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特許6787812バスケットプレート設計方法、バスケットプレート製造方法、及びキャスク製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787812
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】バスケットプレート設計方法、バスケットプレート製造方法、及びキャスク製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20201109BHJP
   G21F 5/012 20060101ALI20201109BHJP
   G21F 5/00 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   G21C19/32 040
   G21C19/32 110
   G21F5/012
   G21F5/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-24914(P2017-24914)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-132361(P2018-132361A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】細田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】長谷 隆之
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 史人
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−175774(JP,A)
【文献】 特開2005−010020(JP,A)
【文献】 特開2006−349469(JP,A)
【文献】 特開平11−264893(JP,A)
【文献】 特開2001−183491(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0034541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
G21F 5/00
G21F 5/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなし、板幅方向の端部に切欠き部が形成され、前記切欠き部が互いに係合されることで、筒状をなす本体胴の内部で核燃料集合体を収容する格子状のバスケットを形成するバスケットプレートを設計するバスケットプレート設計方法であって、
熱伝導解析を行い、前記バスケットプレート上の温度分布を解析結果として取得する解析工程と、
前記解析工程で取得された解析結果から、前記バスケットプレート上の温度分布に対する標準偏差を取得する標準偏差取得工程と、
前記標準偏差取得工程で取得した前記標準偏差に基づいて、前記バスケットプレートの板幅方向の長さを決定するプレート幅決定工程とを含むバスケットプレート設計方法。
【請求項2】
前記バスケットプレートの板幅方向の長さと、前記本体胴の内部の高さと、が同一の場合の基準標準偏差に基づいて、取得した前記標準偏差を無次元化した評価値を取得する評価値取得工程と、
前記評価値取得工程で取得された前記評価値と、前記バスケットプレートの板幅方向の長さに対する前記本体胴の内部の高さの比との関係である第一関係を取得する第一関係取得工程とを含み、
前記プレート幅決定工程では、前記第一関係に基づいて、前記バスケットプレートの板幅方向の長さが決定される請求項1に記載のバスケットプレート設計方法。
【請求項3】
前記バスケットプレートの板幅方向の長さから前記本体胴の単位長さ当たりの前記バスケットの段数である単位段数を取得する段数取得工程と、
前記段数取得工程で取得した前記単位段数から前記バスケットの組立時間を取得する組立時間取得工程と、
重量が予め定めた規定重量となる場合の前記バスケットプレートの板幅方向の長さである許容長さを取得する許容長さ取得工程と、
前記段数取得工程で取得した前記単位段数と、前記組立時間取得工程で取得した前記組立時間と、前記許容長さ取得工程で取得した前記許容長さと、に基づいて、前記バスケットプレートの板幅方向の長さの上限値を決定する上限値決定工程と、を含み、
前記プレート幅決定工程では、前記上限値決定工程で決定された前記上限値を超えないように、前記バスケットプレートの板幅方向の長さが決定される請求項1又は請求項2に記載のバスケットプレート設計方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のバスケットプレート設計方法で決定された板幅方向の長さを有する板部材を準備する板部材準備工程と、
前記板部材の板幅方向の端部に切欠き部を形成してバスケットプレートを形成する切欠き部形成工程とを含むバスケットプレート製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のバスケットプレート製造方法で前記バスケットプレートを製造して準備するプレート準備工程と、
前記プレート準備工程で準備された前記バスケットプレートから前記バスケットを前記本体胴内に形成するキャスク組立工程と、を含むキャスク製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスケットプレート設計方法、バスケットプレート製造方法、及びキャスク製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの原子炉などで発生した放射性廃棄物は、放射性物質収納容器であるキャスクに収納された状態で、貯蔵施設や再処理施設などに搬送されて、貯蔵または再処理される。キャスクは、上部が開口した有底円筒状をなす本体胴と、本体胴内に収容されて複数の放射性廃棄物を収納可能なバスケットと、胴部の上部に固定されて開口を閉塞する蓋部とを有している。
【0003】
このようなキャスクが、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のキャスクでは、γ線遮蔽用の本体胴の中に、複数のバスケットプレートによって格子状に組み立てられたバスケットが収容されている。バスケットプレートには、複数の切欠きが形成されている。バスケットプレートは、この切欠き同士を互いに嵌めあって組み立てられることで格子状のバスケットを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−171135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バスケットプレートでは、バスケットを形成した際に、隣接するバスケットプレート間の熱伝導性の向上やバスケットの強度確保を目的に切欠きの形状が決定されている。そのため、切欠きがバスケットプレートの長手方向の熱伝導を阻害してしまう。その結果、バスケットプレートは、熱伝導性能が十分に発揮可能な形状とされていない場合がある。そのため、バスケットプレートの熱伝導性能を向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱伝導性能を向上させたバスケットプレートを得ることが可能なバスケットプレート設計方法、バスケットプレート製造方法、及びキャスク製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係るバスケットプレート設計方法は、板状をなし、板幅方向の端部に切欠き部が形成され、前記切欠き部が互いに係合されることで、筒状をなす本体胴の内部で核燃料集合体を収容する格子状のバスケットを形成するバスケットプレートを設計するバスケットプレート設計方法であって、熱伝導解析を行い、前記バスケットプレート上の温度分布を解析結果として取得する解析工程と、前記解析工程で取得された解析結果から、前記バスケットプレート上の温度分布に対する標準偏差を取得する標準偏差取得工程と、前記標準偏差取得工程で取得した前記標準偏差に基づいて、前記バスケットプレートの板幅方向の長さを決定するプレート幅決定工程とを含む。
【0008】
このような構成によれば、熱伝導解析を実施してバスケットプレート上の温度分布を取得した結果を用いて標準偏差を取得することで、板幅方向の長さの異なるバスケットプレートにおける温度のばらつきを把握することができる。その結果、標準偏差が小さく、短時間での温度分布が一様になるとみなせる場合のバスケットプレートの板幅方向の長さを求めることができる。したがって、熱伝導性能が高くなるバスケットプレートの板幅方向の長さを求めることができる。
【0009】
また、本発明の第二態様に係るバスケットプレート設計方法では、第一態様において、前記バスケットプレートの板幅方向の長さと、前記本体胴の内部の高さと、が同一の場合の基準標準偏差に基づいて、取得した前記標準偏差を無次元化した評価値を取得する評価値取得工程と、前記評価値取得工程で取得された前記評価値と、前記バスケットプレートの板幅方向の長さに対する前記本体胴の内部の高さの比との関係である第一関係を取得する第一関係取得工程とを含み、前記プレート幅決定工程では、前記第一関係に基づいて、前記バスケットプレートの板幅方向の長さが決定されていてもよい。
【0010】
このような構成とすることで、本体胴に収容可能な範囲の大きさのバスケットプレートの中で、熱伝導性の高いバスケットプレートの板幅方向の長さを求めることができる。したがって、より実製品に即した形状で熱伝導性能を向上させたバスケットプレートを得ることができる。
【0011】
また、本発明の第三態様に係るバスケットプレート設計方法では、第一又は第二態様において、前記バスケットプレートの板幅方向の長さから前記本体胴の単位長さ当たりの前記バスケットの段数である単位段数を取得する段数取得工程と、前記段数取得工程で取得した前記単位段数から前記バスケットの組立時間を取得する組立時間取得工程と、重量が予め定めた規定重量となる場合の前記バスケットプレートの板幅方向の長さである許容長さを取得する許容長さ取得工程と、前記段数取得工程で取得した前記単位段数と、前記組立時間取得工程で取得した前記組立時間と、前記許容長さ取得工程で取得した前記許容長さと、に基づいて、前記バスケットプレートの板幅方向の長さの上限値を決定する上限値決定工程と、を含み、前記プレート幅決定工程では、前記上限値決定工程で決定された前記上限値を超えないように、前記バスケットプレートの板幅方向の長さが決定されてもよい。
【0012】
このような構成とすることで、単位段数と組立時間との関係によって実際に製品を製造する際の組立コストを考慮してバスケットプレートの板幅方向の長さを決定することができる。この際、許容長さによってバスケットプレート自体の重量による影響を考慮することで、実際に製品を製造する際の条件により近づけて組立時間を把握することができる。したがって、実際にバスケットを組み立てる際に必要な組立時間から上限値を取得することで、組立コストに基づくバスケットプレートの大きさの上限を把握することができる。これにより、組立コストを抑えつつ、熱伝導性能の高いバスケットプレートを得ることができる。
【0013】
また、本発明の第四態様に係るバスケットプレート製造方法は、第一態様から第三態様の何れか一つのバスケットプレート設計方法で決定された板幅方向の長さを有する板部材を準備する板部材準備工程と、前記板部材の板幅方向の端部に切欠き部を形成してバスケットプレートを形成する切欠き部形成工程とを含む。
【0014】
このような構成とすることで、熱伝導性能の高いバスケットプレートを得ることができる。
【0015】
また、本発明の第五態様に係るキャスク製造方法は、第四態様のバスケットプレート製造方法で前記バスケットプレートを製造して準備するプレート準備工程と、前記プレート準備工程で準備された前記バスケットプレートから前記バスケットを前記本体胴内に形成するキャスク組立工程と、を含む。
【0016】
このような構成とすることで、熱伝導性能の高いバスケットプレートによってバスケットが形成される。そのため、キャスクとしての除熱性能を向上させることができる。したがって、除熱性能を向上させることで、収容した核燃料集合体の温度上昇を抑えることができる。さらに、除熱性能を向上させることで、収容する核燃料集合体の収容量を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱伝導性能を向上させたバスケットプレートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る放射性物質収納容器としてのキャスクの一例を示す側断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るバスケットプレートを示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るキャスク製造方法を示すフロー図である。
図4】本発明の実施形態に係るバスケットプレート設計方法を示すフロー図である。
図5】本発明の実施形態に係る解析工程での代表点の位置の一例を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る解析工程での代表点の位置の一例を示す模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る解析工程での代表点の位置の一例を示す模式図である。
図8】本発明の実施形態に係るBWRにおける第一関係を示すグラフである。
図9】本発明の実施形態に係るPWRにおける第一関係を示すグラフである。
図10】本発明の実施形態に係る第二関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
キャスク1は、放射性廃棄物として使用済みの核燃料集合体を収容する放射性物質収納容器である。図1に示すように、キャスク1は、胴部20と、蓋部30と、バスケット40と、を備えている。
【0020】
胴部20は、内部にバスケット40及び核燃料集合体を収容する。胴部20は、本体胴21と、外筒25と、中性子遮蔽体26と、トラニオン27とを有している。
【0021】
本体胴21は、一方に開口部22を有する有底円筒状をなしている。本実施形態では、本体胴21の延在する延在方向Deのうち、開口部22が形成されている側を第一側とし、底部23が形成されている側を第二側とする。本体胴21は、内部にバスケット40が収容可能なキャビティCが設けられている。このキャビティCは、その内面がバスケット40の外周形状に合わせた形状となっている。本体胴21は、例えば、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼や低合金鋼で形成されている。また、本体胴21は、底部23の下面との間隙を介して対向する底板24を有している。底部23と底板24との間隙には、中性子を遮断する樹脂材料であるエポキシ系レジンが充填されている。
【0022】
外筒25は、本体胴21の外周面を覆うように設けられている。外筒25は、その内周面と本体胴21の外周面との間に隙間を空けるように配置されている。
【0023】
中性子遮蔽体26は、本体胴21と外筒25との間の隙間に設けられている。本実施形態の中性子遮蔽体26は、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するボロンまたはボロン化合物を含有したエポキシ系レジンである。中性子遮蔽体26は、例えば、流動状態で図示しないパイプ等を介して隙間に注入され、固化されている。
【0024】
トラニオン27は、本体胴21の外周面に固定されている。トラニオン27は、キャスク1において径方向の相反する側に突出して対をなしている。トラニオン27は、延在方向Deに離間して二箇所に配置されている。したがって、トラニオン27は、少なくとも計四箇所に設けられている。
【0025】
蓋部30は、本体胴21の開口部22を閉塞している。本実施形態の蓋部30は、一次蓋31と、二次蓋32と、三次蓋33と、を有する。一次蓋31、二次蓋32、及び三次蓋33は、本体胴21に対して着脱可能とされている。
【0026】
一次蓋31は、本体胴21の延在方向Deの最も第二側で開口部22を直接塞ぐように設けられる。二次蓋32は、キャビティCに対して一次蓋31よりも外側(延在方向Deの第一側)に配置される。三次蓋33は、キャビティCに対して二次蓋32よりも外側(延在方向Deの第一側)に配置される。
【0027】
バスケット40は、キャビティCに配置される。バスケット40は、例えば、ボロン添加アルミニウム合金や炭素鋼によって形成されている。バスケット40は、使用済の燃料集合体が個々に収納される複数のセルを有する格子状をなしている。バスケット40は、隣接するセルが互いに平行かつ所定間隔で均等に配置されるように形成されている。セルは、延在方向Deに連続して形成されている。バスケット40は、図2に示すように、複数のバスケットプレート41によって形成されている。
【0028】
バスケットプレート41は、複数組み合わされることで、バスケット40を構成している。バスケットプレート41は、板状をなしている。バスケットプレート41は、板幅方向(短手方向)Dyの端部に切欠き部43が形成されている。本実施形態のバスケットプレート41は、矩形板状の板部材42に対して切欠き部43が形成されることで構成されている。切欠き部43は、矩形板状をなす板部材42の長手方向Dxの同じ位置で板幅方向Dyの両端部に形成されている。切欠き部43は、バスケットプレート41において、長手方向Dxに均等に離間して複数形成されている。切欠き部43は、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さの1/4程度の長さで形成されている、したがって、切欠き部43が形成されている領域のバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さは、切欠き部43が形成されていない領域のバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さの半分程度となっている。
【0029】
バスケットプレート41は、板厚方向Dzに均等に離間して複数配置された状態を一段とし、複数段にわたって長手方向Dxを交差させるように組み上げられることで、格子状のバスケット40を形成している。この際、本体胴21の延在方向Deとバスケットプレート41の板幅方向Dyは一致している。延在方向Deで隣接するバスケットプレート41は、切欠き部43が互いに係合されることで組まれている。バスケットプレート41は、長手方向Dxの両端部が本体胴21の内周面と接触するように、本体胴21内に収容される。
【0030】
次に上記キャスク製造方法S1について図3を参照して説明する。
キャスク製造方法S1は、上記キャスク1を製造する。本実施形態のキャスク製造方法S1は、部材準備工程S2と、プレート準備工程S3と、キャスク組立工程S4と、を含んでいる。
【0031】
部材準備工程S2では、バスケット40以外の部材を準備する。本実施形態の部材準備工程S2は、胴部20や蓋部30を製造して準備する。
【0032】
プレート準備工程S3は、熱伝導性能に優れたバスケットプレート41を準備する。プレート準備工程S3は、バスケットプレート製造方法S10で製造されたバスケットプレート41を準備する。
【0033】
キャスク組立工程S4は、部材準備工程S2で準備された胴部20や蓋部30と、プレート準備工程S3で準備されたバスケットプレート41とを組み立てる。具体的には、キャスク組立工程S4は、プレート準備工程S3で準備された複数のバスケットプレート41からバスケット40を本体胴21内に形成する。その後、本体胴21の開口部22を、一次蓋31、二次蓋32、及び三次蓋33で閉塞し、キャスク1が製造される。
【0034】
また、プレート準備工程S3では、バスケットプレート製造方法S10として、板部材準備工程S11と、切欠き部形成工程S12とを含む。
【0035】
板部材準備工程S11は、後述するバスケットプレート設計方法S100で決定された板幅方向Dyの長さを有する板部材42を準備する。板部材42は、決定された板幅方向Dyの長さを有する矩形平板状をなしている。
【0036】
切欠き部形成工程S12は、板部材42の板幅方向Dyの端部に切欠き部43を形成してバスケットプレート41を形成する。本実施形態の切欠き部形成工程S12では、複数の切欠き部43を板部材42の長手方向Dxに均等に離間させて、板部材42の板幅方向Dyの両端部に形成する。
【0037】
次に図4から図8を参照してバスケットプレート設計方法S100を説明する。
バスケットプレート設計方法S100は、熱伝導性能を効率的に発揮させることが可能なバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さを決定する設計方法である。本実施形態のバスケットプレート設計方法S100は、図4に示すように、解析工程S110と、標準偏差取得工程S120と、評価値取得工程S130と、第一関係取得工程S140と、上限値決定工程S150と、プレート幅決定工程S160とを含む。
【0038】
解析工程S110は、熱伝導解析を行い、バスケットプレート41上の温度分布を解析結果として取得する。本実施形態の解析工程S110では、有限要素法を用いた二次元非定常熱伝導解析を行い、バスケットプレート41上の温度分布を取得する。
【0039】
具体的には、解析工程S110では、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さである取得長さhcをパラメータとして二次元非定常熱伝導解析を実施する。解析条件は、例えば、初期温度35℃、長手方向Dxの一方の端部である短辺の温度を250℃、板幅方向Dyの両端部である長辺は対象境界条件として扱う。また、この際、キャスク1で保存する核燃料集合体が沸騰水型原子炉(BWR)で使用される場合、バスケットプレート41の材質を炭素鋼とし、熱伝導率[W/ mK]:35、密度[kg/m]:7850、比熱[J/kgK]:500との物性値を使用することが好ましい。また。キャスク1で保存する核燃料集合体が加圧水型原子炉(PWR)で使用される場合、バスケットプレート41の材質をアルミニウム合金とし、熱伝導率[W/ mK]:175、密度[kg/m]:2720、比熱[J/kgK]:970との物性値を使用することが好ましい。また、解析時間は、バスケットプレート41において長手方向Dxの一端から他端にわたって十分に熱を伝導させることが可能とみなせる時間とすることが好ましい。例えば、解析時間は、真空乾燥時間の8時間程度とすることが好ましい。
【0040】
標準偏差取得工程S120は、解析工程S110で取得された解析結果から、バスケットプレート41上の温度分布に対する標準偏差σを取得する。具体的には、標準偏差取得工程S120では、バスケットプレート41上の複数の代表点を定める。この複数の代表点での温度に基づいて、次式で標準偏差σを取得する。
【0041】
【数1】
【0042】
ここで、代表点は、図5図7に示すように、バスケットプレート41の全域にわたって選択されていれば、バスケットプレート41における角部や、切欠き部43の縁部等の任意の点を選択することが可能である。なお、図5に示すように板幅方向Dyに均等に代表点を選択したり、図7に示すように板幅方向Dyの間隔を密にするように代表点を選択したりするよりも、図6に示すような間隔で代表点を選択することが好ましい。
【0043】
標準偏差取得工程S120で取得した標準偏差σが大きい場合、バスケットプレート41上での温度分布のばらつきが大きく、バスケットプレート41の熱伝導性が優れていないことを示している。逆に、標準偏差取得工程S120で取得した標準偏差σが小さい場合、バスケットプレート41上での温度分布のばらつきが小さく、バスケットプレート41の熱伝導性が優れていることを示している。
【0044】
評価値取得工程S130は、標準偏差取得工程S120で取得した標準偏差σに基づいて、評価値σaを取得する。ここで、評価値σaは、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さと、本体胴21の内部の高さである基準高さHと、が同一の場合の基準標準偏差に基づいて、取得した標準偏差σを無次元化した値である。本実施形態の評価値取得工程S130は、標準偏差取得工程S120で取得した標準偏差σを基準標準偏差で除すること評価値σaを取得する。なお、本体胴21の内部の高さは、キャビティCの延在方向Deの長さである。
【0045】
第一関係取得工程S140は、評価値取得工程S130で取得された評価値σaに基づいて、第一関係を取得する。第一関係は、評価値取得工程S130で取得された評価値σaと、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さに対する本体胴21の内部の高さの比である高さ比Rとの関係である。第一関係取得工程S140では、取得した第一関係から、評価値σaを縦軸、高さ比Rを横軸としてグラフ化する。例えば、バスケットプレート41がBWRを対象とするキャスク1に使用される場合、第一関係は図8のように示される。また、バスケットプレート41がPWRを対象とするキャスク1に使用される場合、第一関係は図9のように示される。
【0046】
上限値決定工程S150は、使用可能なバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さの上限値を決定する。本実施形態の上限値決定工程S150は、段数取得工程S151と、組立時間取得工程S152と、許容長さ取得工程S153と、上限値取得工程S154とを含む。なお、本実施形態の上限値決定工程S150は、第一関係取得工程S140の後に実施されているが、このような実施順序に限定されるものではない。例えば、上限値決定工程S150は、解析工程S110と並行して実施されてもよい。
【0047】
段数取得工程S151は、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さから本体胴21の単位長さ当たりのバスケット40の段数である単位段数を取得する。ここで、バスケット40の段数とは、本体胴21の内部に収容された状態での本体胴21の延在方向Deに対するバスケットプレート41の積層数である。したがって、例えば、単位段数が二の場合、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さは、本体胴21の内部の高さの半分となる。
【0048】
組立時間取得工程S152は、段数取得工程S151で取得した単位段数からバスケット40の組立時間tを取得する。本実施形態では、バスケット40の組立時間tは、例えば、バスケットプレート41の重量ごとに、人員一名によるバスケット40一個当たりの設置時間を予め定めて取得する。
【0049】
許容長さ取得工程S153は、予め定めた規定重量を超す場合のバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さである許容長さを取得する。ここで、規定重量は、組立時間tに影響を与えるとみなせるバスケットプレート41の重量である。本実施形態の規定重量とは、例えば、バスケットプレート41を運搬する際に運搬機材が必要となる重量である。したがって、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さが許容長さを超えた場合、組み立てに運搬機材が必要となるため、組立時間tが短縮される。
【0050】
上限値取得工程S154は、段数取得工程S151で取得した単位段数と、組立時間取得工程S152で取得した組立時間tと、許容長さ取得工程S153で取得した許容長さとに基づいて、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さの上限値を決定する。本実施形態の上限値取得工程S154は、図10に示すように、取得した組立時間tと高さ比Rとの関係である第二関係を取得する。また、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さが許容長さである場合の高さ比Rである許容高さ比Raを取得する。なお、許容高さ比Raにおいて、バスケットプレート41を運搬する際に運搬基材が必要となるために、組立時間tは低下する。上限値取得工程S154では、第二関係と許容高さ比Raとに基づいて、許容可能な組立時間t内で最も高さ比Rが大きな値からバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さの上限高さ比Rtを決定する。
【0051】
プレート幅決定工程S160は、標準偏差取得工程S120での取得した標準偏差σに基づいて、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さを決定する。本実施形態のプレート幅決定工程S160は、第一関係と第二関係とに基づいて、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さが決定される。この際、プレート幅決定工程S160では、第一関係に即した値であって、上限値決定工程S150で決定された上限高さ比Rtを超えない値となるように、バスケットプレート41の板幅方向Dyの長さが決定される。
【0052】
上記のようなバスケットプレート設計方法S100によれば、二次元非定常熱伝導解析を実施してバスケットプレート41上の温度分布を取得した結果を用いて標準偏差σを取得している。そのため、板幅方向Dyの長さの異なるバスケットプレート41における温度のばらつきを把握することができる。具体的には、取得した標準偏差σが小さいことで、温度のばらつきが小さくバスケットプレート41の温度分布が一様になっていることが分かる。その結果、標準偏差σが小さく、短時間での温度分布が一様になるとみなせる場合のバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さを求めることができる。したがって、切欠き部43の形状や大きさや数によって変化する熱伝導性能を考慮して、熱伝導性能が高くなるバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さを求めることができる。したがって、熱伝導性能を向上させたバスケットプレート41を得ることができる。
【0053】
また、取得した標準偏差σから第一関係を取得することで、本体胴21に収容可能な範囲の大きさのバスケットプレート41の中で、熱伝導性の高いバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さを求めることができる。したがって、より実製品に即した形状で熱伝導性能を向上させたバスケットプレート41を得ることができる。
【0054】
また、単位段数と組立時間tとの関係によって実際に製品を製造する際の組立コストを考慮してバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さを決定することができる。この際、許容長さによってバスケットプレート41自体の重量による運搬機材の有無等の影響を考慮することで、実際に製品を製造する際の条件により近づけて組立時間tを把握することができる。バスケットプレート41は、大きくなればなるほどバスケット40を組み立てる組立時間tが増加するが、一定の大きさまで大きくなると運搬等で機械を使用しなければ組み立てが困難になる。この場合、運搬機材を使用することで、組立時間tが減少し、全体としての組立コストが減少する場合がある。したがって、実際にバスケット40を組み立てる際に必要な組立時間tから上限高さ比Rtを取得することで、組立コストに基づくバスケットプレート41の大きさの上限を把握することができる。これにより、組立コストを抑えつつ、熱伝導性能の高いバスケットプレート41を得ることができる。
【0055】
また、バスケットプレート製造方法S10によれば、バスケットプレート設計方法S100で決定した熱伝導性能が高いバスケットプレート41の板幅方向Dyの長さを有するバスケットプレート41を得ることができる。
【0056】
また、キャスク製造方法S1によれば、熱伝導性能の高いバスケットプレート41によってバスケット40が形成される。そのため、キャスク1としての除熱性能を向上させることができる。したがって、除熱性能を向上させることで、収容した核燃料集合体の温度上昇を抑えることができる。さらに、除熱性能を向上させることで、収容する核燃料集合体の収容量を向上させることができる。
【0057】
(実施形態の他の変形例)
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0058】
なお、本実施形態のバスケットプレート設計方法S100で設計されるバスケットプレート41の解析工程S110の条件は上記のような条件であることに限定されるものではなく、使用される条件に応じて適宜設定されてばよい。
【符号の説明】
【0059】
1 キャスク
20 胴部
21 本体胴
22 開口部
23 底部
24 底板
C キャビティ
25 外筒
26 中性子遮蔽体
27 トラニオン
30 蓋部
31 一次蓋
32 二次蓋
33 三次蓋
40 バスケット
41 バスケットプレート
42 板部材
43 切欠き部
De 延在方向
Dx 長手方向
Dy 板幅方向
Dz 板厚方向
S1 キャスク製造方法
S2 部材準備工程
S3 プレート準備工程
S10 バスケットプレート製造方法
S11 板部材準備工程
S12 切欠き部形成工程
S100 バスケットプレート設計方法
S110 解析工程
S120 標準偏差取得工程
S130 評価値取得工程
S140 第一関係取得工程
S150 上限値決定工程
S151 段数取得工程
S152 組立時間取得工程
S153 許容長さ取得工程
S154 上限値取得工程
S160 プレート幅決定工程
S4 キャスク組立工程
hc 取得長さ
σ 標準偏差
σa 評価値
R 高さ比
H 基準高さ
Ra 許容高さ比
t 組立時間
Rt 上限高さ比
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10