(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788043
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】診断分析器において孔を開けて開封するように設計されたキャップ及びインダクションシール
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20201109BHJP
B65B 7/28 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
G01N35/02 B
B65B7/28 D
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-567941(P2018-567941)
(86)(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公表番号】特表2019-525149(P2019-525149A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】US2017038863
(87)【国際公開番号】WO2018005240
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年8月9日
(31)【優先権主張番号】62/357,911
(32)【優先日】2016年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ケゲルマン,ジェイムス ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ブレナン,ジョセフ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,ウィリアム イー.
【審査官】
三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−196560(JP,A)
【文献】
特開2013−066916(JP,A)
【文献】
特開平04−072193(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0120998(US,A1)
【文献】
特開2000−131326(JP,A)
【文献】
特開2015−114222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
B65B 7/00− 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外診断用医薬品(IVD)環境の診断分析器において用いられる試薬容器に蓋をする装置であって、
側壁及び頂壁を有し且つその頂壁に貫通アクセス孔を有すると共に、開口をもつ試薬容器の首部分に取り付けられるように構成されたキャップと、
前記試薬容器の首部分にある開口を封止するインダクションシールとを備え、
該インダクションシールは、
ポリマー材料からなる前記試薬容器の首部分の開口の外周面に熱融着して分子結合するポリマー材料からなる第1のポリマーシール層と、
該第1のポリマーシール層上に設けられ、前記第1のポリマーシール層を誘導加熱によって前記試薬容器の首部分の開口の外周面に熱融着させるように構成されたアルミニウム箔層と、
該アルミニウム箔層上に設けられ、前記アルミニウム箔層及び前記第1のポリマーシール層を保護するように構成された第2のポリマー層とを備え、
このインダクションシールにおいて、前記試薬容器に対する前記第1のポリマーシール層の熱誘導接着力が、前記アルミニウム箔層に対する前記第1のポリマーシール層の接着及び前記アルミニウム箔層に対する前記第2のポリマー層の接着の間の剥離力の大きさよりも大きく、
前記インダクションシールは、前記キャップの貫通アクセス孔を通して接触可能であり、前記試薬容器の首部分の開口の外周面に貼り付いたままで穿孔装置によって開封されると共に開封後の開封形状を保つように構成されている、装置。
【請求項2】
前記試薬容器に対する前記第1のポリマーシール層の熱誘導接着力が、前記アルミニウム箔層及び前記第2のポリマー層に穿孔するのに必要な剪断力よりも大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2のポリマー層と前記キャップとが異なるポリマー材料から形成されていることにより、該キャップを取り外す力が、前記試薬容器に対する前記第1のポリマーシール層の接着状態に影響しない、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記アルミニウム箔層は、誘導熱を前記第1のポリマーシール層及び前記第2のポリマー層に伝達する役割をもち、この伝達熱によって前記第1のポリマーシール層が前記試薬容器の首部分の開口の外周面に熱融着して分子結合しており、
前記アルミニウム箔層の物理特性により、前記第1のポリマーシール層及び前記第2のポリマー層は、開封後に開封形状を維持することが可能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のポリマーシール層の溶融温度が、前記第2のポリマー層の溶融温度よりも低い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のポリマーシール層はポリエチレンからなる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2のポリマー層はポリエチレンテレフタレートからなる、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記キャップの貫通アクセス孔を囲む前記頂壁の一部は、上側平坦領域と、孔側壁領域と、前記キャップの内部の下側突出領域とを有し、該下側突出領域が、前記誘導加熱時に、前記シールを前記キャップと前記試薬容器との間で適所に保持する押圧力を提供する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記キャップは、ねじ留めキャップ又はスナップ留めキャップのいずれかである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
体外診断用医薬品(IVD)環境の診断分析器において1つ以上の流体を保管する装置であって、
首側壁、開口、及び該開口の外周面をもつポリマー材料からなる首部分をそれぞれが有する1つ以上の保管部を備えた容器と、
側壁、頂壁、及び該頂壁の貫通アクセス孔をそれぞれが有し且つ前記容器の保管部の首部分に取り付けられるように構成された1つ以上のキャップと、
1つ以上のインダクションシールとを備え、
該1つ以上のインダクションシールは、それぞれが前記1つ以上のキャップの1つと前記1つ以上の保管部の1つとの対に対応し、前記容器の保管部の首部分の開口を封止し、
前記インダクションシールのそれぞれは、
前記保管部の首部分の開口の外周面に熱融着して分子結合するポリマー材料からなる第1のポリマーシール層と、
該第1のポリマーシール層上に設けられ、前記第1のポリマーシール層を誘導加熱によって前記保管部の首部分の開口の外周面に熱融着させるように構成されたアルミニウム箔層と、
該アルミニウム箔層上に設けられ、前記アルミニウム箔層及び前記第1のポリマーシール層を保護するように構成された第2のポリマー層とを備え、
このインダクションシールにおいて、前記容器に対する前記第1のポリマーシール層の熱誘導接着力が、前記アルミニウム箔層に対する前記第1のポリマーシール層の接着及び前記アルミニウム箔層に対する前記第2のポリマー層の接着の間の剥離力の大きさよりも大きく、
前記インダクションシールは、前記キャップの貫通アクセス孔を通して接触可能であり、前記保管部の首部分の開口の外周面に貼り付いたままで穿孔装置によって開封されると共に開封後の開封形状を保つように構成されている、装置。
【請求項11】
記容器に対する前記第1のポリマーシール層の熱誘導接着力が、前記アルミニウム箔層及び前記第2のポリマー層に穿孔するのに必要な剪断力よりも大きい、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のポリマー層と前記キャップとが異なるポリマー材料から形成されていることにより、該キャップを取り外す力が、前記容器に対する前記第1のポリマーシール層の接着状態に影響しない、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記アルミニウム箔層は、前記第1のポリマーシール層及び前記第2のポリマー層に誘導熱を伝達する役割をもち、この伝達熱によって前記第1のポリマーシール層が前記保管部の首部分の開口の外周面に熱融着して分子結合しており、
前記アルミニウム箔層の物理特性により、前記第1のポリマーシール層及び前記第2のポリマー層は、開封後に開封形状を維持することが可能であり、当該開封後の開口が、試薬プローブが前記第1のポリマーシール層に接触せずにアクセスすることを可能にするのに十分なサイズを保つ、請求項10〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のポリマーシール層の溶融温度が、前記第2のポリマー層の溶融温度よりも低い、請求項10〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のポリマーシール層がポリエチレンからなり、前記第2のポリマー層がポリエチレンテレフタレートからなる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記首部分は、前記首側壁に形成された首側壁ねじ山を有し、
前記キャップは、該キャップの内部側面に形成されたキャップねじ山を有し、
前記首側壁ねじ山及び前記キャップねじ山が互いに螺合して前記キャップを前記容器の保管部の首部分に取り付けるように構成されている、請求項10〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記1つ以上の保管部の各内容物に対し、前記キャップを取り外すことなく、前記キャップの貫通アクセス孔及び開封後の前記インダクションシールを通してアクセス可能である、請求項10〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記貫通アクセス孔を囲む前記頂壁の一部が、上側平坦領域と、孔側壁領域と、前記キャップの内部の下側突出領域とを有し、該下側突出領域が、前記誘導加熱時に、前記シールを前記キャップと前記容器の保管部との間で適所に保持する押圧力を提供する、請求項10〜17のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年7月1日に出願された米国仮特許出願62/357,911の優先権を主張し、この米国仮特許出願の全内容は本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、包括的には、診断分析器に用いられる容器のキャップ及びシールに関し、より詳細には、診断分析器に用いられる試薬容器の口を封止する取り外し可能なキャップをもつインダクションシーリングされた容器に関する。
【背景技術】
【0003】
キャップ、特に射出成形されたねじキャップが、ボトル等の容器を封鎖するために一般的に用いられる。キャップの主な機能は、容器の内容物を使用する段になるまで、封鎖された漏れのない状態に容器を保つことである。
【0004】
ねじキャップは、インダクションシール膜によって封止された容器に取り付けることができるように機能することが知られている。このようなキャップの内部には、容器の首部分頂部端面と前記膜の熱接着層との接触領域に圧力を印加する「エネルギー誘導」突起を備え得る。当該膜は、ポリエチレン及びポリプロピレン等の2つのポリマー層間にアルミニウム箔層を含む。下側ポリマー層は、アルミニウム箔層の誘導加熱によって、つまり下側ポリマー層を溶融して容器に接合することによって、容器の開口に貼り付けられる。当該シールは、容器の内容物を保護し、容器の漏れ防止封止を形成するべく機能する。容器の内容物へのアクセスは、キャップを取り外し、手動でインダクションシール膜を剥がすか又は穿孔することによって可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
診断分析器等の高スループットを必要とする自動プロセスにおいて用いる場合、キャップを手動で取り外して膜を剥がす/穿孔することは、作業員の負担になる時間の多さ及びクロスコンタミネーション(交叉汚染)をもたらす可能性に起因して、望ましくない。したがって、クロスコンタミネーション及び漏出の可能性を低減しながら、診断分析器において自動的に容器の内容物へアクセスできるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、頂部孔をもつ取り外し可能なキャップと、容器開口を封止する熱誘導封鎖機能をもつシールとを対象とする。
【0007】
一態様において、体外診断用医薬品(In Vitro Diagnostics:IVD)環境の診断分析器において用いられる試薬容器に蓋をする装置は、側壁及び頂壁を有し且つその頂壁に貫通アクセス孔を有すると共に開口をもつ試薬容器の首部分に取り付けられるように構成されたキャップと、前記試薬容器の首部分にある開口を封止するインダクションシールとを備える。該インダクションシールは、
ポリマー材料からなる前記試薬容器の首部分の開口の外周面に熱融着
して分子結合するポリマー材料からなる第1のポリマーシール層と、該第1のポリマーシール層上に設けられ、該第1のポリマーシール層を誘導加熱によって前記試薬容器の首部分の開口の外周面に熱融着させるように構成されたアルミニウム箔層と、該アルミニウム箔層上に設けられ、該アルミニウム箔層及び前記
第1のポリマーシール層を保護するように構成された第2のポリマー層とを備える。
このインダクションシールにおいては、前記試薬容器に対する前記第1のポリマーシール層の熱誘導接着力が、前記アルミニウム箔層に対する前記第1のポリマーシール層の接着及び前記アルミニウム箔層に対する前記第2のポリマー層の接着の間の剥離力の大きさよりも大きい。当該インダクションシールは、前記キャップの貫通アクセス孔を通して接触可能であり、前記試薬容器の首部分の開口の外周面に貼り付いたままで穿孔装置によって開封されると共に開封後の開封形状を保つように構成されている。
【0008】
一態様によれば、体外診断用医薬品(IVD)環境の診断分析器において1つ以上の流体を保管する装置は、首側壁、開口、及び該開口の外周面をもつ
ポリマー材料からなる首部分をそれぞれが有する1つ以上の保管部を備えた容器と、側壁、頂壁、及び該頂壁の貫通アクセス孔をそれぞれが有し且つ前記容器の保管部の首部分に取り付けられるように構成された1つ以上のキャップと、1つ以上のインダクションシールとを備え、該1つ以上のインダクションシールは、それぞれが前記1つ以上のキャップの1つと前記1つ以上の保管部の1つとの対に対応し、前記容器の保管部の首部分の開口を封止する。当該インダクションシールのそれぞれは、前記保管部の首部分の開口の外周面に熱融着
して分子結合するポリマー材料からなる第1のポリマーシール層と、該第1のポリマーシール層上に設けられ、該第1のポリマーシール層を誘導加熱によって前記保管部の首部分の開口の外周面に熱融着させるように構成されたアルミニウム箔層と、該アルミニウム箔層上に設けられ、該アルミニウム箔層及び前記
第1のポリマーシール層を保護するように構成された第2のポリマー層とを備える。
このインダクションシールにおいては、前記容器に対する前記第1のポリマーシール層の熱誘導接着力が、前記アルミニウム箔層に対する前記第1のポリマーシール層の接着及び前記アルミニウム箔層に対する前記第2のポリマー層の接着の間の剥離力の大きさよりも大きい。該インダクションシールは、前記キャップの貫通アクセス孔を通して接触可能であり、前記保管部の首部分の開口の外周面に貼り付いたままで穿孔装置によって開封されると共に開封後の開封形状を保つように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の上記態様及び他の態様は、添付図面を参照して説明される以下の詳細な説明から最もよく理解される。本発明を例示するために、現時点で好ましい実施形態を図面には示す。ただし、開示する特定の手段に本発明が限定されないのはもちろんのことである。図面は次の各図を含む。
【
図1】一実施形態に係るキャップ及びシールを示す。
【
図2】一実施形態に係るキャップ及びシールを示す。
【
図5】一実施形態に係る容器開口封止シールを有する容器の一例を示す。
【
図6】一実施形態に係るキャップ及びシールを有し且つそのシールが開封されている容器を例示する。
【
図7】一実施形態に係る開封されたシールをもつ容器を例示する。
【
図8】本発明を実施可能な一実施形態に係るシステムアーキテクチャの例を示すレイアウト図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態は、頂部孔をもつ取外し可能なキャップと、容器開口を封止する熱誘導封鎖機能をもつシールとを対象にする。ここに示す実施形態によるキャップ及びシールは、診断分析器において用いた場合に、プローブが容器の内容物にアクセスできる状態とするために取り外す必要はなく、したがって、作業員がキャップを取り外してシールを剥がすか又は穿孔するステップを排除することができるので、有利である。本実施形態によれば、キャップとシールの組合せの自動開封は、キャップを容器から取り外さずにシールに穿孔することによって行われる。シールは、プローブが障害無く非接触で容器の内容物にアクセスするのに必要な開封形状を保持することが有利である。クロスコンタミネーション及び液面検知問題に対しては、容器の内容物以外の表面にプローブが意図せず接触することを防止することによって対処される。
【0011】
本実施形態は、診断又は臨床分析器において用いられる試薬容器に関して記載されているが、本発明はそれに限定されない。ここに説明するキャップ及びシールは、容器のシールを開封して容器に含まれる内容物にアクセスすることが想定される各種の環境において用いることができる。
【0012】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態に係るキャップ100及びシール150の特徴が示されている。
図1は、キャップ100及びシール150の上方から見た斜視図であり、
図2は、キャップ100及びシール150の下方から見た斜視図である。
【0013】
キャップ100は、側壁110及び頂壁120から構成される。側壁110及び頂壁120は、キャップ100の内部130(
図2を参照)を画定する。
【0014】
側壁110と頂壁120の一部は、
図1及び
図2の実施形態に示すように、外面に一連のリッジ(稜線)112を有し、キャップ100の把持を補助することができる。ただし、キャップ100はこの形態に限定されず、側壁110及び頂壁120のいずれか又は両方は、滑らかな外面又は他の表面形状を代わりに有するものでもよい。
【0015】
図1及び
図2を引き続き参照すると、貫通アクセス孔122が、キャップ100の頂壁120に貫通して形成されている。本実施形態における貫通アクセス孔122は、頂壁120における中心孔である。貫通アクセス孔122を囲む頂壁120の一部は、上側平坦領域124(
図1を参照)と、孔側壁領域126(
図1及び
図2を参照)と、下側突出領域128(
図2を参照)とを備えている。
【0016】
図2に示されているように、キャップ100の内部側面140は、後述するようにキャップ100を容器に装着する、ねじ山142及び1つ以上のタブ144のいずれか又は両方を有する。キャップ100は、内部側面140の当該形態には限定されず、他の設計、例えば、キャップ100を容器にスナップ留めする構成要素を有する内部側面140等を代わりに使用してもよい。
【0017】
本実施形態において、キャップ100は、限定するものではないが、高密度ポリプロピレン等のポリプロピレンにより形成される。
【0018】
図1及び
図2に示されているように、シール150は、1つ以上の突出タブ152を有する概略円形状である。タブ152は、概略正方形又は長方形の形状とすることができるが、他の実施形態として他の形状(例えば、三角形)を使用することもできる。タブ152が含まれない実施形態も可能である。当該実施形態の場合、円形状のシール150は、容器への取り付けに適合するようにより大きな直径とすることができる。
【0019】
図3は、本実施形態に係るシール150の詳細を示す図である。本実施形態によれば、シール150は3つの層、すなわち、容器への熱融着が可能な熱融着性ポリマーを含む第1の(下側)ポリマーシール層160と、第1のポリマーシール層160の上に配置され、アルミニウムの誘導加熱によって第1のポリマーシール層160を熱融着させるアルミニウム箔を備えたアルミニウム箔(中間)層170と、アルミニウム箔層170の上に配置され、アルミニウム箔層170及び第1のポリマーシール層160を保護するように構成された第2の(上側)ポリマー層180とから構成される。
【0020】
3つの層160,170,180のそれぞれは、1つ以上の突出タブ162,172,182を有する。
【0021】
本実施形態において、第1のポリマーシール層160はポリエチレンからなり、第2のポリマー層180はポリエチレンテレフタレートからなる。本実施形態のポリエチレンテレフタレートを含む第2のポリマー層180は、アルミニウム箔層170に積層される。
【0022】
図4は、キャップ100及びシール150と一緒に使用可能な容器200を例示する。ただし、他のタイプの容器や容器200の派生形態を用いてもよく、キャップ100及びシール150は、ここに例示する容器200での使用に限定されない。例示する試薬容器の詳細な特徴は、国際出願PCT/US2014/019078において提供されており、このPCT特許出願の全内容は本明細書に援用される。
【0023】
図4に示されているように、本実施形態に係る容器200は、例えば診断分析器における特定のオンボード(機器内)診断検査用の流体(例えば、試薬流体)又は他の物質(例えば、粉体)を保持するように構成された2つの保管部(又はパック)210,220を備えている。把持部分230が2つの保管パック210,220の間に延在し、本実施形態の把持部分230は実質的に平坦な表面であるが、1つ以上の突出部又は把持部を形成したものとしてもよい。
【0024】
本実施形態によれば、各保管部210,220は、キャップ100及びシール150を取り付けることができる首部分211,221を有する。首部分211は、開口212と、首側壁213と、首側壁213の頂面214(すなわち、開口212の外周面)とを有する。キャップ100の内部側面140のねじ山142と螺合する首側壁ねじ山215を、首側壁213に形成する。上述したように、容器200及びキャップ100はねじ山付き形態に限定されず、キャップ100と容器200とを嵌め合わせるための他の構成要素又は特徴形状(例えば、スナップ留め構成要素等)をぞれぞれが代わりに有していてもよい。この首部分211と同様に、もう一つの首部分221も、開口222と、首側壁223と、首側壁223の頂面224(すなわち、開口222の外周面)とを有する。キャップ100の内部側面140のねじ山142と螺合する首側壁ねじ山225を、首側壁223にも形成する。
【0025】
当然ながら、
図4に示すと共に
図4を参照して本欄に説明してある容器200は、単なる例示であり、ここに開示するキャップ100及びシール150を限定するものではない。本実施形態に係るキャップ100及びシール150と一緒に用いられる容器は、例えば単一の保管部を有するものであり得る。さらに、容器200又はその派生形態は、診断分析器において用いられる試薬流体を保管するのに用いられることが必須ではない。
【0026】
図5は、本実施形態に係るシール150a,150bを貼り付けた容器200を例示し、シール150a,150bはそれぞれ首側壁213,223の頂面214,224に貼り付けられて開口212,222に蓋をしている。
【0027】
図6は、本実施形態に係る容器200を例示し、キャップ100a,100bが首部分211,221に取り付けられており、且つ首側壁213,223の頂面214,224にそれぞれ貼り付けられて開口212,222に蓋をしていたシール155a,155bが穿孔されている。
図6に示されているように、開封後のシール155a,155b(穿孔ツールによって穿孔されたシール150a,150b)は、当該開封で開いたシール155a,155bの開口156a,156bを介する容器200の内容物へのアクセスを可能にする。図示のように、容器200の開口212,222へは、開封後のシール155a,155bの開口156a,156bを通しキャップ100a,100bの貫通アクセス孔122a,122bを経て、アクセス可能である。
【0028】
図7は、本実施形態に係る容器200を、キャップ100a,100bを取り外して開封後のシール155a,155bが残っている状態で示す。
【0029】
本実施形態によれば、第1のポリマーシール層160は、熱エネルギーの印加(アルミニウム箔層170の誘導加熱に由来する)と、押圧力(キャップ100に由来する、具体的には、封止過程においてキャップ100と容器200の首部分211,221の頂面214,224との間に挟んでキャップ100内適所にシール150を保持するキャップ100の下側突出領域128に由来する)とによってシール接着機能を実行し、第1のポリマーシール層160及び容器200の適合した材料組成によって、第1のポリマーシール層160と容器200との分子結合をもたらす。
【0030】
本実施形態によれば、アルミニウム箔層170は、次のように作用する。すなわち、ポリエチレン製の第1のポリマーシール層160及び第2のポリマー層180に誘導熱を伝達し、第1のポリマーシール層160を容器200の首部分211,221の頂面214,224に熱融着により分子結合させる。そして、当アルミニウム箔層170の変形可能性と形状「記憶」特性により、形状維持能力、つまり、第1のポリマーシール層160及び第2のポリマー層180を「開封された状態に維持する」能力がもたらされる。
【0031】
本実施形態によれば、第2のポリマー層180が、キャップ100と、シール150と、容器200とを取り巻く外部環境に曝露されるので、当該第2のポリマー層180により、第1のポリマーシール層160及びアルミニウム箔層170を、周囲又は外部への曝露による汚染に関連した劣化から守る保護層が提供される。したがって、第2のポリマー層180は、周囲環境、蒸気、及び水に耐性のあるシールである。
【0032】
本実施形態によれば、容器200に対する第1のポリマーシール層160の熱誘導接着力(すなわち、保持力)は、第2の層170に対する第1の層160の接着及び第3の層180に対する第2の層170の接着の間を剥がす剥離力の大きさよりも大きい。
【0033】
本実施形態において、第1のポリマーシール層160の保持力は、アルミニウム箔層170及び第2のポリマー層180に穿孔するのに必要な剪断力よりも大きい。
【0034】
本実施形態に係る第2のポリマー層180は、キャップ100とは異なる
ポリマー材料から形成される。本実施形態において、第2のポリマー層180及びキャップ100は、その材料の違いに基づいて、
キャップ100を取り外す力が、容器200に対
する第1のポリマーシール層160
の接着状態に影響しないように構成される。キャップ100と、箔層170と、ポリマーシール層160と、ポリマー層180との間の材料の違いにより、キャップ100が分離され、誘導過程でキャップ100がシール150に接着することは防止される。
【0035】
本実施形態において、第1のポリマーシール層160の溶融温度は、第2のポリマー層180の溶融温度よりも
低い。
【0036】
図7に示されているように、容器200からキャップ100a,100bを取り外すことが、開封後のシール155a,155bに損傷を与えたり、そうでなくても何らかの影響を与えたりすることはなく、したがって、キャップ100a,100bを緩めることに起因する漏れが防止されると共に、シール150a,150b又は開封後のシール155a,155bは容器200に貼り付いている状態に保たれる。シール150a,150bの穿孔の結果、プローブ又は器具が開封後のシール155a,155bに接触することのない、完全に開放された容器200の内容物へのアクセスが達成される。
【0037】
本実施形態によれば、シール150は、キャップ100の内部130に位置決めされる。キャップ100は、容器200の首部分211,221に取り付けられ、そして、キャップ100及びシール150は、キャップ100の突出領域128によって、首側壁213,223の頂面214,224(すなわち、開口212,222の外周面)へ当接する。キャップ100及びシール150は、当業者に既知の方法に従って誘導熱源に曝露される。シール150のアルミニウム箔層170は、第1のポリマーシール層160に熱を伝達し、シール150を容器200の首側壁213,223の頂面214,224に接合する。本実施形態によれば、当該熱誘導は、第1のポリマーシール層160を隙間が空かないようにして連続して当接させることにより、第1のポリマーシール層160を双方の表面(すなわち、容器首部分211,221の頂面214,224及び第1のポリマーシール層160の下面)から分子結合させる、というものである。アルミニウム箔層170に熱を印加することにより、シール層160のポリマー表面が溶融し、ポリプロピレン製のシール層160がポリプロピレン製の容器の首部分頂面214,224に分子結合されることになる。熱誘導後にキャップ100を取り外しても、容器200の封止面に隙間が空いたり、該封止面を損なったりすることはなく、封止は、穿孔装置によって穿孔され(突き破られ)るまでその状態を保つ。開封ツール又は穿孔装置の貫通によってシール150を穿つことにより、シール150の下向き屈曲形状がもたらされ(すなわち、
図6及び
図7に示されている開封後シール155a,155b)、シール積層のアルミニウム箔層170の張力によって開封状態が保たれる。シール150の穿孔は自動で行うことができるが、作業員がハンドツールを用いることにより手動で行うこともできる。
【0038】
本実施形態によれば、シール150の穿孔にキャップ100の取り外しは必要なく、一度穿孔してしまえばアルミニウム箔層170は、開口156の開封形状を保持し、容器200の内容物に引き続きアクセスすることができる。シール150の貫通は、開封後シール開口156の形成とそのサイズの調節をもたらす。貫通アクセス孔122のサイズのみによって限定される屈曲アクセスフランジ(すなわち、開封後のシール155の開口156)は、開口を維持し且つプローブ又は他の器具が開封後のシール155に接触することを防ぐ物理的方法となる(一例において、貫通アクセス孔122は、プローブの1.5mm直径に対して9.1mmの開口径を有する)。アルミニウムの突出片が、シール150の分割を維持し、開封後のシール開口156の戻り又は再閉鎖を防ぎ、これにより、シール150上に付着した吸引物及び霧化粒子に対するプローブの接触汚染を排除する。シール150は、容器の首部分頂面214,224に貼り付けられた状態を維持し、キャップ100が取り外されるときでも無傷のままである。容器200を空にすることを含めて容器200へのプローブの繰り返しのアクセスは、アクセス中のプローブにシール150が干渉することなく行われる。
【0039】
ここに開示する、容器200に蓋をすると共に容器200に含まれる内容物へのアクセスを可能するキャップ100とシール150との組合せは、種々の利点を有する。すなわち、シール150が内容物を消耗及び漏出から保護し、作業員による漏出が低減され、汚染の発生が低減され、使いやすさ及び操作性が向上する。さらに、プローブの予期せぬ汚染に起因した機器エラーが防止され、顧客に対し信頼性及び性能の向上につながる。容器200が試薬のために用いられる診断分析器の例において、試薬プローブのために容器シール150を自動開封して準備することは、シールによる障害のない大きなアクセスターゲット(すなわち、開封後のシールの開口156a,156b)を形成することによって、試薬プローブ装填の単一又は全サイクルにおいて機器性能に価値を付加する。プローブがシール材料に接触することから生じる利用不能時間が排除される。試薬プローブのアクセスの信頼性の向上と、現在作業員が負担している過大な時間の排除とによって、顧客利益が増大する。
【0040】
図8は、本発明を実行可能なシステムアーキテクチャ800の一実施形態についてレイアウトをします。
図8には、それぞれプローブを備えた種々の移送アーム810(810a,810b,810c,810d)と、1つ以上の希釈リングに配列された複数の希釈容器を備える希釈ターンテーブル820と、1つ以上の反応リングに配列された複数の反応容器を備える反応ターンテーブル830と、複数の試薬容器のための置き場をそれぞれが有し、試薬の保管及び供給に専従する試薬保管領域840a,840bとが示されている。運転時、移送アーム810a及びそのプローブは、サンプルをアクセス位置から希釈ターンテーブル820上の1つ以上の希釈容器に移送し、希釈容器内で希釈液を生成するように動作する。移送アーム810b及びそのプローブは、希釈容器からの希釈液を、反応ターンテーブル830上の反応容器に移送するように動作する。移送アーム810c,810d及びその各プローブは、試薬保管領域840a,840bのそれぞれから反応ターンテーブル830上の反応容器に試薬を移送するように動作する。例えば、移送アーム810に取り付けられた容積型ポンプ等のポンプ機構(図示せず)を用いて、様々な移送が行われる。さらに、システムアーキテクチャ800は、移送アーム810、プローブ、及びターンテーブルを含む種々の構成要素の動作を制御する1つ以上の制御装置(図示せず)を備える。
【0041】
システムアーキテクチャ800には、1つ以上の容器200を試薬保管領域840a,840bへ/から移送する、試薬ハンドリングシステム850も含まれている。本実施形態の試薬ハンドリングシステム850は、試薬サーバーモジュール855を備え、試薬サーバーモジュール855は、一例として、試薬容器200を保管する1つ以上のインデックス化リングを備える冷却式の保管筐体である。
【0042】
トレイ860は、試薬サーバーモジュール855へ及び試薬サーバーモジュール855から移送するために1つ以上の容器200を保持するように構成されている。トレイ860は、作業員が、容器200のトレイ860に対する手動での装填及び取出のためにアクセス可能である。トレイ860は、トラック上を移動する。
【0043】
本実施形態において、グリッパアセンブリ865が、(ここに開示の実施形態に係るキャップ100及びシール150を備える)容器200を、トレイ860と試薬サーバーモジュール855との間で自動的に移送するために設けられる。グリッパアセンブリ865は、容器200を移送するために容器200を把持しながら、水平方向移送アーム870に沿って移動する。本実施形態において、グリッパアセンブリ865は、垂直方向に向けられた互いに対向する一対のグリッパフィンガーを備え、このグリッパーフィンガー対が、容器200の一部を把持して、取り付けられたキャップ100を取り外すことなく、容器200に貼り付けられたシール150に穿孔する。
【0044】
図8のシステムアーキテクチャ800及び付随する説明は、単なる例示であり、ここに開示するキャップ100及びシール150に対する限定を表すものではない。システムアーキテクチャ800は、キャップ100及びシール150を用いることができるシステムの1つの例にすぎない。
【0045】
本発明について実施形態を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の好適な実施形態に対して種々の変更及び修正を行うことができること、及び、そのような変更及び修正を本発明の思想から逸脱することなく行うことができることは、当業者にとって当然のことである。特許請求の範囲は、本発明の思想及び範囲内に入る全ての等価な派生をカバーすると解釈されるべきである。