(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787826
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】水素生成用セル、集光型水素生成用セルおよび水素製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/10 20060101AFI20201109BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20201109BHJP
C01G 45/00 20060101ALI20201109BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20201109BHJP
【FI】
C01B3/10
C01G51/00 B
C01G45/00
H01M8/0612
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-63103(P2017-63103)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-165228(P2018-165228A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大隈 丈司
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雅英
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第104418298(CN,A)
【文献】
特開2005−046808(JP,A)
【文献】
特開2008−194549(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0004801(US,A1)
【文献】
特開2009−263165(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0891925(KR,B1)
【文献】
国際公開第2013/141385(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2015−0094825(KR,A)
【文献】
DEMONT, Antoine, et al.,Investigation of Perovskite Structures as Oxygen-Exchange Redox Materials for Hydrogen Production fr,The Journal of Physical Chemistry C,米国,2014年 5月28日,Vol.118, No.24,PP.12682-12692,ISSN 1932-7447, DOI:10.1021/jp5034849
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−6/34
C01G 25/00−47/00
C01G 49/10ー99/00
B01J 21/00−38/74
H01M 8/04−8/0668
インターネット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粒子と、金属粒子との複合体を、気体で満たされている筐体内に備えている水素生成用セルであって、
前記セラミック粒子は、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3−δまたはBa0.5Sr0.5Co0.8Fe0.2O3−δであり、
前記金属粒子は、Niを主成分とする母材粒子の表面に、Ptを主成分とする被覆粒子が担持されたものであり、
前記被覆粒子は、前記母材粒子の表面の全面を被覆しているか、
または前記被覆粒子は、前記母材粒子の表面に凹凸を形成するように、一部離間した状態で付着しているか、のいずれかである、水素生成用セル。
【請求項2】
請求項1に記載の水素生成用セルによって構成さる水素生成部と、La0.8Sr0.2MnO3を主成分とし、MnサイトにFeを0.5モル置換したペロブスカイト材料とホウケイ酸ガラスとからなる光吸収部と、
で構成される、集光型水素生成用セル。
【請求項3】
前記光吸収部は、開気孔率が5%以下のセラミックス中に、該セラミックスとは組成が異なる複合酸化物粒子を複数有するセラミック複合体である、請求項2に記載の集光型水素生成用セル。
【請求項4】
前記水素生成部および前記光吸収部がともに円柱状を成しており、前記光吸収部内に前記水素生成部が配置されている、請求項2または3に記載の集光型水素生成用セル。
【請求項5】
太陽光エネルギーを受けて酸化・還元反応を起こす反応部と、該反応部に水を供給する水蒸気供給部と、前記反応部から発生する水素ガスを回収する回収部とを備え、前記反応部に請求項2乃至4のうちいずれかに記載の集光型水素生成用セルが設置されていることを特徴とする水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素生成用セル、集光型水素生成用セルおよび水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の消費に伴う二酸化炭素の増加による地球温暖化などの問題の解決策として、化石燃料に代わって二酸化炭素を排出しないクリーンな再生可能エネルギーの開発が重要度を増している。
【0003】
再生エネルギーの一つである太陽光エネルギーは枯渇の心配が無く、また、温室効果ガスの削減に貢献できる。また、近年、燃料電池が普及し始め、水素エネルギー社会の牽引役として期待されている。現在製造されている水素の大半は原料として化石燃料を用いており、根本的な化石燃料削減の面では課題がある。
【0004】
このような状況の中、一次エネルギーを太陽光に求め、二次エネルギーを水素で支える形は、理想的なクリーンエネルギーシステムの一つであり、その確立が急務である。
【0005】
例えば、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換する方法の一つとして、セリア(CeO
2)などのセラミック部材を反応系担体として用いたときに発生する2段階水分解反応を利用することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
これは、第1のステップでは、太陽光エネルギーを用いて反応系担体であるセラミック部材を1400〜1800℃に加熱し、当該セラミック部材を還元して酸素を生成し、次いで、第2のステップでは、還元されたセラミック部材を300〜1200℃で水と反応させて還元されたセラミック部材を酸化して水素を生成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−263165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、現段階では、太陽光エネルギーからの熱を利用して、セラミック部材からなる反応系単体を直接加熱するようにして、水蒸気から水素を直接生成させた例は無いというのが実際のところである。
【0009】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水蒸気から水素を効率良く生成させることのできる水素生成用セル、集光型水素生成用セルおよび水素製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の水素生成用セルは、
セラミック粒子と、
金属粒子との複合体を、気体で満たされている筐体内に備えてい
る水素生成用セル
であって、前記セラミック粒子は、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3−δまたはBa0.5Sr0.5Co0.8Fe0.2O3−δであり、前記金属粒子は、Niを主成分とする母材粒子の表面に、Ptを主成分とする被覆粒子が担持されたものであり、前記被覆粒子は、前記母材粒子の表面の全面を被覆しているか、または前記被覆粒子は、前記母材粒子の表面に凹凸を形成するように、一部離間した状態で付着しているか、のいずれかである。
【0011】
本開示の集光型水素生成用セルは、上記の水素生成用セルによって構成さる水素生成部と、
La0.8Sr0.2MnO3を主成分とし、MnサイトにFeを0.5モル置換したペロブスカイト材料とホウケイ酸ガラスとからなる光吸収部と、で構成されるものである。
【0012】
本開示の水素製造装置は、太陽光エネルギーを受けて酸化・還元反応を起こす反応部と、該反応部に水を供給する水蒸気供給部と、前記反応部から発生する水素ガスを回収する回収部とを備え、前記反応部に上記の集光型水素生成用セルが設置されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、水蒸気から水素を効率良く生成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の水素生成用セルの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】金属粒子の他の態様を示す断面模式図である。
【
図3】本開示の集光型水素生成用セルの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】(a)は、光吸収部の内側に水素生成部が配置されている本実施形態の集光型水素生成用セルの構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)のX−X線断面図である。
【
図5】本実施形態の水素製造装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本開示の水素生成用セルの一実施形態を模式的に示す断面図である。本実施形態の水素生成用セルAは、セラミック粒子1と金属粒子3との複合体5よって構成されている。また、複合体5は気体で満たされた筐体7内に備えられている。
【0016】
この場合、セラミック粒子1は、組成式がAXO
3±δ(但し、0≦δ≦1、A:希土類元素、アルカリ土類元素、およびアルカリ金属元素のうちの少なくとも1種の元素、X:遷移金属元素およびメタロイド元素のうちの少なくとも1種、O:酸素)で表される複合金属酸化物である。一方、金属粒子3は、Rh、Ru、Pd、Pt、Ni、CoおよびFeのうちの少なくとも1種の元素を主成分として含むものである。ここで、主成分とは、当該元素を90質量%以上含む場合を意味する。
【0017】
複合体5が気体(空気)で満たされた空間9を有する筐体7内に置かれた状態で、複合体5に水蒸気を触れさせると、
図1に示すように、水蒸気(H
2O)が水素(H
2)と酸素(O
2)とに分解する。この場合、水蒸気(H
2O)から分解した酸素(O
2)は、O
2−として表される陰イオンとしてセラミック粒子1の内部へ移動し、一旦、セラミック粒子1内に存在することになる。一方、水素(H
2)は、複合体5から離れて筐体7の空間9内に拡散する。
【0018】
本実施形態の水素生成用セルAによれば、空気で満たされた空間9に、空気以外の気体として水蒸気(H
2O)を存在させた状態で、その水蒸気(H
2O)の分解反応によって水素(H
2)を生成させることができる。本実施形態の場合、複合体5の周囲に水などの液体が存在しないことから、複合体5の表面に接触する水蒸気量を大幅に増やすことができる。その結果、水素(H
2)の生成効率を高めることができる。
【0019】
この場合、セラミック粒子1としては、鉄酸ランタンを主相とし、ストロンチウムおよびコバルトを含むLa系複合金属酸化物、または鉄酸バリウムを主相とし、ストロンチウムおよびコバルトを含むBa系複合金属酸化物が良い。
【0020】
La系複合金属酸化物のモル比で表される組成としては、La=0.5〜0.7、Sr
=0.3〜0.5、Co=0.1〜0.3、Fe=0.7〜0.9、O=3±0.1〜0.9が良い。一方、Ba系複合金属酸化物のモル比で表される組成としては、Ba=0.4〜0.6、Sr=0.4〜0.6、Co=0.7〜1.0、Fe=0.1〜0.3、O=3±0.1〜0.9が良い。
【0021】
ここで、主成分とは、例えば、セラミック粒子1をX線回折によって同定を行ったときに、メインピークとして現れる結晶相のことを意味する。
【0022】
図2は、金属粒子の他の態様を示す断面模式図である。金属粒子3としては、上記したRh、Ru、Pd、Pt、Ni、CoおよびFeのうちの少なくとも1種の元素を主成分として単独で含むものを用いても良いが、コストの点および金属粒子3の耐食性の点から、Ni、CoおよびFeの群から選ばれる少なくとも1種の卑金属を主成分とする母材粒子3aの表面に、Rh、Ru、PdおよびPtの群から選ばれる少なくとも1種の貴金属を主成分とする被覆粒子3bが担持された複合粒子であるのが良い。この場合、被覆粒子3bは、母材粒子3aの表面の全面を被覆した状態でも良いが、金属粒子3の比表面積を向上できるという点から、母材粒子3aの表面に凹凸を形成するように、一部離間した状態で付着しているのが良い。
【0023】
次に、本実施形態の集光型水素生成用セルについて説明する。
図3は、本開示の集光型水素生成用セルの一実施形態を模式的に示す断面図である。本実施形態の集光型水素生成用セルBは、水素生成部11と光吸収部13とで構成されている。この場合、水素生成部11と光吸収部13とは主面同士で接触している。ここで主面とは、水素生成部11および光吸収部13が複数の平坦な表面を有している場合に、最も面積の大きい表面のことである。
【0024】
水素生成部11は上記した水素生成用セルAによって形成されている。水素生成部11は、セラミック粒子1と金属粒子3とで構成される複合体5が複数の空隙14を有するように多孔質の状態で焼結した構造となっている。
【0025】
集光型水素生成用セルBにおいても、水素生成部11および光吸収部13はともに気体で満たされた筐体7内に設置されている。
【0026】
本実施形態の集光型水素生成用セルBによれば、水素生成部11に光吸収部13が取り付けられていることから、太陽光エネルギーを熱に変換する効率が高まり、水素生成部11の温度をより高くすることができる。これにより水蒸気(H
2O)の分解反応の速度が高まり、水素(H
2)の生成効率をさらに高めることができる。
【0027】
この場合、集光型水素生成用セルBは、筐体7の内部に存在する媒体が空気であることから光の透過性が高い。このため、筐体7の内部に設置されている集光型水素生成用セルBは光の減衰率の低い状態で光を受けることができる。これにより光吸収部13における発熱効率とともに、水素生成部11における水素(H
2)の生成効率を高めることができる。
【0028】
光吸収部13は、開気孔率が5%以下のセラミックス13a中に当該セラミックス13aとは組成が異なる複合酸化物粒子13bを複数有するセラミック複合体によって形成されているのが良い。この場合、複合酸化物粒子13bとしては正の抵抗温度特性を示すセラミック材料が好適なものとなる。この複合酸化物粒子13bは金属と同様の抵抗温度特性を示すものであるため、複合酸化物粒子13b中に電子と同様のキャリア(電子)を有している。そのため複合酸化物粒子13bはキャリア(電子)による高い表面プラズモン効果を発現する。その結果、光吸収部13はその全体が発熱するものとなり、高い発熱効
率を得ることができる。
【0029】
ここで、複合酸化物粒子13bの材料としては、ABO
3として表されるペロブスカイト型のセラミック材料が好適なものとなる。例えば、ABO
3のAサイトに希土類元素を含み、一方、Bサイトに遷移金属元素を含み、さらに、複合酸化物粒子13bに、AサイトおよびBサイトの元素とは価数の異なる元素を微量含むものが良い。例えば、ABO
3のAサイトがランタン(La)であり、Bサイトがマンガン(Mn)であり、これに微量のSrを含む材料を好適な例として挙げることができる。例えば、La
1−xSr
xMnO
3+δ(x=0.01〜0.9、δは任意。)として表される複合酸化物が代表的なものとなる。この場合、複合酸化物粒子13bのサイズ(平均粒径)としては、微細であるのが良く、表面プラズモン効果を高められるという点から5〜100nmが良い。
【0030】
セラミックス13aとしては、クラックなどが生じにくく、光の透過性および耐熱性に優れるという点で酸化ケイ素を主成分とする低熱膨張性のガラスが好適なものとなる。この場合、セラミックス13aとしては、色の明度としてマンセルカラーシステムで区別される明度表示で5以上であるものが良い。また、セラミックス13aに複合酸化物粒子13bを含む状態(セラミック複合体)での熱膨張率として、9×10
−6/℃以下であるものが良い。セラミック複合体の熱膨張率が9×10
−6/℃以下であると、耐熱衝撃性が高まり、高寿命の光吸収部13を形成することができる。
【0031】
さらに、複合酸化物粒子13bの表面プラズモン効果を高められるという点から、セラミック複合体中に含まれる複合酸化物粒子13bの割合は、体積比で10〜80%であるのが良い。
【0032】
なお、光吸収部13を構成する複合酸化物粒子13bの割合は、セラミック複合体の断面を電子顕微鏡およびこれに付設の分析器(EPMA)を用いて求める。例えば、セラミック複合体を研磨して複合酸化物粒子13bを露出させ、その断面に存在する複合酸化物粒子13bが30〜100個入る所定の領域を指定する。次に、この領域の面積およびこの領域内に存在する複合酸化物粒子13bの合計面積を求め、領域の面積に対する複合酸化物粒子13bの合計面積を求める。こうして求めた面積割合を体積割合と考える。複合酸化物粒子13bがセラミックス1中において単一の粒子として孤立した状態で存在しているか否かの判定も上記の観察から個数をカウントして行う。
【0033】
図4(a)は、本実施形態の集光型水素生成用セルの他の態様を示すものであり、光吸収部の内側に水素生成部が配置されている構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)のX−X線断面図である。
図4に示した集光型水素生成用セルについては筐体7を描いていないが、この集光型水素生成用セルも
図3に示した集光型水素生成用セルと同様、筐体7内に設置される構成となる。
【0034】
図4(a)(b)に示す集光型水素生成用セルCでは、光吸収部13が太陽光を受けると、光吸収部13および水素生成部11が加熱されて高温状態となる。この状態において、水素生成部11に水蒸気を導入すると、水素生成部11内に水素が発生する。発生した水素は、例えば、
図4(b)に示すように、水蒸気を導入した端部の反対側から回収される。
【0035】
図4(a)(b)に示す集光型水素生成用セルCの場合、円柱状の水素生成部11が円筒状の光吸収部13に囲まれた構造であることから、光吸収部13は集光性が高く、水素生成部11は放射による熱損失の小さい集光型水素生成用セルCとなる。
【0036】
図5は、本実施形態の水素製造装置を模式的に示す断面図である。本実施形態の水素製
造装置Dは、太陽光エネルギーを受けて酸化・還元反応を起こす反応部21と、反応部21に水蒸気を供給する水蒸気供給部23と、反応部21から発生する水素ガスまたは酸素ガスを回収する回収部25とを備えたものである。この場合、反応部21に上記した集光型水素生成用セルCが設置されている。また、反応部21はこの場合も空気を媒体とする筐体7内に設置されている。なお、
図5に示した水素製造装置Dにおいて、水素分離モジュール27と回収部25との間および筐体7の回収部25側には減圧用ポンプ31a、31bが設置されている。
【0037】
水素製造装置Dにおいて、反応部21を構成する光吸収部13が太陽光を吸収すると、水素生成部11が光吸収部13とともに高温の状態となる。このとき反応部21を構成している水素生成部11に水蒸気(H
2O)を流すと、水素生成部11の内部において水素ガスが発生する。こうして本実施形態の水素製造装置によれば、太陽光からの熱を吸収して水素を効率良く発生させることができる。
【0038】
ここで、反応部21は、
図5に示しているように、筐体7の中に減圧された状態で収容されているのが良い。これにより光吸収部13によって生成した熱が反応部21以外の外界へ移動するのを防ぐことができる。こうして光吸収部13で蓄えられた熱を水素生成部11へ効率良く供給することができる。
【0039】
なお、本実施形態の水素製造装置Dでは、反応部21と回収部25との間に水素分離モジュール27を設置している。これにより反応部21から回収部25へ向けて移動してくる水素をより高い純度で回収することが可能になる。
【0040】
水素分離モジュール27としては、例えば、多孔質のセラミック管27aをガラス管27b内に設置した構成を例として挙げることができる。
【0041】
また、筐体7の中には集光板29を設置しておくのが良い。これにより太陽光の入射側と反対側の反応部21の裏側にも太陽光を当てることができる。こうして反応部21において、水素生成反応の効率の低い部分の面積を小さくすることができる。その結果、水素の生成効率を高めることができる。
【実施例】
【0042】
以下、水素製造装置を作製し、水素の生成量を測定した。まず、水素生成用セルを形成するためのセラミック粒子として、La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3−δおよびBa
0.5Sr
0.5Co
0.8Fe
0.2O
3−δを用意した。金属粒子としては、Pt単体の場合と、Niを母材粒子としPtを被覆粒子とした複合金属の場合との2種類を用意した。光吸収部には、La
0.8Sr
0.2MnO
3を主成分とし、MnサイトにFeを0.5モル置換したペロブスカイト材料を用いた。
【0043】
次に、準備したセラミック粒子と金属粒子とをボールミルを用いて混合して成形体を作製し、大気雰囲気中、1150℃にて焼結させて円柱状の水素生成用セルを作製した。
【0044】
光吸収部は、ホウケイ酸ガラスと上記したペロブスカイト材料とを混合して、円筒状の成形体を作製し、大気中、1400℃の温度にて焼結させて作製した。作製した光吸収部の開気孔率は4.5%であった。
【0045】
次に、光吸収部と水素生成部とをセラミックボンドによって接合して集光型水素生成用セルを作製した。
【0046】
また、筐体として石英ガラスの窓を備えたSUS304製の箱型容器を用意し、
図5に
示した構成の水素製造装置を作製した。
【0047】
次に、筐体中に集光型水素生成用セルを装着し、水素の製造試験を行い、水素の生成量を評価した。
【0048】
水素の生成量は、水素製造装置の回収部にガスクロマトグラフ装置を設置して測定した。この場合、水素製造装置は、筐体内を減圧した上で太陽光を1SUNの状態で受ける条件に設定した。太陽光の照射回数は10サイクルとした。
【0049】
試験の結果、セラミック粒子に金属粒子を担持させた試料No.1(金属粒子:Pt)および試料No.2(金属粒子はNiを母材粒子とし、Ptを被覆粒子としたもの)の水素生成用セルは、水素の生成量がそれぞれ0.4ml/g、1.1ml/gであったが、水素生成用セルをセラミック粒子だけで作製した試料No.3では、水素の生成量は0.01ml/g以下であった。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・セラミック粒子
3・・・・金属粒子
3a・・・母材粒子
3b・・・被覆粒子
5・・・・複合体
7・・・・筐体
9・・・・空間
11・・・水素生成部
13・・・光吸収部
21・・・反応部
23・・・水蒸気供給部
25・・・回収部
A・・・・水素生成用セル
B、C・・集光型水素生成用セル
D・・・・水素製造装置