(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、導入遺伝子のヌクレアーゼ媒介性標的化組み込みを増加させ、これらの強力なツールのさらにより効率的な使用を可能にするための組成物および方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ヌクレアーゼ(複数可)および外因性配列(複数可)の逐次的投与を介した1つまたは複数の外因性配列の標的配列へのヌクレアーゼ媒介性組み込みのための方法および組成物が本明細書で開示されている。本明細書に記載されている方法および組成物は、外因性配列(導入遺伝子)のヌクレアーゼ媒介性標的化組み込みの効率を増加させる。特に、本方法および組成物は、ヌクレアーゼおよび導入遺伝子の逐次的な別々の投与、例えば、別々の投与の間に遅延がある、ヌクレアーゼ(複数可)および導入遺伝子(複数可)の別々の溶液の投与を伴う。投与の間の遅延は、数分間、数時間または数日間またはそれより長くてもよく、例えば、投与の間は10分またはそれ超、30分またはそれ超、1時間またはそれ超、2時間またはそれ超、3時間またはそれ超、24時間またはそれ超、36時間またはそれ超、48時間またはそれ超、72時間またはそれ超、あるいは4日間またはそれ超、5日間またはそれ超、6日間またはそれ超、1週間またはそれ超、あるいはそれより長くてもよい。本明細書に記載されている方法および組成物は、代替方法(例えば、同時投与または少なくとも4時間未満おいた逐次投与)を使用して組み込まれた導入遺伝子と比較して、導入遺伝子組み込み効率の増強(例えば、導入遺伝子組み込みにおける10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍から100倍(またはそれらの間の任意の値)またはそれ超の増加)をもたらす。
【0009】
したがって、一態様において、単離された細胞の標的配列に外因性配列を組み込む方法であって、(i)標的配列を切断する1つまたは複数のヌクレアーゼ、および(ii)1つまたは複数のヌクレアーゼによる標的配列の切断後に標的配列に組み込まれる1つまたは複数のドナー配列を逐次的に投与することを含み、逐次的投与の間に少なくとも24時間の遅延がある方法が本明細書に記載されている。ある特定の実施形態において、逐次的投与の間の遅延は、24時間〜72時間の間である。一実施形態において、1つまたは複数のヌクレアーゼは1つまたは複数のドナーの前に投与され、1つもしくは複数のヌクレアーゼおよび/または1つもしくは複数のドナーはプラスミド、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を使用して、またはRNA、ミニサークルもしくは線状DNA形態で投与される。別の実施形態において、1つまたは複数のドナーは1つまたは複数のヌクレアーゼの前に投与され、1つまたは複数のヌクレアーゼはRNA形態(例えば、mRNA形態)で投与される。
【0010】
ヌクレアーゼ、例えば、操作されたメガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALE−ヌクレアーゼ(TALEエフェクタードメインと制限エンドヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインとの融合物を含むTALEN(メガTALEおよびコンパクトTALEN等))、Ttagoヌクレアーゼおよび/またはCRISPR/Casヌクレアーゼ系は、任意の外因性ドナー配列(導入遺伝子)を挿入する細胞における内因性遺伝子座(例えば、セーフハーバー遺伝子または目的の遺伝子座)でDNAを切断するために使用される。ドナー導入遺伝子の標的化挿入は相同組換え修復(HDR)または非相同修復機構(例えば、NHEJ媒介性末端捕捉)を介することができる。ヌクレオチド(例えば、内因性配列)の挿入および/または欠失(「インデル」)はまた、組み込みの部位で起こり得る。ヌクレアーゼは、標的DNAに二本鎖(DSB)または一本鎖切断(ニック)を誘導することができる。一部の実施形態において、2種のニッカーゼを使用して、2個のニックを導入することによってDSBを作製する。一部の場合では、ニッカーゼはZFNであるが、他の場合において、ニッカーゼはTALENまたはCRISPR/Cas系である。
【0011】
一態様において、本方法は、コードしたヌクレアーゼを含むベクターが細胞によって取り込まれ、次いでヌクレアーゼが細胞ゲノムの特定の内因性遺伝子座を切断するように1つまたは複数のヌクレアーゼを細胞(例えば、ヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のベクター)に投与すること、最後に、外因性配列が切断されたゲノム(例えば、ヌクレアーゼ(複数可)結合および/または切断部位(複数可))に、またはその付近に、例えば、切断部位(複数可)の1〜300(またはその間の任意の値)塩基対以内上流または下流に、より好ましくは結合および/または切断部位(複数可)のいずれかの側の1〜100塩基対(またはその間の任意の値)以内、さらにより好ましくは結合および/または切断部位(複数可)のいずれかの側の1から50塩基対(またはその間の任意の値)以内に(標的化様式で)組み込まれるように、一定期間後、1つまたは複数の外因性(ドナー)配列を細胞(例えば、これらの外因性配列を含む1つまたは複数のベクター)に投与することを含む。外因性配列は、ヌクレアーゼの投与後の任意の時間、例えば、10分間またはそれ超、30分間またはそれ超、1時間から72時間またはそれ超(4日間、5日間、6日間、7日間またはそれ超)の範囲で投与することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼ(複数可)とドナーの投与の間の期間は、24時間〜4日間の間、好ましくは、48〜72時間である。ある特定の実施形態において、細胞は単離された細胞であり、ヌクレアーゼ(複数可)の投与とドナー導入遺伝子の投与の間に培養される。
【0012】
別の態様において、本方法は外因性配列(例えば、外因性配列を含むベクター、プラスミド、ミニサークルまたは線状DNA)の細胞への投与と、続くヌクレアーゼの投与(例えば、ヌクレアーゼをコードするmRNA、ヌクレアーゼをコードするベクターまたはプラスミドの投与、あるいはタンパク質形態としてのヌクレアーゼの投与)を含む。例えば、ヌクレアーゼをコードするmRNAまたはタンパク質ヌクレアーゼは、外因性配列後の任意の時間、例えば、10分間またはそれ超、30分間またはそれ超、1時間から72時間またはそれ超(4日間、5日間、6日間、7日間またはそれ超)の範囲で投与することができる。ある特定の実施形態において、ドナーおよびヌクレアーゼ(複数可)の投与の間の期間は、24時間〜4日間の間、好ましくは、48〜72時間である。
【0013】
一部の実施形態において、ヌクレアーゼ(複数可)はRNAとして(例えば、それらをコードしているmRNAとして)投与される。一部の実施形態において、mRNAはリボソームスタッタリング(stuttering)部位によって隔てられたヌクレアーゼ対の2つのヌクレアーゼ、および内部リボソーム進入部位等(例えば、2A配列またはIRES)を含む。他の実施形態において、ヌクレアーゼ対において2つのヌクレアーゼをコードする2つのmRNAは、細胞への投与前または投与中に組み合わせることができる別々のmRNAである。一部の実施形態において、mRNAは修飾またはキャップされる。切断は、操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)等、特異的ヌクレアーゼの使用により、Ttagoヌクレアーゼを使用してあるいは特異的切断を誘導するための操作されたcrRNA/tracr RNA(「単鎖ガイドRNA」)によるCRISPR/Cas系を使用して行うことができる。一部の実施形態において、2種のニッカーゼを使用して、2個のニックを導入することによりDSBを作製する。一部の場合では、ニッカーゼは、ZFNであるが、他の場合において、ニッカーゼは、TALENまたはCRISPR/Cas系である。外因性ドナー配列の標的化組み込みは、相同組換え修復機構(HDR)および/または非相同性修復機構(例えば、NHEJ媒介性末端捕捉)により起こり得る。本明細書に記載されたようなヌクレアーゼは、例えば、リーダー配列、調節配列、トレーラー配列またはイントロン等の遺伝子内または遺伝子に隣接したコードまたは非コード領域における、あるいはコード領域の上流または下流の非転写領域内の目的の領域に結合し、かつ/または切断することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは結合部位またはその付近で標的配列を切断する。
【0014】
本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて、ドナー配列はタンパク質産物を発現する1つまたは複数の導入遺伝子を含むことができる。ある特定の実施形態において、タンパク質産物は治療用であり、障害(例えば、血友病、リソソーム蓄積症、代謝疾患、異常ヘモグロビン症等の遺伝性障害)において異常に発現されるタンパク質の機能性バージョンである。ある特定の実施形態において、導入遺伝子は、1つまたは複数の機能性凝固因子タンパク質(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子および/または第X因子)をコードする。一部の実施形態において、ドナー配列は、ヌクレアーゼ依存性HDRを介して内因性遺伝子における変異を修正するように設計される。
【0015】
ヌクレアーゼは、任意の内因性遺伝子座を標的化することができる。ある特定の実施形態において、導入遺伝子は、セーフハーバー遺伝子座(例えば、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaまたはアルブミン。例えば、米国特許第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;同第8,586,526号;米国特許公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号;同第20130122591号および同第20130177960号;米国特許出願第14/278,903号を参照のこと)に特異的な少なくとも1つのヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALENおよび/またはCRISPR/Cas系)を使用して部位特異的(標的化)様式で組み込まれる。
【0016】
別の態様において、外因性配列を含むために細胞を遺伝的に修飾する方法であって、1つまたは複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas)を使用して細胞における内因性遺伝子を切断すること、および導入遺伝子が内因性遺伝子座に組み込まれ、細胞内で発現するように、一定期間後、導入遺伝子を細胞に投与することを含む方法が本明細書に記載されている。ある特定の実施形態において、内因性遺伝子はCCR5、HPRT、AAVS1、Rosaまたはアルブミン遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子である。
【0017】
別の態様において、1つまたは複数の外因性配列を含むために細胞を遺伝的に修飾する方法であって、外因性配列を含むベクターを細胞に投与すること、外因性配列を含むベクターの細胞による十分な時間の取り込みを可能にすること、次に1つまたは複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN(TALエフェクタードメインおよびヌクレアーゼドメイン(制限エンドヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼ))および/またはCRISPR/Cas系)をコードするmRNAを投与すること、またはヌクレアーゼが内因性遺伝子を切断し、外因性配列が組み込まれて発現するようにヌクレアーゼをタンパク質として投与することを含む方法が本明細書に記載されている。ある特定の実施形態において、内因性遺伝子座はCCR5、HPRT、AAVS1、Rosaまたはアルブミン遺伝子等のセーフハーバー遺伝子座である。
【0018】
別の態様において、例えば、遺伝性障害を処置するために、患者において欠如または欠損している機能性タンパク質を提供する方法が本明細書で提供されている。ある特定の実施形態において、本方法は、本明細書で開示したようなヌクレアーゼ(複数可)および導入遺伝子(複数可)の順序付けた逐次的投与を使用した、機能性タンパク質をコードする配列をそれを必要とする被験体の細胞に組み込むことを含む。他の実施形態において、本方法は、遺伝的に修飾された細胞(被験体において異常に発現される1つまたは複数のタンパク質の機能性バージョンを発現する)を被験体に直接投与することを含む。したがって、単離された細胞を被験体に導入することができる(エクスビボ細胞療法)、あるいは被験体の一部である細胞を修飾することができる(インビボ)。例えば遺伝子障害の処置のための医薬の調製における、障害の処置のための、本明細書に記載されているドナーおよび/またはヌクレアーゼの使用も提供される。ある特定の実施形態において、外因性配列はウイルスベクター、非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)および/またはそれらの組み合わせを使用して送達される。
【0019】
記載した組成物および方法のいずれかにおいて、ヌクレアーゼ(複数可)および/または導入遺伝子(複数可)は、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10またはAAV2/8、AAV8.2、AAV2/5およびAAV2/6等のシュードタイプ化したAAVが挙げられるがこれらに限定されないAAVベクターで運んでもよい。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼおよび導入遺伝子ドナーは、同じAAVベクター型を使用して送達する。他の実施形態において、ヌクレアーゼおよび導入遺伝子ドナーは、異なるAAVベクター型を使用して送達する。ヌクレアーゼおよび導入遺伝子は、2つまたはそれ超のベクター、例えば、一方がヌクレアーゼ(複数可)(例えば、ZFN対の左および右ZFN、例えば2Aペプチドを含む)を運び、一方が導入遺伝子を運ぶ2つのベクター、あるいは1つのベクターがヌクレアーゼ対の一方のヌクレアーゼ(例えば、左ZFN)を運び、別のベクターがヌクレアーゼ対の他方のヌクレアーゼ(例えば、右ZFN)を運び、第3の別のベクターが導入遺伝子を運ぶ3つのベクターを使用して送達することができる。2つまたはそれ超のベクターを使用する実施形態において、ベクターは、同じ濃度または異なる比で使用することができ、例えば、ヌクレアーゼベクター(複数可)を導入遺伝子ベクター(複数可)よりも2倍、3倍、4倍、5倍またはそれ超高い濃度で投与することができる。
【0020】
本明細書に記載されている組成物および方法のいずれかにおいて、ヌクレアーゼ(複数可)は前記ヌクレアーゼをコードするmRNAとして送達することができる。一部の実施形態において、各ヌクレアーゼのコード配列が「自己切断」配列(例えば、2A配列)によって隔てられたヌクレアーゼ対の2つのヌクレアーゼをコードする単鎖mRNAが記載されている。他の実施形態において、ヌクレアーゼ対の各ヌクレアーゼは、単鎖mRNAとして含まれ、2つの単鎖mRNAがヌクレアーゼ対を投与するために一緒に使用される。本明細書に記載されているmRNA組成物のいずれかにおいて、mRNAは転写の安定性および/または効率を増加させるために修飾することができ、あるいは修飾されたヌクレオシドを含むことができ(例えば、米国特許第8,6919,66号および米国特許第7,074,596号を参照のこと)、あるいはmRNAは製剤化された粒子を介して、またはカプセル化したリポソーム(例えば、米国特許第5,976,567号を参照のこと)として送達することができる。
【0021】
本明細書に記載されている組成物および方法のいずれかにおいて、導入遺伝子は、タンパク質、例えば、障害において欠如している、および/または異常に発現されるタンパク質の機能性バージョンをコードすることができる。一部の実施形態において、導入遺伝子は、天然に存在する対応物と比較して特性が増強された天然に存在しないタンパク質をコードすることができる。本明細書に記載されている組成物または方法のいずれかにおいて、導入遺伝子はまた転写調節因子を含むが、他の場合において、転写因子は含まず、転写は内因性調節因子によって調節される。別の態様において、本発明の方法は、それを必要とする被験体の治療的処置のための組成物を含む。一部の実施形態において、組成物は、セーフハーバー特異的ヌクレアーゼおよび導入遺伝子ドナーを含む操作された幹細胞を含む。他の実施形態において、組成物は、in vivoにおいて遺伝子修飾を行うために、導入遺伝子ドナーおよび特異的ヌクレアーゼおよび/または修飾されたmRNAを含む操作されたウイルス粒子を含む。
【0022】
本明細書に記載されている組成物または方法のいずれかにおいて、細胞は真核細胞であることができる。好適な細胞の非限定的な例として、分泌細胞(例えば、肝臓細胞、粘膜細胞、唾液腺細胞、下垂体細胞等)、血液細胞(赤血球)、赤血球前駆細胞、肝細胞、筋肉細胞、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、肝幹細胞、造血幹細胞(例えば、CD34+))または内皮細胞(例えば、血管、糸球体および尿細管内皮細胞)等の真核細胞または細胞系が挙げられる。したがって、標的細胞は、ヒト細胞、または他の哺乳動物(獣医学上の動物が含まれる)、特に非ヒト霊長類(Macaca mulatta:アカゲザル、Macaca fascicularis:カニクイザル)およびRodenta目(マウス、ラット、ハムスター)、Lagomorpha目(ウサギ)、Carnivora目(ネコ、イヌ)およびArteriodactyla目(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)の哺乳動物の細胞であることができる。一部の態様において、標的細胞は組織(例えば、肝臓)を含む。一部の態様において、標的細胞は、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、肝幹細胞等)または本明細書に記載されている方法のいずれかによる動物胚であり、次に胚は生きた動物が生まれるように移植される。その後、動物は性的成熟まで成長させ、繁殖させ、その子孫のうちの少なくとも一部はゲノム修飾を含む。細胞はまた、例えば、マウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物細胞胚の胚細胞を含むことができる。細胞は、任意の生物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌまたは他の哺乳動物細胞由来であることができる。細胞は、単離することができる、あるいは生物(例えば、被験体)の一部であり得る。
【0023】
本明細書に記載されている方法および組成物のいずれかにおいて、例えば、組み込まれた導入遺伝子との融合タンパク質として、内因性遺伝子の一部もしくはすべてが発現されるまたは全く発現されないように、導入遺伝子は、内因性セーフハーバー遺伝子に組み込むことができる。一部の実施形態において、内因性セーフハーバー遺伝子は、アルブミン遺伝子であり、内因性配列は、アルブミン配列である。内因性配列は、外因性タンパク質のアミノ(N)末端部分および/または外因性タンパク質のカルボキシ(C)末端部分に存在し得る。アルブミン配列は、完全長の野生型または変異型のアルブミン配列を含むことができる、あるいは部分的アルブミンアミノ酸配列を含むことができる。ある特定の実施形態において、アルブミン配列(完全長または部分的)は、それが融合した導入遺伝子により発現されるポリペプチドの血清半減期の増加に、および/または担体として役立つ。他の実施形態において、導入遺伝子は、アルブミン配列を含み、ゲノム内の別のセーフハーバーへの挿入に標的化される。さらに、導入遺伝子は、その発現を駆動する外因性プロモーター(例えば、構成的または誘導性プロモーター)を含むことができる、あるいはその発現は、内因性制御配列(例えば、内因性アルブミンプロモーター)により駆動することができる。一部の実施形態において、ドナーは、コドン最適化、グリコシル化部位の追加、シグナル配列等が挙げられるがこれらに限定されない追加的修飾を含む。
【0024】
さらに、本明細書に記載されている方法のいずれかは、任意の時点での細胞のコールドショック(米国特許第8,772,008号)、部分的肝切除術または形質導入を増強し、かつ/または肝細胞に細胞周期を誘導する第2の作用物質による処置を含む追加的ステップをさらに含むことができる。第2の作用物質の例には、ガンマ線照射、UV照射、チミジン等のトリチウム標識したヌクレオチド、シスプラチン、エトポシド、ヒドロキシウレア、アフィディコリン、プレドニゾロン、四塩化炭素および/またはアデノウイルスが挙げられる。
【0025】
本明細書に記載されている方法は、in vitro、ex vivoまたはin vivoにおいて実施することができる。ある特定の実施形態において、生きた無傷の哺乳動物で方法は実施される(および/または修飾された細胞等の組成物は送達される)。哺乳動物は、送達時に発生の任意の段階、例えば、胚、胎仔、新生仔、乳仔、幼若期または成体期であることができる。さらに、標的化された細胞は健康か、または病的であることができる。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の組成物は、静脈内(例えば、肝門脈を介して肝臓へ、例えば、尾静脈注射)、動脈内、腹腔内、筋肉内、肝実質内(例えば、注射によって)、肝動脈内(例えば、注射によって)および/または胆道系(biliary tree)を通じて(例えば、注射によって)送達される。
【0026】
組成物を特定の種類の細胞、例えば、血小板、線維芽細胞、肝細胞、造血幹/前駆細胞等に標的化するために、1つまたは複数の投与した組成物に、細胞の表面受容体に特異的に結合するホーミング剤と会合させてもよい。例えば、ベクターは、ある特定の肝臓系細胞が受容体を有するリガンド(例えば、ガラクトース)にコンジュゲートすることができる。コンジュゲーションは、共有結合、例えば、グルタルアルデヒド等の架橋剤、または非共有結合、例えば、ビオチン化ベクターへのアビジン化リガンドの結合であることができる。共有結合コンジュゲーションの別の形態は、1つまたは複数のコードされたコートタンパク質が天然のAAVコートタンパク質とペプチドまたはタンパク質リガンドのハイブリッドとなるように、ベクターストックを調製するために使用したAAVヘルパープラスミドを操作して、リガンドがウイルス粒子の表面上に曝露されるようにすることによって提供される。
【0027】
本発明の組成物(例えば、遺伝的に修飾された細胞、ZFP、CRISPR/Cas系および/またはTALEを含むキットも提供される。本キットは、ヌクレアーゼをコードする核酸(例えば、RNA分子または好適な発現ベクターまたはタンパク質に含有されるヌクレアーゼコード遺伝子)、ドナー分子、好適な宿主細胞系、本発明の方法を実施するための説明書等を含むことができる。
【0028】
これらの態様および他の態様は、全体としての本開示を考慮することにより当業者には容易に明らかとなる。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
単離された細胞の標的配列に外因性配列を組み込む方法であって、(i)前記標的配列を切断する1つまたは複数のヌクレアーゼ、および(ii)前記1つまたは複数のヌクレアーゼによる前記標的配列の切断後に前記標的配列に組み込まれる1つまたは複数のドナー配列を逐次的に投与するステップを含み、前記逐次的投与の間に少なくとも24時間の遅延がある、方法。
(項目2)
前記逐次的投与の間の前記遅延が、24時間〜72時間の間である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記1つまたは複数のヌクレアーゼが、前記1つまたは複数のドナー配列の前に投与される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記1つまたは複数のドナー配列が、前記1つまたは複数のヌクレアーゼの前に投与される、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
前記1つまたは複数のヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALE−ヌクレアーゼ(TALEN)またはCRISPR/Casヌクレアーゼ系を含む、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記1つまたは複数のヌクレアーゼが、ニッカーゼである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記1つもしくは複数のヌクレアーゼおよび/または前記1つもしくは複数のドナー配列が、プラスミド、ウイルスベクターを使用して、またはRNA、ミニサークルもしくは線状DNA形態で投与される、項目1から6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記1つもしくは複数のヌクレアーゼおよび/または前記1つもしくは複数のドナー配列が、ウイルスベクターを使用して投与される、項目3に記載の方法。
(項目9)
前記ウイルスベクターが、AAVベクターである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記1つまたは複数のヌクレアーゼが、RNAとして投与される、項目4に記載の方法。
(項目11)
前記RNAが、mRNAである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記1つまたは複数のドナー配列が、少なくとも1つのタンパク質産物を発現する、項目1から11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記タンパク質産物が、障害において非機能性である、欠損している、または異常に発現されるタンパク質の機能性バージョンである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記標的配列が、内因性遺伝子座である、項目1から13のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記内因性遺伝子座が、セーフハーバー遺伝子座である、項目14に記載の方法。
(項目16)
被験体において欠如または欠損している機能性タンパク質を提供する方法であって、項目13に記載の方法に従って1つまたは複数のドナー配列を、単離された細胞に組み込むステップ、および前記単離された細胞を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目17)
前記細胞が幹細胞である、項目16に記載の方法。
(項目18)
被験体において欠如または欠損している機能性タンパク質を提供する方法であって、項目13に記載の方法に従って1つまたは複数のドナー配列を、前記被験体の細胞に組み込むステップを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0040】
さらに1つの外因性ドナー配列を細胞の標的部位に組み込むための組成物および方法が本明細書で開示されている。本方法および組成物は、(i)標的配列を切断する1つまたは複数のヌクレアーゼ、および(ii)ヌクレアーゼによる標的配列の切断後に標的配列に組み込まれる1つまたは複数のドナー配列の逐次的投与であって、ヌクレアーゼ(複数可)および外因性配列(複数可)の投与の間に数分間、数時間または数日間の遅延がある投与を伴う。本明細書に記載されている方法および組成物は、ヌクレアーゼ(複数可)およびドナー構築物の逐次的投与の特異的方法であって、配列の順序はヌクレアーゼおよびドナーの送達のために使用した形態に依存する方法に従うことによって、標的化ヌクレアーゼを使用した標的化遺伝子修正または外因性配列の内因性ゲノム遺伝子座への組み込みの効率を増加させる。
【0041】
特に、ヌクレアーゼおよびドナーの両方がウイルス粒子として供給されるとき、ヌクレアーゼ(複数可)の投与後のドナー導入遺伝子(例えば、タンパク質をコードする配列またはshRNA等のRNAをコードするDNA配列)の投与は、ドナーおよびヌクレアーゼを一緒に(同時に)またはより短期間もしくはより長期間遅延して投与する方法と比較して、導入遺伝子組み込みの増加をもたらす。ドナー導入遺伝子は、ヌクレアーゼ(複数可)の数分から数時間から数日後、例えば、8から72時間後(またはその間の任意の時間)または4日後、5日後、6日後またはそれ超後に投与することができる。あるいは、ヌクレアーゼをmRNA(複数可)として投与するとき、最初にドナー導入遺伝子を含むウイルス粒子を投与し、標的細胞に十分な時間取り込ませ、次いでヌクレアーゼをコードするmRNAで処置することが好ましい。ヌクレアーゼをコードするmRNAは、ドナー(複数可)の数分から数時間から数日後、例えば、8から72時間後(またはその間の任意の時間)または4日後、5日後、6日後またはそれ超後に投与することができる。どちらの場合も、細胞はウイルス取り込みのために十分な時間を与えられる。いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、ヌクレアーゼおよび導入遺伝子ドナーの両方をウイルスを介して投与するとき、2種類の粒子が同じ取り込み受容体に関して競合して全体的な活性が消失する可能性がある。ウイルスの間で起こり得る別の競合様式は、それらが細胞に入った後のものである。ZFNおよびドナーウイルスの両方は、核に入るためにまずエンドソームを脱出しなければならない。次に、得られる遊離の一本鎖AAVゲノムは、a)ドナーとして役立つか、またはb)転写されてZFNタンパク質を産生するために、二本鎖形態に変換されなければならない。これらのステップのいずれも律速となることがあり、したがってAAV競合に対して感受性となり得る。2種類の粒子の投与の間に十分な時間をおくならば、ヌクレアーゼウイルスが取り込まれ、導入遺伝子ドナーウイルスを導入する前に、ヌクレアーゼが内因性ゲノム標的で特異的DSBを作製する作用を開始することはまた有益である。ヌクレアーゼをmRNAとして供給するとき、mRNAはトランスフェクション手順中にすぐに取り込まれるので、取り込み受容体に関する競合は問題ではない(
図1を参照のこと)。一部の特異的細胞型では(例えば、CD34+造血幹細胞)、mRNAを介してヌクレアーゼを導入した直後にドナー−AAVで細胞を処置することが好ましい場合がある。
【0042】
外因性配列は、血友病に関与する任意のタンパク質またはペプチド、例えば、F8、F.IXおよび/またはそれらの機能性断片をコードすることができる。本明細書に記載されている細胞を使用し、かつ/または本明細書に記載されているように細胞を(ex vivoまたはin vivoにおいて)修飾して、血友病を処置する方法も開示されている。
【0043】
導入遺伝子は、タンパク質産物、例えば、細胞において欠如している、異常に発現される、および/または非機能性であるタンパク質、例えば、血友病の被験体で欠如しているタンパク質(例えば、第VII因子、F8、F.IX、第X因子、および/またはそれらの機能性断片)、リソソーム蓄積症の被験体で欠如しているタンパク質、異常ヘモグロビン症の被験体で欠如しているタンパク質、および/または代謝障害の被験体で欠如しているタンパク質の機能性バージョンをコードすることができる。例えば、米国特許公開第20120128635号;同第20140093913号;同第20140080216号および同第20140155468号を参照されたい。
【0044】
本明細書に記載されているゲノム的に修飾された細胞は、細胞がin vivoにおいてタンパク質を産生するように、治療用タンパク質をコードする配列を被験体の1つまたは複数の細胞のゲノムに挿入するために(in vivoまたはex vivoにおいて)、典型的には、ヌクレアーゼ媒介性(ZFN、TALENおよび/またはCRISPR/Cas)標的化組み込みによって修飾される。
【0045】
ある特定の実施形態において、本方法は、例えば、部分肝切除によって、および/または肝細胞に細胞周期を誘導する1つもしくは複数の化合物を投与することによって、被験体の細胞、特に肝臓細胞の増殖(細胞周期に入ること)を誘導することをさらに含む。被験体には、ヒト、非ヒト霊長類、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ等の獣医学上の動物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
概要
方法の実践、ならびに本明細書に開示の組成物の調製および使用は、別途示されない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNA、および当分野の技術の範囲内の関連分野における従来の技法を用いる。これらの技法は、文献内で十分に説明される。例えば、Sambrookら MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989およびThird edition,2001;Ausubelら,CURRENT
PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987および定期的最新版;METHODS
IN ENZYMOLOGYのシリーズ,Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin”(P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,編),Academic Press,San Diego,1999;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Beckerら)Humana Press,Totowa,1999を参照されたい。
【0047】
定義
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用され、線状または環状構造であり、かつ一本鎖または二本鎖形態のいずれかである、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的であると解釈されるべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基部分、糖部分、および/またはリン酸部分において修飾されるヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)を包含することができる。概して、特定のヌクレオチドの類似体は、同一の塩基対合特異性を有し、すなわち、Aの類似体は、Tと塩基対合する。
【0048】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0049】
「結合」とは、高分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的かつ非共有結合的な相互作用を指す。相互作用が全体として配列特異的である限り、結合相互作用のすべての構成要素が配列特異的である(例えば、DNA骨格におけるリン酸残基と接触する)必要はない。そのような相互作用は、概して、10
−6M
−1以下の解離定数(K
d)を特徴とする。「親和性」は、結合の強度を指し、結合親和性の増加は、K
dの低下と相関性がある。
【0050】
「結合タンパク質」は、別の分子に非共有結合的に結合することができるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)、および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合し得る。タンパク質結合タンパク質の場合、それは、それ自身に結合してホモ二量体、ホモ三量体等を形成することができ)、かつ/または、異なるタンパク質(単数または複数)の1つ以上の分子に結合し得る。結合タンパク質は、2つ以上の種類の結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合、およびタンパク質結合活性を有する。
【0051】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、亜鉛イオンの配位によってその構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的な様式でDNAに結合するタンパク質またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、多くの場合、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。
【0052】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つ以上のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、TALEの、その同族の(cognate)標的DNA配列への結合に関与する。単一の「反復単位」(「反復」とも称される)は、典型的には、33〜35アミノ酸長であり、天然に存在するTALEタンパク質内の他のTALE反復配列に少なくともある程度の配列相同性を示す。例えば、米国特許第8,589,526号を参照されたい。
【0053】
ジンクフィンガーおよびTALE結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識へリックス領域を操作する(1つ以上のアミノ酸を改変する)ことによって、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」され得る。したがって、操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、非天然タンパク質である。DNA結合タンパク質を操作するための方法の非限定的な例には、設計および選択がある。設計されたDNA結合タンパク質は、その設計/組成が主に合理的判定基準によってもたらされる非天然タンパク質である。設計のための合理的判定基準は、置換規則の適用、ならびに既存のZFPおよび/またはTALE設計ならびに結合データの情報を格納するデータベース内の情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、同第6,534,261号、および同第8,586,526号を参照されたく、国際公開第WO98/53058号、同第WO98/53059号、同第WO98/53060号、同第WO02/016536号、および同第WO03/016496号も参照されたい。
【0054】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その生成が主にファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択等の実験によるプロセスからもたらされる天然には見出されないタンパク質である。例えば、米国特許第5,789,538号、米国特許第5,925,523号、米国特許第6,007,988号、米国特許第6,013,453号、米国特許第6,200,759号、国際公開第WO95/19431号、同第WO96/06166号、同第WO98/53057号、同第WO98/54311号、同第WO00/27878号、同第WO01/60970号、同第WO01/88197号、および同第WO02/099084号を参照されたい。
【0055】
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関与すると考えられる原核生物のアルゴノートタンパク質である。TtAgoは、細菌Thermus thermophilusに由来する。例えば、Swartsら、同書、G. Shengら、(2013年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.111巻、652頁を参照されたい。「TtAgo系」とは、例えば、TtAgo酵素による切断のためのガイドDNAを含む、必要な成分全てである。「組換え」とは、2つのポリヌクレオチドの間の遺伝情報の交換プロセスを指し、非相同末端連結(NHEJ)によるドナー捕捉および相同組換えが挙げられるがこれらだけに限定されない。本開示の目的のために、「相同組換え(HR)」とは、例えば、相同組換え修復機構を介して細胞における二本鎖切断(double−strand break)の修復中に生じるような交換の特殊な形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)の鋳型修復のために「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝子情報の伝達をもたらすことから、「非交叉遺伝子変換」または「ショートトラクト(short tract)遺伝子変換」として広く知られている。任意の特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、そのような伝達は、切断された標的(broken target)とドナーとの間に形成するヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ修正、および/または標的の一部になる遺伝子情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存的鎖アニーリング(synthesis−dependent strand annealing)」、および/または関連プロセスを含み得る。そのような特殊なHRは、多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部またはすべてが標的ポリヌクレオチドに組み込まれるように、標的分子の配列の改変をもたらす。
【0056】
本開示の方法において、本明細書に記載の1つ以上の標的化されたヌクレアーゼは、標的配列(例えば、細胞クロマチン)の所定の部位で二本鎖切断を生じ、この切断領域内のヌクレオチド配列と相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドが細胞に導入され得る。二本鎖切断の存在は、ドナー配列の組み込みを促進することが示されている。ドナー配列は、物理的に組み込まれ得るか、またはあるいは、ドナーポリヌクレオチドは、相同組換えによる切断の修復用の鋳型として使用され、その結果、ドナーにおいて見られるようなヌクレオチド配列のすべてまたは一部を細胞クロマチンに導入する。したがって、細胞クロマチン内の第1の配列を改変することができ、ある実施形態において、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列に変換することができる。したがって、「置き換える(replace)」または「置き換え(replacement)」という用語の使用が、あるヌクレオチド配列の、別のヌクレオチド配列による置き換え(すなわち、情報の意味において、配列の置き換え)を表し、かつあるポリヌクレオチドの別のポリヌクレオチドによる物理的または化学的置き換えは必ずしも必要としないことが理解され得る。
【0057】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、ジンクフィンガーヌクレアーゼおよび/またはTALENのさらなる対が、細胞内のさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断(double−stranded cleavage)のために使用され得る。
【0058】
細胞クロマチンにおける目的とする領域内の配列の標的化組換えおよび/または置き換えおよび/または改変のための方法のある実施形態において、染色体配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列との相同組換えによって改変される。切断領域に対する配列相同性が存在する場合、そのような相同組換えは、細胞クロマチンにおける二本鎖切断の存在によって促進される。
【0059】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的とする領域のゲノム配列と相同であるが同一ではない配列を含み得、それによって、相同組換えを促進して目的とする領域内に非同一配列を挿入する。したがって、ある実施形態において、目的とする領域内の配列と相同であるドナー配列の一部は、置き換えられるゲノム配列に約80〜99%(またはそれらの間の任意の整数値)の配列同一性を示す。他の実施形態では、例えば、100を超える連続した塩基対のドナー配列とゲノム配列との間で1つのヌクレオチドのみが異なる場合、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は99%よりも高い。ある場合において、新しい配列が目的とする領域に導入されるように、ドナー配列の非相同部分は、目的とする領域に存在しない配列を含み得る。これらの例において、非相同配列は、概して、50〜1,000個の塩基対(もしくはそれらの間の任意の整数値)または目的とする領域内の配列と相同もしくは同一である1,000を超える任意の数の塩基対の配列が隣接している。他の実施形態において、ドナー配列は、第1の配列と非相同であり、非相同組換え機構によってゲノムに挿入される。
【0060】
本明細書に記載の方法のいずれかは、目的とする遺伝子(複数可)の発現を妨害するドナー配列の標的化組み込みによる細胞における1つ以上の標的配列の部分的または完全な不活性化のために使用され得る。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞系も提供される。
【0061】
さらに、本明細書に記載の標的化組み込みの方法を用いて、1つ以上の外因性配列を組み込むこともできる。外因性核酸配列は、例えば、1つ以上の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意の種類のコード配列もしくは非コード配列、ならびに1つ以上の制御エレメント(例えば、プロモーター)を含み得る。加えて、外因性核酸(ドナー)配列は、1つ以上のRNA分子(例えば、スモールヘアピンRNA(shRNA)、阻害RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)等)を生成し得る。
【0062】
「切断(cleavage)」とは、DNA分子の共有結合の骨格の切断(breakage)を指す。切断は、リン酸ジエステル結合の酵素加水分解または化学的加水分解を含むが、これらに限定されない様々な方法によって開始され得る。一本鎖切断も二本鎖切断もいずれも可能であり、二本鎖切断は、2つのはっきりと異なる一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの生成をもたらし得る。ある実施形態において、融合ポリペプチドは、標的化二本鎖DNA切断に用いられる。
【0063】
「切断ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一または異なる)とともに、切断活性(好ましくは、二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。「第1および第2の切断ハーフドメイン」、「+および−切断ハーフドメイン」、ならびに「右および左切断ハーフドメイン」という用語は、二量体化する切断ハーフドメインの対を指すために交換可能に使用される。
【0064】
「操作された切断ハーフドメイン」は、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の操作された切断ハーフドメイン)を有する偏性ヘテロ二量体を形成するように修飾された切断ハーフドメインである。参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2005/0064474号、同第20070218528号、および同第2008/0131962号も参照されたい。
【0065】
「配列」という用語は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、DNAまたはRNAであってもよく、線状、環状、または分岐状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよい。「ドナー配列」という用語は、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さであってもよく、例えば、2〜10,000ヌクレオチド長(またはそれらの間もしくはそれらを超える任意の整数値)、好ましくは、約100〜1,000ヌクレオチド長(またはそれらの間の任意の整数)、より好ましくは、約200〜500ヌクレオチド長であってもよい。
【0066】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大半は、ヌクレオソームの形態で存在し、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3、およびH4をそれぞれ2つ含む八量体と会合した約150個の塩基対のDNAを含み、(生物に応じて多様な長さの)リンカーDNAは、ヌクレオソームコアの間に広がって存在する。ヒストンH1の分子は、概して、リンカーDNAと会合している。本開示の目的のために、「クロマチン」という用語は、すべての種類の細胞核タンパク質(原核および真核の両方)を包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体クロマチンおよびエピソームクロマチンの両方を含む。
【0067】
「染色体」は、細胞のゲノムのすべてまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、多くの場合、その核型を特徴とし、これは、この細胞のゲノムを含むすべての染色体の集合である。細胞のゲノムは、1つ以上の染色体を含み得る。
【0068】
「エピソーム」は、複製核酸、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む他の構造物である。エピソームの例として、プラスミドおよびあるウイルスゲノムが挙げられる。
【0069】
「標的部位」または「標的配列」は、結合分子が結合する核酸の一部を定義する核酸配列であるが、但し、結合に十分な条件が存在することを条件とする。
【0070】
「外因性」分子は、通常は細胞に存在しないが、1つ以上の遺伝学的方法、生化学的方法、または他の方法によって細胞内に導入され得る分子である。「細胞における通常の存在」については、細胞の特定の発達段階および環境条件に対して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、成人筋肉細胞に対して外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に対して外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全型内因性分子の機能バージョン、または正常機能型内因性分子の機能不全バージョンを含み得る。
【0071】
外因性分子は、とりわけ、小分子(コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成される小分子等)、または高分子(タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の修飾誘導体)、または上記の分子のうちの1つ以上を含む任意の複合体であり得る。核酸は、DNAおよびRNAを含み、一本鎖または二本鎖であってもよく、線状、分岐状、または環状であってもよく、任意の長さであってもよい。核酸には、二重鎖を形成することができる核酸、ならびに三重鎖形成核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレース、およびヘリカーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
外因性分子は、内因性分子と同一の種類の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってもよい。例えば、外因性核酸は、感染ウイルスゲノム、細胞に導入されるプラスミドもしくはエピソーム、または通常は細胞に存在しない染色体を含み得る。外因性分子を細胞に導入するための方法は、当業者に既知であり、脂質媒介導入(すなわち、中性脂質および陽イオン性脂質を含むリポソーム)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介導入、およびウイルスベクター媒介導入を含むが、これらに限定されない。外因性分子は、内因性分子と同一の種類の分子でもあり得るが、細胞が由来するものとは異なる種に由来し得る。例えば、ヒト核酸配列は、本来はマウスまたはハムスターに由来する細胞系に導入され得る。
【0073】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下で特定の発達段階にある特定の細胞に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、クロロプラスト、もしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含み得る。さらなる内因性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含み得る。
【0074】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が好ましくは共有結合的に連結した分子である。サブユニット分子は、同一の化学的種類の分子であり得るか、または異なる化学的種類の分子であり得る。第1の種類の融合分子の例として、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインと1つ以上のヌクレアーゼドメインまたは転写制御ドメイン、例えば、活性化ドメインまたは抑制ドメインとの間の融合物)および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。第2の種類の融合分子の例として、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、および副溝結合剤と核酸との間の融合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
細胞における融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の細胞への送達から、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって生じ得、ここで、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて、融合タンパク質を生成する。トランススプライシング、ポリペプチド切断、およびポリペプチド連結も、細胞におけるタンパク質の発現に関与し得る。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを細胞に送達するための方法は、本開示の他の個所で示される。
【0076】
本開示の目的のために、「遺伝子」は、遺伝子産物(以下を参照のこと)をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節するすべてのDNA領域(そのような調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているか否かに関わらず)を含む。したがって、遺伝子は、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列(リボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位等)、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位、および遺伝子座制御領域を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0077】
「遺伝子発現」とは、遺伝子内に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、もしくは任意の他の種類のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物は、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスによって修飾されたRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチル化(myristilation)、およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質も含む。
【0078】
遺伝子発現の「調整(modulation)」は、遺伝子の活性の変化を指す。発現の調整は、遺伝子活性化および遺伝子抑制を含み得るが、これらに限定されない。ゲノム編集(例えば、切断、改変、不活性化、ランダム変異)を用いて発現を調整することができる。遺伝子の不活性化とは、本明細書に記載のZFPを含まない細胞と比較して遺伝子発現における任意の低下を指す。したがって、遺伝子の不活性化は、部分的または完全であり得る。
【0079】
「目的とする領域」は、細胞クロマチンの任意の領域であり、例えば、遺伝子、または遺伝子内もしくは遺伝子に隣接する非コード配列等であり、そこで外因性分子に結合することが望ましい。結合は、標的化DNA切断および/または標的化組換えの目的のためであり得る。目的とする領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官のゲノム(例えば、ミトコンドリア、クロロプラスト)、または感染ウイルスゲノムに存在し得る。目的とする領域は、遺伝子のコード領域内、転写された非コード領域(例えば、リーダー配列、トレーラー配列、もしくはイントロン等)内、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内に存在し得る。目的とする領域は、単一のヌクレオチド対と同程度に小さいか、または最大2,000ヌクレオチド対の長さであるか、またはヌクレオチド対の任意の整数値であり得る。
【0080】
「真核」細胞には、真菌細胞(酵母等)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞(例えば、T細胞)が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
「作用的連結」および「作用的に連結した」(または「作動可能に連結した」)という用語は、2つ以上の構成要素(配列エレメント等)の並列に関して交換可能に使用され、これらの構成要素は、両方の構成要素が正常に機能し、構成要素のうちの少なくとも1つが他の構成要素のうちの少なくとも1つに及ぼす機能を媒介し得ることを可能にするように配置される。例として、プロモーター等の転写調節配列は、その転写調節配列が1つ以上の転写調節因子の存在または不在に応答してコード配列の転写レベルを制御する場合にコード配列に作用的に連結される。転写調節配列は、概して、コード配列とシスに作用的に連結されるが、それに直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、たとえそれらが隣接していなくても、コード配列に作用的に連結される転写調節配列である。
【0082】
融合ポリペプチドに関して、「作用的に連結した」という用語は、構成要素の各々が、そのように連結されていない場合に実行したであろう機能と同一の機能を、他の構成要素と連結して実行するという事実を指し得る。例えば、DNA結合ドメイン(ZFP、TALE)を切断ドメイン(例えば、FokI等のエンドヌクレアーゼドメイン、メガヌクレアーゼドメイン等)に融合する融合ポリペプチドに関しては、融合ポリペプチドにおいて、DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができ、一方、切断(ヌクレアーゼ)ドメインが標的部位の近傍でDNAを切断することができるならば、DNA結合ドメインおよび切断ドメインは作用的に連結している。ヌクレアーゼドメインはまた、DNA結合能力を提示することができる(例えば、DNAにも結合することができるZFPまたはTALEドメインに融合したヌクレアーゼ)。同様に、DNA結合ドメインが活性化または抑制ドメインに融合した融合ポリペプチドに関しては、融合ポリペプチドにおいて、DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/もしくはその結合部位に結合でき、一方、活性化ドメインが遺伝子発現を上方制御することができるか、または抑制ドメインが遺伝子発現を下方制御することができるならば、DNA結合ドメインおよび活性化または抑制ドメインは作用的に連結している。
【0083】
タンパク質、ポリペプチド、または核酸の「機能的断片」は、その配列が、完全長のタンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一ではないが、完全長のタンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一の機能を保持するタンパク質、ポリペプチド、または核酸である。機能的断片は、対応する天然の分子よりも多いか、少ないか、もしくは同一の数の残基を有することができ、かつ/または1つ以上のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当技術分野において周知である。同様に、タンパク質の機能を決定するための方法も周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、または免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断は、ゲル電気泳動によって評価することができる。上記のAusubelらを参照されたい。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、免疫共沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または相補性(遺伝子的相補性もしくは生化学的相補性の両方)によって決定することができる。例えば、Fieldsら(1989)Nature 340:245−246、米国特許第5,585,245号およびPCT国際公開第WO98/44350号を参照されたい。
【0084】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に導入することができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子導入ベクター」は、目的とする遺伝子の発現を指示することができ、かつ遺伝子配列を標的細胞に導入し得る任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニング、および発現ビヒクル、ならびに組み込みベクターを包含する。
【0085】
「セーフハーバー」遺伝子座とは、宿主細胞にいかなる有害な影響も及ぼすことなく遺伝子を挿入することができるゲノム内の遺伝子座である。挿入された遺伝子配列の発現が近隣の遺伝子からのいかなるリードスルー発現によっても撹乱されないセーフハーバー遺伝子座が最も有益である。ヌクレアーゼ(複数可)によって標的化されるセーフハーバー遺伝子座の非限定的な例には、CCR5、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaおよびアルブミンが挙げられる。例えば、米国特許第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;同第8,586,526号;米国特許公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号;同第20130177960号および同第20130122591号ならびに米国特許出願第14/278,903号を参照されたい。
ヌクレアーゼ
【0086】
被験体からの、または被験体における細胞のゲノムにおけるドナー配列の組み込みに有用な組成物、特に、ヌクレアーゼが本明細書に記載されている。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、天然に存在する。他の実施形態において、ヌクレアーゼは、天然に存在しない、すなわち、DNA結合ドメインおよび/または切断ドメインにおいて操作されている。例えば、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するよう改変されていてよい(例えば、同族結合部位とは異なる部位に結合するよう操作されたメガヌクレアーゼ)。他の実施形態において、ヌクレアーゼは、異種のDNA結合および切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクタードメインDNA結合タンパク質、異種の切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメインまたはmegaTALs:TALE DNA結合タンパク質とホーミングエンドヌクレアーゼもしくはメガヌクレアーゼの間の融合物および/またはTtagoまたは操作された単鎖ガイドRNAを利用するCRISPR/Cas系)を含む。
【0087】
A.DNA結合ドメイン
ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、CRISPR/CasヌクレアーゼのDNA結合部分、Ttagoヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼ由来のDNA結合ドメインが挙げられるがこれらに限定されない、任意のDNA結合ドメインを、本明細書に開示されている組成物および方法において使用することができる。
【0088】
DNA結合ドメインは、任意の標的配列に結合することができる。ある特定の実施形態において、DNA結合ドメインは、内因性配列、例えば、ゲノム内のセーフハーバーに結合する。1つまたは複数のヌクレアーゼ(複数可)のDNA結合ドメインによって標的化され得るセーフハーバー遺伝子座の非限定的な例には、CCR5、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaおよびアルブミンが挙げられる。例えば、米国特許第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;同第8,586,526号;米国特許公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号および同第20130177960号ならびに米国特許出願第14/278,903号を参照されたい。
【0089】
ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、天然に存在する、または操作された(天然に存在しない)メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIが挙げられる。これらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら、(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379〜3388頁;Dujonら、(1989年)Gene 82巻:115〜118頁;Perlerら、(1994年)Nucleic Acids Res.22巻、1125〜1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet.12巻:224〜228頁;Gimbleら、(1996年)J. Mol. Biol.263巻:163〜180頁;Argastら、(1998年)J. Mol. Biol.280巻:345〜353頁およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。操作されたメガヌクレアーゼは、例えば、米国特許公開第20070117128号に記載されている。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ヌクレアーゼ全体として改変することができるか(すなわち、ヌクレアーゼが同族切断ドメインを含むように)、または異種の切断ドメインに融合することができる。メガヌクレアーゼのDNA結合ドメインはまた、ヌクレアーゼ活性を提示する。
【0090】
他の実施形態では、DNA結合ドメインは、天然に存在するか、または操作された(天然には存在しない)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,589,526号を参照されたい。キサントモナス属の植物病原性細菌は、重要な作物に多くの病害を引き起こすことで知られている。キサントモナスの病原性は、25個を超える異なるエフェクタータンパク質を植物細胞に注入する保存III型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されるタンパク質の中には、植物の転写活性化因子を模倣し、かつ植物のトランスクリプトームを操る転写活性化因子様(TAL)エフェクターがある(Kayら(2007)Science
318:648−651を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含む。最もよく特徴付けられたTAL−エフェクターのうちの1つに、キサントモナス・カンペストリス病原型ベシカトリア由来のAvrBs3がある(Bonasら(1989)Mol Gen Genet 218:127−136および国際公開第WO2010079430号を参照のこと)。TAL−エフェクターは、タンデム反復の集中ドメイン(centralized domain)を含み、それぞれの反復は、これらのタンパク質のDNA結合特異性に重要な約34個のアミノ酸を含有する。加えて、これらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含む(概説については、Schornack S,ら(2006)J Plant Physiol 163(3):256−272を参照のこと)。加えて、植物病原性細菌である青枯病菌において、brg11およびhpx17と称される2つの遺伝子は、青枯病菌の次亜種1株GMI1000および次亜種4株RS1000において、キサントモナスのAvrBs3ファミリーと相同であることが見出されている(Heuerら(2007)Appl and Envir Micro 73(13):4379−4384を参照のこと)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列において互いに98.9%同一であるが、hpx17の反復ドメインにおいて1,575bpの欠失分だけ異なる。しかしながら、両方の遺伝子産物は、キサントモナスのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0091】
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデム反復に見出される配列に左右される。反復した配列には約102bpが含まれ、反復は典型的に互いに91〜100%相同である(Bonasら、同書)。反復の多型は、通常12位および13位に位置し、12位および13位の高頻度可変二残基(反復可変二残基またはRVD領域)の正体と、TAL−エフェクターの標的配列において近接したヌクレオチドの正体との間に1対1対応があるものと考えられる(MoscouおよびBogdanove、(2009年)Science 326巻:1501頁およびBochら(2009年)Science 326巻:1509〜1512頁を参照のこと)。実験的に、これらのTAL−エフェクターのDNA認識のための天然コードは、12位および13位(反復可変二残基またはRVD)のHD配列がシトシン(C)への結合をもたらし、NGがTに、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、INGがTに結合するように決定された。これらのDNA結合反復は新たな組み合わせおよび反復数でタンパク質に組み立てられて、新たな配列と相互作用し、植物細胞において非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工的な転写因子を作製する(Bochら、同書)。
【0092】
操作されたTALタンパク質はFokI切断ハーフドメインに連結して、非定型RVDを有するTALENを含むTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)を生じる。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。したがって、一部の実施形態において、TALENはTALエフェクターDNA結合ドメインおよび制限エンドヌクレアーゼドメイン(例えば、FokI)を含む。
【0093】
一部の場合において、TAL DNA結合ドメインはホーミングエンドヌクレアーゼ/メガヌクレアーゼに連結して「MegaTAL」を作製している。これらの融合タンパク質は、もちろん、操作されたヌクレアーゼによるいかなる部位以外(off−site)の切断も低下させるためにメガヌクレアーゼの低い切断頻度に依存する一方、部位特異的切断を方向付けるTAL DNA結合ドメインを活用する(Boissel(2013年)Nucl Acid Res 1〜11頁を参照のこと)。
【0094】
さらに他の実施形態では、TALENはコンパクトTALENを含む。これらは、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに連結した単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに対してどこに位置するかに応じて、TALE領域によって局在させられるニッカーゼとして作用するか、または二本鎖切断を生ずることができる(Beurdeleyら、(2013年)Nat Comm:1〜8 DOI:10.1038/ncomms2782を参照のこと)。
【0095】
加えて、本明細書に記載されているTALENのヌクレアーゼドメインはまた、DNA結合機能を提示することができ、任意のTALENは1つまたは複数のmega−TALEを有する追加のTALEN(例えば、1つまたは複数のTALEN(cTALENおよび/またはFokI−TALEN))と組み合わせて使用することができる。
【0096】
ある実施形態において、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択した標的部位に結合するように操作されるという点で非天然である。例えば、例えば、Beerliら(2002)Nature Biotechnol.20:135−141、Paboら(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340、Isalanら(2001)Nature Biotechnol.19:656−660、Segalら(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637、Chooら(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411−416、米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号、および米国特許公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号を参照されたく、これらすべては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0097】
操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して新規の結合特異性を有し得る。操作方法には、合理的設計および種々の種類の選択が含まれるが、これらに限定されない。合理的設計には、例えば、三重鎖(triplet)(または四重鎖(quadruplet))ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用が含まれ、各三重鎖または四重鎖ヌクレオチド配列は、特定の三重鎖または四重鎖配列に結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、共有の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
【0098】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む例示の選択方法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568号、ならびに国際公開第WO98/37186号、同第WO98/53057号、同第WO00/27878号、同第WO01/88197号、および英国特許第2,338,237号に開示されている。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有の国際公開第02/077227号に記載されている。
【0099】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメインおよび/またはマルチフィンガージンクフィンガータンパク質は、例えば、5アミノ酸長以上のリンカーを含む任意の好適なリンカー配列を用いてともに連結され得る。例示の6アミノ酸長以上のリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。
【0100】
一部の実施形態において、TALENはエンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。他の実施形態において、TALE−ヌクレアーゼはmega TALである。これらのmega TALヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは、単量体として活性があり、活性のために二量体化を必要としない(Boisselら、(2013年)Nucl Acid Res:1〜13、doi:10.1093/nar/gkt1224を参照のこと)。
【0101】
さらに他の実施形態では、ヌクレアーゼはコンパクトTALENを含む。これらは、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに連結した単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに対してどこに位置するかに応じて、TALE領域によって局在させられるニッカーゼとして作用するか、または二本鎖切断を生ずることができる(Beurdeleyら、(2013年)Nat Comm:1〜8 DOI:10.1038/ncomms2782を参照のこと)。加えて、ヌクレアーゼドメインはまた、DNA結合機能を呈することができる。任意のTALENは1つまたは複数のmega−TALEを有する追加のTALEN(例えば、1つまたは複数のTALEN(cTALENまたはFokI−TALEN))と組み合わせて使用することができる。
【0102】
標的部位の選択、および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)を設計および構築するための方法は、当業者に知られており、米国特許第6,140,081号、同第5,789,538号、同第6,453,242号、同第6,534,261号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,200,759号、国際公開第WO95/19431号、同第WO96/06166号、同第WO98/53057号、同第WO98/54311号、同第WO00/27878号、同第WO01/60970号、同第WO01/88197号、同第WO02/099084号、同第WO98/53058号、同第WO98/53059号、同第WO98/53060号、同第WO02/016536号、および同第WO03/016496に詳細に記載されている。
【0103】
加えて、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガージンクフィンガータンパク質は、例えば、5アミノ酸長以上のリンカーを含む任意の好適なリンカー配列を用いてともに連結され得る。例示の6アミノ酸長以上のリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。
【0104】
一部の実施形態において、DNA結合ドメインはTtAgo系の一部である(Swartsら、同書;Shengら、同書を参照のこと)。真核細胞において、遺伝子サイレンシングは、アルゴノート(Ago)ファミリーのタンパク質によって媒介される。このパラダイムにおいて、Agoは小さな(19〜31nt)RNAに結合される。このタンパク質−RNAサイレンシング複合体は、小さなRNAと標的の間のワトソンクリック塩基対形成を介して標的RNAを認識し、標的RNAをエンドヌクレアーゼとして(endonucleolytically)切断する(Vogel(2014年)Science
344巻:972〜973頁)。対照的に、原核細胞Agoタンパク質は小さな一本鎖DNA断片に結合し、外来性(しばしばウイルス性の)DNAを検出して除去するように機能するようである(Yuanら、(2005年)Mol. Cell 19巻、405頁;Olovnikovら、(2013年)Mol. Cell 51巻、594頁;Swartsら、同書)。例示的な原核生物Agoタンパク質には、Aquifex aeolicus、Rhodobacter sphaeroidesおよびThermus
thermophilus由来のタンパク質が挙げられる。
【0105】
最もよく特徴付けられた原核生物Agoタンパク質の1つは、T.thermophilus由来のタンパク質である(TtAgo;Swartsら、同書)。TtAgoは5’リン酸基を有する15ntまたは13〜25ntの一本鎖DNA断片と会合する。TtAgoが結合したこの「ガイドDNA」は、タンパク質−DNA複合体がDNAのサードパーティー分子におけるワトソン−クリック相補的DNA配列に結合するように方向付けるために役立つ。一旦、これらのガイドDNAにおける配列情報によって標的DNAの特定が可能になったら、TtAgo−ガイドDNA複合体は標的DNAを切断する。このような機構はまた、その標的DNAに結合する間のTtAgo−ガイドDNA複合体の構造によって支持される(G. Shengら、同書)。Rhodobacter sphaeroides由来のAgo(RsAgo)は、類似の特性を有する(Olivnikovら、同書)。
【0106】
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAは、TtAgoタンパク質に負荷することができる(Swartsら、同書)。TtAgo切断の特異性はガイドDNAによって方向付けられるので、したがって、研究者が特定した外因性ガイドDNAによって形成されるTtAgo−DNA複合体は、TtAgo標的DNA切断を研究者が特定した相補的な標的DNAに方向付ける。このようにして、DNAにおいて標的化二本鎖切断を作製することができる。TtAgo−ガイドDNA系(または他の生物由来のオルソログであるAgo−ガイドDNA系)の使用によって、細胞内のゲノムDNAの標的化切断が可能である。このような切断は、一本鎖または二本鎖であることができる。哺乳動物のゲノムDNAの切断の場合、哺乳動物細胞における発現のために最適化されたTtAgoコドンのバージョンを使用することが好ましい。さらに、TtAgoタンパク質が細胞貫通ペプチドに融合した、in vitroにおいて形成されたTtAgo−DNA複合体で細胞を処置することが好ましい場合がある。さらに、変異誘発によって摂氏37度で活性が増強するように改変されたTtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。Ago−RNA媒介性DNA切断は、DNA切断を活用するために当該分野で標準的な技法を使用する遺伝子ノックアウト、標的化遺伝子付加、遺伝子修正、標的化遺伝子欠失を含む、一連の結果に影響を及ぼすように使用することができた。
【0107】
ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPR/Cas系を含む。この系のRNA構成成分をコードするCRISPR(規則的な間隔でクラスター化された短鎖反復回文配列)遺伝子座と、タンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年、Mol. Microbiol.43巻:1565〜1575頁;Makarovaら、2002年、Nucleic Acids Res.30巻:482〜496頁;Makarovaら、2006年、Biol. Direct 1巻:7頁;Haftら、2005年、PLoS Comput. Biol.1巻:e60頁)は、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR媒介性核酸切断の特異性をプログラムすることができる、CRISPR関連(Cas)遺伝子と非コードRNAエレメントの組み合わせを含有する。
【0108】
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられた系の1つであり、連続的4ステップで標的化DNA二本鎖切断を行う。第一に、2種の非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第二に、tracrRNAが、プレcrRNAの反復領域にハイブリダイズし、プレcrRNAのプロセシングを媒介して、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAとする。第三に、crRNAにおけるスペーサーと、標的認識の追加的な要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)のとなりの標的DNAにおけるプロトスペーサーとの間のワトソンクリック塩基対形成により、成熟crRNA:tracrRNA複合体が、標的DNAにCas9を方向付ける。最後に、Cas9が、標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内に二本鎖切断を生じる。CRISPR/Cas系の活性は、3ステップからなる:(i)「適応」と呼ばれるプロセスにおける、将来的な攻撃を防止するための、CRISPRアレイへの異質(alien)DNA配列の挿入、(ii)関連するタンパク質の発現ならびにアレイの発現およびプロセシングと、続く(iii)異質核酸のRNA媒介性干渉。したがって、細菌細胞において、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかは、CRISPR/Cas系の天然機能に関与し、異質DNAの挿入等、機能における役割を果たす。
【0109】
ある特定の実施形態において、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能的誘導体」であり得る。ネイティブ配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、ネイティブ配列ポリペプチドと共通した定性的生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」として、対応するネイティブ配列ポリペプチドと共通した生物学的活性を有するのであれば、ネイティブ配列の断片ならびにネイティブ配列ポリペプチドおよびその断片の誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に企図される生物学的活性とは、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。「誘導体」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合性修飾物およびこれらの融合物の両方を包含する。Casポリペプチドまたはその断片の好適な誘導体として、Casタンパク質またはその断片の変異体、融合物、共有結合性修飾物が挙げられるがこれらに限定されない。Casタンパク質またはその断片およびCasタンパク質またはその断片の誘導体を含むCasタンパク質は、細胞から得ることができるもしくは化学的に合成することができるまたはこれら2つの手順の組み合わせによるものであることができる。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、あるいはCasタンパク質を天然に産生し、より高い発現レベルで内因性Casタンパク質を産生するように、または内因性Casと同じもしくは異なるCasをコードする外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であり得る。場合によっては、細胞は、Casタンパク質を天然に産生せず、Casタンパク質を産生するよう遺伝子操作されている。
【0110】
セーフハーバーおよび他の遺伝子に標的化される例示的なCRISPR/Casヌクレアーゼ系は、例えば、米国出願第14/278,903号に開示されている。
【0111】
したがって、ヌクレアーゼは、任意の遺伝子における標的部位に特異的に結合する任意のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガータンパク質、TALE、単鎖ガイドRNA)を含むことができる。
【0112】
B.切断ドメイン
任意の好適な切断ドメインをDNA結合ドメインに作用的に連結して、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENまたはCRISPR/Casヌクレアーゼ系等、ヌクレアーゼを形成することができる。
【0113】
上に記す通り、切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の切断ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよび切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメイン)は、DNA結合ドメインに対し異種であり得る。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼとして、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、2002〜2003年カタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379〜3388頁を参照されたい。DNAを切断する追加的な酵素は、公知のものである(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNase I;ミクロコッカスヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ; Linnら(編)Nucleases、ColdSpring Harbor Laboratory Press、1993年も参照のこと)。これらの酵素(またはその機能断片)のうち1つまたは複数は、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの源として使用することができる。
【0114】
同様に、上記のように、切断活性のために二量体化を必要とする切断ハーフドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。概して、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が切断に必要とされる。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質が用いられ得る。2つの切断ハーフドメインは同一のエンドヌクレアーゼ(もしくはその機能的断片)に由来し得るか、または各切断ハーフドメインが異なるエンドヌクレアーゼ(もしくはその機能的断片)に由来し得る。加えて、2つの融合タンパク質のそれらの各標的部位への結合が、互いに空間的定位でこれらの切断ハーフドメインを配置して、例えば二量体化によって切断ハーフドメインが機能的切断ドメインを形成することを可能にするように、2つの融合タンパク質の標的部位は、好ましくは、互いに対して配置される。したがって、ある実施形態において、標的部位の近端は、5〜8個のヌクレオチドまたは15〜18個のヌクレオチド分だけ離れている。しかしながら、任意の数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対は、2つの標的部位の間に介在してもよい(例えば、2〜50個以上のヌクレオチド対)。概して、切断部位は、標的部位の間に存在する。
【0115】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、DNAに配列特異的に結合し(認識部位で)、かつ結合部位でまたはその付近でDNAを切断することができる。ある制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から除去された部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素Fok Iは、一方の鎖上でその認識部位から9ヌクレオチド離れた位置で、他方の鎖上でその認識部位から13ヌクレオチド離れた位置でDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許5,356,802号、同第5,436,150号、および同第5,487,994、ならびにLiら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4275−4279、Liら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA
90:2764−2768、Kimら(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883−887、Kimら(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978−31,982を参照されたい。したがって、一実施形態において、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)および1つ以上のジンクフィンガー結合ドメイン(操作され得るか否かに関わらず)を含む。
【0116】
その切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示のIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaiteら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10,570−10,575。したがって、本開示の目的のために、開示される融合タンパク質において使用されるFok I酵素の一部は、切断ハーフドメインと見なされる。したがって、ジンクフィンガー−Fok I融合物を用いた細胞配列の標的化二本鎖切断および/または標的化置き換えのために、それぞれFok I切断ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質を用いて、触媒的に活性な切断ドメインを再構築することができる。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFok I切断ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子を用いることもできる。ジンクフィンガー−FokI融合物を使用した標的化切断および標的化配列改変のためのパラメータは、本開示の他のところで提供されている。
【0117】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持するか、または多量体化(例えば、二量体化)して機能的切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の部分であり得る。
【0118】
例示のIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO07/014275号に記載されている。さらなる制限酵素も分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを含み、これらは、本開示によって企図される。例えば、Robertsら(2003)Nucleic Acids Res.31:418−420を参照されたい。
【0119】
ある実施形態において、切断ドメインは、例えば、すべての開示が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20050064474号、同第20060188987号、同第20070305346号および同第20080131962号に記載されるように、ホモ二量体化を最小限に抑えるか、または阻止する1つ以上の操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン変異体とも称される)を含む。Fok Iの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538位のアミノ酸残基は、すべてFok I切断ハーフドメインの二量体化に影響を与える標的である。
【0120】
偏性ヘテロ二量体を形成するFok Iの例示の操作された切断ハーフドメインには、第1の切断ハーフドメインがFok Iの490位および538位のアミノ酸残基に変異を含み、かつ第2の切断ハーフドメインが486位および499位のアミノ酸残基に変異を含む対が含まれる。
【0121】
したがって、一実施形態において、490位における変異は、Glu(E)をLys(K)で置き換え、538位における変異は、Iso(I)をLys(K)で置き換え、486位における変異は、Gln(Q)をGlu(E)で置き換え、499位における変異は、Iso(I)をLys(K)で置き換える。具体的には、本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインを1つの切断ハーフドメインにおいて490位での変異(E→K)および538位での変異(I→K)によって調製して「E490K:I538K」と称される操作された切断ハーフドメインを生成し、別の切断ハーフドメインにおいて486位での変異(Q→E)および499での変異(I→L)によって調製して「Q486E:I499L」と称される操作された切断ハーフドメインを生成した。本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小限に抑えられるか、または無効にされる偏性ヘテロ二量体変異体である。例えば、米国特許第7,914,796号を参照されたく、この開示は、参照によりその全体がすべての目的のために組み込まれる。
【0122】
ある実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、486、499、および496位(野生型FokIに対して番号付けられた)での変異、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で、かつ496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える(それぞれ、「ELD」および「ELE」ドメインとも称される)変異を含む。他の実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、490、538、および537位(野生型FokIに対して番号付けられた)での変異、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で、かつ537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える(それぞれ、「KKK」および「KKR」ドメインとも称される)変異を含む。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、490および537位(野生型FokIに対する番号付け)での変異、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、かつ537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える(それぞれ、「KIK」および「KIR」ドメインとも称される)変異を含む。(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,623,618号を参照されたい))。他の実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、「Sharkey」および/または「Sharkey」変異を含む(Guoら、(2010年)J. Mol. Biol.400巻(1号):96〜107頁を参照のこと)。
【0123】
本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインは任意の好適な方法を用いて、例えば、米国特許第7,888,121号、同第7,914,796号、同第8,034,598号、および同第8,823,618号に記載の野生型切断ハーフドメイン(Fok I)の部位特異的変異誘発によって調製され得る。
【0124】
あるいは、ヌクレアーゼは、いわゆる「スプリット酵素」技術を用いて、核酸標的部位においてインビボで組み立てられ得る(例えば、米国特許公開20090068164号を参照のこと)。そのようなスプリット酵素の構成要素は、別個の発現構築物のいずれかで発現され得るか、または個々の構成要素が例えば自己切断2AペプチドもしくはIRES配列によって分離される1つのオープンリーディングフレームにおいて連結され得る。構成要素は、個々のジンクフィンガー結合ドメインであり得るか、またはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0125】
ヌクレアーゼは、例えば、国際公開第WO2009/042163号および同第20090068164号に記載の酵母ベースの染色体系において、使用前に活性についてスクリーニングすることができる。ヌクレアーゼ発現構築物は、当技術分野で既知の方法を用いて容易に設計することができる。例えば、米国特許第7,888,121号、同第8,409,861号、同第7,972,854号、同第7,914,796号、同第7,951,925号、同第7,919,313号、および米国特許公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060188987号、同第20060063231号、および国際公開第WO07/014275号を参照されたい。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(脱抑制)され、かつグルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にあり得る。
【0126】
したがって、ヌクレアーゼは、ドナー(導入遺伝子)を挿入することが望ましい任意の部位を特異的に標的化する。
【0127】
標的部位
上で詳細に記載されるように、DNA結合ドメインは、例えば、CCR5、HPRT、アルブミン、Rosa、CXCR4およびAAVS1などのセーフハーバー遺伝子座における任意の選択した配列に結合するように操作され得る。操作されたDNA結合ドメインは、天然に存在するDNA結合ドメインと比較して新規の結合特異性を有し得る。操作方法には、合理的設計および種々の種類の選択が含まれるが、これらに限定されない。合理的設計は、例えば、三重鎖(または四重鎖)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、各三重鎖または四重鎖ヌクレオチド配列は、特定の三重鎖または四重鎖配列に結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、共有の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。TALエフェクタードメインの合理的設計も実行され得る。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0128】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含むDNA結合ドメインに適用可能な例示の選択方法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568号、ならびに国際公開第WO98/37186号、同第WO98/53057号、同第WO00/27878号、同第WO01/88197号、そして英国特許第GB2,338,237号に開示されている。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有の国際公開第WO02/077227号に記載されている。
【0129】
標的部位の選択、ヌクレアーゼ、および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)を設計および構築するための方法は、当業者に知られており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号に詳細に記載されている。
【0130】
加えて、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガージンクフィンガータンパク質)は、例えば、5アミノ酸以上のリンカーを含む任意の好適なリンカー配列を用いてともに連結され得る。例示の6アミノ酸長以上のリンカー配列については、例えば、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のDNA結合ドメイン間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。米国特許第8,586,526号も参照されたい。
【0131】
障害を有する被験体において異常に発現される1つまたは複数のタンパク質の機能性バージョンをコードする配列の標的化挿入によって、障害(例えば、血友病、リソソーム蓄積障害(lysosomal storage disorder)、代謝障害、異常ヘモグロビン症)を処置するために、被験体のゲノムにおける任意の所望の挿入部位をヌクレアーゼで切断し、タンパク質をコードする配列を保有するドナーポリヌクレオチドの標的化挿入を刺激する。ヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ゲノムにおける任意の所望の部位を標的化することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、内因性セーフハーバー遺伝子座、例えば、内因性アルブミン遺伝子座を標的化する。
ドナー配列
【0132】
1つまたは複数のDNA配列を含む任意のドナー配列は、本明細書に記載されている方法を使用して組み込むことができる。タンパク質が異常に発現される(欠如している、および/または非機能性である)障害を処置するために、ドナー配列(「外因性配列」または「ドナー」または「導入遺伝子」とも呼ばれる)は、ドナー組み込み後に機能性タンパク質をコードして発現する配列を生じるようにタンパク質の機能性バージョンをコードする配列またはその一部を含む。好適なタンパク質の非限定的な例には、血友病の処置のための凝固因子タンパク質導入遺伝子、例えば、第VII因子(F7)、第VIII因子(F8)、第IX因子(F9もしくはF.IXもしくはFIX)および/または第X因子(F10もしくはFX)が挙げられ、これらのタンパク質の機能性断片が含まれる。ある特定の実施形態において、F8タンパク質のB−ドメインが欠失している。例えば、Chuahら、(2003年)Blood 101巻(5号):1734〜1743頁を参照されたい。他の実施形態において、導入遺伝子は、ドナー組み込み後に機能性F.IXタンパク質をコードして発現する配列を生じるために、機能性F.IXタンパク質をコードする配列またはその一部を含む。米国特許出願第14/565,014号も参照されたい。
【0133】
ドナー分子は、内因性遺伝子の全部、一部が発現するか、または全く発現しないように、内因性遺伝子に挿入することができる。例えば、本明細書に記載されているような機能性タンパク質配列を含む導入遺伝子は、内因性アルブミンの一部が導入遺伝子とともに発現するか、または全く発現しないように内因性アルブミン遺伝子座に挿入することができる。
【0134】
ドナー(導入遺伝子)配列は、融合タンパク質(複数可)(例えば、ヌクレアーゼ)の発現と逐次的に(例えば、その前または後に)細胞に導入される。ドナーポリヌクレオチドは、ドナーポリヌクレオチドとドナーポリヌクレオチドが相同性を有するゲノム配列との間の相同組換え(または相同組換え修復)を支持するために、ゲノム配列に対して十分相同性(連続または不連続領域)を含有することができるか、あるいは、ドナー配列は非HDR機構(例えば、NHEJドナー捕捉)によって組み込まれ得、この場合、ドナーポリヌクレオチド(例えば、ベクター)が細胞クロマチンにおける目的の領域に相同な配列を含有する必要はない。例えば、米国特許第7,888,121号および同第7,972,843号ならびに米国特許第8,703,489号ならびに米国特許公開第20110281361号および同第20110207221号を参照されたい。
【0135】
ドナー配列はまた、内因性遺伝子の遺伝子修正または改変のために使用することができる。このようなドナーは、内因性遺伝子における変異を修正するために使用されるオリゴヌクレオチドであり得るか、または遺伝子産物特性の改善を付与するように野生型配列を改変するために使用することができる。ドナーはまた、コード配列、調節配列または他の非コード配列における配列を修正または改変するために使用することができる。
【0136】
ドナーポリヌクレオチドは、DNAまたはRNA、一本鎖、二本鎖または部分的に一本鎖および部分的に二本鎖であってもよく、線状または環状(例えば、ミニサークル)形態で細胞に導入され得る。例えば、米国特許第8,703,489号ならびに米国特許出願公開第20110281361号および同第20110207221号を参照されたい。線状形態で導入される場合、当業者に公知の方法により、ドナー配列の末端を保護することができる(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基が、線状分子の3’末端に付加される、および/または自己相補的オリゴヌクレオチドが、一方または両方の末端に連結される。例えば、Changら(1987年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84巻:4959〜4963頁;Nehlsら(1996年)Science 272巻:886〜889頁を参照されたい。分解から外因性ポリヌクレオチドを保護するための追加的な方法として、末端アミノ基(複数可)の付加、ならびに例えばホスホロチオエート、ホスホルアミデートおよびO−メチルリボースまたはデオキシリボース残基等の修飾ヌクレオチド間結合の使用が挙げられるがこれらに限定されない。ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーターおよび抗生物質耐性をコードする遺伝子等、追加的な配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入することができる。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、裸の核酸として、リポソームまたはポロキサマー等の作用物質と複合体形成した核酸として導入することができる、あるいはウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス)により送達することができる。
【0137】
ドナーは一般に、その発現が、組み込み部位における内因性プロモーター(例えば、ドナーが患者のアルブミン遺伝子座に組み込まれる場合の内因性アルブミンプロモーター)により駆動されるように挿入される。したがって、導入遺伝子は、代表的に、その発現を駆動する制御エレメント(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)を欠く(例えば、「プロモーターのない構築物」ともいわれる)。それにも拘わらず、ドナーが、プロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、組み込みの際に機能性タンパク質の発現を駆動する構成的プロモーターまたは誘導性もしくは組織特異的(例えば、肝臓または血小板特異的)プロモーターを含んでいてもよいことは明白である。
【0138】
ドナー配列は、選択した任意の標的部位に特異的に組み込むことができ、それによって伝統的な遺伝子療法におけるランダム組み込みに関連した問題を排除することができる。
【0139】
内因性(例えば、アルブミン)配列が導入遺伝子とともに発現するとき、内因性配列は完全長配列(野生型もしくは変異体)または部分配列であり得る。好ましくは、アルブミン配列は機能性である。ある特定の実施形態において、内因性配列は、(内因性遺伝子座由来または導入遺伝子の一部として)導入遺伝子とともに発現することができるアルブミン配列である。これらの完全長または部分アルブミン配列の機能の非限定的な例として、導入遺伝子(例えば、治療用遺伝子)により発現されるポリペプチドの血清半減期の増加および/または担体としての作用が挙げられる。
【0140】
さらに、発現に必要とされないが、外因性配列は、転写または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インシュレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列を含むこともできる。
【0141】
ドナー配列のいずれかは、1つまたは複数の以下の修飾:コドン最適化(例えば、ヒトコドンへの)および/または1つもしくは複数のグリコシル化部位の付加を含むことができる。例えば、McIntoshら、(2013年)Blood(17巻):3335〜44頁を参照されたい。
【0142】
送達
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびに本明細書に記載のタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、任意の好適な手段によってインビボまたはエクスビボで送達され得る。
【0143】
本明細書に記載のヌクレアーゼを送達する方法は、例えば、米国特許第8,586,526号、同第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号に記載されており、これらのすべての開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物も、ジンクフィンガータンパク質(複数可)、TALENタンパク質(複数可)および/またはCRISPR/Cas系のうちの1つ以上をコードする配列を含むベクターを用いて送達され得る。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター等を含むが、これらに限定されない任意のベクター系を用いてもよい。米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号も参照されたく、参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる。さらに、これらのベクターのいずれも必要とされる配列のうちの1つ以上を含み得ることは明らかである。したがって、1つ以上のヌクレアーゼおよびドナー構築物が細胞に導入される場合、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、同一のベクター上または異なるベクター上に担持され得る。複数のベクターが使用される場合、各ベクターは、1つまたは複数のヌクレアーゼおよび/もしくはドナー構築物をコードする配列を含み得る。ある特定の実施形態において、導入遺伝子およびヌクレアーゼ(複数可)の両方を運ぶために1つのベクターを使用する。他の実施形態において、2つのベクターを使用し(同じまたは異なる種類のベクター)、一方のベクターがヌクレアーゼ(複数可)(例えば、ZFN対の左右のZFN、例えば、2Aペプチドを有する)を運び、一方が導入遺伝子を運ぶ。さらに他の実施形態において、3つのベクターを使用して、第1のベクターがヌクレアーゼ対の一方のヌクレアーゼ(例えば、左ZFN)を運び、第2のベクターがヌクレアーゼ対の他方のヌクレアーゼ(例えば、右ZFN)を運び、第3のベクターが導入遺伝子を運ぶ。
【0144】
ドナーおよび/またはヌクレアーゼは、任意の好適な濃度で使用することができる。ある特定の実施形態において、ドナーおよび別々のヌクレアーゼベクター(複数可)を同じ濃度で使用する。他の実施形態において、ドナーおよび別々のヌクレアーゼベクター(複数可)を異なる濃度で、例えば、1つのベクターが他の2、3、4、5、10倍またはそれ超で使用する(例えば、ドナーベクター(複数可)はヌクレアーゼベクター(複数可)よりも多い)。AAVベクターを送達のために使用するとき、例えば、ドナーおよび/またはヌクレアーゼを含むウイルスベクター(複数可)は、用量当たり1×10
8〜1×10
13粒子の間である(例えば、細胞または動物)。
【0145】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入方法を用いて、ヌクレアーゼおよびドナー構築物をコードする核酸を細胞(例えば、哺乳類細胞)および標的組織に導入することができる。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームまたはポロキサマー等の送達ビヒクルとの複合型の核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有するDNAウイルスおよびRNAウイルスを含む。操作されたDNA結合タンパク質およびこれらの結合タンパク質を含む融合タンパク質のin vivo送達の概説については、例えば、Rebar(2004年)Expert Opinion Invest.
Drugs 13巻(7号):829〜839頁;Rossiら、(2007年)Nature Biotech. 25巻(12号):1444〜1454頁ならびに一般的な遺伝子送達の文献、例えば、Anderson,Science 256:808−813(1992)、Nabel & Felgner,TIBTECH 11:211−217(1993)、Mitani & Caskey,TIBTECH 11:162−166(1993)、Dillon,TIBTECH 11:167−175(1993)、Miller,Nature 357:455−460(1992)、Van Brunt,Biotechnology 6(10):1149−1154(1988)、Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35−36(1995)、Kremer & Perricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31−44(1995)、Haddadaら,in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm(編)(1995)、およびYuら,Gene Therapy 1:13−26(1994)を参照されたい。
【0146】
核酸の非ウイルス送達の方法は、電気穿孔、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、および作用物質によって強化されたDNAの取り込みを含む。例えば、Sonitron2000システム(Rich−Mar)を用いたソノポレーションも、核酸の送達のために使用され得る。
【0147】
さらなる例示の核酸送達系は、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc(Rockville,Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)、およびCopernicus Therapeutics Incによって提供されるものを含む(例えば、米国特許第6,008,336号を参照のこと)。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、および同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性脂質および中性脂質は、Felgner、国際公開第WO91/17424号、同第WO91/16024号に記載のものを含む。
【0148】
免疫脂質複合体等の標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal,Science 270:404−410(1995)、Blaeseら,Cancer Gene Ther.2:291−297(1995)、Behrら,Bioconjugate Chem.5:382−389(1994)、Remyら,Bioconjugate Chem.5:647−654(1994)、Gao etら,Gene Therapy 2:710−722(1995)、Ahmadら,Cancer Res.52:4817−4820(1992)、米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照のこと)。
【0149】
さらなる送達方法は、送達される核酸のEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)へのパッケージングの使用を含む。これらのEDVは、二重特異性抗体を用いて標的組織に特異的に送達され、この抗体の一方のアームは、標的組織に対する特異性を有し、他方のアームは、EDVに対する特異性を有する。この抗体は、EDVを標的細胞表面に運び、その後、EDVは、エンドサイトーシスによって細胞内に運び込まれる。一旦細胞内に運び込まれると、その内容物は放出される(MacDiarmidら(2009)Nature Biotechnology 27(7):643を参照のこと)。
【0150】
操作されたヌクレアーゼおよび/またはドナーをコードする核酸を送達するためのRNAウイルスベースのまたはDNAウイルスベースの系の使用は、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化し、ウイルス負荷量を核に輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与され得るか(インビボ)、またはインビトロで細胞を処置するために使用され得、修飾細胞が患者に投与される(エクスビボ)。ヌクレアーゼおよび/またはドナーを送達するための従来のウイルスベースの系は、遺伝子導入用のレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。宿主ゲノムへの組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入方法を用いて可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、高い形質導入効率が多くの異なる細胞型および標的組織において観察されている。
【0151】
レトロウイルスの向性を、外来性エンベロープタンパク質を組み込むことによって変化させ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡張することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入するか、または感染させることができ、かつ典型的には高いウイルス力価を生成するレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6〜10kbの外来配列のパッケージング能力を有する、シス作用性の長い末端反復配列からなる。最小のシス作用LTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、これはその後、治療用遺伝子を標的細胞に組み込んで恒久的な導入遺伝子の発現を提供するために用いられる。一般に用いられているレトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびこれらの組み合わせに基づくベクターを含む(例えば、Buchscherら,J.Virol.66:2731−2739(1992)、Johannら,J.Virol.66:1635−1640(1992)、Sommerfeltら,Virol.176:58−59(1990)、Wilsonら,J.Virol.63:2374−2378(1989)、Millerら,J.Virol.65:2220−2224(1991)、PCT/US94/05700を参照のこと)。
【0152】
一過性の発現が好ましい用途において、アデノウイルスベースの系を用いることができる。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型において極めて高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて、高力価かつ高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純なシステムにおいて大量に生成することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターも、細胞を標的核酸で形質導入するために、例えば、核酸およびペプチドのインビトロ生成において、かつインビボおよびエクスビボ遺伝子治療手順のために用いられる(例えば、Westら,Virology 160:38−47(1987)、米国特許第4,797,368号、国際公開第WO93/24641号、Kotin,Human Gene Therapy 5:793−801(1994)、Muzyczka,J.Clin.Invest. 94:1351(1994)を参照のこと)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschinら,Mol.Cell.Biol.5:3251−3260(1985)、Tratschin,ら,Mol.Cell.Biol.4:2072−2081(1984)、Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466−6470(1984)、およびSamulskiら,J.Virol.63:03822−3828(1989)を含むいくつかの出版物に記載されている。
【0153】
少なくとも6つのウイルスベクターのアプローチが、臨床試験における遺伝子導入に現在利用可能であり、それらは、形質導入剤を生成するためにヘルパー細胞系に挿入される遺伝子による欠損ベクターの補完に関与するアプローチを利用する。
【0154】
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験に使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら,Blood 85:3048−305(1995)、Kohnら,Nat. Med.1:1017−102(1995)、Malechら,PNAS 94:22 12133−12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で使用された最初の治療用ベクターであった(Blaeseら,Science 270:475−480(1995))。50%以上の形質導入効率が、MFG−Sパッケージングベクターにおいて観察されている(Ellemら,Immunol Immunother.44(1):10−20(1997)、Dranoffら,Hum.Gene Ther.1:111−2(1997)。
【0155】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損性および非病原性パルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスに基づく有望な代替の遺伝子送達系である。すべてのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAVの145bpの逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノムへの組み込みに起因した効率的な遺伝子導入および安定した導入遺伝子送達は、このベクター系の重要な特徴である(Wagnerら,Lancet 351:9117 1702−3(1998)、Kearnsら,Gene Ther.9:748−55(1996))。他のAAV血清型(AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10またはシュードタイプ化AAV(AAV2/8、AAV8.2、AAV2/5、およびAAV2/6ならびに任意の新規AAV血清型)の例が挙げられる)も本発明に従って使用することができる。
【0156】
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で生成することができ、いくつかの異なる細胞型を容易に感染させる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置き換えるように操作され、その後、複製欠損ベクターは、欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増幅する。Adベクターは、肝臓、腎臓、および筋肉に見出されるもの等の非分裂の分化細胞を含む複数の種類の組織をインビボで形質導入することができる。従来のAdベクターは、高い輸送能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注射での抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド治療を含んだ(Stermanら,Hum.Gene Ther.7:1083−9(1998))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例として、Roseneckerら,Infection 24:1 5−10(1996)、Stermanら,Hum.Gene Ther.9:7 1083−1089(1998)、Welshら,Hum.Gene Ther.2:205−18(1995)、Alvarezら,Hum.Gene Ther.5:597−613(1997)、Topfら,Gene Ther.5:507−513(1998)、Stermanら,Hum.Gene Ther.7:1083−1089(1998)が挙げられる。
【0157】
宿主細胞を感染させることができるウイルス粒子を形成するために、パッケージング細胞が使用される。そのような細胞は、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞を含む。遺伝子治療に用いられるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする生産細胞系によって生成される。ベクターは、典型的には、パッケージングおよびその後の宿主への組み込み(適切な場合)に必要な最小限のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられる。失われたウイルス機能は、パッケージング細胞系によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療に用いられるAAVベクターは、典型的には、パッケージングおよび宿主ゲノムへの組み込みに必要なAAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわち、repおよびcapをコードするが、ITR配列を欠くヘルパープラスミドを含む細胞系内にパッケージングされる。細胞系は、ヘルパーとしてのアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。このヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如のため、相当な量でパッケージングされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性の高い熱処理によって減少させることができる。
【0158】
多くの遺伝子治療の用途において、特定の組織型に対して高度の特異性を有する遺伝子治療ベクターが送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上のウイルスのコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現させることにより、所与の細胞型に対して特異性を有するように改変され得る。リガンドは、目的とする細胞型上に存在することが知られている受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Hanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747−9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスを、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現するように改変することができ、その組換えウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現するあるヒト乳がん細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、かつ、ウイルスが細胞表面受容体のリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルスと標的細胞とのペアにまで拡張することができる。例えば、繊維状ファージは、実質的に任意の選択された細胞受容体に対する特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示するように操作され得る。上記の説明は、主としてウイルスベクターに適用されるが、同一の原理が非ウイルスベクターにも適用され得る。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取り込みを好む特定の取り込み配列を含むように操作され得る。
【0159】
遺伝子治療ベクターは、以下に記載されるように、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、もしくは頭蓋内注入)または局所適用による個々の患者への投与によってインビボで送達することができる。あるいは、ベクターは、細胞、例えば、個々の患者から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または万能ドナーの造血幹細胞等にエクスビボで送達することもでき、その後、該細胞が、通常はベクターを組み込んだ細胞の選択後に、患者に再移植される。
【0160】
ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)は、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。あるいは、裸のDNAは投与され得る。投与は、注射、注入、局所適用、および電気穿孔を含むが、これらに限定されない、通常、血液または組織細胞との最終的な接触へと分子を導入するために用いられる経路のうちのいずれかによる。そのような核酸を投与する好適な方法は、利用可能であって、かつ当業者に周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路が用いられてもよいが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりも即時的かつより効果的な反応を提供することができる。
【0161】
本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドおよび/またはドナー導入遺伝子ポリヌクレオチド)の導入に好適なベクターは、非組み込み型レンチウイルスベクター(IDLV)を含む。例えば、Oryら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11382−11388、Dullら(1998)J.Virol.72:8463−8471、Zufferyら(1998)J.Virol.72:9873−9880、Follenziら(2000)Nature Genetics 25:217−222、米国特許公開第2009/054985号を参照されたい。
【0162】
薬学的に許容されるキャリアは、投与される特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によっても部分的に決定される。したがって、以下に記載されるように、多種多様な薬学的組成物の好適な製剤が利用可能である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17版,1989を参照のこと)。
【0163】
ヌクレアーゼコード配列およびドナー構築物が同一または異なる系を用いて送達され得ることは明らかである。例えば、ヌクレアーゼおよびドナーは、同じベクターによって運ばれてもよい。あるいは、ドナーポリヌクレオチドは、プラスミドによって運ばれてもよく、1つ以上のヌクレアーゼは、AAVベクターによって運ばれてもよい。さらに、同一または異なる経路(筋肉内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋肉内注射)によって異なるベクターが投与されてもよい。本明細書に記載されている方法において、ベクターは逐次的に投与され、典型的には最初にヌクレアーゼ(複数可)を投与して、その後導入遺伝子を投与する。ヌクレアーゼ(複数可)および/または導入遺伝子の複数回投与を実施することができる。
【0164】
したがって、本開示は、タンパク質が異常に発現される任意の障害のin vivoまたはex vivoにおける処置を含む。処置することができる疾患の非限定的な例には、血友病(例えば、F7、F8、F9および/またはF10のヌクレアーゼ媒介性組み込みを介して)、リソソーム蓄積症、代謝疾患、異常ヘモグロビン症および他の遺伝性疾患が含まれる。例えば、米国特許公開第20120128635号;同第20140093913号;同第20140080216号および同第20140155468号を参照されたい。
【0165】
組成物は、血清、肝臓または標的細胞における治療用ポリペプチドの所望の濃度を得るために有効な量でヒト患者に投与される。投与は、ポリヌクレオチドを所望の標的細胞に送達する任意の手段によって行うことができる。例えば、in vivoおよびex vivoの両方の方法が企図される。門脈への静脈内注射は、好ましい投与方法である。他のin vivo投与様式には、例えば、肝臓の葉もしくは胆管への直接注射および肝動脈を通るものを含む肝臓に対して遠位の静脈内注射、肝実質への直接注射、肝動脈を介した注射、ならびに/または胆道系を通る逆行性注射が含まれる。Ex vivo様式の投与には、切除した肝細胞または肝臓の他の細胞のin vitroにおける形質導入、続く形質導入し切除した肝細胞をヒト患者の門脈血管系、肝実質または胆道系へ戻す注入が含まれる、例えば、Grossmanら、(1994年)Nature Genetics、6巻:335〜341頁を参照されたい。
【0166】
投与するヌクレアーゼ(複数可)およびドナーの有効量は、患者毎および目的の治療用ポリペプチドによって変化する。したがって、有効量は、組成物を投与する医師によって最も良く決定され、適切な投与量は、当業者によって容易に決定され得る。組み込みおよび発現のために十分な時間をおいた後(典型的に、例えば、4〜15日間)、治療用ポリペプチドの血清または他の組織レベルを分析し、投与前の初期レベルと比較して、投与する量が低すぎるか、正しい範囲内か、または高すぎるかを決定する。初期およびその後の投与の好適なレジメンはまた可変であるが、初期投与、必要ならばその後の投与によって代表される。その後の投与は、毎日から毎年から数年毎の可変の間隔で投与することができる。当業者であれば、送達ベクターの免疫抑制によって形質導入の阻害または遮断を回避するために、適切な免疫抑制技法が推奨され得ることを理解する、例えば、Vilquinら、(1995年)Human Gene Ther.、6巻:1391〜1401頁を参照されたい。
【0167】
エクスビボ投与用の製剤およびインビボ投与用の製剤は両方ともに、液体中の懸濁液または乳化液を含む。有効成分は、多くの場合、薬学的に許容され、かつ有効成分と相溶性のある賦形剤と混合される。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール等、およびそれらの組み合わせを含む。加えて、組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、または医薬組成物の有効性を増強する他の試薬等の少量の補助物質を含有してもよい。
【0168】
以下の実施例は、ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む、本開示の例示的な実施形態に関する。これが、例証のみを目的としており、他のヌクレアーゼ、例えば、操作されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)および/または天然に存在するもしくは操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)DNA結合ドメインおよび異種切断ドメインの融合物、TALEN(TAL−エフェクターDNA結合ドメインおよび制限エンドヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼドメイン)、Ttagoヌクレアーゼおよび/または操作された単鎖ガイドRNAを含むCRISPR/Cas系を使用することができることが理解されよう。
【実施例】
【0169】
(実施例1)
ヒト初代肝細胞におけるZFN−ヌクレアーゼ(mRNA)およびドナー−AAVの添加順序の最適化
in vitroにおけるZFNをコードするmRNAによるトランスフェクションに関してAAVドナー添加の最適な時期を特定するために、ヒト初代肝細胞(Celsis)を使用した。肝細胞培養物全てについて、以下の方法および条件を使用した。肝細胞基本培地、HBM(Lonza)10ml中のマトリゲル(BD Biosciences)250μlの混合物でコーティングし、各ウェルを混合物150μlで覆った24または48ウェル細胞培養皿(VWR)を使用した。プレートを37℃で1時間インキュベートした。解凍/平板培養培地は、InVitroGRO CP培地(Celsis In
Vitro Technologies)18mlおよびTorpedo antibiotic mix(Celsis In Vitro Technologies)400μlを組み合わせることによって調製した。一旦、プレートを調製したら、細胞(Celsis In Vitro Technologies、平板培養可能な(plateable)雄アカゲザルの肝細胞、平板培養可能な女性ヒト肝細胞)を液体窒素気相から37℃の水浴に直接移した。バイアルは、細胞が完全に解凍するまでゆっくり撹拌した。
【0170】
細胞は、予め加温した解凍/平板培養培地5mlを含有するコニカルチューブ50mlに直接移した。細胞を完全に移すために、バイアルは解凍/平板培養培地1mlで洗浄した。細胞は、チューブをゆっくり回旋することによって再懸濁させた。少量のアリコート(20μl)を取り出して、細胞計数を実施し、トリパンブルー溶液1:5(Cellgro)を使用して細胞生存能を決定した。次に、細胞を75×gで5分間遠心分離した。上清を完全にデカンテーションし、細胞を1×10e6細胞/mlで再懸濁した。マトリゲル混合物をウェルから吸引し、細胞を48ウェル皿に2×10e5細胞/ウェルで接種した。次に細胞を37℃/5% CO2インキュベーター内でインキュベートした。形質導入/トランスフェクションの時点で、細胞を維持培地HCM(LonzaおよびHCM(商標)SingleQuots(商標))に切り替えた。
【0171】
この実験のための肝細胞は、BD Matrigel(商標)(BD Biosciences)でコーティングした24ウェルプレート(ウェル当たり2e5細胞)に接種し、回復させるために24時間処置しないままにした。細胞はHCM(商標)(Lonza)で維持した。接種して24時間後、hALB特異的相同アームに隣接した、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子タンパク質をコードするDNAドナーを含有するAAV2/6粒子のMOI 1e5に細胞を曝露した。これらの実験において、AAVウイルスは標準HEK293産生プロトコール(Matsushitaら、(1998年)Gene Therapy 5巻:938〜945頁を参照のこと)を使用して調製した。
【0172】
同日または24、48または72時間後それぞれに、ヒトアルブミン特異的ZFN対35364−ELD−2A−35396−KKRをコードするmRNA(自己切断2Aペプチド配列によって隔てられた35364/35396対の両ヌクレアーゼをコードする単鎖mRNA)1μgをLipofectamine(登録商標)RNAiMAX(Invitrogen)を使用してトランスフェクトした。(ヒトアルブミン特異的ZFN対35364/35396の記載については米国特許公開第20130177983号を参照のこと)。
【0173】
肝細胞の上清は7日後に採取し、SEAP活性を測定した(SEAPレポーター遺伝子アッセイ;Roche)。
【0174】
結果は、ZFN mRNAのトランスフェクションは、AAVドナーを添加して24時間後または48時間後が最適であることを示した(
図2)。対照的に、同日のまたは72時間離したZFNドナーの送達は、著しく効率が悪かった。
(実施例2)
NHP初代肝細胞におけるZFN−ヌクレアーゼ(mRNA)およびドナー−AAV添加の添加順序の最適化
【0175】
より臨床的に関連のある導入遺伝子ドナーを使用して実施例1の最適化条件を試験するために、ヒト第9因子(hF9)遺伝子をドナーとして利用し、NHP(アカゲザル)初代肝細胞で試験した。肝細胞は、前述のようにマトリゲルでコーティングした48ウェルプレートに接種し(ウェル当たり2e5細胞)、回復させるために24時間処置しないままにした。接種して24時間後、276ヌクレオチド(左)および100ヌクレオチド(右)それぞれのアカゲザルアルブミン特異的相同アームに隣接したhF9導入遺伝子を含有するAAV2/6粒子のMOI 3e5に細胞を曝露した(
図3を参照のこと)。ドナーAAVを送達して24時間後または48時間後に、アカゲザルアルブミン特異的ZFN
37804−ELD/43043−KKRまたは36806−FokI WT/35396−FokI WTのいずれかをコードする単鎖mRNA(単鎖ZFN mRNA当たり0.5μg)の2つの異なる対を前述のようにトランスフェクトした。(様々なアルブミン特異的ZFN対の記載については米国特許公開第20130177983号ならびに米国特許出願第14/565,014号および同第14/565,014号を参照のこと)。この実施例において、2つのZFNは、実施例1で記載したように2A融合ペプチドによって隔てられた1つのRNAではなく、別々のmRNAとして送達した。
【0176】
肝細胞の上清を毎日採取し、4日目から10日目の上清(mRNAトランスフェクションは1日目である)はヒトF.IXタンパク質に対するELISAによって、アカゲザルF.IXタンパク質とヒトF.IXとを区別することができる一次抗体(Hematologic systems)を使用して分析した。結果は、導入遺伝子ドナーを運ぶAAVを添加して24時間後のZFN mRNAのトランスフェクションが導入遺伝子発現に最適であることを示した(
図3Cを参照のこと)。
【0177】
これらの結果は、ウェスタン分析によって検出した、37804/43043対を使用してZFNをコードするmRNAをトランスフェクションしてから9〜24時間後の間にピークがあるNHP肝細胞で観察されたZFN発現プロファイルと一致している(
図4)。ZFN発現は、抗Fok I一次抗体を使用する標準的ウェスタンブロットプロトコールによってモニターした。
(実施例3)
NHP肝細胞におけるZFN−ヌクレアーゼ(AAV2/6)およびhF9−ドナー(AAV2/6)添加の最適化
【0178】
ZFN−AAVおよびドナー−AAVの遅延添加も、同日添加よりもすぐれているかどうかを明らかにするために、AAV2/6ウイルスベクターを使用してZFNおよびドナーの両方を細胞に送達するin vitroにおけるAAV形質導入系を調べた。細胞は前述のように調製し、AAV2/6(ZFN−AAVまたはドナー−AAV)は培地で予め希釈したウイルスストックを添加することによって細胞に導入して、ZFNおよびドナーの両方をNHP(アカゲザル)初代肝細胞に送達した。ウイルスは細胞で24時間維持し、次に肝細胞培地を交換した。さらに、上清は毎日採取し、アカゲザルF.IXタンパク質とヒトF.IXとを区別することができる一次抗体(Hematologic systems)を使用してELISAによってhF.IX分泌を試験した。
【0179】
これらの実験では、NHP(アカゲザル)初代肝細胞は、2つの霊長類アルブミン特異的ZFN36806または35396のうちの1つを含有するAAV2/6ウイルスおよびドナー(霊長類アルブミン相同アームを有するhF9導入遺伝子)を含むAAV2/6ウイルスで形質導入した。2種類のウイルスは、同日に導入するか、またはZFN−AAVを最初に送達し、次にドナー−AAVを7、24もしくは48時間後に送達した。ドナー−AAVとZFN−AAVとの比は5:1で、得られた感染多重度(MOI)は単一のZFN−AAV当たり3e5(総ZFN MOI:6e5)およびドナー−AAVについては3e6であった。
【0180】
結果は、収集した全時点において細胞上清中で検出されたhF.IX発現は、ドナー−AAVをZFN−AAVの24時間後に送達したとき最高であったことを示した(
図5Aを参照のこと)。
【0181】
次に、ドナー−AAVとZFN−AAVの比を変化させ、前記のように同時に送達するか、またはドナー−AAVをZFN−AAVの7、24もしくは48時間後に送達した。以前の結果と同様に、ZFN−AAVの24時間後のAAV−ドナーの送達は、この実験において導入遺伝子発現を成功させた(
図5Bを参照のこと)。
(実施例4)
NHP肝細胞における末端捕捉を介したZFN−ヌクレアーゼ(AAV2/6)およびhF9−ドナー(AAV2/6)添加の最適化
【0182】
実施例3において、hF9導入遺伝子は、アカゲザルアルブミン遺伝子におけるZFN切断部位の周囲の領域に相同な相同アームに隣接し、これは、相同組換え対を介して、またはNHEJ依存性末端捕捉によって導入遺伝子の組み込みを可能にした。次に、ドナーはアカゲザルアルブミン遺伝子に相同ではない相同アーム(相同アームはヒトF9遺伝子に相同である)で設計した。したがって、このドナーの組み込みは、NHEJ依存性末端捕捉のみによって起こる必要があった。
【0183】
実験条件は、実施例3で記載した条件であり、ここではZFN−AAVを添加し、その後ドナー−AAVをすぐに、または7、24もしくは48時間後に添加した。前記と同様に、細胞上清を収集し、hF.IXタンパク質発現を分析した。結果(
図6を参照のこと)は、ドナーAAVトランスフェクションに先立つ24時間の遅延が組み込み機構と独立した最大導入遺伝子発現に最適であることを実証した。
(実施例5)
NHP肝細胞におけるZFN−ヌクレアーゼ(AAV2/6)およびhF9−ドナー(AAV2/6)添加の最適化
【0184】
以前の実施例の結果に基づいて、導入遺伝子(例えば、hF.IX)発現の増加はヌクレアーゼ(ZFN)発現および活性に密接に関連しているものと考えられる。したがって、ZFNを最初に送達し、次にドナーを含有するAAVを24時間後に送達する最適化条件は、最初の24時間のドナーAAVの非存在下でZFN活性の増加をもたらし得、次にドナー組み込み/導入遺伝子発現(hF.IX分泌)の増加を引き起こす。
【0185】
これを試験するため、NHP(アカゲザル)初代肝細胞を、アカゲザルアルブミン特異的ZFN対(37804:43043)およびヒトアルブミン遺伝子座に相同な相同アームに隣接したhF9導入遺伝子ドナーで処置したが、これは、hF9導入遺伝子の組み込みがNHEJ依存性末端捕捉によってのみ起こり得ることを意味する。ZFN活性およびドナー組み込みの両方に対するZFN:ドナー比の影響を観察するために、様々なドナー:ZFN1:ZFN2比(2:1:1、6:1:1および10:1:1)も調べた。これらの実験において、ZFNをコードするAAV2/6のMOIは、単一のZFN当たり3e5(総ZFN MOI:6e5)で固定し、したがって、他の条件のAAV2/6ドナーMOIはそれぞれ6e5(2:1:1)、1.8e6(6:1:1)および3e6(10:1:1)であった。
【0186】
NHP(アカゲザル)初代肝細胞(Celsis)は前述のように接種し、ZFNおよびドナーを含むAAVの両方は前述のように送達した。
【0187】
実験は2つのプレートで並行して実施した。第1のプレートはZFN添加の4日後に採取し、ゲノムDNAを抽出し(Qiagen QIAamp DNAマイクロキットを使用する)以下のようにZFN活性を分析した。簡単に説明すると、切断部位を含む領域をPCRによって増幅し、増幅後、PCR産物をMiSeqハイスループット配列決定分析によって製造者(Ilumina)の指示に従って配列決定した。
【0188】
第2のプレートについては、第1のプレートの条件のように2連の実験条件を使用し、上清を3つの時点:ZFN添加の2日後、ZFN添加の5日後(3〜5日目の上清を組み合わせた)およびZFN添加の8日後(6〜8日目の上清を組み合わせた)に収集した。次に、これらの上清はアカゲザルF.IXタンパク質とヒトF.IXとを区別することができる一次抗体(Hematologic systems)を使用して分泌されたhF.IXタンパク質について試験した。さらに、前述のように配列決定することによってZFN活性を分析するために、細胞を8日目に採取してゲノムDNAを抽出した。
【0189】
結果は、AAV−ZFNおよびAAV−ドナーの同日での形質導入が、ZFN単独での形質導入と比較してZFN活性の低下を引き起こすことを示した。配列決定分析によって、ZFNおよびドナー−AAV粒子が同日に形質導入された場合、試料中の全ZFN:ドナー比において4日目および8日目にインデルが少ないことが検出された(
図7を参照のこと)。対照的に、最初にAAV−ZFNを、次に24時間後にAAV−ドナーを添加したとき、ZFN活性(インデル%)はZFN:ドナー比に関係なくZFNのみのトランスフェクション試料と同じであった。
【0190】
予測通り、ZFN活性はまた、ELISAによって検出すると、hF9導入遺伝子組み込みの指標であるhF.IXタンパク質分泌と相関した。前記のように、最適化した送達条件によって、ZFN:ドナー比に関係なく2倍超のhF.IX分泌の増加がもたらされる。
(実施例6)
マウスにおけるZFN−ヌクレアーゼ(AAV2/8)およびhF9−ドナー(AAV2/8)のずらされた(staggered)添加のin vivo試験
【0191】
最適化したAAV−ZFN/AAV−ドナー添加条件はまた、in vivoにおいて使用できるかどうかを試験するため、マウスアルブミン特異的ZFN 30725:30724およびZFN切断部位の周囲のマウスアルブミン遺伝子に相同な相同アームに隣接したhF9導入遺伝子ドナー(米国特許公開第20130177983号で記載されたような操作された切断ドメインを有するZFN30724および20725)を使用して、いくつかの添加戦略をマウスで一緒に試験した。
【0192】
C57/Bl6マウス(5匹のコホート)に、AAV−ZFNのみのウイルスゲノム(VG) 1.5e11(総量)またはドナー:ZFN比3:1を表すAAV−ドナーおよびAAV−ZFN 9e11(総量)をコードするAAV2/8を注射した。この研究について、ドナー−AAVを最初に送達し、次にZFN−AAVを24時間後に送達するか(群1);ZFN−AAVおよびドナー−AAVの両方を同時に投与するか(群2);ZFN−AAVを最初に送達し、次にドナー−AAVを24時間後に送達するか(群3);またはZFN−AAVを最初に送達し、ドナー−AAVを72時間後に送達するか(群4);またはZFN−AAVを最初に送達し、ドナー−AAVを120時間後に送達した(群5)。これらの研究において、米国特許公開第20120128635号に記載されたように、いずれも尾静脈に注射することによって送達した。全群におけるZFN送達の7日後に、血漿中におけるhF.IX分泌を分析するために、異なる群の逐次採血を実施した。
【0193】
7日目に実施したヒトhF.IXのELISA(親和性)によって、ドナー−AAVを最初に添加することは、ZFN−AAVおよびドナー−AAVを同日における添加と区別できないことが明らかになった(
図8を参照のこと)。対照的に、ドナー−AAVをZFN−AAVの24時間後または72時間後に投与した場合、血漿中におけるhF.IXのレベルは、同日に投与するよりもそれぞれ2倍から3倍高かった。対照的に、ZFNの120時間後のドナーの投与は、hF9発現の完全な欠如を引き起こした。確率分析(スチューデントT検定)は、ドナーおよびZFNを同日に与えたマウスからの試料、またはドナーを24時間前に与えたマウスからの試料と、ZFN−AAVを投与されて3日後にドナー−AAVを与えたマウスからの試料と比較して有意な差があることを示した。
【0194】
同じく7日目に殺処分された付随マウス群からの肝臓組織のゲノムDNAの分析は、より高いhF.IX発現が、アルブミン遺伝子修飾のより高いレベルと相関しており、ZFN−AAVの3日後にドナー−AAVが投与されたとき2倍高いことを示した(
図9Aを参照のこと)。さらに、ZFN−AAVの3日後にドナー−AAVを投与されたマウスで観察された標的化遺伝子修飾のレベルは、ZFN−AAVのみを投与された群と同様であった。これは、実施例5で示したin vitroにおける結果と一致した。しかし、ZFN−AAVによる形質導入効率(2倍体ゲノム当たりのVGを検出することによってアッセイした)は全群について同じであったが、ZFN発現レベルは、標準的ウェスタンブロット分析によって分析すると、ZFN−AAVを単独で送達したときか、またはドナー−AAVをZFN−AAVの3日後に送達したとき(
図9B)、ドナー−AAVをZFN−AAVの前または同時に与えたときと比較して高かった。
【0195】
異なる投薬コホートの血清hF.IXレベルを、時間をわたり分析すると、導入遺伝子の長期発現が観察される(
図10)。導入遺伝子発現は、AAV−ZFNによる形質導入の77日後でも検出することができる。群全てが認識可能な導入遺伝子発現を達成するが、AAV−ドナーウイルスの添加の3日前のAAV−ZFNの形質導入によって最も速い発現の増加が達成される。
(実施例7)
NHPにおけるZFN−ヌクレアーゼ(AAV2/8)およびhF9−ドナー(AAV2/8.2)のずらされた添加のin vivo試験
【0196】
最適化したAAV ZFN/AAV ドナー添加条件がin vivoにおいてNHPでも使用できるかどうかを試験するため、アカゲザルにおいて、アカゲザルアルブミン特異的ZFN37804:43043およびZFN切断部位の周囲のアカゲザルアルブミン遺伝子に相同な相同アームに隣接したhF9導入遺伝子ドナーを使用して、いくつかの異なる添加戦略を使用する研究を実施する。これらの実験において、ZFN−AAVはそれぞれ単一のZFNコード配列を含有し、ZFN対を送達するためには、2種類のZFN−AAV粒子型を与える。ZFN−AAVウイルス粒子は一緒に8:1:1比(ドナー:ZFN1:ZFN2)でAAV−ドナー粒子と共に与え、サルの対にZFN−AAVおよびドナー−AAVを同日に与えるか、またはドナー−AAVの1日もしくは3日前にZFN−AAVを与える。血清hF.IXを試験するために逐次採血を、時間をわたり実施する。
【0197】
結果は、動物がZFN−AAVを投与される時点とドナー−AAVを投与される時点との間の1から3日間の遅延が、28日目までは導入遺伝子の最も迅速な発現をもたらすことを示した(
図11A)。研究期間中(>30週間)の全動物のhF.IXピークレベルの分析によって、検出可能なレベルのh.FIXを発現する5匹の動物のうち、発現が最高である3匹の動物はAAV−ZFN粒子の1または2日後にAAV−ドナー粒子で処置されていたことが明らかになった(
図11B)。
【0198】
総合すると、これらのデータは、ヌクレアーゼおよびドナー導入遺伝子の別々の投与が導入遺伝子発現の有意な増強を示した(同日投与と比較して3倍)ことを示している。したがって、ヌクレアーゼ(複数可)および導入遺伝子の逐次投与は、両者をウイルス粒子またはmRNAとして、投与間を数時間から数日間遅延させて送達するとき、導入遺伝子のヌクレアーゼ媒介性組み込みを増強することができる。
【0199】
本明細書に言及されているあらゆる特許、特許出願および刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0200】
理解を明確にするために、例示および実施例として本開示を詳細に提示してきたが、当業者であれば、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を実施してよいことが明らかとなろう。したがって、前述の記載および実施例は、限定的に解釈するべきではない。