(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮想平面において、前記複数の第1部位は、隣に位置する2つの前記第1部位の1つである第1部位Aと、該第1部位Aに対して前記第2端の側に位置する第1部位Bとを有し、
前記第1部位A及び前記第1部位Bを有する組の少なくとも1つは、
前記第1部位Aにおける前記第1領域の曲率半径R11aが、前記第1部位Bにおける前記第1領域の曲率半径R11bと異なることを特徴とする請求項1に記載の回転工具。
前記仮想平面において、前記複数の第1部位は、隣に位置する2つの前記第1部位の1つである第1部位Aと、該第1部位Aに対して前記第2端の側に位置する第1部位Bとを有し、
前記第1部位Aにおける前記第3領域の曲率半径R13aが、前記第1部位Bにおける前記第3領域の曲率半径R13bと異なることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の回転工具。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の回転工具1について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を構成する部材のうち主要な部材のみを簡略化して示したものである。したがって、回転工具1は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各部材の寸法比率を忠実に表したものではない。
【0008】
実施形態では、回転工具1の一例としてラフィングエンドミルを示している。なお、回転工具1は、実施形態に示すラフィングエンドミルに限定されるものではなく、例えばフライス工具であってもよい。
【0009】
図1に示す一例の回転工具1は、回転軸Xを有し、第1端3aから第2端3bにかけて延びた円柱形状の本体3と、本体3の外周において、第1端3aの側から第2端3bの側に向かってらせん状に位置する切刃5と、切刃5に沿って位置する排出溝7とを備えている。なお、
図1などにおける矢印Yは、回転軸Xを中心とした本体3の回転方向を示している。
【0010】
円柱形状の本体3は、切削加工物を製造するための被削材の切削加工時において、回転軸Xを中心に矢印Yの方向に回転する。なお、本体3は厳密な意味での円柱形状である必要はない。また、第1端3aから第2端3bにかけて本体3の外径が一定でなくてもよく、例えば、第1端3aから第2端3bにかけて本体3の外径が大きくなるテーパ形状であってもよい。
図1においては、本体3の左側の端部が第1端3a、右側の端部が第2端3bとなっている。以下、切削加工時の回転工具1の使用状況に対応して、第1端3aを先端3a、第2端3bを後端3bと記載して説明する。
【0011】
本体3の外径は、例えば、4mm〜25mmに設定してもよい。また、回転軸Xに沿った方向における本体3の長さをLとし、本体3の外径をDとするとき、例えば、L=4D〜15Dに設定してもよい。
【0012】
図1に示す一例の本体3は、切削部9とシャンク部11とを有している。シャンク部11は、工作機械(不図示)の回転するスピンドルに把持される部位であり、工作機械におけるスピンドルの形状に応じて設計される部位である。シャンク部11の形状としては、例えば、ストレートシャンク、ロングシャンク、ロングネック及びテーパーシャンクなどが挙げられる。
【0013】
図1に示す一例における切削部9は、シャンク部11に対して先端3aの側に位置している。切削部9は、被削材と接触する部位を含み、この部位は、被削材の切削加工において主たる役割をなしてもよい。
【0014】
図2に示す一例における切削部9の外周には、先端3aの側から後端3bの側に向かって切刃5が、らせん状に位置している。切削部9の外周に位置する切刃5は、一般的に外周切刃と呼ばれる。そのため、以下の説明においては、上記位置の切刃5を外周切刃5と記載して説明する。
【0015】
一態様における外周切刃5は、
図1の拡大図である
図2に示すように波形となっている。なお、波形であるとは、山と谷とが繰り返される形状を意味する。言い換えれば、回転軸Xからの距離が相対的に長い部分と相対的に短い部分とが交互に現れる形状であることを意味する。外周切刃5の数は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。
図2に示す一例における外周切刃5の数は、4つである。
【0016】
らせん状の外周切刃5のねじれ角は、特定の値に限定されるものではなく、例えば3〜45°程度に設定してもよい。外周切刃5のねじれ角は、本体3を側面視した場合における外周切刃5と回転軸Xとのなす角度によって評価できる。また、外周切刃5のねじれ角は、先端3aの側から後端3bの側にかけて一定であってもよく、また途中で変化していてもよい。
【0017】
図2に示す一例における切削部9の外周には、らせん状の外周切刃5に沿って排出溝7が位置している。排出溝7は、外周切刃5によって生成される切屑を外部に排出するために用いることが可能である。そのため、排出溝7は、外周切刃5に対する回転方向Yの前方において、この外周切刃5に沿ってらせん状に位置していてもよい。
図2に示す一例においては、外周切刃5の数が4つであることから、排出溝7の数もまた4つである。回転軸Xに直交する断面における排出溝7の形状は、例えば、凹曲線形状、矩形またはV字型などにすればよい。
【0018】
実施形態の回転工具1は、回転軸Xの周りで回転した際の回転軌跡を、回転軸Xを含む平面で切断してなる仮想平面でみた場合における外周切刃5の形状に特徴の一つを有している。
【0019】
以下、外周切刃5の形状について
図3及び
図4を用いて説明する。
図4は、
図3の一部分を拡大した図である。回転工具1の回転軌跡を、回転軸Xを含む平面で切断してなる仮想平面でみた場合において、外周切刃5は、複数の凸曲線形状の第1部位13と、第1部位13のそれぞれに対して後端3bの側に続いて位置する凹曲線形状の第2部位15とを有している。また、第1部位13は、第1部位13における頂点を含む凸曲線形状の第1領域13aと、第1領域13a及び第2部位15の間に位置する凸曲線形状の第2領域13bとを有している。
【0020】
そして、複数の第1部位13の少なくとも1つは、第1領域13aの曲率半径R11が、第2領域13bの曲率半径R12よりも大きい構成である。複数の第1部位13のうち、R11>R12である部分を、部分Aとする。なお、
図4において、第1部位13に対して後端3bの側とは、第1部位13の右側のことである。
【0021】
一態様の回転工具1においては、先端3aの側から後端3bの側(
図4においては左側から右側)に向かって、第1領域13a、第2領域13b及び第2部位15が順に並んで位置している。外周側に向かって突出した凸曲線形状の第1部位13によって被削材を主に切削することが可能である。また、外周切刃5が、本体3の中心に向かって窪んだ凹曲線形状の第2部位15を有している。被削材を切削する際に、凹曲線形状の第2部位15の一部は被削材から離れて位置することが可能である。すなわち、第2部位15の中に部分的に被削材を切削しない箇所があってもよいため、この箇所で切削負荷が逃がされる。
【0022】
さらに、本態様における第1部位13が、上記の第1領域13aを有し、この第1部位13における頂点を含む領域での曲率半径が相対的に大きい。そのため、外周切刃5は優れた耐欠損性を有する。
【0023】
また、第1部位13が、第1領域13aと第2部位15との間に、曲率半径の相対的に小さい第2領域13bを有している場合には、第2領域13bの曲率半径が第1領域13aの曲率半径と比較して大きい若しくは同じであるときよりも、回転軸Xに沿った方向での幅が狭くなる。そのため、第1部位13が単に第1領域13aのみを有する構成と比較して、外周切刃5のピッチが狭いため切削抵抗が小さくなる。回転工具1が上記の構成を有している場合には、切削抵抗が小さいため、例えば、びびり振動などの影響が小さくなる。
【0024】
なお、本態様において、第1部位13における頂点とは、凸曲線形状の第1部位13のなかで回転軸Xから最も離れて位置する部分を意味する。
【0025】
外周切刃5は、複数の第1部位13及びこれらの第1部位13に隣接した第2部位15のみを備えるものであってもよいが、このような形状に限定されるものではない。例えば、外周切刃5が、第1部位13及び第2部位15の間において、これらの部位を接続する直線形状または曲線形状の部位をさらに備えていてもよい。なお、外周切刃5が、第1部位13及び第2部位15を接続する部位を有する場合においては、この部位が、第1部位13及び第2部位15の長さよりも短く、例えば、第1部位13及び第2部位15のそれぞれの長さに対して10%以下程度であってもよい。
【0026】
また、R11>R12を満たす部分Aが外周切刃5の全体における先端3aの側に位置している場合には、びびり振動が効果的に抑制される。びびり振動は、スピンドルにシャンク部11が把持される構成において、先端3aに近づくにつれて大きくなり易いが、先端3aの側に部分Aが位置している場合には、部分Aにおける切削抵抗が小さいため、びびり振動が効果的に抑制される。
【0027】
また、第1部位13は、第1領域13a及び第2領域13bのみを備え、第2領域13bが第1領域13aに隣接した形状であってもよいが、このような形状に限定されるものではない。例えば、第1部位13が、第1領域13a及び第2領域13bの間において、これらの領域を接続する直線形状または曲線形状の領域をさらに備えていてもよい。なお、第1部位13が、第1領域13a及び第2領域13bを接続する領域を有する場合においては、この領域が、第1領域13a及び第2領域13bの長さよりも短く、例えば、第1領域13a及び第2領域13bのそれぞれの長さに対して10%以下程度であってもよい。
【0028】
曲率半径R11及び曲率半径R12は、例えば、R11が0.5〜2.5mm、R12が0.2〜0.7mmの範囲に設定されてもよい。
【0029】
曲率半径R11は、例えば、外径Dに対して8〜13%程度に設定されてもよい。また、曲率半径R12は、例えば、外径Dに対して3〜6%程度に設定されてもよい。例えば、本体3の外径Dが10mmである場合においては、曲率半径R11は、0.8〜1.3mmに設定され、また、曲率半径R12は、0.3〜0.6mmに設定されてもよい。
【0030】
仮想平面において、複数の第1部位13は、隣りに位置する2つの第1部位13の1つである第1部位13Aと、第1部位13Aに対して後端3bの側に位置する第1部位13Bとを有していてもよい。このとき、第1部位13A及び第1部位13Bを1つの組とする。第1部位13A及び第1部位13Bを有する組の少なくとも1つにおいて、第1部位13Aにおける第1領域13a(以下、識別のため、第1領域13aAと記載する。)の曲率半径R11aが、第1部位13Bにおける第1領域13a(以下、識別のため、第1領域13aBと記載する。)の曲率半径R11bと異なっていてもよい。R11aとR11bとが異なる部分を以下、部分Bと記載する。第1領域13aA及び第1領域13aBにおいて、R11aとR11bとが異なる場合には、切削加工時に部分Bにおける振動モードが互いに異なるものとなり、お互いの振動が部分的に相殺されるため、びびり振動が抑制される。
【0031】
また、曲率半径R11aが、曲率半径R11bよりも大きくてもよい。外周切刃5が、R11a>R11bを満たす部分を以下、部分Cと記載する。外周切刃5が部分Cを有する場合には、先端3aの側に位置する第1領域13aAの曲率半径R11aが相対的に大きいことによって応力集中が緩和されるため、びびり振動が抑制され易くなる。
【0032】
また、第1領域13aBに対して、後端3bの側において隣りに位置する第1領域13a(以下、識別のため、第1領域13aCと記載する。)の曲率半径をR11cとしたとき、R11a、R11b及びR11cが互いに異なる場合には、お互いの振動がより相殺され易くなるため、さらにびびり振動が抑制される。
【0033】
このとき、上記3つの曲率半径R11a、R11b及びR11cは、R11a>R11b>R11cであってもよい。このように、隣りに位置する3つの第1領域13aのうち先端3aの側に位置するものほど曲率半径が大きくなっている場合には、びびり振動がより一層抑制される。
【0034】
また、第1部位13A及び第1部位13Bを有する組の少なくとも1つにおいて、第1部位13Aにおける第2領域13b(以下、識別のため、第2領域13bAと記載する。)の曲率半径R12aが、第1部位13Bにおける第2領域13b(以下、識別のため、第2領域13bBと記載する。)の曲率半径R12bと異なっていてもよい。R12aとR12bとが異なる部分を以下、部分Dと記載する。このように、第2領域13bA及び第2領域13bBの曲率半径が異なる場合には、切削加工時に部分Dにおける振動モードが互いに異なるものとなり、お互いの振動が部分的に相殺されるため、びびり振動が抑制される。
【0035】
また、曲率半径R12aが、曲率半径R12bよりも大きくてもよい。外周切刃5が、R12a>R12bを満たす部分を以下、部分Eと記載する。外周切刃5が部分Eを有する場合には、先端3aの側に位置する第2領域13bAの曲率半径R12aが相対的に大きいことによって応力集中が緩和されるため、びびり振動が抑制され易くなる。
【0036】
また、第2領域13bBに対して、後端3bの側において隣りに位置する第2領域13b(以下、識別のため、第2領域13bCと記載する。)の曲率半径をR12cとしたとき、R12a、R12b及びR12cが互いに異なる場合には、お互いの振動がより相殺され易くなるため、さらにびびり振動が抑制される。
【0037】
このとき、上記3つの曲率半径R12a、R12b及びR12cは、R12a>R12b>R12cであってもよい。このように隣りに位置する3つの第2領域13bのうち先端3aの側に位置するものほど曲率半径が大きくなっている場合には、びびり振動がより一層抑制される。
【0038】
また、仮想平面において、外周切刃5は、曲率半径R12が第2部位15の曲率半径R2よりも大きい部分を有していてもよい。このような場合には、外周切刃5のピッチが狭いため切削抵抗がさらに小さくなる。
【0039】
仮想平面において、外周切刃5は、第1部位13及び第2部位15に加え、さらに、複数の第1部位13のそれぞれに対して先端3aの側、すなわち
図4において左側に続いて位置する凹曲線形状の第3部位19を有していてもよい。また、第1部位13が、第1部位13における頂点を含む凸曲線形状の第1領域13a及び第3部位19の間に位置する凸曲線形状の第3領域13cを有していてもよい。さらに、複数の第1部位13の少なくとも1つにおいて、第1領域13aの曲率半径R11が第3領域13cの曲率半径R13より大きくてもよい。
【0040】
上記の場合には、先端3aの側から後端3bの側に向かって、第3部位19、第3領域13c及び第1領域13aが順に並んで位置する。外周切刃5が、本体3の中心に向かって窪んだ凹曲線形状の第3部位19を有する場合には、第2部位15と同様に第3部位19の中に部分的に被削材を切削しない箇所が設けられるため、この箇所で切削負荷が逃がされる。外周切刃5が第1部位13及び第2部位15に加え、第3部位19を有している場合には、部分的に被削材を切削しない箇所が増える。そのため、切削負荷がさらに小さい。また、ピッチはさらに狭くなる。
【0041】
さらに、第1部位13が、第1領域13aと第3部位19との間に、曲率半径の相対的に小さい第3領域13cを有している場合には、第3領域13cの曲率半径が第1領域13aの曲率半径と比較して大きい若しくは同じであるときよりも、回転軸Xに沿った方向での第1部位13の幅が狭くなる。そのため、第1部位13が単に第1領域13aのみを有する構成と比較して、外周切刃5のピッチが狭いため切削抵抗が小さくなる。回転工具1が上記の構成を有している場合には、切削抵抗が小さいため、例えば、びびり振動などの影響が小さくなる。
【0042】
外周切刃5は、第1部位13、第2部位15及び第3部位19のみを備え、第3部位19が第1部位13に隣接した形状であってもよいが、このような形状に限定されるものではない。例えば、外周切刃5が、第1部位13及び第3部位19の間において、これらの部位を接続する直線形状または曲線形状の部位をさらに備えていてもよい。なお、外周切刃5が第1部位13及び第3部位19を接続する部位を有する場合においては、この部位が、第1部位13及び第3部位19の長さよりも短く、例えば、第1部位13及び第3部位19のそれぞれの長さに対して10%以下程度であってもよい。
【0043】
また、R11>R12の関係及びR11>R13の関係を有する第1部位13、第2部位15及び第3部位19が外周切刃5の全体における先端3aの側に位置している場合には、びびり振動が効果的に抑制される。
【0044】
また、第1部位13は、第1領域13a、第2領域13b及び第3領域13cのみを備え、第3領域13cが第1領域13aに隣接した形状であってもよいが、このような形状に限定されるものではない。例えば、第1部位13が、第1領域13a及び第3領域13cの間において、これらの領域を接続する直線形状または曲線形状の領域をさらに備えていてもよい。なお、第1部位13が第1領域13a及び第3領域13cを接続する領域を有する場合においては、この領域が、第1領域13a及び第3領域13cの長さよりも短く、例えば、第1領域13a及び第3領域13cのそれぞれの長さに対して10%以下程度であってもよい。
【0045】
曲率半径R13は、例えば、0.2〜0.7mmの範囲に設定してもよい。曲率半径R13は、例えば、外径Dに対して3〜6%程度に設定してもよい。例えば、本体3の外径Dが10mmである場合においては、曲率半径R13は、0.3〜0.6mmに設定してもよい。
【0046】
図4に示す一例の仮想平面において、複数の第1部位13は、隣りに位置する2つの第1部位13の1つである第1部位13Aと、第1部位13Aに対して後端3bの側に位置する第1部位13Bとを有している。このとき、第1部位13A及び第1部位13Bを1つの組とする。第1部位13A及び第1部位13Bを有する組の少なくとも1つは、第1部位13Aにおける第3領域13c(以下、識別のため、第3領域13cAと記載する。)の曲率半径R13aが、第1部位13Bにおける第3領域13c(以下、識別のため、第3領域13cBと記載する。)の曲率半径R13bと異なっていてもよい。R13aとR13bとが異なる部分を以下、部分Fと記載する。隣りに位置する第3領域13cA及び第3領域13cBにおいて、R13aとR13bとが異なる場合には、切削加工時に部分Fにおける振動モードが互いに異なるものとなり、お互いの振動を部分的に相殺されるため、びびり振動が抑制される。
【0047】
また、曲率半径R13aが、曲率半径R13bよりも大きくてもよい。外周切刃5が、R13a>R13bを満たす部分を以下、部分Gと記載する。外周切刃5が部分Gを有する場合には、先端3aの側に位置する第3領域13cAの曲率半径R13aが相対的に大きいことによって応力集中が緩和されるため、びびり振動が抑制され易くなる。
【0048】
また、第3領域13cBに対して、後端3bの側において隣りに位置する第3領域13c(以下、識別のため、第3領域13cCと記載する。)の曲率半径をR13cとしたとき、R13a、R13b及びR13cが互いに異なる場合には、お互いの振動がより相殺され易くなるため、さらにびびり振動が抑制される。
【0049】
このとき、上記3つの曲率半径R13a、R13b及びR13cは、R13a>R13b>R13cであってもよい。このように、隣りに位置する3つの第3領域13cのうち先端3aの側に位置するものほど曲率半径が大きくなっている場合には、びびり振動がより一層抑制される。
【0050】
また、仮想平面において、外周切刃5は、曲率半径R13が第3部位19の曲率半径R3よりも大きい部分を有していてもよい。このような場合には、外周切刃5のピッチが狭いため切削抵抗はさらに小さくなる。
【0051】
仮想平面において、複数の第1部位13の少なくとも1つは、曲率半径R13が曲率半径R12よりも大きくてもよい。外周切刃5は、R13>R12を満たす部分を以下、部分Hと記載する。外周切刃5が部分Hを有する場合には、先端3aの側に位置する第3領域13cの曲率半径R13が相対的に大きいことから、びびり振動が抑制され易くなる。
【0052】
R12とR13とが同じ値であってもよい。R12=R13である場合には、第1部位13に加わる切削負荷が一部に集中することを避け易い。そのため、第1部位13の耐久性がさらに高まる。なお、R12とR13とが同じ値とは、厳密に同じ値である必要はない。R12がR13に対して95〜105%である場合を同じ値と見做す。
【0053】
本実施形態において、外周切刃5は波形となっており、複数の凸形状の部分と複数の凹形状の部分とが交互に位置する構成となっている。本実施形態においては、複数の凸形状の部分が第1部位13に対応しており、複数の凹形状の部分が第2部位15または第3部位19に対応している。
【0054】
このとき、1つの第1部位13を基準とした場合において、先端3aの側に位置する凹形状の部分が第3部位19であり、後端3bの側に位置する凹形状の部分が第2部位15であるが、基準となる第1部位13が、例えば、後端3bの側において隣りに位置する第1部位13となったときには、前基準における第2部位15が、新基準において第3部位19となる。
【0055】
本実施形態において、外周切刃5における波形が概ね同じの形状である場合には、外周切刃5は切削抵抗が小さく、全体として優れた耐欠損性を有する。
【0056】
本実施形態のように回転工具1が複数の外周切刃5を有する場合において、各々の外周切刃5の回転軌跡を仮想平面でみた際に、これらの外周切刃5の回転軌跡が重なり合っていないときには、被削材の加工面の平滑性が向上する。これは、複数の外周切刃5の1つにおける削り残しを他の外周切刃5によって切削できるからである。
【0057】
例えば、外周切刃5が、外周切刃5aと外周切刃5bの2つのときに、外周切刃5aの回転軌跡と、外周切刃5bの回転軌跡とが重なり合っていない場合には、外周切刃5aにおける削り残しを外周切刃5bによって切削できるため、被削材の加工面の平滑性が向上する。
【0058】
このとき、外周切刃5aの回転軌跡において隣りに位置する一対の第1部位13のそれぞれの頂点の間の中央に、外周切刃5bの回転軌跡において隣に位置する一対の第1部位13の頂点が位置するときには、外周切刃5aにおける削り残しを外周切刃5bによって効率良く切削できる。
【0059】
回転工具1は、
図5及び
図6に示すように、外周切刃5に加えて、本体3の先端3aに位置する先端切刃17を有していてもよい。先端切刃17を有している場合には、回転工具1を回転軸Xに直交する方向だけでなく回転軸Xに沿った方向に移動させながら、切削加工を行なってもよい。先端切刃17としては、例えば、センタ穴つきスクエアエンド刃、センタカットスクエアエンド刃、ボールエンド刃及びラジアスエンド刃などが挙げられる。
【0060】
本体3の材質としては、例えば、超硬合金あるいはサーメットなどが挙げられる。超硬合金の組成としては、例えば、WC−Co、WC−TiC−Co及びWC−TiC−TaC−Coが挙げられる。ここで、WC、TiC、TaCは硬質粒子であり、Coは結合相である。また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料である。具体的には、サーメットとして、炭化チタン(TiC)または窒化チタン(TiN)を主成分としたチタン化合物が挙げられる。
【0061】
本体3の表面は、化学蒸着(CVD)法、または物理蒸着(PVD)法を用いて被膜でコーティングされていてもよい。被膜の組成としては、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)またはアルミナ(Al
2O
3)などが挙げられる。
【0062】
<切削加工物の製造方法>
次に、実施形態の切削加工物の製造方法について、
図1に示す態様の回転工具1を用いる場合を例に挙げて詳細に説明する。以下、
図7〜
図9を参照しつつ説明する。
【0063】
(1)上記の実施形態に代表される回転工具1を回転軸Xの周りで回転させる工程と、
(2)回転している回転工具1における切刃(外周切刃)を被削材21に接触させる工程と、
(3)回転工具1を、被削材21から離す工程と、
を備えている。
【0064】
より具体的には、まず、
図7に示すように、回転工具1を回転軸Xの周りで回転させるとともに回転軸Xに直交するZ方向に移動させることによって、回転工具1を被削材21に相対的に近づける。次に、
図8に示すように、回転工具1における外周切刃を被削材21に接触させて被削材21を切削する。そして、
図9に示すように、回転工具1をさらにZ方向に移動させることによって、回転工具1を被削材21から相対的に遠ざける。
【0065】
本態様においては、被削材21を固定させるとともに回転軸Xの周りで回転工具1を回転させた状態で、回転工具1を被削材21に近づけている。また、
図8においては、回転している回転工具1の外周切刃を被削材21に接触させることによって、被削材21を切削している。また、
図9においては、回転工具1を回転させた状態で被削材21から遠ざけている。
【0066】
なお、本態様の製造方法における切削加工では、それぞれの工程において、回転工具1を動かすことによって、回転工具1を被削材21に接触させる、あるいは、回転工具1を被削材21から離している。当然ながらこのような形態に限定されるものではない。
【0067】
例えば、(1)の工程において、被削材21を回転工具1に近づけてもよい。同様に、(3)の工程において、被削材21を回転工具1から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、回転工具1を回転させた状態を維持して、被削材21の異なる箇所に外周切刃を接触させる工程を繰り返せばよい。
【0068】
なお、
図8では、Z方向に沿って回転工具1が移動していたが、この態様に限定されない。例えば、切刃が先端切刃を有する場合などにおいては、回転工具1が回転軸Xに沿った方向に移動しつつ切削を行なってもよい。
【0069】
被削材21の材質の代表例としては、アルミ、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄、または非鉄金属などが挙げられる。