(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示部は、前記拍動波形を表示する波形表示領域部と、前記波形表示領域部に表示された前記拍動波形の良否を、点灯して報知する点灯報知領域部とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の心機能測定システム。
前記流量計は超音波流量計であり、前記流量計は、前記血液を循環させるチューブに対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の心機能測定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、緊急時の救急現場で患者が救急車で搬送される時や、あるいはへき地等の医療機器の用意が不十分な地域で患者に対して治療を施す時には、体外循環装置以外に、患者のバイタル値取得を要する場合があっても、全て用意することは困難である。
また、実際の緊急時の救急現場では、この種の医療機器が用意してあったとしても、医療装置を患者に対して接続するための時間的な余裕がない場合も多い。
【0006】
そこで、本発明は、実際の緊急時の救急現場やへき地等の医療機器の用意が不十分な地域であっても、患者の心機能(心臓の状態)を、特別な装置を接続しなくても、容易に得ることができる心機能測定システムおよび心機能測定システムを備える体外循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の心機能測定システムは、人体からの血液を循環中の前記血液の流量波形が測定される流量計と、
血液を循環させるためのロータリーポンプと、前記流量計により測定された前記流量波形に含まれる前記血液の流量変動波形である拍動波形
と、前記ロータリーポンプの回転数の波形に基づいて、人体の心臓の状態である心機能を示す心機能表示波形が得られる制御部と、前記制御部からの指令により、前記
心機能表示波形が表示される表示部と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、流量計は、人体からの血液を循環中の血液の流量波形を測定して、制御部は、流量計により測定された流量波形に含まれる血液の流量変動波形である拍動波形が得られ、表示部には、制御部からの指令により、人体の心機能を示す拍動波形が表示されるようになっている。
【0009】
このため、実際の緊急時の救急現場やへき地等の医療機器の用意が不十分な地域であっても、心機能測定システムは、流量計を人体からの血液を循環中の血液の流量波形が得られる部分に装着するだけで、患者に対して非侵襲で、患者の心機能(心臓の状態)を、特別な装置を接続しなくても、容易に得ることができる。
【0010】
好ましくは、
前記制御部は、前記
拍動波形を分単位で取得し、流量変動幅を前記表示部に表示することを特徴とする。
上記構成によれば、前記流量変動波形を分単位で検出表示すると、拍動ごとの波形をえることができ、それによって、血圧値を把握することができる。
好ましくは、前記表示部は、前記拍動波形を表示する波形表示領域部と、前記波形表示領域部に表示された前記拍動波形の良否を、点灯して報知する点灯報知領域部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、表示部の点灯報知領域部は、患者から得られる拍動波形の良否を、点灯することで術者に対して報知することができるので、術者は、視覚により、患者の心機能の状態を把握することができる。
【0011】
好ましくは、前記流量計は超音波流量計であり、前記流量計は、前記血液を循環させるチューブに対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、流量計は、血液を循環させるチューブに取り付けるだけで済むので、実際の緊急時の救急現場やへき地等の医療機器の用意が不十分な地域であっても、患者の心機能(心臓の状態)を得ることができる。
【0012】
本発明の心機能測定システムを備える体外循環装置は、人体の血液を体外循環させる体外循環装置であって、人体からの血液を循環中の前記血液の流量波形が測定される流量計と、
血液を循環させるためのロータリーポンプと、前記流量計により測定された前記流量波形に含まれる前記血液の流量変動波形である拍動波形
と、前記ロータリーポンプの回転数の波形に基づいて、人体の心臓の状態である心機能を示す心機能表示波形が得られる制御部と、前記制御部からの指令により、前記
心機能表示波形が表示される表示部と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、流量計は、人体からの血液を循環中の血液の流量波形を測定して、制御部は、流量計により測定された流量波形に含まれる血液の流量変動波形である拍動波形が得られ、表示部には、制御部からの指令により、人体の心機能を示す拍動波形が表示されるようになっている。このため、実際の緊急時の救急現場やへき地等の医療機器の用意が不十分な地域であっても、心機能測定システムは、流量計を人体からの血液を循環中の血液の流量波形が得られる部分に装着するだけで、患者に対して非侵襲で、患者の心機能(心臓の状態)を、特別な装置を接続しなくても、容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、実際の緊急時の救急現場やへき地等であっても、患者の心機能(心臓の状態)を、特別な装置を接続しなくても、容易に得ることができる心機能測定システムおよび心機能測定システムを備える体外循環装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明の心機能測定システムの実施形態が適用されている、例えば患者の体内の血液を循環させて酸素付加を行うための体外循環装置の一例を示す系統図である。
図1に示す体外循環装置1には、心機能測定システム200が適用されている。この体外循環装置1が行う「体外循環」には、「体外循環動作」と、「補助循環動作」を含む。体外循環装置1は、「体外循環動作」と「補助循環動作」のいずれも行うことができる。
【0018】
「体外循環動作」とは、例えば心臓外科手術によって一時的に心臓での血液循環を止めるような場合に、この体外循環装置1により血液の循環動作とこの血液に対するガス交換動作(酸素付加および/または二酸化炭素除去)を行うことである。
また、「補助循環動作」とは、体外循環装置1の適用対象である患者Pの心臓が十分な機能を果たせない場合や、肺によるガス交換が十分に行えないような状態において、体外循環装置1によっても血液の循環動作とこの血液に対するガス交換動作を行うことである。
【0019】
図1に示す体外循環装置1は、例えば患者の心臓外科手術を行う場合には、体外循環装置1のポンプを作動して患者の静脈(大静脈)から脱血して、人工肺により血液中のガス交換を行って血液の酸素化を行った後に、この血液を再び患者の動脈(大動脈)に戻す人工肺体外血液循環を行うことができる。この体外循環装置1は、心臓と肺の代行を行う装置である。
【0020】
図1に示すように、体外循環装置1は、血液を循環させる循環回路1Rを有している。循環回路1Rは、人工肺2と、遠心ポンプ3と、遠心ポンプ3を駆動するための駆動手段であるドライブモータ4と、静脈側カテーテル(脱血側カテーテル)5と、動脈側カテーテル(送血側カテーテル)6と、コントローラ10を有している。このコントローラ10は、制御部100を有する。
遠心ポンプ3は、いわゆるロータリーポンプである。この遠心ポンプ3の回転信号Gは、コントローラ10の制御部100に送られていることにより、制御部100は、遠心ポンプ3の回転状態が定常かどうかを判断することができる。
【0021】
図1に示すように、静脈側カテーテル(脱血側カテーテル)5は、大腿静脈より挿入され、静脈側カテーテル5の先端が右心房に留置される。動脈側カテーテル(送血側カテーテル)6は、大腿動脈より挿入される。静脈側カテーテル5は、脱血チューブ(脱血ラインともいう)11を用いて遠心ポンプ3に接続されている。脱血チューブ11は、血液を送る管路である。
ドライブモータ4がコントローラ10の指令SGにより遠心ポンプ3を動作すると、遠心ポンプ3は、脱血チューブ11から脱血して血液を人工肺2に通した後に、送血チューブ12(送血ラインともいう)を介して患者Pに血液を戻すことができる。
【0022】
人工肺2は、遠心ポンプ3と送血チューブ12の間に配置されている。人工肺2は、この血液に対するガス交換動作(酸素付加および/または二酸化炭素除去)を行う。人工肺2は、例えば膜型人工肺であるが、特に好ましくは中空糸膜型人工肺を用いる。この人工肺2には、酸素ガス供給部13から酸素ガスがチューブ14を通じて供給される。送血チューブ12は、人工肺2と動脈側カテーテル6を接続している管路である。
これらの脱血チューブ11と送血チューブ12としては、例えば塩化ビニル樹脂やシリコーンゴム等の透明性の高い、弾性変形可能な可撓性を有する合成樹脂製の管路が使用できる。脱血チューブ11内では、液体である血液はV方向に流れ、送血チューブ12内では、血液はW方向に流れる。
【0023】
図1に示す循環回路1Rの例では、流量計の好ましい例である超音波流量計70が、例えば脱血チューブ11の途中において、脱血チューブ11 の外側に、着脱可能に配置されている。この超音波流量計70は、脱血チューブ11内を流れる血液の流量を、非接触で検知する。超音波流量計70としては、例えば超音波伝搬時間差方式の流量計を用いることができるが、特に形式に限定されない。超音波流量計70を使用しないときは、脱血チューブ11から取り外すことができる。
このように超音波流量計70が、最も好ましくは、脱血チューブ11 に対して着脱可能に装着されるのであるが、この理由としては、脱血チューブ11 は、患者Pの心臓に最も近いチューブであり、しかも脱血チューブ11は、心臓から脱血した直後の血液の流量を測定できるためである。
【0024】
図1に示すように、
図1に示す循環回路1Rの例では、本発明の実施形態の心機能測定システム200は、超音波流量計70と、コントローラ10を含んでいる。
図1に示す超音波流量計70が、送血チューブ12内を流れる血液の流量を検知した時に血液流量検知信号Rを発生する。この血液流量検知信号Rは、制御部100に送られることで、制御部100は、送血チューブ12内を流れる血液の流量値を常時得るようになっている。
【0025】
また、
図1に示す循環回路1Rの例では、超音波気泡検出センサ20が、脱血チューブ11の途中において脱血チューブ11の外側に配置されている。ファストクランプ17は、送血チューブ12の途中位置において送血チューブ12の外側に配置されている。
超音波気泡検出センサ20が、脱血チューブ11内に送られている血液中に気泡があるのを検出した場合には、超音波気泡検出センサ20は、コントローラ10に気泡を検出した検出信号を送る。これにより、ファストクランプ17は、コントローラ10の指令により、血液が患者P側に送られるのを阻止するために、送血チューブ12を緊急に閉塞する。
【0026】
超音波気泡検出センサ20では、血液循環動作中に三方活栓18の誤操作やチューブの破損等により回路内に気泡が混入された場合に、この混入された気泡を検出することができる。もし気泡が検出されると、
図1のコントローラ10は、アラームによる警報を報知したり、遠心ポンプ3の回転数を低くしたり、あるいは遠心ポンプ3を停止ししかもファストクランプ17に指令して、ファストクランプ17により送血チューブ12を直ちに閉塞して、気泡が患者Pの体内に送られるのを阻止する。これにより、体外循環装置1の循環回路1Rにおける血液の循環動作の一時停止を行って、気泡が患者Pの人体に混入するのを防止する。
【0027】
図2は、
図1に示すコントローラ10の表示部30の例を示している。
図1に示すコントローラ10は、表示部30を有する。
図2に示すように、この表示部30は、血液流量表示領域部(単位はLPM)31と、遠心ポンプ3の回転数表示領域部(単位はRPM)32と、1分間当たりの血液流量表示領域部(単位はL/min/m2)33と、波形表示領域部40と、点灯報知領域部50と、バッテリの充電程度を示すバッテリ充電状態表示部34と、商用電源に電気的に接続されていることを示す電源接続表示部35を有する。
表示部30としては、例えばカラー液晶表示装置や、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置等を用いることができる。
【0028】
図2に示す血液流量表示領域部31は、送血チューブ12内を流れる血液の流量をデジタル表示する。遠心ポンプ3の回転数表示領域部32は、遠心ポンプ3の回転数をデジタル表示する。1分間当たりの血液流量表示領域部33は、1分間で1m2当たりの血液の体外循環流量をデジタル表示する。
図2に示す波形表示領域部40は、後で説明する患者Pの心機能の状態を、波形60で表示する機能を有する。
【0029】
図2に示す点灯報知領域部50は、体外循環装置1の術者に対して、後で説明する患者Pの心機能の状態の良否を、例えば三段階で点灯して警告する機能を有する。点灯報知領域部50は、緑色の発光部51と、黄色の発光部52と、赤色の発光部53、そしてアラームブザー54を有する。緑色の発光部51と黄色の発光部52と赤色の発光部53としては、例えば異なる発色の発光ダイオードを用いることができる。
【0030】
例えば緑色の発光部51は、心機能の状態が良好で安全域にある時に、赤色を発光することで、術者に対して視覚で心機能の状態が安全状態であることを通知する。黄色の発光部52は、心機能の状態がやや不調であり安全域から少し外れて、注意状態である時に、黄色を発光することで、術者に視覚で心機能の状態が注意状態であることを通知する。そして、赤色の発光部53は、心機能の状態が安全域から外れており、危険状態である時に、赤色を発光することで、術者に視覚で心機能の状態が危険状態であることを通知する。
しかも、アラームブザー54は、赤色の発光部53が発光すると同時に、術者に対して、音あるいは音声で、心機能の状態が危険状態であることを通知する。
【0031】
図3は、表示部30と、緑色の発光部51と黄色の発光部52と赤色の発光部53とアラームブザー54の電気接続例を示している。
図3に示すように、制御部100は、表示部30と、緑色の発光部51と黄色の発光部52と赤色の発光部53とアラームブザー54に電気的に接続されている。
【0032】
次に、
図4と
図5を参照して、
図2に示す波形表示領域部40に表示される波形60について、説明する。この波形60は、患者Pの心機能の状態を示す心機能表示波形である。
図4に示す波形60は、
図1に示す患者Pの心臓の拍動が強い場合の心機能表示波形の例を示し、
図5に示す波形60は、
図1に示す患者Pの心臓の拍動が弱い場合の心機能表示波形の例を示している。
【0033】
図4(A)に示す波形は、ロータリーポンプである遠心ポンプ3が一定回転している時に発生しているロータリーポンプ波形61である。このロータリーポンプ波形61は、一定のレベルを維持している直線の波形である。
図4(B)に示す波形は、患者Pの心臓の拍動が強い場合の拍動波形62である。
図1に示す超音波流量計70から送血チューブ12内を流れる血液の流量を示す血液流量検知信号Rを、制御部100に送る。拍動波形62は、送血チューブ12内を流れる血液の流量値を得る際に、この測定値である血液の流量検知信号Rに含まれる拍動の波形である。
図4(C)に示す波形60は、
図4(A)に示すロータリーポンプ波形61と、
図4(B)に示す拍動波形62を加えることで形成された波形である。
【0034】
同様にして、
図5(A)に示す波形は、ロータリーポンプである遠心ポンプ3が一定回転している時に発生しているロータリーポンプ波形61である。このロータリーポンプ波形61は、一定のレベルを維持している直線型の波形である。
図5(B)に示す波形は、患者Pの心臓の拍動が弱い場合の拍動波形62Aである。
図1に示す超音波流量計70から送血チューブ12内を流れる血液の流量を示す血液流量検知信号Rを、制御部100に送る。拍動波形62Aは、送血チューブ12内を流れる血液の流量値を得る際に、この測定値である血液の流量検知信号Rに含まれる拍動の波形である。
図5(C)に示す波形60は、
図5(A)に示すロータリーポンプ波形61と、
図5(B)に示す拍動波形62を加えることで形成された波形である。
このように、遠心ポンプ3の回転が一定である時に、患者Pの心臓が弱まると、
図5(B)に示す拍動波形62Aは、
図4(B)に示す拍動波形62と比較すると、波高が小さくなだらかになる
【0035】
一方、従来、術者が、患者に対して、体外循環装置を用いて体外循環動作や補助循環動作を行う際には、患者に対して各種の装置を接続して、患者についての生体情報である血圧値や体温等のバイタル値を取得する必要があった。
しかし、実際の緊急時の救急現場において患者が救急車で搬送される時や、へき地等の医療機器が揃っていない場所で患者に対して治療を施す時に、上述したように例えば体外循環装置を用いる場合には、患者に対して各種の医療機器を接続して、患者についての生体情報である血圧値や体温等のバイタル値を取得することができない。また、そのような医療機器があったとしても、実際の緊急時の救急現場においては、医療機器を患者に対して接続するための時間的な余裕がない。
【0036】
そこで、本発明の実施形態では、表示部30では、患者Pの心臓の拍動の大小に応じた、波形60は、波形表示領域部40において変動状態を表示することができる。後述するように、この波形表示は、制御部100の指示により、もしくは別途図示しない操作ボタン等によるきりかえによって、検出結果の表示における時間単位を大きくしたり小さくしたりすることができる。これにより、術者は、この波形表示領域部40に常時表示されている波形60の波形状態を、目視で観察することができる。このため、術者は、波形表示領域部40において患者Pの拍動状態の大小や変動を、目視で確認することができる。術者が、
図2に示すコントローラ10の表示部30の波形表示領域部40を観察しているだけで、患者の心機能(心臓の状態)を、容易に知ることができる。
【0037】
図2に示す波形表示領域部40に常時表示されている波形60を観察することで、患者Pの拍動成分(血液の流量変動)が、確実に得られ、患者の血圧の変動のチェックをする代用となり、患者Pの心機能を推測することができる。
これにより、緊急時に、患者Pに対して、血圧を測定する等のラインの設置時間が不要なので、超音波流量計70から送血チューブ12に対して、患者Pの緊急時に即応して取り付けるだけですむ。また、患者Pから血圧等を測定する測定ラインを、患者Pに対して直接取り付けることが不要になり、患者Pの長期的な安全性が向上する。
なお、体外循環装置1では、例えば血液の体外循環流量が3.87L/minで循環中であっても、心臓の拍出量が超音波流量計70に反映される。従来では、心臓の拍出量は、体外循環流量にマスクされる(隠れてしまう)と考えられていた。
【0038】
また、術者は、体外循環装置1を用いて患者Pの体外循環動作や補助循環動作を行って、この動作を終了する時には、波形表示領域部40に常時表示されている波形60を目視で観察することができる。このため、術者は、波形表示領域部40に常時表示されている波形60を、患者Pの拍動成分(流量変動)として観察でき、波形60は患者の血圧の変化状況の代用とすることができる。従って、術者は、波形60を観察しながら患者Pの心機能の状況を推測できるので、患者Pの心機能の状況を見ながら、体外循環装置1の動作を、安全に停止できる。
【0039】
具体的には、例えば、患者Pが医療機関に搬送されてきた時に、体外循環装置1を患者Pに取り付けて治療して、術者が、
図4に例示する波形表示領域部40に表示されている波形60が、例えば
図4に例示するように患者Pの心臓の拍動が強い場合の拍動波形62であると判断できたときには、術者は、患者Pの心臓の拍動状態は改善できたものと判断できる。従って、術者は、患者Pから体外循環装置1を安全に離脱して、体外循環動作を終了することができる。
【0040】
また、別の具体的な例では、患者Pが救急車で搬送されている時に、体外循環装置1を患者Pに取り付けて治療して、術者が、
図4に例示する波形表示領域部40に表示されている波形60が、例えば
図4に例示するように患者Pの心臓の拍動が強い場合の拍動波形62であると推測できたときには、術者は、患者Pの心臓の状態は改善できたものと判断できる。従って、術者は、患者Pから体外循環装置1を安全に離脱して、体外循環動作を終了することができる。
このように、術者が、体外循環装置1により患者Pの治療では、
図4に例示する波形表示領域部40に、
図4に例示するような患者Pの心臓の拍動が強い場合の拍動波形62を含む良好な波形60が観察できたときには、患者Pの心機能の強化がなされたので、術者は、治療の効果があったと判断でき、術者は、患者Pから体外循環装置1を安全に離脱して、体外循環動作を終了できる。
【0041】
次に、
図2に示す点灯報知領域部50の好ましい点灯表示例を、いくつか説明する。
図2に示す波形表示領域部40には、
図4に例示するような良好な波形60が表示されている場合には、制御部100は、患者Pの心機能が安全域にあると判断して、点灯報知領域部50の緑色の発光部51を点灯させる。これにより、コントローラ10は、術者に対して、患者Pの心機能について「安全である」ことを点灯で通知する。
【0042】
また、
図2に示す波形表示領域部40には、
図5に例示するような波形60が表示されている場合には、制御部100は患者Pの心機能が安全域から外れていると判断して、点灯報知領域部50の黄色の発光部52を点灯させる。これにより、コントローラ10は、術者に対して、患者Pの心機能について「やや注意を要する」ことを点灯で通知する。
【0043】
さらに、
図2に示す波形表示領域部40には、
図5に例示する波形60をさらに下回る波形が表示されている場合、例えば患者に心筋梗塞や不整脈等の症状が生じていると推測される場合には、制御部100は、患者Pの心機能が安全域から完全に外れていると判断して、点灯報知領域部50の赤色の発光部53を点灯させるとともに、アラームブザー54により警告音を発生させる。これにより、コントローラ10は、術者に対して、患者Pの心機能について「強い警告」を、点灯と音で通知する。この場合には、コントローラ10は、術者に対して、点灯と音の両方で「強い警告」を通知できるので、術者に対してより確実に知らせることができる。
以上説明したように、術者は、コントローラ10からの視覚や音により、患者Pの心機能の状態を把握することができる。
【0044】
図6(A)と
図6(B)は、波形60における時間の経過に対する血液の流量(L/min)の変動の例を示している。
図6(A)では、時間軸は秒単位で示し、
図6(B)では、時間軸は分単位で示している。
図6(A)に示すように、流量の計測は、1秒毎に行っているので、流量変化幅H1はでは心臓の拍動ごとの流量変化は見えない.ところが、
図6(B)に示すように、時間軸を分単位で大きく取って、流量の変化の全体を見ると、流量変動幅H2は拍動1回分について示されることが分かる。このことから、送液圧と圧損を加味することで、患者の血圧値をほぼ把握することができ、制御部100の保持するこれらの数値をもとに血圧値は略算出できる。この状況を常時知ることで、術者は、波形表示領域部40に常時表示されている波形60を観察することで、血圧値の大よそを把握できる。
したがって、
図2の表示部30には、このような手法で求めたおおよその血圧値をあわせて表示するようにしてもよい。
【0045】
図7は、波形60の3つの領域毎の変化例を概念的に示している。
図7の縦軸は血液の流量であり、横軸は時間である。
図7に例示する波形60では、(1)心停止領域T1と、(2)心機能の回復領域T2と、(3)心機能低下領域T3を有している。
まず、心停止領域T1では、患者Pの心臓の拍動は発生しないので、遠心ポンプ3のロータリーポンプ波形61(遠心ポンプ3の血液流量)のみが、直線波形として表示される。
次の心機能の回復領域T2では、患者Pの心臓の拍動と拍出量が上昇して安定し、拍動状態になったことにより、患者Pの心機能は回復したことになる。
続いて、心機能低下領域T3(心停止)では、拍出量が徐々に減少していく。
【0046】
図8は、
図7における心機能低下領域T3の部分T4を拡大して示している。
図8の縦軸は血液の流量(L/min)であり、横軸は時間(sec)である。心機能低下領域T3では、心臓の拍動はほとんど認められない。
【0047】
上述したように、本発明の実施形態の心機能測定システム200は、人体からの血液を循環中の血液の流量波形が測定される流量計70と、流量計70により測定された流量波形に含まれる血液の流量変動波形である拍動波形62(波形60)が得られる制御部100と、制御部100からの指令により、人体の心機能を示す拍動波形62(波形60)が表示される表示部30を有する。
【0048】
これにより、流量計70は、人体からの血液を循環中の血液の流量波形を測定して、制御部100は、流量計70により測定された流量波形に含まれる血液の流量変動波形である拍動波形62(波形60)が得られる。表示部30には、制御部100からの指令により、人体の心機能を示す拍動波形62(波形60)が表示されるようになっている。
このため、実際の緊急時の救急現場やへき地等の医療機器の用意が不十分な地域であっても、心機能測定システム200は、流量計70を人体からの血液を循環中の血液の流量波形が得られる部分に装着するだけで、患者Pに対して非侵襲で、患者Pの心機能(心臓の状態)を、特別な装置を接続しなくても、容易に得ることができる。
【0049】
表示部70は、拍動波形62(波形60)を表示する波形表示領域部40と、波形表示領域部40に表示された拍動波形の良否を、点灯して報知する点灯報知領域部50と、を備えることを特徴とする。
これにより、表示部30の点灯報知領域部50は、患者から得られる拍動波形の良否を、点灯することで術者に対して報知することができるので、術者は、視覚により、患者Pの心機能の状態を容易に把握することができる。
【0050】
流量計70は超音波流量計であり、流量計70は、血液を循環させるチューブ(例えば送血チューブ)12に対して着脱可能に取り付けられている。これにより、流量計70は、血液を循環させるチューブに取り付けるだけで済むので、実際の緊急時の救急現場やへき地等の医療機器の用意が不十分な地域であっても、患者Pの心機能(心臓の状態)を得ることができる。
【0051】
本発明の実施形態の心機能測定システムを備える体外循環装置1は、人体の血液を体外循環させる体外循環装置であり、人体からの血液を循環中の血液の流量波形が測定される流量計70と、流量計70により測定された流量波形に含まれる血液の流量変動波形である拍動波形62(波形60)が得られる制御部100と、制御部100からの指令により、人体の心機能を示す拍動波形62(波形60)が表示される表示部30を有する。
【0052】
これにより、流量計70は、人体からの血液を循環中の血液の流量波形を測定して、制御部100は、流量計70により測定された流量波形に含まれる血液の流量変動波形である拍動波形62(波形60)が得られる。表示部30には、制御部100からの指令により、人体の心機能を示す拍動波形62(波形60)が表示されるようになっている。
このため、実際の緊急時の救急現場やへき地等の医療機器の用意が不十分な地域であっても、心機能測定システム200は、流量計70を人体からの血液を循環中の血液の流量波形が得られる部分に装着するだけで、患者Pに対して非侵襲で、患者Pの心機能(心臓の状態)を、特別な装置を接続しなくても、容易に得ることができる。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上述した本発明の各実施形態は、任意組み合わせることができる。上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
本発明の実施形態では、心機能測定システム200は、体外循環装置1に搭載され、心機能測定システム200は、超音波流量計70と、コントローラ10により構成されている。しかし、本発明の心機能測定システムは、体外循環装置1に限定されず、チューブを通じて血液を移送する他の種類の医療機器に対しても、搭載することができる。