(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該抗体がFv、scFv、dsFv、Fd、Fab、F(ab’)2、ミニボディ、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムscFv、TandAb、バイボディ、トリボディ、κ(λ)ボディ、BiTE、DVD−lg、SIP、SMIP、又はDARTなどの抗原結合抗体断片である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体。
請求項1〜17のいずれか一項に記載の抗体、又は請求項1〜17のいずれか一項に記載の抗体の抗体VH若しくはVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
抗体又は抗体VH若しくはVLドメインを生成する方法であって、前記抗体又は抗体VH若しくはVLドメインの生成のための条件下で、請求項22に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、方法。
請求項1〜25のいずれか一項に記載のAxlに結合する抗体を、Axl又はAxlの断片に結合させるステップを含み、前記結合がin vitroで起こる、方法。
Axlの過剰発現を特徴とする疾患又は障害の検出のための診断薬の製造における、請求項1〜20のいずれか一項に記載の抗体と、転移性癌細胞に対する前記抗体の結合の測定を可能にする1種又は複数種の試薬との使用。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の配列を本明細書に開示する(完全な配列については、以下の「配列」セクションを参照されたい)。
配列番号1→1H12VHコードヌクレオチド配列
配列番号2→1H12VLコードヌクレオチド配列
配列番号3→1H12VHコードアミノ酸配列
配列番号4→1H12VLコードアミノ酸配列
配列番号5→1H12VHCDR1コードアミノ酸配列
配列番号6→1H12VHCDR2コードアミノ酸配列
配列番号7→1H12VHCDR3コードアミノ酸配列
配列番号8→1H12VLCDR1コードアミノ酸配列
配列番号9→1H12VLCDR2コードアミノ酸配列
配列番号10→1H12VLCDR3コードアミノ酸配列
配列番号11→1H12VHFR1コードアミノ酸配列
配列番号12→1H12VHFR2コードアミノ酸配列
配列番号13→1H12VHFR3コードアミノ酸配列
配列番号14→1H12VHFR4コードアミノ酸配列
配列番号15→1H12VLFR1コードアミノ酸配列
配列番号16→1H12VLFR2コードアミノ酸配列
配列番号17→1H12VLFR3コードアミノ酸配列
配列番号18→1H12VLFR4コードアミノ酸配列
配列番号19→ヒトAxlコードアミノ酸配列
配列番号20→マウスAxlコードアミノ酸配列
配列番号21→ヒトTyro3コードアミノ酸配列
配列番号22→ヒトMerコードアミノ酸配列
【0011】
一態様では、本発明は、Axlに結合し、且つ1H12VHドメイン(配列番号3)及び/又は1H12VLドメイン(配列番号4)を含む、単離された抗体を提供する。結合Axlは、ヒトAxlであるのが好ましい。
【0012】
一般に、VHドメインは、VHドメインと対形成して、抗体抗原結合部位をもたらすが、以下にさらに詳しく論じるように、抗原に結合させるために、VHドメインを単独で用いてもよい。一実施形態では、1H12VHドメイン(配列番号3)は、1H12VLドメイン(配列番号4)と対形成して、これにより、1H12VHドメインとVLドメインとの両方を含む抗体抗原結合部位が形成される。他の実施形態では、1H12VHは、1H12VL以外のVLドメインと対形成する。当技術分野において、軽鎖乱交雑は十分に確立されている。
【0013】
1つ又は複数のCDRを1H12VH又はVLドメインから取得して、好適なフレームワーク中に組み込んでもよい。これについては以下に詳しく説明する。1H12VHCDR1、2及び3は、それぞれ配列番号5、6及び7に示される。1H12VLCDR1、2及び3は、それぞれ配列番号8、9及び10に示される。
【0014】
本発明の一態様では、Axlに結合する抗体が提供され、これは、
1H12VHドメイン(配列番号3)と、配列番号7のアミノ酸配列を有するVHCDR3、及び任意選択で配列番号6及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ又は複数のVHCDRを含むVHドメインとからなる群から選択される抗体VHドメイン;及び/又は
1H12VLドメイン(配列番号4)と、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ又は複数のVLCDRを含むVLドメインとからなる群から選択される抗体VLドメイン;
を含む。
【0015】
例えば、抗体は、配列番号5、配列番号6及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVHCDRを含む抗体VHドメインを含んでよい。抗体はさらに、配列番号8、配列番号9及び配列番号10のアミノ酸配列を有するVLCDRを含む抗体VLドメインを含んでもよい。
【0016】
一部の実施形態では、抗体は、(i)配列番号5、配列番号6及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVHCDRを含む抗体VHドメインと、(ii)配列番号8、配列番号9及び配列番号10のアミノ酸配列を有するVLCDRを含む抗体VLドメインとを含む。
【0017】
抗体は、1H12VHドメイン(配列番号3)を含んでもよく、また、任意選択で、1H12VLドメイン(配列番号4)をさらに含んでもよい。
【0018】
好ましくは、抗体は、ヒトAxlに対する結合について、1H12VHドメイン(配列番号3)及び1H12VLドメイン(配列番号4)を含む抗体のAxl結合ドメインと競合する。
【0019】
本発明のさらに別の態様によれば、配列が本明細書に記載されるVH及びVLドメインの変異体が提供され、これは、Axlについて抗体に使用することができ、配列改変又は突然変異及びスクリーニングの方法を用いて得ることができる。このような方法も本発明によって提供される。
【0020】
論述するように、その配列が本明細書で具体的に開示される、VH及びVLドメインのいずれの可変ドメインアミノ酸配列変異体を本発明に従って使用してもよい。特定の変異体は、1つ又は複数のアミノ酸配列改変(アミノ酸残基の付加、欠失、置換及び/又は挿入)を含んでもよく、約20未満の改変、約15未満の改変、約10未満の改変又は約5未満、4、3、2若しくは1の改変であってよい。改変は、1つ又は複数のフレームワーク領域及び/又は1つ又は複数のCDRに実施してもよい。
【0021】
本発明の抗体は、抗原に結合すると共に、本明細書に開示する抗体VH及び/若しくはVLドメイン、又は本明細書に開示するVHCDR3、又はこれらのいずれかの変異体を含む任意の抗体と、上記抗原に対する結合について競合するものであってもよい。すなわち、一部の実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に開示する抗体VH及び/若しくはVLドメイン、又は本明細書に開示するVHCDR3、又はこれらのいずれかの変異体を含む抗体と同じエピトープ又はオーバーラップエピトープに結合する抗体である。抗体同士の競合は、例えば、Biacore3000装置(例えば、実施例15及び
図16を参照)による結合分析を用いたELISAを用いて、及び/又は同じエピトープ若しくはオーバーラップエピトープに結合する抗体の同定を可能にするために、別の非タグ付け抗体の存在下で検出することができる1抗体に特定のリポータ分子をタグ付けすることによって、in vitroで容易にアッセイすることができる。
【0022】
従って、本発明は、本明細書に具体的に開示するいずれかの変異体を含み、ここで、この変異体は、1つ若しくは複数のフレームワーク領域及び/又は1つ若しくは複数のCDRに1つ又は複数のアミノ酸配列改変を含む。例えば、変異型抗体は、いずれか1つのCDRに4つ以下の配列改変、例えば、いずれか1つのCDR(例えば、VHドメインのCDR3)に3つ以下、2つ以下、1つ以下の配列改変含んでもよく、又は配列改変を一切含まなくてもよい。変異型抗体は、Axl(例えば、ヒトAxl)に対する結合について、1H12VHドメイン(配列番号3)及び1H12VLドメイン(配列番号4)を含む抗体のAxl結合ドメインと競合し得る。
【0023】
従って、本発明の別の態様は、ヒトAxlとの結合について1H12と競合するヒト抗体抗原結合部位を含む抗体を提供する。
【0024】
Axlに対する抗体であり、且つAxlとの結合について1H12と競合し得る抗体を取得する様々な方法が当技術分野において入手可能である。
【0025】
別の態様では、本発明は、抗原に結合することができる1つ又は複数の抗体を取得する方法を提供し、この方法は、本発明の抗体のライブラリーと前記抗原を接触させるステップ、及び前記抗原に結合することができるライブラリーの1つ又は複数の抗体メンバーを選択するステップを含む。
【0026】
ライブラリーは、バクテリオファージ粒子の表面上に展示され得るが、各粒子は、その表面に展示される抗体VH可変ドメインを含有し、さらには任意選択で、存在する場合、展示されるVLドメインをコードする核酸も含有する。
【0027】
抗原に結合することができ、且つバクテリオファージ粒子上に展示される抗体の選択後、選択した抗体を展示するバクテリオファージ粒子から核酸を取り出すことができる。このような核酸は、続いて、前記選択抗体を展示するバクテリオファージ粒子から取得した核酸の配列を有する核酸からの発現による、抗体又は抗体VH可変ドメイン(任意選択で抗体VL可変ドメイン)の生成に使用することができる。
【0028】
前記選択抗体の抗体VH可変ドメインのアミノ酸配列を有する抗体VH可変ドメインは、こうしたVHドメインを含む抗体と同様に、単離された形態で提供することができる。
【0029】
Axlに結合する能力、さらにはAxlとの結合について1H12と競合する能力をさらに試験してもよい。
【0030】
本発明の抗体は、1H12の親和性でAxlに結合し得る。
【0031】
本発明の抗体は、マウス、ラット、サル、非ヒト霊長類(primate)及び/又はヒトAxlに結合し得る。抗体は、ヒト及びサルAxlに結合するのが好ましい。一部の実施形態では、抗体は、霊長類Axlに特異的に結合する。例えば、抗体は、ヒト及びサルAxlに特異的に結合する。一実施形態では、抗体は、ヒトAxlにのみ特異的に結合する。
【0032】
抗体は、キメラ、ヒト化、又はCDR移植抗Axl抗体であってもよい。例えば、抗体は、キメラヒト/マウス抗体であってもよい。
【0033】
様々な抗体の結合親和性及び中和能力を適切な条件下で比較することができる。
【0034】
抗体配列に加えて、本発明の抗体は、例えば、折り畳まれたドメインなどのペプチド若しくはポリペプチドを形成する他のアミノ酸、又は抗原に結合する能力以外の別の機能特性を分子に付与する他のアミノ酸を含んでもよい。
【0035】
本発明の抗体は、検出可能な標識を担持してもよく、又は毒素(細胞毒など)、酵素、若しくは有機部分(例えば、ペプチジル結合若しくリンカー)に結合させてもよい。
【0036】
当業者は、分子をタンパク質に化学的に結合させる多数の手法を認識している。本発明の一実施形態では、抗体は、検出可能な蛍光標識、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)などのリポータ酵素に結合させることができる。
【0037】
好ましい実施形態では、抗体は、抗体−薬物複合体(ADC)の形成によって、細胞傷害性薬物と結合させる。抗体が、製剤用途である場合、抗体と薬物を連結する結合は、循環(例えば、血液循環)中で安定しているが、上記複合体が細胞内に隔離されると不安定になるのが好ましい。従って、免疫複合体として結合された抗体は、例えば、癌の治療方法に使用することができる。
【0038】
別の態様では、本発明は、本発明の抗体、VHドメイン及び/又はVLドメインをコードする配列を含む単離された核酸、並びに本発明の抗体、VHドメイン及び/又はVLドメインを調製する方法を提供し、この方法は、前記抗体、VHドメイン及び/又はVLドメインの生成をもたらす条件下で前記核酸を発現させるステップと、それを回収するステップとを含む。
【0039】
本発明の抗体は、ヒト若しくは動物身体の治療又は診断方法、例えば、ヒト患者の疾患若しくは障害の治療(予防的処置を含み得る)の方法に用いてもよく、この方法は、有効量の本発明の抗体若しくはその複合体、又は薬物−複合体を前記患者に投与するステップを含む。本発明に従って治療が可能な状態には、本明細書の別の箇所で論じるものが含まれる。
【0040】
本発明の抗体は、例えば、抗体が結合する細胞の存在又は位置を決定するために、イメージング方法に用いることもできる。
【0041】
別の態様では、本発明は、本発明の抗体と、抗原に対する抗体の結合を測定する1種又は複数種の試薬とを含む、診断キットを提供する。
【0042】
本発明のさらに別の態様は、本明細書に開示する抗体VH可変ドメイン(配列番号3)及び/又はVL可変ドメイン(配列番号4)をコードする、概して単離された核酸を提供する。一部の実施形態では、VHコード核酸は、配列番号1に記載の配列を有する。一部の実施形態では、VLコード核酸は、配列番号2に記載の配列を有する。
【0043】
本発明の別の態様は、本明細書に開示するVHCDR又はVLCDR配列、特に、配列番号5、6、及び7から選択されるVHCDR、又は配列番号8、9、若しくは10から選択されるVLCDR、最も好ましくは、1H12CDR3(配列番号7)をコードする、概して単離された核酸を提供する。
【0044】
さらに別の態様は、本発明の核酸で形質転換された宿主細胞を提供する。
【0045】
さらにまた別の態様は、抗体VH可変ドメインの生成方法を提供し、この方法は、コード核酸から発現を引き起こすステップを含む。このような方法は、前記抗体VH可変ドメインの生成のための条件下で宿主細胞を培養するステップを含み得る。
【0046】
VL可変ドメイン並びにVH及び/又はVLドメインを含む抗体を生成する類似の方法が、本発明の別の態様として提供される。
【0047】
生成方法は、生成物の単離及び/又は精製のステップを含み得る。
【0048】
生成方法は、薬学的に許容される賦形剤などの少なくとも1つの別の成分を含む組成物に、生成物を配合するステップを含み得る。
【0049】
本発明の上記及びその他の態様は、以下にさらに詳しく記載する。
【0050】
抗体特性
Axlに対する高い親和性
本明細書に記載する1H12抗体は、高い親和性でヒトAxlに結合する。実施例4に記載するように、1H12抗体は、4.98×10
−11MのK
Dを有することが判明した。これは、抗Axl抗体について記載される依然として最も低いK
Dである。
【0051】
意外なことに、キメラMAbch1H12(実施例11及び
図10を参照)は、K
D=1.10×10
−11Mというさらに高い親和性を有し;この数値は、親マウス抗体より4.5倍低く、これは、恐らく、ヒトの定常ドメインスカフォールド上にマウントした場合に、V
H及びV
Lドメインのより優れた配向によるものであろう。
【0052】
従って、本明細書に記載する抗体は、高い親和性でAxlに結合し;好ましくは、高い親和性でヒトAxlに結合する。一部の実施形態では、抗体は、10
−6M以下、例えば、5×10
−7M以下、10
−7M以下、5×10
−8M以下、10
−8M以下、5×10
−9M以下、10
−9M以下、5×10
−10M以下、10
−10M以下、5×10
−11M以下、1.5×10
−11M以下、10
−11M以下、5×10
−12M以下、10
−12M以下、5×10
−13M以下、10
−13M以下、5×10
−14M以下、10
−14M以下、5×10
−15M以下、10
−15M以下のK
DでAxl(又はヒトAxl)に結合する。
【0053】
一部の実施形態では、抗体は、10
−8M〜10
−10M、10
−10M〜10
−12M、10
−12M〜10
−14M、又は10
−14M〜10
−16MのK
DでAxl(又はヒトAxl)に結合する。
【0054】
K
Dは、実施例4に記載のように決定及び計算することができる。
【0055】
本明細書に記載の1H12抗体は、非常に低い解離速度(dissociation rate)(k
off)を有することを特徴とする。特に、実施例4では、1H12抗体は、非常に低い解離速度を有することが判明した(k
off=1.07×10
−5s
−1)。
【0056】
意外なことに、キメラMAbch1H12(実施例11及び
図10を参照)は、k
off=2.99×10
−6s
−1)というさらに低い解離速度を有し、これによって、64.4時間というch1H12/Axl複合体の半減期が得られた。
【0057】
従って、本明細書に記載する抗体は、低い解離速度でヒトAxlに結合するのが好ましい。一部の実施形態では、抗体は、10
−3s
−1以下、例えば、5×10
−4s
−1以下、10
−4s
−1以下、5×10
−5s
−1以下、2×10
−5s
−1以下、10
−5s
−1以下、3×10
−6s
−1以下、5×10
−6s
−1以下、10
−6s
−1以下、5×10
−7s
−1以下、10
−7s
−1以下、5×10
−8s
−1以下、10
−8s
−1以下のk
offでAxl(又はヒトAxl)に結合する。
【0058】
特異的結合
一般に、「特異的」及び「特異的に結合する」という用語は、抗体が、その特定の結合パートナー以外の分子と有意な結合を何ら示さない状況を指すのに用いられ得る。例えば、ヒトAxlに「特異的に結合する」抗体は、マウスAxlに対する任意の有意な結合を何ら示さない。
【0059】
この用語はまた、例えば、抗体が、いくつかの抗原が担持する特定のエピトープに対して特異的である場合にも適用可能であり、この場合、エピトープに「特異的に結合する」抗体は、認識されるエピトープを担持する様々な抗原の全てに結合することができる。
【0060】
典型的に、特異性は、1群の抗原を使用するELISAなどの結合アッセイを用いて決定することができる。
【0061】
本明細書に記載の1H12抗体は、高い特異性でヒトAxlに結合する。これは、実施例において立証され、ここで、以下のことが明らかにされる:
(1)実施例2において、1H12は、ヒトTAM受容体チロシンキナーゼファミリーの他のメンバーである、hMer及びhTyro3由来の組換え抗原に対して有意な結合を示さない。
(2)実施例3では、1H12は、ヒトAxlに強力に結合するが、マウスAxlに対する結合は全く示さない(これは、マウス及びヒトAxlに強力に結合すると共に、(これより弱く)ヒトTyro3に結合する、マウスAxlリガンド、マウスGas6とは対照的である)。
(3)実施例9では、1H12は、試験組織サンプルの圧倒的多数に対して全く、又はほとんど結合を示さない。
【0062】
従って、本明細書に記載する抗体は、霊長類Axlに特異的に結合するのが好ましい。一部の実施形態では、本明細書に記載する抗体は、ヒト及びサルAxlに特異的に結合する。一実施形態では、抗体は、ヒトAxlにのみ特異的に結合する。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、本明細書に記載する抗体は、ヒトTyro3及び/又はヒトMerに対して有意な結合を一切示さない。一部の実施形態では、本明細書に記載する抗体は、マウスAxlに対して有意な結合を一切示さない。一部の実施形態では、本明細書に記載する抗体は、ヒトTyro3、ヒトMer、又はマウスAxlに対して有意な結合を一切示さない。
【0064】
抗体が、抗原に対して「有意な結合を一切示さない」か否かは、例えば、実施例2及び3に記載する技術を用いて、当業者により容易に決定することができる。一部の実施形態では、抗体は、それが、10
−3Mを超える、例えば、10
−2Mを超える、10
−1Mを超える、又は1Mを超えるK
Dで抗原に結合する場合に、特定の抗原に対して「有意な結合を一切示さない」とみなされる。K
Dは、実施例4に記載するように決定及び計算することができる。
【0065】
一態様では、本発明の抗体は、1H12抗体と同じエピトープ、又は1H12抗体が結合するエピトープとオーバーラップするエピトープに結合する。異なる抗体同士の競合は、例えば、ELISAを用いて、及び/又は同じエピトープ若しくはオーバーラップエピトープに結合する抗体の識別ができるように、一方の結合メンバーに特定のリポータ分子をタグ付けする(これは、タグ付けしていない別の抗体(複数可)の存在下で検出することができる)ことによって、in vitroで容易にアッセイすることができる。
【0066】
抗体の内在化
本明細書に記載する1H12抗体は、その標的であるAxlに結合すると、良好な細胞内在化を示す。内在化は、抗体が、サポリン(Saporin)などの細胞毒素に結合すると観察される(例13及び
図12を参照)。
【0067】
従って、本発明の抗体、又はそのコンジュゲートは、細胞表面に存在するAxlに結合した後、内在化するのが好ましい。
【0068】
Axl検出における有用性
本明細書に記載する抗体の予想外の優れた結合特性によって、これらの抗体は、Axlの検出を含む用途に特に有効となる。例えば、比較試験により、1H12抗体は、免疫組織化学及びウェスタンブロッティング用途の両方で、市販の抗Axl抗体より著しく強力なシグナルをAF154及びMAB154に付与することが証明され(実施例16及び
図17を参照);競合分析は、1H12及びMAB154が、同じエピトープ又はオーバーラップエピトープに結合することを示している(
図16参照)。こうしたAxl検出の強力なシグナル及び高い感受性によって、検出及び分析アッセイに大きい利点がもたらされる。
【0069】
Axlシグナル伝達のアゴニズム
本明細書に記載する1H12抗体は、Axlに結合するとAxlシグナル伝達を誘導することができる。これは、
図13〜15と共に、実施例14で立証され、ここで、1H12結合は、Ser
473でのAxlエフェクターAktのリン酸化の測定により決定すると、用量依存的に強力なAxlシグナル伝達を誘導することがわかる。
【0070】
従って、一態様では、本明細書に記載する抗体は、Axlシグナル伝達を刺激する;すなわち、本明細書に記載する抗体は、Axlアゴニストであるのが好ましい。
【0071】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示する抗体VH及び/若しくはVLドメイン、又は本明細書に開示するVHCDR3、又はこれらのいずれかの変異体を含む抗体と同じエピトープ若しくはオーバーラップエピトープに結合する抗体を提供し、ここで、抗体は、Axlアゴニストである。同じエピトープ又はオーバーラップエピトープとの結合は、本明細書に記載するように、完了試験によってin vitroで容易に決定することができる。
【0072】
一部の実施形態では、Axlシグナル伝達は、非Axl結合対照抗体の存在下よりも本発明の抗体の存在下で少なくとも10%大きく;例えば、非Axl結合対照抗体の存在下よりも本発明の抗体の存在下で少なくとも10%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、少なくとも40%大きい、少なくとも50%大きい、少なくとも60%大きい、少なくとも70%大きい、少なくとも80%大きい、少なくとも90%大きい、少なくとも100%大きい、少なくとも200%大きい、少なくとも500%大きい又は少なくとも1000%大きい。Axlシグナル伝達のレベルは、実施例14に記載するように、Ser
473でのAxlエフェクターAktのリン酸化の測定により決定することができる。
【0073】
Axl発現及び/又は活性の下方制御
一部の実施形態では、抗Axl抗体は、細胞表面(例えば、腫瘍細胞表面)上のAxl受容体発現の下方制御を誘導する。
【0074】
一部の実施形態では、細胞表面Axl発現は、Axl抗体処置の非存在下のAxl細胞表面発現の80%未満に低減される。一部の実施形態では、細胞表面発現は、Axl抗体処置の非存在下のAxl細胞表面発現の70%未満、60%未満、50%未満又は40%未満に低減される。
【0075】
一部の実施形態では、細胞(例えば、腫瘍細胞)における全Axl発現は、Axl抗体処置の非存在下の全Axl発現の80%未満に低減される。一部の実施形態では、Axl発現は、Axl抗体処置の非存在下の全Axl発現の70%未満、60%未満、50%未満又は40%未満に低減される。一部の実施形態では、Axl発現の下方制御は、急速に起こり、少なくとも24時間にわたり持続する。
【0076】
一部の実施形態では、抗Axl抗体は、構成的Axl活性を阻害する。
【0077】
一部の実施形態では、抗Axl抗体は、Axl活性を阻害する。
【0078】
一部の実施形態では、抗Axl抗体は、例えば、アポトーシスによる細胞死、例えば、A549細胞などの腫瘍細胞の細胞死を促進し;これは、例えば、BrdU組み込みアッセイ、MTT、[
3H]−チミジン組み込み(例えば、TopCountアッセイ(PerkinElmer))、細胞生存性アッセイ(例えば、CellTiter−Glo(Promega))、DNA断片化アッセイ、カスパーゼ活性化アッセイ、トリパンブルー色素排除、クロマチンモルフォロジーアッセイなどにより測定することができる。
【0079】
一部の実施形態では、抗Axl抗体は、Axl下流シグナル伝達を阻害する。一部の実施形態では、抗Axl抗体は、Gas6依存性細胞増殖を阻害する。
【0080】
一部の実施形態では、抗Axl抗体は、腫瘍関連マクロファージからの炎症性サイトカイン発現を阻害する。
【0081】
一部の実施形態では、抗Axl抗体は、腫瘍間質機能を調節することにより、腫瘍増殖及び/又は転移を阻害する。
【0082】
定義
抗体
この用語は、天然であるか又は部分的若しくは完全に合成により生成されたかのいずれにかかわらず、免疫グロブリンを表す。この用語はまた、抗体抗原結合ドメインを含む任意のポリペプチド又はタンパク質も包含する。抗体抗原結合ドメインを含む抗体断片は、全抗体(例えば、標準的構成でVH、CH1、CH2、CH3、VL、及びCLドメインを含むIgG抗体)、又は標的抗原に対する結合活性を保持する全抗体の断片を含む。こうした断片として、Fv(断片可変)、Fab(断片抗体結合)及びF(ab’)
2断片、並びに単鎖Fv抗体(scFv)、dsFv、ミニボディ、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムscFv、TandAb、バイボディ(bi−body)、トリボディ(tri−body)、κ(λ)ボディ、BiTE、DVD−lg、SIP、SMIP、又はDARTが挙げられる。さらに、それらの抗体及び断片は、例えば、欧州特許出願公開第239400A号明細書に記載のように、ヒト化抗体であってもよい。例えば、モノクローナル及びポリクローナル抗体、組換え抗体、抗体のタンパク質分解及び組換え断片(Fab、Fv、scFv、ダイアボディ)、単一ドメイン抗体(VHH、sdAb、ナノボディ、IgNAR、VNAR)、及び抗体に無関係なタンパク質であって、限定はしないが、下記のような抗体様特異的結合(抗体模倣物)を有するように操作されているものである。
【0084】
抗体は、抗体重鎖定常領域及び/又は抗体軽鎖定常領域の全部又は一部(apportion)を含んでよい。
【0085】
モノクローナル抗体及びその他の抗体を採用し、組換えDNA断片技術の技法を使用して、元の抗体の特異性を保持する改変抗体若しくはキメラ分子を生成することが可能である。こうした技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域、又は相補性決定領域(CDR)をコードするDNA断片と、別の免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域、又は定常領域及びフレームワークをコードする遺伝子との連結を含み得る。例えば、欧州特許出願公開第A184187号明細書、英国特許第2188638A号明細書又は欧州特許出願公開第A239400号明細書を参照されたい。抗体を産生するハイブリドーマ又はその他の細胞を遺伝子突然変異又はその他の変更に付してもよく、これによって、産生される抗体の結合特異性が改変されるか、又は改変されない場合もある。
【0086】
抗体は多数の方法で改変することができるため、「抗体分子」という用語は、必要な特異性を備えた抗体由来の抗原結合ドメインを有するあらゆるポリペプチド又は他の分子を包含するものとして解釈すべきである。従って、この用語は、天然又は完全若しくは部分的合成のいずれにかかわらず、免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドなどの抗体断片及び誘導体を包含する。従って、別のポリペプチドに融合された免疫グロブリンドメイン、又は均等物を含むキメラ分子も含まれる。キメラ抗体のクローン化及び発現は、欧州特許出願公開第A−0120694号明細書及び同第A−0125023号明細書に記載されている。
【0087】
全抗体の断片が、結合抗原の機能を果たし得ることが証明されている。結合断片の例として、以下のものが挙げられる:(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成されるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインから構成されるFd断片;(iii)単一抗体のVL及びVHドメインから構成されるFv断片;(iv)VHドメインから構成されるdAb断片(Ward,E.S.et al.,Nature 341,544−546(1989));(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの連結したFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(vii)VHドメイン及びVLドメインが、ペプチドリンカーにより連結され、これによって、2つのドメインが結合して、抗原結合部位を形成することが可能になる、単鎖Fv分子(scFv)(Bird et al,Science,242,423−426,1988;Huston et al,PNAS USA,85,5879−5883,1988);(viii)二重特異性単鎖Fv二量体(PCT/米国特許第92/09965号明細書)並びに(ix)遺伝子融合により構築される多価若しくは多重特異性断片である、「ダイアボディ」(国際公開第94/13804号パンフレット;P.Holliger et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,6444−6448,1993)。Fv、scFv又はダイアボディ分子は、VH及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みにより安定化させることができる(Y.Reiter et al,Nature Biotech,14,1239−1245,1996)。CH3ドメインに結合したscFvを含むミニボディも作製することができる(S.Hu et al,Cancer Res.,56,3055−3061,1996)。
【0088】
抗体は、二重特異性又は多重特異性のいずれであってもよい。二重特異性抗体を用いようとする場合、これらは、一般的二重特異性抗体であってよく、様々な方法(Holliger,P.及びWinter G.Current Opinion Biotechnol.4,446−449(1993))で製造することができ、例えば、化学的に若しくはハイブリッドハイブリドーマから調製してもよく、又は前述した二重特異性抗体断片のいずれであってもよい。ダイアボディ及びscFvは、可変ドメインのみを用いて、Fc領域なしで構築することもでき、これにより、副作用、例えば、抗体エフェクター機能、又はマウス起源の抗体を使用する場合、ヒト抗マウス(HAMA)応答などによる副作用などを軽減し得る。
【0089】
二重特異性全抗体とは反対に、二重特異性ダイアボディは容易に構築することができ、且つ細菌(例えば、大腸菌(E.coli))に発現させることができるため、二重特異性ダイアボディも特に有用である。適切な結合特異性のダイアボディ(及び抗体断片などの多くの他のポリペプチド)は、抗体ライブラリーからのファージディスプレイ(国際公開第94/13804号パンフレット)を用いて、容易に選択することができる。例えば、Axlに対して特異性を向けながら、ダイアボディの一方のアームを一定に維持しようとする場合、他方のアームを改変したライブラリーを作製して、適切な特異性の抗体を選択することができる。二重特異性全抗体は、ノブズイントゥーホールズ(knobs−into−holes)工学(J.B.B.Ridgeway et al,Protein Eng.,9,616−621,1996)により作製することができる。
【0090】
抗原結合ドメイン
これは、抗原を認識して、特異的に結合し、且つその抗原の相補性部分又は全部である領域を含む抗体分子の一部を表す。抗原が大きい場合、抗体は、抗原の特定部分にのみ結合し得るが、この部分は、エピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは、1つ又は複数の抗体可変ドメイン(例えば、VHドメインから構成されるいわゆるFd抗体断片)によって提供され得る。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)を含むのが好ましい。
【0091】
具体的なタンパク質
ヒトAxl
本明細書で用いられるとき、「ヒトAxl」は、受容体チロシンキナーゼのヒトTAMファミリーのAxlメンバーを指す。一部の実施形態では、ヒトAxlポリペプチドは、Genbankアクセッション番号AAH32229、バージョン番号AAH32229.1 GI:21619004、記録更新日:2012年3月6日、01:18PM(配列番号19)に対応する。一実施形態では、ヒトAxlポリペプチドをコードする核酸は、Genbankアクセッション番号M76125、バージョン番号M76125.1 GI:292869、記録更新日:2010年6月23日、08:53AMに対応する。
【0092】
マウス(murine)Axl
本明細書で用いられるとき、「マウスAxl」は、受容体チロシンキナーゼのマウスTAMファミリーのAxlメンバーを指す。一部の実施形態では、マウスAxlポリペプチドは、Genbankアクセッション番号AAH46618、バージョン番号AAH46618.1 GI:55777082、記録更新日:2012年3月6日、01:36PM(配列番号20)に対応する。一実施形態では、マウスAxlポリペプチドをコードする核酸は、Genbankアクセッション番号NM_009465、バージョン番号NM_009465.4 GI:300794836、記録更新日:2014年3月12日、03:52PMに対応する。
【0093】
ヒトTyro3
本明細書で用いられるとき、「ヒトTyro3」は、受容体チロシンキナーゼのヒトTAMファミリーのTyro3メンバーを指す。一部の実施形態では、ヒトTyro3ポリペプチドは、Genbankアクセッション番号Q06418、バージョン番号Q06418.1 GI:1717829、記録更新日:2014年4月22日、12:07PM(配列番号21)に対応する。一実施形態では、ヒトTyro3ポリペプチドをコードする核酸は、Genbankアクセッション番号BC051756、バージョン番号BC051756.1 GI:30704372、記録更新日:2012年3月6日、01:43PMに対応する。
【0094】
ヒトMer
本明細書で用いられるとき、「ヒトMer」は、受容体チロシンキナーゼのヒトTAMファミリーのMerメンバー(公式名称=MERTK、Uniprot ID=Q12866)を指す。一部の実施形態では、ヒトMerポリペプチドは、Genbankアクセッション番号AAI14918、バージョン番号AAI14918.1 GI:109732052、記録更新日:2012年3月6日、04:21PM(配列番号22)に対応する。一実施形態では、ヒトMerポリペプチドをコードする核酸は、Genbankアクセッション番号NM_006343、バージョン番号NM_006343.2 GI:66932917、記録更新日:2014年3月16日、08:52PMに対応する。
【0095】
BSA
本明細書で用いられるとき、「BSA」は、ウシ血清アルブミンを指す。一部の実施形態では、BSAは、Genbankアクセッション番号CAA76847、バージョン番号CAA76847.1 GI:3336842、記録更新日:2011年1月7日、02:30PMに対応する。
【0096】
含む(comprise)
これは、一般に、「包含する」、すなわち、1つ又は複数の特徴又は成分の存在を可能にするという意味で用いられる。
【0097】
単離された(isolated)
これは、本発明の抗体、又はそのような抗体をコードする核酸が、概して本発明に従うものである状況を指す。抗体及び核酸は、それらが天然に結合している材料、例えば、他のポリペプチドなど、又はそれらの天然の環境、若しくはその調製がin vitro若しくはin vivoで実施される組換えDNA技術による場合には、それらが調製された環境(例えば、細胞培養物)にそれらと一緒に存在する核酸を含まないか、又は実質的に含まない。抗体及び核酸は、希釈剤又はアジュバントと一緒に製剤化しても(formulated)、また実用目的で単離してもよく、例えば、抗体は、免疫アッセイで使用するマイクロプレートのコーティングに用いられる場合、通常、ゼラチン若しくは他の担体と混合され、或いは診断又は治療に用いられる場合には、薬学的に許容される担体若しくは希釈剤と混合される。抗体は、自然に、若しくは異種真核細胞(例えば、CHO若しくはNS0(ECACC85110503)細胞)の系によりグルコシル化されていてもよく、又は非グルコシル化であってもよい(例えば、原核細胞での発現により生成される場合)。
【0098】
実質的に記載される通り
「実質的に記載される通り」とは、本発明の関連CDR又はVH若しくはVLドメインが、指定の領域(その配列は本明細書に記載される)と同一であるか、又は高度に類似しているかのいずれかであることを意味する。「高度に類似している」とは、CDR及び/又はVH若しくはVLドメインに、1〜5つ、好ましくは1〜4つ、例えば、1〜3つ又は1若しくは2つ、又は3若しくは4つのアミノ酸置換がなされていてもよいと考慮される。
【0099】
CDRを支持するフレームワーク
本発明のCDRを担持するための構造は、一般に、再編成された免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然のVH及びVL抗体可変ドメインのCDRに対応する位置にCDRが位置している、抗体の重鎖若しくは軽鎖配列又はその実質的部分からなる。免疫グロブリン可変ドメインの構造及び位置は、以下:(Kabat,E.A.et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.US Department of Health and Human Services.1987、及びその更新内容を参照にして決定することができ、現在ではインターネットでも入手可能である(http://immuno.bme.nwu.edu、又はいずれかの検索エンジンを用いて「Kabat」を検索)。
【0100】
本発明で使用される可変ドメインは、任意の生殖細胞系、又は再編成マウス若しくはヒト改変ドメインから取得してもよく、又は既知マウス若しくはヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づく合成可変ドメインであってもよい。本発明のCDR配列(例えば、CDR3)は、組換えDNA技術を用いて、CDR(例えば、CDR3)が欠失した可変ドメインのレパトア(repertoire)に導入してもよい。
【0101】
例えば、Marks et al(Bio/Technology,1992,10:779−783)は、抗体可変ドメインのレパトアを生成する方法を記載しており、この方法では、可変ドメイン領域の5’末端に向けられた、又はそれと隣接するコンセンサスプライマーを、ヒトVH遺伝子の第3フレームワークに対するコンセンサスプライマーと一緒に使用することにより、CDR3を欠失したVH可変ドメインのレパトアを提供する。Marks et al.はさらに、上記レパトアを特定の抗体のCDR3とどのように組み合わせるかについても記載している。類似の技術を用いて、本発明のCDR3由来の配列を、CDR3を欠失したVH若しくはVLドメインのレパトアとシャッフルした後、シャッフルした完全VH若しくはVLドメインをコグネイトVL若しくはVHドメインと組み合わせて、本発明の抗体を提供することもできる。次に、国際公開第92/01047号パンフレットのファージディスプレイ系などの好適な宿主系において、レパトアを展示することにより、好適な抗体を選択することができる。レパトアは、10
4を超える個別の抗体、例えば、10
6〜10
8個若しくは10
10個の抗体から構成され得る。
【0102】
類似のシャッフリング又はコンビナトリアル技術が、Stemmer(Nature,1994,370:389−391)によっても開示されており、Stemmerは、β−ラクタマーゼ遺伝子に関するDNAシャッフリングの技術を記載しているが、この手法が、抗体の生成のために用いられ得ると述べている。
【0103】
さらに別の方法は、1つ又は複数の選択したVH及び/又はVL遺伝子のランダム突然変異誘発を用いて、可変ドメイン全体に突然変異を発生させることにより、本発明のCDR由来の配列を担持する新規のVH及びVL領域を作製するものである。こうした技術は、誤りがちなPCRを用いたGram et al(1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:3576−3580)により記載されている。
【0104】
使用することができる別の方法は、VH又はVL遺伝子のCDR領域に対して突然変異誘発を指令するものである。こうした技術は、Barbas et al.(1994,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:3809−3813)及びSchier et al.(1996,J.Mol.Biol.263:551−567)により開示されている。
【0105】
前述した技術は全て、当技術分野においてそれ自体公知であり、それ自体で本発明の一部を形成するものではない。当業者は、このような技術を使用することにより、当技術分野で常用の方法を用いて本発明の抗体を提供することができるであろう。
【0106】
エピトープ特異的抗体
本発明の別の態様は、Axlエピトープに特異的な抗体を取得する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載するVHドメインのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸の付加、欠失、置換又は挿入により、VHドメインのアミノ酸配列変異体であるVHドメインを提供し、任意選択で、こうして提供されたVHドメインのアミノ酸配列を1つ又は複数のVLドメインと組み合わせるステップ、及びVHドメイン又は1つ若しくは複数のVH/VL組み合わせを試験して、Axlに特異的な抗体又は抗体抗原結合ドメインを特定するステップを含む。前記VLドメインは、アミノ酸配列を有し、これは、実質的に本明細書に記載される通りである。
【0107】
本明細書に開示するVLドメインの1つ又は複数の配列変異体を1つ又は複数のVHドメインと組み合わせる、類似の方法を使用してもよい。
【0108】
本発明の別の態様は、Axlに特異的な抗体を調製する方法を提供し、この方法は、以下:
(a)置換しようとするCDR3を含むか、又はCDR3コード領域を欠失しているかのいずれかであるVHドメインをコードする核酸の出発レパトアを用意するステップ;
(b)前記レパトアを、VHCDR3について実質的に本明細書に記載される通りのアミノ酸配列をコードするドナー核酸と組み合わせるステップであって、それにより、前記ドナー核酸がレパトア内のCDR3領域に挿入されて、VHドメインをコードする核酸の産物レパトアを提供する、ステップ;
(c)前記産物レパトアの核酸を発現させるステップ;
(d)Axlに特異的な抗体を選択するステップ;及び
(e)前記抗体又はそれをコードする核酸を回収するステップ
を含む。
【0109】
さらには、置換しようとするCDR3を含むか、又はCDR3コード領域を欠失しているかのいずれかであるVLドメインをコードする核酸のレパトアと、本発明のVLCDR3を組み合わせる、類似の方法を使用してもよい。
【0110】
同様に、1つ若しくは複数、又は3つ全てのCDRをVH若しくはVLドメインのレパトアに移植してもよく、次に、これをAxlに特異的な抗体についてスクリーニングする。
【0111】
免疫グロブリン可変ドメインの実質的部分は、その介在フレームワーク領域と一緒に、少なくとも3つのCDR領域を含む。この部分は、第1及び第4フレームワーク領域のいずれか又は両方の少なくとも約50%を含むのが好ましく、この50%は、第1フレームワーク領域のC末端50%及び第4フレームワーク領域のN末端50%である。可変ドメインの実質的部分のN末端又はC末端の追加残基は、天然に存在する可変ドメイン領域と通常結合していないものであってもよい。例えば、本発明の抗体の構築は、組換えDNA技術により実施される本発明の抗体の構築によって、クローン化又は他の操作ステップを促進するために導入されたリンカーによりコードされるN又はC末端残基の導入が起こり得る。他の操作ステップは、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えば、ダイアボディの生成において)、又は以下に詳述するタンパク質標識を含むタンパク質配列に、本発明の可変ドメインを結合させるためのリンカーの導入を含む。
【0112】
本発明の好ましい態様では、1対のVH及びVLドメインの対を含む抗体が好ましいが、VH又はVLドメイン配列のいずれかに基づく単一結合ドメインも、本発明のさらなる態様を形成する。単一免疫グロブリンドメイン、特にVHドメインは、特定の方法で標的抗原に結合し得ることがわかっている。
【0113】
いずれかの単一結合ドメインの場合、これらのドメインを用いて、Axlに結合することができる2ドメイン抗体を形成することができる相補的ドメインをスクリーニングしてもよい。
【0114】
これは、国際公開第92/01047号パンフレットに開示されているように、いわゆるヒエラルキーデュアルコンビナトリアル手法を用いるファージディスプレイスクリーニング法によって達成することができ、この方法では、H又はL鎖クローンのいずれかを含む個別のコロニーを用いて、他方の鎖(L又はH)をコードするクローンの完全なライブラリーを感染させ、得られた2鎖抗体を、その参照箇所に記載されているものなどのファージディスプレイ技術に従って選択する。この技術は、Marks et al.(同上)にも開示されている。
【0115】
本発明の抗体は、抗体定常領域又はその部分をさらに含んでもよい。例えば、本発明の抗体は、CL、CH1、CH2、及び/若しくはCH3ドメイン(又はその任意の組み合わせ)を含んでよい。VLドメインは、そのC末端で、ヒトCκ又はCλ鎖、好ましくはCκ鎖を含む抗体軽鎖定常ドメインに結合させてもよい。同様に、VHドメインに基づく抗体を、そのC末端で、任意の抗体アイソタイプ、例えば、IgG、IgA、IgE及びIgM並びにアイソタイプサブクラスのいずれかに由来する免疫グロブリン重鎖の全部又は一部に結合させてもよい。国際公開第99/58572号パンフレットに開示されるΔnab及びΔnacなどのFc領域を使用してもよい。
【0116】
キメラ、ヒト化及びCDR移植抗体
本明細書で用いられるとき、「キメラ」抗体又は「ヒト化」抗体又は「CDR移植」抗体は、本明細書に記載する抗Axl抗体の任意の組み合わせ、又はそれに由来する任意のCDRと非マウス、好ましくはヒト抗体由来の1つ又は複数のタンパク質若しくはペプチドとの組み合わせを含む。
【0117】
キメラ又はヒト化抗体は、CDRが、本明細書に記載する1つ又は複数の抗Axl抗体及び少なくともその一部に由来するか、又は上記抗体の残り部分が、1つ又は複数のヒト抗体に由来するものを含む。従って、抗体のヒト部分は、フレームワーク、CL(例えば、Cκ若しくはCλ)、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)、ヒトにおいて実質的に非免疫原性であるヒンジ領域を含んでもよい。
【0118】
ヒト抗体に由来する抗体の領域は、ヒト抗体と100%同一性を有する必要はない。好ましい実施形態では、免疫原性を無視できるようにするために、可能な限り少数のマウスアミノ酸残基を保持するが、抗体のヒト化を最大限にすると同時に、CDRにより形成される抗原結合部位を支持するうえでの必要に応じて、マウス残基を保持してもよい。こうした変化又は変異は、任意選択で、また好ましくは非修飾抗体に対してヒト又は他の種における免疫原性を保持又は低減する。
【0119】
ヒト化抗体は、再編成ヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を機能的に発現することができる非ヒト動物又は原核若しくは真核細胞により生成され得ることに留意すべきである。さらに、抗体が単鎖抗体であるとき、この抗体は、ネイティブヒト抗体に見出されないリンカーペプチドを含んでもよい。例えば、scFvは、2〜約20個のグリセリン又は他のアミノ酸残基(好ましくは、グリセリン及びセリン残基(例えば、Gly
4Ser若しくはGly
2Ser反復単位))などのリンカーペプチドを含んでよく、これは、重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域を連結する。こうしたリンカーペプチドは、ヒトにおいて非免疫原性であると考えられる。一部の実施形態では、リンカーは、長さが少なくとも12アミノ酸である。
【0120】
抗体のヒト化は、例えば、フレーム内で個々のヒトフレームワークのプールに融合した非ヒト標的モノクローナル抗体の6つのCDR全てを含むコンビナトリアルライブラリーを合成することにより、実施することができる。全ての既知重鎖及び軽鎖ヒト生殖系列配列を代表する遺伝子を含むヒトフレームワークライブラリーを使用することができる。続いて、得られたコンビナトリアルライブラリーを目的の抗原との結合についてスクリーニングすることができる。この手法により、親抗体の結合活性の維持に関して、完全ヒトフレームワークの最も好ましい組み合わせの選択が可能になる。次に、ヒト化抗体を様々な方法により最適化することができる。
【0121】
完全長抗体分子の場合、免疫グロブリン遺伝子は、ハイブリドーマ細胞株のゲノムDNA又はmRNAから取得することができる。抗体重鎖及び軽鎖は、哺乳動物ベクター系にクローン化する。アセンブリは、当技術分野で公知の方法を用いて、配列決定することにより確認する。抗体構築物は、他のヒト又は哺乳動物宿主細胞株に発現させることができる。次に、目的の発現抗体の一過性トランスフェクション及びウェスタンブロット分析により、構築物を検証することができる。最も高い生産性を有する安定な細胞株を単離した後、高速アッセイ方法を用いてスクリーニングすることができる。
【0122】
ヒト化抗体、断片及び領域の定常(C)領域をコードするヒト遺伝子は、公知の方法によりヒト胎児肝臓ライブラリーから取得することができる。ヒトC領域遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発現して生成するものなど、任意のヒト細胞から取得することができる。ヒトCH領域は、γ、μ、α、δ、εを含むヒト重鎖の既知のクラス若しくはアイソタイプ、並びにG1、G2、G3及びG4などのそれらのサブクラスのいずれかに由来するものであってよい。重鎖アイソタイプは、抗体の様々なエフェクター機能を担うため、CHドメインの選択は、補体結合、又は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の活性など、所望のエフェクター機能によって誘導されることになる。CHドメインは、γ1(IgG1)に由来するのが好ましい。
【0123】
ヒトCL領域は、ヒトL鎖アイソタイプ、κ又はλのいずれかに由来するものであってよく、κに由来するのが好ましい。
【0124】
ヒト免疫グロブリンC領域をコードする遺伝子は、標準的クローン化技術によってヒト細胞から取得することができる(Sambrook,et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)及びAusubel et al.,eds.Current Protocols in Molecular Biology(1987−1993))。ヒトC領域遺伝子は、2つのタイプの軽鎖、5つのクラスの重鎖及びそれらのサブクラスを呈示する遺伝子を含有する既知クローンから容易に入手可能である。
【0125】
Fab及びF(ab’)
2などのキメラ抗体断片は、適切に切断されるキメラ重鎖遺伝子を設計することにより調製することができる。例えば、F(ab’)
2断片の重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、重鎖のCH1ドメイン及びヒンジ領域をコードするDNA配列、これに続いて、切断分子を取得するための翻訳停止コドンを含む。
【0126】
非ヒト若しくはヒト抗体を操作又はヒト化する方法を用いることができ、こうした方法は、当技術分野ではよく知られている。一般に、ヒト化又は改変抗体は、非ヒト、例えば、限定はしないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類又はその他の哺乳類である供給源に由来する1つ又は複数のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基は、往々にして「移入」残基と呼ばれ、典型的には既知のヒト配列の「移入」可変、定常又は他のドメインから得られる。既知のヒトIg配列は、例えば、以下に開示されている:
www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi;www.atcc.org/phage/hdb.html;www.sciquest.com/;www.abcam.com/;www.antibodyresource.com/onlinecomp.html;www.public.iastate.edu/.about.pedro/research_tools.html;www.mgen.uni−heidelberg.de/SD/IT/IT.html;www.whfreeman.com/immunology/CH05/kuby05.htm;www.library.thinkquest.org/12429/Immune/Antibody.html;www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab/;www.path.cam.ac.uk/.about.mrc7/mikeimages.html;www.antibodyresource.com/;mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html.www.immunologylink.com/;pathbox.wustl.edu/.about.hcenter/index.html;www.biotech.ufl.edu/.about.hcl/;www.pebio.com/pa/340913/340913.html;www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody/;www.m.ehime−u.ac.jp/.about.yasuhito/Elisa.html;www.biodesign.com/table.asp;www.icnet.uk/axp/facs/davies/links.html;www.biotech.ufl.edu/.about.fccl/protocol.html;www.isac−net.org/sites_geo.html;aximt1.imt.uni−marburg.de/.about.rek/AEPStart.html;baserv.uci.kun.nl/.about.jraats/links1.html;www.recab.uni−hd.de/immuno.bme.nwvu.edu/;www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/public/INTRO.html;www.ibt.unam.mx/vir/V_mice.html;imgt.cnusc.fr:8104/;www.biochem.ucl.ac.uk/.about.martin/abs/index.html;antibody.bath.ac.uk/;abgen.cvm.tamu.edu/lab/wwwabgen.html;www.unizh.ch/.about.honegger/AHOseminar/Slide01.html;www.cryst.bbk.ac.uk/.about.ubcg07s/;www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.htm;www.path.cam.ac.uk/.about.mrc7/humanisation/TAHHP.html;www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html;www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html;www.cryst.bioc.cam.ac.uk/.about.fmolina/Web−pages/Pept/spottech.html;www.jerini.de/fr_products.htm;www.patents.ibm.con/ibm.html.Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.Health(1983)(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0127】
こうした移入配列を用いて、免疫原性を低減するか、又は当技術分野において周知のように、結合、親和性、結合速度(on-rate)、解離速度(off-rate)、結合力、特異性、半減期、若しくはその他いずれかの好適な特徴を低減、増強、又は修飾することができる。一般に、可変及び定常領域の非ヒト配列をヒト又は他のアミノ酸で置換すると同時に、非ヒト又はヒトCDR配列の一部若しくは全部を維持する。
【0128】
抗体はまた、任意選択で、抗原に対する高い親和性及びその他の好都合な生物学的特性を保持してヒト化することもできる。この目的を達成するために、ヒト化抗体は、任意選択で、親及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスにより調製することができる。三次元の免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者には周知である。選択した候補免疫グロブリン配列の考えられる三次元立体配座構造を図示及びディスプレイするコンピュータプログラムが入手可能である。これらのディスプレイの精査によって、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の考えられる役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原に対する高い親和性などの所望の抗体特性が達成されるように、FR残基をコンセンサス配列及び移入配列から選択して、組み合わせることができる。
【0129】
一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接、且つ最も実質的に関与している。抗体のヒト化及び操作は、いずれか公知の方法を用いて実施することができ、こうした方法として、限定はしないが、以下に記載されているものがある:Winter et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988)),Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5,723,323号明細書、同第5,976,862号明細書、同第5,824,514号明細書、同第5,817,483号明細書、同第5,814,476号明細書、同第5,763,192号明細書、同第5,723,323号明細書、同第5,766,886号明細書、同第5,714,352号明細書、同第6,204,023号明細書、同第6,180,370号明細書、同第5,693,762号明細書、同第5,530,101号明細書、同第5,585,089号明細書、同第5,225,539号明細書;同第4,816,567明細書、PCT/米国特許第98/16280号明細書、同第96/18978号明細書、同第91/09630号明細書、同第91/05939号明細書、同第94/01234号明細書、英国特許第89/01334号明細書、同第91/01134号明細書、同第92/01755号明細書;国際公開第90/14443号パンフレット、同第90/14424号パンフレット、同第90/14430号パンフレット、欧州特許第229246号明細書。
【0130】
ヒト化抗体のヒト定常領域は、任意のクラス又はアイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)のものであってよく、κ又はλ軽鎖を含んでもよい。一実施形態では、ヒト定常領域は、IgG重鎖又は規定断片、例えば、IgGサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4の少なくとも1つを含む。
【0131】
標識抗体
本発明の抗体は、検出可能又は機能性標識で標識してもよい。検出可能な標識としては、[
131I]又は[
99Tc]などの放射性標識があり、これらは、放射性免疫複合体の分野において公知の従来の化学を用いて、本発明の抗体に結合することができる。標識は、セイヨウワサビペルオキシダーゼなどの酵素標識も含む。標識はさらに、ビオチンなどの化学的部分も含み、これは、特定のコグネイト検出可能部分、例えば、標識アビジン若しくはストレプトアビジンへの結合により検出することができる。標識は、FITCなどの蛍光標識を含むのが好ましい。
【0132】
有機部分
修飾抗体及び抗原結合断片は、抗体に直接若しくは間接的に共有結合した1つ又は複数の有機部分を含んでよい。本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片に結合した各有機部分は、独立に、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であってよい。本明細書で用いられるとき、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を包含する。「親水性ポリマー基」は、この用語が本明細書で用いられるとき、オクタンよりも水に可溶性の有機ポリマーを指す。例えば、ポリリシンは、オクタンよりも水に可溶性である。このように、ポリリシンの共有結合により修飾される抗体は、本開示により包含される。本明細書に記載する抗体を修飾するのに好適な親水性ポリマーは、直鎖又は分岐状のいずれであってもよく、例えば、ポリ−アルカングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)、PPGなど、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリ−リシン、ポリ−アルギニン、ポリ−アスパラギン酸塩など)、ポリ−アルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、並びにポリビニルピロリドンが挙げられる。本明細書に記載する抗体を修飾する親水性ポリマーは、個別の分子実体として、約800〜約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000(添え字は、ポリマーの平均分子量(ダルトン)である)を用いることができる。親水性ポリマー基は、1〜約6のアルキル、脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換することができる。脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換された親水性ポリマーは、好適な方法を用いることにより調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーを脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボン酸塩と結合させてから、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボン酸塩(例えば、N,N−カルボニルジイミダゾールで活性化)をポリマー上のヒドロキシル基と結合させることができる。
【0133】
本明細書に記載する抗体を修飾するのに好適な脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和であってもよく、1つ又は複数の不飽和単位を含有してもよい。本明細書に記載する抗体を修飾するのに好適な脂肪酸として、例えば、n−ドデカノアート(C12、ラウリン酸塩)、n−テトラデカノアート(C14、ミリスチン酸塩)、n−オクタデカノアート(C18、ステアリン酸塩)、n−エイコサノアート(C20、アラキジン酸塩)、n−ドコサノアート(C22、ベヘン酸塩)、n−トリコンタノアート(C30)、n−テトラコンタノアート(C40)、シス−δ9−オクタデカノアート(C18、オレイン酸塩)、all cis−δ5,8,11,14−エイコサテトラエノアート(C20、アラキドン酸塩)、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などが挙げられる。好適な脂肪酸エステルとしては、直鎖又は分岐状の低級アルキル基を含むジカルボン酸のモノエステルが挙げられる。低級アルキル基は、1〜約12個、好ましくは1〜約6つの炭素原子を含んでよい。
【0134】
修飾されたヒト抗体及び抗原結合断片は、1種又は複数種の改変剤との反応などの好適な方法を用いて調製することができる。「改変剤」は、この用語が本明細書で用いられるとき、活性化基を含む好適な有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を指す。「活性化基」は、適切な条件下で、第2の化学基と反応し、これにより、改変剤と第2化学基との間に共有結合を形成することができる化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基としては、トシレート、メシレート、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)などが挙げられる。チオールと反応することができる活性化基としては、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロイル、ピリジルジスルフィド、5−チオ−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)などが挙げられる。無水物官能基は、アミン−又はヒドラジド含有基に結合させることができ、アジド基は、三価リン基と反応して、ホスホロアミデート又はホスホロイミド結合を形成することができる。分子に活性化基を導入する好適な方法は、当技術分野において公知である(例えば、Hernanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,Calif.(1996)を参照)。活性化基は、有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接、又はリンカー部分、例えば、二価C1〜C12基を介して結合することができ、ここで、1つ又は複数の炭素原子を酸素、窒素又はイオウなどのヘテロ原子で置換することができる。好適なリンカー部分として、例えば、テトラ−エチレングリコール、−−(CH
2)
3−−、−−NH−−(CH
2)
6−−NH−−、−−(CH
2)
2−−NH−−及び−−CH
2−−O−−CH
2−−CH
2−−O−−CH
2−−CH
2−−O−−CH−−NH−−が挙げられる。リンカー部分を含む改変剤は、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、モノ−Boc−アルキルジアミン(例えば、モノ−Boc−エチレンジアミン、モノ−Boc−ジアミノヘキサン)を脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸カルボン酸塩との間にアミド結合を形成することにより、生成することができる。トリフルオロ酢酸(TFA)での処理により産物からBoc保護基を除去して、一級アミンを露出させることもでき、これを、記載のように、別のカルボン酸塩と結合させるか、又は無水マレイン酸と反応させて、得られた産物を環状化することにより、脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を生成することができる(例えば、Thompson,et al.,国際公開第92/16221号パンフレットを参照)。
【0135】
修飾抗体は、ヒト抗体又は抗原結合断片を改変剤と反応させることにより生成することができる。例えば、有機部分は、アミン反応性改変剤、例えば、PEGのNHSエステルを使用することにより、非部位特異的な方法で抗体に結合することができる。さらに、修飾ヒト抗体又は抗原結合断片は、抗体若しくは抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば、鎖内ジスルフィド結合)を還元することにより、調製することもできる。続いて、還元された抗体又は抗原結合断片をチオール反応性改変剤と反応させて、本明細書に記載の修飾抗体を生成することができる。本明細書に記載の抗体の特定の部位に結合した有機部分を含む修飾ヒト抗体及び抗原結合断片は、逆タンパク質分解(Fisch et al.,Bioconjugate Chem.,3:147−153(1992);Werlen et al.,Bioconjugate Chem.,5:411−417(1994);Kumaran et al.,Protein Sci.6(10):2233−2241(1997);Itoh et al.,Bioorg.Chem.,24(1):59−68(1996);Capellas et al.,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456−463(1997))、並びにHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,Calif.(1996)に記載されている方法などの好適な方法を用いて調製することができる。
【0136】
免疫複合体
本発明はまた、化学療法剤若しくは薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性毒素、若しくはそれらの断片)、又は放射性同位体などの1種又は複数種の細胞傷害剤に結合した本明細書に記載の抗Axl抗体を含む免疫複合体も提供する。
【0137】
一実施形態では、免疫複合体は、抗体が、1種又は複数種の薬物に結合した抗体−薬物複合体(ADC)であり、こうした薬物として、限定はしないが、以下のものが挙げられる:メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号明細書、同第5,416,064号明細書、及び欧州特許第0 425 235B1号明細書を参照);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号明細書及び同第5,780,588号明細書、及び同第7,498,298号明細書を参照);ドラスタチン;カリケアミシン若しくはその誘導体(米国特許第5,712,374号明細書、同第5,714,586号明細書、同第5,739,116号明細書、同第5,767,285号明細書、同第5,770,701号明細書、同第5,770,710号明細書、同第5,773,001号明細書、及び同第5,877,296号明細書;Hinman et al.,Cancer Res.53:3336−3342(1993);及びLode et al.,Cancer Res.58:2925−2928(1998));ダウノマイシン若しくはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chern.13:477−523(2006);Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chern.Letters 16:358−362(2006);Torgov et al.,Bioconj.Chern.16:717−721(2005);Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829−834(2000);Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chern.Letters 12:1529−1532(2002);King et al.,J.Med.Chern.45:4336−4343(2002);並びに米国特許第6,630,579号明細書を参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;並びにCC1065。
【0138】
別の実施形態では、免疫複合体は、酵素的に活性の毒素又はその断片に結合した本明細書に記載の抗体を含み、こうした毒素として、限定はしないが、以下のものが挙げられる:ジフテリア毒素A鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α−サクリン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(P API、P APII、PAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)。
【0139】
別の実施形態では、免疫複合体は、放射性原子に結合して、放射性免疫複合体を形成する本明細書に記載の抗体を含む。放射性免疫複合体の生成のために、様々な放射性同位体が利用可能である。例として、[
211At]、[
131I]、[
125I]、[
90Y]、[
186Re]、[
188Re]、[
153Sm]、[
212Bi]、[
32P]、[
212Pb]及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性免疫複合体が診断のために使用される場合、これは、シンチグラフィー研究用の放射性原子、例えば[
99Tc]又は[
123I」、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られている)用のスピン標識、例えば、ヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含んでもよい。
【0140】
抗体及び細胞傷害剤のコンジュゲートは、下記のような各種二官能性タンパク質結合剤を用いて調製することもできる:N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6−ジイソシアネートなど)、及びビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。炭素−14標識1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MXDTPA)は、放射性ヌクレオチドと抗体の結合のための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号パンフレットを参照されたい。リンカーは、細胞中での細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127−131(1992);米国特許第5,208,020号明細書)を用いてもよい。
【0141】
免疫複合体又はADCは、本明細書において、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SlAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)安息香酸塩)(これらは、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから))などの架橋試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明確に考慮するが、これらに限定されるわけではない。
【0142】
グリコシル化変異体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増大又は低減するように改変される。抗体に対するグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が形成又は除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって、好都合に達成され得る。
【0143】
抗体が、Fc領域を含む場合には、それに結合した炭水化物を改変してもよい。哺乳動物細胞によって産生されるネイティブ抗体は、典型的に、分岐状の二本鎖オリゴ糖を含み、これは、一般に、N−結合により、Fc領域のCH2ドメインのAsn297に結合されている。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26−32(1997)を参照。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二本鎖オリゴ糖構造の「ステム」内のGlcNAcに結合したフコースを含み得る。一部の実施形態では、いくつかの改善された特性を備える抗体変異体を作出するために、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾を実施してもよい。
【0144】
一実施形態では、Fc領域に(直接的又は間接的に)結合したフコースを欠失した炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、このような抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、又は20%〜40%であってよい。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号パンフレットに記載のように、MALDI−TOF質量分析により測定して、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に対して、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定する。Asn297は、Fc領域において概ね297位(Fc領域残基のEu番号付与)に位置するアスパラギン残基を指すが;Asn297はまた、抗体における若干の配列変化のために、297位の約±3アミノ酸上流又は下流、すなわち294〜300位に位置する場合もある。こうしたフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書(Presta,L.);同第2004/0093621号明細書(Kyowa Haklw Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例としては、以下のものが挙げられる:米国特許出願公開第2003/01571号明細書;国際公開第2000/61739号パンフレット;同第2001/29246号パンフレット;米国特許出願公開第2003/0115614号明細書;同第2002/0164328号明細書;同第2004/0093621号明細書;同第2004/0132140号明細書;同第2004/0110704号明細書;同第2004/0110282号明細書;同第2004/0109865号明細書;国際公開第2003/085119号パンフレット;同第2003/084570号パンフレット;同第2005/035586号パンフレット;同第2005/035778号パンフレット;同第2005/053742号パンフレット;同第2002/031140号パンフレット;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004);Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)。
【0145】
脱フコシル化抗体を生成することができる細胞株の例として、タンパク質フコシル化が欠損したLecl3CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533−545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108 A1号明細書、Presta,L;及び国際公開第2004/056312 A1号パンフレット、Adams et al.、特に実施例11)、α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680−688(2006);及び国際公開第2003/085107号パンフレット)が挙げられる。
【0146】
さらに、二分されたオリゴ糖を備える抗体変異体も提供され、ここで、例えば、抗体のFc領域に結合した二本鎖オリゴ糖が、GlcNAcによって二分される。このような抗体変異体は、低減したフコシル化且つ/又は改善されたADCC機能を有し得る。こうした抗体変異体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号パンフレット(Jean−Mairet et al.);米国特許第6,602,684号明細書(Umana et al.);及び米国特許出願公開第2005/0123546号明細書(Umana et al.)に記載されている。また、Fe領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。このような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。こうした抗体変異体は、国際公開第1997/30087号パンフレット(Patel et al.);国際公開第1998/58964号パンフレット(Raju,S.);並びに国際公開第1999/22764号パンフレット(Raju,S.)に記載されている。
【0147】
Fc領域変異体
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸修飾を本明細書に記載の抗体のFc領域に導入し、これにより、Fc領域変異体を作製することができる。Fc領域変異体は、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4 Fc領域)を含んでよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明は、全部ではなく、一部のエフェクター機能を有する抗体変異体を考慮し、これによって、この変異体は、in vivoでの抗体の半減期は重要だが、特定のエフェクター機能(補体結合及びADCCなど)は不必要か、又は有害である用途について、望ましい候補となる。CDCの低減/欠失及び/又はADCC活性を確認するために、in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを実施することができる。例えば、抗体がFcγ結合を欠失している(従って、ADCC活性を欠失していることが見込まれる)が、FcRn結合能力は保持していることを確認するために、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施することができる。ADCCを媒介するための一次細胞である、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的例が、米国特許第5,500,362号明細書(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059−7063(1986)を参照)及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499−1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351−1361(1987)を参照)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照。こうしたアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。上記に代わり、又は加えて、目的の分子のADCC活性をin vivoで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652−656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価することもできる。抗体がC1qに結合することができないため、補体依存性細胞傷害(CDC)活性を欠失していることを確認するために、C1q結合アッセイを実施してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号パンフレット及び同第2005/100402号パンフレットにおけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045−1052(2003);及びCragg,M.S. and M.J.Glennie,Blood 103:2738−2743(2004)を参照)。また、FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期Fc決定も、当技術分野で公知の方法を用いて実施することもできる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759−1769(2006)を参照)。
【0149】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ又は複数の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号明細書)。こうしたFc突然変異体には、アミノ酸位置265、269、270、297及び327の2つ以上の置換を有するFc突然変異体があり、残基265及び297のアラニンへの置換を含むいわゆる「DANA」Fc突然変異が含まれる(米国特許第7,332,581号明細書)。
【0150】
FcRに対する結合が向上又は低減した特定の抗体変異体が記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号明細書;国際公開第2004/056312号パンフレット、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照)。
【0151】
いくつかの実施形態では、抗体変異体は、ADCC活性を改善する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、298位、333位での置換及び/又はFc領域の置換(残基のEU番号付与)を有するFc領域を含む。
【0152】
一部の実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号パンフレット、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178−4184(2000)に記載されているように、Fc領域に改変を実施して、これにより、改変された(すなわち、向上若しくは低減した)C1q結合及び/又はCDC活性がもたらされる。
【0153】
半減期が増加し、胎児性Fc受容体(FcRn)に対する結合が向上した抗体は、胎児への母系IgGの輸送を担い(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))、こうした抗体は、米国特許出願公開第2005/0014934A1号明細書(Hinton et al.)に記載されている。これらの抗体は、Fc領域とFcRnの結合を向上させる1つ又は複数の置換を有するFc領域を含む。こうしたFc変異体としては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424若しくは434のうち1つ又は複数の置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものである(米国特許第7,371,826号明細書)。また、Fc領域変異体の他の例に関しては、Duncan&Winter,Nature 322:738−40(1988);米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;及び国際公開第94/29351号パンフレットを参照されたい。
【0154】
システイン改変抗体変異体
いくつかの実施形態では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換される、「thioMAb」などのシステイン改変抗体を作出することが望ましい場合もある。
【0155】
特定の実施形態では、置換される残基は、抗体の接触可能な部位に存在する。本明細書でさらに詳述するように、これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体の接触可能部位に配置され、これを用いて、薬物部分又はリンカー−薬物部分などの他の部分に抗体を結合させて、免疫複合体を作出する。いくつかの実施形態では、以下の残基のいずれか1つ又は複数をシステインで置換してもよい:軽鎖のV205(Kabat番号付与);重鎖のA118(EU番号付与);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付与)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号明細書に記載されているように作製することもできる。
【0156】
診断及び治療の方法
本発明の抗体は、ヒト又は動物被験者、好ましくはヒトの診断又は治療の方法に使用されるように設計される。
【0157】
従って、本発明の別の態様は、例えば、FITCなどの検出可能な標識に結合した1種又は複数種の試薬と一緒に、記載される抗体を投与するステップを含む診断方法を提供する。記載の抗体は、生検組織から得た癌細胞についての高速且つ信頼性の高い試験の開発に用いることもできる。例えば、抗体は、血液又はリンパなどの体液中に循環しているのが見出され得る循環腫瘍細胞などの転移癌細胞についての試験として用いることもできる。目的とする他の癌としては、乳癌、肺癌、胃癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮癌、肝臓癌、膀胱癌、内膜及び前立腺癌、並びにリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、NHL)及び白血病(特に、急性骨髄性白血病、AML)が挙げられる。
【0158】
本発明のさらに別の態様は、記載される抗体の投与を含む治療方法、こうした抗体を含む医薬組成物、治療方法に使用するための本明細書に記載の抗体、本明細書に記載する特定の臨床的適応の治療方法に使用するための本明細書に記載の抗体、並びに投与のための薬剤の製造、例えば、薬学的に許容される賦形剤と一緒に抗体を製剤化するステップ(formulating)を含む薬剤又は医薬組成物の製造方法における抗体の使用を提供する。
【0159】
臨床的適応
ヒトAxlに対して高い特異性を有する抗体を用いて、治療利益をもたらし得る臨床的適応は、Axlが過剰発現される、又はAxl拮抗作用が臨床的利益をもたらすあらゆる状態を含む。こうした状態として、免疫障害、心臓血管障害、血栓症、糖尿病、免疫チェックポイント障害、又は癌、とりわけ転移性癌などの増殖性疾患が挙げられる。さらに、Axlは、多くの上皮起源の癌において、ある役割を果たすこともわかっている。
【0160】
目的の免疫チェックポイント障害としては、以下のものが挙げられる:慢性ウイルス感染症、黒色腫、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、前立腺癌、腎細胞癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、骨髄腫、腎臓癌、膀胱癌、脳腫瘍、及びリンパ腫。
【0161】
目的の癌としては、以下のものが挙げられる:白血病、例えば、限定はしないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、例えば、骨髄芽球性、前骨髄性、骨髄単球性、単球性、赤白血病性白血病及び骨髄異形成症候群、慢性白血病、例えば、限定はしないが、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、有毛細胞性白血病;真性赤血球増加;リンパ腫、例えば、限定はしないが、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、例えば、限定はしないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫及び髄外形質細胞腫;ワンデルストレームマクロブリン血症;意義不明の単クローン性グロブリン血症;良性単クローン性ガンマグロブリン血症;H鎖病;骨及び結合組織肉腫、例えば、限定はしないが、骨肉腫、骨肉腫、軟膏肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の繊維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟組織肉腫、血管肉腫(血管肉腫)、繊維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、転移性癌、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、例えば、限定はしないが、神経膠腫、膠芽腫、星状細胞腫、脳幹グリオーマ、上衣腫、乏突起膠腫、非グリア腫瘍、聴神経腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、脳原発性リンパ腫;乳癌、例えば、限定はしないが、腺癌、小葉(小細胞)癌、乳管内癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭乳癌、原発性癌、パジェット病、及び炎症性乳癌;副腎癌、例えば、限定はしないが、褐色細胞腫及び副腎皮質癌;甲状腺癌、例えば、限定はしないが、甲状腺乳頭若しくは濾胞性甲状腺癌、髄様甲状腺癌及び未分化甲状腺癌;膵臓癌、例えば、限定はしないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、及びカルチノイド若しくは膵島細胞腫瘍;下垂体癌、例えば、限定はしないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、及び尿崩症;眼の癌、例えば、限定はしないが、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、及び毛様体黒色腫などの眼内黒色腫、並びに網膜芽細胞腫;膣癌、例えば、扁平上皮癌、腺癌、及び黒色腫;外陰癌、例えば、扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、及びパジェット病;子宮頸癌、例えば、限定はしないが、扁平上皮癌、及び腺癌;子宮癌、例えば、限定はしないが、内膜癌及び子宮肉腫;卵巣癌、例えば、限定はしないが、上皮性卵巣癌、境界型腫瘍、胚細胞腫瘍、及び間質腫瘍;食道癌、例えば、限定はしないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣贅性癌、及び燕麦細胞(小細胞)癌;胃癌、例えば、限定はしないが、腺癌、菌状発育性(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、及び癌肉腫;結腸癌;直腸癌;肝臓癌、例えば、限定はしないが、肝細胞癌及び肝芽腫、胆嚢癌、例えば、腺癌;胆管癌、例えば、限定はしないが、乳頭、結節性、及びびまん性;肺癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌及び小細胞肺癌(SCLC);精巣癌、例えば、限定はしないが、胚細胞腫瘍、精上皮腫、未分化、古典的(典型的)、精母細胞性、非セミノーマ、胎生期癌、奇形腫癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、前立腺腺癌、例えば、限定はしないが、腺癌、平滑筋肉腫、及び横紋筋肉腫;性器癌、例えば、陰茎癌;口腔癌、例えば、限定はしないが、扁平上皮癌;基底細胞癌;唾液線癌、例えば、限定はしないが、腺癌、粘表皮癌、及び腺様嚢胞癌;咽頭癌、例えば、限定はしないが、扁平上皮癌、及び疣贅性;皮膚癌、例えば、限定はしないが、基底細胞癌、扁平上皮癌及び黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫;腎臓癌、例えば、限定はしないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、繊維肉腫、移行上皮細胞癌(腎盂及び/又は尿管);ウィルムス腫瘍;膀胱癌、例えば、限定はしないが、移行上皮細胞癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫。さらに、癌として、粘液肉腫、骨形成肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌及び乳頭腺癌が挙げられる。癌は、乳癌、黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌又は神経膠腫癌から選択されるのが好ましい。癌は、転移性乳癌又は肺癌であるのがより好ましい。循環腫瘍のターゲティング及び治療が考慮される。
【0162】
転移性癌の治療は、原発腫瘍がどこに位置するかに左右される。例えば、乳癌が肺にまで広がった場合、癌は乳癌のままであり、治療は、癌が現時点で肺にあることではなく、乳房内の転移性癌起源によって決定される。約5%の確率で、転移性癌が発見されても、原発腫瘍を見出すことができない。これらの転移性癌の治療は、その起源よりむしろその位置によって決定される。転移性癌は、原発腫瘍の組織(わかっている場合)によって命名される。例えば、脳まで広がった乳癌は、脳転移性乳癌と呼ばれる。
【0163】
本発明の抗Axl治療は、Axlが過剰発現しているか、又はAxl拮抗作用が臨床的利益をもたらすことを条件として、患者に対する明らかな利益を提供するために用いることができる。治療は、注射により(例えば、静脈内)又は局所送達法によって実施することができる。記載の抗体は、標的組織に対して、又は例えば、循環腫瘍細胞(CTC)若しくは他の転移性細胞をターゲティングするために、全身に薬学的組成物の送達を向かわせるように使用してもよい。
【0164】
本発明の別の態様では、被験者における癌ステム細胞を阻害する方法も提供され、この方法は、本明細書に記載する抗体(若しくはそのコンジュゲート)と被験者を接触させるステップを含む。このような方法で使用する抗体及びコンジュゲートも考慮される。
【0165】
EGFR拮抗作用
本発明はまた、構成性Axl活性化を阻害するステップも提供し、この方法は、構成性Axlを阻害するために本明細書に開示する抗Axl抗体のいずれかの有効量を個体に投与するステップを含む。
【0166】
一態様では、本発明は、EGFR活性化突然変異又はEGFR遺伝子増幅に関連する癌に罹患した患者を治療する方法を提供し、ここで、被験者は、EGFRアンタゴニストによる治療に対する耐性を形成しており、この方法は、被験者が、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を有するか否かを決定するステップ、並びにAxl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を有する被験者に、EGFRアンタゴニスト及び本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかを投与するステップを含む。
【0167】
一態様では、本発明は、EGFR活性化突然変異又はEGFR遺伝子増幅に関連する癌に罹患した患者を治療する方法を提供し、この方法は、(i)EGFRアンタゴニストによる治療を受けている被験者をモニタリングして、被験者がAxl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を起こしているか否かを決定するステップ、並びに(ii)被験者が、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を起こしている場合、EGFRアンタゴニストに加えて、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかを含有させるように、被験者の治療計画を変更するステップを含む。
【0168】
一態様では、本発明は、EGFR活性化突然変異又はEGFR遺伝子増幅に関連する癌に罹患した患者を治療する方法を提供し、この方法は、(i)EGFRアンタゴニストによる治療を受けている被験者をモニタリングして、被験者が、阻害剤に対する耐性を形成しているか否かを決定するステップ、(ii)被験者を試験して、被験者が、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を有するか否かを決定するステップ、並びに(iii)被験者が、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を有する場合、EGFRアンタゴニストに加えて、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかを含有するように、被験者の治療計画を変更するステップを含む。
【0169】
一態様では、本発明は、EGFRアンタゴニストを評価する方法を提供し、この方法は、(i)EGFRアンタゴニストによる治療を受けている被験者の集団をモニタリングして、治療薬に対する耐性を形成している被験者を見出すステップ、(ii)耐性の被験者を試験して、被験者が、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を有するか否かを決定するステップ、並びに(iii)被験者が、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を有する場合、EGFRアンタゴニストに加えて、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかを含有するように、被験者の治療計画を変更するステップを含む。
【0170】
一態様では、本発明は、癌細胞におけるEGFRリン酸化を低減する方法を提供し、ここで、前記癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、且つ前記細胞は、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を含み、この方法は、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれか及びEGFRアンタゴニストと細胞を接触させるステップを含む。
【0171】
一態様では、本発明は、癌細胞におけるPBK媒介性シグナル伝達を低減する方法を提供し、ここで、前記癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、且つ前記細胞は、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を含み、この方法は、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれか及びEGFRアンタゴニストと細胞を接触させるステップを含む。
【0172】
一態様では、本発明は、癌細胞におけるEGFR媒介性シグナル伝達を低減する方法を提供し、ここで、前記癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、且つ前記細胞は、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を含み、この方法は、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれか及びEGFRアンタゴニストと細胞を接触させるステップを含む。
【0173】
一態様では、本発明は、EGFRアンタゴニストに対する癌細胞の感受性を回復する方法を提供し、ここで、前記癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、且つ前記細胞は、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を含み、この方法は、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれか及びEGFRアンタゴニストと細胞を接触させるステップを含む。
【0174】
一態様では、本発明は、癌細胞の成長又は増殖を低減する方法を提供し、ここで、前記癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、且つ前記細胞は、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を含み、この方法は、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれか及びEGFRアンタゴニストと細胞を接触させるステップを含む。
【0175】
一態様では、本発明は、癌細胞のアポトーシスを増加する方法を提供し、ここで、前記癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、且つ前記細胞は、Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を含み、この方法は、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれか及びEGFRアンタゴニストと細胞を接触させるステップを含む。
【0176】
一態様では、本発明は、EGFRアンタゴニストに対する癌細胞の耐性を低減する方法を提供し、ここで、前記癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、且つ前記細胞は、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を含み、この方法は、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれか及びEGFRアンタゴニストと細胞を接触させるステップを含む。
【0177】
一態様では、本発明は、癌細胞における獲得EGFRアンタゴニスト耐性を治療する方法を提供し、ここで、前記細胞は、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を含み、この方法は、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれか及びEGFRアンタゴニストと細胞を接触させるステップを含む。
【0178】
一部の実施形態では、癌細胞は、いずれかのEGFR駆動癌である。一部の実施形態では、癌細胞は、EGFR活性化突然変異を含む。一部の実施形態では、癌細胞は、EGFR遺伝子増幅を含む。一部の実施形態では、EGFR遺伝子増幅は、少なくとも2倍である。一部の実施形態では、Axl増幅は、少なくとも2倍である。一部の実施形態では、癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性の増大に関連するEGFR遺伝子突然変異を含む。一部の実施形態では、EGFRアンタゴニストに対する耐性の増大に関連するEGFR遺伝子突然変異は、EGFRのT790M突然変異である。
【0179】
一部の実施形態では、EGFRアンタゴニストは、小分子治療薬、核酸治療薬、又はタンパク質治療薬である。一部の実施形態では、EGFRアンタゴニストは、抗体、アンチセンス分子、又は小分子キナーゼ阻害剤である。一部の実施形態では、EGFRアンタゴニストは、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、パンチヌムマブからなる群から選択されるEGFRキナーゼ阻害剤である。一部の実施形態では、EGFRアンタゴニストは、セツキシマブ、パニツムマブからなる群から選択される抗EGFR抗体である。一部の実施形態では、核酸治療薬は、siRNA分子である。
【0180】
一態様では、本発明は、EGFRアンタゴニスト及び本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかによる治療の候補として被験者を識別する方法を提供し、ここで、前記被験者は、EGFRアンタゴニストによる治療を受けたことがあり、前記EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得した癌に罹患しており、この方法は、前記被験者からの癌細胞においてAxl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅を検出するステップを含む。
【0181】
一態様では、本発明は、EGFRアンタゴニストによる治療を受けており、且つ前記EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得するリスクがある被験者を識別する方法を提供し、この方法は、前記被験者からの癌細胞においてAxl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅の存在を検出するステップを含み、ここで、前記Axl発現、Axl活性化突然変異又はAxl遺伝子増幅の存在が、前記耐性を獲得するリスクを示すものである。
【0182】
一態様では、本発明は、EGFRアンタゴニストによる治療に対して耐性の癌に罹患した患者を治療する方法を提供し、この方法は、EGFRアンタゴニスト及び本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかを被験者に投与するステップを含む。
【0183】
一態様では、本発明は、EGFR活性化突然変異又はEGFR遺伝子増幅に関連する癌に罹患した被験者を治療する方法を提供し、ここで、被験者は、EGFRアンタゴニストによる治療に対する耐性を形成しており、この方法は、被験者が、Axl発現、例えば、高いAxlレベル及び/又は活性を有するか否かを決定するステップ、並びにAxl発現、例えば、高いAxl活性を有する被験者に、EGFRアンタゴニスト及び本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかを投与するステップを含む。
【0184】
一態様では、本発明は、EGFR活性化突然変異又はEGFR遺伝子増幅に関連する癌に罹患した患者を治療する方法を提供し、この方法は、(i)EGFRアンタゴニストによる治療を受けている被験者をモニタリングして、被験者が、Axl発現、例えば、高いAxlレベル及び/又はAxl活性を起こしているか否かを決定するステップ、並びに(ii)被験者が、Axl発現、例えば、高いAxlレベル及び/又は活性を起こしている場合、EGFRアンタゴニストに加えて、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかを含有させるように、被験者の治療計画を変更するステップを含む。
【0185】
一態様では、本発明は、EGFR活性化突然変異又はEGFR遺伝子増幅に関連する癌に罹患した患者を治療する方法を提供し、この方法は、(i)EGFRアンタゴニストで治療している被験者をモニタリングして、被験者が、阻害剤に対する耐性を形成しているか否かを決定するステップ、(ii)被験者を試験して、被験者が、Axl発現、例えば、高いAxlレベル及び/又は活性を有するか否かを決定するステップ、並びに(iii)被験者が、高いAxlレベル及び/又は活性を有する場合、EGFRアンタゴニストに加えて、本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかを含有するように、被験者の治療計画を変更するステップを含む。
【0186】
別の態様では、本発明は、(i)EGFRアンタゴニストに対する癌細胞の感受性を回復し、(ii)EGFRアンタゴニストに対する癌細胞の耐性を低減し、及び/又は(iii)EGFRアンタゴニスト及び本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかと細胞を接触させることにより、癌細胞における獲得EGFRアンタゴニスト耐性を治療する方法を提供する。
【0187】
例示的実施形態では、癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、例えば、Axl遺伝子における活性化突然変異、Axl遺伝子増幅、又はGas6媒介性Axl活性化に関連する、高レベルのAxl活性及び/又は発現を含む。本明細書に開示するこの方法は、癌細胞の感受性を回復し、耐性を低減し、且つ/又は獲得耐性を治療するために使用することができる。
【0188】
別の態様では、本発明は、EGFRアンタゴニスト及び本明細書に記載する抗Axl抗体のいずれかと細胞を接触させることにより、癌細胞の成長及び/若しくは増殖を低減するか、又は癌細胞のアポトーシスを増大する方法を提供する。例示的実施形態では、癌細胞は、EGFRアンタゴニストに対する耐性を獲得しており、例えば、Axl遺伝子における活性化突然変異、Axl遺伝子増幅、又はGas6媒介性Axl活性化に関連する、高いAxl活性及び/又は発現を含む。
【0189】
医薬組成物
本発明の抗体は、通常、医薬組成物の形態で投与され、この組成物は、抗体に加えて、少なくとも1つの成分を含み得る。
【0190】
従って、本発明の医薬組成物、及び本発明に従う使用のための医薬組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、バッファー、安定剤又は当業者には周知のその他の材料を含んでもよい。こうした材料は、非毒性でなければならず、且つ活性成分の効果を妨害すべきではない。担体又はその他の材料の正確な性質は、投与経路に左右され、投与経路は、経口、又は注射、例えば、静脈内注射によるものであってよい。医薬組成物は、ヒト及び獣医学におけるヒト又は動物での使用を目的とするものであってよい。
【0191】
本明細書に記載する医薬組成物の多様な形態に好適な賦形剤の例は、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”,2nd Edition,(1994),Edited by A Wade and PJ Wellerに見出すことができる。
【0192】
治療用途に許容される担体又は希釈剤は、製薬の分野でよく知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。好適な担体の例として、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール、水及び緩衝食塩水が挙げられる。
【0193】
製薬担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準的薬務に関して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はそれ以外に、任意の好適な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤、バッファー、香味料、界面活性剤、増粘剤、防腐剤(抗酸化剤を含む)など、並びに製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にする目的で含有される物質を含んでもよい。
【0194】
好適な結合剤の例として、デンプン、ゼラチン、天然の糖、例えば、グルコース、無水ラクトース、易流動性ラクトース、βラクトース、トウモロコシ甘味料、天然及び合成ゴム、例えば、アカシア、トラガカンス又はアルギニン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0195】
好適な潤滑剤の例として、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤、安定剤、染料、さらには香味料を医薬組成物中に添加してもよい。防腐剤の例として、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。また、抗酸化剤及び懸濁剤を使用してもよい。
【0196】
医薬製剤は、経口、局所(皮膚、口腔及び舌下を含む)、直腸又は非経口(皮下、皮内、筋内及び静脈内を含む)、鼻内及び肺投与(例えば、吸入による)に好適なものが挙げられる。製剤は、適切であれば、個別の用量単位で表示して、薬学の分野でよく知られている方法のいずれかによって調製するのが好都合である。全ての方法は、活性化合物を、液体担体若しくは微粉砕された固体担体、又はその両方と結合させた後、必要であれば、生成物を所望の製剤に造形するステップを含む。担体が固体である経口投与に好適な医薬製剤は、各々予定量の活性剤を含有するボーラス、カプセル又は錠剤などの単位用量製剤として提供されるのが最も好ましい。錠剤は、任意選択で1種又は複数種の補助成分と一緒に、圧縮又は成形により製造することができる。圧縮した錠剤は、任意選択で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑物質、界面活性剤又は分散剤と混合した粉末又は顆粒など、易流動形態の活性剤を好適な機械で圧縮することにより、調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤と一緒に活性剤を成形することにより、製造することができる。錠剤は、任意選択でコーティングしてもよく、コーティングしない場合、任意選択で目盛りを付けてもよい。カプセルは、活性剤を単独で、又は1種又は複数種の補助成分と混合して、カプセルシェル中に充填した後、これらを通常の方法で封入することにより、調製することができる。カシェは、カプセルと類似しており、活性剤を任意の補助成分と一緒にライスペーパー包膜中に封入する。活性剤は、分散性の顆粒として製剤化してもよく、これは、例えば、投与前に水に懸濁させるか、又は食品に振り掛けることができる。顆粒は、例えば、サシェにパッケージングしてもよい。担体が液体の場合、経口投与に好適な製剤は、水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油形液体乳剤として提供してもよい。
【0197】
経口投与のための製剤としては、制御放出剤形、例えば、錠剤があり、その際、活性剤は、適切な放出制御マトリックス中に製剤化されるか、又は好適な放出制御フィルムでコーティングされる。こうした製剤は、とりわけ予防用途の場合に好都合であろう。
【0198】
担体が固体である直腸投与に好適な医薬製剤は、単位用量座薬として提供するのが最も好ましい。好適な担体として、カカオ脂及び当技術分野で一般に使用されているその他の材料が挙げられる。座薬は、活性剤を、軟化又は溶融担体と混合した後、鋳型中で冷却及び成形することにより好都合に形成することができる。
【0199】
非経口投与に好適な医薬製剤には、水性若しくは油性ビヒクル中の活性剤の滅菌溶液又は懸濁液がある。
【0200】
注射製剤は、ボーラス注射又は持続注入のために改変してもよい。こうした調製物は、使用のために必要となるまで、製剤の導入後に密封された単位用量又は複数用量容器内に提供するのが好都合である。或いは、活性剤は、使用の前に、滅菌の発熱性物質除去蒸留水などの好適なビヒクルと一緒に構成される粉末形態であってもよい。
【0201】
活性化合物はまた、持続性デポー剤として製剤化してもよく、これは、筋内注射、又は例えば皮下若しくは筋内移植により投与することができる。デポー剤は、例えば、好適なポリマー若しくは疎水性材料、又はイオン交換樹脂を含んでもよい。こうした持続性製剤は、とりわけ予防用途に好都合である。
【0202】
口腔を介した肺への投与に好適な製剤が提供され、その場合、活性化合物を含有し、望ましくは直径が0.5〜7ミクロンの範囲である粒子をレシピエントの気管支樹に送達する。1つの可能性として、こうした製剤は、微粉砕された粉末の形態であり、これは、好適には、例えば、吸入装置での使用のためのゼラチン製の透過性カプセル内、或いは活性剤、好適な液体若しくは気体噴射剤、並びに任意選択で界面活性剤及び/若しくは固体希釈剤などの他の成分を含む自己噴射製剤としてのいずれかで提供されるのが好都合である。好適な液体噴射剤としては、プロパン及びクロロフルオロ炭素があり、好適な気体噴射剤としては、二酸化炭素がある。また、活性剤が溶液若しくは懸濁液の液滴の形態で分散されている自己噴射製剤を使用してもよい。
【0203】
こうした自己噴射製剤は、当技術分野で公知のものに類似しており、確立された手順で調製することができる。これらは、所望の噴霧特性を有する手動操作又は自動作動弁のいずれかを備えた容器内に提供され;弁は、毎回の操作時に、例えば、25〜100マイクロリットルの一定量を送達する計量タイプであるのが有利である。
【0204】
別の可能性として、活性剤は、噴霧器又はネブライザーでの使用のための溶液若しくは懸濁液の形態であってもよく、これにより、加速した空気流又は超音波攪拌を使用して、吸入のための微細な液滴を生成する。
【0205】
鼻内投与に好適な製剤は、肺投与のために前述したものと概ね類似した調製物を含む。調合する場合、こうした製剤は、鼻腔内に保持することができる10〜200ミクロンの範囲の粒径を有し;これは、必要に応じて、好適な粒径の粉末の使用又は適切な弁の選択により達成することができる。他の好適な製剤としては、鼻の近くに保持した容器から鼻腔を介した高速吸入による投与のための20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末、及び水性若しくは油性溶液又は懸濁液中に0.2〜5%w/vの活性剤を含む点鼻剤がある。
【0206】
薬学的に許容される担体は、当業者には周知であり、限定はしないが、0.1M、好ましくは0.05Mリン酸緩衝剤又は0.8%食塩水がある。さらに、こうした薬学的に許容される担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、及び乳剤であってもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水性溶液、乳剤又は懸濁液が挙げられ、食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー又は不揮発油が挙げられる。また、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどの防腐剤及びその他の添加剤が存在してもよい。
【0207】
局所製剤に好適な製剤は、例えば、ゲル、クリーム又は軟膏として提供してもよい。こうした調製物は、例えば、創傷若しくは潰瘍に対して、創傷若しくは潰瘍の表面に直接広げるか、又は包帯、ガーゼ、メッシュなどの好適な支持体に含有させて、これを治療しようとする部位に適用してもよい。
【0208】
さらに、治療しようとする部位、例えば、創傷若しくは潰瘍に直接噴霧するか、又は散布することができる液体又は粉末製剤も提供され得る。或いは、包帯、ガーゼ、メッシュなどの支持体に、製剤を噴霧又は散布した後、これを治療しようとする部位に適用することもできる。
【0209】
本発明のさらに別の態様によれば、前述した医薬組成物又は動物用組成物の調製方法が提供され、この方法は、例えば、混合により、活性化合物を担体と結合させるステップを含む。一般に、製剤は、液体担体若しくは微粉砕された固体担体、又はその両方と活性剤を均一且つ密接に結合させた後、必要であれば、生成物を造形することによって調製される。本発明は、薬学的又は獣医学的に許容される担体若しくはビヒクルと薬剤を結合させるステップを含む、医薬組成物の調製方法まで拡大される。
【0210】
投与
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、鼻内、気管支内、局所(口腔及び舌下)、膣又は非経口(皮下、筋内、静脈内、動脈内及び皮内)、腹腔内若しくは髄腔内投与のために改変してもよい。製剤は、静脈内又は皮下投与される製剤であるのが好ましい。
【0211】
製剤は、単位剤形、すなわち、単位用量、又は単位用量の複数若しくは部分単位を含有する個別の部分の形態で、好都合に提供することができる。例として、製剤は、錠剤及び徐放性カプセルの形態であってよく、薬学の分野で公知の任意の方法により調製することができる。
【0212】
本発明における経口投与用の製剤は、各々が予定量の活性剤を含有するカプセル、ゲル剤(gellules)、ドロップ剤、カシェ、ピル又は錠剤などの個別単位として;粉末若しくは顆粒として;水性液体又は非水性液体中の活性剤の溶液、乳剤若しくは懸濁液として;又は水中油形乳剤若しくは油中水形乳剤として;或いはボーラスなどとして提供することができる。これらの組成物は、1用量当たり1〜250mgの活性成分を含有するのが好ましく、10〜100mgの活性成分を含有するのがより好ましい。
【0213】
経口投与(例えば、錠剤及びカプセル)用の組成物の場合には、「許容される担体」という用語は、一般的賦形剤(例えば、結合剤)などのビヒクル、例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカンス、ポリビニルピロリドン(Povidone)、メチルセルロース、エチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、スクロース及びデンプン;充填剤及び担体、例えば、トウモロコシデンプン、ゼラチン、ラクトース、スクロース、微晶質セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウム及びアルギニン酸;並びに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム及びその他の金属ステアリン酸塩、ステアリン酸グリセロールステアリン酸、シリコーンオイル、タルクワックス、オイル類及びコロイドシリカを包含する。ペパーミント、ウィンターグリーン油、チェリー風味などの香味料を用いることもできる。剤形を容易に識別できるようにするために、着色料を添加するのが望ましい場合もある。また、当技術分野で公知の方法により、錠剤をコーティングしてもよい。
【0214】
任意選択で1つ又は複数の補助成分と一緒に、圧縮又は成形することにより錠剤を製造することができる。圧縮錠剤は、任意選択で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤若しくは分散剤と混合した粉末又は顆粒などの易流動形態の活性剤を、好適な機械で圧縮することにより製造することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末状の化合物の混合物を、好適な機械で成形することにより製造することができる。錠剤はまた、任意選択でコーティングするか、又は目盛りを付けてもよく、活性剤の緩徐な又は制御された放出を可能にするように製剤化してもよい。
【0215】
経口投与に好適な他の製剤としては、香味基材、通常、スクロース及びアカシア若しくはトラガカンス中に活性剤を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性基材中に活性剤を含むトローチ;並びに好適な液体担体中に活性剤を含む洗口液が挙げられる。
【0216】
他の投与形態は、静脈内、動脈内、髄腔内、皮下、皮内、腹腔内又は筋内に注射することができ、滅菌若しくは滅菌可能な溶液から調製される溶液又は乳剤を含む。注射可能な形態は、典型的に、1用量当たり10〜1000mgの活性成分を含有し、10〜250mgの活性成分を含有するのが好ましい。
【0217】
本発明の医薬組成物は、座薬、ペッサリー、懸濁液、乳剤、ローション、軟膏、クリーム、ゲル、スプレー、溶液又は粉剤の形態であってもよい。
【0218】
経皮投与の別の手段は、皮膚パッチの使用によるものである。例えば、活性成分をポリエチレングリコール又は液体パラフィンの水性乳剤からなるクリームに含有させることができる。また、必要に応じて上記安定剤及び防腐剤と一緒に、白色ワックス又は白色ワセリン基材からなる軟膏に1〜10重量%の濃度で活性成分を含有させることもできる。
【0219】
これに代わる製剤化戦略は、経口又は座薬経路に好適な調製物を提供し得る。投与経路は、効果を最適化する、又は副作用を最小限にするために、治療の物理化学的特徴により、疾患の具体的考察事項によって決定することができる。
【0220】
さらに別の投与方法は、留置デバイスの事前のコーティング、或いはそうでなければ、デバイスへの含有を使用するものであり、その際、抗体の最適量は、適切な実験によって決定される。
【0221】
本発明の一部の好ましい実施形態における抗体分子は、Fab又はscFvなどのモノマー断片である。こうした抗体断片は、比較的短い半減期の特徴を有してもよい。
【0222】
投与量
当業者は、過度の実験なしに、被験者に投与する、本発明の組成物のうちの1つの適切な用量を容易に決定することができる。典型的には、医師は、個別の患者について最も好適となる実際の投与量を決定することができ、これは、使用される特定の薬剤の活性、薬剤の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与方法及び時間、排出速度、薬物併用、特定の状態の重症度、並びに受療中の個別の療法を含む様々な要因に応じて変動し得る。
【0223】
本発明に従って、記載の組成物を個々の患者に投与することができる。投与は、「治療有効量」であるのが好ましく、これは、患者に対する利益を示すうえで十分なものである。こうした利益は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善であってよい。投与される実際の量、及び投与の頻度及び時間設定は、治療対象の性質及び重症度に応じて変動し得る。治療の処方、例えば、投与量の決定は、一般開業医及びその他の医師の責任の範囲内である。抗体の適切な用量は、当技術分野において公知であり;Ledermann J.A.et al.(1991)Int.J.Cancer 47:659−664;Bagshawe,K.D.et al.(1991)Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4:915−922を参照されたい。
【0224】
正確な用量は、抗体が診断若しくは治療用のいずれであるか、治療しようとする部位の大きさ及び位置、抗体の正確な性質(例えば、全抗体、抗体断片若しくはダイアボディ)、並びに抗体に結合させたあらゆる検出可能な標識又はその他の分子の性質を含む、いくつかの要因に応じて変動し得る。典型的な抗体用量を静脈内へのボーラスとして投与してもよい。その他の投与方法としては、同様の合計累積用量を達成する、数時間にわたる静脈内注入がある。これは、成人患者の単一の治療のための用量であり、小児及び乳幼児の場合には比例的に調節することができ、また、他の抗体フォーマットについても分子量に合わせて調節してよい。治療は、医師の判断で、毎日、週2回、毎週又は毎月の間隔で反復することができる。
【0225】
本明細書に開示する投与量は、平均的な症例の例示的なものである。勿論、これよりより高い又は低い投与量範囲が望ましい個別の事例もあり得るが、それも本発明の範囲に含まれる。
【0226】
本発明に従い、Axlを阻害するために、有効量の薬剤を投与することができる。勿論、この投与量は、薬剤の投与の種類に応じてさらに変更され得る。例えば、急性病患者治療のための「有効量」を達成するためには、非経口投与が好ましい。水若しくは通常の食塩水中5%デキストロース中の化合物、又は好適な賦形剤を含む類似の製剤の静脈内注入が最も有効であるが、筋内ボーラス注射も有用である。典型的には、非経口用量は、キナーゼを阻害するか、又は標的受容体を飽和させるのに有効な濃度で血漿中に薬物の濃度を維持するように、約0.01〜約100mg/kg;好ましくは0.1〜20mg/kgであろう。薬剤は、約0.4〜約400mg/kg/日の1日総用量を達成するようなレベルで、毎日1〜4回投与することができる。治療的に有効である活性剤の正確な量、及びこうした薬剤が最適に投与される経路は、薬剤の血中レベルを、治療効果の呈示に必要な濃度と比較することによって、当業者により容易に決定される。
【0227】
本発明の薬剤は、薬物の濃度が、本明細書に開示する治療適応の1つ又は複数を達成するのに十分であるように、患者に経口投与してもよい。典型的には、薬剤を含有する医薬組成物は、患者の状態に合わせて、約0.1〜約50mg/kgの経口用量で投与される。経口用量は、約0.5〜約20mg/kgであるのが好ましい。
【0228】
本発明の薬剤は、所与の薬理学的効果を呈するのに必要な薬剤の濃度を決定する複数の生物学的アッセイの1つで試験することもできる。
【0229】
併用療法
組成物は、単独で、又は治療しようとする状態に応じて同時に若しくは順次、他の療法と組み合わせて投与してもよい。例えば、本発明の抗体若しくはそのコンジュゲートを抗癌単剤療法として、又は後述する他の癌療法との併用療法で使用してもよい。他の療法は、非ステロイド抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン若しくはケトプロフェン)又はモルヒネなどのオピエートなどの鎮痛薬、或いは制吐薬の好適量の投与を含み得る。
【0230】
好ましい態様では、本発明の抗体(又はそのコンジュゲート)を、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)などの免疫チェックポイント調節剤(ICM)と組み合わせて投与する。典型的には、ICMは、標的受容体に結合する、アプタマー又は抗体などの薬剤である。
【0231】
本発明の抗体(又はそのコンジュゲート)と組み合わせて使用されるICMは、当技術分野で知られているいずれの好適なICMであってもよい。特に、好適な免疫チェックポイント調節剤として、以下のものが挙げられる:
イピリムマブ(Ipilimumab)及びトレメリムマブ(Tremelimumab)などのCTLA−4ターゲティング剤。
ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ミボルマブ(Mivolumab)及びAMP−514/MEDI0680などのPD−1ターゲティング剤。
MPDL3280A、MEDI4736、MSB0010718C及びBMS−936559などのBD−L1ターゲティング剤。
ウレルマブ(Urelumab)及びPF−05082566などの4−1BBターゲティング剤。
MEDI6469、MEDI6383(rOX40L)及びMOXR0916などのOX−40ターゲティング剤。
TRX518などのGITRターゲティング剤。
CDX−1127などのCD27ターゲティング剤。
CP−870、893などのCD40ターゲティング剤。
BMS−986016などのLAG3ターゲティング剤。
【0232】
免疫系における阻害経路である免疫チェックポイントは、腫瘍により、免疫耐性を誘導するように利用される恐れがある。T細胞刺激及び阻害受容体並びに樹状細胞刺激受容体などの免疫チェックポイントを阻止又は調節し、これにより、癌の免疫耐性を低減又は逆転させる薬剤の使用が、癌研究において重要な手段である。
【0233】
ICMの使用により調節され得るT細胞刺激性受容体としては、CD28、ICOS、4−1BB、OX40、GITR、CD27、TWEAKR、HVEM及びTIM−1が挙げられる。ICMの使用により調節され得るT細胞阻害性受容体としては、PD−L1、CTLA−4、PD−1、BTLA、TIM−3、VISTA、LAG−3及びTIGITが挙げられる。ICMの使用により調節され得る樹状細胞刺激性受容体としては、CD40及び4−1BBが挙げられる。
【0234】
ICMの組み合わせを、本発明の抗体(又はそのコンジュゲート)と一緒に使用する場合、ICMの全てが阻害性受容体をターゲティングするか、使用するICMの全てが刺激性受容体をターゲティングするか、又は阻害性受容体及び刺激性受容体ターゲティングICMの組み合わせを用いるかのいずれでもよい。
【0235】
このように、癌の治療方法に用いられる本発明の抗体(又はそのコンジュゲート)が提供され、この治療は、1種又は複数種のICMを投与するステップをさらに含む。同様に、癌治療のための薬剤の製造における本発明の抗体(又はそのコンジュゲート)の使用が提供され、この治療は、1種又は複数種の免疫チェックポイント調節剤を投与するステップをさらに含む。
【0236】
癌を治療する方法に用いられる本発明の抗体(若しくはそのコンジュゲート)、又は癌の治療のための薬剤の製造における上記抗体(若しくはそのコンジュゲート)の使用も提供され、この治療は、以下:イピリムマブ(Ipilimumab)、トレメリムマブ(Tremelimumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ミボルマブ(Mivolumab)、AMP−514/MEDI0680、MPDL3280A、MEDI4736、MSB0010718C、BMS−936559、ウレルマブ(Urelumab)、PF−05082566、MEDI6469、MEDI6383(rOX40L)、MOXR0916、TRX518、CDX−1127、CP−870、893及びBMS−986016から選択される1種又は複数種の免疫チェックポイント調節剤をさらに含む。
【0237】
本発明の抗体(又はそのコンジュゲート)は、1種又は複数種のICMの前、1種又は複数種のICMと同時に、又は1種又は複数種のICMの後に投与することができる。
【0238】
癌の治療の方法に用いられる本発明の抗体(若しくはそのコンジュゲート)、又は癌の治療のための薬剤の製造における上記抗体(若しくはそのコンジュゲート)の使用も提供され、この治療は、1種又は複数種のICMをさらに含み、癌は、肺癌、黒色腫、乳癌、卵巣癌若しくは癌腫から選択される。
【0239】
併用療法での使用に好適な薬剤
これらの薬剤として、以下のものが挙げられる:アルキル化剤、例えば、ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;
クロラムブシル、シクロホスファミド、エストラムスチン、イソスファミド、メクロレタミン、メルファラン、及びウラムスチンなどのナイトロジェンマスタード、チオテパなどのエチレンイミン誘導体;
カルムスチン、ロムスチン、及びストレプトゾシンなどのニトロソウレア、ダカルバジン、プロカルバジン、及びテモゾールアミド(temozolamide)などのトリアゼン;
シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、及びピコプラチン、オナプラチン(onnaplatin)、テトラプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン、クロロ(ジエチレンジアミノ)−塩化白金(II)、ジクロロ(エチレンジアミノ)−白金(II)、ジアミノ(2−エチルマロナト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)マロナト白金(II)、(4−カルボキシフタロ)−(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−(イソシトラト)白金(II)、及び(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−シス−(ピルバト)白金(II)などの白金化合物;
メトトレキサート、ペルメトレキセド、ラルチトレキセド、及びトリメトキセドなどの抗葉酸化合物を含む抗代謝物;
アザシチジン、カペシタビン、シタラビン、エダトレキセート、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、及びトロキサシタビンなどのピリミジン類似体;
クラドリビン、クロロデオキシアデノシン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、及びチオグアニンなどのプリン類似体;
ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ポルフィロマイシンなどの抗腫瘍抗生物質、並びにダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、及びバルルビシンなどのアントラサイクリンを含む天然産物;
ビンカアルカロイド、ビンブラスチン、ビンベシル、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンなどの有糸分裂阻害剤;
L−アスパラギナーゼ及びPEG−L−アスパラギナーゼなどの酵素;
タキサンパクリタキセル及びドセタキセルなどの微小管ポリマー安定剤;
カンプトテシンイリノテカン及びテポテカンなどのトポイソメラーゼI阻害剤;ポドフィロトキシン、アムサクリン、エトポシド、テニポシド、ロソキサントロン及びアクチノマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤;
フルオキシメステロン及びテストラクトンなどのアンドロゲンを含むホルモン及びホルモンアンタゴニスト、
ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、及びニルタミドなどの抗アンドロゲン;
デキサメタゾン及びプレドニゾンなどのコルチコステロイド;
アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、ホルメスタン、及びレトロゾールなどのアロマターゼ阻害剤;
ジエチルスチルベストロールなどのエストロゲン;
フルベストラント、ラロキシフェン、タモキシフェン、及びトレミフィンなどの抗エストロゲン;
アバレリクス、ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、ヒストレリン、デソレリン、酢酸ナファレリン及びトリプトレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト及びアンタゴニスト;
メドロキシプロゲステロン酢酸エステル及び酢酸メゲストロールなどプロゲスチン、並びにレボチロキシン及びリオチロニンなどの甲状腺ホルモン;
ペリホシン、エンザスタウリン塩酸塩、及びトリシルビンを含むPKB経路阻害剤;
セマフォア(semaphore)及びSF1126などのPI3K阻害剤;
ラパマイシン及び類似体などのmTOR阻害剤;
セリシクリブ、アルボシジブ、及び7−ヒドロキシスタウロスポリンなどのCDK阻害剤;
セレコキシブなどのCOX−2阻害剤;
トリコスタチンA、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、及びクラミドシンなどのHDAC阻害剤;
テモゾロミドなどのDNAメチラーゼ阻害剤;並びに
アルトレタミン、三酸化ヒ素、サリドマイド、レナリドミド、硝酸ガリウム、レバミゾール、ミトタン、ヒドロキシ尿素、オクトレオチド、プロカルバジン、スラミン、メトキサレン及びナトリウムポルフィマーなどの光作用性化合物、並びにボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤を含むその他の多種薬剤。
【0240】
以下を含む分子標的療法薬:
機能性治療薬、例えば、遺伝子治療薬;
アンチセンス療法薬;
エルロチニブ塩酸塩、ゲフィチニブ、イマチニブメシレート、及びセマキサニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤;
ソラフェニブなどのRAF阻害剤;
レチノイド及びレキシノイドなどの遺伝子発現調節剤、例えば、アダパレン、ベキサロテン、トランス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、及びN−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド;
アレムツマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、イブリツモマブチウキセタン、リツキシマブ、及びトラスツズマブなどのモノクローナル抗体を含む表現型指定療法薬;
エムタンシンなどの免疫毒素、I−トシツモバブなどの放射性免疫複合体、本明細書に記載する分子標的のいずれか1つをターゲティングする結合剤、例えば、アプタマー、
並びに癌ワクチン。
【0241】
以下を含む生物学的療法薬:
インターフェロン−[α]2a及びインターフェロン−[α]2bなどのインターフェロン、並びにアルデスロイキン、デニロイキンジフチトクス、及びオプレルベキンなどのインターロイキン。1−(6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2−c]ピリダジン−3−イル)−N3−((7−(S)−ピロリジン−1−イル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾ[7]アニュレン−2−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジアミン(BGB324/R428)、スイス特許第5451098号明細書(Roche)、並びにPCT/米国特許出願第07/089177号明細書、米国特許出願公開第2010/021275号明細書、及びPCT/欧州特許第2011/004451号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているAxl阻害剤。
【0242】
癌細胞に対して作用することを目的とするこれらの薬剤に加えて、抗癌療法薬は、保護及び補助剤の使用を含み、このようなものとして以下のものがある:
アミホスチン、及びデキスラゾキサンなどの細胞保護剤;
パミドロン酸塩及びゾレドロン酸などのホスホン酸塩;並びに
エポエチン、ダルベオペチン、フィルグラスチム、PEG−フィルグラスチム、及びサルグラモスチムなどの刺激因子。
【0243】
多くの併用化学療法が当技術分野で公知であり、例えば、単独で、又はカルボプラチンなどとさらに組み合わせた、カルボプラチン/パクリタキセル、カペシタビン/ドセタキセル、フルオロウラシル/レバミソール、フルオロウラシル/ロイコボリン、メトトレキサート/ロイコボリン、及びトラスツズマブ/パクリタキセルがある。
【0244】
本明細書全体を通して、本明細書に記載する方法をin vitro又はex vivoで実施する。
【0245】
本発明は、本明細書に記載の抗体とAxlの結合を起こすか、又はそれを可能にする方法を提供する。記載するように、こうした結合は、例えば、抗体、若しくは抗体をコードする核酸の投与後に、in vivoで起こってもよく、又は例えば、ELISA、ウェスタンブロット分析、免疫細胞化学、免疫組織化学、免疫沈降若しくはアフィニティークロマトグラフィーにより、in vitroで実施してもよい。
【0246】
Axl受容体に結合した抗体の量を測定することができる。定量は、試験サンプル中の抗原の量に関連してもよく、これは診断を目的とするものでもよい。
【0247】
サンプル中の抗体の反応性は、任意の適切な手段により測定することができる。放射性免疫アッセイ(RIA)は、1つの可能性である。放射性標識抗原を非標識抗原(試験サンプル)と混合して、抗体との結合を可能にする。結合抗原を非結合抗原から物理的に分離して、抗体に結合した放射性抗原の量を測定する。試験サンプル中に多くの抗原が存在するほど、放射性抗原が抗体に結合する量は少なくなる。また、リポータ分子に連結した抗原又は類似物を用いて、非反応性抗原と一緒に競合結合アッセイを使用してもよい。リポータ分子は、スペクトル分離吸収又は発光特性を有する蛍光色素、蛍光体又はレーザ色素であってもよい。好適な蛍光色素として、フルオロセイン、ローダミン、フィコエリスリン及びテキサスレッド(Texas Red)が挙げられる。好適な色素原色素として、ジアミノベンジジンが挙げられる。
【0248】
その他のリポータとして、着色された、磁気若しくは常磁性のラテックスビーズなどの高分子コロイド粒子若しくは粒子状材料、並びに検出可能なシグナルの視覚的観察、電子的検出又は記録を直接若しくは間接的に可能にする生物学的若しくは化学的に活性の薬剤が挙げられる。これらの分子は、例えば、発色若しくは変色を起こすか、又は電気的性質に変化を引き起こす反応を触媒する酵素であってもよい。これらは、エネルギー状態の間の電子遷移によって、特有のスペクトル吸収又は発光が起こるように、分子的に励起性であってもよい。これらは、バイオセンサーと一緒に用いられる化学的実体を含んでもよい。ビオチン/アビジン又はビオチン/ストレプトアビジン及びアルカリホスファターゼ検出系を使用してもよい。
【0249】
さらに別のリポータとして、DNAタグが挙げられる。これらのタグは、例えば、qPCRによって、容易に定量することができる。
【0250】
サンプル中の関連抗体結合の定量可能な絶対又は相対データを取得するために、個別の抗体−リポータコンジュゲートにより生成されるシグナルを用いてもよい。
【0251】
本発明はまた、競合アッセイで抗原レベルを測定するための前述の抗体、すなわち、競合アッセイにおいて本発明により提供される抗体を使用することによって、サンプル中の抗原のレベルを測定する方法も提供する。これは、非結合抗原からの結合抗原の物理的分離が必要ない場合であってもよい。抗体にリポータ分子を連結して、結合に物理的又は光学的変化が起こるようにすることは、1つの可能性である。リポータ分子は、検出可能で、好ましくは測定可能なシグナルを、直接又は間接的に生成し得る。リポータ分子の結合は、直接若しくは間接的、例えば、ペプチド結合を介した共有結合、又は非共有結合であってよい。ペプチド結合を介した結合は、抗体及びリポータ分子をコードする遺伝子融合物の組換え発現の結果として起こり得る。
【0252】
本発明はまた、例えば、バイオセンサー系で本発明の抗体を使用することにより、抗原のレベルを直接測定することも可能にする。
【0253】
結合を測定する方法(mode)は、本発明の特徴ではなく、当業者は、その優先事項及び一般的知識に従って好適な方法を選択することができる。
【0254】
本発明はさらに、抗原に結合し、且つ実質的に本明細書に記載される通りのアミノ酸を有するCDRを含む抗体可変ドメイン(VH若しくはVLのいずれか又は両方)、或いは実質的に本明細書に記載される通りのアミノ酸配列を有する可変ドメインを含むいずれかの抗体と、Axlに対する結合について競合する抗体も包含する。抗体同士の競合は、例えば、他の非タグ付け結合メンバーの存在下で検出することができる1結合メンバーに、特定のリポータ分子をタグ付けして、同じエピトープ若しくはオーバーラップエピトープに結合する抗体の識別を可能にすることにより、in vitroで容易にアッセイすることができる。競合は、例えば、ELISA又はフローサイトメトリーを用いて決定することができる。或いは、競合抗体は、実施例5に記載するように、Biacore計器を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)技術により見出すことができる。
【0255】
競合の試験において、抗原のペプチド断片、特に、目的のエピトープを含むペプチドを使用してもよい。エピトープ配列を有し、且ついずれかの末端に1つ又は複数のアミノ酸が加わったペプチドを用いてもよい。こうしたペプチドは、指定の配列から「本質的に構成される」と言う場合もある。本発明の抗体は、抗原に対するその結合が、所与の配列を有する、又はそれを含むペプチドによって阻害される。これについての試験で、1つ又は複数のアミノ酸が加わったいずれかの配列を有するペプチドを用いてもよい。
【0256】
特定のペプチドに結合する抗体は、例えば、ペプチドのパンニング(panning)によりファージディスプレイライブラリーから単離することができる。
【0257】
本発明はさらに、本発明の抗体をコードする単離された核酸も提供する。核酸は、DNA及びRNAを含む。好ましい態様では、本発明は、前文に定義したように、本発明のCDR、VH若しくはVLドメインをコードする核酸を提供する。
【0258】
本発明はまた、前述した少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写若しくは発現カセットの形態の構築物も提供する。
【0259】
本発明はさらに、前述した1つ又は複数の構築物を含む組換え宿主細胞も提供する。記載するいずれかのCDR、VH若しくはVLドメイン、又は抗体をコードする核酸は、それ自体で本発明の態様を形成し、また、コードされた産物の生成方法も同様であり、この方法は、生成のためにコード核酸からの発現を含む。発現は、核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、達成するのが好都合である。発現による生成後、当技術分野で公知のいずれかの好適な技術を用いて、VH若しくはVLドメイン、又は抗体を単離及び/又は精製することができる。
【0260】
本発明の抗体、VH及び/又はVLドメイン、並びにコード核酸分子及びベクターは、例えばそれらの天然の環境から単離及び/又は精製され、実質的に純粋又は均質な形態で、或いは核酸の場合には、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の元の核酸若しくは遺伝子を含まないか、実質的に含まずに提供することができる。本発明の核酸は、DNA又はRNAを含んでもよく、完全又は部分的に合成であってもよい。本明細書に記載するヌクレオチド配列と言うとき、文脈から別の意味に解釈すべき場合を除いて、これは、指定の配列を有するDNA分子を包含し、TがUに置換されている指定の配列を有するRNA分子を包含する。
【0261】
多様な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローン化及び発現のための系はよく知られている。好適な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、酵母、バキュロウイルス、及び昆虫細胞系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現のために当技術分野で入手可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒーラ細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NS0及びSP2/0マウス骨髄腫細胞、YB2/0ラット骨髄腫細胞、ヒト細胞株HEK−293及びPER.C6並びにその他多種がある。一般的な好ましい細菌宿主は、大腸菌(E.coli)である。
【0262】
大腸菌(E.coli)などの原核細胞における抗体及び抗体断片の発現は、当技術分野で十分に確立されている。詳細については、例えば、Plueckthun,A.Bio/ Technology 9:545−551(1991)を参照されたい。培養中の真核細胞における発現も、抗体生成のための選択肢として当業者には利用可能であり、詳細については、例えば、Ref,M.E.(1993)Curr.Opinion Biotech.4:573−576;Trill J.J.et al.(1995)Curr.Opinion Biotech 6:553−560を参照されたい。
【0263】
プロモータ配列、ターミネータ配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカ遺伝子及び必要に応じた他の配列などの適切な調節配列を含有する好適なベクターを選択又は構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス、例えば、ファージ、又はファージミドであってもよい(Sambrook and Russell,2001,Molecular Cloning:a Laboratory Manual:3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、シーケンシング、細胞へのDNAの導入及び遺伝子発現、並びにタンパク質の分析が、Current Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons,1992に詳しく記載されている。
【0264】
従って、本発明の別の態様は、本明細書で開示される核酸を含有する宿主細胞を提供する。さらに別の態様は、宿主細胞にこうした核酸を導入するステップを含む方法を提供する。導入には、いずれの利用可能な技術を使用してもよい。真核細胞の場合、好適な技術として、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介性トランスフェクション、並びにレトロウイルス若しくはその他のウイルス、例えば、ワクシニア、又は昆虫細胞の場合には、バキュロウイルスを用いた形質導入が挙げられる。細菌細胞の場合には、好適な技術は、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、及びバクテリオファージを用いたトランスフェクションが挙げられる。
【0265】
導入の後に、例えば、遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することにより、核酸から発現を引き起こすか、又はそれを可能にすることができる。
【0266】
一実施形態では、本発明の核酸を宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込む。標準的技術に従って、ゲノムによる組換えを促進する配列の含有により、組み込みを促進することもできる。
【0267】
本発明は、前述のように抗体又はポリペプチドを発現するために、発現系において前述した構築物を用いることを含む方法も提供する。
【0268】
以下の実験を参照にしながら、本発明の態様及び実施形態を、例として説明する。
【0269】
本明細書のあらゆる箇所で引用される文献は全て、参照により組み込むものとする。
【0270】
発明の記述
以下のパラグラフに、いくつかの具体的に考慮される本発明の実施形態及び組み合わせを記載する。
【0271】
1.Axlに結合する抗体であって、
1H12VHドメイン(配列番号3)と、配列番号7のアミノ酸配列を有するVHCDR3、及び任意選択で配列番号6及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ又は複数のVHCDRを含むVHドメインとからなる群から選択される抗体VHドメイン;及び/又は
1H12VLドメイン(配列番号4)と、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ又は複数のVLCDRを含むVLドメインとからなる群から選択される抗体VLドメイン
を含む、抗体。
【0272】
2.配列番号5、配列番号6及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVHCDRを含む抗体VHドメインを含み、Axlに対する結合について、1H12VHドメイン(配列番号3)及び1H12VLドメイン(配列番号4)を含む抗体のAxl結合ドメインと競合する、パラグラフ1に記載の抗体。
【0273】
3.1H12VHドメイン(配列番号3)を含む、パラグラフ1又はパラグラフ2に記載の抗体。
【0274】
4.1H12VLドメイン(配列番号4)を含む、パラグラフ3に記載の抗体。
【0275】
5.パラグラフ1〜4のいずれか1つに記載の抗体の変異体であって、1つ若しくは複数のフレームワーク領域及び/又は1つ若しくは複数のCDRに1つ又は複数のアミノ酸配列改変を含む、変異体。
【0276】
6.1H12VHドメイン(配列番号3)及び1H12VLドメイン(配列番号4)により形成されるAxl抗原結合部位の親和性と等しいか、又はそれより良い親和性でAxlに結合する、パラグラフ1〜5のいずれか1つに記載の抗体であって、抗体の親和性及び抗原結合部位の親和性が同じ条件下で測定される、抗体。
【0277】
7.scFv抗体分子を含む、パラグラフ1〜6のいずれか1つに記載の抗体。
【0278】
8.抗体定常領域を含む、パラグラフ1〜6のいずれか1つに記載の抗体。
【0279】
9.全抗体を含む、パラグラフ8に記載の抗体。
【0280】
10.単一ドメイン抗体、Fv、scFv、dsFv、Fd、Fab、F(ab’)2、ミニボディ、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムscFv、TandAb、バイボディ、トリボディ、κ(λ)ボディ、BiTE、DVD−lg、SIP、SMIP、又はDARTなどの抗原結合抗体断片である、パラグラフ1〜6のいずれか1つに記載の抗体。
【0281】
11.抗原に結合する能力に加えて、別の機能特性をもたらす追加アミノ酸を含む、パラグラフ1〜10のいずれか1つに記載の抗体。
【0282】
12.5×10
−11M以下のK
DでAxlに結合する、パラグラフ1〜11のいずれか1つに記載の抗体。
【0283】
13.1.5×10
−11M以下のK
DでAxlに結合する、パラグラフ1〜11のいずれか1つに記載の抗体。
【0284】
14.2×10
−5s
−1以下のK
offでAxlに結合する、パラグラフ1〜13のいずれか1つに記載の抗体。
【0285】
15.3×10
−6s
−1以下のK
offでAxlに結合する、パラグラフ1〜14のいずれか1つに記載の抗体。
【0286】
16.AxlがヒトAxlである、パラグラフ1〜15のいずれか1つに記載の抗体。
【0287】
17.霊長類Axlに特異的に結合する、パラグラフ1〜16のいずれか1つに記載の抗体。
【0288】
18.パラグラフ1〜17のいずれか1つに記載の抗体であって、
(i)10
−3Mを超えるK
DでマウスAxlに結合し;
(ii)10
−3Mを超えるK
DでヒトMerに結合し;及び/又は
(iii)10
−3Mを超えるK
DでヒトTyro3に結合する、抗体。
【0289】
19.Axlアゴニストである、パラグラフ1〜18のいずれか1つに記載の抗体。
【0290】
20.Axlシグナル伝達が少なくとも10%高い、パラグラフ19に記載の抗体。
【0291】
21.キメラ抗体である、パラグラフ1〜20のいずれか1つに記載の抗体。
【0292】
22.ヒト化抗体である、パラグラフ1〜20のいずれか1つに記載の抗体。
【0293】
23.(i)1H12抗体と同じエピトープ、又は
(ii)1H12抗体により結合されるエピトープとオーバーラップするエピトープ
に結合する、パラグラフ1〜22のいずれか1つに記載の抗体。
【0294】
24.細胞表面に存在するAxlと結合した後に内在化される、パラグラフ1〜23のいずれか1つに記載の抗体。
【0295】
25.検出可能な標識、酵素、又は毒素に、任意選択でペプチジル結合又はリンカーを介して結合される、パラグラフ1〜24のいずれか1つに記載の抗体。
【0296】
26.毒素が、MMAE及びMMAFを含む群から選択される、パラグラフ25に記載の抗体。
【0297】
27.検出可能な標識がFITCである、パラグラフ25に記載の抗体。
【0298】
28.パラグラフ1〜24のいずれか1つに記載の抗体、又はパラグラフ1〜24のいずれか1つに記載の抗体VH若しくはVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0299】
29.パラグラフ28に記載の核酸で形質転換された宿主細胞。
【0300】
30.抗体又は抗体VH若しくはVLドメインを生成する方法であって、前記抗体又は抗体VH若しくはVLドメインの生成のための条件下で、パラグラフ29に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、方法。
【0301】
31.前記抗体又は抗体VH若しくはVL可変ドメインを単離するステップ及び/又は精製するステップをさらに含む、パラグラフ30に記載の方法。
【0302】
32.少なくとも1つの追加成分を含む組成物に、抗体又は抗体VH若しくはVL可変ドメインを製剤化するステップ(formulating)をさらに含む、パラグラフ30又はパラグラフ31に記載の方法。
【0303】
33.Axlに結合する抗体を取得する方法であって、
1H12VHドメインのアミノ酸配列(配列番号3)における1つ又は複数のアミノ酸の付加、欠失、置換又は挿入により、1つ又は複数のVHドメインであって、各々が1H12VHドメインのアミノ酸配列変異体である1つ又は複数のVHドメインを提供し、任意選択で、このようにして提供された1つ又は複数のVHドメインアミノ酸配列変異体を、1つ又は複数のVLドメインと組み合わせて、1つ又は複数のVH/VL組み合わせを提供するステップ;及び/又は
1H12VLドメインのアミノ酸配列(配列番号4)における1つ又は複数のアミノ酸の付加、欠失、置換又は挿入により、1H12VLドメインのアミノ酸配列変異体であるVLドメインを提供し、及びこのようにして提供された1つ又は複数のVLドメインアミノ酸配列変異体を、1つ又は複数のVHドメインと組み合わせて、1つ又は複数のVH/VL組み合わせを提供するステップ;及び
VHドメインアミノ酸配列変異体、又は1つ若しくは複数のVH/VL組み合わせを試験して、Axlに結合する抗体を特定するステップ
を含む、方法。
【0304】
34.Axlに結合する抗体を取得する方法であって、
置換しようとするCDR3を含むか、又はCDR3コード領域を欠失しているかのいずれかである1つ又は複数のVHドメインをコードする出発核酸を用意し、及び前記出発核酸を、配列番号7のVHCDR3アミノ酸配列をコードするドナー核酸と組み合わせるステップであって、それにより、前記ドナー核酸が出発核酸のCDR3領域に挿入されて、VHドメインをコードする産物核酸を提供する、ステップ;又は
置換しようとするCDR3を含むか、又はCDR3コード領域を欠失しているかのいずれかである1つ又は複数のVLドメインをコードする出発核酸を用意し、及び前記出発核酸を、配列番号10のVLCDR3アミノ酸配列をコードするドナー核酸と組み合わせるステップであって、それにより、前記ドナー核酸が出発核酸のCDR3領域に挿入されて、VLドメインをコードする産物核酸を提供する、ステップ;
VHドメインをコードする前記産物核酸の核酸を発現させ、及び任意選択で、このようにして生成されたVHドメインを、1つ又は複数のVLドメインと組み合わせて、VH/VL組み合わせを提供し、且つ/又はVLドメインをコードする前記産物核酸の核酸を発現させ、及びこのようにして生成されたVLドメインを、1つ又は複数のVHドメインと組み合わせて、VH/VL組み合わせを提供するステップ;
Axlに結合するVHドメイン又はVH/VL組み合わせを含む抗体を選択するステップ;及び
Axlに結合する前記抗体、及び/又はAxlに結合する抗体をコードする核酸を回収するステップ
を含む、方法。
【0305】
35.Axlに結合する抗体が、VHドメイン及びVLドメインを含む抗体断片である、パラグラフ33又はパラグラフ34に記載の方法。
【0306】
36.抗体断片がscFv抗体分子である、パラグラフ35に記載の方法。
【0307】
37.抗体断片がFab抗体分子である、パラグラフ35に記載の方法。
【0308】
38.全抗体に抗体断片のVHドメイン及び/又はVLドメインをもたらすステップをさらに含む、パラグラフ36又はパラグラフ37に記載の方法。
【0309】
39.Axlに結合する抗体、又はAxlに結合する抗体の抗体VH若しくはVL可変ドメインを、少なくとも1つの追加成分を含む組成物に製剤化するステップ(formulating)をさらに含む、パラグラフ33〜38のいずれか1つに記載の方法。
【0310】
40.Axlに結合する抗体を、Axl又はAxlの断片に結合させるステップをさらに含む、パラグラフ30〜39のいずれか1つに記載の方法。
【0311】
41.パラグラフ1〜27のいずれか1つに記載のAxlに結合する抗体を、Axl又はAxlの断片に結合させるステップを含む、方法。
【0312】
42.前記結合がin vitroで起こる、パラグラフ40又はパラグラフ41に記載の方法。
【0313】
43.Axl又はAxlの断片に対する抗体の結合の量を測定するステップを含む、パラグラフ40〜42のいずれか1つに記載の方法。
【0314】
44.Axlの過剰発現を特徴とする疾患又は障害の治療のための薬剤の製造における抗体の使用をさらに含む、パラグラフ30〜39のいずれか1つに記載の方法。
【0315】
45.別の治療薬と組み合わせたパラグラフ1〜27のいずれか1つに記載の抗体、又はその免疫複合体。
【0316】
46.薬学的に許容される賦形剤と一緒に、パラグラフ1〜27のいずれか1つに記載の抗体、又はその免疫複合体を含む組成物。
【0317】
47.別の治療薬をさらに含む、パラグラフ46に記載の組成物。
【0318】
48.別の治療薬が、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)などの免疫チェックポイント調節剤(ICM)である、パラグラフ45に記載の抗体又はパラグラフ47に記載の組成物。
【0319】
49.治療方法での使用のための、パラグラフ1〜27、45、若しくは48のいずれか1つに記載の抗体、又はパラグラフ46〜48のいずれか1つに記載の組成物。
【0320】
50.増殖性疾患を治療する方法での使用のための、パラグラフ49に記載の抗体又は組成物。
【0321】
51.増殖性疾患が、AMLなどの癌である、パラグラフ40に記載の抗体又は組成物。
【0322】
52.癌が転移性癌である、パラグラフ51に記載の抗体又は組成物。
【0323】
53.Axlの過剰発現を特徴とする疾患又は障害の治療のための薬剤の製造における、パラグラフ1〜27、45、若しくは48のいずれか1つに記載の抗体、又はパラグラフ46〜48のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【0324】
54.Axlの過剰発現を特徴とする疾患又は障害の治療の方法であって、パラグラフ1〜27、45、若しくは48のいずれか1つに記載の抗体、又はパラグラフ46〜48のいずれか1つに記載の組成物を、その疾患若しくは障害を有するか、又はその疾患若しくは障害を発症するリスクがある患者に投与するステップを含む、方法。
【0325】
55.抗体が、転移性癌細胞をターゲティングするように医薬組成物の送達を指令する、パラグラフ50に記載の方法。
【0326】
56.Axlの過剰発現を特徴とする疾患又は障害の検出のための診断薬の製造における、パラグラフ1〜27、45、若しくは48のいずれか1つに記載の抗体と、転移性癌細胞に対する前記抗体と結合の測定を可能にする1種又は複数種の試薬との使用。
【0327】
57.Axlの過剰発現を特徴とする疾患又は障害の診断の方法であって、パラグラフ1〜27、45、若しくは48のいずれか1つに記載の抗体、又はパラグラフ46〜48のいずれか1つに記載の組成物と、転移性癌細胞に対する前記抗体の結合の測定を可能にする1種又は複数種の試薬とを、上記の疾患若しくは障害を有するか、又は上記の疾患若しくは障害を発症するリスクがある患者に投与するステップを含む、方法。
【0328】
58.パラグラフ1〜27、45、又は48のいずれか1つに記載の抗体と、転移性癌細胞に対する前記メンバーの結合の測定を可能にする1種又は複数種の試薬とを含む、診断キット。
【0329】
59.パラグラフ1〜27、45、若しくは48のいずれか1つに記載の抗体、又はパラグラフ46〜48のいずれか1つに記載の組成物を含む、キット。
【0330】
60.薬学的に許容される賦形剤と一緒に、有効量のパラグラフ1〜27に記載の抗体を有効成分として含む、医薬組成物。
【実施例】
【0331】
実施例1:マウス抗Axlモノクローナル抗体の作製
ヒトAxl受容体に対するモノクローナル抗体(MAb)は、ヒトIgG1Fcドメインに融合したヒトAxlの細胞外ドメインを含む組換え抗原で、免疫応答性OF1マウス(Charles River)の免疫により作製した(rhAxl−Fc;R&D Systems)。
【0332】
血液中にrhAxl特異的抗体の存在を示すマウス由来の脾臓細胞を、標準的プロトコルに従ってマウス骨髄腫細胞との融合に用いた。ハイブリドーマ選択のために、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地を含むプレート内で(ウェル当たり10
5細胞)細胞を培養した。12日の選択後、上清を回収し、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)及びフローサイトメトリーにおいてAxl結合について試験した。5つの陽性クローンが、限界希釈による第2ラウンドのサブクローン化の後、最も高い抗原結合活性を示し、これらをin vitroでのラージスケール抗体生成のために増殖させた。プロテインGアフィニティークロマトグラフィーにより、細胞培養上清からMAbを精製した。
【0333】
フローサイトメトリーでAxl
+細胞に対する特異的結合を示す抗体クローン1H12(
図1)をさらなる特性決定のために選択した。
【0334】
フローサイトメトリーのために、培養中の接着細胞をPBSで洗浄し、1分間のトリプシン(0.25%)処理の後、完全な脱離のために培養皿をたたくことよって、脱離させた。組織培養フラスコ中に完全培地を添加することによりトリプシンをクエンチした後、細胞をPBSで洗浄した。洗浄ステップ中に、200gで5分の遠心分離により、細胞を回収した。0.02%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSで総濃度のために抗体を希釈した。室温で20分間10
5個の細胞を含む200μLの細胞懸濁液を用いて、細胞染色を実施した。PBS 0.02%BSAを用いた2回の洗浄ステップの後、細胞を200μLに再懸濁させ、氷上に維持してから、Accuri C6フローサイトメータ(BD Biosciences)による分析に付した。
【0335】
実施例2:マウスモノクローナル抗体1H12は、ヒトTAM受容体ファミリーの他のメンバーと交差反応しない
結合実験は全て、25℃で、Biacore3000計器(GE Healthcare)を用いて実施した。393.0、303.6及び364.0共鳴単位(RU)の表面密度でのアミン結合をそれぞれ用いて、ヒトTAM受容体ファミリーのメンバー、すなわち、Axl(rhAxl−Fcキメラ;R&D Systems,Cat.no.154−AL)、Mer(rhMer−Fcキメラ;R&D Systems,Cat.no.891−MR)及びTyro3(rhTyro3/Dtk−Fcキメラ;R&D Systems,Cat.no.859−DK)に対応する可溶性組換え抗原をCM5センサーチップの表面に固定化した。Biacoreランは、結合分析ウィザードを用いて、自動式で実施した。HBS−EPバッファー(GE Healthcare)中に濃度10μg/mLでMAb1H12を含有するサンプルを、抗原を固定化した表面に30μL/分の流量で3分間注射し(結合)、その後5分間の解離を実施した。
【0336】
図2に示す結果は、ヒトAxlとの特異的相互作用を示すと共に、組換えヒトMer及びTyro3抗原との結合がないことを明らかにしている。
【0337】
実施例3:マウスモノクローナル抗体1H12は、マウスAxlと交差反応しない
結合実験は、25℃で、Biacore3000計器(GE Healthcare)を用いて実施した。1,308.0、2,115.9及び1,429.0RUの表面密度でのアミン結合をそれぞれ用いて、ヒトAxl(rhAxl−Fcキメラ;R&D Systems,Cat.no.154−AL)、マウスAxl(rmAxl−Fcキメラ;R&D Systems,R&D Systems:Cat.no.854−Ax)及びヒトTyro3(rhTyro3/Dtk−Fcキメラ;R&D Systems,Cat.no.859−DK)に対応する可溶性組換え抗原をCM5センサーチップの表面に固定化した。Biacoreランは、結合分析ウィザードを用いて、自動式で実施した。
【0338】
HBS−EPバッファー(GE Healthcare)中に濃度10μg/mLでMAb1H12又は組換えマウス(rm)Axl−リガンドGas6(R&D Systems,Cat.no.986−GS/CF)のいずれかを含有するサンプルを、抗原を固定化した表面に30μL/分の流量で3分間注射し(結合)、その後5分間の解離を実施した。
【0339】
図3に示す結果は、ヒトAxlとMAb1H12の特異的相互作用を示すと共に、組換えマウスAxl及びヒトMer抗原との結合がないことを明らかにしている(
図3、上部パネル)。対照的に、対照として用いたマウスGas6は、ヒト及びマウスAxlの両方に結合する強力な結合と、ヒトTyro3に対するやや弱い結合とを明らかにしている(
図3、下部パネル)。
【0340】
実施例4:マウスモノクローナル抗体1H12の親和性測定
Biacore3000計器(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴測定により、抗Axl抗体1H12の親和性測定を25℃で実施した。抗原を塗布した固体表面として、密度190RUで固定化したrhAxl−Fcキメラ(R&D Systems,Cat.no.154−AL)を有するセンサーチップCM5を使用した。
【0341】
反応速度測定のために、HBS−EPバッファー(Biacore,Cat.no.BR−1001−88)中の様々な濃度の抗Axl MAb1H12(1.3〜666.7nM)を注射時間3分、30μL/分の流量で注射した後、5分の解離(バッファーのみ)を行った。各サイクルの後、流量50μL/分の再生溶液(10mM HCl、1M NaCl)の30秒の注射により、表面を再生した。
【0342】
物質移動制御実験によって、MAb1H12の有意な物質移動制限が存在しないことが判明した。別の関連反応制御実験では、解離相(dissociation phase)が、1、3若しくは20分間の注射又は1検体濃度(1.8μM若しくは270μg/mL)の注射後にほぼ同じであったことから、MAb1H12の関連反応は明らかにされなかった。BIAevaluationソフトウェア及び1:1Langmuir結合モデルを用いて、動力学的結合(結合速度、k
on)及び解離(解離速度、k
off)を計算した。平衡解離定数(K
D)をk
off/k
on比として計算した。形成された抗体−抗原複合体の半減期(t
1/2)は、ln2/k
off比として計算した。
【0343】
図4に示すように、マウスMAb1H12は、非常に低い解離速度(k
off=1.07×10
−51/s)のために、非常に高い親和性(K
D=4.98×10
−11Mを示し、これによって、18時間という1H12/Axl複合体の半減期が得られた。
【0344】
実施例5:マウスモノクローナル抗体1H12は、Axlに対するGas6の結合を阻止しない
Biacore3000計器(GE Healthcare)及びBinding Analysisウィザードを用い、2つのサンプルの数サイクルの注射により、競合結合試験を実施した。第1のサンプルとして、飽和濃度のMAb1H12(1.8μM又は270μg/mL)を、rhAxl−Fcを塗布した(アミン結合を用いて)CM5センサーチップの表面に30μL/分の流量で3分間注射してから、2.5分の安定化(HBS−EPバッファーのみ)の後、第2のサンプルを注射した。次の第2サンプルを使用した:組換えヒト(rh)Gas6(R&D Systems,Cat.no.885−GS)、組換えマウス(rm)Gas6(R&D Systems,Cat.no.986−GS/CF)及び1群の抗Axl抗体(Mab1、2、3);全て濃度25μg/mL。対照として、MAb1H12を第2サンプルとして同じ条件下(25μg/mL)で使用した。第2サンプルを3分間注射してから、2.5分の安定化(バッファーのみ)の後、流量50μL/分の再生溶液(10mM HCl、1M NaCl)の30秒の注射により、表面の再生を行った。
【0345】
図5に示す結果から、MAb1H12が、Axl結合について、Gas6(ヒト及びマウスの両方)並びに実験で用いたいかなるその他の抗Axl抗体とも競合しなかったことが判明した。
【0346】
実施例6:マウスモノクローナル抗体1H12は、ウェスタンブロット分析において、変性された還元及び非還元変性Axlの両方に結合する
ウェスタンブロット分析のために、推定分子量が71.7kDa(還元条件下のSDS−PAGEにおける100〜110kDaに相当)の組換えヒト(rh)Axl−Fcキメラ(R&D Systems,Cat.no.154−AL)と、推定分子量が78.9kDa(還元条件下のSDS−PAGEにおける100〜110kDaに相当)のrhMer−Fc(R&D Systems,Cat.no.891−MR)を抗原として用いた。抗原を含有するサンプルを還元剤(Life Technologies)の存在及び非存在下で変性させてから、NuPAGE3〜8%トリス−酢酸ポリアクリルアミド(PAA)ゲル、1.0mm×12ウェル(Invitrogen)のウェルにロードした。分子量マーカとして、SeeBlue Plus2 Prestained MWマーカ(Novex LC5925)を使用した。
【0347】
推奨される条件(Life Technologies)下でTris−酢酸SDSランニングバッファーを用いて電気泳動を実施した後、20%メタノールを含む転写バッファーを用いて、XCell II(商標)Blot Module(Invitrogen)のマニュアルに2つのゲルについて記載されている通りに、タンパク質をニトロセルロース膜上に転移させた。5%脱脂乳を含む10mLのブロッキングバッファー、すなわちTBS/0.1%Tween20(TBST)中で膜を室温にて1時間インキュベートした後、1μg/mLのMAb1H12を含有する5mLのインキュベーションバッファー(3%脱脂乳を含むTBST)中、4℃で一晩インキュベートした。各々10mLのTBSTで膜を5分ずつ3回洗浄した後、5mLのインキュベーションバッファー中でヤギ抗マウスIgG(H+L)HRP結合二次抗体(1:3000)と一緒に、穏やかに揺らしながら室温で1時間インキュベートした。その後、10mLのTBSTで5分ずつ3回、10mLのTBSバッファーで2回膜を洗浄した。1mLのECL基質と一緒に膜を室温で1分インキュベートした。余剰の基質溶液を吸引し、ChemiDoc(商標)XRS+imager(Bio Rad)及びImage labソフトウェアを用いて、ブロットを展開させた。
【0348】
図6に示す結果から、抗体1H12は、還元及び非還元変性Axl抗原の両方と特異的に相互作用することが判明した。rhMer−Fcに対する結合は検出されなかった。これらの結果は、MAb1H12が、Axl受容体の細胞外部分上の線状エピトープを認識することを示している。
【0349】
実施例7:マウスモノクローナル抗体1H12は、その天然の環境において、細胞表面上に発現した還元及び非還元変性Axl受容体の両方に結合する
Axl
+及びAxl
−細胞株両方からの細胞溶解物、NCl−H1299(非小細胞肺癌、NSCLC)及びLNCaP(前立腺腺癌)をそれぞれ標準的プロトコルに従って調製した。還元剤(Life Technologies)の存在及び非存在下、細胞溶解物アリコートを変性させてから、NuPAGE3〜8%Tris−酢酸ポリアクリルアミド(PAA)ゲル、1.0mm×12ウェル(Invitrogen)のウェルにロードした。実施例6に記載したのとほぼ同様に、SDS−PAGE及びウェスタンブロット分析を実施した。
【0350】
図7に示す結果から、Axl
+NCl−H1299細胞中に存在するMAb1H12とAxl受容体(還元及び非還元の両方)との特異的相互作用が判明した。Axl
+又はAxl
−細胞のいずれかに存在する他の細胞タンパク質との相互作用は観察されなかった。
【0351】
実施例8:マウスモノクローナル抗体1H12のシーケンシング
ハイブリドーマ1H12細胞は、標準的プロトコルに従って条件下で増殖させた。標準的プロトコルに従うmRNA単離及びcDNA合成のために、5×10
6個の細胞を使用した。重鎖及び軽鎖可変領域(それぞれVH及びVL)をコードする遺伝子のPCR増幅のために、マウスIgG Library Primer Set(Progen,Heidelberg,Germany,Cat.no.F2010)を使用した。異なるプライマー組み合わせを用いたPCR増幅により、VH遺伝子の7つの異なるプライマー組み合わせを用いたPCRから14の配列が、またVL遺伝子の4つの異なるプライマー組み合わせを用いたPCRから7つの配列が得られた。IMGTデータベースとのヌクレオチドアラインメントにより決定される、対応する生殖系列配列と最も高い相同性に基づき、さらなる試験のためにクローンVH5 C9−3及びVκ4G4−1の配列を選択した。
【0352】
1H12VH及びVLドメインのアミノ酸配列を
図8に示す。
【0353】
実施例9:抗Axlマウスモノクローナル抗体1H12は、免疫組織化学において正常ヒト組織と弱い反応を示すか、又は反応を全く示さなかった
検証実験で、抗体1H12の最適プロトコル及び濃度を決定した。この試験のために、Axl
+及びAxl
−細胞の凍結ペレットを使用した。抗体は、0.05μg/mL〜16.0μg/mL(16、8、4、2、1、0.5、0.1、及び0.05μg/mL)の濃度で試験した。MAb1H12は、8〜1μg/mLでAxl
+細胞において中等度から強度の反応を示し;0.5μg/mLで反応は穏やかであった。従って、組織交差反応性(TCR)試験で使用するために、1μg/mLの最適濃度を設定した。この濃度で、Axl陰性細胞に反応は認められなかった。
【0354】
BioChainから購入した市販の凍結組織ミクロアレイ(TMA)(製品番号T6234701−2)を用いて、TCR試験を実施した。組織は全て、BioChainから、凍結切削したアセトン固定凍結TMAとして配達された。実験は次のように実施した:凍結切片(8μm)を室温で一晩空気乾燥した後、アセトン中で10分間固定してから、5%ヤギ正常血清(Jackson ImmunoResearch、005−000−121)中で30分間遮断した。次に、5%ヤギ正常血清を含むPBS中の一次抗体(1H12)で1時間切片を染色した後、PBSで3回洗浄した。続いて、EnVision mouse(Dako,K4001)で30分間切片を染色した。最後に、切片をTris−HClで3回洗浄した後、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)染色剤で5分間染色した。HTXイメージングを用いて、画像を撮影した。染色強度を次のように判定した:陰性(0)、弱い反応(1+)、中等度の反応(2+)、又は強度の反応(3+)。正常ヒトTCRの結果を表2に示す。
【0355】
抗体1H12は、リンパ節及び脾臓の細胞において弱から中等度又は中等度の反応を示した(膜染色)。肝臓(恐らくクッパー細胞)にも局所的な中等度の反応が認められた(膜染色)。膵臓の上皮細胞にいくらかの局所的中等度又は強度の細胞内反応が認められた。次の組織は、特に陽性染色を示さなかった:副腎、骨髄、各種脳組織及び脊髄、結腸、上皮/大動脈、食道、卵管、心臓、腎臓、肺、卵巣、胎盤、前立腺、皮膚、脊髄、横紋筋、胃、精巣、胸腺、甲状腺、尿管及び子宮。
【0356】
【表2】
【0357】
表2の続き
【表3】
【0358】
表2の続き
【表4】
【0359】
表2の続き
【表5】
【0360】
実施例10:キメラモノクローナル抗体1H12の作製及び試験
哺乳動物細胞(GeneArt)での発現のためのコドン最適化により合成遺伝子を作製するために、マウスハイブリドーマ1H12から得られたVH及びVL配列を使用した。これらのマウスVH及びVL遺伝子は、哺乳動物細胞での抗体生成に好適な発現ベクターにおいて、ヒトIgG1重及び軽(C−κ)鎖の定常ドメインをコードする遺伝子エレメントとフレーム内で連結させた。キメラ(マウス可変/ヒト定常)IgG1抗体の生成は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における一過性発現の後、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いた精製により達成した。精製キメラ抗体(>95%純度)を、Axl陽性乳癌細胞株MDA−MB−231との結合についてフローサイトメトリーで分析した。比較のために、親マウスMAb1H12を使用した。フローサイトメトリーのために、培養中の接着細胞をPBSで洗浄し、1分間のトリプシン(0.25%)処理の後、完全な脱離のために培養皿をたたくことよって、脱離させた。組織培養フラスコ中に完全培地を添加することによりトリプシンをクエンチした後、細胞をPBSで洗浄した。洗浄ステップ中に、200gで5分の遠心分離により、細胞を回収した。0.02%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS中の総濃度のために抗体を希釈した。室温で20分間10
5個の細胞を含む200μLの細胞懸濁液を用いて、細胞染色を実施した。細胞結合抗体を、APC結合ロバ抗ヒト又は抗マウスIgG(H+L)F(ab’)
2断片(Jackson ImmunoResearch)でそれぞれ検出した。PBS/0.02%BSAを用いた2回の洗浄ステップの後、細胞を200μLに再懸濁させ、氷上に維持してから、Accuri C6フローサイトメータ(BD Biosciences)での分析に付した。
図9に示す結果から、MDA−MB−231細胞に対するキメラ抗体の強力な結合が判明した。
【0361】
実施例11:キメラモノクローナル抗体ch1H12の親和性測定
Biacore3000計器(GE Healthcare)を用いて、抗Axlキメラ(マウス可変/ヒト定常IgG1)抗体ch1H12の親和性測定を25℃で実施した。抗原を塗布した固体表面として、密度190RUで固定化したrhAxl−Fcキメラ(R&D Systems,Cat.no.154−AL)を有するセンサーチップCM5を使用した。
【0362】
反応速度測定のために、HBS−EPバッファー(Biacore,Cat.no.BR−1001−88)中の様々な濃度の抗AxlキメラMAbch1H12(1.3〜666.7nM)を注射時間3分、30μL/分の流量で注射した後、5分の解離(バッファーのみ)を行った。各サイクルの後、流量50μL/分の再生溶液(10mM HCl、1M NaCl)の30秒の注射により、表面を再生した。
【0363】
物質移動制御実験によって、MAbch1H12の有意な物質移動制限が存在しないことが判明した。BIAevaluationソフトウェア及び1:1Langmuir結合モデルを用いて、動力学的結合(結合速度、k
on)及び解離(解離速度、k
off)を計算した。平衡解離定数(K
D)をk
off/k
on比として計算した。形成された抗体−抗原複合体の半減期(t
1/2)は、ln2/k
off比として計算した。
【0364】
図10に示すように、キメラMAbch1H12は、主として非常に低い解離速度(k
off=2.99×10
−61/s)のために、非常に高い親和性(K
D=1.10×10
−11M)を示し、これによって、64.4時間というch1H12/Axl複合体の半減期が得られた。得られた親和性の値は、親マウス抗体1H12(4.5倍低いK
D)に比べて優れており、これは、ヒト定常ドメインスカフォールドにマウントした場合、V
H及びV
Lドメインのより良好な配向を示すと考えられる。
【0365】
実施例12:マウスモノクローナル抗体1H12は、非ヒト霊長類由来のAxlと交差反応する
カニクイザル(cynomolgus)及びアカゲザル(rhesus)(それぞれ、cyno−Axl及びrhe−Axl)由来のAxl受容体の細胞外部分を含む組換えAxl−Fcキメラタンパク質をCHO細胞での一過性発現により作製した。それぞれ1,345.0及び1,515.9RUの表面密度でのアミン結合を用いて、CM5センサーチップの表面上に組換えcyno−Axl及びrhe−Axlを固定化した。陽性対照として、同じ条件下で生成されたhu−Axl−Fcキメラを1,234.9RUの密度で同じチップに固定化した。
【0366】
Biacore3000計器(GE Healthcare)を用いて、25℃で結合実験を実施した。結合分析ウィザードを用いて、Biacoreランを自動式で実施した。
【0367】
HBS−EPバッファー(GE Healthcare)中に濃度10μg/mLでMAb1H12を含有するサンプルを、抗原が固定化された表面に30μL/分の流量で3分間注射し(結合)、続いて5分間の解離を実施した。
【0368】
図11に示す結果は、ヒト起源並びにカニクイザル(cynomolgus)及びアカゲザル(rhesus)由来の全てのAxl変異体とMAb1H12の強力且つ特異的相互作用を明らかにしている。
【0369】
実施例13:サポリンに結合したキメラモノクローナル抗体ch1H12を用いた腫瘍細胞の殺傷
免疫毒素の作製のために、FabFc−ZAPヒトコンジュゲート(4.5nM最終濃度)(Advanced Targeting Systems,Cat.no.IT−65)を用いて、キメラMAbch1H12を植物毒素サポリン(Saporin)に非共有結合させた。Axl陽性腫瘍細胞株MDA−MB−231(ヒトトリプルネガティブ乳癌)を用いて、腫瘍細胞生存性に対するch1H12−サポリン内在化の作用を試験した。10%FBS、L−グルタミン(4mM)、ストレプトマイシン(5μg/ml)及びペニシリン(5U/ml)を補充したDMEM/F−12培地を含む96ウェルプレート中にウェル当たり800個の細胞を接種して、16時間にわたり結合させた。様々な希釈度の免疫毒素ch1H12−サポリンと一緒に、細胞を72時間インキュベートした。細胞の生存性は、CLARIOstar(登録商標)マイクロプレートリーダ(BMG LABTECH)を用いて、XTT/PMSアッセイを実施することにより測定した。
【0370】
図12に示す結果は、ピコモル範囲のEC
50値(50%の細胞の殺傷を達成する有効濃度)を有するch1H12ベースの免疫毒素の優れた内在化及び強力な細胞殺傷能力を明らかにしている。
【0371】
実施例14:抗体1H12は、Axl下流シグナル伝達を誘導する
ヒト頸癌由来の細胞株ヒーラ(ATCC(登録商標)CCL−2(商標))を用いて、実験を実施した。T175フラスコ内で、10%FBS、ペニシリン−ストレプトマイシン及びL−グルタミンを補充したMEM培地(Sigma)中80%密集まで細胞を増殖させた。細胞をPBSで洗浄し、0.25%トリプシン/ETDA(Sigma)での処理により脱離させてから、遠心分離の後、新しい培地(MEM/0.5%FBS)に懸濁させた。10%FBSを補充したMEM培地を含むペトリ皿(1枚当たり3×10
6細胞)に細胞を接種した。37℃で7時間のインキュベーション後、細胞をPBSで洗浄した後、500ng/mlのAxl−Fc(R&D Systems)を補充した飢餓培地(MEM/0.5%FB)中に維持することにより、内在性Gas6を欠失させた。24時間のインキュベーション後、培地を吸引してから、濃度7.5μg/mLの抗Axl抗体1H12のみ、又はビオチン−SP−結合AffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)#2.22(抗体架橋混合物)と事前に混合した1H12のいずれかを含む新鮮なMEM/0.5%FBS培地を添加した。37℃で10〜30分のインキュベーション後、遠心分離により細胞を回収してから、NP40溶解バッファー中に再懸濁させた後、氷上で30分間インキュベートした。細胞溶解物を遠心分離(12,000rpm、4℃、5分)により清澄化した後、BCAタンパク質アッセイを用いて、タンパク質濃度を測定した。35μgの全タンパク質を含む細胞溶解物サンプルを、還元剤(Life Technologies)の存在下で変性させてから、NuPAGE10%Bis−Trisポリアクリルアミド(PAA)ゲルのウェルである1.0mm×12ウェル(Invitrogen)にロードした。推奨される条件(Life Technologies)下で、Bis−Tris SDSランニングバッファーを用いて、電気泳動を実施した後、20%メタノールを含む転写バッファーを用いて、XCell II(商標)Blot Module(Invitrogen)のマニュアルに2つのゲルについて記載されているように、タンパク質をPVDF膜上に転移した。5%脱脂乳を含む10mLのブロッキングバッファー、すなわちTBS/0.1%Tween20(TBST)中で膜を室温にて1時間インキュベートした後、抗ホスホ−Akt(Ser
473)抗体(Cell Signaling)の1:1000希釈液を含有する5mLのインキュベーションバッファー(3%脱脂乳を含むTBST)中、4℃で一晩インキュベートした。各々10mLのTBSTで膜を5分ずつ3回洗浄した後、ヤギ抗ウサギHRP結合二次抗体と一緒に、室温で穏やかに揺らしながら1時間インキュベートした。その後、10mLのTBSTで5分ずつ3回、10mLのTBSバッファーで2回膜を洗浄した。1mLのECL基質と一緒に膜を室温で1分間インキュベートした。余剰の基質溶液を吸引した後、ChemiDoc(商標)XRS+imager(Bio Rad)及びImage labソフトウェアを用いて、ブロットを視覚化した。ローディング対照として、抗マウスアクチン抗体(1:10,000;Sigma)を用いた検出を同じ条件下で実施した。抗ホスホ−Aktは、AKT1、AKT2及びAKT3を識別しないため、「ホスホ−Akt」の総合レベルがブロット中に示される。抗GAPDH抗体(Millipore)による検出をローディング対照として用いた。
【0372】
図13に示す結果から、二次抗マウス抗体と架橋した抗Axl抗体1H12は、読み出しとしてSer
473でのAktの下流リン酸化を利用したヒーラ細胞において強力なAxlシグナル伝達を誘導したことが判明した。作用は用量依存的であることが証明され、架橋1H12の量が多いほど、より強力な受容体シグナル伝達を引き起こした(
図14)。さらに、
図15に示すデータは、1H12抗体が、二次抗体との架橋なしに単独で、Axl受容体活性化及び下流シグナル伝達を起こし得ることも明らかにしている。この結果は、1H12抗体が、強力なアゴニスト活性を有することを示すものである。
【0373】
実施例15:マウスモノクローナル抗体1H12は、市販の抗体MAB154とAxl結合について競合する
Biacore3000計器(GE Healthcare)及びBinding Analysisウィザードを用い、2つのサンプルの数サイクルの注射により、競合結合試験を実施した。第1のサンプルとして、飽和濃度のMAb1H12(1.8μM又は270μg/mL)を、rhAxl−Fcを塗布した(アミン結合を用いて)CM5センサーチップの表面に30μL/分の流量で3分間注射してから、2.5分の安定化(HBS−EPバッファーのみ)の後、第2のサンプルを注射した。次の第2サンプルを使用した:組換えマウス(rm)Gas6(R&D Systems,Cat.no.986−GS/CF)及び市販の抗Axlモノクローナル抗体MAB154(マウスIgG1、Clone#108724;R&D Systems,Cat.No.MAB154);いずれも濃度25μg/mL。対照として、同じ条件下(25μg/mL)でMAb1H12を使用した。第2サンプルを3分間注射してから、2.5分の安定化(バッファーのみ)の後、流量50μL/分の再生溶液(10mM HCl、1M NaCl)の30秒の注射により、表面の再生を行った。
【0374】
図16に示す結果から、MAb1H12が、Axlに対するMAB154の結合の結合を阻害し、マウスGas6と競合しなかったことが判明した。
【0375】
実施例16:1H12及び市販の抗体を用いたAxl検出の比較
MAb1H12を用いて、免疫組織化学及びウェスタンブロット分析を実施した。
【0376】
Axl+親MDA−MB−231細胞又はAxl−MDA−MB−231shAxl2細胞のいずれかを用いて、調製した細胞ペレットからのFFPE切片を、MAb1H12、ポリクローナルAF154及びモノクローナルMAB154を用いて染色した(
図17A)。MDA−MB−231shAxl2細胞株は、AxlターゲティングshRNAを発現するレトロウイルス構築物を用いてノックダウンしたAxl発現を有し;これによって、約10%の細胞がAxl+のままである混合集団が得られる。
【0377】
MAb1H12によるAxl+細胞の最良の染色は、1μg/mlの濃度で達成された(細胞膜の高スコア陽性染色、及び弱い細胞質染色又は細胞質染色なし)が、Axl−細胞は、主に陰性染色を示し、散在する単一細胞に幾分の発現を有した。単離されたAxl−発現細胞の存在は、フローサイトメトリーによって、細胞の約90%が、レトロウイルスshRNA構築物を担持することが示されたことから、MDA−MB−231shAxl2の観察された純度と一致した。希釈度1:6400(0.03125μg/ml03125μg/m)でAF154を用いた比較染色は、いくらか強い膜染色を示した。しかし、ほとんどの細胞において、幾分弱い発現を有する散在集団におけるAxl−細胞でも強力な染色が観察された。
【0378】
MAB154による染色は、同様の濃度でのAxl+細胞に対するMAb1H12より弱い作用を示した。しかし、Axl−集団では、MAb1H12及びAF154の両方と比較して、弱い染色の細胞は少数であった。これは、1H12が、IHCに対するAF154及びMAB154と比較して、改善された結果をもたらすことを示すものである。
【0379】
MAb1H12、AF154及びMAB154を用いて、Axl+及びAxl−細胞溶解物のウェスタンブロット分析により同様の比較を実施した(
図17B)。推奨事項及び可視性の目的で、3つの抗体は全て、1μg/mlの濃度で使用した。全てが、Axl+細胞溶解物中140kDaでAxlのタンパク質バンドを示した。しかし、このバンドは、AF154を含むAxl−溶解物ではほぼ検出不能であったが、幾分かの弱いバックグラウンド染色は検出され、これは、以前の研究(Ahmed et al.,2015)に指摘されているように、低レベルでの他のタンパク質に対するその反応を示している。MAb1H12を含むブロットは、MAB154で見られるより一貫して強かった。これらの結果から、本発明者らは、MAb1H12が、ウェスタンブロットにおいて、AF154及びMAB154よりかなり良好に作用すると結論付けた。
【0380】
配列
配列番号1[VHドメイン(nt)]
GAGGTGAAGCTGGTGGAATCTGGGGGAGACTTAGTGAAGCCTGGAGGGTCCCTGAAACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACTTTCAGTAGCTATGGCATGTCTTGGGTTCGCCAGACTCCAGACAAGAGGCTGGAGTGGGTCGCAACCATTAGTAGTGGTGGTAGTTACACCTACTATCCAGACAGTGTGAAGGGGCGATTCACCATCTCCAGAGACAATGCCAAGAACACCCTGTACCTGCAAATGAGCAGTCTGAAGTCTGAGGACACAGCCATGTATTACTGTGCAAGACATCCCATCTACTATACTTACGACGATACTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCAGCCAAAACGACACCC
配列番号2[VLドメイン(nt)]
GACATTGTGCTGACCCAATCTCCAGCAATCATGGCTGCATCTCCAGGGGAGAAGGTCACCATGACCTGCAGTGCCAGCTCAAGTGTAAGTTCTGGTAACTTTCACTGGTACCAGCAGAAGCCAGGCACTTCTCCCAAACTCTGGATTTATAGGACATCCAACCTGGCTTCTGGAGTCCCCGCTCGCTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACCTCTTACTCTCTTACAATCAGCAGCATGGAGGCCGAAGATGCTGCCACTTATTACTGCCAGCAGTGGAGTGGTTACCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAACGGGCTGATGCTGCACCAACTGTATCC
配列番号3[VHドメイン(aa)]EVKLVESGGDLVKPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQTPDKRLEWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCARHPIYYTYDDTMDYWGQGTSVTVSS
配列番号4[VLドメイン(aa)]
DIVLTQSPAIMAASPGEKVTMTCSASSSVSSGNFHWYQQKPGTSPKLWIYRTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSGYPWTFGGGTKLEIK
配列番号5[重鎖CDR1]
GFTFSSYGMS
配列番号6[重鎖CDR2]
TISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNA
配列番号7[重鎖CDR3]
HPIYYTYDDTMDY
配列番号8[軽鎖CDR1]
SASSSVSSGNFH
配列番号9[軽鎖CDR2]
RTSNLAS
配列番号10[軽鎖CDR3]
QQWSGYPWT
配列番号11[重鎖FR1]
EVKLVESGGDLVKPGGSLKLSCAAS
配列番号12[重鎖FR2]
WVRQTPDKRLEWVA
配列番号13[重鎖FR3]
KNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCAR
配列番号14[重鎖FR4]
WGQGTSVTVSS
配列番号15[軽鎖FR1]
DIVLTQSPAIMAASPGEKVTMTC
配列番号16[軽鎖FR2]
WYQQKPGTSPKLWIY
配列番号17[軽鎖FR3]
GVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYC
配列番号18[軽鎖FR4]
FGGGTKLEIK
配列番号19[ヒトAxl]
MAWRCPRMGRVPLAWCLALCGWACMAPRGTQAEESPFVGNPGNITGARGLTGTLRCQLQVQGEPPEVHWLRDGQILELADSTQTQVPLGEDEQDDWIVVSQLRITSLQLSDTGQYQCLVFLGHQTFVSQPGYVGLEGLPYFLEEPEDRTVAANTPFNLSCQAQGPPEPVDLLWLQDAVPLATAPGHGPQRSLHVPGLNKTSSFSCEAHNAKGVTTSRTATITVLPQQPRNLHLVSRQPTELEVAWTPGLSGIYPLTHCTLQAVLSDDGMGIQAGEPDPPEEPLTSQASVPPHQLRLGSLHPHTPYHIRVACTSSQGPSSWTHWLPVETPEGVPLGPPENISATRNGSQAFVHWQEPRAPLQGTLLGYRLAYQGQDTPEVLMDIGLRQEVTLELQGDGSVSNLTVCVAAYTAAGDGPWSLPVPLEAWRPGQAQPVHQLVKEPSTPAFSWPWWYVLLGAVVAAACVLILALFLVHRRKKETRYGEVFEPTVERGELVVRYRVRKSYSRRTTEATLNSLGISEELKEKLRDVMVDRHKVALGKTLGEGEFGAVMEGQLNQDDSILKVAVKTMKIAICTRSELEDFLSEAVCMKEFDHPNVMRLIGVCFQGSERESFPAPVVILPFMKHGDLHSFLLYSRLGDQPVYLPTQMLVKFMADIASGMEYLSTKRFIHRDLAARNCMLNENMSVCVADFGLSKKIYNGDYYRQGRIAKMPVKWIAIESLADRVYTSKSDVWSFGVTMWEIATRGQTPYPGVENSEIYDYLRRGNRLKQPADCLDGLYALMSRCWELNPQDRPSFTELREDLENTLKALPPAQEPDEILYVNMDEGGGYPEPPGAAGGADPPTQPDPKDSCSCLTAAEVHPAGRYVLCPSTTPSPAQPADRGSPAAPGQEDGA
配列番号20[マウスAxl]
MGRVPLAWWLALCCWGCAAHKDTQTEAGSPFVGNPGNITGARGLTGTLRCELQVQGEPPEVVWLRDGQILELADNTQTQVPLGEDWQDEWKVVSQLRISALQLSDAGEYQCMVHLEGRTFVSQPGFVGLEGLPYFLEEPEDKAVPANTPFNLSCQAQGPPEPVTLLWLQDAVPLAPVTGHSSQHSLQTPGLNKTSSFSCEAHNAKGVTTSRTATITVLPQRPHHLHVVSRQPTELEVAWTPGLSGIYPLTHCNLQAVLSDDGVGIWLGKSDPPEDPLTLQVSVPPHQLRLEKLLPHTPYHIRISCSSSQGPSPWTHWLPVETTEGVPLGPPENVSAMRNGSQVLVRWQEPRVPLQGTLLGYRLAYRGQDTPEVLMDIGLTREVTLELRGDRPVANLTVSVTAYTSAGDGPWSLPVPLEPWRPGQGQPLHHLVSEPPPRAFSWPWWYVLLGALVAAACVLILALFLVHRRKKETRYGEVFEPTVERGELVVRYRVRKSYSRRTTEATLNSLGISEELKEKLRDVMVDRHKVALGKTLGEGEFGAVMEGQLNQDDSILKVAVKTMKIAICTRSELEDFLSEAVCMKEFDHPNVMRLIGVCFQGSDREGFPEPVVILPFMKHGDLHSFLLYSRLGDQPVFLPTQMLVKFMADIASGMEYLSTKRFIHRDLAARNCMLNENMSVCVADFGLSKKIYNGDYYRQGRIAKMPVKWIAIESLADRVYTSKSDVWSFGVTMWEIATRGQTPYPGVENSEIYDYLRQGNRLKQPVDCLDGLYALMSRCWELNPRDRPSFAELREDLENTLKALPPAQEPDEILYVNMDEGGSHLEPRGAAGGADPPTQPDPKDSCSCLTAADVHSAGRYVLCPSTAPGPTLSADRGCPAPPGQEDGA
配列番号21[ヒトTyro3]
MALRRSMGRPGLPPLPLPPPPRLGLLLAALASLLLPESAAAGLKLMGAPVKLTVSQGQPVKLNCSVEGMEEPDIQWVKDGAVVQNLDQLYIPVSEQHWIGFLSLKSVERSDAGRYWCQVEDGGETEISQPVWLTVEGVPFFTVEPKDLAVPPNAPFQLSCEAVGPPEPVTIVWWRGTTKIGGPAPSPSVLNVTGVTQSTMFSCEAHNLKGLASSRTATVHLQALPAAPFNITVTKLSSSNASVAWMPGADGRALLQSCTVQVTQAPGGWEVLAVVVPVPPFTCLLRDLVPATNYSLRVRCANALGPSPYADWVPFQTKGLAPASAPQNLHAIRTDSGLILEWEEVIPEAPLEGPLGPYKLSWVQDNGTQDELTVEGTRANLTGWDPQKDLIVRVCVSNAVGCGPWSQPLVVSSHDRAGQQGPPHSRTSWVPVVLGVLTALVTAAALALILLRKRRKETRFGQAFDSVMARGEPAVHFRAARSFNRERPERIEATLDSLGISDELKEKLEDVLIPEQQFTLGRMLGKGEFGSVREAQLKQEDGSFVKVAVKMLKADIIASSDIEEFLREAACMKEFDHPHVAKLVGVSLRSRAKGRLPIPMVILPFMKHGDLHAFLLASRIGENPFNLPLQTLIRFMVDIACGMEYLSSRNFIHRDLAARNCMLAEDMTVCVADFGLSRKIYSGDYYRQGCASKLPVKWLALESLADNLYTVQSDVWAFGVTMWEIMTRGQTPYAGIENAEIYNYLIGGNRLKQPPECMEDVYDLMYQCWSADPKQRPSFTCLRMELENILGQLSVLSASQDPLYINIERAEEPTAGGSLELPGRDQPYSGAGDGSGMGAVGGTPSDCRYILTPGGLAEQPGQAEHQPESPLNETQRLLLLQQGLLPHSSC
配列番号22[ヒトMer]
MKINNEEIVSDPIYIEVQGLPHFTKQPESMNVTRNTAFNLTCQAVGPPEPVNIFWVQNSSRVNEQPEKSPSVLTVPGLTEMAVFSCEAHNDKGLTVSKGVQINIKAIPSPPTEVSIRNSTAHSILISWVPGFDGYSPFRNCSIQVKEADPLSNGSVMIFNTSALPHLYQIKQLQALANYSIGVSCMNEIGWSAVSPWILASTTEGAPSVAPLNVTVFLNESSDNVDIRWMKPPTKQQDGELVGYRISHVWQSAGISKELLEEVGQNGSRARISVQVHNATCTVRIAAVTKGGVGPFSDPVKIFIPAHGWVDYAPSSTPAPGNADPVLIIFGCFCGFILIGLVLYISLAIRKRVQETKFGNAFTEEDSELVVNYIAKKSFCRRAIELTLHSLGVSEELQNKLEDVVIDRNLLILGKILGEGEFGSVMEGNLKQEDGTSLKVAVKTMKLDNSSQREIEEFLSEAACMKDFSHPNVIRLLGVCIEMSSQGIPKPMVILPFMKYGDLHTYLLYSRLETGPKHIPLQTLLKFMVDIALGMEYLSNRNFLHRDLAARNCMLRDDMTVCVADFGLSKKIYSGDYYRQGRIAKMPVKWIAIESLADRVYTSKSDVWAFGVTMWEIATRGMTPYPGVQNHEMYDYLLHGHRLKQPEDCLDELYEIMYSCWRTDPLDRPTFSVLRLQLEKLLESLPDVRNQADVIYVNTQLLESSEGLAQGSTLAPLDLNIDPDSIIASCTPRAAISVVTAEVHDSKPHEGRYILNGGSEEWEDLTSAPSAAVTAEKNSVLPGERLVRNGVSWSHSSMLPLGSSLPDELLFADDSSEGSEVLM