(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787891
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】コミュニケーションスキルの改善のためのリン脂質調製物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/685 20060101AFI20201109BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20201109BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20201109BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20201109BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20201109BHJP
A23J 7/00 20060101ALN20201109BHJP
【FI】
A61K31/685
A61K31/661
A61P25/18
A61K45/00
A23L33/115
!A23J7/00
【請求項の数】27
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-527204(P2017-527204)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2017-536367(P2017-536367A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】IB2015002391
(87)【国際公開番号】WO2016079595
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】62/082,261
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516164254
【氏名又は名称】エンザイモテック リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】ダフナ ザーローア レジェブ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート チャドナウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤエル リヒター
(72)【発明者】
【氏名】ガリ オルガ ソリア アルツィ
【審査官】
鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−509131(JP,A)
【文献】
特開2003−113086(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0289277(US,A1)
【文献】
特開2012−102070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A23L 33/115
A23J 7/00
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コミュニケーション障害(communication impairment)を患っている対象におけるコミュニケーションを改善するための方法に使用するための調製物であって、当該調製物が、以下:
ホスファチジルセリン(PS)、
ホスファチジン酸、
リゾホスファチジン酸、及び
PSに結合した少なくとも1つの脂肪酸、
を含有し、ここで、
当該調製物に対するPSの重量パーセントが10%超であり;
当該調製物中の全リン脂質に対するPSの重量パーセントが20%超であり;そして
当該調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する当該PSに結合した少なくとも1つの脂肪酸のパーセンテージが、以下の通りである:エイコサペンタエン酸(EPA)のパーセンテージがパルミチン酸のパーセンテージ以上であり、パルミチン酸のパーセンテージがドコサヘキサエン酸(DHA)のパーセンテージよりも高く、DHAのパーセンテージがオレイン酸のパーセンテージよりも高く、かつ、オレイン酸のパーセンテージがリノール酸のパーセンテージよりも高い、調製物。
【請求項2】
前記調製物に対するPSの重量パーセントが20%超である、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
前記調製物に対するPSの重量パーセントが40%超である、請求項2に記載の調製物。
【請求項4】
前記調製物中の全リン脂質に対するPSの重量パーセントが30%超である、請求項1から3のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項5】
前記調製物中の全リン脂質に対するPSの重量パーセントが50%超である、請求項4に記載の調製物。
【請求項6】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したEPAのパーセンテージが18%超かつ45%未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項7】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したEPAのパーセンテージが27%超かつ34%未満である、請求項6に記載の調製物。
【請求項8】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したパルミチン酸のパーセンテージが14%超かつ42%未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項9】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したパルミチン酸のパーセンテージが21%超かつ26%未満である、請求項8に記載の調製物。
【請求項10】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したDHAのパーセンテージが6%超かつ25%未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項11】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したDHAのパーセンテージが12%超かつ17%未満である、請求項10に記載の調製物。
【請求項12】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したオレイン酸のパーセンテージが1%超かつ15%未満である、請求項1から11のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項13】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したオレイン酸のパーセンテージが5%超かつ8%未満である、請求項12に記載の調製物。
【請求項14】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したリノール酸のパーセンテージが0.1%超かつ6.0%未満である、請求項1から13のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項15】
前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したリノール酸のパーセンテージが1%超かつ2%未満である、請求項14に記載の調製物。
【請求項16】
ホスファチジルコリン(PC)をさらに含有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項17】
前記調製物に対する前記PCの重量パーセントが10.0%未満である、請求項16に記載の調製物。
【請求項18】
前記調製物に対する前記PCの重量パーセントが0.01超かつ3.2%未満である、請求項17に記載の調製物。
【請求項19】
前記調製物中のホスファチジン酸とリゾホスファチジン酸との合計に対する、前記PSの重量比が、1:1超かつ10:1未満である、請求項1から18のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項20】
前記調製物中のホスファチジン酸とリゾホスファチジン酸との合計に対する、前記PSの重量比が、2.5:1超かつ4:1未満である、請求項19に記載の調製物。
【請求項21】
栄養組成物、栄養補助食品、機能性食品、又は薬用食品(medicinal food)である、請求項1から20のいずれか一項に記載の調製物を含有する、コミュニケーション障害(communication impairment)を患っている対象におけるコミュニケーションを改善するための方法に使用するための組成物。
【請求項22】
請求項1から20のいずれか一項に記載の調製物を含有する、コミュニケーション障害(communication impairment)を患っている対象におけるコミュニケーションを改善するための方法に使用するための医薬組成物。
【請求項23】
少なくとも1つの薬学的に活性な薬剤をさらに含有する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記コミュニケーション障害が自閉症スペクトラム障害(autistic spectrum disorder)(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群である、請求項21に記載の栄養組成物、栄養補助食品、機能性食品、又は薬用食品。
【請求項25】
前記コミュニケーション障害が言語の遅れを有する自閉症である、請求項21に記載の栄養組成物、栄養補助食品、機能性食品、又は薬用食品。
【請求項26】
前記コミュニケーション障害が非表現的/非感情的(non-expressive/non-emotional)なコミュニケーションパターンを有する自閉症である、請求項21に記載の栄養組成物、栄養補助食品、機能性食品、又は薬用食品。
【請求項27】
前記コミュニケーション障害が言語の遅れ及び非表現的/非感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症である、請求項21に記載の栄養組成物、栄養補助食品、機能性食品、又は薬用食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、コミュニケーション障害(communication impairment)/困難(difficulties)を患っている対象のコミュニケーション能力を改善するのに有効なリン脂質調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
コミュニケーションは、アイデア、情報、信号又はメッセージを与え、受取り又は交換し、個人若しくはグループが説得し、情報を探求し、情報を与え、又は感情を表現することを可能にする。この広い定義にはボディー・ランゲージ、スピーキング及びライティングのスキルが含まれる。
【0003】
コミュニケーション障害/困難は発達障害又は後天的障害である。米国言語聴覚学会(American Speech-Language-Hearing Association)(ASHA)は、コミュニケーション障害はより具体的には、「概念又は言語的、非言語的及び図形シンボルシステムを受信、送信、処理、及び理解する」能力に影響を及ぼすと述べている。コミュニケーション障害は部分的又は完全にコミュニケーションを妨げ得る。
【0004】
コミュニケーション障害は、発話、言語及び聴覚処理又は社会的語用論的コミュニケーションに関連する問題を含み得るが、これらに限定されない。最後のものは、社会関係及び談話理解の発達に影響する、自然な文脈における言語的及び非言語的コミュニケーションの使用に影響を与える困難を表す。
【0005】
コミュニケーション障害はいくつかの障害に存在し、神経障害(例えば、てんかん、失語症、及び脳損傷/外傷);情緒又は精神障害(例えば、全般性不安障害、広場恐怖症、社会不安障害、恐怖症、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、及び選択性緘黙(selective mutism));人格障害(例えば、統合失調症及び強迫神経症);発達障害(例えば、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、小児崩壊性障害、レット症候群、及び精神遅滞);並びに、発話障害、が挙げられる。
【0006】
自閉症スペクトラム障害(Autism spectrum disorder)(ASD)は重大な社会的、コミュニケーション、及び行動上の課題を引き起こし得る一連の発達障害を網羅する。ASD患者は社会的コミュニケーション障害を患っており、それはまた、行動の制限又は反復パターンを特徴とし、罹患した個人及びその介護者に重大な機能障害及び苦痛を引き起こす。自閉症及びASDという用語を本明細書中で互換的に使用する。
【0007】
ASDは言語発達に基づいて分類され得る。言語機能の遅れ及び/又は異常は自閉症を有する一部の個人では明白である一方で、他の個人(例えばアスペルガー患者)においては言語の臨床的に重要な一般的遅れはないが、非定型言語(atypical language)が質的異常、例えば:発話の割合、量、韻律、語用論、又は頻度としてしばしば現れる。
【0008】
ASDを分類する別の方法はコミュニケーションパターンに基づいている。いくつかの研究は、自閉症を有する一部の個人(例えばアスペルガー患者)が表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有し、他の個人は非表現的/非感情的(non-expressive/non-emotional)なコミュニケーションパターンを使用することを明らかにした。興味深いことに、コミュニケーションパターンの提示と言語発達との間には関連がある。言語発達の遅れが無い大多数のASDの個人は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを示すが;言語発達の遅れに苦しんでいる大多数のASDの個人はまた非表現的/非感情的なコミュニケーションパターンを示す。
【0009】
本発明者が知る限りでは、今日、コミュニケーション障害を治癒し、予防し又は対処することが示された承認薬は存在しない。特にASDについて見ると、2つの非定型抗精神病薬、リスペリドン(Risperidone)及びアリピプラゾール(Aripiprazole)のみが、ASDに関連する顕著な易刺激性(他者への攻撃性、意図的な自傷行為、かんしゃく(temper tantrums)、及び気分の易変性(labile moods))の治療用として米国食品医薬品局(FDA)で承認されている。これらの医学的介入は問題行動(challenging behaviors)に有益であるが、それらはASD患者の言語的又は非言語的コミュニケーションを改善すると報告されていない。また、それらは体重増加、鎮静、及び錐体外路作用を含む重大な副作用を有する。
【0010】
薬物治療はコミュニケーションパターンに対する有益な効果とは相関しないが、子どものコミュニケーション障害のコミュニケーション及び言語発達を強化するように設計された介入アプローチがコミュニケーション技能及び能力を改善することができるという証拠が増加している。
【0011】
リン脂質とも呼ばれるグリセロリン脂質は細胞の脂質二重層の重要な成分であり、細胞代謝及びシグナル伝達に関与している。リン脂質のグリセロール骨格のヒドロキシル基は、親水性のリン酸の頭部及び非極性の脂肪酸からなる疎水性の尾部によって置換されている。グリセロリン脂質は極性頭部基の性質に基づいて異なるクラス、例えば:ホスファチジルコリン(PC又はレシチンとしても知られている)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、及びホスファチジルセリン(PS)などに細分され得る。細胞膜並びに細胞内及び細胞間タンパク質のための結合部位の主成分を提供することに加えて、いくつかのグリセロリン脂質、例えばホスファチジルイノシトール及びホスファチジン酸は、膜由来セカンドメッセンジャーの前駆体であるか、それ自体が膜由来セカンドメッセンジャーである。研究により、PS及びPCはニューロン膜機能を高め、記憶力を向上させることが示されている。PSはADHD、うつ病、及び慢性ストレスに有益な効果を有することが見出された。さらに、PCは月経前症候群の情動性症状を軽減することが見出された。
【0012】
一見したところ、リン脂質の起源及びそれらの脂肪酸含量はその活性に影響を及ぼす。例えば、認知機能の改善におけるダイズPSの生物学的機能性は、他の種類のPSのものとは異なることが示されている(国際公開第2005/037848号参照)。さらに、PSに結合した特定の脂肪酸の異なる比が、認知能力の低下した高齢対象において認知機能の改善におけるPSの有効性に影響を及ぼし得ることが示された(国際公開第2009/156991号参照)。
【0013】
したがって 、特定の兆候に適切な種類のPS調製物を適用することは有益である。
【発明の概要】
【0014】
発明の概要
本発明は、以下、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、及びPSに結合した少なくとも1つの脂肪酸を含有する調製物であって、ここで、当該調製物に対するPSの重量パーセントが10%超であり;当該調製物中のリン脂質に対するPSの重量パーセントが20%超であり;そして、当該調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する当該調製物中のPSに結合した少なくとも1つの脂肪酸のパーセンテージが、以下の通りである:エイコサペンタエン酸(EPA)のパーセンテージがパルミチン酸のパーセンテージ以上であり、パルミチン酸のパーセンテージがドコサヘキサエン酸(DHA)のパーセンテージよりも高く、DHAのパーセンテージがオレイン酸のパーセンテージよりも高く、かつ、オレイン酸のパーセンテージがリノール酸のパーセンテージよりも高い、調製物を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、前記調製物に対するPSの重量パーセントは20%超、時には30%超、時には35%超、時には40%超、時には45%超、時には50%超、そして時には55%超である。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、前記調製物中の全リン脂質に対するPSの重量パーセントは30%超、時には35%超、時には40%超、時には45%超、時には50%超、時には55%超、時には60%超、そして時には65%超である。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、前記調製物中のホスファチジン酸とリゾホスファチジン酸との合計に対する前記PSの重量比は、1:1超かつ10:1未満、時には1.5:1超かつ8:1未満、時には2:1超かつ5:1未満、そして時には2.5:1超かつ4:1未満である。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したEPAのパーセンテージが18%超かつ45%未満、時には22%超かつ40%未満、時には26%超かつ36%未満、そして時には27%超かつ34%未満である。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したパルミチン酸のパーセンテージが14%超かつ42%未満、時には18%超かつ40%未満、時には20%超かつ30%未満、そして時には21%超かつ26%未満である。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したDHAのパーセンテージが6%超かつ25%未満、時には8%超かつ22%未満、時には11%超かつ20%未満、そして時には12%超かつ17%未満である。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したオレイン酸のパーセンテージが1%超かつ15%未満、時には2%超かつ13%未満、時には4%超かつ11%未満、そして時には5%超かつ8%未満である。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合したリノール酸のパーセンテージが0.1%超かつ6%未満、時には0.5%超かつ4%未満、時には1%超かつ3%未満、時には1%超かつ2%未満、そして時には1.5%超かつ2%未満である。
【0023】
本発明はまた、ホスファチジルコリン(PC)をさらに含有する、上記実施形態のいずれか一つに記載の調製物を提供する。時には、当該調製物は、調製物に対して10%未満のPCの重量パーセントを有する。時には、当該調製物に対するPCの重量パーセントは、0.01%超かつ8%未満、時には0.01%超かつ6%未満、時には0.01%超かつ3.2%未満、時には0.05%超かつ3.2%未満、時には0.1%超かつ4%未満、そして時には1%超かつ3.5%未満である。
【0024】
特定の実施形態によれば、本発明の調製物は、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルコリン(PC)、及びPSに結合した少なくとも1つの脂肪酸を含有し、ここで、当該調製物に対するPSの重量パーセントが40%超であり;当該調製物中の全リン脂質に対するPSの重量パーセントが50%超であり;当該調製物に対するPCの重量パーセントが0.01%超かつ3.2%未満であり;当該調製物中のホスファチジン酸とリゾホスファチジン酸との合計に対する当該PSの重量比が2.5:1超かつ4:1未満であり;当該調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、当該調製物中のPSに結合したEPAのパーセンテージが27%超かつ34%未満であり;当該調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、当該調製物中のPSに結合したパルミチン酸のパーセンテージが21%超かつ26%未満であり;当該調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、当該調製物中のPSに結合したDHAのパーセンテージが12%超かつ17%未満であり;当該調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、当該調製物中のPSに結合したオレイン酸のパーセンテージが5%超かつ8%未満であり;かつ、当該調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、当該調製物中のPSに結合したリノール酸のパーセンテージが1%超かつ2%未満である。
【0025】
本発明は、本発明の調製物を含む、栄養的、医薬的、又は栄養補助食品組成物、あるいは機能的又は薬用食品を提供する。一実施形態では、本発明の医薬組成物は少なくとも1つの薬学的に活性な薬剤をさらに含有する。
【0026】
本発明は、対象に、本発明に係るリン脂質調製物又は組成物のいずれかの治療上有効量を与えることを含む、コミュニケーションの改善方法を提供する。好ましくは、治療上有効量は一日用量として与えられる。場合により、当該方法はコミュニケーション障害を患っている対象のコミュニケーションの改善に関する。場合により、当該コミュニケーション障害は自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群である。時には、当該方法は 、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを有する自閉症;あるいは、言語の遅れがなく、かつ正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症を患っている対象のコミュニケーションを改善する。
【0027】
本発明はまた、コミュニケーション疾患又は障害の治療及び/又は予防方法であって、本発明に係るリン脂質調製物又は組成物のいずれかの治療上有効量を、それらを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。好ましくは、治療上有効量は一日用量として与えられる。場合により、当該方法は自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群の治療及び/又は予防に関する。時には、当該方法は、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを有する自閉症;あるいは、言語の遅れがなく、かつ正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症の治療及び/又は予防に関する。
【0028】
その態様の一つによれば、本発明は、対象のコミュニケーションの改善における使用のための本発明に係る調製物又は組成物を提供する。時には、当該対象はコミュニケーション障害を患っていてもよい。場合により、当該コミュニケーション障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群である。時には、当該対象は言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを有する自閉症;あるいは、言語の遅れがなく、かつ正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症を患っていてもよい。
【0029】
その態様の一つによれば、本発明は、本発明に係るリン脂質調製物又は組成物のいずれかの治療上有効量を、それらを必要とする対象に投与することを含む、コミュニケーション疾患又は障害の治療及び/又は予防における使用のための本発明に係る調製物又は組成物を提供する。好ましくは、治療上有効量は一日用量として与えられる。場合により、当該使用は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群の治療及び/又は予防に関する。時には、当該使用は、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを有する自閉症;あるいは、言語の遅れがなく、かつ正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症の治療及び/又は予防に関する。
【0030】
その態様の一つによれば、本発明は、対象のコミュニケーションの改善方法における使用のための本発明に係る調製物又は組成物を提供する。場合により、当該対象はコミュニケーション障害を患っている。場合により、当該コミュニケーション障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群である。時には、当該対象は、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを有する自閉症;あるいは、言語の遅れがなく、かつ正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症を患っていてもよい。
【0031】
その態様の一つによれば、本発明は、本発明に係るリン脂質調製物又は組成物のいずれかの治療上有効量を、それらを必要とする対象に投与することを含む、コミュニケーション疾患又は障害の治療及び/又は予防方法における使用のための本発明に係る調製物又は組成物を提供する。より好ましくは、治療上有効量は一日用量として与えられる。場合により、当該方法は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群の治療及び/又は予防に関する。時には、当該方法は、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを有する自閉症;あるいは、言語の遅れがなく、かつ正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症の治療及び/又は予防に関する。
【0032】
その態様の一つによれば、本発明は、場合により、コミュニケーション障害を患っている対象において、コミュニケーションを改善するための、医薬組成物、栄養補助食品、メディカルフード、栄養的及び/又は栄養補助食品(neutraceutical)組成物の製造における使用のための本発明に係る調製物又は組成物を提供する。場合により、当該コミュニケーション障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群である。時には、当該対象は、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを有する自閉症;あるいは、言語の遅れがなく、かつ正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症を患っている。
【0033】
その態様の一つによれば、本発明は、コミュニケーション疾患又は障害治療及び/又は予防のための医薬組成物、栄養補助食品、メディカルフード、栄養的及び/又は栄養補助食品(neutraceutical)組成物の製造における使用のための本発明に係る調製物又は組成物を提供する。場合により、当該方法は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、又はアスペルガー症候群の治療及び/又は予防に関する。時には、当該方法は、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを有する自閉症;あるいは、言語の遅れがなく、かつ正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症の治療及び/又は予防に関する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本明細書で使用される場合、コミュニケーション疾患又は障害の治療及び/又は予防とは、コミュニケーション疾患又は障害を有する患者のコミュニケーション能力を改善し、コミュニケーション疾患又は障害に関連する症状の重症度又は頻度を低減し、コミュニケーション疾患又は障害を治癒し、コミュニケーション疾患又は障害を有する患者の生活の質を改善し、コミュニケーション疾患又は障害を伴う合併症の重症度を軽減すること、あるいはそれらの組み合わせに関する。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、リン脂質調製物は、神経疾患、好ましくは神経発達疾患、より好ましくは、加齢に伴う認知低下又は神経変性に関連しない疾患を有する患者に投与されてもよい。本発明の別の実施形態によれば、リン脂質調製物は、少なくとも1ヶ月齢時、時には少なくとも3歳時、時には少なくとも6歳時、そして時には少なくとも13歳時に対象に投与される。場合により、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る調製物及び/又は方法は、成人におけるコミュニケーションの改善に関する。
【0036】
本発明に係る方法はまた、本発明の調製物を使用することによって、自閉症に関連する症状の頻度を減少させ、自閉症に関連する症状の重症度を軽減し、自閉症に関連する望ましくない症状を改善し、自閉症を治療すること、又はそれらの組み合わせに関する。好ましくは、当該方法は、自閉症で示されるコミュニケーション障害におけるコミュニケーションの改善に関する。時には、当該方法は、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを患う自閉症患者において;あるいは、言語の遅れがなく、正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症患者において、本発明の調製物を使用することによって、自閉症に関連する症状の頻度を減少させ、自閉症に関連する重症度を軽減し、自閉症に関連する望ましくない症状を改善し、自閉症を治療すること、又はそれらの組み合わせに関する。
【0037】
時には、当該方法は、言語の遅れ、低い知的能力、非表現的/非感情的なコミュニケーションパターン、又はそれらの組み合わせを患う自閉症患者において;あるいは、言語の遅れがなく、正常な/高いIQがあり、及び/又は表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症患者において示されるコミュニケーション障害におけるコミュニケーションの改善に関する。
【0038】
本発明の別の実施形態では、本調製物は、薬学的に許容される助剤、及び場合により他の治療剤との混合で医薬組成物として提供される。当該助剤は、当該組成物のその他の成分と適合し、かつその受容者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。
【0039】
別の実施形態によれば、医薬的又は栄養補助食品組成物は投与経路に従って選択される用量送達形態(dosage delivery form)である。
【0040】
別の実施形態によれば、本発明は、カプセル、錠剤、丸薬、グミ、流動オイル(fluid oils)、粉末、顆粒、ワックス、ペースト、水性乳剤の形態、及び標的投与に使用できるであろう任意のその他の形態で投与することができる。
【0041】
別の実施形態によれば、本明細書に記載された本発明の調製物の一日用量は、場合により、対象に、75〜600mgのPS、時には75〜450mgのPS、時には75〜300mgのPS、時には75〜225及び時には75〜150mgのPSを提供する。当該一日用量は、場合により各日で複数の用量に分割されてもよく、あるいは場合により各日で単一のボーラスとして送達されてもよい。
【0042】
別の実施形態によれば、本明細書に記載された本発明の調製物の一日用量は、場合により、対象に、20〜172mgのEPA、時には21.5〜129mgのEPA、時には21.5〜86mgのEPA及び時には21.5〜43mgのEPAを提供する。当該一日用量は、場合により各日で複数の用量に分割されてもよく、あるいは場合により各日で単一のボーラスとして送達されてもよい。
【0043】
別の実施形態によれば、本明細書に記載された本発明の調製物の一日用量は、場合により、対象に、8〜68mgのDHA、時には8〜51mgのDHA、時には8〜34mgのDHA及び時には8.5〜17mgのDHAを提供する。当該一日用量は、場合により各日で複数の用量に分割されてもよく、あるいは場合により各日で単一のボーラスとして送達されてもよい。本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る一日用量は、カプセル、錠剤、シロップ、グミ、スプレー、シリンジ、ドロッパー、チューブ・スノーティング(tube' snorting)(粉末用)、スクイーズボトル送達(squeeze bottle delivery)、噴霧鼻腔内送達(シリンジ又はポンプ駆動噴霧装置)、及びその他の既知の送達系として投与される場合、任意に1日あたり1、2、3、4、5、6、7若しくは8個の送達単位を含む。
【0044】
本発明の調製物はまた、他のリン脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びホスファチジルグリセロール(PG)を含有してもよく、これらのリン脂質に、脂肪酸アシルがリン脂質のグリセロール部分のsn−1又はsn−2位のいずれか又は両方で共有結合(結合)していることに留意すべきである。上述の極性脂質のいずれかの脂肪酸結合プロファイルは、本明細書に開示された脂肪酸結合プロファイルと同一であっても又は異なってもよい。
【0045】
用語「コミュニケーション」は、アイデア、情報、信号又はメッセージを与え、受取り、又は交換し、個人若しくはグループが説得し、情報を探求し、情報を与え、又は感情を表現することを可能にする、任意の形態として定義される。この広い定義にはボディー・ランゲージ、社会的相互作用、アイコンタクト、並びにスピーキング及びライティングのスキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
用語「コミュニケーション障害」又は「コミュニケーション困難」又は「コミュニケーション疾患」は、本明細書中で互換的に使用する。用語「コミュニケーション障害」又は「コミュニケーション困難」又は「コミュニケーション疾患」は、概念又は言語的、非言語的及び図形シンボルシステムを受信、送信、処理、及び理解する能力に影響を及ぼす障害をいう。コミュニケーション障害は部分的又は完全にコミュニケーションを損ない又は妨げ得る。コミュニケーション障害の種類についての非限定的な例は、発話、言語、聴覚処理、又は社会的語用論的コミュニケーションに関連する問題である。
【0047】
コミュニケーション障害を示し得る障害についての非限定的な例としては:神経障害(例えば、てんかん、失語症、及び脳損傷又は外傷);情緒又は精神障害(例えば、全般性不安障害、広場恐怖症、社会不安障害、恐怖症、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、及び選択性緘黙);人格障害(例えば、統合失調症及び強迫神経症);神経発達障害(例えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害(PDD)、小児期崩壊性障害、レット症候群、及び精神遅滞);並びに、発話障害が挙げられる。
【0048】
用語「コミュニケーションの改善」は、コミュニケーション障害に関連する症状の頻度を減少させ、コミュニケーション障害に関連する症状の重症度を軽減し、コミュニケーション障害に関連する望ましくない症状を改善し、疾患又は障害の重症度を軽減し、疾患又は障害を治癒し、疾患又は障害の発生を完全に防ぐこと(例えば、遺伝的及び/又は表現型的に疾患に罹患しやすい個体において)、あるいは上記のいずれかの組み合わせとして記載される。例えば、コミュニケーション障害を患っている対象において、本発明の脂質調製物の使用によって改善が期待される。
【0049】
改善、発達、又は増加について評価されるコミュニケーションの態様の非限定的な例には:言語的、非言語的、及び社会的コミュニケーションが挙げられる。例えばこれらの態様には:語彙、発音、発声、発話の流暢さ、読解レベル、聞き取りスキル、理解、会話についていく能力、交代で話す能力、会話スキル、注意スパン、アイコンタクト、表情、手のジェスチャー、身体の動き、社会的相互作用、及び社会的遊びが含まれ得る。
【0050】
本発明はまた、上述した調製物のいずれか一つを含む、栄養的、医薬的、又は栄養補助食品組成物あるいは機能的又は薬用食品(メディカルフード)を提供する。
【0051】
本明細書に記載された栄養組成物は、任意の栄養組成物とすることができ、ヒト乳脂肪代替物、乳児用調製粉乳、成人用調製粉乳(adult formula)、乳製品、粉ミルク、アイスクリーム、ビスケット、大豆製品、ベーカリー、ペストリー、ケーキ、パン、ソース、スープ、インスタント食品、調理済み食品、冷凍食品、調味料、菓子、油脂、マーガリン、スプレッド、フィリング、シリアル、インスタント製品、飲料、シェーク、乳児食、幼児食、バー、スナック、キャンディー、チョコレート製品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される用語「乳児用調製粉乳」は、乳児用調製粉乳(新生児から6ヶ月齢の乳児用)、乳幼児用調製粉乳(follow-up formulas)(6〜12ヶ月齢の幼児用)、及び成長用調製粉乳(growing up formulas)(1〜3歳児用)を包含する。
【0053】
本明細書で使用される機能性食品は、乳製品、アイスクリーム、ビスケット、大豆製品、ベーカリー、ペストリー、ケーキ、パン、ソース、スープ、インスタント食品、調理済み食品、冷凍食品、調味料、菓子、油脂、マーガリン、スプレッド、フィリング、シリアル、インスタント製品、飲料、シェーク、乳幼児食品、バー、スナック、キャンディー、及びチョコレート製品を含む、任意の機能性食品とすることができるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用される栄養補助食品組成物は、任意の栄養補助食品とすることができ、それは食品又は食品の一部とみなされ得る任意の物質であってもよく、かつ、疾患又は障害の予防及び治療を含む医療又は健康上の利益を与える。そのような栄養補助食品組成物には、食品添加物、フードサプリメント、リン脂質混合物、他の供給源からのPSまたはPC、栄養補助食品、遺伝子操作食品(例えば野菜など)、ハーブ製品、加工食品(例えば穀物、スープ及び飲料)、刺激性機能性食品、臨床栄養製品、メディカルフード、及び医薬食品、が挙げられるが、これらに限定されない。栄養補助食品は、ソフトゲルカプセル、錠剤、シロップ、グミ、キャンディー、及びその他の既知の栄養補助食品送達系の形態で送達され得る。
【0055】
本明細書で使用されるメディカルフードは、通常の食事だけでは満たされない特有の栄養的ニーズを有する疾患/障害の食事管理を対象とし、特別に処方される。
【0056】
本発明の組成物に適した投与経路は、経口、経鼻、鼻腔内、吸入、頬側、舌下投与、栄養管による投与、局所、経皮、又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与である。一実施形態では、化合物は経口投与される。
【0057】
医薬的、栄養補助食品又はメディカルフード組成物は、当該技術分野で一般に使用される多くの投薬送達形態のいずれかであってもよい。経口投与に適した医薬的、栄養補助食品又はメディカルフード組成物は、個別の投薬単位(例えば丸薬、錠剤、ペレット、糖衣錠、カプセル又はソフトゲル)として、粉末若しくは顆粒として、あるいは溶液、懸濁液、シロップ又はエリキシル剤として提示されてもよい。
【0058】
本発明はまた、本発明に係る調製物が(薬学的に)許容される助剤、及び場合により他の治療剤と混合されている、医薬組成物を提供する。当該助剤は、当該組成物のその他の成分と適合し、かつその受容者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。
【0059】
本発明の一実施形態では、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの追加の薬学的に活性な薬剤をさらに含有する。
【0060】
非経口投与のために、好適な組成物には水性及び非水性滅菌注射が挙げられる。当該組成物は、単位用量又は複数用量容器、例えば密封バイアル及びアンプルとして提示されてもよく、そして使用前に滅菌液体担体、例えば水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存されてもよい。経皮投与のために、例えばゲル、パッチ又はスプレーが想定され得る。
【0061】
当該組成物は、単位用量又は複数用量容器、例えば密封バイアル及びアンプルとして提示されてもよく、そして使用前に滅菌液体担体、例えば水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存されてもよい。
【0062】
経口投与に適した組成物は個別の投薬単位、例えば丸薬、錠剤、ペレット、糖衣錠、カプセル、粉末、顆粒、溶液、懸濁液又はエリキシル剤として提示されてもよい。
【0063】
組成物の投与の正確な用量及びレジメンは、達成されるべき治療効果に必然的に依存することになり、そして、特定の処方、投与経路、並びに組成物が投与されることになる個々の対象の年齢及び状態により異なってもよい。
【0064】
本発明の医薬的及び栄養補助食品組成物は、薬学の分野でよく知られた任意の方法によって調製されてもよい。そのような方法は、任意の助剤と成分との会合をもたらす工程を含む。補助成分(accessory ingredient)(複数)とも呼ばれる助剤(複数)は、当該技術分野で慣用されているもの、例えば担体、充填剤、結合剤、希釈剤、乾燥剤、崩壊剤、潤滑剤、着色剤、香味剤、酸化防止剤、及び湿潤剤、を含む。
【0065】
本発明の医薬的及び栄養補助食品組成物は、食用繊維、芳香、風味成分、並びに物理的及び官能特性を制御する成分をさらに含有してもよい。
【0066】
用語「グリセロリン脂質」及び「リン脂質」は、本明細書中で互換的に使用され、以下の一般式の脂質を包含すると理解されるべきである。
【0068】
式中、Xはセリン、コリン、エタノールアミン、イノシトール、グリセロール及び水素から選択される部分を表し、かつ、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、独立して水素又はアシル基を表し、ここで、当該アシル基は飽和、一価不飽和又は多価不飽和アシル基(PUFA)から選択される。本明細書で使用され、上記式に示されるsn−1及びsn−2位はグリセロール骨格上の各炭素原子を指し、ここで、R
1及びR
2は、対応する位置で置換される水素又はアシル基である。
【0069】
用語「リゾホスファチジン酸」は本明細書において、Xが水素を表し、かつ、R1又はR2のいずれか一つも水素である場合に使用される。
【0070】
本明細書に記載された用語「置換」「結合(conjugated)」、及び「結合(attached)」は、互換的に使用され、本発明のリン脂質のグリセロリン脂質骨格に共有結合した脂肪酸アシルを包含するものと理解されるべきである。上述のとおり、脂肪酸はsn−1及び/又はsn−2位に結合し得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「脂肪酸」は、飽和、あるいは、1つの不飽和結合を有する不飽和(一価不飽和脂肪酸)又は2以上の不飽和結合を有する不飽和(多価不飽和脂肪酸)のいずれかである、長い非分岐脂肪族末端(鎖)を有するカルボン酸を包含するものと理解されるべきである。「脂肪酸アシル」について言及する場合、−C(=O)−R基(式中、Rは、飽和、あるいは1つの不飽和結合を有する不飽和(一価不飽和脂肪酸)又は2以上の不飽和結合を有する不飽和(多価不飽和脂肪酸)のいずれかである、長い非分岐脂肪族末端である)を包含するものと理解されるべきである。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語ω−Χ、オメガ−X、n−X(Xは数字を表す)は、互換的に使用され、脂肪酸のカルボキシル基から最も遠い炭素原子を表すものと理解されるべきである。
【0073】
飽和脂肪酸の非限定的な例としては:酪酸(ブタン酸、C4:0)、カプロン酸(ヘキサン酸、C6:0)、カプリル酸(オクタン酸、C8:0)、カプリン酸(デカン酸、C10:0)、ラウリン酸(ドデカン酸、C12:0)、ミリスチン酸(テトラデカン酸、C14:0)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸、C16:0)、ステアリン酸(オクタデカン酸、C18:0)、アラキジン酸(エイコサン酸、C20:0)、ベヘン酸(ドコサン酸C22:0)、が挙げられる。
【0074】
不飽和脂肪酸の非限定的な例としては:ミリストレイン酸(C14:1、ω−5)、パルミトレイン酸(C16:1、ω−7)、オレイン酸(C18:1、ω−9)、リノール酸(C18:2、ω−6)、リノレン酸(C18:3)[アルファ−リノレン酸(C18:3、ω−3)、ガンマ−リノレン酸(C18:3、ω−6)]、エイコセイン酸(C20:1、ω−9)、アラキドン酸(C20:4、ω−6)、エイコサペンタエン酸(C20:5、ω−3)、エルカ酸(C22:1、ω−9)、ドコサペンタン酸(C22:5、ω−3)及びドコサヘキサエン酸(C22:6、ω−3)、ネルボン酸(C24:1、ω−9)、が挙げられる。
【0075】
用語「リン脂質に結合した[脂肪酸]」は、脂肪酸アシルがリン脂質骨格の位置sn−1及び/又は位置sn−2で(グリセロール酸素原子を介して)結合している、リン脂質を包含するものと理解されるべきである。一実施形態では、脂肪酸は位置sn−1で結合しており、かつ、位置sn−2は非置換である(例えばグリセロール酸素上に水素原子を有する)か、あるいは飽和、一価不飽和及び多価不飽和脂肪酸から選択されるアシル基で置換されており、当該アシル基は位置sn−1上の置換と同一であっても異なってもよい。別の実施形態では、脂肪酸は位置sn−2で結合しており、かつ、位置sn−1は非置換である(例えばグリセロール酸素上に水素原子を有する)か、あるいは飽和、一価不飽和及び多価不飽和脂肪酸から選択されるアシル基で置換されており、当該アシル基は位置sn−2上の置換と同一であっても異なってもよい。
【0076】
ホスファチジルセリンという用語は、しばしば文献中でセリングリセロリン脂質、ホスファチジルセリン、及びPSとも呼ばれる。
【0077】
ホスファチジルコリンという用語は、しばしば文献中でコリングリセロリン脂質、ホスファチジルコリン、及びPCとも呼ばれる。
【0078】
本発明の調製物はまた、葉酸、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ヌクレオチド、抗酸化剤などを含むが、これらに限定されない、他の化合物と共に投与され得る。
【0079】
本発明の組成物(医薬的、栄養補助食品、栄養的、メディカルフード等)又は製品(例えば機能性食品)は当該技術分野で知られている治療方法と組み合わされ得ることが理解されよう。したがって、本発明の組成物又は製品を使用するコミュニケーション障害(例えば自閉症)の治療は、場合により、コミュニケーション障害のための従来療法、例えば、これらに限定されないが、刺激薬(stimulants)、抗刺激薬(anti-stimulants)、メチルフェニデート、デキストロアンフェタミンクロニジン、グアンファシン、リスペリドン、ハロペリドール、オランザピン、チオリダジン、フルオキセチン、セルトラリン、リチウム、ロラゼパムカルバマゼピン、バルプロ酸、と組み合わされ得る。
【0080】
開示され、記載されていようが、本発明は本明細書で開示された特定の例、処理工程、及び材料に限定されず、そのような処理工程及び材料は幾分変動し得ることが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることになるので、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明する目的のためにのみ使用され、限定を意図するものではないことが理解されるべきである。
【0081】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容に特段の明示がない限り複数の指示対象を含むことに留意すべきである。
【0082】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他に必要としない限り、「含む(comprise)」という言葉、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」などの変形は、記載された整数又は工程あるいは整数又は工程の群の包含を意味し、他の整数又は工程あるいは整数又は工程の群の排除を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0083】
本明細書に記載された調製物は、場合により、酵素的、化学的又は分子生物学的方法によって調製されてもよい。簡潔には、リン脂質混合物は、例えば酵素的エステル交換/エステル化による特定の脂肪酸を有する天然リン脂質の富化のように、酵素的処理によって必要な脂肪酸(例えばEPA、パルミチン酸、DHA、オレイン酸、リノール酸)で富化され得る。当該調製物を得るための別の経路は、必要な脂肪酸に天然に富んでいるリン脂質源、例えば海洋由来のレシチン(例えばオキアミ、魚、藻類、及びイカ)又は卵のリン脂質、を得ることである。通常、その混合物中の異なるリン脂質間での要求された比率を得るために、リン脂質頭部基のセリンへの(PLD酵素を用いた)変換が、PSを得るために必要とされる。そのような方法は国際公開第2005/038037号に記載されている。あるいは、本発明の少なくともいくつかの実施形態に記載のリン脂質混合物は、GMO(遺伝子改変生物)/生物工学方法によって調製することができ、例えば、必要な脂肪酸を有するリン脂質産生生物を提供して、異なるリン脂質結合体を得る。
【0084】
本発明の別の実施形態によれば、当該調製物は好ましくは、天然、合成又は半合成源あるいはそれらの任意の組み合わせから調製される。本発明の一実施形態では、天然源は、植物(例えば大豆及び藻類など)、非哺乳動物(例えばオキアミ、魚(例えばニシン(Herring)及びアオギス(blue Whiting)など)など、又は微生物(例えば細菌など)源のいずれか一つ、あるいはそれらの任意の組み合わせに由来する。さらに別の実施形態では、当該脂質調製物の製造は酵素触媒を含む。
【実施例】
【0085】
内部標準法を用いた31P−NMR分光法によるリン脂質の定量
目的:本方法を調製物中の重量によるリン脂質含量を決定するために使用する。
【0086】
装置:自動試料交換器及びcQNPプローブヘッドを備えたBruker Avance III 600 MHz。自動試料交換器及びBBIプローブヘッドを備えたBruker Avance 300 MHz。本発明の調製物中(粉末形態)中のリン脂質の定量のために、約300mgの試験物質及び20mgの内部標準TPP(トリフェニルホスフェート)を、1.5mlのCDCl3、3mlのメタノール及び3mlの水性Cs−EDTA溶液(0.2m、pH7.5)中に溶解する。15分間の振とう後、遠心分離によって有機層を分離し、31P−NMRで測定する。試験物質及び内部標準TPP(トリフェニルホスフェート)の積分シグナルを計算に使用した。積分値の比は比較される物質のモル比に対応する。計算ソフトウェアとしてMicrosoft Excel 14.0を使用する。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
リン脂質中の脂肪酸パーセンテージの決定
目的:本方法を、前記調製物中のPSに結合した総脂肪酸含量に対する、前記調製物中のPSに結合した脂肪酸のパーセンテージを決定するために使用する。
【0091】
材料:氷酢酸A.R.、メタノールabs. A. R.、クロロホルムA. R.、アセトンA.R.、ヘキサンA. R.、トルエンA.R.、ジイソプロピルエーテルAR.、ブチルヒドロキシトルエン、Sigma Lot#W218405又は同等物、無水硫酸ナトリウム、Sigma、Lot#31481、又は同等物、ナトリウムメトキシド25%(w/w)メタノール溶液、Sigma Cat#15625−6、又は同等物、プリムリン、Sigma Cat#206865、又は同等物、GC参照標準、Nuchek Lot#566B、ホスファチジルコリン参照標準、Sigma Aldrich Lot Cat#P3556、又は同等物、ホスファチジルセリン参照標準、Sigma Aldrich Lot Cat#P5660、又は同等物、TLCプレート20X10、シリカゲル60 F254 layer MERCK 1.05715、又は同等物。
【0092】
装置:温度制御付オービタルシェーカー、分析天びん、ピペッター0.2〜1ml及び1〜5mlの範囲、容積ピペット10mlクラスA、20x10TLCプレートに適したTLCタンク、使い捨てキャピラリー5μl容積、+0.1℃の精度で温度を維持することが可能なオーブンを備えたキャピラリーカラムでの使用に適したGCシステム、FID検出器、温度制御付スプリットモード注入ユニット、GCキャピラリーカラム、G16 USP phase、長さ30m、I.D.0.25mm、フィルム0.25μm、又は同等のもの。
【0093】
試薬及び溶液の調製:
ナトリウムメトキシド溶液:54gのナトリウムメトキシド25%を500mlのメスフラスコに正確に秤量する。メタノールAbsで容量まで希釈する。密閉ガラス容器中に入れ、暗所で保管する。溶液は最大で3ヶ月間安定である。
【0094】
クロロホルム:メタノール95:5溶液:95体積のクロロホルムと5体積のメタノールを混合する。密閉ガラス容器中に入れ、暗所で保管する。溶液は最大で1年間安定である。
【0095】
展開溶液:水、メタノール、酢酸、アセトン及びクロロホルムをそれぞれ5:10:15:20:50の体積比で混合する。密閉ガラス容器中に入れ、暗所で保管する。溶液は最大で1年間安定である。
【0096】
プリムリン溶液:10mgを100mlのメスフラスコに秤量する。60mlのアセトン及び40mlの水を加える。十分に混合する。密閉ガラス容器中に入れ、暗所で保管する。溶液は最大で1年間安定である。
【0097】
抗酸化剤溶液1mg/ml:25±2mgのブチルヒドロキシトルエンを25mlのメスフラスコに秤量する。マークまでトルエンを加え、十分に混合する(本溶液は室温で3ヶ月間保存できる)。
抗酸化剤溶液0.05mg/ml:上記溶液の10mlを200mlのメスフラスコにピペッティングし、マークまでトルエンを加え、十分に混合する。50℃で最大3ヶ月間保管する(本溶液は室温で3ヶ月間保存できる)。
【0098】
PS/PC混合標準溶液:約20mgのホスファチジルセリン参照標準を2mlのメスフラスコに加え、約20mgのホスファチジルコリン参照標準を加える。参照標準を溶解するのに十分な少量のクロロホルム:メタノール溶液を加える。溶解したら、同じクロロホルム:メタノール溶液で容量を満たす。−20℃で密閉容器に入れて保管する。最大で3ヶ月間安定である。
【0099】
システム適合性溶液:100mgのGC参照標準566Bを含むアンプルを50mlのメスフラスコに空け、0.05mg/mlの抗酸化剤溶液をマークまで加える。十分に混合する。−20℃で密閉容器に入れて保管する。最大で3ヶ月間安定である。
【0100】
手順:
試料溶液の調製:500mgの試料を20mlの共栓付バイアルに正確に秤量する。10mlのクロロホルム:メタノール溶液を加え、2〜3分間激しく振とうする。
【0101】
リン脂質の精製:試験は二連で行う。非充填プレート(プレートに試料を適用していない)を展開することによってブランク決定を行う。本試料の領域に対応する領域からのシリカを採取し、上述したメチル化に続く。TLCプレート上、プレート下部の1cmに120μlの試料溶液の尚も薄いバンドを適用し、両側に3cmのマージンを残す。マージンの1つに約5μlのPS/PC混合標準溶液を、使い捨てキャピラリーを用いて滴下し適用する。45mlのジイソプロピルエーテルを20X10mmのガラスTLCチャンバーに加える。15〜20分間チャンバーを飽和させる。TLCプレートを約90mmのマークまで展開する。プレートをドラフトチャンバー中、室温大気下で、約10分間乾燥させる。先の2つの工程を同一のチャンバーを用いてもう1度繰り返す。45mlの展開溶液を20X10mmのガラスTLCチャンバーに加える。15〜20分間チャンバーを飽和させる。TLCプレートを約80mmのマークまで展開する。プレートをドラフトチャンバー中、室温気流下で約10分間乾燥させる。TLCプレートにプリムリン溶液を均一に噴霧し、室温気流下で約10分間乾燥させる。プレートを365nmのUVランプ下に置き、バンドを観察する。 PS混合参照標準のスポットを用いて対応するバンドを同定し、バンドを20mlの共栓付ガラスバイアルに掻き落とす。
【0102】
メチル化:掻き落としたシリカを含む20mlのバイアルに2mlのトルエンを加える。次いで、4mlのナトリウムメトキシド溶液を加える。50℃で15分間振とうする。 次いで、200 μlの酢酸及び4mlの精製水を加え、1分間激しく振とうする。2mlのヘキサンを加え、30秒間激しく振とうする。20mlのボトルに上方の有機層のみを移す。2mlのヘキサンを再度加え、30秒間激しく振とうする。同じ20mlのボトルに上方の有機層のみを移す。有機相を併せて、0.5グラムの硫酸ナトリウム上で乾燥させる。0.2ミクロンフィルターでろ過する。ヘキサンを約0.5mlの体積に達するまで窒素流下で蒸発させる。試料をガスクロマトグラフィーにより分析する。
【0103】
【表4】
【0104】
クロマトグラフィー注入の順序:最初にヘキサンを注入し、関連する保持時間に反応がないことを確認する。次に、システム適合性溶液を注入する。許容基準は以下の通りである:オレイン酸メチル(C18:1n9)及びメチルcis−バクシネート(vaccinate)(C:181n11)によるピーク間の分離度(R)≧1.3。
【0105】
【数1】
【0106】
式中、t1及びt2は2つの成分の保持時間であり、W1及びW2は対応するピークの半分の高さにおける幅である。
【0107】
次に、ブランクTLCプレート(TLCブランク)からの試料を注入する。TLCブランククロマトグラムにピークが観察される場合(溶媒ピークを除く)、それらは試料のクロマトグラムから差し引かれなければならない。最後に、試料を注入する。
【0108】
計算:試料中の脂肪酸成分の面積のパーセンテージを以下の式で計算する:
% FA = AreaFA/AreaTot、
ここで、AreaFAは個々の脂肪酸メチルエステルについて得られたピーク反応の面積であり、AreaTotは脂肪酸メチルエステルに対応するピークの全てのピーク面積の合計である。小数点以下2桁を示す結果を報告する。複数間の相対標準偏差は5%を超えてはならない。
【0109】
以下の実施例は、本発明の態様の実施において本発明者らによって採用された技術の代表例である。これらの技術は本発明の実施に好ましい実施形態の例示であるが、当業者は、本開示を踏まえて、本発明の趣旨及び意図された範囲から逸脱することなく、多くの改変が成され得ることを認識するであろうことを理解されたい。
【0110】
実施例:自閉症患者における本発明の調製物の効果
リン脂質組成物の調製:脂質調製物を以下のように調製した:オキアミ由来のバイオマスからの抽出処理によって生成した海洋性レシチンを有機溶媒に溶解し、L−セリン、CaCl2、ホスホリパーゼD(PLD)、及び酢酸緩衝液を含む水溶液と反応させた。trans−ホスファチジル化反応後に、PS、PC、PA、及びLPAを含む得られた混合物を、水相の除去、有機溶媒の蒸発、及びさらなる精製段階によって精製した。得られた粉末は異なるリン脂質に結合したEPA、パルミチン酸、DHA、オレイン酸、及びリノール酸を主に含んでいた。
【0111】
【表5】
【0112】
試験設計:自閉症患者に対するリン脂質組成物の効果を、自閉症と診断された2〜17歳の、19人の小児(3人の女性及び16人の男性)において評価した。全ての試験患者は、自閉症の対処のための併用薬の有無に関わらず少なくとも3ヶ月間、リン脂質組成物の1〜4カプセルの一日用量を受けた。
【0113】
電子健康記録レビューによって評価した自閉症症状に対する効果を、表2に記載する。試験患者のうち6人を、言語の遅れがなく、かつ表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する自閉症を患っていると分類した(サブクラス1)。13人を、言語発達の遅れ及び非表現的/非感情的なコミュニケーションパターンを患っていると分類した(サブクラス2)。全ての参加者がリン脂質調製物を受けた。投与量及び投与期間を表2に記載する。
【0114】
結果:一般に、表2に示されるように、試験で評価された19人の患者のうち10人が試験期間中に自閉症症状の改善を示した(例えば患者番号4:「一般的改善」、患者番号12:「改善された発話」)。興味深いことに、全ての改善は、言語の遅れを患っており、かつ非表現的/非感情的なコミュニケーションパターンを有する患者群(サブクラス2)において観察された。この群では、10人の患者(番号2、3、4、5、8、9、10、11、12、13)が、試験期間中に自閉症症状の改善を示した。言語の遅れがなくかつ表現的/感情的なコミュニケーションパターンを有する群(サブクラス1;6人の患者)においては、有意な改善は認められなかった(番号14、15、16、17、18、19)。
【0115】
改善した患者のうち、6人の患者(番号2、5、8、9、10、12)が、そのコミュニケーション能力の改善を示した:患者番号2は発話が進歩し、患者番号5はより多く話をし、患者番号8は会話によくついていき、患者番号9はその社会的遊びを改善し、患者番号10はより会話的になり、そして患者番号12はその発話を改善した。
【0116】
【表6】