可能な保護フィルムなどで覆っておくこともできる。
【0079】
そして、
図18(a)に示すように、この転写シートの接着層102を、成形後のガラス板1に貼り付けた後、剥離フィルム101を剥がす。これにより、
図18(b)に示すように、ガラス板1上には接着層102、電熱線8がこの順で配置される。その後、このガラス板1を焼成すると、
図18(c)に示すように、接着層102が溶解し、電熱線8がガラス板に焼き付けられる。例えば、接着層102として、アクリル系接着剤を採用した場合には、約400〜700℃で、約3分の焼成により、電熱線をガラス板に転写することができる。なお、この転写シートは、一例であり、電熱線8をガラス板1上に転写できるのであれば、どのような転写シートであってもよく、例えば、特開2009−23255号に記載の転写シートを用いることができる。
【0080】
以上のように、転写シートにより、電熱線8を形成すると、次のような利点がある。まず、電熱線8をガラス板1上に直接形成するよりも、剥離フィルム101上に形成する方が容易であり、自由度が高い。例えば、高構成パターンの作製、積層体の作製等が容易となる。また、このような転写フィルムを大量に作製しておけば、ガラス板1に電熱線8を形成する際の生産性が向上する。さらに、凹凸面についても貼付け形成可能である。
【0081】
<4−2.電熱線の第2態様>
図19は、電熱線8の第2態様を示している。
図19ではマスク層を省略し、開口231のみ記載している。同図に示すように、この電熱線8は、第1態様と同様に、ガラス板1の上縁付近に配置される第1端子部81、負極に接続される第2端子部82を有している。そして、第1端子部81からは、左側へ水平に延び、さらにそこから下方へ開口部500の上縁付近まで延びる第1配線部83が形成されている。同様に、第2端子部82からは、右側へ水平に延び、そこからさらに下方へ開口部500の上縁付近まで延びる第2配線部84が形成されている。このように、第1配線部83及び第2配線部84は、いずれもL字型に形成されているが、その角部は円弧状に形成されている。そして、第1配線部83及び第2配線部84の下端からは、開口231の外周に沿って延びる第3配線部85が形成されている。この第3配線部85は、台形状の開口部を囲むように、線状に延びる5つのパーツ、つまり第1〜第5パーツ85a〜85eが連結されることで構成されており、各パーツ85a〜85eは波形に形成されている。そして、これらパーツ85a〜85eの連結部分は、第1態様で示したように、円弧状に形成されている(同図の円で囲まれた箇所)。
【0082】
このように、開口231の周囲に電熱線8を配置することで、開口231の内部にまで熱を伝達することができ、開口231内の曇りを防止することができる。なお、第2態様の電熱線8の各パーツ85a〜85eを波形に形成しているのは、電熱線8の全長を長くし、抵抗を大きくするためである。これにより、一定の電源電圧(一般的に電圧は12Vなど)に対し、電流値が大きくなりすぎず、電熱線8の断線を防止しつつ発熱を制御することができる。
【0083】
<4−3.電熱線の第3態様>
図20は、電熱線の第3態様を示している。
図20ではマスク層を省略し、開口231のみ記載している。同図に示すように、この電熱線8は、第2態様と同様の態様を有しているため、ここでは第2態様と相違する部分だけ説明する。第3態様の電熱線8は、開口231を囲む第3配線部85が相違している。すなわち、この第3配線部85は、波形に形成されているのではなく、開口231の周囲を二重に囲むように11個の直線状のパーツ、つまり第1〜第11パーツ85a〜85kを連結することで形成されている。具体的には、次の通りである。まず、第3配線部85は、第1配線部83の下端から開口231の上端に沿って右側に延び(第1パーツ85a)、さらに開口231の右側辺を通過し(第2パーツ85b)、開口231の下辺の中央付近まで延びている(第3パーツ85c)。そして、第3配線部85は、ここから内側へ折り返され、開口231の周囲を囲み、開口231の下辺の中央付近まで延びている(第4〜第8パーツ85d〜85h)。そして、ここから外側へ折り返され、開口231の下辺(第9パーツ85i)、開口231の左側辺(第10パーツ85j)、及び開口231の上辺を通過し(第11パーツ85k)、第2配線部84に連結される。
【0084】
このように、第3配線部85は、開口231の周囲を二重に囲むように、11個の直線状のパーツ85a〜85kで構成されている。そして、これらパーツ85a〜85kの連結部分(同図の円で囲んだ箇所)は、円弧状に形成されている。また、第1配線部83及び第2配線部84の下端部付近には、側方に延びる突部831,841がそれぞれ形成されているが、これは、抵抗を大きくするために、電熱線8の長さを長くするためのものである。
【0085】
このように、開口231の周囲に電熱線8を配置することで、開口231の内部にまで熱を伝達することができ、開口231内の曇りを防止することができる。また、直線状のパーツ85a〜85kの連結部分のほか、第1及び第2配線部83,84の角部も円弧状に形成されており、局所的な発熱を防止している。
【0086】
<4−4.電熱線の第4態様>
図21は、電熱線8の第4態様を示している。この態様では、測定ユニット4にカメラとセンサが設けられている。なお、
図21ではマスク層2の上部は省略している。そして、第1配線部83及び第2配線部84は、概ねU字型に形成されており、各端部が開口231の上縁付近まで延びている。また、これらの端部付近には、側方に延びる2つの突部831,841がそれぞれ形成されているが、これは抵抗を大きくするために、電熱線8の長さを長くするためのものである。
【0087】
そして、第1配線部83及び第2配線部84の下端部同士を結ぶ第3配線部85が形成されている。この第3配線部85は、全体として左側に開くU字型に形成されている。具体的には、第3配線部85は、9個の直線状のパーツ、つまり第1〜第9パーツ85a〜85iを連結している。すなわち、第3配線部85は、第1配線部83の下端から右に延び(第1パーツ85a)、そこから下方に延びる(第2パーツ85b)。そして、その下端から左側に延び(第3パーツ85c)、さらに上方に延びる(第4パーツ85d)。そこから、右側へ延び(第5パーツ85e)、さらに上方に延びる(第6パーツ85f)。その上端から左側へ延び(第7パーツ85g)、さらに上方へ延びた後(第8パーツ85h)、右側へ延びて(第9パーツ85i)、第2配線部84の下端に連結される。
【0088】
これら9個のパーツ85a〜85iのうち、開口の231内部に配置されているのは、第2〜第7パーツ85b〜85gである。また、上述したように、この態様では、測定ユニット4にカメラとセンサが設けられており、開口231の内部には、カメラに入射する光が通過する第1情報取得領域Dと、センサへの光及びセンサからの光が通過する第2情報取得領域とが、設けられている。第1情報取得領域Dは、開口231内部の左側に位置し、第3及び第5パーツ85c,85eが横断する。すなわち、第3及び第5パーツ85c,85e以外は、第1情報取得領域Dの外部に配置されている。したがって、カメラへの光が入射する領域である第1情報取得領域Dは、電熱線8の2つのパーツ85c,85eのみが通過し、これによって第1情報取得領域Sを防曇するようになっている。カメラによる画像の取得では、ガラス板1が曇っていると、正確な撮影を行うことができないため、防曇効果は、特に重要である。一方、第2情報取得領域は、開口231内部の右側に位置しているが、各パーツとの位置関係は特には限定されない。
【0089】
また、第3配線部85を構成する各パーツ85a〜85iの連結部分、及び第1及び第2配線部83,84の角部は、円弧状に形成されており、局所的な発熱を防止するようにしている。
【0090】
<4−5.電熱線の第5態様>
図22は、電熱線8の第5態様を示している。電熱線8の第5態様は、第4態様とほぼ同じであるが、第8パーツ85hの構成が相違している。すなわち、第8パーツ85hがU字型に形成されつつ、開口231の左側のマスク層2上を下側に延びている。このように第8パーツ85hが延長されることで、第3配線部85の長さが長くなり、抵抗が大きくなる。そのため、第4態様で、第1及び第2配線部83,84に設けられていた突部831,841を省略することができる。その他の構成は、第4態様と同様であり、各パーツ85a〜85iを連結する連結部は円弧状に形成されている。
【0091】
<5.ウインドシールドの製造方法>
次に、ウインドシールドの製造方法の一例について説明する。まず、ガラス板の製造ラインについて説明する。
【0092】
図23に示すように、この製造ラインには、上流から下流へ、加熱炉901、成形装置902がこの順で配置されている。そして、加熱炉901から成形装置902、及びその下流側に亘ってはローラコンベア903が配置されており、加工対象となるガラス板10は、このローラコンベア903により搬送される。ガラス板10は、加熱炉901に搬入される前には、平板状に形成されており、このガラス板10に上述したマスク層2が積層された後、加熱炉901に搬入される。
【0093】
加熱炉901は、種々の構成が可能であるが、例えば、電気加熱炉とすることができる。この加熱炉901は、上流側及び下流側の端部が開放する角筒状の炉本体を備えており、その内部に上流から下流へ向かってローラコンベア903が配置されている。炉本体の内壁面の上面、下面、及び一対の側面には、それぞれヒータ(図示省略)が配置されており、加熱炉901を通過するガラス板10を成形可能な温度、例えば、ガラスの軟化点付近まで加熱する。
【0094】
成形装置902は、上型921及び下型922によりガラス板をプレスし、所定の形状に成形するように構成されている。上型921はガラス板10の上面全体を覆うような下に凸の曲面形状を有し、上下動可能に構成されている。また、下型922はガラス板10の周縁部に対応するような枠状に形成されており、その上面は上型921と対応するように曲面形状を有している。この構成により、ガラス板10は、上型921と下型922との間でプレス成形され、最終的な曲面形状に成形される。また、下型922の枠内には、ローラコンベア903が配置されており、このローラコンベア903は、下型922の枠内を通過するように、上下動可能となっている。そして、図示を省略するが、成形装置902の下流側には、徐冷装置(図示省略)が配置されており、成形されたガラス板が冷却される。
【0095】
上記のようなローラコンベア903は公知のものであり、両端部を回転自在に支持された複数のローラ931が、所定間隔をあけて配置されている。各ローラ931の駆動には種々の方法があるが、例えば、各ローラ931の端部にスプロケットを取り付け、各スプロケットにチェーンを巻回して駆動することができる。そして、各ローラ931の回転速度を調整することで、ガラス板10の搬送速度も調整することができる。なお、成形装置902の下型922はガラス板10の全面に亘って接するような形態でもよい。このほか、成形装置902は、ガラス板を成形するものであれば、上型及び下型の形態は特には限定されない。
【0096】
こうして、外側ガラス板11及び内側ガラス板12が成形されると、これに続いて、中間膜13を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟み、これをゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70〜110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能である。例えば、中間膜13を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟み、オーブンにより45〜65℃で加熱する。続いて、この合わせガラスを0.45〜0.55MPaでロールにより押圧する。次に、この合わせガラスを、再度オーブンにより80〜105℃で加熱した後、0.45〜0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0097】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた合わせガラスを、オートクレーブにより、例えば、8〜15気圧で、100〜150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で145℃の条件で本接着を行うことができる。こうして、本実施形態に係る合わせガラスが製造される。
【0098】
なお、ガラス板として、一枚のガラスを用いる場合には、上述したガラスのうち、一枚を用いればよい。ガラス板の製造方法も同様であり、ガラス板の内面にマスク層を形成した後、加熱を行い、その後、曲面状に成形する。
【0099】
その後、上述した方法で、内側ガラス板の内面に、電熱線8を形成する。
【0100】
<6.特徴>
<6−1>
以上説明したウインドシールドによれば、次のような効果を得ることができる。まず、マスク層2の開口231に電熱線8を積層することで、開口231の曇りを防止することができる。そのため、測定ユニットにより、開口231を介して光を照射したり、受光する際、開口231の曇りによって、光の通過に支障を来たし、測定が正確に行えないなどの不具合を防止することができる。
【0101】
特に、マスク層2の開口231が設けられる車内の上部は、暖房がONになっていても冷えやすく、曇りが生じやすい。したがって、このような位置に電熱線8が積層されているとは有利である。また、電熱線8が積層されているマスク層2の開口231は、測定ユニットが対向配置されたり、あるいはブラケット41により囲まれている。そのため、暖房やデフロスターからの暖気が届きにくいという問題がある。したがって、上記のように、暖気が届きにくい領域に防曇膜を設けることには大きい意義がある。
【0102】
<6−2>
また、上述したように、電熱線8における連結部分においては、局所的な発熱が生じないように、円弧状に形成している。これにより、局所的な発熱を防止できるため、電熱線8も全体的に十分に発熱できるよう制御することができる。
【0103】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0104】
<7−1>
上記実施形態における電熱線の構成は、あくまで例示であり、種々の態様とすることができる。すなわち、電熱線の配線形状、長さは、適宜、設定することができ、またマスク層の開口との関係も適宜設定可能であり、上記実施形態で示したマスク層の開口形状と、電熱線の構成を適宜組み合わせることができる。
【0105】
<7−2>
マスク層2は、上記のように3層の構成を行っているが、これに限定されない。すなわち、上記実施形態では、電磁波を遮蔽するために、銀層242を設けたが、銀とセラミック層を混ぜ合わせた単層を設ける方法や、電磁波を遮蔽できるのであれば、他の材料、例えば、銅やニッケルなどを積層してもよい。また、銀層242が外部から見えないようにするためにセラミック層で挟んでいるが、セラミック層で覆う以外に、上述したカバーなどの部材を用いることもできる。また、必ずしも電磁波の遮蔽層である銀層242を設けなくてもよく、少なくとも外部から見えないような層であればよい。
【0106】
マスク層2は、黒以外でも可能であり、車外からの視野を遮蔽し、車内側が見えないような茶色、灰色、濃紺などの濃色であれば、特には限定されない。また、マスク層の一部または全部を、ガラス板へ貼り付け可能な遮蔽フィルムで構成し、これによって車外からの視野を遮蔽することもできる。なお、遮蔽フィルムを内側ガラス板12の車外側の面に貼り付ける場合には、予備接着の前、または本接着の後に貼付を行うことができる。
【0107】
また、ガラス板において、光の通路の曇りを防止するという観点からすれば、必ずしもマスク層は必要ではなく、光が通過する領域(情報取得領域)に電熱線が形成されていればよい。
【0108】
<7−3>
上記実施形態では、本発明の情報取得装置として、車間距離を測定するセンサ5を用いたが、これに限定されるものではなく、種々の情報取得装置を用いることができる。すなわち、車外からの情報を取得するために、光の照射及び/または受光を行うものであれば、特には限定されない。例えば、車間距離を測定するための可視光線及び/又は赤外線カメラ、光ビーコンなどの車外からの信号を受信する受光装置、道路の白線等を画像にて読み取る可視光線及び/又は赤外線を使用したカメラなど、種々の装置に適用することができる。また、センターマスク層の開口の数は、情報取得装置の種類に応じて、適宜変更することができる。例えば、光の照射、及び受光をそれぞれ専用の開口を通して行うことできる。なお、情報取得装置はガラス板に接触していても接触していなくても良い。いずれにしても、ガラス板において、情報取得装置の光が通過する領域(情報取得領域)に電熱線が形成される。