(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の微粒子検出センサの実施の形態の一例を説明する。
【0015】
図1は、内燃機関およびその周辺の構成の一例を示す概略図である。内燃機関であるエンジン1は、たとえば自動車用のディーゼルエンジンであり、吸気マニホールド2を介して吸気通路3に接続され、排気マニホールド4を介して排気通路5に接続されている。排気通路5は、排気ガスの一部を吸気側へ再循環させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)通路6を介して吸気通路3に接続されている。
【0016】
排気通路5には、たとえば、タービン51と、ディーゼル酸化触媒(DOC)52と、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)53と、本実施の形態に係る微粒子検出センサ10と、が設けられている。タービン51は、排気通路5を流れる排気ガスによって回転する。DOC52は、たとえば、排気ガスに含まれる未燃焼の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)などを酸化して無害化処理する。DPF53は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕捉する。
【0017】
吸気通路3には、たとえば、エアフロメータ31と、過給機32と、インタークーラ33が設けられている。エアフロメータ31は、エンジン1への吸気量を計測する。過給機32は、タービン51の回転に連動して回転することで、吸気通路3を流れる空気の圧力を上昇させる。インタークーラ33は、過給機32の圧縮により温度が上がった空気を冷却する。
【0018】
EGR通路6には、EGRバルブ61と、EGRクーラ62が設けられている。EGRバルブ61は、たとえばモータによって駆動され、EGR通路6を介して再循環させる排気ガス量を調整する。EGRクーラ62は、高温の排気ガスの温度を下げることによりガス密度を高め、エンジン1の損失低減およびノッキングを防止する。
【0019】
エンジン1から排出され、排気マニホールド4を介して排気通路5を流れる排気ガスによってタービン51が回転すると、タービン51の回転に連動して過給機32が回転し、圧縮された空気がインタークーラ33を通過して吸気マニホールド2に送られる。排気通路5を流れる排気ガスの一部は、EGR通路6を流れ、EGRクーラ62を通過し、EGRバルブ61を介して吸気マニホールド2に還流される。
【0020】
このように、
図1に示す例では、過給によりエンジン1の吸気量を増加させて燃焼効率を高め、EGRにより燃焼を緩やかにしてNOx等の排出を抑制する。また、排気マニホールド4を流れてタービン51を通過した排気ガスは、排気通路5を流れ、DOC52を通過して無害化処理され、DPF53を通過してPMが捕集される。排気ガス中に含まれる微粒子であるPMは、たとえば、煤粒子(soot)、可溶性有機成分(SOF: Soluble Organic Fraction)および無機成分を含んでいる。
【0021】
本実施の形態に係る微粒子検出センサ10は、たとえば、DPF53に亀裂などの損傷が発生した場合や、DPF53のPM捕集性能が劣化した場合など、DPF53の下流の排気通路5に規制値以上のPMが流出したことを検知するために用いられる。
【0022】
図2は、本実施形態に係る微粒子検出センサ10の概略的な断面図である。
図3は、
図2に示す微粒子検出センサ10の基本的な回路構成を示す回路図である。微粒子検出センサ10は、エンジン1から排出された排気ガス等のガスGに含まれる微粒子を検出するセンサであり、中心電極11と、筒状電極12と、ハウジング13と、第1ガス流路14と、第2ガス流路15と、検出部16と、を備えている。
図2に示す例において、微粒子検出センサ10は、さらに、スペーサ17と、エンドプレート18と、キャップ19を備えている。
【0023】
中心電極11は、たとえば、中心線L1に沿って延びる細長い円柱状の形状を有している。なお、中心電極11は、中心線L1に沿って延びる形状であれば、円柱状の形状に限定されず、断面が長円形や楕円形の柱状、断面が多角形の柱状、または任意の断面形状の棒状であってもよい。
【0024】
筒状電極12は、中心電極11と同心に配置され、中心電極11を取り囲んでいる。筒状電極12は、たとえば、中心電極11と中心線L1を同じくする円筒状の形状を有している。なお、筒状電極12は、円筒状の形状に限定されず、任意の断面形状の筒状に形成することができる。
【0025】
ハウジング13は、筒状電極12と同心に配置され、筒状電極12を取り囲んでいる。ハウジング13は、たとえば、中心電極11および筒状電極12と中心線L1を同じくする円筒状の形状を有している。なお、ハウジング13は、円筒状の形状に限定されず、任意の断面形状の筒状に形成することができる。ハウジング13は、筒状電極12と一体に設けられていてもよい。
【0026】
第1ガス流路14は、ハウジング13と筒状電極12との間に形成されている。すなわち、第1ガス流路14は、ハウジング13と、このハウジング13の内側に配置された筒状電極12との間に形成された空間または間隙であり、微粒子検出センサ10に取り込まれたガスgが流れるガス流路の一部である。第1ガス流路14、すなわちハウジング13と筒状電極12との間の空間は、第2ガス流路15に流入するガスgの助走空間である。
【0027】
第2ガス流路15は、筒状電極12と中心電極11との間に形成されている。すなわち、第2ガス流路15は、筒状電極12と、この筒状電極12の内側に配置された中心電極11との間に形成された空間または間隙であり、微粒子検出センサ10に取り込まれたガスgが流れるガス流路の一部である。第2ガス流路15、すなわち筒状電極12と中心電極11との間の空間は、筒状電極12と中心電極11との間に電圧がかけられたときに電界が発生する電界印加空間である。
【0028】
検出部16は、中心電極11と筒状電極12との間に電圧をかけたときに微粒子の移動により発生する電流Iに基づいて微粒子を検出する。
図3に示すように、微粒子検出センサ10の回路は、直流電源Eと、抵抗Rと、検出部16とを有している。直流電源Eは、たとえば、正極が中心電極11に接続され、負極が抵抗Rを介して筒状電極12に接続され、中心電極11と筒状電極12との間に、たとえば1kV程度の高電圧の直流電圧を印加する。検出部16は、抵抗Rの両端に接続され、中心電極11と筒状電極12との間に電圧をかけたときに、抵抗Rを流れる電流Iに基づいて、ガスgに含まれる微粒子を検出するように構成されている。
【0029】
微粒子検出センサ10は、帯電方式のセンサである。すなわち、中心電極11と筒状電極12との間に電圧がかけられて電界が発生した状態で、微粒子を含んだガスgが第2ガス流路15を流れると、一方の電極に接触して帯電した微粒子が他方の電極に到達して回路に電流Iが流れる。また、他方の電極に到達して帯電した微粒子が一方の電極に戻ることで、回路に電流Iが流れる。このように、対向する中心電極11と筒状電極12との間を微粒子が往復することで、検出部16によって電流出力が得られる。
【0030】
微粒子検出センサ10の出力電流Iは、微粒子の単位重量当たりの電荷量をQ、ガスgに含まれる微粒子の濃度をD(mg/m
3)、中心電極11と筒状電極12の電極間断面積をS(m
2)、中心電極11と筒状電極12の電極間を流れるガスgの流速をv(m/s)、比例係数をkとすると、下記の式(1)によって表される。
【0031】
I=k・Q・D・S・v(C/s)…(1)
【0032】
比例係数kは、帯電した微粒子が中心電極11と筒状電極12との間を往復する回数に相当する。出力電流Iは、電極間のガスgの流速vに比例する。しかし、微粒子の電極間の往復回数に相当する比例係数kは、電極間のガスgの流速vに逆比例する。そのため、出力電流Iは、電極間のガスgの流速vの変化による増減と、微粒子の往復回数に相当する比例係数kの変化による増減とが相殺され、電極間のガスgの流速vに影響されないはずである。しかし、電極間のガスgの流れが層流ではなくなると、微粒子の電極への接触回数や、微粒子の電極間の往復回数が不安定になる。そのため、電極間のガスgの流れを層流にすること、すなわち、電極間のガスgの流速を安定させて均一にすることが、微粒子検出センサ10の出力を安定させる上で重要になる。
【0033】
微粒子検出センサ10は、
図2に示すように、中心線L1の方向における一端に、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGを第1ガス流路14へ取り込むためのガス入口10aと、第2ガス流路15からガスgを排出するためのガス出口10bとを有している。ガス出口10bは、ガス入口10aよりも中心線L1の方向へ突出して設けられている。より具体的には、ガス出口10bは、たとえば、筒状電極12の一端に係合したキャップ19に設けられた貫通孔19aの開口である。第1ガス流路14と第2ガス流路15は、ガス入口10aおよびガス出口10bが設けられた中心線L1の方向における一端と反対側の他端で連通している。
【0034】
図4は、
図2に示す微粒子検出センサ10のガス入口10aとガス出口10bの一例を示す端面図である。ガス入口10aは、ガス出口10bを取り囲む円周C1上に配置された複数の開口部13aを有している。開口部13aは、たとえば、ハウジング13の中心線L1の方向の一端で筒状電極12の径方向外側に、周方向に等間隔に2つから8つ程度、設けられている。
図4に示す例において、ガス入口10aの外側を流れるガスGの上流側の開口部13aの直径は、ガス入口10aの外側を流れるガスGの下流側の開口部13aの直径よりも小さくなっている。
【0035】
より具体的には、ガス入口10aを構成する複数の開口部13aは、たとえば、中心電極11の中心線L1を中心とする同一の円周C1上に中心が配置された円形の形状を有している。各開口部13aの中心は、たとえば、同一の円周C1上に等しい角度間隔で配置されている。
図4に示す例では、各開口部13aの中心を通る円周C1において、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGの流れにおおむね平行な中心線L2を示している。すなわち、
図4において、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGは、中心線L2に沿って左から右へ流れる。ガス出口10bは、たとえば、ガス入口10aを構成する複数の開口部13aの中心を通る円周C1の中心に設けられている。
【0036】
ガス入口10aを構成する複数の開口部13aのうち、最小径の開口部13aと、最大径の開口部13aは、それぞれ、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGの上流側と下流側に位置している。また、最小径の開口部13aと、最大径の開口部13aは、それぞれ、ガス入口10aを構成する複数の開口部13aの中心を通る同一の円周C1の中心線L2上にある。ガス入口10aを構成する複数の開口部13aの大きさは、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGの上流側から下流側へ、漸次拡大している。すなわち、ガス入口10aを構成する複数の開口部13aの直径は、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGの上流側から下流側へ、漸次増大している。
【0037】
より具体的には、最小径の開口部13aの直径は、たとえば0.5mmである。その下流側に隣接する2つの開口部13aの直径は、たとえば0.75mmである。その下流側に隣接する2つの開口部13aの直径は、たとえば1mmである。その下流側に隣接する2つの開口部13aの直径は、たとえば1.25mmである。その下流側に隣接する最大径の開口部13aの直径は、たとえば1.5mmである。
【0038】
図2に示すように、スペーサ17は、たとえば、電気絶縁性を有する絶縁部材を素材とする筒状の部材である。スペーサ17は、中心電極11を挿通させた状態でハウジング13に固定され、ハウジング13の内部で中心電極11を支持している。スペーサ17は、たとえば、中心線L1の方向の一端面に、中心電極11の中心線L1の方向の端部に設けられたフランジ状の部分を嵌合させる凹部17aを有している。またスペーサ17は、外周面に径方向の凸部17bを有し、この凸部17bがハウジング13の内側面に設けられた凹部13bに嵌合している。このスペーサ17により、中心電極11は、中心線L1がハウジング13の中心線L1に一致するように支持され、筒状電極12との間隔が一定に保たれる。
【0039】
エンドプレート18は、たとえば、電気絶縁性を有する絶縁部材を素材とする円板状の部材である。エンドプレート18は、たとえば、微粒子検出センサ10のガス入口10aおよびガス出口10bが設けられた中心線L1の方向の一端と反対側の他端に配置されている。このエンドプレート18が、たとえばハウジング13に嵌合されてねじによって中心電極11に固定されることで、スペーサ17および中心電極11の中心線L1方向の位置が決定される。
【0040】
キャップ19は、たとえば、電気絶縁性を有する絶縁部材を素材とする筒状の部材である。キャップ19は、径方向の寸法が拡大された拡径部19bと、径方向の寸法が縮小された縮径部19cとを有している。キャップ19は、縮径部19cが筒状電極12の中心線L1方向の一端で内側に挿入され、拡径部19bが筒状電極12の端面に当接した状態で、ハウジング13に固定されている。
【0041】
キャップ19を中心電極11の中心線L1の方向に貫通する貫通孔19aは、中心電極11と筒状電極12との間の第2ガス流路15と、微粒子検出センサ10の外部空間とを連通している。キャップ19の拡径部19bの底面には、
図4に示すように、ガス出口10bが形成されている。すなわち、ガス出口10bはキャップ19の貫通孔19aの開口である。ガス出口10bは、
図2に示すように、ガス入口10aよりも微粒子検出センサ10の中心線L1の方向に突出して設けられている。
【0042】
以下、本実施の形態の微粒子検出センサ10の作用について説明する。
【0043】
図1に示すように、本実施の形態の微粒子検出センサ10は、たとえば、エンジン1に排気マニホールド4を介して接続された排気通路5を構成する排気管に取り付けられ、排気管の内壁から排気管の内部へ径方向に突出するように配置される。そのため、
図2に示すように、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGは、微粒子検出センサ10の中心線L1の方向すなわちスラスト方向に対して直交する方向に流れる。
【0044】
ここで、本実施の形態の微粒子検出センサ10は、前述のように、ガス出口10bがガス入口10aよりも中心線L1の方向へ突出して設けられている。これにより、ガス出口10bとガス入口10aとの間に段差が生じ、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGが、ベンチュリ効果によりガス入口10aから流入する。微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGは、エンジン1から排出された排気ガスを含んでいる。排気ガスは、PM等の微粒子を含んでいる。
【0045】
ガス入口10aから第1ガス流路14に取り込まれたガスgは、ガス入口10aが設けられた中心線L1の方向における第1ガス流路14の一端から反対側の他端へ向けて流れる。第1ガス流路14は、ガスgの下流である中心線L1の方向の他端で、第2ガス流路15に連通している。そのため、中心線L1の方向において、第1ガス流路14の一端から他端へ向けて流れたガスgは、第1ガス流路14の他端で第2ガス流路15に流入する。このように、第1ガス流路14は、第2ガス流路15に流入するガスgの助走区間として機能する。
【0046】
中心線L1の方向において、ガス出口10bが設けられた第2ガス流路15の一端と反対側の他端で第2ガス流路15へ流入したガスgは、第2ガス流路15の一端へ向けて折り返すように流れ、ガス出口10bから排出される。ここで、第2ガス流路15は、筒状電極12と中心電極11との間に形成されている。
【0047】
そのため、中心電極11と筒状電極12との間に電圧がかけられると、第2ガス流路15を流れるガスgに含まれる微粒子が、これらの電極に接触して電荷を得て、これらの電極の間を往復するように移動することで、
図3に示す回路に電流Iが流れる。
図3に示す検出部16は、この電流Iに基づいてガスgに含まれる微粒子を検出する。この検出部16によって、本実施形態の微粒子検出センサ10は、ガスgに含まれる微粒子を検出することができる。
【0048】
図5は、中心電極11に堆積した微粒子の一例を示す写真図である。PM等の微粒子を含むガスgが第2ガス流路15を流れると、中心電極11に接した微粒子は、中心電極11上に堆積する。中心電極11に堆積した微粒子同士は、同一の極性の電荷を獲得するので、互いに反発し合う静電力が作用し、微粒子同士が繋がろうとする分子間力との釣り合いを取りながら、反対の極性を有する筒型電極へ向けてデンドライト(Dendrite:樹枝状晶)Dが形成される。デンドライトDがある程度成長すると、静電力が分子間力に打ち勝ち、デンドライトDが崩壊する。
【0049】
崩壊したデンドライトDは、反対極性を有する筒状電極12に吸い寄せられ、筒状電極12上に堆積して同様にデンドライトDを形成する。ただし、崩壊したデンドライトDは、電界印加空間である第2ガス流路15を流れるガスgに流されて、中心電極11上のデンドライトDが崩壊した位置よりもやや下流側で筒状電極12に吸い寄せられ、筒状電極12上に堆積する。この結果、
図3に示すように、中心電極11と筒状電極12の間に電流Iが流れ、これらに直列に接続された抵抗Rにも電流Iが流れ、この電流Iを検出した検出部16によって微粒子が検出される。
【0050】
ここで、本実施の形態の微粒子検出センサ10は、
図4に示すように、ガス入口10aが、ガス出口10bを取り囲む円周C1上に配置された複数の開口部13aを有している。また、ガス入口10aの外側を流れるガスGの上流側の開口部13aの直径は、ガス入口10aの外側を流れるガスGの下流側の開口部13aの直径よりも小さい。この構成により、
図2に示すように、ガス入口10aから取り込まれたガスgは、第1ガス流路14と第2ガス流路15を均一な流速で円滑に流れ、ガス出口10bから排出される。すなわち、よりガスgが流入しやすい上流側の開口部13aほど、開口面積を絞ることで、上流側の開口部13aから流入するガスgの流量と下流側の開口部13aから流入するガスgの流量を均一化することができる。したがって、第1ガス流路14および第2ガス流路15を流れるガスgの流速を均一化することができ、第1ガス流路14と第2ガス流路15を流れるガスgの流速を安定させ、微粒子検出センサ10の出力を安定させることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、微粒子検出センサ10内でガスgを流れやすくしてガスgの流速を安定させ、微粒子検出センサ10の出力を安定させることができる。以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0052】
[シミュレーション例]
図6は、第2ガス流路15を流れるガスgの流速分布のシミュレーションモデルである。中心電極11と筒状電極12の間の電界印加空間である第2ガス流路15のガスgの流れを層流にするためには、助走空間である第1ガス流路14の容積がバッファとしての役割を果たす。ガス入口10aおよびガス出口10bの構成が第1ガス流路14および第2ガス流路15を流れるガスgの流速を決定するので、ガス入口10aおよびガス出口10bの構成と第1ガス流路14の容積の関係を適切に選択することが、第2ガス流路15を流れるガスgを層流にするための要件となる。
【0053】
図6に示すように、中心電極11と筒状電極12とが互いに対向している領域を、中心線L1に沿って4つの区画に分け、中心電極11の両側の各区画の境界上の点P1から点P6までの6点を流速の計算点とした。また、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGの流速を、10[m/s]、15[m/s]、20[m/s]、30[m/s]、40[m/s]、50[m/s]として、点P1から点P6における流速を計算した。
【0054】
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、点P1から点P6のガスgの流速を示すグラフである。なお、
図7Aおよび
図7Bは、ガス入口10aの複数の開口部13aの開口面積の合計とガス出口10bの開口面積とを等しくした場合の結果である。また、
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、第1ガス流路14の容積[m
3]の数値を、ガス出口10bの開口面積[m
2]の数値の200倍とした場合と、800倍にした場合の結果である。
【0055】
図7Aに示す6点の平均流速と、
図7Bに示す6点の平均流速との間に、大きな差は見られなかった。しかし、
図7Aに示す結果では、微粒子検出センサの外側を流れるガスGの流速の増加とともに、点P1から点P6までの第2ガス流路15を流れるガスgの流速のばらつきが大きくなっている。一方、
図7Bに示す結果では、微粒子検出センサ10の外側を流れるガスGの流速が増加しても、点P1から点P6までの第2ガス流路15を流れるガスgの流速は、おおむね等しく、均一になっている。すなわち、
図7Bに示す結果では、電界印加空間である第2ガス流路15を流れるガスgが層流になっていることが分かる。
【0056】
[実験例]
図7Aおよび
図7Bに示す結果を得た各条件に基づいて、二種類の微粒子検出センサを試作した。試作した各微粒子検出センサを排気管に取り付け、排気管に微粒子としてPMを含む排気ガスを流して、単位重量濃度あたりの出力電流Iを測定した。
【0057】
図8は、各微粒子検出センサの感度、すなわち単位重量濃度あたりの出力電流I[nA/(mg/m
3)]の測定結果を示すグラフである。
図8に実線で示すように、
図7Aの結果を得た条件に基づく微粒子検出センサは、微粒子検出センサの外側を流れるガスGの流量の増加に伴ってセンサ感度が低下している。
【0058】
これに対し、
図8に破線で示すように、
図7Bの結果を得た条件に基づく微粒子検出センサは、微粒子検出センサの外側を流れるガスGの流量が増加しても感度はあまり変化せず、ガスGの流速に対する感度の依存度はほとんどないことが分かる。すなわち、ガス入口の開口面積[m
2]に対する第1ガス通路の容積[m
3]の比を大きくすることで、電界印加空間である第2ガス流路を流れるガスの流れを層流にすることができ、微粒子検出センサの感度の排気ガス流速依存性をなくすことができる。
【0059】
[実施例]
前述の実施の形態で説明した構成に基づいて、実施例の微粒子検出センサのシミュレーションモデルを作成した。実施例の微粒子検出センサのモデルにおいて、複数の開口部13aの直径は、最小径を0.5mmとし、その下流側を0.75mm、その下流側を1mm、その下流側を1.25mm、その下流側の最大径を1.5mmとした。
【0060】
また、複数の開口部13aの直径をすべて1.0mmとした以外は、実施例と同様の比較例1の微粒子検出センサのシミュレーションモデルを作成した。また、実施例の微粒子検出センサの外側を流れるガスの上流側と下流側で、複数の開口部13aの大小関係を逆転させた比較例2の微粒子検出センサのシミュレーションモデルを作成した。
【0061】
実施例の微粒子検出センサのモデルと、比較例1および比較例2の微粒子検出センサのモデルを用い、微粒子検出センサの外側を流れるガスGの流速を50[m/s]としてシミュレーションを行った。
【0062】
図9は、実施例の微粒子検出センサと比較例の微粒子検出センサのシミュレーション結果を示すグラフである。
図9において、(a)は、比較例1の結果を示し、(b)は、実施例の結果を示し、(c)は、比較例2の結果を示している。
図9において十字の印で示す「max−min」は、
図6に示す点P1から点P6までの6点において第2ガス流路を流れるガスgの流速の最大値と最小値との差である。
【0063】
図9の(b)に示すように、本発明の実施例に係る微粒子検出センサでは、微粒子検出センサの外側を流れるガスGの上流ほどガス入口の開口部から排気ガスが入りやすいので、上流側の開口部の直径を絞ることで、第2ガス流路を流れるガスgの流速、すなわちセンサ内流速を平滑化することができる。
【0064】
これに対し、
図9の(a)に示すように、比較例1の微粒子検出センサでは、実施例の微粒子検出センサよりも6点の流速のばらつきが大きくなっている。また、
図9の(c)に示すように、比較例2の微粒子検出センサでは、比較例1の微粒子検出センサよりも6点の流速のばらつきがさらに大きくなっている。
【0065】
以上の結果から、
図9の(b)に示す本発明の実施例に係る微粒子検出センサでは、センサ内流速のばらつきが最小となった。すなわち、ガス入口の開口部の直径をガスGの上流側ほど小さくすることで、センサ内流速が安定化することが分かった。