(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗TROP2抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(TAGMQ)、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(WINTHSGVPKYAEDFKG)、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(SGFGSSYWYFDV)、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVSTAVA)、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(SASYRYT)、および配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQHYITPLT)を保持する、請求項14に記載の製造方法。
抗TROP2抗体が、配列番号2の20〜470番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号4の21〜234番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、請求項14に記載の製造方法。
抗B7-H3抗体が、配列番号27に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(NYVMH)、配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(YINPYNDDVKYNEKFKG)、配列番号29に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(WGYYGSPLYYFDY)、配列番号30に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(RASSRLIYMH)、配列番号31に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(ATSNLAS)、および配列番号32に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQWNSNPPT)を保持する、請求項18に記載の製造方法。
抗B7-H3抗体が、配列番号25の20〜471番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号26の21〜233番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、請求項18に記載の製造方法。
平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50%以上である、抗体−薬物コンジュゲート組成物。
抗TROP2抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(TAGMQ)、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(WINTHSGVPKYAEDFKG)、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(SGFGSSYWYFDV)、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVSTAVA)、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(SASYRYT)、および配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQHYITPLT)を保持する、請求項31に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
抗TROP2抗体が、配列番号2の20〜470番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号4の21〜234番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、請求項31に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
抗B7-H3抗体が、配列番号27に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(NYVMH)、配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(YINPYNDDVKYNEKFKG)、配列番号29に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(WGYYGSPLYYFDY)、配列番号30に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(RASSRLIYMH)、配列番号31に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(ATSNLAS)、および配列番号32に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQWNSNPPT)を保持する、請求項35に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
抗B7-H3抗体が、配列番号25の20〜471番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号26の21〜233番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる、請求項35に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
肺癌、腎癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、多型神経膠芽腫、卵巣癌、膵癌、乳癌、メラノーマ、肝癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、子宮体癌、頭頸部癌、食道癌、胆道癌、甲状腺癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および/または多発性骨髄腫の治療のための、請求項45に記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抗体1分子当たり8個の薬物が結合した抗体−薬物コンジュゲートは、抗腫瘍効果に優れていても副作用や毒性など、安全性面での問題が生じる場合がある。そこで治療有効性を維持したまま副作用や毒性を低減するために、平均薬物結合数が8よりも少ない抗体−薬物コンジュゲートを用いる場合がある。平均薬物結合数が8よりも少ない抗体−薬物コンジュゲートは、例えば、抗体1分子当たりの薬物の量を制御して反応させるなどして得ることができるが、その反応生成物は、薬物結合数が2、4、6および8の抗体−薬物コンジュゲートの組成物である。したがって、平均薬物結合数が同じ抗体−薬物コンジュゲート組成物であっても、各薬物結合数の分布が異なると、治療有効性および毒性も異なってくる可能性がある。すなわち、平均薬物結合数が4の抗体−薬物コンジュゲート組成物において、薬物結合数が0および8の抗体−薬物コンジュゲートの含有率が高い場合は、薬物結合数が4の抗体−薬物コンジュゲートの含有率が高い場合と比較すると、治療有効性が低下し、かつ毒性が強く発現することもありうる。また、同じ薬物結合数の抗体−薬物コンジュゲートであっても、薬物の結合位置の違いにより、治療有効性および毒性が異なることもありうる。したがって、抗体−薬物コンジュゲート組成物の製造においては、薬物の結合数および結合位置が制御された抗体−薬物コンジュゲート組成物の製造方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、薬物の結合数および結合位置が制御された抗体−薬物コンジュゲート組成物を、より簡便な操作で製造する方法を見出した。すなわち、緩衝液中、-10〜10℃で抗体を還元剤を用いて還元し、得られたチオール基を有する抗体に対して、薬物リンカー中間体を反応させることにより、平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50%以上である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造できることを見出した。さらに、本発明の抗体−薬物コンジュゲート組成物は、従来の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物(平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が35%以下である抗体−薬物コンジュゲート組成物)よりも優れた安全性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本願発明は、
(1)
(i)緩衝液中、抗体を還元剤と反応させ、鎖間ジスルフィドを還元する工程;および、
(ii)(i)で得られたチオール基を有する抗体に対して、薬物リンカー中間体を反応させる工程;
を含む、抗体−薬物コンジュゲート組成物の製造方法であって、
(i)の工程の反応温度が、-10〜10℃であり、
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50%以上である、
ことを特徴とする、製造方法。
(2)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、平均薬物結合数が4.0〜4.1である、(1)に記載の製造方法。
(3)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜90%の範囲である、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜80%の範囲である、(3)に記載の製造方法。
(5)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜70%の範囲である、(4)に記載の製造方法。
(6)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜60%の範囲である、(5)に記載の製造方法。
(7)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が5%以下である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の製造方法。
(8)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が1%以下である、(7)に記載の製造方法。
(9)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合し、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が5%以下である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法。
(10)
製造される抗体−薬物コンジュゲート組成物の、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合し、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が1%以下である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法。
(11)
(i)の工程の反応温度が、-5〜5℃である、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の製造方法。
(12)
(i)の工程の反応温度が、-3〜3℃である、(11)に記載の製造方法。
(13)
(i)の工程の反応温度が、0〜2℃である、(12)に記載の製造方法。
(14)
(i)の工程の反応温度が、0〜1℃である、(13)に記載の製造方法。
(15)
(ii)の工程の反応温度が、0〜2℃である、(1)〜(14)のいずれか1項に記載の製造方法。
(16)
還元剤が抗体一分子あたり2〜3モル当量で用いられる、(1)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法。
(17)
還元剤がトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたはその塩である、(1)〜(16)のいずれか1項に記載の製造方法。
(18)
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンの塩がトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である、(17)に記載の製造方法。
(19)
緩衝液が、ヒスチジンバッファーである、(1)〜(18)のいずれか1項に記載の製造方法。
(20)
緩衝液が、キレート剤を含む、(1)〜(19)のいずれか1項に記載の製造方法。
(21)
キレート剤がエチレンジアミン四酢酸である、(20)に記載の製造方法。
(22)
抗体が、抗TROP2抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3抗体、または抗HER2抗体である、(1)〜(21)のいずれか1項に記載の製造方法。
(23)
抗体が、抗TROP2抗体である、(22)に記載の製造方法。
(24)
抗体が、抗CD98抗体である、(22)に記載の製造方法。
(25)
抗体が、抗B7-H3抗体である、(22)に記載の製造方法。
(26)
抗体が、抗HER2抗体である、(22)に記載の製造方法。
(27)
薬物リンカー中間体が、N-置換マレイミジル基を有する、(1)〜(26)のいずれか1項に記載の製造方法。
(28)
薬物リンカー中間体が、
【0009】
【化1】
【0010】
、
【0011】
【化2】
【0012】
、または
【0013】
【化3】
【0014】
(ここで、式中の-GGFG-は、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンからなるテトラペプチド残基を示す。)である、(27)に記載の製造方法。
(29)
薬物リンカー中間体が、
【0015】
【化4】
【0016】
(ここで、式中の-GGFG-は、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンからなるテトラペプチド残基を示す。)である、(28)に記載の製造方法。
(30)
(1)〜(29)のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される、抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(31)
平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50%以上である、抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(32)
平均薬物結合数が4.0〜4.1である、(31)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(33)
重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜90%の範囲である、(31)または(32)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(34)
重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜80%の範囲である、(33)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(35)
重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜70%の範囲である、(34)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(36)
重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜60%の範囲である、(35)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(37)
重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が5%以下である、(31)〜(36)のいずれか1項に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(38)
重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が1%以下である、(37)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(39)
重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合し、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が5%以下である、(31)〜(38)のいずれか1項に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(40)
重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合し、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が1%以下である、(39)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(41)
抗体が、抗TROP2抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3抗体、または抗HER2抗体である、(31)〜(40)のいずれか1項に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(42)
抗体が、抗TROP2抗体である、(41)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(43)
抗体が、抗CD98抗体である、(41)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(44)
抗体が、抗B7-H3抗体である、(41)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(45)
抗体が、抗HER2抗体である、(41)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(46)
薬物リンカーが、
【0017】
【化5】
【0018】
、
【0019】
【化6】
【0020】
、または
【0021】
【化7】
【0022】
(ここで、式中のAは、抗体との結合位置を示し、-GGFG-は、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンからなるテトラペプチド残基を示す。)である、(31)〜(45)のいずれか1項に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(47)
薬物リンカーが、
【0023】
【化8】
【0024】
(ここで、式中のAは、抗体との結合位置を示し、-GGFG-は、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンからなるテトラペプチド残基を示す。)である、(46)に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物。
(48)
(30)〜(47)のいずれか1項に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物を含有する、医薬組成物。
(49)
腫瘍および/または癌の治療のための、(48)に記載の医薬組成物。
(50)
肺癌、腎癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、多型神経膠芽腫、卵巣癌、膵癌、乳癌、メラノーマ、肝癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、子宮体癌、頭頸部癌、食道癌、胆道癌、甲状腺癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および/または多発性骨髄腫の治療のための、(49)に記載の医薬組成物。
(51)
(30)〜(47)のいずれか1項に記載の抗体−薬物コンジュゲート組成物を投与することを特徴とする、腫瘍および/または癌の治療方法。
(52)
肺癌、腎癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、多型神経膠芽腫、卵巣癌、膵癌、乳癌、メラノーマ、肝癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、子宮体癌、頭頸部癌、食道癌、胆道癌、甲状腺癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および/または多発性骨髄腫の治療方法である、(51)に記載の治療方法。
(53)
緩衝液中、抗体を還元剤と反応させ、鎖間ジスルフィドを還元する工程、を含む、チオール基を有する抗体の製造方法であって、
反応温度が、-10〜10℃であり、
製造されるチオール基を有する抗体が、平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50%以上である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、
ことを特徴とする、製造方法。
(54)
製造されるチオール基を有する抗体が、平均薬物結合数が4.0〜4.1である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(53)に記載の製造方法。
(55)
製造されるチオール基を有する抗体が、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜90%の範囲である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(53)または(54)に記載の製造方法。
(56)
製造されるチオール基を有する抗体が、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜80%の範囲である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(55)に記載の製造方法。
(57)
製造されるチオール基を有する抗体が、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜70%の範囲である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(56)に記載の製造方法。
(58)
製造されるチオール基を有する抗体が、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50〜60%の範囲である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(57)に記載の製造方法。
(59)
製造されるチオール基を有する抗体が、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が5%以下である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(53)〜(58)のいずれか1項に記載の製造方法。
(60)
製造されるチオール基を有する抗体が、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が1%以下である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(59)に記載の製造方法。
(61)
製造されるチオール基を有する抗体が、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合し、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が5%以下である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(53)〜(60)のいずれか1項に記載の製造方法。
(62)
製造されるチオール基を有する抗体が、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合し、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が1%以下である、抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造するために用いられる、(61)に記載の製造方法。
(63)
反応温度が、-5〜5℃である、(53)〜(62)のいずれか1項に記載の製造方法。
(64)
反応温度が、-3〜3℃である、(63)に記載の製造方法。
(65)
反応温度が、0〜2℃である、(64)に記載の製造方法。
(66)
反応温度が、0〜1℃である、(65)に記載の製造方法。
(67)
還元剤が抗体一分子あたり2〜3モル当量で用いられる、(53)〜(66)のいずれか1項に記載の製造方法。
(68)
還元剤がトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたはその塩である、(53)〜(67)のいずれか1項に記載の製造方法。
(69)
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンの塩がトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である、(68)に記載の製造方法。
(70)
緩衝液が、ヒスチジンバッファーである、(53)〜(69)のいずれか1項に記載の製造方法。
(71)
緩衝液が、キレート剤を含む、(53)〜(70)のいずれか1項に記載の製造方法。
(72)
キレート剤がエチレンジアミン四酢酸である、(71)に記載の製造方法。
(73)
抗体が、抗TROP2抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3抗体、または抗HER2抗体である、(53)〜(72)のいずれか1項に記載の製造方法。
(74)
抗体が、抗TROP2抗体である、(73)に記載の製造方法。
(75)
抗体が、抗CD98抗体である、(73)に記載の製造方法。
(76)
抗体が、抗B7-H3抗体である、(73)に記載の製造方法。
(77)
抗体が、抗HER2抗体である、(73)に記載の製造方法。
【0025】
に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によって、薬物の結合数および結合位置が制御された抗体−薬物コンジュゲート組成物の製造方法、ならびに、薬物の結合数および結合位置が制御された抗体−薬物コンジュゲート組成物が提供される。本発明の抗体−薬物コンジュゲート組成物は安全性に優れ、腫瘍および/または癌の治療のための医薬として有用である。また、一定の薬物結合数および結合位置に集約された抗体−薬物コンジュゲート組成物が得られることから品質管理の点でも優れており好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において、「癌」と「腫瘍」は同じ意味に用いられる。
【0029】
本明細書において、「遺伝子」は、DNAのみならずそのmRNA、cDNAおよびそのcRNAを含む。
【0030】
本明細書において、「ポリヌクレオチド」は核酸と同じ意味に用いられ、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチドおよびプライマーを含む。
【0031】
本明細においては、「ポリペプチド」と「タンパク質」は同じ意味に用いられる。
【0032】
本明細書において、「細胞」は、動物個体内の細胞、培養細胞を含む。
【0033】
本明細書において、「鎖間ジスルフィド」とは、抗体における2個の重鎖の間のジスルフィド(重鎖−重鎖間ジスルフィド)、または重鎖と軽鎖との間のジスルフィド(重鎖−軽鎖間ジスルフィド)をいう。
【0034】
本明細書において、「鎖間チオール」とは、抗体の鎖間ジスルフィドの還元によって得られるチオール基をいう。
【0035】
本明細書において、「重鎖−重鎖間チオール」とは、抗体の重鎖−重鎖間ジスルフィドの還元によって得られるチオール基をいう。
【0036】
本明細書において、「重鎖−軽鎖間チオール」とは、抗体の重鎖−軽鎖間ジスルフィドの還元によって得られるチオール基をいう。
【0037】
本明細書において、「腫瘍関連抗原(TAA)」とは、正常細胞にも腫瘍細胞にも発現しているが、腫瘍細胞に比較的限定されている抗原をいう。
【0038】
本明細書において、「腫瘍特異抗原(TSA)」とは、腫瘍細胞特有の抗原をいう。
【0039】
本明細書において、「TROP2」はTROP2タンパク質と同じ意味に用いられる。
【0040】
本明細書において、「CD98」はCD98タンパク質と同じ意味に用いられる。CD98は重鎖と軽鎖からなっているので、「CD98重鎖」および「CD98軽鎖」はそれぞれCD98重鎖タンパク質およびCD98軽鎖タンパク質と同じ意味に用いられる。さらに、本明細書において「CD98」は、特に明記されない限り、「CD98重鎖」および「CD98軽鎖」、または、「CD98重鎖」または「CD98軽鎖」のいずれか一つと相互に変換可能に用いられる。
【0041】
本明細書において、「抗TROP2抗体」とは、TROP2に結合できる抗体をいう。
【0042】
本明細書において、「抗CD98抗体」とは、CD98に結合できる抗体をいう。
【0043】
本明細書において、「抗B7-H3抗体」とは、B7-H3に結合できる抗体をいう。
【0044】
本明細書において、「抗HER2抗体」とは、HER2に結合できる抗体をいう。
【0045】
本明細書において、「細胞傷害」とは、何らかの形で、細胞に病理的な変化をもたらすことをいい、直接的な外傷にとどまらず、DNAの切断や塩基の二量体の形成、染色体の切断、細胞分裂装置の損傷、各種酵素活性の低下などあらゆる細胞の構造や機能上の損傷をいう。
【0046】
本明細書において、「細胞傷害活性」とは上記細胞傷害を引き起こすことをいう。
【0047】
本明細書において、「抗体依存性細胞傷害活性」とは、「antibody dependent cellular cytotoxicity(ADCC)活性」のことであり、NK細胞が抗体を介して腫瘍細胞などの標的細胞を傷害する作用活性を意味する。
【0048】
本明細書において、「補体依存性細胞傷害作用活性」とは、「complement dependent cytotoxicity(CDC)活性」のことであり、補体が抗体を介して腫瘍細胞などの標的細胞を傷害する作用活性を意味する。
【0049】
本明細書において、「エピトープ」とは、特定の抗体の結合する抗原の部分ペプチドまたは部分立体構造を意味する。抗原の部分ペプチドであるエピトープは、免疫アッセイ法など当業者によく知られている方法、例えば以下の方法によって決定することができる。まず、抗原の様々な部分構造を作製する。部分構造の作製にあたっては、公知のオリゴペプチド合成技術を用いることができる。例えば、抗原のC末端あるいはN末端から適当な長さで順次短くした一連のポリペプチドを当業者に周知の遺伝子組み換え技術を用いて作製した後、それらに対する抗体の反応性を検討し、大まかな認識部位を決定した後に、さらに短いペプチドを合成してそれらのペプチドとの反応性を検討することによって、エピトープを決定することができる。また、特定の抗体の結合する抗原の部分立体構造であるエピトープは、X線構造解析によって前記の抗体と隣接する抗原のアミノ酸残基を特定することによって決定することができる。
【0050】
本明細書において、「同一のエピトープに結合する抗体」とは、共通のエピトープに結合する異なる抗体を意味している。第一の抗体の結合する部分ペプチドまたは部分立体構造に第二の抗体が結合すれば、第一の抗体と第二の抗体が同一のエピトープに結合すると判定することができる。また、第一の抗体の抗原に対する結合に対して第二の抗体が競合する(即ち、第二の抗体が第一の抗体と抗原の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列または構造が決定されていなくても、第一の抗体と第二の抗体が同一のエピトープに結合すると判定することができる。さらに、第一の抗体と第二の抗体が同一のエピトープに結合し、かつ第一の抗体が抗腫瘍活性などの特殊な効果を有する場合、第二の抗体も同様の活性を有することが期待できる。
【0051】
本明細書において、「CDR」とは、相補性決定領域(CDR:Complemetarity detemining region)をいう。抗体分子の重鎖および軽鎖にはそれぞれ3箇所のCDRがあることが知られている。CDRは、超可変領域(hypervariable domain)とも呼ばれ、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域内にあって、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖および軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造上において、それぞれ3ヶ所に分離している。本明細書においては、抗体のCDRについて、重鎖のCDRを重鎖アミノ酸配列のN末端側からCDRH1、CDRH2、CDRH3と表記し、軽鎖のCDRを軽鎖アミノ酸配列のN末端側からCDRL1、CDRL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。
【0052】
本明細書において、「数個」とは、2〜10個を示している。好ましくは、2〜9個であり、より好ましくは2〜8個であり、より好ましくは2〜7個であり、より好ましくは2〜6個であり、より好ましくは2〜5個であり、より好ましくは2〜4個であり、より好ましくは2〜3個であり、さらにより好ましくは2個である。
【0053】
本明細書において、「抗体−薬物コンジュゲート組成物」とは、薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲート、薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲート、薬物リンカーが6個結合した抗体−薬物コンジュゲート、薬物リンカーが8個結合した抗体−薬物コンジュゲート、および、薬物リンカーが結合していない抗体、を任意の割合で含む組成物を意味する。本明細書において、「抗体−薬物コンジュゲート組成物」は、「ADC組成物」と呼ぶこともある。
【0054】
本明細書において、「平均薬物結合数」とは、薬物抗体比(Drug-to-Antibody Ratio(DAR))とも呼ばれ、抗体−薬物コンジュゲート組成物における、抗体1分子に対して結合する薬物の平均数を意味する。
【0055】
本明細書において、「含有率」とは、抗体−薬物コンジュゲート組成物における、特定の薬物結合数および結合位置を有する抗体−薬物コンジュゲートの含有率(抗体を基準としたモル%)を意味する。
【0056】
本明細書においては、「同一性」と「相同性」は同じ意味に用いられる。
【0057】
1.抗体
本発明に用いられる抗体は、目的抗原、例えば、腫瘍特異抗原(TAA)または腫瘍関連抗原(TSA)に対して産生されうる。かかる抗体は、腫瘍細胞を認識できる特性、かかる腫瘍細胞に結合できる特性、および、かかる腫瘍細胞内に取り込まれて内在化する特性を有する。
【0058】
目的抗原は、腫瘍細胞に関連する抗原であれば特に限定されないが、例えば、B7-H3、CD3、CD30、CD33、CD37、CD56、CD98、DR5、EGFR、EPHA2、FGFR2、FGFR4、FOLR1(Folate Receptor 1)、HER2、HER3、TROP2、VEGFなどを挙げることができる。
【0059】
本発明に用いられる抗体は、例えば、WO2009/091048、WO2011/027808、またはWO2012/133572に記載の方法で得ることができる。すなわち、非ヒト動物を目的抗原で免疫し、免疫成立後の動物からリンパ液、リンパ組織、血球試料または骨髄由来の細胞を採取し、目的抗原に特異的に結合する非ヒト動物の形質細胞および/または形質芽細胞を選択する。得られた形質細胞および/または形質芽細胞から目的抗原に対する抗体遺伝子を採取し、その塩基配列を同定し、同定した遺伝子の塩基配列に基づいて上記抗体または抗体の断片を得ることができる。取得された抗体は目的抗原に対する結合性を試験することによって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
【0060】
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature(1975)256, p.495-497、Kennet, R. ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367, Plenum Press, N.Y.(1980))に従って、目的抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。このような方法の具体的な例は、WO2009/048072(2009年4月16日公開)およびWO2010/117011(2010年10月14日公開)に記載されている。
【0061】
本発明に用いられる抗体には、ヒトに対する異種抗原性を低下させることなどを目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト抗体なども含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0062】
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウスまたはラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, 6851-6855, (1984)参照)。
【0063】
ヒト化抗体としては、CDRのみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986)321, p.522-525参照)、CDR移植法によって、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開第WO90/07861号パンフレット)を挙げることができる。
【0064】
本発明の好ましい抗体としては、抗TROP2抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3抗体、または抗HER2抗体を挙げることができる。
【0065】
ヒト化抗TROP2抗体の実例としては、(1)配列番号2の20〜140番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列、(2)上記(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、および(3)上記(1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれか一つからなる重鎖可変領域を含む重鎖、ならびに(4)配列番号4の21〜129番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列、(5)上記(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、および(6)上記(4)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれか一つからなる軽鎖可変領域を含む軽鎖の任意の組合せを挙げることができる。
【0066】
上記重鎖および軽鎖の好適な組み合わせ抗体としては、配列番号2の20〜470番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号4の21〜234番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体(hTINA1-H1L1)を挙げることができる。
【0067】
ヒト化抗TROP2抗体としては、配列表の配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(TAGMQ)、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(WINTHSGVPKYAEDFKG)、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(SGFGSSYWYFDV)、配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KASQDVSTAVA)、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(SASYRYT)、および配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQHYITPLT)を保持する限り、特定のヒト化抗体に限定されることはない。
【0068】
ヒト化抗CD98抗体の例としては、(1)配列番号12の20〜135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列、(2)上記(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列、および(3)上記(1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれか一つからなる重鎖可変領域を含む重鎖、ならびに(4)配列番号14の21〜135番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列、(5)上記(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列、および(6)上記(4)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれか一つからなる軽鎖可変領域を含む軽鎖の任意の組合せを挙げることができる。
【0069】
上記重鎖および軽鎖の好適な組み合わせ抗体としては、配列番号12の20〜465番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号14の21〜240番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体(hM23-H1L1)を挙げることができる。
【0070】
ヒト化抗CD98抗体としては、配列番号15に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(NYLIE)、配列番号16に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(VINPGSGVTNYNEKFKG)、配列番号17に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(AEAWFAY)、配列表の配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(KSSQSLLYSSNQKNYLA)、配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(WASTRES)、および配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QRYYGYPWT)を保持する限り、特定のヒト化抗体に限定されない。
【0071】
ヒト化抗B7-H3抗体の例としては、(1)配列番号25の20〜141番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列、(2)上記(1)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列、および(3)上記(1)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれか一つからなる重鎖可変領域を含む重鎖、ならびに(4)配列番号26の21〜128番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列、(5)上記(4)のアミノ酸配列に対して少なくとも95%以上の同一性を有するアミノ酸配列、および(6)上記(4)のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれか一つからなる軽鎖可変領域を含む軽鎖の任意の組合せを挙げることができる。
【0072】
上記重鎖および軽鎖の好適な組み合わせ抗体としては、配列番号25の20〜471番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号26の21〜233番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体(M30-H1-L4)を挙げることができる。
【0073】
ヒト化抗B7-H3抗体としては、配列番号27に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1(NYVMH)、配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2(YINPYNDDVKYNEKFKG)、配列番号29に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3(WGYYGSPLYYFDY)、配列表の配列番号30に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1(RASSRLIYMH)、配列番号31に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2(ATSNLAS)、および配列番号32に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3(QQWNSNPPT)を保持する限り、特定のヒト化抗体に限定されない。
【0074】
ヒト化抗HER2抗体の例としては、配列番号33の1〜449番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号34の1〜214番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなる軽鎖からなる抗体(トラスツズマブ;米国特許第5821337号)を挙げることができる。
【0075】
さらに、各CDR中の1〜3個のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換したCDR改変ヒト化抗体も、腫瘍細胞に対する結合活性を持つ限り、本発明に用いられる抗体に含まれる。
【0076】
本発明に用いられる抗体としては、さらに、ヒト抗体を挙げることができる。ヒト抗体は、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いた方法(Tomizuka, K. et. al., Nature Genetics(1997)16, p.133-143;Kuroiwa, Y. et. al., Nucl. Acids Res.(1998)26, p.3447-3448;Yoshida, H. et. al., Animal Cell Technology: Basic and Applied Aspects vol.10, p.69-73(Kitagawa, Y., Matsuda, T. and Iijima, S. eds.), Kluwer Academic Publishers, 1999.;Tomizuka, K. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000)97, p.722-727等を参照。)によって取得することができる。
【0077】
また、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得する方法(Wormstone, I.M. et. al, Investigative Ophthalmology & Visual Science. (2002)43(7), p.2301-2308; Carmen, S. et. al., Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002), 1(2), p.189-203;Siriwardena, D. et. al., Ophthalmology(2002)109(3), p.427-431等参照。)も知られている。
【0078】
例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージ表面に発現させて、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法(Nature Biotechnology(2005), 23, (9), p.1105-1116)を用いることができる。抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクターを作製し、適当な宿主に導入して発現させることによりヒト抗体を取得することができる(WO92/01047、WO92/20791、WO93/06213、WO93/11236、WO93/19172、WO95/01438、WO95/15388、Annu. Rev. Immunol(1994)12, p.433-455、 Nature Biotechnology(2005)23(9), p.1105-1116)。
【0079】
上記の抗体は、目的抗原に対する結合性を評価し、好適な抗体を選抜することができる。抗体と抗原との解離定数は表面プラズモン共鳴(SPR)を検出原理とするビアコアT200(GE Healthcare Bioscience社)を使用して測定することができる。例えば、リガンドとして固相化した抗原に対し、適当な濃度に設定した抗体をアナライトと反応させ、その結合および解離を測定することにより、結合速度定数ka1、解離速度定数kd1および解離定数(KD; KD=kd1/ka1)を得ることができる。目的抗原に対する結合性評価は、ビアコアT200の使用に限定されず、表面プラズモン共鳴(SPR)を検出原理とする機器、結合平衡除外法(Kinetic Exclusion Assay)を検出原理とするKinExA(Sapidyne Instruments 社)、バイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry)を検出原理とするBLItzシステム(Pall社)あるいはELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法等によっても可能である。
【0080】
細胞に内在化する活性は、(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡で可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiation(2008) 15, 751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol. 15, 5268-5282, December 2004)、または(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて、細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPアッセイ(BioTechniques 28:162-165, January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシンとしては、ジフテリア毒素の触媒領域とプロテインGのリコンビナント複合タンパク質も使用可能である。
【0081】
抗体の性質を比較する際の別の指標の一例としては、抗体の安定性を挙げることができる。示差走査カロリメトリー(DSC)は、蛋白の相対的構造安定性の良い指標となる熱変性中点(Tm)を素早く、また正確に測定することができる方法である。DSCを用いてTm値を測定し、その値を比較することによって、熱安定性の違いを比較することができる。抗体の保存安定性は、抗体の熱安定性とある程度の相関を示すことが知られており(Lori Burton, et. al., Pharmaceutical Development and Technology(2007)12, p.265-273)、熱安定性を指標に、好適な抗体を選抜することができる。抗体を選抜するための他の指標としては、適切な宿主細胞における収量が高いこと、および水溶液中での凝集性が低いことを挙げることができる。例えば収量の最も高い抗体が最も高い熱安定性を示すとは限らないので、以上に述べた指標に基づいて総合的に判断して、ヒトへの投与に最も適した抗体を選抜する必要がある。
【0082】
また、抗体に結合している糖鎖修飾を調節することによって、抗体依存性細胞障害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、WO99/54342、WO2000/61739、WO2002/31140等が知られているが、これらに限定されるものではない。
【0083】
抗体遺伝子を一旦単離した後、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。抗体遺伝子の具体例としては、本明細書に記載された抗体の重鎖配列をコードする遺伝子、および軽鎖配列をコードする遺伝子を組み合わせたものを挙げることができる。宿主細胞を形質転換する際には、重鎖配列遺伝子と軽鎖配列遺伝子は、同一の発現ベクターに挿入されていることが可能であり、又別々の発現ベクターに挿入されていることも可能である。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真核微生物を用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y., Cell(1981)23, p.175-182、 ATCC CRL-1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL-1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L. A. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1980)77, p.4126-4220)を挙げることができる。また、原核細胞を使用する場合は、例えば、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。これらの細胞に目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。以上の培養法においては抗体の配列によって収量が異なる場合があり、同等な結合活性を持つ抗体の中から収量を指標に医薬としての生産が容易なものを選別することが可能である。
【0084】
本発明に用いられる抗体のアイソタイプとしての制限はなく、例えばIgG(IgG1,IgG2,IgG3,IgG4)、IgM、IgA(IgA1,IgA2)、IgDあるいはIgE等を挙げることができるが、好ましくはIgGまたはIgM、さらに好ましくはIgG1、IgG2またはIgG3を挙げることができる。
【0085】
抗体の機能としては、一般的には抗原結合活性、抗原の活性を中和する活性、抗原の活性を増強する活性、抗体依存性細胞障害活性、補体依存性細胞障害活性、補体依存性細胞性細胞障害活性、および内在化能を挙げることができる。
【0086】
さらに、本発明に用いられる抗体は少なくとも2種類の異なる抗原に対して特異性を有する多特異性抗体であってもよい。通常このような分子は2種類の抗原に結合するものであるが(即ち、二重特異性抗体(bispecific antibody))、本発明における「多特異性抗体」は、それ以上(例えば、3種類)の抗原に対して特異性を有する抗体を包含するものである。
【0087】
本発明に用いられる抗体は、上記の抗体の重鎖および/または軽鎖と比較して80%〜99%との同一性(または相同性)を有する抗体であってもよい。上記の重鎖アミノ酸配列および軽鎖アミノ酸配列と高い相同性を示す配列を組み合わせることによって、上記の各抗体と同等の抗原結合能、内在化能を有する抗体を選択することが可能である。このような相同性は、一般的には80%以上の相同性であり、好ましくは90%以上の相同性相同性であり、より好ましくは95%以上の相同性であり、最も好ましくは99%以上の相同性である。また、重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸残基が置換、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を組み合わせることによっても、上記の各抗体と同等の各種作用を有する抗体を選択することが可能である。置換、欠失および/または付加されるアミノ酸残基数は、一般的には10アミノ酸残基以下であり、好ましくは9アミノ酸残基以下であり、より好ましくは8アミノ酸残基以下であり、より好ましくは7アミノ酸残基以下であり、より好ましくは6アミノ酸残基以下であり、より好ましくは5アミノ酸残基以下であり、より好ましくは4アミノ酸残基以下であり、より好ましくは3アミノ酸残基以下であり、より好ましくは2アミノ酸残基以下であり、最も好ましくは1アミノ酸残基である。
【0088】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A, 705:129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry, 360:75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失および修飾は、抗体の抗原結合能およびエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞障害作用など)には影響を及ぼさない。したがって、本発明には当該修飾を受けた抗体も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1または2のアミノ酸が欠失した欠失体、およびアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等を挙げることができる。但し、抗原結合能およびエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長および上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせたものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類および培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては2本の重鎖の双方でカルボキシル末端の1のアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる。
【0089】
二種類のアミノ酸配列間の相同性は、Blast algorithm version 2.2.2(Altschul, Stephen F., Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J.Lipman(1997),「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs」, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)のデフォルトパラメーターを使用することによって決定することができる。Blast algorithmは、インターネットでwww.ncbi.nlm.nih.gov/blastにアクセスすることによっても使用することができる。なお、上記のBlast algorithmによってIdentity(またはIdentities)およびPositivity(またはPositivities)の2種類のパーセンテージの値が計算される。前者は相同性を求めるべき二種類のアミノ酸配列の間でアミノ酸残基が一致した場合の値であり、後者は化学構造の類似したアミノ酸残基も考慮した数値である。本明細書においては、アミノ酸残基が一致している場合のIdentity(同一性)の値を持って相同性の値とする。
【0090】
得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばカラムクロマトグラフィー、フィルター濾過、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual, Daniel R. Marshak et. al., eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996); Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988))が、これらに限定されるものではない。
【0091】
クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0092】
これらのクロマトグラフィーは、HPLCやFPLC等の液体クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0093】
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムを挙げることができる。
【0094】
2.薬物
本発明に用いられる薬物は、抗腫瘍効果を有する化合物であって、リンカー構造に結合できる置換基、部分構造を有するものであれば特に制限はない。薬物は、リンカーの一部または全部が腫瘍細胞内で切断されて抗腫瘍性化合物部分が遊離されて抗腫瘍効果が発現される。リンカーが薬物との結合部分で切断されれば抗腫瘍性化合物が本来の構造で遊離され、その本来の抗腫瘍効果が発揮される。薬物は、抗体に特定の構造のリンカー部分を介して結合させるが、本明細書では、この薬物とリンカー部分を含めた薬物リンカーを薬物と称することもある。
【0095】
抗腫瘍性化合物としては、例えば、カリチアマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、シクロシチジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセート、シスプラチンもしくはその誘導体、オーリスタチンもしくはその誘導体、メイタンシンもしくはその誘導体、タキソールもしくはその誘導体、カンプトテシンもしくはその誘導体などを挙げることができ、好ましくはエキサテカンまたはモノメチルオーリスタチンEである。
【0096】
カンプトテシン誘導体であるエキサテカン((1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)は、次式で表される化合物である。
【0098】
モノメチルオーリスタチンE((2R,3R)-N-[(1R,2S)-1-メチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]-2-メチル-3-[(2S)-1-[(3R,4S,5S)-3-メトキシ-4-[(N-メチル-L-Val-L-Val-)(メチル)アミノ]-5-メチルヘプタノイル]-2-ピロリジニル]-3-メトキシプロパンアミド)は、次式で表される化合物である。
【0100】
3.リンカー
本発明に用いられる薬物はリンカーを介して抗体に結合されうる。本発明に用いられるリンカーは、好ましくはN-置換マレイミジル基を有する。リンカーは、開裂型リンカーおよび非開裂型リンカーを挙げることができる。開裂型リンカーとしては、例えば、リソソームプロテアーゼ、エンドソームプロテアーゼなどの細胞内プロテアーゼによって開裂するペプチドリンカーを挙げることができる。
【0101】
本発明に用いられるリンカーは、好ましくは、
【0107】
のいずれかから導かれる構造であり、より好ましくは、
【0110】
「GGFG」は、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンからなるテトラペプチド残基である。
【0111】
本発明に用いられるリンカーは、例えば、WO2014/057687の実施例58に記載された方法に従って調製することができる。
【0112】
4.薬物リンカー中間体
本発明に用いられる薬物リンカー中間体は、上記リンカー化合物のカルボキシル基と抗腫瘍化合物のアミノ基とを縮合剤を用いるなどして反応させることにより製造することができる。
【0113】
本発明の方法に用いられる薬物リンカー中間体は、抗体の鎖間チオールとの反応に供される化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、N-置換マレイミジル基を有する化合物であり、より好ましくは、
【0122】
本発明に用いられる薬物リンカー中間体は、例えば、WO2014/057687の実施例58、実施例43および、実施例14に記載に方法に従って調製することができる。
【0123】
なお、N-置換マレイミジル基を有する薬物リンカー中間体であれば、抗体の鎖間ジスルフィドの還元により生成させた鎖間チオールと反応させることよって、抗体と薬物とをリンカーを介して結合させることができる。したがって、薬物リンカー中間体としてはN-置換マレイミジル基を有する化合物が好ましいが、これに限定されず、抗体の鎖間チオールとの反応が進行する官能基を有している限り、本発明の製造方法に適用することができる。
5.抗体−薬物コンジュゲート
抗体−薬物コンジュゲートにおいて、抗体1分子への薬物の結合数は、その有効性、安全性に影響する重要因子である。抗体には4つの鎖間ジスルフィドが存在し、ジスルフィドは2つのチオール基から構成されるため、抗体1分子への薬物の結合数は、2個、4個、6個、または8個となる。
【0124】
抗体1分子当たり2個の薬物が結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D2」と呼ぶこともある。)としては、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D2-1」と呼ぶこともある。)、および、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D2-2」と呼ぶこともある。)が存在する。
【0126】
抗体1分子当たり4個の薬物が結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D4」と呼ぶこともある。)としては、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D4-1」と呼ぶこともある。)、重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D4-2」と呼ぶこともある。)、および、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合し重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D4-3」と呼ぶこともある。)が存在する。
【0128】
抗体1分子当たり6個の薬物が結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D6」と呼ぶこともある。)としては、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合し重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D6-1」と呼ぶこともある。)、および、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが2個結合し重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D6-2」と呼ぶこともある。)が存在する。
【0130】
抗体1分子当たり8個の薬物が結合した抗体−薬物コンジュゲート(以下、「D8」と呼ぶこともある。)としては、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合し重鎖−重鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートが存在する。
【0132】
抗体の鎖間チオールは、例えば、薬物リンカー中間体のN-置換マレイミジル基の3位と、チオエーテルを形成して結合する。すなわち、抗体と薬物リンカーの結合部分は、例えば、次式:
【0134】
(式中、「抗体-S-」は抗体由来である。)で示される。
【0141】
(ここで、式中のAは、抗体との結合位置を示す。)であり、より好ましくは、
【0143】
(ここで、式中のAは、抗体との結合位置を示す。)である。
【0144】
抗体−薬物コンジュゲートの製造は、薬物の結合数が制御されるよう、反応させる原料・試薬の使用量などの反応条件を規定して実施されるが、低分子化合物の化学反応とは異なり、異なる数の薬物が結合した混合物として得られるのが通常である。抗体1分子への薬物の結合数は平均値、すなわち、平均薬物結合数として特定され、表記される。
【0145】
本発明の製造方法は、薬物結合数および結合位置が制御された抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造する方法であり、抗体の重鎖−軽鎖間ジスルフィドを選択的に還元してチオール基に変換する第一工程、チオール基を有する抗体に対し、薬物リンカー中間体を反応させることによって、薬物結合数および結合位置が制御された抗体−薬物コンジュゲート組成物を製造する第二工程からなる。以下に各工程について詳しく説明する。
【0146】
(第一工程)抗体の還元
チオール基を有する抗体は、緩衝液中、-10〜10℃で抗体を還元剤と反応させることにより製造することができる。
【0147】
反応温度としては、好ましくは-5〜5℃であり、より好ましくは-3〜3℃であり、さらにより好ましくは0〜2℃であり、さらにより好ましくは0〜1℃である。
【0148】
還元剤の量は、抗体1分子当たり1〜4モル当量であり、好ましくは2〜3モル当量である。
還元剤としては、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたはその塩、ジチオトレイトール、2−メルカプトエタノールなどを用いることができ、好ましくはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたはその塩であり、より好ましくはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である。
【0149】
緩衝液としては、ヒスチジンバッファー、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)バッファーなどを用いることができ、好ましくはヒスチジンバッファーである。
【0150】
緩衝液は、好ましくはキレート剤を含む。キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」と呼ぶこともある。)やジエチレントリアミン五酢酸などを用いることができ、好ましくはエチレンジアミン四酢酸である。これらを1〜20mMの濃度で用いればよい。
【0151】
反応時間としては、好ましくは1〜15時間であり、より好ましくは3〜10時間であり、さらにより好ましくは5〜7時間である。
【0152】
反応時のpHとしては、pH5〜9であり、好ましくはpH6〜8であり、より好ましくはpH6.8〜7.2である。
【0153】
(第二工程)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
第一工程で得られたチオール基を有する抗体に薬物リンカー中間体を反応させることにより、抗体―薬物コンジュゲート組成物を製造することができる。用いる薬物リンカー中間体の量としては、抗体1分子当たり、2〜10モル当量であり、好ましくは4〜6モル当量である。
【0154】
具体的には、第一工程で得られたチオール基を有する抗体を含む緩衝液に、薬物リンカー中間体を溶解させた溶液を加えて反応させればよい。
【0155】
薬物リンカー中間体を溶解させる溶媒としては、50%アセトン水溶液、80%エタノール水溶液、80%メタノール水溶液、80%イソプロパノール水溶液、80%ジメチルスルホキシド水溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒を用いることができ、好ましくは50%アセトン水溶液または80%ジメチルスルホキシド水溶液である。
【0156】
薬物リンカー中間体を溶解させた有機溶媒溶液は、チオール基を有する抗体を含む緩衝液に1〜20%v/vを加えて反応させればよい。
【0157】
反応温度としては、好ましくは-10〜10℃であり、より好ましくは-5〜5℃であり、さらにより好ましくは0〜2℃である。
【0158】
反応時間としては、好ましくは0.5〜2時間である。
【0159】
コンジュゲーション反応は、未反応の薬物リンカー中間体の反応性をチオール基含有試薬によって失活させることによって終了できる。
【0160】
チオール基含有試薬としては、例えば、システインまたはN-アセチル-L-システインを用いることができる。より具体的には、N-アセチル-L-システインを、用いた薬物リンカー中間体に対して、1〜2モル当量加え、室温で10〜30分反応させることにより反応を終了させることができる。
【0161】
コンジュゲートの反応後の精製としては、市販の限外濾過膜等を用いて、精製できる。酢酸バッファー、ヒスチジンバッファー、リン酸バッファー等を添加しながら、限外膜を用いて低分子部分を除去しすることが可能である。限外濾過膜は適当なものでよいが、1kDa〜100kDaでよく、好ましくは、30kDaの限外濾過膜である。
【0162】
6.抗体−薬物コンジュゲート組成物の同定
製造した抗体−薬物コンジュゲート組成物は、以下の操作によって濃縮、バッファー交換、精製、抗体濃度および平均薬物結合数の測定を行い、抗体−薬物コンジュゲート組成物の同定を行うことができる。
【0163】
(1)抗体または抗体−薬物コンジュゲート水溶液の濃縮
Amicon Ultra(50,000 MWCO、Millipore Corporation)の容器内に抗体または抗体−薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R、Beckman Coulter, Inc.)を用いた遠心操作(2000G〜3800Gにて5〜20分間遠心)にて、抗体または抗体−薬物コンジュゲート溶液を濃縮することができる。
【0164】
(2)抗体の濃度測定
UV測定器(Nanodrop 1000、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行うことができる。その際に、抗体ごとに異なる280nm吸光係数(1.3mLmg
-1cm
-1〜1.8mLmg
-1cm
-1)を用いる。
【0165】
(3)抗体のバッファー交換
Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat. No. 17-0852-02、GE Healthcare Japan Corporation)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)およびエチレンジアミン四酢酸(5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM、pH6.0;本明細書において「PBS6.0/EDTA」という場合がある。)にて平衡化する。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをのせたのち、PBS6.0/EDTA 3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取する。この画分を上記(1)と同様の方法で濃縮し、上記(2)と同様の方法で抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて抗体濃度を調整することができる。
【0166】
(4)抗体−薬物コンジュゲート組成物の精製
Sorbitol(5%)を含む酢酸緩衝液(10mM、pH5.5;本明細書において「ABS」という場合がある。)にてNAP-25カラムを平衡化する。このNAP-25カラムに、抗体−薬物コンジュゲート反応水溶液(2.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ、緩衝液で溶出させるゲルろ過精製操作を計2〜3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカー中間体や低分子化合物(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、N-アセチル-L-システインおよびジメチルスルホキシド)を除いた抗体−薬物コンジュゲート組成物を得る。
【0167】
(5)抗体―薬物コンジュゲート組成物における疎水カラムクロマトによる分離法
(5−1)HPLC測定方法
HPLC分析を、下記の測定条件にて行う。
【0168】
HPLCシステム:島津サイエンス HPLCシステム
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:TSKgel Butyl-NPR(4.6×100mm、2.5μm;東ソー株式会社)
カラム温度:30℃
移動相A:1.5M硫酸アンモニウムを含む、25mMリン酸バッファー(pH7.0)水溶液
移動相B:25mMリン酸バッファー(pH7.0)を75%とイソプロピルアルコールを25%含む混合溶液
グラジエントプログラム:20%-60%(0分-20分)、20%-80%(20-20.1分)、80%-80%(20.1―23分)、80%-20%(23分―23.1分)、20%-20%(23.1分―40分)
サンプル注入量:2μL
【0169】
(5−2)データ解析
本データは、カラムの特性から、薬物結合数の低い抗体−薬物コンジュゲートから順に塩濃度の差により溶出されるため、その各々の面積値を測定する事により、結合数の分布が推定できる。そのピークは、溶出順にD0(薬物リンカーが結合していない抗体)、D2、D4-1、D4-2、D6、D8となり、その分布状況を把握できる。
【0170】
本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物における薬物結合数が4である抗体−薬物コンジュゲートの含有率は、50%以上である。
【0171】
本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物におけるD4-1の含有率は、50%以上、または、50〜90%、50〜80%、50〜70%、もしくは50〜60%の範囲である。
【0172】
本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物におけるD4-2の含有率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下である。
【0173】
本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物におけるD4-3の含有率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下である。
【0174】
(6)抗体−薬物コンジュゲート組成物における抗体濃度および平均薬物結合数の測定(UV法)
抗体−薬物コンジュゲート組成物における結合薬物濃度は、抗体−薬物コンジュゲート水溶液の280nmおよび370nmの二波長におけるUV吸光度を測定したのちに下記の計算を行うことで、算出することができる。
【0175】
ある波長における全吸光度は系内に存在する全ての吸収化学種の吸光度の和に等しい[吸光度の加成性]ことから、抗体と薬物のコンジュゲーション前後において、抗体および薬物のモル吸光係数に変化がないと仮定すると、抗体−薬物コンジュゲート組成物における抗体濃度および薬物濃度は、下記の関係式で示される。
A
280=A
D,280+A
A,280=ε
D,280C
D+ε
A,280C
A 式(1)
A
370=A
D,370+A
A,370=ε
D,370C
D+ε
A,370C
A 式(2)
ここで、A
280は280nmにおける抗体−薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A
370は370nmにおける抗体−薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A
A,280は280nmにおける抗体の吸光度を示し、A
A,370は370nmにおける抗体の吸光度を示し、A
D,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、A
D,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、ε
A,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、ε
A,370は370nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、ε
D,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体のモル吸光係数を示し、ε
D,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体のモル吸光係数を示し、C
Aは抗体−薬物コンジュゲート組成物における抗体濃度を示し、C
Dは抗体−薬物コンジュゲート組成物における薬物濃度を示す。
【0176】
ここで、ε
A,280、ε
A,370、ε
D,280およびε
D,370は、事前に用意した値(計算推定値もしくは化合物のUV測定から得られた実測値)が用いられる。例えば、ε
A,280は、抗体のアミノ酸配列から、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって推定することができる。ε
A,370は、通常、ゼロである。ε
D,280およびε
D,370は、用いるコンジュゲート前駆体をあるモル濃度に溶解させた溶液の吸光度を測定することで、ランベルト・ベールの法則(吸光度=モル濃度×モル吸光係数×セル光路長)によって、得ることができる。抗体−薬物コンジュゲート水溶液のA
280およびA
370を測定し、これらの値を式(1)および式(2)に代入して連立方程式を解くことによって、C
AおよびC
Dを求めることができる。さらにC
DをC
Aで除することで1抗体あたりの平均薬物結合数が求めることができる。
【0177】
(7)抗体−薬物コンジュゲート組成物における抗体一分子あたりの平均薬物結合数の測定(RPC法)
抗体−薬物コンジュゲート組成物における抗体一分子あたりの平均薬物結合数は、前述のUV法に加え、以下の逆層クロマトグラフィー(Reversed Phase Chromatography(RPC))法を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によっても求めることができる。
【0178】
(7−1)HPLC分析用サンプルの調製(抗体−薬物コンジュゲートの還元)
抗体−薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合する。混合物を37℃で30分インキュベートすることで、抗体−薬物コンジュゲートの鎖間のジスルフィドを切断したサンプルを、HPLC分析に用いる。
【0179】
(7−2)HPLC分析
HPLC分析を、下記の測定条件にて行う。
【0180】
HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent Technologies)
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:PLRP-S(2.1×50mm、8μm、1000Å;Agilent Technologies、P/N PL1912-1802)
カラム温度:80℃
移動相A:0.04%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
移動相B:0.04%TFAを含むアセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:29%-36%(0分−12.5分)、36%-42%(12.5-15分)、42%-29%(15分-15.1分)、29%-29%(15.1分-25分)
サンプル注入量:15μL
【0181】
(7−3)データ解析
(7−3−1)薬物の結合していない抗体の軽鎖(L
0)および重鎖(H
0)に対して、薬物の結合した軽鎖(薬物が一つ結合した軽鎖:L
1)および重鎖(薬物が一つ結合した重鎖:H
1、薬物が二つ結合した重鎖:H
2、薬物が三つ結合した重鎖:H
3)は、結合した薬物の数に比例して疎水性が増し保持時間が大きくなることから、L
0、L
1、H
0、H
1、H
2、H
3の順に溶出される。L
0およびH
0との保持時間比較により検出ピークをL
0、L
1、H
0、H
1、H
2、H
3のいずれかに割り当てることができる。
【0183】
(7−3−2)薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、軽鎖、重鎖および薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値の補正を行う。
【0186】
ここで、各抗体における軽鎖および重鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列から推定される値を用いることができる。また、薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、各薬物リンカー中間体をメルカプトエタノールまたはN-アセチルシステインで反応させ、N-置換マレイミジル基をサクシニイミドチオエーテルに変換した化合物の実測のモル吸光係数(280nm)を用いることができる。
【0187】
(7−3−3)ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って計算する。
【0189】
L
1およびH
1が優先的に生じていれば、重鎖−軽鎖間ジスルフィドが選択的に還元されたものと推定でき、L
0およびH
2が優先的に生じていれば、重鎖−重鎖間ジスルフィドが選択的に還元されたものと推定できる。
【0190】
(7−3−4)抗体−薬物コンジュゲート組成物における平均薬物結合数を、下式に従って計算する。
【0191】
平均薬物結合数=(L
0ピーク面積比×0+L
1ピーク面積比×1+H
0ピーク面積比×0+H
1ピーク面積比×1+H
2ピーク面積比×2+H
3ピーク面積比×3)/100×2
【0192】
本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物の平均薬物結合数は、好ましくは3.5〜4.5であり、より好ましくは4.0〜4.1である。
【0193】
7.抗体−薬物コンジュゲート組成物を含有する医薬
本発明により得られる抗体−薬物コンジュゲート組成物は、腫瘍細胞内に移動した後にリンカー部分が切断され、腫瘍細胞内で薬物が遊離される。
【0196】
で表される抗体−薬物コンジュゲートの場合には、次式
【0198】
で表される化合物が遊離される。また、当該化合物は不安定なアミナール構造を有しているため、さらに加水分解されて、次式
【0203】
で表される抗体−薬物コンジュゲートの場合には、次式
【0208】
で表される抗体−薬物コンジュゲートの場合には、次式
【0211】
本発明により得られる抗体−薬物コンジュゲート組成物は、癌細胞に対して細胞傷害活性を示すことから、癌に対する治療および/または予防のための医薬組成物の有効成分として使用することができる。
【0212】
すなわち本発明により得られる抗体−薬物コンジュゲート組成物は、癌治療の主要な治療法である化学療法のための薬剤として選択して使用することができ、その結果として、癌細胞の成長を遅らせ、増殖を抑え、さらには癌細胞を破壊することができる。これ等によって、癌患者において、癌による症状からの解放や、QOLの改善を達成でき、癌患者の生命を保って治療効果が達成される。癌細胞の破壊には至らない場合であっても、癌細胞の増殖の抑制やコントロールによって癌患者においてより高いQOLを達成しつつより長期の生存を達成させることができる。
【0213】
このような薬物療法においての薬物単独での使用の他、アジュバント療法において他の療法と組み合わせる薬剤としても使用でき、外科手術や、放射線療法、ホルモン療法などと組み合わせることができる。さらにはネオアジュバント療法における薬物療法の薬剤として使用することもできる。
【0214】
以上のような治療的使用の他、微細な転移癌細胞の増殖を押さえ、さらには破壊する効果も期待することができる。例えば、転移過程で体液中にある癌細胞を抑制し破壊する効果や、いずれかの組織に着床した直後の微細な癌細胞に対する抑制、破壊などの効果が期待できる。したがって、特に外科的な癌の除去後においての癌転移の抑制、予防効果が期待できる。
【0215】
本発明により得られる抗体−薬物コンジュゲート組成物は、患者に対しては全身療法として投与する他、癌組織に局所的に投与して治療効果を期待することができる。
【0216】
癌の種類としては、肺癌、腎癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、多形神経膠芽腫、卵巣癌、膵癌、乳癌、メラノーマ、肝癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、子宮体癌、頭頸部癌、食道癌、胆道癌、甲状腺癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0217】
本発明により得られる抗体−薬物コンジュゲート組成物は、自己免疫疾患を治療するための医薬組成物、または、移植に対する拒絶反応を抑制するための医薬組成物の有効成分として使用することができる。
【0218】
本発明により得られる抗体−薬物コンジュゲート組成物を含有する医薬組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ウシ、ブタなど、好ましくはヒト)に投与される場合には、全身的または局所的に、好ましくは非経口で投与され得る。
【0219】
非経口の投与経路として、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下の経路を挙げることができるが、これらに限定されない。投与方法としては、例えば、注入、ボーラス注射などを挙げることができるが、好ましくは、注入である。
【0220】
本発明の医薬組成物は、投与方法に応じて適切な形態を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法によって調製できる。例えば、本発明により得られる抗体−薬物コンジュゲート組成物と、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」などに記載されている、滅菌した液体(例えば、水および油(石油、動物、植物、または合成起源の油(例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)を含む))、食塩水溶液、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液などの溶媒、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤などの添加剤などを混合して本発明の医薬組成物を調製することができる。
【0221】
本発明の医薬組成物はまた、可溶化剤、注射部位での疼痛を和らげるための局所麻酔剤(例えば、リグノカイン)などを含有してもよい。本発明の医薬組成物は、有効成分と溶媒などを別個の容器に入れた態様で供給されてもよい。また、本発明の医薬組成物が注入によって投与される場合、例えば、有効成分および滅菌の製薬グレードの水または食塩水を含む注入ボトルで投与されてもよい。本発明の医薬組成物が注射によって投与される場合、投与前に有効成分を注射用滅菌水または食塩水と混合して投与されてもよい。
【0222】
本発明の医薬組成物は、抗体−薬物コンジュゲート組成物および少なくとも一つのこれ以外の癌治療剤を含んでもよい。本発明により得られる抗体−薬物コンジュゲート組成物は、他の癌治療剤と共に投与することもでき、これによって抗癌効果を増強させることができる。このような目的で使用される他の抗癌剤は、抗体−薬物コンジュゲート組成物と同時に、別々に、あるいは連続して個体に投与されてもよいし、それぞれの投与間隔を変えて投与してもよい。このような癌治療剤としては、carboplatin、cisplatin、gemcitabine、irinotecan(CPT-11)、paclitaxel、pemetrexed、sorafenib、vinblastin、国際公開第WO2003/038043号パンフレットに記載の薬剤、更にLH-RHアナログ(リュープロレリン、ゴセレリンなど)、エストラムスチン・フォスフェイト、エストロジェン拮抗薬(タモキシフェン、ラロキシフェンなど)、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンなど)などを挙げることができるが、抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはない。
【0223】
本発明の医薬組成物は、凍結乾燥製剤または液状製剤として提供されてもよい。凍結乾燥製剤として提供される場合には、この分野において使用される適当な製剤添加物が含まれる製剤であってもよい。また液状製剤においても同様にして、この分野において使用される適当な製剤添加物が含まされる製剤であってもよい。
【0224】
本発明の医薬組成物の組成および有効成分の濃度は投与方法によっても変化するが、本発明の医薬組成物に含まれる抗体−薬物コンジュゲート組成物は、抗体−薬物コンジュゲートの抗原に対する親和性、すなわち、抗原に対する解離定数(Kd値)の点において、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、少量の投与量であっても薬効を発揮させことができる。したがって、抗体−薬物コンジュゲート組成物の投与量の決定に当たっては、抗体−薬物コンジュゲートと抗原との親和性の状況に基づいて投与量を設定することもできる。本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物をヒトに対して投与する際には、例えば、約0.001〜100mg/kgを1回あるいは1〜180日間に1回の間隔で複数回投与すればよい。
【0225】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。また、本明細書において、特に記載のない試薬、溶媒および出発材料は、市販の供給源から容易に入手可能である。
【実施例】
【0226】
(実施例1)ヒト化抗TROP2抗体発現ベクターの構築と抗体の生産
(i)ヒト化抗TROP2抗体重鎖(hTINA1-H1)発現ベクターの構築
配列表の配列番号2に示すヒト化抗TROP2抗体重鎖(hTINA1-H1)のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36〜437に示されるヒト化抗TROP2抗体重鎖(hTINA1-H1)の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD-Plus-(TOYOBO社)と下記のプライマーセットでヒト化抗TROP2抗体重鎖(hTINA1-H1)の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を増幅し、キメラおよびヒト化抗体IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1を制限酵素BlpIで切断した箇所にIn-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて挿入することによりヒト化抗TROP2抗体重鎖(hTINA1-H1)発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-G1/hTINA1-H1」と命名した。
プライマーセット
5’-agctcccagatgggtgctgagc-3’(配列番号21:プライマー EG-Inf-F)
5’-gggcccttggtggaggctgagc-3’(配列番号22:プライマー EG1-Inf-R)
【0227】
(ii)ヒト化抗TROP2抗体軽鎖(hTINA1-L1)発現ベクターの構築
配列表の配列番号4に示すヒト化抗TROP2抗体軽鎖(hTINA1-L1)のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号38〜402に示されるヒト化抗TROP2抗体軽鎖(hTINA1-L1)の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD-Plus-(TOYOBO社)と下記のプライマーセットでヒト化抗TROP2抗体軽鎖(hTINA1-L1)の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を増幅し、キメラおよびヒト化抗体軽鎖発現ベクターpCMA-LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて挿入することによりヒト化抗TROP2抗体軽鎖(hTINA1-L1)発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-LK/hTINA1-L1」と命名した。
プライマーセット
5’-ctgtggatctccggcgcgtacggc-3’(配列番号23:プライマー CM-LKF)
5’-ggagggggcggccaccgtacg-3’(配列番号24:プライマー KCL-Inf-R)
【0228】
(iii)ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)の生産
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。対数増殖期の1.2×10
9個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を3L Fernbach Erlenmeyer Flask(CORNING社)に播種し、FreeStyle293 expression medium(Invitrogen社)で希釈して1.0×10
6細胞/mLに調製した後に、37℃、8% CO
2インキュベーター内で90rpmで一時間振とう培養した。Polyethyleneimine(Polyscience #24765;3.6mg)をOpti-Pro SFM(Invitrogen社;20mL)に溶解し、次にPureLink HiPure Plasmidキット(Invitrogen社)を用いて調製した軽鎖発現ベクター(0.8mg)および重鎖発現ベクター(0.4mg)をOpti-Pro SFM(Invitrogen社;20mL)に添加した。Polyethyleneimine/Opti-Pro SFM混合液(20mL)に、発現ベクター/Opti-Pro SFM混合液(20mL)を加えて穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8% CO
2インキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter(ADVANTEC #CCS-045-E1H)でろ過した。
【0229】
pCMA-G1/hTINA1-H1とpCMA-LK/hTINA1-L1との組合せによって取得されたヒト化抗TROP2抗体を「hTINA1-H1L1」と命名した。
【0230】
(iv)ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)の精製
(iii)で得られた培養上清から抗体を、rProteinAアフィニティークロマトグラフィー(4-6℃)とセラミックハイドロキシアパタイト(室温)の2段階工程で精製した。rProtein Aアフィニティークロマトグラフィー精製後とセラミックハイドロキシアパタイト精製後のバッファー置換工程は4-6℃で実施した。最初に、培養上清を、PBSで平衡化したMabSelect SuRe(GE Healthcare Bioscience社製、HiTrapカラム)にアプライした。培養上清がカラムに全て入った後、カラム容量2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBSに置換した後、5mMリン酸ナトリウム/50mM MES/pH7.0のバッファーで5倍希釈した抗体溶液を、5mM NaPi/50mM MES/30mM NaCl/pH7.0のバッファーで平衡化されたセラミックハイドロキシアパタイトカラム(日本バイオラッド、Bio-Scale CHTType-I Hydroxyapatite Column)にアプライした。塩化ナトリウムによる直線的濃度勾配溶出を実施し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりHBSor(25mM ヒスチジン/5% ソルビトール、pH6.0)への液置換を行った。最後にCentrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社,4℃)にて濃縮し、IgG濃度を20mg/mL以上に調製して精製サンプルとした。
【0231】
(v)ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)のバッファー交換および濃度調整
(iv)にて作製したヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)を、Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat. No. 17-0852-02、GE Healthcare Japan Corporation)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)およびエチレンジアミン四酢酸(5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM、pH6.0;本明細書において「PBS6.0/EDTA」という場合がある。)にて平衡化した。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをのせたのち、PBS6.0/EDTA 3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取した。この画分をAmicon Ultra(50,000 MWCO、Millipore Corporation)の容器内に抗体溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R、Beckman Coulter, Inc.)を用いた遠心操作(2000G〜3800Gにて5〜20分間遠心)にて、抗体溶液を濃縮した。UV測定器(Nanodrop 1000、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った。その際に、280nm吸光係数(1.54mLmg
-1cm
-1)を用いて抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて21.8mg/mLに抗体濃度を調整した。
(実施例2)薬物リンカー中間体の作製
次式で表される、N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミドを、WO2014/057687の実施例58の方法に従って合成した。
【0232】
【化36】
【0233】
(実施例3)ヒト化抗TROP2抗体ADC組成物の作製
(実施例3−1)従来の方法によるヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1) ADC組成物の作製
(i)抗体の還元
ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)(15mL:327mg相当、濃度21.8mg/mL;25mM ヒスチジンバッファー)をガラス反応容器に入れ、更に、25mMヒスチジンバッファー(18mL、pH5.0)を加えた。本反応液に、0.5M EDTA水溶液(0.027mL;抗体に対し6当量)を加えたのち、0.1g/mLポリソルベート20水溶液(0.033mL;抗体に対し0.01%)を添加した後、0.3Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.12に調整した。24℃攪拌下に、1.00mg/mL トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩水溶液(1.58mL;抗体一分子に対して2.45当量)を加え、内温を35〜36℃になるように3時間加温し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0234】
(ii)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
上記(i)で得られた溶液を冷却し、内温16〜17℃にて、攪拌下、実施例2で得た化合物の6.67mg/mL 50%アセトン水溶液(1.71mL;抗体一分子に対して5.2当量)を60分かけて加え、同温度にて20分間撹拌し、薬物リンカー中間体を抗体へ結合させた。次に、50mM N-アセチルシステイン水溶液(0.135mL;抗体一分子に対して3当量)を加え、さらに同温度にて20分間撹拌し、薬物リンカー中間体の反応を停止させたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。
【0235】
(iii)精製
上記(ii)で得られた溶液を、Pellicon XL(日本ミリポア株式会社、50cm
2)を用い、ローラーポンプにて、10mMヒスチジンバッファー(pH5.0)を加えながら循環させ、排水量500mLになるまで洗浄作業を行い、低分子を除去した。その後、濃縮を行い、ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)ADC組成物を含有する溶液を17.6mL得た。
【0236】
(iv)特性評価
[共通操作A]抗体−薬物コンジュゲート組成物における抗体一分子あたりの平均薬物結合数の測定
抗体−薬物コンジュゲート組成物における抗体一分子あたりの平均薬物結合数は、以下の方法を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって求めた。
【0237】
1.HPLC分析用サンプルの調製(抗体−薬物コンジュゲートの還元)
抗体−薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合した。混合物を37℃で30分インキュベートすることで、抗体−薬物コンジュゲートの重鎖−軽鎖間および重鎖−重鎖間のジスルフィドを切断したサンプルを、HPLC分析に用いた。
【0238】
2.HPLC分析
HPLC分析を、下記の測定条件にて行った。
【0239】
HPLCシステム:島津サイエンス HPLCシステム
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:PLRP-S(2.1×50mm、8μm、1000Å;Agilent Technologies)
カラム温度:80℃
移動相A:0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
移動相B:0.04%TFAを含むアセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:29%-36%(0分-12.5分)、36%-42%(12.5-15分)、42%-29%(15分―15.1分)、29%-29%(15.1分―25分)
サンプル注入量:15μL
【0240】
4.データ解析
薬物の結合していない抗体の軽鎖(L
0)および重鎖(H
0)に対して、薬物の結合した軽鎖(薬物が一つ結合した軽鎖:L
1)および重鎖(薬物が一つ結合した重鎖:H
1、薬物が二つ結合した重鎖:H
2、薬物が三つ結合した重鎖:H
3)は、結合した薬物の数に比例して疎水性が増し保持時間が大きくなることから、L
0、L
1、H
0、H
1、H
2、H
3の順に溶出される。L
0およびH
0との保持時間比較により検出ピークをL
0、L
1、H
0、H
1、H
2、H
3のいずれかに割り当てた。
【0241】
薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、軽鎖、H鎖および薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値の補正を行った。
【0242】
【数4】
【0243】
【数5】
【0244】
ここで、各抗体における軽鎖および重鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列から推定される値を用いた。ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として27640を、重鎖のモル吸光係数として83810を推定値として用いた。また、薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、各薬物リンカー中間体をメルカプトエタノールまたはN-アセチルシステインで反応させ、N-置換マレイミジル基をサクシニイミドチオエーテルに変換した化合物の実測のモル吸光係数(280nm)を用いた。
【0245】
ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って計算した。
【0246】
【数6】
【0247】
抗体−薬物コンジュゲート組成物における抗体一分子あたりの平均薬物結合数を、下式に従って計算した。
【0248】
平均薬物結合数=(L
0ピーク面積比×0 + L
1ピーク面積比×1 + H
0ピーク面積比×0 + H
1ピーク面積比×1 + H
2ピーク面積比×2 + H
3ピーク面積比×3)/100×2
抗体濃度:16.49mg/mL、抗体収量:290mg(86%)、共通操作A にて測定された抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):4.4であった。各鎖ピーク面積比(%)を表したHPLCクロマトグラフを
図5に示す。
【0249】
[共通操作B]抗体―薬物コンジュゲート組成物における疎水カラムクロマトによる分離法
1.HPLC測定方法
HPLC分析を、下記の測定条件にて行った。
【0250】
HPLCシステム:島津サイエンス HPLCシステム
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:TSKgel Butyl-NPR(4.6×100mm、2.5μm;東ソー株式会社)
カラム温度:30℃
移動相A:1.5M硫酸アンモニウムを含む、25mMリン酸バッファー(pH7.0)水溶液
移動相B:25mMリン酸バッファー(pH7.0)を75%とイソプロピルアルコールを25%含む混合溶液
グラジエントプログラム:20%-60%(0分-20分)、20%-80%(20-20.1分)、80%-80%(20.1―23分)、80%-20%(23分―23.1分)、20%-20%(23.1分―40分)
サンプル注入量:2μL
【0251】
2.データ解析
本データは、カラムの特性から、薬物結合数の低い抗体−薬物コンジュゲートから順に塩濃度の差により溶出されるため、その各々の面積値を測定する事により、薬物結合数の分布を推定した。そのピークは、溶出順にD0(薬物リンカーが結合していないもの)、D2、D4-1、D4-2、D6、D8となり、その分布状況は、D0:4.8%、D2:16.8%、D4−1:24.6%、D4−2:13.1%、D6:24.8%、D8:12.6%であった(
図6)。
【0252】
(実施例3−2)本発明の方法によるヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)ADC組成物の作製
(i)抗体の還元
ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)(22.9mL:500mg相当、濃度21.8mg/mL;25mMヒスチジンバッファー)を、ガラス反応容器に入れ、更に、25mM ヒスチジンバッファー(22mL、pH5.0)を加えた。本反応液に、0.5M EDTA水溶液(0.0344mL;抗体に対し5当量)を加えたのち、0.1g/mLポリソルベート20水溶液(0.050ml;抗体に対し0.01%)を添加した後、0.3Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.12に調整し、冷却した。攪拌下、内温0〜1℃にて、1.00mg/mL トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩水溶液(2.54mL;抗体一分子に対して2.58当量)を加え、内温0〜1℃にて6時間攪拌加し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0253】
(ii)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
上記(i)で得られた溶液に、内温0〜2℃にて、攪拌下、実施例2で得た化合物の6.03mg/mL 50%アセトン水溶液(2.99mL;抗体一分子に対して5.1当量)を10分かけて加え、同温度にて、40分間撹拌し、薬物リンカー中間体を抗体へ結合させた。次に、50mM N-アセチルシステイン水溶液(0.206 mL;抗体一分子に対して3当量)を加え、さらに同温度にて10分間撹拌し、薬物リンカー中間体の反応を停止させたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。
【0254】
(iii)精製
上記(ii)で得られた溶液を、Pellicon XL(日本ミリポア株式会社、50cm
2)を用い、ローラーポンプにて、10mMヒスチジンバッファー(pH5.0)を加えながら循環させ、排水量700mLになるまで洗浄作業を行い、低分子を除去した。その後、濃縮を行い、ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)ADC組成物を含有する溶液を23.6mL得た。
【0255】
(iv)特性評価
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Aと同様に平均薬物結合数を測定した。ヒト化抗TROP2抗体(hTINA1-H1L1)の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として27640を、重鎖のモル吸光係数として83810を推定値として用いた。
【0256】
抗体濃度:19.63mg/mL、抗体収量:463mg(92%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):4.1であった。各鎖ピーク面積比(%)を表したHPLCクロマトグラフを
図7に示す。
【0257】
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Bと同様に薬物結合数の面積値を測定した。薬物結合数の分布状況は、D0:1.9%、D2:19.5%、D4-1:53.3%、D6:18.5%、D8:5.5%であった(
図8)。
【0258】
(v)結果
従来の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体ADC組成物(実施例3−1)の平均薬物結合数は4.4であり、D4−1の含有率は24.6%であった。一方、本発明の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体ADC組成物(実施例3−2)の平均薬物結合数は4.1であり、D4−1の含有率は53.3%であった。
【0259】
(実施例4)ヒト化抗CD98抗体発現ベクターの構築と抗体の生産
(i)ヒト化抗CD98抗体重鎖(hM23-H1)発現ベクターの構築
配列番号11に示すヒト化抗CD98抗体重鎖(hM23-H1)のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号58〜405に示されるヒト化抗CD98抗体重鎖(hM23-H1)の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片(ヌクレオチド番号36〜422)を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD-Plus-(TOYOBO社)と下記のプライマーセットでhM23-H1の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を増幅し、キメラおよびヒト化抗体IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1を制限酵素BlpIで切断した箇所にIn-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて挿入することによりヒト化抗CD98抗体重鎖(hM23-H1)発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-G1/hM23-H1」と命名した。
プライマーセット
5’-AGCTCCCAGATGGGTGCTGAGC-3’(配列番号21:プライマー EG-Inf-F)
5’-GGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGC-3’(配列番号22:プライマー EG1-Inf-R)
【0260】
(ii)ヒト化抗CD98抗体軽鎖(hM23-L1)発現ベクターの構築
配列番号13に示すヒト化抗CD98抗体軽鎖(hM23-L1)のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号61〜405に示されるヒト化抗CD98抗体軽鎖(hM23-L1)の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片(ヌクレオチド番号38〜420)を合成した(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)。合成したDNA断片をテンプレートとして、KOD-Plus-(TOYOBO社)と下記のプライマーセットでヒト化抗CD98抗体軽鎖(hM23-L1)の可変領域をコードするDNA配列を含むDNA断片を増幅し、キメラおよびヒト化抗体軽鎖発現ベクターpCMA-LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn-Fusion HD PCRクローニングキット(CLONTECH社)を用いて挿入することによりヒト化抗CD98抗体軽鎖(hM23-L1)発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA-LK/hM23-L1」と命名した。
プライマーセット
5’-CTGTGGATCTCCGGCGCGTACGGC-3’(配列番号23:プライマー CM-LKF)
5’-GGAGGGGGCGGCCACCGTACG-3’(配列番号24:プライマー KCL-Inf-R)
【0261】
(iii)ヒト化抗CD98 抗体(hM23-H1L1)の生産
ヒト化抗CD98抗体を実施例1の(iii)と同様の方法で生産した。pCMA-G1/hM23-H1とpCMA-LK/hM23-L1との組合せによって取得されたヒト化抗CD98抗体を「hM23-H1L1」と命名した。
【0262】
(iv)ヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)の精製
(iii)で得られた培養上清から抗体を実施例1の(iv)と同様の方法で精製した。
【0263】
(v)ヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)のバッファー交換および濃度調整
(iv)にて精製したヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)を実施例1の(v)と同様の方法でバッファー交換および濃度調整した。その際に、280nm吸光係数(1.65mLmg
-1cm
-1)を用いて抗体濃度の測定を行ったのちに、PBS6.0/EDTAを用いて40mg/mLに抗体濃度を調整した。
【0264】
(実施例5)ヒト化抗CD98抗体 ADC組成物の作製
(実施例5−1)従来の方法によるヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)ADC組成物の作製
(i)抗体の還元
ヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)(12mL:480mg相当、濃度40mg/mL;25mMヒスチジンバッファー)をガラス反応容器に入れ、更に、25mMヒスチジンバッファー(36mL、pH5.0)を加えた。本反応液に、0.5M EDTA水溶液(CALBIOCHEM;0.0394mL;抗体に対し6当量)を加えたのち、0.1g/mLポリソルベート20(日油株式会社)水溶液(0.048mL;抗体に対し0.01%)を添加した後、0.3Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.10に調整した。21℃攪拌下に、1.00mg/mL トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(Nacalai Tesque, Inc.)水溶液(2.17mL;抗体一分子に対して2.31当量)を加え、内温を35〜36℃になるように3時間加温し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0265】
(ii)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
上記(i)で得られた溶液を冷却し、内温17〜18℃にて、攪拌下、実施例2で得た化合物の6.20mg/mL 50%アセトン水溶液(2.74mL;抗体一分子に対して5.0当量)を7分かけて加え、同温度にて、40分間撹拌し、薬物リンカー中間体を抗体へ結合させた。次に、50mM N-アセチルシステイン(キシダ化学)水溶液(0.197mL;抗体一分子に対して3当量)を加え、さらに同温度にて30分間撹拌し、薬物リンカー中間体の反応を停止させたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。
【0266】
(iii)精製
上記(ii)で得られた溶液を、Pellicon XL(日本ミリポア株式会社、50cm
2)を用い、ローラーポンプにて、10mMヒスチジンバッファー(pH5.0)を加えながら循環させ、排水量600mLになるまで洗浄作業を行い、低分子を除去した。その後、濃縮を行い、ヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)ADC組成物を含有する溶液を21.6mL得た。
【0267】
(iv)特性評価
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Aと同様に平均薬物結合数を測定した。ヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として41370を、重鎖のモル吸光係数として77810を推定値として用いた。
【0268】
抗体濃度:20.8mg/mL、抗体収量:449mg(91%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):4.0であった。各鎖ピーク面積比(%)を表したHPLCクロマトグラフを
図9に示す。
【0269】
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Bと同様に薬物結合数の面積値を測定した。薬物結合数の分布状況は、D0:4.2%、D2:24.2%、D4−1:27.8%、D4−2:13.3%、D6:20.8%、D8:7.6%であった(
図10)。
【0270】
(実施例5−2)本発明の方法によるヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)ADC組成物の作製
(i)抗体の還元
ヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)(12.5mL:500mg相当、濃度40mg/mL;25mMヒスチジンバッファー)をガラス反応容器に入れ、更に、25mMヒスチジンバッファー(27.5mL、pH5.0)を加えた。本反応液に、0.5M EDTA水溶液(CALBIOCHEM;0.041mL;抗体に対し6当量)を加えたのち、0.1g/mLポリソルベート20(日油株式会社)水溶液(0.050mL;抗体に対し0.01%)を添加した後、0.3Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.10に調整した。反応液を冷却し、内温0〜1℃攪拌下に、1.00mg/mL トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(Nacalai Tesque, Inc.)水溶液(2.75mL;抗体一分子に対して2.80当量)を加え、内温を0〜1℃になるように6時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0271】
(ii)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
上記(i)で得られた溶液を内温0.7−1.2℃にて、攪拌下、実施例2で得た化合物の6.08mg/mL 50%アセトン水溶液(3.14mL;抗体一分子に対して5.4当量)を10分かけて加え、同温度にて、50分間撹拌し、薬物リンカー中間体を抗体へ結合させた。次に、50mM N-アセチルシステイン(キシダ化学)水溶液(0.205mL;抗体一分子に対して3当量)を加え、さらに同温度にて30分間撹拌し、薬物リンカー中間体の反応を停止させたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。
【0272】
(iii)精製
上記(ii)で得られた溶液を、Pellicon XL(日本ミリポア株式会社、50cm
2)を用い、ローラーポンプにて、10mMヒスチジンバッファー(pH5.0)を加えながら循環させ、排水量600mLになるまで洗浄作業を行い、低分子を除去した。その後、濃縮を行い、ヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)ADC組成物を含有する溶液を23.6mL得た。
【0273】
(iv)特性評価
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Aと同様に平均薬物結合数を測定した。ヒト化抗CD98抗体(hM23-H1L1)の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として41370を、重鎖のモル吸光係数として77810を推定値として用いた。
【0274】
抗体濃度:19.91mg/mL、抗体収量:470mg(94%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):4.1であった。各鎖ピーク面積比(%)を表したHPLCクロマトグラフを
図11に示す。
【0275】
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Bと同様に薬物結合数の面積値を測定した。薬物結合数の分布状況は、D0:2.2%、D2:18.1%、D4-1:51.0%、D6:20.6%、D8:7.6%であった(
図12)。
【0276】
(v)結果
従来の方法により作製されたヒト化抗CD98抗体ADC組成物(実施例5−1)の平均薬物結合数は4.0であり、D4−1の含有率は27.8%であった。一方、本発明の方法により作製されたヒト化抗CD98抗体ADC組成物(実施例5−2)の平均薬物結合数は4.1であり、D4−1の含有率は51.0%であった。
(実施例6)ヒト化抗B7-H3抗体ADC組成物の作製
(実施例6−1)従来の方法によるヒト化抗B7-H3抗体(M30-H1-L4)ADC組成物の作製
(i)抗体の還元
ヒト化抗B7-H3抗体(M30-H1-L4)(WO2014/057687の参考例1の方法に従って作製、12.4mL:250mg相当、濃度20.1mg/mL;25mMクエン酸バッファー)をガラス反応容器に入れ、更に、25mMヒスチジンバッファー(18mL、pH7.5)を加えた。本反応液に、0.5M EDTA水溶液(CALBIOCHEM;0.018mL;抗体に対し5当量)を加えたのち、0.1g/mLポリソルベート80(日油株式会社)水溶液(0.013mL;抗体に対し0.01%)を添加した後、0.3Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.02に調整した。35℃攪拌下に、1.00mg/mL トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(Nacalai Tesque, Inc.)水溶液(1.05mL;抗体一分子に対して2.15当量)を加え、内温を35〜36℃になるように2時間加温し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0277】
(ii)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
上記(i)で得られた溶液を冷却し、内温15〜16℃にて、攪拌下、実施例2で得た化合物の6.22mg/mL 50%アセトン水溶液(1.36mL;抗体一分子に対して4.8当量)を4分かけて加え、同温度にて、20分間撹拌し、薬物リンカー中間体を抗体へ結合させた。次に、50mM N-アセチルシステイン(キシダ化学)水溶液(0.102mL;抗体一分子に対して3当量)を加え、さらに同温度にて20分間撹拌し、薬物リンカー中間体の反応を停止させたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。
【0278】
(iii)精製
上記(ii)で得られた溶液を、Pellicon XL(日本ミリポア株式会社、50cm
2)を用い、ローラーポンプにて、10mMヒスチジンバッファー(pH5.0)を加えながら循環させ、排水量300mLになるまで洗浄作業を行い、低分子を除去した。その後、濃縮を行い、ヒト化抗B7-H3抗体(M30-H1-L4)ADC組成物を含有する溶液を13.1mL得た。
【0279】
(iv)特性評価
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Aと同様に平均薬物結合数を測定した。ヒト化抗B7-H3抗体(M30-H1-L4)の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として30160を、重鎖のモル吸光係数として87250を推定値として用いた。
【0280】
抗体濃度:18.4mg/mL、抗体収量:241mg(94%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):3.8であった。各鎖ピーク面積比(%)を表したHPLCクロマトグラフを
図15に示す。
【0281】
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Bと同様に薬物結合数の面積値を測定した。薬物結合数の分布状況は、D0:6.5%、D2:30.5%、D4−1:27.9%、D4−2:12.3%、D6:17.7%、D8:4.9%であった(
図16)。
【0282】
(実施例6−2)本発明の方法によるヒト化抗B7-H3抗体(M30-H1-L4)ADC組成物の作製
(i)抗体の還元
ヒト化抗B7-H3抗体(M30-H1-L4)(WO2014/057687の参考例1の方法に従って作製、27.1mL:500mg相当、濃度18.5mg/mL;10mMヒスチジンバッファー)をガラス反応容器に入れ、更に、10mMヒスチジン水溶液(25mL)を加えた。本反応液に、精製白糖(MERCK;1.25g)と0.5M EDTA水溶液(CALBIOCHEM;0.041mL;抗体に対し6当量)を加えたのち、0.1g/mLポリソルベート80(日油株式会社)水溶液(0.050mL;抗体に対し0.01%)を添加した後、0.3Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.08に調整した。反応液を冷却し、内温0〜1℃攪拌下に、1.00mg/mL トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(Nacalai Tesque, Inc.)水溶液(2.08mL;抗体一分子に対して2.13当量)を加え、内温を0〜1℃になるように5.5時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0283】
(ii)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
上記(i)で得られた溶液を内温0〜1℃にて、攪拌下、実施例2で得た化合物の6.04mg/mL 50%アセトン水溶液(2.82mL;抗体一分子に対して4.8当量)を20分かけて加え、同温度にて、20分間撹拌し、薬物リンカー中間体を抗体へ結合させた。次に、50mM N-アセチルシステイン(キシダ化学)水溶液(0.205mL;抗体一分子に対して3当量)を加え、さらに同温度にて20分間撹拌し、薬物リンカー中間体の反応を停止させたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。
【0284】
(iii)精製
上記(ii)で得られた溶液を、Pellicon XL(日本ミリポア株式会社、50cm
2)を用い、ローラーポンプにて、10mMヒスチジンバッファー(pH5.0)を加えながら循環させ、排水量800mLになるまで洗浄作業を行い、低分子を除去した。その後、濃縮を行い、ヒト化抗B7-H3抗体(M30-H1-L4)ADC組成物を含有する溶液を23.6mL得た。
【0285】
(iv)特性評価
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Aと同様に平均薬物結合数を測定した。ヒト化抗B7-H3抗体(M30-H1-L4)の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として30160を、重鎖のモル吸光係数として87250を推定値として用いた。
【0286】
抗体濃度:19.4mg/mL、抗体収量:455mg(89%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):4.1であった。各鎖ピーク面積比(%)を表したHPLCクロマトグラフを
図17に示す。
【0287】
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Bと同様に薬物結合数の面積値を測定した。薬物結合数の分布状況は、D0:2.7%、D2:22.3%、D4-1:58.4%、D6:14.1%、D8:2.4%であった(
図18)。
【0288】
(v)結果
従来の方法により作製されたヒト化抗B7-H3抗体ADC組成物(実施例6−1)の平均薬物結合数は3.8であり、D4−1の含有率は27.9%であった。一方、本発明の方法により作製されたヒト化抗B7-H3抗体ADC組成物(実施例6−2)の平均薬物結合数は4.1であり、D4−1の含有率は58.4%であった。
【0289】
(実施例7)ヒト化抗HER2抗体ADC組成物の作製
【0290】
(実施例7−1)従来の方法によるヒト化抗HER2抗体ADC組成物の作製
(i)抗体の還元
ヒト化抗HER2抗体(トラスツズマブ;米国特許第5821337号)(22.3mL:500mg相当、濃度22.4mg/mL;25mM ヒスチジンバッファー)をガラス反応容器に入れ、更に、25mMヒスチジンバッファー(27mL、pH5.0)を加えた。本反応液に、0.5M EDTA水溶液(0.034mL;抗体に対し5当量)を加えたのち、0.1g/mLポリソルベート20水溶液(0.050mL;抗体に対し0.01%)を添加した後、0.3Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.12に調整した。22℃攪拌下に、1.00mg/mL トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩水溶液(2.12mL;抗体一分子に対して2.15当量)を加え、内温を22〜25℃になるように3時間攪拌し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0291】
(ii)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
上記(i)で得られた溶液を冷却し、内温11〜13℃にて、攪拌下、実施例2で得た化合物の6.15mg/mL 50%アセトン水溶液(2.77mL;抗体一分子に対して4.8当量)を20分かけて加え、同温度にて20分間撹拌し、薬物リンカー中間体を抗体へ結合させた。次に、50mM N-アセチルシステイン水溶液(0.206mL;抗体一分子に対して3当量)を加え、さらに同温度にて20分間撹拌し、薬物リンカー中間体の反応を停止させたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。
【0292】
(iii)精製
上記(ii)で得られた溶液を、Pellicon XL(日本ミリポア株式会社、50cm
2)を用い、ローラーポンプにて、10mMヒスチジンバッファー(pH5.0)を加えながら循環させ、排水量600mLになるまで洗浄作業を行い、低分子を除去した。その後、濃縮を行い、ヒト化抗HER2抗体ADC組成物を含有する溶液を22.7mL得た。
【0293】
(iv)特性評価
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Aと同様に平均薬物結合数を測定した。ヒト化抗HER2抗体(トラスツズマブ)の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として26150を、重鎖のモル吸光係数として81290を推定値として用いた。
【0294】
抗体濃度:20.39mg/mL、抗体収量:462mg(90%)、共通操作A にて測定された抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):3.9であった。各鎖ピーク面積比(%)を表したHPLCクロマトグラフを
図21に示す。
【0295】
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Bと同様に薬物結合数の面積値を測定した。薬物結合数の分布状況は、D0:3.6%、D2:26.1%、D4−1:34.1%、D4−2:13.6%、D6:17.6%、D8:5.0%であった(
図22)。
(実施例7−2)本発明の方法によるヒト化抗HER2抗体ADC組成物の作製
【0296】
(i)抗体の還元
ヒト化抗HER2抗体(トラスツズマブ;米国特許第5821337号)(22.3mL:500mg相当、濃度22.4mg/mL;25mMヒスチジンバッファー)を、ガラス反応容器に入れ、更に、25mM ヒスチジンバッファー(25mL、pH5.0)を加えた。本反応液に、0.5M EDTA水溶液(0.034mL;抗体に対し5当量)を加えたのち、0.1g/mLポリソルベート20水溶液(0.050ml;抗体に対し0.01%)を添加した後、0.3Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を加え、pH7.13に調整し、冷却した。攪拌下、内温0〜1℃にて、1.00mg/mL トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩水溶液(2.37mL;抗体一分子に対して2.40当量)を加え、内温0〜1℃にて6時間攪拌加し、抗体の鎖間ジスルフィドを還元した。
【0297】
(ii)抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション
上記(i)で得られた溶液に、内温0〜2℃にて、攪拌下、実施例2で得た化合物の6.14mg/mL 50%アセトン水溶液(2.84mL;抗体一分子に対して4.9当量)を10分かけて加え、同温度にて、40分間撹拌し、薬物リンカー中間体を抗体へ結合させた。次に、50mM N-アセチルシステイン水溶液(0.206 mL;抗体一分子に対して3当量)を加え、さらに同温度にて50分間撹拌し、薬物リンカー中間体の反応を停止させたのち、10%酢酸水溶液を用いて、pH5.0に調整した。
【0298】
(iii)精製
上記(ii)で得られた溶液を、Pellicon XL(日本ミリポア株式会社、50cm
2)を用い、ローラーポンプにて、10mMヒスチジンバッファー(pH5.0)を加えながら循環させ、排水量600mLになるまで洗浄作業を行い、低分子を除去した。その後、濃縮を行い、ヒト化抗HER2抗体ADC組成物を含有する溶液を21.7mL得た。
【0299】
(iv)特性評価
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Aと同様に平均薬物結合数を測定した。ヒト化抗HER2抗体(トラスツズマブ)の場合、そのアミノ酸配列に従って、軽鎖のモル吸光係数として26150を、重鎖のモル吸光係数として81290を推定値として用いた。
【0300】
抗体濃度:21.2mg/mL、抗体収量:459mg(89%)、共通操作Aにて測定された抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):4.0であった。各鎖ピーク面積比(%)を表したHPLCクロマトグラフは
図23を示す。
【0301】
実施例3−1の(iv)に記載の共通操作Bと同様に各抗体−薬物結合数の面積値を測定した。結合数の分布状況は、D0:2.8%、D2:23.8%、D4-1:55.2%、D6:15.0%、D8:3.3%であった(
図24)。
【0302】
(v)結果
従来の方法により作製されたヒト化抗HER2抗体ADC組成物(実施例7−1)の平均薬物結合数は3.9であり、D4−1の含有率は34.1%であった。一方、本発明の方法により作製されたヒト化抗HER2抗体ADC組成物(実施例7−2)の平均薬物結合数は4.0であり、D4−1の含有率は55.2%であった。
【0303】
(試験例1)抗体−薬物コンジュゲート組成物の治療有効性
【0304】
マウス:5-6週齢の雌BALB/c-nu/nuマウス(日本チャールス・リバー株式会社)を実験使用前にSPF条件化で4-7日間馴化した。マウスには滅菌した固形飼料(FR-2,Funabashi Farms Co.,Ltd)を給餌し、滅菌した水道水(5-15ppm次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加して調製)を与えた。
【0305】
測定、計算式:腫瘍の長径および短径を電子式デジタルキャリパー(CD-15C,Mitutoyo Corp.)で1週間に2回以上測定し、腫瘍体積(mm
3)を計算した。計算式は以下に示す通りである。
【0306】
腫瘍体積(mm
3)=1/2×長径(mm)×[短径(mm)]
2【0307】
ATCCから購入したヒト膵臓腺癌細胞株CFPAC-1 4×10
6cellsを生理食塩水に懸濁し、雌BALB/c-nu/nuマウスに皮下移植し(Day0)、Day11に無作為に群分けを実施した。群分け後、従来の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体 ADC組成物(実施例3−1)、および、本発明の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体 ADC組成物(実施例3−2)を、それぞれ、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kgの各用量で尾静脈内投与した。抗体−薬物コンジュゲート組成物は全てAcetate-Buffered Saline(pH5.5)(ナカライテスク)で希釈し、10mL/kgの液量を投与した。治療有効性は、腫瘍体積を退縮させることができる最小投与量(Regression dose)を指標に判断した。従来の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体 ADC組成物のRegression doseは、1mg/kgであり、本発明の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体 ADC組成物のRegression doseも、1mg/kgであった(
図19)。このように、本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物は、従来の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物と同等の治療有効性を有することが示された。
【0308】
(試験例2)抗体−薬物コンジュゲート組成物の安全性
【0309】
従来の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体 ADC組成物(実施例3−1)、および、本発明の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体ADC組成物(実施例3−2)を、それぞれ、交差種であるカニクイザルに3週に1回の間隔で計3回投与した。最終投与翌日まで観察し、重篤な毒性が発現しない最大投与量(HNSTD)を検討した。結果として、従来の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体ADC組成物のHNSTDは10mg/kgであった一方、本発明の方法により作製されたヒト化抗TROP2抗体ADC組成物のHNSTDは30mg/kgであった。このように、本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物は、従来の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物よりも優れた安全性を有することが示された。
【0310】
(考察1)
実施例3、4、6、および7の結果から、平均薬物結合数は、従来の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物および本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物ともに、3.5〜4.5であった。一方、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率は、従来の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物では35%以下であるのに対し、本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物では50%以上であった。このように、本発明の製造方法を用いることにより、平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50%以上である抗体−薬物コンジュゲート組成物を選択的に製造できることが示された。
【0311】
(考察2)
試験例2の結果から、本発明の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物は、従来の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物よりも優れた安全性を有することが示された。
以上により、本発明の抗体−薬物コンジュゲート組成物(平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が50%以上である抗体−薬物コンジュゲート組成物)は、従来の製造方法により製造された抗体−薬物コンジュゲート組成物(平均薬物結合数が3.5〜4.5であり、重鎖−軽鎖間チオールに薬物リンカーが4個結合した抗体−薬物コンジュゲートの含有率が35%以下である抗体−薬物コンジュゲート組成物)よりも優れた安全性を有することが示された。