(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マグネシウム材料が、乳清ミネラル、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、苦汁、ドロマイト、粗塩、ステアリン酸マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、セピオライト、タルク、フィチンからなる群から選ばれる材料、または該材料の有機酸もしくは無機酸の塩である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳飲料。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
ここで、本明細書において“質量%”と“重量%”とは同義である。
本発明の乳化組成物は、乳製品、乳化剤及びマグネシウム材料を含む乳化組成物であって、乳製品は、全固形分が20質量%以上で、全固形分に対する乳脂肪の比率が30質量%以上の乳製品であり、組成物中の脂肪分に対するマグネシウムの質量比率(脂肪分:マグネシウム)が、1:0.0003〜1:0.01であることを特徴とする。
【0013】
<乳製品>
まず、本発明で用いる乳製品について説明する。
本発明で用いる乳製品は、全固形分が20質量%以上で、全固形分に対する乳脂肪の比率が30質量%以上の乳製品である。ここでいう全固形分量とは、乳製品の総重量から、水分量を差し引いた値を意味する。
乳製品の全固形分は20質量%以上であればよく、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは55質量%以上、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以下である。この範囲であることにより、乳化組成物の主原料である乳製品中の水分が適切な量となるため、より濃縮度が高く濃厚で、かつ低コストな乳化組成物を、粘性等による問題が少なく、効率よく製造できるため好ましい。
また、全固形分に対する乳脂肪の比率は、30質量%以上であればよく、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上、最も好ましくは50質量%以上、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。この範囲であることにより、乳脂肪を豊富に含むため、濃厚な風味を持ち、低コストで、かつ後述のマグネシウム材料の添加による風味増強効果が充分に発揮されるため好ましい。ここでいう乳脂肪分とは、日本国における乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)に定める分析法に基づき測定した値を意味する。
【0014】
本発明で用いる乳製品とは、動物の乳、またはその加工品である。全固形分が20質量%以上で、全固形分に対する乳脂肪の比率が30質量%以上の乳製品としては、例えば、フレッシュチーズ等のチーズ、クリーム(生クリーム、ダブルクリーム、クロテッドクリーム等)、バター、バターオイル、などから選ばれる乳製品である。好ましくは、クリーム、バターやフレッシュチーズなどが挙げられ、最も好ましくは、クリーム、フレッシュチーズが挙げられる。
尚、乳製品は2種以上を組み合わせて用いてもよく、その場合の全固形分及び乳脂肪の比率は2種以上の乳製品の合計量から算出される。
【0015】
また、この乳化組成物中の乳製品の含有量は、特に制限はないが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。乳化組成物中の乳製品の含有量をこの範囲にすることにより、製造が容易で安定性が高く、コスト的に最適である乳化組成物を作ることが可能である。
【0016】
[フレッシュチーズ]
フレッシュチーズについて説明する。本発明におけるフレッシュチーズとは、ナチュラルチーズの1種であり、熟成工程をとらない非熟成型のチーズである。
【0017】
フレッシュチーズには、発酵型と、非発酵型の分類があるが、本発明で用いるフレッシュチーズは、非発酵型であることが、マイルドで軽い風味を得ることができるという理由から好ましい。なお、非発酵型とは、乳、バターミルク、もしくは生クリームを、乳酸菌で発酵させることなく、凝固作用を含む製造技術を用いて製造したものであって、乳酸菌で発酵させたものと同様の化学的、物理的および官能的特性を有するものである。
【0018】
フレッシュチーズとして具体的には、クリームチーズ、モッツァレラチーズ、カッテージチーズ、リコッタ、マスカルポーネ、フロマージュ・ブラン、パニール、ルービンなどが挙げられ、中でも飲食品への風味の影響が少ないクリームチーズが好ましく、非発酵型のクリームチーズが特に好ましい。
【0019】
フレッシュチーズの全固形分量は特に規定されるものではないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、最も好ましくは75質量%以下である。また、その下限は、通常20質量%、好ましくは30質量%、より好ましくは40質量%である。全固形分量がこの範囲であるとチーズ特有の風香味が増し風味がより良好である。ここでいう全固形分量とは、フレッシュチーズの総質量から、水分量を差し引いた値を意味する。
【0020】
また、本発明で用いるフレッシュチーズの全固形分に対する、乳脂肪分の比率は、通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、その上限は通常90質量%である。乳脂肪分の比率がこの範囲であると、乳脂肪分あたりのコストが安価になることや、フレッシュチーズ自体の製造が容易であるという面で好適である。なお、ここでいう乳脂肪分とは、乳等省令に定めるプロセスチーズの分析法に基づき測定した値を意味する。
【0021】
<乳化剤>
乳化剤としては、食品に使用可能な乳化剤であれば特に制限はなく使用することができる。例示するならば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル)、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、などの脂肪酸エステル類、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、酵素分解レシチン、レシチン、サポニンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、乳化組成物およびそれを用いた乳飲料中の乳化安定性がよいため更に好ましい。
【0022】
また、上記乳化剤において、飲料における危害菌である耐熱性菌に対して効果を持つ食品用乳化剤を単独、または併用して用いることもできる。耐熱性菌に対して効果を持つ食品用乳化剤としては、その効果を有する食品用乳化剤であれば、特に制限なく使用することができるが、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドが好ましく、特に、構成する脂肪酸の炭素数が14〜22の、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドがより好ましく、構成する脂肪酸の炭素数が16〜18の、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルがさらに好ましく、これらは菌に対する有効性が高いため好適である。
使用するショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル含量が通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であることが、菌に対する有効性が高いため好適である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンの平均重合度が2〜5であることが好ましく、さらに2〜3であることが、菌に対する有効性が高いため最も好ましい。
【0023】
該乳化剤の使用量(乳化組成物中の含有量)は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
乳化組成物中の乳化剤の含有量をこの範囲とすることにより、味に影響を及ぼしたり、粘度を過度に高くしたりすることなく、良好な取り扱い性のもとに、乳化剤による乳化安定化の効果を有効に得ることができる。
乳化組成物中における乳製品と乳化剤の含有比(乳製品:乳化剤、質量比)は、1:0.0001〜1:10であり、1:0.001〜1:1が好ましく、1:0.005〜1:0.1がより好ましい。
乳化組成物中における乳脂肪と乳化剤の含有比(乳脂肪:乳化剤、質量比)は、1:0.0001〜1:100であり、1:0.001〜1:10が好ましく、1:0.005〜1:1がより好ましく、1:0.01〜1:0.1が最も好ましい。
乳化組成物中における乳化剤とマグネシウム材料の含有比(乳化剤:マグネシウム材料、質量比)は1:0.00001〜1:100であり、1:0.0001〜1:10が好ましく、1:0.001〜1:1がより好ましく、1:0.01〜1:0.5が特に好ましい。
【0024】
<マグネシウム材料>
本発明では、ミネラル素材であるマグネシウム材料を使用することを特徴とする。
ミネラル素材とは、食用可能な鉱物、河川、海洋等の水、動植物等の生物由来のミネラル源を、化学的、物理的処理や精製、濃縮などにより食品に使用しやすい形態としたものをいう。
マグネシウム材料としては、乳清ミネラル、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、苦汁(粗製海水塩化マグネシウム)、ドロマイト、粗塩、ステアリン酸マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、セピオライト、タルク、フィチンから選ばれる材料が挙げられ、またこれらを原料として用い、他の食用可能な有機酸、無機酸の塩とした材料、シクロデキストリンやトレハロース等を用い粉末化した材料が挙げられる。
【0025】
ここでいう乳清ミネラルとは、動物の乳に含まれるミネラルから得られるものであり、特定の操作により、乳脂肪、タンパク質、乳糖等の含有量を低減させて、用いた原料以上にミネラル分を含有しているものである。例えば、乳そのものまたはホエー(乳からカゼインやチーズを製造した際に生じる物質)に対し、加熱、冷却等の温度変化や、遠心力、膜、樹脂等による分離操作を単独または組合せて適用させることにより、乳清ミネラルを得ることができる。乳清ミネラルの具体例としては、ホエーミネラル及びその濃縮物、ミネラル濃縮ホエー及びその粉末、パーミエイト(粗精製の乳糖を含む)等が挙げられる。また、これらをさらに特定のミネラルについて、精製、分画、濃縮、粉末化したものも使用することもできる。さらに、乳清ミネラルとその他副原料を混合した組成物を使用することもできる。用いた原料の固形分に対するミネラルの質量比率に対して、乳清ミネラルの固形分に対するミネラルの質量比率は、通常1.5倍以上、好ましくは2.0倍以上、より好ましくは2.5倍以上、特に好ましくは3.0倍以上、最も好ましくは4.0倍以上であることが、添加効率のよい、かつ低コストな乳清ミネラルとして好適である。
【0026】
マグネシウム材料の中でも、乳清ミネラル、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、苦汁(粗製海水塩化マグネシウム)、L−グルタミン酸マグネシウムが、水への溶解度が高く、乳化組成物への添加が容易ないため好ましく、特に、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、苦汁(粗製海水塩化マグネシウム)が好ましく、塩化マグネシウムが最も好ましい。
【0027】
尚、マグネシウム材料とは、マグネシウムを含有する材料であり、例えば材料中に0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上、最も好ましくは5質量%以上のマグネシウムを含有する材料をいう。
該マグネシウム材料の使用量(乳化組成物中の含有量)は、マグネシウム換算で、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、最も好ましくは0.01質量%以上、通常1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下である。
乳化組成物中のマグネシウムの含有量をこの範囲とすることにより、マグネシウムに起因する異味を感じず、コクや乳風味を増強する効果を得ることができる。
【0028】
さらに他のミネラルを含んでいてもよく、ミネラルとして例えば、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、リンなどの元素が挙げられる。中でも、ナトリウム、カリウムを用いることが好ましい。
【0029】
上記マグネシウム材料がこれらミネラルを含むものであれば、マグネシウム材料の使用により、これらミネラルも組成物中に含ませることができる。マグネシウム材料とは別に、これらミネラルを含む材料を組成物中に混合してもよい。
【0030】
ミネラルを含む材料の具体例としては、リン酸一水素カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、焼成カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、水酸化カルシウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、乳酸鉄、塩化第二鉄、ヘム鉄、炭酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、サンゴ未焼成カルシウム、貝殻粉末、卵殻粉末などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
マグネシウム材料として例示した、苦汁、ドロマイト、乳清ミネラル、粗塩、フィチンなどはマグネシウム以外のミネラルも含む。
本発明においては、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムを含有する乳清ミネラルを使用することが好ましい。また、ナトリウムを含有するナトリウム材料及び/またはカリウムを含有するカリウム材料をさらに用いることが好ましい。ナトリウム材料及びカリウム材料とは、それぞれナトリウムまたはカリウムを含有する材料であり、例えば材料中に0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、最も好ましくは1質量%以上のナトリウムまたはカリウムを含有する材料をいう。
【0031】
乳化組成物中のナトリウムの含有量は、ナトリウム換算で、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、通常2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
乳化組成物中の乳化剤の含有量をこの範囲とすることにより、ナトリウムに起因する異味を感じず、マグネシウムによるコク、乳風味増強効果をさらに高める効果を得ることができる。
【0032】
乳化組成物中のカリウムの含有量は、カリウム換算で、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、通常4質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
乳化組成物中の乳化剤の含有量をこの範囲とすることにより、カリウムに起因する異味を感じず、マグネシウムによるコク、乳風味増強効果をさらに高める効果を得ることができる。
【0033】
<乳化組成物>
本発明の乳化組成物は、少なくとも、上述の乳製品、乳化剤及びマグネシウム材料を混合して製造されることが好ましい。
本発明では、乳化組成物中の脂肪分に対するマグネシウムの質量比率(脂肪分:マグネシウム)が、1:0.0003〜1:0.01であることを特徴とする。この範囲であることにより、脂肪分とマグネシウムのバランスがよく、マグネシウムに起因する異味を感じず、コクや乳風味を増強する効果が得られる。
脂肪分とは、例えば、乳製品とその他成分由来の脂肪分であり、乳化組成物中の合計量である。
また、マグネシウムは、上記マグネシウム材料由来のマグネシウム、乳製品およびその他成分由来のマグネシウムを含む、組成物中の合計量である。
乳化組成物中の脂肪分に対するマグネシウムの質量比率(脂肪分:マグネシウム)は好ましくは1:0.0005〜1:0.008、より好ましくは1:0.001〜1:0.005である。
【0034】
さらに、乳化組成物中の脂肪分に対するナトリウムの質量比率(脂肪分:ナトリウム)が、1:0.0001〜1:0.02であることが好ましい。この範囲であることにより、ナトリウムの異味を感じず、マグネシウムによるコク、乳風味増強効果をさらに高めるという効果が得られる。好ましくは1:0.001〜1:0.015、より好ましくは1:0.003〜1:0.01である。
【0035】
また、乳化組成物中の脂肪分に対するカリウムの質量比率(脂肪分:カリウム)が、1:0.0001〜1:0.04であることが好ましい。この範囲であることにより、カリウムの異味を感じず、マグネシウムによるコク、乳風味増強効果をさらに高めるという効果が得られる。好ましくは1:0.001〜1:0.03、より好ましくは1:0.005〜1:0.02である。
【0036】
本発明の乳化組成物は、上述の乳製品、乳化剤及びマグネシウム材料を混合して製造することが好ましい。
本発明の乳化組成物は、単に乳製品、乳化剤及びマグネシウム材料を混合しホモミキサーやホモジナイザーを用いて撹拌することにより乳化させて得られるものであってもよい。
また、例えば、乳化剤を水に添加して、乳化剤含有の分散液とし、この分散液に乳製品を添加して、ホモミキサーやホモジナイザーを用いて撹拌することにより乳化させ、水、乳製品及び乳化剤を含有する組成物(組成物A)を得る。この組成物Aにマグネシウム材料を混合して、本発明の乳化組成物を得ることも出来る。
下記詳述する水、コーヒー抽出物、紅茶抽出物のような飲料のベースとなる液体やその他の成分を組成物Aを製造する段階で混合してもよい。組成物Aと飲料のベースとなる液体やその他の成分を混合した後に、マグネシウム材料を混合し本発明の乳化組成物としてもよい。
【0037】
この際、乳化剤を含む分散液中で乳化剤がベシクルなどの自己集合体を形成していてもよい。該乳化の際は、まずホモミキサーやパウブレンダー等で予備乳化した後、ホモジナイザーを使用して本乳化するなど、複数回の撹拌、乳化工程を経てもよい。ホモジナイザーによる乳化工程は、1回でもよいが、より好ましくは2回以上であることが、得られる乳化組成物およびそれを用いた乳飲料の安定性を良好とする上で好ましい。ホモジナイザーによる乳化工程は、殺菌工程の前後どちらでもよいが、製造工程の管理が容易であるため、殺菌工程の前に行なうことが好ましい。また、乳化工程は通常40〜80℃の加温条件下で行われ、ホモジナイザーを用いた乳化工程は、通常5〜200MPa、好ましくは10〜100MPaの高圧条件で行なわれる。
【0038】
なお、この乳化組成物中には、上記以外の成分を含んでいてもよい。例えば、乳製品以外の乳成分、または植物性の脂肪分を添加することができる。乳成分としては、特に制限はなく、乳、全脂乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、カゼイン、ホエーなどの乳タンパクおよびその塩類、乳糖などが挙げられる。植物性の脂肪分としては、植物由来の油脂であれば限定されないが、通常、豆乳、カカオバター、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、やし油、大豆油、コーン油、ひまわり油、コメ油、菜種油などの植物性油脂、これらの植物性油脂を精製したり、水素添加やエステル交換等で加工した油脂などが挙げられる。
【0039】
これら乳成分、または植物性の脂肪分は、この乳化組成物中の乳製品の含有量の一部を置き換えることで配合することができる。そのため、乳化組成物中のこれら成分と乳製品の合計量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。この範囲にすることにより、製造が容易で安定性が高く、コスト的に最適である乳化組成物を作ることが可能である。
【0040】
この乳化組成物中には、乳製品、水、乳化剤、上記の乳製品以外の乳成分の他にも、他の添加剤等が含まれていてもよく、他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、増粘安定剤、有機酸、無機酸などのpH調整剤、香料などが挙げられる。
例えば、さらにカゼイン及びカゼインの塩のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。カゼインまたはカゼインの塩としては、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼンマグネシウム、カゼインカルシウムなどが挙げられ、カゼインナトリウム、カゼインカリウムが、その水への溶解性や、乳化力、乳化安定化効果が良好なため好ましい。乳化組成物中のカゼイン及びカゼインの塩の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が最も好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が最も好ましい。
【0041】
また、乳化組成物中の固形分の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。乳化組成物中の固形分の含有量が、下限以上であることにより、乳風味が弱くなることなく乳固形分あたりのコストにおいてもより好適となり、上記上限以内であることにより、水分が少なすぎて安定性が低下しにくく、製造しやすい傾向がある。
【0042】
なお、得られた乳化組成物は、低温保持殺菌、高温保持殺菌、高温短時間殺菌、超高温瞬間殺菌といった、通常食品で用いられる殺菌方法で殺菌処理を施してもよい。その殺菌方法は特に制限はないが、熱による風味の劣化が少ないという点で、超高温瞬間殺菌が好ましく、さらに超高温瞬間殺菌の方法としては、チューブ式間接殺菌法、インジェクション、インフュージョン式直接殺菌法、ジュール式殺菌法が好ましい。
【0043】
<乳飲料>
次に、本発明の乳飲料について説明する。
本発明の乳飲料は、上記乳化組成物を用いて製造されるものである。乳化組成物をそのまま乳飲料としてもよいし、乳化組成物を製造した後に乳飲料に必要な成分を混合して乳飲料としてもよい。
乳飲料において、乳製品は、これを乳化させた乳化組成物として混合することが、製造簡便性や、乳飲料の保存時の乳化安定性および風味を良好とする上で好ましい。
即ち、本発明の乳飲料の製造に際しては、予め製造した乳化組成物と、飲料のベースとなる液体(水、コーヒー抽出物、紅茶抽出物など)及びその他の添加剤とを混合することが好ましい。
【0044】
その他の添加剤は、飲料のベースとなる液体に、予め添加しておいてもよし、乳化組成物と飲料のベースとなる液体とを混合する際に、添加混合してもよい。
本発明の乳飲料には、以下(A)、(B)、(D)、(E)からなる群から選ばれる1以上の成分を含有することが好ましい。これら成分が上記マグネシウム材料の定義に当てはまれば、マグネシウム材料とすることもできる。
(A)多糖類(以下「(A)成分」と称す場合がある。)
(B)ミルク香料(以下「(B)成分」と称す場合がある。)
(D)バターミルク類(以下「(D)成分」と称す場合がある。)
(E)酵母類(以下「(E)成分」と称す場合がある。)
【0045】
<(A)多糖類>
多糖類としては、食物繊維または澱粉類であることが好ましい。
【0046】
(食物繊維)
食物繊維は、人の消化酵素によって消化されない食物に含まれる多糖類であり、多くは植物または微生物由来の多糖類である。具体的にはぺクチン、アガロース、グルコマンナン、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、アルギン酸ナトリウム、イヌリン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、キサンタンガム、ジェランガム、発酵セルロース、プルラン、大豆多糖類などの水溶性食物繊維と、セルロース、リグニン、キチン、キトサンなどの水不溶性食物繊維が挙げられる。
これらの食物繊維のうち、乳飲料に用いるため、水溶性食物繊維が好ましい。
【0047】
(澱粉類)
澱粉類としては、澱粉およびその加工品、澱粉加水分解物などが挙げられる。
【0048】
澱粉としては、特にその由来原料に制限はないが、代表的な原料としては、馬鈴薯、小麦、トウモロコシ、糯トウモロコシ、ハイアミローストウモロコシ、サツマイモ、米、糯米、キャッサバ、クズ、カタクリ、緑豆、サゴヤシ、ワラビ、オオウバユリなどが挙げられる。
澱粉加工品としては、湿式法または乾式法にて、澱粉に各種加工(酵素的、物理的、化学的)を施し、性質を改善したり、機能性を付与したりした加工澱粉が挙げられ、具体的には酵素処理デンプン、デンプングルコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酸化デンプン、酸処理デンプン、アルファ化デンプン、乾燥デンプン、加熱処理デンプン、油脂加工デンプン、造粒デンプン、吸油性デンプンなどが挙げられる。
これらの澱粉およびその加工品のうち、乳飲料に用いるため、水溶解性や乳化性が高いものが好ましく、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムが好ましい。
【0049】
澱粉加水分解物とは、澱粉中のアミロースやアミロペクチン等の多糖類を熱、酸、アルカリ、酵素等で加水分解したものの総称であり、デキストリンとも呼ばれ、グルコースがα−1,4結合または1,6結合で連なった多糖類が主成分であり、具体的には、可溶性デンプン、薄手のりデンプン、アミロデキストリン、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリテシュガム、エリトロデキストリン、アクロデキストリン、マルトデキストリン、酵素変性マルトデキストリン、水飴、麦芽糖液糖等、およびそれらの還元物である還元澱粉糖化物、還元麦芽糖水飴、還元ポリデキストロース等が挙げられる。
【0050】
これらの澱粉加水分解物のうち、乳飲料に用いるため、水溶解性が高いものが好ましく、この点において、水への親和性の高いグルコースがα−1,6結合で連なった多糖類の含有量が多い原料として、用いる澱粉中のアミロースとアミロペクチンの合計質量に対するアミロペクチンの質量比率が、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の澱粉を用いることが好適である。または、容易に溶解する低分子の多糖類の含有量が多い澱粉加水分解物として、レーンエイノン法、またはソモギー法で測定した澱粉の加水分解度を示す指標であるデキストロース当量が、3以上のものが好ましく、8以上のものがより好ましく、15以上のものが最も好ましい。
【0051】
なお、澱粉中のアミロースとアミロペクチンの合計質量に対するアミロペクチンの質量比率が80%未満の原料を用いたとしても、酵素等により、グルコースの結合状態を改変することで、水溶解性を高めることもできる。
【0052】
澱粉加水分解物としては、松谷化学工業社製「パインデックス#3」、「パインデックス#100」、日本食品化工社製「フジオリゴG67」「日食ブランチオリゴ」「日食クリアトース」、三和澱粉工業社製「サンデック#30」「サンデック#70」「サンデック#70FN」「サンデック#150」「サンデック#180」「サンデック#250」「サンデック#300」「オリゴトース液」「オリゴトース粉末」、三栄源エフ・エフ・アイ社製「スマートテイスト」などが市販されており、これらを用いることができる。
【0053】
多糖類としては上記のもののうち、乳飲料に用いるため、水溶解性の面で、水溶性食物繊維、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、澱粉加水分解物が好ましく、澱粉加水分解物がより好ましい。
上記の多糖類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
<(B)ミルク香料>
ミルク香料とは、ミルクの芳香成分を有する香料であり、乳に特徴的な香気成分を含んだ香料であれば特に制限はないが、酪酸、吉草酸、カプロン酸などの短鎖遊離脂肪酸類やそのエステル類等の、特に新鮮な乳の風味をもったフレッシュなミルク香料が好ましく、α−メチルケトン類や3−メチルブタナール等のアルデヒド類等の発酵チーズの風味を持った香気成分の含有量が少ないことがさらに好ましい。
ミルク香料としては、市販品を用いることができる。ミルク香料に含まれる香気成分の製造方法としては、化学合成でもよいし、乳より抽出、精製されたものでもよいし、それらの混合物であってもよいが、乳を原料としたものがより好ましく、乳成分に酵素を反応させて製造されたミルク香料が、自然な乳の風味を再現できるため、さらに好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
<(D)バターミルク類>
バターミルクとは、牛乳から遠心分離等で製造されたクリームから、チャーニング等により乳脂肪部分をバターとして取り出した際に分離されるバターミルク、バターセーラムと呼ばれる液体分のことで、それを濃縮した液状の濃縮バターミルクと、さらに噴霧乾燥を行った粉末状のバターミルクパウダーがある。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
別途、牛乳からクリームやバターを分離する過程で、酸を生成する菌による発酵や、有機酸等の酸を添加する場合があるが、本発明で用いるバターミルクは、そのような発酵や酸添加を行っていないバターミルクが好ましい。
バターミルク類としては、よつ葉乳業社製「バターミルクパウダー」等の市販品を用いることができる。
【0056】
<(E)酵母類>
酵母類には、酵母の他、酵母を破砕し自己消化により内容成分を分解した酵母破砕物、酵素や熱水による処理で内容成分を分解した酵母分解物、さらに酵母およびその破砕物、分解物から内容成分を抽出、精製、濃縮等をした酵母抽出物が含まれる。
【0057】
本発明で用いる酵母は、食品に伝統的に用いられる酵母であれば特に制限はないが、具体的にはビール酵母、パン酵母、トルラ酵母、乳酵母などが挙げられ、中でも乳酵母が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いる酵母は、特にタンパク質の分解度が高く、苦みを呈するペプチド等が低減されている酵母類が好ましい。
また、グルタチン等のγグルタミルペプチドを含有する酵母類が好ましく、さらにγグルタミルペプチドの含有量が1ppm以上であるものがさらに好ましい。
酵母類としては、大日本明治製糖社製「コクベースLYC−P」、「コクベースLYM−P」、「コクベースLYS−P」「コクベースLYS−H」、興人ライフサイエンス社製「アジレックスNH」等の市販品を用いることができる。
酵母類の市販品の中には、酵母類に副原料として、食塩を添加しているものがあるが、ナトリウム量が多い場合は、酵母類による効果よりも、過剰なナトリウムによる風味への悪影響が大きくなるため、酵母類中の食塩含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以下であることが最も好ましい。
【0058】
<(A)、(B)、(D)、(E)成分の含有量>
上記(A)、(B)、(D)、(E)成分は、本発明の乳飲料中に1種のみ含まれていてもよく、2種以上の成分が含まれていてもよいが、2種以上含まれている場合は、その合計で、本発明の乳飲料中に0.0001質量%以上含まれていることが好ましく、0.001質量%以上含まれていることがより好ましく、0.01質量%以上含まれていることが特に好ましい。また、5.0質量%以下含まれていることが好ましく、2.0質量%以下含まれていることがより好ましく、1.0質量%以下含まれていることが特に好ましい。(A)、(B)、(D)、(E)成分の含有量がこの範囲であることにより、いやな風味などで味のバランスを壊すことなくコクや乳風味などを付与し味質を改善するという効果が得られやすい。
本発明の乳飲料は、特に(A)、(B)、(D)、(E)成分のうち(A)成分を含むことが好ましく、(A)成分と(D)成分を組み合わせて含むことがさらに好ましく、(A)成分と(B)成分と(D)成分を組み合わせて含むことが最も好ましい。
【0059】
特に、本発明の乳飲料が(A)成分を含む場合、その含有量は0.001質量%以上、特に0.01質量%以上で、5.0質量%以下、特に2.0質量%以下であることが好ましい。また、本発明の乳飲料が(B)成分を含む場合、その含有量は0.0001質量%以上、特に0.001質量%以上で、5.0質量%以下、特に2.0質量%以下であることが好ましく、本発明の乳飲料が(D)成分を含む場合、その含有量は0.0001量%以上、特に0.001質量%以上で、5.0質量%以下、特に2.0質量%以下であることが好ましく、本発明の乳飲料が(E)成分を含む場合、その含有量は0.0001質量%以上、特に0.001質量%以上で、5.0質量%以下、特に2.0質量%以下であることが好ましい。
【0060】
また、本発明の乳飲料中における乳製品と(A)、(B)、(D)、(E)成分の含有比は、乳製品に対する(A)、(B)、(D)、(E)成分の質量割合(2種以上の成分を含む場合はその合計割合)として、0.000005以上が好ましく、0.00005以上がより好ましく、0.0001以上がさらに好ましく、0.0005以上が特に好ましく、0.001以上が最も好ましく、また1000以下が好ましく、200以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、2以下が特に好ましく、0.2以下が最も好ましい。(A)、(B)、(D)、(E)成分の含有比がこの範囲であることにより、乳製品の風味を損なうことなくコクや乳風味などを付与し味質を改善するという効果が得られやすい。
尚、本発明で用いる(A)、(B)、(D)、(E)成分については、乳化組成物中に含有させてもよいし、乳化組成物を製造した後に、その他の成分とともに添加して乳飲料中に含有させてもよい。
【0061】
なお、比較的微量で効果が得られる(D)と(E)成分は、ハンドリングの面から、乳化組成物中に含有させることが好ましく、比較的添加量が多い(A)成分や、殺菌加熱時や経時的に揮発する可能性があり、かつ、乳飲料の総合的な風味を考慮して添加量を決定する必要である(B)成分は、乳化組成物を製造した後に、その他の成分とともに添加して乳飲料中に含有させることが好ましい。
【0062】
また、乳飲料には、その他の添加剤として、乳成分、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール等の糖類、高甘味度甘味料等の甘味料、pH調整剤、乳化剤、増粘安定剤、動物性および/または植物性の蛋白質、動物性および/または植物性の脂肪分、酸化防止剤などの飲料のベースとなる材料を含有することが好ましい。
もちろん、これら材料または以下詳述する材料は乳化組成物中に含有させてもよいし、乳化組成物を製造した後に、その他の成分とともに添加して乳飲料中に含有させてもよい。
【0063】
尚、乳成分、pH調整剤、乳化剤、増粘安定剤、動物性および/または植物性の蛋白質、動物性および/または植物性の脂肪分、酸化防止剤としては、乳化組成物中に含まれる、フレッシュチーズ以外の成分として例示したものと同様のものを使用することができ、例示物中の好ましいものについても同様である。
【0064】
後述する糖アルコール以外の糖類としては、ブドウ糖、果糖、異性化液糖、アラビノース、マンノース、ガラクトース、キシロース、プシコース、アロース、タガトース、乳糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース、セロビオース、ニゲロース、イソマルトース、ゲンチビオース、パラチノース、マンノビオース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラフィノース、マンノオリゴ糖などの1種または2種以上を用いることができる。特にブドウ糖、乳糖、ショ糖、異性化液糖が好ましく、ブドウ糖、異性化液糖がさらに好ましく、ブドウ糖が最も好ましい。
【0065】
糖アルコールとしては、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、還元パラチノースなどの単糖または二糖アルコールを1種または2種以上を用いることができる。
乳飲料が糖アルコールを含有すると乳飲料の総カロリーを低減することができるため、好ましい。本発明の乳飲料が糖アルコールを含有する場合、糖アルコールの乳飲料における含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。乳飲料中の糖アルコールの含有量がこの範囲であると、糖アルコール自体の味が乳飲料の味のバランスを崩すことなく、風味が良く総カロリーが低減された乳飲料が製造できるという点において好ましい。
【0066】
高甘味度甘味料としては、ステビア、甘草、アセスルファムK、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、サッカリンなどの1種または2種以上を用いることができる。
乳飲料が高甘味度甘味料を含有すると、乳飲料の総カロリーを抑えた上で、甘味を付与することができる。本発明の乳飲料が高甘味度甘味料を含有する場合、高甘味度甘味料の乳飲料における含有量は、0.00001質量%以上が好ましく、0.00005質量%以上がより好ましく、0.0001質量%以上がさらに好ましく、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。乳飲料中の高甘味度甘味料の含有量がこの範囲であると、高カロリーの糖類を用いることなく、また、風味を損なうことなく、十分な甘味のある乳飲料とすることができる点において好ましい。
【0067】
本発明の乳飲料における乳化剤の含有量は、通常0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。なお、ここで、乳飲料の乳化剤の含有量とは、前述の乳化組成物中に乳化剤を含む場合、その乳化剤をも含む合計の乳化剤の含有量をいう。
乳飲料中の乳製品の含有量は、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、また、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
【0068】
本発明の乳飲料中の乳固形分量は、特に制限はないが、より濃厚な乳の風味が必要な場合は、通常5.0質量%以上、好ましくは5.5%質量以上、より好ましくは6.0質量%以上、最も好ましくは6.5質量%以上であり、通常15.0質量%以下、好ましくは13.0%質量以下、より好ましくは10.0質量%以下、最も好ましくは9.0質量%以下である。乳飲料中の乳固形分量を、この範囲にすることにより、製品が安定で、かつ濃厚な乳風味が得られるため好ましい。
【0069】
また、乳固形分中の無脂乳固形分は、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、55質量%以下であることが特に好ましく、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。乳固形分中の無脂乳固形分がこの範囲であることにより、豊かな乳風味を持ち、かつ高温殺菌や高温保存時の凝集体形成や沈殿の発生を防ぐことができるため好ましい。
【0070】
本発明の乳飲料のpHは、特に制限はないが、コーヒーや紅茶の自然な風味が活き、または飲料における危害菌である耐熱性菌の至適pH域以下にすることで、殺菌強度を下げることができ、結果的に熱による乳飲料の風味劣化を抑制する目的においては、6.1以下であることが好ましく、6.0以下であることがさらに好ましく、5.9以下であることがより好ましく、5.8以下であることが最も好ましい。pHの下限は通常5.0、好ましくは5.3、最も好ましくは5.5である。
【0071】
乳飲料のpHは、重曹など上述の添加剤を添加することにより調整することが可能である。これら添加剤は、予め、飲料のベースとなる液体、水、コーヒー抽出液、紅茶抽出液、乳成分、植物性の油脂および/またはその乳化組成物などに添加していてもよいし、最終的に乳飲料の組成が決定した後に添加してもよい。
【0072】
本発明の乳飲料は、100mlあたりの総カロリーが5.0kcal未満であることが好ましく、4.5kcal未満であることがより好ましい。100mlあたりの総カロリーが5.0kcal未満の乳飲料は、近年の嗜好飲料の低カロリー化の要望に適応することができる。
【0073】
本発明の乳飲料は、例えば、飲料のベースとなる液体、上記乳化組成物および上記添加剤や水などを加えて混合した後に、ホモジナイザーなどを利用して均質化処理を行うことにより製造することができる。この均質化処理は、40〜80℃の加温条件下で行われ、ホモジナイザーを用いた乳化工程は、高圧条件として、通常5MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましく、200MPa以下が好ましく、100MPa以下が好ましい。
【0074】
この均質化処理後には、レトルト殺菌、超高温瞬間殺菌などの殺菌方法により殺菌処理を行うことが好ましい。なお、常温流通またはホットベンダーなどの高温流通、販売をする場合において、菌による変敗等の対策として、必要とされる殺菌強度F
0値は、通常5以上、好ましくは10以上である。
【0075】
このような本発明の乳飲料としては、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、酸性乳飲料などが挙げられる。
【実施例】
【0076】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0077】
以下の実施例および比較例で用いた(A)、(B)、(D)、(E)成分の詳細は以下の通りである。また、乳清ミネラルを(C)成分とした。
(B)、(C)、(D)成分はマグネシウム材料に該当する。
【0078】
<(A)多糖類>
多糖類1:澱粉加水分解物(デキストロース当量:23)
品名「日食ブランチオリゴ」日本食品加工製
多糖類2:澱粉加水分解物
品名「日食クリアトース#56」日本食品加工製
<(B)ミルク香料>
香料1:品名「ミルクリッチベースL」共同乳業製
(マグネシウム含有量:0.04質量%)
香料2:品名「ミルクコンクベースKB」共同乳業製
(マグネシウム含有量:0.01質量%)
<(C)ミネラル素材>
乳清ミネラル:品名「NWL−6」共同乳業製
(マグネシウム含有量:0.02質量%)
<(D)バターミルク類>
バターミルクパウダー:よつば乳業製
(マグネシウム含有量:0.1質量%)
<(E)酵母類>
酵母抽出物1:酵母エキス 品名「コクベースLYC−P」大日本明治製糖製
酵母抽出物2:酵母エキス 品名「コクベースLYM−P」大日本明治製糖製
酵母抽出物1:酵母エキス 品名「コクベースLYS−P」大日本明治製糖製
【0079】
<製造例1>
予め、カゼインナトリウム12g、ショ糖脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数=16および18、モノエステル含量=77質量%)13g、ポリグリセリン脂肪酸エステル(リョートー(登録商標)ポリグリエステルS−10D、三菱化学フーズ社製)3g及びコハク酸モノグリセリド(脂肪酸の炭素数=16および18)2gを分散させた水相300gを65℃に加熱した後、乳と生クリームを原料とする非発酵型のクリームチーズ(全固形分量:61質量%、乳脂肪分含有量:51質量%)600gを投入し、ホモミキサーを用い、回転数8000rpmで5分間予備乳化した。更に水を加えて全量を1000gに調整し、高圧ホモジナイザーで65℃、20MPaにて2回均質化後、容器に充填し、90℃で15分間殺菌処理して、組成物1(脂肪分:31質量%、Mg:0.0072質量%、Na:0.068質量%、K:0.101質量%)(以下、「組成物1」と称す。)を得た。
【0080】
<実施例1〜4、比較例1〜6>
コーヒー抽出物としてインスタントコーヒー1.5g、製造例1で得られた組成物1(クリームチーズを60質量%含有)0.28g、重曹0.056gを水に混合、溶解した液に、表1に示す添加剤を加え、充分混合、溶解した後、更に水を加えて総量を100gとし、本発明の乳化組成物(=乳飲料)を得た。
【0081】
得られた乳飲料を、パネラー4名にて、各自常温で試飲を行った後、以下の評価基準で評価を行なった。結果を表1に示す。表1の結果から、特に乳風味については、脂質に対する一定の質量比率で、Mgを含有していることが重要であることが分かった。
【0082】
<コク味>
◎:濃厚感あり
○:やや濃厚感あり
△:やや水っぽい
×:水っぽい
<乳風味>
◎:乳風味強い
○:やや乳風味強い
△:乳風味が弱い
×:乳風味がない
<ミルクコーヒーとしての異味異臭>
◎:異味異臭がない
○:ほとんど異味異臭がない
△:やや異味異臭がある
×:異味異臭が強い
【0083】
本発明の乳化組成物を用いた乳飲料は乳風味が良好であることが分かった。
【0084】
【表1】
【0085】
<実施例5〜12及び実施例14〜21、比較例7〜13>
予め、カゼインナトリウム12g、ショ糖脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数=16および18、モノエステル含量=77質量%)17g、ポリグリセリン脂肪酸エステル(リョートー(登録商標)ポリグリエステルSWA−10D、三菱化学フーズ社製)7.5g及びコハク酸モノグリセリド(脂肪酸の炭素数=16および18)2gを分散させた水相300gを65℃に加熱した後、乳と生クリームを原料とする非発酵型のクリームチーズ(全固形分量:61質量%、乳脂肪分含有量:51質量%)600gを投入し、ホモミキサーを用い、回転数8000rpmで5分間予備乳化した。更に水を加えて全量を1000gに調整し、高圧ホモジナイザーで65℃、20MPaにて2回均質化後、90℃で15分間殺菌処理して、組成物2(乳脂肪分含有量:31質量%)を得た。
組成物2と塩化マグネシウム(Mg含有量:12質量%)と水を任意の比率で混合し、表2に示すような、脂肪分に対するマグネシウムの質量比率が異なる本発明の乳化組成物(=乳飲料)を調製した。
当該乳飲料を、3名で試飲し、以下の基準で評価を行った。結果を表2に示す。
マグネシウムの添加量は、脂質濃度によって最適な範囲があり、それは、脂質濃度の濃淡によらず、脂肪分に対するマグネシウムの質量比率が一定の数値となる範囲であることが分かった。
【0086】
<味質:乳のコクとミネラルに起因する違和感>
◎:乳様のコクがあり、特に違和感がない
○:乳様のコクがあり、わずかに違和感を感じるが、許容できる
△:わずかに乳様のコクがあるが弱い、または、ややミネラルの味を感じ、違和感がある
×:コクがなく水っぽい、または、ミネラルの味を強く感じ、乳とは明らかに異なる味質である
【0087】
【表2】
【0088】
参考例はマグネシウム材料を混合していない例である。
実施例5〜12及び実施例14〜21、比較例7〜13と同様に、組成物2と塩化ナトリウム(Na含有量:39質量%)、塩化カリウム(K含有量:52質量%)と水を任意の比率で混合し、表3に示すような、脂肪分に対するナトリウム、カリウムの質量比率が異なる乳飲料を調製し、評価した。結果を表3に示す。
ナトリウム、カリウムの添加量についても、マグネシウムと同様に、脂質濃度によって最適な範囲があり、それは、脂質濃度の濃淡によらず、脂肪分に対するナトリウム、またはカリウムの質量比率が一定の数値となる範囲であることが分かった。
【0089】
【表3】
【0090】
<実施例23〜28>
実施例1〜4と同様の方法、基準にて、表4に示す材料(添加剤)の組合せについて評価を行った。結果を表4に示す。
脂質に対する一定の質量比率でMgを含有しており、かつ、A成分:多糖類を併用することが、乳風味にさらにコクを付与することが分かった。さらに、D成分:バターミルクおよび/またはB成分:ミルク香料を併用することが、より良好な味質を達成するために重要であることが分かった。
【0091】
【表4】
【0092】
予め、カゼインナトリウム8g、ショ糖脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数=16および18、モノエステル含量=77質量%)10g、ポリグリセリン脂肪酸エステル(リョートー(登録商標)ポリグリエステルSWA−10D、三菱化学フーズ社製)5g及びコハク酸モノグリセリド(脂肪酸の炭素数=16および18)1.5gを分散させた水相300gを65℃に加熱した後、脱脂粉乳15g、乳糖9g、MPC(Milk Protein Concentrate)45g、砂糖6gを加え、さらに乳と生クリームを原料とする非発酵型のクリームチーズ(全固形分量:61質量%、乳脂肪分含有量:51質量%)190gを投入し、ホモミキサーを用い、回転数8000rpmで5分間予備乳化した。更に水を加えて全量を1000gに調整し、高圧ホモジナイザーで65℃、20MPaにて2回均質化後、90℃で15分間殺菌処理して、組成物3(乳脂肪分含有量:9.7質量%)を得た。
得られた組成物3を5gと、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および水を混合し、全量が15gとなるように、本発明の乳化組成物を調製した。得られた乳化組成物15gと、インスタントコーヒー1.5質量%水溶液15gを混合し、コーヒー飲料(乳飲料)を調製した。
コーヒー飲料における、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムの濃度と、乳化組成物およびコーヒー飲料、各々におけるマグネシウム、ナトリウム、カリウムの脂肪分に対する質量比率を、表5に示す。
当該乳化組成物と、コーヒー飲料を、3名で試飲し、実施例5〜12及び実施例14〜21、比較例7〜13と同様の基準で評価を行った。結果を表5に示す。
当該コーヒー飲料を、3名で試飲し、実施例5〜12及び実施例14〜21、比較例7〜13と同様の基準で評価を行った。結果を表5に示す。表中の%は質量%を表す。
いずれも、マグネシウム材料が好適な範囲にあるため、良好な乳風味をもった乳化組成物またはコーヒー飲料であるが、特にコーヒー飲料において、コーヒーに由来するカリウム分の影響を受け、カリウム材料を過剰にいれると、カリウムに起因する異味が強くなってしまう傾向があるため、カリウム材料を最適な量にすることが好適であることが分かった。
【0093】
【表5】
【0094】
<実施例34>
予め、カゼインナトリウム8g、ショ糖脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数=16および18、モノエステル含量=77質量%)10g、ポリグリセリン脂肪酸エステル(リョートー(登録商標)ポリグリエステルSWA−10D、三菱化学フーズ社製)5g及びコハク酸モノグリセリド(脂肪酸の炭素数=16および18)1.5gを分散させた水相300gを65℃に加熱した後、バターミルクパウダー15g、乳糖9g、MPC(Milk Protein Concentrate)45g、砂糖6gを加え、さらに乳と生クリームを原料とする非発酵型のクリームチーズ(全固形分量:61質量%、乳脂肪分含有量:51質量%)190gを投入し、ホモミキサーを用い、回転数8000rpmで5分間予備乳化した。更に水を加えて全量を1000gに調整し、高圧ホモジナイザーで65℃、20MPaにて2回均質化後、90℃で15分間殺菌処理して、本発明の乳化組成物(乳脂肪分含有量:9.7質量%、Mg/脂肪分:0.0009、K/脂肪分:0.01、Na/脂肪分:0.004)を得た。
当該乳化組成物は、異味を感じず、良好な乳風味とコクがあった。
【0095】
<実施例35>
コーヒー抽出液(Bx2.9)480gに、予め熱水で溶解した重曹を加えpH調整後、エリスリトール7.0g、アセスルファムK0.15g、ステビア0.08g、製造例1で得られた組成物1(クリームチーズを60質量%含有)2.6g、多糖類1を0.3g、乳清ミネラル0.1g、バターミルクパウダー0.05g、香料1を0.05g及び水を適量加えた材料を、混合、溶解し、さらに水を加え全量を1000gとした。
この時の当該材料に含まれる脂肪分とマグネシウムの質量比率は、Mg/脂肪分:0.00033であった。本液を65℃に昇温し、高圧ホモジナイザーにて20MPaの圧力で均質化後、缶容器に充填し、121℃、30分間のレトルト殺菌を行い、缶入りミルクコーヒー(乳飲料)を調製した。殺菌後の乳飲料のpHは6.0であった。
得られた缶入りミルクコーヒーを、上記殺菌後、5℃で1日保存後に開缶し、パネラー4名で試飲し、実施例1と同様の基準で評価した。また、添加した各成分の熱量から、100mlあたりの総カロリーを計算すると共に、用いた原材料の構成成分から計算にて、乳固形分中の無脂乳固形分の割合を求めた。結果を表6に示す。
【0096】
<比較例14>
実施例35において、組成物1(クリームチーズを60質量%含有)の添加量を0.33gとし、多糖類1、乳清ミネラル、バターミルクパウダー、及び香料1を添加しない以外は、同様の方法で、缶入りミルクコーヒーを調製した。この時の当該材料に含まれる脂肪分とマグネシウムの質量比率は、Mg/脂肪分:0.00023であった。殺菌後の飲料のpHは5.9であった。
得られた缶入りミルクコーヒーについて、5℃で1日保存後に実施例18と同様にパネラー4名で試飲評価した。また、同様に100mlあたりの総カロリーと乳固形分中の無脂乳固形分の割合を求めた。結果を表6に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
以上の結果から、本発明の乳飲料は、フレッシュチーズを用いた乳飲料でありながら、異味異臭がなく、コクや乳風味などの味質に優れることがわかる。
【0099】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2013年9月13日出願の日本特許出願(特願2013−190561)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。