(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787988
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】冷却装置および冷却装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
F28D15/02 102Z
F28D15/02 M
F28D15/02 E
F28D15/02 101L
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-242159(P2018-242159)
(22)【出願日】2018年12月26日
(65)【公開番号】特開2020-106156(P2020-106156A)
(43)【公開日】2020年7月9日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森峰 真也
【審査官】
石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/058520(WO,A1)
【文献】
特開2005−321152(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1305437(KR,B1)
【文献】
特開2018−115858(JP,A)
【文献】
国際公開第2018/047529(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/040129(WO,A1)
【文献】
特開2009−088125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する受熱部と、
前記受熱部に液相冷媒を供給する液相配管と、
前記受熱部の内部の空間の一部を満たす前記液相冷媒と
前記受熱部から気相冷媒を排出する気相配管と、
前記受熱部の内部に配置されたスペーサーと
を有し、
前記スペーサーは、
前記液相冷媒より比重が大きく、
前記受熱部が傾いた場合に、前記受熱部の内側底面に沿って下方に移動し、前記液相冷媒の液面を押し上げる形状を有し、
前記液相配管と前記受熱部との接続部に設けられた液相冷媒供給口を閉塞することを、妨げるように、前記スペーサーの移動を制限する突起を前記液相冷媒供給口の近傍に備えている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記気相配管から回収した前記気相冷媒を冷却して液化し、液化した前記液相冷媒を前記液相配管に送出する放熱部を有し、閉鎖流路を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記突起が、前記受熱部の内部の底面から前記スペーサーの外形の1/2倍以上1倍未満の高さに設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記受熱部の内部空間が円柱状である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記スペーサーが球形である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記スペーサーが多面体である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記受熱部を上から見た時に、
前記スペーサーの占める面積の合計が、前記受熱部の内部の底面積の1/4以上1/2未満である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項8】
内部に空間を有する受熱部と、
前記受熱部に液相冷媒を供給する液相配管と、
前記受熱部の内部の空間の一部を満たす前記液相冷媒と、
前記受熱部から気相冷媒を排出する気相配管と、
前記気相配管から回収した前記気相冷媒を冷却して液化し、液化した前記液相冷媒を前記液相配管に送出する放熱部と、
を用いて閉鎖流路を形成し、
前記受熱部の内部に、
前記液相冷媒より比重が大きく、前記受熱部が傾いた場合に、前記受熱部の内側底面に沿って下方に移動し、前記液相冷媒の液面を押し上げる形状を有するスペーサーを配置し、
前記液相配管と前記受熱部との接続部に設けられた液相冷媒供給口を閉塞することを、妨げるように、前記スペーサーの移動を制限する突起を前記液相冷媒供給口の近傍に配置する
ことを特徴とする冷却装置の製造方法。
【請求項9】
前記スペーサーが球形である
ことを特徴とする請求項8に記載の冷却装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置および冷却装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高性能・高微細化が進んだ半導体や電子機器で大量の熱が発生するようになっている。これらの機器等の、故障を防ぎ安定した動作を行うためには、この大量の熱を速やかに冷却する必要がある。この高発熱密度の電子部品を冷却する手段として、冷媒の相変化を利用して、熱を輸送、拡散、冷却する冷却装置(以下、「相変化冷却装置」と呼ぶ)が考えられている。
【0003】
一般的な相変化冷却装置は、CPUなどの電子部品から成る発熱体の熱を受ける受熱部と、冷媒の相変化を利用して輸送された熱を放熱する放熱部と、それらをつなぐ配管によって構成されている。受熱部には、液管から液相冷媒が供給され、発熱体から受ける熱によって、液相冷媒が沸騰し気相冷媒となる。この時、蒸発熱に相当する熱が吸収され、受熱部が冷却される。発生した気相冷媒は、気相管から排出されて、放熱部に移動し、放熱部で熱を放出して液化する。液化した液相冷媒は、液管に戻り、再び、受熱部に供給される。このような動作により、相変化冷却装置では、ポンプを使わずに冷媒を循環して、受熱部を冷却することができる。
【0004】
上記のような相変化冷却装置の一例が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の冷却装置は、電子部品等に密着する受熱部を備えた蒸発器と、蒸発器に作動液(冷媒)を供給する液管と、蒸発器で発生した冷媒蒸気を排出する蒸気管と、蒸発器内の空間を液管側と蒸気管側とに隔てる、板状で多孔質のウィックとを備えている。液管から蒸発器内に流入した冷媒は、毛細管現象によりウィックの厚み方向に移動し、電子部品等から受け取った熱により蒸発する。この時、蒸発熱に相当する熱が吸収され、受熱部が冷却される。この冷却装置では、ウィックを板状にすることで、蒸発器を薄型化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−233625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような一般的な冷却装置では、冷却装置が傾くと、受熱部を均一に冷却できなくなるという問題がある。冷却装置が傾くと、液相冷媒は低い側に偏り、高い側には供給されなくなる。その結果、傾いた冷却装置の、高い側では冷却が十分に行われなくなり、冷却装置の冷却効率が低下する。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、冷却装置の傾きによる冷却効率の低下を低減できる冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、冷却装置は、内部に空間を有する受熱部と、受熱部に液相冷媒を供給する液相配管と、受熱部から気相冷媒を排出する気相配管と、受熱部の内部に配置されたスペーサーとを有する。スペーサーは、液相冷媒より大きな比重を持っている。また、スペーサーは、受熱器の底面に沿って移動できる形状を有している。受熱部が傾くと、スペーサーが受熱器の低い側に移動する。ここで、スペーサーは、液相冷媒2より比重が大きいため、受熱器の低い側の底面に集まる。そしてスペーサーによって、排除された体積分だけ、液相冷媒が、受熱器の高い側に広がり、均一性の高い冷却を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、冷却装置の傾きによる冷却効率の低下を低減できる冷却装置を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態の冷却装置を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態の冷却装置が傾いた状態を示す断面図である
【
図3】第2の実施形態の冷却装置の全体を示す側面模式図である。
【
図4】第2の実施形態の受熱部を示す平面図である。
【
図5】第2の実施形態の受熱部が水平状態にある時を示す断面図である。
【
図6】第2の実施形態の受熱部が傾いた状態を示す平面図である。
【
図7】第2の実施形態の受熱部が傾いた状態を示す断面図である。
【
図8】第2の実施形態の比較例を示す断面図である。
【
図9】第2の実施形態の受熱部が別の方向に傾いた状態を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態の液相配管口近傍を示す断面図である。
【
図11】第3の実施形態の受熱部を示す平面図である。
【
図12】第3の実施形態の受熱部が傾いた状態を示す断面図である。
【
図13】第4の実施形態のスペーサーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の冷却装置を示す断面図である。冷却装置は、内部に空間を有する受熱部1と、受熱部1に液相冷媒2を供給する液相配管3と、受熱部1から気相冷媒を排出する気相配管4と、受熱部1の内部に配置されたスペーサー5とを有する。スペーサー5は、液相冷媒2より大きな比重を持っている。スペーサー5は、受熱器1の内部で自由に動けるようになっている。
図1の例では、スペーサー5は球形であるが、楕円体や多面体など他の形状であっても良い。
【0013】
受熱部1が、熱を受け取ると、受熱部内部の底面に当たる沸騰部1aで、液相冷媒2が沸騰し、気相配管4から排出される。この時、液相冷媒4の蒸発熱が消費され、受熱部1が冷却される。
【0014】
図2は、冷却装置1が傾いた状態を示す断面図である。冷却装置1が傾くとスペーサー5が受熱器1の低い側に移動する。ここで、スペーサー5は、液相冷媒2より比重が大きいため、受熱器1の低い側の底面に集まる。そしてスペーサー5によって、排除された体積分だけ、液相冷媒2が、受熱器1の高い側に広がる。この広がりにより、受熱器1の高い側まで、液相冷媒2が到達し、沸騰部1aの冷却に偏りが生じ難くすることができる。
【0015】
以上説明したように、本実施形態によれば、冷却装置の傾いた場合の冷却効率の低下を低減することができる。
【0016】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の冷却装置1000を示す側面模式図である。冷却装置1000は、受熱部100と、液相配管300と、気相配管400と、放熱部600とを有し、これらが結合して閉鎖流路を形成している。この閉鎖流路には受熱部100で受け取った熱により、液相から気相への相変化を起こすことで冷却を行う、冷媒が封入されている。そして、受熱部100の内部には、液相冷媒200に一部が浸漬されたスペーサー500が配置されている、また、
図3の例では、発熱体2000と受熱部100との間に熱伝導グリース2100を配置して、両者の間の熱伝導性を高めている。
図3の例では、発熱体2000は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの電子部品とすることができるが、これらに限られるものではなく、発熱するものに一般的に適用できる。
【0017】
次に冷却と、冷媒の循環の動作について説明する。受熱部100には、重力の作用を利用して、液相配管300から液相冷媒200が供給される。
【0018】
受熱部100の下面の沸騰部100aでは、熱伝導された発熱体2000からの熱によって、内部の液相冷媒200が沸騰し、液相冷媒200を気相冷媒210に相変化させる。液相冷媒200が気相冷媒210に相変化するとき、熱を潜熱として、冷媒中に吸収する。気相冷媒210は、その密度が液相冷媒200より小さいため、その浮力により上昇し、矢印Aで示されるように気相配管400を通り放熱部600に移動する。浮力を利用して放熱部600に気相冷媒210を移動させるため、放熱部600は受熱部100より鉛直上方にある必要がある。
【0019】
放熱部600では、冷却ファン610などの冷却器を利用して、放熱部600から空気中への放熱を促進する。放熱部600に移動した気相冷媒210は、例えば、冷却ファン610から送られた冷却風によって、空気中にその熱を放熱し、液相冷媒200に相変化する。液相冷媒200は、気相冷媒210より密度が大きいため、その重力により降下し、液相配管300を通り、矢印Bで示されるように、受熱部100に還流される。還流された液相冷媒200は、発熱体2000から熱を受けることで冷媒の循環に再び利用される。
【0020】
このように冷却装置1000は、冷媒の相変化を利用することで、ポンプを使わずに液相冷媒200および気相冷媒210を循環させることができる。また単位質量あたりの、相変化によって輸送できる熱量は、水冷などの冷媒の温度上昇によって熱を輸送する方式と比較して、数100倍と大きいため、高発熱量の熱輸送・冷却に適している。
【0021】
次に本実施形態の受熱部100の構成について説明する。
図4は、水平状態にある時の受熱部100を示す平面図である。
図4に示すように、受熱部100の内部には、スペーサー500が複数個封入されている。水平状態では、それぞれのスペーサー500は、ランダムな位置を取っている。ここでは、スペーサー500は球形としている。またこの例では、受熱部100の内部空間を円柱状としている。そして、突起110を、上面から見たときに、円弧と直線で結ばれた形状となるようにしている。このようにすることで、受熱部100が傾いた場合に、液相冷媒200に浸漬されるスペーサー500の体積を多くすることができる。なお、これは受熱部100および突起110の形状の一例であって、これに限られるものではない。受熱部100及び突起110の形状は、傾きが変化したときにスペーサー500の移動を阻害しない形状であれば、任意の形状とすることができる。
【0022】
図5は
図4のK−K´における断面を示す断面図である。
図5に示すように、受熱部100の一側面には液相配管300が接続され、接続部の液相配管口310から受熱部100に液相冷媒200が流入する。そして、液相冷媒配管口310の上方の、受熱部100の内壁には、突起110が設けられている。突起110は、スペーサー500が液相配管口310を閉塞することが無いように、スペーサー500の移動を制限する。また、受熱部100の上部には、気相配管口410を介して、気相配管400が接続されている。
【0023】
受熱部100の内部には、液相冷媒200と、スペーサー500とが保持されている。スペーサー500の比重は液相冷媒200より十分に大きく、液相冷媒200に浮くことはない。またスペーサー500は球形であり、その中心から離れるほど断面積は小さくなる。このため、液相冷媒200が存在する量は、高さによって異なる。スペーサー500の中心より低い位置にしか液相冷媒200が存在しない場合は、液相冷媒200の存在量は液面で最少となり、中心から最も離れたすなわち沸騰部100aで最多となる。沸騰部100aで、液相冷媒200が気相冷媒210に相変化するため、沸騰部100aに多くの冷媒が存在することで冷媒の効率的な利用ができる。
【0024】
図6は、受熱部100が液相配管300の側が低くなるように、傾いた状態を示す平面図である。ここではこの状態を、左下に傾いたと称することとする。このように傾くことにより、スペーサー500は突起110に向かって集合する。
【0025】
図7は、
図6のL−L´における断面図である。受熱部100が左下に傾くことにより、液相冷媒200は重力によって、左下へ移動する。この時、スペーサー500も同様に左下へと移動する。こうして、液相配管口310側の液面が上昇する。この液面の上昇は、傾きによる液相冷媒200の移動だけではなく、スペーサー500が液相冷媒に浸る体積増加によっても引き起こされる。すなわち、液相冷媒200に浸るスペーサー500の体積増加分だけ、液相冷媒200が押しのけられることで液相冷媒200の液面が上昇する。その結果、高い方に傾いた気相配管400側の沸騰部100aまで液相冷媒が行き渡り、沸騰部100a全体に渡り相変化冷却を行うことができる。なお、
図7では、図を見やすくするために、スペーサー500が切断線に沿って直線的に並んでいる例を示しているが、スペーサー500の配列はこれに限られることはない。
【0026】
スペーサー500の数量は、受熱部100の上から見た時に、スペーサー500の占める面積が、受熱部100の底面の面積の1/4から1/2の範囲に収まる数量であることが望ましい。またスペーサー500の大きさは、受熱部100が水平状態にある時に、液相冷媒200に自身の体積の1/3程度が浸る程度であることが望ましい。これは
図5に示す水平状態にある時と、
図7に示す傾いた状態にある時との間で、スペーサー500が液相冷媒200に浸される体積差を大きくするためである。
【0027】
ここで比較のために、スペーサー500が無い場合について説明する。
図8は、スペーサー500が無い受熱部を示した断面図である。この例では、液相冷媒200が高い方に傾いた沸騰部100aに回らず、沸騰部100aが受熱部100の内部の空間に暴露されてしまっている。この部分では、冷却が行われないため、発熱体の冷却の効率が低下する。
【0028】
次に、液相配管300側が高くなる方向に傾いた場合について説明する。
図9は、液相配管口310側が高くなる方向に、受熱部100が傾いた状態を示す断面図である。ここでは、このように傾いた状態を右下に傾くとも呼称することとする。受熱部100が右下へ傾いた状態では、液相冷媒200、スペーサー500ともに、右下へ移動することになる。この時、右側には突起110が無いため、スペーサー500は壁面と接触するまで移動する。液相冷媒200に沈み込むスペーサー500の体積増加は、左下に傾いたときと同様で、液相冷媒200の液面を上昇させ、沸騰部100aの左側にも液相冷媒200が行き渡る。このため、沸騰部100aの全面で、液相冷媒200を気相冷媒210に相変化させることができる。結果として左下に傾いたときと同様に、右下に傾いた状態でも、より少ない液相冷媒200の量で、安定した冷却状態を保つことが出来る。
【0029】
次に、液相配管300側が低くなる方向に傾いた時の、液面の上昇について説明する。
図10は、上記のように傾いた時の、液相配管口310近傍を描いた断面図である。
図10の中で、スペーサー500に点線Cで示したのは、水平状態における液相冷媒200の液面の位置である。そして、このように傾いた状態における液相冷媒200の液面は、点線Dで示した位置になっている。すなわち両矢印Eで示される液相冷媒200の液面の差に対応する分だけ、スペーサー500が液相冷媒200に浸る体積が増加し、この体積増加分の液相冷媒200が押しのけられることで、液相冷媒200の液面が上昇している。液相冷媒200の液面が上昇するため、より少ない液相冷媒200の量でも、沸騰部100aの右側が、液相冷媒200に浸された状態を保つことができ、沸騰部100aの右側でも相変化冷却を行うことができる。以上のような動作により、結果として、少ない量の液相冷媒200でも、安定した冷却状態を保つことが出来る。
【0030】
次に突起110について説明する。
図10には、突起110の高さを、両矢印Fで示している。突起110はスペーサー500と速やかに接触する必要があるため、Fは、例えばスペーサー500の半径と同程度とすることができる。ただし、突起110が、冷媒200の移動に影響を与える場合は、これより高い位置に設置してもよい。また、突起110の大きさは、スペーサー500と接触した際に、液相配管口310とスペーサー500とが十分な距離を保ち、液相冷媒200の流入を阻害しないサイズとする。このような構成とすることにより、突起110が、スペーサー500の移動を制限し、スペーサー500が液相冷媒200の流入を妨げることがないようになっている。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、冷却装置の受熱部が傾いても、冷却を均一に行うことができる。
【0032】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態の受熱部101を示す平面図である。また
図12は、
図11のM−M´における断面図である。
図11に示すように、受熱部100の内部には、第2の実施形態と同様の球形のスペーサー500が複数個封入されている。また
図11、12に示すように、本実施形態では、受熱部100の内部空間を四角柱状としている。そして、突起111を、上面から見たときに、長方形となるようにしている。なお、この例では、受熱部100の内部空間を四角柱状としたが、四角柱以外の多角柱状であっても良い。
【0033】
図12に示すように、受熱部101が、液相配管300側が低くなるように傾くと、第2の実施形態と同様に、スペーサー500が液相配管300側に移動して液面が上昇し、高い方に傾いた沸騰部100aまで、液相冷媒200が行き渡る。そして、突起111がスペーサー500の移動を制限することにより、液相冷媒200は、液相配管口311から受熱部101の内部にスムーズに供給される。
【0034】
以上のような動作により、沸騰部の全面で均一性が良い相変化冷却を行うことができる。
【0035】
(第4の実施形態)
第1から第3の実施形態では、スペーサーが球形である例を用いて説明したが、受熱部内部の沸騰部に沿ってスムーズに移動できる形状であれば、球形以外の形状であっても良い。例えば、
図13(a)に示すように円柱状のスペーサー501であっても良いし、
図13(b)に示すように多面体のスペーサー502であっても良い。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によっても、第2、第3の実施形態と同様に、受熱部が均一な冷却を行うために利用できるスペーサーを構成することができる。
【0037】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1、100 受熱部
2、200 液相冷媒
3、300 液相配管
4、400 気相配管
5、500、501、502 スペーサー
110 突起
210 気相冷媒
310 液相配管口
410 気相配管口
1000 冷却装置
2000 発熱体