【実施例】
【0027】
(実施例1)
垂直ブリッジマン法を用いて、PMN−PT圧電単結晶インゴットを製造した。なお、使用した単結晶育成(製造)装置を
図1に示す。
初期原料として、初期原料全量に対する質量%で、66%のPMNと34%のPTとを配合し、混合した原料3000gを育成坩堝20内に、充填した。なお、育成坩堝20は炉内の昇降機構60上に設置した。次に、育成坩堝20を、ヒーター50で、融点以上である1350℃以上に加熱し、初期原料20を融解させ、融液層40を形成させた。ついで、昇降機構60により、育成坩堝20をA方向に下降させて、育成坩堝20内の融液層40の下部から凝固を開始させた。
【0028】
次に、供給原料30を、育成坩堝20内のサブ坩堝70へ、一定の供給速度で連続的に投下した。投下した供給原料30は、供給原料全量に対する質量%で、71%のPMNと29%のPTとを配合し混合したものを使用した。使用した供給原料30は、最大粒径で3mm以下のものとした。なお、粒径はふるい分け法により測定した。
【0029】
投下された供給原料30は、サブ坩堝70で加熱され、融解されて、融液層40に供給された。一定量の供給原料30を投下した時点で投下を停止し、単結晶の長さが220mmに達したとき、育成坩堝20の降下を停止し、室温まで冷却した。冷却後、製造装置から、得られた圧電単結晶インゴットを取り出し、本発明例1とした。
なお、最大粒径で3〜4mmの供給原料30を、サブ坩堝70に投入し、他の条件は本発明例と同じとして、圧電単結晶インゴット(比較例1)を得た。
【0030】
得られた圧電単結晶インゴット(直径:約80mmφ)について、X線方位測定機によりインゴットの側面の結晶方位の確認を行った後、切断機で、{001}方位のウェーハが得られるようにインゴットの粗切断を行った。その後、精密切断機を用いて、粗切断を行ったウェーハから所望のサイズの{100}方位の圧電素子材料を切り出し、単結晶成長方向に沿った各長さ位置で、蛍光X線分析装置XRFを用いてチタン酸鉛PbTiO
3の濃度(mol%)を測定した。得られた結果を
図2に示す。
【0031】
図2から、本発明例1は、単結晶成長方向の各位置で、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度(mol%)がほぼ一定で、かつ単結晶成長方向の100mm以上に亘って、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度(組成比率)の変動幅が±0.5mol以下となっている。一方、比較例1は、単結晶成長方向で、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度(組成比率)の変動幅が±0.5molを超えて大きなばらつきを示している。
【0032】
また、必要な結晶学的方位を決定された圧電単結晶インゴットから、粗切断で所望のウェーハを得た。ついで、研削、研磨し、所定の厚さのウェーハとしたのち、精密切断機でウェーハから圧電単結晶素子材料を切り出した。得られた圧電単結晶素子材料の上下面に対し、電極を作製し、分極処理を施して圧電単結晶素子とし、d
33メータを用いて圧電定数d
33の測定を行った。得られた結果を
図3に示す。
【0033】
図3から、本発明例1では、単結晶成長方向に沿っての各位置における、圧電定数d
33のばらつきが少なく、優れた圧電定数を有する圧電素子を歩留り高く作製できる均一な圧電単結晶インゴットであるといえる。一方、比較例1は、圧電定数d
33のばらつきが大きく、優れた圧電特性を有する圧電素子を歩留り高く作製できる圧電単結晶インゴットとなっているとはいえない。
(実施例2)
垂直ブリッジマン法を用いて、PIN−PMN−PT圧電単結晶インゴットを、実施例1と同様に製造し、本発明例2とした。なお、実施例1と同様に、
図1に示す単結晶育成(製造)装置を使用した。
初期原料として、初期原料全量に対する質量%で、26%のPINと40%のPMNと34%のPTとを配合し、混合した原料3000gを用いた。なお、供給原料30として、供給原料全量に対する質量%で26%のPINと45%のPMNと29%のPTとを配合し混合したものを用いた。供給原料30は、最大粒径で3mm以下のものとした。なお、粒径は、ふるい分け法により測定した。
【0034】
これらの原料を使用し、本発明例1と同様の方法で、圧電単結晶インゴットを製造し、このインゴットから圧電単結晶素子材料、圧電単結晶素子を作製し、実施例1と同様の評価を行った。なお、供給原料30は、同様の組成で、最大粒径3〜4mmの原料を使用し、圧電単結晶インゴット(比較例2)を製造し、このインゴットから、圧電単結晶材料、圧電単結晶を作製し、同様の評価を行った。得られた結果を
図4、
図5に示す。
【0035】
図4から、本発明例2は、本発明例1と同様に単結晶成長方向の各位置で、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度(mol%)がほぼ一定で、かつ単結晶成長方向の100mm以上に亘って、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度の変動幅が±0.5mol以下となっている。また、比較例2は、単結晶成長方向で、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度の変動幅が±0.5molを超えて大きなばらつきを示している。
【0036】
図5から、本発明例2は、単結晶成長方向に沿っての各位置における、圧電定数d
33のばらつきが少なく、優れた圧電定数を有する圧電素子を歩留り高く作製できる均一な圧電単結晶インゴットであるといえる。一方、比較例2は、圧電定数d
33のばらつきが大きく、優れた圧電特性を有する圧電素子を歩留り高く作製できる圧電単結晶インゴットとなっているとはいえない。
(実施例3)
垂直ブリッジマン法を用いて、Mn添加PMN−PT圧電単結晶インゴットを、実施例1と同様に製造し、本発明例3とした。なお、実施例1と同様に、
図1に示す単結晶育成(製造)装置を使用した。
初期原料として、初期原料全量に対する質量%で、9%のMnOと57%のPMNと34%のPTとを配合し、混合した原料3000gを用いた。なお、供給原料30として、供給原料全量に対する質量%で4%のMnOと67%のPMNと29%のPTとを配合し混合したものを用いた。供給原料30は、最大粒径で3mm以下のものとした。なお、粒径は、ふるい分け法により測定した。
【0037】
これらの原料を使用し、本発明例1と同様の方法で、圧電単結晶インゴットを製造し、このインゴットから圧電単結晶素子材料、圧電単結晶素子を作製し、実施例1と同様の評価を行った。なお、供給原料30は、同様の組成で、最大粒径3〜4mmの原料を使用し、圧電単結晶インゴット(比較例3)を製造し、このインゴットから、圧電単結晶材料、圧電単結晶を作製し、同様の評価を行った。得られた結果を
図6、
図7に示す。
【0038】
図6から、本発明例3は、本発明例1と同様に単結晶成長方向の各位置で、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度(mol%)がほぼ一定で、かつ単結晶成長方向の100mm以上に亘って、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度の変動幅が±0.5mol以下となっている。また、比較例3は、単結晶成長方向で、チタン酸鉛PbTiO
3の濃度の変動幅が±0.5molを超えて大きなばらつきを示している。
【0039】
図7から、本発明例3は、単結晶成長方向に沿っての各位置における、圧電定数d
33のばらつきが少なく、優れた圧電定数を有する圧電素子を歩留り高く作製できる均一な圧電単結晶インゴットであるといえる。一方、比較例3は、圧電定数d
33のばらつきが大きく、優れた圧電特性を有する圧電素子を歩留り高く作製できる圧電単結晶インゴットとなっているとはいえない。