(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中和可能な官能基を有する界面活性剤及び主成分として油剤を含む油性成分と、前記界面活性剤との塩形成能を有する中和剤を含む水性成分と、を合流させる合流ステップと、
前記合流ステップで合流させた流体を孔に流通させる孔流通ステップと、
を包含し、
前記水性成分と前記油性成分との分散操作を、セグリゲーション指数(Xs)が0.1以下となる条件で行い、且つ前記合流させた流体において、前記界面活性剤を前記中和剤で中和する分散液の製造方法であって、
前記合流ステップにおいて、流路径が前記孔の孔径よりも大きい流路から流出した前記水性成分に、その全周から前記油性成分を合流させる分散液の製造方法。
前記界面活性剤が、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基からなる群から選ばれる1種又は2種以上の官能基並びに疎水性基を有し且つ前記中和剤が塩基性化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の分散液の製造方法。
前記孔流通ステップにおいて、前記合流ステップで前記油性成分と前記水性成分とを合流させた流体を前記孔に流通させる際の流体の流量を0.1〜300L/hとする、請求項1〜7のいずれかに記載の分散液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態に係る分散液の製造方法は、中和可能な官能基を有する界面活性剤及び主成分として油剤を含む油性成分と、その中和可能な官能基を有する界面活性剤との塩形成能を有する中和剤を含む水性成分とを合流させる合流ステップと、合流ステップで合流させた流体を、孔径が0.03〜3mmである細孔に流通させる細孔流通ステップとを包含する。そして、このとき、合流させた流体において、前記界面活性剤を前記中和剤で中和する。
【0012】
ところで、特許文献1に開示された技術では、水性成分に界面活性剤を含有させるので、微細な粒子を得るためには、水性成分に、油性成分量に対して多量の界面活性剤を含有させる必要がある。また、特許文献2に開示された技術では、油性成分に非イオン性界面活性剤を含有させるので、微細な粒子を得るためには、油性成分に多量の界面活性剤を含有させる必要がある。その一方、皮膚や毛髪等に塗布する化粧料等の分野では、少量の界面活性剤で微細な粒子が分散した分散液を調製することが望まれる場合がある。
【0013】
これに対し、本実施形態に係る分散液の製造方法では、中和可能な官能基を有する界面活性剤及び油剤を含む油性成分と、その中和可能な官能基を有する界面活性剤との塩形成能を有する中和剤を含む水性成分とを合流させて細孔に流通させ、その細孔流出後に両成分が乱流により撹拌される。従って、油性成分と水性成分との接触からせん断力が付与されるまでの時間が短く、中和可能な官能基を有する界面活性剤を、分散する油性成分から油水界面に効率的に供給することができる。このとき、油性成分及び水性成分が合流して細孔を流通・流出する過程において、前記界面活性剤が前記中和剤で中和され、その結果、界面活性剤の含有量が少量であっても、水性成分に油性成分の微細な液体状又は固体状の粒子が分散した分散液を製造することができる。
【0014】
なお、本実施形態に係る方法で製造する分散液には、水性成分に油性成分の液滴粒子が分散した乳化物、及び水性成分に油性成分の固体粒子が分散した分散液の両方が含まれる。
【0015】
(油性成分)
油性成分は、中和可能な官能基を有する界面活性剤を含む。
【0016】
ここで、「中和可能な官能基を有する界面活性剤」とは、未中和の状態ではイオン性を示さず且つ所定の中和剤と混合することによりカチオン性又はアニオン性の塩を形成する界面活性剤をいう。以下「中和可能な官能基を有する界面活性剤」を「界面活性剤A」と表す。
【0017】
所定の中和剤と混合してカチオン性の塩を形成する界面活性剤Aとしては、例えばアミノ基及び疎水性基を有する界面活性剤が挙げられる。かかる界面活性剤を用いれば、分散を良好に行うことができる。
【0018】
疎水性基としては、例えば飽和若しくは不飽和の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基に含まれる炭素数は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは18以下である。具体的な炭化水素基としては、例えば、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基などのアルキル基;オレイル基などのアルケニル基等が挙げられる。少量の界面活性剤Aで微細な粒子が分散した分散液を製造する観点からは、これらのうちヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基が好ましく、オクタデシル基、イソオクタデシル基がより好ましい。
【0019】
アミノ基及び疎水性基を有する界面活性剤として、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、及び第三級アミン化合物が挙げられる。
【0020】
第一級アミン化合物としては、例えば、長鎖アルキルアミン等が挙げられる。長鎖アルキルアミンの長鎖アルキル基の炭素数は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは18以下である。なお、以下に記載のある長鎖の好ましい炭素数も同様である。
【0021】
第二級アミン化合物としては、例えば、長鎖アルキルメチルアミン、長鎖アルキルエチルアミン、長鎖アルキルプロピルアミンなどの長鎖アルキル基と短鎖アルキル基とを有するジアルキルアミン;スフィンゴシン類(例えば、1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール)等が挙げられる。短鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。なお、以下に記載のある短鎖アルキル基の例も同様のものが挙げられる。
【0022】
スフィンゴシン類としては、例えば、次の(i)〜(iv)が挙げられる。
【0024】
第三級アミン化合物としては、例えば、長鎖アルキルジメチルアミン、長鎖アルキルジエチルアミン、長鎖アルキルジプロピルアミンなどの長鎖アルキル基と短鎖アルキル基とを有するトリアルキルアミン;ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドなどの長鎖脂肪酸ジアルキルアミノエチルアミド及び長鎖脂肪酸ジアルキルアミノプロピルアミド;ヘキサデシロキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシエチルジメチルアミン、オクタデシロキシプロピルジメチルアミン(N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン)などのアラキロキシプロピルジメチルアミン、ベヘニロキシプロピルジメチルアミンなどのアシロキシエチルジアルキルアミン及びアシロキシプロピルジアルキルアミン等が挙げられる。長鎖脂肪酸やアシル基に含まれる炭素数は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは18以下である。長鎖脂肪酸やアシル基に含まれる炭化水素基の具体例としては、上記の疎水性基の例として列挙したものと同一のものが挙げられる。ジアルキルに含まれるアルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1〜4の短鎖アルキル基が好ましい。
【0025】
所定の中和剤と混合してアニオン性の塩を形成する界面活性剤Aとしては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基からなる群から選ばれる1種又は2種以上の官能基並びに疎水性基を有する界面活性剤が挙げられる。かかる界面活性剤を用いれば、分散を良好に行うことができる。
【0026】
疎水性基としては、アミノ基及び疎水性基を有する界面活性剤の場合と同じものが挙げられる。
【0027】
カルボキシ基及び疎水性基を有する界面活性剤としては、例えば、脂肪酸、アルキルエーテルカルボン酸、N−長鎖アシルアミノ酸等が挙げられる。
【0028】
脂肪酸としては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【0029】
R
1−COOH (1)
(式中、R
1は、前述の疎水性基と同じことを意味し、好ましくは炭素数8〜22、より好ましくは炭素数12〜18の直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)
(1)式で表される脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらのうち微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、オレイン酸が好ましい。
【0030】
アルキルエーテルカルボン酸としては、例えば、下記式(2)で表されるものが挙げられる。
【0031】
R
2O−(C
2H
4O)
n−CH
2COOH (2)
(式中、R
2は、前述の疎水性基と同じことを意味し、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは炭素数12〜18の直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、nは1〜12、好ましくは1〜3の数を示し、平均付加モル数を意味する。)
N−長鎖アシルアミノ酸としては、例えば、N−パルミトイルアシルグリシン、N−ステアロイルアラニン、N−パルミトイルアスパラギン酸、N−パルミトイルアシルグルタミン酸、N−ステアロイルアシルグリシン、N−ステアロイル−L−グルタミン酸等が挙げられる。これらのうち微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、N−ステアロイル−L−グルタミン酸が好ましい。
【0032】
スルホン酸基及び疎水性基を有する界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0033】
アルキルベンゼンスルホン酸としては、例えば、下記式(3)で表されるものが挙げられる。
【0034】
R
31−CHR
32−C
6H
4−SO
3H (3)
(式中、R
31は、前述の疎水性基と同じことを意味し、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは炭素数12〜18の直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R
32は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はt−ブチル基を示す。)
リン酸基及び疎水性基を有する界面活性剤としては、例えば、モノアルキルリン酸エステルが挙げられる。
【0035】
モノアルキルリン酸エステルとしては、例えば、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
【0036】
R
4−O−PO
3H
2 (4)
(式中、R
4は、前述の疎水性基と同じことを意味し、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは炭素数12〜18の直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)
油性成分には、界面活性剤Aとして、上記に挙げた界面活性剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含めることが好ましい。少量の界面活性剤Aで微細な粒子が分散した分散液を製造する観点からは、油性成分に含める界面活性剤Aとして、アミノ基及び疎水性基を有する界面活性剤、並びにカルボキシ基及び疎水性基を有する界面活性剤が好ましい。
【0037】
油性成分における界面活性剤Aの含有量は、少量の界面活性剤Aで微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは9質量%以下であり、なお、少量の界面活性剤Aで微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量以下であってもよく、また、同様の観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上、更により好ましくは2.5質量%以上である。
【0038】
なお、界面活性剤Aは、微細な粒子が分散した分散液を製造するという作用効果を損なわない限度において、一部中和されていてもよい。
【0039】
油性成分は主成分として油剤(以下「油剤B」と表す。)を含む。
【0040】
油剤Bは、液体油のみで構成されていてもよく、また、固体脂のみで構成されていてもよく、更に、液体油及び固体脂の両方を含んで構成されていてもよい。ここで、「液体油」とは、25℃において液体である油剤をいう。「固体脂」とは、25℃において固体である油剤をいう。
【0041】
油剤Bは、少量の界面活性剤Aで微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、液体油を含むことが好ましい。油剤Bにおける液体油の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。
【0042】
油剤Bとしては、例えば、炭化水素油、エステル油、ジアルキルエーテル、油脂、高級アルコール、シリコーン類等が挙げられる。油剤Bは、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、エステル基、ケト基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、及びエーテル基からなる群から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有する油剤が好ましい。
【0043】
炭化水素油としては、例えば、パラフィン、スクアレン、スクワラン等が挙げられる。
【0044】
エステル油としては、例えば、エチレングリコールジ脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド(例えばモノカプリン酸グリセリン)、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸トリグリセライドなどの脂肪酸グリセライド、ネオペンチルグリコールジ脂肪酸エステル(例えばジカプリン酸ネオペンチルグリコール)等が挙げられる。脂肪酸に含まれる炭素数は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは8〜22、同様の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは8以上であり、同様の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは12以下である。
【0045】
ジアルキルエーテルとしては、例えば、飽和若しくは不飽和の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するジエーテル等が挙げられる。アルキル基に含まれる炭素数は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは8〜22である。
【0046】
油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、パーム核油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油などの植物油等が挙げられる。
【0047】
高級アルコールとしては、例えば、飽和若しくは不飽和の直鎖又は分岐鎖のアルコール(例えば2−オクチルドデカノール)等が挙げられる。高級アルコールに含まれる炭素数は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは8〜22である。
【0048】
シリコーン類としては、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0049】
油剤Bとしては、その他に、例えば、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルなどの有機紫外線吸収剤;香料等が挙げられる。
【0050】
油剤Bは、揮発性及び不揮発性のいずれであってもよい。
【0051】
油性成分には、油剤Bとして、上記に挙げた油剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含めることが好ましい。油性成分に含める油剤Bとして、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、エステル油、高級アルコールが好ましく、脂肪酸グリセライドがより好ましい。
【0052】
油剤Bの分子量は、好ましくは40以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは150以上であり、また、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下、より更に好ましくは500以下である。
【0053】
油剤Bの粘度は、送液を良好に行う観点から、油性成分と水性成分とを合流させる際の油性成分の温度において、好ましくは0.1mPa・s以上、より好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、また、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、更に好ましくは300mPa・s以下である。油剤Bの粘度は、ブルックフィールド型(B型)回転粘度計を用い、ローターNo.3を標準使用し(粘度が測定できない場合は、ローターをNo.1、2、又は4に変更する。)、回転数30r/min及び測定時間1分間の条件により測定される。
【0054】
油剤Bの融点は、油性成分と水性成分とを良好に合流させる観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは50℃以下、更により好ましくは25℃以下である。油剤Bの融点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)での吸熱ピークにより求めることができる。
【0055】
油剤Bの水100gへの溶解量は、分散を良好に行う観点から、油性成分と水性成分とを合流させる際の油性成分の温度において、好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、更に好ましくは3g以下、より更に好ましくは1g以下である。
【0056】
油性成分における油剤Bの含有量は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、主成分として含まれ、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは91質量%以上、また、油性成分に界面活性剤Aを含有させて微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは99.7質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下、より更に好ましくは97.5質量%以下、より更に好ましくは93質量%以下である。主成分とは、油性成分中、最大の含有量であることを意味する。
【0057】
油性成分における界面活性剤A及び油剤Bの合計の含有量は、界面活性剤Aにより油剤Bを分散させる観点から、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましいのは100質量%である。
【0058】
油性成分における油剤Bの含有量に対する界面活性剤Aの含有量の質量比(界面活性剤A/油剤B)は、界面活性剤Aにより油剤Bを分散させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、より更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.08以上であり、また、少量の界面活性剤Aで微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.12以下、より更に好ましくは0.1以下である。
【0059】
また、油性成分には、微細な粒子が分散した分散液を製造するという作用効果を損なわない限度において、メタノール、ジメチルエチルケトン等の有機溶媒を含めてもよい。油性成分におけるその含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。更に、油性成分にはノニオン界面活性剤を含めてもよい。
【0060】
油性成分の形態は、特に限定されるものではないが、油性成分と水性成分とを合流させる温度において、界面活性剤Aが油剤Bに溶解していることが好ましい。
【0061】
油性成分は、水性成分と合流させることから流動性を有する。油性成分の粘度は、送液を良好に行う観点から、油性成分と水性成分とを合流させる温度において、好ましくは0.1mPa・s以上、より好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、また、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、更に好ましくは300mPa・s以下である。油性成分の粘度の測定方法は、上記の油剤Bの粘度の測定方法と同一である。
【0062】
(水性成分)
水性成分は、界面活性剤Aとの塩形成能を有する中和剤を水に溶解させた水溶液である。
【0063】
ここで、「界面活性剤Aとの塩形成能を有する中和剤」とは、界面活性剤Aと塩形成能を有する酸性化合物又は塩基性化合物をいう。以下「界面活性剤Aとの塩形成能を有する中和剤」を「中和剤C」と表す。
【0064】
中和剤Cとしては、酸性化合物及び塩基性化合物が挙げられる。
【0065】
界面活性剤Aがアミノ基及び疎水性基を有する界面活性剤である場合、中和剤Cは酸性化合物であることが好ましい。
【0066】
酸性化合物としては、無機酸及び有機酸が挙げられる。
【0067】
無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、炭酸等が挙げられる。
【0068】
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸などのモノカルボン酸;コハク酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸などのジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸などのオキシカルボン酸;L−グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸等が挙げられる。有機酸に含まれる炭素数は、分散を良好に行う観点から、好ましくは2〜7、より好ましくは炭素数2〜6、更に好ましくは3〜6である。
【0069】
酸性化合物としては、分散を良好に行う観点から、有機酸が好ましく、含まれる炭素数が3〜6の有機酸がより好ましく、アミノ酸及びオキシカルボン酸から選ばれる1種以上が更に好ましく、L−グルタミン酸及び乳酸から選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0070】
界面活性剤Aが、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基からなる群から選ばれる1種以上の官能基並びに疎水性基を有する界面活性剤である場合、中和剤Cは塩基性化合物であることが好ましい。
【0071】
塩基性化合物としては、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。
【0072】
無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア等が挙げられる。
【0073】
有機塩基としては、例えば、アニリン;メチルアミンなどのモノアルキルアミン;ジメチルアミンなどのジアルキルアミン;モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン;L−アルギニンなどの塩基性アミノ酸等が挙げられる。
【0074】
塩基性化合物としては、分散を良好に行う観点、入手性の観点及び取扱い性の観点から、アルカリ金属の水酸化物、アルカノールアミン又は塩基性アミノ酸が好ましく、アルカリ金属の水酸化物又は塩基性アミノ酸がより好ましく、水酸化カリウム又はL−アルギニンが更に好ましい。
【0075】
水性成分には、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、中和剤Cとして、上記に挙げた酸性化合物又は塩基性化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含めることが好ましい。
【0076】
水性成分における中和剤Cの含有量は、界面活性剤Aを中和する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.11質量%以上であり、また、中和剤Cの水への溶解量を考慮する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.4質量%以下、より更に好ましくは0.3質量%以下である。
【0077】
水性成分における水の含有量は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上であり、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.7質量%以下である。
【0078】
水性成分には防腐剤を含めてもよい。防腐剤としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、4−ヒドロキシ安息香酸エチル(エチルパラベン)、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン)などのパラオキシ安息香酸エステル等が挙げられる。水性成分における防腐剤の含有量は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であり、また、実質0質量%であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。
【0079】
水性成分には、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、多価アルコールを含めることができる。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。水性成分における多価アルコールの含有量は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0080】
水性成分には、微細な粒子が分散した分散液を製造するという作用効果を損なわない限度において、その他の溶質や水溶性有機溶媒を含めてもよい。
【0081】
水性成分は、油性成分と合流させることから流動性を有する。水性成分の粘度は、送液を良好に行う観点から、油性成分と水性成分とを合流させる温度において、好ましくは0.1mPa・s以上、より好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、また、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、更に好ましくは300mPa・s以下である。水性成分の粘度は、油性成分の粘度と同じであっても、異なっていても、どちらでもよい。水性成分の粘度の測定方法は、上記の油剤Bの粘度の測定方法と同一である。
【0082】
(合流ステップ)
合流ステップでは、流動する液体の油性成分と流動する液体の水性成分とを合流させる。このとき、合流させた流体において、油性成分及び水性成分が合流して細孔を流通・流出する過程において、界面活性剤Aが中和剤Cで中和される。
【0083】
このモル当量比(中和剤C/界面活性剤A)は、界面活性剤Aを中和して油剤Bを含む油性成分を微細に分散させる観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上、より更に好ましくは0.7以上であり、また、中和剤Cの水への溶解量を考慮する観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.2以下である。
【0084】
また、合流させた流体において、界面活性剤Aの含有量(質量%)×上記モル当量比(中和剤C/界面活性剤A)/油剤Bの含有量(質量%)が、界面活性剤Aにより油剤Bを含む油性成分を微細に分散させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、より更に好ましくは0.06以上であり、また、より少量の界面活性剤Aで油剤Bを含む油性成分を微細に分散させる観点から、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.16以下、更に好ましくは0.14以下、より更に好ましくは0.12以下、より更に好ましくは0.11以下である。
【0085】
合流ステップにおいて、合流させる前の油性成分の流量は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは0.01L/h以上、より好ましくは0.1L/h以上、更に好ましくは0.15L/h以上であり、また、好ましくは150L/h以下、より好ましくは100L/h以下であり、更に好ましくは50L/h以下、より更に好ましくは10L/h以下、より更に好ましくは2L/h以下、より更に好ましくは0.5L/h以下、より更に好ましくは0.18L/h以下である。合流させる前の水性成分の流量は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは0.1L/h以上、より好ましくは1L/h以上、更に好ましくは2L/h以上であり、また、好ましくは300L/h以下、より好ましくは200L/h以下であり、更に好ましくは100L/h以下、より更に好ましくは20L/h以下、より更に好ましくは10L/h以下、より更にこのましくは3L/h以下である。合流させる前の水性成分の油性成分に対する流量比(水性成分の流量/油性成分の流量)は、少量の界面活性剤AでO/W型の分散液を得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上であり、また、分散液中における油性成分の含有量を高める観点から、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは25以下、より更に好ましくは21以下である。
【0086】
合流ステップにおいて、合流させる際の油性成分の温度は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下であり、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは60℃以下、より更に好ましくは40℃以下である。合流させる際の水性成分の温度は、分散を良好に行い、微細な粒子が分散した分散液を得る観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは60℃以下、より更に好ましくは40℃以下である。合流させる際の油性成分の温度と水性成分の温度とは同一であってもよく、任意に設定可能である。
【0087】
合流ステップにおいて、油性成分と水性成分との合流の態様は特に限定されるものではない。
【0088】
油性成分と水性成分とを合流させる際の衝突の態様(角度等)としては、例えば、両方を正面衝突させて合流させる態様(耐向流衝突)、一方を他方に直交する方向から衝突させて合流させる態様、一方を他方に斜め後方から衝突させて合流させる態様、一方を他方に斜め前方から衝突させて合流させる態様、一方を他方に沿うように接触させて合流させる態様、一方を他方の全周から衝突させて合流させる態様が挙げられる。これらのうち、合流させる際の衝突の態様としては、微細な粒子が分散したO/W型の分散液を製造する観点から、両方を正面衝突させて合流させる態様(耐向流衝突)、一方を他方の全周から衝突させて合流させる態様が好ましく、水性成分の全周から油性成分を衝突させて合流させる態様がより好ましい。
【0089】
また、油性成分と水性成分との合流させる際の合流方式の態様(数等)としては、両方をそれぞれ複数の方向から衝突させて合流させる態様、一方を他方に複数の方向から衝突させて合流させる態様が挙げられる。前者では、両方をそれぞれ好ましくは2方向以上の方向から衝突させることが好ましく、また、上限は特にないが生産性の観点からそれぞれ4方向以下の方向から衝突させることが好ましい。後者では、一方を好ましくは2方向以上の方向から他方に衝突させることが好ましく、また、上限は特にないが生産性の観点から一方を4方向以下の方向から他方に衝突させることが好ましい。
【0090】
更に、油性成分及び/又は水性成分を、後述の細孔流通ステップにおいて合流させた流体を流通させる細孔と同様の構成の細孔に流通させた後、又は、細孔に流通させると共に、それらを合流させてもよい。
【0091】
(細孔流通ステップ)
細孔流通ステップでは、合流ステップで合流させた流体を細孔に流通させる。
【0092】
細孔の横断面形状としては、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等が挙げられる。これらのうち微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、円形が好ましい。細孔の横断面形状は、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。
【0093】
細孔の延びる方向は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、油性成分の流動方向及び/又は水性成分の流動方向と同一であることが好ましい。
【0094】
細孔の孔径は0.03〜3mmである。細孔の孔径は、高い生産性を得る観点から、好ましくは0.07mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、また、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.5mm以下、より更に好ましくは0.3mm以下である。ここで、細孔の孔径は、細孔の横断面形状が円形の場合には直径であるが、細孔の横断面形状が非円形の場合には等価水力直径(4×流路面積/断面長)である。
【0095】
細孔の長さは、油性成分と水性成分との混合性を高める観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.3mm以上、より更に好ましくは0.5mm以上であり、また、油性成分と水性成分とを瞬時に混合し、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、より更に好ましくは1.5mm以下であり、より更に好ましくは1mm以下である。
【0096】
細孔の流路面積は、過大な圧力損失が生じて機器に障害をもたらすことを防ぐ観点から、好ましくは0.01mm
2以上、より好ましくは0.03mm
2以上であり、また、圧力損失を高めて油性成分と水性成分との混合性を高める観点から、好ましくは7mm
2以下、より好ましくは2mm
2以下、より更に好ましくは0.5mm
2以下、より更に好ましくは0.1mm
2以下、より更に好ましくは0.05mm
2以下である。
【0097】
細孔の長さの孔径に対する比(長さ/孔径)は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは2以上であり、また、同様の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは9以下である。
【0098】
細孔流通ステップにおいて、合流ステップで油性成分と水性成分とを合流させた流体を細孔に流通させる方法としては、油性成分と水性成分とを液溜め部で一旦合流させ、それらが混在状態となった流体を細孔に流通させてもよいが、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、油性成分と水性成分との合流部を細孔の直前に設ける、又は、油性成分と水性成分とを細孔内で合流させることが好ましい。
【0099】
細孔流通ステップにおいて、合流ステップで油性成分と水性成分とを合流させた流体を細孔に流通させる際の流体の流量は、圧力損失を高めて微細な粒子の分散液を製造する観点から、好ましくは0.1L/h以上、より好ましくは1L/h以上であり、また、過大な圧力損失が生じて機器に障害をもたらすことを防ぐ観点から、好ましくは300L/h以下、より好ましくは250L/h以下、更に好ましくは100L/h以下、より更に好ましくは50L/h以下、更に好ましくは20L/h以下、より更に好ましくは8L/h以下である。
【0100】
圧力損失は、細孔流通前後の圧力差であり、それにより噴流の大きさを評価することができる。圧力損失は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、更に好ましくは0.2MPa以上、より更に好ましくは0.3MPa以上であり、また、過大な圧力損失が生じて機器に障害をもたらすことを防ぐ観点から、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下、更に好ましくは3MPa以下、より更に好ましくは1.5MPa以下である。なお、後述する分散液製造システムSでは、細孔流通前の圧力は、第2圧力計46bで計測される圧力(油性成分側の圧力)であり、細孔流通後の圧力は、開放系であるので0である。
【0101】
細孔流通後の流路拡大領域での油相成分と水相成分との撹拌効率を高める観点からは、細孔流通ステップにおいて、合流ステップで合流させた流体を、乱流条件で細孔に流通させることが好ましい。このときのレイノルズ数は、細孔流通後の流路拡大領域での油相成分と水相成分との撹拌効率を高める観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは1800以上、更に好ましくは2700以上であり、また、流路拡大領域で混合する観点から、好ましくは150000以下、より好ましくは100000以下、更に好ましくは30000以下であり、より更に好ましくは10000以下、更により好ましくは7200、より更に好ましくは6000以下である。ここで、レイノルズ数は、細孔内の平均流速u(m/s)、細孔の孔径d(m)、流体の粘度μ(Pa・s)、及び流体の密度ρ(kg/m
3)の値を用いた一般的な配管流れのレイノルズ数算出式(レイノルズ数Re=duρ/μ)により求めることができる。
【0102】
細孔流通ステップにおいて、合流ステップで油性成分と水性成分とを合流させた流体を、細孔に流通させた後に流路拡大部に流出させる。これにより乱流が発生し易くなり、粒子を微細化することができる。
【0103】
流路拡大部の流路の横断面形状としては、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等が挙げられる。これらのうち微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、円形が好ましい。流路拡大部の横断面形状は、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましいが、長さ方向に沿って異なる形状が含まれていてもよい。
【0104】
流路拡大部は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、細孔から最大流路径を有する部分までコーン形状に拡大するように形成されていることが好ましい。このコーン拡大角(
図2におけるθ
12)は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは90°以上、より好ましくは100°以上であり、また、好ましくは180°以下、より好ましくは170°以下、更に好ましくは140°以下である。
【0105】
流路拡大部の最大流路径は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、細孔の孔径の好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、更に好ましくは5倍以上、より更に好ましくは7倍以上であり、また、好ましくは50倍以下、より好ましくは40倍以下、より更に好ましくは30倍以下、更に好ましくは20倍以下、より更に好ましくは10倍以下である。ここで、流路拡大部の最大流路径は、流路の横断面形状が円形の場合には直径であるが、流路の横断面形状が非円形の場合には等価水力直径である。
【0106】
(分散液)
本実施形態に係る分散液の製造方法では、油性成分と水性成分とを合流させた流体を細孔に流通させることにより、水性成分に油性成分の粒子が分散した分散液が製造される。
【0107】
製造される分散液の平均粒子径は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.7μm以下、更に好ましくは0.5μm以下、より更に好ましくは0.3μm以下であり、また、分散液の生産性の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上である。ここで、分散液中の粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用い、レーザー散乱/回折法により測定されるメジアン径である。
【0108】
また、製造される分散液は、油性成分の微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、油性成分の平均粒子径が細孔の孔径の好ましくは1/100以下、より好ましくは1/200以下、更に好ましくは1/300以下であり、より更に好ましくは1/400以下であり、より更に好ましくは1/500以下であり、また、下限は特にないが、分散液の生産性の観点から、1/10000以上が好ましく、1/5000以上がより好ましく、1/2000以上が更に好ましい。
【0109】
製造される分散液中における界面活性剤Aの含有量は、分散を良好に行う観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、少量の界面活性剤Aで微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.7質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0110】
製造される分散液中における油剤Bの含有量は、油性成分と水性成分との混合を良好に行う観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上で、更に好ましくは4質量%以上であり、また、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
【0111】
製造される分散液中における中和剤Cの含有量は、少量の界面活性剤Aで微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、同様の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.4質量%以下、より更に好ましくは0.3質量%以下である。
【0112】
製造された分散液は、例えば化粧料等に用いられる。
【0113】
本実施形態に係る分散液の製造方法における油性成分と水性成分との分散操作は、後述する方法で求められるセグリゲーション指数(Segregation index(Xs))が、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.08以下、更に好ましくは0.06以下、より更に好ましくは0.04以下、より更に好ましくは0.02以下、より更に好ましくは0.01以下、より更に好ましくは0.008以下、より更に好ましくは0.005以下、より更に好ましくは0.004以下となる条件で行うのがよい。下限は特にないが、0.0001以上であれば充分であり、0.001以上であってもよい。
【0114】
ここで、セグリゲーション指数(Xs)は、本実施形態に係る分散液の製造方法おける油性成分と水性成分との混合攪拌効果を示すものであり、値が小さいほど混合性が高いことを示す。セグリゲーション指数(Xs)は、学術的に混合器の混合性能評価に汎用的に用いられる指標であり、Villermaux/Dushman reactionを用いて下記式から導出することができる。なお、本反応系の詳細については、P. Guichardon and L. Falk, Chemical Engineering Science 55 (2000) 4233-4243に記載されている。
【0115】
具体的には、まず、混合により反応する2つの水溶液として、0.171N硫酸とほう酸緩衝液とをそれぞれ準備する。ほう酸緩衝液の組成は、ほう酸0.045mol/L、水酸化ナトリウム0.045mol/L、よう素酸カリウム0.00313mol/L、及びよう化カリウム0.0156mol/Lとする。そして、この2液を混合すると、下記の中和反応(I)と、よう素が生成する酸化還元反応(II)とが同時に進行する。なお、2液の混合は、混合後の状態でほう酸緩衝液が過剰となる条件で実施する。即ち、水性成分としてほう酸緩衝液を用いる。
【0118】
(分散液製造システムS)
図1は、本実施形態に係る分散液の製造方法に用いることができる分散液製造システムSの一例を示す。
【0119】
分散液製造システムSは、マイクロミキサー100と流体供給系等の付帯部とで構成されている。
【0120】
図2及び3は、第1の構成のマイクロミキサー100を示す。
【0121】
第1の構成のマイクロミキサー100は、流体流路部10と、その下流側に連続して設けられた流体合流縮流部20と、更にその下流側に連続して設けられた流体流出部30とを備える。
【0122】
流体流路部10は、小径管11と大径管12とを有する。大径管12は小径管11を収容しており、それらは長さ方向を共通にし且つ同軸に配置されている。これにより、流体流路部10には、小径管11内部に第1流路11aが構成され、また、大径管12内部で且つ小径管11外部に第2流路12aが構成されている。なお、小径管11内の第1流路11aは装置一端に設けられた水性成分供給部101に連通しており、また、大径管12内の第2流路12aは装置側面に設けられた油性成分供給部102に連通している。
【0123】
小径管11の外形及び孔の横断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。大径管12の孔の横断面形状も、特に限定されるものではなく、小径管11と同様、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。但し、小径管11の外形及び孔並びに大径管12の孔のいずれの横断面形状も、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、円形であることが好ましい。また、小径管11と大径管12とは、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、横断面形状が対称となり且つ同軸となるように設けられていることが好ましい。従って、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、小径管11と大径管12とは、
図3に示すように、第1流路11aの横断面形状が円形で且つ第2流路12aの横断面形状がドーナツ型形状となるように設けられた構成であることが好ましい。
【0124】
小径管11の外形及び孔のいずれの横断面形状も、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、後述の管端部分11bを除いて、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。大径管12の孔の横断面形状も、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、小径管11の管端部分11bに対応する部分を除いて、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。
【0125】
小径管11の外形及び孔のいずれの横断面形状も円形である場合、その外径D
11は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは1.6mm以上、より好ましくは2mm以上であり、また、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下、より更に好ましくは4mm以下である。小径管11の内径D
12、つまり、第1流路11aの流路径は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下、より更に好ましくは3mm以下である。大径管12の孔の横断面形状が円形である場合、その内径D
13は、好ましくは1.8mm以上、より好ましくは4mm以上であり、また、好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下、より更に好ましくは6mm以下である。小径管11と大径管12と間の第2流路12aの隙間Δ
1は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.7mm以上であり、また、好ましくは12.5mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは3mm以下、より更に好ましくは1mm以下である。
【0126】
小径管11の下流側の管端部分11bは、
図2に示すように、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、その外周部がテーパ形状に形成されていることが好ましく、厚さ方向の横断面形状が内周側で尖った尖塔形状に形成されていることがより好ましい。
【0127】
大径管12の管内壁と小径管11の管端部分11bとの間に構成される第2流路12aの一部分となる隙間δ
1は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、流体流動方向で均一であることが好ましい。その隙間δ
1は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.1mm以上であり、また、好ましくは12.5mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは0.40mm以下である。
【0128】
流体合流縮流部20には、小径管11の管端前方に流体合流部21が構成されており、その流体合流部21に連続して細孔22が穿孔されている。流体合流部21では、第1流路11aを流通した水性成分と第2流路12aを流通した油性成分とが合流し、細孔22では、流体合流部21で合流した直後の油性成分及び水性成分が流通する。従って、第1の構成のマイクロミキサー100では、合流前の油性成分及び水性成分のいずれも細孔には流通させず、それらを合流させた流体のみを細孔22に流通させることにより分散液を製造する。
【0129】
流体合流部21は、特に限定されるものではないが、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、
図2に示すように、細孔22に向かって収束した先細ったコーン形状に形成されていることが好ましい。このコーン収束角θ
11は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは90°以上、より好ましくは100°以上であり、また、好ましくは180°以下、より好ましくは170°以下、更に好ましくは140°以下である。コーン収束角θ
11は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、流路拡大部31がコーン形状の場合には、そのコーン拡大角θ
12と同一であることが好ましい。流体合流部21の小径管11の管端、つまり、流体流路部10の終端から細孔22までの長さL
1は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、更により好ましくは1mm以下である。
【0130】
細孔22の横断面形状、延びる方向、孔径d
1、長さl
1、流路面積s
1、及び長さl
1の孔径d
1に対する比(長さl
1/孔径d
1)は既述の通りである。
【0131】
流体流出部30は、細孔22の前方に流路拡大部31が構成されている。流路拡大部31には、細孔22を流通した流体が流出する。なお、流路拡大部31は装置他端に設けられた分散液回収部103に連通している。
【0132】
流体流出部30の流路の横断面形状、形状、コーン拡大角θ
12、及び流路拡大部31の最大流路径D
14は既述の通りである。
【0133】
第1の構成のマイクロミキサー100は、各々、金属やセラミックス、樹脂等で形成された複数の部材で構成されていてもよく、そして、それらの部材の組合せによって流体流路部10、流体合流縮流部20、及び流体流出部30が構成されていてもよい。
【0134】
第1の構成のマイクロミキサー100は、第1流路11aに連通した水性成分供給部101に、水性成分貯槽41aから延びた水性成分供給管42aが接続されている。水性成分供給管42aには、水性成分を流通させる第1ポンプ43a、水性成分の流量を検知する第1流量計44a、及び水性成分の夾雑物を除去する第1フィルタ45aが上流側から順に介設されており、第1流量計44aと第1フィルタ45aとの間の部分に水性成分の圧力を検知する第1圧力計46aが取り付けられている。第1ポンプ43a、第1流量計44a、及び第1圧力計46aのそれぞれは、流量コントローラ47に電気的に接続されている。
【0135】
第2流路12aに連通した油性成分供給部102には、油性成分貯槽41bから延びた油性成分供給管42bが接続されている。油性成分供給管42bには、油性成分を流通させる第2ポンプ43b、油性成分の流量を検知する第2流量計44b、及び油性成分の夾雑物を除去する第2フィルタ45bが上流側から順に介設されており、第2流量計44bと第2フィルタ45bとの間の部分に油性成分の圧力を検知する第2圧力計46bが取り付けられている。第2ポンプ43b、第2流量計44b及び第2圧力計46bのそれぞれは、流量コントローラ47に電気的に接続されている。
【0136】
流量コントローラ47は、水性成分の設定流量及び設定圧力の入力が可能に構成されていると共に演算素子が組み込まれており、水性成分の設定流量情報、第1流量計44aで検知された流量情報及び第1圧力計46aで検知された圧力情報に基づいて第1ポンプ43aを運転制御する。同様に、流量コントローラ47は、油性成分の設定流量及び設定圧力の入力も可能に構成されており、油性成分の設定流量情報、第2流量計44bで検知された流量情報及び第2圧力計46bで検知された圧力情報に基づいて第2ポンプ43bを運転制御する。
【0137】
流路拡大部31に連通した分散液回収部103からは分散液回収管48が延びて分散液回収槽49に接続されている。
【0138】
次に、この分散液製造システムSの動作について説明する。
【0139】
分散液製造システムSが稼働すると、第1ポンプ43aは、連続相となる水性成分を、水性成分貯槽41aから水性成分供給管42aを介し、第1流量計44a及び第1フィルタ45aを順に経由させて流体流路部10の小径管11の第1流路11aに継続的に供給する。第1流量計44aは、検知した水相の流量情報を流量コントローラ47に送る。また、第1圧力計46aは、検知した第1圧力計46aの圧力情報を流量コントローラ47に送る。
【0140】
第2ポンプ43bは、分散相の粒子となる油性成分を、油性成分貯槽41bから油性成分供給管42bを介し、第2流量計44b及び第2フィルタ45bを順に経由させて流体流路部10の大径管12と小径管11との間の第2流路12aに継続的に供給する。第2流量計44bは、検知した油相の流量情報を流量コントローラ47に送る。また、第2圧力計46bは、検知した第2圧力計46bの圧力情報を流量コントローラ47に送る。
【0141】
流量コントローラ47は、水性成分の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第1流量計44aで検知された流量情報及び第1圧力計46aで検知された圧力情報に基づいて、水性成分の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第1ポンプ43aを運転制御する。それと共に、流量コントローラ47は、油性成分の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第2流量計44bで検知された流量情報及び第2圧力計46bで検知された圧力情報に基づいて、油性成分の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第2ポンプ43bを運転制御する。
【0142】
第1の構成のマイクロミキサー100において、流体流路部10では、水性成分が第1流路11aを流通すると共に、油性成分が第2流路12aを流通する。このとき、水性成分の圧力は例えば0.01〜5MPaである。油性成分の圧力は例えば0.01〜5MPaである。そして、水性成分の流量設定及び圧力設定により水性成分の流量(L/h)、並びに油性成分の流量設定及び圧力設定により油性成分の流量(L/h)をそれぞれ前述のように調整する。
【0143】
流体合流縮流部20では、流体流路部10から流出した油性成分及び水性成分は、流体合流部21において、流動する水性成分に対し、斜め後方からで且つその全周から油性成分が衝突する態様で合流する。このとき、流体合流縮流部20では、油性成分及び水性成分を合わせた流体の流量(L/h)を前述のように調整する。この流速は、油性成分及び水性成分のそれぞれの流量設定及び圧力設定により制御することができる。
【0144】
流体合流部21において合流した油性成分及び水性成分は細孔22を流通する過程で混合される。このとき、流体合流域21で合流させた油性成分及び水性成分の流動条件は、油性成分及び水性成分のそれぞれの流量設定及び圧力設定により制御することができる。
【0145】
流体流出部30では、流路拡大部31において、細孔22を流通した油性成分及び水性成分を含む流体が流出し、油性成分と水性成分との間の対流混合により分散液が製造される。
【0146】
流路拡大部31に連通した分散液回収部103からは、製造された分散液が分散液回収管48を介して分散液回収槽49に回収される。
【0147】
図4(a)〜(c)は、第2の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0148】
第2の構成のマイクロミキサー100は、流体流路部10と、その下流側に連続して設けられた流体合流縮流部20と、更にその下流側に連続して設けられた流体流出部30とを備える。
【0149】
流体流路部10は、1本の小径管11と大径管12とを有する。大径管12は小径管11を収容しており、それらは長さ方向を共通にし且つ同軸に配置されている。これにより、流体流路部10には、小径管11内部に第1流路11aが構成され、また、大径管12内部で且つ小径管11外部に第2流路12aが構成されている。小径管11の管端面は、軸方向に垂直な面に形成されている。小径管11内の第1流路11aは水性成分供給部101に連通し、また、大径管12内の第2流路12aは油性成分供給部102に連通している。これにより、第1流路11aには水性成分が流通すると共に、第2流路12aには油性成分が流通する。このような流体流路部10が簡易な二重管構造を有する第2の構成のマイクロミキサー100は、分解洗浄によるメンテナンスが容易である。
【0150】
流体合流縮流部20は、大径管12に連続した管構造を有し、その前端が軸方向に垂直な壁により封じられており、その壁の中央に細孔22が穿孔されている。これにより、流体合流縮流部20には、小径管11の管端前方に円筒空間の流体合流部21が構成されている。流体合流部21の長さ、つまり、流体流路部10の終端から細孔22までの長さL
2は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。流体合流部21では、第1流路11aを流通した水性成分と第2流路12aを流通した油性成分とが合流し、細孔22では、流体合流部21で合流した油性成分及び水性成分からなる流体が流通する。従って、第2の構成のマイクロミキサー100では、第1の構成のマイクロミキサー100と同様、合流前の油性成分及び水性成分のいずれも細孔には流通させず、それらを合流させた流体のみを細孔22に流通させることにより分散液を製造する。
【0151】
流体流出部30は、細孔22の前方に円筒空間の流路拡大部31が構成されている。流路拡大部31には、細孔22を流通した流体が流出する。なお、流路拡大部31は分散液回収部103に連通している。
【0152】
その他の構成及び動作は、第1の構成のマイクロミキサー100の場合と同一である。
【0153】
ところで、流体流路部10から流出して流体合流部21で接触した油性成分及び水性成分は、最終的には細孔22により混合される。このとき、より高速な混合性能を得るためには、流体合流部21でのそれらの混在状態が、各液の微小なセグメントで構成されていればよい。従って、第1流路11aの数がより多いことが好ましく、
図4(a)及び(b)に示すように小径管11が1本である場合よりも、
図5(a)及び(b)に示すように小径管11が複数本である場合の方が、より高速な混合特性を得ることができる。また、
図5(a)及び(b)に示すように第1流路11aが3以上ある場合、第3の液をいずれかの第1流路11aに流通させることも可能である。
【0154】
なお、第1及び第2の構成のマイクロミキサー100では、小径管11の内側を、油性成分を流通させる第2流路、及び大径管12の内側で且つ小径管11の外側の部分を、水性成分を流通させる第1流路として使用することもできる。
【0155】
図6は、第3の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0156】
第3の構成のマイクロミキサー100は、直線管部分110と、その直線管部分110の中央部分から分岐して直交方向に延びた分岐管部分120とからなるT字管により構成されている。このようなT字管のマイクロミキサー100は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0157】
直線管部分110の一端部は水性成分供給部101に、また、直線管部分110の他端部は油性成分供給部102に、更に、分岐管部分120の端部は分散液回収部103にそれぞれ構成されている。
【0158】
直線管部分110は、両側が大孔径部分に構成されている一方、中央部分が大孔径部分から不連続に流路が狭くなった小孔径部分に構成されており、そのうち、一端側が第1流路11aに、また、他端側が第2流路12aにそれぞれ構成されている。
【0159】
分岐管部分120は、管軸に沿って延びて直線管部分110内に連通した細孔22が形成されており、直線管部分110の中央部、つまり、分岐管部分120への分岐部の管内が細孔22に連続する流体合流部21に構成されている。分岐管部分120には、細孔22に続いて不連続に流路が拡大した円筒空間の流路拡大部31が構成されている。
【0160】
直線管部分110の両側の大孔径部分及び分岐管部分の流路拡大部31の内径D
31,D
32,D
34は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。第1流路11a及び第2流路12aのそれぞれは、内径D
33、流路断面積、つまり、孔面積が細孔22と同一乃至同程度である。従って、第3の構成のマイクロミキサー100では、合流前の水性成分及び油性成分をそれぞれ、細孔を構成する第1流路11a及び第2流路12aに流通させると共にそれらを合流させ、続いて、それらを合流させた流体を細孔22に流通させることにより分散液を製造する。圧損を小さく抑える観点からは、第1流路11a及び第2流路12aの長さ、つまり、孔長さも細孔22と同一乃至同程度であることが好ましい。
【0161】
細孔22の形状及び寸法等の構成、並びに分散液の製造における動作は、第1の構成のマイクロミキサー100の場合と同一である。
【0162】
ところで、
図6に示す第3の構成のマイクロミキサー100では、油性成分及び水性成分の流体合流部21に向かうそれぞれの流動方向と細孔22の延びる方向とが相互に異なる構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、
図7に示すように、直線管部分110の一端部が水性成分供給部101に、また、分岐管部分120の端部が油性成分供給部102に、更に、直線管部分110の他端部が分散液回収部103にそれぞれ構成され、油性成分及び水性成分の流体合流部21に向かうそれぞれの流動方向のいずれか一方が細孔22の延びる方向と同一である構成であってもよい。但し、高い混合性能を得ることができるという観点からは、
図6に示す第3の構成のマイクロミキサー100のように、油性成分及び水性成分の流体合流部21に向かうそれぞれの流動方向と細孔22の延びる方向とが相互に異なる構成であることが好ましい。
【0163】
また、
図6に示す第3の構成のマイクロミキサー100では、直線管部分110の中央部分の流路が狭くなった第1流路11a及び第2流路12aを有する構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、
図8に示すように、直線管部分110に一端から他端まで一様な流路が形成された構成であってもよい。なお、
図8に示すマイクロミキサー100では、合流前の油性成分及び水性成分のいずれも細孔には流通させず、それらを合流させた流体のみを細孔22に流通させることにより分散液を製造する。
【0164】
更に、
図6に示す第3の構成のマイクロミキサー100では、直線管部分110と分岐管部分120とが細孔22を介して連通した構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、
図9に示すように、流路が一様である直線管部分110及び分岐管部分120を有するT字管で本体部分が構成され、その分岐管部分120の端部開口を封じるように中央に細孔22が形成された板状部材130が設けられた構成であってもよい。なお、
図9に示すマイクロミキサー100でも、合流前の油性成分及び水性成分のいずれも細孔には流通させず、それらを合流させた流体のみを細孔22に流通させることにより分散液を製造する。
【0165】
図10は、第4の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0166】
第4の構成のマイクロミキサー100は、3本の第1〜第3管111〜113が突き合わされると共に結合されて流路が連通したY字管により構成されている。このようなY字管のマイクロミキサー100は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0167】
第1管111の端部は水性成分供給部101に、また、第2管部112の端部は油性成分供給部102に、更に、第3管113の端部は分散液回収部103にそれぞれ構成されている。
【0168】
第1〜第3管111〜113のそれぞれは、端部側が大孔径部分に構成されている一方、結合端側が大孔径部分から不連続に流路が狭くなった小孔径部分に構成されており、第1管111に第1流路11aが、また、第2管112に第2流路12aが、更に、第3管113に細孔22がそれぞれ構成されている。これらの第1流路11aを構成する第1管111の小孔径部分、第2流路12aを構成する第2管112の小孔径部分、及び細孔22の結合部が流体合流部21に構成されている。第3管113には、細孔22に続いて不連続に流路が拡大した円筒空間の流路拡大部31が構成されている。
【0169】
第1〜第3管111〜113の大孔径部分及び流路拡大部31の内径D
41,D
42,D
45はそれぞれ、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、また、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは1.2mm以下である。また、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、D
41、D
42及びD
45は同一であることが好ましい。また、第1流路11a及び第2流路12aのそれぞれは、内径D
43,D
44、流路断面積、つまり、孔面積が細孔22と同一乃至同程度である。従って、第4の構成のマイクロミキサー100では、合流前の水性成分及び油性成分をそれぞれ、細孔を構成する第1流路11a及び第2流路12aに流通させると共にそれらを合流させ、続いて、それらを合流させた流体を細孔22に流通させることにより分散液を製造する。圧損を小さく抑える観点からは、第1流路11a及び第2流路12aの長さL
43,L
44、つまり、孔長さは細孔22と同一乃至同程度であることが好ましい。
【0170】
第1流路11aの延びる方向と細孔22の延びる方向とがなす角度Θ
41及び第2流路12aの延びる方向と細孔22の延びる方向とがなす角度Θ
42は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、それぞれ好ましくは90°を超え、より好ましくは100°以上、更に好ましくは120°以上、より更に好ましくは140°以上であり、そして同様の観点から、好ましくは180°未満、より好ましくは170°以下、更に好ましくは160°以下である。また、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、Θ
41=Θ
42であることが好ましい。第1流路11aと第2流路12aとがなす角度Θ
43は、微細な粒子が分散した分散液を製造する観点から、好ましくは0°を超え、より好ましくは20°以上、更に好ましくは40°以上、そして同様の観点から、好ましくは180°未満、より好ましくは160°以下、更に好ましくは120°以下、より更に好ましくは80°以下である。
【0171】
細孔22の形状及び寸法等の構成、並びに分散液の製造における動作は、第1の構成のマイクロミキサー100の場合と同一である。
【実施例】
【0172】
(分散液の製造実験)
上記実施形態の
図1に示すのと同様の構成の分散液製造システムSを用いて分散液の製造実験を行った。
【0173】
実施例1〜4及び6〜8並びに比較例5及び6では、
図2及び3に示す第1の構成のマイクロミキサー100であって、小径管11の外径D
11:3mm、小径管11の内径D
12:2mm、大径管12の内径D
13:4.71mm、小径管11と大径管12との隙間Δ
1:0.855mm、小径管11と大径管12との隙間δ
1:0.25mm、流体流路部10の終端から細孔22までの長さL
1:0.68mm、流体合流部21のコーン収束角θ
11:120°、細孔22の孔径d
1:0.22mm、細孔22の長さl
1:0.55mm、細孔22の流路面積s
1:0.038mm
2、細孔22の長さl
1/細孔22の孔径d
1:2.5、流路拡大部31のコーン拡大角θ
12:120°、流路拡大部31の最大流路径D
14:2mm、及び最大流路径D
14/細孔22の孔径d
1:9.1の構成のものを用いた。また、実施例5及び9並びに比較例11では、細孔22の孔径d
1:0.40mm及び細孔22の流路面積s
1:0.126mm
2に変更し、細孔22の長さl
1/細孔22の孔径d
1:1.4及び最大流路径D
14/細孔22の孔径d
1:5.0の構成のものを用いた。
【0174】
実施例10〜12では、
図4(a)〜(c)に示す第2の構成のマイクロミキサー100であって、小径管11の外径D
21:3.18mm、小径管11の内径D
22:2.18mm、大径管12の内径D
23:4.35mm、小径管11と大径管12との隙間Δ
2:0.59mm、流体流路部10の終端から細孔22までの長さL
2:1.0mm、細孔22の孔径d
2:0.3mm、細孔22の長さl
2:0.9mm、細孔22の流路面積s
2:0.071mm
2、細孔22の長さl
2/細孔22の孔径d
2:3.0、流路拡大部31の最大流路径D
24:1.6mm、及び最大流路径D
24/細孔22の孔径d
2:5.3の構成のものを用いた。
【0175】
実施例13〜15では、
図6に示す第3の構成のマイクロミキサー100であって、直線管部分110の長さL
31:33.52mm、直線管部分110における両側の大孔径部分の内径D
31,D
32:0.8mm、第1流路11a及び第2流路12aを構成する小孔径部分の内径D
33:0.3mm、小孔径部分の長さL
32:2.6mm、細孔22の孔径d
3:0.3mm、細孔22の長さl
3:0.9mm、細孔22の流路面積s
3:0.071mm
2、細孔22の長さl
3/細孔22の孔径d
3:3.0、分散液回収部103における流路拡大部31の最大流路径D
34:0.8mm、及び最大流路径D
34/細孔22の孔径d
3:2.7の構成のものを用いた。
【0176】
実施例16及び17では、
図10に示す第4の構成マイクロミキサー100であって、水性成分供給部101及び油性成分供給部102の大孔径部分の内径D
41,D
42:1.09mm、大孔径部分の長さL
41,L
42:30.0mm、第1流路11a及び第2流路12aを構成する小孔径部分の内径D
43,D
44:0.15mm、小孔径部分の長さL
43,L
44:1.2mm、細孔22の孔径d
4:0.15mm、細孔22の長さl
4:1.2mm、細孔22の流路面積s
4:0.018mm
2、細孔22の長さl
4/細孔22の孔径d
4:8.0、分散液回収部103における流路拡大部31の最大流路径D
45:1.09mm、流路拡大部31の長さL
45:30.0mm、及び最大流路径D
45/細孔22の孔径d
4:7.3、並びに第1流路11aの延びる方向と細孔22の延びる方向とがなす角度Θ
41:150°、第2流路12aの延びる方向と細孔22の延びる方向とがなす角度Θ
42:150°、及び第1流路11aと第2流路12aとがなす角度Θ
43:60°の構成のものを用いた。
【0177】
なお、比較例1〜4及び7〜10では、ホモミキサー TKホモミクサーMARKII2.5(プライミクス社製)を用いた。
【0178】
表1及び2、並びに表7は、それぞれの油性成分及び水性成分の組成を示す。なお、用いた材料は以下の通りである。
【0179】
―界面活性剤A―
・カチオン性界面活性剤 第二級アミン化合物 1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール:花王社製 下記式(1)
【0180】
【化4】
【0181】
・アニオン性界面活性剤 N−長鎖アシルアミノ酸 N−ステアロイル−L−グルタミン酸 アミソフトHA−P:味の素社製 下記式(2)
【0182】
【化5】
【0183】
・カチオン性界面活性剤 第三級アミン N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミン ファーミンDM E‐80:花王社製
・アニオン性界面活性剤 脂肪酸 オレイン酸 ルナック O‐LL−V:花王社製
−油剤B−
・モノカプリン酸グリセリン ホモテックスPT:花王社製
・2−オクチルドデカノール カルコール200GD:花王社製
・ジカプリン酸ネオペンチルグリコール エステモールN−01:日清オイリオ社製
−中和剤C−
・L−グルタミン酸:味の素社製 下記式(3)
【0184】
【化6】
【0185】
・L−アルギニン:味の素社製 下記式(4)
【0186】
【化7】
【0187】
・乳酸 ムサシノ乳酸:武蔵野化学研究所社製
・水酸化カリウム水溶液 1M KOH:キシダ化学社製
―その他―
・4−ヒドロキシ安息香酸メチル:キシダ化学社製
・86%グリセリン 日本薬局方グリセリン:花王社製
表3及び4、並びに表8は、油性成分と水性成分との混合条件等を示す。
【0188】
レイノルズ数は、細孔の孔径d(m)、この細孔の孔径と細孔に流通させる流体の流量とより算出される管内平均流速u(m/s)、水性成分の代表値として水の粘度μ:0.001(Pa・s)及び水の密度ρ:1000(kg/m
3)を用いて、前述のレイノルズ数算出式(レイノルズ数Re=duρ/μ)に基づいて算出した。
【0189】
セグリゲーション指数(Xs)については以下のようにして算出した。水性成分に代替するほう酸緩衝液と油性成分に代替する0.171N硫酸とを前述の通り準備した。ほう酸緩衝液の組成は、ほう酸0.045mol/L、水酸化ナトリウム0.045mol/L、よう素酸カリウム0.00313mol/L、及びよう化カリウム0.0156mol/Lとした。これらの2液を、各実施例或いは各比較例と同一の条件で混合し、混合1分後の溶液の波長353nmの光に対する吸光度を測定した。吸光度は、分光光度計(島津製作所社製 装置名:UVmini−1240)を用いて測定した。そして、その吸光度の測定結果から前述の(IV)式に従ってセグリゲーション指数(Xs)を算出した。
【0190】
表5及び6、並びに表9は、得られた分散液の組成及び液滴粒子の平均粒子径を示す。
【0191】
液滴粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置 LA−920(堀場製作所社製)を用い、レーザー散乱/回折法により測定した油性成分のメジアン径として求めた。なお、測定に際しては、フロー式の測定セルを用い、循環速度:4、相対屈折率(分散質屈折率/分散媒屈折率):1.20を用いて25℃で測定を行った。
【0192】
<実施例1>
油性成分として、カチオン性界面活性剤Aである第二級アミンの1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノールを8.00質量%、油剤Bであるモノカプリン酸グリセリンを51.60質量%、及び油剤Bである2−オクチルドデカノールを40.40質量%それぞれ含む均一溶液を準備して油性成分貯槽41bに仕込んだ。従って、油性成分における界面活性剤Aの含有量は8.00質量%であり、油剤Bの含有量は92.00質量%である。油性成分における界面活性剤A及び油剤Bの合計の含有量は100質量%であり、油剤Bに対する界面活性剤Aの質量比は0.09である。この油性成分は、常温(25℃)において液体であった。
【0193】
水性成分として、中和剤CであるL−グルタミン酸を0.13質量%、4−ヒドロキシ安息香酸メチルを0.21質量%、86%グリセリンを21.05質量%、及びイオン交換水を78.61質量%それぞれ含む均一溶液を準備して水性成分貯槽41aに仕込んだ。従って、水性成分における中和剤Cの含有量は0.13質量%である。
【0194】
そして、分散液製造システムSを稼働させ、マイクロミキサー100において、常温下(25℃)、水性成分/油性成分の混合質量比が95.0/5.0(=19.0)となるように、油性成分の流量を0.17L/h及び水性成分の流量を2.83L/h、従って、水性成分/油性成分の混合流量比を16.6並びに細孔22に流通させる流体の流量を3.00L/hとして油性成分と水性成分とを混合することにより分散液(乳化物)を得た。
【0195】
合流させた流体において、界面活性剤Aに対する中和剤Cのモル当量比(中和剤C/界面活性剤A)は0.79である。また、界面活性剤Aの含有量(質量%)×モル当量比(中和剤C/界面活性剤A)/油剤Bの含有量(質量%)は0.065である。マイクロミキサー100の細孔22における流体のレイノルズ数は4.8×10
3である。このレイノルズ数の算出には、細孔の孔径d
1:0.22mm、流体の流量:3.00L/hより算出される管内平均流速u:21.9m/sを用いた。マイクロミキサー100の細孔22の前後の圧力損失は0.75MPaであった。
【0196】
得られた分散液における各成分の含有量は、1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノールが0.40質量%、モノカプリン酸グリセリンが2.58質量%、2−オクチルドデカノールが2.02質量%、L−グルタミン酸が0.12質量%、4−ヒドロキシ安息香酸メチルが0.20質量%、グリセリンが20.0質量%(86%グリセリン換算、以下同様)、及びイオン交換水が74.68質量%であった。
【0197】
得られた分散液における油性成分の液滴粒子の平均粒子径は0.167μmであった。
【0198】
<実施例2〜9>
実施例2〜9では、表1に示す組成の油性成分及び水性成分を用い、実施例1と同様にして、表3に示す条件で分散液製造システムSを稼働させ、表5に示す分散液(乳化物)を得た。
【0199】
実施例6〜8の分散操作におけるセグリゲーション指数(X
S)は3.4×10
−3であった。なお、混合1分後のI
3−イオンは、波長353nmの光に対する吸光度から求めた値で、3.94×10
−6mol/Lであった。また、[H
+]
0及び[I
2]はそれぞれ0.171mol/L及び3.13×10
−7mol/Lであったので、Yは9.95×10
−4であった。また、[IO
3−]
0及び[H
2BO
3−]
0はそれぞれ0.00313mol/L及び0.045mol/Lであったので、Y
STは0.294であった。
【0200】
<比較例1〜4>
比較例1〜4では、表2に示すように、実施例1〜4と同一組成の油性成分及び水性成分を準備し、そして、それらをビーカーで混合した後、ホモミキサーを用いて8000r/minの回転数で1分間混合して、表6に示す分散液(乳化物)を得た。このとき、比較例1〜3では、油性成分40.0gと水性成分760.0gとを混合した(水性成分/油性成分の混合質量比:95.0/5.0(=19.0))。比較例4では、油性成分37.4gと水性成分762.6gとを混合した(水性成分/油性成分の混合質量比:95.3/4.7(=20.3))。
【0201】
比較例1〜4の分散操作におけるセグリゲーション指数(X
S)は2.3×10
−1であった。なお、混合1分後のI
3−イオンは、波長353nmの光に対する吸光度から求めた値で、2.68×10
−4mol/Lであった。また、[H
+]
0及び[I
2]はそれぞれ0.171mol/L及び2.13×10
−5mol/Lであったので、Yは6.76×10
−2であった。また、[IO
3−]
0及び[H
2BO
3−]
0はそれぞれ0.00313mol/L及び0.045mol/Lであったので、Y
STは0.294であった。これは後述の比較例7〜10も同じである。
【0202】
<比較例5及び6>
比較例5及び6では、表2に示す組成の油性成分及び水性成分を用い、実施例1と同様にして、表4に示す条件で分散液製造システムSを稼働させ、表6に示す分散液(乳化物)を得た。比較例5及び6では、界面活性剤Aを油性成分に含有させずに水性成分に含有させた。
【0203】
<比較例7〜9>
比較例7〜9では、表2に示すように、実施例6〜8と同一組成の油性成分及び水性成分を準備し、そして、それらをビーカーで混合した後、ホモミキサーを用いて8000r/minの回転数で1分間混合して、表6に示す分散液(乳化物)を得た。このとき、比較例7では、油性成分38.4gと水性成分761.6gとを混合した(水性成分/油性成分の混合質量比:95.2/4.8(=19.8))。比較例8では、油性成分44.8gと水性成分755.2gとを混合した(水性成分/油性成分の混合質量比:94.4/5.6(=16.9))。比較例9では、油性成分40.0gと水性成分760.0gとを混合した(水性成分/油性成分の混合質量比:95.0/5.0(=19.0))。
【0204】
<比較例10>
比較例10では、表2に示す組成の油性成分及び水性成分を準備し、そして、油性成分52.8gと水性成分747.2gとをビーカーで混合した後(水性成分/油性成分の混合質量比:93.4/6.6(=14.2))、ホモミキサーを用いて8000r/minの回転数で1分間混合して、表6に示す分散液(乳化物)を得た。比較例10では、油性成分に多量の界面活性剤Aを含有させ、ホモミキサーを用いて分散液を作製した。
【0205】
<比較例11>
比較例11では、表2に示す組成の油性成分及び水性成分を用い、実施例1と同様にして、表4に示す条件で分散液製造システムSを稼働させ、表6に示す分散液(乳化物)を得た。比較例11では、油性成分に界面活性剤Aを含有させず、水性成分に多量の界面活性剤Aを含有させ、マイクロミキサー100を用いて分散液を作製した。
【0206】
【表1】
【0207】
【表2】
【0208】
【表3】
【0209】
【表4】
【0210】
【表5】
【0211】
【表6】
【0212】
<実施例10〜17>
実施例10〜17では、表7に示すように実施例1で用いたとの同一組成の油性成分及び水性成分を用い、表8に示す条件で分散液製造システムSを稼働させ、表9に示す分散液(乳化物)を得た。
【0213】
【表7】
【0214】
【表8】
【0215】
【表9】
【0216】
(結果考察)
中和可能な官能基を有する界面活性剤と油剤とを含む油性成分と、油性成分に含まれる界面活性剤Aとの塩形成能を有する中和剤Cを含む水性成分とを第1の構成のマイクロミキサー100によって混合して分散させ、且つ界面活性剤Aに対する中和剤Cのモル当量比(中和剤C/界面活性剤A)を0.5以上とした実施例1〜9では、得られた分散液における油性成分の液滴粒子の平均粒子径がいずれも1μm以下であった。
【0217】
実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1においてマイクロミキサー100を用いて得られた分散液における油性成分の液滴粒子の平均粒子径は、比較例1においてホモミキサーを用いて得られた分散液における油性成分の液滴粒子の平均粒子径の10分の1以下であることが分かる。また、比較例10のように界面活性剤Aの量を比較例1の5倍としても、実施例1において得られたような水性成分に油性成分の微細な液滴粒子が分散した分散液を得ることはできないことが分かる。
【0218】
実施例1と界面活性剤Aを水性成分に含めた比較例5とを比較しても、実施例1において得られた分散液における油性成分の液滴粒子の平均粒子径は、比較例5において得られた分散液における油性成分の液滴粒子の平均粒子径の10分の1以下であることが分かる。また、比較例11のように界面活性剤Aの量を比較例5の約4倍としても、実施例1において得られたような水性成分に油性成分の微細な液滴粒子が分散した分散液を得ることはできないことが分かる。
【0219】
実施例5では、界面活性剤Aの量を実施例1の1/4に減じているものの、水性成分に油性成分の微細な液滴粒子が分散した分散液を充分に得ることができることが分かる。
【0220】
実施例10〜17によれば、第2〜第4の構成のマイクロミキサー100を用いた場合でも、水性成分に油性成分の微細な液滴粒子が分散した分散液を得ることができることが分かる。