(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料吸入管を該燃料吸入管の延出方向からみたとき、前記内部通路の開口面積の半分以上が前記フィルタユニットケースの前記内部空間と重なっていることを特徴とする請求項1に記載の燃料フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の燃料ポンプモジュールの外観斜視図である。
図2は、燃料ポンプモジュールの分解斜視図である。
【0026】
(燃料ポンプモジュール)
図1及び
図2に示すように、この燃料ポンプモジュール1は、ポンプユニット2とフィルタユニット(燃料フィルタに相当)3を着脱自在に結合したものである。フィルタユニット3は、ポンプユニット2の燃料流れ方向における上流側に位置してポンプユニット2に結合されており、不図示の燃料タンクから導入される液体燃料を濾過してポンプユニット2に導出する。
【0027】
この燃料ポンプモジュール1は、例えば、自動二輪車等の鞍乗型車両の燃料タンク(図示略)の外部に配置されて、燃料タンク内の液体燃料を不図示の内燃機関に向けて圧送する用途に適用される。勿論それ以外の自動四輪車等の車両に搭載されてもよい。この燃料ポンプモジュール1は、ポンプユニット2とフィルタユニット3を着脱自在に結合している。これにより、ポンプユニット2からフィルタユニット3を容易に取り外すことができる。つまり、容易にフィルタユニット3内のフィルタカートリッジ60(後述)の交換が可能であり、メンテナンスが簡単にできる。
【0028】
(方向性について)
以下、ここでは、鉛直方向上側を単に上側、鉛直方向下側を単に下側と表現して説明する。また、燃料ポンプモジュール1の中心軸線(後述するポンプ本体10の吸入ポート11の中心軸線や円筒管50及び円筒ボス部62の中心軸線と一致)に沿った方向を軸方向、この中心軸線に直交する、該中心軸線を基準にした放射方向を径方向、この中心軸線の回りに周回する方向を周方向という。また、ポンプユニット2及びフィルタユニット3のそれぞれの前後方向の区別については、両ユニット2、3の組み付け方向(合わせ方向)を前方、両ユニット2、3の取り外し方向(反合わせ方向)を後方として説明する。
【0029】
(燃料ポンプモジュールの設置姿勢)
この燃料ポンプモジュール1は、全体的に軸方向に長い略円柱形状をなしており、モジュールの中心軸線を水平方向に向けた姿勢で、図示しない燃料タンクの下方に配置される。燃料ポンプモジュール1には、燃料タンクから液体燃料を吸入する燃料吸入管4と、吸入した液体燃料を外部に(内燃機関に向けて)吐出する燃料吐出管5と、余剰燃料を燃料タンクに戻す燃料リターン管6と、が設けられている。これらの管路(燃料吸入管4、燃料吐出管5、燃料リターン管6)は、ホース等を介して、燃料タンク側及び内燃機関側と接続される。この際、燃料ポンプモジュール1は、燃料吸入管4と燃料リターン管6のホース接続端を垂直方向上方へ向けた姿勢で燃料タンクの下方に搭載される。
【0030】
(ポンプユニット)
図3は、燃料ポンプモジュールの縦断面図である。
図4は、燃料ポンプモジュールを構成するポンプユニットとフィルタユニットの結合前の斜視図である。
図1〜
図4に示すように、ポンプユニット2は、燃料タンクからの液体燃料を吸入して外部に吐出する機能を有するもので、外殻体としての有底円筒状のポンプユニットケース20を備えている。ポンプユニットケース20は、樹脂成形品よりなるもので、円筒周壁21と、円筒周壁21の一端(後端)開口を塞ぐ端壁23と、を備えている。
【0031】
図3に示すように、円筒周壁21の内部には、ポンプ本体収容空間22が設けられている。このポンプ本体収容空間22の内部には、一端に吸入ポート11を有し、他端に吐出ポート12を有するポンプ本体10が収容されている。ポンプ本体10は、内蔵する電動モータ(図示略)を駆動することにより、吸入ポート11から液体燃料を吸入して吐出ポート12から吐出する。
また、
図1及び
図2に示すように、ポンプユニットケース20の端壁23の外面には、ポンプ本体10のモータを外部機器に電気接続するためのコネクタ7が設けられている。
【0032】
ポンプユニットケース20の円筒周壁21の端壁23に近い位置には、前述の燃料吐出管5と燃料リターン管6とが外方に向けて突設されている。
図3に示すように、ポンプユニットケース20の内部には、順次連通する吐出側内部通路30、31が設けられている。上流側に位置する吐出側内部通路30には、ポンプ本体10の吐出ポート12がOリング13を介して液密に接続されている。
【0033】
また、下流側に位置する吐出側内部通路31は、燃料吐出管5の内部通路32や燃料リターン管6の内部通路(図示せず)に連通している。燃料吐出管5は、ポンプ本体10から吐出側内部通路30、31に吐出された燃料を外部に吐出する管路である。また、燃料リターン管6は、ポンプ本体10から吐出側内部通路30、31に吐出された燃料の余剰分を燃料タンクに戻す管路である。
【0034】
図1及び
図2に示すように、燃料リターン管6の内部には、チェックバルブ9が介装されている。チェックバルブ9は、燃料タンクからの燃料の逆流を阻止するために設けられている。
また、
図3に示すように、吐出側内部通路31には、プレッシャレギュレータ8が接続されている。プレッシャレギュレータ8は、内燃機関へと圧送される燃料に対して所定の燃圧を確保するためのものである。プレッシャレギュレータ8は、吐出側内部通路30、31内に余剰な燃圧が発生した場合(内部の燃料圧力が所定値以上になったとき)に、吐出側内部通路30、31内の燃料を燃料リターン管6を通して燃料タンクに戻して、吐出燃料の燃圧を一定に調整する。
【0035】
(ポンプユニット側合わせプレート)
図4に示すように、ポンプユニット2には、ポンプユニットケース20の円筒周壁21の開口端25に位置させて、樹脂成形品よりなるポンプユニット側合わせプレート40が設けられている。ポンプユニット側合わせプレート40は、ポンプユニット2の軸方向に対して垂直な姿勢で、円筒周壁21の開口端25を塞ぐように、ポンプユニットケース20に固着されている。
【0036】
ポンプユニット側合わせプレート40は、円板状のプレート本体41の背面に、プレッシャレギュレータ8を支持するための円筒パイプ状の支持ロッド48を一体に突設したものである。また、ポンプユニット側合わせプレート40には、支持ロッド48の周壁に、縦方向にスリット48aが形成されている。そして、ポンプユニット側合わせプレート40は、支持ロッド48を有するプレート本体41の背面を、ポンプユニットケース20の内部に向けた姿勢で、ポンプユニットケース20の円筒周壁21の開口端25に固着されている。このポンプユニット側合わせプレート40は、フィルタユニット3との結合のための合わせ面41aを前面に有しており、この合わせ面41aを外部に露出させて取り付けられている。
【0037】
ポンプユニット側合わせプレート40の面内中央部には、合わせ面41aからフィルタユニット3側に向けて突き出した円筒管50が設けられている。この円筒管50の内部貫通孔50a(
図3参照)は、ポンプユニット2の燃料吸入口に相当する。この円筒管50の内部貫通孔50aのポンプユニット2側の端部には、ポンプ本体10の吸入ポート11が嵌合接続されている。なお、円筒管50の内径は、ポンプ本体10の吐出流量に対して十分な気液交換性をもった径に設定されている。円筒管50の基部には、Oリング受け用の段部51が設けられている。このOリング受け用の段部51の前側に、Oリング56が嵌合装着されている。
【0038】
(ガイド凸部)
また、円筒管50の先端側には、芯合わせ用のガイド凸部として機能する延長管部52が設けられている。この延長管部52は、単に円筒管50の先端をこの径のまま長めに延長した部分である。この延長管部52の円筒周壁には、先端縁から円筒管50の基部に向かって延びる複数のスリット52aが設けられている。これらのスリット52aは、円筒周壁の厚さ方向に貫通することで、延長管部52の内外での液体燃料の流通を促す連通部として機能する。
【0039】
(突当面)
ポンプユニット側合わせプレート40の合わせ面41aにおける円筒管50の基部の周囲には、円筒管50と同心に円環状の突当溝42が設けられている。この円環状の突当溝42の内底面は、ポンプユニット2とフィルタユニット3の軸方向の位置決めを行う突当面42aとされている。
【0040】
(凸壁及び凹所)
また、合わせ面41aの突当溝42の外周側には、円筒管50が位置する中心部を取り囲むように、円筒管50と同心に径方向に等間隔に複数の円環状の凸壁43が設けられている。円環状の凸壁43は、例えば断面矩形状のもので、フィルタユニット3側に向けて突出するように形成されている。円環状の凸壁43が同心状に等間隔に複数設けられていることにより、径方向に隣接する凸壁43と凸壁43の間には、円環状の凹所44が設けられている。また、燃料ポンプモジュール1の設置姿勢の上下方向を基準にして、合わせ面41aの中心部より下半分の領域に位置する円環状の凸壁43の周方向の一部には切欠43aが設けられている。各凸壁43の切欠43aの設けられている角度位置は同じで、各凸壁43に切欠43aがあることによって、合わせ面41a上に径方向に沿った排出溝45が設けられている。
【0041】
(フィルタユニット)
次にフィルタユニット3について説明する。
図2〜
図4に示すように、フィルタユニット3は、樹脂成形品よりなる有底円筒状のフィルタユニットケース80と、フィルタユニットケース80の内部に収容されたフィルタカートリッジ60と、を備えている。その他には、フィルタユニットケース80内におけるフィルタカートリッジ60の濾過前空間に連通する燃料吸入管4(燃料導入口)と、フィルタカートリッジ60の濾過後空間に連通する燃料導出口(後述)と、ポンプユニット2との結合のための合わせ面61aを有したフィルタユニット側合わせプレート61と、を備えている。
ここで、フィルタユニット側合わせプレート61は、後述するように、フィルタカートリッジ60の前面板として設けられている。
【0042】
図5は、フィルタユニット(燃料フィルタ)の分解斜視図である。
図6は、フィルタユニットの構成図で、(a)はフィルタユニットケース(フィルタケース)にフィルタカートリッジを挿入する前の状態を示す鉛直上方から見た平面図、(b)はフィルタユニットケースにフィルタカートリッジを挿入した状態を示す鉛直上方から見た平面図である。
図7は、フィルタユニットケースの構成図で、(a)はフィルタユニットケースの後方斜め下側から見た斜視図、(b)は(a)図のB矢印方向から見た正面図、(c)は(a)図のC矢印方向から見た背面図である。
【0043】
(フィルタユニットケース)
まず、フィルタユニットケース(フィルタケース)80の構成について述べる。
図5〜
図7(c)に示すように、フィルタユニットケース80は、例えば、樹脂により形成されている。フィルタユニットケース80は、概略有底円筒状のもので、内部にフィルタカートリッジ収容空間82を備えた円筒周壁(筒状周壁)81と、円筒周壁81の後端開口を閉塞する端壁83と、円筒周壁81の前端縁に延設された、円筒周壁81よりも大径の円筒フード部84と、を備えている。
円筒周壁81の内周面は円筒内周面81aとされている。円筒フード部84は、
図1及び
図3に示すように、ポンプユニットケース20の円筒周壁21の前端外周に嵌まることにより、ポンプユニットケース20の前端部を覆うように設けられている。
【0044】
円筒フード部84と円筒周壁81の境界の内周側には円環状のプレート受け段部85が設けられている。このプレート受け段部85に、フィルタカートリッジ60の前面板として設けられたフィルタユニット側合わせプレート61の周縁部が支持されている。また、燃料タンクから燃料を導入する燃料吸入管(燃料導入口)4は、円筒周壁81の後端と端壁83の両方にかかる角部に接合されている。
【0045】
(燃料吸入管の配置及び寸法)
ここで、燃料吸入管4の配置や寸法などについて詳しく説明する。
フィルタユニットケース80は、燃料ポンプモジュール1が軸線を水平方向に向けて配置されることから、同様に軸線を水平方向に向けて配置される。
図5〜
図7に示すように、燃料吸入管4は、鉛直方向に延びる軸線を有した円筒パイプ状をなしている。燃料吸入管4は、先端開口4bを上方に向けた姿勢で、基端側がフィルタユニットケース80の円筒周壁81の外側面部から端壁83にかけての角部に接合されている。
【0046】
それにより、
図5に示すように、燃料吸入管4の円筒内周面4aとフィルタユニットケース80の円筒周壁81の内周面81a及び端壁83の内面83aとが交わる相貫線Mで囲まれた連通口4hを介して、燃料吸入管4の内部通路がフィルタユニットケース80の円筒周壁81の内周面81aで形成される内部空間(以下、単に内部空間という)に連通されている。この場合、燃料吸入管4の内部通路とフィルタユニットケース80の内部空間とが最大に重なる水平断面、つまり、
図7(b)に示すように、フィルタユニットケース80の中心軸線Xを含む水平断面80Xにおいて、換言すれば、燃料吸入管4の延出方向からみて、燃料吸入管4の内部通路の一部がフィルタユニットケース80の内部空間よりも外側に突出している。この点について更に詳しく述べる。
【0047】
図8は、フィルタユニットケースと燃料吸入管の適正な位置関係を説明するためにフィルタユニットケースの中心軸線を含む水平面で切った断面を鉛直上方から見た概略平面図で、(a)及び(b)は適正な位置関係の範囲で燃料吸入管が配置されている場合、(c)は適正な位置関係の範囲を外れた条件で燃料吸入管が配置されている場合をそれぞれ示す図である。
【0048】
ここで、フィルタユニットケース80の円筒周壁81の円筒内周面81aの半径をRとし、燃料吸入管4の円筒内周面の半径をrとし、フィルタユニットケース80の円筒周壁81の円筒内周面81aの中心軸線Xと燃料吸入管4の円筒内周面4aの中心軸線4xとの間の距離をDとしたとき、半径R,r及び距離Dは、それぞれ次の(1)及び(2)の条件を満足するように、R、r、Dの値が設定されている。
2r<R …(1)
R−r<D≦R …(2)
【0049】
図8(a)に示す例(実施形態に含まれる)では、D<Rであり、燃料吸入管4の円筒内周面4aの一部(外側端)が、フィルタユニットケースの円筒周壁81の円筒内周面81aよりも外側に、燃料吸入管4の円筒内周面4aの半径rよりも小さい寸法Tだけ突出している。
【0050】
また、
図8(b)に示す例(実施形態に含まれる)では、D=Rであり、燃料吸入管4の円筒内周面4aの外側の半分が、フィルタユニットケースの円筒周壁81の円筒内周面81aよりも外側に、燃料吸入管4の円筒内周面4aの半径rに相当する寸法Tだけ突出している。
【0051】
また、
図8(c)に示す例(実施形態に含まれない)では、D>Rであり、燃料吸入管4の円筒内周面4aの外側の半分以上が、フィルタユニットケースの円筒周壁81の円筒内周面81aよりも外側に、燃料吸入管4の円筒内周面4aの半径rよりも大きい寸法Tだけ突出している。
【0052】
これらの図示例から分かるように、
図8(a)及び(b)に示した上述の(1)、(2)の条件を満す場合は、燃料吸入管4の内部通路とフィルタユニットケース80の内部空間を連通する連通口4hをできるだけ大きくとれる。とりわけ、
図8(a)に示す例では、燃料吸入管4を、この燃料吸入管4の延出方向からみたとき、円筒内周面4aの開口面積の半分以上が、フィルタユニットケースの内部空間と重なっている。このため、連通口4hをできるだけ大きく形成できる。また、
図8(c)に示すようなアンダカット部分4uが生じないので、燃料や気泡をスムーズに流れるようにする上で有利である。
【0053】
図9は、フィルタユニットケースと燃料吸入管の適正な寸法関係を説明するための水平方向から見た概略正面図で、(a)は適正な寸法関係で燃料吸入管が設けられている場合、(b)はあまり好ましくない寸法関係で燃料吸入管が設けられている場合をそれぞれ示す図である。
【0054】
図9(a)に示すように、フィルタユニットケースの円筒周壁81の中心軸線Xの高さから燃料吸入管4の内部通路の基端側の内底面(端部)の高さを引いた値をZ1とするとき、次の(3)の条件が成り立つように、燃料吸入管4の基端側の長さが設定されている。
0<Z1<R …(3)
【0055】
このように設定することにより、燃料吸入管4の内部通路の基端側の内底面の高さは、フィルタユニットケースの円筒周壁81の円筒内周面81aの最下位点の高さよりも、寸法Z2(>0)だけ高い位置となる。
【0056】
一方、上の条件(3)の範囲外にZ1を設定すると、
図9(b)に示すように、燃料吸入管4の内部通路における基端側の内底部に溜まり部4zが生じてしまい、この部分の容積が大きくなると、燃料が滞留してしまい好ましくなくなる。
【0057】
(フィルタカートリッジ)
次にフィルタカートリッジについて説明する。
図5に示すように、フィルタカートリッジ60は、液体燃料を外周側から内周側に向かって透過することで燃料中の固形物を濾過する円筒形状のフィルタエレメント68と、それを支持する樹脂成形品よりなる円板状の前面板(フィルタユニット側合わせプレート61)及び後面板67と、を備えている。
【0058】
フィルタエレメント(濾材)68は、蛇腹状に折り襞を付けた濾紙等の素材を円筒形状に成形したプリーツ式のものである。前面板は、フィルタユニット側合わせプレート61として構成され、円筒形状のフィルタエレメント68の前面開口を塞ぐように、フィルタエレメント68に固着されている。前面板(フィルタユニット側合わせプレート61)より小径の円板状に形成された後面板67は、円筒形状のフィルタエレメント68の後面開口を密閉する塞ぎ板として構成され、フィルタエレメント68の後端に固着されている。
【0059】
そして、フィルタカートリッジ60は、
図3及び
図4に示すように、前面板として設けられたフィルタユニット側合わせプレート61の周縁部が、フィルタユニットケース80の内周部のプレート受け段部85によって支持される。これにより、フィルタユニット側合わせプレート61の前面の合わせ面61aを外部に露出させた状態で、フィルタユニットケース80に取り付けられている。即ち、このフィルタカートリッジ60は、フィルタユニットケース80の内部に、軸線を水平方向に向けた姿勢で、フィルタユニットケース80の円筒周壁81の内周面81aと同心状に収容されている。
【0060】
従って、このようにフィルタカートリッジ60が取り付けられることにより、フィルタカートリッジ60の内周側の空間が濾過後空間69(クリーン側の空間)とされている。また、フィルタユニットケース80のフィルタカートリッジ収容空間82のうちフィルタカートリッジ60の外側の空間が、燃料吸入管(燃料導入口)4を通して燃料タンクからの燃料が導入される濾過前空間とされている。また、フィルタユニット側合わせプレート61は、フィルタユニット3の軸方向に対して垂直な姿勢でフィルタユニットケース80の内部に支持されている。
【0061】
さらに、
図2に示すように、フィルタユニットケース80の内部にフィルタカートリッジ60を取り付けた状態では、このフィルタカートリッジ60の後面板67とフィルタユニットケース80の端壁83とが微小隙間Sを介して軸方向で対向する。
ここで、燃料吸入管4は、先端開口4bを上方に向けた姿勢で、基端側がフィルタユニットケース80の円筒周壁81の外側面部から端壁83にかけての角部に接合されているので、燃料吸入管4をこの燃料吸入管4の延出方向からみたとき、円筒内周面4aとフィルタカートリッジ60の後面板67とが重なっている。
【0062】
(フィルタユニット側合わせプレート)
図5に示すように、フィルタユニット側合わせプレート61の面内中央部には、円筒ボス部62が設けられている。この円筒ボス部62の内部貫通孔70は、前面板としてのフィルタユニット側合わせプレート61の中心部に位置しており、フィルタユニット3の燃料導出口に相当する。
円筒ボス部62の先端側は、ポンプユニット側合わせプレート40の合わせ面41aに設けた突当溝42に挿入される部分である。円筒ボス部62の先端面は、突当溝42の内底面である突当面42aに突き当たる突当面62aとされている。これらフィルタユニット側合わせプレート61の突当面62aとポンプユニット側合わせプレート40の突当面42aとが互いに突き当たることで、両合わせプレート61、40が軸方向に位置決めされる。
【0063】
また、円筒ボス部62の内部貫通孔70(燃料導出口)の入口側には、ポンプユニット側合わせプレート40の円筒管50の基部外周に装着されたOリング56が挿入されることでシール性を確保するOリング嵌合孔部73が設けられている。さらに、円筒ボス部62の内部貫通孔70の奥側には、Oリング受け用の段部71を介して、Oリング嵌合孔部73より小径とされたガイド孔部72が設けられている。このガイド孔部72は、ガイド凸部としての円筒管50の先端の延長管部52が挿入されることで、ポンプユニット2とフィルタユニット3とを径方向に芯合わせするガイド凹部としての役割を果たす。
【0064】
フィルタユニット側合わせプレート61の合わせ面61aの円筒ボス部62の外周側には、円筒ボス部62が位置する中心部を取り囲むように、円筒ボス部62と同心に径方向に等間隔に複数の円環状の凸壁63が設けられている。フィルタユニット側合わせプレート61の円環状の凸壁63は、ポンプユニット側合わせプレート40の円環状の凹所44に嵌まる位置に対応して設けられている。フィルタユニット側合わせプレート61の円環状の凸壁63も、ポンプユニット側合わせプレート40の円環状の凸壁43と同様の例えば断面矩形状のもので、ポンプユニット2側に向けて突出するように形成されている。
【0065】
円環状の凸壁63が同心状に等間隔に複数設けられていることにより、径方向に隣接する凸壁63と凸壁63の間には、ポンプユニット側合わせプレート40の円環状の凸壁43の嵌まる円環状の凹所64が設けられている。つまり、ポンプユニット側合わせプレート40の円環状の凸壁43は、フィルタユニット側合わせプレート61の円環状の凹所64に対応する位置にある。また、フィルタユニット側合わせプレート61の円環状の凸壁63は、ポンプユニット側合わせプレート40の円環状の凹所44に対応する位置にある。
【0066】
さらに、燃料ポンプモジュール1の設置姿勢の上下方向を基準にして、フィルタユニット側の合わせ面61aの中心部より下半分の領域に位置する円環状の凸壁63の周方向の一部には切欠63aが設けられている。各凸壁63の切欠63aの設けられている角度位置は同じで、各凸壁63に切欠63aがあることによって、合わせ面61a上に径方向に沿った排出溝65が設けられている。
【0067】
図4に示すように、ポンプユニット側合わせプレート40の円環状の凸壁43の切欠43aの角度位置と、フィルタユニット側合わせプレート61の円環状の凸壁63の切欠63aの角度位置は、相互に若干ずれている。これにより、両合わせ面41a、61aを組み合わせた際に、切欠43a、63aの位置が互いにずれて径方向に重ならなくなり、それにより、周方向のラビリンスが形成されることになる。
【0068】
ここで、ポンプユニット側合わせプレート40の突当面42a及びフィルタユニット側合わせプレート61の突当面62aは、両合わせプレート40、61の合わせ面41a、61aの凹所44、64の内底面に相手側の凸壁63、43の頂面が突き当たるのに優先して、相互に突き当たるようになっている。こうすることで、突当面42a、62a同士の突き当たりによって確実に、両合わせプレート40、61の軸方向の位置決めが行われる。この際、凸壁43、63の頂面と凹所64、44の内底面は、微小隙間をあけて非接触な状態に保たれることになる。
【0069】
(ラビリンス)
ポンプユニット2側及びフィルタユニット3側の両合わせプレート40、61が以上のように構成されていることにより、両合わせプレート40、61の合わせ面41a、61aが互いに合わせられた際に、ポンプユニット2側の円環状の凸壁43がフィルタユニット3側の円環状の凹所64に嵌まり、フィルタユニット3側の円環状の凸壁63がポンプユニット2側の円環状の凹所44に嵌まる。これにより、両合わせ面41a、61a間に、中心部から径方向外方に沿ったラビリンス(迷路状の隘路)が形成される。このラビリンスは、外部からダストなどの異物が入らないようシール機能を発揮するシール手段に相当する。
【0070】
(結合構造)
次に、ポンプユニット2とフィルタユニット3を着脱自在に結合する結合構造(結合手段)について説明する。この結合構造は、ポンプユニットケース20とフィルタユニットケース80の2つのケース間に設けられている。
【0071】
ポンプユニットケース20の円筒周壁21の前端部と、フィルタユニットケース80の円筒フード部84の前端部との間には、結合構造(結合手段)として、ポンプユニット2とフィルタユニット3とを着脱自在に結合するスナップフィット式のロック手段(後述するロック凸部26とロック舌片86)と、変形規制手段(後述する差し込み枠27と差し込み舌片87)と、が設けられている。
【0072】
(ロック手段)
ロック手段(ロック凸部26とロック舌片86)は、ポンプユニット側合わせプレート40とフィルタユニット側合わせプレート61の合わせ面41a、61a同士を対向させ、且つポンプユニット2の円筒管50の内部貫通孔50a(燃料吸入口)とフィルタユニット3の円筒ボス部62の内部貫通孔70(燃料導出口)とをOリング56を介して液密に連通接続した状態で、ポンプユニット2とフィルタユニット3とを着脱自在に結合するためのものである。
【0073】
ロック手段として、ポンプユニットケース20の円筒周壁21の前端近傍の外周にロック凸部26が設けられている。また、フィルタユニットケース80の円筒フード部84の前端に、ロック舌片86がポンプユニットケース20側に突出するように突設されている。ロック凸部26とロック舌片86は、円周方向に間隔をおいて互いに対応するように複数対(図示例では4対)配置されている。これらロック凸部26とロック舌片86は、フィルタユニットケース80を構成する材料の弾性を利用して互いに係合するスナップフィット式のロック手段に相当する。
【0074】
ロック舌片86は、ロック凹部としての角窓状のロック孔86aを有している。また、ロック孔86aが係合するロック凸部26は、平面視四角形、且つ側面視台形状の凸部で、詳しくは述べないが、前側斜面と頂部と後側係止壁とを有している。ロック舌片86は、ポンプユニット2及びフィルタユニット3の結合のための軸方向スライド操作に伴って、ロック凸部26の前側斜面に衝合し、斜面の作用で弾性変形しながらロック凸部26の頂部に乗り上げ、乗り上げ終了点で弾性変形から復帰する。これにより、ロック孔86aをロック凸部26に係合させる。
【0075】
係合状態においては、ロック凸部26の後側係止壁にロック舌片86のロック孔86aの前側内縁が係合する。ロック凸部26とロック舌片86は、ポンプユニットケース20とフィルタユニットケース80とを芯合わせしながら軸方向に相互にスライド操作して合わせることにより着脱自在に結合する。これにより、軸方向にがたつかないように両ユニット2、3がロックされる。
【0076】
ここで、
図5、
図6(a)、
図6(b)に示すように、4対のロック舌片86のうち、少なくともフィルタユニットケース80から燃料吸入管4が突出している方向に最も近い方向に一面が向いているロック舌片86Aのロック孔86aは、軸方向に沿う両内側面86a1が、燃料吸入管4の延出方向に沿うように形成されている。これにより、フィルタユニットケース80を例えば樹脂成形する際、燃料吸入管4とロック舌片86Aとを形成する金型の一部のスライド方向(金型の抜き方向、
図5における矢印Y1参照)を同一に設定することが可能になる。
【0077】
(変形規制手段)
また、ロック凸部26が設けられたポンプユニットケース20の円筒周壁21の外周には、ロック凸部26の周方向に隣接させて差し込み枠27が設けられている。また、ロック舌片86が設けられたフィルタユニットケース80の円筒フード部84の前端には、ロック舌片86の周方向に隣接させて差し込み舌片87が設けられている。
これら差し込み枠27と差し込み舌片87は、ポンプユニット2とフィルタユニット3の結合のための軸方向のスライド操作により、互いに嵌合して、隣接するロック舌片86の拡径方向の弾性変形を規制する変形規制手段を構成している。
【0078】
差し込み舌片87は、ポンプユニット2とフィルタユニット3の結合のためのスライド方向に延出されている。また、差し込み枠27は、差し込み舌片87を受け入れる差し込みスリットを有した袋状に形成されている。
【0079】
差し込み枠27に差し込み舌片87が嵌合された際に、差し込み枠27は、差し込み舌片87の径方向外方への変位と周方向への変位を規制する役割をなす。このように差し込み舌片87の変位が規制されることにより、隣接するロック舌片86のロック凸部26への係合状態を強化することができる。
【0080】
(ガイド機能)
ポンプユニット2には、前述したガイド凸部としての機能を持つ円筒管50が設けられている。また、フィルタユニット3には、ガイド凹部としての機能を持つ円筒ボス部62が設けられている。これらの円筒管50と円筒ボス部62は、両ユニット2、3の結合操作時に、Oリング56を介してポンプユニット2の燃料吸入口(円筒管50の内部貫通孔50a)とフィルタユニット3の燃料導出口(円筒ボス部62の内部貫通孔70)とが連通接続されるのに先だって互いに嵌まる。そしてそれにより、ポンプユニット2とフィルタユニット3とを径方向に芯合わせするガイド機能部としての役割をなす。
【0081】
また、ロック手段であるロック凸部26とロック舌片86が係合のための弾性変形の開始点に相互に位置するとき、それに先だって円筒ボス部62の内部貫通孔70のガイド孔部72に円筒管50の先端の延長管部52が挿入されるように、延長管部52の先端位置とガイド孔部72の入口の位置とロック凸部26及びロック舌片86の位置とが設定されている。
【0082】
このように設定してあることにより、ロック舌片86の前端がロック凸部26の前側斜面26aの起点に到達する前に、円筒管50の延長管部52(ガイド凸部)の先端がガイド孔部72(ガイド凹部)に挿入される。これにより、ポンプユニット2とフィルタユニット3の芯合わせ(センタリング)が行われることになる。そして、この状態で、ロック舌片86が外側に弾性変形しながらロック凸部26に乗り上げた後に、弾性復帰しながらロック凸部26にロック孔86aが係合し、ロックが達成される。
【0083】
また、円筒管50の延長管部52(ガイド凸部)の先端がガイド孔部72(ガイド凹部)に挿入されて芯合わせが行われた状態で、Oリング56がOリング嵌合孔部73に挿入されることになる。このため、Oリング56がフィルタユニット3側の部材との間に噛み込まれることがなくなり、Oリング56の損傷が回避されることになる。
【0084】
(作用)
次に作用を説明する。
ポンプユニット2とフィルタユニット3を結合する場合は、ポンプユニット2に対してフィルタユニット3を周方向に位置合わせしながら、ポンプユニット2に対しフィルタユニット3を軸方向にスライド操作する。そうすると、ポンプユニット2の円筒管50の延長管部52の先端が、フィルタユニット3の円筒ボス部62の内部貫通孔70のガイド孔部72に挿入される。円筒管50の延長管部52の先端がガイド孔部72に挿入されることで、ポンプユニット2とフィルタユニット3が芯合わせ(センタリング)される。また、この動作と共に、フィルタユニット3の円筒フード部84の前端のロック舌片86が、ポンプユニット2のロック凸部26の前側斜面の起点に突き当たる。
【0085】
次いでさらに軸方向にスライド操作すると、円筒管50の基部外周に装着されたOリング56が、フィルタユニット3の円筒ボス部62の内部貫通孔70のOリング嵌合孔部73に挿入される。この際、フィルタユニット3のロック舌片86が、径方向外方に弾性変形しながら、ポンプユニット2のロック凸部26を乗り越えて、ロック舌片86のロック孔86aがロック凸部26に係合する。同時に、フィルタユニット3側の差し込み舌片87が、ポンプユニット2側の差し込み枠27に嵌合される。
【0086】
このようなロック状態が達成されたとき、円筒ボス部62の内部貫通孔70のOリング嵌合孔部73に挿入されたOリング56は、ポンプユニット2側のOリング受け用の段部51とフィルタユニット3側のOリング受け用の段部71との間に挟まれて閉じ込められる。これにより、円筒管50の内部貫通孔50a(ポンプユニット2側の燃料吸入口)と円筒ボス部62の内部貫通孔70(フィルタユニット3側の燃料導出口)とが、Oリング56を介して液密に連通接続される。
【0087】
また、ポンプユニット2の突当溝42にフィルタユニット3の円筒ボス部62の先端が挿入されることで、突当面42a、62a同士が突き当たり、これにより、ポンプユニット2とフィルタユニット3が軸方向に位置決めされる。そして、ポンプユニット2とフィルタユニット3の合わせプレート40、61同士が適正な位置決め条件下で組み合わせられ、Oリング56に過剰な外力が加わらないようになる。さらに、ポンプユニット側合わせプレート40の合わせ面41aとフィルタユニット側合わせプレート61の合わせ面61aの凸壁43、63と凹所64、44が互いに嵌まり合うことで、両ユニット2、3の合わせ面41a、61a間にラビリンスが形成される。
【0088】
このように組み立てた状態で、燃料ポンプモジュール1を所定の姿勢で車両に搭載し、燃料吸入管4及び燃料リターン管6を燃料タンクに接続すると共に、燃料吐出管5を内燃機関側へ接続する。そして、燃料ポンプモジュール1を運転することにより、フィルタユニット3で濾過した燃料を、ポンプユニット2で昇圧し、プレッシャレギュレータで調整した上で内燃機関へ向けて圧送する。
【0089】
この運転の際のフィルタユニット3での燃料と気泡の流れについて、
図9(a)及び
図10(a)、(b)を用いて説明する。
図10は、フィルタユニットの燃料と気泡の流れを示す概略説明図で、(a)は鉛直上方から見た概略平面図、(b)は水平方向から見た概略正面図である。
【0090】
このフィルタユニット3では、
図10(b)に示すように、燃料吸入管4の内部通路からフィルタユニットケース80の内部空間へ燃料が流入する連通口4hが、フィルタカートリッジ60の内部貫通孔70よりも高い位置に開口する。また、
図5及び
図10(b)で明らかなように、燃料吸入管4とフィルタユニットケース80の連通口4hの開口面積が大きくなる。このため、燃料吸入管4からフィルタユニットケース80への燃料Nの流入と、フィルタユニットケース80から燃料吸入管4への気泡Vの排出を、互いの干渉を少なくしながら、スムーズに行うことができるようになる。
【0091】
特に高温時には、燃料から多量の気泡が発生することがあるが、このような場合にも、フィルタユニットケース80から燃料吸入管4への気泡の流れをスムーズにすることができる。従って、気液交換性の向上を図ることができ、この結果、フィルタユニットケース80内に十分な量の燃料を貯留しておくことができるようになり、ポンプユニット2への燃料供給が不足するようなことがなくなる。
【0092】
また、上述した条件(1)、(2)、(3)を満たすことで、燃料吸入管4の内部通路とフィルタユニットケース80の内部空間を繋ぐ連通口4hをできるだけ大きくとりながら、燃料や気泡の滞留を少なくすることができ、スムーズな気液交換を促すことができる。
【0093】
なお、燃料吸入管4の基端側は、
図10(a)に示すように、フィルタユニットケース80の円筒周壁81の外側面部の後端から端壁83にかけての角部位置に接合されている。このため、フィルタユニットケース80内で発生する気泡Vの排出と燃料吸入管4からの燃料Nの流入を一層スムーズに行うことができ、気液交換性をさらに高めることができる。
【0094】
一方、メンテナンス時に、ポンプユニット2とフィルタユニット3の結合を解除する場合は、ロック凸部26とロック舌片86の係合を解除しながら、ポンプユニット2とフィルタユニット3を軸方向に引き離す。こうすることで、フィルタユニット3を簡単にポンプユニット2から取り外すことができる。
【0095】
(効果)
以上の構成では、フィルタユニット3において、燃料吸入管4は、この燃料吸入管4の延出方向からみて、一部がフィルタユニットケース80の内部空間よりも外側に突出している。このため、燃料吸入管4の内部通路とフィルタユニットケース80の内部空間を連通する連通口4hをできるだけ大きくとることができる。このため、連通口4hにおいて、気泡が積極的に通る通路と燃料が積極的に通る通路とを、十分確保することができる。この結果、燃料吸入管4からフィルタユニットケース80への燃料の流入と、フィルタユニットケース80から燃料吸入管4への気泡の排出を、互いの干渉を少なくしながら、スムーズに行うことができる。特に高温時に、燃料から多量の気泡が発生した場合にも、フィルタユニットケース80から燃料吸入管4への気泡の流れをスムーズにすることができる。つまり、気液交換性の向上を図ることができる。よって、フィルタユニットケース80内に十分な量の燃料を貯留しておくことができ、ポンプユニット2(ポンプ本体10)への燃料供給が不足するようなことを防止できる。
【0096】
とりわけ、燃料吸入管4を、この燃料吸入管4の延出方向からみたとき、円筒内周面4aの開口面積の半分以上が、フィルタユニットケースの内部空間と重なっている。このため、連通口4hをできるだけ大きく形成できる。
さらに、フィルタユニットケース80において、燃料吸入管4を上述した条件(1)、(2)、(3)を満たすように配置することで、連通口4hを最大限大きくすることができる。
【0097】
また、燃料吸入管4は、先端開口4bを上方に向けた姿勢で、基端側がフィルタユニットケース80の円筒周壁81の外側面部から端壁83にかけての角部に接合されている。このため、燃料吸入管4の内部通路のうち、フィルタユニットケース80側の半分を、気泡が積極的に通る通路とすることができる。また、燃料吸入管4の内部通路のうち、フィルタユニットケース80側とは反対側の半分を、燃料が積極的に通る通路とすることができる。よって、フィルタユニットケース80内で発生する気泡の排出と燃料吸入管4からの燃料の流入をスムーズに行うことができ、気液交換性をさらに高めることができる。
【0098】
さらに、フィルタユニットケース80の内部にフィルタカートリッジ60を取り付けた状態では、このフィルタカートリッジ60の後面板67とフィルタユニットケース80の端壁83とが微小隙間Sを介して軸方向で対向する。そして、燃料吸入管4をこの燃料吸入管4の延出方向からみたとき、円筒内周面4aとフィルタカートリッジ60の後面板67とが重なっている。また、フィルタカートリッジ60の後面板67とフィルタユニットケース80の端壁83は、微小隙間Sを介して軸方向で対向している。このため、この微小隙間Sから気泡の排出をしにくくすることができる。この結果、後面板67とフィルタユニットケース80の端壁83との間に燃料を導入しやくなる。よって、フィルタユニットケース80内で発生する気泡の排出と燃料吸入管からの燃料の流入をスムーズに行うことができ、気液交換性をさらに高めることができる。
【0099】
また、燃料ポンプモジュール1は、ポンプユニット2とフィルタユニット3を着脱自在に結合していることにより、フィルタユニット3をポンプユニット2から取り外すことで、容易にフィルタユニット3内のフィルタカートリッジ60の交換が可能であり、メンテナンスが簡単にできる。
【0100】
さらに、ポンプユニット2とフィルタユニット3を軸方向にスライドさせてロックするだけで、ポンプユニット2の燃料吸入口(円筒管50の内部貫通孔50a)とフィルタユニット3の燃料導出口(円筒ボス部62の内部貫通孔70)とをOリング56を介して液密に連通接続することができる。このため、燃料ポンプモジュール1の組み立てを容易にできる。
また、ポンプユニット2とフィルタユニット3を軸方向にスライドさせるだけで、ロック舌片86とロック凸部26を係合させることができるスナップフィット式のロック手段を採用している。このため、容易に両ユニット2、3を結合することができる。
【0101】
さらに、フィルタユニットケース80の4対のロック舌片86のうち、少なくともフィルタユニットケース80から燃料吸入管4が突出している方向に最も近い方向に一面が向いているロック舌片86Aのロック孔86aは、軸方向に沿う両内側面86a1が、燃料吸入管4の延出方向に沿うように形成されている。これにより、フィルタユニットケース80を例えば樹脂成形する際、燃料吸入管4とロック舌片86Aとを形成する金型の一部のスライド方向(金型の抜き方向)を同一に設定することが可能になる。このため、この分、金型を簡素化できる。
【0102】
また、ポンプユニット2とフィルタユニット3の合わせプレート40、61間に、合わせ面41a、61a同士を合わせるだけでラビリンスを形成する凸壁43、63や凹所44、64を設けている。このため、ポンプユニット2とフィルタユニット3の合わせプレート40、61間における外部からOリング56の近辺に至る経路を複雑化したり長くしたりすることができる。この結果、簡単な構成でコストをかけずに、ポンプユニット2とフィルタユニット3の合わせプレート40、61間の隙間を通してのダスト等の異物の侵入をラビリンス効果によって極力回避することができる。よって、Oリング56による燃料通路のシール性確保の信頼性を高めることができる。
【0103】
また、フィルタユニット3側からポンプユニット2側に向けて延ばした円筒フード部84によって、ポンプユニット2とフィルタユニット3の合わせプレート40、61の周囲を包囲する。このため、外部から合わせプレート40、61間にダストが侵入するのを極力減らすことができる。
【0104】
さらに、仮にポンプユニット2とフィルタユニット3の合わせプレート40、61間の隙間にダスト等の異物が入ってしまった場合にも、車両の振動や揺れ等により、合わせ面41a、61aに設けた排出溝45、65を通して漏れ燃料と共にダスト等の異物を下方に向けて徐々に落下させて外部に自然排出することができる。つまり、自動二輪車のような車両に搭載した場合、走行条件や走行環境などによって合わせプレート40、61間の全周からダスト等の異物が内部に入り込む可能性があるが、このような場合であっても、車両の振動や揺れなどによって、ダスト等の異物を自然に漏れ燃料と共に下方に排出することができる。よって、特に自動二輪車のような車両に搭載した場合のシール性能の信頼性を高めることが可能になる。この場合、真下に向けて排出溝45、65が設けられていると、より確実に、侵入したダストを外部に排出することができる。
【0105】
また、両ユニット2、3の結合操作時に、ポンプユニット2側の円筒管50の延長管部52の先端が、フィルタユニット3側の円筒ボス部62のガイド孔部72に先に挿入され、この後に、Oリング56が円筒ボス部62のOリング嵌合孔部73に嵌まるように寸法設定がされている。このため、ポンプユニット2とフィルタユニット3の芯合わせが行われた後でOリング56が相手側ユニット(フィルタユニット3)に挿入されることになる。この結果、ロック手段として融通性のあるスナップフィット(ロック凸部26とロック舌片86の組み合わせ)を使用した場合にも、相手側ユニット(フィルタユニット3)との間にOリング56を噛み込むようなトラブルを回避することができる。よって、Oリング56の噛み込みによる損傷を有効に防止することができる。
【0106】
また、芯合わせ用のガイド凸部として、内部貫通孔50aを燃料吸入口とする円筒管50を用い、ガイド凹部として、内部貫通孔70を燃料導出口とする円筒ボス部62を用いる。このため、ガイド手段と燃料通路(燃料吸入口及び燃料導出口)とを共通化することができて、構造の簡素化が図れる。
【0107】
また、ロック凸部26の前側斜面にロック舌片86の前端が突き当たるのに先だって、円筒ボス部62のガイド孔部72に円筒管50の延長管部52の先端が挿入される。このため、両ユニット2、3同士の芯合わせが行われた後で、ロック舌片86が弾性変形をし始める。従って、ロック動作に伴って両ユニット2、3相互間に芯ずれが起こり、このために両ユニット2、3の場所によって不均一な力が働くようなことがなくなる。この結果、Oリング56が相手側ユニット(フィルタユニット3)に噛み込む等のトラブルがより未然に防止されることになる。
【0108】
また、両ユニット2、3同士の芯合わせのために、つまり、円筒管50の先端をガイド凸部として利用するために、円筒管50の先端に延長管部52を延長して設けた。これによって、フィルタカートリッジ60の濾過後空間69の内部に進入する円筒管50の占有容積が増大する。この結果、フィルタカートリッジ60内の濾過後空間の実質容積を減らすことができて、フィルタカートリッジ60内の気体体積を減らす効果が得られる。因みにフィルタカートリッジ60内に気体(気泡)が多く含まれている状態(高温時など)では、ポンプ本体10の燃料吸い込み効率が悪くなり、内燃機関の始動性に悪影響を与えることがあるが、このような悪影響を軽減することができる。
【0109】
また、円筒管50の先端側をガイド凸部としてフィルタカートリッジ60内に大きく進入させた場合、前述のようにフィルタカートリッジ60内の濾過後空間69の実質容積を減らせるという利点が得られるものの、燃料吸入口が円筒管50の先端開口だけになると、逆にポンプ本体10による燃料吸い込み効率が悪化するという新たな課題がでてくる。特に円筒管50が水平な姿勢を維持する場合、円筒管50の内部に燃料が入って行きにくくなる。そこで、円筒管50の先端の延長管部52の周壁にスリット等の連通部としてスリット52aを設けている。こうすることにより、燃料の吸い込み効率が良くなり、気液交換性能が向上する。また、円筒管50の内径を拡大することでも気液交換性能が向上する。また、円筒管50の先端側の周壁にスリットなどの連通部を設けることで、円筒管50の径や長さに左右されずに気液交換性能を向上させることができる。
【0110】
なお、スリット52aの本数や形状や寸法は問わない。また、スリット52aの代わりに連通部として貫通孔を設けてもよい。この場合も、貫通孔の個数や形状や寸法は問わない。スリットや貫通孔を大きく形成すると、円筒管50の先端側(延長管部52)の剛性が不足し、本来の目的であるガイド凸部としての機能を果たせなくなるおそれがあるため、必要な剛性が保てるように円筒管50の径や連通部(スリットや貫通孔)の形状・寸法を設定するのが望ましい。なお、円筒管50を樹脂で成形にあたっては、成形上の容易さからスリットの方が望ましい。
【0111】
また、ロック凸部26及びロック舌片86の隣に差し込み枠27及び差し込み舌片87を設け、両ユニット2、3結合時に互いに嵌まり合うようにしている。このため、ユニット2、3の結合状態において、フィルタユニットケース80の合わせ部の周辺の剛性を高めることができる。この結果、ロック舌片86の径方向外方への弾性変形しやすさを減じることができる。また、周方向への変位も防止することができる。従って、ロック凸部26とロック舌片86のロック孔86a(スナップフィット)の係合が外れ難くなる。
【0112】
また、ロックする際には、単に2つの両ユニットケース20、80を、軸方向に芯合わせしながら相互にスライド操作して合わせるだけで、ロック凸部26とロック舌片86を係合状態にすることができる。これに加え、差し込み枠27に、差し込み舌片87も嵌合状態にすることができる。従って、着脱容易性を確保しながら、特に特に捻り方向の振動や衝撃に対して強さを発揮することができる。なお、差し込み枠27や差し込み舌片87は、ロック凸部26やロック舌片86に隣接して配置すればよいので、外径が大きくならずに振動や衝撃に対する耐力アップが可能となる。
【0113】
また、フィルタユニット3側の円筒フード部84がポンプユニット2の端部に嵌まる。これにより、両ユニット2、3の結合部における特に捻り方向の振動や衝撃に対しての耐力アップを図ることができる。
【0114】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0115】
例えば、上記実施形態では、合わせプレート40、61の合わせ面41a、61aに設けた凸壁43、63の断面形状を矩形状にした場合を述べたが、台形、三角形、半円、波形など任意形状にしてもよい。この際、凸壁の嵌まる相手である凹所の形状も、凸壁の断面形状に合わせて変更するのがよい。また、一方の合わせ面の凸壁の断面形状と他方の合わせ面の断面形状を異ならせてもよいし、同じ合わせ面に複数ある凸壁の断面形状を異ならせてもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、両合わせ面41a、61aに凸壁43、63を設けた場合を述べたが、片方の合わせ面は平面とし、他方の合わせ面にだけ凸壁を設けてもよい。
【0117】
また、凸壁43、63の個数は多い方がよいが、少なくてもよく、1本でもよい。だが、片方の合わせ面に2本以上の凸壁を設け、それらの凸壁の間の凹所に、他方の合わせ面の凸壁を挿入させることで、ラビリンス効果を得ることができる。
【0118】
また、上記実施形態では、凸壁43、63を連続した環状に設けた場合を述べたが、点状に分散して設けてもよい。いずれにしろ、径方向の経路においてラビリンスや少なくとも1つの隘路を形成すれば、ある程度のダスト侵入防止効果は得られる。
【0119】
また、環状の凸壁43、63の周方向の一部に切欠43a、63aを設けることで排出溝45、65を形成するようにしたが、排出溝は無くてもよい。また、排出溝を設ける場合でも、設ける本数は問わない。但し多いと逆にダスト等が入る可能性が増すことにもなる。
【0120】
また、合わせプレート40、61は、形状が複雑なため樹脂(例えば、POM:ポリアセタール)で成形するのが望ましいが、樹脂に限らずに金属等どのような材料で製作してもよい。
【0121】
また、樹脂で製作する場合、例えば、複数のロック舌片86のうちの幾つかのロック孔86aの貫通方向を燃料吸入管4の軸方向に一致させるように構成すれば、金型のコアの抜き方向の一致により金型構成の簡略化が可能になる。
【0122】
また、上記実施形態では、芯合わせ用のガイド凸部とガイド凹部として、内部貫通孔50aを燃料吸入口とする円筒管50と内部貫通孔70を燃料導出口とする円筒ボス部62を用いる場合を述べた。しかしながら、これに限られるものではなく、これらの円筒管50や円筒ボス部62とは別の位置にガイド凸部及びガイド凹部を設けてもよい。要はポンプユニット2とフィルタユニット3の結合時の芯合わせができればよい。このため、構成の複雑化を許せば、互いに嵌合し得るように合わせプレート40、61のどの位置に設けてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、ポンプユニット2側にガイド凸部の機能を持つ円筒管50を設け、フィルタユニット3側にガイド凹部の機能を持つ円筒ボス部62を設けた場合を述べた。しかしながら、これに限られるものではなく、これとは反対に、フィルタユニット3側にガイド凸部の機能を持つ円筒管を設け、ポンプユニット2側にガイド凹部の機能を持つ円筒ボス部を設けてもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、ポンプユニット2側にロック凸部26を設け、フィルタユニット3側に弾性変形してロック凸部26に係合するロック舌片86を設けた場合を述べた。しかしながら、これに限られるものではなく、これとは反対に、フィルタユニット3側にロック凸部を設け、ポンプユニット2側に弾性変形してロック凸部に係合するロック舌片を設けてもよい。この場合は、ポンプユニット2側にフィルタユニット3の外周に嵌まる円筒フード部を設けるのがよい。この際、差し込み枠27と差し込み舌片87も反対側に設ける。つまり、ポンプユニット2側に設けた円筒フード部に差し込み舌片を延設し、フィルタユニット3側の外周に差し込み枠を設ける。
【0125】
また、ロック手段(ロック凸部26及びロック舌片86)の個数や変形規制手段(差し込み枠27及び差し込み舌片87)の個数は問わない。
さらに、上記実施形態では、結合すべきケース(ポンプユニットケース20及びフィルタユニットケース80)が円筒形状のケースの場合を述べたが、それ以外の筒状であってもよい。
【0126】
また、フィルタユニットケース80の円筒周壁81の内周面81aや燃料吸入管4の円筒内周面4aは、必ずしも真円の円筒状でなくてもよく、いずれか一方あるいは両方が楕円状あるいは別の断面形状の内周面であってもよい。