特許第6787907号(P6787907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6787907機能性エラストマーを含む環式オレフィン樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787907
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】機能性エラストマーを含む環式オレフィン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 285/00 20060101AFI20201109BHJP
   C08F 4/80 20060101ALI20201109BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20201109BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20201109BHJP
   C08G 61/08 20060101ALN20201109BHJP
【FI】
   C08F285/00
   C08F4/80
   C08L51/04
   C08K5/29
   !C08G61/08
【請求項の数】19
【全頁数】89
(21)【出願番号】特願2017-542101(P2017-542101)
(86)(22)【出願日】2016年2月11日
(65)【公表番号】特表2018-510930(P2018-510930A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】US2016017449
(87)【国際公開番号】WO2016130743
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2019年1月25日
(31)【優先権主張番号】62/115,270
(32)【優先日】2015年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507021366
【氏名又は名称】マテリア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルース、クリストファー、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】トリマー、マーク、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、ジェイソン、エル.
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−500889(JP,A)
【文献】 特開2006−089654(JP,A)
【文献】 特開2014−005332(JP,A)
【文献】 特開2014−005333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F251/00−292/00
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
少なくとも1つの環式オレフィンと、
少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、
少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、
少なくとも1つの機能性エラストマーと、を含み、前記少なくとも1つの機能性エラストマーが、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである、組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの基材材料を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの環式オレフィンが、歪みのある環式オレフィン、歪んでいない環式オレフィン、ジエン、及び不飽和ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択され、前記環式オレフィンは、官能基を含有することができるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルカリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボナート、アリールカルボナート、カルボキシ、カルボキシレート、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル、ハロアルキル置換カルバモイル、アリール置換カルバモイル、チオカルバモイルアルキル置換チオカルバモイル、アリール置換チオカルバモイル、カルバミド、シアノ、シアナート、チオシアナート、ホルミル、チオホルミル、アミノ、アルキル置換アミノ、アリール置換アミノ、アルキルアミド、アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナート、アルキルスルファニル、アリールスルファニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アリールスルホニル、ボリル、ボロノ、ボロナート、ホスホノ、ホスホナート、ホスフィナート、ホスホ、ホスフィノ、又はそれらの組み合わせから選択される基で置換され得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が、式(I)の構造を有する第8族遷移金属錯体であり、
【化1】

式中、
Mは第8族遷移金属であり、
、L及びLは中性電子供与体配位子から独立して選択され、
が存在してもしなくてもよいようにnは0又は1であり、
mは0、1又は2であり、
kは0又は1であり、
及びXは、独立して、アニオン性配位子であり、
及びRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から独立して選択され、R及びRの一方又は両方は構造式-(W)−Uを有することができ、式中、Wはヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンから選択され、Uは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルで置換された正に荷電した第15族又は第16族元素であり、Vは負に荷電した対イオンであり、nは0又は1であり、
式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の2つ以上は一緒になって1つ以上の環式基を形成することができ、更に、式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の1つ以上は担持体に結合され得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、官能化ヒドロカルビル化合物、又はそれらの混合物から選択される化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、少なくとも1つのジイソシアナート化合物、トリイソシアナート化合物、ポリイソシアナート化合物、又はそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、ジイソシアナート化合物又はその混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
基材材料への樹脂組成物の接着性を改善するための方法であって、
少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーとを組み合わせて樹脂組成物を形成する工程と、
前記樹脂組成物を前記基材材料に接触させる工程と、
前記樹脂組成物を、前記環式オレフィンのオレフィンメタセシス反応を促進するのに有効な条件にさらす工程と、を含み、
前記少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである、方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの環式オレフィンが、歪みのある環式オレフィン、歪んでいない環式オレフィン、ジエン、及び不飽和ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択され、前記環式オレフィンは、官能基を含有することができるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルカリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボナート、アリールカルボナート、カルボキシ、カルボキシレート、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル、ハロアルキル置換カルバモイル、アリール置換カルバモイル、チオカルバモイルアルキル置換チオカルバモイル、アリール置換チオカルバモイル、カルバミド、シアノ、シアナート、チオシアナート、ホルミル、チオホルミル、アミノ、アルキル置換アミノ、アリール置換アミノ、アルキルアミド、アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナート、アルキルスルファニル、アリールスルファニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アリールスルホニル、ボリル、ボロノ、ボロナート、ホスホノ、ホスホナート、ホスフィナート、ホスホ、ホスフィノ、又はそれらの組み合わせから選択される基で置換され得る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が、式(I)の構造を有する第8族遷移金属錯体であり、
【化2】

式中、
Mは第8族遷移金属であり、
、L及びLは中性電子供与体配位子から独立して選択され、
が存在してもしなくてもよいようにnは0又は1であり、
mは0、1又は2であり、
kは0又は1であり、
及びXは、独立して、アニオン性配位子であり、
及びRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から独立して選択され、R及びRの一方又は両方は構造式-(W)−Uを有することができ、式中、Wはヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンから選択され、Uは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルで置換された正に荷電した第15族又は第16族元素であり、Vは負に荷電した対イオンであり、nは0又は1であり、
式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の2つ以上は一緒になって1つ以上の環式基を形成することができ、更に、式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の1つ以上は担持体に結合され得る、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、官能化ヒドロカルビル化合物、又はそれらの混合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、少なくとも1つのジイソシアナート、トリイソシアナート、ポリイソシアナート化合物、又はそれらの混合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、ジイソシアナート化合物又はその混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの基材材料と、少なくとも1つの機能性エラストマーとを含む少なくとも1つの樹脂組成物を含み、前記少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである、製品。
【請求項15】
前記少なくとも1つの環式オレフィンが、歪みのある環式オレフィン、歪んでいない環式オレフィン、ジエン、及び不飽和ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択され、前記環式オレフィンは、官能基を含有することができるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルカリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボナート、アリールカルボナート、カルボキシ、カルボキシレート、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル、ハロアルキル置換カルバモイル、アリール置換カルバモイル、チオカルバモイルアルキル置換チオカルバモイル、アリール置換チオカルバモイル、カルバミド、シアノ、シアナート、チオシアナート、ホルミル、チオホルミル、アミノ、アルキル置換アミノ、アリール置換アミノ、アルキルアミド、アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナート、アルキルスルファニル、アリールスルファニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アリールスルホニル、ボリル、ボロノ、ボロナート、ホスホノ、ホスホナート、ホスフィナート、ホスホ、ホスフィノ、又はそれらの組み合わせから選択される基で置換され得る、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
前記少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が、式(I)の構造を有する第8族遷移金属錯体であり、
【化3】

式中、
Mは第8族遷移金属であり、
、L及びLは中性電子供与体配位子から独立して選択され、
が存在してもしなくてもよいようにnは0又は1であり、
mは0、1又は2であり、
kは0又は1であり、
及びXは、独立して、アニオン性配位子であり、
及びRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から独立して選択され、R及びRの一方又は両方は構造式-(W)−Uを有することができ、Wはヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンであり、Uは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルで置換された正に荷電した第15族又は第16族元素であり、Vは負に荷電した対イオンであり、nは0又は1であり、
式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の2つ以上は一緒になって1つ以上の環式基を形成することができ、更に、式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の1つ以上は担持体に結合され得る、請求項14に記載の製品。
【請求項17】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、官能化ヒドロカルビル化合物、又はそれらの混合物から選択される、請求項14に記載の製品。
【請求項18】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、少なくとも1つのジイソシアナート、トリイソシアナート、ポリイソシアナート化合物、又はそれらの混合物から選択される、請求項14に記載の製品。
【請求項19】
前記少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物が、ジイソシアナート化合物又はその混合物である、請求項14に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/115,270号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
技術分野
本発明は、基材材料へのオレフィンメタセシス組成物の接着性を改善するため及びポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性(例えば、衝撃靱性又は衝撃強度)を改善するための方法及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、基材材料への開環メタセシス重合(ROMP)組成物の接着性を改善するため及びROMPポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性(例えば、衝撃靱性又は衝撃強度)を改善するための方法及び組成物、 並びにROMPを介したポリマー物品(例えば、ポリマー複合材物品)の製造に関する。本発明のメタセシス反応によって生成されたポリマー生成物は、広範囲の材料及び複合材用途に利用することができる。本発明は、ポリマー及び材料の化学並びに製造の分野において有用である。
【0003】
背景技術
ポリマー・マトリックス複合材は、特性の独特の組み合わせを提供し、広範囲の用途に有用である。そのような複合材は、様々な粒子状又は繊維状の充填剤又は補強材を用いて、熱硬化性又は熱可塑性のいずれかのポリマー・マトリックス材料を使用して作製することができる。一般に、ポリマー・マトリックス材料と様々な粒子状又は繊維状基材の表面との間に強い接着性を有することは有利であり、ポリマー・マトリックスへの接着性を最適化するための基材の仕上げ及び他の処理に関しては、かなりの技術がある。例えば、長繊維補強複合材の製造では、ポリマー・マトリックスと繊維補強材との接着性の改善は、材料性能の向上をもたらす。良好な接着性は、層間剥離又は他の接着破損形態によって破損が生じる可能性がある場合に特に重要である。
【0004】
それらの各々の開示が参照により本明細書に援用される米国特許第5,840,238号、同第6,310,121号、及び同第6,525,125号に記載されているように、オレフィンメタセシスプロセスによって生成されたポリマーは、複合マトリックス材料として有望である。特に有益な用途は、環式オレフィンのROMPによって生成されるポリマーである。環式オレフィン樹脂配合物の低粘度、及びROMP動力学制御能力(例えば、それらの各々の開示が参照により本明細書に援用される米国特許第4,708,969号及び同第5,939,504号)は、複合材の加工及び製造を容易にし、ROMPポリマーの耐腐食性及び高靭性は、良好な複合材耐久性をもたらす。加えて、ROMPポリマーの特定の特性、例えば、機械的強度及び剛性、熱変形温度及び耐溶剤性は、熱処理により誘導される架橋によって(例えば、参照により本明細書にその開示が援用される米国特許第4,902,560号)、又は過酸化物の添加によって化学的に(例えば、参照により本明細書にその開示が援用される米国特許第5,728,785号)、更に増強され得る。
【0005】
商業的に重要なROMP樹脂配合物は、一般に、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ノルボルネン、シクロオクタジエン(COD)、及び種々のシクロアルケンのような容易に入手可能で安価な環式オレフィンに基づいている。しかしながら、極性官能基化学に基づく従来の樹脂系(例えば、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂)とは対照的に、これらの非極性ROMP樹脂は、一般的な炭素、ガラス、又は鉱物充填剤及び補強材の比較的極性の表面に対して、固有の不十分な接着性を有する。ROMPポリマーの電気的及び機械的特性の改善のためにそのような樹脂配合物に様々なシランを添加することは、米国特許第5,840,238号、同第6,001,909号、及び同第7,339,006号に記載されており、それらの各々の開示は参照により本明細書に援用される。しかしながら、多くの広く使用されている市販のシランはROMPポリマーに最適な特性を与えず、シランが高いメタセシス活性を有する基を含む場合にのみ最大の増強が得られる(様々なメタセシス活性基の相対反応性は、J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 11360−11370に記載されている)。
【0006】
参照により本明細書にその開示が援用される国際特許出願PCT/US12/42850号に記載されているように、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物を含む接着促進剤の添加が、例えば炭素及びガラス補強材のような基材材料へのオレフィンメタセシス(例えばROMP)組成物の接着性の有益な改善をもたらすことが発見された。国際特許出願PCT/US12/42850号によると、ROMPポリマー・マトリックスの接着性を改善した少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物を含む接着促進剤の使用は、ASTM D2344にしたがった短ビーム剪断法による測定において、そのような接着促進剤を含まないROMPポリマー・マトリックスと比較して、基材材料へのROMPポリマー・マトリックスの接着性の改善をもたらした。層間剪断強度(ILSS)は、複合材中のポリマー・マトリックスと基材材料との接着性及び/又は適合性の尺度である。
【0007】
国際特許出願PCT/US12/42850号は、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物が基材材料(例えば、炭素及び/又はガラス補強材)へのROMPポリマー・マトリックスの接着性を改善するのに有効であることを実証しているが、ポリマー・マトリックスと基材との強い接着性を有すると同時に改善された衝撃特性(例えば、改善された衝撃強度又は改善された衝撃靱性)もまた有するROMPポリマー・マトリックス複合材の作製に関する問題には具体的に対処していない。
【0008】
衝撃性改良剤の使用により、ROMPポリマーの衝撃特性(例えば、衝撃靱性又は衝撃強度)を改善することができることは、当該技術分野において周知である。当該技術分野で周知の、ROMPポリマーと使用するための典型的な衝撃性改良剤としては、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックゴム、ランダムスチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−スチレントリブロックゴム、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー、 水素添加スチレン−エチレン/ブチレンコポリマー、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、エチレン−酢酸ビニル、及びニトリルゴムが挙げられる。当該技術分野において周知の具体的な衝撃性改良剤としては、ポリブタジエンDiene 55AC10(Firestone)、ポリブタジエンDiene(登録商標)55AM5(Firestone)、EPDM Royalene(登録商標)301T、EPDM Buna T9650(Bayer)、水素添加スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーKraton(登録商標)G1651H(Kraton Polymers U.S. LLC)、Polysar(登録商標)Butyl 301(Bayer)、水素添加スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーKraton G1726M、Engage(商標)8150エチレン−オクテンコポリマー(DuPont−Dow)、スチレン−ブタジエンKraton D1184、EPDM Nordel(登録商標)1070(DuPont−Dow)、ポリイソブチレンVistanex(登録商標)MML−140(Exxon)、水素添加スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーKraton G1650M、水素添加スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーKraton G1657M、及びスチレン−ブタジエンブロックコポリマーKraton D1101が挙げられる。例えば、米国特許第4,520,181号、同第4,943,621号、及び同第6,838,486号は、ROMPポリマーの衝撃特性(例えば、衝撃靭性又は衝撃強度)を改善するための衝撃性改良剤の使用を開示しており、この場合、典型的には1つ以上の衝撃性改良剤が環式オレフィン樹脂に溶解され、選択される衝撃性改良剤は重合反応を妨害しないものであるべきである。したがって、増強された衝撃特性(例えば、改善された衝撃靭性又は衝撃強度)を有するROMPポリマー・マトリックス複合材を作製する場合、衝撃性改良剤が重合反応を妨害しないことが重要であり、かつまた、ROMPポリマー・マトリックスと基材材料(例えば、ガラス及び/又はカーボン補強材)との間の接着を達成する接着促進剤の能力を衝撃性改良剤が妨害しないことも重要である。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、衝撃性改良剤としてROMPポリマーとともに使用される、当該技術分野において周知の水素添加スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーが、少なくとも2つのイソシアナート基を含む接着促進剤がROMPポリマー・マトリックスと複合材基材との間の接着性を達成する能力を妨害することがあり、それによって、重合された樹脂及び/又はポリマー・マトリックス複合材の機械的特性に悪影響を与えることを発見した。
【0010】
したがって、当該技術分野及びそれらの関連用途において達成された進歩、特にオレフィンメタセシスポリマー(例えば、ROMPポリマー)の特性における進歩にもかかわらず、ポリマー・マトリックス複合材、特にROMPポリマー・マトリックス複合材の製造を含む多くの分野において、更なる改善の必要は引き続き存在している(そのような複合材は、ポリマー・マトリックスと基材材料(例えば、炭素及び/又はガラス補強材)との間の強い接着性を有すると同時に、増強された衝撃特性(例えば、改善された衝撃強度又は衝撃靭性)もまた有する)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述の問題の1つ以上に対処することを目的とし、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と 、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒とを含む樹脂組成物における機能性エラストマーの使用に関するものであり、前記樹脂組成物を基材材料に接触させてポリマー・マトリックス複合材及び/又は重合樹脂の機械的特性の有用な改善を提供する。
【0012】
より具体的には、本発明者らは、樹脂組成物、特に、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と 、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒とを含むROMP組成物への本発明による機能性エラストマーの添加が、前記ROMP組成物を基材材料と接触させた場合に、基材材料への樹脂組成物の接着性における有用な改善を提供するとともに、ポリマー・マトリックス複合材及び/又は重合樹脂の衝撃特性(例えば、衝撃強度又は衝撃靭性)の有用な改善を提供することを発見した。
【0013】
以下に記述する本発明による機能性エラストマーは、一般に、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(例えば、Kraton FG1901G及びKraton FG1924G)からなる。
【0014】
一実施形態では、本発明は、基材材料(例えば、炭素及び/又はガラス補強材)への例えばROMP組成物のような樹脂組成物の接着性を改善するための及び例えばROMPポリマー・マトリックス複合材のようなポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性を改善するための組成物を提供し、本発明の機能性エラストマーは、少なくとも1つの環式オレフィン、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤、及び少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、環式オレフィンメタセシス触媒)と組み合わされることにより、改善された機械的特性を有する組成物を形成する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、基材材料(例えば、炭素及び/又はガラス補強材)への例えばROMP組成物のような樹脂組成物の接着性を改善するため及び例えばROMPポリマー・マトリックス複合材のようなポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性を改善するための組成物を提供し、本発明の機能性エラストマーは、少なくとも1つの環式オレフィン、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、環式オレフィンメタセシス触媒)、及び基材材料と組み合わされることにより、改善された機械的特性を有する組成物を形成する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、基材材料(例えば、炭素及び/又はガラス補強材)への例えばROMP組成物のような樹脂組成物の接着性を改善するため及び例えばROMPポリマー・マトリックス複合材のようなポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性を改善するための方法を提供し、本発明の機能性エラストマーは、少なくとも1つの環式オレフィン、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤、及び少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、環式オレフィンメタセシス触媒)と組み合わされ、それにより、改善された衝撃特性を有する樹脂組成物を形成し、この樹脂組成物を基材材料(例えば、ガラス及び/又は炭素基材材料)と接触させることにより、改善された機械的特性を有するポリマー・マトリックス複合材を形成する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、基材材料(例えば、炭素及び/又はガラス補強材)への、例えばROMP組成物のような樹脂組成物の接着性を改善するため及び例えばROMPポリマー・マトリックス複合材のようなポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性を改善するための方法を提供し、本発明の機能性エラストマーは、少なくとも1つの環式オレフィン、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、環式オレフィンメタセシス触媒)、及び基材材料と組み合わされ、それにより、改善された特性を有する樹脂基材複合材を形成する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含む組成物を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの基材材料と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含む組成物を提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、ポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性を改善するための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーとを組み合わせて樹脂組成物を形成する工程と、この樹脂組成物を基材材料と接触させる工程と、この樹脂組成物を、環式オレフィンのオレフィンメタセシス反応を促進するのに有効な条件にさらす工程とを有する(ここで、少なくとも1つの機能性エラストマーは、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである)。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、基材材料への樹脂組成物の接着性を改善するための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーとを組み合わせて樹脂組成物を形成する工程と、この樹脂組成物を基材材料と接触させる工程と、この樹脂組成物を、環式オレフィンのオレフィンメタセシス反応を促進するのに有効な条件にさらす工程とを有し、ここで、少なくとも1つの機能性エラストマーは、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、ポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性を改善するための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーとを組み合わせてROMP組成物を形成する工程と、ROMP組成物を基材材料と接触させる工程と、ROMP組成物を、環式オレフィンのオレフィンメタセシス反応を促進するのに有効な条件にさらす工程とを有する(ここで、少なくとも1つの機能性エラストマーは、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである)。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、基材材料へのROMP組成物の接着性を改善するための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーとを組み合わせてROMP組成物を形成する工程と、ROMP組成物を基材材料と接触させる工程と、ROMP組成物を、環式オレフィンのオレフィンメタセシス反応を促進するのに有効な条件にさらす工程とを有し、ここで、少なくとも1つの機能性エラストマーは、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、ポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性を改善するための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と樹脂組成物とを組み合わせてROMP組成物を形成する工程において、この樹脂組成物が少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーとを含んでいる、工程と、ROMP組成物を基材材料と接触させる工程と、ROMP組成物を環式オレフィンのオレフィンメタセシス反応を促進するのに有効な条件にさらす工程とを有し、ここで、少なくとも1つの機能性エラストマーは、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、基材材料へのROMP組成物の接着性を改善するための方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と樹脂組成物とを組み合わせてROMP組成物を形成する工程において、樹脂組成物が少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーとを含んでいる、工程と、ROMP組成物を基材材料と接触させる工程と、ROMP組成物を環式オレフィンのオレフィンメタセシス反応を促進するのに有効な条件にさらす工程とを有し、ここで、少なくとも1つの機能性エラストマーは、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの基材材料と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含む少なくとも1つの樹脂組成物を含む製品を提供する。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの基材材料と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含む少なくとも1つのROMP組成物を含む製品を提供する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含むROMP組成物を提供する。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの基材材料と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含むROMP組成物を提供する。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含む樹脂組成物を提供する。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの基材材料と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含む樹脂組成物を提供する。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、樹脂組成物と少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒とを含み、その樹脂組成物は少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含むROMP組成物を提供する。
【0033】
別の実施形態では、本発明は樹脂組成物と少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒とを含み、その樹脂組成物は少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの基材材料と、少なくとも1つの機能性エラストマーが無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーである少なくとも1つの機能性エラストマーとを含むROMP組成物を提供する。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に開示されている実施形態又は方法のいずれかによって作製された製品を提供する。
【0035】
本発明は、官能化されていても官能化されていなくてもよく、置換されていても置換されていなくてもよい環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、環式オレフィンメタセシス触媒)と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む接着促進剤と、基材材料と、本発明の機能性エラストマーとからなる樹脂組成物、例えばROMP組成物を更に目的とする。本発明の樹脂組成物は、取り扱い及び使用が容易であり、基材材料と混合されて硬化されたときに、改善された特性を有する樹脂基材複合材を形成する。これらの樹脂組成物を、樹脂組成物に基材材料を加えるのでなくむしろ基材材料と接触させて、あるいは基材材料に加えてから更に基材材料と接触させて、次いで、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と接着促進剤と機能性エラストマーと、任意選択で加えられた基材材料の存在下で、及び/又はその基材材料との接触下で、環式オレフィンのオレフィンメタセシス反応を促進するのに有効な条件にさらすこができる。
【0036】
本発明は、官能化されていても官能化されていなくてもよく、置換されていても置換されていなくてもよい環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、本発明の機能性エラストマーと、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物を含む接着促進剤と、例えばガラス基材材料又は炭素基材材料のような基材材料からなる、例えばROMP組成物などの樹脂組成物を更に目的とする。その機能性エラストマーは、樹脂組成物が基材材料の存在下でメタセシス触媒条件にさらされたときに、基材材料への接着性を改善するために及びポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性(例えば衝撃強度又は衝撃靭性)を改善するために有効な量で存在するべきである。その接着促進剤は化合物の混合物であってもよく、各化合物は少なくとも2つのイソシアナート基を含有する。その機能性エラストマーは、機能性エラストマーの混合物であってもよく、各機能性エラストマーは、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(例えば、Kraton FG1901G及びKraton FG1924G)からなる。
【0037】
本発明の機能性エラストマーの添加は、本発明の機能性エラストマーが含まれないことを除いて同じである樹脂組成物と比較して、ROMPポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性に有益な改善を提供する。更に、本発明の機能性エラストマーの添加は、本発明の機能性エラストマーが含まれないことを除いて同じである樹脂組成物と比較して、基材材料(例えば、炭素及び/又はガラス基材材料)へのオレフィンメタセシス(例えば、ROMP)組成物の接着性にも有益な改善を提供する。
【0038】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の発明を実施するための形態及び実施例に照らして当業者には明らかであろう。

開示された発明の詳細説明
用語及び定義
【0039】
別段の指示がない限り、本発明は、特定の反応物、置換基、触媒、樹脂組成物、反応条件などに限定されず、それらは様々であり得る。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定的なものとして解釈されるべきではないことも理解されたい。
【0040】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されている単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈において明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「α−オレフィン」への言及は、単一のα−オレフィン、及び2つ以上のα−オレフィンの組合せ又は混合物を含み、「置換基」への言及は、単一の置換基及び2つ以上の置換基を包含する。
【0041】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されている「例えば」、「〜のような」、「〜など」、又は「〜が含まれる/挙げられる」という用語は、一般的な主題をより明確にする例を導入する意味で用いられている。別段の指示がない限り、これらの例は本発明の理解の助けとしてのみ提供されており、いかなる限定をも意味しない。
【0042】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において多くの用語への言及がなされるが、それらは以下の意味を有するものと定義される。
【0043】
本明細書で使用されている用語「アルキル」は、必ずではないが典型的には、1〜約24個の炭素原子、好ましくは1〜約12個の炭素原子を含む、メチル、エチル、n−プロピル、 イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなどのような直鎖状、分岐状又は環式の飽和炭化水素基、並びにシクロペンチル、シクロヘキシルなどのようなシクロアルキル基を指す。同様に、必ずではないが一般に、本明細書のアルキル基は1〜約12個の炭素原子を含む。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基を指し、特定の用語「シクロアルキル」は、典型的には4〜8個、好ましくは5〜7個の炭素原子を有する環式アルキル基を指す。用語「置換アルキル」は、1つ以上の置換基で置換されたアルキルを指し、「ヘテロ原子含有アルキル」及び「ヘテロアルキル」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されたアルキルを指す。別段の指示がない限り、用語「アルキル」及び「低級アルキル」には、それぞれ、直鎖状、分岐状、環式、未置換、置換、及び/又はヘテロ原子含有アルキル及び低級アルキルが含まれる。
【0044】
本明細書で使用されている「アルキレン」という用語は、二官能性の直鎖状、分岐状又は環式アルキル基を指し、「アルキル」は上記で定義したとおりである。
【0045】
本明細書で使用されている「アルケニル」という用語は、例えばエテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、オクテニル 、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニルなどのような、少なくとも1つの二重結合を含む2〜約24個の炭素原子の直鎖状、分岐状、又は環式の炭化水素基を指す。本明細書の好ましいアルケニル基は2〜約12個の炭素原子を含む。用語「低級アルケニル」は、2〜6個の炭素原子のアルケニル基を指し、特定の用語「シクロアルケニル」は、好ましくは5〜8個の炭素原子を有する環式アルケニル基を指す。用語「置換アルケニル」は、1つ以上の置換基で置換されたアルケニルを指し、「ヘテロ原子含有アルケニル」及び「ヘテロアルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されたアルケニルを指す。別段の指示がない限り、用語「アルケニル」及び「低級アルケニル」には、それぞれ、直鎖状、分岐状、環式、未置換、置換、及び/又はヘテロ原子含有アルケニル及び低級アルケニルが含まれる。
【0046】
本明細書で使用されている「アルケニレン」という用語は、二官能性の直鎖状、分岐状又は環式のアルケニル基を指し、「アルケニル」は上記で定義したとおりである。
【0047】
本明細書で使用されている「アルキニル」という用語は、エチニル、n−プロピニルなどのような、少なくとも1つの三重結合を含む2〜約24個の炭素原子の直鎖状又は分岐状炭化水素基を指す。本明細書の好ましいアルキニル基は2〜約12個の炭素原子を含む。用語「低級アルキニル」は、2〜6個の炭素原子のアルキニル基を指す。用語「置換アルキニル」は、1つ以上の置換基で置換されたアルキニルを指し、「ヘテロ原子含有アルキニル」及び「ヘテロアルキニル」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されたアルキニルを指す。別段の指示がない限り、用語「アルキニル」及び「低級アルキニル」には、それぞれ、直鎖状、分岐状、環式、未置換、置換、及び/又はヘテロ原子含有アルキニル及び低級アルキニルが含まれる。
【0048】
本明細書で使用されている用語「アルコキシ」は、単一の末端エーテル連結を介して結合したアルキル基を指し、すなわち、「アルコキシ」基は、−O−アルキルとして表すことができ、アルキルは上記で定義したとおりである。用語「低級アルコキシ」基は、1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基を指す。類似して、「アルケニルオキシ」及び「低級アルケニルオキシ」は、それぞれ、単一の末端エーテル連結を介して結合されているアルケニル及び低級アルケニル基を指し、「アルキニルオキシ」及び「低級アルキニルオキシ」は、それぞれ、単一の末端エーテル連結を介して結合されているアルキニル及び低級アルキニル基を指す。
【0049】
本明細書で使用されている「アリール」という用語は、別段特定されない限り、いっしょに縮合されているか、直接連結されているか、又は間接的に連結されている(異なる芳香族環がメチレン又はエチレン部分のような共通基に結合している)単一の芳香族環又は複数の芳香族環を含む芳香族置換基を指す。好ましいアリール基は5〜24個の炭素原子を含み、特に好ましいアリール基は5〜14個の炭素原子を含む。例示的なアリール基は、1つの芳香族環又は2つの縮合又は連結された芳香族環を含み、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノンなどである。以下に更に詳細に説明するように、「置換アリール」は、1つ以上の置換基で置換されたアリール部分を指し、用語「ヘテロ原子含有アリール」及び「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されているアリール置換基を指す。
【0050】
本明細書で使用されている「アリールオキシ」という用語は、単一の末端エーテル連結を介して結合されているアリール基を指し、「アリール」は上記で定義した通りである。「アリールオキシ」基は、−O−アリールとして表すことができ、アリールは上記で定義したとおりである。好ましいアリールオキシ基は5〜24個の炭素原子を含み、特に好ましいアリールオキシ基は5〜14個の炭素原子を含む。アリールオキシ基の例としては、フェノキシ、o−ハロ−フェノキシ、m−ハロ−フェノキシ、p −ハロ −フェロフェノキシ、o−メトキシフェノキシ、m−メトキシフェノキシ、p−メトキシフェノキシ、2,4−ジメトキシフェノキシ 、3,4,5−トリメトキシ−フェノキシなどが挙げられる。
【0051】
用語「アルカリール」は、アルキル置換基を有するアリール基を指し、用語「アラルキル」は、アリール置換基を有するアルキル基を指し、「アリール」及び「アルキル」は上記で定義したとおりである。好ましいアルカリル基及びアラルキル基は6〜24個の炭素原子を含み、特に好ましいアルカリル基及びアラルキル基は6〜16個の炭素原子を含む。アルカリル基としては、p−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル、2,7−ジメチルナフチル、7−シクロオクチルナフチル、3−エチル−シクロペンタ−1,4−ジエンなどが挙げられる、これらに限定されない。アラルキル基の例としては、ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニル−プロピル、4−フェニル−ブチル、5−フェニル−ペンチル、4−フェニルシクロヘキシル、4−ベンジルシクロヘキシル、4−フェニルシクロヘキシルメチル、4−ベンジルシクロヘキシルメチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「アルカリルオキシ」及び「アラルキルオキシ」という用語は、式−ORの置換基を指し、式中、Rは、直前に定義したアルカリル又はアラルキルである。
【0052】
「アシル」という用語は、式−(CO)−アルキル、−(CO)−アリール、(CO)−アラルキル、−(CO)−アルカリル、−(CO)−アルケニル、又は−(CO)−アルキニルを有する置換基を指し、「アルコキシ」という用語は、−O(CO)−アルキル、 −O(CO)−アリール、−O(CO)−アラルキル、−O(CO)−アルカリル、−O(CO)−アルケニル、−O(CO)−アルキニルを有する置換基を指し、「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」、「アルカリル」、「アルケニル」、及び「アルキニル」は上記で定義されているとおりである。
【0053】
用語「環式」及び「環」は、置換されていてもいなくてもよい及び/又はヘテロ原子含有でもそうでなくてもよい、及び/又は単環式、二環式、又は多環式であり得る、脂環式基又は芳香族基を指す。用語「脂環式」は、芳香族環式部分とは対照的に、脂肪族環式部分を指す従来の意味で使用されており、単環式、二環式、又は多環式であり得る。
【0054】
用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、クロロ、ブロモ、フルオロ、又はヨード置換基を指す従来の意味で使用される。
【0055】
「ヒドロカルビル」は、1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約24個の炭素原子、最も好ましくは1〜約12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビルラジカルを指し、 アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などの、直鎖状、分岐状、環式、飽和された、及び不飽和の種が含まれる。「低級ヒドロカルビル」という用語は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子のヒドロカルビル基を意図し、「ヒドロカルビレン」という用語は、1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約24個の炭素原子、最も好ましくは1〜約12個の炭素原子を含む二価ヒドロカルビル部分を指し 、直鎖状、分岐状、環式、飽和された、及び不飽和の種が含まれる。用語「低級ヒドロカルビレン」は、1〜6個の炭素原子のヒドロカルビレン基を指す。「置換ヒドロカルビル」は、1つ以上の置換基で置換されたヒドロカルビルを指し、「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル」及び「ヘテロヒドロカルビル」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されているヒドロカルビルを指す。同様に、「置換ヒドロカルビレン」は、1つ以上の置換基で置換されたヒドロカルビレンを指し、「ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン」及び「ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されているヒドロカルビレンを指す。別段の指示がない限り、用語「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビレン」は、それぞれ、置換及び/又はヘテロ原子含有ヒドロカルビル部分及びヘテロ原子含有ヒドロカルビレン部分を含むものと解釈されるべきである。
【0056】
「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル基」における「ヘテロ原子含有」という用語は、1個以上の炭素原子が炭素以外の原子、例えば窒素、酸素、硫黄、リン、又はケイ素、典型的には窒素、酸素又は硫黄で置換されている炭化水素分子又はヒドロカルビル分子フラグメントを指す。同様に、例えば、用語「ヘテロアルキル」は、ヘテロ原子を含有するアルキル置換基を指し、用語「ヘテロ環式」は、ヘテロ原子を含有する環式置換基を指し、用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」は、それぞれ、ヘテロ原子を含有する「アリール」及び「芳香族」置換基を指す。「ヘテロ環式」基又は化合物は芳香族であっても芳香族でなくてもよく、更に、「ヘテロ環」は、「アリール」という用語に関して上述したように、単環式、二環式又は多環式であり得る。ヘテロアルキル基の例としては、アルコキシアリール、アルキルスルファニル置換アルキル、N−アルキル化アミノアルキルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール置換基の例としては、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、ピリミジニル、イミダゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリルなどが挙げられるがこれらに限定されず、ヘテロ原子含有脂環式基の例としては、ピロリジノ、モルホリノ、ピペラジノ 、ピペリジノなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
上記の定義のいくつかで示唆されているように、「置換ヒドロカルビル」、「置換アルキル」、「置換アリール」などにおける「置換」とは、ヒドロカルビル、アルキル、アリール、又は他の部分において、 炭素(又は他の)原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、1つ以上の非水素置換基で置換されていることを意味する。そのような置換基の例としては、限定するものではないが、本明細書で「Fn」と称される官能基、例えば、ハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C〜C24アルコキシ、 C〜C24 アルケニルオキシ、C〜C24アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C24アラルキルオキシ、 C〜C24 アルカリルオキシ、アシル(C〜C24 アルキルカルボニル(−CO−アルキル) 及びC〜C24 アリールカルボニル(−CO−アリール)を含む)、アシルオキシ(−O−アシル(C〜C24 アルキルカルボニルオキシ(−O−CO−アルキル) 及び C〜C24 アリールカルボニルオキシ(−O−CO−アリール)を含む)、C〜C24 アルコキシカルボニル(−(CO)−O−アルキル)、C〜C24 アリールオキシカルボニル(−(CO)−O−アリール)、ハロカルボニル(−CO)−Xで、式中 Xはハロ)、C〜C24 アルキルカルボナート(−O−(CO)−O−アルキル)、C〜C24 アリールカルボナート(−O−(CO)−O−アリール)、カルボキシ(−COOH)、カルボキシラート(COO)、カルバモイル(−(CO)−NH)、モノ−(C〜C24 アルキル)−置換 カルバモイル((CO)−NH(C〜C24 アルキル))、ジ−(C〜C24 アルキル)−置換 カルバモイル(−(CO)−N(C〜C24 アルキル))、モノ−(C〜C24 ハロアルキル)−置換 カルバモイル(−(CO)−NH(C〜C24 ハロアルキル))、ジ−(C〜C24 ハロアルキル)−置換 カルバモイル(−(CO)−N(C〜C24 ハロアルキル))、モノ−(C〜C24 アリール)−置換 カルバモイル((CO)−NH−アリール)、ジ−(C〜C24 アリール)−置換 カルバモイル(−(CO)−N(C〜C24 アリール))、ジ−N−(C〜C24 アルキル)、N−(C〜C24 アリール)−置換 カルバモイル(−(CO)−N(C〜C24 アルキル)(C〜C24 アリール)、チオカルバモイル(−(CS)−NH)、モノ−(C〜C24 アルキル)−置換チオカルバモイル(−(CS)−NH(C〜C24 アルキル))、ジ−(C〜C24 アルキル)−置換チオカルバモイル(−(CS)−N(C〜C24 アルキル))、モノ−(C〜C24 アリール)−置換 チオカルバモイル(−(CS)−NH−アリール)、ジ(C〜C24 アリール)−置換 チオカルバモイル(−(CS)−N(C〜C24 アリール))、ジ−N−(C〜C24 アルキル)、N−(C〜C24 アリール)−置換 チオカルバモイル(−(CS)−N(C〜C24 アルキル)(C〜C24 アリール)、カルバミド(−NH−(CO)−NH)、シアノ(−C≡N) 、シアナート(−O−C≡N)、チオシアナート (−S−C≡N)、イソシアナート(-N=C=O)、チオイソシアナート(-N=C=S)、ホルミル(−(CO)−H)、チオホルミル((CS)−H)、アミノ(−NH)、モノ−(C〜C24 アルキル)−置換 アミノ(−NH(C〜C24 アルキル)、ジ−(C〜C24 アルキル)−置換 アミノ(−N(C〜C24 アルキル))、モノ−(C〜C24 アリール)−置換 アミノ(−NH(C〜C24 アリール)、ジ−(C〜C24 アリール)−置換 アミノ(−N(C〜C24 アリール))、C〜C24 アルキルアミド(−NH−(CO)−アルキル)、C〜C24アリールアミド(−NH−(CO)−アリール)、イミノ(−CR=NHで、 R は、限定するものではないが、水素、C〜C24 アルキル、C〜C24 アリール、C〜C24 アルカリール、C〜C24 アラルキル等を含む)、C〜C20 アルキルイミノ(CR=N(アルキル)で、Rは、限定するものではないが、水素、C〜C24 アルキル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、C〜C24アラルキル等を含む)、アリールイミノ(−CR=N(アリール)で、 R は、限定するものではないが、水素、C〜C20 アルキル、C〜C24 アリール、C〜C24 アルカリール、C〜C24 アラルキル等を含む)、ニトロ(−NO)、ニトロソ(NO)、スルホ(−SO−OH)、スルホナート(−SO−O)、C〜C24 アルキルスルファニル(−S−アルキル;「アルキルチオ」とも呼ばれる)、C〜C24 アリールスルファニル(−S−アリール;「アリールチオ」とも呼ばれる)、C〜C24 アルキルスルフィニル(−(SO)−アルキル)、C〜C24 アリールスルフィニル(−(SO)−アリール)、C〜C24 アルキルスルホニル(SO−アルキル)、C〜C24 モノアルキルアミノスルホニル(−SO−N(H) アルキル)、C〜C24 ジアルキルアミノスルホニル(−SO−N(アルキル))、C〜C24 アリールスルホニル(−SO−アリール)、ボリール(−BH)、ボロノ(−B(OH))、ボロナート(−B(OR)で、 R は、限定するものではないが、アルキル 又は他のヒドロカルビル)、ホスホノ(−P(O)(OH))、ホスホナート(−P(O)(O)、ホスフィナート(P(O)(O))、ホスホ(−PO)、及び ホスフィノ(−PH);及び ヒドロカルビル部分のC〜C24 アルキル(好ましくはC〜C12 アルキル、より好ましくはC〜C アルキル)、C〜C24 アルケニル(好ましくは C〜C12 アルケニル、より好ましくは C〜C アルケニル)、 C〜C24 アルキニル(好ましくは C〜C12 アルキニル、より好ましくは C〜C アルキニル)、C〜C24 アリール(好ましくは C〜C14 アリール)、C〜C24 アルカリール(好ましくは C〜C16 アルカリール)、及びC〜C24 アラルキル(好ましくは C〜C16 アラルキル)などが挙げられる。
【0058】
「官能化ヒドロカルビル」、「官能化アルキル」、「官能化オレフィン」、「官能化環式オレフィン」などにおける「官能化」とは、ヒドロカルビル、アルキル、オレフィン、環式オレフィン又は他の部分における、 炭素(又は他の)原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、上記で説明したような1つ以上の官能基で置換されていることを意味する。「官能基」という用語は、本明細書に記載の用途に適した任意の官能性種を含むことを意味する。特に、本明細書中で使用される場合、官能基は、基材表面上の対応する官能基と反応するか又は結合する能力を有する必要があるであろう。
【0059】
加えて、前記官能基は、特定の基が許容する場合には、1つ以上の追加の官能基又は1つ以上の上記のような特定のヒドロカルビル部分で更に置換され得る。同様に、前記ヒドロカルビル部分は、上述したように1つ以上の官能基又は追加のヒドロカルビル部分で更に置換され得る。
【0060】
「任意選択による(optional)」又は「所望により(optionally)」は、その後に記述されている状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、したがって、その記述には、状況が起こる場合及び起こらない場合が含まれる。例えば、「所望により置換された」という語句は、非水素置換基が所与の原子上に存在しても存在しなくてもよいことを意味し、したがって、その記述には、非水素置換基が存在する構造及び非水素置換基が存在しない構造が含まれる。
【0061】
本明細書で使用されている「基材材料」という用語は、一般に、本発明の樹脂組成物を樹脂に接触させる、適用する、又は基板材料を樹脂に組み入れることができる任意の材料を意味する。限定するものではないが、そのような材料としては、フィラメント、繊維、ロービング、マット、織物、繊維織物、編物、布又は他の周知の構造物、ガラス繊維及びガラス繊維織物、炭素繊維及び炭素繊維織物、アラミド繊維及びアラミド繊維織物、 他のポリマー繊維及びポリマー繊維織物のような補強材料が挙げられる。他の適した基材材料としては、金属密度調節剤、ミクロスフェアのような微粒子密度調節剤、及びガラス又はセラミックビーズのようなマクロ粒子密度調節剤が挙げられる。

機能性エラストマー
【0062】
本明細書に開示される本発明の機能性エラストマーは、一般に、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(水素化SEBS−g−MA)である。本発明による無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーは、好ましくは0.1〜10重量%のグラフト無水マレイン酸を含み、より好ましくは0.3〜7重量%のグラフト無水マレイン酸を含み、更により好ましくは0.5〜5重量%の無水マレイン酸を含む。本発明による無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマーは、好ましくは10〜60%のポリスチレン含量を有し、より好ましくは10〜50%のポリスチレン含量を有し、更により好ましくは10〜40%のポリスチレン含量を有する。好ましい機能性エラストマーは、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(Kraton FG1901G)及び無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(Kraton FG1924G)である。製造元であるKraton Performance Polymersから入手できるデータシート及び製品パンフレット、並びにこの製造元のウェブサイト(www.kraton.com)に記載されている情報によれば、Kraton FG1901Gは、中間ブロック上にグラフトされた1.4〜2.0重量%の無水マレイン酸を含有するポリスチレン含量30%を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンの水素化された中間ブロックを有する直鎖状スチレントリブロックコポリマーであり、Kraton FG1924Gは、 中間ブロック上にグラフトされた0.7〜1.3重量%の無水マレイン酸を含有するポリスチレン含量13%を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンの水素化された中間ブロックを有する直鎖状スチレントリブロックコポリマーである。Kraton FG1901G及びKraton FG1924Gの製造元のデータシート及び製品パンフレットによると、グレード命名法において「G」はKraton G水素化スチレンブロックコポリマーを示し、「FG」は官能化されたKraton Gを示す。オレフィン複合材の機械的特性を改善する任意の濃度の本発明の機能性エラストマーが本発明のために十分である。一般に、機能性エラストマーの好適な量は0.001〜10phr、特定すると0.05〜10phr、より特定すると0.1〜10phr、更に特定すると0.5〜4.0phrの範囲である。
接着促進剤
【0063】
本明細書に開示される、本発明に使用され得る接着促進剤は、一般に、少なくとも2つのイソシアナート基(例えば、メチレンジフェニルジイソシアナートとヘキサメチレンジイソシアナートなど)を含有する化合物である。接着促進剤は、ジイソシアナート、トリイソシアナート、又はポリイソシアナート(すなわち、4つ以上のイソシアナート基を含む)であり得る。接着促進剤は、少なくとも1つのジイソシアナート、トリイソシアナート、又はポリイソシアナートの混合物であり得る。本発明のより特定の態様において、接着促進剤は、ジイソシアナート化合物又はジイソシアナート化合物の混合物を含む、又はそれらに限定される。
【0064】
一般に、本発明に使用し得る接着促進剤は少なくとも2つのイソシアナート基を有する任意の化合物であり得る。適した接着促進剤としては、限定するものではないが、少なくとも2つのイソシアナート基を含むイソシアナート化合物が挙げられ、それらの化合物は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能化ヒドロカルビル化合物選択される。上記のように、適したヒドロカルビル接着促進化合物としては、一般に、アルキル、シクロアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、アルカリル、及びアラルキル化合物が挙げられる。置換ヘテロ原子含有及び官能化ヒドロカルビル接着促進化合物としては、上記のヒドロカルビル化合物、並びに上記のそれらのバリエーションが含まれる。
【0065】
本発明に使用し得る接着促進剤は、アルキルジイソシアナートであり得る。アルキルジイソシアナートとは、直鎖状、分岐状、又は環式の、飽和又は不飽和の炭化水素基を指し、必ずではないが典型的には1〜約24個の炭素原子を含み、好ましくは2〜12個の炭素原子を含有するジイソシアナートであり、より好ましくは6〜12個の炭素原子を含むジイソシアナートであり、例えばヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、オクタメチレンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナートなどである。シクロアルキルジイソシアナートは、典型的には4〜16個の炭素原子を有する環式アルキル基を含む。炭素数6〜約12の好ましいシクロアルキルジイソシアナートは、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロデシルなどである。より好ましいシクロアルキルジイソシアナートは、5−イソシアナート−1−(イソシアナートメチル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサンと呼ばれる、一般にイソホロンジイソシアナート(IPDI)として知られるアセトンの縮合生成物として、及びイソシアナート−[(イソシアナートシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)の異性体として生じる。H12MDIは、アリールジイソシアナートメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)の水素化形態から派生する。
【0066】
本発明に使用し得る接着促進剤は、アリールジイソシアナートであり得る。アリールジイソシアナートとは、いっしょに縮合されているか、直接連結されているか、又は間接的に連結されている(異なる芳香族環がメチレン又はエチレン部分のような共通基に結合している)単一の芳香族環又は複数の芳香族環を含む芳香族ジイソシアナートを指す。好ましいアリールジイソシアナートは、5〜24個の炭素原子を含み、特に好ましいアリールジイソシアナートは5〜14個の炭素原子を含む。例示的なアリールジイソシアナートは、1つの芳香族環又は2つの縮合又は連結されている芳香族環を含み、例えばフェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノンなどである。好ましい芳香族ジイソシアナートとしては、トルエンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート(TMXDI)、及びメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)が挙げられ、3種の異性体(2.2’−MDI、2,4’−MDI、4,4’−MDI)の任意の混合物を含み得る。
【0067】
本発明に使用し得る接着促進剤は、例えばジイソシアナートのようなポリマー含有イソシアナートであり得る。ポリマー含有イソシアナートとは、ポリマーを含有する2つ以上の末端及び/又はペンダントアルキルイソシアナート基又はアリールイソシアナート基を指す。ポリマー含有イソシアナートは、一般に、改善された機械的特性を提供するために樹脂での最低限の溶解性を有さなくてはならない。好ましいポリマー含有イソシアナートとしては、限定するものではないが、PM200(ポリMDI)、Lupranate(登録商標)(BASFのポリMDI)、例えばKrasol(登録商標)LBD2000(TDI系)、Krasol(登録商標)LBD3000(TDI系)、Krasol(登録商標)NN−22(MDI系)、 Krasol(登録商標)NN−23(MDI系)、Krasol(登録商標)NN−25(MDI系)などのような、Krasol(登録商標)のイソシアナート末端ポリブタジエンプレポリマーが挙げられる。Krasol(登録商標)のイソシアナート末端ポリブタジエンプレポリマーはCray Valleyから入手可能である。
【0068】
本発明に使用し得る接着促進剤は、アルキルジイソシアナート及びアリールジイソシアナートの三量体であってもよい。その最も単純な形態では、ポリイソシアナート化合物の任意の組合せを三量化して、イソシアナート官能基を含むイソシアヌレート環を形成することができる。アルキルジイソシアナート及びアリールジイソシアナートの三量体は、アルキルジイソシアナート又はアリールジイソシアナートのイソシアヌレートとも呼ばれる場合がある。好ましいアルキルジイソシアナート三量体及びアリールジイソシアナート三量体としては、限定するものではないが、ヘキサメチレンジイソシアナート三量体(HDIt)、イソホロンジイソシアナート三量体、トルエンジイソシアナート三量体、テトラメチルキシレンジイソシアナート三量体、メチレンジフェニルジイソシアナート三量体などが挙げられる。より好ましい接着促進剤は、トルエンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート(TMXDI)、及びメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)であり、その3つの異性体である2.2’−MDI、2,4’−MDI、4,4’−MDIの任意の混合物、液体MDI、固体MDI、ヘキサメチレンジイソシアナート三量体(HDIt)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12MDI)、高分子MDI(PM200)、MDIプレポリマー(Lupranate(登録商標)5080)、液体カルボジイミド変性4,4’−MDI(Lupranate(登録商標)MM103)、液体MDI(Lupranate(登録商標)MI)、液体MDI(Mondur(登録商標)ML)、及び液体MDI(Mondur(登録商標)MLQ)が挙げられる。更により好ましい接着促進剤は、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)であり、その3つの異性体である2,2’−MDI、2,4’−MDI、4,4’−MDIの任意の混合物、液体MDI、固体MDI、ヘキサメチレンジイソシアナート三量体(HDIt)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12MDI)、高分子MDI(PM200)、MDIプレポリマー(Lupranate(登録商標)5080)、液体カルボジイミド変性4,4’−MDI(Lupranate(登録商標)MM103)、液体MDI(Lupranate(登録商標)MI)、液体MDI(Mondur(登録商標)ML)、液体MDI(Mondur(登録商標)MLQ)が挙げられる。
【0069】
オレフィン複合材の機械的特性を改善する任意の濃度の接着促進剤が本発明にとって十分である。一般に、接着促進剤の好適な量は0.001〜50phr、特定すると0.05〜10phr、より特定すると0.1〜10phr、更により特定すると0.5〜4.0phrの範囲である。

基材表面
【0070】
本発明は、一般に、本発明の機能性エラストマーが含まれないことを除いて同じである樹脂組成物と比較して本発明の機能性エラストマーの添加が基材材料への樹脂(例えばROMP)組成物の接着性に有益な改善をもたらす任意の基材材料との使用に適している 。更に、本発明は、一般に、本発明の機能性エラストマーが含まれないことを除いて同じであるポリマー・マトリックス複合材と比較して本発明の機能性エラストマーの添加がポリマー・マトリックス複合材(例えばROMPポリマー・マトリックス複合材)の衝撃特性に有益な改善をもたらす任意の基材材料との使用に適している。本発明は、仕上げ又はサイジングを含むものを含むエポキシ樹脂及びメタクリレート樹脂と共に使用するのに適したガラス及び炭素材料表面と共に使用するのに特に有益であり、この場合、本発明の機能性エラストマーの有効性のために仕上げ又はサイジングを(例えば、洗浄又は加熱洗浄によって)除去する必要はない。本発明はまた、木材及びアルミニウム材料との使用にも適している。適した基材材料はまた、繊維、織物、微粒子、セラミック、金属、ポリマー、及び半導体材料からも選択され得る。ポリマー・マトリックス複合材(例えば、ROMPポリマー・マトリックス複合材)は、1つの基材材料又は異なる基材材料の混合物で構成することができる。

環式オレフィン
【0071】
本明細書に開示される本発明とともに使用することができる樹脂組成物は、1つ以上の環式オレフィンを含む。一般に、本明細書に開示されるメタセシス反応に適した任意の環式オレフィンを使用することができる。そのような環式オレフィンは、所望により置換された又は所望によりヘテロ原子含有である、モノ不飽和若しくはジ不飽和若しくはポリ不飽和であるC〜C24の炭化水素であり得、それはモノ−、ジ−、又はポリ−環式であり得る。環式オレフィンは、その環式オレフィンが個々に又はROMP環式オレフィン組成物の一部としてROMP反応に参加することができるものであるならば、一般に、歪んだ又は歪んでいない環式オレフィンであり得る。シクロヘキセンなどの特定の歪んでいない環式オレフィンは、それ自体ではROMP反応に至らないと一般に理解されているが、そのような歪んでいない環式オレフィンは適切な状況下ではROMP活性であり得る。例えば、ROMP組成物中のコモノマーとして存在する場合、歪んでいない環式オレフィンはROMP活性であり得る。したがって、本明細書中で使用されているように、また当業者によって理解されるように、「歪んでいない環式オレフィン」という用語は、その環式オレフィンがROMP活性である場合に任意の条件下で又は任意のROMP組成物においてROMP反応に至ることができる歪んでいない環式オレフィンを指すことを意図する。
【0072】
一般に、環式オレフィンは式(A)の構造式によって表され、
【化1】

式中、J、RA1及びRA2は以下のとおりであり、
A1はRA2 は、水素、ヒドロカルビル(例えば、C〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C30アラルキル、又はC〜C30アルカリル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C30アラルキル、又はC〜C30アルカリル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C〜C20ヘテロアルキル、C〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C〜C30 アラルキル、又はヘテロ原子含有C〜C30アルカリル)、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20ヘテロアルキル、C〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C〜C30アラルキル、又はヘテロ原子含有C〜C30アルカリル)、及び、置換ヒドロカルビル又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルの場合は、置換基がホスホナート、ホスホリル、ホスファニル、ホスフィノ、スルホナート、ホスホノエートC〜C20アルキルスルファニル、C〜C20アリールスルファニル 、C〜C20 アルキルスルホニル、C〜C20アリールスルホニル、C〜C20アルキルスルフィニル、C〜C20 アリールスルフィニル、スルホンアミド、アミノ、アミド、イミノ、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシル、C〜C20アルコキシ、C〜C20アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20 アリールオキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、メルカプト、ホルミル、C〜C20チオエステル、シアノ、シアナート、チオシアナート、イソシアナート、チオイソシアナート、カルバモイル、エポキシ、スチレニル、シリル、シリルオキシ、シラニル、シロキサザニル、ボロナート、ボリル、又は水素などの官能基(「Fn」)であるもの、又は金属含有又はメタロイド含有基(その金属は、例えば、Sn又はGeであり得る)であるもの、からなる群から独立して選択される。RA1及びRA2自体は、前記の基の1つであり得、構造中に示されたオレフィン炭素原子にそのFn部分が直接結合する。しかしながら、後者の場合一般にその官能基は例えば酸素、硫黄、窒素、又はリン原子などの1つ以上の孤立電子対を含有するヘテロ原子を介して、あるいはGe、Sn、As、Sb、Se、Teのような電子の豊富な金属又はメタロイドを介して、オレフィン炭素に直接結合されない。そのような官能基では、通常、介在連結基としてZが存在し、したがって、RA1及び/又はRA2は構造式−(Z−Fnを有し、式中、nは1、Fnは官能基、Zはアルキレン、置換アルキレン、ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルケン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン又は置換ヘテロアリーレン連結のようなヒドロカルビレン連結基である。
Jは置換又は未置換ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン連結基であり、Jが置換ヒドロカルビレン又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンのとき、置換基は1つ以上の−(Z−Fn基を含むことができ、式中、nはゼロ又は1、Zは前に定義したとおりである。加えて、J内の環炭素(又は他の)原子に結合している2つ以上の置換基は、連結して二環式又は多環式オレフィンを形成することができる。Jは、一般に、単環式オレフィンについては約5〜14個の環原子、典型的には5〜8個の環原子を含有し、二環式及び多環式オレフィンについては、各環は一般に4〜8個、典型的には5〜7個の環原子を含有する。
【0073】
構造式(A)に包含されるモノ−不飽和環式オレフィンは、構造式(B)によって表すことができ、
【化2】

式中、bは、必ずではないが一般に1〜10の範囲、典型的には1〜5の範囲の整数であり、
A1及びRA2は構造式(A)について上記で定義したとおりであり、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5及びRB6 は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び−(Z−Fnであって、式中、n、Z及びFnは上記で定義したとおりであり、RB1〜 RB6部分のいずれかが置換ヒドロカルビル又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルの場合、それらの置換基は1つ以上の−(Z−Fn基を含み得る。したがって、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5及びRB6は、例えば、水素、ヒドロキシル、C〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C20アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20 アリールオキシカルボニル、アミノ、アミド、ニトロなどであり得る。
更に、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5及びRB6 部分のいずれかは、4〜30個の環炭素原子を含有する置換若しくは未置換脂環式基、又は6〜18個の環炭素原子を含有する置換若しくは未置換アリール基、又はそれらの組み合わせをもたらすように、他のRB1、RB2、RB3、RB4、RB5及びRB6 部分のいずれかに連結され得、その連結はヘテロ原子又は官能基を含むことができ、例えば、その連結は、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又は無水物部分を含むことができるが、これらに限定されない。脂環式基は、単環式、二環式、又は多環式であり得る。不飽和の場合、環式基は一価不飽和又は多価不飽和を含むことができ、そのうち一価不飽和の環式基が好ましい。置換される場合、環は一置換又は多置換を含有し、それらの置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、−(Z−Fn(式中、nはゼロ又は1、Z及びFnは上記で定義したとおり)、及び上記の官能基(Fn)から独立して選択される。
【0074】
構造式(B)に包含される一価不飽和単環式オレフィンの例としては、限定するものではないが、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセン、トリシクロデセン、テトラシクロデセン、オクタシクロデセン、及びシクロエイコセン、並びにそれらの置換型、例えば、1−メチルシクロペンテン、1−エチルシクロペンテン、1−イソプロピルシクロヘキサン、1−クロロペンテン、1−フルオロシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、4−メトキシ‐シクロペンテン、4−エトキシ‐シクロペンテン、シクロペンタ−3−エン‐チオール、シクロペンタ−3−エン、4−メチルスルファニル−シクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロオクテン、1,5−ジメチルシクロオクテンなどが挙げられる。
【0075】
構造式(A)に包含される単環式ジエン反応物は、一般に、構造式(C)によって表すことができ、
【化3】

式中、c及びdは、独立して、(反応物がシクロオクタジエンとなるように)1〜約8の範囲、典型的には2〜4の範囲、好ましくは2の整数であり、RA1及びRA2は構造式(A)について上記に定義したとおりであり、RC1、RC2、RC3、RC4、RC5、及びRC6はRB1〜RB6について定義したとおりである。この場合、RC3及びRC4は非水素置換基であることが好ましく、この場合、第2のオレフィン部分は四置換されている。単環式ジエン反応物の例としては、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、5−エチル−1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、 1,3−シクロオクタジエン、及びそれらの置換された類似体が含まれる。トリエン反応体は、ジエン構造(C)に類似しており、一般に、任意の2つのオレフィンセグメントの間に少なくとも1つのメチレン連結を含む。
【0076】
構造式(A)に包含される二環式及び多環式オレフィンは、一般に、構造式(D)によって表すことができ、
【化4】

式中、RA1及びRA2は構造式(A)について上記で定義したとおりであり、RD1、RD2、RD3、及びRD4 はRB1〜RB6について定義したとおりであり、eは1〜8(典型的には2〜4)の範囲の整数であり、fは一般に1又は2であり、Tは低級アルキレン又はアルケニレン(一般に置換又は未置換メチル又はエチル)、CHRG1、C(RG1、O、S、N−RG1、P−RG1、O=P−RG1、Si(RG1、B−RG1、又はAs−RG1であり、RG1はアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルカリール、アラルキル又はアルコキシである。更に、 RD1、RD2、RD3、及びRD4部分のいずれかは、4〜30個の環炭素原子を含有する置換又は未置換脂環式基又は6〜18個の環炭素原子を含む置換若しくは未置換アリール基、又はそれらの組み合わせをもたらすように他のRD1、RD2、RD3、及びRD4 部分に連結され得、その連結はヘテロ原子又は官能基を含むことができ、例えば、その連結は、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又は無水物部分を含むことができるが、これらに限定されない。環式基は、単環式、二環式、又は多環式であり得る。不飽和の場合、環式基は一価不飽和又は多価不飽和を含むことができ、そのうち一価不飽和の環式基が好ましい。置換される場合、環は一置換又は多置換を含有し、それらの置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、−(Z−Fn(式中、nはゼロ又は1、Z及びFnは上記で定義したとおり)、及び上記の官能基(Fn)から独立して選択される。
【0077】
構造式(D)によって包含される環式オレフィンは、ノルボルネン族に属する。本明細書で使用するとき、限定するものではないが、ノルボルネンとは、ノルボルネン、置換ノルボルネン、ノルボルナジエン、置換ノルボルナジエン、多環ノルボルネン、及び置換多環ノルボルネンを含む少なくとも1つのノルボルネン又は置換ノルボルネン部分を含む任意の化合物を意味する。この群に属するノルボルネンは、一般に構造式(E)によって表され、
【化5】

式中、RA1及びRA2は構造式(A)について上記に定義したとおりであり、Tは構造式(D)について上記に定義したとおりであり、RE1、RE2、RE3、RE4、RE5、RE6、RE7、及びRE8はRB1〜RB6について定義したとおりであり、「a」は単結合又は二重結合を表し、「f」は一般に1又は2であり、「g」は0〜5の整数であり、「a」が二重結合であるとき、RE5、RE6 のうちの1つ及びRE7、RE8のうちの1つは存在しない。
【0078】
更に、RE5、RE6、RE7、及びRE8部分のいずれかは、4〜30個の環炭素原子を含む置換又は未置換脂環式基、又は6〜18個の環炭素原子を含む置換若しくは未置換アリール基、又はそれらの組み合わせをもたらすように、他のRE5、RE6、RE7、及びRE8部分に連結され得、その連結はヘテロ原子又は官能基を含むことができ、例えば、その連結は、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、又は無水物部分を含むことができるが、これらに限定されない。環式基は、単環式、二環式、又は多環式であり得る。不飽和の場合、環式基は一価不飽和又は多価不飽和を含むことができ、そのうち一価不飽和の環式基が好ましい。置換される場合、環は一置換又は多置換を含有し、それらの置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、−(Z−Fn(式中、nはゼロ又は1、Z及びFnは上記で定義したとおり)、及び上記の官能基(Fn)から独立して選択される。
【0079】
少なくとも1つのノルボルネン部分を有する、より好ましい環式オレフィンは、構造式(F)を有し、
【化6】

式中、RF1、RF2、RF3、及びRF4はRB1〜RB6について定義したとおりであり、「a」は単結合又は二重結合を表し、「g」は0〜5の整数であり、「a」が二重結合であるとき、RF1、RF2のうちの1つ及びRF3、RF4のうちの1つは存在しない。
【0080】
更に、 RF1、RF2、RF3、及びRF4部分のいずれかは、4〜30個の環炭素原子を含む置換又は未置換脂環式基、又は6〜18個の環炭素原子を含む置換若しくは未置換アリール基、又はそれらの組み合わせをもたらすように他の RF1、RF2、RF3、及びRF4部分に連結され得、その連結はヘテロ原子又は官能基を含むことができ、例えば、その連結は、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、又は無水物部分を含むことができるが、これらに限定されない。脂環式基は、単環式、二環式、又は多環式であり得る。不飽和の場合、環式基は一価不飽和又は多価不飽和を含むことができ、そのうち一価不飽和の環式基が好ましい。置換される場合、環は一置換又は多置換を含み、それらの置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、−(Z−Fn(式中、nはゼロ又は1、Z及びFnは上記で定義したとおり)、及び上記の官能基(Fn)から独立して選択される。
【0081】
ヒドロカルビル置換及び官能基置換されたノルボルネンの調製のための1つの経路は、シクロペンタジエン又は置換シクロペンタジエンを高温で適したジエノフィルと反応させて、以下の反応スキーム1によって一般に示される置換ノルボルネン付加物を形成するディールス−アルダー付加環化反応を用いる。
【化7】

式中、RF1〜RF4は構造式(F)について上記で定義したとおりである。
【0082】
他のノルボルネン付加物は、適したジエノフィルの存在下でのジシクロペンタジエンの熱分解によって製造することができる。反応は、ジシクロペンタジエンのシクロペンタジエンへの初期熱分解によって始まり、続いてシクロペンタジエンとジエノフィルのディールス−アルダー付加環化によって、以下のスキーム2に示す付加物を与える。
【化8】

式中、「g」は0〜5の整数であり、RF1〜RF4は構造式(F)について上記で定義したとおりである。
【0083】
同様に、ノルボルナジエン及びそのより高次のディールス−アルダー付加物は、以下のスキーム3に示すように、アセチレン反応物の存在下でのシクロペンタジエンとジシクロペンタジエンとの熱反応によっても調製し得る。
【化9】

式中、「g」は0〜5の整数であり、RF1〜RF4は構造式(F)について上記で定義したとおりである。
【0084】
したがって、二環式及び多環式オレフィンの例としては、限定するものではないが、ジシクロペンタジエン(DCPD)、シクロペンタジエンの三量体及び他のより高次のオリゴマーが挙げられ、限定するものではないが、トリシクロペンタジエン(シクロペンタジエントリマー)、シクロペンタジエンテトラマー、シクロペンタジエンペンタマー、エチリデンノルボルネン、ジシクロヘキサジエン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−イソブチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、5−アセチルノルボルネン、5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニル−1−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシ−カルボニルノルボルネン、5−シアノノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン、シクロヘキセニルノルボルネン、エンド, エキソ−5,6−ジメトキシノルボルネン、エンド−5,6−ジメトキシノルボルネン、エンド, エキソ−5,6−ジメトキシカルボニルノルボルネン、エンド, エンド−5,6−ジメトキシカルボニルノルボルネン、2,3−ジメトキシノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロアルケン、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−テトラシクロドデセン、8−シアノテトラシクロドデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセンなど、及びそれらの構造異性体、立体異性体、並びにそれらの混合物が含まれる。二環式及び多環式オレフィンの更なる例としては、限定するものではないが、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−ドデシル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−ブテニル−2−ノルボルネンなどのようなC〜C12ヒドロカルビル置換ノルボルネンが挙げられる。
【0085】
好ましい環式オレフィンとしては、C〜C24不飽和炭化水素が挙げられる。また、O、N、S又はPのような1つ又は複数(典型的には2〜12個)のヘテロ原子を含むC〜C24の環式炭化水素も好ましい。例えば、クラウンエーテル環式オレフィンは、環の全体を通じて数多くのOヘテロ原子を含むことができ、これらは本発明の範囲内である。更に、好ましい環式オレフィンは、1つ以上(典型的には2つ又は3つ)のオレフィンを含むC〜C24の炭化水素である。例えば、環式オレフィンは、一、二、又は三不飽和であり得る。環式オレフィンの例としては、シクロオクテン、シクロドデセン、及び(c,t,t)−1,5,9−シクロドデカトリエンが含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
環式オレフィンはまた、複数の(典型的には2つ又は3つの)環を含んでもよい。例えば、環式オレフィンは、一、二、又は三環式であり得る。環式オレフィンが2つ以上の環を含む場合、環は縮合していても縮合していなくてもよい。複数の環を含む環式オレフィンの好ましい例としては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。
【0087】
環式オレフィンはまた、例えば、1つ以上の(典型的には2、3、4、又は5つの)水素が非水素置換基で置換されているC〜C24環式炭化水素で置換されていてもよい。適した非水素置換基は、上記の置換基から選択することができる。例えば、官能化環式オレフィン、すなわち1つ以上(典型的には2、3、4、又は5つ)の水素が官能基で置換されているC〜C24環式炭化水素は、本発明の範囲内である。適した官能基は、上記の官能基から選択することができる。例えば、アルコール基で官能化された環式オレフィンを使用して、ペンダントアルコール基を含むテレケリックポリマーを調製することができる。官能基がメタセシス触媒を妨害する場合、環式オレフィン上の官能基を保護することができ、当該技術分野で一般に使用される保護基のいずれかを使用することができる。許容可能な保護基は、例えば、 Greeneらの『Protective Groups in Organic Synthesis、3rd Ed.』(New York:Wiley, 1999)に見いだされる。官能化環式オレフィンの例としては、限定するものではないが、2−ヒドロキシメチル−5−ノルボルネン、2−[(2−ヒドロキシエチル)カルボキシレート] −5−ノルボルネン、シデカノール、5−n−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−n−ブチル−2−ノルボルネンが挙げられる。
【0088】
上記の特徴(すなわち、ヘテロ原子、置換基、複数のオレフィン、複数の環)の任意の組み合わせが組み込まれた環式オレフィンは、本明細書に開示される方法に適している。更に、上記の特徴(すなわち、ヘテロ原子、置換基、複数のオレフィン、複数の環)の任意の組み合わせが組み込まれた環式オレフィンは、本明細書に開示される発明に適している。
【0089】
本明細書に開示される方法に有用な環式オレフィンは、歪んでいても歪んでいなくてもよい。環の歪みの量は、それぞれの環式オレフィン化合物ごとに異なり、環の大きさ、置換基の存在及び同一性、及び複数の環の存在を含む多くの因子に依存することが理解されるであろう。環の歪みは、開環オレフィンメタセシス反応に対する分子の反応性を決定する1つの因子である。特定の二環式化合物のような高歪みの環式オレフィンは、オレフィンメタセシス触媒との開環反応に容易に至る。特定の未置換炭化水素単環式オレフィンのような、より歪みの小さい環式オレフィンは、一般に反応性がより低い。場合によっては、本明細書中に開示されるオレフィン化合物の存在下で実施される場合、比較的歪んでいない(したがって、比較的非反応性の)環式オレフィンの開環反応が可能になることがある。更に、本明細書に開示される発明に有用な環式オレフィンは、歪んでいてもいなくてもよい。
【0090】
本発明の樹脂組成物は複数の環式オレフィンを含み得る。複数の環式オレフィンを使用して、オレフィン化合物からメタセシスポリマーを調製することができる。例えば、上記の環式オレフィンから選択された2つの環式オレフィンを使用して、両方の環式オレフィンを組み込んだメタセシス生成物を形成することができる。2つ以上の環式オレフィンが使用される場合、第2の環式オレフィンの一例は、環式アルケノール、すなわち、官能化環式オレフィンをもたらすように水素置換基の少なくとも1つがアルコール又は保護されたアルコール部分で置換されたC〜C24環式炭化水素である。
【0091】
複数の環式オレフィンの使用は、特に環式オレフィンの少なくとも1つが官能化されている場合には、生成物内の官能基の配置を更に制御することを可能にする。例えば、本明細書に開示される方法を用いて調製されたポリマー及びマクロモノマーにおける架橋点の密度を制御することができる。置換基及び官能基の量及び密度の制御はまた、生成物の物理的特性(例えば、融点、引張強度、ガラス転移温度など)を制御することも可能にする。これら及び他の特性の制御は、単一の環式オレフィンのみを使用する反応で可能であるが、複数の環式オレフィンの使用は、形成される可能なメタセシス生成物及びポリマーの範囲を更に高めることが理解されよう。
【0092】
より好ましい環式オレフィンとしては、ジシクロペンタジエン; トリシクロペンタジエン; ジシクロヘキサジエン; ノルボルネン; 5−メチル−2−ノルボルネン; 5−エチル−2−ノルボルネン; 5−イソブチル−2−ノルボルネン; 5,6−ジメチル−2−ノルボルネン; 5−フェニルノルボルネン; 5−ベンジルノルボルネン; 5−アセチルノルボルネン; 5−メトキシカルボニルノルボルネン; 5−エトキシカルボニル−1−ノルボルネン; 5−メチル−5−メトキシ−カルボニルノルボルネン; 5−シアノノルボルネン; 5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン; シクロヘキセニルノルボルネン; エンド、エキソ−5,6−ジメトキシノルボルネン; エンド、エンド−5,6−ジメトキシノルボルネン; エンド、エキソ−5,6−ジメトキシカルボニルノルボルネン; エンド、エンド−5,6−ジメトキシカルボニルノルボルネン; 2,3−ジメトキシノルボルネン; ノルボルナジエン; トリシクロアルケン; テトラシクロドデセン; 8−メチルテトラシクロドデセン; 8−エチル−テトラシクロドデセン; 8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン; 8−メチル−8−テトラシクロドデセン; 8−シアノテトラシクロドデセン; ペンタシクロペンタデセン; ペンタシクロヘキサデセン; 及びシクロペンタジエンテトラマー、シクロペンタジエンペンタマーなどのようなシクロペンタジエンの高次オリゴマー; 並びに、5−ブチル−2−ノルボルネン; 5−ヘキシル−2−ノルボルネン; 5−オクチル−2−ノルボルネン; 5−デシル−2−ノルボルネン; 5−ドデシル−2−ノルボルネン; 5−ビニル−2−ノルボルネン; 5−エチリデン−2−ノルボルネン; 5−イソプロペニル−2−ノルボルネン; 5−プロペニル−2−ノルボルネン; 及び5−ブテニル−2−ノルボルネンなどのようなC〜C12ヒドロカルビル置換ノルボルネンが挙げられる。更により好ましい環式オレフィンとしては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、及び、例えばシクロペンタジエンテトラマー、シクロペンタジエンペンタマーのようなシクロペンタジエンの高次オリゴマー、テトラシクロドデセン、ノルボルネン、及び、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−ドデシル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−ブテニル−2−ノルボルネンなどのようなC〜C12ヒドロカルビル置換ノルボルネンが挙げられる。環式オレフィンの例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、及び、例えばシクロペンタジエンテトラマー、シクロペンタジエンペンタマーなどのようなシクロペンタジエンの高次オリゴマー(構造異性体及び/又は立体異性体を含む)が挙げられ、これらのいずれか及びすべては本発明での使用に適している。環式オレフィンの例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、及び、テトラシクロペンタジエン(構造異性体及び/又は立体異性体を含む)が挙げられ、これらのいずれか及びすべては本発明での使用に適している。環式オレフィンの例としては、ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン(構造異性体及び/又は立体異性体を含む)が挙げられ、これらのいずれか及びすべては本発明での使用に適している。

金属カルベンオレフィンメタセシス触媒
【0093】
本明細書に開示される本発明で使用し得る金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、好ましくは、式(I)の構造を有する第8族遷移金属錯体であり、
【化10】

式中、
Mは第8族遷移金属であり、
、L、及びLは中性電子供与体配位子であり、
が存在してもしなくてもよいようにnは0又は1であり、
mは0、1又は2であり、
kは0又は1であり、
及びXはアニオン性配位子であり、
及びRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から独立して選択され、
式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の2つ以上はいっしょになって1つ以上の環式基を形成することができ、更に、式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の1つ以上は担持体に結合され得る。
【0094】
更に、式(I)において、R及びRの一方又は両方は構造式-(W)−Uを有することができ、式中、Wはヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンであり、Uは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルで置換された正に荷電した第15族又は第16族元素であり、Vは負に荷電した対イオンであり、nは0又は1である。更に、R及びRは、いっしょになってインデニリデン部分、好ましくはフェニルインデニリデンを形成することができる。
【0095】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、第8族遷移金属としてRu又はOsを含み、Ruが特に好ましい。
【0096】
本明細書に開示される反応において有用な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の多数の実施形態をより詳細に以下に記載する。便宜上、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は群で記述されるが、これらの群が決して限定を意味しないことを強調しておかなくてはならない。すなわち、本発明に有用な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、本明細書に記載されるそれらの群の1つ以上の記述に適合し得る。更に、本明細書の発明には、複数の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を使用することができる。
【0097】
第1の群の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、第1世代グラブス型触媒と一般に呼ばれるものであり、式(I)の構造を有する。第1の群の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒に関して、Mは第8族遷移金属であり、mは0、1又は2であり、n、X、X、L、L、L、R、及びRについては以下に記載する。
【0098】
第1群の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒に関して、nは0、L及びLは、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル(環式エーテルを含む)、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、置換ピリジン、イミダゾール、置換イミダゾール、ピラジン、置換ピラジン、及びチオエーテルから独立して選択される。例示的な配位子は三置換ホスフィンである。好ましい三置換ホスフィンは、式PRH1H2H3のものであり、式中、RH1、RH2、及びRH3は、それぞれ独立して、置換又は未置換アリール、又はC〜C10アルキル、特に第一級アルキル、第二級アルキル、又はシクロアルキルである。最も好ましいものにおいて、L及びLは、トリメチルホスフィン(PMe)、トリエチルホスフィン(PEt)、トリ−n−ブチルホスフィン(PBu)、トリ(オルト−トリル)ホスフィン(P−o−tolyl)、トリ−tert−ブチルホスフィン(P−tert−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCyclopentyl)、トシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリオクチルホスフィン(POct)、トリイソブチルホスフィン(P−i−Bu)、トリフェニルホスフィン(PPh)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン(P(C)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から独立して選択される。あるいは、L及びLは、ホスファビシクロアルカン(例えば、シクロヘキシルフォバン、イソプロピルフォバン、エチルフォバン、メチルフォバン、ブチルフォバン、ペンチルフォバンなどのようなモノ置換9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナン又はモノ置換9−ホスファビシクロ[4.2.1]ノナン]など)から独立して選択されてもよい。
【0099】
及びXはアニオン性配位子であり、同じでも異なっていてもよく、いっしょに連結して環式基を形成し、必ずではないが典型的には5〜8員環である。好ましい実施形態では、X及びXは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、又は以下の基の1つである。C〜C20アルキル、C〜C24アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20 アルコキシカルボニル、C〜C24アリールオキシカルボニル、C〜C24アシル、C〜C24アシルオキシ、C〜C20 アルキルスルホナート、C〜C24アリールスルホナート、C〜C20アルキルスルファニル、C〜C24 アリールスルファニル、C〜C20アルキルスルフィニル、NO、−N=C=O、−N=C=S、又はC〜C24アリールスルフィニル。所望により、X及びXは、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、C〜C24アリール、及びハロゲン化物から選択される1つ以上の部分で置換され得、それらのうちハロゲン化物以外は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、及びフェニルから選択される1つ以上の基で更に置換され得る。より好ましい実施形態では、X及びXは、ハロゲン化物、安息香酸塩、C〜Cアシル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルスルファニル、アリール、又はC〜Cアルキルスルホニルである。更により好ましい実施形態では、 X及びXは、それぞれ、ハロゲン化物、CFCO、CHCO、CFHCO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO、MeO、EtO、トシレート、メシレート、又はトリフルオロメタンスルホナートである。最も好ましい実施形態では、X及びXはそれぞれ塩化物である。
【0100】
及びRは、独立して、水素、ヒドロカルビル(例えば、C〜C20 アルキル、C〜C20 アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24 アリール、C〜C24 アルカリル、C〜C24 アラルキルなど)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20 アルキル、C〜C20 アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24 アリール、C〜C24 アルカリル、C〜C24 アラルキルなど)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(ヘテロ原子含有C〜C20 アルキル、C〜C20 アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24 アリール、C〜C24 アルカリル、C〜C24 アラルキルなど)、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換ヘテロ原子含有C〜C20 アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリル、C〜C24アラルキルなど)、及び官能基から選択される。R及びRはまた、脂肪族又は芳香族であり得る環式基を形成するように連結され得、置換基及び/又はヘテロ原子を含み得る。一般に、そのような環式基は、4〜12個、好ましくは5、6、7又は8個の環原子を含む。
【0101】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒において、Rは水素であり、Rは、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、及びC〜C24アリール、より好ましくは C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜C14アリールから選択される。更により好ましくは、Rは、フェニル、ビニル、メチル、イソプロピル又はt−ブチルであり、 所望により、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フェニル、及び本明細書で先に定義した官能基Fnから選択される1つ以上の部分で置換されている。最も好ましくは、Rは、メチル、エチル、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロ、ニトロ、ジメチルアミノ、メチル、メトキシ及びフェニルから選択される1つ以上の部分で置換されたフェニル又はビニルである。最適には、Rはフェニル又は−CH=C(CHである。
【0102】
参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許第5,312,940号に記載されているように、X、X、L、L、L、R、及びRのいずれか2つ以上(典型的には2つ、3つ又は4つ)をいっしょにして、二座又は多座配位子を含む環式基を形成することができる。X、X、L、L、L、R、及びRのいずれかが連結して環式基を形成するとき、それらの環式基は、4〜12個、好ましくは4、5、6、7又は8個の原子を含むことができるか、又は、そのような環を2つ又は3つ含むことができ、それらは、縮合されているか連結されているかのいずれかであり得る。環式基は脂肪族又は芳香族であり得、ヘテロ原子含有であり得る及び/又は置換され得る。環式基は、場合によっては、二座配位子又は三座配位子を形成し得る。二座配位子の例としては、ビスホスフィン、ジアルコキシド、アルキルジケトナート、及びアリールジケトナートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
一般に第2世代グラブス型触媒と呼ばれる金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第2の群は式(I)の構造を有し、式中、L は式(II)の構造を有するカルベン配位子であり、
【化11】

したがって、この錯体は式(III)の構造を有することができ、
【化12】

式中、M、m、n、X、X、L、L、R、及びRは、第1の群の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒について定義したとおりであり、残りの置換基は以下のとおり。
X及びYは、典型的には、N、O、S及びPから選択されるヘテロ原子である。O及びSは二価であるので、XがO又はSであるとき、pは必ずゼロであり、YがO又はSであるとき、kはゼロ又は1である。しかしながら、XがN又はPであるとき、pは1であり、YがN又はPであるとき、qは1である。好ましい実施形態では、X及びYの両方がNであり、
、Q、Q及びQはリンカー、例えば、ヒドロカルビレン(置換及び/又はヘテロ原子含有アルキレンのような、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンを含む)又は−(CO)−であり、w、x、y及びzは独立して0又は1であり、各リンカーが任意選択によることを意味する。好ましくは、w、x、y及びzはすべてゼロである。更に、Q、Q、Q、及びQ内の隣接する原子上の2つ以上の置換基は、連結して追加の環式基を形成してもよく、
、R3A、R、及びR4Aは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルから独立して選択される。更に、X及びYは、炭素及び上述のヘテロ原子の1つから独立して選択することができ、好ましくは、X又はYの1つ以下が炭素である。また、L及びL はいっしょになって単一の結合電子供与性ヘテロ環配位子を形成することができる。更に、R及びRは、いっしょになってインデニリデン部分、好ましくはフェニルインデニリデンを形成することができる。更に、X、X、L、L、X及びYは、ホウ素又はカルボキシレートに更に配位され得る。
【0104】
更に、X、X、L、L、L、R、R、R、R3A、R、R4A、Q、Q、Q、及びQの任意の2つ以上はいっしょになって環式基を形成することができ、 X、X、L、L、Q、Q、Q、Q、R、R、R、R3A、R、及びR4Aの任意の1つ以上は担持体に結合され得る。X、X、L、L、L、R、R、R、R3A、R、及びR4Aの任意の2つ以上はまた、いっしょに -A−Fnになってもよく、式中、「A」は、アルキレン及びアリールアルキレン基から選択される二価の炭化水素部分であり、そのアルキレン基及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、環式又は非環式であり得、そのアリールアルキレンのアリール部分は置換又は未置換であり得、ヘテロ原子及び/又は官能基はアルキレン及びアリールアルキレン基のアリール又はアルキル部分のいずれかに存在し得、Fnは官能基であるか又はいっしょに環式基を形成し、X、X、L、L、Q、Q、Q、Q、R、R、R、R3A、R、及びR4Aの任意の1つ以上は担持体に結合され得る。
【0105】
3AとR4Aが連結して環式基を形成し、X又はYの少なくとも1つが窒素であるか、又はQ又はQの少なくとも1つがヘテロ原子含有ヒドロカルビレン又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンであり、その少なくとも1つのヘテロ原子が窒素である、式(II)の構造を有する特定のクラスのカルベン配位子は、 一般に、N−ヘテロ環式カルベン(NHC)配位子と呼ばれる。好ましくは、R3A及びR4Aは、カルベン配位子が式(IV)の構造を有するように環式基を形成するように連結されており、
【化13】

及びRは、上記の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第2の群について定義したとおりであり、好ましくはR及びRの少なくとも1つ、より好ましくはR及びRの両方が1〜約5環の脂環式又は芳香族であり、所望により 1つ以上のヘテロ原子及び/又は置換基を含有する。Qはリンカーであり、典型的には、置換ヒドロカルビレンリンカー、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンリンカー、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンリンカーを含むヒドロカルビレンリンカーであり、Q内の隣接する原子の2つ以上の置換基もまた、同様に2〜約5個の環式基の縮合多環式構造を提供するように置換され得る追加の環式構造を形成するように連結され得る。Qは、必ずではないが多くの場合、2原子連結又は3原子連結である。
【0106】
として適しているN−ヘテロ環式カルベン(NHC)配位子及び非環式ジアミノカルベン配位子の例は、限定するものではないが、DIPP又はDiPPがジイソプロピルフェニルであり、Mesが2,4,6−トリメチルフェニルである以下のものを含む。
【化14】
【0107】
よって、Lとして適したN−ヘテロ環式カルベン(NHC)配位子及び非環式ジアミノカルベン配位子の追加的な例としては、以下のものが挙げられ、
【化15】

W1、RW2、RW3、RW4は、独立して、水素、未置換ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、又はヘテロ原子含有ヒドロカルビルであり、RW3及びRW4の一方又は両方は、独立して、ハロゲン、ニトロ、アミド、カルボキシル、アルコキシ、アリールオキシ、 スルホニル、カルボニル、チオ、又はニトロソ基から選択され得る。
【0108】
として適したN−ヘテロ環式カルベン(NHC)配位子の追加的な例は、更に、米国特許米国特許第 7,378,528号、同第7,652,145、7,294,717号、同第6,787,620号、同第6,635,768号、同第6,552,139号に記載されており、それらの各々の開示は参照により本明細書に援用される。
【0109】
更に、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第6,838,489号に開示されているような熱活性化N−ヘテロ環式カルベン前駆体もまた、本発明とともに使用し得る。
【0110】
Mがルテニウムであるとき、好ましい錯体は、式(V)の構造を有する。
【化16】
【0111】
より好ましい実施形態では、Qは、〜CR1112〜CR1314−又は〜CR11=CR13−、好ましくはCR1112−CR1314−の構造を有する2原子連結であり、式中、R11、R12、R13、及びR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から独立して選択される。本明細書における官能基の例としては、限定するものではないが、所望によりC〜C12 アルキル、C〜C12 アルコキシ、C〜C14 アリール、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ホルミル、及びハロゲン化物から選択される1つ以上の部分で置換されるC〜C20 アルコキシ、C〜C24 アリールオキシ、C〜C20 アルコキシカルボニル、C〜C24 アルコキシカルボニル、C〜C24 アシルオキシ、C〜C20 アルキルチオ、C〜C24 アリールチオ、C〜C20 アルキルスルホニル、及びC〜C20 アルキルスルフィニルが挙げられる。R11、R12、R13、及びR14は、好ましくは、水素、C〜C12 アルキル、置換C〜C12 アルキル、C〜C12 ヘテロアルキル、置換C〜C12 ヘテロアルキル、フェニル、及び置換フェニルから独立して選択される。あるいは、R11、R12、R13、及びR14のいずれか2つはいっしょに連結して、例えば C〜C12 脂環式基又はC又はCアリール基のような、それ自体が例えば連結又は縮合された脂環式基又は芳香族基若しくは他の置換基で置換され得る置換又は未置換、飽和又は不飽和の環構造を形成し得る。更なる一態様では、R11、R12、R13、及びR14の任意の1つ以上は、それらのリンカーの1つ以上を含む。更に、R及びR は、未置換フェニルか、又は、C〜C20 アルキル、置換C〜C20 アルキル、C〜C20 ヘテロアルキル、置換C〜C20 ヘテロアルキル、C〜C24 アリール、置換C〜C24 アリール、C〜C24 ヘテロアリール、C〜C24 アラルキル、C〜C24 アルカリル、又はハロゲン化物から選択される1つ以上の置換基で置換されたフェニルであり得る。更に、X及びXはハロゲンであり得る。
【0112】
及びRが芳香族のとき、それらは、必ずではないが典型的に、置換でも未置換でもよい1つ又は2つの芳香族環で構成され、例えば、R及びRは、フェニル、置換フェニル、ビフェニル、置換ビフェニルなどであり得る。好ましい一実施形態では、RとR は同じであり、それぞれが、C〜C20 アルキル、置換C〜C20 アルキル、C〜C20 ヘテロアルキル、置換C〜C20 ヘテロアルキル、C〜C24 アリール、置換C〜C24 アリール、C〜C24 ヘテロアリール、C〜C24 アラルキル、C〜C24 アルカリル、又はハロゲン化物から選択される3つ以下の置換基で置換された未置換フェニル又はフェニルであり得る。好ましくは、存在するすべての置換基は、水素、C〜C12 アルキル、C〜C12 アルコキシ、C〜C14 アリール、置換C〜C14アリール、又はハロゲン化物である。例えば、R及びRはメシチル(すなわち、本明細書の定義によるMes)である。
【0113】
式(I)の構造を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第3の群において、M、m、n、X、X、R、及びRは金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の群について定義したとおりであり、Lは、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2の群について記述したもののいずれかのような強く配位する中性電子供与体配位子であり、L及びLは、所望により置換されたヘテロ環式基の形の弱く配位する中性電子供与体配位子である。ここでも、Lが存在してもしなくてもよいようにnは0又は1である。一般に、第3の群の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒において、L及びLは、1〜4個、好ましくは1〜3個、最も好ましくは1〜2個のヘテロ原子を含む、所望により置換された5員又は6員の単環式基であるか、又は、そのような5員又は6員の単環式基を2〜5個含んでなる所望により置換された二環式又は多環式構造である。ヘテロ環式基が置換される場合、配位しているヘテロ原子上で置換されるべきでなく、ヘテロ環式基内の環式部分のいずれも、一般に、4つ以上の置換基で置換されない。
【0114】
金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第3の群に関して、L及びLの例としては、限定するものではないが、窒素、硫黄、酸素、又はそれらの混合物を含むヘテロ環が挙げられる。
【0115】
及びLに適した窒素含有ヘテロ環の例としては、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ビピリジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、ピロール、2H−ピロール、3H−ピロール、ピラゾール、2H−イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、インドール、3H−インドール、1H−イソインドール、シクロペンタ(b)ピリジン、インダゾール、キノリン、ビスキノリン、イソキノリン、ビスイソキノリン、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピラゾリジン、キヌクリジン、イミダゾリジン、ピコリルイミン、プリン、ベンゾイミダゾール、ビスイミダゾール、フェナジン、アクリジン、及びカルバゾールが挙げられる。更に、窒素含有ヘテロ環は、所望により、非配位ヘテロ原子上で非水素置換基で置換され得る。
【0116】
及びLに適した硫黄含有ヘテロ環の例としては、チオフェン、1,2−ジチオール、1,3−ジチオール、チエピン、ベンゾ(b)チオフェン、ベンゾ(c)チオフェン、チオナフテン、ジベンゾチオフェン、2H−チオピラン、4H−チオピラン、及びチオアントレンが挙げられる。
【0117】
及びLに適した酸素含有ヘテロ環の例としては、2Hピラン、4H−ピラン、2−ピロン、4−ピロン、1,2−ジオキシン、1,3−ジオキシン、オキセピン、フラン、2H1ベンゾピラン、クマリン、クマロン、クロメン、クロマン−4−オン、イソクロメン−1−オン、イソクロメン−3−オン、キサンテン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、及びジベンゾフランが挙げられる。
【0118】
及びLに適した混合ヘテロ環の例としては、イソキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール、3H−1,2,3−ジオキサゾール、3H−1,2−オキサチオール、1,3−オキサチオール、4H−1,2−オキサジン、2H1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2,5−オキサチアジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ピラノ[3,4−b]ピロール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、アントラニル、及びモルホリンが挙げられる。
【0119】
好ましいL及びL配位子は、芳香族の窒素含有及び酸素含有ヘテロ環であり、特に好ましいL及びL配位子は、1〜3個、好ましくは1又は2個の置換基で所望により置換された単環式N−ヘテロアリール配位子である。特に好ましいL及びL配位子の具体的な例は、ピリジン及び置換ピリジンであり、例えば、3−ブロモピリジン、4−ブロモピリジン、3,5−ジブロモピリジン、2,4,6−トリブロモピリジン、2,6−ジブロモピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、3,5−ジクロロピリジン、2,4,6−トリクロロピリジン、2,6−ジクロロピリジン、4−ヨードピリジン、3,5−ジヨードピリジン、3,5−ジブロモ−4−メチルピリジン、3,5−ジクロロ−4−メチルピリジン、3,5−ジメチル−4−ブロモピリジン、3,5−ジメチルピリジン、4−メチルピリジン、 3,5−ジイソプロピルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,4,6−トリイソプロピルピリジン、4−(tert−ブチル)ピリジン、4−フェニルピリジン、3,5−ジフェニルピリジン、3,5−ジクロロ−4−フェニルピリジンなどである。
【0120】
一般に、L及び/又はL上に存在する任意の置換基は、ハロ、C〜C20 アルキル、置換C〜C20 アルキル、C〜C20 ヘテロアルキル、置換C〜C20 ヘテロアルキル、C〜C24 アリール、置換C〜C24 アリール、C〜C24 ヘテロアリール、置換C〜C24 ヘテロアリール、C〜C24 アルカリル、置換C〜C24 アルカリル、C〜C24 ヘテロアルカリル、置換C〜C24 ヘテロアルカリル、C〜C24 アラルキル、置換C〜C24 アラルキル、C〜C24 ヘテロアラルキル、置換C〜C24 ヘテロアラルキル、及び置換基から選択され、適した官能基としては、限定するものではないが、C〜C20 アルコキシ、C〜C24 アリールオキシ、C〜C20 アルキルカルボニル、C〜C24 アリールカルボニル、C〜C20 アルキルカルボニルオキシ、C〜C24 アリールカルボニルオキシ、C〜C20 アルコキシカルボニル、C〜C24 アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、C〜C20 アルキルカルボナート、C〜C24 アリールカルボナート、カルボキシ、カルボキシレート、カルバモイル、モノ−(C〜C20 アルキル)−置換カルバモイル、ジ−(C〜C20 アルキル)−置換カルバモイル、ジ−N−(C〜C20 アルキル)、N−(C〜C24 アリール)−置換カルバモイル、モノ−(C〜C24 アリール)−置換カルバモイル、ジ−(C〜C24 アリール)−置換カルバモイル、チオカルバモイル、モノ−(C〜C20 アルキル)−置換チオカルバモイル、ジ−(C〜C20 アルキル)−置換チオカルバモイル、ジ−N−(C〜C20 アルキル)−N−(C〜C24 アリール)−置換チオカルバモイル、モノ−(C〜C24 アリール)−置換チオカルバモイル、ジ−(C〜C24 アリール)−置換チオカルバモイル、カルバミド、ホルミル、チオホルミル、アミノ、モノ−(C〜C20 アルキル)−置換アミノ、ジ−(C〜C20 アルキル)−置換アミノ、モノ−(C〜C24 アリール)−置換アミノ、ジ−(C〜C24 アリール)−置換アミノ、ジ−N−(C〜C20 アルキル)、N−(C〜C24 アリール)−置換アミノ、C〜C20 アルキルアミド、C〜C24 アリールアミド、イミノ、C〜C20 アルキルイミノ、C〜C24 アリールイミノ、ニトロ、及びニトロソが挙げられる。更に、2つの隣接する置換基は、いっしょになって、一般に5員又は6員の脂環式又はアリール環であり所望により上記のように1〜3個のヘテロ原子及び1〜3個の置換基を含む環を形成することができる。
【0121】
及びL上の好ましい置換基としては、限定するものではないが、C〜C12 アルキル、置換C〜C12 アルキル、C〜C12 ヘテロアルキル、置換C〜C12 ヘテロアルキル、C〜C14 アリール、置換C〜C14 アリール、C〜C14 ヘテロアリール、置換C〜C14 ヘテロアリール、C〜C16 アルカリル、置換C〜C16 アルカリル、C〜C16 ヘテロアルカリル、置換C〜C16 ヘテロアルカリル、C〜C16 アラルキル、置換C〜C16 アラルキル、C〜C16 ヘテロアラルキル、置換C〜C16 ヘテロアラルキル、C〜C12 アルコキシ、C〜C14 アリールオキシ、C〜C12 アルキルカルボニル、C〜C14 アリールカルボニル、C〜C12 アルキルカルボニルオキシ、C〜C14 アリールカルボニルオキシ、C〜C12 アルコキシカルボニル、C〜C14 アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、アミノ、モノ−(C〜C12 アルキル)−置換アミノ、ジ−(C〜C12 アルキル)−置換アミノ、モノ−(C〜C14 アリール)−置換アミノ、ジ−(C〜C14 アリール)−置換アミノ、及びニトロが挙げられる。
【0122】
前記のうち、最も好ましい置換基は、ハロ、C〜C アルキル、C〜C ハロアルキル、C〜C アルコキシ、フェニル、置換フェニル、ホルミル、N,N−ジ(C〜C アルキル)アミノ、ニトロ、及び上述したような窒素ヘテロ環である(例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピラジン、ピリミジン、ピリジン、ピリダジンなどが含まれる)。
【0123】
特定の実施形態では、L及びLはいっしょになって、N、O、S又はPのような2つ以上(一般に2つ)の二座又は多座配位子を形成してもよく、そのような配位子の好ましいものは、ブルックハート型のジイミン配位子である。1つの代表的な二座配位子は、式(VI)の構造を有するのものであり、
【化17】

式中、R15、R16、R17、及びR18ヒドロカルビル(例えば、C〜C20 アルキル、C〜C20 アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24 アリール、C〜C24 アルカリル、又はC〜C24 アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20 アルキル、C〜C20 アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24 アリール、C〜C24 アルカリル、又はC〜C24 アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C〜C20 ヘテロアルキル、C〜C24 ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C〜C24 アラルキル、又はヘテロ原子含有C〜C24 アルカリル)、若しくは置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20 ヘテロアルキル、C〜C24 ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C〜C24 アラルキル、又はヘテロ原子含有C〜C24 アルカリル)、若しくは(1) R15及びR16、(2) R17及びR18、(3) R16及びR17、又は(4) R15及びR16とR17及びR18の両方は、いっしょになって環、すなわちN−ヘテロ環を形成することができる。そのような場合、好ましい環式基は5員及び6員環であり、典型的には芳香族環である。
【0124】
式(I)の構造を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第4の群では、2つの置換基がいっしょになって二座配位子又は三座配位子を形成する。二座配位子の例としては、ビスホスフィン、ジアルコキシド、アルキルジケトナート、及びアリールジケトナートが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な例としては、−P(Ph)CHCHP(Ph)−、−As(Ph)CHCHAs(Ph)−、−P(Ph)CHCHC(CFO−、ビナフトラートジアニオン、ピナコレートジアニオン、−P(CH(CHP(CH−、及び−OC(CH(CHCO−が挙げられる。好ましい二座配位子は、−P(Ph) CHCHP(Ph)−及び−P(CH(CHP(CH−である。三座配位子としては、限定するものではないが、(CHNCHCHP(Ph)CHCHN(CHが挙げられる。その他の好ましい三座配位子は、X、X、L、L、L、R、及びRのうちの任意の3つ(例えば、X、L、L)がいっしょになってシクロペンタジエニル、インデニル、又はフルオレニルとなるものであり、それらのそれぞれは、所望により、C〜C20 アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20 アルキル、C〜C20 アリール、C〜C20 アルコキシ、C〜C20 アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C20 アリールオキシ、C〜C20 アルコキシカルボニル、C〜C20 アルキルチオ、C〜C20 アルキルスルホニル、又はC〜C20 アルキルスルフィニルで置換され、それらのそれぞれは更に、C〜C アルキル、ハロゲン化物、C〜C アルコキシで置換され得る、又は、所望によりハロゲン化物、C〜C アルキル、若しくはC〜C アルコキシで置換されたフェニル基で置換され得る。より好ましくは、このようなタイプの化合物において、X、L、及びLはいっしょになってシクロペンタジエニル又はインデニルとなり、それぞれは所望により、ビニル、C〜C10 アルキル、C〜C20 アリール、C〜C10カルボキシレート、C〜C10アルコキシカルボニル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C20 アリールオキシで置換され、そのそれぞれは、所望により、C〜C アルキル、ハロゲン化物、C〜C アルコキシで置換され得る、若しくはハロゲン化物、C〜C アルキル又はC〜C アルコキシで所望により置換されたフェニル基で置換され得る。より好ましくは、X、L及びLはいっしょになってシクロペンタジエニルとなり得、所望により、ビニル、水素、メチル、又はフェニルで置換され得る。四座配位子としては、OC(CHP(Ph)(CHP(Ph)(CHCO、フタロシアニン、及びポルフィリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
Yが金属に配位している錯体は、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第5の群の例であり、一般に「グラブス‐ホベイダ」触媒と呼ばれる。グラブス‐ホベイダメタセシス活性金属カルベン錯体は、式(VII)として記述することができ、
【化18】

式中、
Mは第8族遷移金属、特にRu又はOsであり、更に特定するとRuであり、
、X、及びLは、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2の群について本明細書で前に定義した通りであり、
Yは、N、O、S及びPから選択されるヘテロ原子であり、、好ましくはYはO又はNであり、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル、ニトリル、ニトロ、アルキルスルフィニル、トリハロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、硝酸、シアノ、イソシアナート、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ハロゲン置換アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、スルホナート、カルバマート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスフェート、ホウ酸、又は−A−Fn(ここで、「A」及びFnは上記で定義されているとおり)からなる群から選択され、Y、Z、R、R、R、及びRの任意の組み合わせは連結して1つ以上の環式基を形成することができ、
nは、0、1又は2であり、2価のヘテロ原子O又はSについてはnは1であり、3価のヘテロ原子N又はPについてはnは2であり、
Zは、水素、アルキル、アリール、官能化アルキル、官能化アリールから選択される基であり、その(それらの)官能基は、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、硝酸、シアノ、イソシアナート、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、カーバメート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスフェート、又はホウ酸、メチル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、ベンジル、フェニル、及びトリメチルシリルの1つ以上であり得、X、X、L,Y、Z、R、R、R、及びRの任意の組み合わせ(1つ又は複数)は担持体に連結され得る。更に、R、R、R、R、及びZは、独立して、チオイソシアナート、シアナート、又はチオシアナートであり得る。
【0126】
本発明に適したグラブス‐ホベイダ配位子を含む錯体の例としては、以下が挙げられ、
【化19】

式中、L、X、X、及びMは、その他の任意の群の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒について記述したとおりである。適したキレート化カルベン及びカルベン前駆体は、Pedersonら(各々の開示が参照により本明細書に援用される米国特許第7,026,495号及び同第6,620,955号)、及びHoveydaら(各々の開示が参照により本明細書に援用される米国特許第6,921,735号及びWO0214376号)によって更に説明されている。
【0127】
その他の有用な錯体としては、式(I)、(III)又は(V)によるLとRが連結されている構造が含まれ、例えば、スチレン系化合物であり、これは、担持体への結合のための官能基もまた含む。官能基がトリアルコキシシリルで官能化された部分である例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる。
【化20】
【0128】
連結された配位子を有する錯体の更なる例としては、中性NHC配位子とアニオン性配位子との間、中性NHC配位子とアルキリジン配位子との間、中性NHC配位子とL配位子との間、中性NHC配位子とL配位子との間、アニオン配位子とアルキリジン配位子との間に連結を有するもの、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。可能な構造は多すぎて本明細書に記載しきれないが、式(III)によるいくつかの適した構造としては以下が挙げられる。
【化21】
【0129】
上記のような、式(I)の構造を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒に加えて、他の遷移金属カルベン錯体としては、限定するものではないが、以下が挙げられる。
正式に+2の酸化状態にあり、16の電子数を有し、五配位であり、一般式(IX)のものである金属中心を含む中性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体、
正式に+2の酸化状態にあり、18の電子数を有し、六配位であり、一般式(X)のものである金属中心を含む中性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体、
正式に+2の酸化状態にあり、14の電子数を有し、四配位であり、一般式(XI)のものである金属中心を含むカチオン性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体、及び
正式に+2の酸化状態にあり、14又は16の電子数を有し、それぞれ対応して四配位又は五配位であり、一般式(XII)のものである金属中心を含むカチオン性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体。
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

式中、
M、X、X、L、L、L、R、及びRは、上述のように定義された金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の4つの群のいずれかに関して定義されたとおりであり、
r及びsは、独立して、ゼロ又は1であり、
tはゼロ〜5の範囲の整数であり、
kはゼロ〜1の範囲の整数であり、
Yは、任意の非配位性アニオン(例えば、ハロゲン化物イオン、BF−など)であり、
及びZは、独立して、−O−、−S−、−NR−、−PR−、−P(=O)R−、−P(OR)−、−P(=O)(OR)−、−C(=O)−、〜C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S(=O)−、−S(=O)−、−、及び所望により置換されている及び/又は所望によりヘテロ原子を含有するC〜C20ヒドロカルビレン連結から選択され、
は、−P(R又は−N(Rのような任意のカチオン性部分であり、
、X、L、L、L、Z、Z、Z、R、及びR の任意の2つ以上は、いっしょになって環式基、例えば多座配位子を形成することができ、X、X、L、L、L、Z、Z、Z、R、及びRの任意の1つ以上は担持体に結合され得る。
【0130】
更に、本明細書に開示される本発明で使用し得る金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の別の群は、式(XIII)の構造を有する第8族遷移金属錯体であり、
【化26】

式中、Mは第8族遷移金属であり、特定するとルテニウム又はオスミウム、更に特定するとルテニウムであり、
、X、L及びLは、上記で定義した金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2の群について定義したとおりであり、
G1、RG2、RG3、RG4、RG5、及びRG6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル、ニトリル、ニトロ、アルキルスルフィニル、トリハロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、硝酸、シアノ、イソシアナート、チオイソシアナート、シアナート、チオシアナート、ヒドロキシル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アルキルアミン、イミン、アミド、ハロゲン置換アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、スルホナート、カルバマート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスフェート、ホウ酸、又は-A−Fnからなる群から選択され、「A」は、アルキレン及びアリールアルキレンから選択される2価の炭化水素部分であり、そのアルキレン基及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、環式又は非環式、及び置換又は未置換のいずれでもよく、そのアリールアルキレンのアリール部分は、置換又は未置換のいずれでもよく、ヘテロ原子及び/又は官能基は、アルキレン基及びアリールアルキレン基のアリール部分又はアルキル部分のいずれかに存在することができ、Fnは官能基であり、又は、RG1、RG2、RG3、RG4、RG5、及びRG6の任意の1つ以上はいっしょになって環式基を形成することができ、又は、RG1、RG2、RG3、RG4、RG5、及びRG6の任意の1つ以上は担持体に結合され得る。
【0131】
更に、式XIIIの第8族遷移金属錯体の1つの好ましい実施形態は、式(XIV)の第8族遷移金属錯体であり、
【化27】

式中、M、X、X、L、Lは、式XIIIの第8族遷移金属錯体について上記で定義した通りであり、
G7、RG8、RG9、RG10、RG11、RG12、RG13、RG14、RG15及びRG16は、式XIIIの第8族遷移金属錯体についてのRG1、RG2、RG3、RG4、RG5、及びRG6について上記で定義したとおりであり、又は、RG7、RG8、RG9、RG10、RG11、RG12、RG13、RG14、RG15及びRG16の任意の1つ以上はいっしょになって環式基を形成することができ、又は、RG7、RG8、RG9、RG10、RG11、RG12、RG13、RG14、RG15及びRG16の任意の1つ以上は担持体に結合され得る。
【0132】
更に、式XIIIの第8族遷移金属錯体の別の好ましい実施形態は、式(XV)の第8族遷移金属錯体であり、
【化28】

式中、M、X、X、L、Lは、式XIIIの第8族遷移金属錯体について上記で定義した通りである。
【0133】
更に、本明細書に開示される本発明で使用し得る金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の別の群は、式(XVI)の構造を有するシッフ塩基配位子を含む第8族遷移金属錯体であり、
【化29】

式中、Mは第8族遷移金属、特定するとルテニウム又はオスミウムであり、更に特定するとルテニウムであり、
及びLは、上記で定義した金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2の群について定義したとおりであり、
Zは、酸素、硫黄、セレニウム、NRJ11、PRJ11、AsRJ11、及びSbRJ11からなる群から選択され、
J1、RJ2、RJ3、RJ4、RJ5、RJ6、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10、及びRJ11は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、 ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル、ニトリル、ニトロ、アルキルスルフィニル、トリハロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、硝酸、シアノ、イソシアナート、チオイソシアナート、シアナート、チオシアナート、ヒドロキシル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アルキルアミン、イミン、アミド、ハロゲン置換アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、スルホナート、カルバマート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスフェート、ホウ酸、又は-A−Fnからなる群から選択され、「A 」は、アルキレン及びアリールアルキレンから選択される2価の炭化水素部分であり、そのアルキレン基及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、環式又は非環式、及び置換又は未置換のいずれでもよく、そのアリールアルキレンのアリール部分は、置換又は未置換のいずれでもよく、 ヘテロ原子及び/又は官能基は、アルキレン基及びアリールアルキレン基のアリール部分又はアルキル部分のいずれかに存在することができ、Fnは官能基であり、又は、RJ1、RJ2、RJ3、RJ4、RJ5、RJ6、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10、及びRJ11の任意の1つ以上はいっしょになって環式基を形成することができ、又は、RJ1、RJ2、RJ3、RJ4、RJ5、RJ6、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10、及びRJ11のいずれか1つ以上は担持体に結合され得る。
【0134】
更に、式(XVI)の第8族遷移金属錯体の1つの好ましい実施形態は、式(XVII)の構造を有するシッフ塩基配位子を含む第8族遷移金属錯体であり、
【化30】

式中、M、X、L、Z、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10、及びRJ11 は、式XVIの第8族遷移金属錯体について上記で定義したとおりであり、
J12、RJ13、RJ14、RJ15、RJ16、RJ17、RJ18、RJ19、RJ20、及びRJ21は、式XVIの第8族遷移金属錯体についてのRJ1、RJ2、RJ3、RJ4、RJ5、及びRJ6について上記で定義したとおりであり、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10、RJ11、RJ12、RJ13、RJ14、RJ15、RJ16、RJ17、RJ18、RJ19、RJ20、及びRJ21 の任意の1つ以上は連結して環式基を形成することができ、又は、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10、RJ11、RJ12、RJ13、RJ14、RJ15、RJ16、RJ17、RJ18、RJ19、RJ20、及びRJ21の任意の1つ以上は担持体に結合され得る。
【0135】
更に、式(XVI)の第8族遷移金属錯体の別の好ましい実施形態は、式(XVIII)の構造を有するシッフ塩基配位子を含む第8族遷移金属錯体であり、
【化31】

式中、M、X、L、Z、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10、及びRJ11 は、式XVIの第8族遷移金属錯体について上記で定義したとおりである。
【0136】
更に、本明細書に開示される本発明で使用し得る金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の別の群は、式(XIX)の構造を有するシッフ塩基配位子を含む第8族遷移金属錯体であり、
【化32】

式中、Mは第8族遷移金属、特定するとルテニウム又はオスミウムであり、更に特定するとルテニウムであり、
、L、R、及びRは、上記で定義した金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2の群について定義したとおりであり、
Zは、酸素、硫黄、セレニウム、NRK5、PRK5、AsRK5、及びSbRK5からなる群から選択され、
mは0、1又は2であり、
K1、RK2、RK3、RK4、及びRK5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル、ニトリル、ニトロ、アルキルスルフィニル、トリハロアルキル、パーフルオロアルキル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、硝酸、シアノ、イソシアナート、チオイソシアナート、シアナート、チオシアナート、ヒドロキシル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アルキルアミン、イミン、アミド、ハロゲン置換アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、スルホナート、カルバマート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスフェート、ホウ酸、又は-A−Fnからなる群から選択され、「A」は、アルキレン及びアリールアルキレンから選択される2価の炭化水素部分であり、そのアルキレン基及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、環式又は非環式、及び置換又は未置換のいずれでもよく、そのアリールアルキレンのアリール部分は、置換又は未置換のいずれでもよく、 ヘテロ原子及び/又は官能基は、アルキレン基及びアリールアルキレン基のアリール部分又はアルキル部分のいずれかに存在することができ、Fnは官能基であり、又は、RK1、RK2、RK3、RK4、及びRK5の任意の1つ以上はいっしょになって環式基を形成することができ、又は、RK1、RK2、RK3、RK4、及びRK5のいずれか1つ以上は担持体に結合され得る。
【0137】
更に、式(XVI)〜(XIX)の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、所望により、第8族遷移金属と少なくとも1つのシッフ塩基配位子との間の結合の少なくとも部分的な開裂が生じる活性化化合物と接触させることができ、その活性化化合物は、ハロゲン化銅(I); RY1がハロゲン、C〜Cアルキル又はアリールである式Zn(RY1の亜鉛化合物; RY2、RY3、RY4及びRY5のそれぞれがハロゲン、C〜C20アルキル、C〜C10シクロアルキル、アリール、ベンジル、及びC〜C アルケニルからなる群から独立して選択されるSnRY2Y3Y4Y5で表されるスズ化合物; RY6、RY7、RY8、RY9のそれぞれが水素、ハロゲン、C〜C20アルキル、ハロ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール及びビニルからなる群から独立して選択されるSiRY6Y7Y8Y9で表されるシリコン化合物からなる群から選択される金属化合物又はシリコン化合物のいずれかである。更に、式(XVI)〜(XIX)の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、所望により、第8族遷移金属と少なくとも1つのシッフ塩基配位子との間の結合の少なくとも部分的な開裂が生じる活性化化合物と接触させることができ、その活性化化合物は、ヨウ化水素、臭化水素、塩化水素、フッ化水素、硫酸、硝酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、HOClO、HOClO及びHOIOのような無機酸である。更に、式(XVI)〜(XIX)の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、所望により、第8族遷移金属と少なくとも1つのシッフ塩基配位子との間の結合の少なくとも部分的な開裂が生じる活性化化合物と接触させることができ、その活性化化合物は有機酸、例えば、限定するものではないが、メタンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸及びトリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられるスルホン酸類; 限定するものではないが、アセト酢酸、バルビツール酸、ブロモ酢酸、ブロモ安息香酸、クロロ酢酸、クロロ安息香酸、クロロフェノキシ酢酸、クロロプロピオン酸、シス−ケイ皮酸、シアノ酢酸、シアノ酪酸、シアノフェノキシ酢酸、シアノプロピオン酸、ジクロロ酢酸、ジクロロアセチル酢酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシマレイン酸、ジヒドロキシ酒石酸、ジコチン酸、ジフェニル酢酸、フルオロ安息香酸、ギ酸、フランカルボン酸、フロ酸、グリコール酸、馬尿酸、ヨード酢酸、ヨード安息香酸、乳酸、ルチジン酸、マンデル酸、α−ナフトエ酸、ニトロ安息香酸、ニトロフェニル酢酸、o−フェニル安息香酸、チオ酢酸、チオフェンカルボン酸、トリクロロ酢酸、及びトリヒドロキシ安息香酸などが挙げられるモノカルボン酸類、及び、限定するものではないが、ピクリン酸及び尿酸のような他の酸性物質などである。
【0138】
更に、本発明で使用することができる金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の他の例は、その各々が参照により本明細書に組み込まれる以下の開示に記載されている。米国特許第7,687,635号、同第7,671,224号、同第6,284,852号、同第6,486,279号、及び同第5,977,393号、国際公開特許WO2010/037550号、米国特許出願第12/303,615号、同第10/590,380号、同第11/465,651号(公開公報第2007/0043188号(US)、及び同第11/465,651号(公開第2008/0293905号(US)訂正公報)、並びに欧州特許EP1757613B1号及びEP1577282B1号。
【0139】
担持された錯体を調製するために使用することができ、本明細書に開示される反応に使用することができる金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の非限定的な例としては以下が挙げられ、便宜上、それらのいくつかは本開示全体を通じてそれらの分子量によっ同定される。
【化33-1】

【化33-2】

【化33-3】

【化33-4】

【化33-5】
【0140】
上記の分子構造及び式中、Phはフェニルを表し、Cyはシクロヘキシルを表し、Cpはシクロペンチルを表し、Meはメチルを表し、Buはn−ブチルを表し、t−Buはtert−ブチルを表し、i−Prはイソプロピルを表し、pyは(N原子を介して配位する)ピリジンを表し、Mesはメシチル(すなわち、2,4,6−トリメチルフェニル)を表し、DiPP及びDIPPは2,6−ジイソプロピルフェニルを表し、MiPPは2−イソプロピルフェニルを表す。
【0141】
担持された錯体の調製及び本明細書に開示される反応に有用な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の更なる例としては、ルテニウム(II)ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)(C716)、ルテニウム(II)ジクロロ(3−メチル−2ブテニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C801); ルテニウム(II)ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C823); ルテニウム(II)(1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)(トリフェニルホスフィン)(C830); ルテニウム(II)ジクロロ(フェニルビニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C835); ルテニウム(II)ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)(C601);ルテニウム(II)(1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(3−ブロモピリジン)(C884); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(II)(C627); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C831); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C769);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C848);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C735);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリ−n−ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C771);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C809); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C747);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C827);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C713); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリ−n−ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C749); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C931); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(メチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C869); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C949); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C835); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(トリ−n−ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C871); ルテニウム(II)ジクロロ(tert−ブチルビニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C815); [1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II); 及び[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(tert−ブチルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C841)が挙げられる。
【0142】
更にまた、ROMP反応及び/又は例えば閉環メタセシス、クロスメタセシス、開環クロスメタセシス、自己メタセシス、エテノリシス、アルケン分解、非環式ジエンメタセシス重合など他のメタセシス反応に有用な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒としては、以下の構造のものが挙げられる。
【化34-1】

【化34-2】

【化34-3】
【0143】
一般に、本明細書に使用される遷移金属錯体(金属カルベンオレフィンメタセシス触媒)は、以下に記載されているようないくつかの異なる方法によって調製することができる。Schwabら(1996) J. Am. Chem.Soc.118:100−110、Schollら(1999) Org.Lett.:953−956、Sanfordら(2001) J. Am. Chem.Soc.123:749−750、米国特許第5,312,940号及び同第5,342,909号(各々の開示が参照により本明細書に援用される)。また、米国特許公開第2003/0055262号(Grubbsら)、WO02/079208号、及び米国特許第6,613,910号(Grubbsら)(各々の開示が参照により本明細書に援用される)も参照されたい。好ましい合成方法は、GrubbsらのWO03/11455A1号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に「第1世代グラブス」触媒と呼ばれる式(I)、一般に「第2世代グラブス」触媒と呼ばれる式(III)、及び一般に「グラブス−ホベイダ」触媒と呼ばれる式(VII)の構造を有する第8族遷移金属錯体である。
【0145】
より好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、式(I)、
【化35】

式中、
Mは第8族の遷移金属であり、
、L、及びLは中性電子供与体配位子であり、
nは0又は1であり、
mは0、1又は2であり、
kは0又は1であり、
及びXはアニオン性配位子であり、
及びRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から独立して選択され、
式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の2つ以上はいっしょになって1つ以上の環式基を形成することができ、更に、式中、X、X、L、L、L、R、及びRの任意の1つ以上は担持体に結合され得る、
及び式(VII)の構造を有し、
【化36】

式中、
Mは第8族遷移金属であり、
中性電子供与体配位子であり、
及びXはアニオン性配位子であり、
Yは、O又はNから選択されるヘテロ原子であり、
、R、R、及びRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び置換基から独立して選択され、
nは0,1又は2であり、
Zは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から選択され、
Y、Z、R,R、R、及びR の任意の組み合わせは連結して1つ以上の環式基を形成することができ、X、X、L、Y、Z、R,R、R、及びRの任意の組み合わせは担持体に結合され得る。
【0146】
最も好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、
【化37】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
及びLは、独立して、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであるか、又は、Lは、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、 1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン、及び1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択されるN−ヘテロ環式カルベンであり、Lは、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr )、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh) 、(PMePh)、及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素、Rはフェニル又は-CH=C(CH、若しくはチエニル又はフェニルチオである、又は、R及びRがいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する、式(VII)、

及び
【化38】

式中、
Mはルテニウム、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh) 、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィン、又は、Lは、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン、及び1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択されるN−ヘテロ環式カルベンであり、
及びXは塩化物であり、
Yは酸素であり、
、R、R、及びRはそれぞれ水素であり、
nは1、
Zはイソプロピルである、式(VII)の構造を有する。
【0147】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化39】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン及び1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素、Rはフェニル又は-CH=C(CH、若しくはチエニルである、又は、R及びRがいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0148】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化40】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素、Rはフェニル又は-CH=C(CH、若しくはチエニルである、又は、R及びRがいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0149】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化41】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素、Rはフェニル又は-CH=C(CH、若しくはチエニルである、又は、R及びRがいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0150】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化42】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン及び1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素、Rはフェニル又は-CH=C(CHである、又は、R及びRがいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0151】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化43】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素、Rはフェニル又は-CH=C(CHである、又は、R及びRがいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0152】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化44】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素、Rはフェニル又は-CH=C(CHである、又は、R及びRがいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0153】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、 式(I)の構造を有し、
【化45】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン及び1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素であり、
はフェニル又は−CH=C(CHである。
【0154】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化46】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素であり、
はフェニル又は−CH=C(CHである。
【0155】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化47】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から独立して選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素であり、
はフェニル又は−CH=C(CHである。
【0156】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化48】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン及び1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択されるN−ヘテロ環式カルベンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から独立して選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
とRはいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0157】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化49】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から独立して選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
とRはいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0158】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化50】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは0、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から独立して選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
とRはいっしょになってフェニルインデニリデンを形成する。
【0159】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化51】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは1、
kは1であり、
及びLは、独立して、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであるか、又は、Lは、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン及び1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択されるN−ヘテロ環式カルベンであり、Lは、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh) 、(PMePh)、及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素であり、
はフェニル又はtert−ブチルである。
【0160】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化52】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは1、
kは1であり、
は、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン及び1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択されるN−ヘテロ環式カルベンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素であり、
はフェニル又はtert−ブチルである。
【0161】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化53】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは1、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素であり、
はフェニル又はtert−ブチルである。
【0162】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の例は、式(I)の構造を有し、
【化54】

式中、
Mはルテニウム、
nは0、
mは1、
kは1であり、
は、N−ヘテロ環式カルベン1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデンであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルジフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルジフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは塩化物であり、
は水素であり、
はフェニル又はtert−ブチルである。
【0163】
本明細書に記載されている任意の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒に適した担持体は、合成、半合成、又は天然の物質であり得、有機物でもよく、あるいは例えばポリマー、セラミック又は金属など無機物であってもよい。担持体への付着は、必ずではないが一般には共有結合であり、それは直接的又は間接的共有連結であり得る。間接的共有結合は、必ずではないが典型的には、担持体表面上の官能基を介する。カチオン性基を含む担持体と結合した金属錯体上の1つ以上のアニオン性基の組み合わせ、又はアニオン性基を含む担持体と結合した金属錯体上の1つ以上のカチオン性基の組み合わせを含む、イオン性付着もまた適している。
【0164】
担持体を利用する場合、適した担持体は、シリカ、ケイ酸塩、アルミナ、酸化アルミニウム、シリカ−アルミナ、アルミノケイ酸塩、 ゼオライト、チタニア、二酸化チタン、マグネタイト、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、粘土、ジルコニア、二酸化ジルコニウム、炭素、ポリマー、セルロース、セルロースポリマー、アミロース、アミロースポリマー、又はそれらの組み合わせから選択され得る。担持体は、好ましくは、シリカ、ケイ酸塩、又はそれらの組み合わせを含む。
【0165】
特定の実施形態では、官能基、不活性部分、及び/又は過剰配位子を含むように処理された担持体もまた使用し得る。本明細書に記載されている官能基はいずれも、担持体への組み込みに適しており、一般に当該技術分野で周知の技術によって達成することができる。一般に担持体上の利用可能な付着部位を減少させるために、例えば、担持体に連結された錯体の配置又は量を制御するために、不活性部分もまた担持体上に組み込むことができる。
【0166】
以下に記載する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、当該技術分野で周知の技術によってオレフィンメタセシス反応に利用することができる。金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、典型的には、固体として、溶液として、又は懸濁液として樹脂組成物に添加される。金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を懸濁液として樹脂組成物に添加する場合、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、鉱油、パラフィン油、大豆油、トリイソプロピルベンゼンのような分散担体中に、又は、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の効果的な分散を可能にする十分に高い粘度を有し、かつ十分に不活性であり、かつオレフィンメタセシス反応において低沸点不純物として作用しないように十分に高い沸点を有する疎水性液体のような分散担体中に懸濁される。 反応に使用される金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の量(すなわち、「触媒充填量」)は、使用される反応物のアイデンティティ及び反応条件などの様々な要因に依存することが理解されよう。したがって、触媒充填量は各反応に対して最適にかつ独立して選択され得ることが理解される。しかしながら、一般に、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、オレフィン基材の量に対して約0.1ppm、1ppm、又は5ppmという低い量から、約10ppm、15ppm、25ppm、50ppm、100ppm、200ppm、500ppm、又は1000ppmという高い量までの範囲で存在することになるであろう。
【0167】
金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、オレフィン基材に対して約0.00001モル%、0.0001モル%、又は0.0005モル%という低い量から、約0.001モル%、約0.0015モル%、約0.0025モル% 0.005モル%、0.01モル%、0.02モル%、0.05モル%又は0.1モル%という高い量までの範囲で存在することになるであろう。
【0168】
モノマー対触媒のモル比として表すと、触媒(「モノマー対触媒比」)充填量は、 一般に、約10,000,000:1、1,000,000:1、又は200,00[sic]:1という低い量から、約100,000:1 66,667:1、40,000:1、20,000:1、10,000:1、5,000:1,又は1,000:1という高い量までの範囲で存在することになるであろう。

環式オレフィン(樹脂)組成物及び物品
【0169】
環式オレフィン樹脂、特に、本発明によるROMP組成物は、一般に、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの本発明の機能性エラストマーと、例えばガラス又は炭素基材材料のような少なくとも1つの基材材料とを含む。別の実施形態では、環式オレフィン樹脂、特に、本発明によるROMP組成物は、一般に、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの本発明の機能性エラストマーと、少なくとも1つのヘテロ原子官能化基材とを含む。上述の環式オレフィンは、使用に適しており、官能化されていてもいなくてもよく、置換されていてもいなくてもよい。一般に、基材材料へのROMP組成物の接着性を改善するため及びROMP組成物が基材材料の存在下でメタセシス触媒にさらされたときにポリマー・マトリックス複合材の衝撃特性(例えば、衝撃強度又は衝撃靭性)を改善するために有効な量で本発明の機能性エラストマーがROMP樹脂組成物に存在する場合に、特に有利な結果を得ることができる。更に、本発明による環式オレフィン樹脂組成物はまた、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの本発明の機能性エラストマーとを含んでもよく、 その樹脂組成物が少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と組み合わされ、その結果得られる樹脂組成物は、例えば、ガラス基材又は炭素基材のような少なくとも1つの基材に適用される。更に、本発明による環式オレフィン樹脂組成物はまた、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの本発明の機能性エラストマーとを含んでもよく、 その樹脂組成物が少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と組み合わされ、その結果得られる樹脂組成物は、少なくとも1つの基材に適用され、その基材は例えばアミノ官能化基材のような、例えばヘテロ原子官能化基材のような官能化基材であり得る。
【0170】
樹脂組成物中の接着促進剤の量は広範にわたり様々であり得、その製造操作又は特定の末端用途に依存して様々であり得る。一般に、機械的特性に望ましい増強をもたらす任意のレベルの接着促進剤に特に関心が持たれる。樹脂組成物と配合する又は組み合わせるときの接着促進剤の濃度は、典型的には0.001〜50phr、特定すると0.05〜10phr、更に特定すると0.1〜10phr、又は更に特定すると0.5〜4.0phrの範囲である。
【0171】
樹脂組成物中の本発明の機能性エラストマーの量は広範にわたり様々であり得、その製造操作又は特定の末端用途に依存して様々であり得る。一般に、機械的特性に望ましい改善をもたらす機能性エラストマーの任意のレベルに、特に関心が持たれる。樹脂組成物と配合する又は組み合わせるときの機能性エラストマーの濃度は、典型的には0.001〜10phr、特定すると0.05〜10phr、更に特定すると0.1〜10phr、又は更に特定すると0.5〜4.0phrの範囲である。
【0172】
本発明の好ましい態様では、本発明の少なくとも1つの機能性エラストマーを含まないそのような樹脂組成物と比較して増強された機械特性はまた、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、本発明の少なくとも1つの機能性エラストマーと、少なくとも1つの基材材料とを含む樹脂組成物、又は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、本発明の機能性エラストマーとを含む樹脂組成物に関しても、その樹脂組成物が少なくとも1つの基材材料に適用された場合に、得ることができる。例えば、本発明の機能性エラストマーを含めることは、本発明の機能性エラストマーを含有しない同じ樹脂組成物と比較して、層間剪断強度(ILSS)及び衝撃強度又は衝撃靭性のような機械的特性の改善をもたらし得る。本発明の特定の態様では、基材材料は、有利なことに、アミノシランで処理された基材を含み得る。
【0173】
別の実施形態では、本発明による樹脂組成物は、外因性阻害剤を更に含むことができる。本発明で使用するための外因性阻害剤又は「ゲル変性添加剤」は、米国特許第5,939,504号に記載されており、その内容は参照により本明細書に援用される。別の実施形態では、本発明による樹脂組成物は、ヒドロペルオキシドゲル変性剤を更に含むことができる。本発明で使用するためのヒドロペルオキシドゲル変性剤は、国際特許出願PCT/US2012/042850号に記載されており、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0174】
本発明の樹脂組成物は、所望により添加剤と配合され得る。適した添加剤としては、限定するものではないが、ゲル変性剤、硬度調節剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、安定剤、架橋剤、充填剤、結合剤、カップリング剤、チキソトロープ剤、湿潤剤、殺生物剤、 可塑剤、顔料、難燃剤、染料、繊維、及び補強材(コーティング剤、カップリング剤、フィルム形成剤及び/又は潤滑剤で処理されたものなどのような、サイジング処理された補強材及び基材を含む)が挙げられる。更に、この樹脂組成物中に存在する添加剤の量は、使用される特定の添加剤の種類に依存して様々であり得る。この樹脂組成物中の添加剤の濃度は、典型的には、例えば、0.001〜85重量%、特定すると0.1〜75重量%、又は更に特定すると2〜60重量%の範囲である。
【0175】
本発明の樹脂組成物は、所望により、架橋剤、例えば、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、及びペルオキシ酸から選択される架橋剤を用いて又は用いずに配合することができる。
【0176】
酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤としては、ゴム又はプラスチック産業で使用される任意の抗酸化剤又はオゾン劣化防止剤が挙げられる。Goodyear Chemicals、The Goodyear Tire and Rubber Company(オハイオ州アクロン市(郵便コード44316))から『Index of Commercial Antioxidants and Antiozonants, Fourth Edition』を入手可能である。適した安定剤(すなわち、酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤)としては、限定するものではないが、以下が挙げられる。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、Wingstay(登録商標)S(Goodyear)のようなスチレン化フェノール、2−及び3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、Wingstay C(Goodyear)のようなアルキル化ヒンダードフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−sec−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、Cyanox(登録商標)53(Cytec Industries Inc.) and Permanax WSOのような種々のビスフェノール、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)フェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、ポリブチル化ビスフェノールA、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)、1,1’−チオビス(2−ナフトール)、エチル抗酸化剤738のようなメチレン架橋ポリアリルフェノール、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、Wingstay Lのようなp−クレゾールとジシクロペンタジエンとのブチル化反応生成物、テトラキス(メチレン−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン、すなわちIrganox(登録商標)1010(BASF)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、例えばEthanox(登録商標)330(Albemarle Corporation)、例えばEthanox 4702又はEthanox 4710のような4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、すなわち、Good−rite(登録商標)3114(Emerald Performance Materials)、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、トリス(ノニルフェニルホスファイト)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル)ペンタエリスリトール)ジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、Naugard(登録商標)492(Chemtura Corporation)のようなホスフェート化フェノール及びビスフェノール、Irganox B215のようなホスファイト/フェノール酸化防止剤ブレンド、Irganox 1093のようなジ−n−オクタデシル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホナート、Irganox 259のような1,6−ヘキサメチレンビス(3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナート)、Irganox 1076のようなオクタデシル−3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニリレンジホスホナイト、ジフェニルアミン、4,4’−ジエトキシジフェニルアミンが挙げられる。そのような材料は通常、樹脂組成物中に約0.10phr〜10phrのレベル、より好ましくは約0.1phr〜5phrのレベルで使用される。
【0177】
適した補強材料としては、ポリマーに組み込まれたときにポリマー複合材の強度又は剛性を高めるものが含まれる。補強材料は、フィラメント、繊維、ロービング、マット、織物、布地、編物、布、又は他の周知の構造の形態であり得る。適した補強材料としては、ガラス繊維及びガラス繊維織物、炭素繊維及び炭素繊維織物、アラミド繊維及びアラミド繊維織物、ポリオレフィン繊維又はポリオレフィン繊維織物(HoneywellによってSpectra(登録商標)の商品名で製造されている超高分子量ポリエチレン繊維織物を含む)、ポリオキサゾール繊維又はポリオキサゾール繊維織物(Toyobo Corporation (東洋紡株式会社)によって商品名Zylon(登録商標))で製造されているもの)などが挙げられる。表面仕上げ、サイジング、又はコーティングを含む補強材料は、本明細書に記載の発明に特に適しており、Ahlstrom社のガラスロービング(R338−2400)、Johns Manville社のガラスロービング(Star ROV(R)−086)、Owens Corning社のロービング(OCV 366−AG−207、R25H−X14−2400、SE1200−207、SE1500−2400、SE2350−250)、PPG社のガラスロービング(Hybon(登録商標)2002、Hybon(登録商標)2026)、Toho Tenax(登録商標)炭素繊維トウ(HTR−40)、Zoltek炭素繊維トウ(Panex(登録商標)35)が挙げられる。更に、表面仕上げ、サイジング、又はコーティングを含む補強材料を使用して調製された任意の繊維織物が本発明に適している。有利なことに、本発明は、補強材料から表面仕上げ、サイジング、又はコーティングを除去する高価なプロセスを必要としない。加えて、ガラス繊維又はガラス繊維織物としては、Aガラス、Eガラス又はSガラス、S−2ガラス、Cガラス、Rガラス、ECRガラス、Mガラス、Dガラス、 及び石英、並びにシリカ/石英が含まれ得る。好ましいガラス繊維補強材料は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、及び/又はポリウレタン樹脂と共に使用するために配合された仕上げを有するものである。これらのタイプの樹脂と組み合わせて使用するように配合された場合、それらの補強材料は「マルチコンパチブル」と呼ばれることがある。そのような補強材料は、一般に、ビニル、アミノ、グリシドキシ、又はメタクリルオキシ官能基(又はそれらの様々な組み合わせ)を含むオルガノシランカップリング剤を用いて製造中に処理され、繊維表面の保護のため、並びに取り扱い及び加工(例えば、スプーリングと製織)を容易にするために、仕上げ剤でコーティングされる。仕上げ剤は、典型的には、フィルム形成剤、界面活性剤、及び潤滑剤のような化学化合物及び高分子化合物の混合物を含む。特に好ましいガラス補強材料は、ある量のアミノ官能化シランカップリング剤を含有するものである。特に好ましい仕上げ剤は、エポキシ系及び/又はポリウレタン系フィルム形成剤を含むものである。好ましいガラス繊維補強材料の例は、Hybon(登録商標)2026、2002、2001(PPG) マルチコンパチブルロービング、 Ahlstrom R338(エポキシシランでサイジング処理されたロービング)、StarRov(登録商標)086(Johns Manville)(ソフトシランサイジング処理されたマルチコンパチブルロービング)、OCV(商標) 366、SE 1200、R25H(Owens Corning)マルチコンパチブルロービング、OCV(商標) SE 1500 及び2350
(Owens Corning)エポキシ相溶性ロービング、Jushi Groupのマルチコンパチブルガラスロービング(752型、396型、312型、386型)に基づくものである。追加の好適なポリマー繊維及び繊維織物としては、ポリエステル、ポリアミド(例えば、E.I.DuPont社から入手可能なナイロン(NYLON)ポリアミド、芳香族ポリアミド(E.I. DuPont社から入手可能なケブラー(KEVLAR)芳香族ポリアミド、又はLenzing Aktiengesellschaft社から入手可能なP84芳香族ポリアミド)、ポリイミド(例えば、E.I. DuPont社から入手可能なカプトン(KAPTON)ポリイミド)、ポリエチレン(例えば、Toyobo Co., Ltd.(東洋紡)のダイニーマ(DYNEEMA)ポリエチレン)が挙げられる。追加の好適な炭素繊維としては、限定するものではないが、Hexcel CorporationのAS2C、AS4、AS4C、AS4D、AS7、IM6、IM7、IM9及びPV42/850; Toray Industries, Inc.(東レ)のTORAYCA T300、T300J、T400H、T600S、T700S、T700G、T800H、T800S、T1000G、M35J、M40J、M46J、M50J、M55J、M60J、M30S、M30G及びM40; Toho Tenax, Inc.(東邦テナックス)のHTS12K/24K、G30−500 3k/6K/12K、G30−500 12K、G30−700 12K、G30−7000 24K F402、G40−800 24K、STS 24K、HTR 40 F22 24K 1550tex; Grafil Inc.の34−700、34−700WD、34−600、34−600WD及び34−600(サイジング処理されていない); Cytec IndustriesのT−300、T−650/35、T−300C及びT−650/35Cが含まれ得る。追加の好適な炭素繊維としては、限定するものではないが、AKSACA(A42/D011)、AKSACA(A42/D012)、Blue Star Starafil(10253512−90)、Blue Star Starafil(10254061−130)、SGL Carbon(C30 T050 1.80)、SGL Carbon(C50 T024 1.82)、Grafil(347R1200U)、Grafil(THR 6014A)、Grafil(THR 6014K)、Hexcel Carbon(AS4C/EXP 12K)、Mitsubishi(Pyrofil TR 50S 12L AF)、Mitsubishi(Pyrofil TR 50S 12L AF)、Toho Tenax(T700SC 12000−50C)、Toray(T700SC 12000−90C)、Zoltek(Panex 35 50K、サイジング11)、Zoltek(Panex 35 50K、サイジング13)が含まれ得る。追加の好適な炭素繊維織物としては、限定するものではないが、Vectorply(C−L 1800)及びZoltek(Panex 35 UD Fabic−PX35UD0500−1220)が含まれ得る。追加の好適なガラス繊維織物としては、限定するものではないが、Vectorply(E−LT 3500−10)(PPG Hybon(登録商標)2026系); Saertex(U14EU970−01190−T2525−125000)(PPG Hybon(登録商標)2002系); Chongqing Polycomp Internation Corp.(CPIC(登録商標)Fiberglass)(EKU 1150(0)/50−600)及びOwens Corning(L1020/07A06 Xweft 200tex)により供給されているガラス繊維織物が含まれ得る。
【0178】
他の適した充填剤としては、例えば、金属密度調節剤、例えばミクロスフェアのような微粒子密度調節剤、及び例えばガラス又はセラミックビーズのようなマクロ粒子密度調節剤が含まれる。金属密度調節剤としては、粉末状の、焼結された、切削された、フレーク状の、ファイル削りされた、粒状又は顆粒状の金属、金属酸化物、金属窒化物、及び/又は金属炭化物などが含まれるが、これらに限定されない。とりわけ好ましい金属密度調節剤としては、タングステン、炭化タングステン、アルミニウム、チタン、鉄、鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ホウ素、及び炭化ケイ素が含まれる。微粒子密度調節剤としては、ガラス、金属、熱可塑性プラスチック(膨張性のもの又は予じめ膨張されているもののいずれか)又は熱硬化性プラスチック、及び/又はセラミック/シリケートミクロスフェアが含まれるが、これらに限定されない。マクロ粒子密度調節剤としては、ガラス、プラスチック又はセラミックのビーズ; 金属の棒、塊、片又はショット; 中空のガラス、セラミック、プラスチック又は金属の球、ボール若しくは管などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの本発明の機能性エラストマーと、少なくとも1つの基材材料とを含む樹脂組成物から製造される物品もまた目的とする。更に、本発明は、少なくとも1つの環式オレフィンと、少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と、少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの接着促進剤と、少なくとも1つの本発明の機能性エラストマーとを含む樹脂組成物から製造される物品を目的とし、ここで、樹脂組成物は少なくとも1つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と組み合わされ、その結果得られる樹脂組成物は、少なくとも1つの基材に適用され、その基材は例えばアミノ官能化基材のような、例えばヘテロ原子官能化基材のような官能化基材であり得る。物品としては、鋳造、遠心鋳造、引抜成形、成形、回転成形、開放成形、反応射出成形(RIM)、樹脂トランスファー成形(RTM)、注入、真空含浸、表面コーティング、フィラメント巻回、及び、ポリマー物品の製造に有用な周知の他の方法を含む標準的な製造技術によって形成されるものが含まれ得るが、これらに限定されない。成形部品としては、反応射出成形、樹脂トランスファー成形、及び真空アシスト樹脂トランスファー成形が含まれるが、これらに限定されない。更に、本発明の組成物及び製品は、単一のポリマー−表面界面に限定されず、複数のポリマー−表面界面を含む多層及び積層体もまた含む。本発明はまた、樹脂を多孔質材料に注入することによって形成される物品の製造にも適している。そのような多孔質材料としては、木材、セメント、コンクリート、連続気泡及び網状発泡体及びスポンジ、紙、ボール紙、フェルト、天然又は合成繊維のロープ又は編組、及び様々な焼結材料が含まれるが、これらに限定されない。更に、他の製造技術としては、限定するものではないが、セル鋳造、ディップ鋳造、連続鋳造、埋め込み、ポッティング、カプセル化、フィルム鋳造又は溶媒鋳造、ゲート鋳造、鋳型鋳造、スラッシュ鋳造、押出成形、機械的発泡、化学的発泡、物理的発泡、圧縮成形又はマッチドダイ成形、スプレーアップ、真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)、Seemanの複合樹脂注入成形プロセス(SCRIMP)、ブロー成形、インモールドコーティング、インモールド塗装又は射出、真空成形、強化反応射出成形(RRIM)、構造反応射出成型(SRIM)、熱膨張トランスファー成形(TERM)、樹脂射出再循環成形(RICM)、制御大気圧樹脂注入(CAPRI)、ハンドレイアップが挙げられる。限定するものではないが、RIM、SRIM及びRRIMを含むRIM又はインピンジメント形式の混合ヘッドの使用を必要とする製造技術では、単一の混合ヘッド又は複数の混合ヘッド並びに複数の材料射出流(例えば、2つの樹脂流及び1つの触媒流)を使用して、製品を成形することができる。
【0180】
更に、本発明は、任意の構成、重量、サイズ、厚さ、又は幾何学的形状の製品を製造することもまた可能にする。製品の例としては、限定するものではないが、航空宇宙向け構成部品、海洋向け構成部品、自動車構成部品、スポーツ用品構成部品、電気部品、及び工業用構成部品、医療用構成部品、歯科用構成部品、又は軍用構成部品として使用するための任意の成形品又は形作られた物品が挙げられる。一実施形態では、物品は、航空機又は一般的な発電に使用されるタービン構成部品であり得る。一実施形態では、タービン構成部品としては、限定するものではないが、吸気口、パイロン、パイロンフェアリング、音響パネル、スラストリバーサパネル、ファンブレード、ファン格納ケース、バイパスダクト、空力カウル、又は 翼形構成部品が含まれ得る。一実施形態では、物品はタービンブレード構成部品又はタービンブレードであり得る。一実施形態では、物品は、ウィンドタービン用のウィンドローターブレード、タワー、スパーキャップ、又はナセルであり得る。一実施形態では、物品は機体構成部品であり得る。航空宇宙向け構成部品の例としては、限定するものではないが、胴体スキン、翼、フェアリング、ドア、アクセスパネル、空力制御面、又はスティフナーのうちの1つ又は複数が含まれ得る。一実施形態では、物品は自動車構成部品であり得る。自動車構成部品の例としては、限定するものではないが、ボディパネル、フェンダー、スポイラー、荷台、保護プレート、ボンネット、縦レール、ピラー、又はドアのうちの1つ又は複数が含まれ得る。工業用構成部品の例としては、限定するものではないが、ライザー、プラットフォーム、油及びガス用の衝撃保護構造、橋、パイプ、圧力容器、電柱、コイル、容器、タンク、ライナー、収納容器、腐食環境(例えば、塩素アルカリ、腐食性、酸性、塩水等)用の物品、コンクリート建築物及び道路用補強構造物、又はラジエーターのうちの1つ又は複数が含まれ得る。電気部品の例としては、限定するものではないが、例えばコイル又は電気モーターのような巻回物品、若しくは絶縁装置のうちの1つ又は複数が含まれ得る。一実施形態では、物品は、磁気共鳴イメージングシステムの渦電流遮蔽構成部品又は任意の電磁放射用遮蔽構成部品であり得る。一実施形態では、物品は、限定するものではないが、人員又は車両用の耐弾防護装置又は人員又は設備を保護するための防弾構造物を含む軍用構成部品であり得る。一実施形態では、物品は、限定するものではないが、矢軸、テニスラケットフレーム、ホッケースティック、複合弓肢、又はゴルフクラブシャフトを含むスポーツ用品構成部品であり得る。
【0181】
本発明による樹脂組成物はサイジング組成物を更に含むことができる、又は、本発明による樹脂組成物を使用して、当該業界で一般的に使用されている特定の市販のシランでサイジング処理されている基材材料への改善された接着性をもたらすことができる。当該技術分野で周知のように、ガラス繊維は、典型的には、ガラス繊維を補強するために、及び加工中並びに複合材の製造中にストランドの機械的完全性を保護するために、それらが形成された直後に化学溶液(例えば、サイジング組成物)で処理される。金属カルベンオレフィンメタセシス触媒及びポリジシクロペンタジエン複合材と適合性のあるサイジング処理は、米国特許第6,890,650号及び同第6,436,476号に記載されており、それらの両方の開示は参照により本明細書に援用される。しかしながら、これらの開示は、工業用ガラス製造において一般的に使用されない特殊なシラン処理の使用に基づいている。これに対して、本発明は、業界で一般的に使用されているシランでサイジング処理されたポリマー・ガラス複合材の機械的特性の改善をもたらすことができる。
【0182】
ガラスサイジング配合物は、典型的には、少なくとも1つのフィルム形成剤(典型的にはフィルム形成ポリマー)と、少なくとも1つのシランと、少なくとも1つの潤滑剤とを含む。金属カルベンオレフィンメタセシス触媒又はオレフィン重合反応の効果を妨げない又は実質的に低下させないサイジング配合物の任意の成分は、本発明と適合性があると考えられ、一般に本明細書で使用され得る。
【0183】
ROMP触媒(金属カルベンオレフィンメタセシス触媒)と適合性のあるフィルム形成剤としては、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、及び/又はポリ酢酸ビニルが挙げられる。金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の性能に悪影響を及ぼさない他の一般的なフィルム形成剤もまた使用され得る。フィルム形成剤は、典型的には、非イオン性水性エマルジョンとして使用される。ガラスの加工性と複合材の機械的特性の望ましいバランスを達成するために、所与のサイジング配合物中に複数のフィルム形成剤を使用してもよい。
【0184】
より具体的には、フィルム形成剤は、エポキシド基あたりの平均分子量(EEW)が500未満のエポキシモノマー又はオリゴマーとして定義される低分子量エポキシエマルジョン及び/又はエポキシド基あたりの平均分子量(EEW)が500以上のエポキシモノマー又はオリゴマーとして定義される高分子量エポキシエマルジョンを含むことができる。適した低分子量製品の例としては、Franklin Internationalが製造しているFranklin K8−0203(EEW 190)及びFranklin E−102(EEW 225〜275)を含む水性エポキシエマルジョンが挙げられる。低分子量エポキシエマルジョンのその他の例としては、Hexionから入手できるEPI−REZ(商標)3510−W−60(EEW 185〜215)及びEPI−REZ(商標)3515−W−60(EEW 225〜275)が挙げられる。低分子量エポキシエマルジョンの更なる例としては、COIMから入手できるFilco 309(EEW 270)及びFilco 306(EEW 330)が挙げられる。低分子量エポキシエマルジョンの更なる例としては、DSMから入手できるNeoxil(登録商標)965(EEW 220〜280) 及びNeoxil(登録商標)4555(EEW 220〜260)が挙げられる。適した高分子量エポキシエマルジョンの例としては、Hexionから入手できるEPI−REZ(商標)3522−W−60(EEW 615〜715)が挙げられる。
【0185】
変性されたエポキシ、ポリエステル、及びポリウレタンの水性エマルジョンもまた、フィルム形成剤に使用することができる。適した変性エポキシ製品の例としては、DSMによって製造されているエマルジョンが挙げられ、Neoxil(登録商標)2626(500〜620のEEWを有する可塑化エポキシ)、Neoxil(登録商標)962/D(470〜550のEEWを有するエポキシ−エステル)、Neoxil(登録商標)3613(500〜800のEEWを有するエポキシ−エステル)、Neoxil(登録商標)5716(210〜290のEEWを有するエポキシ−ノボラック)、Neoxil(登録商標)0035(2500のEEWを有する可塑化エポキシ−エステル)、及びNeoxil(登録商標)729(200〜800のEEWを有する潤滑化エポキシ)が含まれる。変性エポキシエマルジョンの更なる例は、COIMから入手可能であり、Filco 339(EEWが2000の不飽和ポリエステル−エポキシ)及びFilco 362(EEWが530のエポキシ−エステル)を含む。適したポリエステル製品の例としては、Neoxil(登録商標)954/D、Neoxil(登録商標)2635、及びNeoxil(登録商標)4759(不飽和ビスフェノール系ポリエステル)を含む、DSMによって製造されているものが挙げられる。その他の適したDSMの製品としては、Neoxil(登録商標)9166及びNeoxil(登録商標)968/60(アジペートポリエステル)が挙げられる。適した製品の更なる例としては、Filco 354/N(不飽和ビスフェノール系ポリエステル)、Filco 350(不飽和ポリエステル)、及びFilco 368(飽和ポリエステル)を含む、COIMによって製造されているエマルジョンが挙げられる。適したポリウレタン製品の例としては、Baybond(登録商標)330及びBaybond(登録商標)401を含む、Bayer Material Scienceによって製造されているエマルジョンが挙げられる。
【0186】
フィルム形成剤はまた、ポリオレフィン又はポリオレフィン−アクリルコポリマー、ポリビニルアセテート、変性ポリビニルアセテート、又はポリオレフィン−アセテートコポリマーを含んでもよい。適したポリオレフィンとしては、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、及びそれらのコポリマーが挙げられ、そのポリオレフィンは効果的なフィルム形成剤としての使用のために酸化、マレイン化、又は他の方法で処理され得る。適した製品の例としては、Michem(登録商標)Emulsion 91735、Michem(登録商標)Emulsion 35160、Michem(登録商標)Emulsion 42540、Michem(登録商標)Emulsion 69230、Michem(登録商標)Emulsion 34040M1、Michem(登録商標)Prime 4983R、及びMichem(登録商標)Prime 4982SCを含む、Michelmanによって製造されているエマルジョンが挙げられる。適した製品の例としては、PD708H、PD707、及びPD0166を含む、HB Fullerによって製造されているエマルジョンが挙げられる。その他の適した製品としては、Duracet(登録商標)637を含む、Franklin Internationalによって製造されているエマルジョンが挙げられる。その他の適した製品としては、Vinamul(登録商標)8823(可塑化ポリビニルアセテート)、Dur−O−Set(登録商標)E−200(エチレン酢酸ビニルコポリマー)、Dur−O−Set TX840(エチレン酢酸ビニルコポリマー) 及びResyn(登録商標)1971(エポキシ変性ポリビニルアセテート)を含む、Celaneseによって製造されているエマルジョンが挙げられる。
【0187】
限定するものではないが、好ましいフィルム形成剤としては、低分子量及び高分子量エポキシ、飽和及び不飽和ポリエステル、及びポリオレフィンが挙げられ、例えば、Franklin K80−203、Franklin E−102、Hexion 3510−W−60、Hexion 3515−W−60、Michelman 35160などである。
【0188】
非イオン性潤滑剤もまた、サイジング組成物に添加することができる。ROMP組成物と適合性のある適した非イオン性潤滑剤としては、ポリエチレングリコールのエステル、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーが挙げられる。ガラスの加工性と複合材の機械的特性の望ましいバランスを達成するために、所望により、所与のサイジング配合物中に複数の非イオン性潤滑剤を使用してもよい。
【0189】
適した潤滑剤は、200〜2000、好ましくは200〜600の平均分子量のポリエチレングリコール(PEG)単位を含有することができる。これらのPEG単位は、オレイン酸塩、タルタル酸塩、ラウリン酸塩、ステアリン酸塩などを含む1つ以上の脂肪酸でエステル化することができる。特に好ましい潤滑剤としては、PEG400のジラウレート、PEG600のジラウレート、PEG400のジステアレート、PEG600のジステアレート、PEG400のジオレエート、及びPEG600のジオレエートが挙げられる。適した製品の例としては、MAPEG(登録商標)400 DO、MAPEG(登録商標)400 DOT、MAPEG(登録商標)600 DO、MAPEG(登録商標)600 DOT及びMAPEG(登録商標)600 DSを含む、BASFによって製造されている化合物が挙げられる。その他の適した製品としては、Mulsifan 200 DO、Mulsifan 400 DO、Mulsifan 600 DO、Mulsifan 200 DL、Mulsifan 400 DL、Mulsifan 600 DL、Mulsifan 200 DS、Mulsifan 400 DS、及びMulsifan 600 DSを含む、Zschimmer & Schwarzによって製造されている化合物が挙げられる。その他の適した製品としては、Agnique(登録商標)PEG 300 DO、Agnique(登録商標)PEG 400 DO、及びAgnique(登録商標)PEG 600 DOを含む、Cognisによって製造されている化合物が挙げられる。
【0190】
適した非イオン性潤滑剤には、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーもまた含まれる。適した製品の例としては、Pluronic(登録商標)L62、Pluronic(登録商標)L101、Pluronic(登録商標)P103、及びPluronic(登録商標)P105を含む、BASFによって製造されている化合物が挙げられる。
【0191】
カチオン性潤滑剤もまた、サイジング組成物に添加することができる。ROMPと適合性のあるカチオン性潤滑剤としては、Pulcra Chemicalsによって製造されているEmery 6760Lのような変性ポリエチレンイミンが挙げられる。
【0192】
所望により、、サイジング組成物にシランカップリング剤を添加してもよく、非限定的な例としては、アルキルシラン、アルケニルシラン、及びノルボルネニルシラン、並びにメタクリレート官能化シラン、アクリレート官能化シラン、アミノ官能化シラン、又はエポキシ官能化シランが挙げられる。
【0193】
所望により、サイジング組成物は、サイジング樹脂のpHを修正するための1つ以上の添加剤を含有してもよい。1つの好ましいpH調整剤は酢酸である。
【0194】
サイジング組成物は、所望により、ガラスサイジング組成物に有用な他の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤としては、乳化剤、消泡剤、共溶媒、殺生物剤、抗酸化剤、及びサイジング組成物の有効性を改善するように設計された添加剤が含まれ得る。サイジング組成物は、任意の方法によって調製することができ、ガラス繊維又はガラス繊維織物のような本明細書で用いるための基材材料に、任意の技術又は方法によって適用することができる。
【0195】
好ましい実施形態において、本明細書に開示されるメタセシス反応は、乾燥した不活性雰囲気下で行われる。そのような雰囲気は、窒素及びアルゴンのようなガスを含む任意の不活性ガスを使用して生成され得る。不活性雰囲気の使用は、触媒活性を促進することに関して最適であり、不活性雰囲気下で行われる反応は、典型的には、比較的低い触媒充填量で行われる。本明細書に開示される反応は、酸素含有及び/又は水含有雰囲気中で実施することもでき、一実施形態では、反応は周囲条件下で行われる。しかしながら、反応中の酸素又は水の存在は、不活性雰囲気下で行われる反応と比較して、より高い触媒充填量の使用を必要とすることがある。反応物の蒸気圧が許容する場合、本明細書に開示される反応は、減圧下で行うこともできる。
【0196】
本明細書に開示される反応は、溶媒中で行うことができ、交差メタセシスに対して不活性な任意の溶媒を使用することができる。一般に、メタセシス反応に使用され得る溶媒としては、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、エーテル、脂肪族炭化水素、アルコール、水、又はそれらの混合物のような、有機、プロトン性、又は水性の溶媒が挙げられる。溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、p−キシレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ペンタン、メタノール、エタノール、水、又はそれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、本明細書に開示される反応は、ニートで、すなわち溶媒を使用せずに行われる。
【0197】
本明細書に開示される方法によるメタセシス反応が行われる温度は、必要に応じて調整することができ、少なくとも約−78℃、−40℃、−10℃、0℃、10℃、20℃、25℃、35℃、50℃、 70℃、100℃、又は150℃であってもよく、又はその温度は、これらの値のいずれかを上限又は下限とする範囲内であってもよい。好ましい実施形態では、反応は少なくとも約35℃の温度で行われ、別の好ましい実施形態では、反応は少なくとも約50℃の温度で行われる。
【0198】
本発明をその特定の実施形態と共に説明してきたが、上記の説明及び以下の実施例は例示を目的としたものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点及び変更は、本発明が関係する当業者には明らかであろう。

実験的
【0199】
以下の実施例では、使用される数値(例えば、量、温度など)に関する正確性を確保するための努力がなされたが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。別段の指示がない限り、温度は摂氏(℃)単位であり、圧力は大気圧又はそれに近い圧力であり、粘度はセンチポアズ(cP)単位である。
【0200】
以下の実施例は、本明細書に記載した本発明を限定するものではないと考えられるべきであり、むしろ、本発明の衝撃改質組成物の代表例及びそれらの使用方法として提供されている。

実施例
材料及び方法
【0201】
別段の記述がない限り、すべてのガラス器具はオーブン乾燥され、反応は周囲条件で実施された。別段の記述がない限り、すべての溶媒及び試薬は、商業的供給元から購入し、受け取ったままのものを使用した。
【0202】
ジシクロペンタジエン(Ultrene(登録商標)99)(DCPD)はCymetech Corporationから入手した。米国特許第4,899,005号に記載されているように、20〜25%のトリシクロペンタジエン(及び少量の、より高級のシクロペンタジエン同族体)を含有する変性DCPDベース樹脂をUltrene(登録商標)99の熱処理によって調製した。
【0203】
Bayer Material Science(Mondur(登録商標)MLQ)から受け取った液体のMDI(4,4’−MDIと2,4’−MDIとの50/50混合物)を、そのまま、指示されているように使用した。Ethanox(登録商標)4702酸化防止剤(4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)(Albemarle Corporation)を、指示されているように使用した。2phrのCab−o−sil TS610を含有するCrystal Plus 70FG鉱油を使用して、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒懸濁液を調製した。Arkemaから受け取ったトリフェニルホスフィン(TPP)をそのまま使用した。
【0204】
一連のスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)水素化コポリマー衝撃性改良剤を評価した。これらの改良剤はKraton Performance Polymersから入手し、受け取ったものをそのまま使用した。評価した衝撃性改良剤の組成を、製造元であるKraton Performance Polymersから入手できるデータシート及び製品パンフレット、並びに製造元のウェブサイト(www.kraton.com)が提供している情報にしたがって表1にまとめた。Kraton FG1901G及びFG1924Gは、ミッドブロック上にグラフトされた、指示された重量%の無水マレイン酸を含有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化中間ブロックを有する直鎖状スチレントリブロックコポリマーである。Kraton G1650M及びG1657Mは、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化中間ブロックを有する直鎖状スチレントリブロックコポリマーである。Kraton FG1901G、Kraton FG1924G、Kraton G1657M、及びKraton G1650Mの製造元のデータシート及び製品パンフレットによると、グレード命名法において「G」はKraton G水素化スチレンブロックコポリマーを示し、「FG」は官能化Kraton Gを示す。スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(Kraton G1657M及びKraton G1650M)及び無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(Kraton FG1924G及びKraton FG1901G)を、窒素下で撹拌しながら約52℃で加熱することにより、変性DCPD(20〜25%のトリシクロペンタジエンを含む)中に溶解した。
【表1】
【0205】
金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、標準的な方法によって調製された、[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C827)を含むものである。
【0206】
ガラス繊維織物は、Vectorply(E−LT 3500−10)(PPG Hybon(登録商標)2026系、「Vectorply Glass Fabric」)、Saertex(U14EU970−01190−T2525−125000)(PPG Hybon(登録商標)2002系、「Saertex Glass Fabric」)、Chongqing Polycomp Internation Corp.(CPIC(登録商標)Fiberglass)(EKU 1150(0)/50−600)(「CPIC Glass Fabric」)、及びOwens Corning(L1020/07A06 Xweft 200tex)(「OC Glass Fabric」)により供給されたものをそのまま使用した。
【0207】
炭素繊維織物は、Vectorply(C−L 1800)(「Vectorply Carbon Fabric」)、Zoltek(Panex 35 UD Fabic−PX35UD0500−1220)(「Zoltek Carbon Fabric」)により供給されたものをそのまま使用した。
【0208】
樹脂への添加剤は、樹脂100万グラム当たりの添加剤のグラム単位重量として定義されるppmとしてか、又は樹脂100グラム当たりの添加剤のグラム単位重量として定義されるphrとして報告されている。
【0209】
以下に記載される表1〜6の実施例のガラス複合積層体は、VARTMプロセスを用いて調製した。複合積層体の底面の型表面は、シールされ脱型処理されたアルミニウム板からなる。このアルミニウム板は、アルミニウム板の底面に機械的に取り付けられた、樹脂注入用入口ポート及び真空源取り付け用出口ポートを有する。ガラス複合積層体は、1/8インチの積層体の厚さを達成するように、それぞれが3インチ×6インチの寸法を有するように切断されたガラス繊維織物4層をアルミニウム板の上面に配置することによって構成された。その4層のガラス繊維織物補強材の上に剥離層(Bron Aerotech; PTFE被覆されている)を置いた。ナイロン樹脂分配媒体(Airtech Greenflow 75)を、入口ポート及び出口ポートの位置にそれぞれ対応する複合積層体の対向する端部の剥離層の上に配置した。完成した層状物の上に、真空バッグフィルム(Umeco Process Materials Stretch−Vac 2000)シートを配置した。その真空バッグフィルムをシーラントテープ(Airtech AT200−Yテープ)を用いて型の表面に貼り付け、層状物から空気を抜くために、出口ポートに真空をかけて28inHg〜29inHgの真空レベルまで空気を抜いた 。本明細書で以下に記載される実施例にしたがって調製された樹脂は、真空下で攪拌しながら少なくとも20分間脱気した。触媒懸濁液を真空下で樹脂に注入し、触媒された樹脂を真空下で少なくとも1分間攪拌した。樹脂と触媒懸濁液は、混合の直前に周囲温度(20〜25℃)であった。少なくとも1分後、触媒された樹脂の攪拌を止め、真空源を取り外し、触媒された樹脂をアルゴンで再充填した。次いで、周囲圧力と真空ガラス繊維織物層状物との間の圧力勾配作用によって触媒された樹脂をガラス繊維織物に注入した。注入が完了した後、ガラス複合積層体を周囲温度(20〜25℃)から35℃まで2時間加熱した。35℃で2時間経過後、ガラス複合積層体を1℃/分の加熱速度で100℃に加熱し、100℃で1時間保持し、次いで周囲温度(20〜25℃)まで冷ました後、脱型した。
【0210】
本明細書で以下に記載される表1〜6の実施例の炭素複合積層体は、同様に1/8 インチの積層体厚さを達成するように6層の炭素繊維織物を用いて調製した。
【0211】
機械的特性は標準的な技法を用いて測定した。10%歪みでの層間剪断強度(ILSS)は、ASTM D2344にしたがって短ビーム剪断法により、1インチ×1/4インチ×1/8インチの試料について測定した。ILSS値は、ポンド/平方インチ(psi)単位で報告されてた。層間剪断強度(ILSS)は、複合材のポリマー・マトリックスと繊維補強材との間の接着性及び/又は適合性の尺度である。報告されたILSS値は、3つの試料の平均値である。層間の剪断強度値に基づく以下の基準を使用して、ポリマー・マトリックスとガラス又は炭素繊維補強材料との間の接着性及び/又は適合性を特徴付けた。7500psi未満のILSS値を有する複合材を、ポリマー・マトリックスと繊維補強材との間の接着性及び/又は適合性が乏しい複合材として特徴付け、ポリマー・マトリックスと繊維補強材との間の共有結合の欠如を示唆するものとした。7,500psi未満のILSS値を有する複合材は、本明細書の表2において負の符号(−)で示されている。7500psi以上のILSS値を有する複合材を、ポリマー・マトリックスと繊維補強材料との間の接着性及び/又は適合性の優れた複合材として特徴付け、より高度なポリマー・マトリックスと繊維補強材料との間の共有結合を示唆するものとした。7,500psi以上のILSS値を有する複合材は、本明細書の表2において正の符号(+)で示されている。すべてのILSSの試料は周囲室内条件で保管及び試験した。耐衝撃性は、2.5インチ×1/2インチ×1/4インチの試料を用いてASTM D256に従って試験した。ノッチ付きアイゾットの値はft−lbf/in(フィート重量ポンド/インチ)単位で報告された。報告されたノッチ付きアイゾットの値は5つの試料の平均値であり、本明細書で表3に記載されている。すべてのノッチ付きアイゾットの試料は周囲室内条件で保管及び試験した。

実施例1(a)−(f)
VARTMで作製したガラス及び炭素複合材のILSS
【0212】
変性DCPD(20〜25%トリシクロペンタジエン含有)は、0.6phrのTPP、2phrのEthanox(登録商標)4702酸化防止剤を用いて配合した。樹脂は、鉱油懸濁液にC827(モノマー対触媒比45,000:1)を添加することにより触媒された。VARTMの試料は、上述のように、市販のガラス繊維織物及び市販の炭素繊維織物を用いて作製した。その複合積層体を上述のように硬化した。得られた複合材のILSSを表2に示す。

実施例2(a)−(f)
VARTMで作製したガラス及び炭素複合材のILSS
【0213】
変性DCPD(20〜25%トリシクロペンタジエン含有)は、0.6phrのTPP、2phrのEthanox(登録商標)4702酸化防止剤、及び2phrの MDI(Mondur(登録商標)MLQ)を用いて配合した。樹脂は、鉱油懸濁液にC827(モノマー対触媒比45,000:1)を添加することにより触媒された。VARTMの試料は、上述のように、市販のガラス繊維織物及び市販の炭素繊維織物を用いて作製した。その複合積層体を上述のように硬化した。得られた複合材のILSSを表2に示す。

実施例3(a)−(f)
VARTMで作製したガラス及び炭素複合材のILSS
【0214】
変性DCPD(20〜25%トリシクロペンタジエン含有)は、0.6phrのTPP、2phrのEthanox(登録商標)4702酸化防止剤、2phrの MDI(Mondur(登録商標)MLQ)、及び1 phrのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(Kraton G1657M)を用いて配合した。樹脂は、鉱油懸濁液にC827(モノマー対触媒比45,000:1)を添加することにより触媒された。VARTMの試料は、上述のように、市販のガラス繊維織物及び市販の炭素繊維織物を用いて作製した。その複合積層体を上述のように硬化した。得られた複合材のILSSを表2に示す。


実施例4(a)−(f)
VARTMで作製したガラス及び炭素複合材のILSS
【0215】
変性DCPD(20〜25%トリシクロペンタジエン含有)は、0.6phrのTPP、2phrのEthanox(登録商標)4702酸化防止剤、2phrの MDI(Mondur(登録商標)MLQ)、及び1 phrの無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(Kraton FG1924G)を用いて配合した。樹脂は、鉱油懸濁液にC827(モノマー対触媒比45,000:1)を添加することにより触媒された。VARTMの試料は、上述のように、市販のガラス繊維織物及び市販の炭素繊維織物を用いて作製した。その複合積層体を上述のように硬化した。得られた複合材のILSSを表2に示す。

実施例5(a)−(f)
VARTMで作製したガラス及び炭素複合材のILSS
【0216】
変性DCPD(20〜25%トリシクロペンタジエン含有)は、0.6phrのTPP、2phrのEthanox(登録商標)4702酸化防止剤、2phrの MDI(Mondur(登録商標)MLQ)、及び1 phrのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(Kraton G1650M)を用いて配合した。樹脂は、鉱油懸濁液にC827(モノマー対触媒比45,000:1)を添加することにより触媒された。VARTMの試料は、上述のように、市販のガラス繊維織物及び市販の炭素繊維織物を用いて作製した。その複合積層体を上述のように硬化した。得られた複合材のILSSを表2に示す。

実施例6(a)−(f)
VARTMで作製したガラス及び炭素複合材のILSS
【0217】
変性DCPD(20〜25%トリシクロペンタジエン含有)は、0.6phrのTPP、2phrのEthanox(登録商標)4702酸化防止剤、2phrの MDI(Mondur(登録商標)MLQ)、及び1phrの無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン水素化コポリマー(Kraton FG1901G)を用いて配合した。樹脂は、鉱油懸濁液にC827(モノマー対触媒比45,000:1)を添加することにより触媒された。VARTMの試料は、上述のように、市販のガラス繊維織物及び市販の炭素繊維織物を用いて作製した。その複合積層体を上述のように硬化した。得られた複合材のILSSを表2に示す。
【表2】

実施例 7(a)−11(a)
成形ポリマープラークの切欠きアイゾット値
【0218】
変性DCPD(20〜25%トリシクロペンタジエン含有)は、0.6phrのTPP、2phrのEthanox(登録商標)4702酸化防止剤、2phrのMDI(Mondur(登録商標)MLQ)、及び1 phrの適切な衝撃性改良剤(Kraton G1657M又はKraton G1650M)若しくは適切な機能性エラストマー(Kraton FG1924G又はKraton FG1901G)を用いて配合した。樹脂は、鉱油懸濁液にC827(モノマー対触媒比45,000:1)を添加することにより触媒された。樹脂と触媒懸濁液は、混合の直前に周囲温度(20〜25℃)であった。触媒された樹脂を攪拌し、6インチx 4インチ x 1/4インチの窪みを有するアルミニウム型に注ぎ入れた。触媒された樹脂の添加の直前のアルミニウム型は、周囲温度(20〜25℃)であった。触媒された樹脂を含むアルミニウム型を実験室オーブンに入れ、周囲温度(20〜25℃)から35℃まで2時間加熱し、次いで加熱速度1℃/分で100℃まで加熱し、100℃で1時間保持し、次いで周囲温度(20〜25℃)まで冷却させ、その時点で成形ポリマープラークを脱型した。成形ポリマープラークの切欠きアイゾット値を表(3)に示す。
【表3】
【0219】
本発明をその特定の実施形態と共に説明してきたが、上記の説明及び以下の実施例は例示を目的としたものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点及び変更は、本発明が関係する当業者には明らかであろう。