(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記位置データを受け取るステップは、前記少なくとも1つの骨に着脱自在に結合された1つ又は複数のセンサによって提供される位置データを受け取るステップを含む請求項1に記載の方法。
  前記トライアル人工装具は、セミ半球であり、且つ、前記複数の力センサは、前記セミ半球形状のベースから力データを受け取る第1センサと、前記セミ半球形状の周辺部の周りの複数の更なるセンサと、を含む請求項7に記載の方法。
  前記トライアル人工装具は、異なるサイズのインサートの組を含み、前記インサートの組のそれぞれのインサートは、少なくとも1つの力センサを含む請求項1に記載の方法。
  前記ピストン部分は、第2人工装具又は前記関節の固有の骨上の嵌合関節面と係合した状態において、前記関節面を維持するべく、スプリングを含む請求項12に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
  肩関節は、少なくとも、適切に機能する関節においては、広い運動範囲を可能にするべく、すべてが1つに集まった肩甲骨、鎖骨、及び上腕骨を有する複雑な関節である。適切に機能する肩関節においては、上腕骨の頭部が、関節窩と通常は呼称される、肩甲骨内の浅いソケット内に嵌め込まれている。肩関節の関節結合は、関節窩内における上腕骨頭の運動を伴っており、嵌合表面及び周囲組織の構造が広い動きの範囲を提供している。
【0003】
  肩関節は、リウマチ性関節炎、変形性関節症、回旋腱板関節形成術、血管壊死、又は骨折などの、様々な問題によって引き起こされる退行性の変化を経験しうる。深刻な関節損傷が発生し、且つ、その他の治療手段が有効であると見出されない際には、肩関節の全置換、部分置換、又は逆置換、或いは、再構築が必要となりうる。全肩関節置換は、自然な上腕骨頭を置換するべく使用されるステム及び頭部部分を含む、上腕骨人工装具を伴いうる。又、肩関節の全置換は、通常、人工装具インプラントによる関節窩の表面再生をも伴うことになる。関節窩インプラントは、一般に、人工装具上腕骨頭を受け入れるように成形された関節結合カップを含むことになる。逆肩関節置換(関節形成術)は、上腕骨及び関節窩置換人工装具の異なる組を伴っている。逆肩関節においては、上腕骨コンポーネントは、上腕骨内に埋植されたステムに装着されたカップ形状の関節面を含み、球状の関節窩コンポーネントが、上腕骨カップ用の関節面を提供するべく、使用されている。
【0004】
  肩関節形成手術の際には、人工装具のコンポーネントは、健康な肩関節の自然な動きの範囲を維持又は回復するべく、患者の生体運動学とマッチングされる。Zimmer(登録商標)  PSI(追加基準)などの、患者固有の器具使用は、自然な生体運動学を回復するべく、肩関節形成術を計画及び実施する際に、外科医を支援することができる。但し、人工装具コンポーネント及び患者固有の器具使用における多大な進歩にも拘らず、完全な動き範囲を回復することは、特に、肩置換を定期的に実行していない外科医の場合には、困難な状態に留まる可能性がある。
【0005】
  現時点の外科標準も、多くの場合に、曖昧なものであり、その結果、「関節張力は、50/50の弛緩状態にあることを要する」又は「関節は、動きの範囲の全体を通じて「安定している」ことを要する」などの、ガイダンスが提供されている。現時点の外科標準においては、嵌合が「過剰に緊密」である場合には、必要とされる任意の軟組織リリースの実行などのような、不適当な主観的尺度を使用することが一般的である。このようなガイダンスは、十分な経験を有することなしには、結果の成功を保証することにおいて、ほとんど実際的な有用性を有していない。
【0006】
  上述の内容は、肩関節置換手順に固有の課題及び手順を記述しているが、以下のシステム、装置、方法、及びインスツルメントの説明は、全股関節形成(THA:Total  Hip  Arthroplasty)又は全膝関節形成(TKA:Total  Knee  Arthroplasty)などの、その他の関節置換手順における使用にも適用可能である。
【0007】
  本明細書において記述されているシステム及び方法は、「MEMS−BASED  METHOD  AND  SYSTEM  FOR  TRACKING  A  FEMORAL  FRAME  OF  REFERENCE」という名称の(特許文献1)、「NON−INVASIVE  MEASUREMENT  OF  JOINT  TRANSLATION  AND  RANGE  OF  MOTION」という名称の(特許文献2)、「BONE  TRACKING  WITH  A  GYROSCOPE  SENSOR  IN  COMPUTER−ASSISTED  SURGERY」という名称の(特許文献3)、又は「TRACKING  SYSTEM  AND  METHOD」という名称の(特許文献4)において記述されているものなどの動きの範囲を通じた運動の際に骨の位置を追跡するためのシステム及び装置、並びに、「DEVICE  AND  METHOD  FOR  ADVANCED  LOW−POWER  MANAGEMENT  OF  A  SENSOR  TO  MEASURE  A  PARAMETER  OF  THE  MUSCULAR−SKELETAL  SYSTEM」という名称の(特許文献5)において記述されているものなどの関節手順において定量的なフィードバックを提供するためのトライアル人工装具装置内への力センサ技術の統合に類似した技術を利用することができる。
【0008】
  エビデンスに基づいた医療は、患者の結果及び特定の手順の利益を定量化するための方法として、人気を博する状態が継続している。本明細書において記述されているシステム及び方法は、「SYSTEM  AND  METHOD  FOR  AN  ORTHOPEDIC  DATA  REPOSITORY  AND  REGISTRY」という名称の(特許文献6)において記述されているものなどのエビデンスに基づいた医療収集システムに基づいている。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
  本発明者らは、その他のものに加えて、解決するべき問題が、全肩関節置換又は逆肩関節置換の際に関節張力及び動きの範囲の適切な理解を判定し、これにより、適切な人工装具サイズの選択又はその他の手術技法(例えば、軟組織リリース)の使用を結果的にもたらすステップを含みうることを認識した。本明細書において記述されているシステム及び方法は、手順の前及び/又は最中に関節機能の様々な定量的分析を使用することにより(これは、関節張力と、関節の動きの範囲の定量的なマッピングと、を含む)、この問題に対する解決策の提供を支援することができる。又、本発明者らは、解決するべき問題が、その他のものに加えて、改善された関節機能の定量的なエビデンスを手順後に提供することをも含むことを認識した。本明細書において記述されているシステム及び方法は、例えば、手術前及び手術後の動きの範囲をグラフィカルに描くのみならず、その他のものに加えて、動きの範囲の改善のグラフィカルな通知(マッピング)を提供することにより、この問題に対する解決策の提供を支援することができる。更には、本発明者らは、解決するべき問題が、その他のものに加えて、動きの全範囲の全体を通じた肩関節内の関節力を正確に検知することを含みうることをも認識した。本明細書において記述されているシステム、装置、及び方法は、例えば、統合された力センサ技術を有する様々なトライアル人工装具のうちの1つを使用することにより、この問題に対する解決策を提供する。
 
【課題を解決するための手段】
【0011】
  本発明者らは、コンパクトなセンサ技術及び(例えば、無線通信用の)小型の電子回路の可用性が、手術室内における新しい臨床的に適切な情報の収集及び確保を可能にし、この結果、正常な手術を実行する際に外科医を支援する機会が提示されることを認識した。特に、手順の際の更なる定量的なデータ及びフィードバックは、成功した結果に基づいて開発された既知の標準(例えば、本明細書において記述されている方法及び装置を使用して開発された標準)と比較された際に、ベテラン及び新人の外科医の両方を同様に結果の成功に向かってガイドすることを支援することができる。例として、以下においては、開示されているシステム、装置、及びインスツルメント、並びに、方法について説明するべく、例示用の関節置換手順として、全肩関節置換を使用している。
【0012】
  本明細書において、いくつかの例において記述されている基本的なシステムは、1つ又は複数の力検知装置と、位置検知装置と、様々なセンサに通信自在に結合されたコンピュータによって生成されるグラフィカルユーザーインターフェイスと、を有する。いくつかの例においては、システムは、ターゲットの関節を包囲している骨及び軟組織に関する更なる情報を提供する歪ゲージ又はその他の類似の更なる入力を更に含むことができる。
【0013】
  一例においては、力検知装置は、関節張力を評価するべく、上腕骨側の、且つ/又は、関節窩側の、肩関節内に配置することができる。これらのセンサは、逆肩関節形成(RSA:Reverse  Shoulder  Arthroplasty)手順において、上腕骨(ライナ)空間トレイトライアル内に、或いは、浅窩球体トライアル内において、挿入することができる(
図1を参照されたい)。全肩関節形成(TSA:Total  Shoulder  Arthroplasty)手順においては、力センサは、上腕骨頭トライアル又は関節窩トライアルインプラント内に挿入することができる(
図2を参照されたい)。別の例においては、力検知技術は、トライアル頭部内においてセンサと共に嵌合された頭部/ステム構造を有するモノブロックトライアルステム内に内蔵されている(
図13)。トライアル人工装具は、人工装具関節コンポーネント内の張力に関する定量的なフィードバックを提供する1つ又は複数の力検知装置を収容するように、特別に設計することができる。特定の例においては、手術キットは、それぞれの異なるサイズが力検知装置を含む状態において、複数のトライアルサイズを含んでおり、或いは、手術キットは、必要に応じて異なるトライアルサイズと共に使用される相互交換可能な力センサモジュールを含むこともできる。センサ技術は、その他のものに加えて、ステムを有するもの、ステムを有していないもの、及びモノブロックなどの、人工装具の様々な異なるフォームファクタに対して適合させることができる。以下において詳述するように、力センサを使用して定量的なフィードバックを提供することにより、適切な人工装具サイズの選択及び最終的な埋植の前の関節内の軟組織の均衡化において、外科医を支援することができる。関節置換手順における成功的な結果に対する鍵は、骨の解剖学的構造及び軟組織の均衡化の問題を解消することにあり、この場合に、人工装具の選択は、プロセスを完了させるべく、両方の且つ更なる手順(例えば、軟組織リリース)の諸側面に対して影響を及ぼす。
【0014】
  位置検知装置は、動きの範囲を通じて上肢の運動を追跡するべく、ターゲットの関節と関連付けられた上肢(又は、別のインスツルメント)に装着することができる。一例においては、位置検知装置は、腕に装着することが可能であり、且つ、この結果、患者の腕を運動の範囲を通じて運動させることができる。動きの範囲(ROM:Range  Of  Motion)は、上昇、内転、外転、屈曲、及び伸長、内部回転、及び外部回転のみならず、「あなたの歯を磨く」又は「あなた自身を椅子から持ち上げる」などの実際的な腕の位置などの位置を含むことができる。一例として、位置検知ポッドは、腕の運動を判定することが可能であると共に位置(又は、相対的配置)を報告することができる加速度計、ジャイロスコープ、又はその他の類似した位置センサを収容しており、これらの位置は、次いで、同時に受け取られた力センサデータと相関させることができる。
【0015】
  一例において、演算装置は、力センサ及び位置検知装置から信号を受信し、且つ、定量的なフィードバックを外科医に提供するべくデータを分析している。例えば、演算装置は、動きの範囲の全体を通じた関節張力の「ヒートマップ」を生成するべく、力センサデータを位置情報と相関させることができる(例えば、
図5を参照されたい)。関節張力データは、数値的な方式による、等圧線を使用した地形的な方式による、或いは、(熱撮像/ヒートマップと同様に)張力を表す色によるなどの、任意の数の方法により、様々な関節位置に対してマッピングすることができる。
【0016】
  いくつかの実施形態においては、ターゲットの関節を包囲する骨又は軟組織に関する更なる情報を提供するべく、歪ゲージなどの更なるセンサを使用することができる。一例においては、歪ゲージは、三角筋、胸筋、広背筋、又は三頭筋などの、肩関節の周りの様々な地点において軟組織に装着することができる。歪ゲージ情報は、演算装置によって受け取ることが可能であり、且つ、位置データ又は張力情報と相関させることができる。次いで、演算装置は、歪ゲージ情報を含む更なる又は更新された数値的な又はグラフィカルな出力を生成することができる。
図8Aに関係したシステムの説明は、歪ゲージ情報の統合に関する更なる詳細を含む。任意選択の歪ゲージセンサにより、システムは、特定の筋肉が、様々な特定の位置において、或いは、特定の運動の際に、起動されているかどうか、並びに、更なる軟組織リリース又はその他の張力変化(例えば、相対的に大きな上腕骨頭、ポリライナの厚さの変化、上腕骨及び/又は関節窩のスペーサ、並びに、場合によっては、上腕骨の再切断)が許可されることになるかどうか、について、外科医に通知することができる。
【0017】
  本明細書において記述されているシステム及び方法の外科医にとっての利益は、その現時点の状態における関節が動的な運動に対して応答している方式の客観的且つ的確な視覚的フィードバックを有するという点にある。外科医は、この情報を取得することが可能であり、且つ、RSAの環境においては、上腕骨トレイ/スペーサの厚さ及び浅窩球体のサイズなどの、或いは、TSAの環境においては、上腕骨頭のサイズなどの、軟組織リリース又はインプラント選択肢などの、自身の制御下にある手術の側面に対して調節を加える能力を有することができる。システムは、特定のトライアル人工装具を使用する際に、関節(例えば、肩)が、過剰に緊密になるのか、又は過剰に緩くなるのか、について通知するべく、関節の低減の際に、関節張力について外科医をガイドすることができる。又、システムは、関節張力が、動きの範囲内の特定の場所において閾値量未満に降下した際などの、不十分な制約力に起因して、再構築された関節が不安定となる動きの範囲内の潜在的な地点の識別をも支援することができる。システムは、現時点において再構築されている関節が、個人的な衛生、摂食、又は移動に必要とされる運動などの様々な活動への患者の復帰を許容することになるかどうかを検討するべく、実現されうる可能性が高い動きの範囲の程度に関するフィードバックを更に提供することができる。動きの範囲(ROM)の客観的尺度も、物理的な治療の検討に影響を及ぼすことになる。例えば、外科医は、術後のROMに関する信じられないほどに詳細な分析をPTに対して付与することができる。この結果、PTが自身の治療方法を変更する方式(或いは、恐らくは、変更するかどうか)に差が生じうるであろう。
【0018】
  本明細書において記述されているシステム及び方法は、関節置換手術におけるエビデンスに基づいた結果を実証するという目的に寄与することができる。例えば、運動の範囲を評価するべく、術前に、且つ、術後に、腕位置センサを使用することができる。能動(患者が自分自身で、このROMを通じて運動することができることを意味している)及び受動(支援を伴って、患者の関節をこのROMを通じて運動させることができることを意味している)の両方において、角度及び回転範囲を評価することができる。同様に、痛みに関する患者からの、或いは、不安定性に関する外科医からの、更なるフィードバックの受領を通じて、痛み及び不安定性の領域をマップ上において表示することができる(例えば、
図6を参照されたい)。関節の運動の際に、コンピュータコントローラ上に配置された又はこれによって処理されている、或いは、センサポッド自体上に位置した、ボタン又はコマンドを使用することにより、患者、外科医、又はセンサシステムからのフィードバックに基づいて、これらの領域を分類することになる。
【0019】
  システムは、(Zimmer(登録商標)  PSI  Shoulder  Planningソフトウェアシステムのような)補完的な術前3D手術計画ソフトウェアと統合することが可能であり、このソフトウェアは、運動の範囲を通じた腕の運動をデジタル的にシミュレートするべく、術前の医療撮像(CT又はMRI)を使用している。手術計画ソフトウェアは、関節窩及び上腕骨側のインプラント、そのサイズ及び閾値などの、入力として付与される様々な選択肢が付与された際に実現されることになる結果的に得られる衝突を伴わないROMをデジタル的に予測することができる。このデジタルモデル化は、患者の骨及び軟組織の解剖構造を考慮するべく試みている。デジタル分析に基づいて、予測された衝突を伴わないROMを示すヒートマップ又は類似の定量的な出力を生成することが可能であり、且つ、この出力は、この患者用のROMを最適化するべく、代替手術計画選択肢が検討又は選択されるように機能しうるであろう。更には、予期された結果対実際の結果の更なる確認を提供するべく、上述の術前及び術後のROM分析を手術計画ソフトウェア出力と更に比較することもできよう。適切な検討の後に、本明細書において記述されている定量的なフィードバックを使用することにより、手術計画ソフトウェアを改善すると共に、望ましい術後の結果に結び付く術中計測に対するガイドとして手順において使用される標準を開発することができよう。手術計画ソフトウェアの使用は、術前の動きの範囲を示す術前のヒートマップの生成のために必要とはされないが、手術計画ソフトウェアは、別の要素を上述の術前/術中/術後の比較能力に追加する際に、有用でありうる。
【0020】
  図14に示されているように、力センサ及び位置データに基づいた、分散マップなどの、リアルタイムフィードバックを提供するべく、術前の計画ソフトウェアからの結果を術中において使用することができる。いくつかの例においては、リアルタイムフィードバックは、本明細書において記述されているメカニズム及び技法を使用することにより、術前の計画された動きの範囲、関節張力、或いは、不安定性グラフ対手術の際に収集された実際のデータの差のグラフィカルな描画を介して、提供されている。
【0021】
  時間の経過に伴って、この情報を熟練の外科医から収集されるデータに照らしてベンチマーキングすることにより、経験の乏しい外科医が不慣れな手術手順を実行するのに伴って、理解及び術中フィードバックを得るように、経験の乏しい外科医用の的確なガイダンスを結果的に得ることができる。手術の際に調節を実施することにより、改善された結果、相対的に短い回復期間、相対的に少ない修正、及び再構築された関節の相対的に良好な機能性能の保証が得られる。
【0022】
  この概要は、本特許出願の主題の概要を提供するべく意図されたものである。本発明の排他的な又はすべてを網羅した説明の提供を意図したものではない。以下の詳細な説明は、本特許出願に関する更なる情報を提供するべく、含まれている。
【0023】
  必ずしも縮尺が正確ではない添付図面においては、同一の符号が、異なる図において、類似のコンポーネントを記述している場合がある。異なる添え字を有する同一の符号は、類似のコンポーネントの異なるインスタンスを表しうる。添付図面は、一般に、限定としてではなく、例として、本明細書において記述されている様々な実施形態を示している。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0025】
  本明細書において提供されている見出しは、利便を目的としたものに過ぎず、且つ、必ずしも、使用される用語の範囲又は意味に影響を及ぼすものではない。
 
【0026】
  (全又は逆)肩関節形成などの、関節置換手順は、経験が患者の結果の大きな差を生成しうる複雑で入り組んだ手順である。経験の乏しい外科医にとって困難でありうる関節置換手順の1つの側面が、適切な人工装具の選択又は組織リリースによって関節内の軟組織を均衡化させるという点にある。適切な関節張力は、通常、その他のものに加えて、相対的に良好な動きの範囲、関節の安定性、及びインプラントの寿命を結果的にもたらす。但し、適切な関節張力は、通常、感覚によってのみ、実現されるものであり、熟練の外科医は、時間の経過に伴って、それぞれの特定の患者ごとに結果的に良好に機能することになるものの「感覚」を養っている。本明細書において記述されているシステム及び方法は、手順の際に関節の動きの範囲全体のすべてを通じた関節張力に関する定量的なフィードバックを取得するための外科医用の選択肢を提供している。更には、術前、術中、及び術後の関節張力及び/又は動きの範囲の定量的比較も可能になっている。いくつかの例においては、肯定的な結果を結果にもたらすことが判明している標準との間における術中の比較を許容するべく、関節の動きの範囲にわたる関節張力用の標準を開発することができる。
 
【0027】
  図1は、いくつかの例示用の実施形態による、トライアル人工装具内において埋め込まれたセンサを有する逆肩関節形成を示す図である。逆肩関節形成システム100は、埋め込まれた力センサ140Aを含む浅窩球体トライアルを有する肩甲骨105に付着された関節窩人工装具110を含む。上腕骨側においては、逆肩関節形成システム100は、埋め込まれた力センサ140Bを含む上腕骨トレイトライアル130を有する、上腕骨120内において付着された上腕骨人工装具125を含む。埋め込まれた力センサは、任意選択により、トライアル又は着脱自在のモジュール内において収容することができる。いくつかの例においては、力センサは、以下において詳述される
図3A及び
図3Bに示されているもののように、トライアル内において一体化されている。一例においては、埋め込まれた力センサ140A、140Bなどの、力センサは、力データを無線で演算装置に伝達し、次いで、演算装置は、外科医にフィードバックを提供するべく、データを分析することができる。埋め込まれた力センサ140A、140Bは、トライアル人工装具が定位置にある状態において、関節張力をチェックするべく、肩が低減された際に、浅窩球体トライアル115と上腕骨トレイトライアル130の間において伝達される力を受け取るように、設計されている。いくつかの例においては、埋め込まれた力センサ140Aなどの、単一の埋め込まれた力センサは、関節の正確な力データを提供するべく、使用されている。その他の例においては、関節内の負荷印加パターンに関する更なる情報を提供するべく、複数の力センサがトライアル人工装具の異なる部分内において埋め込まれている。例えば、力センサは、上腕骨トレイトライアルの周辺部の周りにおいて埋め込むことが可能であり、この結果、動きの範囲全体のすべてを通じたトライアルの異なる部分上における力のマッピングが許容される。
 
【0028】
  図2は、いくつかの例示用の実施形態による、トライアル人工装具内において埋め込まれたセンサを有する全肩関節形成を示す図である。全肩関節形成システム200は、関節窩人工装具を通じて肩甲骨110に結合された関節窩トライアル215を含む。この例においては、関節窩トライアル215は、埋め込まれた力センサ140Aを含む。全肩関節形成システム200の上腕骨側においては、上腕骨頭トライアル225が、上腕骨人工装具に追加されており、且つ、埋め込まれた力センサ140Bを含む。逆肩関節形成システム100と同様に、全肩関節形成システム200も、任意選択により、図示のように、1つのトライアル人工装具内においてのみ、或いは、両方において、力センサを含むことができる。
 
【0029】
  図3A及び
図3Bは、いくつかの例示用の実施形態による、トライアル人工装具内において使用される力センサモジュールを示す図である。
図3Aは、小さな力の位置における、或いは、ほとんど又はまったく力が関節面310上において作用していないところにおける、力センサモジュール300を示している。
図3Bは、大きな力の位置における力センサモジュール300を示しており、この場合には、設計限度近傍の力が関節面310上において作用している。この例においては、力センサ300は、関節面310、較正済みのスプリング320、上部ハウジング330、計測シャフト340、下部ハウジング350、及び1つ又は複数のセンサ360を含む。力センサモジュール300は、関節が、力検知メカニズムにおいて運動の範囲を提供することにより、関与する骨の関節面の間において、ある程度の運動又は遊びを自然に有する用途用に設計されている。力センサ300は、既知のスプリング定数を有する較正済みのスプリング320と、関節面310上における負荷印加下において離脱する計測シャフト340の移動を計測するべく使用される、1つ又は複数のセンサ360などの、位置センサの組合せを通じて機能している。1つ又は複数のセンサ360は、その他のものに加えて、磁気、誘導、又は磁気歪などの、様々な既知の技術を通じて、シャフトの位置を検知することができる。
 
【0030】
  図4は、いくつかの例示用の実施形態による、関節の動きの範囲を検出する位置決め検知モジュールを示す図である。この例においては、動きの範囲検出システム400は、上腕120に装着された図示の位置センサモジュール410を含んでおり、上腕120は、動きの範囲420を通じて運動させることができる。動きの範囲420は、位置センサモジュール410が検出しうる動きの範囲情報の図であるに過ぎない。位置センサモジュール410は、加速度計、ジャイロスコープ、又は類似の動き又は位置検知技術の組合せを含むことができる。本明細書において記述されているシステム及び方法において使用されるべく適合されうる位置センサモジュールの一例は、「TRACKING  SYSTEM  AND  METHOD」という名称の米国特許出願公開第2009/0247863号明細書において記述されており、この文献の内容は、引用により、そのすべてが本明細書において包含される。位置センサモジュール410によって生成される位置又は動きデータは、以下において詳述されるグラフィカルな出力を生成するべく、動き運動の範囲の際に受け取られる力センサデータと相関させることができる。
 
【0031】
  図5は、いくつかの例示用の実施形態による、関節の動きの範囲にわたる関節データを描くグラフィカルな動きの範囲マップを示す図である。一例においては、動きの範囲グラフ500は、内部回転軸510、外部回転軸520、外転軸530、内転軸540、及び位置に基づいた関節データ550を含む。図示の動きの範囲グラフ500内において、位置に基づいた関節データ550は、その他のものに加えて、関節張力を表しうる等高線の形態を有する。いくつかの例においては、位置に基づいた関節データ550は、位置データとの関連において収集される関節内のトライアル人工装具内の1つ又は複数の力センサから算出されている。
 
【0032】
  図6は、いくつかの例示用の実施形態による、関節の動きの範囲にわたる関節データを描くグラフィカルな動きの範囲マップを示す図である。一例においては、動きの範囲グラフ600は、内部/外部回転軸602、外転/内転位置軸604、外転ベクトル612、外部回転ベクトル614、内転ベクトル616、内部回転ベクトル618、受動的な動きの範囲グラフ620、能動的な動きの範囲グラフ630、不安定性の動きの範囲グラフ640、及び痛みの動きの範囲グラフ650を含む。動きの範囲グラフ600は、不安定性及び痛みなどの、更なる関節データをグラフィカルに描くための異なる選択肢を示している。痛みデータは、フィードバック入力装置を使用することにより、或いは、口頭で、患者から収集することができる。任意選択により、フィードバック入力装置は、痛みの通知を入力するべく、一連の物理的なボタン又はコンピュータ生成されたグラフィカルユーザーインターフェイスを含む。不安定性情報は、関節が、患者に取り付けられた位置センサモジュールによってキャプチャされる動きの範囲を通じて操作されている際に、類似のインターフェイスを通じて、外科医によってキャプチャすることができる。更なる関節データが、演算装置によってキャプチャされ、且つ、位置データに対して相関されており、この位置データも、演算装置によってキャプチャされている。次いで、演算装置は、動きの範囲グラフ600などの、数値データ又はグラフを生成及び出力することができる。
 
【0033】
  図7は、いくつかの例示用の実施形態による、手術計画ソフトウェアと、グラフィカルな出力と、を示す図である。この例においては、手術計画システム700は、手術計画インターフェイス710と、例示用の手術計画出力グラフ720と、を含む。手術計画システム700は、術前撮像(例えば、CT又はMRI)の使用を通じて関節置換手術を計画する際に、外科医を支援することができる。いくつかの例においては、手術計画システム700は、関節置換手術の際に使用される患者固有の切断及びアライメントガイドを生成する患者固有のインプラントシステムの一部分である。患者固有の器具使用は、術前撮像に基づいてモデル化され、且つ、次いで、手術手順の前に製造される。いくつかの例においては、手術計画システム700は、選択された人工装具の配置及びサイズが付与されたら、予測される動きの範囲の投影を提供している。これらの例においては、手術計画システム700は、要求に応じて、手術計画出力グラフ720などの、予測される動きの範囲グラフを出力している。予測される動きの範囲グラフは、定量的な比較に基づいたフィードバックを置換手順の際に外科医に提供するべく、本明細書において記述されているシステム及び方法に伴って、術中において使用することができる。更には、予測される動きの範囲グラフは、任意選択により、手順後に、結果を評価するべく、使用される。
 
【0034】
  図8Aは、いくつかの例示用の実施形態による、センサに基づいた関節置換システムを示す図である。図示の例においては、センサに基づいた関節置換システム800(又は、単にセンサに基づいたシステム800)は、位置センサモジュール830及び患者810に付着された歪ゲージ840A〜840Cのみならず、上述のように外科医820に対して情報を提供する演算装置850及び手順標準860をも含む。任意選択により、手順標準860は、演算装置850内においてデジタル的に維持することができる。更には、演算装置850は、任意選択により、トライアル人工装具及び関節置換手順のその他の側面を評価する際に、更に処理された出力を生成して外科医を支援するべく、デジタル的に維持された手順標準860の観点において、力センサ(図示されていない)、歪ゲージ840A〜840Cから受信された入力、及び位置センサモジュール830からの位置データを分析することができる。
 
【0035】
  図8Bは、いくつかの例示用の実施形態による、センサに基づいた関節置換システムを示すブロックダイアグラムである。この例においては、センサに基づいたシステム800は、位置/動き検知モジュール830、演算装置850、位置/動き計算モジュール852、関節データ処理モジュール854、グラフ化モジュール856、分析モジュール858、手順標準リポジトリ860、及び表示装置870を含む。任意選択により、センサに基づいたシステム800は、1つ又は複数の歪ゲージ840、1つ又は複数の力センサ842、及びフィードバック入力844のうちの1つ又は複数を含む。この例においては、位置/動き計算モジュール852は、位置/動き検知モジュール830から情報を受け取ると共に処理している。特定の例においては、位置/動き計算モジュール852は、この例において示されているように、位置/動き検知モジュール830内に統合されており、且つ、演算装置850の一部ではない。いくつかの例においては、関節データ処理モジュール854は、これらの関節データ供給源のうちのいずれが、使用中であり、且つ、演算装置850と通信中であるのかに応じて、1つ又は複数の歪ゲージ840、1つ又は複数の力センサ842、及びフィードバック入力844からデータを受け取り、且つ、処理している。関節データプロセスモジュール854は、グラフ化モジュール856によって使用されるように、受け取った関節データを、位置/動き計算モジュール852によって生成される位置データと相関させている。いくつかの例においては、グラフ化モジュール856は、上述のように、動きの範囲グラフを生成するべく、位置/動き計算モジュール852及び関節データ処理モジュール854から受け取ったデータを使用している。一例においては、分析モジュール858は、グラフ化モジュール856からの出力を手順標準リポジトリ860内に保存されている手順標準に照らして比較及び評価することができる。分析モジュール858からの出力は、数値的な又はグラフィカルな形態において、表示装置870を介して外科医に提示することができる。
 
【0036】
  図9は、いくつかの例示用の実施形態による、関節置換手順の際に定量的なフィードバックを提供する方法を示すフローチャートである。一例においては、方法900は、910における位置データの受領、920における人工装具内からの力データの同時受領、930における位置データを参照した力データのグラフィカル表現の生成、及び940におけるターゲットとの間におけるグラフィカル表現の比較、などの動作を含む。任意選択により、方法900は、940におけるターゲットとの間におけるグラフィカル表現の比較と、950における異なるサイズ人工装具の挿入と、を更に含み、これには、以前の動作の反復が後続している。
 
【0037】
  一例においては、方法900は、910において始まっており、演算装置850が、位置/動き検知モジュール830などの位置又は動きセンサから、骨の位置データを受け取っている。920において、方法900は、910と同時に、演算装置850を有する人工装具内から力データを受け取っている。力センサ842などの力センサは、力データを生成することができる。930において、方法900は、演算装置850が、動きの範囲グラフ600などの動きの範囲グラフを生成するべく、位置データと相関した力データのグラフィカルな表現を生成することにより、継続している。任意選択により、方法900は、930において、それぞれのデータストリーム(例えば、位置データ及び力データ)と関連したタイムスタンプ又は類似のメタデータに基づいて、力データを位置データに相関させる動作を含むことができる。
 
【0038】
  任意選択により、方法900は、940において、演算装置850が、ターゲット又は手順標準との間においてグラフィカル表現を比較することにより、継続している。いくつかの例においては、比較又は評価は、相対的な大きさと共に、差及び類似性のエリアを示す着色されたヒートマップなどの、グラフィカルな表現がターゲットにどの程度近接してマッチングしているかを表す数値的な又はグラフィカルな出力を生成することができる(例えば、赤色エリアが、大きな差のレベルを示し、且つ、青色エリアが、大きな類似性のレベルを示している)。950において、方法900は、任意選択により、異なるサイズの人工装具トライアルの挿入と、新しいトライアルに伴う関節の低減後の再開に対する以前の動作のトリガと、により、継続している。
 
【0039】
  図10は、いくつかの例示用の実施形態による、術前及び術後の関節機能の定量的な比較用の方法を示すフローチャートである。この例においては、方法1000は、動作1010〜1040を含む手順前と、動作1050〜1090を含む手順後と、という、2つの異なる期間に分解される動作を含む。手順前の動作は、1010において位置センサを上肢に装着するステップと、1020において動きの範囲データを収集するステップと、1030において関節機能に関係した更なるフィードバックを同時に受け取るステップと、1040において術前グラフを生成するステップと、を含む。手順後の動作は、1050において位置センサを上肢に装着するステップと、1060において動きの範囲データを収集するステップと、1070において関節機能に関係した更なるフィードバックを同時に受け取るステップと、1080において術後グラフを生成するステップと、1090において術後グラフとの間において術前グラフを比較するステップと、を含む。この例においては、方法1000は、関節置換手順の結果の定量的な評価及びフィードバックを提供するべく、使用されている。手順後の動作は、治癒プロセスにおける改善を更に立証するべく、関節置換の後に、様々な時間インターバルにおいて実行することができる。
 
【0040】
  一例においては、方法1000は、1010において、位置センサが見込み患者の上肢に装着されることにより、始まっている。1020及び1030において、方法1000は、上肢が動きの範囲を通じて能動的又は受動的に運動させられている状態における位置センサを使用した動きの範囲データの収集により、継続している。能動的な動きの範囲は、支援を伴うことなしに患者によって実現されうる動きの範囲を表しており、受動的な動きの範囲は、支援を伴って上肢を運動させることができる運動の範囲である。1030において、方法1000は、動作1020と同時に、関節機能に関係したフィードバック(例えば、データ)が受け取られることにより、継続している。一例においては、フィードバックは、歪ゲージ情報(筋肉機能又はその他の軟組織情報を示す)、不安定性情報、又は患者によって提供される痛み情報を含むことができる。動きの範囲データの収集と同時に、フィードバックデータを収集することにより、フィードバックデータを動きの範囲データと相関させることができる。1040において、方法1000は、相関された動きの範囲及びフォードバックデータを使用して関節機能の術前のグラフィカルな表現を生成することにより、継続している。動作1010〜1040は、手順前の関節機能の定量的な表現を提供し、これは、能動的な動きの範囲対受動的な動きの範囲のみならず、動きの範囲内の位置に相関された不安定性及び痛み情報をも含むことができる。
 
【0041】
  方法1000は、動作1050〜1080が、手順後において、動作1010〜1040を反復して手順後の関節機能の定量的表現を生成することにより、継続することができる。1090において、方法1000は、手術結果の定量的なエビデンスを提供するための手順前グラフと手順後グラフの間の比較により、継続している。
 
【0042】
ソフトウェアアーキテクチャ
  
図11は、代表的なソフトウェアアーキテクチャ1102を示すブロックダイアグラム1100であり、このアーキテクチャは、本明細書において記述されている様々なハードウェアアーキテクチャとの関連において使用することができる。
図11は、ソフトウェアアーキテクチャの非限定的な例であるに過ぎず、且つ、多くのその他のアーキテクチャが、本明細書において記述されている機能を促進するべく実装されうることを理解されたい。ソフトウェアアーキテクチャ1102は、その他のものに加えて、プロセッサ1210と、メモリ1230と、I/Oコンポーネント1250と、を含む、
図12の機械1200などの、ハードウェア上において稼働していてもよい。代表的なハードウェア層1104が示されており、これは、例えば、
図12の機械1200を表すことができる。代表的なハードウェア層1104は、関連する実行可能命令1108を有する1つ又は複数の処理ユニット1106を有する。実行可能命令1108は、
図8〜
図10の方法やモジュールなどの実装形態を含むソフトウェアアーキテクチャ1102の実行可能命令を表している。又、ハードウェア層1104は、メモリ及び/又はストレージモジュール1110をも含んでおり、これらも、実行可能命令1108を有する。又、ハードウェア層1104は、機械1200の一部分として示されているその他のハードウェアなどの、ハードウェア層1104の任意のその他のハードウェアを表す1112によって示されたその他のハードウェアを有することもできる。
 
【0043】
  図11の例示用のアーキテクチャにおいては、ソフトウェア1102は、それぞれの層が特定の機能を提供する層の積層体として、概念化することができる。例えば、ソフトウェア1102は、オペレーティングシステム1114、ライブラリ1116、フレームワーク/ミドルウェア1118、アプリケーション1120、及びプレゼンテーション層1122などの層を含むことができる。稼働の観点において、アプリケーション1120及び/又は層内のその他のコンポーネントは、ソフトウェア積層体を通じてアプリケーションプログラミングインターフェイス(API:Application  Programming  Interface)呼出し1124を起動してもよく、且つ、API呼出し1124に応答してメッセージ1126として示される応答や返された値などを受け取ることができる。図示の層は、その特性が代表的なものであり、従って、すべてのソフトウェアアーキテクチャがすべての層を有するわけではない。例えば、いくつかのモバイル又は特殊目的オペレーティングシステムは、フレームワーク/ミドルウェア層1118を提供していない場合があり、その他のものは、このような層を提供することができる。その他のソフトウェアアーキテクチャは、更なる又は異なる層を含むことができる。
 
【0044】
  オペレーティングシステム1114は、ハードウェアリソースを管理することができると共に、共通サービスを提供することができる。オペレーティングシステム1114は、例えば、カーネル1128と、サービス1130と、ドライバ1132と、を含むことができる。カーネル1128は、ハードウェアとその他のソフトウェア層の間において抽象化層として機能することができる。例えば、カーネル1128は、メモリ管理、プロセッサ管理(例えば、スケジューリング)、コンポーネント管理、ネットワーキング、セキュリティ設定などの責任を担うことができる。サービス1130は、その他のソフトウェア層用のその他の共通サービスを提供することができる。ドライバ1132は、基礎をなすハードウェアの制御又はこれとのインターフェイス処理の責任を担うことができる。例えば、ドライバ1132は、ハードウェア構成に応じて、表示ドライバ、カメラドライバ、Bluetooth(登録商標)ドライバ、フラッシュメモリドライバ、シリアル通信ドライバ(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB:Universal  Serial  Bus)ドライバ)、Wi−Fi(登録商標)ドライバ、オーディオドライバ、電源管理ドライバなどを含むことができる。
 
【0045】
  ライブラリ1116は、アプリケーション1120及び/又はその他のコンポーネント及び/又は層によって利用されうる共通インフラストラクチャを提供することができる。ライブラリ1116は、通常、その他のソフトウェアモジュールが、基礎をなすオペレーティングシステム1114の機能(例えば、カーネル1128、サービス1130、及び/又はドライバ1132)との間において直接的にインターフェイスよりも容易な方式によってタスクを実行することを許容する機能を提供している。ライブラリ1116は、メモリ割当機能、ストリング操作機能、数学関数、及びこれらに類似したものなどの機能を提供しうるシステム1134のライブラリ(例えば、C標準ライブラリ)を含むことができる。これに加えて、ライブラリ1116は、メディアライブラリ(例えば、MPREG4、H.264、MP3、AAC、AMR、JPG、PNGなどの様々なメディアフィーマットの提示及び操作をサポートするためのライブラリ)、グラフィックスライブラリ(例えば、ディスプレイ上においてグラフィックコンテンツ内の2D及び3Dをレンダリングするべく使用されうるOpenGLフレームワーク)、データベースライブラリ(例えば、様々なリレーショナルデータベース機能を提供しうるSQLite)、ウェブライブラリ(例えば、ウェブブラウジング機能を提供しうるWebKit)、並びに、これらに類似したものなどのAPIライブラリ1136を含むことができる。又、ライブラリ1116は、多くのその他のAPIをアプリケーション1120及びその他のソフトウェアコンポーネント/モジュールに提供するべく、様々なその他のライブラリ1138を含むこともできる。
 
【0046】
  フレームワーク1118(しばしば、ミドルウェアとも呼称される)は、アプリケーション1120及び/又はその他のソフトウェアコンポーネント/モジュールによって利用されうる相対的にハイレベルな共通インフラストラクチャを提供することができる。例えば、フレームワーク1118は、様々なグラフィックユーザーインターフェイス(GUI:Graphic  User  Interface)機能、ハイレベルなリソース管理、ハイレベルな場所サービスなどを提供することができる。フレームワーク1118は、アプリケーション1120及び/又はその他のソフトウェアコンポーネント/モジュールによって利用されうる広範囲なその他のAPIを提供することができ、これらのうちのいくつかは、特定のオペレーティングシステム又はプラットフォームに固有のものであってもよい。
 
【0047】
  アプリケーション1120は、組込み型のアプリケーション1140及び/又は第三者アプリケーション1142を含む。代表的な組込み型アプリケーション1140の例は、限定を伴うことなしに、コンタクトアプリケーション、ブラウザアプリケーション、ブックリーダーアプリケーション、場所アプリケーション、メディアアプリケーション、メッセージングアプリケーション、及び/又はゲームアプリケーションを含むことができる。第三者アプリケーション1142は、組込み型アプリケーションのいずれかのみならず、様々なその他のアプリケーションを含むことができる。特定の一例においては、第三者アプリケーション1142(例えば、特定のプラットフォームのベンダ以外のエンティティによってAndroid(商標)又はiOS(商標)ソフトウェア開発キット(SDK:Software  Development  Kit)を使用して開発されたアプリケーション)は、iOS(商標)、Android(商標)、Windows(登録商標)  Phone、又はその他のモバイルオペレーティングシステムなどの、モバイルオペレーティングシステム上において稼働するモバイルソフトウェアであってもよい。この例においては、第三者アプリケーション1142は、本明細書において記述されている機能を促進するべく、オペレーティングシステム1114などのモバイルオペレーティングシステムによって提供されるAPI呼出し1124を起動することができる。
 
【0048】
  アプリケーション1120は、ユーザーインターフェイスを生成してシステムのユーザーとやり取りするべく、組込み型のオペレーティングシステム機能(例えば、カーネル1128、サービス1130、及び/又はドライバ1132)、ライブラリ(例えば、システム1134、API1136、及びその他のライブラリ1138)、フレームワーク/ミドルウェア1118を利用することができる。この代わりに、又はこれに加えて、いくつかのシステムにおいては、ユーザーとの間のやり取りは、プレゼンテーション層1144などのプレゼンテーション層を通じて実行することもできる。これらのシステムにおいては、アプリケーション/モジュールの「ロジック」は、ユーザーとやり取りするアプリケーション/モジュールの側面から分離することができる。
 
【0049】
  いくつかのソフトウェアアーキテクチャは、仮想機械を利用している。
図11の例においては、これが、仮想機械1148によって示されている。仮想機械は、アプリケーション/モジュールが、(例えば、
図12の機械のような)ハードウェア機械上において稼働しているかのように稼働しうるソフトウェア環境を生成する。仮想機械は、ホストオペレーティングシステム(
図12のオペレーティングシステム1114)によってホスティングされており、且つ、通常は、但し、常にではないが、仮想機械モニタ1146を有しており、このモニタは、仮想機械の動作のみならず、ホストオペレーティングシステム(即ち、オペレーティングシステム1114)とのインターフェースをも管理している。オペレーティングシステム1150、ライブラリ1152、フレームワーク/ミドルウェア1154、アプリケーション1156、及び/又はプレゼンテーション層1158などの、ソフトウェアアーキテクチャが、仮想機械内において稼働している。仮想機械1148内において稼働するソフトウェアアーキテクチャのこれらの層は、上述の対応する層と同一であってもよく、或いは、異なっていてもよい。
 
【0050】
例示用の機械アーキテクチャ及び機械可読媒体
  
図12は、機械可読媒体(例えば、機械可読ストレージ媒体)から命令を読み取ることが可能であると共に、本明細書において記述されている方法のうちの任意の1つ又は複数を実行することができる、いくつかの例示用の実施形態による、機械1200のコンポーネントを示すブロックダイアグラムである。具体的には、
図12は、例示用のコンピュータシステムの形態において、機械1200の概略図を示しており、このコンピュータシステム内においては、機械1200が本明細書において記述されている方法のうちの任意の1つ又は複数を実行するようにするための命令1216(例えば、ソフトウェア、プログラム、アプリケーション、アプレット、app、又はその他の実行可能コード)を実行することができる。例えば、命令は、機械が
図9及び
図10のフロー図を実行するようにすることができる。これに加えて、又はこの代わりに、命令は、
図8Bのモジュール852〜858などを実装することもできる。命令により、一般的な、プログラムされていない機械が、記述されている方式により、記述及び図示されている機能を実行するようにプログラミングされた特定の機械に、変換される。代替実施形態においては、機械1200は、スタンドアロン装置として動作しており、或いは、その他の機械に結合(例えば、ネットワーク接続)されてもよい。ネットワーク接続された配備形態においては、機械1200は、サーバー−クライアントネットワーク環境内において、サーバー機械又はクライアント機械の容量内において動作してもよく、或いは、ピアーツーピア(又は、分散)ネットワーク環境内においては、ピア機械として動作してもよい。機械1200は、限定を伴うことなしに、サーバーコンピュータ、クライアントコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC:Personal  Computer)、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットブック、セットトップボックス(STB:Set−Top  Box)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA:Personal  Digital  Assistant)、エンターテインメントメディアシステム、セルラー電話機、スマートフォン、モバイル装置、ウェアラブル装置(例えば、スマートウォッチ)、或いは、機械1200によって実行されるべき動作を規定する命令1216を逐次的に又はその他の方式によって実行する能力を有する任意の機械を有することができる。更には、単一の機械1200のみが示されているが、「機械」という用語は、本明細書において記述されている方法のうちの任意の1つ又は複数を実行するべく、個々に、又は協働して、命令1216を実行する機械1200の集合体をも含むものと解釈されたい。
 
【0051】
  機械1200は、プロセッサ1210、メモリ1230、及びI/Oコンポーネント1250を含んでいてもよく、これらは、例えば、バス1202を介して互いに通信するように構成することができる。例示用の一実施形態においては、プロセッサ1210(例えば、中央処理装置(CPU:Central  Processing  Unit)、RISC(Reduced  Instruction  Set  Computing)プロセッサ、CISC(Complex  Instruction  Set  Computing)プロセッサ、グラフィックス処理ユニット(GPU:Graphics  Processing  Unit)、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital  Signal  Processor)、用途固有の集積回路(ASIC:Application  Specific  Integrated  Circuit)、高周波集積回路(RFIC:Radio−Frequency  Integrated  Circuit)、別のプロセッサ、或いは、これらの任意の適切な組合せ)は、例えば、命令1216を実行しうるプロセッサ1212及びプロセッサ1214を含むことができる。「プロセッサ」という用語は、命令を同時に実行しうる2つ以上の独立したプロセッサ(しばしば、「コア」と呼称される)を有しうるマルチコアプロセッサを含むべく、意図されている。
図12は、複数のプロセッサを示しているが、機械1200は、単一のコアを有する単一のプロセッサ、複数のコアを有する単一のプロセッサ(例えば、マルチコアプロセス)、単一のコアを有する複数のプロセッサ、複数のコアを有する複数のプロセッサ、或いは、これらの任意の組合せを含むことができる。
 
【0052】
  メモリ/ストレージ1230は、メインメモリ又はその他のメモリストレージなどのメモリ1232と、ストレージユニット1236と、を含んでいてもよく、これらは、いずれも、バス1202などを介してプロセッサ1210からアクセス可能である。ストレージユニット1236及びメモリ1232は、本明細書において記述されている方法又は機能のうちの任意の1つ又は複数を実施する命令1216を保存している。又、命令1216は、完全に又は部分的に、機械1200によるその実行の際に、メモリ1232内において存在していてもよく、ストレージユニット1236内において存在していてもよく、プロセッサ1210のうちの少なくとも1つのものの内部において(例えば、プロセッサのキャッシュメモリ内において)存在していてもよく、或いは、これらの任意の適切な組合せ内において存在していてもよい。従って、メモリ1232、ストレージユニット1236、及びプロセッサ1210のメモリは、機械可読媒体の例である。
 
【0053】
  本明細書において使用されている「機械可読媒体」は、命令及びデータを一時的に又は永久的に保存することができる装置を意味しており、且つ、限定を伴うことなしに、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random−Access  Memory)、読み出し専用メモリ(ROM:Read−Only  Memory)、バッファメモリ、フラッシュメモリ、光学媒体、磁気媒体、キャッシュメモリ、その他のタイプのストレージ(例えば、消去可能なプログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM:Erasable  Programmable  Read−Only  Memory))、及び/又はこれらの任意の適切な組合せを含むことができる。「機械可読媒体」という用語は、命令1216を保存することができる単一の媒体又は複数の媒体(例えば、中央集中化された又は分散されたデータベース又は関連するキャッシュ及びサーバー)を含むものと解釈されたい。又、「機械可読媒体」という用語は、命令が、機械1200の1つ又は複数のプロセッサ(例えば、プロセッサ1210)によって実行された際、機械1200が、本明細書において記述されている方法のうちの任意の1つ又は複数を実行するようにするべく、機械(例えば、機械1200)による実行のための命令(例えば、命令1216)を保存する能力を有する任意の媒体又は複数の媒体の組合せを含むものと解釈されたい。従って、「機械可読媒体」は、単一のストレージ装置又は機器のみならず、複数のストレージ装置又は機器を含む「クラウドに基づいた」ストレージシステム又はストレージネットワークを意味している。「機械可読媒体」という用語は、信号自体を排除している。
 
【0054】
  I/Oコンポーネント1250は、入力の受領、出力の提供、出力の生成、情報の送信、情報の交換、計測値のキャプチャなどを実行するべく、様々なコンポーネントを含むことができる。特定の機械内に含まれる特定のI/Oコンポーネント1250は、機械のタイプに依存することになる。例えば、携帯電話機などの携帯型機械は、恐らくは、タッチ入力装置又はその他のこの種の入力メカニズムを含むことになり、ヘッドレスサーバー機械は、恐らくは、この種のタッチ入力装置を含まないであろう。I/Oコンポーネント1250は、
図12には示されていない多くのその他のコンポーネントを含みうることを理解されたい。I/Oコンポーネント1250は、以下の説明を単純化するためにのみ、機能に従ってグループ化されており、且つ、このグループ化は、決して限定を目的としたものではない。様々な例示用の実施形態においては、I/Oコンポーネント1250は、出力コンポーネント1252と、入力コンポーネント1254と、を含むことができる。出力コンポーネント1252は、視覚的コンポーネント(例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma  Dispaly  Panel)、発光ダイオード(LED:Light  Emitting  Diode)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid  Crystal  Display)、プロジェクタ、又は陰極線管(CRT:Cathode  Ray  Tube)などのディスプレイ)、音響コンポーネント(例えば、スピーカ)、触覚コンポーネント(例えば、振動モーター、抵抗メカニズム)、その他の信号生成器などを含むことができる。入力コンポーネント1254は、英数入力コンポーネント(例えば、キーボード、英数入力を受け取るように構成されたタッチスクリーン、光−光学キーボード(photo−optical  keyboard)、又はその他の英数入力コンポーネント)、ポイントに基づいた入力コンポーネント(例えば、マウス、タッチパッド、トラックボール、ジョイスティック、モーションセンサ、又はその他のポインティングインスツルメント)、触覚入力コンポーネント(例えば、物理的なボタン、接触の場所及び/又は力又は接触ジェスチャを提供するタッチスクリーン、或いは、その他の触覚入力コンポーネント)、オーディオ入力コンポーネント(例えば、マイクロフォン)、及びこれらに類似したものを含むことができる。
 
【0055】
  更なる例示用の実施形態においては、I/Oコンポーネント1250は、様々なその他のコンポーネントに加えて、生体計測コンポーネント1256、モーションコンポーネント1258、環境コンポーネント1260、又は位置コンポーネント1262を含むことができる。例えば、生体計測コンポーネント1256は、表現(例えば、手の表現、顔面の表現、音声の表現、身体のジェスチャ、又は視標追跡)を検出するための、生体信号(例えば、血圧、心拍数、体温、発汗、又は脳波)を計測するための、人物(例えば、音声識別、網膜識別、顔面識別、指紋識別、又は脳電図に基づいた識別)を識別するための、且つ、これらに類似した内容を実行するための、コンポーネントを含むことができる。モーションコンポーネント1258は、加速度センサコンポーネント(例えば、加速度計)、重力センサコンポーネント、回転センサコンポーネント(例えば、ジャイロスコープ)などを含むことができる。環境コンポーネント1260は、例えば、照明センサコンポーネント(例えば、光度計)、温度センサコンポーネント(例えば、周辺温度を検出する1つ又は複数の温度計)、湿度センサコンポーネント、圧力センサコンポーネント(例えば、バロメータ)、音響センサコンポーネント(例えば、背景雑音を検出する1つ又は複数のマイクロフォン)、近接性センサコンポーネント(例えば、近傍の物体を検出する赤外線センサ)、ガスセンサ(例えば、安全のために危険なガスの濃度を検出するための、或いは、雰囲気中の汚染物質を計測するための、ガス検出センサ)、或いは、周囲の物理環境に対応した通知、計測値、又は信号を提供しうるその他のコンポーネントを含むことができる。位置コンポーネント1262は、場所センサコンポーネント(例えば、全地球測位システム(GPS:Global  Position  System)レシーバコンポーネント)、高度センサコンポーネント(例えば、高度が導出されうる気圧を検出する高度計又はバロメータ)、向きセンサコンポーネント(例えば、磁力計)、及びこれらに類似したものを含むことができる。
 
【0056】
  通信は、様々な技術を使用して実装することができる。I/Oコンポーネント1250は、カプリング1282及びカプリング1272をそれぞれ介して、機械1200をネットワーク1280又は装置1270に結合するべく動作可能な通信コンポーネント1264を含むことができる。例えば、通信コンポーネント1264は、ネットワーク1280とインターフェイスするべく、ネットワークインターフェイスコンポーネント又はその他の適切な装置を含むことができる。更なる例においては、通信コンポーネント1264は、有線通信コンポーネント、無線通信コンポーネント、セルラー通信コンポーネント、近距離通信(NFC:Near  Field  Communication)コンポーネント、Bluetooth(登録商標)コンポーネント(例えば、Bluetooth(登録商標)  Low  Energy)、Wi−Fi(登録商標)コンポーネント、及びその他のモードを介して通信を提供するためのその他の通信コンポーネントを含むことができる。装置1270は、別の機械又は様々な周辺装置のうちの任意のもの(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)を介して結合された周辺装置)であってもよい。
 
【0057】
  更には、通信コンポーネント1264は、識別子を検出してもよく、或いは、識別子を検出するべく動作可能なコンポーネントを含むこともできる。例えば、通信コンポーネント1264は、高周波識別(RFID:Radio  Frequency  IDentification)タグリーダーコンポーネント、NFCスマートタグ検出コンポーネント、光学リーダーコンポーネント(例えば、UPC(Universal  Product  Code)バーコードなどの一次元バーコード、QR(Quick  Response)コードなどの多次元バーコード、Aztecコード、Data  Matrix、Dataglyph、MaxiCode、PDF417、Ultra  Code、UCC  RSS−2Dバーコード、及びその他の光学コードを検出するための光学センサ)、或いは、音響検出コンポーネント(例えば、タグ付けされたオーディオ信号を識別するためのマイクロフォン)を含むことができる。これに加えて、様々な情報を通信コンポーネント1264を介して導出することができ、例えば、インターネットプロトコル(IP:Internet  Protocol)ジオロケーションを介して場所を導出することが可能であり、Wi−Fi(登録商標)信号三角測量を介して場所を導出することが可能であり、特定の場所を通知しうるNFCビーコン信号の検出を介して場所を導出することができる。
 
【0058】
送信媒体
  様々な例示用の実施形態においては、ネットワーク1280の1つ又は複数の部分は、アドホックネットワーク、イントラネット、エクストラネット、仮想プライベートネットワーク(VPN:Virtual  Private  Network)、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local  Area  Networik)、無線LAN(WLAN:Wireless  LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN:Wide  Area  Network)、無線WAN(WWAN:Wireless  WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN:Metropolitan  Area  Network)、インターネット、インターネットの一部分、公衆交換電話網(PSTN:Public  Switched  Telephone  Network)の一部分、プレーンオールド電話サービス(POTS:Plain  Old  Telephone  Service)ネットワーク、セルラー電話ネットワーク、無線ネットワーク、Wi−Fi(登録商標)ネットワーク、別のタイプのネットワーク、或いは、2つ以上のこの種のネットワークの組合せであってもよい。例えば、ネットワーク1280又はネットワーク1290の一部分は、無線又はセルラーネットワークを含んでいてもよく、且つ、カプリング1282は、符号分割多重アクセス(CDMA:Code  Division  Multiple  Access)接続、GSM(登録商標)(Global  System  for  Mobile  communications)接続、或いは、その他のタイプのセルラー又は無線カプリングであってもよい。この例においては、カプリング1282は、1×RTT(Single  carrier  Radio  Transmission  Technology)、EVDO(Evolution−Data  Optimized)技術、GPRS(General  Packet  Radio  Service)技術、EDGE(Enhanced  Data  rates  for  GSM(登録商標)  Evolution)技術、3Gを含む第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)、第4世代無線(4G)ネットワーク、UMTS(Universal  Mobile  Telecommunications  System)、HSPA(High  Speed  Packet  Access)、WiMAX(Worldwide  interoperatility  for  Microwave  Access)、LTE(Long  Term  Evolution)規格、様々な規格制定団体によって定義されたその他のもの、その他の長距離プロトコル、或いは、その他のデータ転送技術などの様々なタイプのデータ転送技術のうちの任意のものを実装することができる。
 
【0059】
  命令1216は、ネットワークインターフェイス装置(例えば、通信コンポーネント1264内において含まれているネットワークインターフェイスコンポーネント)を介して、且つ、いくつかの周知の転送プロトコルのうちの任意のもの(例えば、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP:HyperText  Transfer  Protocol))を利用することにより、送信媒体を使用して、ネットワーク1280上において送信又は受信することができる。同様に、命令1216は、カプリング1272(例えば、ピアツーピアカプリング)を介して、送信媒体を使用することにより、装置1270に送信又は受信することができる。「送信媒体」という用語は、機械1200による実行のために、命令1216を保存、エンコーディング、又は搬送する能力を有する任意の無形媒体を含むものと解釈することを要し、且つ、このようなソフトウェアの通信を促進するためのデジタル又はアナログ通信信号又はその他の無形媒体を含む。
 
【0060】
言語
  本明細書の全体を通じて、複数形のインスタンスは、単一のインスタンスとして記述されているコンポーネント、動作、又は構造を実装することができる。1つ又は複数の方法の個々の動作は、別個の動作として、図示及び記述されているが、個々の動作の1つ又は複数が同時に実行されてもよく、且つ、図示の順序における動作の実行を必要とするものは存在しない。例示用の構成において別個のコンポーネントとして提示されている構造及び機能は、組み合わせられた構造又はコンポーネントとして実装することができる。同様に、単一のコンポーネントとして提示されている構造及び機能も、別個のコンポーネントとして実装することができる。これらの及びその他の変動、変更、追加、及び改善は、本明細書の主題の範囲に含まれる。
 
【0061】
  以上、特定の例示用の実施形態を参照し、本発明の主題の概要について説明したが、本開示の実施形態の相対的に広い範囲を逸脱することなしに、これらの実施形態に対して様々な変更及び変化を実施することができる。このような本発明の主題の実施形態は、本明細書においては、個々に又は集合的に、利便を目的としてのみ、且つ、複数が実際に開示されている場合にも、本出願の範囲を任意の単一の開示又は発明概念に自主的に制限する意図を伴うことなしに、「発明」という用語によって呼称することができる。
 
【0062】
  本明細書において示されている実施形態は、当業者が、開示されている教示内容を実施できるようにするべく、十分詳細に記述されている。本開示の範囲を逸脱することなしに、構造的且つ論理的な置換及び変更が実施されうるように、その他の実施形態を使用することができると共に、これから導出することができる。従って、「発明を実施するための形態」は、限定の意味において解釈してはならず、且つ、様々な実施形態の範囲は、請求項が権利を有する均等物の全体範囲と共に、添付の請求項によってのみ、定義される。更には、本明細書において単一のインスタンスとして記述されているリソース、動作、又は構造について、複数形のインスタンスを提供することもできる。これに加えて、様々なリソース、動作、モジュール、エンジン、及びデータストアの間の境界は、多少不定であり、且つ、特定の動作が、特定の例示用の構成の文脈において示されている。機能のその他の割当が、想定されており、且つ、本開示の様々な実施形態の範囲内に含まれうる。一般に、例示用の構成において別個のリソースとして提示されている構造及び機能は、組み合わせられた構造又はリソースとして実装することができる。同様に、単一のリソースとして提示されている構造及び機能も、別個のリソースとして実装することができる。これらの及びその他の変動、変更、追加、及び改善は、添付の請求項によって表されている本開示の実施形態の範囲内に含まれる。従って、本明細書及び図面は、限定の意味においてではなく、例示の意味において理解されたい。
 
【0063】
  本明細書と引用によって包含されたすべての文献の間における一貫性を有していない使用法の場合には、本明細書における使用法が優先する。
 
【0064】
  本明細書においては、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、特許文献において通常そうであるように、任意のその他のインスタンス、或いは、「少なくとも1つの(at  least  one)」又は「1つ又は複数の(one  or  more)」の使用法とは独立的に、1つ又は複数を含むものとして、使用されている。本明細書においては、「又は(or)」という用語は、そうではない旨が示されてない限り、排他性を有しないように、即ち、「A又はB(A  or  B)」は、「BではなくA(A  but  not  B)」、「AではなくB(B  but  not  A)」、及び「A及びB(A  and  B)」を意味するように、使用されている。本明細書においては、「含む(including)」及び「この場合に(in  which)」という用語は、「有する(comprising)」及び「この場合に(wherein)」という個々の用語の平易な英語の均等物として使用されている。又、添付の請求項においては、「含む(including)」及び「有する(comprising)」という用語は、オープンエンド型であり、即ち、請求項内において、このような用語の後に列挙されたものに加えて、要素を含むシステム、装置、物品、組成、フォーミュレーション、又はプロセスは、依然として、その請求項の範囲内に含まれるものと見なされる。更には、添付の請求項においては、「第1の(first)」、「第2の(second)」、及び「第3の(third)」などの用語は、ラベルとしてのみ使用されており、且つ、それらの物体に数値的な要件を課すことを意図してはいない。
 
【0065】
様々な留意事項及び例
  これらの非限定的な例のそれぞれは、それ自体で成立することが可能であり、或いは、その他の例のうちの1つ又は複数との間において、様々な順列又は組合せにおいて、組み合わせることもできる。
 
【0066】
  例1は、関節の動きの範囲を通じて関節内の力を視覚化するグラフィカルなフィードバックを提供する方法を含みうる主題について記述している。方法は、位置データを受け取るステップと、力データを受け取るステップと、位置データ及び力データに基づいてグラフィカルな表現を生成するステップと、を有することができる。位置データを受け取るステップは、少なくとも1つの骨が動きの範囲(ROM)を通じて運動している状態における関節の少なくとも1つの骨のデータを含むことができる。力データを受け取るステップは、位置データを受け取るステップと同時に発生可能であり、且つ、1つ又は複数のプロセッサを使用することにより、関節内のトライアル人工装具内において埋め込まれた少なくとも1つの力センサからデータを収集することができる。グラフィカルな表現は、骨がROMを通じて運動するのに伴って、力データの変化対骨の場所を示すことができる。
 
【0067】
  例2においては、例1の主題は、任意選択により、位置データを受け取るステップと同時に、関節に隣接した1つ又は複数の身体部分に装着された1つ又は複数の歪ゲージから歪ゲージデータを受け取るステップを含むことができる。
 
【0068】
  例3においては、例2の主題は、任意選択により、歪ゲージによって筋肉の活性化を計測するステップを含むことができる。
 
【0069】
  例4においては、例1〜例3のうちのいずれかの例の主題は、任意選択により、トライアル人工装具が動きの範囲の全体を通じてターゲット関節張力を提供するかどうかを判定するべく、グラフィカルな表現を予め生成されたターゲットグラフィカル提示と比較するステップを含むことができる。
 
【0070】
  例5においては、例1〜例4のいずれかの例の主題は、任意選択により、少なくとも1つの骨に着脱自在に結合された1つ又は複数のセンサによって提供される位置データを受け取るステップを含む位置データを受け取るステップを含むことができる。
 
【0071】
  例6においては、例5の主題は、任意選択により、加速度計及びジャイロスコープのうちの少なくとも1つである1つ又は複数のセンサを含むことができる。
 
【0072】
  例7においては、例1〜6のいずれかの例の主題は、任意選択により、トライアル人工装具の中央部分内において埋め込まれた単一の力センサから受け取られる力データ含むことができる。
 
【0073】
  例8においては、例1〜例6のいずれかの例の主題は、任意選択により、トライアル人工装具内において埋め込まれた複数の力センサから受け取られる力データを含むことができる。
 
【0074】
  例9においては、例8の主題は、任意選択により、トライアル人工装具の異なるエリアを表すデータを含む力データを含むことができる。
 
【0075】
  例10においては、例8又は例9のいずれかの例の主題は、任意選択により、セミ半球であるトライアル人工装具と、セミ半球形状のベースから力データを受け取る第1センサ及びセミ半球形状の周辺部の周りの複数の更なるセンサを含む複数の力センサと、を含むことができる。
 
【0076】
  例11においては、例1〜例7のいずれかの例の主題は、任意選択により、異なるサイズのインサートの組を含むトライアル人工装具を含むことが可能であり、この場合に、インサートの組のそれぞれのインサートは、少なくとも1つの力センサを含む。
 
【0077】
  例12においては、例1の主題は、任意選択により、関節内の張力を表す力データを生成するべく、センサモジュールが装着されたインサートを含むトライアル人工装具を含むことができる。
 
【0078】
  例13においては、例12の主題は、任意選択により、第2人工装具又は関節の固有の骨上の嵌合関節面と係合するべく、関節面を含むインサートを含むことができる。
 
【0079】
  例14においては、例12の主題は、任意選択により、関節面の少なくとも一部分上において作用する力に応答して圧縮するピストン部分を有するインサートを含むことができる。
 
【0080】
  例15においては、例14の主題は、任意選択により、ピストン部分内の運動を検出するセンサモジュールから受信される力データを含むことができる。
 
【0081】
  例16においては、例14の主題は、任意選択により、第2人工装具又は関節の固有の骨上の嵌合関節面と係合された状態において、関節面を維持するべく、スプリングを有するピストン部分を含むことができる。
 
【0082】
  例17は、関節置換手順の後の動きの範囲の改善を定量化するための方法を含みうる主題について記述している。方法は、位置センサを装着するステップと、動きの範囲データの第1の組を収集するステップと、更なるフィードバックを受け取るステップと、術前グラフを生成するステップと、関節置換の後に類似の動作を再実行するステップと、術前グラフを術後グラフと比較するステップと、を有することができる。方法は、関節の動きの範囲情報をキャプチャするべく、位置センサモジュールを上肢に装着するステップなどの、動きの範囲の客観的な比較を許容するための関節置換の前の且つ関節置換の後の動作を含む。動きの範囲データの第1の組を収集するステップは、関節と関連した上肢の運動に対応している。更なるフィードバックを受け取るステップは、動きの範囲データを収集するステップと同時に実行することが可能であり、且つ、フィードバックデータの第1の組を生成するべく、関節機能と関係付けられている。術前グラフを生成するステップは、動きの範囲データの第1の組と、動きの範囲データに相関されたフィードバックデータの第1の組と、を含む。関節置換手順に後続して、方法は、位置センサモジュールを装着するステップと、動きの範囲データを収集するステップと、更なるフォードバックを受け取るステップと、術後グラフを生成するステップと、を含む。更には、方法は、関節置換手順に関係した定量的な結果を判定するべく、術前グラフを術後グラフと比較するステップを含む。
 
【0083】
  例18においては、例17の主題は、任意選択により、支援されていない上肢運動を反映した能動的な動きの範囲データを収集するステップを有する動きの範囲データを収集するステップを含むことができる。
 
【0084】
  例19においては、例18の主題は、任意選択により、動きの範囲データの第1の組と、能動的な動きの範囲データを含む動きの範囲データの第2の組と、を含むことができる。
 
【0085】
  例20においては、例17〜
図19のいずれかの例の主題は、任意選択により、支援されている上肢運動を反映した受動的な動きの範囲データを収集するステップを含む動きの範囲データを収集するステップを含むことができる。
 
【0086】
  例21においては、例20の主題は、任意選択により、動きの範囲データの第1の組と、受動的な動きの範囲データを含む動きの範囲データの第2の組と、を含むことができる。
 
【0087】
  例22においては、例17〜例21のいずれかの例の主題は、任意選択により、関節不安定性に関係したフィードバックを受け取るステップを含む更なるフィードバックを受け取るステップを含むことができる。
 
【0088】
  例23においては、例17〜例22のいずれかの例の主題は、任意選択により、痛み情報を受け取るステップを含む更なるフィードバックを受け取るステップを含むことができる。
 
【0089】
  上述の詳細な説明においては、添付図面を参照しており、添付図面は、詳細な説明の一部分を形成している。添付図面は、例として、本発明が実施されうる特定の実施形態を示している。又、これらの実施形態は、本明細書において、「例」とも呼称されている。このような例は、図示又は記述されているものに加えて、要素を含むことができる。但し、本発明者らは、図示又は記述されている要素のみが提供される例をも想定している。更には、本発明者らは、本明細書において図示又は記述されている特定の例(又は、その1つ又は複数の態様)との関係において、或いは、その他の例(又は、その1つ又は複数の態様)との関係において、図示又は記述されている要素(又は、その1つ又は複数の態様)の任意の組合せ又は順列を使用した例をも想定している。
 
【0090】
  本明細書において記述されている方法の例は、少なくとも部分的に、機械又はコンピュータによって実装することができる。いくつかの例は、上述の例において記述されている方法を実行するべく、電子装置を構成するように動作可能な命令によってエンコーディングされたコンピュータ可読媒体又は機械可読媒体を含むことができる。このような方法の一実装形態は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、更にハイレベルな言語のコード、又はこれらに類似したものなどのコードを含むことができる。このようなコードは、様々な方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラムプロダクトの一部分を形成することができる。更には、一例においては、コードは、例えば、実行の際に、或いは、その他の時点において、1つ又は複数の揮発性の、一時的ではない、或いは、不揮発性の、有体の、コンピュータ可読媒体上において、有体方式によって保存することができる。これらの有体のコンピュータ可読媒体の例は、限定を伴うことなしに、ハードディスク、着脱自在の磁気ディスク、着脱自在の光ディスク(例えば、コンパクトディスク及びデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカード又はスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、及びこれらに類似したものを含むことができる。
 
【0091】
  上述の説明は、限定ではなく、例示用を目的としている。例えば、上述の例(或いは、その1つ又は複数の態様)は、相互の組合せにおいて使用することができる。当業者は、例えば、上述の説明を参照した際に、その他の実施形態を使用することができる。要約書は、読者が技術的開示の特性を迅速に特定できるようにするべく、「37  C.F.R.  §1.72(b)」に準拠して提供されるものである。これは、請求項の範囲又は意味を解釈するために又は限定するために使用されないという理解の下に提出されるものである。又、以上の「発明を実施するための形態」においては、本開示を簡素化するべく、様々な特徴が1つにグループ化されている場合がある。これは、特許請求されてはいない開示された特徴が、いずれかの請求項にとって不可欠であることを意図したものと解釈してはならない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示されている実施形態のすべての特徴を下回る状態において、存在しうる。従って、添付の請求項は、それぞれの請求項が別個の実施形態としてそれ自体で成立する状態において、ここに、例又は実施形態として、「発明を実施するための形態」内に内蔵され、且つ、このような実施形態は、様々な組合せ又は順列において、互いに組み合わせることができるものと想定される。本発明の範囲は、添付の請求項が権利を有する均等物の範囲全体と共に、添付の請求項を参照することにより、判定しなければならない。