【文献】
Al-Dubai H et al.,Biocompatible medical implant materials with binding sites for a biodegradable drug-delivery system,Nanotechnology, Science and Applications,2011年,Vol.4,p.87-94
【文献】
Devaraj NK et al.,Reactive polymer enables efficient in vivo bioorthogonal chemistry,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2012年 3月27日,Vol.109, No.13,p.4762-4767
【文献】
田畑 泰彦 編集,遺伝子医学MOOK別冊 ここまで広がるドラッグ徐放技術の最前線―古くて新しいドラッグデリバリーシステム(DDS)―,株式会社 メディカル ドゥ,2013年 3月20日,p.96−101,1.低分子薬物を用いた治療 3)ハイドロゲル
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記標的が生体直交型官能基を含み、前記標的認識部分が相補官能基を含み、該生体直交型官能基がクリックケミストリーにより該相補官能基と化学反応して共有結合を形成することができる、請求項1に記載のシステム。
前記生体直交型官能基がアルケンを含み、前記相補官能基がテトラジン(Tz)を含むか;または前記生体直交型官能基がテトラジン(Tz)を含み、前記相補官能基がアルケンを含む、請求項6に記載のシステム。
前記生体直交型官能基がテトラジン(Tz)を含み、前記相補官能基がノルボルネンを含むか;または前記生体直交型官能基がノルボルネンを含み、前記相補官能基がテトラジン(Tz)を含む、請求項7に記載のシステム。
前記医薬組成物が、抗がん薬物、創傷治癒を促進する薬物、脈管再生を促進する薬物、感染症を処置もしくは予防する薬物、再狭窄を予防する薬物、眼疾患を処置する医薬組成物、黄斑変性を低減する薬物、免疫学的拒絶反応を予防する薬物、血栓症を予防する薬物、または炎症を処置する薬物を含む、請求項1に記載のシステム。
腫瘍のサイズの維持もしくは低減、またはがんの進行の低減を必要とする被験体において腫瘍のサイズを維持もしくは低減、またはがんの進行を低減する請求項1に記載のシステムであって、
前記生分解性薬物送達デバイスが該被験体に投与され、
その後、前記薬物補充物が該被験体に投与され、ここで前記医薬品組成物は抗がん薬物を含み、
任意選択で、前記薬物補充物の投与が反復されることを特徴とする、システム。
前記補充物が、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される、請求項28に記載のシステム。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
診療所で今日使用されている薬物送達デポーは使い捨てであり、薬物が使い果たされてしまうと補充することができない。これらのシステムのペイロードが使い果たされてしまうと、これらのシステムに補充するための非侵襲的技法は現在存在しない。本発明は、滞留している、例えば以前に投与された/埋め込まれた薬物送達システム、例えばヒドロゲル薬物送達システムにホーミングして補充する全身投与薬物ペイロードの開発に一部基づく。本発明は、上記の必要性に対処する。
【0005】
一態様では、本発明の薬物送達デポーは、全身投与、例えば、経腸(例えば、経口、頬側、舌下もしくは直腸)投与または非経口(例えば、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内、髄腔内(intrathecally)もしくは皮下)投与される。本発明の薬物送達システムの他の適する投与方式としては、皮下組織、腹腔内、眼内、鼻腔内、経真皮(transdermal)(例えば、皮膚パッチによる)、硬膜外、頭蓋内、経皮(percutaneous)、膣内、子宮内(intrauterineal)、硝子体内もしくは経粘膜投与、または注射による、エアロゾルベースの送達による、もしくは埋め込みによる投与が挙げられる。
【0006】
デバイスは、装置、送達スキャホールドもしくはビヒクル、インプラント、器具、または身体に投与される同様の物品などの構造である。例えば、デバイスは、治療剤を送達するために、および/または治療剤の初回用量もしくは後続の用量を受けるために、例えば、治療剤の用量を補充するために、身体組織に注射されるまたは埋め込まれる。本明細書に記載のデバイスおよびシステムは、最小侵襲的手法での治療剤、例えば小分子、治療用ペプチドおよびタンパク質、治療用核酸の薬物送達デバイスへの標的指向化および蓄積を媒介する。例えば、局所薬物送達のために埋め込まれるまたは注射されるデバイス、例えばゲルまたはステントは、血液に注入されたまたは摂取された小分子薬または薬物補充物(drug refill)を捕捉するように改変される。患者の血液に注入された薬物ペイロードは標的領域に局在し、その薬物ペイロードにデバイスが結合し、その結果、標的部位でのその後の薬物の徐放が可能になる。
【0007】
一部の例では、本明細書に記載の薬物送達システムは、薬物をデバイスに送達するための、非ウイルスベクター、例えば、無機ナノ粒子、例えばリン酸カルシウムポリマーナノ製剤、縮合核酸、およびリポソーム核酸の使用を含む。例えば、カチオン性リポソームまたはカチオン性ポリマーを使用して、核酸、例えば、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)をデバイスに送達する。場合によっては、核酸は、siRNA、RNAi、mRNAおよびマイクロRNAを含む。核酸の他の形態としては、アンチセンスおよびアンチジーン分子、スプライス補正核酸、ギャップマー、およびアンタゴミア(antigomir)が挙げられる。例えば、非ウイルスベクターを使用して、クリックケミストリーホーミングモチーフを含む個々の核酸分子をデバイスに送達する。一態様では、アンチセンス分子をナノ担体なしで全身投与、例えば静脈内投与する。
【0008】
一部の例では、相補DNAを担持するナノ粒子の形態の薬物ペイロードの標的となる一本鎖DNAでヒドロゲルを修飾する。DNAの遊離アルギネートポリマーとのカップリングは、in vitroでは相補DNA担持アルギネートゲルへの、およびin vivoでは注射されたゲルへの特異的結合をもたらす。本明細書に記載する結果は、薬物ペイロードとカップリングさせたとき、送達デポー、例えば腫瘍内ヒドロゲルへのDNA標的指向化補充が腫瘍成長を完全に抑制したことを示す。
【0009】
本発明は、ナノ治療薬送達方法、例えば、腫瘍内薬物デポーへの血液ベースの薬物補充のためのDNAナノテクノロジーベースのアプローチを提供する。このアプローチの有用性は、透過性・滞留性亢進のみに依存する戦略より大きな程度まで腫瘍成長を阻害する本明細書に記載のデバイスおよび方法の能力によって実証された。本発明の薬物送達デバイスは、非常に多くの疾患、例えば、がん治療、創傷治癒、炎症ならびに薬物溶出性血管グラフトおよびステントにおける薬物デポーへの補充に応用される。
【0010】
本発明は、薬物送達デバイス、例えば停留薬物送達デバイス(stationary drug delivery device)と、全身送達される薬物補充物組成物とを含むシステムを特徴とする。薬物送達デバイスは、標的認識部分、例えば分子を含む。場合によっては、薬物送達デバイスは、医薬組成物も含む。薬物送達デバイスは、任意選択で、材料、例えば、ポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルもしくは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料を含む。薬物補充物は、医薬組成物および標的を含む。標的および標的認識部分は、二成分結合対を形成する。薬物補充物は、その薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分と結合するまで可動性である。標的が標的認識部分と結合すると、薬物補充物は医薬組成物を薬物送達デバイスに送達し、それによって薬物送達デバイスが補充される。一部の実施形態では、薬物補充物は、ナノ担体、例えばポリマーをさらに含む。例えば、医薬組成物は、例えば共有結合、非共有結合またはイオン結合によって、標的分子に連結されている。あるいは、医薬組成物は、例えば共有結合、非共有結合またはイオン結合によって、ポリマーに連結されている。別の実施形態では、標的分子が、例えば共有結合、非共有結合またはイオン結合によって、ポリマーに連結されている。
【0011】
場合によっては、システムは、複数の送達デバイス、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも(at lest)25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50またはそれ超のデバイスを含む。場合によっては、システムは、複数の薬物補充物、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50またはそれ超の薬物補充物を含む。
【0012】
任意選択で、各薬物補充物は、医薬組成物および異なる標的を含み、各薬物送達デバイスは、異なる標的認識部分を含む。任意選択で、各薬物補充物は、異なる医薬組成物を含む。このようにして、各薬物補充物は、異なる位置で異なる薬物送達デバイスと結合し、それによって各デバイスの、例えば複数の疾患部位での、独立した補充が可能になる。あるいは、各薬物補充物は、複数の標的を含み、各送達デバイスは、複数の標的認識部分を含む。
【0013】
適する薬物送達デバイスは、材料、例えば合成材料を含む。例示的薬物送達デバイスは、ポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルもしくは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料を含む。場合によっては、本発明の薬物送達デバイスは、タンパク質を含む。あるいは、本発明の薬物送達デバイスは、タンパク質を含まない。好ましくは、本発明のデバイスは、生細胞、例えばがん細胞も、他の生物学的実体も含まない。好ましくは、標的認識部分、例えば分子は、生細胞、タンパク質、または膜結合受容体もしくはリガンドと結合されていない。代わりに、標的認識部分はデバイスに直接結合しており、すなわち、デバイスと標的認識部分の間に媒介(intermedicate)部分、すなわち受容体、リンカー、リガンドなどがない。このため、非特異的相互作用の原因となりうる媒介結合部分とは異なり、本明細書に記載の薬物送達システムに関連する非特異的結合はない。このようにして、医薬組成物(例えば薬物)および標的分子をデバイス自体の標的認識部分に指向させる。
【0014】
材料、例えばポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルもしくは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料と、標的認識部分、例えば分子とを含む、薬物送達デバイスも提供される。例えば、デバイスを医薬組成物、例えば薬物なしで埋め込むまたは注射する。この場合、薬物送達デバイスを埋め込んだまたは注射した後、医薬組成物および標的認識部分をまずその薬物送達デバイスに負荷する。例えば、材料と標的認識部分とを含む薬物送達デバイスを埋め込むまたは注射する。その後、感染症が起こった場合、抗生物質および標的認識部分をまず薬物送達デバイスに負荷する。
【0015】
本発明は、材料、医薬組成物および標的認識部分を含む停留薬物送達デバイスであって、標的認識部分が標的と結合することができる、停留薬物送達デバイスも提供する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、医薬組成物および標的を含む薬物補充物であって、標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分、例えば分子と結合することができ、標的が標的認識部分と結合するまで薬物補充物が可動性であり、標的が標的認識部分と結合すると、薬物補充物が薬物送達デバイス内または上に医薬組成物を送達/補給する、薬物補充物を提供する。一部の実施形態では、薬物補充物は、ナノ担体、例えば、ポリマー、ナノ粒子、リポソームナノ粒子、デンドリマー、カーボンナノチューブ、ミセル、タンパク質(例えばアルブミン)、シリカまたは金属(例えば金、銀もしくは鉄)ナノ粒子をさらに含む。例えば、医薬組成物は、例えば共有結合、非共有結合またはイオン結合によって、標的分子に連結されている。あるいは、医薬組成物は、例えば共有結合、非共有結合またはイオン結合によって、ナノ担体に連結されている。別の実施形態では、標的分子は、例えば共有結合、非共有結合またはイオン結合によって、ポリマーに連結されている。
【0017】
一部の実施形態では、標的および/または標的認識部分は、核酸、ペプチド、多糖類、脂質、小分子またはこれらの組合せを含み、ホーミング剤は、核酸、ペプチド、多糖類、脂質、小分子またはこれらの組合せを含む。
【0018】
場合によっては、標的および標的認識部分は核酸を含む。例えば、標的は、標的認識部分の核酸配列に相補的である核酸配列を含む。
【0019】
例えば、核酸は、DNA、RNA、修飾DNAまたは修飾RNAを含む。一部の例では、核酸は、DNAまたは修飾DNAを含む。
【0020】
場合によっては、標的は、標的認識部分の1つまたは複数のヌクレオチドに相補的である1つまたは複数のヌクレオチドを含む。例えば、標的のヌクレオチドの50%またはそれ超(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%)は、標的認識部分のヌクレオチドの50%またはそれ超(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%)に相補的である。
【0021】
一部の例では、標的:標的認識部分ハイブリダイゼーションの融解温度(Tm)は、少なくとも40℃、例えば、少なくとも40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃もしくは100℃、またはそれ超である。
【0022】
例示的核酸としては、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、トレオース核酸(TNA)、ヘキシトール核酸(HNA)、架橋核酸(bridge nucleic acid)、シクロヘキセニル核酸、グリセロール核酸、モルホリノ、ホスホモルホリノ、ならびにこれらのアプタマーおよび触媒核酸バージョンが挙げられる。例えば、核酸は、修飾窒素塩基を含有する。例えば、修飾DNAおよびRNAとしては、2’−o−メチルDNA、2’−o−メチルRNA、2’−フルオロ−DNA、2’−フルオロ−RNA、2’−メトキシ−プリン、2’−フルオロ−ピリミジン、2’−メトキシメチル−DNA、2’−メトキシメチル−RNA、2’−アクリルアミド−DNA、2’−アクリルアミド−RNA、2’−エタノール−DNA、2’−エタノール−RNA、2’−メタノール−DNA、2’−メタノール−RNA、およびこれらの組合せが挙げられる。場合によっては、核酸は、リン酸エステル骨格を含有する。他の場合、核酸は、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート骨格、ホスホロボレート骨格、メチルホスホネート骨格、ホスホロセレノエート骨格、またはホスホロアミデート骨格を含有する。
【0023】
場合によっては、核酸は一本鎖である。例えば、核酸は、例えばヘアピンなどの二次構造のため、一部分は一本鎖であり、一部分は二本鎖である。
【0024】
一部の例では、各核酸分子は、8〜50個のヌクレオチド、例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48または50個のヌクレオチドを含む。一例では、核酸分子は、20個のヌクレオチドを含む。
【0025】
例えば、標的および/または標的認識部分は、8〜50個のヌクレオチド、例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48または50個のヌクレオチド、例えば20個のヌクレオチドを含む、核酸分子を含む。
【0026】
一部の実施形態では、標的は、(T)
20とも呼ばれる、TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号1)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。他の例では、標的は、(A)
20とも呼ばれる、AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号2)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。
【0027】
他の実施形態では、標的認識部分は、(T)
20とも呼ばれる、TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号1)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。他の例では、標的認識部分は、(A)
20とも呼ばれる、AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号2)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。
【0028】
他の実施形態では、標的は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含み、標的認識部分は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含む。あるいは、標的は、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジンまたは他の形態のアビジンを含み、標的認識部分は、ビオチンまたはデスチオビオチンを含む。
【0029】
他の場合、標的は生体直交型官能基(bioorthogonal functional group)を含み、標的認識部分は相補官能基を含み、生体直交型官能基は相補官能基と化学反応して共有結合を形成することができる。
【0030】
例示的生体直交型官能基/相補官能基対としては、アジドとホスフィン、アジドとシクロオクチン、ニトロンとシクロオクチン、ニトリルオキシドとノルボルネン、オキサノルボルナジエンとアジド、トランス−シクロオクテンとs−テトラジン、クアドリシクランとビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)が挙げられる。
【0031】
例えば、生体直交型官能基は、相補官能基とクリックケミストリーによって反応することができる。場合によっては、生体直交型官能基は、アルケン、例えば、シクロオクテン、例えばトランスシクロオクテン(TCO)またはノルボルネン(NOR)を含み、相補官能基は、テトラジン(Tz)を含む。一部の例では、生体直交型官能基は、アルキン、例えば、シクロオクチン、例えばジベンゾシクロオクチン(DBCO)を含み、相補官能基は、アジド(Az)を含む。他の例では、生体直交型官能基はTzを含み、相補官能基は、アルケン、例えばトランスシクロオクテン(TCO)またはノルボルネン(NOR)を含む。あるいは、または加えて、生体直交型官能基はAzを含み、相補官能基は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチンを含む。当業者はいくつかの他の可能な生体直交型−相補官能基対を容易に特定できると予想されるため、このリストは、非包括的であり、非限定的である。
【0032】
一部の実施形態では、標的分子(例えば、核酸分子、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、または本明細書に記載の生体直交型官能基)の補充物上のポリマー分子(例えばアルギネート鎖)に対する比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1であるか、またはそれより高い。
【0033】
場合によっては、標的認識分子(例えば、核酸分子、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、または本明細書に記載の生体直交型官能基)のデバイス上のポリマー分子(例えばアルギネートヒドロゲル)に対する比は、少なくとも5:1、例えば、少なくとも5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1であるか、またはそれより高い。
【0034】
場合によっては、標的認識部分に対する標的の結合親和性は、500μMまたはそれ未満である。
【0035】
一部の実施形態では、例えば解離定数(K
D)によって測定される、標的と標的認識部分の間の結合親和性は、1mMまたはそれ未満、例えば、1mM、900μM、800μM、700μM、600μM、500μM、400μM、300μM、200μM、100μM、50μM、10μM、1μM、500nM、250nM、100nM、50nM、10nM、1nM、500pM、250pM、100pM、50pM、10pM、1pM、0.1pM、0.01pM、またはそれ未満である。ホーミング剤と標的指向剤の相互作用のK
Dは、当技術分野における標準法を使用して測定される。
【0036】
一部の実施形態では、例えば、薬物送達デバイスおよび/または補充物中の医薬組成物は、抗がん薬物、創傷治癒を促進する薬物、感染症を処置もしくは予防する薬物、または脈管再生を促進する薬物を含む。例えば、医薬組成物は、抗がん薬物を含む。例えば、抗がん薬物は、化学療法薬、例えばがんワクチンを含む。
【0037】
場合によっては、抗がん薬物は、小分子、ペプチドもしくはポリペプチド、タンパク質もしくはその断片(例えば、抗体もしくはその断片)、または核酸を含む。
【0038】
例示的抗がん薬物としては、アビラテロン酢酸エステル、アビトレキサート(メトトレキサート)、アブラキサン(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE−PC、AC、AC−T、アドセトリス(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、Ado−トラスツズマブエムタンシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)、アドルシル(フルオロウラシル)、アファチニブ二マレイン酸塩、アフィニトール(エベロリムス)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリムタ(ペメトレキセド二ナトリウム)、アロキシ(パロノセトロン塩酸塩)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、アレディア(パミドロン酸二ナトリウム)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、三酸化ヒ素、アーゼラ(オファツムマブ)、Erwinia chrysanthemi由来アスパラギナーゼ、アバスチン(ベバシズマブ)、アキシチニブ、アザシチジン、BEACOPP、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベキサール(トシツモマブおよびI131ヨウ素トシツモマブ)、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボシュリフ(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブスルファン、ブスルフェクス(ブスルファン)、カバジタキセル、カボザンチニブS−リンゴ酸塩(Cabozantinib−S−Malate)、CAF、キャンパス(アレムツズマブ)、カンプトサール(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、カルボプラチン、カルボプラチン・タキソール、カルフィルゾミブ、カソデックス(ビカルタミド)、CeeNU(ロムスチン)、セルビジン(ダウノルビシン塩酸塩)、サーバリックス(組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、クロラムブシル、クロラムブシル・プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラフェン(シクロホスファミド)、クロファラビン、クロファレックス(クロファラビン)、クロラール(クロファラビン)、CMF、コメトリク(カボザンチニブS−リンゴ酸塩)、COPP、COPP−ABV、コスメゲン(ダクチノマイシン)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、サイフォス(Cyfos)(イホスファミド)、シタラビン、シタラビンリポソーム、シトサール−U(シタラビン)、シトキサン(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダコゲン(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンディフティトックス、デノスマブ、DepoCyt(リポソームシタラビン)、DepoFoam(リポソームシタラビン)、デクスラゾキサン塩酸塩、ドセタキセル、ドキシル(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox−SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTIC−Dome(ダカルバジン)、エフデックス(フルオロウラシル)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エレンス(エピルビシン塩酸塩)、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、イメンド(アプレピタント)、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、アービタックス(セツキシマブ)、エリブリンメシル酸塩、エリベッジ(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(Erwinia chrysanthemi由来アスパラギナーゼ)、エトポフォス(エトポシドホスフェート)、エトポシド、エトポシドホスフェート、エバセト(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩)、エキセメスタン、フェアストン(トレミフェン)、フェソロデックス(フルベストラント)、FEC、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、フルダラ(フルダラビンリン酸エステル)、フルダラビンホスフェート、フルオロプレックス(フルオロウラシル)、フルオロウラシル、フォレックス(メトトレキサート)、フォレックスPFS(メトトレキサート)、フォルフィリ、フォルフィリ・ベバシズマブ、フォルフィリ・セツキシマブ、フォルフィリノックス、フォルフォクス、フォロチン(プララトレキサート)、FU−LV、フルベストラント、ガーダシル(組換えHPV四価ワクチン)、ガジバ(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン・シスプラチン、ゲムシタビン・オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ジェムザール(ゲムシタビン塩酸塩)、ジロトリフ(アファチニブ二マレイン酸塩(Afatinib Dimaleate))、グリベック(メシル酸イマチニブ)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、組換えHPV二価ワクチン、組換えHPV四価ワクチン、ハイカムチン(トポテカン塩酸塩)、ハイパーCVAD、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩)、イフェックス(イホスファミド)、イホスファミド、イホスファミダム(Ifosfamidum)(イホスファミド)、メシル酸イマチニブ、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミキモド、インライタ(アキシチニブ)、イントロンA(組換えインターフェロンアルファ−2b)、ヨウ素131トシツモマブおよびトシツモマブ、イピリムマブ、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イストダックス(ロミデプシン)、イクサベピロン、イグゼンプラ(イクサベピロン)、ジャカフィ(Jakafi)(ルキソリチニブリン酸塩)、ジェブタナ(カバジタキセル)、カドサイラ(Ado−トラスツズマブエムタンシン)、ケオキシフェン(ラロキシフェン塩酸塩)、ケピバンス(パリフェルミン)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ラパチニブ二トシル酸塩、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイケラン(クロラムブシル)、ロイプロリド酢酸塩、レブラン(アミノレブリン酸)、リンホリジン(Linfolizin)(クロラムブシル)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、リポソームシタラビン、ロムスチン、リュープロン(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー−Ped(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー・3カ月製剤(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー・4カ月製剤(ロイプロリド酢酸塩)、マルキボ(Marqibo)(ビンクリスチン硫酸塩リポソーム)、マチュレーン(Matulane)(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、メゲース(メゲストロール酢酸エステル)、メゲストロールアセテート、メキニスト(トラメチニブ)、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(メスナ)、メタゾラストン(テモゾロミド)、メトトレキサート、メトトレキサートLPF(メトトレキサート)、メキサート(メトトレキサート)、メキサート−AQ(メトトレキサート)、マイトマイシンC、ミトザイトレックス(Mitozytrex)(マイトマイシンC)、MOPP、モゾビル(プレリキサフォル)、マスタージェン(Mustargen)(メクロレタミン塩酸塩)、ムタマイシン(マイトマイシンC)、ミレラン(ブスルファン)、マイロサール(Mylosar)(アザシチジン)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ナノ粒子パクリタキセル(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ナベルビン(ビノレルビン酒石酸塩)、ネララビン、ネオサール(シクロホスファミド)、ニューポジェン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブトシル酸塩)、ニロチニブ、ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)、エヌプレート(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オマセタキシンメペサクシネート、オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)、オンタック(デニロイキンディフティトックス)、OEPA、OPPA、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パミドロン酸二ナトリウム、パニツムマブ、パラプラット(Paraplat)(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、ペグアスパルガーゼ、ペグインターフェロンアルファ−2b、PEG−イントロン(ペグインターフェロンアルファ−2b)、ペメトレキセド二ナトリウム、パージェタ(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール−AQ(シスプラチン)、プレリキサフォル、ポマリドミド、ポマリスト(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プロリア(デノスマブ)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、プロベンジ(シプロイセルT)、プリネトール(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラスブリカーゼ、R−CHOP、R−CVP、組換えHPV二価ワクチン、組換えHPV四価ワクチン、組換えインターフェロンアルファ−2b、レゴラフェニブ、レブラミド(レナリドミド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リツキサン(リツキシマブ)、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルキソリチニブリン酸塩、スクレロゾール胸膜内用エアロゾル(タルク)、シプロイセル−T、ソラフェニブトシル酸塩、スプリセル(ダサチニブ)、スタンフォードV、滅菌タルク末(タルク)、ステリタルク(タルク)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、スニチニブリンゴ酸塩、スーテント(スニチニブリンゴ酸塩)、シラトロン(ペグインターフェロンアルファ−2b)、シノビル(サリドマイド)、シンリボ(オマセタキシンメペサクシネート)、タフィンラー(ダブラフェニブ)、タルク、タモキシフェンクエン酸塩、タラビンPFS(シタラビン)、タルセバ(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ニロチニブ)、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、トポサール(エトポシド)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トーリセル(テムシロリムス)、トシツモマブおよびI131ヨウ素トシツモマブ、トテクト(デクスラゾキサン塩酸塩)、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トリセノックス(三酸化ヒ素)、タイケルブ(ラパチニブトシル酸塩(Lapatinib Ditosylate))、バンデタニブ、VAMP、ベクティビックス(パニツムマブ)、VeIP、ベルバン(ビンブラスチン硫酸塩)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベルサール(ビンブラスチン硫酸塩)、ベムラフェニブ、ベペシド(エトポシド)、ビアデュール(Viadur)(ロイプロリド酢酸塩)、ビダーザ(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンカサールPFS(ビンクリスチン硫酸塩)、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、ビノレルビン酒石酸塩、ビスモデギブ、ボラクサーゼ(Voraxaze)(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ塩酸塩)、ウェルコボリン(ロイコボリンカルシウム)、ザーコリ(クリゾチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、XELOX、エクスジバ(デノスマブ)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223(Radium 223 Dichloride))、イクスタンジ(エンザルタミド)、ヤーボイ(イピリムマブ)、ザルトラップ(Ziv−アフリベルセプト)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン)、ザインカード(Zinecard)(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv−アフリベルセプト、ゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、およびザイティガ(アビラテロン
酢酸エステル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
一部の例では、抗がん薬物はドキソルビシンを含む。
【0040】
一部の実施形態では、医薬組成物は、創傷治癒または脈管再生を促進する薬物を含む。一部の例では、医薬組成物は、例えば末梢動脈疾患(PAD)に起因する虚血または心筋梗塞に起因する心筋組織損傷を低減する薬物を含む。例えば、薬物は、タンパク質またはその断片、例えば、成長因子または脈管形成因子、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、例えばVEGFA、VEGFB、VEGFCもしくはVEGFD、および/またはIGF、例えばIGF−1、線維芽細胞成長因子(FGF)、アンジオポエチン(ANG)(例えばAng1もしくはAng2)、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)、デルタ様リガンド4(DLL4)、またはこれらの組合せを含む。当業者は、創傷治癒または脈管再生を促進する他の薬物を容易に特定できると予想されるため、創傷治癒または脈管再生を促進するこれらの薬物は非限定的である。
【0041】
一部の例では、医薬組成物は、抗増殖薬、例えば、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アザチオプリン、シロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、バイオリムスA9、ノボリムス、ミオリムス、ゾタロリムス、エベロリムスまたはトラニラストを含む。当業者は他の抗増殖薬を容易に特定できると予想されるため、これらの抗増殖薬は非限定的である。
【0042】
一部の実施形態では、医薬組成物は、抗炎症薬、例えば、コルチコステロイド抗炎症薬(例えば、ベクロメタゾン(beclomethasone)、ベクロメタゾン(beclometasone)、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンもしくはプレドニゾン);または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、トリサリチル酸コリンマグネシウム、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン(fluribiprofen)、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ニメスリド、リコフェロン、H−ハルペイド(H−harpaide)もしくはクロニキシン酸リシン)を含む。当業者は他の抗炎症薬を容易に特定できると予想されるため、これらの抗炎症薬は非限定的である。
【0043】
一部の例では、医薬組成物は、移植片拒絶反応(transplant rejection)を予防または低減する薬物、例えば免疫抑制剤を含む。例示的免疫抑制剤としては、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス(FK506))、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤(例えば、シロリムスとしても公知のラパマイシン)、抗増殖剤(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム)、抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ムロモナブ)、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)が挙げられる。当業者は、移植片拒絶反応を予防または低減する他の薬物を容易に特定できると予想されるため、移植片拒絶反応を予防または低減するこれらの薬物は非限定的である。
【0044】
場合によっては、医薬組成物は、抗血栓薬、例えば、抗血小板薬、抗凝固薬、または血栓溶解薬を含む。
【0045】
例示的抗血小板薬としては、不可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、アスピリンまたはトリフルサル)、アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤(例えばチクロピジン、クロピドグレル、プラスグレルもしくはトリカグレロール(tricagrelor))、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、シロスタゾール)、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤(例えば、アブシキシマブ、エプチフィバチドもしくはチロフィバン)、アデノシン再取り込み阻害剤(例えば、ジピリダモール)、またはトロンボキサン阻害剤(例えば、トロンボキサンシンターゼ阻害剤、トロンボキサン受容体阻害剤、例えばテルトロバン)が挙げられる。当業者は他の抗血小板薬を容易に特定できると予想されるため、これらの抗血小板薬は非限定的である。
【0046】
例示的抗凝固薬としては、クマリン(例えば、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン、ブロディファコウムまたはフェニンジオン)、ヘパリンおよびその誘導体(例えば、ヘパリン、低分子量ヘパリン、フォンダパリヌクスまたはイドラパリヌクス)、第Xa因子阻害剤(例えば、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、レタキサバンまたはエリバキサバン)、トロンビン阻害剤(例えば、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバンまたはダビガトラン)、アンチトロンビンタンパク質、バトロキソビン、ヘメンチン、ならびにトロンボモジュリンが挙げられる。当業者は他の抗凝固薬を容易に特定できると予想されるため、これらの抗凝固薬は非限定的である。
【0047】
例示的血栓溶解薬としては、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)(例えば、アルテプラーゼ、レテプラーゼもしくはテネクテプラーゼ)、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ、またはウロキナーゼが挙げられる。
【0048】
他の例では、医薬組成物は、再狭窄を予防する薬物、例えば、抗増殖薬、抗炎症薬または抗血栓薬を含む。例示的抗増殖薬、抗炎症薬および抗血栓薬を本明細書に記載する。
【0049】
一部の実施形態では、医薬組成物は、感染症を処置または予防する薬物、例えば抗生物質を含む。適する抗生物質としては、ベータ−ラクタム系抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム)、ポリミキシン、リファマイシン、リピアルマイシン、キノロン、スルホンアミド、マクロライド、リンコサミド、テトラサイクリン、アミノグリコシド、環状リポペプチド(例えば、ダプトマイシン)、グリシルサイクリン(例えば、チゲサイクリン)、オキサゾリジノン(oxazonidinone)(例えば、リネゾリド)、およびリピアルマイシン(例えば、フィダキソマイシン(fidazomicin))が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、抗生物質としては、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、メクロサイクリン、スルファセタミド(ナトリウム)、過酸化ベンゾイル、およびアゼライン酸が挙げられる。適するペニシリンとしては、アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンg、ペニシリンv、ピペラシリン、ピバンピシリン、ピブメシリナム、およびチカルシリンが挙げられる。例示的セファロスポリンとしては、セファセトリル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セファトリジン、セファザフル、セファゼドン、セファゾリン、セフラジン、セフロキサジン、セフテゾール、セファクロル、セファマンドール、セフメタゾール、セフォニシド、セフォテタン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフゾナム、セフカペン(cfcapene)、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェタメト、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォタキシム、セフピミゾール、セフポドキシム、セフテラム、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフクリジン、セフェピム、セフルプレナム(ceflurprenam)、セフォセリス、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム(cequinome)、セフトビプロール、セフタロリン、セファクロメジン、セファロラム、セファパロール、セフカネル、セフェドロロール(cefedrlor)、セフェムピドン(cefempidone)、セフェトリゾール、セフィビトリル、セフマチレン、セフメピジウム、セフォベシン、セフォキサゾール、セフロチル、セフスミド、セフラセチムおよびセフチオキシドが挙げられる。モノバクタムとしては、アズトレオナムが挙げられる。適するカルバペネムとしては、イミペネム/シラスタチン、ドリペネム、メロペネムおよびエルタペネムが挙げられる。例示的マクロライドとしては、アジスロマイシン、エリスロマイシン、ラリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシンおよびテリスロマイシンが挙げられる。リンコサミドとしては、クリンダマイシンおよびリンコマイシンが挙げられる。例示的スペクトログラミンとしては、プリスチナマイシンおよびキヌプリスチン/ダルホプリスチンが挙げられる。適するアミノグリコシド系抗生物質としては、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンが挙げられる。例示的キノロンとしては、フルメキン、ナリジクス酸、オキソリン酸、ピロミド酸、ピペミド酸、ロソクサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ロメフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン(ofoxacin)、ペフロキサシン、ルフロキサシン、バロフロキサシン、ガチフロキサシン、レパフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、ベシフロキサシン、クリナフロキサシン(clinafoxacin)、ゲミフロキサシン、シタフロキサシン、トロバフロキサシンおよびプルリフロキサシンが挙げられる。適するスルホンアミドとしては、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、およびトリメトプリム−スルファメトキサゾール(sulfamethoxazone)が挙げられる。例示的テトラサイクリンとしては、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリンおよびチゲサイクリンが挙げられる。他の抗生物質としては、クロラムフェニコール、メトロニダゾール、チニダゾール、ニトロフラントイン、バンコマイシン、テイコプラニン、テラバンシン、リネゾリド、サイクロセリン、リファンピン、リファブチン、リファペンチン、バシトラシン、ポリミキシンB、バイオマイシンおよびカプレオマイシンが挙げられる。当業者は、本明細書に記載のデバイスおよび方法に有用な他の抗生物質を容易に特定することができる。
【0050】
一部の実施形態では、医薬組成物は、黄斑変性を低減する薬物を含む。黄斑変性の1つの一般的な現行処置は、抗血管新生化合物(ルセンティス、アイーリア)の眼内注射を含む。反復眼内注射は、患者による認容性が不良であることがあり、その結果、患者のコンプライアンスが低くなる。本明細書に記載するように、黄斑変性用の薬物デポーを非侵襲的に補充することができることは、疾患、例えば黄斑変性の処置に対する患者のコンプライアンスおよび患者の認容性を有意に向上させる。デバイスへの補充によって可能になる制御された反復放出は、より少ない薬物投与および患者の快適さの向上を可能にする。
【0051】
一部の実施形態では、医薬組成物は、免疫学的拒絶反応を予防する薬物を含む。本明細書に記載の本発明より前は、細胞、組織、または臓器全体の免疫学的拒絶反応を予防するために、患者は全身性抗拒絶反応薬の生涯にわたる治療を必要とし、全身性抗拒絶反応薬は、有意な副作用を引き起こし、免疫系を消耗させ、その結果、患者は感染症および他の合併症のリスクがより大きい状態になった。薬物送達デバイスから抗拒絶反応薬を局所的に放出することができ、薬物送達デバイスを繰り返し補充することができることによって、全身性副作用がより少なく、認容性が向上し、有効性がより良好である、より局所的な抗拒絶反応治療が可能になる。
【0052】
一部の実施形態では、医薬組成物は、血栓症を予防する薬物を含む。一部の血管デバイス、例えば血管グラフトおよびコーティングされたステントには、血栓症に悩まされ、身体がこれらのデバイスに対してトロンビン媒介応答を開始する。これらのデバイスから放出される抗血栓薬は、血栓症プロセスの一時的な阻害を可能にするが、これらのデバイスは限定された薬物を備えており、薬物供給量を使い果たしてしまうと血栓症を予防することができない。これらのデバイスは、長期間にわたって(ことによると患者の全生涯にわたって)埋め込まれるので、一時的な血栓症阻害は十分ではない。これらのデバイスを抗血栓薬で繰り返し補充することができ、その薬物を放出することができることは、臨床成績を有意に向上させ、長期血栓症阻害を可能にする。
【0053】
一部の実施形態では、医薬組成物は、炎症を処置する薬物を含む。慢性炎症は、非分解性病原体、ウイルス感染または自己免疫反応に起因する持続炎症を特徴とし、何年も続き、組織破壊、線維症および壊死をもたらし得る。場合によっては、炎症は、局所性疾患であるが、臨床的介入は、ほとんどの場合、全身性である。全身投与される抗炎症薬は、胃腸の問題、心臓毒性、高血圧および腎臓損傷、アレルギー反応、ならびにことによると感染リスク増加を含む、有意な副作用を有する。NSAIDおよびCOX−2阻害剤などの抗炎症薬を繰り返し放出できることで、これらの副作用を低減することができる。炎症部位に埋め込まれるまたは注射される補充可能な薬物送達デバイスによって、全身性副作用を回避しつつ長期の局所的な抗炎症ケアを果たすことができるようになる。
【0054】
一部の実施形態では、デバイスおよび/または薬物補充物のポリマーは、ポリペプチドおよび/または多糖類を含む。一部の例では、デバイスおよび/または薬物補充物のポリマーは、コラーゲン、アルギネート、多糖類、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)またはポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、およびポリ乳酸−coグリコール酸からなる群から選択されるポリマーを含む。好ましい実施形態では、デバイスのポリマーおよび/または薬物補充物のポリマーは、アルギネートを含む。
【0055】
場合によっては、デバイスのポリマーは、ヒドロゲル、例えばアルギネートヒドロゲルの形態である。一部の例では、アルギネートは、細胞接着ペプチド、例えばRGDによって修飾されている。一部の例では、補充物のポリマーは、例えば、細胞接着ペプチド、例えばRGDによって修飾されたアルギネートを含む。
【0056】
一部の例では、ポリマー、例えば、アルギネート、例えばアルギネートヒドロゲルは、例えばin vivoで、経時的に分解する。例えば、分解速度は、ポリマー、例えばアルギネートの温度、pH、水和状態、多孔度、分子量、酸化度および/または架橋密度を調整することによって制御可能である。
【0057】
場合によっては、デバイスのポリマーは、補充物のポリマーより高い分子量(MW)を有する。例えば、デバイスのポリマーは、ポリマー、例えばアルギネートの1本より多くの鎖を含む。場合によっては、ポリマー、例えばアルギネートの鎖は架橋されている。例えば、ポリマーは、カチオン、例えば、二価または三価カチオン、例えばCa
2+によって架橋されている。
【0058】
一部の実施形態では、補充物のポリマーは、ポリマー、例えばアルギネートの1本の鎖を含む。場合によっては、補充物のポリマーは、遊離ポリマー、例えばアルギネートの鎖を含み、すなわち、ポリマーは、架橋されたポリマー鎖、例えばアルギネート鎖を含まない。
【0059】
例えば、例えばアルギネートを含む補充物のポリマーは、1000kDaまたはそれ未満、例えば、1000kDa、900kDa、800kDa、700kDa、600kDa、500kDa、400kDa、350kDa、325kDa、300kDa、290kDa、285kDa、280kDa、275kDa、270kDa、260kDa、250kDa、240kDa、230kDa、220kDa、210kDa、200kDa、180kDa、160kDa、150kDa、140kDa、120kDa、100kDa、またはそれ未満のMWを有する。
【0060】
他の例では、例えばアルギネートを含む補充物のポリマーは、200nmまたはそれ未満、例えば、200nm、180nm、160nm、140nm、120nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、44nm、40nm、35nm、30nm、25nm、20nm、17nm、15nm、12nm、10nm、またはそれ未満の流体力学的半径(Rh)を有する。流体力学的半径は、当技術分野における標準法を使用することによって測定される。
【0061】
一部の実施形態では、補充物のポリマーは、例えば共有結合によって、標的分子とコンジュゲートしている。一部の実施形態では、デバイスのポリマーは、例えば共有結合によって、標的認識部分とコンジュゲートしている。場合によっては、ポリマー、例えばアルギネートは、核酸と、その核酸の3’末端、5’末端、または中間部でコンジュゲートしている。例えば、ポリマー、例えばアルギネートは、核酸分子、例えばDNAの3’末端とコンジュゲートしている。
【0062】
本発明は、薬物送達デバイスと薬物補充物とを含む薬物送達用のキットであって、薬物送達デバイスが材料、医薬組成物および標的認識部分を含む、キットも提供する。適する材料としては、ポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルもしくは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料が挙げられる。薬物補充物は、医薬組成物および標的を含む。任意選択で、薬物補充物は、ナノ担体、例えばポリマーをさらに含む。標的と標的認識部分は二成分結合対を形成する。薬物補充物は、その薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分と結合するまで可動性であり、標的が標的認識部分と結合すると、薬物補充物は医薬組成物を薬物送達デバイスに送達し、それによって薬物送達デバイスが補充される。
【0063】
本発明は、in vivoで薬物送達デバイスを補充する方法であって、
i)標的認識部分、例えば分子を含むデバイスを、それを必要とする被験体に投与するステップであって、デバイスが、材料、例えばポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルもしくは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料を任意選択で含み、前記デバイスが、医薬組成物を任意選択で含む、ステップと、
ii)その後、医薬組成物、標的、および任意選択でナノ担体、例えばポリマーを含む薬物補充物を被験体に投与するステップであって、標的と標的認識部分が、二成分結合対を形成するステップと
を含み、
薬物補充物が、デバイスに移動してデバイスと会合し、例えば結合し、それによってデバイスを医薬組成物で補充する方法も特徴とする。その後、薬物は、薬物送達デバイスから放出される。
【0064】
本明細書に記載の方法に従って、デバイスおよび/または補充物は、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、動脈内投与、直腸投与、頬側投与、舌下投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、経粘膜投与、皮下投与、筋肉内投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、脳内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される。
【0065】
本明細書に記載の方法は、磁気ベースの補充で薬物送達デバイスを補充することも含む。例えば、標的と標的認識部分、例えば分子は、磁性二成分結合対を形成する。あるいは、デバイスと標的が磁性二成分結合対を形成するか、またはデバイスと医薬組成物が磁性二成分結合対を形成する。場合によっては、二成分結合対は、もともと磁性である。あるいは、磁場を薬物送達デバイスに印加して薬物送達デバイスを磁化した後、磁性薬物補充物を投与する。
【0066】
他の実施形態では、in vivoで薬物送達デバイスを補充する方法は、
i)標的認識部分、例えば分子を含むデバイスを、それを必要とする被験体に投与するステップであって、デバイスが、医薬組成物とともに、または医薬組成物なしで、材料、例えばポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルもしくは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料を任意選択で含み、投与後、デバイスが被験体内に停留される、ステップと、
ii)その後、デバイスから離れた位置にある部位で、医薬組成物、標的、および任意選択でナノ担体、例えばポリマーを含む薬物補充物を被験体に投与するステップであって、標的と標的認識部分が二成分結合対を形成する、ステップと
を含み、
薬物補充物は、デバイスに移動してデバイスと会合し、例えば結合し、それによってデバイスは医薬組成物で補充される。その後、薬物は、薬物送達デバイスから放出される。
【0067】
場合によっては、薬物補充物は、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される。
【0068】
一部の例では、方法は、上記のステップii)を少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ超の回数、例えば永久に反復するステップをさらに含む。
【0069】
例えば、薬物補充物は、停留デバイスから離れた位置にある被験体内の部位に投与される。例えば、薬物補充物は、デバイスの中心から少なくとも5cm(例えば、少なくとも5cm、10cm、15cm、20cm、30cm、40cm、50cm、1m、1.5m、2m、2.5m、3m、またはそれ超)離れた位置にある部位に投与される。
【0070】
一部の実施形態では、薬物送達デバイスの投与と薬物補充物の投与の間の時間間隔は、少なくとも1日、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6もしくは7日、1、2、3もしくは4週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10年であるか、またはそれより長い。場合によっては、薬物補充物と次の補充物の投与の間の時間間隔は、少なくとも1日、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6もしくは7日、1、2、3もしくは4週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10年であるか、またはそれより長い。
【0071】
本発明は、それを必要とする被験体において腫瘍のサイズを維持または低減する方法であって、
i)本明細書に記載の薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、医薬組成物が抗がん薬物を含むステップと、
ii)その後、本明細書に記載の薬物補充物を被験体に静脈内、動脈内、腹腔内または経口投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって被験体における腫瘍のサイズを維持または低減する方法も提供する。
【0072】
それを必要とする被験体においてがんの進行を低減する方法であって、
i)本明細書に記載の薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、医薬組成物が抗がん薬物を含むステップと、
ii)その後、本明細書に記載の薬物補充物を被験体に静脈内、動脈内、腹腔内または経口投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって被験体におけるがんの進行を低減する方法も、本発明によって提供される。
【0073】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って、デバイスは、例えば腫瘍切除中に、腫瘍のない空間に投与される。他の実施形態では、デバイスは、腫瘍内に、または腫瘍の付近(例えば、外周から10cm以内またはそれ未満、例えば、外周から10cm、5cm、2.5cm、1cm、5mm、2.5mm、1mm、またはそれ未満)に投与される。
【0074】
一部の実施形態では、腫瘍のサイズは維持される、すなわち、抗がん薬物の投与後の腫瘍のサイズは、抗がん薬物の投与前の腫瘍のサイズの10%以内のままである。一部の例では、腫瘍のサイズは、デバイスおよび/または補充物の投与前の腫瘍のサイズと比較して少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ超、低減される。場合によっては、本発明の方法/デバイスは、被験体における腫瘍を完全に除去する。一部の例では、腫瘍のサイズは、例えばX線、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)またはコンピュータ断層撮影(CT)スキャンで、腫瘍の面積または直径によって測定される。
【0075】
他の例では、本明細書に記載の方法は、がんの進行および/または腫瘍成長を減速させるのに有効である。例えば、腫瘍成長速度は、本明細書に記載のデバイスまたは補充物の投与前の成長速度と比較して少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ超、低減される。場合によっては、本明細書に記載の方法は、がんの進行および/または腫瘍成長を完全に停止させる。
【0076】
場合によっては、抗がん薬物は、小分子、ペプチドもしくはポリペプチド、タンパク質もしくはその断片(例えば、抗体もしくはその断片)、または核酸を含む。
【0077】
例示的抗がん薬物は、上に記載されている。ある実施形態では、抗がん薬物は、ドキソルビシンを含む。
【0078】
本発明の一部の方法に従って、被験体は、がんを患っている。例えば、がんは、固形がんまたは血液がん(a solid cancer of a hematological cancer)である。例示的固形がんとしては、黒色腫(例えば、切除不能な転移性黒色腫)、腎がん(例えば、腎細胞癌)、前立腺がん(例えば、転移性去勢抵抗性前立腺がん)、卵巣がん(例えば、卵巣上皮がん、例えば転移性卵巣上皮がん)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、神経膠芽腫、および肺がん(例えば、非小細胞肺がん)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的血液がんとしては、白血病またはリンパ腫が挙げられる。例えば、白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、または急性単球性白血病(AMoL)である。例えば、リンパ腫は、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(例えば、結節硬化型サブタイプ、混合細胞型サブタイプ、リンパ球豊富型サブタイプ、もしくはリンパ球減少型サブタイプ)、または非ホジキンリンパ腫である。一部の実施形態では、被験体は、非転移性のがんを患っている。
【0079】
本発明は、それを必要とする被験体において創傷治癒を促進する方法であって、
i)本明細書に記載の薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、医薬組成物が血管新生および/または既存の血管の成熟もしくは再構築を促進するステップと、
ii)その後、本明細書に記載の補充物を被験体に投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって被験体における創傷治癒を促進する方法も提供する。
【0080】
場合によっては、薬物補充物は、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される。
【0081】
血管新生および/または既存の血管の成熟もしくは再構築を促進する医薬組成物としては、血管内皮成長因子(VEGF)、例えばVEGFA、VEGFB、VEGFCもしくはVEGFD、および/またはIGF、例えばIGF−1、線維芽細胞成長因子(FGF)、アンジオポエチン(ANG)(例えばAng1もしくはAng2)、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)、デルタ様リガンド4(DLL4)、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明は、それを必要とする被験体において炎症を低減または制御する方法であって、
i)薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、医薬組成物が抗炎症剤を含むステップと、
ii)その後、本明細書に記載の補充物を被験体に投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって被験体における炎症を低減または制御する方法も含む。抗炎症剤は、本明細書に記載されている。
【0083】
場合によっては、薬物補充物は、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される。
【0084】
本発明は、それを必要とする被験体において再狭窄を予防または低減する方法であって、
i)医薬組成物が抗炎症剤、抗増殖剤および/または抗血栓剤を含む薬物送達デバイスを被験体に投与するステップと、
ii)その後、本明細書に記載の補充物を被験体に経口、腹腔内、静脈内または動脈内投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと、
iv)それによって被験体における再狭窄を予防または低減するステップと
を含む方法も含む。
【0085】
例示的抗炎症剤、抗増殖剤および抗血栓剤は、本明細書に記載されている。一部の例では、薬物送達デバイスは、医療デバイス、例えば、ステント、グラフトまたはカテーテル、例えば薬物溶出性ステント、グラフトまたはカテーテルを含む。例えば、本発明のヒドロゲルは、医療デバイス、例えば、ステント、グラフトまたはカテーテル、例えば薬物溶出性ステント、グラフトまたはカテーテル内に/その上に組み込まれる。一部の例では、薬物溶出性ステント、グラフトまたはカテーテルは、組織成長を阻害する、ならびに/または再狭窄、例えば瘢痕組織および/もしくは細胞増殖からの再狭窄のリスクを低減する(そのような再狭窄を予防する)、医薬組成物でコーティングされる。
【0086】
非分解性ポリマーコーティング剤でコーティングされた血管ステントも本明細書に記載し、コーティング剤としては、重合中にモノマーとしてまたは後続のステップでポリマーにキャップとして取り込まれたクリックケミストリーモチーフ(アジド、シクロオクチン、ノルボルネン、テトラジン、シクロオクテンなどを含むが、これらに限定されない)が取り込まれたポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、フルオロポリマーおよびポリホスホリルコリンが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、コーティング剤は、分解性ポリマー、例えば、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、クリックケミストリー基本要素(アジド、シクロオクチン、ノルボルネン、テトラジン、シクロオクテンなどを含むが、これらに限定されない)が取り込まれたポリ−L−ラクチドであってもよく、基本要素は、重合中に組み込まれるか、または後続のステップでキャッピングブロックとして取り込まれる。
【0087】
例えば、例えば医療デバイス内/上の医薬組成物は、本明細書に記載の抗炎症剤、抗悪性腫瘍薬、抗増殖剤、遊走阻害剤、細胞外マトリックス(ECM)修飾物質、治癒増進剤、再内皮化因子および/または抗血栓剤を含む。例えば、本発明の補充物は、例えば、抗炎症剤、抗悪性腫瘍薬、抗増殖剤、遊走阻害剤、細胞外マトリックス(ECM)修飾物質、治癒増進剤、再内皮化因子および/または抗血栓剤を含む医薬組成物を医療デバイスに送達し、それによって医療デバイスが補充される。
【0088】
例示的抗悪性腫瘍薬/抗炎症剤としては、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、レフルノミド、M−プレドニゾロン、デキサメタゾン、インターフェロンr−1b、ミコフェノール酸、ミゾリビン、シクロスポリンおよびトラニラストが挙げられる。例示的抗増殖剤としては、7−ヘキサノイルタキソール(QP−2)、タキソール(パクリタキセル)、アクチノマイシン、メトトレキサート、アンジオペプチン、ビンクリスチン、マイトマイシン、スタチン(例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチン)、C−mycアンチセンス、Abbott ABT−578(ゾタロリムスとも呼ばれる)、RestenASE、2−クロロ−デオキシアデノシン、増殖細胞核抗原(PCNA)リボザイム、バイオリムスA9、シロリムス、ノボリムス、およびミオリムスが挙げられる。例示的遊走阻害剤/EMC修飾物質としては、バチマスタット(Batmastat)、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤(例えば、FG−4539およびFG−2216)、ハロフジノン(Halfunginone)、C−プロテイナーゼ阻害剤、およびプロブコールが挙げられる。治癒増進剤/再内皮化因子としては、BCP671、血管内皮成長因子(VEGF)、エストラジオール、一酸化窒素(NO)供与化合物、内皮前駆細胞(EPC)抗体、およびバイオレストが挙げられる。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、Htayら、Vasc.Health Risk Manag.1巻4号(2005年):263〜76頁の表1;およびAbizaidら、Circulataion: Cardiovascular Interventions.3巻(2010年):384〜93頁の表1を参照されたい。
【0089】
一部の例では、炎症は慢性であり、例えば、関節リウマチに起因する。
【0090】
例えば、被験体は、哺乳動物、例えばヒト、サル、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジまたはヤギである。例えば、被験体はヒトである。
【0091】
本発明は、それを必要とする被験体において心筋梗塞を予防する方法であって、
i)薬物送達デバイスを被験体に投与するステップと、
ii)その後、本明細書に記載の補充物を被験体に経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、動脈内投与、または心臓への直接注射によって投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって被験体における心臓の梗塞を予防する方法も提供する。
【0092】
一部の例では、デバイスは、被験体の心臓に直接投与される、例えば、注射されるまたは埋め込まれる。一部の例では、デバイスは、薬物溶出性ステントを含み、またはデバイスは、薬物溶出性ステント上にコーティングされている/薬物溶出性ステント内に取り込まれる/薬物溶出性ステントに接着している。一部の例では、薬物送達デバイスおよび/または補充物は、本明細書に記載の医薬組成物、例えば、上記の抗炎症剤、抗悪性腫瘍薬、抗増殖剤、遊走阻害剤、細胞外マトリックス(ECM)修飾物質、治癒増進剤、再内皮化因子および/または抗血栓剤を含む。医薬組成物は、例えば、血管の狭窄を低減すること、および血管、例えば、ステントが留置されている血管、または矯正手術、例えばバイパス手術を受けた被験体における血管の再狭窄を低減することによって、将来の心筋梗塞を予防する。
【0093】
それを必要とする被験体において臓器/組織/細胞移植片拒絶反応を予防または低減する方法であって、
i)抗移植片拒絶反応薬を含む医薬組成物を含む薬物送達デバイスを被験体に投与するステップと、
ii)その後、本明細書に記載の補充物を被験体に経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、動脈内投与、または注射もしくは埋め込みによって投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって被験体における臓器/組織/細胞移植片拒絶反応を予防または低減する方法も本明細書において提供する。
【0094】
例えば、デバイスは、移植された臓器/組織の移植部位にまたは付近(例えば、外周から10cm以内またはそれ未満、例えば、外周から10cm、5cm、2.5cm、1cm、5mm、2.5mm、1mm、またはそれ未満)に局所的に投与される(例えば、埋め込まれるまたは注射される)。あるいは、デバイスは、移植された臓器/組織内に投与される。場合によっては、少なくとも2、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10のデバイスが、移植された臓器/組織の中または周囲に投与される。他の例では、デバイスおよび補充物は、抗移植片拒絶反応薬、例えば、上記の免疫抑制剤を含有する。
【0095】
それを必要とする被験体において眼疾患を処置する方法であって、i)薬物送達デバイスを被験体の眼に投与するステップであって、医薬組成物が眼疾患を処置するステップと、ii)その後、薬物補充物を被験体に例えば眼内にまたは局部的に投与するステップと、iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップとを含み、それによって被験体における眼疾患を処置する方法も本明細書において提供する。例えば、眼疾患としては、白内障、緑内障、網膜疾患、角膜疾患、側頭動脈炎、または黄斑変性が挙げられる。
【0096】
このアプローチは、補充可能なデバイスを眼に、例えば局部的に、または局所送達のために眼の裏側に、例えば眼内に送達することを含む。補充可能な薬物ペイロードは、注射によって眼に投与されるか、点眼剤として投与されるか、または全身投与される。本明細書に記載するように薬物送達デバイスの補充を可能にすることで、投与頻度の低減、薬物放出および提示に対する制御の向上、ならびに疾患に対する有効性の向上が可能になる。
【0097】
抗拒絶反応薬および免疫調節薬を臓器移植部位に送達するための、関節炎処置のために投与(例えば注射)されたゲルに免疫調節薬を送達するための、インプラント感染症(例えば、整形外科インプラント関連感染症など)の部位に抗生物質を送達するための、または骨髄炎の手術中に埋め込まれるデバイスに抗生物質を送達するための薬物送達/補充システムの使用も本明細書において提供する。例えば、整形外科インプラント、例えば、任意の繋ぎの関節(例えば、人工関節、例えば膝、股関節)、骨接合用ネジ(bone screw)、および他の整形外科用デバイスは、上に記載したように、標的認識部分と医薬組成物とを含有するポリマーでコーティングされ、標的分子と医薬組成物とを含む組成物で補充される。
【0098】
場合によっては、デバイスは、クリックケミストリーモチーフ(アジド、シクロオクチン、ノルボルネン、テトラジン、シクロオクテンなどを含むが、これらに限定されない)が取り込まれたポリマーコーティング剤、例えばポリエチレンでコーティングされた整形外科インプラントを含む。あるいは、整形外科(orpthopedic)インプラントは、クリックケミストリーモチーフが取り込まれた軟質ポリマー、例えばポリエチレン関節カップ(articulating cup)、例えば軟質膝インプラントを含む。この応用例では、デバイスを標的にする補充可能な薬物ペイロードは、抗微生物性化合物、例えば抗生物質を含む。
【0099】
別の例では、薬物送達デバイス(例えば、ポリマー)を、罹病もしくは壊死している骨の部分を除去するための手術の時点または損傷した骨を人工関節もしくは骨充填物質の挿入で修復するための手術の時点に、沈着させるまたは埋め込む。例えば、標的認識部分を含有する薬物送達デバイスは、抗生物質負荷ポリマーペースト、骨ろう、または骨セメントの形態であり、その場合、抗生物質負荷ポリマーペースト、骨ろう、または骨セメントは、骨髄炎と闘うための抗生物質(標的分子を含有する薬物補充物組成物)の全身投与によってin situで再充填/補充される。別の例では、ゲルまたはスキャホールドを含むデバイスが、骨の感染部に埋め込まれるかまたは注射される。デバイスは、クリックケミストリーモチーフ(アジド、シクロオクチン、ノルボルネン、テトラジン、シクロオクテンなどを含むが、これらに限定されない)で修飾されたゲルまたはスキャホールドを含む。この応用例では、デバイスを標的にする補充可能な薬物ペイロードは、抗微生物性化合物、例えば抗生物質を含む。
【0100】
骨セメントは、半世紀超にわたって繋ぎの関節(例えば、股関節、膝関節、肩関節および肘関節)を固定するために使用されてきた。繋ぎの関節(人工関節とも呼ばれる)は、骨セメントで固定される。骨セメントは、人工関節と骨の間の自由空間を埋め、弾性ゾーンの重要な役割を果たす。骨セメントは、二成分材料として供給される。骨セメントは、粉末(すなわち、予め重合したポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)および/またはPMMAもしくはメチルメタクリレート(MMA)コポリマービーズおよび/または非晶質粉末、放射線乳白剤(radio−opacifer)、もしくは開始剤)および液体(MMAモノマー、安定剤、または阻害剤)からなる。二成分を混合し、開始剤を促進剤と混合するとモノマーのフリーラジカル重合が起こる。
【0101】
一態様では、本明細書に記載の補充可能なデバイスは、予め重合したPMMAがクリックケミストリーモチーフ(アジド、シクロオクチン、ノルボルネン、テトラジン、シクロオクテンなどを含むが、これらに限定されない)を含有する、骨セメントの修飾バージョンを構成する。あるいは、クリックケミストリーモチーフは、モノマーとして液体成分に取り込まれる。
【0102】
別の例では、薬物送達デバイス(例えば、ポリマー)を、鎮痛剤を局所的に供給するために手術の時点に沈着させるまたは埋め込む。例えば、薬物送達デバイスを手術部位に配置して、薬物補充物放出を含む薬物放出を組織部位に集中させ、それによってより少ない薬物用量の使用を可能にする。このようにして、薬物/化学物質依存または中毒の発生率を減少させる。
【0103】
それを必要とする被験体において不整脈を処置する方法であって、i)本明細書に記載の薬物送達デバイスを被験体の心臓に投与するステップであって、医薬組成物が不整脈を処置するステップと、ii)その後、薬物補充物を被験体の心臓に投与するステップと、iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップとを含み、それによって被験体における不整脈を処置する方法も提供される。
【0104】
異なる作用機序を有する抗不整脈薬の多くのクラスがあり、各クラスは多くの異なる個々の薬物を含む。薬物治療の目的は不整脈を予防することであるが、ほぼすべての抗不整脈薬は、潜在的に不整脈誘発剤として作用し、有意なオフターゲット毒性を有する。本明細書に記載の薬物送達デバイスの送達は、このオフターゲット毒性を低減する。
【0105】
例えば、場合によっては、デバイスは、不整脈を患っている心臓の部位に、例えば外科手技中に、埋め込まれるまたは注射されるゲルまたはスキャホールドを含む。デバイスは、クリックケミストリーモチーフ(アジド、シクロオクチン、ノルボルネン、テトラジン、シクロオクテンなどを含むが、これらに限定されない)で修飾されたゲルまたはスキャホールドからなる。補充可能な薬物ペイロードは、そのデバイスを標的にする。適する抗不整脈薬としては、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、フェニトイン、メキシレチン、トカイニド、エンカイニド、フレカイニド、プロパフェノン、モリシジン、カルベジロール、プロプラノロール、エスモロール、チモロール、メトプロロール、アテノロール、ビソプロロール、アミオダロン、ソタロール、イブチリド、ドフェチリド、ドロネダロン(dronedatrone)、ベラパミル、ジルチアゼム(dilitiazem)、アデノシンおよびジゴキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
患者の服薬順守度を評価する方法も提供され、すなわち、本明細書に記載の方法は、患者が薬物、例えば処方薬の投与に関する指示、例えば医師の指示を順守したかどうかを判定するために用いられる。例えば、患者の服薬順守度を評価する方法は、それを必要とする被験体に服薬順守度デバイスを投与、例えば経口投与することによって行われ、デバイスは、標的認識部分、例えば分子を含む。薬物送達デバイスは、任意選択で、材料、例えば、ポリマー、タンパク質、ヒドロゲル(例えば、合成ヒドロゲルもしくは生物学的ヒドロゲル)、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料を含む。その後、医薬組成物、標的、および任意選択でナノ担体、例えばポリマーを含む薬物を被験体に投与し、ここで、標的と標的認識部分は二成分結合対を形成する。場合によっては、標的は、それに連結されている検出可能な標識を含む。他の場合、薬物自体が、それに連結されている検出可能な標識を含む。適する検出可能な標識は、蛍光色素、放射性分子、および常磁性化合物からなる群から選択される。薬物は、デバイスへと移動し、デバイスと会合、例えば結合する。最後に、デバイス上/内の標識を検出し、デバイス上/内の標識のレベルを、薬物投与前のデバイス上/内の標識のレベルと比較する。患者が薬物を投与するたびに、デバイス上の標識のレベルは増加する。したがって、デバイス上の標識のレベルを決定することによって、患者が薬物を処方どおりに投与したかどうかが確証される−標識のレベルは、患者によって投与/摂取された全薬物に比例する。
【0107】
本発明は、既存の方法、例えば、Onetoら、Acta Biomaterialia 10巻(2014年):5099〜5105頁に記載されているものに勝る、ある特定の利点を有する。例えば、本明細書に記載の薬物送達/補充システムは、デバイスの複数回の補充、経口投与によるデバイスの補充、および皮下部位へのゲルの補充だけでなく疾患部位に滞留しているゲルへのゲルの補充も可能にする。加えて、本明細書に記載の薬物送達/補充システムは、1タイプの化学物質のみを使用して1カ所のみを標的にすることができるOnetoらの方法とは異なり、複数(例えば、2つまたはそれ超)の異なる化学物質での複数(例えば、2カ所またはそれ超)の異なる位置の標的指向化を可能にする。
【0108】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
薬物送達デバイスおよび薬物補充物を含むシステムであって、
該薬物送達デバイスが標的認識部分を含み、
該薬物補充物が医薬組成物および標的を含み、任意選択で、該薬物補充物がナノ担体を
さらに含み、
該標的および該標的認識部分が二成分結合対を形成し、
該薬物補充物上の該標的が該薬物送達デバイス上の該標的認識部分と結合するまで該薬物補充物が可動性であり、
該標的が該標的認識部分と結合すると、該薬物補充物が該医薬組成物を該薬物送達デバイスに送達し、それによって該薬物送達デバイスが補充される、システム。
(項目2)
医薬組成物および標的認識部分を含む停留薬物送達デバイスであって、該標的認識部分が標的と結合することができ、任意選択で、該薬物送達デバイスがポリマー、タンパク質、合成ヒドロゲル、生物学的ヒドロゲル、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料をさらに含む、停留薬物送達デバイス。
(項目3)
医薬組成物および標的を含む薬物補充物であって、該標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分と結合することができ、該標的が該標的認識部分と結合するまで該薬物補充物が可動性であり、任意選択で、該薬物補充物がナノ担体をさらに含み、該標的が該標的認識部分と結合すると、該薬物補充物が該医薬組成物を該薬物送達デバイスに送達する、薬物補充物。
(項目4)
前記標的および前記標的認識部分が核酸を含む、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記標的が、前記標的認識部分の核酸配列に相補的である核酸配列を含む、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記核酸が、DNA、RNA、修飾DNAまたは修飾RNAを含む、項目4に記載のシステム。
(項目7)
前記薬物送達デバイスが、ポリマー、タンパク質、合成ヒドロゲル、生物学的ヒドロゲル、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料をさらに含む、項目6に記載のシステム。
(項目8)
i)前記標的がビオチンを含み、前記標的認識部分がアビジンもしくはストレプトアビジンを含む、または
ii)該標的がアビジンもしくはストレプトアビジンを含み、該標的認識部分がビオチンを含む、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記標的が生体直交型官能基を含み、前記標的認識部分が相補官能基を含み、該生体直交型官能基が該相補官能基と化学反応して共有結合を形成することができる、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記生体直交型官能基がクリックケミストリーによって前記相補官能基と反応することができる、項目9に記載のシステム。
(項目11)
前記生体直交型官能基がアルケンを含み、前記相補官能基がテトラジン(Tz)を含む、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記アルケンが、シクロオクテンを含む、項目11に記載のシステム。
(項目13)
前記シクロオクテンが、トランスシクロオクテン(TCO)を含む、項目12に記載のシステム。
(項目14)
前記生体直交型官能基が、アルキンを含み、前記相補官能基がアジドを含む、項目10に記載のシステム。
(項目15)
前記アルキンが、シクロオクチンを含む、項目14に記載のシステム。
(項目16)
前記シクロオクチンが、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)を含む、項目15に記載のシステム。
(項目17)
前記標的認識部分に対する前記標的の結合親和性が、500μMまたはそれ未満である、項目1に記載のシステム。
(項目18)
前記医薬組成物が、抗がん薬物、創傷治癒を促進する薬物、脈管再生を促進する薬物、感染症を処置もしくは予防する薬物、再狭窄を予防する薬物、黄斑変性を低減する薬物、免疫学的拒絶反応を予防する薬物、血栓症を予防する薬物、または炎症を処置する薬物を含む、項目1に記載のシステム。
(項目19)
前記医薬組成物が、抗がん薬物を含む、項目18に記載のシステム。
(項目20)
前記抗がん薬物が、ドキソルビシンを含む、項目19に記載のシステム。
(項目21)
前記医薬組成物が、創傷治癒を促進する薬物を含む、項目18に記載のシステム。
(項目22)
前記医薬組成物が、脈管再生を促進する薬物または再狭窄を予防する薬物を含む、項目18に記載のシステム。
(項目23)
前記医薬組成物が、感染症を処置または予防する薬物を含む、項目18に記載のシステム。
(項目24)
前記デバイスが、ヒドロゲルを含む、項目1に記載のシステム。
(項目25)
前記ヒドロゲルが、アルギネートヒドロゲルを含む、項目24に記載のシステム。
(項目26)
前記システムが、少なくとも2つの薬物送達デバイスを含む、項目1に記載のシステ
ム。
(項目27)
前記システムが、少なくとも2つの薬物補充物を含む、項目26に記載のシステム。
(項目28)
前記薬物補充物の各々が、異なる医薬組成物および異なる標的を含む、項目27に記載のシステム。
(項目29)
各薬物送達デバイスが、異なる標的認識部分を含む、項目28に記載のシステム。
(項目30)
各薬物補充物が、異なる薬物送達デバイスと結合する、項目29に記載のシステム。
(項目31)
薬物送達デバイスおよび薬物補充物を含む薬物送達用のキットであって、
該薬物送達デバイスが、医薬組成物および標的認識部分を含み、任意選択で、該薬物送達デバイスが、ポリマー、タンパク質、合成ヒドロゲル、生物学的ヒドロゲル、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料をさらに含み、
該薬物補充物が、医薬組成物および標的を含み、任意選択で、該薬物補充物がナノ担体をさらに含み、
該標的と該標的認識部分が二成分結合対を形成し、
該薬物補充物上の該標的が該薬物送達デバイス上の該標的認識部分と結合するまで該薬物補充物が可動性であり、
該標的が該標的認識部分と結合すると、該薬物補充物が該医薬組成物を該薬物送達デバイスに送達し、それによって該薬物送達デバイスが補充される、キット。
(項目32)
in vivoで薬物送達デバイスを補充する方法であって、
i)該デバイスを、それを必要とする被験体に投与するステップであって、該デバイスが、医薬組成物および標的認識部分を含み、任意選択で、該デバイスが、ポリマー、タンパク質、合成ヒドロゲル、生物学的ヒドロゲル、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料をさらに含むステップと、
ii)その後、該医薬組成物および標的を含む薬物補充物を該被験体に投与するステップであって、任意選択で、該薬物補充物がナノ担体をさらに含み、該標的と該標的認識部分が二成分結合対を形成するステップと
を含み、
該薬物補充物が該デバイスに移動して該デバイスと結合し、それによって該デバイスが該医薬組成物で補充される、方法。
(項目33)
前記補充物が、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される、項目32に記載の方法。
(項目34)
in vivoで薬物送達デバイスを補充する方法であって、
i)該デバイスを、それを必要とする被験体に投与するステップであって、該デバイスが、医薬組成物および標的認識部分を含み、任意選択で、該デバイスが、ポリマー、タンパク質、合成ヒドロゲル、生物学的ヒドロゲル、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材料をさらに含み、該デバイスが、投与後、該被験体内に停留されるステップと、
ii)その後、該デバイスから離れた位置にある部位で、該医薬組成物および標的を含む薬物補充物を該被験体に投与するステップであって、任意選択で、該薬物補充物がナノ担体をさらに含み、該標的と該標的認識部分が二成分結合対を形成するステップと
を含み、
該薬物補充物が、該デバイスに移動して該デバイスと結合し、それによって該デバイスが該医薬組成物で補充される、方法。
(項目35)
前記薬物補充物が、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される、項目34に記載の方法。
(項目36)
それを必要とする被験体において腫瘍のサイズを維持または低減する方法であって、
i)項目2に記載の薬物送達デバイスを該被験体に投与するステップであって、前記医薬組成物が抗がん薬物を含むステップと、
ii)その後、項目3に記載の薬物補充物を該被験体に投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって該被験体における該腫瘍のサイズを維持または低減する、方法。
(項目37)
前記補充物が、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記抗がん薬物が、ドキソルビシンを含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記被験体が、がんを患っている、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記がんが、固形がんまたは血液がんを含む、項目37に記載の方法。
(項目41)
それを必要とする被験体においてがんの進行を低減する方法であって、
i)項目2に記載の薬物送達デバイスを該被験体に投与するステップであって、前記医薬組成物が抗がん薬物を含むステップと、
ii)その後、項目3に記載の薬物補充物を該被験体に経口、腹腔内、静脈内または動脈内投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって該被験体におけるのがんの進行を低減する、方法。
(項目42)
それを必要とする被験体において創傷治癒を促進する方法であって、
i)項目2に記載の薬物送達デバイスを該被験体に投与するステップであって、前記医薬組成物が血管新生および/または既存の血管の成熟もしくは再構築を促進するステップと、
ii)その後、項目3に記載の薬物補充物を該被験体に投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって該被験体における創傷治癒を促進する、方法。
(項目43)
前記補充物が、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される、項目42に記載の方法。
(項目44)
それを必要とする被験体において炎症を低減または制御する方法であって、
i)項目2に記載の薬物送達デバイスを該被験体に投与するステップであって、前記医薬組成物が抗炎症剤を含むステップと、
ii)その後、項目3に記載の薬物補充物を該被験体に投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって該被験体における炎症を低減または制御する、方法。
(項目45)
前記補充物が、経口投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、静脈内投与、動脈内投与、骨内投与、筋肉内投与、脳内投与、脳室内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、硬膜外投与、頭蓋内投与、経皮投与、膣内投与、子宮内投与、硝子体内投与、経粘膜投与、または注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される、項目44に記載の方法。
(項目46)
それを必要とする被験体において眼疾患を処置する方法であって、
i)項目2に記載の薬物送達デバイスを該被験体の眼に投与するステップであって、前記医薬組成物が該眼疾患を処置するステップと、
ii)その後、項目3に記載の薬物補充物を該被験体の眼に投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって該被験体における眼疾患を処置する、方法。
(項目47)
それを必要とする被験体において不整脈を処置する方法であって、
i)項目2に記載の薬物送達デバイスを該被験体の心臓に投与するステップであって、前記医薬組成物が該不整脈を処置するステップと、
ii)その後、項目3に記載の薬物補充物を該被験体の心臓に投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって該被験体における不整脈を処置する、方法。
(項目48)
患者の服薬順守度を評価する方法であって、
服薬順守度デバイスを、それを必要とする被験体に投与するステップであって、該デバイスが、ポリマー、タンパク質、合成ヒドロゲル、生物学的ヒドロゲル、オルガノゲル、セラミック、複合材、金属、木材またはガラス材を含む、ステップと、
その後、医薬組成物、標的、および任意選択でナノ担体を含む薬物を該被験体に投与するステップであって、該標的が、それに連結されている検出可能な標識を含み、該標的と標的認識部分が二成分結合対を形成し、該薬物が、該デバイスに移動して該デバイスと会合、例えば結合するステップと、
該デバイス上の該標識を検出するステップと、
該デバイス上の該標識のレベルを、該薬物の投与前の該デバイス上の該標識のレベルと比較するステップと
を含み、それによって患者の服薬順守度を評価する、方法。
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい実施形態についての以下の記載から、および特許請求の範囲から明らかになる。別段の定義がない限り、本明細書で用いるすべての専門および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適する方法および材料を下に記載する。本明細書で言及するすべての出版物、特許出願、特許、ならびに他の参考資料、例えばGenBankコンテンツおよび受託番号は、それらの全体が参照によって組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が優先するものとする。加えて、材料、方法および例は、例示に過ぎず、限定することを意図したものではない。
【発明を実施するための形態】
【0136】
全身性薬物毒性は、がん、不整脈(arrthymia)、免疫抑制および眼薬物送達に関するものを含めて、現行の臨床的介入における深刻な問題である。局所薬物送達デバイスは、毒性の実質的低減をもたらし、それ故、ステント留置に伴う再狭窄の予防、がんの処置および創傷治癒増進に関するものを含めて、有意な臨床的有用性を有する。しかし、デバイスの反復局所埋め込みが可能でないまたは望ましくない応用例では、例えば、侵襲手術中の薬物送達スキャホールドの埋め込みについては、非侵襲的手段によってインプラント部位に標的指向させることができる薬物が依然として必要とされている。
【0137】
また、治療または診断としての罹病組織への小分子の標的指向化は、薬物送達における重大な課題である。侵襲手術中に埋め込まれる薬物溶出性デバイスによって疾患部位での制御された薬物提示が可能になるが、手術が完了してしまうとデバイスを改変することができない。
【0138】
本発明は、最小侵襲様式で、例えば、血液を介した新たな薬物ペイロードでの標的指向化によって、in vivoで送達デバイスを補給または補充するための組成物および方法を提供する。例えば、注射可能な送達デバイスを、血液に注入された補充物に結合する部分を含むように製造する(
図1A)。患者の血液に注入された薬物ペイロードは標的組織へと血管外遊出し、その薬物ペイロードにデバイスが結合し(
図1B)、それによってその後、標的部位での薬物の徐放が可能になる(
図1C)。デバイスへの薬物ペイロードの効率的送達は、場合によっては、標的部位の1回より多くの通過を必要とする。透過性が向上した標的部位は、本明細書に記載の薬物送達デバイスの投与部位の良い候補である。血液循環時間が長く安定性が高い材料を本発明のデバイスに使用する。
【0139】
DNA認識を使用して、腫瘍部位内に配置されたデバイスに薬物担持ナノ粒子補充物を標的指向させる補充可能な薬物送達デバイスを本明細書に記載する。患者の血液中を循環する薬物ペイロードにこのデバイスは特異的な化学的認識によって結合することができ、それによって、標的部位での低pH媒介加水分解または酵素的分解によるその後の放出が可能になる。本明細書に記載の結果は、DNAとコンジュゲートしているアルギネートの薬物ペイロードを、相補DNA配列を含有する薬物送達ヒドロゲルの補充に利用することができること、およびこの概念をがんなどの疾患の処置に活用することができることを実証する。遊離アルギネートは長い血清寿命を有し、遊離アルギネートをDNAおよび薬物で化学的に修飾して、薬物送達デポー/デバイスの補充に適した担体にすることができる。本明細書に記載の結果は、相補DNAとコンジュゲートしている遊離アルギネート鎖がin vitroおよびin vivoでカルシウム架橋アルギネートゲルにホーミングすることを示す。例えば、カップリングされたドキソルビシンを有するDNA−アルギネート鎖を、腫瘍を有するマウスに注射したとき、腫瘍内ゲルへの反復薬物補充によって腫瘍成長は阻害された。
【0140】
局所的薬物送達のための本明細書に記載のデバイス/システムは、数日、数週間、数カ月、またはそれより長きにわたっての反復薬物投与のための薬物デポー/送達デバイスへの最小侵襲性の補充を可能にする。例えば、本発明の方法は、DNA相補性を使用する薬物送達デバイスの血液ベースの補充を含む。
【0141】
また、本明細書における結果に記載されるように、生体直交型システムを使用するゲルホーミングが虚血の動物モデルにおいて実証された。複数回投与によって、例えば1カ月にわたって、in vivoでゲル部位への反復ホーミングが達成された。クリックケミストリー媒介標的指向化は、標的部位に対する高い特異度を示し、少なくとも1カ月の期間にわたって9回の投与によって標的指向化を繰り返すことに成功した。また、本明細書に記載のデバイス/システムは、2つの別個の直交型化学システム(orthogonal chemistry system)の使用によって2つの異なる分子(例えば、異なる標的認識モチーフと結合する2つの異なる標的分子)の分離を可能にした。同じ動物の2つの異なる部位を標的にする2つの異なる分子の空間分解能によって、患者において相容れない治療を併用することにおける本明細書に記載のデバイス/システムの有用性が立証される。
【0142】
本明細書に記載の補充方法は、多くの疾患の処置に応用可能である。実施例において示されるように、生体直交型クリックケミストリーを使用して、罹病組織の筋肉内に滞留しているヒドロゲルに循環小分子を標的指向させた。小分子は、少なくとも1カ月にわたって罹病領域に繰り返し標的指向された。2つの生体直交型反応を使用して、マウス疾患モデルにおける2つの別個の位置に混合物として注射した2つの小分子を隔離した。このように、クリックケミストリーは、薬理学的薬物送達に、例えば、がん治療、創傷治癒および/または薬物溶出性血管グラフトおよびステントにおける薬物デポーの補充に有用である。
【0143】
体内の特異的部位に薬物代替物を繰り返し標的指向させることができることは、体内のインプラント、例えば、ヒドロゲルおよび医療デバイスが、血液中を循環する小分子によって選択的に標的にされうることを示す。薬物デポーの効率的な反復標的指向化または補充(実施例に記載する)は、血管内ステント留置、腫瘍内化学療法薬送達デバイスまたは外科的インプラントの部位などの、体内の部位で長期にわたる局所薬物送達を可能にする。このシステムは、毒性の低下、投与および疾患部位での薬物利用能の向上を可能にする。注射されたヒドロゲルまたはインプラントによって規定される部位への薬物分子の効率的ホーミングによって、例えば磁場または集束光などの外部刺激による、薬物の制御されたまたはオンデマンド放出も可能になる。
【0144】
また、実施例において示すように、本明細書に記載の薬物送達デバイス/補充システムおよび方法に従って、経口投与された薬物は、デバイス/デポー部位を選択的に標的にした。例えば、経口投与された薬物は、意図した部位、例えば、デバイス/デポー部位に蓄積し、体内の他の場所には蓄積しなかった。したがって、この薬物送達デバイス/補充システムは、特定の解剖学的位置(複数可)で濃縮させることが望まれる任意の経口利用可能な薬物の送達に適している。例示的経口利用可能な薬物としては、処方箋の不要なまたは処方箋抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制薬、および本明細書に記載の他の薬物/薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
経口投与されたとき、本明細書に記載の薬物は、胃または腸内で溶解も分解もしないか、最小限にしか溶解または分解しない。例えば、経口投与されたとき、50%未満が胃または腸内で溶解/分解し、例えば、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満が胃または腸内で溶解/分解する。薬物/治療剤は、胃腸管を移動し、循環系に吸収されるが、それらの活性または治療潜在力を保持する。適する経口薬としては、オピオイド(例えば、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、オキシモルホン、エチルモルヒネおよびブプレノルフィン)、NSAID(例えば、イブプロフェン、ナプロキセンおよびアセトアミノフェン)、および抗生物質(例えば、ベータ−ラクタム、リネゾリド、クリンダマイシン、マクロライド(macrolines)(例えば、エリスロマイシンおよびクラリスロマイシン)、およびキノロン)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、薬物と標的分子の間のリンカーが胃または腸内で溶解/分解しないことを確実にするために分解抵抗性リンカーを利用する。適する分解抵抗性リンカーとしては、エステル、オキシエチル、オキシメチル、オキシプロピル、アミドおよびカルボニルが挙げられる。低または中性pHで安定しており、中性pHで非常に遅い切断速度(数日〜数週間)を有する分解抵抗性リンカーを利用するため、デバイスに結合するとリンカーがゆっくりと切断する。
【0146】
一部の例では、薬物または診断剤を切断可能なリンカーによって標的モチーフとコンジュゲートさせる。例えば、薬物をin vivoの特定の位置に標的指向させて、磁場または光などの外部刺激によって放出させる。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、Cezarら、advanced healthcare materials(2014年);Zhaoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108巻(2011年):67頁;Muraら、Nat. Materials 12巻(2013年):991頁を参照されたい。切断可能なリンカーの例としては、遊離チオールおよび他の還元剤による還元によって切断されるジスルフィドリンカー;プロテアーゼおよびペプチダーゼの作用によって切断されるペプチドリンカー;ヌクレアーゼの作用によって切断される核酸リンカー;in vivoでの酵素によるまたは水の作用による加水分解によって切断されるエステル;体内での加水分解によって切断されるヒドラゾン、アセタール、ケタール、オキシム、イミン、アミナールおよび類似の基;特定の波長の光への曝露によって切断される光切断性リンカー;超音波または機械的歪み(例えば、磁気応答性ゲルの、磁場によって生じる機械的歪み)の印加によって切断される機械感受性基が挙げられる。
【0147】
場合によっては、デバイスは、安定した構造材料、例えば、ヒドロゲル(例えば、クリオゲル)、またはメソポーラスシリカ(MPS)組成物(例えば、MPSロッド)を含む。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、WO13/158673を参照されたい。例えば、ヒドロゲルは、形状記憶特性を有する。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、US2014−0227327、US2014−0112990を参照されたい。
一部の実施形態では、補充物は、プロドラッグ、例えば、不活性形態の薬物を含む。被験体への補充物の投与後、プロドラッグは、デバイスと結合するまで不活性形態のままである。デバイスと結合した後にのみ、プロドラッグはプロセッシング(例えば、切断)されて活性薬物形態になる。リンカーは、非常にゆっくりと、例えば、身体からの薬物のクリアランス速度または薬物自体の分解速度よりはるかに遅い時間枠で、切断される。したがって、薬物−リンカー−標的分子がデバイスと結合し、リンカーが(デバイス自体の作用によることなく)ゆっくりと切断されて薬物をデバイスから放出する。
【0148】
場合によっては、デバイス中の充填済みの薬物が標的認識部分に直接連結される。例えば、ヒドロゲルが腫瘍部位内、脊髄(spinal chord)内、または骨内に配置されている場合、標的認識部分は、デバイス全体にわたって存在する。デバイスからの拡散は比較的速いので、標的薬物はヒドロゲルの内部に浸透する。クリック修飾骨セメントなどの別の例では、標的認識部分はデバイス全体にわたって存在するが、薬物は、ポリマーへの拡散が比較的遅いので、デバイス表面を標的にすることしかできないことがある。
【0149】
あるいは、標的認識部分は、デバイスの表面、例えば、デバイスの細孔内および/またはデバイスの外面のみに存在する。例えば、整形外科インプラントの表面を、少なくとも標的認識部分を含有するポリマーでコーティングする。この場合、薬物は、整形外科インプラントの表面しか標的にしない。
【0150】
場合によっては、薬物をデバイスに連結させる生体直交型反応はそれ自体可逆的であり、その結果、薬物をデバイスと結合させるために使用される結合の反転によって薬物の送達が可能になる。
【0151】
体内の特定の部位に、例えば、虚血性および非虚血性疾患部位、例えば筋肉および乳房部位に薬物を送達するために薬物(例えば小分子薬)代替物(例えば薬物補充物)をデバイス(例えばヒドロゲル)に選択的に標的指向させるシステムを本明細書において提供する。
【0152】
一部の実施形態では、本発明は、停留薬物送達デバイスと薬物補充物とを含むシステムを特徴とする。被験体にデバイスを投与すると、ポリマー中の医薬組成物の量が経時的に減少し、したがって、医薬組成物は周囲組織および/または被験体の血流に送達される。デバイスは、被験体の血流を介した医薬組成物を含む薬物補充物の投与によって補充可能である。
【0153】
一部の例では、薬物送達デバイスは、医薬組成物、標的認識部分、および任意選択でポリマーを含む。薬物補充物は、医薬組成物、標的、および任意選択でナノ担体(例えば、ポリマー、例えばアルギネートまたはPLG鎖;リポソームナノ粒子;金属、例えば金、ナノ粒子)を含む。標的と標的認識部分は二成分結合対を形成する。薬物補充物は、その薬物補充物上の標的が薬物送達デバイス上の標的認識部分と結合するまで可動性である。標的が標的認識部分と結合すると、薬物補充物は、医薬組成物を薬物送達デバイスに送達し、それによって薬物送達デバイスが補充される。
【0154】
例示的ポリマーとしては、アルギネート、セルロース、キトサン、ポリメタクリル酸、ポリ(ビニルピリジン)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、トラガカント、アラビアゴム、グアー、ゼラチン、ペクチン、カラゲナン、アルギン酸ナトリウムおよびデキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/ビニルアルコールコポリマー、アクリル酸のポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ならびにビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。
【0155】
一部の実施形態では、補充物は、以下の結合性を有する成分を含む(ここで、「−−−−」は結合(linkage)、例えば、1つの結合(bond)または複数の結合を示す):
1)標的分子(例えば、TCO/DBCO/ノルボルネン/DNA)−−−−ナノ担体−−−−医薬組成物
2)標的分子−−−−医薬組成物−−−−ナノ担体
3)ナノ担体−−−−標的分子−−−−医薬組成物
4)標的分子−−−−医薬組成物(ナノ担体を伴わない)。
一部の例では、医薬組成物に(ナノ担体なしで)直接連結されている標的分子は、組織浸透を増加させるために補充物として有用であり、(例えばピル形態での)経口投与に適している。他の例では、ナノ担体を含む補充物は、がん処置への応用に有用である。
【0156】
一部の実施形態では、標的分子、ナノ担体および/または医薬組成物の間の結合は、共有結合/リンカー、例えば、アミド、エステル、ヒドラジド、エーテル、チオエーテル、アルキル、pegリンカー、ケトンまたはアミンを含む。他の場合、結合は、非共有結合またはイオン結合を含む。他の例では、結合は、切断可能リンカー、例えば、上記の例示的切断可能リンカーの1つを含む。
【0157】
一部の実施形態では、標的および/または標的認識部分は、核酸、ペプチド、多糖類、脂質、小分子またはこれらの組合せを含み、ホーミング剤は、核酸、ペプチド、多糖類、脂質、小分子またはこれらの組合せを含む。
【0158】
一実施形態では、標的および標的認識部分は、核酸を含む。例えば、標的は、標的認識部分の核酸配列に相補的である核酸配列を含む。例えば、核酸は、DNA、RNA、修飾DNAまたは修飾RNAを含む。一部の例では、核酸は、DNAまたは修飾DNAを含む。
【0159】
DNA相補性は、複合ナノ構造の形成、表面官能化ならびにナノ粒子および細胞構築をはじめとする特異的化学的相互作用を管理するために、幅広く活用されている。例えば、Douglas Sら(2009年)Nature 459巻(7245号):414〜418頁;Wei B、Dai M、およびYin P(2012年)Nature 485巻(7400号):623〜626頁;Onoe Hら、(2012年)Langmuir : the ACS journal of surfaces and colloids 28巻(21号):8120〜8126頁;Gartner ZおよびBertozzi C(2009年)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106巻(12号)4606〜4610頁;Zhang Y、Lu F、Yager K、van der Lelie D、およびGang O(2013年)Nature nanotechnology 8巻(11号):865〜872頁を参照されたい。これらの応用例におけるDNAの有用性は、配列特異性および結合強度、ならびに相互作用強度の同調性に存する。このタイプの応用例の1つの課題は、DNAの安定性である。一部の実施形態では、アルギネートをDNAの3’末端とコンジュゲートさせて3’−5’エキソヌクレアーゼ(主要血清系ヌクレアーゼ)を克服する。例えば、Shaw J、Kent K、Bird J、Fishback J、およびFroehler B(1991年)Nucleic acids research 19巻(4号):747〜750頁;Floege Jら(1999年)The American journal of pathology 154巻(1号):169〜179頁;Gamper Hら(1993年)Nucleic acids research 21巻(1号):145〜150頁を参照されたい。一部の実施形態では、エンドヌクレアーゼおよび化学的安定性増加のために骨格をホスホロチオエート基で修飾する。Campbell J、Bacon T、およびWickstrom E(1990年)Journal of biochemical and biophysical methods 20巻(3号):259〜267頁を参照されたい。
【0160】
場合によっては、標的は、標的認識部分の1つまたは複数のヌクレオチドに相補的である1つまたは複数のヌクレオチドを含む。例えば、標的のヌクレオチドの50%またはそれ超(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%)は、標的認識部分のヌクレオチドの50%またはそれ超(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%)に相補的である。
【0161】
一部の例では、標的:標的認識部分ハイブリダイゼーションの融解温度(Tm)は、少なくとも40℃、例えば、少なくとも40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃もしくは100℃、またはそれ超である。
【0162】
例示的核酸としては、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、ロックド核酸、ペプチド核酸(PNA)、トレオース核酸(TNA)、ヘキシトール核酸(HNA)、架橋核酸、シクロヘキセニル核酸、グリセロール核酸、モルホリノ、ホスホモルホリノ、ならびにこれらのアプタマーおよび触媒核酸バージョンが挙げられる。例えば、核酸は、修飾窒素塩基を含有する。例えば、修飾DNAおよびRNAとしては、2’−o−メチルDNA、2’−o−メチルRNA、2’−フルオロ−DNA、2’−フルオロ−RNA、2’−メトキシ−プリン、2’−フルオロ−ピリミジン、2’−メトキシメチル−DNA、2’−メトキシメチル−RNA、2’−アクリルアミド−DNA、2’−アクリルアミド−RNA、2’−エタノール−DNA、2’−エタノール−RNA、2’−メタノール−DNA、2’−メタノール−RNA、およびこれらの組合せが挙げられる。場合によっては、核酸は、リン酸エステル骨格を含有する。他の場合、核酸は、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート骨格、ホスホロボレート骨格、メチルホスホネート骨格、ホスホロセレノエート骨格、またはホスホロアミデート骨格を含有する。
【0163】
場合によっては、核酸は一本鎖である。例えば、核酸は、例えばヘアピンなどの二次構造のため、一部分は一本鎖であり、一部分は二本鎖である。
【0164】
一部の例では、各核酸分子は、8〜50個のヌクレオチド、例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48または50個のヌクレオチドを含む。一例では、核酸分子は、20個のヌクレオチドを含む。
【0165】
例えば、標的および/または標的認識部分は、8〜50個のヌクレオチド、例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48または50個のヌクレオチド、例えば20個のヌクレオチドを含む、核酸分子を含む。
【0166】
一部の実施形態では、標的は、(T)
20とも呼ばれる、TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号1)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。他の例では、標的は、(A)
20とも呼ばれる、AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号2)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。
【0167】
他の実施形態では、標的認識部分は、(T)
20とも呼ばれる、TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号1)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。他の例では、標的認識部分は、(A)
20とも呼ばれる、AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号2)の配列を有するホスホロチオエート核酸分子を含む。
【0168】
一部の実施形態では、標的指向剤および/またはホーミング剤は、表1中のヌクレオチド配列の配列を有する核酸分子、例えばホスホロチオエート核酸分子を含む。
【表1】
【0169】
他の例示的核酸:相補核酸対を下の表に示す。
【表A】
【0170】
他の実施形態では、標的はビオチンを含み、標的認識部分はアビジンまたはストレプトアビジンを含む。あるいは、標的はアビジンまたはストレプトアビジンを含み、標的認識部分はビオチンを含む。ビオチンとストレプトアビジンは、高い親和性で、例えば、約10
−14MのK
Dで結合する。
【0171】
さらに他の実施形態では、標的は生体直交型官能基を含み、標的認識部分は相補官能基を含み、生体直交型官能基は、例えば下の表に記載の反応タイプを使用して、例えばクリックケミストリーによって、相補官能基と化学反応して共有結合を形成することができる。
【0172】
例えば、銅(I)触媒アジド−アルキン付加環化(CuAAC)は、室温での銅(Cu)触媒の使用を含む。アジド−アルキン付加環化は、1,2,3−トリアゾールを得るための、アジドと末端または内部アルキンとの間の1,3−双極性付加環化である。
【化1】
【0173】
クリックケミストリーの別の例としては、アジドとトリアリールホスフィンの古典的シュタウディンガー反応に基づく反応である、シュタウディンガーライゲーションが挙げられる。これは、完全非生物的官能基との最初の反応としての生体直交型化学の分野を立ち上げた。アジドは、ホスフィンなどのソフト求核剤を好むソフト求電子剤として作用する。これは、典型的にハード求核剤である大部分の生物学的求核剤とは対照的である。反応は耐水性条件下で選択的に進行して安定した生成物を生成する。ホスフィンは、完全に生物系に非存在であり、弱い還元電位にもかかわらずジスルフィド結合を還元しない。アジドは、アジドチミジンなどのFDA承認薬においておよび架橋剤としての他の使用によって生体適合性であることが示されている。加えて、それらの小さいサイズが、細胞代謝経路による生体分子へのそれらの容易な取り込みを可能にする。
【化2】
【0174】
銅フリーのクリックケミストリーは、アジドアルキン付加環化の活性化異型としてCarolyn Bertozziによって最初に開発された生体直交型反応である。CuAACとは異なり、Cuフリーのクリックケミストリーは、反応を迅速におよび生細胞毒性なしに進行させるために細胞毒性銅触媒を除去することによって生体直交性になるように変更された。反応は、銅ではなく、歪みによって促進されるアルキン−アジド付加環化(SPAAC)である。これは、シュタウディンガーライゲーションのより速い代替として開発されたものであり、第一世代は60倍超速く反応する。この反応の信じられないような生体直交性は、Cuフリーのクリック反応の培養細胞内、生きているゼブラフィッシュ、およびマウス体内での応用を可能にした。19.9kcal/molであると算定された環歪みによって反応性を増す最小安定性アルキン環としてシクロオクチンが選択された。
【化3】
【0175】
銅フリーのクリックケミストリーは、ニトロン双極子付加環化も含む。銅フリーのクリックケミストリーは、アジドではなくニトロンの1,3−双極子としての使用に適応され、ペプチドの修飾に使用されている。
【化4】
【0176】
ニトロンとシクロオクチンとの間のこの付加環化は、N−アルキル化イソオキサゾリンを形成する。反応速度は、水によって増進され、極めて速く、二次速度定数は、ニトロンの置換に依存して12〜32M
−1・s
−1の範囲である。反応は極めて速いが、代謝標識による生体分子へのニトロンの取り込みは、ペプチド翻訳後修飾によってしか達成されていない。
【0177】
クリックケミストリーの別の例としては、ノルボルネン付加環化が挙げられる。1,3双極性付加環化は、ニトリルオキシドを1,3−双極子としておよびノルボルネンを求双極子剤として使用する生体直交型反応として開発された。これは、主に、自動オリゴヌクレオチド合成装置においてDNAおよびRNAを標識する際に使用されている。
【化5】
【0178】
ノルボルネンは、歪みによって促進される反応性と安定性のバランスのため、求双極子剤として選択された。この反応の欠点としては、強い求電子性および遅い反応動態に起因するニトリルオキシドの架橋反応性が挙げられる。
【0179】
クリックケミストリーの別の例としては、オキサノルボルナジエン付加環化が挙げられる。オキサノルボルナジエン付加環化は、1,3−双極性付加環化、続いて、フラン分子を除去してトリアゾール連結コンジュゲートを生成させるためのレトロディールスアルダー反応である。この反応は、ペプチド標識実験に有用であり、SPECT造影化合物の生成にも使用されている。
【化6】
【0180】
オキサノルボルナジエンにおける環歪みおよび電子欠乏は、付加環化の律速段階に対する反応性を増加させる。その後、レトロディールスアルダー反応が迅速に起こって、安定した1,2,3トリアゾールを形成する。この反応の制限としては、オキサノルボルナジエンのエレクトロニクスを変化させることがある置換基に対する不良な耐性、および低速(おおよそ10
−4の二次速度定数)が挙げられる。
【0181】
クリックケミストリーの別の例としては、テトラジンライゲーションが挙げられる。テトラジンライゲーションは、逆電子要請型ディールスアルダー反応(inverse−demand Diels Alder reaction)でのトランス−シクロオクテンとs−テトラジンの反応、続いての、窒素ガスを除去するためのレトロディールスアルダー反応である。この反応は、極めて迅速であり、二次速度定数は(9:1のメタノール/水中で)2000M
−1・s
−1であり、それ故、極めて低い濃度で生体分子の修飾を可能にする。
【化7】
【0182】
非常に歪んだトランス−シクロオクテンが反応性ジエノフィルとして使用される。このジエンは、水と即時反応しないように置換されている3,6−ジアリール−s−テトラジンである。反応は、最初の付加環化を通って進み、逆ディールスアルダーがそれに続いて、N
2を除去し、反応の可逆性を防止する。
【0183】
反応が耐水性であるだけでなく、速度が水性媒体中で増加することも判明した。ジエノフィルとしてノルボルネンを使用して水性媒体中、おおよそ1M
−1・s
−1の二次速度でも反応を行った。この反応は、生細胞の標識およびポリマーカップリングに応用されている。
【0184】
クリックケミストリーの別の例としては、[4+1]付加環化が挙げられる。このイソシアニドクリック反応は、[4+1]付加環化、それに続く、N
2のレトロディールスアルダー除去である。
【0186】
反応は、最初の[4+1]付加環化で進行し、その後、反転して、熱力学的シンクを除去し、可逆性を防止する。第三級アミンまたはイソシアノプロパノエートを使用した場合、この生成物は安定である。第二級または第一級イソシアニドを使用した場合、生成物はイミンを形成し、これはすぐに加水分解される。
【0187】
イソシアニドは、その小さいサイズ、安定性、非毒性、および哺乳動物系における非存在のため、好適な化学的レポーターである。しかし、反応は遅く、二次速度定数は、おおよそ10
−2M
−1・s
−1である。
【0188】
クリックケミストリーの別の例としては、クアドリシクランライゲーションが挙げられる。クアドリシクランライゲーションは、π系で[2+2+2]付加環化されるように非常に歪んだクアドリシクランを用いる。
【化9】
【0189】
クアドリシクランは、非生物性であり、(完全飽和のため)生体分子と非反応性であり、比較的小さく、非常に歪んでいる(約80kcal/mol)。しかし、クアドリシクランは、室温で、および生理的pHの水性条件で、非常に安定している。クアドリシクランは、電子不足のπ系と選択的に反応できるが、単純アルケン、アルキンまたはシクロオクチンとはできない。
【0190】
ビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)を、反応性に基づいて候補スクリーンの中から反応パートナーとして選択した。光によって誘導されるノルボルナジエンへの逆行を防止するために、ジエチルジチオカルバメートを添加して、生成物中のニッケルをキレート化する。
【化10】
【0191】
これらの反応は水性条件によって増進され、二次速度定数は0.25M
−1・s
−1である。それがオキシム形成と銅フリーのクリックケミストリーの両方に対して生体直交型であると証明されていることは、特に興味深い。
【0192】
生体直交型とは、生細胞、組織または生物体内で天然の生物学的または生化学的プロセスに干渉することなく発生しうる、官能基または化学反応を意味する。生体直交型官能基または反応は、細胞に対して毒性でない。例えば、生体直交型反応は、生物学的条件、例えば、生きている生物体内または生細胞内の生物学的pH、水性環境および温度で機能しなければならない。例えば、生体直交型反応は、2官能基間の共有結合性ライゲーションが、生物からの官能基の1つまたは複数の代謝および/または除去の前に確実に起こるように迅速に起こらなければならない。他の例では、2官能基間に形成される共有結合は、生細胞内、生組織内および生きている生物体内での生物学的反応に対して不活性でなければならない。
【0193】
例示的生体直交型官能基/相補官能基対を下の表に示す。
【表B-1】
【表B-2】
【0194】
一部の例では、(例えば補充物上の)標的分子は、生体直交型官能基、例えば、トランス−シクロオクテン(TCO)、ジベンゾシクロオクチン(dibenzycyclooctyne)(DBCO)、ノルボルネン、テトラジン(Tz)、またはアジド(Az)を含む。他の例では、(例えばデバイス上の)標的認識部分は、生体直交型官能基、例えば、トランス−シクロオクテン(TCO)、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、ノルボルネン、テトラジン(Tz)、またはアジド(Az)を含む。TCOは、クリックケミストリー反応でテトラジン(Tz)部分と特異的に反応する。DBCOは、クリックケミストリー反応でアジド(Az)部分と特異的に反応する。ノルボルネンは、クリックケミストリー反応でテトラジン(Tz)部分と特異的に反応する。例えば、TCOは、テトラジン部分と、標的/標的認識部分として対合される。例えば、DBCOは、アジド部分と、標的/標的認識部分として対合される。例えば、ノルボルネンは、テトラジン部分と、標的/標的認識部分として対合される。
【0195】
例示的クリックケミストリー反応は、高特異性、効率的動態を有し、in vivoで、生理条件下で起こる。例えば、Baskinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104巻(2007年):16793頁;Onetoら、Acta biomaterilia(2014年);Nevesら、Bioconjugate chemistry 24巻(2013年):934頁;Kooら、Angewandte Chemie 51巻(2012年):11836頁;およびRossinら、Angewandte Chemie 49巻(2010年):3375頁を参照されたい。多種多様なクリックケミストリー反応およびそれらの方法論の総説については、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるNwe KおよびBrechbiel MW、2009年、Cancer Biotherapy and Radiopharmaceuticals、24巻(3号):289〜302頁;その全体が参照によって本明細書に組み込まれるKolb HCら、2001年、Angew.Chem.Int.編、40巻:2004〜2021頁を参照されたい。
【0196】
一部の実施形態では、標的分子(例えば、核酸分子、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、または本明細書に記載の生体直交型官能基)の補充物上のポリマー分子(例えばアルギネート鎖)に対する比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、120:1、140:1であるか、またはそれより高い。
【0197】
場合によっては、標的認識分子(例えば、核酸分子、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、または本明細書に記載の生体直交型官能基)のデバイスのポリマー分子(例えばアルギネートヒドロゲル)に対する比は、少なくとも5:1、例えば、少なくとも5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1であるか、またはそれより大きい。場合によっては、少なくとも10(例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、またはそれ超)の標的認識部分がポリマー(例えば、アルギネート)の各々の鎖に結合している。例えば、標的認識部分がTzまたはAzを含む場合、少なくとも10(例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、またはそれ超)のTzまたはAzの分子が、ポリマー(例えば、アルギネート)の各鎖に結合している。
【0198】
例えば、標的認識部分に対する標的の結合親和性は、500μMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、例えば解離定数(K
D)によって測定される、標的と標的認識部分の間の結合親和性は、1mMまたはそれ未満、例えば、1mM、900μM、800μM、700μM、600μM、500μM、400μM、300μM、200μM、100μM、50μM、10μM、1μM、500nM、250nM、100nM、50nM、10nM、1nM、500pM、250pM、100pM、50pM、10pM、1pM、0.1pM、0.01pM、またはそれ未満である。ホーミング剤と標的指向剤との間の相互作用のK
Dは、当技術分野における標準法を使用して測定される。
【0199】
例えば、薬物送達デバイスにおけるヒドロゲル、例えばアルギネートヒドロゲルは、例えば水和されたとき、1〜500μL、例えば、10〜250μL、20〜100μL、または40〜60μL、例えば約50μLの体積を有する。
【0200】
一部の例では、デバイス(例えば、アルギネートヒドロゲル)のポリマーまたは補充物(例えば、アルギネート鎖)のポリマーは、医薬組成物に連結されている。例えば、ポリマーは、医薬組成物に、共有結合、非共有結合(例えば、水素結合もしくはファンデルワールス相互作用)またはイオン結合によって連結されている。
【0201】
一部の実施形態では、ポリマー(例えば、アルギネート)は酸化されない、または部分的に酸化される(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、またはそれ超)。例えば、ポリマー(例えば、アルギネート)は、ポリマー、例えばアルギネートと医薬組成物のカップリングに使用するためのアルデヒド官能基などの官能基を導入するために酸化される。
【0202】
一部の実施形態では、薬物補充は、相補DNA相互作用によって媒介される遊離アルギネート鎖のカルシウム架橋アルギネートゲルとの結合によって遂行される。本明細書における実施例で示すように、アルギネート(aginate)のDNA媒介結合は、非特異的相互作用より5倍速い。in vivo研究において注入アルギネートがゲル部位に残存する時間の有意な増加は、少なくとも最初に遊離アルギネートをゲルと結合するための相補DNA相互作用の重要性を裏付ける。
【0203】
本発明のデバイスおよび方法は、体内の特定の部位への、例えば、被験体における特定の以前に投与された(例えば停留している)デバイスへの、補充物の高選択的標的指向化をもたらす。例えば、被験体に投与した(例えば、医薬組成物(複数可)を含む)補充物分子の少なくとも2%、例えば、少なくとも2%、4%、6%、8%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ超は、特定の薬物送達デバイス、例えば、補充物上の標的と特異的に結合する標的認識部分を含むものへと移動し、そこに沈着する。被験体に投与した(例えば医薬組成物(複数可)を含む)補充物分子の98%未満、例えば、98%、95%、90%、85%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%未満、またはそれ未満は、補充物上の標的を標的指向させるデバイス以外の部位に沈着する。
【0204】
一部の例では、補充物のアルギネート鎖は、ドキソルビシンなどの小分子薬と、例えばアルデヒド官能基によってカップリングされる。
【0205】
一部の実施形態では、単一セットの標的分子(例えば、相補核酸配列または生体直交型官能基)を使用して、薬物送達デバイスが補充される。あるいは、複数の異なる標的分子(例えば、核酸配列または生体直交型官能基)を使用して、例えば同じ薬物送達デバイスに、異なる直交型ペイロードを送達する。
【0206】
一部の例では、DNAナノテクノロジーを使用して力学的相互作用を生じさせる。例えば、トーホールドベースのDNA置き換えを使用して、標的デバイスから結合している補充オリゴヌクレオチドを除去してデバイス結合部位を回復させ、デバイスに結合している標的認識部分、例えばオリゴヌクレオチドの再使用を可能にすることができる。あるいは、デバイスに結合している標的認識部分、例えばオリゴヌクレオチドは、薬物補充のために薬物および/または薬物−担体に結合するためのアプタマーまたは触媒DNAザイムとしての役割を果たすことができる。
【0207】
一部の例では、1つの薬物送達デバイスを被験体に投与する。例えば、デバイスは、医薬組成物の1または複数の種類を含む、および/または送達する。この場合、補充物は、1種類より多くの医薬組成物を含み、その結果、1つの薬物送達デバイスが1種類より多くの医薬組成物/薬物で補充される。
【0208】
他の例では、1つより多くのデバイス、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ超のデバイスを被験体に投与する。各デバイスは、異なる薬物/医薬組成物によって補充されうる。あるいは、各デバイスは、同じ薬物/医薬組成物を送達する。
【0209】
場合によっては、埋め込まれた/注射された各デバイスは、そのデバイスを交換する必要なく血流による薬物の複数回(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30回、またはそれ超の回数)の投与によって補充されうる。
【0210】
一実施形態では、各デバイスのポリマーは、1種類より多くの標的認識部分を含有する。1つより多くの補充物を被験体に投与する。各補充物は、異なる標的分子を含み、この場合の各補充物は、異なる種類の医薬組成物/薬物を含む。このようにして、各医薬組成物/薬物を固有の標的分子と会合させる。したがって、複数の異なる補充物および医薬組成物を含有する補充物の単回投与によって、適切な医薬組成物が、任意選択で体内の異なる部位に位置する、特定のデバイスに標的指向される。例えば、被験体に1つのデバイスを抗がん医薬組成物の送達のために腫瘍内投与し、別のデバイスを抗炎症剤の送達のために体内の別の場所にある炎症部位に投与する。補充物の混合物−例えば、抗がん薬物と、抗がん送達デバイス上の標的認識部分に特異的な標的分子とを含有する1つの補充物、および抗炎症剤と、抗炎症送達デバイス上の標的認識部分に特異的な標的分子とを含有する他の補充物の単回投与で両方のデバイスを補充することができる。別の例では、標的認識部分(例えば、Tz)を含むポリマーを含むデバイスを体内の1つの部位に投与する。異なる標的認識部分(例えば、Az)を含むポリマーを含むデバイスを同じ体内の別の部位に投与する。第1の標的認識部分(例えば、Tzを認識するTCO)を特異的に認識する標的を含む薬物補充物、および第2の標的認識部分(例えば、Azを認識するDBCO)を特異的に認識する標的を含む薬物補充物の投与は、各薬物補充物のそれぞれの標的デバイスへのホーミングをもたらす。異なる補充物の投与は、同時にまたは連続的に行われる。
【0211】
例えば1つより多くの薬物送達デバイスを被験体に投与する別の実施形態では、各デバイスのポリマーは、同じ組成物および同じ標的認識部分を含む。各デバイスは、同じ薬物/医薬組成物を送達するが、体内の異なる部位に送達する。特定の標的分子および医薬組成物を含む補充物のバッチの単回投与によって、被験体内のデバイスの各々が同じ医薬組成物で補充される。
【0212】
場合によっては、例えばヒドロゲルを含有する本発明のデバイスは、非生分解性材料を含む。例示的非生分解性材料としては、金属、可塑性ポリマー、またはシルクポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、例えばヒドロゲルを含有するデバイスは、生体適合性材料で構成されている。この生体適合性材料は、非毒性または非免疫原性である。
【0213】
例えばヒドロゲルを含有する本発明のデバイスは、外面を含有する。あるいは、または加えて、例えばヒドロゲルを含有するデバイスは、内面を含有する。デバイス、例えばヒドロゲルの外面または内面は、中実または多孔性である。孔径は、約10nm未満であるか、直径約100nm〜20μmの範囲であるか、約20μmより大きい、例えば、最大1000μmである。例えば、細孔は、ナノ多孔性、ミクロ多孔性、またはマクロ多孔性である。例えば、ナノ細孔の直径は、約10nm未満であり、ミクロ細孔は、直径約100μm〜20μmの範囲であり、マクロ細孔は、約20μmより大きい(好ましくは、約100μmより大きく、よりいっそう好ましくは約400μmより大きく、例えば、600μmより大きい、または800μmより大きい)。一例では、デバイス、例えばヒドロゲルはマクロ多孔性であり、直径約100〜500μm、例えば、100〜200、200〜400、または400〜500μmの開放、連通孔を有する。
【0214】
一部の実施形態では、本発明のデバイス、例えばヒドロゲルは、1つまたは複数の区画を含む。
【0215】
デバイス、例えばヒドロゲルは、生体適合性である。デバイス、例えばヒドロゲルは、生分解性/侵食性であり、または体内での分解に対して抵抗性である。比較的永続性(分解抵抗性)のデバイス材料としては、金属および一部のポリマー、例えばシルクが挙げられる。好ましくは、デバイス、例えばヒドロゲルの1つまたは複数の成分は、温度、pH、水和状態および多孔度からなる群から選択される物理的パラメーター、主鎖連結の架橋密度、タイプおよび化学的性質もしくは感受性に基づく所定の速度で分解し、または化学的ポリマーの比率に基づく所定の速度で分解する。例えば、ラクチドのみからなる高分子量ポリマーは、数年の期間、例えば1〜2年かけて分解するが、ラクチドとグリコリドの50:50混合物からなる低分子量ポリマーは、数週間、例えば1、2、3、4、6、10週間のうちに分解する。高分子量、高グルクロン酸アルギネートで構成されているカルシウム架橋ゲルは、in vivoで数カ月(1、2、4、6、8、10、12カ月)〜数年(1、2、5年)かけて分解するが、低分子量アルギネートおよび/または部分的に酸化されているアルギネートからなるゲルは、数週間のうちに分解する。
【0216】
デバイス、例えばヒドロゲルを形成するために使用される例示的材料としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、ラミニンリッチゲル、アガロース、天然および合成多糖類、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、修飾スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー(polyoxamer)、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)ならびに上記のいずれかのコポリマーまたはグラフトコポリマーが挙げられる。1つの好ましいヒドロゲルとしては、RGD修飾アルギネートが挙げられる。他の例では、ヒドロゲルとしては、架橋ポリマー、例えば、架橋アルギネート、ゼラチン、またはそれらの誘導体、例えばメタクリル化されているものが挙げられる。
【0217】
別の好ましいデバイス、例えばヒドロゲルは、マクロ多孔性ポリ−ラクチド−co−グリコリド(PLG)を含む。PLGマトリックスは、デバイス、例えばヒドロゲルから、封入されている医薬組成物を、例えば、処置すべき被験体の体内または体表の部位への投与後、翌数日または数週間にわたって徐々に放出する。例えば、放出は、最初の5日以内に医薬組成物負荷量のおおよそ60%であり、続いて、翌10日にわたって医薬組成物の緩徐な徐放である。この放出プロファイルが、周囲組織へのおよび/または周囲組織を通しての医薬組成物の拡散の速度に関与する。
【0218】
デバイス、例えばヒドロゲルを作製する方法は、ヒドロゲル材料を用意するステップ、およびヒドロゲル材料を医薬組成物と共有結合で連結させるまたは非共有結合的に会合させるステップによって行われる。例示的デバイスおよびそれらを作製する方法は、US2012/0100182、PCT/US2010/057630、およびPCT/US2012/35505に記載されており、これらの各々が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0219】
場合によっては、例えばヒドロゲルを含有するデバイスの成分は、様々な幾何形状(例えば、ディスク、ビーズ、ペレット)、ニッチ、平面層(例えば、薄いシート)で構築される。例えば、直径約0.1〜200ミリメートル、例えば、5、10、20、40、50ミリメートルのディスクが皮下に埋め込まれる。ディスクは、0.1〜10ミリメートル、例えば、1、2、5ミリメートルの厚さを有することがある。ディスクは、患者への投与のために容易に圧縮または凍結乾燥される。皮下投与用の例示的ディスクは、次の寸法を有する:直径8ミリメートルおよび厚さ1ミリメートル。例えばヒドロゲルを含有する多成分デバイスは、各々の層が異なる物理的品質(ポリマー%、ポリマーの架橋%、ヒドロゲルの化学的組成、孔径、多孔度および細孔構造、剛性、靭性、延性、粘弾性ならびに/または医薬組成物を特徴とする同心性の層に任意選択で構成される。
【0220】
デバイス、例えばヒドロゲルは、標的組織の上もしくは隣に、体内の保護された位置に、血管の隣に、または外部創傷被覆材の場合のように身体の外側に配置または移植される。デバイスは、様々な公知の方法およびツール、例えば、スプーン、ピンセットもしくは捕捉器具、皮下針、内視鏡マニピュレーター、血管内もしくは経血管カテーテル、定位針、スネークデバイス(snake device)、臓器表面匍匐ロボット(organ−surface−crawling robot)(米国特許出願第20050154376号;Otaら、2006年、Innovations 1巻:227〜231頁)、最小侵襲手術デバイス、外科的埋め込み用ツール、および経皮パッチを使用して、身体組織内またはその上に導入される。例えば、マトリックス材料を逐次的に(senquentially)注射または挿入することによって、デバイスを適所で構築することもできる。
【0221】
一部の例では、ヒドロゲル材料は、生分解性または永続性材料、例えば、下に列挙するものを含む。ヒドロゲルの機械的特性は、再生が求められる応用または組織タイプによって変わる。ヒドロゲルは、生分解性(例えば、コラーゲン、アルギネート、多糖類、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)、もしくはポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸))または永続性(例えば、シルク)である。生分解性構造の場合、ヒドロゲルは、物理的もしくは化学的作用、例えば、水和、熱もしくはイオン交換のレベルによって、または細胞の作用、例えば、周囲もしくは常在細胞による酵素、ペプチドもしくは他の化合物の同化によって分解される。稠度は、軟質/柔軟(例えばゲル)からガラス状、ゴム状、脆性、靭性、弾性、剛性までの様々である。ヒドロゲル構造は、細孔を含有し、ナノ多孔性、ミクロ多孔性またはマクロ多孔性であり、細孔のパターンは、任意選択で、均質である、不均質である、整列している、反復している、またはランダムである。
【0222】
アルギネートは、分子量、分解速度およびスキャホールド形成方法を制御することによって特定の応用のために調合することができる、汎用多糖類系ポリマーである。カップリング反応を使用して、細胞接着配列RGDなどの生体活性エピトープをポリマー骨格に共有結合で結合させることができる。アルギネートポリマーは、様々なヒドロゲルタイプに形成される。注射可能なヒドロゲルは、カルシウムイオンなどの架橋剤の添加によって低分子量(MW)アルギネート溶液から形成することができ、その一方でマクロ多孔性ヒドロゲルは、高MWアルギネートディスクの凍結乾燥によって形成される。ヒドロゲル配合の違いによってヒドロゲル分解動態が制御される。アルギネートヒドロゲルからの医薬組成物、例えば、小分子、モルフォゲンまたは他の生体活性物質の放出速度をヒドロゲル配合によって制御して、空間的および時間的に制御された様式で医薬組成物をもたらす。この制御放出は、全身性副作用および複数回の注射の必要をなくす。
【化11-1】
【化11-2】
【0223】
例えばヒドロゲルを含有するデバイスは、様々な合成ポリマーおよび天然に存在するポリマー、例えば、これらに限定されるものではないが、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、アガロース、自己集合合成ペプチド、およびラミニンリッチゲルから作り上げられる。ヒドロゲルの1つの好ましい材料は、アルギネートまたは修飾アルギネート材料である。アルギネート分子は、比率およびポリマー鎖に沿っての逐次的分布が様々でありうる、(1−4)結合β−D−マンヌロン酸モノマー(M単位)およびαL−グルロン酸モノマー(G単位)からなる。アルギネート多糖類は、二価カチオン(例えば、Ca
+2、Mg
+2、Ba
+2)に対して強い親和性を有し、これらの分子に曝露されたとき安定したヒドロゲルを形成する、高分子電解質系である。Martinsen A.ら、Biotech.& Bioeng.、33巻(1989年)79〜89頁を参照されたい。例えば、カルシウム架橋アルギネートヒドロゲルは、本明細書に記載の方法に有用である。例えば、ヒドロゲルのポリマー、例えばアルギネートは、0〜100%架橋されており、例えば、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれを超えて架橋されている。他の実施形態では、ヒドロゲルのポリマー、例えばアルギネートは、架橋されていない。一部の例では、ヒドロゲルのポリマー、例えばアルギネートは、50%未満、例えば、50%、40%、30%、20%、10%、50%、2%、1%未満またはそれ未満の架橋を含有する。
【0224】
一部の実施形態では、ヒドロゲルは、修飾されているポリマーを含み、例えば、ポリマー分子上の部位が、メタクリル酸基(メタクリレート(MA))またはアクリル酸基(アクリレート)で修飾されている。例示的修飾ヒドロゲル/クリオゲルは、MA−アルギネート(メタクリル化アルギネート)またはMA−ゼラチンである。MA−アルギネートまたはMA−ゼラチンの場合、50%がアルギネートまたはゼラチンのメタクリル化度に相当する。これは、1つおきの繰り返し単位が、メタクリル化された基を含有することを意味する。メタクリル化度を1%〜90%変えることができる。90%を超えると、化学修飾は、ポリマー水溶性の溶解度を低減することがある。
【0225】
メタクリル化された基の代わりにアクリル化された基でポリマーを修飾することもできる。その場合、生成物は、アクリル化ポリマーと呼ばれる。メタクリル化(またはアクリル化)度は、殆どのポリマーについて変えることができる。しかし、一部のポリマー(例えば、PEG)は、100%化学修飾のときでさえ、それらの水溶性特性を維持する。架橋後、ポリマーは、通常、ほぼ完全なメタクリレート基転化を達成し、これはおおよそ100%の架橋効率を示す。例えば、ヒドロゲル中のポリマーは、50〜100%架橋されている(共有結合)。架橋の程度は、ヒドロゲルの耐久性と相関する。したがって、修飾ポリマーの高い架橋レベル(90〜100%)が望ましい。
【0226】
例示的デバイスは、比較的低分子量、好ましくは、溶解後、ヒトによるクリアランス(例えばアルギネートまたは多糖類が1000〜80,000ダルトンの分子量に低減される)の腎閾値であるサイズのアルギネートまたは他の多糖類を利用する。好ましくは、分子量は、1000〜60,000ダルトン、特に好ましくは1000〜50,000ダルトンである。グルクロネート単位は、マンヌロネート単位とは対照的に、ゲルへの二価カチオンによるイオン架橋のための部位をポリマーに与えるため、高グルクロネート含有量のアルギネート材料の使用も有用である。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,642,363号は、アルギネートまたは修飾アルギネートなどの多糖類を含有するポリマーを作製および使用する方法を開示している。
【0227】
アルギネート以外の有用な多糖類としては、アガロースおよび微生物性多糖類、例えば、下の表に収載するものが挙げられる。
【表C】
【0228】
本発明のヒドロゲルは、多孔性または無孔性である。例えば、ヒドロゲルは、約10nm未満の直径を有するナノ多孔性であるか、細孔の直径が好ましくは約100nm〜20μmの範囲であるミクロ多孔性であるか、または細孔の直径が約20μmより大きく、より好ましくは約100μmより大きく、よりいっそう好ましくは約400μmより大きい、マクロ多孔性である。一例では、ヒドロゲルは、直径約400〜500μmの整列した細孔を有するマクロ多孔性である。多孔性ヒドロゲル生成物の調製方法は、当技術分野において公知である。(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,511,650号を参照されたい)。
【0229】
デバイス、例えばヒドロゲル構造は、いくつかの異なる硬質、半硬質、可撓性、ゲル、自己集合、液晶、または流体組成物、例えば、ペプチドポリマー、タンパク質、多糖類、合成ポリマー、ヒドロゲル材料、オルガノゲル材料、セラミック(例えば、リン酸カルシウムまたはヒドロキシアパタイト)、タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、金属および金属合金から構成される。当技術分野において公知の方法、例えば、射出成形、既製構造の凍結乾燥、印刷、自己集合(self−assembly)、転相、溶媒流延、溶融加工、ガス発泡、繊維形成/加工、微粒子浸出またはこれらの組合せを使用して、組成物からヒドロゲルを構築する。構築されたデバイスを、その後、処置すべき個体の身体に埋め込むまたは投与する。
【0230】
デバイスは、幾通りかの方法でin vivoで構築される。ヒドロゲルは、ゲル化されていない形態で体内に導入されて、in situでゲル化するゲル化材料から作製される。構築を行う部位にデバイス成分を送達する例示的方法としては、針もしくは他の押出しツールによる射出、噴霧、塗布、または組織部位に沈着させる方法、例えば、カニューレによって挿入された適用デバイスを使用する送達が挙げられる。一例では、未ゲル化または未形成ヒドロゲル材料は、体内への導入前に、または導入している間に、医薬組成物と混合される。in vivo/in situで構築された、結果として得られるデバイス、例えばヒドロゲルは、これらの医薬組成物(複数可)の混合物を含有する。
【0231】
デバイス、例えばヒドロゲルのin situでの構築は、ポリマーの自発的会合の結果として、または相乗的もしくは化学的触媒重合から起こる。相乗的または化学的触媒反応は、構築部位またはその付近のいくつかの内因性因子もしくは条件、例えば、体温、体内のイオンもしくはpHによって開始され、または構築部位にオペレーターが与える外因性因子もしくは条件、例えば、それが導入された後に未ゲル化材料に向けられる光子、熱、電気、音もしくは他の放射によって開始される。エネルギーは、放射ビームによって、または熱もしくは光コンダクター、例えばワイヤもしくは光ファイバーケーブルまたは超音波変換器によって、ヒドロゲル材料に向けられる。あるいは、両親媒性物質などの剪断減粘材料が使用され、この材料は、例えばそれが針を通過することによってそれにかけられた剪断力が緩和された後、再び架橋する。
【0232】
一部の実施形態では、ヒドロゲルは注射可能である。例えば、ヒドロゲルは、マクロ多孔性スキャホールドとして体外で作られる。ヒドロゲルは、細孔がつぶれてゲルが非常に小さくなり、針を通り抜けることができるので、身体に注射することができる。例えば、WO12/149358;およびBencherifら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109巻、48号(2012年):19590〜5頁を参照されたい。これらは両方とも参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0233】
ヒドロゲルデバイスのin vivoおよびex vivo構築両方に適しているヒドロゲルは、当技術分野において周知であり、例えば、Leeら、2001年、Chem.Rev. 7巻:1869〜1879頁に記載されている。自己集合構築へのペプチド両親媒性アプローチは、例えば、Hartgerinkら、2002年、Proc.Natl.Acad.Sci.U. S. A. 99巻:5133〜5138頁に記載されている。剪断減粘後の可逆的ゲル化方法は、Leeら、2003年、Adv.Mat.15巻:1828〜1832頁に例示されている。
【0234】
複数区画デバイスは、同様にもしくは別様にドープされたゲルまたは他のスキャホールド材料の逐次的な層の標的部位への塗布によってin vivoで構築される。例えば、デバイスは、針を使用して、前に射出された材料の中央に次の内層を逐次的に射出して同心回転楕円体を形成することによって形成される。非同心区画は、前に射出された層の異なる位置に材料を射出することによって形成される。マルチヘッドの射出デバイスは、並行して同時に区画を押し出す。医薬組成物が別様にドープされた同様のまたは異なるヒドロゲル組成物で層ができている。あるいは、区画は、それらの親水/疎水特性に基づいてまたは各区画内の二次相互作用に基づいて自己組織化する。
【0235】
ある特定の状況では、別個の化学的および/または物理的特性を有する区画を含有するデバイスが有用である。区画化されたデバイスは、区画ごとに異なる組成物または組成物濃度を使用して設計および作り上げられる。
【0236】
あるいは、区画は、個々に作り上げられ、その後、互いに接着される(例えば、1つまたはすべての側面が第2の区画で囲まれている内部区画を有する「サンドイッチ」)。この後者の組立アプローチは、各層の他の層に対する固有の接着性、各層内のポリマー鎖の拡散および相互貫入、第2の層の第1の層への重合もしくは架橋、接着剤(例えば、フィブリン糊)の使用、または一方の区画の他方の区画内への物理的捕捉を用いて遂行される。区画は、適切な前駆体(例えば、温度感受性オリゴペプチド、イオン強度感受性オリゴペプチド、ブロックポリマー、架橋剤およびポリマー鎖(またはこれらの組合せ))の存在に依存して、in vitroまたはin vivoいずれかで、適切に自己集合し、相互作用する。
【0237】
あるいは、区画化されたデバイスは、印刷技術を使用して形成される。医薬組成物がドープされたヒドロゲル前駆体の連続層が基材上に配置され、その後、例えば自己集合化学反応によって、架橋される。架橋が化学重合、光重合または熱触媒重合によって制御される場合、各層の厚さおよびパターンは、各触媒反応後に未架橋前駆材料を洗浄除去したとき複雑な三次元パターンの積層が可能であるマスク(masque)によって制御される。(WT Brinkmanら、Photo−cross−linking of type 1 collagen gels in the presence of smooth muscle cells: mechanical properties, cell viability, and function.、Biomacromolecules、2003年7〜8月;4巻(4号):890〜895頁;W. Ryuら、The construction of three−dimensional micro−fluidic scaffolds of biodegradable polymers by solvent vapor based bonding of micro−molded layers.、Biomaterials、2007年2月;28巻(6号):1174〜1184頁;Wright, Paul K.(2001年)、21st Century manufacturing.New Jersey: Prentice−Hall Inc.)。基材の異なる領域上に異なるドープしたスキャホールド前駆体を「印刷する」インクジェットデバイスを使用して、複雑な多区画の層も積層する。2006年12月10日の米国細胞生物学会の年次総会でのJulie Phillippi(Carnegie Mellon University)の発表;Print me a heart and a set of arteries、Aldhouse P.、New Scientist、2006年4月13日、2547号、19頁;Replacement organs, 新刊(hot off the press)、C. Choi、New Scientist、2003年1月25日、2379巻。これらの層が積層されて複雑な三次元区画になる。デバイスは、次の方法のいずれかを使用して造られもする:フォトポリマー噴射、選択的レーザー焼結、薄膜積層法、熱溶解積層法、シングルジェットインクジェット、三次元印刷、または薄膜積層法。
【0238】
一部の実施形態では、本明細書に記載の停留デバイスは、がん化学療法薬送達ゲルもしくはウェハ、成長因子放出ゲル(例えば、創傷治癒を増進させるためのもの)、または薬物溶出性ステント(例えば、血栓症もしくは再狭窄を予防するもの)を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のヒドロゲルデバイスは、ゲル、ウェハ、ステントまたは他のインプラントなどの停留デバイス内またはその上に取り込まれる(例えば、停留デバイスの表面に接着される、停留デバイスに埋め込まれる、停留デバイスと混合される、または停留デバイスでコーティングされる)。場合によっては、デバイス(例えば、埋め込まれたまたは注射されたデバイス)は、体内を循環する標的(例えば、小分子)を認識して標的に結合することができる標的認識部分で修飾される。デバイス(例えば、インプラント)が結合している蓄積された標的(例えば、小分子)は、結合した形態で機能することができ、または該標的を経時的に放出することができ、それによって、例えばそのデバイスの部位での、制御された薬物投与が可能になる。一例では、本明細書に記載の生体直交型クリックケミストリーを利用して、被験体内の特定の部位、例えば損傷部位に小分子を蓄積する。
【0239】
本明細書に記載の薬物ペイロードまたは補充物は、全身性薬物、例えば、化学療法剤、抗生物質(例えば、バンコマイシン)を含む。一部の例では、全身性薬物を本明細書に記載の薬物溶出性デバイスと併用しない場合、全身性薬物(例えば、小分子)は、全身毒性をもたらす。例えば、毒性分子は、腫瘍を標的にすることを目的としうるが、結局、創傷治癒領域を標的にする。本明細書のデバイスおよびシステムは、疾患部位に対するより効率的な標的指向化を可能にする。本明細書に記載の薬物溶出性デバイスと併用したとき、全身性薬物は、体内に局在する特定の部位を標的にし、一般的な全身毒性は避けられる。補充プロセスは、二次的なまたは後続の侵襲的介入、例えば、体内へのデバイスの埋め込みを必要とせずに果たされる。
【0240】
例えば、腫瘍の直接処置に加えて、本明細書に記載のデバイスおよびシステムは、生検後または腫瘍切除後の腫瘍部位を標的にするのに有用である。あるいは、デバイスおよびシステムは、創傷治癒部位または炎症部位などの、他の疾患部位を処置するのに有用である。本発明の薬物標的指向化能力は、薬物溶出性血管ステントおよび血管グラフトへの薬物の送達、眼薬物送達、またはインプラントが感染した部位への抗生物質の標的指向化にも有用である。デバイスおよびシステムは、非常に多くの応用、例えば、デバイスが体内の局所部位に埋め込まれる/注射される応用、および毒性薬物、例えば小分子の全身性投与が必要とされる応用に有用である。
【0241】
ヒドロゲルデバイスからの医薬組成物の放出プロファイルは、因子の拡散およびポリマー分解の両方、全身に負荷される医薬組成物の用量、ならびにポリマーの組成によって制御される。同様に、作用範囲(組織分布)および作用継続期間、または放出される医薬組成物の時空間勾配は、これらの可変要素によって調節される。目的の組織内での医薬組成物の拡散および分解は、医薬組成物の化学修飾(例えば、ポリペプチドのPEG化)によって任意選択で調節される。両方の場合、放出の時間枠が、デバイスによる有効な送達が望まれる時間を決定する。
【0242】
医薬組成物は、表面吸収、例えばヒドロゲル材料中に物質を補足するための相変化を使用する物理的固定化をはじめとする公知の方法を使用して、薬物送達デバイスに加えられる。例えば、医薬組成物、例えばポリペプチド、例えば成長因子は、水性相または液相中にあるうちにヒドロゲル材料と混合され、環境条件(例えば、pH、温度、イオン濃度)の変更後、その液体はゲル化または固体化し、それによって医薬組成物が捕捉される。あるいは、例えばアルキル化剤またはアシル化剤を使用する、共有結合性カップリングが、規定された高次構造のヒドロゲル上での医薬組成物の安定した長期提示をもたらすために使用される。ペプチド/タンパク質などの医薬組成物の共有結合性カップリングのための例示的試薬を下の表に提供する。
【表D】
【0243】
標的領域への効率的ホーミングのために、薬物ペイロードは、十分に長い期間にわたって血液中を循環しなければならない。局所的薬物制御放出と血液ベースの標的指向化の両方が可能な1つのポリマーは、α−L−グルロン酸およびβ−D−マンヌロン酸糖残基からなる天然に存在する多糖類である、アルギネートである。Augst A、Kong HおよびMooney D(2006年)Macromolecular bioscience 6巻(8号):623〜633頁を参照されたい。アルギネートは、製薬業界で薬物の賦形剤として、および創傷被覆材として、幅広く応用されている。例えば、Liew C、Chan L、Ching A、およびHeng P(2006年)International journal of pharmaceutics 309巻(1〜2号):25〜37頁;ならびにMatthew I、Browne R、Frame J、およびMillar B(1995年)Biomaterials 16巻(4号):275〜278頁を参照されたい。アルギネートは、生体適合性であり、非免疫原性であり、最小の外傷で薬物または生物学的因子の封入を可能にする穏やかな条件下でゲル化することができる。加えて、アルギネートは、細胞接着のためにまたは薬物担体として容易に化学修飾され、調整可能な分解速度を有し、化学修飾形態のアルギネートは、石灰化した組織の再生を促進するタンパク質の薬物送達ビヒクルとして今や臨床使用されており、また移植した細胞の担体として使用されてきた。例えば、Silva E、Kim E−S、Kong H、およびMooney D(2008年)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 105巻(38号):14347〜14352頁;Bouhadir Kら、(2001年)Biotechnology progress 17巻(5号):945〜950頁;Bratthall Gら、(2001年)Journal of clinical periodontology 28巻(10号):923〜929頁;Bent Aら、(2001年)Neurourology and urodynamics 20巻(2号):157〜165頁;Yu Jら、(2010年)Biomaterials 31巻(27号):7012〜7020頁;ならびにZhao L、Weir M、およびXu H(2010年)Biomaterials 31巻(25号):6502〜6510頁を参照されたい。
【0244】
アルギネートは、血液中での長い循環時間を有し、少なくとも1週間は血清中で検出可能であること、ならびにコンジュゲーション後にナノ粒子の循環時間を増加させることができる点でPEG様特性を有することが以前に報告されている。Al−Shamkhani AおよびDuncan R(1995年)Journal of bioactive and compatible polymers 10巻(1号):4〜13頁;ならびにKodiyan A、Silva E、Kim J、Aizenberg M、およびMooney D(2012年)ACS nano 6巻(6号):4796〜4805頁。循環寿命は、尿への排泄率(小分子)、肝臓および脾臓内の単核食細胞系(MPS)による取り込み(粒子)、ならびに薬物安定性に主として依存する。例えば、本明細書における研究に使用したアルギネートは、280kDa(酸化していないもの)または200KDa(5%酸化されているもの)のMWを有し、それぞれ、44nmおよび17nmの流体力学的半径を有していた。これらの特性のため、アルギネートは、これらの系でナノ粒子と同様に挙動し、薬物循環時間を増し、オフターゲット組織内への薬物透過性を低減する。これらの研究の結果は、遊離アルギネート鎖が約2週間の血中循環寿命を有することを示す。個々の臓器の撮像によって、MPS関連臓器への有意なクリアランスを被る傾向ばかりでなく、多くのナノ粒子とも一致して、肺内での蓄積、およびより少ない程度に腎臓内での蓄積が明らかになり(
図6D)、これは、これらの臓器のすべてがアルギネートクリアランスに寄与することを実証した。
【0245】
本明細書に提示する結果は、アルギネートゲルのDNA媒介ドキソルビシン補充が異種移植腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を劇的に阻害したことを実証する。本発明のデバイスおよび方法のホーミング態様は、EPR効果を利用するナノ粒子および先進薬物送達システムによるすべての透過可能組織の非特異的標的指向化に関係する毒性を克服することができる。例えば、Park J−Hら、(2010年)Advanced materials(Deerfield Beach、Fla.)22巻(8号):880〜885頁;Park J−Hら、(2010年)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 107巻(3号):981〜986頁;Ruoslahti E、Bhatia S、およびSailor M(2010年)The Journal of cell biology 188巻(6号):759〜768頁;Simberg Dら、(2007年)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104巻(3号):932〜936頁;von Maltzahn Gら、(2011年)Nature materials 10巻(7号):545〜552頁;Perrault SおよびChan W(2010年)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 107巻(25号):11194〜11199頁を参照されたい。
【0246】
腫瘍の直接処置に加えて、本明細書に記載のデバイスおよび方法は、生検または腫瘍切除後の腫瘍部位を標的にするために使用される。
【0247】
例えば、本発明は、それを必要とする被験体において腫瘍のサイズを維持または低減する方法であって、
i)本明細書に記載の薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、医薬組成物が抗がん薬物を含むステップと、
ii)その後、本明細書に記載の薬物補充物を被験体に経口、腹腔内、静脈内または動脈内投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって、被験体における腫瘍のサイズを維持または低減する方法を含む。
【0248】
本発明は、それを必要とする被験体においてがんの進行を低減する方法であって、
i)薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、医薬組成物が抗がん薬物を含むステップと、
ii)その後、薬物補充物を被験体に経口、腹腔内、静脈内または動脈内投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、
【0249】
それによって被験体におけるがんの進行を低減する方法も含む。
【0250】
一部の実施形態では、腫瘍のサイズは維持される、すなわち、抗がん薬物の投与後の腫瘍のサイズは、抗がん薬物の投与前の腫瘍のサイズの10%以内のままである。一部の例では、腫瘍のサイズは、デバイスおよび/または補充物の投与前の腫瘍のサイズと比較して少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ超、低減される。場合によっては、本発明の方法/デバイスは、被験体における腫瘍を完全に除去する。一部の例では、腫瘍のサイズは、例えばX線、PETスキャン、MRIまたはCATスキャンで、腫瘍の面積または直径によって測定される。
【0251】
他の例では、本明細書に記載の方法は、がんの進行および/または腫瘍成長を減速させるのに有効である。例えば、腫瘍成長速度は、本明細書に記載のデバイスまたは補充物の投与前の成長速度と比較して少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ超、低減される。場合によっては、本明細書に記載の方法は、がんの進行および/または腫瘍成長を完全に停止させる。
【0252】
場合によっては、抗がん薬物は、小分子、ペプチドもしくはポリペプチド、タンパク質もしくはその断片(例えば、抗体もしくはその断片)、または核酸を含む。
【0253】
例示的抗がん薬物としては、アビラテロン酢酸エステル、アビトレキサート(メトトレキサート)、アブラキサン(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE−PC、AC、AC−T、アドセトリス(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、Ado−トラスツズマブエムタンシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)、アドルシル(フルオロウラシル)、アファチニブ二マレイン酸塩、アフィニトール(エベロリムス)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリムタ(ペメトレキセド二ナトリウム)、アロキシ(パロノセトロン塩酸塩)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、アレディア(パミドロン酸二ナトリウム)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、三酸化ヒ素、アーゼラ(オファツムマブ)、Erwinia chrysanthemi由来アスパラギナーゼ、アバスチン(ベバシズマブ)、アキシチニブ、アザシチジン、BEACOPP、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベキサール(トシツモマブおよびI131ヨウ素トシツモマブ)、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボシュリフ(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブスルファン、ブスルフェクス(ブスルファン)、カバジタキセル、カボザンチニブS−リンゴ酸塩、CAF、キャンパス(アレムツズマブ)、カンプトサール(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、カルボプラチン、カルボプラチン・タキソール、カルフィルゾミブ、カソデックス(ビカルタミド)、CeeNU(ロムスチン)、セルビジン(ダウノルビシン塩酸塩)、サーバリックス(組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、クロラムブシル、クロラムブシル・プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラフェン(シクロホスファミド)、クロファラビン、クロファレックス(クロファラビン)、クロラール(クロファラビン)、CMF、コメトリク(カボザンチニブS−リンゴ酸塩)、COPP、COPP−ABV、コスメゲン(ダクチノマイシン)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、サイフォス(イホスファミド)、シタラビン、シタラビンリポソーム、シトサール−U(シタラビン)、シトキサン(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダコゲン(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンディフティトックス、デノスマブ、DepoCyt(リポソームシタラビン)、DepoFoam(リポソームシタラビン)、デクスラゾキサン塩酸塩、ドセタキセル、ドキシル(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox−SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTIC−Dome(ダカルバジン)、エフデックス(フルオロウラシル)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エレンス(エピルビシン塩酸塩)、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、イメンド(アプレピタント)、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、アービタックス(セツキシマブ)、エリブリンメシル酸塩、エリベッジ(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(Erwinia chrysanthemi由来アスパラギナーゼ)、エトポフォス(エトポシドホスフェート)、エトポシド、エトポシドホスフェート、エバセト(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩)、エキセメスタン、フェアストン(トレミフェン)、フェソロデックス(フルベストラント)、FEC、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、フルダラ(フルダラビンリン酸エステル)、フルダラビンホスフェート、フルオロプレックス(フルオロウラシル)、フルオロウラシル、フォレックス(メトトレキサート)、フォレックスPFS(メトトレキサート)、フォルフィリ、フォルフィリ・ベバシズマブ、フォルフィリ・セツキシマブ、フォルフィリノックス、フォルフォクス、フォロチン(プララトレキサート)、FU−LV、フルベストラント、ガーダシル(組換えHPV四価ワクチン)、ガジバ(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン・シスプラチン、ゲムシタビン・オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ジェムザール(ゲムシタビン塩酸塩)、ジロトリフ(アファチニブ二マレイン酸塩)、グリベック(メシル酸イマチニブ)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、組換えHPV二価ワクチン、組換えHPV四価ワクチン、ハイカムチン(トポテカン塩酸塩)、ハイパーCVAD、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩)、イフェックス(イホスファミド)、イホスファミド、イホスファミダム(イホスファミド)、メシル酸イマチニブ、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミキモド、インライタ(アキシチニブ)、イントロンA(組換えインターフェロンアルファ−2b)、ヨウ素131トシツモマブおよびトシツモマブ、イピリムマブ、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イストダックス(ロミデプシン)、イクサベピロン、イグゼンプラ(イクサベピロン)、ジャカフィ(ルキソリチニブリン酸塩)、ジェブタナ(カバジタキセル)、カドサイラ(Ado−トラスツズマブエムタンシン)、ケオキシフェン(ラロキシフェン塩酸塩)、ケピバンス(パリフェルミン)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ラパチニブ二トシル酸塩、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイケラン(クロラムブシル)、ロイプロリド酢酸塩、レブラン(アミノレブリン酸)、リンホリジン(クロラムブシル)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、リポソームシタラビン、ロムスチン、リュープロン(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー−Ped(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー・3カ月製剤(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー・4カ月製剤(ロイプロリド酢酸塩)、マルキボ(ビンクリスチン硫酸塩リポソーム)、マチュレーン(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、メゲース(メゲストロール酢酸エステル)、メゲストロールアセテート、メキニスト(トラメチニブ)、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(メスナ)、メタゾラストン(テモゾロミド)、メトトレキサート、メトトレキサートLPF(メトトレキサート)、メキサート(メトトレキサート)、メキサート−AQ(メトトレキサート)、マイトマイシンC、ミトザイトレックス(マイトマイシンC)、MOPP、モゾビル(プレリキサフォル)、マスタージェン(メクロレタミン塩酸塩)、ムタマイシン(マイトマイシンC)、ミレラン(ブスルファン)、マイロサール(アザシチジン)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ナノ粒子パクリタキセル(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ナベルビン(ビノレルビン酒石酸塩)、ネララビン、ネオサール(シクロホスファミド)、ニューポジェン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブトシル酸塩)、ニロチニブ、ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)、エヌプレート(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オマセタキシンメペサクシネート、オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)、オンタック(デニロイキンディフティトックス)、OEPA、OPPA、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パミドロン酸二ナトリウム、パニツムマブ、パラプラット(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、ペグアスパルガーゼ、ペグインターフェロンアルファ−2b、PEG−イントロン(ペグインターフェロンアルファ−2b)、ペメトレキセド二ナトリウム、パージェタ(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール−AQ(シスプラチン)、プレリキサフォル、ポマリドミド、ポマリスト(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プロリア(デノスマブ)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、プロベンジ(シプロイセルT)、プリネトール(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラスブリカーゼ、R−CHOP、R−CVP、組換えHPV二価ワクチン、組換えHPV四価ワクチン、組換えインターフェロンアルファ−2b、レゴラフェニブ、レブラミド(レナリドミド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リツキサン(リツキシマブ)、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルキソリチニブリン酸塩、スクレロゾール胸膜内用エアロゾル(タルク)、シプロイセル−T、ソラフェニブトシル酸塩、スプリセル(ダサチニブ)、スタンフォードV、滅菌タルク末(タルク)、ステリタルク(タルク)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、スニチニブリンゴ酸塩、スーテント(スニチニブリンゴ酸塩)、シラトロン(ペグインターフェロンアルファ−2b)、シノビル(サリドマイド)、シンリボ(オマセタキシンメペサクシネート)、タフィンラー(ダブラフェニブ)、タルク、タモキシフェンクエン酸塩、タラビンPFS(シタラビン)、タルセバ(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ニロチニブ)、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、トポサール(エトポシド)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トーリセル(テムシロリムス)、トシツモマブおよびI131ヨウ素トシツモマブ、トテクト(デクスラゾキサン塩酸塩)、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トリセノックス(三酸化ヒ素)、タイケルブ(ラパチニブトシル酸塩)、バンデタニブ、VAMP、ベクティビックス(パニツムマブ)、VeIP、ベルバン(ビンブラスチン硫酸塩)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベルサール(ビンブラスチン硫酸塩)、ベムラフェニブ、ベペシド(エトポシド)、ビアデュール(ロイプロリド酢酸塩)、ビダーザ(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンカサールPFS(ビンクリスチン硫酸塩)、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、ビノレルビン酒石酸塩、ビスモデギブ、ボラクサーゼ(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ塩酸塩)、ウェルコボリン(ロイコボリンカルシウム)、ザーコリ(クリゾチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、Xelox、エクスジバ(デノスマブ)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、ヤーボイ(イピリムマブ)、ザルトラップ(Ziv−アフリベルセプト)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン)、ザインカード(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv−アフリベルセプト、ゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、およびザイティガ(アビラテロン酢酸エステル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0254】
一部の実施形態では、上記方法(複数可)のステップii)は、投与されたデバイスから離れて位置する部位で、例えば、デバイスの中心から少なくとも5cm(例えば、少なくとも5cm、10cm、15cm、20cm、30cm、40cm、50cm、1m、1.5m、2m、2.5m、3m、またはそれ超)離れて位置する部位で、補充物を被験体に投与することを含む。
【0255】
例えば、腫瘍は、下記の1つまたは複数のがんに由来する。
【0256】
一部の例では、腫瘍のサイズは、デバイスおよび/または補充物の投与前の腫瘍のサイズと比較して少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ超、低減される。場合によっては、本発明の方法/デバイスは、被験体における腫瘍を完全に除去する。
【0257】
他の例では、本明細書に記載の方法は、がんの進行および/または腫瘍成長を減速させるのに有効である。例えば、腫瘍成長速度は、本明細書に記載のデバイスまたは補充物の投与前の該成長速度と比較して少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ超、低減される。場合によっては、本明細書に記載の方法は、がんの進行および/または腫瘍成長を完全に停止させる。
【0258】
一部の実施形態では、被験体は、がんを患っている。例示的がんとしては、黒色腫、中枢神経系(CNS)がん、CNS生殖細胞腫瘍、肺がん、白血病、多発性骨髄腫、腎がん、悪性神経膠腫、髄芽腫、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、線維肉腫、膵がん、胃がん、頭頸部がん、または結腸直腸がんが挙げられる。例えば、がん細胞は、固形がんまたは血液がんに由来する。血液がんは、例えば、白血病またはリンパ腫である。白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、または急性単球性白血病(AMoL)である。リンパ腫は、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(例えば、結節硬化型サブタイプ、混合細胞型サブタイプ、リンパ球豊富型サブタイプ、もしくはリンパ球減少型サブタイプ)、または非ホジキンリンパ腫である。例示的固形がんとしては、黒色腫(例えば、切除不能な転移性黒色腫)、腎がん(例えば、腎細胞癌)、前立腺がん(例えば、転移性去勢抵抗性前立腺がん)、卵巣がん(例えば、卵巣上皮がん、例えば転移性卵巣上皮がん)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、および肺がん(例えば、非小細胞肺がん)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0259】
例えば、本明細書に記載のデバイス/方法で使用するための抗がん薬物は、ドキソルビシンである。
【0260】
場合によっては、薬物送達デバイスへの補充は、透過性組織内で、例えば、創傷部位で/付近で、または炎症部位で/付近で使用される。例えば、本明細書に記載の方法は、末梢動脈疾患(PAD)に罹患している組織または心筋梗塞後の心筋組織などの、虚血領域に配置された薬物送達デバイスへの補充に使用される。送達デバイスを補充するために使用される薬物としては、ポリペプチド/ペプチド、タンパク質もしくはその断片(例えば、抗体もしくはその断片)、核酸、多糖類、小分子、または脂質、例えば成長因子が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本明細書で使用される薬物は、血管新生および血管成長を促進し、既存の血管の成熟および/もしくは再構築を促進し、ならびに/または筋肉再生を促進する。一部の例では、筋肉再生を促進する、本明細書で使用される薬物としては、肝細胞成長因子(HGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、神経成長因子(NGF)、白血病阻害因子(LIF)、および/もしくは血小板由来成長因子(PDGF−BB)、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0261】
一部の例では、本発明は、それを必要とする被験体において創傷治癒を促進する方法であって、
i)本明細書に記載の薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、医薬組成物が血管新生および/または既存の血管の成熟もしくは再構築を促進するステップと、
ii)その後、本明細書に記載の補充物を被験体に経口、腹腔内、静脈内または動脈内投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって被験体における創傷治癒を促進する方法を提供する。
【0262】
一部の実施形態では、医薬組成物は、タンパク質もしくはその断片(例えば、抗体もしくはその断片)、ペプチド/ポリペプチド、核酸、多糖類、または小分子を含む。一部の例では、薬剤は、タンパク質またはその断片、例えば、成長因子または脈管形成因子、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、例えばVEGFA、VEGFB、VEGFCもしくはVEGFD、および/またはIGF、例えばIGF−1、線維芽細胞成長因子(FGF)、アンジオポエチン(ANG)(例えば、Ang1もしくはAng2)、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)、デルタ様リガンド4(DLL4)、またはこれらの組合せを含む。他の例では、薬剤は、筋肉再生を促進するタンパク質またはその断片、例えば、肝細胞成長因子(HGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、神経成長因子(NGF)、白血病阻害因子(LIF)、および/もしくは血小板由来成長因子(PDGF−BB)、またはこれらの組合せを含む。
【0263】
場合によっては、デバイスは、虚血組織の中または近く(例えば、虚血組織の外周から10cmまたはそれ未満、例えば、10cm、5cm、2.5cm、1cm、5mm、2.5mm、1mm、またはそれ未満)の被験体内の部位に投与される。
【0264】
一部の例では、虚血組織は、末梢動脈疾患(PAD)に起因する。他の例では、虚血組織は、心筋梗塞に罹患している心筋組織である。
【0265】
本発明は、それを必要とする被験体において炎症を低減または制御する方法であって、
i)本明細書に記載の薬物送達デバイスを被験体に投与するステップであって、医薬組成物が抗炎症剤を含むステップと、
ii)その後、本明細書に記載の補充物を対象に経口、腹腔内、静脈内または動脈内投与するステップと、
iii)任意選択で、ステップii)を反復するステップと
を含み、それによって被験体における炎症を低減または制御する方法も提供する。
【0266】
一部の例では、デバイスは、被験体における炎症部位にまたは炎症組織の近く(例えば、炎症組織の外周から10cmまたはそれ未満、例えば、10cm、5cm、2.5cm、1cm、5mm、2.5mm、1mm、またはそれ未満)の部位に投与される。
【0267】
場合によっては、炎症は、例えば、関節リウマチに起因する慢性炎症である。
【0268】
炎症を制御することによって、方法は、組織の炎症の重症度の増加を予防する、または炎症している組織の量の増加を予防する。
【0269】
加えて、本明細書に記載のデバイスおよび方法は、血液ベースの医療デバイスに薬物を送達し、そのような医療デバイスに非侵襲的様式で補充する。例示的医療デバイスとしては、薬物溶出性血管ステントおよび血管グラフトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0270】
カテーテルおよび/またはステントによる薬物の局所送達は、心血管組織および特性評価される他の組織、例えば泌尿器の組織の処置に使用されている。そのような場合、カテーテルまたはステントは、体内腔に配置される。血管グラフト、ステントおよびカテーテルは、血液凝固/凝血、血管内腔の再狭窄を阻害するための薬物、および隣接組織を処置するための他の薬物を送達するために使用される。カテーテル、例えば、薬物含有ヒドロゲルでコーティングされたカテーテルは、組織に挿入され、組織と接触させるためおよび薬物含有ヒドロゲルを沈着させるために拡張され、その後、組織から除去される。薬物負荷ヒドロゲルでコーティングされたステントは、体内腔に投与され、展開されてin situに留置される。各場合、薬物(または細胞)がヒドロゲルから出て臨床的恩恵をもたらす。場合によっては、この恩恵は再狭窄の低減または阻害であり、他の場合、他の医薬、例えば抗微生物剤がヒドロゲルから拡散して(USPN8,221,783、8,182,481、8,157,854、78,133,501、7,794,490、7,767,219、7,601,382、7,517,342、7,462,165、7,371,257、7,066,904、6,364,856、5,954,706、5,868,719、5,674,192、5,588,962、5,304,121(これらの各々が参照によって本明細書に組み込まれる))隣接または近くの組織を処置する。血管内腔内にヒドロゲルを沈着させることに加えて、ヒドロゲルは、腫瘍量の低減/がんの処置(例えば、US8,067,237、US2013−0202707、およびWO12/167230を参照されたい(これらの各々が参照によって本明細書に組み込まれる))、創傷治癒(US2013−0177536およびUS2011−0117170、これらの各々が参照によって本明細書に組み込まれる)、および(上に記載したような、ならびに四肢、例えば足、手、下肢および腕を冒す末梢動脈疾患のための)虚血組織の処置のために、皮下に、筋肉内に、および身体の他の組織に投与される。
【0271】
時間とともに、最初に投与されたヒドロゲル中の活性薬剤は使い果たされる。本発明の組成物および方法は、配置された処置モダリティーの再充填、補充およびしたがって耐用年数の延長に使用される。
【0272】
本明細書に記載のデバイス、例えばヒドロゲルは、経口的に、腹腔内に、全身に、皮下もしくは経皮的に、動脈ステントとして、または外科的に投与されるまたは埋め込まれる。あるいは、デバイス、例えばヒドロゲルは、注射によって、例えば、動脈内、腹腔内または静脈内に投与される。
【0273】
一部の例では、本明細書に記載の薬物送達システムは、ナノ粒子、例えばリン酸カルシウムポリマーナノ製剤、縮合核酸、またはリポソーム核酸を含む。例えば、血液によって運ばれるナノ粒子は、疾患組織、例えば腫瘍組織にホーミングし、その組織内に蓄積し、補充可能デバイスとして役立つ。あるいは、ナノ粒子は、疾患組織に直接送達される。その後、薬物補充物は、必要に応じて疾患組織内のナノ粒子に配置される。
【0274】
本明細書に記載の補充物および/または医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経真皮(すなわち局部的)、経粘膜および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、次の成分を含むことができる:滅菌希釈液、例えば、注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および浸透圧を調整するための剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの、酸または塩基で調整することができる。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入することができる。
【0275】
本明細書に記載のデバイス、例えばヒドロゲル、補充物および/または医薬組成物は、注射用の使用に適しており、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与に適する担体としては、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合、組成物は、無菌でなければならず、容易な注入性(syringeability)が存在する程度に流動性であるべきである。組成物は、製造および保管条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適する混合物を含有する、溶媒または分散媒でありうる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなどによって果たすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0276】
滅菌注射用溶液は、上に列挙した構成要素(ingredient)の1つまたは組合せを必要に応じて含有する適切な溶媒に必要量の医薬組成物を混ぜ入れ、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒と上に列挙したものからのその他の必要とされる構成要素とを含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を混ぜ入れることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、任意の追加の所望の構成要素を加えた活性な構成要素の粉末を、前もって滅菌濾過されたその溶液から生じさせる、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0277】
一実施形態では、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む、徐放/制御放出製剤などの医薬組成物は、化合物を身体からの急速な除去から保護する担体を用いて調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかである。
【0278】
例えば、医薬組成物を、例えばコアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル内に、例えば、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)の場合またはマクロエマルジョンの場合、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に捕捉することができる。
【0279】
徐放調製物を調製することができる。徐放調製物の適する例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびロイプロリド酢酸塩で構成されている注射用マイクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日を超える分子の放出を可能にするが、ある特定のヒドロゲルは、より短期間にタンパク質を放出する。
【0280】
材料をAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染した細胞を標的にするリポソームを含む)を薬学的に許容される担体として使用することもできる。これらは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0281】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のため単位剤形での経口または非経口組成物の製剤化は特に有利である。本明細書で用いる場合の単位剤形は、処置すべき被験体のための単位投薬量として適している物理的に別個の単位であって、各単位が、必要とされる医薬担体と共同で所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含有する、単位を指す。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特性および達成される特定の治療効果、ならびに個体の処置のためのそのような活性化合物の配合技術に固有の制限によって決まり、これらに直接依存する。
【0282】
一部の例では、本明細書に記載の医薬組成物は、デバイス内またはその上に、例えば、デバイスのポリマー(例えば、アルギネートなどのヒドロゲル)上に取り込まれる。そのような場合、0〜100mg(例えば、5〜100mg、10〜100mg、20〜100mg、30〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、80〜100mg、90〜100mg、1〜95mg、1〜90mg、5〜95mg、5〜90mg、5〜80mg、5〜70mg、5〜60mg、5〜50mg、5〜40mg、5〜30mg、または5〜20mg)の医薬組成物がデバイス内に存在する。例えば、医薬組成物は、デバイス内に少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはそれ超)の重量/重量濃度で存在する。
【0283】
一部の実施形態では、デバイス、例えばヒドロゲルは、ヒドロゲルのmL当たり0.1mg〜25mg、例えば、mL当たり0.5mg〜15mg、1mg〜10mg、1mg〜5mg、5mg〜10mg、または1mg〜3mg、例えば、mL当たり約1.6mgの医薬組成物を含む。
【0284】
他の例では、本明細書に記載の医薬組成物は、本発明の補充物とコンジュゲートしている。例えば、医薬組成物は、補充物ポリマー、例えばアルギネート鎖と、1:100〜100:1、例えば、1:100、5:100、1:10、1:5、3:10、4:10、1:2、6:10、7:10、8:10、9:10、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、または100:1の重量/重量比でコンジュゲートしている。他の例では、医薬組成物は、補充物の標的分子と、例えば、10:1〜1:10、例えば、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10の医薬組成物:標的分子モル比でコンジュゲートしている。
【0285】
デバイスは、それを必要とする被験体に投与される。例えば、被験体は、哺乳動物、例えばヒト、サル、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジまたはヤギである。例えば、被験体はヒトである。
【0286】
本明細書に記載の方法に従って、デバイスおよび/または補充物は、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、動脈内投与、直腸投与、頬側投与、舌下投与、眼内投与、鼻腔内投与、経真皮投与、経粘膜投与、皮下投与、筋肉内投与、注射によって投与、エアロゾルベースの送達によって投与、または埋め込みによって投与される。
【0287】
小分子は、1000ダルトン未満、800ダルトン未満、または500ダルトン未満の低分子量化合物である。
【0288】
一部の実施形態では、タンパク質、抗体またはポリペプチドの断片は、1500またはそれ未満、1250またはそれ未満、1000またはそれ未満、900またはそれ未満、800またはそれ未満、700またはそれ未満、600またはそれ未満、500またはそれ未満、400またはそれ未満、300またはそれ未満、200またはそれ未満のアミノ酸を含有する。例えば、タンパク質またはペプチドは、1500またはそれ未満、1250または(of)それ未満、1000またはそれ未満、900またはそれ未満、800またはそれ未満、700またはそれ未満、600またはそれ未満、500またはそれ未満、400またはそれ未満、300またはそれ未満、200またはそれ未満、100またはそれ未満、80またはそれ未満、70またはそれ未満、60またはそれ未満、50またはそれ未満、40またはそれ未満、30またはそれ未満、25またはそれ未満、20またはそれ未満、10またはそれ未満のアミノ酸を含有する。例えば、本発明の核酸は、400またはそれ未満、300またはそれ未満、200またはそれ未満、150またはそれ未満、100またはそれ未満、90またはそれ未満、80またはそれ未満、70またはそれ未満、60またはそれ未満、50またはそれ未満、40またはそれ未満、35またはそれ未満、30またはそれ未満、28またはそれ未満、26またはそれ未満、24またはそれ未満、22またはそれ未満、20またはそれ未満、18またはそれ未満、16またはそれ未満、14またはそれ未満、12またはそれ未満、10またはそれ未満のヌクレオチドを含有する。
【0289】
場合によっては、本発明の化合物(例えば、小分子)または高分子(例えば、核酸、ポリペプチドもしくはタンパク質)は、精製および/または単離されている。本明細書で用いる場合、「単離された」または「精製された」小分子、核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、抗体もしくはその断片)は、他の細胞物質、または組換え法によって生成される場合は培養培地、または化学合成される場合は化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製された化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)目的の化合物である。好ましくは、調製物は、重量で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%および最も好ましくは少なくとも99%目的の化合物である。例えば、精製された化合物は、重量で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%または100%(w/w)の所望化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定される。精製または単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然に存在する状態ではそれに隣接している遺伝子または配列を含まない。精製されたは、ヒト被験体への投与に安全である滅菌度、例えば、感染性または毒性作用物質の欠如も定義する。
【0290】
「実質的に純粋な」は、ヌクレオチドまたはポリペプチドに天然に付随する成分から分離された、ヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。典型的に、ヌクレオチドおよびポリペプチドは、それらが天然に会合しているタンパク質および天然に存在する有機分子を重量で少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはさらには99%含まない場合、実質的に純粋である。
【0291】
ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは他の作用物質は、精製および/または単離されている。具体的には、本明細書で用いる場合、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、他の細胞物質、または組換え法によって生成される場合は培養培地、または化学合成される場合は化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製された化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)目的の化合物である。好ましくは、調製物は、重量で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%および最も好ましくは少なくとも99%目的の化合物である。例えば、精製された化合物は、重量で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%または100%(w/w)の所望化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定される。精製または単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然に存在する状態ではそれに隣接している遺伝子または配列を含まない。精製または単離されたポリペプチドは、その天然に存在する状態ではそれに隣接しているアミノ酸または配列を含まない。精製されたは、ヒト被験体への投与に安全である滅菌度、例えば、感染性または毒性作用物質の欠如も定義する。
【0292】
同様に、「実質的に純粋な」は、ヌクレオチドまたはポリペプチドに天然に付随する成分から分離された、ヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。典型的には、ヌクレオチドおよびポリペプチドは、それらが天然に会合しているタンパク質および天然に存在する有機分子を重量で少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはさらには99%含まない場合、実質的に純粋である。
【0293】
「単離された核酸」は、その核酸が由来する生物の天然に存在するゲノム内でその核酸に隣接している遺伝子を含まない核酸を意味する。この用語は、例えば:(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部であるが、それが天然に存在する生物のゲノム内の分子の一部に隣接している両方の核酸配列が隣接していないDNA、(b)ベクターにまたは原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに、結果として得られる分子がいずれの天然に存在するベクターまたはゲノムDNAとも同一にならないような様式で取り込まれる核酸、(c)別の分子、例えば、cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成された断片、または制限断片、および(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列を包含する。本発明による単離された核酸分子は、合成で生成された分子、ならびに化学的に改変されたおよび/または修飾骨格を有する任意の核酸をさらに含む。例えば、単離された核酸は、精製されたcDNAまたはRNAポリヌクレオチドである。単離された核酸分子は、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子も含む。
【0294】
移行語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」または「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的または非限定的であり、記載されていな追加の要素も方法ステップも除外しない。対照的に、移行句「からなる」は、請求項に明記されていない一切の要素、ステップまたは構成要素を除外する。移行句「から本質的になる」は、明記されている材料またはステップならびに特許請求される発明の「基本的および新規の特徴(複数可)に著しい影響を及ぼさないもの」に、特許請求の範囲の範囲を限定する。
【0295】
本明細書で用いる場合、用語「約」は、プラスまたはマイナス1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%または15%である。
【0296】
薬物補充物は、結合対の第1の部分(標的分子)を含有する組成物であり、その結合対の第2の部分(標的認識部分、例えば分子)は、本明細書に記載の停留デバイス上に存在する。
【0297】
本明細書に記載のタンパク質およびペプチド/ポリペプチドのGenbank受託番号を下に提供する。
【0298】
GenBank受託番号P22629.1によって提供されるStreptomyces avidiniiからのストレプトアビジンのアミノ酸配列を下に示す:
【化12】
【0299】
GenBank受託番号X03591.1によって提供されるStreptomyces avidiniiからのストレプトアビジンの核酸配列を下に示す:
【化13】
【0300】
IGF−1は、3つのジスルフィド架橋によって架橋されている70アミノ酸の一本鎖ポリペプチドである。(参照によって本明細書に組み込まれる、Rinderknechtら、1978年、J. Biol.Chem.253巻:2768〜2776頁;2771頁の配列)。ヒトIGF−1は、次のアミノ酸配列を含む(GenBank:CAA01954.1および配列番号
29)。ヒトIGF−1は、R&D Systems(614 McKinley Place NE.Minneapolis、MN 55413)から購入することができる。
【化14】
【0301】
ヒトIGF−1Bアイソフォームは、次の配列を含む(GenBank:CAA40093.1;配列番号
30)。成熟ペプチドは、残基49〜118を含む。
【化15】
【0302】
VEGFAの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる、(アミノ酸)AAA35789.1(GI:181971)および(核酸)NM_001171630.1(GI:284172472)が挙げられる。VEGFBの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる、(核酸)NM_003377.4および(アミノ酸)NP_003368.1が挙げられる。VEGFCの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる、(核酸)NM_005429.3および(アミノ酸)NP_005420.1が挙げられる。VEGFDの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる、(核酸)NM_004469.4および(アミノ酸)NP_004460.1が挙げられる。
【0303】
塩基性線維芽細胞成長因子の例示的GenBank受託番号、参照によって本明細書に組み込まれる(アミノ酸)AAB21432.2(GI:8250666)および(核酸)A32848.1(GI:23957592)。
【0304】
FGFの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)U76381.2および(アミノ酸)AAB18786.3が挙げられる。
【0305】
HGFの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)M73239.1および(アミノ酸)AAA64239.1が挙げられる。
【0306】
NGFの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)M57399.1および(アミノ酸)AAA35961.1が挙げられる。
【0307】
LIFの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)NM_002309.4および(アミノ酸)NP_002300.1が挙げられる。
【0308】
PDGFの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)NM_002608.2、NM_002607.5、NM_016205.2、およびNM_025208.4、ならびに(アミノ酸)NP_002599.1、NP_002598.4、NP_057289.1、NP_079484.1が挙げられる。
【0309】
Ang1の例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)AY124380.1および(アミノ酸)AAM92271.1が挙げられる。Ang2の例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)AF024631.2および(アミノ酸)AAF21627.2が挙げられる。
【0310】
MMPの例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)D83646.1およびD83647.1、ならびに(アミノ酸)BAA12022.1およびBAA12023.1が挙げられる。
【0311】
デルタ様リガンド4(DLL4)の例示的GenBank受託番号としては、参照によって本明細書に組み込まれる(核酸)NM_019074.3および(アミノ酸)NP_061947.1が挙げられる。
【0312】
以下の材料および方法を本明細書に記載の実施例で使用した。
DNA合成
【0313】
DNAオリゴヌクレオチドは、PerSeptive Biosystems Expedite 8909 DNA合成装置で標準的自動固相ホスホラミダイトカップリング法を使用して合成するか、Integrated DNA Technologiesから購入した。DNA合成用のすべての試薬およびホスホラミダイトは、Glen Researchから購入した。オリゴヌクレオチドを、C18固定相およびアセトニトリル/100mM 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)勾配を使用する逆相HPLCによって精製し、Nanodrop ND1000分光光度計で行ったUV分光測定を使用して定量した。3’−チオールDNAは、3’−Thiol−Modifier C3 S−S CPGカラムを使用して合成した。ホスホロチオエートは、ピリジン/アセトニトリル中の0.05M硫化試薬IIを使用して合成した。使用したDNA配列を表1に要約する。
アルギネート酸化
【0314】
医薬グレード、高グルロン酸含有量、高M
wアルギネート(MVG)をFMC Biopolymers(Princeton、NJ)から購入した。水中のアルギン酸ナトリウム(1.0g、4マイクロモル)の1%溶液を過ヨウ素酸ナトリウム(54mg、252マイクロモル)と室温で混合し、撹拌した。24時間後にエチレングリコール(30mg、28.5μL)の添加によって反応を停止させた。過剰量のイソプロピルアルコールで溶液を沈殿させた。遠心分離によって回収した沈殿物を蒸留水に再溶解し、イソプロパノールで再び沈殿させた。酸化されたアルギネートを減圧下で凍結乾燥させて白色生成物(0.9g、収率90%)を得た。レーザー屈折計と示差粘度計と直角レーザー光散乱検出器とからなるゲル浸透クロマトグラフィー(Viscotek)で、分子サイズおよび流体力学的半径を分析した。
アルギネートとのBMPH、Dye−750およびDNAコンジュゲーション
【0315】
100mgのアルギネート(0.4マイクロモル、1当量)を、一晩、100mL 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(100mM MES、300mM NaCl、pH=5.5)に溶解した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(7.7mg、40マイクロモル、Sigma E7750)を添加し、5分間撹拌した。N−ベータ−マレイミドプロピオン酸ヒドラジド−TFA(BMPH)(5.94mg、20マイクロモル、Thermo Scientific 22297)および/またはHiLyte Fluor(商標)750ヒドラジド(3.76mg、3.6マイクロモル、Anaspec 81268)を添加し、反応物を20時間撹拌した。試料を80%イソプロパノールに沈殿させ、水に再懸濁し、再び沈殿させた。試料を高真空下で乾燥させた。
【0316】
Varian Inova−500(500MHz)で、周囲温度で、99.9%D
2O中で、
1H NMRスペクトルを記録した。NMR溶媒はすべてCambridge Isotope Laboratoriesから購入した。
【0317】
アルギネート−BMPH(10mg、約0.04マイクロモル)を、一晩、トリス緩衝液(100mM、pH8.0)に溶解した。3’−チオールDNA(0.4uモル)を200μLトリス(100mM、pH8.0)に溶解し、20μL(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)(0.5M)とともに30分間インキュベートした。3K MWカットオフ(MWCO)遠心式フィルターデバイス(Nanosep 3K Omeraフィルター、PALL OD003C33)上でDNAを遠心分離してTCEPおよびチオール小分子を除去し、アルギネートと混合した。その混合物を20時間インキュベートし、その後、100K MWCO遠心式フィルターデバイス(Nanosep 100K Omega Filter、PALL OD100C33)に移し、遠心分離してDNAを除去した。500μL蒸留水を補給し、再び遠心分離した。試料を希釈して0.5%アルギネートにし、滅菌濾過し、乾固するまで凍結乾燥させた。最終重量:約9mg。
ドキソルビシン(Doxorubixin)−アルギネートカップリング
【0318】
アジピン酸ジヒドラジド(587mg、3.3ミリモル、Sigma A0638)を塩化カルシウム水溶液(1M)に0.5Mの濃度で溶解した。ドキソルビシン塩酸塩(10mg、17μmol、Sigma D1515、DMSO中10mg/mL)をその溶液に添加し、48時間、37℃で撹拌した。Agilent 1200 Series Prep−Scale HPLCで溶液を直接精製した。生成物画分を凍結乾燥させた。収率:40% 実測生成物質量:700.3ダルトン。
BMPHコンジュゲートアルギネート(5mg)を、一晩、5mL トリス−HCl(100mM、pH8.0)に溶解した。この溶液に160mg アジピン酸−ドキソルビシン(228μモル)を添加し、一晩撹拌した。3K MWCO遠心式フィルターデバイス(Nanosep 3K Omeraフィルター、PALL OD003C33)を使用して、その溶液を水に緩衝液交換した。溶液を滅菌濾過し、凍結乾燥させた。全収率:80%。
アルギネートからのドキソルビシン放出
【0319】
ドキソルビシンまたはドキソルビシン−ヒドラジド(hydrazde)を(酸化されたおよび酸化していない)アルギネートと組み合わせ、塩化カルシウムでゲル化させ、PBS中、37℃でインキュベートした。異なる時点で溶液を変え、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起:530、発光:590)でドキソルビシン濃度を測定した。
アルギネートとカップリングしているドキソルビシンのin vitro細胞毒性
【0320】
ヒドラゾン連結ドキソルビシン−アルギネートおよびドキソルビシン単独の細胞毒性効果を、Alamar Blueアッセイを使用して評価した。MDA−MB−231細胞を24ウェル平底プレートに60,000細胞/ウェルの密度で播種し、24時間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、様々な濃度のドキソルビシンまたはアルギネート連結ドキソルビシンを含有する培養培地中で24時間、37℃でインキュベートした。細胞生存率をAlamarブルーアッセイによって供給業者の指示に従って評価し、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起:530、発光:590)で読み取った。
アルギネート循環測定:
【0321】
C57/B6マウスの後眼窩に100μL 0.5%蛍光アルギネート(酸化していないアルギネート、Dye−750)を注射した。マウスの前部および背部を剪毛し、IVIS Spectrum in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で30日にわたって撮像した。毎回画像収集前に剪毛を繰り返した。血液中の蛍光を鼻領域の蛍光の定量によって測定した。
in vitro相互作用研究(
図2)
【0322】
ポリA−SHとコンジュゲートしている0.5%の酸化していないアルギネートの液滴15〜20μLを塩化カルシウム溶液(100mM)に60分間浸漬した。1mM塩化カルシウムを含有するPBSでアルギン酸カルシウムゲルを2回洗浄した。500μLの0.8μM蛍光(Fl)オリゴヌクレオチド(ポリT−FlまたはポリA−Fl)を添加し、オービタルシェーカー上で1、5、30分間または16時間インキュベートした。試料を500μL PBS(1mM CaCl
2)で2回洗浄し、緑色チャネル下、蛍光顕微鏡により撮像した。定量のために、ゲルを100μL 100mM EDTA中で30分間、脱架橋し、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起485、発光538、カットオフ530)で蛍光を読み取った。
in vitro相互作用研究(
図3)
【0323】
DNAとコンジュゲートしているアルギネート(ポリA−SHとコンジュゲートしている、ポリT−SHとコンジュゲートしている、またはコンジュゲートしていない、0.5%の酸化していないアルギネート)の液滴15〜20μLを塩化カルシウム溶液(100mM)に60分間浸漬した。1mM塩化カルシウムを含有するPBSでアルギン酸カルシウムゲルを2回洗浄した。ポリT−SH/HEXとコンジュゲートしている500μLの0.05%アルギネート(
図3A〜C)またはポリA−SHおよびDye−750とコンジュゲートしている500μLの0.05%アルギネートを添加し、オービタルシェーカー上で5、10、30、60分間(
図3A〜C)または30分間(
図3D〜F)インキュベートした。試料を500μL PBS(1mM CaCl
2)で2回洗浄し、蛍光顕微鏡(緑色チャネル)でまたはIVIS Spectrum CT in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で撮像した。定量のために、
図3A〜Cについてはゲルを100μL 100mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)中で30分間、脱架橋し、molecular devices spectramaxプレートリーダーで蛍光を読み取った。
in vivoヒドロゲルホーミング
【0324】
すべての動物実験は、確立された動物実験実施計画に従って行った。C57/B6マウスの頸部の背部に100μL PBS中の100,000個のB16−F10黒色腫細胞(Amrican Type Culture Collection、VA)を皮下注射することによって、腫瘍を生じさせた。動物を腫瘍成長の開始について(おおよそ2週間)モニターした。DNA(ポリT−SHまたはポリA−SH)とコンジュゲートしているアルギネート 20mg/mLを4% wt/v CaSO
4(1.22M)で架橋させ、50μLを23ゲージ針で腫瘍の中心に注射した。腫瘍を覆っている一切の毛を剪毛した。
【0325】
翌日、マウスの後眼窩に100μL 0.5%DNAとコンジュゲートしている蛍光アルギネート(酸化していないアルギネート、ポリA−SH、Dye−750)を注射した。マウスを6日間、24時間ごとにIVIS Spectrum in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で撮像した。腫瘍が一方向に>20mmに成長した場合、または腫瘍が皮膚の至る所で潰瘍化して非治癒性開放創が存在した場合、人道的理由でマウスを安楽死させた。実験完了前に死亡したまたは安楽死させなければならなかったマウスは、分析に含めなかった。
異種移植腫瘍研究
【0326】
すべての動物実験は、確立された動物実験実施計画に従って行った。マトリゲル(BD Biosciences、CA)と組み合わせて総体積200μL(100μL PBSおよび100μL マトリゲル)にした10
6個のMDA−MB−231細胞(American Type Culture Collection、VA)を、8週齢J:Nu(Foxn1
nu/Foxn1
nu)マウス(Jackson Labs、ME)の後肢に注射することによって、腫瘍を生じさせた。腫瘍接種から35日後に腫瘍にアルギネートゲルを注射した。DNA(チオT−SHまたはコンジュゲートしていないもの)とコンジュゲートしているアルギネート 20mg/mLをドキソルビシン(ゲルのmL当たり1.6mgの薬物)と混合し、次いで4% wt/v CaSO
4(1.22M)で架橋させ、次いで50μLのゲルを23ゲージ針で腫瘍に注射した。初回腫瘍ゲル注射の2、3、4および5週間後、マウスの後眼窩に、ドキソルビシンを有する0.5%のDNAとコンジュゲートしているアルギネート(5%酸化アルギネート、チオA−SH、Dye−750、160ug Dox−ヒドラジド=120μg Dox)100μLを注射した。この研究を通して、デジタルカリパスを用いて週2回、二次元で腫瘍面積を測定し、その二次元値の積を使用して腫瘍面積を概算した。マウスを49日目に屠殺した。実験完了前に死亡したまたは安楽死させなければならなかったマウスは、分析に含めなかった。
3−(p−ベンジルアミノ)−1,2,4,5テトラジン合成
【0327】
3−(p−ベンジルアミノ)−1,2,4,5−テトラジンを標準法に従って合成した。例えば、50mmolの4−(アミノメチル)ベンゾニトリル塩酸塩と150mmol ホルムアミジン酢酸塩を混合し、その間に1molの無水ヒドラジンを添加した。反応物を80℃で45分間撹拌し、次いで室温に冷却し、その後、水中0.5molの亜硝酸ナトリウムを添加した。次いで10%HClを滴下添加して反応物を酸性化して所望の生成物を形成した。次いで、その酸化された酸性粗混合物をDCMで抽出し、NaHCO
3で塩基性化し、直ちに再びDCMで抽出した。回転蒸発によって最終生成物を回収し、HPLCによって精製した。化学製品は、Sigma−Aldrichから購入した。
アルギネートとのアジドおよびテトラジンコンジュゲーション
【0328】
200mgのアルギネート(0.8マイクロモル、1当量)を、一晩、200mL MES緩衝液(100mM MES、300mM NaCl、pH=5.5)に溶解した。11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−アミン(349mg、1.6ミリモル、2000当量、Sigma−Aldrich 17758)またはテトラジン−アミン(300mg、1.6ミリモル、2000当量)をその溶液に添加し、さらに1時間、室温で撹拌した。1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(306.7mg、1.6ミリモル、2000当量、Sigma−Aldrich E7750)およびスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(173mg、800μモル、1000当量、Thermo Fisher 24510)の混合物を3回に分けて同じ用量で8時間離して添加し、さらに8時間撹拌した。NaCl含有量を徐々に低くして、4Lの水に試料を透析し、1日に2〜3回溶液を交換した。水4L当たりのNaCl:30g、25g、20g、15g、10g、5g、0g、0g、0g、0g、0g。試料を高真空下で凍結乾燥させた。最終重量:150〜160mg。収率:75〜80%。Varian Inova−500(500MHz)で、周囲温度で、99.9%D
2O中で、
1H NMRスペクトルを記録した。酸化重水素は、Cambridge Isotope Laboratoriesから購入した。置換の推定のために、1〜1.2ppmのアジドピークおよび7.5、8.5および10.4ppmのテトラジンピークを3〜4.2ppmの間の3つのウロン酸(urinate)プロトンと比較した。
図17〜18を参照されたい。
in vitro相互作用研究 アジド−DBCO
【0329】
アジドとコンジュゲートしている2%の酸化していないアルギネートまたはコンジュゲートしていない対照の液滴15〜20μLを塩化カルシウム溶液(100mM)に60分間浸漬した。1mM塩化カルシウムを含有するPBSでアルギン酸カルシウムゲルを2回洗浄した。500μLの100μM Cy7−DBCO(Click Chemistry Tools)を添加し、オービタルシェーカー上で4時間インキュベートした。試料を500μL PBS(1mM CaCl
2)で2回洗浄した。定量のために、ゲルを100μL PBS中の3.5mg/mL アルギン酸リアーゼ(Aldrich A1603)で一晩消化し、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起745、発光780)で蛍光を読み取った。カルシウム架橋ゲルと100当量のDBCO−Cy7(アルギネート−アジド)のインキュベーション、その後の減衰全反射(ATR)/赤外(IR)分光測定(ATIR)分析によって、クリックパートナーとの反応も確認した。ATIRは、雰囲気調整したVertex70マシンで測定した。
図19〜20を参照されたい。
in vitro相互作用研究 テトラジン−TCO
【0330】
テトラジンとコンジュゲートしている2%の酸化していないアルギネートまたはコンジュゲートしていない対照の液滴15〜20μLを塩化カルシウム溶液(100mM)に60分間浸漬した。1mM塩化カルシウムを含有するPBSでアルギン酸カルシウムゲルを2回洗浄した。500μLの100μM Cy7−TCO(Click Chemistry Tools)を添加し、オービタルシェーカー上で4時間インキュベートした。試料を500μL PBS(1mM CaCl
2)で2回洗浄した。定量のために、ゲルを100μL PBS中の3.5mg/mL アルギン酸リアーゼ(Aldrich A1603)で一晩消化し、molecular devices spectramaxプレートリーダー(励起745、発光780)で蛍光を読み取った。カルシウム架橋ゲルと100当量のTCO−Cy5(アルギネート−テトラジン)のインキュベーション、その後のATIR分析によって、クリックパートナーとの反応も確認した。ATIRは、雰囲気調整したVertex70マシンで測定した。
図21〜22を参照されたい。
後肢虚血のマウスモデルおよびアルギネートゲル埋め込み
【0331】
8週齢、雌CD−1バックグラウンド非近交系統(Charles River Laboratories、MA)。動物をケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔した。後肢虚血を片側外腸骨動脈および静脈結紮によって誘発した。手術の時点で、マウスを2群(1群当たりn=3)のうちの一方に無作為に割り当てた。アジドもしくはテトラジンとコンジュゲートしているアルギネートまたはコンジュゲートしていない対照 20mg/mLをPBS中の4% wt/v CaSO
4(1.22M)で架橋させ、50μL アルギネート−アジド/テトラジンヒドロゲルを25ゲージ針によって結紮部位の遠位端付近に注射した(各群n=3)。手術後、対照動物には、コンジュゲートしていないアルギネートを筋肉内注射した。切開部を5−0エチロン糸(Johnson & Johnson、NJ)によって閉鎖した。後肢の虚血をレーザードップラー灌流撮像(LDPI)システム(Perimed AB、Sweden)によって確認した。
in vivoヒドロゲル標的指向化
【0332】
手術およびゲル埋め込みの24時間後、マウスの後眼窩に100μL 20ug/mL Cy7−TCOまたはCy7−DBCO(Click Chemistry Tools)を注射した。マウスをIV注射の1、5、30分、6および24時間後にIVIS Spectrum in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で撮像した。反復ゲル標的指向化のために、アルギネート−Azを有するマウスに20ug/mL Cy7−TCOを再注射し、IVIS Spectrumで毎日撮像した。マウスは、これらの投与からの有害作用を示さず、実験完了前に安楽死させなければならなかったマウスはいなかった。何らかの理由で分析から除外したマウスはいなかった。
分子標的指向化の空間的隔離
【0333】
後肢虚血を上に記載したように誘発し、アルギネート−テトラジンゲルを筋肉内に埋め込んだ(n=3)。アルギネート−アジドゲル(n=3)を虚血肢とは反対側のマウスの乳房脂肪体に注射した。100μL Cy5−TCO(Click Chemistry Tools、20μg/mL)とCy7−DBCO(Click Chemistry Tools、20ug/mL)の混合物を後眼窩に注射した。IV注射の48時間後にマウスのCy5(励起:640、発光:680)およびCy7(励起:740、発光:820)領域内ならびに光学像を撮像した。乳房脂肪体の可視ゲル膨潤に基づく光学像および後肢の縫合に基づいて関心領域(ROI)をブラインドで設定した。領域の「放射輝度」に基づいて蛍光を定量した。
筋肉単離および蛍光定量
【0334】
Cy7−DBCOのIV注射の24時間後、マウス(n=3)を屠殺した。アルギネート−アジドを注射した後肢筋肉と対照後肢筋肉の両方を単離した。試料を2時間、2mLの250ユニット/ml コラゲナーゼII、1ユニット/mL ディスパーゼII、および1mg/mL アルギネートリアーゼ中で消化した。試料を遠心分離(5分、500g)し、上清を除去し、ペレットを再懸濁させ、消化を反復した。2つの消化物を併せ、定量用のCy7−DBCO希釈系列を使用してmolecular devices spectramaxプレートリーダー(励起745、発光780)で定量した。
統計検定
【0335】
両側、等分散性スチューデントt検定を使用するペアワイズ比較に基づいて、すべてのデータを比較した。
経口送達およびアルギネート−アジドへのヒドロゲル標的指向化
【0336】
手術およびゲル埋め込みの24時間後、マウスに強制経口投与によって100μL 1mg/mL Cy7−DBCO(Click Chemistry Tools)を投与した。マウスを経口投与後、1、30分、6および24時間の時点でならびに1週間、毎日、IVIS Spectrum in vivo撮像装置(励起:745、発光:820)で撮像した。アルギネート注射部位でのおよび対側(ctrl)肢の鏡映位置での蛍光を定量した。IV注射の6日後の平均蛍光を
図14に示す。エラーバーはSEMを示す。p値は、対応のある(Alg−Az Ctrl条件に対する)または対応のない(他の条件)、片側t検定を表す。
【0337】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0338】
(実施例1)
血液中でのアルギネート循環時間
薬物ペイロードの効率的な血液ベースの補充は、ペイロードの主要デバイスとの遭遇および結合を可能にする十分な循環寿命に依存する。近IRプローブとコンジュゲートしているアルギネート(285KDa、流体力学的半径(Rh)44nm)(
図6A)の循環時間を、マウスへの静脈内(IV)投与後に分析した。蛍光の定量(
図6B)は、このアルギネートが少なくとも14日間は循環状態を保ち、循環半減期が約7日であることを明らかに示した(
図6C)。個々の臓器の撮像によって肺、肝臓、脾臓およびより少ない程度に腎臓内での蓄積が明らかになり(
図6D)、これは、これらの臓器のすべてが血流からの循環アルギネートの除去に寄与することが実証された。長い循環時間のため、アルギネートは、血管外遊出能力および主要薬物送達デバイスとの相互作用能力がある効率的血管内薬物担体として役立つことができる。
(実施例2)
in vitroでのアルギネートゲルとの薬物代替物のDNA媒介結合
【0339】
薬物ペイロードのデバイス補充が、標的カルシウム−アルギネートゲルと、薬物ペイロードとコンジュゲートしている遊離アルギネート鎖との間の相補DNA結合によって媒介されうるかどうかを判定するために、実験を行った。DNA(使用したDNAのリストについては表1を参照されたい)をその3’末端によってアルギネート鎖と、アルギネート1分子につきカップリングしているDNA2分子の比でコンジュゲートさせた。次いで、核酸結合活性を保持するアルギネートとコンジュゲートしているDNAの能力を試験した。(T)
20オリゴヌクレオチドとコンジュゲートさせたアルギネートをカルシウムでイオン架橋させてゲルを形成し、次いで、1mM塩化カルシウムを含有するリン酸緩衝液中で、蛍光標識相補(A)
20または非相補(T)
20オリゴヌクレオチド(
図2A)とともにインキュベートした。相補オリゴヌクレオチドは、配列特異的にゲル表面と結合したが、非相補オリゴヌクレオチドは、ほとんど結合を示さなかった(
図2B〜C)。
【0340】
次に、可溶性のDNAとコンジュゲートしているアルギネート鎖に結合する、DNAとコンジュゲートしているアルギネートのゲルの能力を、in vivo薬物補充のモデルとしてin vitroで試験した。DNAとコンジュゲートしているまたはコンジュゲートしていないアルギネートをゲル化し、蛍光標識相補DNAとカップリングさせた遊離アルギネート鎖とともに、可変時間、生理カルシウム濃度を有する緩衝液中でインキュベートした(
図3A)。相補DNAを有するアルギネート鎖は、DNAとコンジュゲートしていない対照ゲル表面と比較して約5倍の選択性で、DNAを有するゲル表面と特異的に結合した。この選択性は経時的に一定していた(
図3B〜C)。薬物を有するアルギネート−DNAコンジュゲートをより完全に表すために、DNAとコンジュゲートしているアルギネートをその骨格に沿って近IR色素で修飾して薬物負荷量を模倣し、相補または非相補DNAを有するアルギネートゲルとの会合について試験した。1時間インキュベートすると、蛍光標識されたアルギネート鎖は、非相補DNAを有する対照ゲルと比較して、相補DNAを有するゲルと選択的に結合した(
図3D〜F)。
【0341】
遊離アルギネート鎖を架橋してゲルにすることができるカルシウムの存在下での非DNA媒介相互作用の可能性のため、1mMの生理的に妥当な可溶性カルシウム濃度のもとでin vitroアルギネート結合研究を行った。これらの条件下で、少量のアルギネートは、in vitroでDNA非依存的にゲルと結合する(
図3Cおよび3F)。しかし、アルギネートのDNA媒介結合は、非特異的相互作用より5倍速かった。このデータは、DNAとコンジュゲートしているアルギネート鎖が相補DNAとコンジュゲートしているアルギネートのゲルと結合することを示す。
(実施例3)
in vivo DNA媒介アルギネートホーミング
【0342】
蛍光標識遊離アルギネート鎖がin vivoでDNA媒介標的指向化によって標的ゲルにホーミングすることができるかどうかを判定するために実験を行った。DNAをその3’末端によってアルギネートにコンジュゲートさせて、血清エキソヌクレアーゼ安定性を増加させた。例えば、Shaw J、Kent K、Bird J、Fishback J、およびFroehler B(1991年)Nucleic acids research 19巻(4号):747〜750頁;Floege Jら(1999年)The American journal of pathology 154巻(1号):169〜179頁;およびGamper Hら(1993年)Nucleic acids research 21巻(1号):145〜150頁を参照されたい。黒色腫がんモデルをこれらの研究のために選択したのは、血液によって運ばれるナノ粒子の腫瘍組織内への受動的蓄積の手段をもたらす透過性および滞留性の増進効果がこれらの腫瘍において十分に確証されているためであった。例えば、Maeda H、Wu J、Sawa T、Matsumura Y、およびHori K(2000年)Journal of controlled release: official journal of the Controlled Release Society 65巻(1〜2号):271〜284頁を参照されたい。10〜20mm
3の間のサイズの腫瘍を有するマウスは、DNAとコンジュゲートしている、カルシウムで架橋されたアルギネートゲルの腫瘍内注射を受けた。24時間の時点で、相補DNAとコンジュゲートしている蛍光標識遊離アルギネート鎖を静脈内投与した。マウスの撮像によって、IV投与した鎖が、おそらくEPR効果によって、投与後24時間の時点ですべてのマウスの腫瘍内に集まることを初めて明らかにした(
図4A〜B)。相補DNAとコンジュゲートしている遊離アルギネート鎖を施したマウスでは、鎖は、翌数日にわたって対照と比較して統計的に有意に腫瘍内で凝集し続けた。1週間の期間にわたって、非相補DNAとコンジュゲートしているゲルを施したマウス、またはゲルを注射しなかったマウスは、腫瘍内の蛍光の漸進的減少を示し、5日目までにバックグラウンド蛍光レベルに達した。対照的に、相補DNAとコンジュゲートしているゲルを施したマウスは、注射後2および3日目に蛍光の継続的蓄積、ならびに腫瘍内の蛍光アルギネートの有意な滞留を示した。全アルギネート滞留を曲線下面積として定量した(
図4C)。DNA媒介アルギネートホーミングは、対照と比較して、腫瘍内での有意に多い遊離鎖の滞留を生じさせた。このデータは、DNA標的分子を含有するアルギネート鎖が、標的認識部分として相補DNAを含有する、以前に投与したアルギネート薬物送達デバイスの部位に蓄積したことを示す。
(実施例4)
薬物補充は腫瘍成長を減速させる
【0343】
数週間にわたって腫瘍成長を阻害する標的指向化技術の能力を調査することによって、本明細書に記載の補充可能な薬物送達デバイスの治療有効性を分析した。腫瘍内注射する予定の薬物送達アルギネートヒドロゲルは、数週間の期間にわたってドキソルビシンの徐放を明示した(
図8)。IV投与した薬物ペイロードを担持するために、アルギネート鎖を部分的に酸化してアルデヒド官能基を導入し、それによって、加水分解性ヒドラゾンリンカーによるヒドラジン−ドキソルビシンカップリングを可能にした。例えば、Bouhadir Kら、(2001年)Biotechnology progress 17巻(5号):945〜950頁;ならびにBouhadir K、Alsberg E、およびMooney D(2001年)Biomaterials 22巻(19号):2625〜2633頁を参照されたい。酸化されたアルギネートは、ドキソルビシンの徐放を明示し(
図9B)、放出されたドキソルビシンの細胞毒性を阻害しなかった(
図9C)。
【0344】
乳がんMDA−MB−231モデルは、ゆっくりと成長する腫瘍であり、化学療法戦略を試験するために幅広く使用されているので選択された。例えば、Choi Kら、(2011年)ACS nano 5巻(11号):8591〜8599頁;ならびにTien J、Truslow J、およびNelson C(2012年)PloS one 7巻(9号)を参照されたい。MDA−MB−231異種移植腫瘍を有する免疫不全マウスに、ドキソルビシンを放出するホスホロチオエートDNAとコンジュゲートしているアルギネートのゲル(動物1匹当たり80ug)、またはボーラスのPBS中ドキソルビシンを腫瘍内注射した。2週間後、相補ホスホロチオエートDNAおよびドキソルビシンとコンジュゲートしている遊離アルギネート鎖(動物1匹当たり120ug)または対照としてのボーラスドキソルビシン(動物1匹当たり120ug)のIV投与をマウスに毎週施した(
図5A)。標的薬物補充(targeted drug refilling)は、ボーラスドキソルビシン対照での処置と比較して、腫瘍成長を有意に阻害した(
図5B)。各IV投与後3日間、腫瘍サイズの変化をモニタリングすることによって、腫瘍サイズを低減する標的治療の能力を評価した。腫瘍は、最初の2回の標的処置後に縮小したが、ボーラスドキソルビシン対照を受けたマウスでは成長し続けた(
図5C)。
【0345】
印象的なこととして、ゲルの第1の2種の補充は、最大の影響を生じさせるようであったが、第2の2種の補充についてはさほど顕著な効果はなかった。これは、実験過程での標的ゲル上のDNA鎖の飽和またはゲル上のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの分解に起因した可能性がある。あるいは、薬物送達システムは、透過性亢進がもはや顕著でないサイズに腫瘍を縮小してしまい、その結果、非効率的標的指向化となった可能性がある。
【0346】
これらの結果は、これらの方法を使用する薬物の再負荷が有意な臨床的恩恵を有することを実証した。加えて、その効果がin vivoで相補DNA鎖の相互作用に特異的であることおよびドキソルビシン薬物動態または放出の差が見られた効果の原因となりえないことをさらに確認するために、実験を行った。具体的には、次のさらなる対照を試験した(表2を参照されたい):1)ドキソルビシンが封入されているがDNAとコンジュゲートしていないアルギネートの腫瘍内注射に加えて、DNAとコンジュゲートしているアルギネートおよびヒドラゾン連結ドキソルビシンのIV投与、2)ドキソルビシンが封入されているがDNAに結合していないアルギネートゲルの腫瘍内注射に加えて、遊離ドキソルビシンのIV投与。
【表2】
【0347】
腫瘍に直接注射したおよびIV投与によって送達した薬物の全用量をすべての群にわたって一定に保ち、同様にIV投与頻度も一定に保った。7週間の腫瘍成長後、薬物再負荷技術で処置した腫瘍は、いずれの対照条件における腫瘍より著しく小さかった(
図5D)。腫瘍サイズの定量は、対照と比較して、薬物再負荷技術で処置した腫瘍のより小さいサイズを確証した(p<0.05 第1の2つの対照と比較して標的指向された、
図5E)。このデータは、以前に腫瘍内投与した薬物送達デバイスに再充填するためのがん薬物補充物の全身投与が乳がんマウスモデルにおいて腫瘍サイズを低減したことを実証する。
(実施例5)
生体直交型官能基のヒドロゲルとの特異的結合
【0348】
蛍光標識した生体直交型官能基(例えば、トランス−シクロオクテン(TCO)およびジベンゾシクロオクチン(DBCO)分子)のヒドロゲルへの結合特異性をin vitroで評価した。ポリマー、例えばアルギネートを、カルボジイミドケミストリーによってテトラジン(Tz)またはアジド(Az)いずれかで修飾した。核磁気共鳴(NMR)分析は、平均100個のTzまたはAz分子が各ポリマー(例えば、アルギネート)鎖に結合していることを明示し、これは、ポリマー1mg当たり400ナノモルの標的(例えば、生体直交型官能基、例えばTzまたはAz)に相当した。官能基、例えばTzまたはAzを、検出のために、蛍光部分、例えばCy7で標識した。
【0349】
Cy7標識トランス−シクロオクテンは、テトラジン修飾アルギネートと特異的に結合したが、未修飾アルギネートとは結合しなかった(
図10A、C)。同様に、蛍光DBCOは、アルギネート−アジドゲルに結合したが、未修飾アルギネートゲルとは殆ど相互作用しなかった(
図10B、D)。このデータは、生体直交型官能基が、この官能基の対応する結合パートナーで修飾されたヒドロゲルと特異的に結合することを示す。
【0350】
(実施例6)
生体直交型官能基はin vivoでゲルを標的にする
【0351】
近IR(NIR)フルオロフォアで標識した生体直交型官能基がin vivoでゲルを標的にすることができるかどうかを判定するために、実験を行った。in vivoでゲルは、下肢虚血の動物モデルの疾患部位に滞留していた。50μLのテトラジン修飾、アジド修飾、または未修飾アルギネートゲルを、参照によって本明細書に組み込まれる、Chenら、J. Pharmaceutical research 24巻(2006年):258頁;およびSilvaら、J. Biomaterials 31巻(2010年):1235頁に記載されているのと同様の方法で、大腿動脈を結紮したマウスの肢の筋肉内に埋め込んだ。手術の24時間後、NIR標識DBCOまたはTCO分子を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって24時間にわたって動物をモニターした。NIR標識小分子は、動物の系内を循環し、最初の24時間のうちに主として膀胱によって除去された(
図16A〜B)。24時間後、蛍光は、修飾ゲル(例えば、Tz修飾ゲルまたはZa修飾ゲル)を埋め込んだ肢で観察されたが、標的認識モチーフ(例えば、TzまたはAz)がない対照ゲルでは観察されなかった(
図11)。
【0352】
筋肉内ゲルに送達された循環分子の用量を定量するために、アジド修飾ゲルをマウスの筋肉から単離し、消化した。ゲル上の標的分子の量を蛍光によって定量した。初回注射用量の6.5%に相当する平均106ピコモルの標的指向化合物が、下の表に示すように筋肉内疾患領域に局在した。
【表E】
ゲルに標的指向された分子のこの数は、ゲル上の利用可能な全アジド部位の0.03%に相当し、これは、過剰な標的認識部位のため各ゲルについて複数回のゲル充填/補充が可能であることを明示している。このデータは、全身投与した生体直交型官能基が、前に投与した/埋め込んだ薬物送達デバイスの部位に蓄積することを示す。単回注射用量がゲル上の利用可能なアジド部位の約0.03%を標的にするので、このデバイスに3,300回まで補充することができる。例えば、
図5Aのゲルは4回補充され、その一方で
図12Aのゲルは1カ月の期間にわたり9回補充される。場合によっては、可逆的/切断可能な化学的性質に対して、トーホールド交換(参照によって本明細書に組み込まれるWO2012058488 A1)を利用してDNAとコンジュゲートしているナノ粒子のゲルとの結合を反転させる。
【0353】
(実施例7)
in vivoでゲルに標的指向させ、補充するための生体直交型官能基の反復投与
【0354】
損傷マウスの筋肉内ゲルに繰り返し標的指向させ、充填するために、複数回の血管内投与を行った。アジド修飾ゲル(例えば、アルギネート−Azゲル)を有する後肢虚血マウスにNIR標識DBCOを1カ月間、おおよそ3日毎に1回、反復投与した(
図12A)。1カ月の時間経過にわたり、肢の蛍光は、フルオロフォア投与に対応して段階的に増加し(
図12B)、各用量が同程度に蛍光を増加させた(
図12C)。したがって、本明細書に記載の方法を使用するゲルホーミングが虚血の動物モデルにおいて果たされた。肢における蛍光の少しの、しかし有意ではない減少がIV注射後24〜48時間の間に観察された。これは、おそらくゲルから除去された未結合の残留フルオロフォアに起因した。このデータは、全身投与した薬物補充物が、補充物を投与するたびに、薬物送達デバイスの部位に蓄積することを明示している。全身投与した補充物によって同じデバイスに複数回再充填することができる。
【0355】
(実施例8)
in vivoでの2カ所の別個のゲル部位への2つの異なる生体直交型官能基の標的指向化
【0356】
2つの異なる生体直交型官能基、例えばDBCOおよびTCOが、それらのそれぞれの結合パートナー(すなわち、標的認識部分、例えば分子)に選択的にホーミングして、同じ動物における薬物デバイスの空間的分離を達成することができるかどうかを判定するために、実験を行った。マウスの2カ所の部位を使用した。第1の標的部位としての後肢を虚血させたマウスの後肢の筋肉内にテトラジン修飾ゲルを埋め込んだ。第2の標的部位としての同じマウスの乳房脂肪体にアジド修飾ゲルを埋め込んだ。Cy7標識DBCOとCy5標識TCOの混合物をゲル投与の24時間後に静脈内投与した。2つの生体直交型官能基は、効率的かつ特異的にそれらのそれぞれの疾患部位を標的にした(
図13)。このデータは、2つの異なるタイプの薬物補充物の全身投与が、そのそれぞれの薬物送達デバイス部位での各タイプの薬物補充物の蓄積をもたらすことを示す。
【0357】
(実施例9)
経口送達およびアルギネート−アジドヒドロゲルへの標的指向化
【0358】
後肢虚血のマウスモデルを上に記載したように生じさせた。アジドで修飾されたアルギネートを含有するヒドロゲルをそのマウスの虚血部位の筋肉内に埋め込んだ。手術およびゲル埋め込みの24時間後、マウスにCy7−DBCOを、例えば強制経口投与によって、経口投与した。経口投与後、1、30分、6および24時間の時点で、および1週間、毎日、マウスを撮像した。アルギネート埋め込み部位でのおよび対側肢(対照肢)の鏡映位置での蛍光を定量した。経口投与したCy7−DBCOは、アジド修飾アルギネートヒドロゲルを標的にした。
図14を参照されたい。これらのデータは、薬物補充物の経口送達が、経口投与した薬物のアルギネート薬物送達デバイス部位での蓄積をもたらすことを示す。
【0359】
(実施例10)
アジドで修飾されたゲルへのDBCOの標的指向化
【0360】
マウスの大腿におけるアジドで修飾された骨内ゲルまたは未修飾対照ゲルへの、IV注射した蛍光標識DBCOの標的指向化を示す、一組の画像を
図23に示す。50μLのアジド修飾または未修飾アルギネートゲルをマウスの骨に骨内注射した。手術の24時間後、NIR標識DBCO分子を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって24時間にわたって動物をモニターした。24時間後、蛍光は、修飾ゲル(例えば、Az修飾ゲル)を埋め込んだ肢で観察されたが、標的認識モチーフ(例えば、Az)がない対照ゲルでは観察されなかった。
【0361】
図24に示すように、IV注射した蛍光標識DBCOは、マウスの右膝関節に注射した、アジドで修飾されたゲルを標的にした。50μLのアジド修飾アルギネートゲルをマウスの膝関節に注射した。手術の24時間後、NIR標識DBCO分子を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって24時間にわたって動物をモニターした。24時間後、修飾ゲル(例えば、Az修飾ゲル)を埋め込んだ肢で蛍光が観察された。
【0362】
図25に示すように、IV注射した蛍光標識DBCOは、マウスの腫瘍に注射した対照ゲルと比較して、アジドで修飾されたゲルを標的にした。
図25の画像は、IV注射の24時間後に撮影した。ルイス肺癌(LLC)腫瘍をC57B6マウスにおいて誘導した。腫瘍が直径5〜8mmになったら、50μLのアジド修飾アルギネートゲルを腫瘍に注射した。腫瘍注射の24時間後、NIR標識DBCO分子(
図26を参照されたい)を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって24時間にわたって動物をモニターした。8時間後、蛍光は、修飾ゲル(例えば、Az修飾ゲル)を埋め込んだ腫瘍で観察されたが、標的認識モチーフ(例えば、Az)がない対照ゲルでは観察されなかった。
【0363】
アジド修飾ゲルによる小分子の捕捉、およびその捕捉後の加水分解による小分子のその後の放出を示す説明例を
図26に示す。この例における分子は、加水分解性ヒドラゾンリンカーによってDBCOとコンジュゲートしているCy7フルオロフォアである。
【0364】
図27Aに示すように、IV注射した小分子は、マウスの腫瘍に注射した、アジドで修飾されたゲルを標的にした。加水分解性ヒドラゾンリンカーによってDBCOとコンジュゲートしているCy7フルオロフォアである小分子は、その後放出され、その結果、Cy7蛍光シグナルが減少した。小分子の放出を明示する、腫瘍部位での経時(時間)的な小分子の定量を示す線グラフを
図27Bに図示する。ルイス肺癌(LLC)腫瘍をマウスにおいて誘導した。腫瘍が直径5〜8mmになったら、50μLのアジド修飾アルギネートゲルを腫瘍に注射した。腫瘍注射の24時間後、NIR標識DBCO分子(
図26を参照されたい)を静脈内(IV)投与し、動物の蛍光ライブイメージングによって4日にわたって動物をモニターした。
図27Bは、Cy7フルオロフォアがゲルから切断され、腫瘍から排除されるにつれて経時的に蛍光が減少することを示す、IVフルオロフォア投与の24、48、72および96時間後の腫瘍蛍光の定量を示す。
他の実施形態
【0365】
発明の詳細な記載と併せて本発明を説明してきたが、上述の記載は、本発明を例証するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される。他の態様、利点および修飾形態は、後続の特許請求の範囲の範囲内である。
【0366】
本明細書において言及する特許および科学文献は、当業者が入手できる知識を確立する。本明細書に引用するすべての米国特許および公開または未公開米国特許出願は、参照によって組み込まれる。本明細書に引用するすべての公開外国特許および特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書に引用する受託番号によって示されるGenbankおよびNCBI寄託は、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書に引用するすべての他の公開参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0367】
本発明をその好ましい実施形態に関して詳細に示し、記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を逸脱することなく形態および詳細の様々な変更を加えることができることは、当業者には理解される。