特許第6788059号(P6788059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6788059履物の緊締構造およびそれを用いたシューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788059
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】履物の緊締構造およびそれを用いたシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
   A43B23/02 104
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-66525(P2019-66525)
(22)【出願日】2019年3月29日
(65)【公開番号】特開2020-162885(P2020-162885A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】本多 家将
(72)【発明者】
【氏名】為金 貴大
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2019−535375(JP,A)
【文献】 実公昭32−7717(JP,Y2)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0000116(US,A1)
【文献】 特表2019−528840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/00−23/30
A43C 11/00−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引っ張り力により履物を着用した着用者の足を保持するための締結部材と、
内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置された第1案内部材と、
前記第1案内部材の後方に配置され、内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置された第2案内部材と、
足長方向において前記第1案内部材と前記第2案内部材との間に配置され、内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置された第3案内部材と、を備え、
前記第1〜第3案内部材の各々は、
固定端部と該固定端部よりも足幅方向の中央寄りに位置する自由端部とを含む本体部と、
前記自由端部が位置する側に配置され、前記締結部材を挿通可能な挿通部と、を有し、
内甲側の前記第1案内部材の前記挿通部、外甲側の前記第3案内部材の前記挿通部、および内甲側の前記第2案内部材の前記挿通部の順に、内甲側に位置する前記締結部材の中途部が挿通されており、
外甲側の前記第1案内部材の前記挿通部、内甲側の前記第3案内部材の前記挿通部、および外甲側の前記第2案内部材の前記挿通部の順に、外甲側に位置する前記締結部材の中途部が挿通されており、
内甲側の前記第3案内部材と外甲側の前記第3案内部材とは、足長方向から見たときに、足長方向に沿って互いに重なっており、
前記締結部材は、内甲側および外甲側のそれぞれに位置する中途部が、足幅方向において互いに交わることなく、足長方向の成分を含む方向に沿って延びるように案内されている、履物の緊締構造。
【請求項2】
請求項1に記載の履物の緊締構造において、
前記第3案内部材の前記挿通部は、足幅方向略中央において、該第3案内部材の反対側に位置する前記第1案内部材の前記挿通部と前記第2案内部材の前記挿通部とを結ぶ仮想線の近傍に配置されている、履物の緊締構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の履物の緊締構造において、
前記第3案内部材は、前記本体部が着用者の足の甲部に対して面接触するように構成されている、履物の緊締構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の履物の緊締構造において、
前記第3案内部材の前記挿通部は、足長方向に沿って延びる中空形状を有している、履物の緊締構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の履物の緊締構造において、
前記締結部材に対して引っ張り力を付与しかつ該引っ張り力を調整するための締結器具をさらに備えた、履物の緊締構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の履物の緊締構造を備えるシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の緊締構造およびそれを用いたシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、引っ張り力により着用者の足を保持するための靴紐を備えたシューズの緊締構造として、例えば特許文献1のようなシューズの緊締構造が提案されている。
【0003】
この特許文献1には、アッパーに設けられた一対の紐折り返し部と、該紐折り返し部に案内される靴紐と、を備えたシューズの緊締構造が開示されている。各紐折り返し部は、足長方向において互いに離間した一対の紐通し部により構成されている。靴紐は、一つの紐折り返し部における一対の紐通し部に順次通されていて、別の紐折り返し部における一対の紐通し部に順次通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5523404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の緊締構造において、靴紐は、その中途部が、各紐折り返し部における一対の紐通し部に挿通されかつ交差状に折り返されるように案内されている。これにより、靴紐に引っ張り力を付与した緊締状態では、交差状に折り返された靴紐の中途部が、シューズを着用した着用者の足を保持するようになっている。
【0006】
一方、特許文献1の緊締構造において、靴紐の中途部には、各紐折り返し部(一対の紐通し部)に保持されている位置に局所的な屈曲部分が多数存在している。このため、上記屈曲部分に摩擦抵抗が生じやすくなり、靴紐に付与される引っ張り力が靴紐に対し直接的に伝わりにくくなる。すなわち、上記引っ張り力が靴紐の全体に対して均等に伝わりにくくなる。具体的に、上記引っ張り力を強めたときに、靴紐の中途部が緊締されにくくなる。また、緊締状態から上記引っ張り力を弱めたときに、上記引っ張り力が直ちに開放されず、靴紐の中途部が緩みにくくなる。その結果、シューズの着脱が容易ではなくかつ着脱に要する時間がかかっていた。このように、特許文献1の緊締構造では、締結部材の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができなかった。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、着用者の足に対するホールド性を損なわずに、締結部材の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の形態は履物の緊締構造に係るものであり、この履物の緊締構造は、引っ張り力により履物を着用した着用者の足を保持するための締結部材と、内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置された第1案内部材と、第1案内部材の後方に配置され、内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置された第2案内部材と、足長方向において第1案内部材と第2案内部材との間に配置され、内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置された第3案内部材と、を備えている。第1〜第3案内部材の各々は、固定端部と該固定端部よりも足幅方向の中央寄りに位置する自由端部とを含む本体部と、自由端部が位置する側に配置され、締結部材を挿通可能な挿通部と、を有している。内甲側の第1案内部材の挿通部、外甲側の第3案内部材の挿通部、および内甲側の第2案内部材の挿通部の順に、内甲側に位置する締結部材の中途部が挿通されている。外甲側の第1案内部材の挿通部、内甲側の第3案内部材の挿通部、および外甲側の第2案内部材の挿通部の順に、外甲側に位置する締結部材の中途部が挿通されている。内甲側の第3案内部材と外甲側の第3案内部材とは、足長方向から見たときに、足長方向に沿って互いに重なっている。そして、締結部材は、内甲側および外甲側のそれぞれに位置する中途部が、足幅方向において互いに交わることなく、足長方向の成分を含む方向に沿って延びるように案内されていることを特徴とする。
【0009】
第1の形態において、内甲側の第3案内部材と外甲側の第3案内部材とは、足長方向から見たときに、足長方向に沿って互いに重なっている。これにより、内甲側に位置する第3案内部材と外甲側に位置する第3案内部材とが、足幅方向において途切れずに連続するようになる。このため、締結部材に引っ張り力を付与した緊締状態では、第3案内部材により着用者の足をしっかり保持することが可能となる。
【0010】
また、第1の形態において、締結部材は、内甲側および外甲側のそれぞれに位置する中途部が、足幅方向において互いに交わることなく、足長方向の成分を含む方向に沿って延びるように構成されている。かかる構成により、上記中途部は、足長方向に沿って真っ直ぐに延びた状態に近づくようになる。このため、締結部材の上記中途部と第1〜第3案内部材の各々の挿通部との間で摩擦抵抗が生じにくくなり、締結部材に付与される引っ張り力が締結部材の上記中途部に対して直接的に伝わりやすくなる。すなわち、上記引っ張り力が締結部材の全体に対して均等に伝わりやすくなる。その結果、上記引っ張り力を強めることにより、締結部材がより強く緊締されるようになる。一方、緊締状態から上記引っ張り力を弱めることにより、上記引っ張り力が直ちに開放されて、締結部材が緊締状態から緩みやすくなる。このように、緊締構造では、締結部材を締め付けることおよび緩めることが容易となる。そして、着用者による履物の着脱が容易となりかつ着脱に要する時間が短縮される。
【0011】
したがって、第1の形態では、着用者の足に対するホールド性を損なわずに、締結部材の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0012】
第2の形態は、第1の形態において、第3案内部材の挿通部は、足幅方向略中央において、該第3案内部材の反対側に位置する第1案内部材の挿通部と第2案内部材の挿通部とを結ぶ仮想線の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0013】
この第2の形態では、第1〜第3案内部材の各々の挿通部に挿通される締結部材の上記中途部が足長方向に沿って真っ直ぐに延びた状態に近づくようになる。このため、締結部材に付与される引っ張り力が締結部材の上記中途部に対して直接的に伝わりやすくなり、締結部材の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0014】
第3の形態は、第1または第2の形態において、第3案内部材は、本体部が着用者の足の甲部に対して面接触するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
この第3の形態では、第3案内部材の本体部が着用者の足の甲部に対して面接触することから、締結部材の緊締状態において、第3案内部材の本体部により着用者の足の甲部に対するフィット性を高めることができる。特に、内甲側および外甲側のそれぞれに位置する第3案内部材では、各々の本体部において挿通部と連続する部分同士が足長方向に沿って重なっていることから、この重なり部分が足の甲部を包み込むように適切に保持することにより、着用者の足の甲部に対するフィット性がより一層高められている。
【0016】
第4の形態は、第1〜第3のいずれか1つの形態において、第3案内部材の挿通部は、足長方向に沿って延びる中空形状を有していることを特徴とする。
【0017】
この第4の形態では、第3案内部材の挿通部が足長方向に沿って延びる中空形状であることから、第3案内部材の挿通部に挿通される締結部材の上記中途部を足長方向に沿わせやすくなる。このため、締結部材に付与される引っ張り力が締結部材の上記中途部に対して直接的に伝わりやすくなり、締結部材の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0018】
第5の形態は、第1〜第4のいずれか1つの形態において、締結部材に対して引っ張り力を付与しかつ該引っ張り力を調整するための締結器具をさらに備えたことを特徴とする。
【0019】
この第5の形態では、締結器具を操作することにより、締結部材の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0020】
第6の形態は、第1〜第5の形態のいずれか1つの履物の緊締構造を備えるシューズである。
【0021】
この第6の形態では、上記第1〜第5の形態と同様の作用効果を奏するシューズを得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によると、着用者の足に対するホールド性を損なわずに、締結部材の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る緊締構造を備えたシューズを示す平面図である。
図2図2は、シューズを外甲側から見て示す斜視図である。
図3図3は、シューズを内甲側から見て示す斜視図である。
図4図4は、シューズを外甲側から見て示す側面図である。
図5図5は、緊締構造の構成を概略的に示す平面図である。
図6図6は、変形例1に係る緊締構造の構成を概略的に示す図5相当図である。
図7図7は、変形例2に係る緊締構造の構成を概略的に示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1図4は、本発明の実施形態に係る緊締構造10およびそれを備えたシューズ1(履物)の全体を示している。このシューズ1は、例えばランニング用や各種競技用のスポーツシューズ、日常使用のスニーカーおよびリハビリ用シューズとして使用される。
【0026】
ここで、シューズ1は、左足用シューズのみを例示している。右足用シューズは、左足用シューズと左右対称になるように構成されているので、以下の説明では左足用シューズのみについて説明し、右足用シューズの説明は省略する。
【0027】
また、以下の説明において、上側および下側とはシューズ1の上下方向の位置関係を表し、前方(前側)および後方(後側)とはシューズ1の足長方向(前後方向)の位置関係を表し、内甲側および外甲側とはシューズ1の足幅方向の位置関係を表すものとする。
【0028】
(アウトソール)
図1図4に示すように、シューズ1は、アウトソール2を有している。アウトソール2は、ミッドソール3よりも高硬度の硬質弾性部材で構成されており、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材が適している。
【0029】
(ミッドソール)
シューズ1は、ミッドソール3を有している。ミッドソール3は、軟質の弾性材からなり、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、ブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体などが適している。ミッドソール3は、接着剤などによりアウトソール2の上側に積層配置されている。
【0030】
(アッパー本体)
図1図4に示すように、シューズ1は、着用者の足を覆うためのアッパー本体4を備えている。アッパー本体4の下部周縁は、ミッドソール3の周縁全体に接着剤などで一体的に固着されている。
【0031】
アッパー本体4の上部には、着用者の足を挿入するための足挿入部5が設けられている。また、アッパー本体4の上部には、足挿入部5に連通して前後方向に延びる開口部6が形成されている。開口部6には、着用者の足の後部を保護するための舌片部7が設けられている。舌片部7は、アッパー本体4と一体的に形成されている。
【0032】
(緊締構造)
図1図5に示すように、緊締構造10は、締結部材11を備えている。締結部材11は、シューズ1(履物)に締結された状態で着用者の足を保持するためのものである。締結部材11は、例えば、紐部材または鉄などの金属製のワイヤからなる。なお、締結部材11が後述する第1〜第3案内部材21〜23により案内される具体的態様については後述する。
【0033】
締結部材11は、アッパー本体4に設けられている。締結部材11には、締結部材11に対して引っ張り力を付与しかつ該引っ張り力を調整するための締結器具14が設けられている。また、締結部材11の両端部には、連結部15が設けられている。この連結部15により、締結部材11が1つの閉鎖した輪状となっている。なお、締結器具14として、図示しないダイアル式の締結器具を用いてもよい。また、締結器具14および連結部15を用いずに、締結部材11の両端部を蝶結びなどにより結んでもよい。
【0034】
(案内部材)
緊締構造10は、第1案内部材21と、第2案内部材22と、第3案内部材23と、を備えている。
【0035】
第1案内部材21,21は、足幅方向において内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置されている。また、第1案内部材21,21は、足長方向において開口部6の前部に対応する位置に配置されている。
【0036】
第2案内部材22,22は、足幅方向において内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置されている。各第2案内部材22は、足長方向において各第1案内部材21の後方に間隔をあけて配置されている。具体的に、各第2案内部材22は、後述する挿通部28が足長方向において開口部6の後部の位置に対応するように配置されている。
【0037】
第3案内部材23,23は、足幅方向において内甲側および外甲側のそれぞれに対応する位置に配置されている。各第3案内部材23は、足長方向において各第1案内部材21と各第2案内部材22との間に配置されている。具体的に、各第3案内部材23は、開口部6の足長方向略中央に対応する位置に配置されている。
【0038】
(本体部)
第1〜第3案内部材21〜23の各々は、本体部25を有している。本体部25は、例えば布製や革製のような可撓性を有する材料からなる。本体部25は、固定端部26および自由端部27を含む。
【0039】
本体部25は、足幅方向の成分を含む方向に沿って略帯状に延びている。具体的に、第1案内部材21の本体部25は、固定端部26から後方に向かって足幅方向略中央に向かうように帯状に延びている。第2案内部材22の本体部25は、固定端部26,26から前方に向かって足幅方向略中央に向かうように延びている。
【0040】
第3案内部材23の本体部25は、固定端部26から足幅方向略中央に向かって帯状に延びている。また、第3案内部材23は、帯状の本体部25が着用者の足の甲部に対して面接触するように構成されている。なお、この実施形態では、第3案内部材23における本体部25の幅を、第1および第2案内部材22の各々の本体部25における幅と同じ大きさとなるように形成している。
【0041】
(固定端部)
固定端部26は、内甲側および外甲側のいずれか一方側に位置している。固定端部26は、例えば接着剤または縫製によりアッパー本体4に固定されている。なお、図1図5では、固定端部26を他の要素と区別して示すために、固定端部26をドットによるハッチングで示している。
【0042】
内甲側に位置する第1〜第3案内部材21〜23の各々の固定端部26は、内甲側に面するアッパー本体4の下部に固定されている。外甲側に位置する第1〜第3案内部材21〜23の各々の固定端部26は、外甲側に面するアッパー本体4の下部に固定されている。
【0043】
第2案内部材22には、2つの固定端部26,26が設けられている。具体的に、第2案内部材22は、前側に位置する固定端部26が着用者の足の中足部に対応する位置に配置される一方、後側に位置する固定端部26が着用者の足の後足部に対応する位置に配置されるように構成されている。
【0044】
(自由端部)
自由端部27は、固定端部26よりも足幅方向の中央寄りに位置している。自由端部27は、アッパー本体4に対して固定されていない。なお、第2案内部材22では、本体部25の略中央で折り返された部分が自由端部27となる。
【0045】
(挿通部)
第1〜第3案内部材21〜23の各々は、締結部材11を挿通させるための挿通部28を有している。挿通部28は、自由端部27が位置する側に配置されている。第1案内部材21の挿通部28は、足長方向の成分を含む方向に沿って延びる中空形状を有している。第2案内部材22では、本体部25の略中央で折り返された部分(自由端部27)が挿通部28となっている。第3案内部材23の挿通部28は、足長方向に沿って延びる中空形状を有している。
【0046】
第3案内部材23の挿通部28は、足幅方向において第3案内部材23の反対側に位置する第1案内部材21の挿通部28と第2案内部材22の挿通部28とを結ぶ仮想線Mまたは仮想線Lの近傍に配置されている。具体的に、外甲側に位置する第3案内部材23の挿通部28は、足幅方向において、内甲側に位置する第1案内部材21の挿通部28と内甲側に位置する第2案内部材22の挿通部28とを結ぶ仮想線Mの近傍に配置されている。また、内甲側に位置する第3案内部材23の挿通部28は、足幅方向において、外甲側に位置する第1案内部材21の挿通部28と外甲側に位置する第2案内部材22の挿通部28とを結ぶ仮想線Lの近傍に配置されている。
【0047】
さらに、第3案内部材23の挿通部28は、足幅方向において、内甲側に位置する仮想線Mと外甲側に位置する仮想線Lとの間隙に配置されている。より具体的に、外甲側に位置する第3案内部材23の挿通部28は、足幅方向において、中心線Cと内甲側に位置する仮想線Mとの間に位置している。また、内甲側に位置する第3案内部材23の挿通部28は、足幅方向において、中心線Cと外甲側に位置する仮想線Lとの間に位置している。
【0048】
(締結部材の案内態様)
内甲側に位置する締結部材11の中途部12は、内甲側に位置する第1案内部材21の挿通部28、外甲側に位置する第3案内部材23の挿通部28、および内甲側に位置する第2案内部材22の挿通部28に挿通されている。そして、締結部材11に引っ張り力が付与されると、締結部材11の中途部12には、内甲側に位置する第1および第2案内部材21,22により内甲側に向かう引っ張り力が生じる。この力により、外甲側に位置する第3案内部材23が、内甲側に向かって引っ張られるようになる。
【0049】
外甲側に位置する締結部材11の中途部13は、外甲側に位置する第1案内部材21の挿通部28、内甲側に位置する第3案内部材23の挿通部28、および外甲側に位置する第2案内部材22の挿通部28に挿通されている。そして、締結部材11に引っ張り力が付与されると、締結部材11の中途部13には、外甲側に位置する第1および第2案内部材22により外甲側に向かう引っ張り力が生じる。この力により、内甲側に位置する第3案内部材23が外甲側に向かって引っ張られるようになる。
【0050】
(本発明の特徴的構成)
本発明の特徴として、内甲側の第3案内部材23と外甲側の第3案内部材23とは、足長方向から見たときに、足長方向に沿って互いに重なっている。具体的に、内甲側に位置する第3案内部材23と外甲側に位置する第3案内部材23とは、足幅方向略中央において、本体部25,25同士が足長方向に沿って重なるように配置されている(図5において破線で囲ったA部を参照)。そして、締結部材11は、中途部12,13が、足幅方向において互いに交わることなく、足長方向の成分を含む方向に沿って延びるように案内されている。
【0051】
[実施形態の作用効果]
以上のように、緊締構造10において、内甲側の第3案内部材23と外甲側の第3案内部材23とは、足長方向から見たときに、足長方向に沿って互いに重なっている。これにより、内甲側に位置する第3案内部材23と外甲側に位置する第3案内部材23とが、足幅方向において途切れずに連続するようになる。このため、締結部材11に引っ張り力を付与した緊締状態では、第3案内部材23により着用者の足をしっかり保持することが可能となる。
【0052】
そして、締結部材11は、内甲側および外甲側のそれぞれに位置する中途部12,13が、足幅方向において互いに交わることなく、足長方向の成分を含む方向に沿って延びるように構成されている。かかる構成により、中途部12,13は、足長方向に沿って真っ直ぐに延びた状態に近づくようになる。このため、中途部12,13と第1〜第3案内部材21〜23の各々の挿通部28との間で摩擦抵抗が生じにくくなり、締結部材11に付与される引っ張り力が中途部12,13に対して直接的に伝わりやすくなる。すなわち、上記引っ張り力が締結部材11の全体に対して均等に伝わりやすくなる。その結果、上記引っ張り力を強めることにより、締結部材11がより強く緊締されるようになる。一方、緊締状態から上記引っ張り力を弱めることにより、上記引っ張り力が直ちに開放されて、締結部材11が緊締状態から緩みやすくなる。このように、緊締構造10では、締結部材11を締め付けることおよび緩めることが容易となる。そして、着用者による履物の着脱が容易となりかつ着脱に要する時間が短縮される。
【0053】
したがって、本発明の実施形態に係る緊締構造10では、着用者の足に対するホールド性を損なわずに、締結部材11の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0054】
また、各第3案内部材23の挿通部28は、足幅方向略中央において、該第3案内部材23の反対側に位置する第1案内部材21の挿通部28と第2案内部材22の挿通部28とを結ぶ仮想線Lまたは仮想線Lの近傍に配置されている。このため、第1〜第3案内部材21〜23の各々の挿通部28に挿通される締結部材11の中途部12,13が足長方向に沿って真っ直ぐに延びた状態に近づくようになる。このため、締結部材11に付与される引っ張り力が中途部12,13に対して直接的に伝わりやすくなり、締結部材11の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0055】
また、第3案内部材23,23の本体部25,25が着用者の足の甲部に対して面接触することから、締結部材11の緊締状態において、第3案内部材23,23の本体部25,25により着用者の足の甲部に対するフィット性を高めることができる。特に、内甲側および外甲側のそれぞれに位置する第3案内部材23,23では、各々の本体部25において挿通部28と連続する部分同士が足長方向に沿って重なっていることから、この重なり部分が足の甲部を包み込むように適切に保持することにより、着用者の足の甲部に対するフィット性がより一層高められている。
【0056】
また、各第3案内部材23の挿通部28が足長方向に沿って延びる中空形状であることから、第3案内部材23,23の挿通部28,28に挿通される締結部材11の中途部12,13を足長方向に沿わせやすくなる。このため、締結部材11に付与される引っ張り力が中途部12,13に対して直接的に伝わりやすくなり、締結部材11の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0057】
また、締結部材11に対して引っ張り力を付与しかつ該引っ張り力を調整するための締結器具14を操作することにより、締結部材11の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0058】
[実施形態の変形例1]
上記実施形態では、各第3案内部材23における本体部25の幅を、第1および第2案内部材22の各々の本体部25における幅と同じ大きさとなるように形成した形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図6に示した変形例1のように、各第3案内部材23における本体部25の幅を、第1および第2案内部材22の各々の本体部25における幅よりも大きくなるように形成してもよい。
【0059】
このような変形例では、第3案内部材23,23の本体部25,25が着用者の足の甲部に対して面接触する部分の面積が相対的に増えることから、締結部材11の緊締状態において第3案内部材23,23の本体部25,25により足の甲部を包み込むように適切に保持しつつ、足の甲部に対するフィット性をより一層高めることができる。
【0060】
[実施形態の変形例2]
上記実施形態では、1つの第3案内部材23を設けた形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、複数の第3案内部材23,23,…を設けた形態としてもよい。例えば、図7に示した変形例2のように、2つ目の第3案内部材23を、第2案内部材22の後方に配置してもよい。そして、第2案内部材22と同様の構成を有する第4案内部材24を、2つ目の第3案内部材23の後方に配置するのが好ましい。なお、この変形例では、各第2案内部材22を、上記実施形態で示した構成(2つの固定端部26,26を設けた構成)に代えて、固定端部26を1つだけ設けた構成としている。
【0061】
このような変形例であっても、締結部材11の中途部12,13が足長方向に沿って真っ直ぐに延びた状態に近づくようになることから、上記実施形態と同様に、着用者の足に対するホールド性を損なわずに、締結部材11の締め付けおよび弛緩を容易に行うことができる。
【0062】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、第1〜第3案内部材21〜23の各々の本体部25が略帯状に延びる形態を示したが、この形態に限られない。例えば、第1〜第3案内部材21〜23の各々の本体部25が足幅方向の成分を含む方向に沿って略線状に延びるような形態であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、第1〜第3案内部材21〜23の各々の固定端部26を、アッパー本体4の下部に固定した形態を示したが、この形態に限られない。例えば、固定端部26を、アウトソール2およびミッドソール3の少なくともいずれか一方に固定してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、緊締構造10をシューズ1に適用した形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、緊締構造10をスリッパやサンダルに適用してもよい。すなわち、本発明に係る緊締構造10は履物全般に適用可能である。
【0065】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、シューズなどの履物に適用される緊締構造として産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1:シューズ
10:緊締構造
11:締結部材
12,13:中途部
21:第1案内部材
22:第2案内部材
23:第3案内部材
25:本体部
26:固定端部
27:自由端部
28:挿通部
M,L:仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7