(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したドアパネルのような戸体は、表裏面材として金属製の薄板を使用しているためコストが高く、また、重量が嵩むという課題がある。このため、近年、芯材としてダンボールコア等を用い、表面材として例えば紙などの非金属製の部材を用いた、軽量かつ低コストの戸体が提供されている。このような戸体は、意匠性を向上させるために、表面材に壁紙などの化粧材を貼り付けるとともに、芯材及び表面材の外周を囲むように接着されるエッジ材における表面材側の見付け幅が狭く形成されている。エッジ材には戸体が備える錠などの機能部材が外周側から挿入される挿通孔が設けられており、エッジ材を接着している接着剤が挿通孔から露出して意匠性が低下する虞があるという課題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量で意匠性に優れ低コストの戸体及び建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の戸体は、パネル状の芯材、及び、前記芯材の厚み方向における両面に各々接着されている非金属製の表面材を有し、前記表面材の間において前記芯材が存在しない空隙部が、外周端面から内側に設けられている本体部と、前記本体部の前記外周端面と対向させて設けられるエッジ材と、前記エッジ材に固定されて前記空隙部内に配置され機能部品が固定される固定部材と、を有し、前記エッジ材は、前記空隙部と連通し前記機能部品が挿通される第1挿通孔を備え前記外周端面と対面するエッジ材対面部と、前記エッジ材対面部から、前記厚み方向と交差する幅方向における中央側に各々延出されたエッジ材延出部と、各々の前記エッジ材延出部から互いに対向する方向に突出する対向突出部と、を有し、前記固定部材は、前記エッジ材対面部と対面し、前記機能部品が挿通される第2挿通孔を備えた固定部材対面部と、前記固定部材対面部から前記幅方向の中央側に延出され前記厚み方向に間隔を空けて設けられて前記表面材と対面する一対の表面材対面部と、前記固定部材対面部の前記厚み方向において前記第2挿通孔より外側から外周側に突出し、前記厚み方向において前記エッジ材対面部の前記第1挿通孔より外側に当接される当接片と、を有し、前記対向突出部と前記固定部材とは間隔が空けられており、前記本体部は、前記エッジ材
延出部及び前記対向突出
部で形成される角部に付与された接着剤により接着されていることを特徴とする戸体である。
【0006】
このような戸体によれば、非金属製の表面材が、パネル状の芯材に接着されて本体部をなしているので、軽量且つ安価な戸体を提供することが可能である。また、表面材が、エッジ材
延出部及び対向突出
部で形成される角部に付与された接着剤により接着されているので、接着する際に、固定部材対面部及び対向突出部と本体部との間に接着剤が介在されるように配置されている。このとき、エッジ材の対向突出部と固定部材とは間隔が空けられているので、接着剤は、対向突出部と固定部材との隙間からエッジ材対面部側に押し出される。機能部品が挿入される第2挿通孔を備えた固定部材の固定部材対面部には、厚み方向における第2挿通孔の両側から外周側に突出してエッジ材対面部の第1挿通孔の外側に当接される当接片が設けられているので、接着剤がエッジ材対面部側に押し出されたとしても、第1挿通孔及び第2挿通孔の内側に進入することはなく、接着剤が外部に露出することはない。このため、軽量で意匠性に優れ低コストの戸体を提供することにある。
【0007】
かかる
戸体であって、前記固定部材は、水平断面が矩形状をなし、上下方向に連通する中空部を備えていることが望ましい。
このような戸体によれば、表面材の間において芯材が存在しない空隙部内に配置される金属製の固定部材が、水平断面が矩形状をなし、上下方向に連通する中空部を備えているので、戸体の厚み方向に作用する押圧力に対してより高い剛性を備えた戸体を提供することが可能である。
【0008】
また、前記戸体と、前記戸体が案内されるレールと、を有することを特徴とする建具である。
このような建具によれば、軽量で意匠性に優れ低コストの戸体を備えた建具を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量で意匠性に優れ低コストの戸体及び建具を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る戸体および建具について図面を参照して説明する。
本実施形態では、
図1、
図2に示すように、隣り合う二つの空間を連通する開口2aを開閉可能な、戸体としての引戸1を備え、上部に設けられたハンガー1aにより上レール2bに吊り下げられた引戸1が、上レール2bと下ガイド2cとに案内されて移動する、所謂、上吊り式の建具(以下、建具という)2を例に挙げて説明する。
【0012】
本実施形態においては、隣り合う2つの空間を室内空間及び室外空間として説明する。
上レール2bは、開口2aを形成するまぐさ2dに設けられており、下ガイド2cは、開口2aを形成する床2eに設けられている。
【0013】
引戸1は、芯材としてのパネル状をなすダンボールコア11、及び、ダンボールコア11の両面にそれぞれ接着された表面材12を有する引戸本体部10と、引戸本体部10の外周を囲み当該引戸本体部10の外周端面をなす上下左右の各端面10aと対面させて設けられたエッジ材13、14、15、16と、表面材12に貼り付けられた化粧材17と、を有している。
【0014】
ダンボールコア11は、略矩形状をなしており、室内側面11a及び室外側面11bにそれぞれグルーサンド紙などの紙製の部材でなる表面材12が接着剤により接着されている。
【0015】
引戸本体部10の上下方向においては、表面材12がダンボールコア11より上方及び下方にそれぞれ突出しており、左右方向においては、ダンボールコア11の端部と表面材12の端部とが一致している。また、引戸本体部10には、左側となる戸先側の一部に、表面材12の間においてダンボールコア11が存在しない空隙部10bが戸先側の端面10aから内側に設けられている。空隙部10bは、例えば、両面に表面材12が接着されているダンボールコア11が、戸先側の端面10a側から切除されて形成されている。
【0016】
エッジ材13、14、15、16はいずれも押出成形部材であり、ダンボールコア11の上の端面10aと対面する上エッジ材13及びダンボールコア11の下の端面10aと対面する下エッジ材14は、長手方向に沿って貫通し、断面がほぼ矩形状をなし中空部13a、14aを形成する中空部形成部13b、14bを有している。
【0017】
上エッジ材13の中空部形成部13bは、ダンボールコア11より上方に突出する表面材12間に挿入されて、ダンボールコア11の上の端面と対面し、中空部形成部13bの室内側及び室外側の壁部13cが、ダンボールコア11の室内側面11a及び室外側面11bとともに表面材12と接着されている。
【0018】
下エッジ材14の中空部形成部14bは、ダンボールコア11より下方に突出する表面材12間に挿入されて、ダンボールコア11の下の端面と対面し、中空部形成部14bの室内側及び室外側の壁部14cが、ダンボールコア11の室内側面11a及び室外側面11bとともに表面材12と接着されている。
【0019】
上エッジ材13には、上方に突出するハンガー1aが取り付けられており、下エッジ材14には、下ガイド2cが挿入される溝14dが形成されている。
【0020】
戸先側のエッジ材15と、戸尻側のエッジ材16とは、同一の部材であり、引戸本体部10の左側(戸先側)の端面10a(
図3)または右側(戸尻側)の端面10aと対面するとともに各端面10aと間隔を空けて設けられたエッジ材対面部15a、16aと、ダンボールコア11の厚み方向、すなわち、引戸本体部10の厚み方向におけるエッジ材対面部15a、16aの両端から、厚み方向と交差するダンボールコア11の幅方向、すなわち引戸本体部10の幅方向における中央側に各々延出されて厚み方向にて対向するエッジ材延出部15b、16bと、各エッジ材延出部15b、16bから互いに対向する側に突出された対向突出部15c、16cと、を有している。エッジ材対面部15a、16aには、引戸本体部10の厚み方向における中央側に、ダンボールコア11の端面側に窪む縦溝部15d、16dが設けられており、縦溝部15d、16dには、エッジ材対面部15a、16aとともに外周側の平坦な面を形成するようにカバー材3が嵌め込まれている。
【0021】
図3、
図4に示すように、戸先側のエッジ材15には、引戸1の戸先側に設けられる機能部品としての施錠ユニット4を固定するための、ステンレス製の固定部材5が固定されている。また、戸先側のエッジ材15には、引戸1内に施錠ユニット4を外周側から挿入するための第1挿通孔15eが設けられている。第1挿通孔15eは、厚み方向における幅が、戸先側のエッジ材15に設けられている縦溝部15dの幅より僅かに広い縦長の開孔である。
【0022】
固定部材5は、上下方向に貫通する中空部5aを形成して水平断面が矩形状をなす固定部材本体部5bと、固定部材本体部5bから戸先側に突出する突出片5cと、を有している。固定部材本体部5bは、中空部5aの戸先側の壁部をなし戸先側のエッジ材15のエッジ材対面部15aと対面する固定部材対面部5dと、固定部材対面部5dの縁から引戸1の幅方向の中央側、すなわち戸尻側にそれぞれ延出され表面材12と対面する一対の表面材対面部5eと、固定部材対面部5dと引戸1の幅方向に間隔を空けて設けられ一対の表面材対面部5eの戸尻側の縁を繋ぐ戸尻側壁部5fとを有している。
【0023】
固定部材対面部5dには、中空部5aに挿入される施錠ユニット4が挿通される第2挿通孔5gが設けられている。第2挿通孔5gは、固定部材対面部5dの、引戸1の厚み方向における幅より狭く上下方向に長い縦長の開孔である。また、固定部材対面部5dに、引戸1の厚み方向において、第2挿通孔5gを挟むように第2挿通孔5gの両側に、リブ状をなす2本の突出片5cが固定部材5の全長に渡って設けられている。突出片5cは、第2挿通孔5gより上方及び下方に長く繋がって形成されている。
【0024】
固定部材本体部5bを形成し、中空部5aの室内側及び室外側に位置する一対の表面材対面部5eには、施錠ユニット4と係合して室内側及び室外側から施錠・解除の操作を可能とする操作部6が挿入される操作部取付孔5hが設けられている。
【0025】
施錠ユニット4は、第1挿通孔15e及び第2挿通孔5gの幅より薄い直方体状の錠ケース4a内に施錠機構部4bが設けられており、室内側及び室外側から挿入されて施錠機構部4bと係合される操作部6を操作することにより施錠機構部4bが備える鉤状部4cが回動して戸先側から突出するように構成されている。鉤状部4cは、引戸1を閉じた状態で突出すると、開口2aを形成する戸当たり部2fに設けられている係合部(不図示)に係合されるように構成されている。錠ケース4aには、戸先側の縁に上下方向に各々突出し、取付金具7を介して固定部材5に取り付けられる固定片4dが設けられている。
【0026】
固定部材5は、リブ状をなす2本の突出片5c間の固定部材対面部5dに戸先側のエッジ材15の縦溝部15dの底をなす底形成部15gが当接され、固定部材5に施錠ユニット4を取り付けるための取付金具7に螺合されるビスによりエッジ材15に取り付けられる。より具体的には、戸先側のエッジ材15と固定部材5とは、第1挿通孔15e及び第2挿通孔5gが重なる位置で、底形成部15gが固定部材対面部5dに当接され、固定部材対面部5dの第2挿通孔5gの上及び下の部位に、中空部5a内からそれぞれ当接された2つの取付金具7に底形成部15g側から進入するビスが螺合されて接合されている。
【0027】
エッジ材15と固定部材5とを接合する取付金具7は、第1挿通孔15e及び第2挿通孔5gの上端側及び下端側からそれぞれ、施錠ユニット4の固定片4dがビス止めされるユニット固定部7aが、底形成部15gより戸先側に突出させて設けられている。上側の取付金具7のユニット固定部7aの下端と、下側の取付金具7のユニット固定部7aの上端との間隔は、錠ケース4aの上下方向の長さより広く形成されており、施錠ユニット4は、錠ケース4aが引戸1の戸先側から上下の取付金具7の間を通して固定部材5の中空部5a内に挿入されて固定片4dが当接されるユニット固定部7aに、第1挿通孔15fを覆うカバープレート8とともにビス止めされる。
【0028】
引戸本体部10との四周にエッジ材13、14、15、16が取り付けられた状態では、室内側及び室外側から見たときに、全周の周端部に各エッジ材の13、14、15、16のエッジ材延出部13d、14e、15b、16bに囲まれて表面材12が露出しており、表面材12に化粧材17が貼り付けられて引戸1をなしている。このため、引戸1を室内側及び室外側から見たときには、見付け幅が狭いエッジ材13、14、15、16は見えるものの略全域が化粧材17で覆われるため、引戸1はより高い意匠性を有している。
【0029】
図5に示すように、施錠ユニット4が固定部材5及び取付金具7を介して取り付けられた戸先側のエッジ材15は、固定部材5が、ダンボールコア11に設けられた空隙部10bに挿入されるとともに、エッジ材15のエッジ材延出部15b及び対向突出部15cにより形成される角部に接着剤18が付与された状態で、引戸本体部10の戸先側の端部10aが、引戸1の厚み方向に対向するエッジ材延出部15b間に挿入されて接着される。空隙部10bに配置された固定部材5は、空隙部10bにおける表面材12の厚み方向の押圧に対する補強材をなしている。
【0030】
引戸本体部10と戸先側のエッジ材15とが接着された状態では、固定部材5の2本の突出片5cが、エッジ材15のエッジ材対面部15aにおいて、引戸1の厚み方向における第1挿通孔15eの両側に当接しており、対向突出部15cと固定部材5との間には隙間Sが設けられている。ここで、固定部材5の突出片5cが、固定部材対面部5dの、引戸1の厚み方向において第2挿通孔5gより外側から外周側に突出し、引戸1の厚み方向においてエッジ材対面部15aの第1挿通孔15eより外側に当接される当接片に相当する。
【0031】
本実施形態の引戸1によれば、非金属製の表面材12が、パネル状のダンボールコア11に接着されて引戸本体部10をなしているので、軽量かつ安価な引戸1を提供することが可能である。また、表面材12が、エッジ材延出部15b及び対向突出部15cにより形成される角部に付与された接着剤18により接着されているので、エッジ材延出部15b及び対向突出部15cと引戸本体部10との間に接着剤18が介在される。そして、エッジ材15と引戸本体10とを接着する際には、接着剤18が、エッジ材15の対向突出部15cと固定部材5との隙間Sからエッジ材対面部15a側に押し出される。このため、接着剤18が表面材12側に露出することを防止することが可能である。
【0032】
また、施錠ユニット4が挿入される第2挿通孔5gを備えた固定部材5の固定部材対面部5dに、厚み方向における第2挿通孔5gの両側から戸先側に突出してエッジ材対面部15aの第1挿通孔15eの外側に当接される突出片5cが設けられているので、の対向突出部15cと固定部材5との隙間Sからエッジ材対面部15a側に押し出された接着剤18が、第1挿通孔15e及び第2挿通孔5gの内側に進入することはなく、接着剤18が戸先側から外部に露出することはない。このため、軽量で意匠性に優れ低コストの引戸1を提供することにある。
【0033】
また、表面材12の間においてダンボールコア11が存在しない空隙部10b内に配置される金属製の固定部材5が、水平断面が矩形状をなし、上下方向に連通する中空部5aを備えているので、面外方向に作用する押圧力に対してより剛性が高い引戸1を提供することが可能である。
また、軽量で意匠性に優れ低コストの引戸1を備えた建具2を提供することが可能である。
【0034】
上記実施形態においては、エッジ材15の対向突出部15cが、引戸1の厚み方向に沿って突出している例について説明したが、これに限らず、例えば、
図6(a)に示すように、対向突出部15cの先端側の部位が、突出方向の先端に向かってエッジ材対面部15a側に傾斜する、或いは、
図6(b)に示すように、対向突出部15cの先端側の部位がエッジ材対面部15a側に位置するように屈曲していてもよい。この場合には、対向突出部15cと固定部材5との間隔がより広がるので、接着剤18がエッジ材対面部15a側により移動し易くなる。
【0035】
また、上記実施形態においては、固定部材5の突出片5cが、引戸1の幅方向に沿って突出している例について説明したが、これに限らず、例えば、
図7(a)に示すように、突出片5cの先端側の部位が、突出方向の先端に向かってエッジ材延出部15b側に傾斜する、或いは、
図7(b)に示すように、突出片5cの先端が引戸1の厚み方向に沿って屈曲していてもよい。この場合には、突出片5cとエッジ材対面部15aとが重なる部分が広くなるので、接着剤18が戸先側に露出することをより確実に防止することが可能である。
【0036】
上記実施形態においては、機能部品として施錠ユニット4を例に挙げて説明したが、これに限らず、戸体の外周側からエッジ材の開孔を通して内部に挿入される部材であれば構わない。
上記実施形態においては、戸体として引戸1を例に挙げて説明したが、これに限らず開き戸等であっても構わない。
【0037】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 引戸、2 建具、2b 上レール、2c 下ガイド、4 施錠ユニット、
5 固定部材、5a 中空部、5c 突出片、5d 固定部材対面部、
5e 表面材対面部、5g 第2挿通孔、10 引戸本体部、10a 端面、
10b 空隙部、11 ダンボールコア、12 表面材、15 エッジ材、
15a エッジ材対面部、15b エッジ材延出部、15c 対向突出部、
15e 第1挿通孔、18 接着剤、
S 隙間