(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、前記エンジンによって駆動されて作動油を圧送する機械式の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから前記作動油が供給される油圧アクチュエーターと、前記油圧アクチュエーターに供給される前記作動油を制御するコントロールバルブと、前記油圧アクチュエーターによって作動する作動部と、操縦者によって操作される操作部とを備えた作業機械に適用される作業機械の制御装置であって、
前記エンジンの回転数であるエンジン回転数を取得し、前記取得したエンジン回転数が目標回転数となるように前記エンジンを制御するエンジン制御部と、
前記操作部から入力される操作信号にしたがって前記作動部が作動するように前記コントロールバルブを制御する作動制御部と、
前記目標回転数に応じた許容変動数を設定する許容変動数設定部と、
前記目標回転数に対する前記エンジン回転数の変動が前記許容変動数以下となる前記エンジンの負荷である許容負荷を演算する許容負荷演算部とを備え、
前記作動制御部は、前記エンジンの負荷が前記許容負荷に収まるように前記コントロールバルブを制御する
作業機械の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した作業機械においては、作動部の作動等によってエンジンへの負荷が変化した場合、エンジン回転数は、その負荷の変化度合いに応じて変動したのち、再び目標回転数に維持される。この際、エンジン回転数の変動が大きくなると、燃費の低下や騒音の増大を招いてしまう。
【0005】
本発明は、作動部の作動にともなうエンジン回転数の変動を抑えることのできる作業機械の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する作業機械の制御装置は、エンジンと、前記エンジンによって駆動されて作動油を圧送する機械式の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから前記作動油が供給される油圧アクチュエーターと、前記油圧アクチュエーターに供給される前記作動油を制御するコントロールバルブと、前記油圧アクチュエーターによって作動する作動部と、操縦者によって操作される操作部とを備えた作業機械に適用される作業機械の制御装置であって、前記エンジンの回転数であるエンジン回転数を取得し、前記取得したエンジン回転数が目標回転数となるように前記エンジンを制御するエンジン制御部と、前記操作部から入力される操作信号にしたがって前記作動部が作動するように前記コントロールバルブを制御する作動制御部と、前記目標回転数に対する前記エンジン回転数の変動が許容変動数以下となる前記エンジンの負荷である許容負荷を演算する許容負荷演算部とを備え、前記作動制御部は、前記エンジンの負荷が前記許容負荷に収まるように前記コントロールバルブを制御する。
【0007】
上記構成によれば、エンジンの負荷が許容負荷演算部の演算した許容負荷に収まるようにコントロールバルブが制御されることから、エンジン回転数の変動が許容変動数を超えにくくなる。その結果、作動部の作動にともなうエンジン回転数の変動を抑えることができる。
【0008】
上記作業機械の制御装置において、前記許容負荷を演算するときの前記エンジンの負荷を基準負荷とするとき、前記許容負荷演算部は、前記目標回転数、前記許容変動数、および、前記基準負荷をパラメーターに含む予測モデルを用いて前記許容負荷を演算することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、各パラメーターに応じた許容負荷を規定したマップを用いて許容負荷が演算される構成に比べて、許容負荷演算部が必要とする処理領域を低減することができる。また、予測モデルの構築はマップの構築よりも必要となる実機の適合試験が少なくて済むため、許容負荷演算部の設計に要する全体的な時間を短縮することができる。
【0010】
上記作業機械の制御装置において、前記許容負荷演算部は、前記エンジン回転数が前記目標回転数にあるときに前記許容負荷を演算してもよい。
エンジン回転数が目標回転数にあるときのエンジンの負荷は、その時々に応じて異なる。上記構成によれば、エンジン回転数が目標回転数にあるその時々のエンジンの負荷を基準負荷とした許容負荷を演算することができる。また、目標回転数が変更されたとしても、該目標回転数およびエンジンの負荷に応じた許容負荷を演算することができる。
【0011】
上記作業機械の制御装置において、前記許容負荷演算部は、前記エンジン回転数が前記目標回転数を基準とする目標範囲に収まるたびに前記許容負荷を演算するとよい。
実際のエンジン回転数が目標回転数で安定することは非常に希である。そのため、上記構成のように、エンジン回転数が目標範囲に収まるたびに許容負荷を演算することによって、目標回転数が変更された場合であっても許容負荷の変更を早期に行うことができる。
【0012】
上記作業機械の制御装置において、前記許容負荷演算部は、前記エンジン回転数が前記目標範囲にある状態が所定期間だけ継続すると前記許容負荷を演算するとよい。
上記構成によれば、エンジン回転数が目標範囲に安定してから許容負荷が演算される。そのため、エンジン回転数の変動が許容変動数以下となる許容負荷が高い精度のもとで演算されることから、エンジン回転数の変動が許容変動数以下により確実に抑えられる。
【0013】
上記作業機械の制御装置は、前記エンジン制御部および前記許容負荷演算部を有する第1制御装置と前記作動制御部を有する第2制御装置とを備え、前記操作部は、前記第2制御装置に前記目標回転数を入力可能に構成されており、前記第2制御装置は、前記操作部から入力される前記目標回転数と前記目標回転数に応じた前記許容変動数とを前記第1制御装置に出力し、前記第1制御装置は、前記第2制御装置が出力した前記目標回転数と前記許容変動数とに基づいて前記許容負荷演算部の演算した前記許容負荷を前記第2制御装置に出力するように構成してもよい。
【0014】
上記構成によれば、エンジン制御部、許容負荷演算部、作動制御部としての機能が複数の制御装置に分散して搭載されることで全体としての処理速度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図5を参照して、作業機械の制御装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、作業機械10の制御装置20は、例えば油圧ショベル等、油圧を用いて作動する作業機械10に適用される。作業機械10は、制御装置20の他、ディーゼルエンジン11(以下、単にエンジン11という。)と、油圧ポンプ12と、タンク13と、コントロールバルブ14と、油圧アクチュエーター15と、作動部16と、操作部17とを備えている。作動部16は、作業機械10が例えば油圧ショベルの場合、キャブに対して屈曲するブーム、ブームに対して屈曲するアーム、アームに対して屈曲するとともに様々なアタッチメントが取付可能なバケット等で構成される。
【0017】
エンジン11は、図示されない気筒にインジェクターから燃料が直接噴射される直噴式のディーゼルエンジンである。油圧ポンプ12は、エンジン11のクランクシャフトに従動する機械式のポンプであり、タンク13内に貯留された作動油をコントロールバルブ14へ圧送する。コントロールバルブ14は、ブームやアームといった作動部16ごとに設けられた制御弁ユニットで構成されている。各制御弁ユニットは、電子制御式の制御弁である圧力制御弁、流量制御弁、および、方向制御弁等で構成されている。圧力制御弁は、作動部16に供給される作動油の圧力を制御することにより該作動部16の作動力を制御する。流量制御弁は、作動部16に供給される作動油の流量を制御することにより該作動部16の作動速度を制御する。方向制御弁は、作動部16に対応する油圧アクチュエーター15に対する作動油の流出入方向を制御することにより作動部16の作動方向を制御する。油圧アクチュエーター15は、作動部16ごとに設けられた油圧シリンダーや油圧モーター等であり、コントロールバルブ14から作動油が供給されることにより作動部16を作動させる。これらコントロールバルブ14と油圧アクチュエーター15は、パワートレイン18を構成する。
【0018】
操作部17は、例えば作業機械10の操縦者によって操作されるものであり、例えばエンジン11の目標回転数Netを段階的に変更可能なレバーや各作動部16の作動態様を指示するレバー等を備えている。こうした操作部17の操作を示す信号は、第2制御装置であるパワートレインECU(Electronic Control Unit)21に入力される。このパワートレインECU21は、コントロールバルブ14を制御する作動制御部としての機能を有する。
【0019】
パワートレインECU21は、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェース等を有するマイクロコントローラーを中心に構成されている。パワートレインECU21は、操作部17から入力される各作動部16の操作信号と後述するエンジン11の許容負荷Lpとに基づいてコントロールバルブ14を制御する。また、パワートレインECU21は、操作部17から目標回転数Netを示す信号が入力されると、その目標回転数Net、該目標回転数Netに応じた目標範囲Ner、および、該目標回転数Netに応じた許容変動数ΔNeを含む信号を第1制御装置であるエンジンECU22に出力する。
【0020】
目標範囲Nerは、エンジン回転数Neが目標回転数Netにあると判断されるエンジン回転数である。目標範囲Nerは、最小回転数Nemin以上であり、かつ、最大回転数Nemax以下の範囲に属するエンジン回転数である。最小回転数Neminおよび最大回転数Nemaxの各値は、目標回転数Netにかかわらず目標回転数Netに対する差分が同じであってもよいし、目標回転数Netが高いほど目標回転数Netに対する差分が大きくなるように目標回転数Netに応じて変化する値でもよい。この場合、目標範囲Nerは、例えば、目標回転数Netに対する±10%の範囲に設定される。
【0021】
許容変動数ΔNeは、エンジン回転数Neの変動に起因する燃費の低下や騒音の増大が抑えられるエンジン回転数Neの変動数であって、許容上限数ΔNe1と許容下限数ΔNe2を有する。許容変動数ΔNeの各値は、予め定めた一定の値であってもよいし、例えば目標回転数Netが高いほど大きくなるように目標回転数Netに応じて変化する値であってもよい。また、許容変動数ΔNeの各値は、エンジン11の現在の負荷Lが高いほど小さくなるように負荷Lに応じて変化する値であってもよいし、目標回転数Netと負荷Lとに応じて変化する値であってもよい。このように
許容変動数設定部として機能するパワートレインECU21によって目標回転数Netに応じて許容変動数ΔNeが設定されることにより、目標回転数Netにおけるエンジン11の状態や騒音の大きさに応じて許容変動数ΔNeを設定することができる。
【0022】
エンジンECU22は、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェース等を有するマイクロコントローラーを中心に構成されており、エンジン11を制御するエンジン制御部としての機能を有している。エンジンECU22は、エンジン11に取り付けられた各種センサーからの検出信号に基づいて、エンジン回転数Neといったエンジン11の運転状態に関する各種の情報を取得する。そしてエンジンECU22は、その取得した各種の情報に基づいてエンジン回転数Neが目標回転数Netとなるようにインジェクターが噴射する燃料噴射量Qfを演算する。例えばエンジンECU22は、前回噴射時の燃料噴射量Qf(k−1)に対して、目標回転数Netとエンジン回転数Neとの偏差に応じた補正値を加算することにより今回の燃料噴射量Qf(k)を演算する。なお、エンジン回転数Neは、燃料噴射量Qfだけでなく作動部16の作動に起因するエンジン11への回転抵抗によっても変化する。そのため、エンジン回転数Neは、燃料噴射量Qfとコントロールバルブ14の制御態様とに基づいて変動する。
【0023】
また、
図2に示すように、エンジンECU22は、エンジン回転数Neが目標範囲Nerにあるときのエンジン11の負荷Lを基準負荷Lsとして、エンジン回転数Neの変動が許容変動数ΔNeとなる負荷Lである許容負荷Lpを演算する許容負荷演算部としての機能を有する。許容負荷Lpは、許容上限数ΔNe1に対応する最小負荷Lmin以上であり、かつ、許容下限数ΔNe2に対応する最大負荷Lmax以下の範囲に属する負荷である。許容負荷演算部として、エンジンECU22は、目標回転数Net、許容変動数ΔNe、負荷L(基準負荷Ls)、および、その時々のエンジン11の運転状態に関する各種の数値Nsをパラメーターに含む予測モデル23を有している。予測モデル23は、予め行った実験やシミュレーションの結果に基づいて導出されたモデルであって、エンジン回転数Neが目標回転数Netにあり、かつ、負荷Lにあるエンジン11において、エンジン回転数Neの変動が許容変動数ΔNeとなる負荷Lの最大負荷Lmaxと最小負荷Lminとが格別に演算可能に構成されたモデルである。なお、上記数値Nsは、エンジン11の状態を検出するセンサーの検出値であってもよいし、こうした検出値を用いて演算した演算値であってもよい。
【0024】
図3(a)に示すように、最大負荷Lmaxは、時刻t1における負荷L1を基準負荷Lsとするとき、基準負荷Lsおよび目標回転数Netにあるエンジン11において、エンジン回転数Neが許容下限数ΔNe2だけ減少する負荷である。また、
図3(b)に示すように、最小負荷Lminは、時刻t2における負荷L2を基準負荷Lsとするとき、基準負荷Lsおよび目標回転数Netにあるエンジン11において、エンジン回転数Neが許容上限数ΔNe1だけ増加する負荷である。エンジンECU22は、演算した最大負荷Lmaxおよび最小負荷LminをパワートレインECU21に出力する。
【0025】
図4および
図5を参照して、許容負荷Lpを演算する処理である許容負荷演算処理について詳しく説明する。なお、エンジンECU22は、許容負荷演算処理を繰り返し実行する。また、エンジンECU22は、パワートレインECU21から新たな目標回転数Netおよび許容変動数ΔNeが入力されると、許容負荷演算処理が実行中である場合にはその処理を強制的に終了して新たな許容負荷演算処理をスタートしてもよい。
【0026】
図4に示すように、許容負荷演算処理において、エンジンECU22は、最初のステップS11において、エンジン回転数Neが目標範囲Nerにあるか否かを判断する。
図5に示すように、ステップS11においてエンジンECU22は、エンジン回転数Neが目標範囲Nerにある状態が時刻t4から時刻t5までの所定期間T(例えば、1sec)だけ継続したときにエンジン回転数Neが目標範囲Nerにあると判断する。所定期間Tは、エンジン回転数Neが目標範囲Nerで安定していると判断可能な期間であり、予め行った実験やシミュレーションの結果に基づいて設定される期間である。すなわち、エンジンECU22は、たとえば時刻t4より前の時刻t3において負荷Lが負荷L3から負荷L4に変更されたとしても、負荷L4のもとでエンジン回転数Neが目標範囲Nerで安定してからエンジン回転数Neが目標範囲Nerにあると判断する。
【0027】
図4に戻って、エンジン回転数Neが目標範囲Nerにある場合(ステップS11:YES)、エンジンECU22は、目標回転数Net、許容変動数ΔNe(ΔNe1,ΔNe2)、エンジン11の現在の負荷L(基準負荷Ls)、および、その他必要な数値Nsを予測モデル23に入力する(ステップS12)。そして、エンジンECU22は、予測モデル23を用いて許容負荷Lpを構成する最大負荷Lmaxおよび最小負荷Lminを演算すると(ステップS13)、その演算した最大負荷Lmaxおよび最小負荷LminをパワートレインECU21に出力したのち(ステップS14)、新たな許容負荷演算処理を開始する。
【0028】
最大負荷Lmaxおよび最小負荷Lminが入力されたパワートレインECU21は、エンジン11の負荷Lが最小負荷Lminから最大負荷Lmaxの間に収まるようにコントロールバルブ14を制御する。例えば、パワートレインECU21は、エンジンECU22からその時々のエンジン11の負荷Lを取得し、その負荷Lが最小負荷Lminから最大負荷Lmaxの間に収まるようにコントロールバルブ14を制御する。また例えば、パワートレインECU21は、各作動部16に対する作動油の圧力と作動油の流量とを取得し、これら圧力の変化と流量の変化とに基づいてエンジン11の負荷Lを演算する。そして、パワートレインECU21は、その演算した負荷Lが最小負荷Lminから最大負荷Lmaxの間に収まるようにコントロールバルブ14を制御する。
【0029】
上記実施形態の作業機械の制御装置20によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)エンジンECU22が演算した最小負荷Lminから最大負荷Lmaxの間に収まるようにエンジン11の負荷Lが制御されることから、エンジン回転数Neの変動が許容変動数ΔNeを超えなくなる。その結果、作動部16の作動にともなうエンジン回転数Neの変動を抑えることができる。
【0030】
(2)エンジン回転数Neが目標範囲Nerにあるときのエンジン11の負荷Lは、作動部16の作動状況等によってその時々に応じて異なる。この点、上記構成では、エンジン回転数Neが目標範囲Nerで安定するたびに許容負荷Lpが演算される。そのため、エンジン回転数Neが目標範囲Nerにあるその時々のエンジン11の負荷Lを基準負荷Lsとして許容負荷Lpを演算することができる。また、目標回転数Netが変更されたとしても、該目標回転数Netおよびその時々のエンジン11の負荷Lに応じた許容負荷Lpを演算することができる。
【0031】
また、実際のエンジン回転数Neが厳密に目標回転数Netにある状態は非常に希である。そのため、上記構成のようにエンジン回転数Neが目標範囲Nerにあることでエンジン回転数Neが目標回転数Netにあると判断することによって、例えば目標回転数Netが変更された場合であっても許容負荷Lpの変更を早期に行うことができる。
【0032】
(3)また、エンジン回転数Neが目標範囲Nerで安定してから許容負荷Lpが演算されるため、エンジン回転数Neの変動が許容変動数ΔNe以下となる許容負荷Lpが高い精度のもとで演算される。これにより、エンジン回転数Neの変動が許容変動数ΔNe以下により確実に抑えられる。そのうえ、許容負荷Lpの演算回数が低減されることから、許容負荷Lpが頻繁に変更されることがなくなり、許容負荷Lpの演算に起因したエンジンECU22への負荷を軽減することもできる。
【0033】
(4)許容負荷Lpは、例えば、目標回転数Net、許容変動数ΔNe、および、負荷Lをパラメーターとして許容負荷Lpが規定されたマップを用いて演算することも可能である。しかしながら、こうした構成では、許容負荷演算部が必要とする処理領域、特にマップが占める領域が大きくなってしまう。この点、許容負荷演算部としてのエンジンECU22は、予測モデル23に各パラメーターを代入することにより許容負荷Lpを演算する。その結果、許容負荷演算部が必要とする処理領域を低減することができる。また、予測モデル23の構築は、上記マップの構築よりも必要とされる実機の適合試験が少なくて済む。そのため、許容負荷演算部の設計に要する全体的な時間を短縮することもできる。
【0034】
(5)上記構成のように、エンジンECU22がエンジン制御部および許容負荷演算部としての機能を有し、パワートレインECU21が作動制御部としての機能を有している。このように、エンジン制御部、許容負荷演算部、作動制御部としての機能が複数のECUに分散して搭載されることにより、これらの機能が1つのECUで具現化される場合に比べて、全体としての処理速度を高めることができる。
【0035】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・エンジン制御部、許容負荷演算部、作動制御部としての機能は、1つのECUに搭載されていてもよい。
【0036】
・許容負荷演算部は、目標回転数Net、許容変動数ΔNe、および、負荷Lをパラメーターとして許容負荷Lpが規定されたマップを用いて許容負荷Lpを演算してもよい。
・許容負荷演算部は、エンジン回転数Neが目標範囲Nerにあるときに許容負荷Lpを演算すればよい。そのため、許容負荷演算部は、エンジン回転数Neが目標範囲Nerに収まったときに所定期間Tを待たずして許容負荷Lpを演算してもよい。
【0037】
・許容負荷演算部は、エンジン回転数Neが目標範囲Nerに収まるたびに許容負荷Lpを演算する構成に限らず、例えば、目標回転数Netの変更後にエンジン回転数Neが変更後の目標範囲Nerに到達したことを契機として許容負荷Lpを演算する構成であってもよい。また例えば、前回の許容負荷Lpの演算から一定期間経過したことを契機として許容負荷Lpを演算する構成であってもよい。また、許容負荷演算部は、エンジン回転数Neが目標範囲Nerではなく、目標回転数Netにあるときに許容負荷Lpを演算してもよい。
【0038】
・許容上限数ΔNe1と許容下限数ΔNe2とは、同じ大きさの値であってもよいし、互いに異なる大きさの値であってもよい。また、許容上限数ΔNe1と許容下限数ΔNe2とは、目標回転数Netごとに異なる大きさの値であってもよい。
【0039】
・作業機械は、エンジンに従動する機械式の油圧ポンプが発生させた油圧を用いて作動部を作動させるものであればよく、油圧ショベルの他、クレーンのような建設機械であってもよいし、例えばコンバインやトラクターといった農業機械であってもよい。
【0040】
・目標回転数Netは、操作部17によって変更されるものではなく、一定の値であってもよい。
・エンジンは、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンであってもよい。
【0041】
・制御装置20は、目標回転数Netに対するエンジン回転数Neの変動が許容変動数ΔNeに収まるようにエンジン11およびコントロールバルブ14を制御すればよい。そのため、制御装置20は、エンジン回転数Neが目標範囲Nerに収まった場合に許容負荷Lpを演算する構成に限らず、エンジン回転数Neにかかわらず許容負荷Lpを繰り返し演算し続ける構成でもよい。
【0042】
すなわち、上記作業機械の制御装置において、前記許容負荷演算部は、前記許容負荷を繰り返し演算し続けるものであり、前記目標回転数に対する前記エンジン回転数の変動が許容変動数以下である範囲を許容範囲とするとき、前記作動制御部は、前記エンジン回転数を取得し、前記取得したエンジン回転数が前記許容範囲に収まっている場合に前記エンジンの負荷が前記許容負荷に収まるように前記コントロールバルブを制御し、前記取得したエンジン回転数が前記許容範囲から外れている場合には前記エンジンの負荷を前記許容負荷に収めることよりも前記エンジン回転数を前記許容範囲に収めることを優先して前記コントロールバルブを制御してもよい。
【0043】
上記構成によれば、エンジン回転数が許容範囲に収まっている場合には、作動部の作動にともなうエンジン回転数の変動を抑えることができる。また、例えば目標回転数の変更時といったエンジン回転数が許容範囲から外れている場合には、エンジン回転数を早急に許容範囲に収めることができる。すなわち、上記構成によれば、エンジン回転数およびエンジンの負荷のうち、その時々のエンジンの運転状態に応じて制御すべきパラメーターを優先して制御することができる。
【0044】
上述した許容負荷Lpを演算し続ける構成において、パワートレインECU21は、操作部17から目標回転数Netを示す信号が入力されると、目標回転数Netと該目標回転数Netに応じた許容変動数ΔNeとを含む信号をエンジンECU22に出力する。
【0045】
エンジンECU22は、目標回転数Net、許容変動数ΔNe、いま現在のエンジン11の負荷Lである基準負荷Ls、および、その他必要な数値Nsの1つとしていま現在のエンジン回転数Neを予測モデル23に入力する。この場合の予測モデル23は、エンジン回転数Neおよび負荷L(=Ls)にあるエンジン11において、エンジン回転数Neが上限回転数Ne1(=Net+ΔNe1)となる最小負荷Lminとエンジン回転数Neが下限回転数Ne2(=Net−ΔNe2)となる最大負荷Lmaxとが格別に演算可能に構成されたモデルである。この予測モデル23は、エンジン回転数Neが下限回転数Ne2よりも低い場合、あるいは、エンジン回転数Neが上限回転数Ne1よりも高い場合であっても、その時々の負荷Lを基準負荷Lsとして最小負荷Lminと最大負荷Lmaxとを演算する。また、この予測モデル23は、いま現在のエンジン11の負荷Lが許容負荷Lpから外れていても、その負荷Lを基準負荷Lsとして最小負荷Lminと最大負荷Lmaxとを演算する。ちなみに、予測モデル23は、エンジン回転数Neが上限回転数Ne1よりも高い場合には基準負荷Lsよりも大きい負荷を最小負荷Lminとして演算し、エンジン回転数Neが下限回転数Ne2よりも低い場合には基準負荷Lsよりも小さい負荷を最大負荷Lmaxとして演算する。
【0046】
すなわち、許容負荷Lpを演算し続ける構成にて、予測モデル23は、その時々のエンジン回転数Neおよび負荷Lに応じてエンジン11の負荷Lをどの程度増減させてよいかが演算されるモデルであり、エンジン回転数Neが目標回転数Netのときは上記実施形態の予測モデル23と同じ値が出力されるモデルである。エンジンECU22は、許容負荷LpをパワートレインECU21に出力する。なお、以下では、エンジン回転数Neについて、下限回転数Ne2以上、上限回転数Ne1以下の範囲を許容範囲Nepという。
【0047】
図6に示すように、パワートレインECU21は、エンジンECU22から許容負荷Lpが入力されるたびにコントロールバルブ14の制御モードを選択する選択処理を実行する。選択処理において、パワートレインECU21は、エンジン回転数Neを取得し、その取得したエンジン回転数Neが許容範囲Nepに収まっているか否かを判断する(ステップS21)。エンジン回転数Neが許容範囲Nepに収まっている場合(ステップS21:YES)、パワートレインECU21は、エンジン11の負荷Lを許容負荷Lpに収めることを優先させる負荷優先モードを選択する(ステップS22)。負荷優先モードにおいて、パワートレインECU21は、エンジン11の負荷Lが許容負荷Lpに収まるように、すなわちエンジン回転数Neの変動が許容変動数ΔNe以下に収まるようにコントロールバルブ14を制御する。
【0048】
一方、エンジン回転数Neが許容範囲Nepから外れている場合(ステップS21:NO)、パワートレインECU21は、エンジン回転数Neを許容範囲Nepに収めることを優先させる回転数優先モードを選択する(ステップS23)。
【0049】
回転数優先モードの一例において、パワートレインECU21は、予測モデル23が演算した上限回転数Ne1よりもエンジン回転数Neが高い場合には、エンジン11の負荷Lが最大負荷Lmaxとなるようにコントロールバルブ14を制御する。また、パワートレインECU21は、予測モデル23が演算した下限回転数Ne2よりもエンジン回転数Neが低い場合には、エンジン11の負荷Lが最小負荷Lminとなるようにコントロールバルブ14を制御する。
【0050】
回転数優先モードの他の例において、パワートレインECU21は、エンジン回転数Neが早急に許容範囲に収まるように、許容負荷Lpを考慮することなくコントロールバルブ14を制御する。このときのコントロールバルブ14の制御量は、例えば、基準負荷Ls、上限回転数Ne1あるいは下限回転数Ne2とエンジン回転数Neとの偏差、これらに基づいて演算される。
【0051】
こうした構成によれば、エンジン回転数Neが許容範囲Nepに収まっている場合には、作動部16の作動にともなうエンジン回転数Neの変動を抑えることができる。また、例えば目標回転数Netの変更時等、エンジン回転数Neが許容範囲Nepから外れている場合には、エンジン回転数Neを早急に許容範囲Nepに収めることができる。すなわち、エンジン回転数Neを許容範囲Nepに収めるうえで、エンジン回転数Neおよびエンジン11の負荷Lのうち、その時々のエンジン11の運転状態に応じて制御すべきパラメーターを優先して制御することができる。そのうえ、その時々の許容負荷Lpに基づいてコントロールバルブが制御されることから、エンジン回転数Neの変動が許容変動数ΔNeをさらに超えにくくなる。
【0052】
なお、パワートレインECU21は、許容負荷Lpとともに許容負荷Lpの演算に用いたエンジン回転数NeがエンジンECU22から入力されることによりエンジン回転数Neを取得してもよいし、エンジン11に取り付けたセンサーからエンジン回転数Neを取得する構成であってもよい。
【0053】
・上記制御装置20において、パワートレインECU21は、エンジン回転数Neを許容変動数ΔNeに収める制御モード(第1モード)の他、作業機械10の運転状態に応じてエンジン回転数Neが許容変動数ΔNeから外れることを許容する制御モード(第2モード)を有していてもよい。例えば、パワートレインECU21は、いま現在のエンジン11の負荷Lを演算し、最大負荷Lmaxにエンジン11があるときに操作部17からさらなるエンジン11の出力を要求する操作信号が入力されたときに第2モードに移行する。この際、パワートレインECU21は、その操作信号に基づいて作動部16を作動させるべくコントロールバルブ14を制御する。