特許第6787847号(P6787847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6787847露光装置、画像形成装置及び露光装置製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787847
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】露光装置、画像形成装置及び露光装置製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/447 20060101AFI20201109BHJP
   B41J 2/45 20060101ALI20201109BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20201109BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20201109BHJP
   H04N 1/036 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   B41J2/447 101A
   B41J2/45
   G03G21/16 104
   G03G15/04
   H04N1/036
【請求項の数】19
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-142686(P2017-142686)
(22)【出願日】2017年7月24日
(65)【公開番号】特開2018-52108(P2018-52108A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-185981(P2016-185981)
(32)【優先日】2016年9月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】木田 学武
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−218602(JP,A)
【文献】 特開2015−95436(JP,A)
【文献】 特開2015−226992(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0242252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
B41J 2/45
G03G 15/04
G03G 21/16
H04N 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が配置される第1の面を有する基板部と、
前記発光素子からの光を入射するレンズ部と、
前記レンズ部を保持するホルダ部と、
絶縁部材で形成された絶縁シートと
を有し、
前記基板部は、
前記第1の面の反対面の第2の面に前記絶縁シートと当接する当接部品を
有し、
前記絶縁シートは、
前記当接部品と当接した状態で前記ホルダ部に対して固定されることを特徴とする
露光装置。
【請求項2】
前記基板部は、前記ホルダ部に形成された当接部に当接した状態で前記ホルダ部に対して固定され、該基板部の長手方向に沿って並ぶ複数個の前記当接部品を有し、
前記当接部は、前記ホルダ部における長手方向において少なくとも前記当接部品を含む位置に形成されている
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記当接部は、前記ホルダ部における長手方向において前記当接部品と同一箇所に形成されている
請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記絶縁シートは、前記基板部の前記第2の面を覆い、前記当接部品と当接した状態で前記ホルダ部に対して固定されることにより、前記基板部と一定の間隔を保つ
請求項1に記載の露光装置。
【請求項5】
前記基板部は、封止材により前記ホルダ部に接着される
請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記基板部は、コネクタを有し、複数の前記当接部品のうち少なくとも1つの前記当接部品は、前記コネクタよりも長手方向の外側に配置されている
請求項1に記載の露光装置。
【請求項7】
前記当接部品は、前記基板部に搭載された他の電子部品よりも高さが高く形成されている
請求項1に記載の露光装置。
【請求項8】
複数個の前記当接部品は、互いに高さが揃っている
請求項2に記載の露光装置。
【請求項9】
複数個の前記当接部品は、互いに同じ外形である
請求項8に記載の露光装置。
【請求項10】
複数個の前記当接部品は、電子部品である
請求項2に記載の露光装置。
【請求項11】
複数個の前記当接部品は、前記電子部品として機能しないダミー部品を含む
請求項10に記載の露光装置。
【請求項12】
前記当接部品は、前記基板部の短手方向の端部から1mm以上内側に配置されている
請求項1に記載の露光装置。
【請求項13】
前記ホルダ部は、長手方向に前記基板部と略平行に伸びる壁部を有し、
前記ホルダ部と前記絶縁シートとは、前記壁部に沿って伸びる封止材によって封止され、
前記絶縁シートは、前記基板部と対向する絶縁シート第1面と、前記絶縁シート第1面の反対側の絶縁シート第2面とを有し、
前記封止材は、前記絶縁シート第1面と前記絶縁シート第2面とに接する領域を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れかに記載の露光装置。
【請求項14】
前記領域は、前記絶縁シートの長手方向の長さの70%以上の範囲で形成される
ことを特徴とする請求項13に記載の露光装置。
【請求項15】
前記領域において、前記ホルダ部の短手方向における前記壁部から前記絶縁シートの端部までの距離は、前記壁部から前記基板部の端部までの距離よりも大きい
ことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の露光装置。
【請求項16】
前記封止材は、長手方向における前記発光素子の端部よりも外側まで延在する
ことを特徴とする請求項13に記載の露光装置。
【請求項17】
前記絶縁シートは、前記絶縁シート第1面と前記絶縁シート第2面とを接続する絶縁シート第3面を有し、
前記封止材は、前記領域において前記絶縁シート第3面と接する
ことを特徴とする請求項13に記載の露光装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17の何れかの露光装置を具えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項19】
発光素子が配置される第1の面を有する基板部を、前記発光素子からの光を入射するレンズ部を保持するホルダ部に組み付ける基板組付ステップと、
前記基板部における前記第1の面の反対面の第2の面に配された当接部品の上から絶縁部材で形成された絶縁シートを押し付けることにより、前記当接部品と当接した状態で前記絶縁シートを前記ホルダ部に対して固定する絶縁シート押付ステップと
を具えることを特徴とする露光装置製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露光装置、画像形成装置及び露光装置製造方法に関し、例えば電子写真式の画像形成装置に搭載される露光装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置としては、露光用の光を発光する露光装置から、感光体ドラムの表面に光を照射して感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、さらにその静電潜像にトナーを付着させてトナー画像を現像することにより、画像の印刷を行うものが広く普及している。この露光装置としては、例えば発光素子であるLED(Light Emitting Diode)から出射される光を利用するLEDヘッドがある。
【0003】
LEDヘッドは、例えば、複数のLEDが直線状に配置されたLEDアレイが実装された基板と、各LEDから出射される光をそれぞれ集光させる複数のレンズが整列されたロッドレンズアレイと、基板及びロッドレンズアレイを保持するホルダと、基板をホルダに押し当てるベースとを有するものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、基板に搭載されたLEDアレイから放射された光がロッドレンズアレイを通過し収束され、そのロッドレンズアレイの結像位置に配設された感光体ドラムの表面に露光することにより、静電潜像が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−73041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなLEDヘッドにおいては、ベースを無くすことにより構成を簡素化することが望まれている。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、構成を簡素化し得る露光装置、画像形成装置及び露光装置製造方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の露光装置においては、発光素子が配置される第1の面を有する基板部と、発光素子からの光を入射するレンズ部と、レンズ部を保持するホルダ部と、絶縁部材で形成された絶縁シートとを設け、基板部は、第1の面の反対面の第2の面に絶縁シートと当接する当接部品を有し、絶縁シートは、当接部品と当接した状態でホルダ部に対して固定されるようにした。
【0008】
また本発明の画像形成装置においては、上述した露光装置を設けるようにした。
【0009】
さらに本発明の露光装置製造方法においては、発光素子が配置される第1の面を有する基板部を、発光素子からの光を入射するレンズ部を保持するホルダ部に組み付ける基板組付ステップと、基板部における第1の面の反対面の第2の面に配された当接部品の上から絶縁部材で形成された絶縁シートを押し付けることにより、当接部品と当接した状態で絶縁シートをホルダ部に対して固定する絶縁シート押付ステップとを設けるようにした。
【0010】
本発明は、基板部がホルダ部に接着されるまで、絶縁シートを介し基板部の当接部品を押し付け、基板部をホルダ部に押し当てることにより、別途ベースを用いることなく、基板部をホルダ部に固定できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構成を簡素化し得る露光装置、画像形成装置及び露光装置製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】カラープリンタの構成を示す左側面図である。
図2】画像形成ユニットの構成を示す左側面図である。
図3】第1の実施の形態によるLEDヘッドの構成(1)を示す斜視図である。
図4】基板の構成を示す斜視図である。
図5】第1の実施の形態によるLEDヘッドの構成(2)を示し、図3(B)におけるX−X矢視断面図である。
図6】第1の実施の形態によるLEDヘッド製造処理手順を示すフローチャートである。
図7】第1の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(1)を示す断面斜視図である。
図8】第1の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(2)を示す斜視図である。
図9】第1の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(3)を示す断面斜視図である。
図10】第1の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(4)を示す断面斜視図である。
図11】第1の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(5)を示す断面斜視図である。
図12】第2の実施の形態によるLEDヘッドの構成(1)を示す斜視図である。
図13】第2の実施の形態によるLEDヘッドの構成(2)を示し、図12におけるX−X矢視断面図である。
図14】第2の実施の形態によるホルダの構成を示し、(A)は平面図、(B)は(A)における左端部近傍の拡大平面図である。
図15】第2の実施の形態による絶縁シートの構成を示し、(A)は平面図、(B)は(A)における左端部の拡大平面図である。
図16】第2の実施の形態によるLEDヘッド製造処理手順を示すフローチャートである。
図17】第2の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(1)を示す断面斜視図である。
図18】第2の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(2)を示す平面図である。
図19】第2の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(3)を示す平面図である。
図20】第2の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(4)を示す断面斜視図である。
図21】第2の実施の形態によるLEDヘッドの製造工程(5)を示す断面斜視図である。
図22】第2の実施の形態による絶縁シート、LEDアレイ及びシリコン樹脂の構成を示す平面図である。
図23】他の実施の形態によるホルダ及び絶縁シートの構成(1)を示す平面図である。
図24】他の実施の形態によるホルダ及び絶縁シートの構成(2)を示す平面図である。
図25】他の実施の形態によるLEDヘッドの構成を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.カラープリンタの構成]
図1に左側面図を示すように、カラープリンタ1は、カラー用電子写真式プリンタであり、例えばA3サイズやA4サイズ等の大きさでなる用紙Pに対し、所望のカラー画像を印刷する。画像形成装置としてのカラープリンタ1は、略箱型に形成されたプリンタ筐体2の内部に種々の部品が配置されている。因みに以下では、図1における右端部分をカラープリンタ1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義した上で説明する。カラープリンタ1は、制御部3により全体を統括制御する。この制御部3は、図示しない通信処理部を介して、パーソナルコンピュータのような上位装置(図示せず)と無線又は有線により接続されている。制御部3は、上位装置から印刷対象のカラー画像を表す画像データが与えられると共に該カラー画像の印刷が指示されると、用紙Pの表面に印刷画像を形成する印刷処理を実行する。
【0015】
プリンタ筐体2内の最下部には、用紙Pを収容する用紙収容カセット4と、用紙収容カセット4に集積された状態で収容されている用紙Pを1枚ずつ分離して給紙する給紙部5と、該用紙Pの色を測色する用紙色測色部6とが設けられている。給紙部5は、用紙収容カセット4の前端上側に位置しており、用紙収容カセット4の前端上側に設けられ中心軸を左右方向に向けたホッピングローラ7や、該ホッピングローラ7の上方に設けられたレジストローラ8のような複数のローラに加え、用紙Pを案内するガイド等により構成されている。
【0016】
この給紙部5は、制御部3の制御によりホッピングローラ7及びレジストローラ8等を回転させ、用紙収容カセット4に収容されている用紙Pを1枚ずつに分離して取り込むと共に、取り込んだ用紙Pを前上方へ進行させた後、プリンタ筐体2内の前端近傍における上下ほぼ中央となる位置において、後方へ折り返すように進行させる。また用紙色測色部6は、用紙Pの色を測色し、その結果を制御部3へ供給する。
【0017】
プリンタ筐体2内における用紙収容カセット4の上方には、該プリンタ筐体2内を前後に大きく横切るようにして転写ベルトユニット10が設けられている。転写ベルトユニット10は、中心軸を左右方向に向けた細長い円筒状でなるローラ11が前後に1個ずつ配置されると共に、前後のローラ11を周回するように転写ベルト12が張架されている。転写ベルト12は、左右方向の幅が広く、且つ無端状のベルトとして形成されており、ローラ11の回転に伴って走行する。転写ベルトユニット10は、制御部3の制御に基づいてローラ11を回転させることにより転写ベルト12を走行させ、給紙部5から受け渡された用紙Pを該転写ベルト12の上面に載せて後方向へ搬送する。
【0018】
一方、転写ベルトユニット10の上側、すなわちプリンタ筐体2における中央よりも上寄りには、図2に示す4個の画像形成ユニット15C、15M、15Y及び15K(以下、これらをまとめて画像形成ユニット15と呼ぶ)が後側から前側へ向かって順に配置されている。すなわち各色の画像形成ユニット15は、いわゆるタンデム方式で配置されている。この画像形成ユニット15C、15M、15Y及び15Kは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色にそれぞれ対応している。また画像形成ユニット15C、15M、15Y及び15Kは、互いに同様に構成されており、対応するトナーの色のみがそれぞれ相違する。画像形成ユニット15は、用紙Pの左右幅に対応するべく、左右方向に比較的長い略箱状に形成されている。
【0019】
またプリンタ筐体2内には、各画像形成ユニット15C、15M、15Y及び15Kとそれぞれ対応するように、LEDヘッド16C、16M、16Y及び16K(以下、これらをまとめてLEDヘッド16と呼ぶ)が設けられている。このLEDヘッド16は、左右方向に細長い直方体状に構成されると共に、その内部に複数のLEDが左右方向に沿って並ぶように配置されており、制御部3から供給される画像データに応じた発光パターンで各LEDを発光させる。画像形成ユニット15は、プリンタ筐体2に装着された際、このLEDヘッド16と極めて近接するようになっており、該LEDヘッド16からの光により露光処理が行われる。
【0020】
また各画像形成ユニット15C、15M、15Y及び15Kは、それぞれ上方にトナーカートリッジ18C、18M、18Y及び18K(以下、これらをまとめてトナーカートリッジ18と呼ぶ)が接続されている。トナーカートリッジ18は、左右方向に長い中空の容器であり、粉末状でなる各色のトナーがそれぞれ収容されると共に、所定の撹拌機構が組み込まれている。因みに転写ベルトユニット10には、前後のローラ11の間における各画像形成ユニット15の真下となる4箇所に、それぞれ転写ローラ13C、13M、13Y及び13K(以下、これらをまとめて転写ローラ13と呼ぶ)が設けられている。すなわち各画像形成ユニット15は、各転写ローラ13との間に転写ベルト12の上側部分を挟んでいる。因みに転写ローラ13は、帯電し得るように構成されている。
【0021】
制御部3は、トナーカートリッジ18からトナーを画像形成ユニット15へ供給させる。これと共に制御部3は、上位装置(図示せず)から供給された画像データに応じた発光パターンを形成するようにLEDヘッド16を発光させる。これに応じて各画像形成ユニット15は、トナーカートリッジ18から供給されるトナーを用い、LEDヘッド16の発光パターンに応じたトナー画像を形成し、このトナー画像を用紙Pにそれぞれ転写する(詳しくは後述する)。これにより、転写ベルトユニット10によって搬送されている用紙P上には、画像データに応じた4色のトナー画像が順次転写されていく。
【0022】
転写ベルトユニット10の後方、すなわちプリンタ筐体2の後端近傍における上下の中央近傍には、定着ユニット20が設けられている。定着ユニット20は、加熱ローラ21及び加圧ローラ22により構成されている。加熱ローラ21は、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、内部にヒータが設けられている。加圧ローラ22は、加熱ローラ21と同様の円筒状に形成されており、上側の表面を加熱ローラ21における下側の表面に所定の押圧力で押し付けている。この定着ユニット20は、制御部3の制御に基づき、加熱ローラ21を加熱すると共に該加熱ローラ21及び加圧ローラ22をそれぞれ所定方向へ回転させる。これにより定着ユニット20は、転写ベルトユニット10から受け渡された用紙P、すなわち4色のトナー画像が重ねられた用紙Pに対して熱及び圧力を加えてトナーを定着させ、さらに後上方へ受け渡す。
【0023】
定着ユニット20の後上方には、排紙部24が配置されている。排紙部24は、中心軸を左右方向に向けた複数のローラ(図示せず)や用紙を案内するガイド等の組み合わせにより構成されている。この排紙部24は、制御部3の制御に従って各ローラを適宜回転させることにより、定着ユニット20から受け渡される用紙Pを後上方へ搬送してから前方へ向けて折り返し、プリンタ筐体2の上面に形成された排出トレイ2Tへ排出する。
【0024】
このようにカラープリンタ1は、印刷処理を実行する際、LEDヘッド16を発光させることにより、各色の画像形成ユニット15によってトナー画像をそれぞれ形成し、これを用紙Pに順次転写する。
【0025】
[1−2.画像形成ユニットの構成]
次に、画像形成ユニット15の構成について説明する。図2に示すように画像形成ユニット15は、その外周における大部分をフレーム31により閉塞すると共に、その内部に比較的大きな空間を形成している。
【0026】
画像形成ユニット15内の中央下寄りには、感光体ドラム35が設けられている。感光体ドラム35は、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、フレーム31によりこの中心軸を中心として回転可能に支持されている。因みに感光体ドラム35は、図示しないモータから駆動力が伝達されることにより、矢印R1方向へ回転する。
【0027】
フレーム31における感光体ドラム35の下面となる部分は、比較的広い範囲に渡って開放されている。このため画像形成ユニット15は、プリンタ筐体2(図1)に装着された際に、転写ベルト12又は該転写ベルト12上に載せられた用紙Pに感光体ドラム35の下面を接触させる。またフレーム31における感光体ドラム35の真上となる部分には、左右方向に細長い露光孔が穿設されている。
【0028】
感光体ドラム35の後上方には、該感光体ドラム35よりも径が小さい円筒状でなる帯電ローラ36が設けられている。帯電ローラ36は、例えば半導電性の弾性材により構成されると共に、その周側面を感光体ドラム35の周側面35Sに当接させており、該周側面35Sの当接箇所を一様に帯電させる。
【0029】
感光体ドラム35の前上方には、該感光体ドラム35よりも径が小さい円筒状でなる現像ローラ38が設けられている。現像ローラ38は、例えばウレタンゴム材にカーボンのような導電性物質が添加されて電気抵抗が適宜調節された半導電性ウレタンゴムにより構成され、帯電し得る。この現像ローラ38は、後側においてその周側面を感光体ドラム35の周側面35Sに当接させると共に、前側において該現像ローラ38よりも僅かに径が小さい円筒状でなる供給ローラ39にその周側面を当接させている。供給ローラ39は、例えば半導電性発泡シリコンスポンジにより構成されている。
【0030】
現像ローラ38の後上方には、薄板状の現像ブレード40が設けられている。現像ブレード40は、ステンレスやリン青銅等の金属、又はシリコンゴムのようなゴム材等により構成されている。この現像ブレード40は、後上端がフレーム31内に固定されており、その前下端と現像ローラ38の周側面との間に僅かな隙間を形成している。
【0031】
さらに、感光体ドラム35の上方における左右両側には、スペーサ45が設けられている。スペーサ45は、その大きさやフレーム31に対する取付位置等が最適化されており、その上面にLEDヘッド16の下面を当接させることにより、感光体ドラム35の周側面と該LEDヘッド16との間隔を所望の長さに合わせる。
【0032】
かかる構成において画像形成ユニット15は、用紙Pに画像を印刷する際、制御部3の制御に基づき、感光体ドラム35を矢印R1方向へ回転させると共に、帯電ローラ36、現像ローラ38及び供給ローラ39を矢印R2方向へ回転させ、さらに帯電ローラ36及び現像ローラ38を帯電させる。
【0033】
感光体ドラム35は、まず周側面35Sの後上側部分が帯電ローラ36により一様に帯電され、矢印R1方向への回転によりこの帯電した箇所を上端近傍に到達させてLEDヘッド16と対向させる。このとき感光体ドラム35の周側面35Sは、LEDヘッド16から画像データに応じた発光パターンの光が照射されることにより露光され、該画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0034】
一方、矢印R2方向へ回転する現像ローラ38は、トナーカートリッジ18から供給されるトナーが供給ローラ39によって周側面に付着し、次に現像ブレード40により余分なトナーが削ぎ落とされるため、周側面に均一な薄膜状にトナーが付着される。
【0035】
感光体ドラム35は、さらに矢印R1方向へ回転することにより、現像ローラ38と当接する前端近傍において、該現像ローラ38の周側面に薄膜状に形成されているトナーを、静電潜像に応じた箇所のみ周側面35Sに付着させる。これにより感光体ドラム35の周側面35Sには、画像データに応じたトナー画像を形成する。因みにこのとき周側面35Sに形成されるトナー画像は、最終的に印刷すべき画像のうち、この画像形成ユニット15が担当する1色(すなわちシアン、マゼンタ、イエロー又はブラックの何れか)の成分のみを表した画像となっている。
【0036】
その後感光体ドラム35は、さらに矢印R1方向へ回転することにより、トナー画像を下端近傍へ到達させる。このとき制御部3は、転写ベルトユニット10(図1)により用紙Pを画像形成ユニット15の下側に到達させると共に、転写ローラ13をトナーと逆の特性に帯電させている。このため画像形成ユニット15は、感光体ドラム35のうちトナー画像が形成された部分と帯電された転写ローラ13との間に用紙Pを挟持することになり、このトナー画像を用紙Pに転写する。因みにトナー画像を用紙Pに転写した後に感光体ドラム35の周側面35Sにトナーが残っていた場合、図示しないクリーニング装置によりこのトナーが除去される。
【0037】
かくして画像形成ユニット15は、LEDヘッド16を感光体ドラム35の近傍に対向させ、該LEDヘッド16の露光作用によりトナー画像を該周側面35S上に形成する。
【0038】
[1−3.LEDヘッドの構成]
次に、LEDヘッド16の構成について説明する。図3及び図5に示すように、LEDヘッド16は、全体として左右方向に細長い直方体状に形成されており、ホルダ51に各種部品が取り付けられた構成となっている。因みに図3(A)はLEDヘッド16を下方前側から見た斜視図を示し、図3(B)はLEDヘッド16を上方前側から見た斜視図を示し、図5図3(B)におけるX−X矢視断面図を示し、図8は製造途中のLEDヘッド16を上方前側から見た拡大斜視図を示す。LEDヘッド16は、主にホルダ51、基板55及びロッドレンズアレイ53により構成される。
【0039】
ホルダ51は、例えば液晶ポリマーの金型成形で作製されており、左右方向に細長く上下方向に薄い板状の底部51Aを中心に構成され、該底部51Aにおける前後両辺から上方へ向けて、左右方向に細長く前後方向に薄い板状の側部51Bがそれぞれ延設されており、上端部において開放するホルダ開口部51Cが形成されている。底部51Aにおける前後方向のほぼ中央には、左右方向に細長いスリット状の孔部51Hが上下方向に貫通するように穿設されている。また側部51Bは、段差となる当接部51Sが形成されている。さらに底部51Aの上面における孔部51Hの左右両側には、上方へ向けて板52がそれぞれ立設されている。ホルダ51の左右方向の両端部からは、図4及び図8に示す基板55の嵌合孔部55Hと嵌合するピン51Pが突設している。
【0040】
孔部51Hには、収束レンズとしてのロッドレンズアレイ53が挿入されて取り付けられている。これにより、ロッドレンズアレイ53はホルダ51に支持されている。ロッドレンズアレイ53は、全体として左右方向に細長い直方体状に形成されており、左右方向に沿って多数の微小なレンズを並べるように保持している。このレンズは、後述するLEDアレイ56から放射される光を収束させるような光学特性を有している。ロッドレンズアレイ53は、該ロッドレンズアレイ53において光が入射される端面である上面と、LEDアレイ56の表面である下面との入射距離が、ロッドレンズアレイ53の特性上最適な値になるような位置となるように、ホルダ51に固着されている。
【0041】
ホルダ51の底部51Aとロッドレンズアレイ53との間隙には、封止材としてのシリコン樹脂62がこの隙間を埋めるように充填されている。これによりLEDヘッド16は、ホルダ51とロッドレンズアレイ53との間隙を封止し、ホルダ51の底部51A及び前後の側部51B並びに基板55の下面により囲まれた空間をほぼ密閉して、この空間への光及び異物の侵入を防止している。
【0042】
ホルダ51の側部51Bには、基板55における後述する電子部品60(図4図7及び図8)と左右方向の位置を合わせて、図5及び図7に示す当接部51Sが形成されている。当接部51Sは、上面において前後左右方向に沿い電子部品60の左右方向の長さよりも長い左右方向の長さの平面形状の当接面が形成されている。これによりLEDヘッド16は、電子部品60と当接部51Sとの左右方向の位置が誤差によりずれたとしても、電子部品60の下方に必ず当接部51Sを位置させることができる。この当接部51Sは、1個の電子部品60の前後それぞれに形成された当接面を一組として、左右方向に電子部品60と同等の等間隔を空けて左右方向に並んで4個配置されている。またこの当接部51Sは、LEDアレイ56とロッドレンズアレイ53との上下方向の間隔が一定の間隔となるように、水平方向に対し高い平面度を持っている。
【0043】
またホルダ51には、ロッドレンズアレイ53の上方に、当接部51Sに当接されるようにして長手方向を左右方向に沿わせて図4及び図7に示す基板55が取り付けられている。因みに図4(A)は基板55を下方前側から見た斜視図を示し、図4(B)は基板55を上方前側から見た斜視図を示す。基板55は、いわゆるガラスエポキシ基板でなり、左右方向に細長く上下方向に薄い板状に形成され、所定の配線パターンが形成された配線層が上下方向に複数積層された構成となっている。この基板55は、前後方向の長さがホルダ51における側部51B同士の間隔よりも短く、且つ左右方向の長さがホルダ51の板52同士の間隔よりも短くなっている。具体的に基板55は、左右方向(長手方向)の長さが224.6mmであり、上下方向の厚さが1mmとなっている。
【0044】
基板55の下面であるLEDアレイ配置面55Bには、前後方向のほぼ中央において、ロッドレンズアレイ53と対向するようにLEDアレイ56が基板55の長手方向に沿って実装されている。このLEDアレイ56は、下方へ向けて光を発光する発光点が左右方向に沿って所定の微小間隔ごとに並んでいる。
【0045】
基板55の上面である電子部品配置面55Aには、全て同一形状である複数個の電子部品60が実装されている。実際には電子部品60以外にも、LEDヘッド16を駆動する各種電子部品(図示せず)が電子部品配置面55Aに実装されている。電子部品60は、例えばチップコンデンサであり、基板55の短手方向である前後方向のほぼ中央において、前後方向の位置が揃った状態で、基板55の長手方向である左右方向に等間隔を空けて左右方向に並んで4個配置されている。具体的に電子部品60は、左右方向に66mmの間隔を空けて等間隔に4個配されている。この電子部品60の間隔は、基板55の長手方向の長さの20%以上且つ50%以下となっている。すなわち具体的には電子部品60は、長手方向の長さが224.6mmの基板55に対し、約45mm以上且つ約112mm以下の間隔で配置されている。この電子部品60は、ホルダ51における当接部51Sと左右方向の位置を合わせて、すなわち前後一対の当接部51Sから前後方向に挟まれる位置に配置されている。またこの電子部品60は、基板55の電子部品配置面55Aに実装された他の電子部品(図示せず)よりも高さが高く形成されていることにより、後述する冶具70(図11)で押し付けられやすくなっている。
【0046】
また基板55の電子部品配置面55Aにおける右端部近傍、具体的には右端の電子部品60と右から2番目の電子部品60との間には、基板55の各種電子部品とカラープリンタ1の制御部3等とを導通させるケーブルを接続するためのコネクタ55Cが実装されている。このため基板55には、該基板55の右寄りに配置されたコネクタ55Cよりも左右方向の外側である右側に、1個の電子部品60が配置されていることとなる。
【0047】
このようにカラープリンタ1は、基板55における電子部品配置面55Aに電子部品60等を実装すると共に、該電子部品配置面55Aの裏面であるLEDアレイ配置面55BにLEDアレイ56を実装する、すなわち電子部品60とLEDアレイ56とを基板55における互いに異なる面に実装するようにした。このためカラープリンタ1は、基板55のサイズを小型化でき、LEDヘッド16を小型化できると共に低コスト化できる。
【0048】
基板55における左右方向の両端部には、ホルダ51のピン51Pが嵌合する嵌合孔部55Hが穿設されている。LEDヘッド16は、図8に示すようにホルダ51のピン51Pを基板55の嵌合孔部55Hに嵌合させることにより、ホルダ51内における基板55の左右前後方向位置を規制する。
【0049】
図5に示すようにホルダ51の側部51Bと基板55との間隙には、封止材としてのシリコン樹脂62がこの隙間を埋めるように充填されている。これによりLEDヘッド16は、ホルダ51と基板55との間隙を封止し、ホルダ51の底部51A及び前後の側部51B並びに基板55の下面により囲まれた空間をほぼ密閉して、この空間への異物の侵入を防止している。またシリコン樹脂62は、隙間の封止以外に、基板55、ホルダ51及び後述する絶縁シート57を接着させる接着剤の役割も果たしている。
【0050】
基板55は、絶縁シート57で電子部品配置面55Aの全面が覆われることにより、外部への露出が防止されている。絶縁シート57は、例えばマイラー(登録商標)シート等、ポリエステル製の絶縁性を有する材料により構成されており、上下方向に薄く、前後方向の長さ(すなわち幅)が基板55よりも狭く、左右方向に長いフィルム状に形成されている。また絶縁シート57には、コネクタ55C等を覆うこと無く露出させるよう、コネクタ55Cの外形形状に合わせてくり抜かれたシート孔部57Hが形成されている。絶縁シート57は、基板55の電子部品配置面55A、すなわちLEDアレイ56が搭載されたLEDアレイ配置面55Bと反対の面に対し、該絶縁シート57における前後両端を基板55における前後両端からそれぞれ前後方向に僅かに隙間を空けて重ねられる。
【0051】
このようにLEDヘッド16は、基板55の上面に絶縁シート57が適切な位置に重ねられた状態で、該基板55がホルダ51に固定される。
【0052】
[1−4.LEDヘッドの製造]
次に、LEDヘッド16の製造工程について説明する。LEDヘッド16は、図6に示すLEDヘッド製造処理手順RT1に従った手順で製造される。このLEDヘッド製造処理手順RT1では、ホルダ51は、ロッドレンズアレイ53が当接部51Sに対し最適な上下方向の位置に固着されている。また基板55は、LEDアレイ56と電子部品60とが異なる面に実装され、電子部品60がホルダ51の当接部51Sの左右方向の位置に合わせ左右方向に沿って等間隔で実装されている。
【0053】
LEDヘッド製造処理手順RT1では、ステップSP1において、図7に示すように、ロッドレンズアレイ53とLEDアレイ56とが上下方向に対向するように、ホルダ51の当接部51Sに基板55が嵌合される。このとき、図8に示すように、ホルダ51のピン51Pが基板55の嵌合孔部55Hに嵌合することにより、ホルダ51内における基板55の前後左右方向位置が規制される。
【0054】
次にLEDヘッド製造処理手順RT1では、続くステップSP2において、図9に示すように、基板55とホルダ51との隙間を閉塞させるように、基板55とホルダ51との間がシリコン樹脂62により封止される。このとき、コネクタ55Cと基板55との隙間を閉塞させるように、コネクタ55Cの周囲もシリコン樹脂62により封止される。
【0055】
次にLEDヘッド製造処理手順RT1では、続くステップSP3において、図10に示すように、シート孔部57Hが形成された絶縁シート57が、シリコン樹脂62の上から被せられる。このとき、絶縁シート57のロール目方向が前後方向にされ、絶縁シート57が前後方向に反った状態(すなわち前後方向の中心よりも端部の方が下側に位置する状態)にされることにより、シリコン樹脂62と絶縁シート57とが密着しやすくなっている。
【0056】
次にLEDヘッド製造処理手順RT1では、続くステップSP4において、図11に示すように、ホルダ51の当接部51Sと同一の左右方向位置に実装されている電子部品60が絶縁シート57の上から冶具70により下方向に押し付けられ、ホルダ51の当接部51Sに基板55が当接された状態で、シリコン樹脂62が硬化するまで保持され、ステップSP5へ移る。冶具70は、電子部品60と対向する面が、該電子部品60の上面と平行に形成されている。このとき、加熱や加湿をすることにより、シリコン樹脂62の硬化時間を短縮しても良い。
【0057】
このようにLEDヘッド16は、ホルダ51の当接部51Sに基板55が当接した後に、基板55とホルダ51との間をシリコン樹脂62により封止され、シリコン樹脂62が硬化するまで、電子部品60が絶縁シート57の上から冶具70により押し付けられることにより、基板55がホルダ51に固定される。
【0058】
[1−5.動作及び効果等]
以上の構成においてLEDヘッド16は、基板55をホルダ51に嵌合し、基板55とホルダ51との隙間をシリコン樹脂62で封止し、基板55の上から絶縁シート57を被せ、電子部品60の上から冶具70で絶縁シート57を押し付けることにより、基板55をホルダ51の当接部51Sに押し当てて付勢した状態でシリコン樹脂62を硬化させ、電子部品60と絶縁シート57とが当接した状態でホルダ51に対してシリコン樹脂62により基板55を接着固定するようにした。
【0059】
このためLEDヘッド16は、別途ベースを用いることなく、基板55をホルダ51に固定できる。これによりLEDヘッド16は、従来のLEDヘッドと比べてベースを無くすことができ、構成を簡素化できると共に、LEDヘッド16の部材コストを削減できる。
【0060】
従来のLEDヘッドにおけるベースを削除した場合、基板55をホルダ51に付勢することができなくなる。よって、上下方向に反りが発生している基板55を左右方向の一端から他端までに亘って当接部51Sに当接させるためには、接着剤の役割を果たすシリコン樹脂62が硬化し基板55がホルダ51に接着するまで、冶具70で基板55をホルダ51に押し付ける必要がある。
【0061】
しかしながら、電子部品60の上下方向の高さの分だけ基板55の電子部品配置面55Aから浮いている絶縁シート57における、下方に電子部品60が配されていない箇所の上から冶具70により基板55を押し付けると、絶縁シート57が押し潰されて、硬化前のシリコン樹脂62が絶縁シート57とホルダ51との隙間から押し出され基板55が露出したり、硬化前のシリコン樹脂62が基板55のLEDアレイ配置面55Bに回り込んだりしてしまい、シリコン樹脂62の封止の不具合が発生してしまう可能性がある。基板55が露出すると、微小な異物のLEDアレイ配置面55Bへの混入や、帯電した人の手等が近付いた際の静電気放電による基板55の故障の原因となってしまう。
【0062】
これに対し本実施の形態においては、冶具70で絶縁シート57を介し押し付ける基板55の箇所は、電子部品配置面55Aの表面ではなく、電子部品60が実装されている箇所とした。これによりLEDヘッド16においては、絶縁シート57と電子部品配置面55Aとの間隔を一定に保ち、冶具70で基板55を押し付けた際に、絶縁シート57が押し潰されてしまうことを防止でき、シリコン樹脂62の封止の不具合が発生しないようにできる。
【0063】
ここで、電子部品60と当接部51Sとの左右方向の位置が仮に異なっていた場合、冶具70で電子部品60を押し付けた際に、冶具70から押し付けられる力を受ける受け部である当接部51Sが電子部品60の近傍に存在しなくなるため、基板55における冶具70で押し付けられた箇所が撓んでしまう。その場合、基板55が長手方向に沿って上下方向に湾曲してしまう。
【0064】
これに対しLEDヘッド16は、ホルダ51の当接部51Sの左右方向位置と、基板55がホルダ51に嵌合された際の該基板55に実装された電子部品60の左右方向位置とを一致させるようにした。このためLEDヘッド16は、冶具70で電子部品60を押し付けた際に、冶具70から押し付けられる力を、該電子部品60近傍に配された当接部51Sで受けることができ、基板55における冶具70で押し付けられた箇所が撓まないようにできる。これによりLEDヘッド16は、基板55が長手方向に沿って上下方向に湾曲してしまうことを防止し、基板55の上下方向の反りを矯正しつつ該基板55をホルダ51に固定できる。
【0065】
このようにLEDヘッド16は、シリコン樹脂62の封止の不具合を発生させることなく、且つ基板55の上下方向の反りを矯正しつつ、ベースを用いずに基板55をホルダ51に固定できる。
【0066】
また本来は、冶具70で押し付ける位置である電子部品60の直下に、ホルダ51において、冶具70から押し付けられる力を受ける受け部である当接部51Sを形成することが望ましい。しかしながら電子部品60の直下にはLEDアレイ56が位置しているため、当接部51Sの前後位置を電子部品60に合わせることはできない。このため基板55の前後方向の中央に配された電子部品60を冶具70で押し付けることにより基板55の前後方向の両端部を当接部51Sに押し当てると、左右方向に沿う軸を中心とした上下方向の僅かな湾曲は基板55に発生する可能性はある。しかしながら基板55の前後方向(すなわち幅方向)の幅は狭いため、実用上は無視できる程度の湾曲しか発生しない。
【0067】
ここで、冶具70で押し付ける箇所、すなわち電子部品60及び当接部51Sの個数は、基板55が上下方向に反っていた場合であってもLEDヘッド16が作るLED像の品質を保つように、基板55の上下方向の反りを矯正できるだけの点数である、例えば4個とした。
【0068】
具体的にはLEDヘッド16は、長手方向の長さが224.6mm、上下方向の厚さが1mmの基板55が、上下方向に約1mm反っていると想定し、左右方向に66mmの間隔で等間隔にホルダ51への基板55の押し当て箇所を4箇所形成するようにした。この押し当て箇所の左右方向の間隔は、少なくとも基板55の長さの20%以上50%以下で、2箇所以上とするようにした。
【0069】
またLEDヘッド16は、基板55に同一形状の電子部品60を左右方向に等間隔で実装したことにより、基板55を冶具70で当接部51Sに押し付ける箇所を基板55の長手方向に沿って等間隔にした。これによりLEDヘッド16は、基板55の長手方向の上下方向の反りを均一に矯正しつつ該基板55をホルダ51に接着できる。
【0070】
また、基板55のコネクタ55Cの実装箇所の近傍は、コネクタ55Cの半田付け工程時の熱により膨張した状態でコネクタ55Cが実装されており、その他の箇所に対し内在している応力が異なるため、上下方向の反りが発生しやすい。さらに、基板55とコネクタ55Cとは物性が異なるため、シリコン樹脂62を硬化させるために加熱や加湿した場合、基板55とコネクタ55Cとは膨張率が異なり、基板55のコネクタ55Cの実装箇所の近傍とでは、シリコン樹脂62の硬化時に反りが発生しやすい。
【0071】
したがって、コネクタ55Cが基板55の左右方向端部に位置し、冶具70による押し付け箇所が仮にコネクタ55Cの左右方向の内側にしか存在しない場合、コネクタ55Cを基点にして基板55におけるコネクタ55Cよりも左右方向の外側が上下方向に大きく反ってしまう可能性がある。このためコネクタ55Cよりも左右方向の外側に少なくとも1箇所以上冶具70の押し付け箇所を形成し(すなわち電子部品60を配置し)、コネクタ55Cよりも左右方向の外側を押し付けた状態でシリコン樹脂62を硬化させる必要がある。
【0072】
これに対しLEDヘッド16は、基板55における右端部近傍に配されたコネクタ55Cよりも左右方向の外側である右側に、1個の電子部品60を配置するようにした。このためLEDヘッド16は、コネクタ55Cよりも右側を押し付けた状態でシリコン樹脂62を硬化させることができ、コネクタ55Cを基点にして基板55におけるコネクタ55Cよりも右側が上下方向に反ってしまうことを防止できる。
【0073】
以上の構成によればカラープリンタ1のLEDヘッド16は、発光素子としてのLEDアレイ56が配置される第1の面としてのLEDアレイ配置面55Bを有する基板55と、LEDヘッド16からの光を入射するロッドレンズアレイ53と、ロッドレンズアレイ53を保持するホルダ51と、絶縁部材で形成された絶縁シート57とを設け、基板55は、LEDアレイ配置面55Bの反対面の第2の面としての電子部品配置面55Aに絶縁シート57と当接する当接部品としての電子部品60を有し、絶縁シート57は、電子部品60と当接した状態でホルダ51に対して固定されるようにした。これによりLEDヘッド16は、基板55がホルダ51に接着されるまで、絶縁シート57を介し基板55の電子部品60を押し付け、基板55をホルダ51に押し当てることにより、別途ベースを用いることなく、基板55をホルダ51に固定できる。
【0074】
[2.第2の実施の形態]
[2−1.カラープリンタの構成]
第2の実施の形態によるカラープリンタ101(図1)は、第1の実施の形態によるカラープリンタ1と比較して、LEDヘッド16(16C、16M、16Y及び16K)に代わる図1及び図2に示すLEDヘッド116(116C、116M、116Y及び116K)を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。図3と対応する部材に同一符号を付した図12と、図5と対応する部材に同一符号を付した図13とに示すように、LEDヘッド116は、第1の実施の形態によるLEDヘッド16と比較して、ホルダ51に代わるホルダ151と、絶縁シート57に代わる絶縁シート157と、シリコン樹脂62に代わるシリコン樹脂162とを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0075】
[2−2.LEDヘッドの構成]
図12及び図13に示すように、LEDヘッド116は、全体として左右方向に細長い直方体状に形成されており、ホルダ151に各種部品が取り付けられた構成となっている。因みに図12はLEDヘッド116を上方前側から見た斜視図を示し、図13図12におけるX−X矢視断面図及び拡大断面図を示し、図18は製造途中のLEDヘッド116の右端部分を上方から見た平面図を示し、図19は製造途中のLEDヘッド116の左端部分を上方から見た平面図を示す。LEDヘッド116は、主にホルダ151、基板55及びロッドレンズアレイ53により構成される。
【0076】
図12図13及び図14に示すようにホルダ151は、例えば液晶ポリマーの金型成形で作製されており、左右方向に細長く前後方向に薄い板状であり前側に位置する側部151Bfと後側に位置する側部151Bbとがそれぞれ延設されており、上端部において平面視で角丸長方形状に開放するホルダ開口部151Cが形成されている。以下では側部151Bf及び側部151Bbをまとめて側部151Bとも呼ぶ。側部151Bfと側部151Bbとにおける、基板55の下面と前後方向に対向する箇所からホルダ151の上端部までの内側には、互いに対向し前後上下方向に延設された平面であるホルダ内壁面151WSが形成されている。図14(B)に示すように本実施の形態においてホルダ内壁面151WS同士の間隔であるホルダ短手方向内寸L6は、5.6mmに設定されている。
【0077】
側部151Bfの下端部と側部151Bbの下端部との間には、左右方向に細長いスリット状の孔部151Hが上下方向に貫通するように穿設されている。また側部151Bは、段差となる当接部151Sが形成されている。さらに孔部151Hの左右両側には、接合部151Jを形成する壁部の一部分である板152がそれぞれ上方へ向けて立設されている。右側の板152の左壁面と左側の板152の右壁面との間の空間が、基板55を収納する空間となっている。図14(A)に示すようにホルダ151において板152同士の間隔はホルダ開口長手方向内寸L2となっている。
【0078】
ホルダ151の左右両側の板152と孔部151Hとの間、すなわちホルダ開口部151Cの内側の左右方向の両端部からは、図4に示した基板55の嵌合孔部55Hと嵌合し基板55を位置決めするピン151Pが突設している。またホルダ151の左右方向の両端部には、感光体ドラム35(図2)との位置決めを行う嵌合孔部151Fが穿設されている。さらにホルダ151の左右両側のピン151Pと嵌合孔部151Fとの間には、図示しない接続部材によりLEDヘッド116がカラープリンタ101内部に機械的に接続される接合部151Jが設けられている。
【0079】
孔部151Hには、図13に示すロッドレンズアレイ53が挿入されて取り付けられている。これにより、ロッドレンズアレイ53はホルダ151に支持されている。ロッドレンズアレイ53は、該ロッドレンズアレイ53において光が入射される端面である上面と、LEDアレイ56の表面である下面との入射距離が、ロッドレンズアレイ53の特性上最適な値になるような位置となるように、ホルダ151に固着されている。
【0080】
ホルダ151の側部151Bの下端部とロッドレンズアレイ53との間隙には、シリコン樹脂162がこの隙間を埋めるように充填されている。これによりLEDヘッド116は、ホルダ151とロッドレンズアレイ53との間隙を封止し、ホルダ151の前後の側部151B及び基板55の下面により囲まれた空間をほぼ密閉して、この空間への光及び異物の侵入を防止している。
【0081】
ホルダ151の側部151Bには、基板55における上述した電子部品60(図4及び図7)と左右方向の位置を合わせて、図13及び図14に示す当接部151Sが形成されている。当接部151Sは、上面において前後左右方向に沿い電子部品60の左右方向の長さよりも長い左右方向の長さの平面形状の当接面が形成されている。これによりLEDヘッド116は、電子部品60と当接部151Sとの左右方向の位置が誤差によりずれたとしても、電子部品60の下方に必ず当接部151Sを位置させることができる。この当接部151Sは、1個の電子部品60の前後それぞれに形成された当接面を一組として、左右方向に電子部品60と同等の等間隔を空けて左右方向に並んで4個配置されている。またこの当接部151Sは、LEDアレイ56とロッドレンズアレイ53との上下方向の間隔が一定の間隔となるように、水平方向に対し高い平面度を持っている。
【0082】
またホルダ151には、ロッドレンズアレイ53の上方に、当接部151Sに当接されるようにして長手方向を左右方向に沿わせて図4に示した基板55が取り付けられている。この基板55は、前後方向の長さがホルダ151における側部151B同士の間隔よりも短く、且つ左右方向の長さがホルダ151の板152同士の間隔よりも短くなっている。具体的に基板55は、左右方向(長手方向)の長さである基板長さが224.6mmであり、上下方向の厚さである基板厚さが1mmであり、図17に示すように前後方向(短手方向)の幅である基板幅L11が5.3mmとなっている。
【0083】
基板55の下面であるLEDアレイ配置面55Bには、前後方向のほぼ中央において、ロッドレンズアレイ53と対向するようにLEDアレイ56が基板55の長手方向に沿って実装されている。このLEDアレイ56は、下方へ向けて光を発光する発光点が左右方向に沿って所定の微小間隔ごとに並んでいる。またLEDアレイ56は、長手方向両端部が、基板55の長手方向の両端部と所定間隔を空けるように配置されている。
【0084】
基板55における左右方向の両端部には、ホルダ151のピン151Pが嵌合する嵌合孔部55H(図8)が穿設されている。LEDヘッド116は、図18に示すようにホルダ151のピン151Pを基板55の嵌合孔部55Hに嵌合させることにより、ホルダ151内における基板55の左右前後方向位置を規制する。図20に示すようにホルダ内壁面151WSと基板55の前後方向の側面との隙間は、内壁面基板隙間L10となっている。
【0085】
図13に示すようにホルダ151の側部151Bと基板55との間隙には、シリコン樹脂162がこの隙間を埋めるように充填されている。これによりLEDヘッド116は、ホルダ151と基板55との間隙を封止し、ホルダ151の前後の側部151B及び基板55の下面により囲まれた空間をほぼ密閉して、この空間への異物の侵入を防止している。またシリコン樹脂162は、隙間の封止以外に、基板55、ホルダ151及び後述する絶縁シート157を接着させる接着剤の役割も果たしている。
【0086】
基板55は、絶縁シート157で電子部品配置面55Aの全面が覆われることにより、外部への露出が防止されている。絶縁シート157は、例えばマイラー(登録商標)シート等、ポリエステル製の絶縁性を有する材料により構成されており、上下方向に薄く、前後方向の長さ(すなわち幅)が基板55よりも狭く、左右方向に長いフィルム状に形成されている。また絶縁シート157には、コネクタ55C等を覆うこと無く露出させるよう、コネクタ55Cの外形形状に合わせて切り欠かれた図15(A)に示すシート切欠部157Hが形成されている。絶縁シート157は、基板55の電子部品配置面55A、すなわちLEDアレイ56が搭載されたLEDアレイ配置面55Bと反対の面に対し、該絶縁シート157における前後両端を基板55における前後両端からそれぞれ前後方向に僅かに隙間を空けて重ねられる。
【0087】
このようにLEDヘッド116は、基板55の上面に絶縁シート157が適切な位置に重ねられた状態で、該基板55がホルダ151に固定される。
【0088】
図15(A)に示すように絶縁シート157の長手方向の長さである絶縁シート長手方向長さL1は、ホルダ開口長手方向内寸L2(図14(A))以下に設定されており、本実施の形態においては、寸法公差を考慮し、例えば絶縁シート長手方向長さL1<ホルダ開口長手方向内寸L2−0.5mmに設定されている。
【0089】
絶縁シート157は、左右方向(長手方向)の両端部に幅広箇所157Wが、該幅広箇所157Wよりも左右方向の内側に、該幅広箇所157Wよりも前後方向の幅が狭い幅狭箇所157Nがそれぞれ形成されている。幅広箇所157Wにおける左右方向(絶縁シート157の長手方向)の範囲であるシート幅広箇所左右方向範囲L5の長さは、基板55がホルダ151内に実装された際に、ホルダ開口部151Cの左右方向両端部から左右方向の内側に向かってLEDアレイ56が搭載されている位置までに設定されている。
【0090】
また、幅広箇所157Wの前後方向の幅はシート幅広箇所幅L3、幅狭箇所157Nの前後方向の幅はシート幅狭箇所幅L4となっている。シート幅広箇所幅L3は、ホルダ短手方向内寸L6と同一にすることが望ましいが、本実施の形態においては、寸法公差を考慮し、例えばシート幅広箇所幅L3<ホルダ短手方向内寸L6−0.2mmに設定されている。シート幅狭箇所幅L4は、少なくとも基板幅L11(図17)よりも短く設定されており、シリコン樹脂162の塗布量に応じて最適値が選択される。本実施の形態において、シート幅広箇所幅L3は5.4mmに、シート幅狭箇所幅L4は4.2mmにそれぞれ設定されている。
【0091】
[2−3.LEDヘッドの製造]
次に、LEDヘッド116の製造工程について説明する。LEDヘッド116は、図16に示すLEDヘッド製造処理手順RT101に従った手順で製造される。このLEDヘッド製造処理手順RT101では、ホルダ151は、ロッドレンズアレイ53が当接部151Sに対し最適な上下方向の位置に固着されている。また基板55は、LEDアレイ56と電子部品60とが異なる面に実装され、電子部品60がホルダ151の当接部151Sの左右方向の位置に合わせ左右方向に沿って等間隔で実装されている。
【0092】
LEDヘッド製造処理手順RT101では、ステップSP101において、図17に示すように、ロッドレンズアレイ53とLEDアレイ56とが上下方向に対向するように、ホルダ151の当接部151Sに基板55が嵌合される。このとき、図18に示すように、ホルダ151のピン151Pが基板55の嵌合孔部55Hに嵌合することにより、ホルダ151内における基板55の前後左右方向位置が規制される。
【0093】
次にLEDヘッド製造処理手順RT101では、続くステップSP102において、図19及び図20に示すように、シート切欠部157H(図15)が形成された絶縁シート157が、基板55の上から被せられる。このとき、図14及び図15に示すように、絶縁シート157は、シート幅広箇所幅L3がホルダ短手方向内寸L6とほぼ同一であるため、幅広箇所157Wが側部151Bに嵌合することにより、ホルダ151内における該絶縁シート157の前後方向位置が規制される。ホルダ内壁面151WSと絶縁シート157との間隔は内壁面シート隙間L7となっている。
【0094】
次にLEDヘッド製造処理手順RT101では、続くステップSP103において、図21に示すように、絶縁シート157とホルダ151との隙間を閉塞させるように、絶縁シート157とホルダ151との間がディスペンサー72から塗布されたシリコン樹脂162により封止される。このとき、コネクタ55Cと基板55との隙間を閉塞させるように、コネクタ55Cの周囲もシリコン樹脂162により封止される。
【0095】
またこのとき、内壁面シート隙間L7よりも、シリコン樹脂162における、一方のホルダ内壁面151WS側の端部である樹脂端部162E1から、他方のホルダ内壁面151WSへ向かう側の端部である樹脂端部162E2までの幅、すなわちシリコン樹脂162の前後方向の幅である樹脂塗布幅L8の方が広くなるように、ディスペンサー72のノズル径、塗布圧及び塗布スピード等が調整されている。このためLEDヘッド116は、絶縁シート157の幅狭箇所157Nと左右方向に対応する位置においては、内壁面シート隙間L7<樹脂塗布幅L8を満たしている。内壁面シート隙間L7<樹脂塗布幅L8を満たすことで、シリコン樹脂162の一部は絶縁シート157の上に塗布される。本実施の形態において内壁面シート隙間L7は0.7mmに、樹脂塗布幅L8は1mmにそれぞれ設定されている。また内壁面シート隙間L7は、内壁面基板隙間L10よりも大きくなっている。
【0096】
このようにLEDヘッド116は、内壁面シート隙間L7が樹脂塗布幅L8よりも小さい領域である領域ARが形成されている。LEDヘッド116においては、領域ARが、絶縁シート157の長手方向の長さの70%以上の範囲に亘って連続的に形成されている。
【0097】
また、シート幅狭箇所幅L4は基板幅L11よりも短いため、絶縁シート157に塗布されなかったホルダ内壁面151WSと基板55の前後端部との間の領域のシリコン樹脂162は基板55まで到達し、図21に矢印で示したように基板55の電子部品配置面55Aに回り込む。このようにシリコン樹脂162が絶縁シート157を上下方向から挟み込むように塗布されるため、絶縁シート157は剥がれにくくなっている。
【0098】
次にLEDヘッド製造処理手順RT101では、続くステップSP104において、図11に示したように、ホルダ151の当接部151Sと同一の左右方向位置に実装されている電子部品60が絶縁シート157の上から冶具70により下方向に押し付けられ、ホルダ151の当接部151Sに基板55が当接された状態で、シリコン樹脂162が硬化するまで保持されることにより、基板55及び絶縁シート157がホルダ151に固着され、ステップSP105へ移る。
【0099】
但し、絶縁シート157の左右方向両端部の幅広箇所157Wにおいては、ホルダ内壁面151WSとの間にほとんど隙間が空いていないため、基板55までシリコン樹脂162が回り込まない。つまり、幅広箇所157Wのシート幅広箇所幅L3が広いと、LEDヘッド116は、左右方向両端部において、シリコン樹脂162により基板55をホルダ151に保持することができない。これに対しLEDヘッド116は、シート幅広箇所左右方向範囲L5をLEDアレイ56の左右方向外側まで(すなわちLEDチップ実装位置まで)とすることにより、基板55のうちLEDアレイ56の実装領域に対応した箇所の保持を確実に行えるため、ロッドレンズアレイ53に対するLEDアレイ56の位置を精度良く規制することができる。以上のようにLEDヘッド116を作製することで、基板55を絶縁部材であるホルダ151、ロッドレンズアレイ53、シリコン樹脂162及び絶縁シート157で完全に覆うことができる。
【0100】
このようにLEDヘッド116は、ホルダ151の当接部151Sに基板55が当接した後に、基板55とホルダ151との間をシリコン樹脂162により封止され、シリコン樹脂162が硬化するまで、電子部品60が絶縁シート157の上から冶具70により押し付けられることにより、基板55がホルダ151に固定される。
【0101】
[2−4.動作及び効果等]
以上の構成においてLEDヘッド116は、長手方向に基板55と略平行に伸びる壁部としての側部151Bをホルダ151に形成し、ホルダ151と絶縁シート157とを、側部151Bに沿って伸びるシリコン樹脂162によって封止し、ホルダ151の短手方向における側部151Bから絶縁シート157の端部までの距離である内壁面シート隙間L7が、側部151B(樹脂端部162E1)から、シリコン樹脂162における該側部151Bから短手方向の内側へ離隔する側の端部である樹脂端部162E2までの距離である樹脂塗布幅L8よりも小さい領域である領域ARを有するようにした。これによりLEDヘッド116は、ホルダ151に対する接着性を向上させることができる。
【0102】
またLEDヘッド116は、絶縁シート157の長手方向の長さの70%以上の範囲に亘って領域ARを形成するようにした。すなわち本実施の形態においては、図22に示すように、絶縁シート157の長手方向におけるシリコン樹脂162が塗布される領域ARの長さである樹脂塗布領域長手方向長さL18は、樹脂塗布領域長手方向長さL18≧0.7×絶縁シート長手方向長さL1に設定されている。また図13に示すように、絶縁シート157において基板55と対向する下面を絶縁シート第1面157Aとし、絶縁シート157における絶縁シート第1面157Aの反対側の上面を絶縁シート第2面157Bとし、絶縁シート157における絶縁シート第1面157Aと絶縁シート第2面157Bとを接続する前後側面を絶縁シート第3面157Cとすると、領域ARにおいてシリコン樹脂162は、絶縁シート第1面157A、絶縁シート第2面157B及び絶縁シート第3面157Cに接するように塗布される。また基板55の長手方向における該基板55に配置されるLEDアレイ56の長さをLEDアレイ長手方向長さL19とすると、樹脂塗布領域長手方向長さL18>LEDアレイ長手方向長さL19に設定されている。すなわちLEDヘッド116においては、基板55の長手方向において、LEDアレイ56の端部よりも外側までシリコン樹脂162を延在させるよう塗布されると良い。
【0103】
さらにLEDヘッド116は、領域ARにおいて、ホルダ151の短手方向における側部151Bから絶縁シート157の端部までの距離である内壁面シート隙間L7を、側部151Bから基板55の端部までの距離である内壁面基板隙間L10よりも大きくするようにした。これによりLEDヘッド116は、ホルダ内壁面151WSと絶縁シート157との隙間から基板55の電子部品配置面55Aにシリコン樹脂162を回り込ませることにより絶縁シート157を剥がれにくくすると共に、シリコン樹脂162が基板55のLEDアレイ配置面55Bに回り込む不具合が発生してしまうことを防止できる。
【0104】
その他の点においても、第2の実施の形態によるLEDヘッド116は、第1の実施の形態によるLEDヘッド16と同様の作用効果を奏し得る。
【0105】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第2の実施の形態においては、幅広箇所157Wを側部151Bに嵌合させることにより、ホルダ151内における絶縁シート157の前後方向位置を規制する場合について述べた。本発明はこれに限らず、図23に示すLEDヘッド216の絶縁シート257のように、絶縁シート157(図15)から幅広箇所157Wを省略して全体としてホルダ開口部151Cとほぼ相似形の角丸長方形状とすると共に、シート嵌合孔部257Fを穿設し、ホルダ151のピン251Pをピン151P(図14)と比較して絶縁シート257と干渉する位置まで上方へ延長し、絶縁シート257のシート嵌合孔部257Fにピン251Pを嵌合させることにより、基板55に対し絶縁シート257を位置決めしても良い。この場合、絶縁シート257の左右方向両端部の前後方向外側においても、シリコン樹脂162を基板55に塗布することができる。
【0106】
また、図24に示すLEDヘッド316の絶縁シート357のように、絶縁シート157(図15)から幅広箇所157Wを省略して全体としてホルダ開口部151Cとほぼ相似形の角丸長方形状とすると共に、ホルダ351の左右方向両端部において、ホルダ開口部151Cの前後方向の幅をシート幅狭箇所幅L4よりも僅かに広くなる程度に狭めたホルダ開口切欠部351CHを形成して該ホルダ開口切欠部351CHに絶縁シート357の左右方向両端部を嵌合させることにより、基板55に対し絶縁シート357を位置決めしても良い。この場合、LEDヘッド216と同様に、絶縁シート357の左右方向両端部の前後方向外側においても、シリコン樹脂162を基板55に塗布することができる。
【0107】
さらに上述した第2の実施の形態においては、側部151Bfと側部151Bbとにおける、基板55の下面と対向する箇所からホルダ151の上端部までに亘って平面形状のホルダ内壁面151WSと、基板幅L11よりも短いシート幅狭箇所幅L4を有する絶縁シート157との間にシリコン樹脂162を塗布することにより、内壁面シート隙間L7<樹脂塗布幅L8を満たす場合について述べた。本発明はこれに限らず、図25に示すLEDヘッド416のように、LEDヘッド116と比較して絶縁シート457のシート幅狭箇所幅L14を絶縁シート157のシート幅狭箇所幅L4よりも広くして基板幅L11と略同一とすると共に、ホルダ451の側部451Bf及び側部451Bbにおける、絶縁シート457と前後方向に対向する箇所の厚さを、側部151Bf及び側部151Bbと比較して薄くして、ホルダ短手方向内寸L16をホルダ151のホルダ短手方向内寸L6よりも広くし、内壁面シート隙間L17を内壁面シート隙間L7よりも狭くしても良い。但し、ホルダ短手方向内寸L16を前後方向に広げる箇所における、ホルダ451の上端部から下方へ向かう上下方向の範囲であるホルダ内寸拡大範囲L9は、基板55の上面までとすることが好ましい。これによりシリコン樹脂162(図21)が基板55の前後側面に回り込みにくくなると共に基板55の上面に回りやすくなり、基板55の保持力を増加させることができる。
【0108】
さらに上述した第2の実施の形態においては、絶縁シート157の長手方向の長さの70%以上の範囲に領域ARを形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、絶縁シート157の長手方向の長さの種々の範囲に領域ARを形成しても良い。
【0109】
さらに上述した第1の実施の形態においては、全ての電子部品60を同一形状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、少なくとも全ての電子部品60の高さが揃ってさえいれば、全ての電子部品60の形状が同一でなくても良い。また、全ての電子部品60の高さが揃っていなくても、冶具70の下面の上下方向の位置をそれぞれの電子部品60の高さに対応させた上で絶縁シート57を電子部品60に向かって押し付ければ良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0110】
また上述した第1の実施の形態においては、電子部品60をチップコンデンサにより構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、チップ抵抗、チップコイルやIC(Integrated Circuit)等、種々の電子部品により構成しても良い。その場合、基板55の長手方向に等間隔に配置しても機能的に問題ない電子部品であることが好ましい。第2の実施の形態においても同様である。
【0111】
さらに上述した第1の実施の形態においては、電子部品として機能する電子部品60を実装する場合について述べた。本発明はこれに限らず、電子部品の形状のみを模倣した、電子部品として機能しない安価なダミー部品を実装しても良い。その場合、電子部品として機能する電子部品60とダミー部品とを組み合わせて実装しても良く、又は、ダミー部品のみを実装しても良い。その場合、全てを電子部品60で構成する場合と比べて、安価にできる。第2の実施の形態においても同様である。
【0112】
さらに上述した第1の実施の形態においては、複数個の電子部品60を基板55の長手方向に等間隔を空けて長手方向に並べて配置する場合について述べた。本発明はこれに限らず、複数個の電子部品60を基板55の長手方向に異なる等間隔を空けて長手方向に並べて配置しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0113】
さらに上述した第1の実施の形態においては、前後方向の位置が揃った状態で左右方向に沿って並ぶように電子部品60を配置する場合について述べた。本発明はこれに限らず、前後方向の位置がずれた状態で左右方向に沿って並ぶように電子部品60を配置しても良い。その場合、ホルダ51と基板55との隙間にシリコン樹脂62を塗布する際の妨げにならないように、基板55の前後方向の端部から1mm以上内側に電子部品60を配置すると好ましい。第2の実施の形態においても同様である。
【0114】
さらに上述した第1の実施の形態においては、4個の電子部品60を配置する場合について述べた。本発明はこれに限らず、少なくとも2個以上の任意の個数の電子部品60を配置すれば良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0115】
さらに上述した第1の実施の形態においては、基板55における右端部近傍に配されたコネクタ55Cよりも左右方向の外側である右側に、1個の電子部品60を配置する場合について述べた。本発明はこれに限らずコネクタ55Cよりも右側に、2個以上の任意の個数の電子部品60を配置しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0116】
さらに上述した第1の実施の形態においては、絶縁シート57をマイラー(登録商標)により構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、絶縁性を有する他の樹脂製のシートにより絶縁シート57を構成しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0117】
さらに上述した第1の実施の形態においては、絶縁シート57が絶縁性を有する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば基板55の上面に絶縁性の材料が塗布されている場合等に、絶縁シート57を非絶縁性の材料により構成しても良い。この場合、絶縁シート57が基板55における電気的な動作を阻害すること無く、且つ基板55の上面を物理的に保護できれば良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0118】
さらに上述した第1の実施の形態においては、絶縁シート57で基板55の電子部品配置面55Aの全面を覆う場合について述べた。本発明はこれに限らず絶縁シート57で基板55の電子部品配置面55Aの少なくとも一部を覆えば良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0119】
さらに上述した第1の実施の形態においては、液晶ポリマーの金型成形によりホルダ51を作製する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、他の種々の樹脂により作製したり、切削したり、アルミダイキャストで作製したり、板金に樹脂をアウトサート成形することにより作製したりする等、種々の製造方法で製造して良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0120】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ホルダ51において電子部品60と左右方向の位置が一致する位置にのみ当接部51Sを形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、ホルダ51において左端部から右端部までに亘って当接部51Sを連続的に形成する等、ホルダ51において電子部品60と左右方向の位置が一致しない位置にも当接部51Sを形成しても良い。その場合、水平方向に対する平面度をホルダ51の長手方向に沿って連続的に形成できれば良い。すなわち、少なくとも当接部51Sは、ホルダ51における長手方向において少なくとも電子部品60を含む位置に形成されていれば良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0121】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ホルダ51とロッドレンズアレイ53との間隙と、ホルダ51と基板55との間隙とを、シリコン樹脂62で埋めるように充填する場合について述べた。本発明はこれに限らず、他の種々の材料で形成された部材により、ホルダ51とロッドレンズアレイ53との間隙と、ホルダ51と基板55との間隙とを埋めても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0122】
さらに上述した第1の実施の形態においては、タンデム方式のカラープリンタ1において、前後方向に沿って直列に配置された各色の画像形成ユニット15とそれぞれ対応する各色のLEDヘッド16に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば4サイクル方式等、他の種々の方式のカラープリンタに搭載されるLEDヘッドに適用しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0123】
さらに上述した第1の実施の形態においては、カラー印刷を行うカラープリンタ1のプリンタ筐体2に対し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色に対応した4個のLEDヘッド16を取り付ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えばカラープリンタにおいて使用されるトナーの色数に応じて、プリンタ筐体2に対し3個以下や5個以上のLEDヘッド16を取り付けるようにしても良く、またモノクロ印刷を行うモノクロプリンタにおいて1個のLEDヘッド16を取り付けるようにしても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0124】
さらに上述した第1の実施の形態では、画像形成装置としてのカラープリンタ1に本発明を適用したが、これに限らず、カラープリンタ1と同様にLEDヘッド16を有する装置であれば、ファクシミリ、MFP(MultiFunction Printer:複合機)、複写機などの装置にも適用することができる。第2の実施の形態においても同様である。
【0125】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0126】
さらに上述した第1の実施の形態においては、基板部としての基板55と、レンズ部としてのロッドレンズアレイ53と、ホルダ部としてのホルダ51と、絶縁シートとしての絶縁シート57とによって、露光装置としてのLEDヘッド16を構成し、またこれを有する画像形成装置としてのカラープリンタ1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる基板部と、レンズ部と、ホルダ部と、絶縁シートとによって、露光装置を構成し、またこれを有する画像形成装置を構成しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、例えば電子写真式のプリンタに搭載するLEDヘッドで利用できる。
【符号の説明】
【0128】
1、101……カラープリンタ、2……プリンタ筐体、2T……排出トレイ、3……制御部、4……用紙収容カセット、5……給紙部、6……用紙色測色部、7……ホッピングローラ、8……レジストローラ、10……転写ベルトユニット、11……ローラ、12……転写ベルト、13……転写ローラ、15……画像形成ユニット、16、116、216、316、416……LEDヘッド、18……トナーカートリッジ、20……定着ユニット、21……加熱ローラ、22……加圧ローラ、24……排紙部、31……フレーム、35……感光体ドラム、35S……周側面、36……帯電ローラ、38……現像ローラ、39……供給ローラ、40……現像ブレード、45……スペーサ、51、151、351、451……ホルダ、51A……底部、51B、151Bf、151Bb、451Bf、451Bb……側部、51H、151H……孔部、51P、151P、251P……ピン、51S、151S……当接部、51C、151C……ホルダ開口部、151WS……ホルダ内壁面、151F……嵌合孔部、151J……接合部、351CH……ホルダ開口切欠部、52、152……板、53……ロッドレンズアレイ、55……基板、55A……電子部品配置面、55B……LEDアレイ配置面、55C……コネクタ、55H……嵌合孔部、56……LEDアレイ、57、157、257、357、457……絶縁シート、57H……シート孔部、157H……シート切欠部、157W……幅広箇所、157N……幅狭箇所、157A……絶縁シート第1面、157B……絶縁シート第2面、157C……絶縁シート第3面、257F……シート嵌合孔部、60……電子部品、62、162……シリコン樹脂、162E1、162E2……樹脂端部、70……冶具、P……用紙、72……ディスペンサー、L1……絶縁シート長手方向長さ、L2……ホルダ開口長手方向内寸、L3……シート幅広箇所幅、L4、L14……シート幅狭箇所幅、L5……シート幅広箇所左右方向範囲、L6、L16……ホルダ短手方向内寸、L7、L17……内壁面シート隙間、L8……樹脂塗布幅、L9……ホルダ内寸拡大範囲、L10……内壁面基板隙間、L11……基板幅、L18……樹脂塗布領域長手方向長さ、L19……LEDアレイ長手方向長さ、AR……領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図13
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