(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜
図4は、本実施形態に係る水晶デバイスに関する図である。
図1は、本実施形態に係る水晶デバイスの斜視図であり、
図2および
図4は、本実施形態に係る水晶デバイスの断面図である。また、
図3は、
図2のC部の部分拡大図である。
図5〜
図7は、本実施形態に係る水晶素子に関する図である。
図5は、本実施形態に係る水晶素子の斜視図であり、
図6は、水晶素子の上面および下面の平面図である。また、
図7は、本実施形態に係る水晶素子の一方の短辺を含む側面の平面図である。
【0013】
(水晶デバイスの概略構成)
水晶デバイスは、例えば、全体として略直方体形状となっている電子部品である。水晶デバイスは、例えば、長辺または短辺の長さが、0.6mm〜2.0mmであり、上下方向の厚さが、0.2mm〜1.5mmとなっている。
【0014】
水晶デバイスは、例えば、凹部が形成されている基体110と、凹部に収容された水晶素子120と、凹部を塞ぐ蓋体130と、基体110に水晶素子120を接着実装するための導電性接着剤140と、から構成されている。
【0015】
基体110の凹部は、蓋体130によって封止され、その内部は、真空とされ、または、適当なガス(例えば、窒素)が封入されている。
【0016】
基体110は、例えば、基体110の主体となる基板部110aと、基板部110aの上面の縁部に沿って設けられている枠部110bと、水晶素子120を実装するための搭載パッド111と、水晶デバイスを不図示の回路基板等に実装するための外部端子112と、から構成されている。基体110は、基板部110aの上面の縁部に沿って枠状の枠部110bが設けられ、凹部が形成されている。
【0017】
基板部110aおよび枠部110bは、セラミック材料等の絶縁材料からなる。搭載パッド111および外部端子112は、例えば、金属等からなる導電層により構成されており、基板部110a内に配置された導体(図示せず)によって互いに電気的に接続されている。蓋体130は、例えば、金属から構成され、基体110、具体的には、枠部110bの上面にシーム溶接等により接合される。
【0018】
水晶素子120は、水晶片121と金属パターン122とから構成されている。金属パターン122は、例えば、水晶片121に電圧を印加するための一対の励振電極部123と、水晶素子120を搭載パッド111に実装するための一対の接続配線部124とからなる。
【0019】
水晶片121は、いわゆるATカット水晶片である。すなわち、水晶において、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光軸)からなる直交座標系XYZを、X軸回りに30°以上50°以下(一例として、35°15′)回転させて、直交座標系XY´Z´を定義したとき、XZ´平面に平行となっている板状である。
【0020】
金属パターン122は、金属からなる導電性材料が用いられ、励振電極部123と接続配線部124とから構成されている。励振電極部123は、例えば、水晶片121の中央部に設けられている。一対の接続配線部124は、励振電極部123から水晶片121の端部へ延設されており、接続部124aと配線部124bとからなる。接続部124aは、例えば、水晶片121の一方の短辺の縁部に沿って二つ並んで設けられている。配線部124bは、例えば、水晶片121の長辺と平行となるように、励振電極部123から接続部124aまで延設されている。
【0021】
水晶素子120は、水晶片121の主面を基体110の基板部110aの上面に対向させて、基体110の凹部内に収容される。水晶素子120の接続配線部124は、基体110の基板部110aに設けられている搭載パッド111に導電性接着剤140によって接着される。これにより、水晶素子120の金属パターン122は、基体110の基板部110aの搭載パッド111と電気的に接続され、ひいては、基板部110a内に配置された導体(図示せず)によって基体110に設けられている外部端子112と電気的に接続される。
【0022】
このようにして構成された水晶デバイスは、例えば、不図示の回路基板の実装面に基体110の(基板部110aの)下面を対向させて、外部端子112が半田などにより回路基板の実装パッド(図示せず)に接合されることによって回路基板に実装される。回路基板には、例えば、発振回路が構成されている。発振回路は、外部端子112、基板部110a内に配置された導体(図示せず)、搭載パッド111、導電性接着剤140および接続配線部124を介して励振電極部123に交番電圧を印加して、発振信号を生成する。このとき、発振回路は、例えば、水晶片121の厚みすべり振動のうち基本波振動を利用する。
【0023】
(水晶素子の形状)
図5は、本実施形態に係る水晶素子の斜視図である。
図6の(a)は、本実施形態に係る水晶素子の上面を平面視した平面図であり、
図6(b)は、本実施形態に係る水晶素子の下面を上面から平面透視した平面図である。また、
図7は、本実施形態に係る水晶素子であって、水晶片の一方の短辺を含む側面を平面視した平面図である。
【0024】
本実施形態では、水晶素子120を基体110に実装した場合、基体110の基板部110aの上面と略平行となっている面を主面とし、水晶素子120から基体110の基板部110aに向かう向きを下方向、基体110の基板部110aから水晶素子120へ向かう向きを上方向として説明する。
【0025】
基体110の基板部110aを向く水晶素子120の面を水晶素子120の下面とし、水晶素子120の下面と反対側を向く水晶素子120の面を水晶素子120の上面とする。また、水晶素子120の上面および水晶素子120の下面を水晶素子120の主面とする。同様に、基板部110a側を向く水晶片121の面を水晶片121の下面とし、水晶片121の下面と反対側を向く水晶片121の面を水晶片121の上面とする。また、水晶片121の下面および水晶片121の上面を水晶片121の主面とする。なお、本実施形態では、水晶素子120の上面と水晶片121の上面とを同一の意味で用いており、同様に、水晶素子120の下面と水晶片121の下面とを同一の意味で用いている。
【0026】
水晶素子120は、水晶片121と金属パターン122とから構成されている。
【0027】
水晶片121は、例えば、いわゆるATカット板である。すなわち、
図6に示すように、水晶において、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光軸)からなる直交座標系XYZを、X軸の周りに30°以上50°以下(一例として、35°15′)回転させて直交座標系XY´Z´系を定義したとき、水晶片121は、XZ´平面に平行となっている形状である。
【0028】
なお、水晶片121の外形がエッチングによって形成される場合、エッチングに対する水晶の異方性等によって比較的大きな誤差(系統誤差のようなもの)が生じる。当該誤差は、意図的に利用されることもある。本開示の説明においては、このような誤差の存在は無視するものとする。例えば、実際に、水晶片121においては、側面が主面に直交せずに傾斜していたり、側面が平面にならず外側に膨らむ形状になっていたりすることがあるが、そのような傾斜および/または膨らみの図示および説明は省略する。第三者の製品が本開示の技術に関するか否か判断される場合においてもそのような誤差は無視されてよい。なお、偶然誤差のようなものが無視されてよいことはもちろんである。
【0029】
図6に示すように、水晶片121の平面における形状は矩形である。当該矩形は、例えば、長方形(本開示では正方形を含くむものとする。このとき、所定の一つの辺が一方の長辺に該当し、所定の一つの辺に接続している辺を一方の短辺に該当する。励振電極部123についても同様。)なお、本開示について、矩形または長方形は、角部が面取りされた形状を含むものとする。(励振電極部123についても同様。)AT板カット板では、主面はXZ´平面に略平行な面であり、長辺はX軸に略平行な辺であり、短辺はZ´軸に略平行な辺である。
【0030】
水晶片121の厚みは、厚みすべり振動について所望の固有周波数に基づいて設定される。例えば、基本波振動を用いる場合において、固有振動数をF(MHz)とすると、この固有振動数Fに対応する水晶片121の厚みt(μm)を求める基本式は、t=1670/Fである。なお、実際には、水晶片121の厚みは、励振電極部123の重さ等も考慮して、基本式の値から微調整された値となる。
【0031】
水晶片121の各種寸法は、等価直列抵抗値の低減等の種々の観点から、シミュレーション計算および実験等に基づいて適宜設定されてよい。一例をあげると、例えば、長辺の長さは550μm〜1.1mm以下、短辺の長さは350μm〜750μm以下(ただし、長辺の長さ以下)、厚さは20μm〜70μm以下である。
【0032】
このような水晶片121に設けられている金属パターン122は、水晶素子120の外部から交番電圧を印加するためのものである。金属パターン122は、一層となっていてもよいし、複数の金属層が積層されていてもよい。金属パターン122は、特に図示しないが、例えば、第一金属層と、第一金属層上に積層されている第二金属層とからなる。第一金属層は、水晶と密着性のよい金属が用いられ、例えば、ニッケル、クロム、ニクロムまたはチタンのいずれか一つが用いられる。第一金属層に水晶と密着性のよい金属を用いることで、水晶と密着しにくい金属を第二金属層に用いることができる。第二金属層は、金属材料の中で電気抵抗率が低く、安定した材料が用いられ、
例えば、金、金を主成分とする合金、銀または銀を主成分とする合金のいずれか一つが用いられる。電気抵抗率が低い材料を用いることで、金属パターン122自身の抵抗率を小さくすることができ、この結果、水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。また、安定した金属材料を用いることで、水晶素子120の存在する周囲の空気と反応し金属パターン122の重さが変化し水晶素子120の周波数が変化することを低減させることができる。
【0033】
金属パターン122は、励振電極部123と接続配線部124とから構成されている。この接続配線部124は、接続部124aと配線部124bとからなる。
【0034】
励振電極部123は、水晶片121に交番電圧を印加するためのものである。励振電極部123は、一対となっており、水晶片121の両主面の中央部に互いが対向するように設けられている。励振電極部123は、平面視して、略矩形となっており、励振電極部123の中心(具体的には、励振電極部123の対角線の交点)が、水晶片121の中心(具体的には、水晶片121の対角線の交点)と比較すると、水晶片121の他方の短辺側に位置している。ここで、水晶片121の一方の短辺とは、接続配線部124の接続部124aが並んで設けられている水晶片121の短辺であり、水晶片121の他方の短辺とは、接続部124aが設けられていない水晶片121の短辺である。このように、
励振電極部123の中心を水晶片121の中心よりも水晶片121の他方の短辺側に設けることで、水晶片121の一方の短辺から励振電極部123の中心までの距離を、水晶片121の一方の短辺から水晶片121の中心までの距離と比較して長くすることができる。この結果、接続配線部124の接続部124aを導電性接着剤140で接着したときに、導電性接着剤140により励振電極部123に挟まれている部分の振動が阻害されることを低減させることが可能となり、水晶デバイスの等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
【0035】
接続配線部124は、接続部124aと配線部124bとから構成されており、水晶素子120の外部から励振電極部123に交番電圧を印加するためのものである。
【0036】
接続部124aは、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、基体110に実装するためのものであり、基体110の基板部110aに設けられている搭載パッド111と導電性接着剤140によって電気的に接着される。接続部124aは、一対となっており、基板部110aの搭載パッド111と対向する位置であって、水晶片121の一方の短辺の縁部に沿って二つ並んで設けられている。
【0037】
配線部124bは、接続部124aと励振電極部123とを電気的に接続させるためのものであり、一端が励振電極部123に接続され、他端が接続部124aに接続されている。また、配線部124bは、別の観点では、励振電極部123から接続部124aまで延設されている。また、配線部124bは、例えば、水晶素子120を平面視したとき、水晶片121の長辺と平行となるように設けられている。
【0038】
(水晶素子の詳細な説明)
このような水晶素子120は、
図5および
図7に示したように、接続部124aが並んで設けられている水晶片121の一方の短辺を含む側面を平面視したとき、その側面に第一凹部125a、第二凹部125b、および第三凹部125cからなる、3つの凹部125が形成されている。
【0039】
第一凹部125aは、水晶片121の一方の短辺を含む側面の水晶片121の一方の短辺の一端側であって、水晶片121の下面に連なるように形成されている。また、第一凹部125aを向く面(第一凹部125aの底面)には、金属パターン122(接続配線部124の一部)が設けられている。また、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、第一凹部125a内には、導電性接着剤140が充填されている。
【0040】
第二凹部125bは、水晶片121の一方の短辺を含む側面の水晶片121の一方の短辺の他端側であって、水晶片121の下面に連なるように形成されている。また、第二凹部125aを向く面(第二凹部125aの底面)には、金属パターン122(接続配線部124の一部)が設けられている。また、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、第二凹部125b内には、導電性接着剤140が充填されている。
【0041】
第三凹部125cは、水晶片121の一方の短辺を含む側面の水晶片121の一方の短辺の中心を含みつつ、水晶片121の上面および水晶片121の下面に連なるように形成されている。第三凹部125cの底面には、金属パターン122(接続配線部124)の一部が設けられている部分と金属パターン122(接続配線部124)の一部が設けられていない部分がある。
図5および
図7に示したように、第三凹部125cの底面であって、水晶片121の一方の短辺の中点を通過する部分には、金属パターン122の一部は設けられておらず、その他の部分には、水晶片121の上面から水晶片121の下面にまでつながるように金属パターン122の一部が設けられている。
【0042】
また、第三凹部125cは、水晶片121の上面に連なっている部分の(第三凹部125cの)長さが、水晶片121の下面に連なっている部分の(第三凹部125cの)長さと異なっており、水晶片121の上面に連なっている部分の長さの方が長くなっている。
【0043】
ここで、第一凹部125aの底面、第二凹部125bの底面、および、第三凹部125cの底面とは、水晶片121の一方の短辺を含む側面に平行なそれぞれの凹部124の面とする。
【0044】
水晶素子120は、一般的に、金属パターン122に交番電圧を印加したとき、励振電極部123に挟まれている部分が厚みすべり振動を主振動として振動すると同時に、副次的な振動として屈曲振動が生じる。本実施形態では、このような構成にすることで、副次的な屈曲振動が主振動である厚みすべり振動に与える影響を低減させることが可能となる。この結果、水晶素子120および水晶デバイスの等価直列抵抗値が大きくなることを低減させ、電気的特性を向上させることができる。
【0045】
以上のとおり、本実施形態に係る水晶素子120は、平面視して略矩形形状となっている水晶片121と、水晶片121に設けられ、励振電極部123および励振電極部123から水晶片121の外縁に向かって延設されている接続配線部124からなる金属パターン122と、から構成されている水晶素子120であって、水晶片121の一方の短辺を含む側面を平面視して、水晶片121の一方の短辺を含む側面に三つの凹部125(125a、125b、125c)が形成されている。
【0046】
金属パターン122に交番電圧を印加したときに生じる副次的な振動である屈曲振動は、水晶片121の長辺および短辺に平行な向きで水晶片121の全体が屈曲するように振動する状態となっている。このように、水晶片121の一方の短辺を含む側面に、第一凹部125a、第二凹部125bおよび第三凹部125cからなる凹部125を形成することで、副次的な振動である屈曲振動の周波数等の振動状態を大きく変化させることが可能となる。このため、主振動である厚みすべり振動と副次的な振動である屈曲振動とが結合する量を、凹部125を形成していない場合と比較して、抑制することが可能となる。
この結果、主振動である厚みすべり振動と副次的な振動である屈曲振動とが結合し等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ、電気的特性を向上させることができる。
【0047】
また、このような第一凹部125a、第二凹部125bおよび第三凹部125cからなる凹部125を水晶片121の側面に形成することにより、水晶片121の側面に一つまたは二つの凹部を形成しただけの場合、または、凹部を形成していない場合と比較して、副次的な振動である屈曲振動が生じることをより低減させることが可能となる。また、水晶片121の側面に四つ以上の凹部を形成した場合には、副次的な振動である屈曲振動をより低減させることが可能となるが、しかしながら、四つの凹部を形成した場合と比較して、機械的強度の観点から水晶素子120を平面視して凹部が形成されている側面に平行な向きで生じる応力に対しての歪の量が大きくなってしまう虞がある。
従って、水晶片121の側面に第一凹部125a、第二凹部125bおよび第三凹部125cからなる三つの凹部125を形成することで、副次的な振動である屈曲振動が主振動である厚みすべり振動に与える影響を低減させつつ、外部から受ける応力に対しての水晶片121が歪み量を抑えることが可能となる。この結果、このようにすることで、副次的な振動である屈曲振動および水晶片121が歪むことによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させ、電気的特性が悪化することを抑えることができる。
【0048】
特に、水晶片121の長辺の長さが920μm以下のような場合には、副次的な振動である屈曲振動の次数が低くなるため、副次的な振動である屈曲振動と主振動である厚みすべり振動とが結合しやすくなる傾向がある。このため、このように水晶片121の一方の短辺を含む側面に凹部125を形成することで、副次的な振動である厚みすべり振動が主振動である厚みすべり振動に与える影響を低減させることが可能となる。この結果、水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させ、電気的特性を向上させることができる。
【0049】
また、水晶素子120は、水晶片121の一方の短辺を含む側面の水晶片121の一方の短辺の一端側であって、水晶片121の下面に連なるように形成されている第一凹部125aと、水晶片121の一方の短辺を含む側面の水晶片121の一方の短辺の他端側であって、水晶片121の下面に連なるように形成されている第二凹部125bと、水晶片121の一方の短辺を含む側面の水晶片121の一方の短辺の中点を含みつつ水晶片121の上面および水晶片121の下面に連なるように形成されている第三凹部125cとからなる凹部125が形成されている。このとき、水晶片121の一方の短辺を含む側面を平面視したとき、第一凹部125aは、水晶片121の下面と連なっているが、水晶片121の上面と連なっていない。
また、第二凹部125bは、水晶片121の下面と連なっているが、水晶片121の上面と連なっていない。
【0050】
このような構成にすることで、水晶素子120を平面視して、水晶片121の短辺の両端部において力が加わったときに、水晶片121の中心付近における水晶片121が歪む量を低減させることができる。具体的には、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、水晶片121の一方の短辺または他方の短辺の両端部を導電性接着剤140で電気的に接着することとなるが、この導電性接着剤140が硬化するときに生じる収縮応力により水晶片121の中心付近における水晶片121の歪む量を低減させることが可能となる。この結果、水晶片121の中心付近において水晶片121が歪むことが原因で生じる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができ、水晶素子120および水晶デバイスの電気的特性を向上させることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係る水晶素子120は、水晶片121の一方の短辺を含む側面を平面視して、水晶片121の上面側の第三凹部125cの長さが、水晶片121の下面側の第三凹部125cの長さより長くなっている。別の観点では、第三凹部125cは、水晶片121の一方の短辺を含む側面を平面視して、水晶片121の上面に連なっている第三凹部125cの長さと、水晶片121の下面に連なっている第三凹部125cの長さとが異なる長さとなっているといえる。
【0052】
このように長さを異なるようにすることで、副次的な振動である屈曲振動の振動状態は水晶片121の長辺または短辺に平行な水晶片121の長さに依存していることから、金属パターン122に交番電圧を印加したときに生じる副次的な振動である屈曲振動を分散させることが可能となる。この結果、副次的な振動である屈曲振動を分散させることできるので、副次的な振動である屈曲振動が主振動である厚みすべり振動と結合することを低減させることができ、水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させ電気的特性が悪化することを抑制させることが可能となる。
【0053】
また、このようにすることで、水晶片121に金属パターン122を設ける場合に、水晶片121の側面に確実に金属パターン122を設けることが可能となる。従って、水晶片121の上面側に設けられる接続配線部124と水晶片121の下面側に設けられる接続配線部124とをより確実に電気的に接続させることができ、接続配線部124が部分的に細くなることによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させ、電気的特性を向上させることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係る水晶素子120は、水晶素子120を平面視して、金属パターン122の励振電極部123が水晶片121の中央付近に設けられており、金属パターン122の接続配線部124の一部が水晶片121の一方の短辺の縁部に沿って設けられている。従って、第一凹部125a、第二凹部125bおよび第三凹部125cが形成されている水晶片121の一方の短辺の縁部に、金属パターン122の一部(接続部124aの一部)が設けられる。
【0055】
接続配線部124の一部、具体的には、接続部124aは、前述したように、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、基体110の搭載パッド111と対向する位置に設けられ、導電性接着剤140で搭載パッド111と電気的に接続されつつ接着される。別の観点では、接続配線部124aの一部、具体的には、接続部124aが設けられている部分が、導電性接着剤140によって固定されているといえる。従って、接続配線部124の一部、接続部124aを、凹部125が形成されている水晶片121の一方の短辺側に設けることにより、凹部125が形成されている水晶片121の一方の短辺を含む側面の両端部を導電性接着剤140によって固定されている状態にすることができる。
このため、凹部125が形成されていない水晶片121の他方の短辺側に接続部124aを設ける場合と比較して、副次的な振動である屈曲振動の発生を抑制することが可能となる。この結果、副次的な振動である屈曲振動が主振動である厚みすべり振動に与える影響を低減させることができ、電気的特性を向上させることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態に係る水晶素子120は、水晶片121の一方の短辺を含む側面を平面視して、金属パターン122の一部が、凹部125の底面に設けられている。具体的には、第一凹部125aは、第一凹部125aの底面を含む第一凹部125aを向く3面に金属パターン122の一部(接続配線部124の一部)が設けられている。また、第二凹部125bは、第二凹部125bの底面を含む第二凹部125bを向く3面に金属パターン122の一部(接続配線部124の一部)が設けられている。第三凹部125cは、第三凹部125cを向く3面のうち、第三凹部125cの底面を除く2面と第三凹部125cの底面の一部に金属パターン122の一部(接続配線部124の一部)が設けられている。
【0057】
このようにすることで、金属パターン122の一部が錘の役割を果たすこととなり、金属パターン122に交番電圧を印加したときに生じる副次的な振動である屈曲振動が生じることを抑制させることができる。この結果、副次的な振動である屈曲振動が主振動である厚みすべり振動と結合する量を低減させることができ、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させ、電気的特性を向上させることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態に係る水晶デバイスは、本実施形態に係る水晶素子120と、接続配線部124の一部と対向する位置に搭載パッド111が設けられている基板部110aを有した基体110と、接続配線部124の一部と搭載パッド111との間に設けられている導電性接着剤140と、基体110と接合している蓋体130とを備えている。従って、本実施形態に係る水晶デバイスは、このように等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ電気的特性を向上させた水晶素子120を用いているので、水晶デバイスの等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ電気的特性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態に係る水晶デバイスは、前述したような第一凹部125a、第二凹部125bおよび第三凹部125cからなる凹部125が形成されている水晶素子120を用いている。このような水晶素子120を用いることで、水晶片121の一方の短辺の両端部に力が加わった際に、水晶片121の中央部付近における水晶片121の短辺に平行な向きで生じる歪みを低減させることが可能となる。つまり、本実施形態に係る水晶デバイスは、このような水晶素子120を用いることで、導電性接着剤140が収縮する際に生じる収縮応が原因となっている水晶片121の中央付近における水晶片121の短辺に平行な向きで生じる歪みによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させ、電気的特性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る水晶デバイスは、前述したように、水晶片121の短辺の中央を通過し水晶片121の上面および水晶片121の下面に連なっている第三凹部125cが形成されている水晶素子120を用いている。このため、搭載パッド111上に塗布された導電性接着剤140を搭載パッド111と水晶素子120の接続部124aとで挟むように載置した際に、潰された導電性接着剤140が押し拡がったとしても、二カ所に塗布された導電性接着剤140が接触し、電気的に短絡し、水晶素子120が振動しなくとなることを低減させることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態に係る水晶デバイスは、導電性接着剤140が第一凹部125a内および第二凹部125b内に充填されている。
【0062】
このようにすることで、導電性接着剤140と水晶片121との接着面積を、水晶片121の第一凹部125aおよび第二凹部125bが形成されていない場合と比較して、広げることができ、接着力を高めることができる。このため、水晶デバイスが落下したような場合、水晶素子120が基体110の搭載パッド111とから剥離し、水晶デバイスとして使用することができなくなることを低減させることが可能となる。
【0063】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0064】
水晶素子を有するデバイスは、水晶振動子に限定されない。例えば、水晶素子に加えて水晶素子に電圧を印加して発振信号を生成する集積回路素子(IC)を有する発振器であってもよい。また、例えば、水晶デバイスは、水晶素子の他に、サーミスタ等の電子素子を有するものであってもよい。また、例えば、水晶デバイスは、恒温槽付きのものであってもよい。水晶デバイスにおいて、水晶素子を実装する基体の構造は、適宜構成されてもよい。例えば、基体は、上面および下面に凹部を有する断面H型のものであってもよい。
【0065】
水晶片は、平板状のものおよびメサ型のものに限定されない。